JP4480081B2 - 物質の分離方法 - Google Patents

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Description

本発明は、物質の分離方法に関する。
病変した組織で発現するタンパク質を網羅的に迅速かつ簡便に解析することは、新しい診断方法、創薬の分野において重要である。病変した組織のタンパク質を解析するためには、多種類のタンパク質を含むサンプルから個々のタンパク質を分離し、それぞれのタンパク質の発現量を正常なものと比較するなどの方法がある。このため、多数のタンパク質を含むサンプルから個々のタンパク質を分離する技術が重要となる。
現在、タンパク質の分離方法として、等電点電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動などの電気泳動法、これらを組み合わせた2次元の電気泳動などが挙げられ、またクロマトグラフィーなども用いられている。
電気泳動現象を利用して試料成分を分離する研究としては、古くは寒天ゲルを充填したガラス管の中に試料成分を流し、分離する方法や、試料中の成分をゾーンとして分離を試みた蛋白質の分離実験等が挙げられる(非特許文献1)。このような長い電気泳動の歴史の中で種々の形態の電気泳動が登場した。さらには、自由溶液中で極めて細いキャピラリーを用いる電気泳動(CE)法も開発された(非特許文献2)。
しかし、上記のうちゲル電気泳動は、ゲルの取り扱いが煩雑で、再現性にも乏しいという問題がある。特に、等電点電気泳動とゲル電気泳動を組み合わせた電気泳動では、分離操作が著しく煩雑である。
CE法は優れた分離が行えるばかりでなく、再現性の高い検出や定量を行うことができる。CEはオンキャピラリー検出であり、さらに自由溶液中で検出を行えばバックグラウンドの吸収が均一となる。そのため検出の再現性は従来の電気泳動法と比較して圧倒的に優れ、信頼性の高い定量も可能である。
現在のCEは細いキャピラリー管が使用されているが、現在までに汎用的に利用され、それなりの高性能が得られるスラブゲルを用いた2次元電気泳動法のような2次元構造をCEにそのままの状態で作製し、利用することは技術上困難である。
また多種多様な蛋白質を分離、検出するためには、様々な分離、分析手段を組み合わせることが必要とされる。そのためには多量の蛋白質が必要となる場合が多い。しかし蛋白質は非常に微量にしか存在しないことがあり、多種類の蛋白質検出は困難を伴うことがある。上述のクロマトグラフィーやゲル電気泳動では、小型化が困難であり微少な量のタンパクを分析するには一定の限界がある。
一方、微量な蛋白質を検出するためには高感度な検出法や微小なデバイスを作製することが要求される。しかし現実には、従来の手作業による作製法ではmm以下のサイズのデバイス作製は非常に困難である。また作製されたデバイスは、一品、一品性能が異なる。つまり性能にばらつきが生じ易いため、歩留まりが悪くなる恐れがあった。
蛋白質のみならず、核酸のような成分の分離においても、電気泳動分離は重要な技術である。核酸の分離においても、蛋白質と同様に、微小なデバイスによる分離が実現できれば、分析に要する試料の微量化や時間の短縮効果を期待できる。
微量な試料を高精度に分離することができるデバイス開発のためには、マイクロマシーニング技術や、半導体加工技術の応用が必要と考えられる。マイクロマシーニング技術とは、微小なチップの上に、流路、流路内の液体の流れを制御する構造、あるいは流路内における温度条件の制御機構等を構築するためのテクノロジーである(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。また半導体加工技術とは、フォトリソグラフやエッチング加工によって、基材表面に微細な構造を構築するためのテクノロジーである(非特許文献6、非特許文献7)。
これらのテクノロジーを利用したデバイスの作製に用いられる基材の中で、ガラスは最も一般的な素材の一つである。ところで、ガラスキャピラリーを利用して電気泳動を行うと、材質のガラスと溶液の接する内壁が負に帯電し、電気浸透流は陽極から陰極へ向かって流れる。このような条件下では、単方向のゾーン電気泳動のみが可能である。したがって試料中に陽イオン成分が含まれていた場合は、陽イオンの移動時間が極端に短くなり、陽イオン成分の分離は難しくなる。つまりガラス製の基材を用いて作製されたデバイスは、このようなガラスキャピラリーにおいて指摘された問題点と共通の課題を有すると予測される。
一方、中性成分は電荷をもたないため、単方向のゾーン電気泳動では分離できない。中性成分の蛋白質の分離には、等電点電気泳動法が有効である。等電点電気泳動法には、キャピラリー内壁の改質が必要である。しかし容易に実施することができ、良好な改質表面を与える表面改質方法は知られていない。
したがって、ガラス表面の帯電状態を制御することができれば、電気泳動の条件を必要に応じて調節できる。
たとえば、分離カラム部の内壁を、ゼータ電位の絶対値が小さくなる材料によって表面処理することにより、分離カラム内部に発生する電気浸透流を遅くして分離効率を上昇させる試みが行われている(特許文献1)。
また、キャピラリー内部に発生する電気浸透流の抑制等のため、キャピラリーの内壁にポリマーを吸着する試みもなされている(特許文献2、3、4)。
しかし、電気泳動媒体が接触する基材表面の帯電条件、疎水条件等の性質が一般的に制御された分離・分析用基材を用いた電気泳動方法は知られていなかった。
また、前記の各種試みは泳動媒体を流動させながら、キャピラリーの内部をコーティングするものであり、予め、所望の性能を有する官能基を、所望の場所にコーティングすることはできない。また、このようなポリマーをコーティングする方法は、ピンホール等の欠陥が生じやすい。さらに、膜質や膜厚の制御が難しい等の問題もある。
さらにこれらは、キャピラリーの内壁にポリマーを吸着あるいは共有結合させガラス基材表面を改質するものである。改質の方法として具体的に、たとえばシランカップリングを介したアクリルアミドの化学修飾によるガラス表面の中性化が考えられる。しかしこの方法はシランカップリング剤として導入された親水性基が安定でなく、中性からアルカリ性溶液中で徐々に改質表面が剥離する問題を生じる可能性があった。
〔非特許文献1〕ジャーナル オブ バイオロジー アンド ケミストリー(T.B.Coolidge,J.Biol.Chem..),127,551,1939
〔非特許文献2〕ジャーナル オブ クロマトグラフィー(F.E.P.Mikkers,F.M.Everaerts,Th.P.E.M.Veerheggen,J.Chromatogr.),169,11,1979
〔非特許文献3〕江刺正喜、マイクロマシン、応用物理、60、1991
〔非特許文献4〕ネーチャー バイオテクノロジー(P.N.Gilles,D.J.Wu,C.B.Foster,P.L.Dillon,S.J.Chanock,Nature Biotec.),17,April,1999
〔非特許文献5〕ジーンチップシステムズ(Gene Chip systems),Affymetrix Inc.3380 Central Expressway Santa Clara,CA 95051
〔非特許文献6〕マイクロメカニックス(A.Heuberger(ed.),Micro−mechanics),Springer−Verlag,Berlin,1989
〔非特許文献7〕古川静二郎、浅野種男、超微細加工入門、オーム社、1989
〔特許文献1〕 特開2001−41929号公報
〔特許文献2〕 特表平5−503989号公報
〔特許文献3〕 特表平7−506432号公報
〔特許文献4〕 特表平9−504375号公報
したがって、本発明は、分離媒体が接触する基材表面の様々な性質を制御しうる分離方法とデバイスの提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、プラズマ重合、化学重合または化学修飾により、種々の性質を有するポリマーで基材表面を被覆することにより、分離媒体が接触する基材表面を種々の条件、たとえば、基材表面の電位、親水性/疎水性を任意に制御することができることを見出した。また、プラズマ重合、表面重合、高分子化合物結合が分離媒体が接触する基材の表面改質技術として有用であることを見出し本発明を完成した。
このうち、プラズマ重合によれば、ピンホールが抑制された極めて均質な高分子化合物膜を得ることができる。またこのようなプラズマ重合膜は、任意の形状の基材表面に形成させることができ、モノマー物質の選択によって、いろいろな性状を有する膜を容易に形成することができる。更に、一度に多くの基材表面に均質な膜を形成することができる。そして均等な品質を維持しつつ、大量のデバイス作成が可能である。
また、基材表面上でモノマーを重合させる表面重合によれば、膜の剥離が抑制された所望の高分子化合物膜を、基材表面上の所望の位置に形成させることができる。
さらに、基材表面に高分子化合物を結合させる高分子化合物結合によれば、基材表面に、膜厚の制御を簡便に行いながら、所望の高分子化合物膜を、基材表面上の所望の位置に形成させることができる。
すなわち本発明は、大量のサンプルを、同時に、しかも小型化された基材上で簡便に分離・分析する方法を提供するものであり、以下の分離方法、そのためのデバイスの製造方法、デバイスに関する。
本発明に係る物質の分離方法は、次の工程を含むことを特徴としている:
a)分離媒体に接する表面が高分子化合物膜で被覆されている基材に保持された分離媒体に、分析すべき物質を加える工程、および
b)分離媒体に分離圧を加える工程。
前記高分子化合物膜は、プラズマ重合により得られるプラズマ重合膜であることが好ましい。
前記プラズマ重合膜は、ヘキサジエン、ヘキサメチルジシロキサン、アセトニトリル、ヘキシルアミンおよびアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールからなる群から選択されるいずれかのモノマーをプラズマ重合して形成されていることが好ましい。
前記高分子化合物膜は、前記基材表面で重合性モノマーを重合して得られる表面重合膜であることが好ましい。
前記表面重合膜は、疎水性スペーサーを介して基材表面に結合し、該表面重合膜は該疎水性スペーサーに炭素−炭素単結合により共有結合していることが好ましい。
前記疎水性スペーサーは、炭素原子数2〜6のアルキル基であることが好ましい。
前記高分子化合物膜は、前記基材上に高分子化合物を結合して得られる高分子結合膜であることが好ましい。
前記高分子結合膜が、ポリスチレン、ポリアリルベンゼン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリアリルアミンおよびポリエチレングリコールからなる群から選択されるいずれかの高分子化合物を基材に共有結合させて形成されていることが好ましい。
前記基材は平面基板であることが好ましい。
前記基材はガラスであることが好ましい。
前記分離の原理は、電気泳動であることが好ましい。
前記電気泳動の原理は、等電点電気泳動であることが好ましい。
前記分離すべき物質が蛋白質であることが好ましい。
本発明に係る分離分析用基材の製造方法は、基材表面に、プラズマ重合によりプラズマ重合膜を形成する工程を含むことを特徴としている。
