JP4481768B2 - ゴルフクラブシャフト - Google Patents

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Description

本発明はゴルフクラブシャフト、さらに詳細には、距離および方向の安定性に優れたゴルフクラブシャフトに関する。
図6は従来のプラスチック製ゴルフクラブシャフトの構成を示す斜視図であるが、この図より明らかなように、補強繊維が斜交して設けられた捩り剛性保持層1と補強繊維がシャフトの長手方向に引き揃えられた曲げ剛性保持層2および任意に補強繊維がシャフトの長手方向と垂直な方向に引き揃えられた圧縮剛性保持層3を備えた構造になっている。典型的には、この捩り剛性保持層1及び曲げ剛性保持層2をそれぞれ4〜6プライ設けてゴルフクラブシャフトとしている(たとえば特願平7−311678号)。
従来、コンポジット製のシャフトは、テーパを有するシャフト状の金属製のマンドレルに、任意にシャフトの長手方向に垂直な方向に補強繊維が引き揃えられたUDプリプレグを捲回したのち、図7に示すように炭素繊維などの補強繊維が所定方向に斜めに敷設した傾斜プリプレグ41と前記所定方向と反対方向に補強繊維を敷設した傾斜プリプレグ42を重ね合わせて補強繊維がバイアス状に交差したUDプリプレグシート4および長手方向に平行な方向に補強繊維を敷設したUDプリプレグシートを複数層捲回したのち、押さえのためにテープをら旋状に捲回し、UDプリプレグシートの熱硬化性樹脂を熱硬化させて製造している。
前述のような方法で製造されたゴルフクラブシャフトは、表面に押さえのテープ跡が形成されてしまうため、最表面の前記UD曲げ剛性保持層の表面を研磨して、テープ跡を除去し平滑にした後、塗装し、印刷などを施した後、透明な表面層を形成して製品としている。
このようなコンポジット製のシャフトは、上述のように基本的に一方向に補強繊維が引き揃えられたUDプリプレグ層の熱硬化性樹脂を硬化させて製造するものであるが、補強繊維(炭素繊維の場合)伸びが1.5%であるのに対し、複数の熱硬化樹脂層は、前記補強繊維に比較して強度が小さく、かつ柔軟性が大きい。このため、補強繊維が引き揃えられた方向に対しては十分に効力を発揮するが、厚さ方向あるいは横方向に力がかかった場合には、熱硬化樹脂層間に変形やずれを生じる等欠点がある。上述のように製造されたゴルフクラブシャフトを使用したクラブでショットすると、熱硬化繊維層間にずれ、ないし変形により、安定したショットが行いにくくなるという欠点がある。このため方向性及び飛距離にばらつきが生じる恐れがあった。また、前述のような熱硬化繊維層のずれは、ショットのフィーリングを損なう恐れがある。すなわち、ゴルフ上級者はスチール製シャフトのフィーリングを好む傾向にあるが、前述の熱硬化繊維層間のずれはスチール製シャフトのフィーリングから離れたフィーリングを生じるという欠点がある。
さらに、プリプレグ41及び42を貼り合わせて、UD捩り剛性保持層を形成するため、どうしても貼り合わせによるずれを生じ、シャフトの精度が向上しないという欠点があるとともに、貼り合わせを行うため、工程数が多くなり、加工性が悪くなるという欠点があった。
上述の問題点を解決するため、捩り剛性保持層1に図8に示すような3軸織物を使用したゴルフクラブシャフトも開発されている(実用新案登録第2553612号)。この図より明らかなように、3軸織物5は、緯糸51に対し傾斜した第一経糸52及びこの経糸52に斜行する第二の経糸53を有している。これらの緯糸51、経糸52及び経糸53は交互に糸の上下を通り、織られた構造になっている。この経糸52及び53の交わる角度θは一般に60°である。このようなシャフトを用いたゴルフクラブによれば、飛距離が伸び、飛距離安定性、及び方向性が良好となる傾向があるが、3本の糸が織られているために、ボールを打ったときのシャフトのしなりが復帰するのが早く、よほどのヘッドスピードのゴルファーしか対応でないという欠点がある。特に、アイアンクラブにあっては、ゆっくりとスイングする方が良好な結果を得られるものであるところから、上述の3軸織物を使用したクラブは、打ちにくく、事実上、アイアンクラブとしては使用されていない。
