以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
図1は本発明の光学パネル用金型11の一例を示し、図2は上記光学パネル用金型11を用いて成形した光学パネル1の一例を示したものであり、この光学パネル1は、照明器具用パネル等に使用されて光方向を制御する機能を有しており、少なくとも一つ以上の面に複数個のプリズム形状からなるプリズムアレイ面4を有し、各々のプリズム形状において、プリズムを構成する少なくとも一つ以上の面を拡散面3とし、残りの面のうち少なくとも一つ以上の面を鏡面2として構成されている。ここでは、個々のプリズム形状のピッチPが例えば0.05mm〜5mm程度の微小なプリズムアレイ面4で構成されている。
図3は、図2におけるプリズムアレイ形状面14の一部を拡大して示したものであるが、一個のプリズム形状は、複数個の面で構成されており、パネル面9に対して略垂直な溝壁となる面を拡散面3(面粗度Ra=1.0〜5.0程度、好ましくはRa=1.0〜3.0)とし、また、パネル面9に対して略斜面となる面を鏡面2(面粗度Ra=0.1以下、好ましくはRa=0.05以下)としている。このようにプリズムの面方向に応じて面粗度状態を規定することにより、好ましい光方向制御特性を得ることができる。
ここで、参考例として、図4に示すように、パネル面9に対して略垂直面となる面も、略斜面となる面も、全ての面が鏡面2である場合には、光学パネル1のプリズムアレイ面4側から入射した光線Aは、プリズムの略斜面で一度屈折し、パネル内を通過した後、出射する際にも屈折し、狙いの方向へ光を向けることが可能であるが、略垂直面に近い位置に入射した光線Bは、プリズムの略斜面で一度屈折した後、略垂直面で反射され、狙いの方向とは逆の方向Dへ光を出射してしまい、一方向へ光方向を制御するための光学パネル1としては不適切である。
他の参考例として、図5に示すように、パネル面9に対して略垂直面となる面も、略斜面となる面も、全ての面が拡散面3である場合には、光学パネル1のプリズムアレイ面4側から入射した光線は、プリズムアレイ面4の全面で拡散してしまい、光方向を制御することができず、これも一方向へ光方向を制御するための光学パネル1としては不適切である。
更に他の参考例として、図8に示すように、プリズム形状がパネル面9に対してすべて略斜面のみで構成される場合には、光方向を制御する機能を得るためには、パネル面9に対して正の傾きを持った斜面を鏡面2とし、負の傾きを持った斜面を拡散面3とするか、あるいは、その逆(パネル面9に対して負の傾きを持った斜面を鏡面2とし、正の傾きを持った斜面を拡散面3とする)のように面の傾き方向と、面状態(拡散面3か鏡面2か)を統一することが必要である。
一方、本発明の図3に示した面構成を持つ光学パネル1にあっては、図6に示すように、光学パネル1のプリズムアレイ面4側から入射した光線Aは、プリズムの略傾斜面(鏡面2)で一度屈折し、パネル内を通過した後、出射する際にも屈折し、狙いの方向へ光を向けることが可能であり、また、略垂直面(拡散面3)に近い位置に入射した光線Bは、プリズムの略傾斜面(鏡面2)で一度屈折した後、略垂直面(拡散面3)で拡散されるため、狙いの方向とは逆の方向へ光を強く出射することはなく、パネル全体としては、図7に示すように、一方向へ光方向を制御する効果に優れている。
図9は、図4〜図6で示したモデルに関する光方向制御特性の結果を示したものである。曲線が膨らんでいる方向(配光強方向)eに対して出射している光束が多いことを示しており、図9のイで示した図6のモデル(略斜面が鏡面2、略垂直面が拡散面3、特に拡散面3面粗度:Ra=1.5レベル)が光方向制御特性に優れていることがわかる。図9のロは同じく図6のモデル(拡散面3面粗度:Ra=0.5レベル)を示している。なお、図9のハは図4のモデル(プリズム形状が全面鏡面2)、図9のニは図5のモデル(プリズム形状が全面拡散面3(拡散面3面粗度:Ra=1.5レベル)をそれぞれ示している。
