以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の排気浄化装置を備えた内燃機関を示している。図1において、1は内燃機関の本体を示し、♯1〜♯4はそれぞれ第1気筒、第2気筒、第3気筒、第4気筒を示している。各気筒には、それぞれ対応して、燃料噴射弁21,22,23,24が設けられている。また、各気筒には、それぞれ対応する吸気枝管3を介して吸気管4が接続されている。また、第1気筒および第4気筒には、第1の排気枝管5が接続されており、第2気筒および第3気筒には、第2の排気枝管6が接続されている。すなわち、第1気筒と第4気筒とをまとめて第1気筒群と称し、第2気筒と第3気筒とをまとめて第2気筒群と称したとき、第1気筒群には、第1の排気枝管5が接続されており、第2気筒群には、第2の排気枝管6が接続されている。そして、これら排気枝管5,6は、下流側において合流し、共通の1つの排気管7に接続されている。
なお、第1の排気枝管5は、下流側では1つの排気枝管であるが、上流側では2つに分岐しており、これら2つに分岐した排気枝管がそれぞれ第1気筒および第4気筒に接続されている。同様に、第2の排気枝管6も、下流側では1つの排気枝管であるが、上流側では2つに分岐しており、これら2つに分岐した排気枝管がそれぞれ第2気筒および第3気筒に接続されている。以下の説明では、排気枝管5,6の上流側の2つに分かれている部分を特定して表現する場合、これを「排気枝管の分岐部分」と表現し、排気枝管5,6の下流側の1つの部分を特定して表現する場合、これを「排気枝管の集合部分」と表現する。
各排気枝管5,6の集合部分には、それぞれ、三元触媒8,9が配置されており、排気管7には、NOx触媒10が配置されている。また、各三元触媒5,6上流の排気枝管5,6の集合部分には、それぞれ、空燃比センサ11,12が配置されている。また、NOx触媒10上流および下流の排気管7にも、それぞれ、空燃比センサ13,14が配置されている。さらに、NOx触媒10には、その上流側部分の温度を検出するための温度センサ15と、その下流側部分の温度を検出するための温度センサ16とが取り付けられている。
三元触媒8,9は、図2に示されているように、その温度が或る温度(いわゆる、活性温度)以上であって、且つ、そこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍(図2の領域X内)にあるときに、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、および、炭化水素(HC)を同時に高い浄化率にて浄化する。一方、三元触媒は、そこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときには、排気ガス中の酸素を吸収し、そこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときには、吸収した酸素を放出する酸素吸放出能力を有する。この酸素吸放出能力が正常に機能する限り流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであってもリッチであっても、三元触媒内の雰囲気の空燃比がほぼ理論空燃比近傍に維持されるので、排気ガス中のNOx、CO、HCが同時に高い浄化率で浄化される。
NOx触媒10は、その温度が或る温度(いわゆる、活性温度)以上であって、且つ、そこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるとき(大きいとき)に排気ガス中のNOxを吸収または吸蔵することによって保持し、そこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比または理論空燃比よりもリッチとなると保持しているNOxを還元浄化する。
ところで、NOx触媒10にNOxが保持される条件において、排気ガス中にSOxが含まれていると、このSOxもNOx触媒に保持されてしまう。上述したように、NOx触媒にSOxが保持されると、その分、NOx触媒が保持することができるNOxの量が少なくなってしまう。このため、NOx触媒のNOx保持能力をできるだけ高く維持しておくためには、NOx触媒からSOxを除去する必要がある。ここで、NOx触媒の温度をNOx触媒からSOxを除去するのに最低限必要な温度(以下「SOx除去可能温度」という)にした状態で、NOx触媒に理論空燃比またはリッチ(好ましくは、理論空燃比に極めて近いリッチ)の排気ガスを供給すれば、NOx触媒からSOxを除去することができる。云い換えれば、本実施形態のNOx触媒は、その温度をSOx除去可能温度にした状態でそこに理論空燃比またはリッチ空燃比の排気ガスが供給されると、SOxを放出するものであると言える。