特願平7−311678号 実用新案登録第2553612号
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、飛距離及び方向の安定性が良好で、かつ飛距離が確保できるとともに、打ち易さに優れ、特にパターを含むアイアンクラブに最適なゴルフクラブシャフトを提供することを目的とする。
上記問題点を解決するため、本発明によるゴルフクラブシャフトは、シャフトの長手方向に斜交した補強繊維を備えた熱硬化性樹脂の捩り剛性保持層と、長手方向に平行に引き揃えた補強繊維を備えた熱硬化性樹脂の曲げ剛性保持層を備えたゴルフクラブシャフトにおいて、前記捩り剛性保持層は相互に織られた経糸と緯糸とを有する平織り織物に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを前記経糸と緯糸がシャフトの長手方向に斜交するようにシャフト状に捲回し硬化せしめた平織り織物層と、緯糸に対し傾斜した第1の経糸及びこの経糸に斜行する第2の経糸を有し、これらの緯糸、経糸及び経糸は交互に糸の上下を通り織られた構造になっている3軸織物を前記緯糸がシャフトの長手方向に平行または垂直な方向になるようにシャフト状に捲回し硬化せしめた3軸織物層と、を備え、前記平織り織物の糸は3K以下であることを特徴とする。
本発明によれば、捩り剛性保持層として平織り織物に熱硬化性樹脂を含浸させ、熱硬化させた平織り織物層と3軸織物を使用した3軸織物層を設けている。平織り織物および3軸織物は経糸と緯糸とで織られており、糸の移動が制限されているため、熱硬化性樹脂層の層間の変形ないしずれを有効に抑制可能になる。このためショット時の層間におけるずれを抑制することが可能になり、距離及び方向の安定性があり、かつ3軸織物層のみの場合と比べて、柔らかなフィーリングとなり、しなりの復帰も遅くなって打ちやすさが増すという利点を生じる。このような特性は、パターを含むアイアン用クラブとして最適である。
本発明によるゴルフクラブシャフトの典型的構成例としては、図1に示すように、補強繊維が所定方向に斜めに敷設した傾斜プリプレグ41と前記所定方向と反対方向に補強繊維を敷設した傾斜プリプレグ42を重ね合わせて補強繊維がバイアス状に交差したUDプリプレグシート4の熱硬化性樹脂を複数層(たとえば4層、この場合プリプレグシートは2×4プライ)硬化させたUD捩り剛性保持層1に、任意にシャフトの長手方向と垂直な方向に引き揃えられた補強繊維を備えた樹脂層のUD圧縮剛性保持層3(90°層と呼ぶ)を設ける(たとえば1層(1プライ))。前記UD圧縮剛性保持層3に平織り織物層11から成る捩り剛性保持層1を積層する。この平織り織物層11は相互に織られた経糸と緯糸とを有する平織り織物に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを前記経糸と緯糸がシャフトの長手方向に斜交するようにシャフト状に捲回し硬化せしめたものである。この平織り織物層11は、単相でもよく、複数層(たとえば3層)でもよい。
これに長手方向に平行に引き揃えた補強繊維を備えた熱硬化性樹脂を硬化させたUD曲げ剛性保持層2(0°層と呼ぶ)を単相あるいは複数層設けるとともに、さらに3軸織物層12を設け、さらに0°層のUD曲げ剛性保持層2を単数あるいは複数層設けた構造になっている。この3軸織物層12は緯糸51に対し傾斜した第1の経糸52及びこの経糸52に斜行する第2の経糸53を有し、これらの緯糸51、経糸52及び経糸53は交互に糸の上下を通り織られた構造になっており、前記緯糸51がシャフトの長手方向に平行(0°方向)または垂直な方向(90°方向)になるようにシャフト状に捲回し硬化せしめたものである。
図2は、他の構成例を示すものであるが、この例においては補強繊維が所定方向に斜めに敷設した傾斜プリプレグ41と前記所定方向と反対方向に補強繊維を敷設した傾斜プリプレグ42を重ね合わせて補強繊維がバイアス状に交差したプリプレグシート4の熱硬化性樹脂を複数層(たとえば4層、この場合プリプレグシートは2×4プライ)硬化させたUD捩り剛性保持層1に、前記UD曲げ剛性保持層(0°層)2あるいは前記UD圧縮剛性保持層(90°層)3を1層ないし2層積層してある。このUD捩り剛性保持層1と前記UD曲げ剛性保持層2あるいは前記UD圧縮剛性保持層3(0°層あるいは90°層)の層は入れ替え可能である。すなわち、まず0°層あるいは90°層を設けた後、UD捩り剛性保持層1を設けてもよい。