ところで、図10(b)に示すように、プリズムアレイ面4の略傾斜した鏡面2が一直線上に形成されている場合には、鏡面2で屈折した光線Aの一部A1が略垂直な拡散面3にぶつかり拡散される。このため、拡散面3で拡散される光線が増加してしまい、より多くの光線を一方向に配光制御することが困難となる。そこで、本例では、図10(a)に示すように、略傾斜した鏡面2における拡散面3に近い側の先端部分に屈折した屈折斜面50を形成し、この屈折斜面50のパネル面9に対する傾きを屈折斜面50以外の斜面部分よりも小さくすることによって、この傾きの小さい屈折斜面50で屈折する角度が変り、その結果、拡散面3で拡散される光線A1の量が減少し、より多くの光線を一方向に配光制御することが可能になる。また、鏡面2の屈折斜面50を例えば三面以上の複数面に細かく分割してもよく、この場合、一方向に配光制御できる光線量を更に増やすことができるものである。
図11〜図16は、上記構成の光学パネル1を成形するための光学パネル用金型11の製造工程の一例を示している。この光学パネル用金型11におけるプリズムアレイ形状面14が形成される金型型部ブロック10には、拡散面3を形成するための拡散面形成用金型部13と、鏡面2を形成するための鏡面形成用金型部12とを備えている。ここでは、一つの拡散面形成用金型部13が光学パネル1の一つの拡散面3(図6)に対応し、一つの鏡面形成用金型部12が光学パネル1の一つの鏡面2(図6)に対応しており、金型型部ブロック10には、拡散面形成用金型部13と鏡面形成用金型部12とが交互に複数個連続したプリズムアレイ形状面14が構成されている。この金型型部ブロック10の材質としては、銅、真鍮、ニッケル、アルミニウム、亜鉛合金またはS55C等の鋼材上に銅、ニッケルを0.5〜10mm程度の厚みにメッキしたものが例として挙げられる。
次に、金型型部ブロック10(ワーク)にプリズムアレイ形状面14を形成するにあたっては、先ず図11に示すように、拡散面形成用金型部13を形成するための第1の面13a(略垂直面)に、形成しようとする拡散面形成用金型部13の概略形状を形成し、鏡面形成用金型部12を形成するための第2の面12a(略傾斜面)に、形成しようとする鏡面形成用金型部12の概略形状を形成する。このようなプリズムアレイ形状面14の概略形状を形成する例としては、図12に示す往復切削用の切削工具6、或いは図13に示す回転切削用の切削工具6′を用いる。これらの切削工具6,6′は、いずれも、プリズムアレイ形状面14の断面形状を反転させた断面略三角形状を有している。
ここで、図12の往復切削方法に使用する切削工具6としては、超硬バイトや、単結晶ダイヤモンドバイト、或いは焼結ダイヤモンドバイト等が挙げられる。切削送り速度は6〜7m/分程度、1回の切削での切り込み量は30〜50μm程度が望ましい。一方、図13の回転切削方法に使用する切削工具6′としては、回転砥石等が挙げられる。切削時の回転速度は、φ200程度の回転砥石の場合は2000〜2500rpm程度、切削送り速度は15〜25m/分程度、1回の切削での切り込み量は30〜50μm程度が望ましい。
そして、上記往復切削用の切削工具6を図12(b)の矢印ホで示す方向に往復させることにより、或いは、上記回転切削用の切削工具6′を図13(b)の矢印ヘで示す方向に回転させることにより、図11に示すような概略形状の第1の面13aと第2の面12aとを切削加工により形成することができる。
その後、上記概略形状のプリズムアレイ形状面14に対してブラスト加工を施す。ブラスト粒子については、サンド、ビーズ等の例があるが、粒子の形状としては、突起部分が多いサンドブラストを用い、粒子径は500〜2000番程度のブラスト番手が望ましい。また図14に示すように、最終的に拡散面3が必要な第1の面13aのみにブラスト粒子がぶつかるように斜め方向トからブラスト加工を行うことが望ましい。つまり第2の面12aと略平行な方向からブラスト粒子を概略形状のプリズムアレイ形状面14の全面に亘って吹きつけることによって、ブラスト粒子が主に第1の面13aに衝突し、第1の面13aには拡散形状を有する拡散面形成用金型部13が形成される。
その後、金型型部ブロック10のプリズムアレイ形状面14のうちの第2の面12a(最終的に鏡面形成用金型部12となる略傾斜面)のみを鏡面とする。この方法の一例を図15、図16に示す。