そこで、NOx触媒10からSOxを除去することが要求されたときには、本実施形態では、以下の硫黄被毒回復制御を実行することによって、NOx触媒の温度をSOx除去可能温度にすると共にNOx触媒に理論空燃比またはリッチ空燃比の排気ガスを供給する。すなわち、本実施形態の硫黄被毒回復制御では、第1気筒および第4気筒(すなわち、第1気筒群)からリッチ空燃比の排気ガス(以下「リッチ排気ガス」という)が排出されると共に第2気筒および第3気筒(すなわち、第2気筒群)からリーン空燃比の排気ガス(以下「リーン排気ガス」という)が排出されるように、各気筒に充填される混合気の空燃比(以下この空燃比を単に「気筒の空燃比」または「機関空燃比」ともいう)を制御する。
すなわち、硫黄被毒回復制御の実行中、リッチ排気ガスを排出させるべき気筒(以下「リッチ気筒」ともいう)においては、機関空燃比がリッチ空燃比とされ、リーン排気ガスを排出させるべき気筒(以下「リーン気筒」ともいう)においては、機関空燃比がリーン空燃比とされる。なお、硫黄被毒回復制御実行中における各気筒の空燃比、すなわち、リッチ気筒の空燃比のリッチ度合、および、リーン気筒の空燃比のリーン度合は、各気筒から排出されたリッチ排気ガスとリーン排気ガスとがNOx触媒上流で混ざり合ってNOx触媒10に流入するときにトータルの排気ガスの空燃比が理論空燃比または所望のリッチ空燃比となるように調整される。これにより、NOx触媒に理論空燃比またはリッチ空燃比の排気ガスが供給されることになる。そして、リッチ排気ガスとリーン排気ガスとが混ざり合うと、リッチ排気ガス中のHCとリーン排気ガス中の酸素とが反応し、反応熱が発生する。この熱によって、NOx触媒の温度がSOx除去可能温度にまで上昇せしめられる。
この硫黄被毒回復制御によれば、NOx触媒の温度がSOx除去可能温度となっており、且つ、NOx触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比またはリッチ空燃比となっているので、NOx触媒からSOxが除去されることになる。
ところで、硫黄被毒回復制御において、NOx触媒10に供給されるHCの量と酸素の量とが多いほど、これらHCと酸素との反応により発生する熱量は多い。このため、基本的には、硫黄被毒回復制御によってNOx触媒からSOxを除去するためには、NOx触媒の温度をSOx除去可能温度まで上昇させると共にSOx除去可能温度にいったん達した後にNOx触媒の温度をSOx除去可能温度に維持することができる量のHCと酸素とがNOx触媒に供給される空燃比(以下「基準空燃比」という)に各気筒の空燃比を維持すればよい。
ところが、硫黄被毒回復制御の実行中、リッチ排気ガス中のHCとリーン排気ガス中の酸素とは、主に、NOx触媒10にて反応するのであるが、その反応は、一般的に、NOx触媒の上流側の部分ほど活発に行われる。このため、NOx触媒の上流側部分の温度が比較的高いときに、各気筒の空燃比を基準空燃比(すなわち、リッチ気筒では基準空燃比に対応するリッチ空燃比であり、リーン気筒では基準空燃比に対応するリーン空燃比)に制御していると、NOx触媒の上流側部分の温度がSOx除去可能温度よりも高くなりすぎ、NOx触媒の上流側部分で溶損が起こる可能性がある。また、NOx触媒の上流側部分の温度が比較的低いときに、各気筒の空燃比を基準空燃比に制御していると、NOx触媒の上流側部分の温度がSOx除去可能温度に到達するまでに要する時間が長くなってしまう。このように、各気筒の空燃比を基準空燃比に制御している場合、硫黄被毒回復が効率的には行われない可能性がある。
そこで、本実施形態では、硫黄被毒回復制御を開始したときの各気筒の空燃比を基準空燃比とするのではなく、硫黄被毒回復制御の開始直前におけるNOx触媒10の上流側部分の温度と硫黄被毒回復制御の開始直前における各気筒に吸入される空気の量(以下「吸気量」という)とに応じて決定した空燃比(すなわち、リッチ気筒ではリッチ空燃比であり、リーン気筒ではリーン空燃比であり、以下これら空燃比を「特定空燃比」という)とする。