上述の層に、さらに前記平織り織物層11から成る捩り剛性保持層(たとえば2〜3層)を設け、この平織り織物層11に前記曲げ剛性保持層2あるいは前記圧縮剛性保持層3(0°層あるいは90°)を介して3軸織物層12を設けるとともに、さらに0°層2あるいは90°層3(たとえば1〜2層)を介して平織り織物層21(たとえば2〜3層)を設けている。この平織り織物層21はシャフトの長手方向に経糸が平行に(したがって緯糸は長手方向に垂直に)なるように捲回硬化せしめた層であり、曲げ剛性保持と圧縮剛性保持の作用を営むようになっている。
この平織り織物層21に、さらに曲げ剛性保持層(0°層)2を単数あるいは複数層設けた構造になっている。
図3は、他の構成例を示すものであり、この構成例では、まず捩り剛性保持のための平織り織物層11を単数あるいは複数層(たとえば2〜3層)設けている。この平織り織物層11に、UD捩り剛性保持層1を単数あるいは複数設けるとともに、3軸織物層12を設け、さらに0°層2あるいは90°層3を介して前記平織り織物層21を設けている。この曲げ剛性保持および圧縮剛性保持用平織り織物層21上に前記曲げ剛性保持層を設けた構造になっている。
図4は、他の典型的な構成を示すものであり、単数あるいは複数のUD捩り剛性保持層1に捩り剛性保持用の前記平織り織物層11を同様に単数あるいは複数設けるとともに、この平織り織物層11に3軸織物層12を設けた構造になっている。さらにこの3軸織物層12に、単数あるいは複数の前記UD曲げ剛性保持層2を積層する。
このような典型的な本発明によるゴルフクラブシャフトにおいて、この捩り剛性保持層1の一部を構成する平織り織物層11は、前述のように平織り織物に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させたものを使用している。図5のaは本発明に使用する平織り織物の平面図、bは図5のA−A断面図であるが、これらの図より明らかなように、平織り織物6は、相互に直行する経糸61及び緯糸62が相互に織られた構造になっており、シャフトの長手方向(図5の矢印参照)とそれぞれの経糸61及び緯糸62の角度θがほぼ45°となるようにシャフト状に捲回され、硬化される。この際、捲回によっては、経糸61および緯糸62と長手方向の軸線となす角度が45°を若干外れることがあるが、経糸61と緯糸62がなす角度は2θ、すなわち90°であるため、安定である。このため補強繊維の捩れに対する効果が一定となり、したがって経糸61及び緯糸62を正確に捲回しなくともバランスをとりやすくなる。このため設計の自由度、加工性が増加すると共に、シャフトの振動安定性が増加する。さらに、斜交する補強繊維の角度がシャフトの長手方向に対し45°の場合に、最良の捩り防止効果が発揮できることから、上述のようにシャフトの長手方向に補強繊維が相互に45°になるようにプリプレグの捲回方法が好ましい。
このような平織り織物の場合、経糸61及び緯糸62は一般的には炭素繊維であるが、アルミナ繊維、アラミド繊維、カーボンシリケート繊維、アモルフォス繊維、ガラス繊維などとすることもできる。すなわち糸の種類は基本的に限定されるものではない。
このような平織り織物の糸の打ち込み本数は、好ましくは、4本/cm以上であるのが好ましい。4本/cmより少ないと、平織り織物の厚さが大きくなり、可能性が損なわれる恐れがある。
上記糸の太さは、好ましくは3K(1Kはフィラメント1000本)以下であるのがよい。3Kを超えると1プライが厚くなりすぎ、十分な繊維密度(打込本数)を確保できない恐れがあり、またシャフトに巻き難く作業性が悪くなる恐れがある。
このような織物に含浸させるプリプレグの樹脂は、本発明において基本的にいかなるものでも使用しえる。例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ピーク樹脂などであることができる。