図15では、切削工具6として単結晶ダイヤモンドを用いている。この刃物7の断面形状は、金型11の最終的なプリズムアレイ形状面14の断面形状における略垂直面(最終的に拡散面形成用金型部13となる面)から距離S(約10〜20μm)だけオフセットした形状となっている。また、プリズムアレイ形状面14の第2の面12aにおいて図10(a)に示す光学パネル1の屈折した屈折斜面50に対応する屈曲面51が得られるように、単結晶ダイヤモンドからなる切削工具6には斜面52が形成されている。そしてこの切削工具6による切削方法としては、全面が拡散面形状となっている金型型部ブロック10のプリズムアレイ形状面14のうち、最終的に拡散面3が必要な拡散面形成用金型部13(略垂直面)に接触しないように、10〜20μmオフセットした位置に切削工具6を位置決めし、第2の面12aのみを切断できるようにする。切削送り速度は6〜7m/分程度、1回の切削での切り込み量は5〜10μm程度が望ましい。またこのとき、図16に示すように、刃物7の断面形状を光学パネル用金型11の略垂直面から5°〜10°程度の勾配θを有する形状にしてもよい。
上記のように単結晶ダイヤモンドからなる切削工具6を用いて第2の面12aを鏡面2に仕上げて鏡面形成用金型部12が形成され、目的とする拡散面形成用金型部13と鏡面形成用金型部12とが交互に複数個連続して形成されたプリズムアレイ形状面14を有する光学パネル用金型11を製造することができる。
なお、上記第2の面12a(略傾斜面)を鏡面加工する他の方法として、例えば、図1に示すように、円錐形に成形された成形ダイヤモンド工具60を、予め、形成されている金型11のプリズムアレイ形状面14の第2の面12aに押しつけるバニシング加工を施すことにより,第2の面12aを鏡面2に仕上げることが可能である。このとき成形ダイヤモンド工具60の母線を曲線とすれば、略傾斜面が曲面となる形状の加工が可能となる。
しかして、プリズムアレイ形状面14を概略形状に切削加工した後に、ブラスト加工による拡散面形成用金型部13の形成工程と、鏡面仕上げによる鏡面形成用金型部12の形成工程とを行うだけでよいので、従来のようなレジスト塗布工程、露光・現像工程、エッチング工程、レジスト除去工程を行う場合と比較して、本発明では金型11完成までの工程数が少なくなり、生産性が大幅に向上することとなる。しかも、ブラスト加工によって粗面形成を行うので、従来のエッチングと比較して、簡便に拡散面形状の加工を行うことが可能となり、形状の再現性の点できわめて優位であるうえに、拡散面形状の精度がきわめて高くなり、従って、成形された光学パネル1の拡散面3において十分な配光特性を得るための面粗度を確保することが容易になるという利点もある。
ここで、本発明においては、前記切削工程において、金型型部ブロック10の被切削面の表面の材質を銅メッキとしている。例えばSUS304、420等の母材に純銅メッキを施すのが望ましい。このメッキ厚は例えば100〜3000μm程度とする。ただし、メッキに要する時間等を考慮すると、メッキ厚は100〜400μm程度が好ましい。また、硬度はHv200〜220程度とすることで、20000〜100000ショットの成形寿命に耐えることが可能となる。この実施形態は請求項1と対応するものである。しかして銅メッキをその総厚よりも薄い厚みで切削してプリズム形状を形成することによって、切削工具6の寿命を長くできると共に、金型11の寿命を長くでき、殊に純銅メッキとすることで、含有成分のばらつき等による品質不良が発生する心配もなくなる。
図17〜図19は、光学パネル用金型11の製造方法の他例を示している。本方法では、最初に切削加工によってプリズムアレイ形状面14の概略形状加工を行うと同時に、この概略形状のプリズムアレイ形状面14の全面に亘って鏡面加工を施す。プリズムアレイ形状面14の概略形状加工方法としては、前記図11〜図13と同様な超硬バイトや単結晶ダイヤモンドバイト等による切削加工によって行う。また、プリズムアレイ形状面14全面に鏡面仕上げを行う方法としては、前記図14または図15のような単結晶ダイヤモンド工具や成形ダイヤモンド工具等を用いて行う。