前記基材表面に、ヘキサジエン、ヘキサメチルジシロキサン、アセトニトリル、ヘキシルアミンおよびアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールからなる群から選択されるいずれかのモノマーをプラズマ重合させてプラズマ重合膜を形成することが好ましい。
本発明に係る分離分析用基材の製造方法は、基材表面で、重合性モノマーを重合して、表面重合膜を形成する工程を含むことを特徴としている。
前記基材表面上に末端に二重結合を有する疎水性官能基が存在し、該疎水性官能基と重合性モノマーとを重合させることが好ましい。
前記疎水性官能基が、末端に二重結合を有する炭素原子数2〜6のアルケニル基であることが好ましい。
本発明に係る分離分析用基材の製造方法は、基材表面に、高分子化合物を結合して、高分子結合膜を形成する工程を含むことを特徴としている。
ポリスチレン、ポリアリルベンゼン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリアリルアミンおよびポリエチレングリコールからなる群から選択されるいずれかの高分子化合物を基材に共有結合させて高分子結合膜を形成することが好ましい。
前記基材は平面基板であることが好ましい。
前記基材はガラスであることが好ましい。
本発明に係る分離分析用基材の表面を改質する方法は、基材表面に、プラズマ重合膜を形成する工程を含むことを特徴としている。
本発明に係る分離分析用基材の表面を改質する方法は、基材表面で、重合性モノマーを重合して、表面重合膜を形成する工程を含むことを特徴としている。
本発明に係る分離分析用基材の表面を改質する方法は、基材表面に、高分子化合物を結合して、高分子結合膜を形成する工程を含むことを特徴としている。
本発明に係る分離分析用基材は、分離媒体が接触する表面が、高分子化合物膜で被覆されている。
前記高分子化合物膜は、プラズマ重合により得られるプラズマ重合膜であることが好ましい。
前記高分子化合物膜が、前記基材表面で重合性モノマーを重合して得られる表面重合膜であることが好ましい。
前記高分子化合物膜が、前記基材上に高分子化合物を結合して得られる高分子結合膜であることが好ましい。
本発明に係る電気泳動分析装置は、次の要素で構成される:
a)電気泳動用媒体が接触する表面を高分子化合物膜で被覆した電気泳動媒体を保持するための基材、および
b)基材に保持された電気泳動用媒体に電圧を印加するための電極。
図1は、実施例に用いたキャピラリー電気泳動チップの構造を示す図。
図2は、アセトニトリル修飾キャピラリーを用い、蛋白質濃度33μg/μLのサンプルを1000Vで泳動したときの、スポットの経時的な移動を示す写真。各スポットは、陽極側(右側)からフィコシアニン、ヘモグロビン、およびシトクロムcに相当する。
図3は、キャピラリー内壁が未修飾(a)またはアクリルアミドにより化学修飾されたチップ(b)を用いて電気泳動を行った場合の、蛋白質の濃縮の様子を示す写真。
図4は、キャピラリー内壁がアセトニトリル(c)、ヘキサジエン(d)またはHMDS(e)によりコーティングされたキャピラリー電気泳動チップを用いて電気泳動を行った場合の、蛋白質の濃縮の様子を示す写真。
図5は、印加電圧を1000V、または2000Vに設定した場合の電気泳動時間を示すグラフ。縦軸は泳動時間、横軸は修飾物質を示す。
図6は、キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)の原理を示す図。
図7は、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)の原理を示す図。
分離方法
本発明は、次の工程を含む物質の分析方法に関する。
a)分離媒体に接する表面が高分子化合物膜で被覆されている基材に保持された分離媒体に分析すべき物質を加える工程、および
b)分離媒体に分離圧を加える工程
前記分離の原理は、電気泳動、圧送などが挙げられ、これらのうちでは電気泳動を好ましく採用できる。
分離媒体としては、電気泳動等における泳動媒体として公知のものを採用でき限定されない。たとえば分離媒体としては、有機溶媒、ポリアクリルアミド、アガロースなどのゲル、緩衝液等の液体が挙げられる。好ましくは電気泳動媒体を用いる。電気泳動媒体としては、たとえば、ゲル、緩衝液などを用いることが好ましい。圧送の場合、用いる分離媒体に特に限定はない。
また、分離圧は、圧力、電圧などが挙げられ、電気泳動の場合には電圧を加える。
本明細書において、基材とは、分離媒体を保持することができるあらゆる形状を有する支持体を言う。具体的には、管状、溝状、あるいは板状の形状を有する支持体を示すことができる。
このうち、本発明では、板状の形状を有する支持体を好ましく用いることができる。このような板状の支持体は、平面基板であってもよい。
平面基板を用いることにより、分離を2次元的に行うことができる。また、同一平面基板上で多種多様な種類の高分子化合物膜を簡便に形成できる。たとえば、平面基板に、所望の位置に所望の高分子化合物膜を結合させるためのマスクを被覆するなどしてプラズマ重合、表面重合または高分子化合物の結合を行うことにより、所望の位置に、各種の高分子化合物膜が被覆された基材を得ることができる。
また、板状の基材であっても、たとえば液体やゲル状の電気泳動媒体を保持することはできる。たとえば、2つの板に挟まれた微細な間隔に、毛管現象によって液体を保持することができる。
これらの支持体の平面的な形状も制限されない。すなわち、直線状、円状、環状、多角形状、あるいは曲線状などの形状とすることができる。
支持体を構成する素材は任意である。本発明においては、分離媒体と接触する表面がプラズマ重合膜、表面重合膜または高分子結合膜によって改質される。そのため、支持体そのものの素材は電気泳動等の分離の結果には直接的な影響を与えない。したがって、たとえば次に示すような最低限の条件を満たす任意の素材を選択することができる。
−電気泳動等の泳動に伴う発熱に耐えなければならないこと、
−一定の物理的な強度を有すること
−絶縁体であること
また基材には、一般に透明な素材が利用される。透明な素材を利用することによって、外部からの光学的な観測が可能となる。具体的には、たとえば、ガラスやプラスチックなどの素材からなる支持体を基材として利用することができる。
たとえばガラス平面を基材として用いるとき、基材は溝を有していても、有していなくてもよいが、溝を有していないことが望ましい。
基材が溝を有しない場合、一方向に分離圧をかけた後、別方向に分離圧をかけることで、2次元的で連続的な分離を、簡便に行うことができる。
一方、溝を設ける場合には、2次元的で連続的な分離を行うことが困難であるが、電気泳動媒体等の分離媒体を簡便に保持することができる。たとえば、電気泳動媒体を保持する溝の幅は、1〜100μmといった微細な空間とすることもできる。溝の断面は、三角形や四角形のような多角形、あるいはU字型や半円状とすることができる。このような微細な構造の溝をガラス等の支持体に設けるには、次のような方法を利用することができる。
・半導体加工技術のウェットエッチング法(フッ酸を使う方法)
・半導体加工技術のドライエッチング法(イオンスパッタリング、リアクティブイオンエッチング(ICPエッチングなど))
・レーザーせん孔
・ダイシングソー
ウエットエッチング、ドライエッチング、あるいはレーザーせん孔の方法を利用すれば、自由な形状を有する微細な構造を容易に設けることができる。たとえば、10〜100μmの幅、ならびに深さを有する溝を、ガラス表面に設ける技術が公知である。たとえば本発明者らは、リアクティブイオンエッチング(reactive ion etching)を利用した微小流路の作製に成功している。基材の素材に応じた異なる種類のエッチングガスを利用して、選択性の良い、またエッチレートの大きいエッチングが可能となっている。
基材表面に形成された溝は、開放系であっても良いし、閉鎖系とすることもできる。溝を形成した基材に、他の平板状の基材を重ねることによって、溝を閉鎖系とすることができる。溝を形成する基材と、この基材に重ねられる第2の基材は、同じ材質でも良いし異なる材質とすることもできる。更に、第2の基材の溝に重なる位置に穴を設けることによって、溝に試料や分離媒体を供給するための連絡流路とすることもできる。あるいは、第2の基材に設けられた穴は、試料や緩衝液を保持するリザーバーとして利用することもできる。
また本発明には、ガラスキャピラリーを基材として用いることもできる。ガラスキャピラリー内にゲルや緩衝液を保持したキャピラリーカラムは、DNAや蛋白質の電気泳動用媒体の保持手段として一般的に用いられている。
本発明は、プラズマ重合膜、表面重合膜または高分子結合膜によって被覆された表面を有する基材を利用する。本発明においては、基材表面の少なくとも分離媒体が接触する表面が、プラズマ重合膜、表面重合膜または高分子結合膜によって被覆される。
プラズマ重合によれば、微細な溝や、キャピラリー内部の狭い表面に対しても、プラズマ重合膜を形成することが可能である。しかもプラズマ重合によれば、得られる膜は極めて均質なものとなる。このため、基材表面のピンホールの発生を抑制し、信頼性の高い分離分析用基材を作成することができる。
表面重合によれば、膜の剥離が抑制された所望の表面重合膜を、基材表面の所望の位置に、形成させることができる。
さらに、基材表面に高分子化合物を結合させる高分子結合膜によれば、基材表面に、膜厚の制御をしながら、所望の高分子化合物膜を、所望の位置に形成させることができる。
これらのプラズマ重合膜、表面重合膜または高分子結合膜で被覆された基材は、公知の方法によって得ることができる。以下、それぞれの膜について説明する。
プラズマ重合膜
具体的には、プラズマ重合は、真空中でモノマー物質をプラズマ励起によって直接支持体表面に成膜を行う技術である。モノマー物質の成分を換えることによって、さまざまな特徴を持つプラズマ重合膜を得ることができる。プラズマ重合では原理的にはどのようなモノマーを用いても、重合が可能である。通常のポリマーを得るためには二重結合の開裂が必要となるのに対して、プラズマ中ではモノマー物質がばらばらになり多くの活性種を介した重合反応が起きるためである。
本発明におけるプラズマ重合膜のためのモノマー物質は、支持体表面に電気泳動分離等の分離に応じた好適な性状を与える重合膜を形成できるものであればよい。たとえば電気泳動分離に応じた好適な性状としては、以下に示すような性状を示すことができる。これらの性状のうち、いずれかの任意の性状を与えることができるモノマー物質は、本発明に利用することができる。
−被分離物質の基材への吸着の抑制
−被分離物質に対する親和性
たとえば、キャピラリー電気泳動に利用されるガラスは、表面に蛋白質を吸着しやすい。蛋白質の基材への吸着はプラズマ重合膜によって制御することができる。たとえば、基材の疎水性度や表面電荷によって制御可能である。
このような条件を満足するプラズマ重合膜を与えるモノマー物質としては、以下のようなものを示すことができる(「プラズマ重合」長田義人・編、角田光雄、中島薫、宮村雅隆、森田慎三、他著、東京化学同人1986年発行)。
アルカン、またはシクロアルカンとして、次の化合物を示すことができる。
メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、2,2,3−トリメチルブタン、オクタン、ノナン、デカン、メタン−d1、メタン−d2、メタン−d3、メタン−d4、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、cis−デカリン、およびtrans−デカリン。
アルケン、アルキン、あるいはシクロアルケンとしては、次の化合物を示すことができる。
エチレン、プロピレン、1−ブテン、(Z)−2−ブテン、(E)−2−ブテン、2−メチルプロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、(E)−2−ヘキセン、(E)−3−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、(E)−2−オクテン、1−デセン、1,3−ブタジエン、(Z)−1,3−ペンタジエン、(E)−1,3−ペンタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ヘキサジエン、アセチレン、プロピン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、3−メチル−1−ブチン、ビニルアセチレン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘプタジエン、およびシクロオクタテトラエン。
アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、あるいはエステルとしては次の化合物を示すことができる。
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、アリルアルコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アクリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキサール、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、4−メチル−3−ペンテン−2−オン、2,3−ブタンジオン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、アクリル酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸s−ブチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、酢酸ビニル、および酢酸アリル。
エーテル、アミン、あるいはその他のモノマー物質として利用可能な化合物を以下に示す。
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、メチルビニルエーテル、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリプロピルアミン、ジブチルアミン、アリルアミン、ホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メタンチオール、エタンチオール、硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジプロピル、二硫化ジメチル、二硫化ジエチル、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、1−ニトロブタン、2−ニトロブタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、ヘキサメチルジシロキサンなどが挙げられる。
また、次のようなハロゲン化物をモノマー物質に利用することができる。
フルオロメタン、ジフルオロメタン、フルオロホルム、テトラフルオロメタン(四フッ化炭素)、フッ化ビニル、1,1−ジフルオロエチレン、(Z)−1,2−ジフルオロエチレン、(E)−1,2−ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、1,1,4,4−テトラフルオロブタジエン、ペルフルオロブタジエン、2−フルオロエタノール、トリフルオロ酢酸、1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノン、ペルフルオロアセトン、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン(四塩化炭素)、クロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、クロロシクロプロパン、1,1−ジクロロシクロプロパン、塩化ビニル、1,1−ジクロロエチレン、(Z)−1,2−ジクロロエチレン、(E)−1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、3−クロロプロペン、1,3−ジクロロプロペン、クロロアセチレン、ジクロロアセチレン、1−クロロプロピン、2−クロロエタノール、クロロアセトアルデヒド、クロロアセトニトリル、ジクロロアセトニトリル、トリクロロアセトニトリル、ブロモメタン、ジブロモメタン、ブロモホルム、テトラブロモメタン(四臭化炭素)、ブロモエタン、1,1−ジブロモエタン、1,2−ジブロモエタン、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、1,3−ジブロモプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、2−ブロモ−2−メチルプロパン、1,4−ジブロモブタン、1−ブロモビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1−ブロモビシクロ[2.2.2]オクタン、臭化ビニル、3−ブロモプロペン、1,3−ジブロモプロペン、ブロモアセチレン、ジブロモアセチレン、1−ブロモプロピン、2−ブロモエタノール、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルム、テトラヨードメタン(四ヨウ化炭素)、ヨードエタン、1−ヨードプロパン、2−ヨードプロパン、1−ヨードブタン、2−ヨードブタン、1−ヨード−2−メチルプロパン、2−ヨード−2−メチルプロパン、1−ヨードペンタン、3−ヨードプロペン、ヨードアセチレン、ジヨードアセチレン、2−ヨードエタノール、1−ブロモ−2−クロロエタン、1,1,1−トリフルオロ−2−ヨードエタン、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ジフルオロエチレン、1−ブロモ−2−クロロアセチレン、1−クロロ−2−ヨードアセチレン、および1−ブロモ−2−ヨードアセチレン。
更に、以下のような芳香族炭化水素がモノマー物質として利用できる。
ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、スチレン、フェニルアセチレン、(E)−1−プロペニルベンゼン、(E)−1−フェニルブタジエン、2−フェニルブタジエン、ビフェニル、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ナフタセン、クリセン、およびペンタセン。
加えて、次のベンゼン誘導体等も本発明のモノマー物質に有用である。
フェノール、ベンズアンデヒド、アセトフェノン、アニソール、ベンジルメチルエーテル、アニリン、ペンジルアミン、チオフェノール、ベンゾニトリル、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、p−ジブロモベンゼン、トリフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、o−フルオロトルエン、m−フルオロトルエン、p−フルオロトルエン、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、o−ブロモトルエン、p−ブロモトルエン、o−ヨードトルエン、m−ヨードトルエン、p−ヨードトルエン、p−クロロフルオロベンゼン、およびo−クロロヨードベンゼン。
また、次のような複素環式化合物がモノマー物質として利用できる。
ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、ピリジンN−オキシド、2−メチルピリジンN−オキシド、3−メチルピリジンN−オキシド、4−メチルピリジンN−オキシド、2,6−ジメチルピリジンN−オキシド、フラン、メチルフラン、テトラヒドロフラン、ピロール、ピロリジン、チオフェン、および2−クロロチオフェン。
その他、トロポンやトロポロンのようなトロポノイド化合物、またテトラメチルシラン、テトラメチルスズ、テトラメチル鉛に代表される有機金属化合物をモノマー物質に用いることもできる。
これらのうちpHが中性付近の条件において基材表面が中性付近の電荷を持つ場合には、アセトニトリル、ヘキサジエンを好ましく用いることができる。
pHが中性付近の条件において基材表面が負の電荷を持つ場合には、ヘキサメチルジシロキサンを好ましく用いることができる。
pHが中性付近の条件において基材表面が正の電荷を持つ場合には、ヘキシルアミンやアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールを好ましく用いることができる。
これらのモノマー物質によってプラズマ重合膜を成膜する条件は公知である。具体的には、プラズマ重合反応の再現性に影響を与える主な要因として、たとえば流速、放電電力、放電時間、そして圧力といった条件が重要であるとされている。プラズマ重合においては、装置やモノマーに合わせて最適な重合条件を設定する必要がある。W/FM(ここでWは放電電力、Fは流速、Mはモノマーの分子量)が同じであれば、膜質はほぼ同じであるとする報告(Yasuda,Plasma Polymerization,Academic Press,New York,1985)がある。
利用するモノマー物質や、最終的に必要なプラズマ重合膜の膜厚等を考慮して、これらの条件を適切に調整することは当業者が日常的に行っていることである。また文献的にも各種のパラメーターがプラズマ重合膜の性質に及ぼす影響は明らかにされている(Surface and Coatings Technology 82:1−15,1996,Polymer Engineering and Science 37/7:1188−1194,1997)。後にポリヌクレオチドの固定化を目的とする場合に有利なモノマー物質として説明するヘキサメチルジシロキサンでプラズマ重合膜を作成するには、たとえば次のような範囲のもとで最適な条件を選択することにより、およそ0を超えて240Å以下のプラズマ重合膜を形成することができる。
流速:0〜50cm/min.
放電電力:0〜300W
圧力:10−6〜10Torr
放電時間0〜5分
(温度:0〜100℃)
あるいは、0を超えて240Å以下のプラズマ重合膜を形成するための、より望ましい条件として、次の条件を示すことができる。
流速:0〜50cm/min.