ここで、一般的には、NOx触媒10の上流側部分の温度が高いほど、上昇させるべきNOx触媒の温度幅は小さいことから、本実施形態では、硫黄被毒回復制御の開始直前におけるNOx触媒の上流側部分の温度が高いほど、硫黄被毒回復制御の実行中、リッチ気筒の空燃比のリッチ度合およびリーン気筒の空燃比のリーン度合を小さくする。また、一般的に、吸気量が多いほど、燃料噴射弁から噴射される燃料の量が多く、各気筒から排出される排気ガスの温度が高く、したがって、NOx触媒の温度も高くなっていることから、本実施形態では、硫黄被毒回復制御の開始直前における吸気量が多いほど、リッチ気筒の空燃比のリッチ度合およびリーン気筒の空燃比のリーン度合を小さくする。
このように、硫黄被毒回復制御の実行中における各気筒の空燃比を上記特定空燃比とすることによって、NOx触媒10の上流側部分の温度を所定の時間でSOx除去可能温度とすることができるので、NOx触媒の硫黄被毒回復が効率的に行われることになる。
なお、上述した実施形態において、硫黄被毒回復制御を開始したときの各気筒の空燃比を決定するに当たって硫黄被毒回復制御の開始直前におけるNOx触媒10の上流側部分の温度を考慮しているのは、NOx触媒の硫黄被毒回復を効率的に行わせるためには、NOx触媒の各部分のうち最も温度の高い部分の温度を考慮すべきであり、NOx触媒の各部分の温度のうち上流側部分の温度が最も高いであろうという前提に立ったからである。したがって、硫黄被毒回復制御における各気筒の上記特定空燃比を決定するのに際しては、NOx触媒の各部分のうち温度が最も高い部分の温度を考慮すればよいのであるから、本発明は、NOx触媒の各部分のうち温度が最も高い部分の温度を考慮して硫黄被毒回復制御における各気筒の空燃比を決定するものであると言える。
ところで、上述したように、硫黄被毒回復制御の開始直前におけるNOx触媒10の上流側部分の温度と硫黄被毒回復制御の開始直前における吸気量とに基づいて、硫黄被毒回復制御の実行中における各気筒の空燃比を決定した場合、NOx触媒の上流側部分の温度は早期にSOx除去可能温度に達するのであるが、このとき、NOx触媒の下流側部分の温度はSOx除去可能温度に達していないことが多い。そこで、上述した実施形態では、NOx触媒の上流側部分の温度がSOx除去可能温度に達した後も、硫黄被毒回復制御の実行中は、各気筒の空燃比を特定空燃比に維持する。これによれば、NOx触媒の下流側部分の温度をSOx除去可能温度まで上昇させることができる。
ところで、このようにNOx触媒10の上流側部分の温度がSOx除去可能温度に達した後も各気筒の空燃比を特定空燃比に維持していると、NOx触媒の上流側部分の温度がSOx除去可能温度を超えて該NOx触媒の上流側部分の溶損を引き起こすほど高温になってしまうこともありえる。そこで、上述した実施形態では、各気筒の空燃比を特定空燃比に維持している間に、NOx触媒の上流側部分の温度がSOx除去可能温度よりも高い或る温度(例えば、NOx触媒の上流側部分の溶損を引き起こしてしまう可能性のある温度またはそれより若干低い温度であって、以下これを「上限温度」という)を超えたときには、各気筒の空燃比を特定空燃比から基準空燃比に切り換える。これによれば、NOx触媒の上流側部分の溶損が回避される。
なお、上述した実施形態では、硫黄被毒回復制御が開始されて各気筒の空燃比が特定空燃比とされた後、NOx触媒10の上流側部分(最も温度が高い部分)の温度が上限温度を超えると、各気筒の空燃比を特定空燃比から基準空燃比に切り換えるようにしているが、その代わりに、硫黄被毒回復制御が開始されてから予め定められた時間が経過したときに、各気筒の空燃比を特定空燃比から基準空燃比に切り換えるようにしてもよい。
また、上述した実施形態において、硫黄被毒回復制御が開始されて各気筒の空燃比が特定空燃比とされた後、NOx触媒10の上流側部分(最も温度が高い部分)の温度が上限温度を超えたときに各気筒の空燃比を特定空燃比から基準空燃比に切り換える代わりに、NOx触媒の各部分の平均温度がSOx除去可能温度よりも高くなったときに、各気筒の空燃比を特定空燃比から基準空燃比に切り換え、以後、NOx触媒の各部分の平均空燃比がSOx除去可能温度よりも低くなると各気筒の空燃比を基準空燃比から特定空燃比に切り換え、NOx触媒の各部分の平均温度がSOx除去可能温度よりも高くなると各気筒の空燃比を特定空燃比から基準空燃比に切り換えるようにしてもよい。