その後、最終的に鏡面形成用金型部12として残すべき第2の面12aのみに高硬度コーティング5を被覆する。高硬度コーティング5を施す方法の一例を図17に示す。コーティングの種類としては、TiN、TiAlN、Cr等があり、表面硬度としてはHv2500〜3000である。コーティングの方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、及び蒸着法などがある。これらの方法は、形状のカゲになる部分についてはコーティングがつきにくいため,図17のようなセッティングにより、略傾斜面(鏡面形成用金型部12となる鏡面仕上げされている面)のみにコーティングされ、略垂直面(第1の面13a)についてはコーティングされないか、されてもオングストロームレベルの厚みとなる。なお図17中の矢印リはコーティングの方向を示し、20はコーティングの蒸発源、21はワーク載置台を示している。
そして図18に示すように、略傾斜面(鏡面形成用金型部12となる鏡面仕上げされている面)のみに高硬度コーティング5を被覆した後に、プリズムアレイ形状面14の全面にブラスト加工を施す。このとき、図18の矢印トで示すように、最終的に拡散面形成用金型部13となる第1の面13aのみにブラスト粒子がぶつかるように斜めからブラスト加工を行うことにより、高硬度コーティング5の表面は鏡面形状が残り、従って、最終的には、図19に示すように、高硬度コーティング5を被覆していない第1の面13aのみに拡散面形成用金型部13を形成することができると共に、高硬度コーティング5の表面が鏡面形成用金型部12となる。
図20は光学パネル用金型11の製造方法の更に他例として、切削工具6の両側の切削面6aが拡散面形状になっている例を示している。図20に示すように、予め拡散面形状で構成された切削工具6で金型11のプリズムアレイ形状面14を概略形状に切削加工した後に、略傾斜した第2の面12aのみを鏡面仕上げすることによって、目的とする金型型部ブロック10のプリズム形状を得ることができる。ここで、切削工具6を超硬バイトとした場合には、切削送り速度は6〜7m/分程度、1回の切削での切り込み量は50〜100μm程度が可能であり、簡便に早く形状の加工を行うことが可能である。一方、切削工具6を焼結ダイヤモンドバイトとした場合は、切削送り速度は6〜7m/分程度、1回の切削での切り込み量は30〜50μm程度が可能であり、超硬バイトと比較して、加工時間がかかるが、拡散面形状の精度が高く、形状の再現性の点で優位である。なお、第2の面12aを鏡面仕上げする方法としては、前記図15または図16のような単結晶ダイヤモンド工具や成形ダイヤモンド工具等を用いて行うことができる。
図21は図20の変形例を示している。ここでは、切削工具6として焼結ダイヤモンドバイトを用い、その片側の切削面6bを平滑面とし、他側の切削面6cを拡散面形状としたものを用いることによって、拡散面加工と鏡面加工とを同時に行うことができ、これにより金型型部ブロック10に拡散面形成用金型部13と鏡面形成用金型部12とを同時に形成することができ、製造工程数を一層削減できるものとなる。
図22は光学パネル用金型11の製造方法の更に他例を示している。ここでは、プリズムアレイ形状面14を概略形状に加工すると同時に、このプリズムアレイ形状面14全面に鏡面仕上げを行った後に、切削工具6を用いて第1の面13aを拡散面形状に加工する。なお鏡面加工方法としては、前記図15または図16のような単結晶ダイヤモンド工具や成形ダイヤモンド工具等を用いて行うことができる。ここで、上記第1の面13aを切削工具6を用いて拡散面形状に加工するにあたっては、切削工具6の先端が、略垂直な第1の面13aに形成される拡散面形状の断面形状と同じであるものを使用し、微小ピッチずつ切削工具6を送ることにより(送りピッチは、1〜5μm程度が望ましい)、第1の面13aを拡散面形状に切削して拡散面形成用金型部13を形成することができる。なお切削工具6としては、単結晶ダイヤモンドバイト、または、焼結ダイヤモンドバイトが望ましい。またこのとき、切削工具6の刃物7の刃先7aの下面をプリズムアレイ形状面14の略傾斜面形状と一致させることにより、プリズムアレイ形状面14の概略形状加工、略傾斜面形状の鏡面化、及び略垂直面の拡散面形状加工が同時に可能となり、製造工程数を一層削減できる。また、切削用ダイヤモンドバイトを微小ピッチずつ送り移動することで、拡散面形状の精度がきわめて高くなるという利点もある。