このようなプリプレグの厚さは、好ましくは0.3mm以下である。0.3mmを超えると、1プライが厚くなりすぎ、十分な繊維密度(打込本数)を確保できない恐れがあり、またシャフトに巻き難く作業性が悪くなる恐れがある。
またプリプレグの重さは400g/m以下であるのがよい。400g/mを超えると、織目に樹脂が詰まりすぎて、厚くなりすぎる恐れがある。プリプレグの樹脂量は、好ましくは25〜40重量%であるのがよい。25重量%未満であると、樹脂量が少なすぎて、良好なシャフトを製造できない恐れがあり、一方40重量%を超えると、トルクが大きくなりすぎる恐れがある。
また、3軸織物5は、前述のように緯糸51に対し傾斜した第一経糸52及びこの経糸52に斜行する第二の経糸53を有している。これらの緯糸51、経糸52及び経糸53は交互に糸の上下を通り、織られた構造になっている。
この経糸52および経糸53のなす角度θは、好ましくは25〜75°であるのがよい。25〜75°の範囲を逸脱すると、3軸織りの等方性が失われ形状保持性が損なわれるおそれがある。もっとも好ましくは50〜70°であるのがよい。典型的には互いに緯糸51,経糸52,53が略60°をなす糸を編んだ織物である。
緯糸51,経糸52,53は、平織り織物と同様に、一般的には炭素繊維であるが、アルミナ繊維、アラミド繊維、カーボンシリケート繊維、アモルフォス繊維、ガラス繊維などとすることもできる。すなわち糸の種類は基本的に限定されるものではない。さらに炭素繊維には、ピッチ系とパン系があり、どちらも使用できる。これらの繊維は、繊維間で物理的性質が違うことは勿論、同一の繊維でも、物理的性質、例えば、引張強度や引張弾性率が異なるものであってもよい。
このような3軸織物は、32ゲージから64ゲージであるのがよい。この範囲を外れた3軸織物は、ゴルフクラブ用のシャフトの性能を低下させる恐れがある。32ゲージの3軸織物は、緯糸51の間隔dxが1.80mm、経糸52,53の交点同士の間の間隔dyが2.08mmである。64ゲージは前記dxが0.90mm、dyが1.04mmとなる。
このようなプリプレグの厚さは、好ましくは0.4mm以下である。0.4mmを越えると、1プライが厚くなりすぎ、十分な繊維密度(打込本数)を確保できない恐れがあり、またシャフトに巻き難く作業性が悪くなる恐れがある。
またプリプレグの重さは350g/ 以下であるのがよい。350g/mを越えると、織目に樹脂が詰まりすぎて、厚くなりすぎる恐れがある。プリプレグの樹脂量は、好ましくは25〜50重量%であるのがよい。25重量%未満であると、樹脂量が少なすぎて、良好なシャフトを製造できない恐れがあり、一方50重量%を超えると、シャフトの外径が大きくなりすぎる恐れがある。
本発明における典型的な構成のゴルフクラブシャフトにおいて、平織り織物層11と3軸織物層12(すなわち織物層と織物層の間)との間に0°層あるいは90°層であるUD曲げ剛性保持層2あるいはUD圧縮剛性保持層3を設けている。あるいはUD捩り剛性保持層1を設けている。この様な構成は、織物層11及び12が直接接触するのを防止するため設けられる。直接織物層11及び12が接触する場合、樹脂量が不足し、また織物の凹凸のために、層間の接着強度が不足し、層間のずれを生じる恐れがある。これを防止するため、0°層あるいは90°層あるいはUD捩り合成保持層1を設けている。もちろん、この0°層は曲げ剛性保持、90°層は圧縮剛性保持の作用も行う。
しかし図4の構成においては、前述のようなUD層は設けられていない。この場合には樹脂量を制御することにより、層間のずれを防止可能である。
本発明おいては、織物層11,12あるいは21上に、図1、図2、図3、図4に示すような補強繊維がシャフトの長手方向に引き揃えられた樹脂層であるUD曲げ剛性保持層2を積層する。この曲げ剛性保持層2はシャフトの最表面層を構成する。前記曲げ剛性保持層2を設けた後、最表面層の前記曲げ剛性保持層2の表面を研磨して、平滑にした後、塗装し、印刷などを施した後、透明な表面層を形成して製品とする。
また、他の態様においては、前記本発明によるUD捩り剛性保持層1の内側または外側にシャフトの長手方向に垂直な方向(シャフトとの周方向)に補強繊維が引き揃えられた樹脂層であるUD圧縮剛性保持層3を設けることができる。このUD圧縮剛性保持層3に使用されるプリプレグも、従来と同様なプリプレグを使用することができる。