放電電力:20〜100W
圧力:0.05〜0.6Torr
放電時間30秒〜5分
(温度:室温)
このようなプラズマ重合によれば、モノマー物質の選択によって、種々の官能基を基材表面に付与することができるので、種々の性状を有する膜を容易に形成することができる。たとえば、種々の範囲の表面電荷、疎水性/親水性を有する基材表面を得ることができる。
たとえば、pHにより異なるが、物質の荷電状態を示すゼータ電位を好ましくは−100〜+100mVの範囲にコントロールすることができる。
またたとえば、表面の接触角を、好ましくは1度〜140度の範囲にコントロールすることができる。
このようなプラズマ重合膜の膜厚は、たとえば、好ましくは1〜200nmの範囲にあることが望ましい。
また、このようにして得られるプラズマ重合膜は、極めて均質な膜であり、ピンホールの発生が著しく抑制されている。
またプラズマ重合によれば、プラズマ重合膜を任意の形状の基材表面に形成させることができる。
導入された官能基を利用して、蛋白質と多様な相互作用をさせながら各種方法による分離が可能となる。例えば、アセトニトリルのような窒素原子を持つ有機物質をモノマー物質とすると、表面にアミノ基を持つプラズマ重合膜が合成できることが公知である。このようなプラズマ重合膜コート表面を利用して、静電的な相互作用(膜のプラス電荷と蛋白質のマイナス電荷)を行わせながら蛋白質の電気泳動等を行うことが可能である。
また酢酸などカルボン酸やエステルなどの有機物質をモノマー物質とすると、表面にカルボキシル基を持つプラズマ重合膜が合成される。その結果、膜のマイナス電荷と蛋白質のプラス電荷の間での相互作用による電気泳動分離等が可能になる。
さらにアルカンやシクロアルカン、芳香族炭化水素などをモノマー物質とすると、表面が極めて疎水的なプラズマ重合膜が合成されるので、疎水的相互作用に基づく分離が可能である。すなわち上記3つの例では、それぞれ陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーと類似の作用を有する表面を実現できる。
種々のデバイスの大量生産を可能とする技術として、フォトマスクのパターンを光で一括転写する技術がある(楢岡清威、二瓶公志、フォトエッチングと微細加工、総合出版社、1989)。この技術は、フォトファブリケーションなどと呼ばれることもある。フォトファブリケーションを利用すれば、超LSIに代表されるように数百万個からなる部品が組み立てられたデバイスを、数mm角のシリコン基板上に、一体構造として作製可能である。更にフォトファブリケーションにおいては、複数のフォトマスクのパターンを組み合せて利用することができる。この特徴を利用すれば、付着加工、表面改質加工といった異なる処理工程を組み合せることが可能である。したがってフォトファブリケーションを利用すれば、電気泳動分析用基材等の分離分析用基材を作成することもできる。
フォトファブリケーションに応用される表面改質や薄膜形成のための技術は、ドライプロセスであることが重要である。前記プラズマ重合法はドライプロセスなので、フォトファブリケーションによるデバイス作成に好適である。更にプラズマ重合法を利用すれば、適切なモノマー物質を選択することにより表面に官能基を持つ薄膜を作製することができる。またプラズマ重合膜は、高度な橋かけ構造を持つピンホールフリーな膜であることから流路内部の修飾薄膜として最適である。
表面重合膜
表面重合膜は、前記基材表面上で重合性モノマーを重合して得られる重合膜である。
重合は、基材表面上の、末端に二重結合を有する疎水性官能基に重合性モノマーを重合して実施することが好ましい。
前記疎水性官能基としては、好ましくは炭素原子数2〜6、さらに好ましくは炭素原子数3〜6、特に好ましくは4〜6の末端に二重結合を有するアルケニル基が挙げられる。
このような疎水性官能基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキシニル基などが挙げられる。
このような疎水性官能基と重合性モノマーとを重合させることにより、表面重合膜は、該疎水性官能基をスペーサーとして、炭素−炭素単結合により共有結合することとなる。
したがって、このような表面重合膜が結合した基材は、疎水性のスペーサーにより水分子の接近が抑制されているので、pH等の影響による加水分解による疎水性スペーサー自体の脱離が抑制される。また、疎水性スペーサーと表面重合膜とが炭素−炭素結合により結合しているので、表面重合膜が疎水性スペーサーとの結合位置で剥離することもない。
したがって、分析すべき物質がタンパク質の場合に、水溶性溶媒中で分析を行ってもpHの影響による表面重合膜の剥離がなく、信頼性の高い分析を行うことができる。
また、表面重合法では、重合性モノマーを重合させて表面のポリマー膜を形成させるので、ポリマー自体を結合させる場合と比較して、ポリマーの凝集がないので、基材表面との結合を効率的に行うことができる。
疎水性官能基の基材表面への導入は、トルエン、メタノール、エタノール等の溶媒に、前記末端に二重結合を有する疎水性官能基を誘導する化合物を溶解し、ガラス等の基材を接触させて実施することができる。接触反応は、たとえば、室温(25℃程度)〜100℃程度の温度で、たとえば、1〜24時間程度の時間実施する。
このような前記末端に二重結合を有する疎水性官能基を誘導する化合物は、一方の末端がガラス表面のシラノール基と反応しうるものであることが好ましい。このような化合物としては、たとえば、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、トリエトキシブテニルシラン、トリエトキシペンテニルシラン、トリエトキシヘキシルシランなどのアルケニルシランが挙げられる。
これらのうちでは、より好ましくはトリエトキシアリルシラン、トリエトキシブテニルシラン、トリエトキシペンテニルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、特に好ましくはトリエトキシブテニルシラン、トリエトキシペンテニルシラン、トリエトキシヘキシルシランを用いることが望ましい。これらのアルケニルシランは、市販品又は公知の方法により製造することができる。たとえば、溶媒の存在下、所望のアルケニル基を含有するグリニャール試薬又はアルキルリチウム化合物と、クロロシラン等のハロゲン化シラン又はアルコキシシランとを反応させて、容易に合成することができる。
前記重合性モノマーとしては、ビニル基、アリル基、ジエンなどを有するものであればよく、限定されない。
このような重合性モノマーとしては、ノニオン性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマーなどが挙げられる。
ノニオン性(疎水性、親水性など)表面を作るノニオン性モノマーとしては、たとえば、
アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド類;
アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、酢酸アリル、アセト酢酸アリル、トリメチル酢酸ビニル、ビニル蟻酸、ヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、オクタン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ピバル酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ヘキサヒドロフタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチル、安息香酸ビニル、p−ビニル安息香酸、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、クロトン酸ビニル、デカン酸ビニル、けい皮酸ビニル、アリルブチレート安息香酸アリル、n−酪酸アリル、n−カプリン酸アリル、n−カプロン酸アリル、エナント酸アリル、ヘプタン酸アリル、イソフタル酸アリル、イソチオシアン酸アリル、イソ吉草酸アリル、n−吉草酸アリルなどのエステル類;
ビニルメチルケトンなどのケトン類;
ビニルブチルエーテル、アリルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルブチルエーテル、ビニルエチルエーテル、n−デカン酸アリルなどのエーテル類;
ビニルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;
塩化ビニル、塩化アリル、塩化メタクリロイル、クロロ酢酸ビニル、塩化アクリロイル、臭化アリル、よう化アリル、クロロ酢酸アリル、クロロぎ酸アリル、アリルクロロホルメートなどのハロゲン化物;
スチレン、アリルベンゼン、4−メタアクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ビニルトルエン、アリルベンジルエーテル、4−アリル−2,6−ジメトキシフェノール、アリルアリソール、4−アリル−1,2−ジメトキシベンゼンなどのベンゼン環を有する芳香族化合物;
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、アリルクロロジメチルシラン、アリルクロロメチルジメチルシランなどのシラン類;
メタクリロニトリル、ビニルアセトニトリル、アクリロニトリル、シアノ酢酸アリル、シアン化アリルなどのシアン類;
2−アリルシクロヘキサノン、1−アリルシクロヘキサノール、アリルシクロペンタンなどのシクロアルカン誘導体;
その他、ビニルアントラセン、ビニルスルホン、アリルアルコールプロポキシレート、アリル−L−システイン、アリルエチレン、アリルグリシジルエーテル、アリルトリフルオロ酢酸、アリルシクロペンタジエニルニッケル、ジエチルホスホノ酢酸アリル、アリルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィンオキシド、アリルジスルフィドなどが挙げられる。
これらのうち、親水性ノニオン性表面として、アクリルアミドやビニルアルコール、疎水性ノニオン性表面として、スチレンやアリルベンゼンなどを好ましく用いることができる。
アニオン性表面を作るアニオン性モノマーとしては、たとえば、
アクリル酸、メタクリル酸、モノ−2−(アクリロイルオキシ)エチルスクシネートなどのカルボキシル基含有化合物;
アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸基含有化合物などが挙げられる。