図23は光学パネル用金型11の製造方法の更に他例を示している。本例では、プリズムアレイ形状面14の断面形状を反転させた断面形状を有する放電電極90を用いて、プリズムアレイ形状面14を概略形状に加工形成すると同時に、第1の面13a及び第2の面12aを拡散面形状に加工し、その後、第2の面12aのみに鏡面仕上げを行うものである。ここで概略形状のプリズムアレイ形状面14に加工するために用いる放電電極90の材質としては、例えばカーボン、または、銅が望ましい。そして放電電極90に電流に流す電流値、及び、電流のオン、オフのインターバルをパラメータとすることにより、プリズムアレイ形状面14の概略形状の加工と同時に、図23に示すように、プリズムアレイ形状面14全面において拡散面形状を形成することが可能である。また最後に第2の面12aを鏡面仕上げする方法としては、前記図15または図16のような単結晶ダイヤモンド工具や成形ダイヤモンド工具等を用いて行うことができる。
なお、図23の変形例として、図24に示すように、放電ワイヤー23による放電加工にて、プリズムアレイ形状面14の概略形状の加工と同時に、形状全面について拡散面形状を形成することも可能である。この方法によれば、曲面形状等の加工も可能となり、プリズムアレイ形状の自由度が増すという利点がある。
図25、図26は光学パネル用金型11の製造方法の更に他例を示している。本例では、振動切削加工方法により概略形状のプリズムアレイ形状面14を形成した後に、第1の面13aを拡散面形状に加工して拡散面形成用金型部13を形成し、その後、第2の面12aを鏡面仕上げして鏡面形成用金型部12を形成するものである。ここでは、振動切削加工に用いる切削工具6のクランプ部25に超音波振動子26、またはピエゾ素子等を設置し、切削時に微小振動を加えながら切削加工を行うものである。そして、プリズムアレイ形状面14を概略形状に加工した後で、プリズムアレイ形状面14の第1の面13aを拡散面形状に切削する。このとき図25の矢印Eで示す左右方向に微小振動を繰り返しながら切削を行うことで、第1の面13aにおいて目的とする拡散面形状を得ることができる。ここで振動の条件としては、例えば振幅5〜20μm、周波数15〜25kHz程度のものが望ましい。またこの方法によると、図26に示すように、切削方向Eに対して垂直方向に凹凸形状を有する拡散面形状を形成することが可能であり、このとき前記図22に示す切削工具6の先端を微小ピッチずつ移動させる方法と併用することによって、二次元的な拡散面形成用金型部13を容易に形成することができる。なお図26中のGは加工前の略垂直面、Hは加工後の略垂直面をそれぞれ示している。
図27は、光学パネル用金型11の製造方法の更に他例を示しており、一度粗面化させた第2の面12a(最終的に鏡面形成用金型部12となる略斜面)を切削工具6により鏡面加工する際に、切削工具6の刃物7を、予め粗面化させた拡散面形成用金型部13から10μm以上、30μm以下の範囲で間隔(以下、オフセット量Mという。)をあけて、切削を行うようにしている。切削工具6は、例えば単結晶ダイヤモンドからなる刃物7が用いられる。また刃物7の断面形状は、プリズムアレイ形状面14の拡散面形成用金型部13と接触しないように上記所定のオフセット量Mをあけて、第2の面12aのみを切削できるような略V字状をしている。
しかして、予めプリズムアレイ形状面14全体が拡散面形状となっているワーク(金型型部ブロック10)に対して、最終的に拡散面が必要な拡散面形成用金型部13に接触しないように、切削工具6を拡散面形成用金型部13から10μm以上、30μm以下の範囲でオフセットした位置にくるように、切削工具6を位置決めし、切削送り速度を6〜7m/分程度にして、第2の面12aのみを切削する。ここで、オフセット量Mが10μmよりも小さいと、第2の面12aの切削時に発生する切削切り粉によって予め粗面化させた拡散面形成用金型部13を擦ってしまい、そのために面粗度が小さくなってしまい、この金型11で成形された光学パネル1は十分な光学特性が得られなくなる。逆に、図28(b)に示すように、オフセット量M´が30μmよりも大きいと、この金型11で成形された光学パネル1は、鏡面2の面積がオフセット量Mの分だけ小さくなり、そのために片側に配光させる割合が減少し、十分な光学特性を得ることができなくなる。