上記実施態様においては、3軸織物層12及び平織り織物層11はシャフトの全長に設けられているが、シャフトのチップ側および/またはバット側に一部分設けることも可能である。さらにチップ側および/またはバット側と共に、あるいは単独でシャフトの中央部に一部分設けることもできる。
図5および図8に示すような平織り織物、3軸織物を使用し、図4に示すゴルフクラブシャフトを製造した。最内層の捩り剛性保持層1として、補強繊維が所定方向に斜めに敷設した傾斜プリプレグ41と前記所定方向と反対方向に補強繊維を敷設した傾斜プリプレグ42を重ね合わせて補強繊維がバイアス状に交差したUDプリプレグシート4(UD捩り剛性保持層を形成)を2層(プリプレグは2×2プライ)、平織り織物のプリプレグシートを3プライ、3軸織物のプリプレグを1プライ、0°層プリプレグを3プライを順次マンドレルに捲回してプリプレグの熱硬化性樹脂を硬化させて、表面を研磨し、ゴルフクラブシャフトとした(A)。
前記平織り織物のプリプレグの樹脂量は40%、0°層のプリプレグは25%であった。また前記平織り織物のプリプレグはシャフトの長手方向(図5の矢印参照)とそれぞれの経糸及び緯糸の角度θがほぼ45°になるようにシャフト状に捲回された。UD捩り剛性保持層、0°層、平織り織物層および3軸織物層の補強繊維は炭素繊維とした。平織り織物層のそれぞれの経糸、緯経の太さは、3Kであり、経糸、緯経の打ち込み本数はそれぞれ各4.9本/cmであった。さらにプリプレグとしたときの厚さは0.22mmであり、総重量は328g/mであった。
また3軸織物のそれぞれの緯糸、経糸の太さは、1Kであり、経糸の角度は、緯糸に対し60°とした。この3軸織物に樹脂40%を含浸させたプリプレグを使用した(32ゲージ)。さらにプリプレグとしたときの厚さは0.175mmであり、総重量は122g/mであった。このプリプレグを緯糸がシャフトの垂直方向(90°方向)に成るように捲回した。
比較のため、UD捩り剛性保持層を2層捲回し、その上に平織り織物層を3層、さらに曲げ剛性保持層(0°層)を3層設けたゴルフクラブシャフト(B)、前記UD捩り剛性保持層を4層、これに曲げ剛性保持層(0°層)を3層設けたゴルフクラブシャフト(C)を製造した。
前記ゴルフシャフトA、B、Cにヘッドおよびグリップを取り付けて、45インチのゴルフクラブとした。
表1
振動数 クラブ重量 ヘッド重量 シャフト重量 グリップ重量
A 254 321.9g 194.9g 71.2g 50.7g
B 255 323.3g 194.6 72.1g 50.5g
C 255 325.7g 194.0g 74.7g 50.6g
上記表1で振動数の単位はCPMである。シャフトのトルクは、Aが4.26°、Bが3.98°、Cが4.07°であった。
上述の3本のゴルフクラブを使用し、ロボット(特許第3285484号参照)によって同一条件でゴルフボールを打たせた。ロボットを、各クラブについてヘッドに対する打点の位置を同一となるように、かつヘッドスピードが42m/sとなるように、設定した。
本発明のシャフトを使用したゴルフクラブAのヘッドのセンターで100球打たせたとき、ボールの落下地点(キャリー)は、205ヤード付近を中心に前後方向(飛距離)の誤差が±3ヤード、左右方向の誤差が±4.25ヤードであった。さらに、トウー側に10mmずらせて100球打たせたところ、200.7ヤード付近を中心に前後方向(飛距離)の誤差が±3ヤードであり、左右方向の誤差が±3.75ヤードであった。
ゴルフクラブBにおいては、ボールの落下地点は、ヘッドのセンターで打ったとき、206ヤード付近を中心に前後方向(飛距離)の誤差が±3.75ヤード、左右方向の誤差が±5.0ヤードであった。さらに、トウー側に10mmずらせて100球打たせたところ、200.6ヤード付近を中心に前後方向(飛距離)の誤差が±4.5ヤード、左右方向の誤差が±2.75ヤードであった。