これらのうち、強アニオン性として、ビニルスルホン酸やアリルスルホン酸、弱アニオン性としてアクリル酸やメタクリル酸などを好ましく用いることができる。
カチオン性表面を作るカチオン性モノマーとしては、たとえば、
アリルアミン、3−アクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミン、アリルシクロヘキシルアミン、3−メタクリルアミド−N−ジメチルプロピルアミンなどの第一級アミン;
メチルアリルアミンなどの第二級アミン;
N−アリルジエチルアミン、N−アリルジメチルアミンなどの第三級アミン;
アリルトリエチルアンモニウム、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、ビニルトリメチルアンモニウムブロミド、3−(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムなどの第四級アンモニウムが挙げられる。
また、上記ノニオン性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマーの他、たとえば、複素環式化合物を側鎖に有する、アリルヒドラジン、2−ビニルピラジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、1−アリルベンゾトリアゾール、アリル−1−ベンゾトリアゾールカーボネートなどを用いることもできる。
これらのうち、強カチオン性としてジアリルジメチルアンモニウム塩、弱カチオン性として、アリルアミンなどを好ましく用いることができる。
このような重合性モノマーは、1種単独で、または複数を併用して用いることができる。
基材表面上での前記重合性モノマーのラジカル重合は、公知の方法を採用することができる。たとえば、溶媒の存在下又は非存在下で、必要に応じ重合開始剤を添加して、重合性モノマーを重合性官能基が導入された基材表面で重合させて行うことができる。
溶媒としては、重合性モノマーが溶解するものであればよく、限定されない。たとえば、たとえばTHF、メタノール、DMF、DMSOなどを用いることができる。
重合開始剤としては、たとえば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などを用いることができる。また、このようなアゾ化合物の他に、過酸化物、有機金属化合物などを用いることもできる。
上記THF等の溶媒に溶解しない重合性モノマーを用いる場合は、たとえば、超純水を溶媒として用い、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸などの重合開始剤を用いて重合を行うことができる。
重合は、重合性モノマーの種類により異なり限定されないが、通常、たとえば、室温〜100℃程度の温度範囲で、1〜72時間程度の時間で実施することができる。
このようにして得られる表面重合膜を、用いる重合性モノマーの種類あるいは複数のポリマーの組み合わせにより、種々の範囲の電荷、疎水性/親水性の表面とさせることができる。
たとえば、pHにより異なるが、物質の荷電状態を示すゼータ電位を好ましくは−100〜+100mVの範囲にコントロールすることができる。
またたとえば、表面の接触角を、好ましくは1〜140度の範囲にコントロールすることができる。
表面重合膜においては、ピンホールなどのモノマー未修飾部分が発生する場合がある。このため、さらに、重合性モノマーまたはポリマーを結合させることができる。
本発明の表面重合膜では、さらに、表面重合膜のポリマー側鎖中の官能基に、別のポリマーまたはモノマーを反応させてもよい。
導入された官能基を利用して、蛋白質と多様な相互作用をさせながら電気泳動による分離が可能となる。例えば、前記カチオン性モノマーを重合性モノマーとして用いることにより、表面にカチオン性官能基を有する表面重合膜が合成できる。このような表面重合膜が被覆された表面を利用して、静電的な相互作用(膜のプラス電荷と蛋白質のマイナス電荷)を行わせながら蛋白質の電気泳動を行うことが可能である。
また、アニオン性モノマーを重合性モノマーとして用いることにより、表面にアニオン性官能基を有する表面重合膜が合成される。その結果、膜のマイナス電荷と蛋白質のプラス電荷の間での相互作用による電気泳動分離が可能になる。
さらにノニオン性の重合性モノマーを適宜使い分けることにより、表面が極めて疎水的あるいは親水的な表面重合膜が合成されるので、疎水的相互作用あるいは親水的相互作用に基づく分離が可能である。
したがって、すなわち上記3つの例では、それぞれ陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水/親水クロマトグラフィーと類似の作用を有する表面を実現できる。
高分子結合膜
高分子結合膜は、基材表面に反応性官能基を導入し、該官能性反応基にポリマーを共有結合させて得られるものである。
高分子化合物を結合させる部位となる反応性官能基としては、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基などが挙げられる。これらのうちでは、アミノ基、エポキシ基を好ましく用いることができる。
このような反応性官能基を有する結合基は、さらに、疎水性のスペーサーを介して基材表面に結合していることが好ましい。
疎水性スペーサーとしては、好ましくは炭素原子数2〜6、さらに好ましくは炭素原子数3〜6、特に好ましくは炭素原子数4〜6のアルキル基を含むことが望ましい。
このような疎水性スペーサーを介した反応性官能基に、高分子化合物を結合した基材は、疎水性のスペーサーにより水分子の接近が抑制されているので、pH等の影響による加水分解による高分子結合膜の剥離が抑制される。
前記スペーサーを有する反応性官能基の基材表面への導入は、基材の種類により異なるが、たとえば、基材がガラスの場合シランカップリング法により行うことができ、基材が金属であればセルフアセンブルモノレイヤー法により行うことができる。
シランカップリング法を用いる場合は、たとえば、トルエン、メタノール、水等の溶媒に、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、アミノペンチルトリエトキシシラン、アミノヘキシルトリエトキシシランなどのアミノアルキル系シランカップリング剤、あるいは、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシペンチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシヘキシルトリエトキシシランなどのエポキシアルキル系シランカップリング剤を溶解し、ガラス等の基材を接触させて実施することができる。これらは、市販品又は公知の方法により製造することができる。たとえば、アミノアルキル系シランカップリング剤あるいはエポキシアルキル系シランカップリング剤は、溶媒の存在下、所望のアルキル基および官能基を含有するグリニャール試薬又はアルキルリチウム化合物と、クロロシラン等のハロゲン化シラン又はアルコキシシランとを反応させて、容易に合成することができる。
接触反応は、たとえば、室温(25℃程度)〜100℃程度の温度で、たとえば、1〜24時間程度の時間実施する。
セルファセンブルモノレイヤー法を用いる場合は、たとえばスパッタリングなどによって基材表面に金などの金属薄膜を形成し、その金属薄膜表面に官能基とチオール基を有するスペーサーを導入し、さらにポリマー(あるいは重合開始剤を官能基と反応させ、モノマーを用いて重合することも可能である。)を反応させ、高分子結合膜を形成することができる。また、チオール基を有するポリマーを先に調製しておき、これを金属表面に修飾させて高分子膜を形成することができる。
金属としては、金、銀、銅などが挙げられる。スペーサーとしては、アミノ基を有するアミノエタンチオール、カルボキシル基を有するチオクト酸などが挙げられる。
基材上にスペーサーあるいは、チオール基を修飾したポリマーを導入するための溶媒はDMSO、水などの溶媒中にスペーサーを溶解し、金属薄膜に接触させて実施することができる。
接触反応は、例えば室温〜100℃程度の温度で、例えば1〜24時間程度の時間実施する。
前記ポリマーとしては、前記表面重合において用いる重合性モノマーを、あらかじめ重合して得られるポリマーが挙げられる。これらのうちでは、好ましくは、ポリスチレン、ポリアリルベンゼン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリアリルアミン、ポリエチレングリコールなどを好ましく用いることができる。
これらのうち、ノニオン性表面として、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコールをさらに好ましく用いることができる。
強アニオン性表面として、ポリアクリル酸などをさらに好ましく用いることができる。
強カチオン性表面として、ポリアリルアミンをさらに好ましく用いることができる。
このようなポリマーは、1種単独で、または複数を組み合わせて用いることができる。
このようなポリマーの重量平均分子量としては、たとえば、好ましくは5000〜500000、さらに好ましくは10000〜250000の範囲にあることが望ましい。
ポリマーを基材に結合させて得られる高分子結合膜においては、ピンホールのような反応性官能基がポリマーと結合していないポリマー未修飾部分が発生する場合がある。このため、さらに、ポリマーを結合させることができる。
このような高分子結合膜の製造は公知の方法が採用でき限定されない。たとえば、前記ポリマーを溶媒に溶解し、前記表面に反応性官能基を導入した基材を溶液に接触させて製造することができる。
溶媒としては、ポリマーを溶解するものであれば限定されないが、たとえば、DMSO(ジメチルスルホキシド)、HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)緩衝液、などが挙げられる。
また、結合反応には、必要に応じ活性化剤を用いることもできる。たとえば、アミノ基が導入された基材に、ポリアクリル酸を結合させる場合、HEPESにポリアクリル酸を溶解させた後、N−ヒドロキシスクシンイミド、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを添加して結合させる。
このようにして得られる高分子結合膜は、ポリマーが未修飾部分を有する場合があるが、該ポリマー未修飾部分に対し、別のポリマーを結合させることもできる。さらに、結合したポリマー側鎖中の官能基に、別のポリマーまたはモノマーを反応させることもできる。