この方法によれば、拡散面形成用金型部13に対する切削工具6のオフセット量Mを10μm以上、30μm以下の範囲、好ましくは20μm以上、25μm以下の範囲に設定して、切削することによって、拡散面形成用金型部13の面粗度を確保できるようになり、この金型11で得られる光学パネル1は、図28(a)に示すように、片側に配光させる割合が増加し、より望ましい光学特性を得ることが可能となる。
なお、図27の例では、拡散面形成用金型部13に沿って切削工具6をオフセットした場合を説明したが、例えば図29に示すように、拡散面形成用金型部13に対して5〜10°程度の勾配θを持たせてオフセットするようにしてもよい。この場合においても、拡散面形成用金型部13に対する切削工具6のオフセット量Mを10μm以上、30μm以下の範囲に設定して、切削することによって、光学パネル1のより望ましい光学特性を得ることができる。
図30は、光学パネル用金型11の製造方法の更に他例を示しており、一度粗面化させた第2の面12a(最終的に鏡面形成用金型部12となる略斜面)を切削工具6で鏡面加工する際に、切削工具6の刃物7による1回の切込量Nが5μm以下となるように切削するようにしている。切込量Nが5μmよりも大きくなると、切削切り粉の発生量が増えて、予め粗面化させた拡散面形成用金型部13を擦ってしまうからである。なお切削工具6は、例えば単結晶ダイヤモンドからなる刃物7が用いられる。しかして、第2の面12aを切削するあたっては、図27の実施形態と同様に、拡散面形成用金型部13に対する切削工具6のオフセット量Mを10μm以上、30μm以下の範囲に設定し、且つ、1回の切込量Nを5μm以下、好ましくは、1μm以上、2.5μm以下に設定し、切削送り速度を6〜7m/分程度にして、第2の面12aのみを切削する。この方法によれば、1回の切削で発生する切削切り粉の量が微量であるために、切削時に切削切り粉によって、予め粗面化させた拡散面形成用金型部13を擦るのを防止できる。従って、拡散面形成用金型部13の面粗度を確保できると共に、鏡面形成用金型部12の切削時における1回の切込量Nを5μm以下に設定することで、鏡面形状の精度を高めることができ、形状の再現性の点で優位となり、このような金型11で得られる光学パネル1は、より望ましい光学特性を得ることが可能となる。
図31は、光学パネル用金型11の製造方法の更に他例を示しており、一度粗面化させた第2の面12a(最終的に鏡面形成用金型部12となる略斜面)を切削工具6により切削する際に、最終切込量Lの合計が10μm以上、30μm以下の範囲となるように切削するものである。10μmよりも小さいと、一度粗面化させた凹凸が完全に除去されずに残り、また30μmよりも大きいと、この金型11で成形される光学パネル1において、前記図32(b)に示すように、配光させたい方向と逆方向に光が反射する割合が増えるために、十分な配光特性を得ることができなくなるからである。なお切削工具6は、例えば単結晶ダイヤモンドからなる刃物7が用いられる。しかして、第2の面12aを切削するあたっては、図27の実施形態と同様に、拡散面形成用金型部13に対する切削工具6のオフセット量Mを10μm以上、30μm以下の範囲に設定し、切削送り速度を6〜7m/分程度とし、且つ、最終切込量Lの合計が10μm以上、30μm以下の範囲となるように第2の面12aのみを切削する。この方法によれば、一度粗面化させた第2の面12aに形成された凹凸を完全に削り取ることができる。特に、最終切込量Lの合計が10μm以上、30μm以下の範囲、好ましくは20μm以上、25μm以下に設定して切削することにより、鏡面形成用金型部12の平滑性を確保でき、このような金型11で得られる光学パネル1は、前記図32(a)に示すように、拡散面3の面粗度を確保できると同時に、配光させたい方向と逆方向に光が反射する割合が減少することで、十分な配光特性を得ることが可能となる。