これに対し、ゴルフクラブCにおいては、ボールの落下地点は、ヘッドのセンターで打ったとき、206ヤード付近を中心に前後方向(飛距離)の誤差が±5.7ヤード、左右方向の誤差が±6.5ヤードであった。さらに、トウー側に10mmずらせて100球打たせたところ、202.7ヤード付近を中心に前後方向(飛距離)の誤差が±5.25ヤード、左右方向の誤差が±4.0ヤードであった。
すなわち、本発明のゴルフクラブシャフトAは、ゴルフクラブBおよびCに比較して良好な距離安定性を示した。特に従来のUDプリプレグ製のゴルフクラブCに対しては、距離及び左右方向の安定性が向上し、安定したゴルフクラブシャフトとすることができた。
本発明による一実施形態のゴルフクラブシャフトの断面図。 本発明による他の実施形態のゴルフクラブシャフトの断面図。 本発明による他の実施形態のゴルフクラブシャフトの断面図。 本発明による他の実施形態のゴルフクラブシャフトの断面図。 本発明によるゴルフクラブシャフトに使用される平織り織物の平面図及びA−A断面図。 ゴルフクラブシャフトの構造の一例の説明図。 従来の捩り剛性保持層を形成するプリプレグの構成図。 3軸織物の構成を説明する図。
符号の説明
1 捩り剛性保持層
11 平織り織物層(捩り剛性保持用)
12 3軸織物層
2 曲げ剛性保持層
21 平織り織物層(曲げ剛性及び圧縮剛性保持用)
3 圧縮剛性保持層
4 UDプリプレグシート
5 3軸織物
51 緯糸
52 経糸
53 経糸
6 平織り織物
61 経糸
62 緯糸

Claims (18)

  1. シャフトの長手方向に斜交した補強繊維を備えた熱硬化性樹脂の捩り剛性保持層と、長手方向に平行に引き揃えた補強繊維を備えた熱硬化性樹脂の曲げ剛性保持層とを備えたゴルフクラブシャフトにおいて、
    前記捩り剛性保持層は
    相互に織られた経糸と緯糸とを有する平織り織物に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを前記経糸と緯糸がシャフトの長手方向に斜交するようにシャフト状に捲回し硬化せしめた平織り織物層と、
    緯糸に対し傾斜した第1の経糸及びこの経糸に斜行する第2の経糸を有し、これらの緯糸、経糸及び経糸は交互に糸の上下を通り織られた構造になっている3軸織物に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを前記緯糸がシャフトの長手方向に平行または垂直な方向になるようにシャフト状に捲回し硬化せしめた3軸織物層と、
    を備え
    前記平織り織物の糸は3K以下であることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
  2. 前記平織り織物の糸の打ち込み本数は4本/cm以上であることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブシャフト。
  3. 前記平織り織物のプリプレグの重さは400g/m以下、厚さは0.3mm以下であることを特徴とする請求項1または2載のゴルフクラブシャフト。
  4. 前記プリプレグの樹脂量は25〜40重量%であることを特徴とする請求項1から記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  5. 前記3軸織物は32ゲージまたは64ゲージであることを特徴とする請求項1から記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  6. 前記3軸織物のプリプレグの重さは350g/m以下、厚さは0.4mm以下であることを特徴とする請求項1から記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  7. 前記3軸織物のプリプレグの樹脂量は25〜50重量%であることを特徴とする請求項1から記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  8. シャフトの長手方向に対し垂直な方向に補強繊維を引き揃えたUDプリプレグを硬化させたUD圧縮剛性保持層を備えたことを特徴とする請求項1から記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  9. 