このようにポリマーの種類、あるいは複数のポリマーの組み合わせによって種々の範囲の電荷、疎水性/親水性の表面を有する高分子結合膜を得ることができる。
たとえば、pHにより異なるが、物質の荷電状態を示すゼータ電位を好ましくは−100〜+100mVの範囲にコントロールすることができる。
またたとえば、表面の接触角を、好ましくは1〜140度の範囲にコントロールすることができる。
このような高分子結合膜は、予め結合すべきポリマーを調製することにより、膜厚を容易に制御することができる。
導入された官能基を利用して、蛋白質と多様な相互作用をさせながら電気泳動等による分離が可能となる。例えば、前記カチオン性モノマーに由来するポリマーを用いることにより、表面にカチオン性官能基を有する高分子結合膜が合成できる。このような高分子結合膜が被覆された表面を利用して、静電的な相互作用(膜のプラス電荷と蛋白質のマイナス電荷)を行わせながら蛋白質の電気泳動等を行うことが可能である。
アニオン性モノマーに由来するポリマーを用いることにより、表面にアニオン性官能基を有する高分子結合膜を合成することができる。その結果、アミノ基と同様の静電的な相互作用であり、かつ膜のマイナス電荷と蛋白質のプラス電荷の間での相互作用による電気泳動分離等が可能になる。
ノニオン性の重合性モノマーに由来するポリマーを適宜使い分けることにより表面が極めて疎水的あるいは親水的な高分子結合膜を合成できるので、疎水的相互作用あるいは親水的相互作用に基づく分離が可能である。
また、アニオン性官能基を有するポリマーを修飾した後、該アニオン性官能基に、たとえば、疎水性(または親水性)の官能基を有するノニオン性ポリマーまたはノニオン性モノマーを結合させることにより、アニオン性と疎水性(または親水性)の性質を併せ持つ基材表面を形成することができる。また、ノニオン性ポリマー又はモノマーの修飾率を変えれば、疎水性(または親水性)のバランスをコントロールすることができる。
分離方法
本発明の分離圧としては、用いる分離媒体などにより異なり特に限定されず、電気泳動、圧送などを採用することができる。
また、前記電気泳動方法の分離原理は限定されない。前記表面に高分子化合物膜が被覆された基材を用いる電気泳動分離は、分離媒体の条件によって、様々な性状に基づく分離を可能とする。電気泳動分離の分離条件として、pH勾配、分子篩(ふるい)、分離媒体中で接触する官能基との相互作用等を示すことができる。pH勾配を備えた分離媒体中における電気泳動を蛋白質に利用すれば、等電点電気泳動となる。またポリアクリルアミドゲルのような分子篩効果を持つ媒体中で電気泳動を行うとき、SDS、尿素、あるいはグアニジンのような蛋白質変性剤を共存させれば、変性条件下での分子篩電気泳動が成立する。あるいは、変性剤を用いなければ、ネイティブな条件下での電気泳動となる。
同様に分子篩(ふるい)に基づいて核酸を泳動するとき、核酸は長さに基づいて分離される。PCR−SSCPのように非変性条件と変性条件下で同じ核酸を電気泳動分離して、両者の結果を比較して立体構造の違いを明らかにする分析方法も公知である。
更に、さまざまな官能基を備えた分離媒体の利用も可能である。具体的には、静電的相互作用、水素結合、疎水結合、あるいは任意の組み合わせの親和性物質などを示すことができる。親和性物質としては、抗原−抗体、相補的な塩基配列からなる核酸のハイブリダイゼーション、アビジン−ビオチンや、糖−レクチンのような親和性物質の組み合わせ等がある。
本発明に好適な電気泳動の原理の一つに、等電点電気泳動を示すことができる。本発明に基づいてキャピラリー等電点電気泳動(CIEF)を行うためには、内面処理(コーティング)を施して電気浸透流を生じないキャピラリーを作製する。
本発明において、CIEFに有用な好ましいモノマー物質には、例えば、プラズマ重合膜の場合、ヘキサジエン、ヘキサメチルジシロキサン、アセトニトリル、ヘキシルアミン、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタールを示すことができる。
表面重合膜の場合、スチレン、アクリルアミド、ビニルスルホン酸、アクリル酸、ジアリルジメチルアンモニウム塩、アリルアミンが挙げられる。
高分子結合膜の場合、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアリルアミンが挙げられる。
以下は、プラズマ重合膜を用いる例である。陽極液と、陰極液を両端に導入し、両端に電圧を印加する。陽極液には、電解質の中で最も酸性の強いものよりも低いpHを与える酸性の溶液が用いられる。一方、陰極液には、最も塩基性の強いものよりも高いpHを与えるアルカリ性の溶液を利用する。それぞれの両性電解質は等電点の位置まで移動した後停止する。蛋白質成分は、キャピラリー内に形成されたpH勾配上の等電点の位置で濃縮され、細いゾーンとして観測される(図6)。
キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)では、1種類の電解質溶液をキャピラリー内に導入することにより、キャピラリー内壁および内壁に接する電解質溶液の間に電気二重層が形成される。電圧がかけられると電解質溶液が溶媒を伴って移動し、電気浸透流が生じる。電気浸透流は分離された成分イオンを移動させる駆動力となる。試料成分はそれぞれの電荷とサイズに応じた静電気力を受けて対極へ引き寄せられ、電荷とサイズの違いが移動度の違いとなり成分が分離される(図7)。
CIEFはCZEとは異なり、電気泳動現象は発生させるが、電気浸透流の発生は極力抑制するべきである。CIEFにおいてはキャピラリーの内面修飾法、キャピラリー内径等のサイズ、ランニングバッファ溶液としての両性電解質の組成が電気浸透現象の効果に大きく影響を与え、結果としてCIEFの分離能に大きな影響を与える。
分離分析用基材の製造方法
本発明は、基材表面にプラズマ重合膜を形成する工程を含む、分離分析用基材の製造方法に関する。基材をプラズマ重合膜で被覆する方法は先に述べたとおりである。基材の分離用媒体が接触する表面をプラズマ重合膜で被覆することによって、先に述べた分離方法に好適な基材とすることができる。分離方法としては電気泳動が好ましい。
加えて本発明は、基材表面上で重合性モノマーを重合して、表面重合膜を形成する工程を含む、分離分析用基材の製造方法に関する。基材を表面重合膜で被覆する方法は先に述べたとおりである。基材の分離用媒体が接触する表面を表面重合膜で被覆することによって、先に述べた分離方法に好適な基材とすることができる。分離の方法としては電気泳動が好ましい。
また本発明は、基材表面に、高分子化合物を結合して、高分子結合膜を形成する工程を含む、分離分析用基材の製造方法に関する。基材を高分子結合膜で被覆する方法は先に述べたとおりである。基材の分離用媒体が接触する表面を高分子結合膜で被覆することによって、先に述べた分離方法に好適な基材とすることができる。分離の方法としては電気泳動が好ましい。
分離分析用基材の表面を改質する方法
本発明は、基材表面にプラズマ重合膜を形成する工程を含む、分離分析用基材の表面を改質する方法に関する。プラズマ重合膜は、表面の改質方法として優れた特徴を有する。すなわち、プラズマ重合膜は、どんな複雑な表面構造に対しても、容易に均質な膜を形成することができる。また、モノマー物質の選択によって、基材表面に任意の性状を与えることができる。したがって、たとえば、基材表面が分離に干渉する可能性がある場合には、その表面をプラズマ重合膜で被覆することによって、干渉を防ぐことができる。あるいは本発明に基づいて、基材表面に、分離に必要な性状を積極的に付与することもできる。分離の方法としては電気泳動が好ましい。
更に本発明は、基材表面で、重合性モノマーを重合して、表面重合膜を形成する工程を含む、分離分析用基材の表面を改質する方法に関する。表面重合膜は、表面の改質方法として優れた特徴を有する。本発明に基づいて、基材表面に、分離に必要な性状を積極的に付与することができる。また、表面重合膜は、膜の剥離が抑制され、基材表面の所望の位置に、形成させることができる。分離の方法としては電気泳動が好ましい。
更に本発明は、基材表面に、高分子化合物を結合して得られる高分子結合膜を形成する工程を含む、分離分析用基材の表面を改質する方法に関する。この方法による高分子結合膜は、表面の改質方法として優れた特徴を有する。すなわち、本発明に基づいて、基材表面に、分離に必要な性状を積極的に付与することができる。また、高分子結合膜は、基材表面に、膜厚の制御をしながら、所望の性能を有する高分子化合物膜を、所望の位置に形成させることができる。分離の方法としては電気泳動が好ましい。
分離分析用基材
本発明はまた、分離用媒体が接触する表面を高分子化合物膜で被覆した分離分析用基材に関する。
より具体的には、高分子化合物膜としては、プラズマ重合により得られるプラズマ重合膜、基材表面で重合性モノマーを重合して得られる表面重合膜、基材上に高分子化合物を結合して得られる高分子結合膜が挙げられる。既に述べたように、分離媒体が接触する表面をこれらの高分子化合物膜で被覆した基材は、本発明による分離方法に用いることができる。分離の方法としては電気泳動が好ましい。
電気泳動分析装置
更に本発明は、次の要素で構成される電気泳動分析装置に関する。
a)電気泳動用媒体が接触する表面を高分子化合物膜で被覆した電気泳動媒体を保持するための基材、および
b)基材に保持された電気泳動用媒体に電圧を印加するための電極
高分子化合物膜としては、プラズマ重合により得られるプラズマ重合膜、基材表面で重合性モノマーを重合して得られる表面重合膜、基材上に高分子化合物を結合して得られる高分子結合膜が挙げられる。既に述べたように、分離媒体が接触する表面をこれらの高分子化合物膜で被覆した基材を用いる電気泳動装置は、本発明による電気泳動方法に用いることができる。
本特許出願は、国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成11年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「蛋白質発現・相互作用解析技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)である。
1.装置および材料
[プラズマ重合装置]
実施例において、プラズマ重合膜の重合方式として、RF電源、外部電極方式によるAfter glow方式を利用した。サムコ社製のプラズマ基礎研究装置BP−1をベースに種々のユニットを追加して、流量、圧力、およびパワーマッチングを自動で制御可能な装置を作製した。装置の構成を以下に示す。
反応器(チャンバー):パイレックス(登録商標)製210mmφ、