また、前記各実施形態において、最終的な金型プリズム形状の粗面化させた拡散面形成用金型部13(略垂直面)の面粗度はRa0.66以上、1.5以下であるのが望ましい。図33に面粗度Raと光学パネル1の配光割合(%)との関係を示す。ここで、拡散面形成用金型部13の面粗度Raを0.66以上、1.50以下(好ましくは0.66以上、1.40以下)とすることにより、光学パネル1の配光割合として必要な60.2%を確保することができ、光学パネル1の十分な光学特性を確保できる。さらに有効な配光特性を得るためには、面粗度Raを0.88以上、1.19以下の範囲とするのが望ましい。なお配光割合(%)とは、配光分布図(図9参照)において、0°方向を境界とした場合の「片側光束(光束の多い領域/全光束)」のことである。
また、最終的な金型プリズム形状の粗面化させた拡散面形成用金型部13(略垂直面)の面形状の平均アスペクト比を、光学パネル1の必要な配光割合を得ることができる所定値以上に設定するのが望ましい。図34に粗面化させた拡散面形成用金型部13の面形状の平均アスペクト比と、この金型11で成形された光学パネル1の配光割合との関係を示す。ここでいう面形状とは、表面粗さ測定機で計測した図35の面粗度データプロファイルに示される凹凸のことであり、これを部分的に拡大したものを図36に示す。図36から平均アスペクト比(=1/n×(b1/a1+b2/a2+b3/a3+……+bn/an)を算出することができる。この平均アスペクト比を0.61以上とすることにより、図34に示すように、光学パネル1の配光割合として必要な60.2%を確保することができるようになる。さらに有効な配光特性を得るためには、平均アスペクト比を0.73以上とするのが望ましい。
図37は、最終的な金型プリズム形状の粗面化させた拡散面形成用金型部13における面粗度データプロファイルを示したものである。ここでは、拡散面形成用金型部13(略垂直面)の面粗さ中心に対して、図37に示す任意の上限値Xと下限値Yとを設定し、その間の範囲を基準値範囲Zとし、面粗度データプロファイルの各ポイント数の中で、基準値範囲Z内に納まるポイント数と、基準値範囲Zを越えてしまうポイント数とに分類し、基準値範囲Z内のポイント数とこれを越えるポイント数の割合で面粗度を評価する。図38は、面粗さ中心に対して上限値X及び下限値Yをそれぞれ1.5μmずつの幅で設定した場合において、その基準値範囲Zを越えるポイント数の割合と配光割合との関係を示している。ここで、基準値範囲Zを越えるポイント数の割合を8%以上とすることにより、光学パネル1の配光割合として必要な60.2%を確保できるようになる。さらに有効な配光特性を得るためには、基準値範囲Zを越えるポイント数の割合を19%以上とすることが望ましい。
また、前記各実施形態において、金型11の粗面化させた拡散面形成用金型部13の表面又は表層を、耐磨耗性を有する材料で構成するのが望ましい。この実施形態は請求項2と対応するものである。拡散面形成用金型部13の表面或いは表層に耐磨耗性を付与する方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、及び蒸着等によるTiN、TiAlN、Cr等のコーティング、或いはCrメッキ、或いはNiメッキ等の方法が挙げられる。また表面硬度としては、Hv1000〜3000であり、粗面化させた拡散面形成用金型部13(略垂直面)を保護できると共に、成形による磨耗を防止できる。また、刃物7の寿命を確保できると共に、光学パネル1の光学特性を確保できる。さらに、耐磨耗のコーティングを施さない場合と比較して、金型11の寿命を5倍〜20倍に伸ばすことが可能となる。
また、金型11の粗面化させた拡散面形成用金型部13の表面に、0.1μm以上、0.5μm以下の厚みの保護コーティングを被覆するのが望ましい。つまり、拡散面形成用金型部13(略垂直面)の面粗度がRa0.66〜1.41であるので、保護コーティングの厚みを0.1μm以上、0.5μm以下にすることにより、拡散面形成用金型部13の粗面形状を保護コーティングで埋めてしまうことがなく、面粗度を確保できる。また、拡散面形成用金型部13への耐磨耗性の付与と光学パネル1の配光特性の確保とを図るためには、保護コーティングの厚みを0.2μm以上、0.3μm以下にすることが特に望ましい。
さらに、保護コーティングはNiメッキであるのが望ましい。この実施形態は請求項3と対応するものである。このNiメッキは簡易的に行うことができると共に、均一な薄膜コーティングが可能となり、コーティング工程の簡易化を図ることができる。