前記3軸織物層と前記平織り織物層間に、シャフトの長手方向に平行に補強繊維を引き揃えたUDプリプレグを硬化させたUD曲げ剛性保持層あるいはシャフトの長手方向に対し垂直な方向に補強繊維を引き揃えたUDプリプレグを硬化させたUD圧縮剛性保持層を設けたことを特徴とする請求項1から記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  10. 前記平織り織物の経糸と緯糸の角度は90°であることを特徴とする請求項1から9記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  11. 前記3軸織物の経糸と緯糸の角度は60°であることを特徴とする請求項1から10記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  12. 補強繊維が所定方向に斜めに敷設した傾斜プリプレグと前記所定方向と反対方向に補強繊維を敷設した傾斜プリプレグを重ね合わせて補強繊維がバイアス状に交差したUDプリプレグをシャフト状に硬化せしめたUD捩り剛性保持層、前記平織り織物層、前記UD曲げ剛性保持層あるいは前記UD圧縮剛性保持層、前記3軸織物層および前記UD曲げ剛性保持層を順次積層したことを特徴とする請求項から11記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  13. 前記UD捩り剛性保持層、前記UD曲げ剛性保持層あるいは前記UD圧縮剛性保持層、前記平織り織物層、前記UD曲げ剛性保持層あるいは前記UD圧縮剛性保持層、前記3軸織物層、前記UD曲げ剛性保持層あるいは前記圧縮剛性保持層、相互に織られた経糸と緯糸とを有する平織り織物に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを前記経糸と緯糸いずれかがシャフトの長手方向に平行になるようにシャフト状に捲回し硬化せしめた曲げ剛性および/または圧縮剛性保持用の平織り織物層および前記UD曲げ剛性保持層を順次積層したことを特徴とする請求項から11記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  14. 前記UD曲げ剛性保持層あるいは前記UD圧縮剛性保持層、前記UD捩り剛性保持層、前記平織り織物層、前記UD曲げ剛性保持層あるいは前記UD圧縮剛性保持層、前記3軸織物層、前記UD曲げ剛性保持層あるいは前記UD圧縮剛性保持層、前記曲げ剛性あるいは圧縮剛性保持用の平織り織物層および前記UD曲げ剛性保持層を順次積層したことを特徴とする請求項から11記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  15. 前記平織り織物層、前記UD捩り剛性保持層、前記3軸織物層、前記UD曲げ剛性保持層あるいは前記UD圧縮剛性保持層、前記曲げ剛性あるいは圧縮剛性保持用の平織り織物層、前記UD曲げ剛性保持層を順次積層したことを特徴とする請求項から11記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  16. 前記UD捩り剛性保持層と前記平織り織物層との間に、前記UD圧縮剛性保持層を設けたことを特徴とする請求項12記載のゴルフクラブシャフト。
  17. 補強繊維が所定方向に斜めに敷設した傾斜プリプレグと前記所定方向と反対方向に補強繊維を敷設した傾斜プリプレグを重ね合わせて補強繊維がバイアス状に交差したUDプリプレグをシャフト状に硬化せしめたUD捩り剛性保持層、前記平織り織物層、前記3軸織物層およびシャフトの長手方向に平行に補強繊維を引き揃えたUDプリプレグを硬化させたUD曲げ剛性保持層を順次積層したことを特徴とする請求項1から記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
  18. 前記曲げ剛性および/または圧縮剛性保持用の平織り織物層を含むことを特徴とする請求項1から11記載のいずれかのゴルフクラブシャフト。
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