試料ステージ:チャンバー下部に、SUS304製、ヒーター加熱制御ステージ設置
排気系:ファイファー社製ターボ分子ポンプ+エドワーズ社製ロータリーポンプ
RF電源:サムコ社製13.56MHz、300W、水晶発振
マッチング:サムコ社製オートマッチング方式
圧力コントロール:MKS社製バラトロン真空計からの圧力をVAT社製オートマチックプレッシャーコントロール(APC)バルブユニットで自動制御
ガス導入系:試料モノマー、アルゴン、酸素ラインをSTEC社製電磁弁とマスフローコントロール(MFC)ユニットで自動制御
[ダイシングソー]
キャピラリー構造作製のため、DISCO社製オートマチックダイシングソー、DAD321を利用した。このダイシングソーにはX,Yステージが搭載され、基材となるガラスの位置を手作業で変更することなく、直行するキャピラリーを作製可能である。また、深さ方向(Z方向)のブレードの降下位置と速度が任意にコントロール可能であり、任意の深さのキャピラリー構造物が作製可能である。XYZ方向の加工精度はマイクロメートルオーダーである。上記の一連の操作はすべてプログラミング(レシピ)による内蔵コンピュータ制御で行った。
[表面段差測定装置]
ガラス基材上に作製したキャピラリーの大きさを測定するため、Veeco社製表面段差測定装置、DEKTAK3STを利用した。この装置は測定距離とスピードがコンピュータで制御され、得られた結果はデジタル化される。得られたデータは、断面曲線、あらさ曲線、うねり曲線等としてモニタ画面上に表示することができる。必要に応じて内蔵ソフトウエアにより深さ、高さ、傾斜等様々な解析を行った。最後に得られたデータはプリンター上に印字し、同時にディスクにも記録した。
[キャピラリー電気泳動測定システム]
作製したキャピラリー電気泳動チップによる電気泳動実験を行うためのシステムは、電場を印加するための電源として、BIOCRAFT社製高電圧電源BP−3、またはグラスマン ジャパン ハイルボルテージ株式会社(横浜市)の電源PS/FC40R03CTZ10を利用した。BP−3を利用してキャピラリー電気泳動チップに0から1000Vまでの電源を印加することが可能である。PS/FC40R03CTZ10は、2000Vまでの電源を供給する。また必要に応じてSANSYO社製クールプレート、SA−800を利用した。このプレートはペルチェ素子により上部アルミナヒートブロックを4℃まで冷却する。このプレートによって、電場印加中にキャピラリー電気泳動チップから発生する熱を冷却することができる。
[実験材料]
基材は、テンパックスガラスを利用した。また、シリコンウエハーは信越シリコン社製シリコンウエハー(P型、100面、直径100mm、厚さ525mm、抵抗率10〜20Ω・cm)を使用した。またガラス同士の接合にはアーデル社製、UV光硬化性接着剤、ベネフィックスPCを使用した。その他の試薬はEL級、もしくは特級品以上を使用した。
2.実験方法
[キャピラリー電気泳動チップの作製]
実験に用いたデバイスは、図1に示すように下部のガラス基材と上部のガラスカバーが重ね合わされた構造をしている。下部ガラス基材上にはダイシングソーにより溝が掘られている。また上部ガラスカバーは貫通穴を有している。2枚のガラスを重ね合わせると、キャピラリー両端には、貫通穴からなる溶液貯め(リザーバ)が形成される。また、上部ガラスカバーおよび下部のガラス基材表面には種々の性質を持つ薄膜が形成されている。ガラス基材とガラスカバーは光硬化性樹脂により重ね合わされ、キャピラリーを形成した。
ガラス基材およびガラスカバーの大きさは、それぞれ長さ80mm、幅10mm、厚み1.1mmであり、キャピラリーは、長さ70mm、幅0.9mm、深さ100μmである。上部ガラスカバーに作製された貫通穴は、直径4mm、貫通深さ1.1mmである。
以下にデバイス作製手順を示す。
洗浄したガラス板を用意し、300μm厚のダイシングソーブレード(DQAG0634、ハードレジン、ダイヤモンドブレード)をダイシングソーのスピンドルに装着した。2.0mm/min.の低速条件下でダイシングした。それぞれのガラス板表面を後述するプラズマ重合法や化学修飾法で処理した。最後に、キャピラリー構造を形成するため貫通穴が作製されたガラスカバーと溝が形成されたパイレックス(登録商標)製のガラス基材とを張り合わせ、隙間に光硬化性樹脂を流し込み、完全に硬化するまでUV照射した。
比較例1
[キャピラリー内部の化学修飾処理]
シランカップリング溶液(80μL[3−(methacrloyloxy)propyl]trimethoxysilane+20mLHO)に、酢酸を加えpH3.5に調整した。続けてデバイスに接続されたチューブを介してカップリング溶液をキャピラリー内に導入し、室温で1時間反応した。反応完了後、蒸留水を流しキャピラリー内を洗浄した。
次に脱気したアクリルアミド3%(w/v)溶液(1μL TEMED+1mg/mL potassium persulphateを含む3−(trimethylsilyl)propyl methacrylate溶液)を調製した。続けてデバイスに接続されたチューブを介してアクリルアミド溶液をキャピラリー内に導入し、室温で30分反応した。反応完了後、未反応のアクリルアミドを排出し、蒸留水で洗浄した。最後に35℃で乾燥し、キャピラリー内部表面修飾を完了させた。
[プラズマ重合膜作製]
本実施例では内壁修飾化のため、電荷および疎水性を変化させた膜を幾つか作製した。作製した膜は、ヘキサジエン、ヘキサメチルジシロキサン、アセトニトリルをモノマー物質とし、それぞれ異なる性質を持つ膜を作製した。また、膜厚はすべて100nmとした。
基材をチャンバー内に入れ、真空度を3×10−5Torrにした。モノマー物質をチャンバー内に満たし、所定の圧力、流量に調整した。一定時間放電を行い、プラズマ重合膜を成膜、その後基材を取り出した。各モノマー物質のプラズマ重合膜の成膜条件と、膜質、膜厚を表1に示した。
Figure 0004480081
3.結果及び考察
[作製したキャピラリー電気泳動チップを利用した蛋白質の分離]
上記で示したキャピラリー電気泳動チップおよび内壁修飾法を利用して蛋白質を分離した。分離法は等電点電気泳動法(CIEF)を利用した。またサンプルには、ファルマシア製のIEFマーカー蛋白質を利用した。このサンプルには3種類の肉眼で判別できる(visible)蛋白質が含まれているため、電気泳動後のバンドを肉眼で確認することができる。各蛋白質の等電点と色を以下に示す。
フィコシアニン(pI=4.45)青いバンド
ヘモグロビン(pI=7.0) 赤茶色のバンド
シトクロムc(pI=9.6) 赤いバンド
実験手順は、次のとおりである。まずサンプルをキャピラリー全体に満たした。サンプル中の蛋白質濃度は、表2に示すとおり、20μg/μL、33μg/μL、および62μg/μLの3とおりとした。次に陰極液として25μLの0.1M NaOHを陰極側リザーバへ、また陽極液として25μLの0.2M HPOを陽極側リザーバに注入した。キャピラリーの両端に電圧を印加して、等電点電気泳動を行った。電気泳動による蛋白質の濃縮(focusing)の様子を図2〜図4に示す。
更に、未修飾、従来法であるアクリルアミド修飾法、そしてプラズマ重合法を用いた本発明によるキャピラリー電気泳動チップで電気泳動による泳動完了時間を比較した。印加電圧は、1000V、または2000Vとした。
図5に示すように印加電圧が1000V、2000Vのいずれの場合にも、5種類のキャピラリーの中でアセトニトリル修飾キャピラリーで最も速く電気泳動が終了した。たとえば図2に示すように、アセトニトリル修飾キャピラリーにおいては、11分でほぼ泳動を完了できている。2000V以上の印加電圧を加えた場合には、蛋白質のアグリゲーション(凝集)が見られることもあった。したがって本実施例においては、アセトニトリル修飾キャピラリーを使って印加電圧1000Vという条件が最適と考えられた。
更に、表2に各キャピラリーによるサンプルの泳動結果を示した。表2は、各キャピラリーにおける印加電圧1000Vの場合の、各蛋白質の泳動位置(Band position)、およびバンド幅(Band width)を示す(単位はいずれもmm)。泳動位置は電極の位置を0として電極からバンドの中心までの距離を計測した結果である。
この実験の条件では、アセトニトリル修飾キャピラリーの泳動結果が泳動誤差が小さく、かつ再現性にも優れていた。したがって、アセトニトリル修飾キャピラリーは、本発明による蛋白質の等電点電気泳動用基材として好ましい素材である。
Figure 0004480081
[プラズマ重合膜の作成]
前記と同様のプラズマ重合装置、実験材料を用いて、ガラス基板表面上に疎水性を変化させた膜を作成した。膜の作成には、ヘキサメチルジシロキサン、アセトニトリル、スチレン、2,3−エポキシ−1−プロパノール、ヘキシルアミン、酢酸、ジメチルサルフォキシデ、テトラヒドロフラン、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、アクリル酸をモノマー物質として用いた。
基板をチャンバー内に入れ、真空度を5×10−6Torrにした。各モノマー物質をそれぞれ、表3に示す真空度で満たした。放出電力は全て200Wとした。一定時間放電を行い、プラズマ重合膜を成膜し、その後基板を取り出した。得られたプラズマ重合膜の屈折率、膜厚、接触角を測定した。結果を表3に示す。
屈折率および膜厚は、エリプソメーター(EMS−1T(商品名)、ULVAC製)を用いて測定した。
接触角は、接触角測定装置(CA−X(商品名)、協和界面科学社製)を用いて測定した。測定には、超純水を用いた。
Figure 0004480081
得られたプラズマ重合膜のうち、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキシルアミンに由来する接触角の大きいプラズマ重合膜、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタールに由来する接触角の小さいプラズマ重合膜、およびプラズマ重合を行わなかったガラス基板に関し、表面のゼータ電位を測定した。
ゼータ電位は溶媒のpHにより変化するので、表4に示すようなpH1.7〜11の範囲の各種の緩衝液を用いてゼータ電位の測定を行った。結果を表5に示す。
ゼータ電位の測定には、ゼータ電位測定装置(ELS−800(商品名)、大塚電子社製)を用いた。
Figure 0004480081
Figure 0004480081
以上の結果から、プラズマ重合膜の性質として疎水度とゼータ電位に着目した場合、これらのプラズマ重合膜は、下記のような複数の性質を兼ね備えていることが分かる。
アミノアセトアルデヒドジメチルアセタールに由来するプラズマ重合膜は、正のゼータ電位を有しかつ親水性が高い。
ヘキシルアミンに由来するプラズマ重合膜は、正のゼータ電位を有しかつ疎水性が高い。
ヘキサメチルジシロキサンに由来するプラズマ重合膜は、負のゼータ電位を有しかつ疎水性が高い。
またこれらの結果から、プラズマ重合膜を疎水性とするためには、モノマーにベンゼン誘導体や炭素を多く含むものを用いるとよく、親水性にするには酸素を多く含むものを用いることが有効であることがわかった。またゼータ電位を正とするにはアミンを含むモノマーを用い、ゼータ電位を負とするには水酸基やカルボン酸などを多く含むものを用いることが有効であると示唆される。
[表面重合膜の作成]
1.疎水性官能基の導入
トルエン中に、3mMの濃度となるように、疎水性官能基を誘導する化合物としてトリエトキシビニルシラン(Silicon Chemicals LC−2300、信越化学工業社製)を溶解した。この中に洗浄したガラス基板を浸漬し、80℃で8時間反応させた。反応後、ガラス基板をトルエンさらにエタノールで洗浄し、真空乾燥することでビニル基導入基板を得た。
2.表面重合
三角フラスコ中に重合溶媒として35mLのテトラヒドロフラン(THF)を装入し、ここにビニル基導入基板を浸漬するとともに、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を50μmol添加した。三角フラスコをゴム栓で密閉後、窒素置換し、55℃で1時間振とうした。15mLのTHF中に10mmolの各種モノマー(スチレン、アクリルアミド、スチレン+アクリルアミド)をそれぞれ溶解し、溶液に空気が入らないようにシリンジを用いて上記反応溶液中に該モノマー溶液を注入し、24時間重合反応させた。反応後、THFさらにエタノールで基板を洗浄し、表面重合膜基板を得た。
得られた表面重合膜の接触角およびゼータ電位を実施例2と同様にして測定した。接触角の結果を表6に、ゼータ電位の結果を表7に示す。
Figure 0004480081
Figure 0004480081
アクリルアミドとスチレンとの重合比を変化させると、スチレンモノマー量の増加により疎水性が高まり、アクリルアミドの増加により親水性が高まった。アクリルアミドの増加により、ゼータ電位のマイナス側への変位が小さくなった。
[高分子結合膜の作成]
1.官能基の導入
トルエン中に、3mMの濃度となるように、アミノプロピルトリエトキシシラン(Silicon Chemicals LC−4480、信越化学工業社製)を溶解した。この中に洗浄したガラス基板を浸漬し、80℃で8時間反応させた。反応後、ガラス基板をトルエンさらにエタノールで洗浄し、真空乾燥することでアミノ基導入基板を得た。
2.高分子化合物の結合
(1)ポリアクリル酸を結合した高分子結合膜
100mMのHEPES(pH7.0)20mL中に14.4mgのポリアクリル酸(ポリアクリル酸25000、和光純薬社製)を溶解し、アミノ基導入基板を浸漬した。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドをそれぞれ0.1mmol添加し、24時間振とうした。反応後、超純水にて洗浄し、真空乾燥してポリアクリル酸修飾基板を得た。
(2)ポリアリルアミンを結合した高分子結合膜
3mMグルタルアルデヒド溶液(100mM−HEPES緩衝液(pH7.0で調製)中に、前記アミノ基導入基板を浸漬し、8時間振とうした。反応後、超純水で洗浄し、真空乾燥することでアルデヒド基導入基板を得た。
さらに、100mM−HEPES(pH7.0)20mL中に18.7mgのポリアリルアミン(ポリアリルアミンハイドロクロライド(商品名)、Aldrich社製)を溶解し、ここに前記アルデヒド基導入基板を浸漬し、24時間振とうした。反応後、超純水で洗浄し、真空乾燥することでポリアリルアミン修飾基板を得た。
得られたポリアクリル酸修飾基板、ポリアリルアミン修飾基板のポリマーが修飾された表面の接触角およびゼータ電位を実施例2と同様にして測定した。接触角の結果を表8に、ゼータ電位の結果を表9に示す。
Figure 0004480081
Figure 0004480081
[表面重合膜の作成]
1.表面重合
三角フラスコ中に重合溶媒として50mLの超純水を入れ、ビニルモノマーとして10mmolのビニルスルホン酸ナトリウムを溶解した。前記実施例3で調製したビニル基導入基板を浸漬し、重合開始剤にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンあるいは2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二酢酸塩を50μmol添加し、ゴム栓で密閉後、窒素置換し、55℃で24時間振とうした。反応後、水で洗浄し、表面重合基板を得た。
また、三角フラスコ中に重合溶媒として50mLの超純水を入れ、ビニルモノマーとして100mmolのジアリルジメチルアンモニウムクロリドを溶解した。前記実施例3で調製したビニル基導入基板を浸漬し、重合開始剤にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンあるいは2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二酢酸塩を500μmol添加し、ゴム栓で密閉後、窒素置換し、55℃で48時間振とうした。反応後、水で洗浄し、表面重合基板を得た。
これらの得られた表面重合膜の接触角およびゼータ電位を、緩衝液としてクエン酸(0.0143M)、リン酸二水素カリウム(0.0143M)、ホウ酸(0.0143M)、NaCl濃度10(mM)の混合液を用い、表10に示すpH(pH調整はNaOH水溶液で実施。)で測定した以外は、実施例2と同様にして測定した。接触角、ゼータ電位の測定結果を表10に示す。
[高分子結合膜の作成]
1.官能基の導入
トルエン中に、3mMの濃度となるように、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Silicon Chemicals LS−2940(商品名)、信越化学工業社製)を溶解した。この中に洗浄したガラス基板を浸漬し、80℃で8時間反応させた。反応後、ガラス基板をトルエンで洗浄し、真空乾燥することでグリシジル基導入基板を得た。
2.高分子化合物の結合
100mM−HEPES緩衝液(pH7.0)20mL中にポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール(商品名)、和光純薬社製)8.8mgを溶解し、その溶液中に基板を浸漬して24時間振とうした。反応後、超純水にて洗浄し、真空乾燥することでポリマー修飾基板を得た。
得られたポリマー修飾基板の接触角およびゼータ電位を、実施例5と同様にして測定した。接触角、ゼータ電位の測定結果を表10に示す。
Figure 0004480081
産業上の利用の可能性
本発明により、泳動媒体が接触する基材表面の様々な性質を制御しうる泳動分離方法とデバイスが提供された。ガラスなどの泳動分離媒体を保持する基材は、時として泳動分離の結果に干渉する場合があった。本発明を用いれば、プラズマ重合膜、表面重合膜または高分子結合膜の被覆によってガラス表面が改質され、結果として良好な泳動分離用の基材とすることができた。
プラズマ重合膜の形成は、微細な構造に対しても応用可能で、しかも大量の基材をまとめて処理することができる。つまり、均質な電気泳動用基材を、容易に大量生産できる産業上も有用な技術である。
また、表面重合膜の形成によれば、膜の剥離が抑制され、所望の高分子化合物膜を、基材表面上の所望の位置に形成させることができる。
さらに、表面重合膜の形成によれば、膜厚の制御を簡便に行いながら、所望の高分子化合物膜を、所望の位置に形成させることができる。
すなわち本発明は、大量のサンプルを、同時に、しかも小型化された基材上で簡便に分離・分析する方法を提供することができる。

Claims (7)

  1. 次の工程を含むキャピラリー等電点電気泳動による物質の分離方法:
    a)分離媒体に接する表面が高分子化合物膜で被覆されているガラスキャピラリーからなる基材に保持された分離媒体に、分析すべき物質を加える工程、および
    b)分離媒体に分離圧を加える工程;
    ここで、前記高分子化合物膜は、プラズマ重合により得られたプラズマ重合膜であり、該プラズマ重合膜は、ヘキサジエン、アセトニトリル、ヘキシルアミンおよびアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールからなる群から選択されるいずれかのモノマーをプラズマ重合して形成されている、方法
  2. 前記プラズマ重合膜が、アセトニトリルをプラズマ重合して形成されたものである、請求項1に記載の方法
  3. 分離すべき物質が蛋白質であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 分離媒体が接触する表面を、高分子化合物膜で被覆した、キャピラリー等電点電気泳動用の分離分析用基材であって、
    前記高分子化合物膜は、プラズマ重合により得られたプラズマ重合膜であり、該プラズマ重合膜は、ヘキサジエン、アセトニトリル、ヘキシルアミンおよびアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールからなる群から選択されるいずれかのモノマーをプラズマ重合して形成され、
    前記分離分析用基材がガラスキャピラリーからなる、基材
  5. 前記プラズマ重合膜が、アセトニトリルをプラズマ重合して形成されたものである、請求項4に記載の基材
  6. 次の要素で構成されるキャピラリー等電点電気泳動分析装置:
    a)電気泳動用媒体が接触する表面を高分子化合物膜で被覆した電気泳動媒体を保持するための基材、および
    b)基材に保持された電気泳動用媒体に電圧を印加するための電極
    ここで、前記高分子化合物膜は、プラズマ重合により得られたプラズマ重合膜であり、該プラズマ重合膜は、ヘキサジエン、アセトニトリル、ヘキシルアミンおよびアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールからなる群から選択されるいずれかのモノマーをプラズマ重合して形成され、
    前記基材がガラスキャピラリーからなる、装置
  7. 前記プラズマ重合膜が、アセトニトリルをプラズマ重合して形成されたものである、請求項6に記載の装置
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