ところで、上述したように、NOx触媒10の上流側部分の温度が上記上限温度を超えたときに各気筒の空燃比を特定空燃比から基準空燃比に切り換えた後、各気筒の空燃比を基準空燃比に維持していれば、NOx触媒の各部分の温度はSOx除去可能温度となるはずである。しかしながら、この場合において、NOx触媒の上流側部分の温度が上記上限温度よりも低く且つNOx触媒の下流側部分の温度がSOx除去可能温度よりも低くなることもある。このときには、NOx触媒の上流側部分の温度が上記上限温度を超えるまでは、NOx触媒の温度を上昇させたとしてもNOx触媒の上流側部分の溶損が生じることはないし、NOx触媒の硫黄被毒回復を効率的の行うという観点からは、NOx触媒の温度を上昇させたほうが好ましい。
そこで、上述した実施形態では、硫黄被毒回復制御の実行中、各気筒の空燃比を基準空燃比に維持している間に、NOx触媒10の上流側部分の温度が上記上限温度よりも低く且つNOx触媒の下流側部分の温度がSOx除去可能温度よりも低くなったときには、各気筒の空燃比を基準空燃比から特定空燃比に切り換える。これによれば、NOx触媒の硫黄被毒回復が効率的に行われることになる。なお、このように各気筒の空燃比を基準空燃比から特定空燃比に切り換えた後、硫黄被毒回復制御の実行中にNOx触媒の上流側部分の温度が上記上限温度を超えたときには、各気筒の空燃比を特定空燃比から基準空燃比に切り換える。
なお、各気筒の空燃比を特定空燃比から基準空燃比に切り換えたり基準空燃比から特定空燃比に切り換えたりするに当たり、上述した実施形態では、NOx触媒10の上流側部分の温度、或いは、NOx触媒の下流側温度を考慮しているが、これは、NOx触媒の各部分の温度のうち上流側部分の温度が最も高く、NOx触媒の各部分温度のうち下流側の温度が最も低いであろうという前提に立ったからであって、硫黄被毒回復制御の実行中に各気筒の空燃比を切り換えるに際しては、NOx触媒の上流側部分の温度に限らず、NOx触媒の各部分のうち温度が最も高い部分の温度を考慮すればよいし、NOx触媒の下流側部分の温度に限らず、NOx触媒の各部分のうち温度が最も低い部分を考慮すればよい。
ところで、上述した実施形態では、硫黄被毒回復制御の実行中、各気筒の空燃比を基準空燃比に維持している間に、NOx触媒10の上流側部分の温度が上記上限温度よりも低く且つNOx触媒の下流側部分の温度がSOx除去可能温度よりも低くなったときには、各気筒の空燃比を基準空燃比から特定空燃比に切り換えている。この場合、NOx触媒の温度は全体的に上昇することになる。
ところが、これによると、NOx触媒10の下流側部分の温度がSOx除去可能温度に達する前にNOx触媒の上流側部分の温度が上記上限温度を超えてしまうこともありえるし、そもそも、温度を上昇させるべきNOx触媒の部分は温度が最も低い下流側部分である。したがって、NOx触媒の硫黄被毒回復を効率的に行うという観点では、NOx触媒の下流側部分の温度を重点的に上昇させるべきである。
そこで、上述した実施形態において、硫黄被毒回復制御の実行中、各気筒の空燃比を基準空燃比に維持している間にNOx触媒10の上流側部分の温度が上記上限温度よりも低く且つNOx触媒の下流側部分の温度がSOx除去可能温度よりも低くなったときに各気筒の空燃比を基準空燃比から特定空燃比に切り換える代わりに、以下のように各気筒の空燃比を制御してもよい。
すなわち、硫黄被毒回復制御の実行中、各気筒の空燃比を基準空燃比に維持している間に、NOx触媒10の上流側部分の温度が上記上限温度よりも低く且つNOx触媒の下流側部分の温度がSOx除去可能温度よりも低くなったときに、所定数の機関サイクル(1機関サイクルは、内燃機関において吸気行程、圧縮行程、膨張行程、および、排気行程の4つの行程が行われる間に相当する)が行われるまでの間、全ての気筒の空燃比をリッチ空燃比とし、そして、所定数の機関サイクルが行われた後は、同数の機関サイクルが行われるまでの間、全ての気筒の空燃比をリーン空燃比とし、以後、所定数の機関サイクル毎に全ての気筒の空燃比をリッチ空燃比とする制御と全ての気筒の機関空燃比をリーン空燃比とする制御とを交互に繰り返すようにしてもよい。
これによると、所定数の機関サイクルが行われる間は、全ての気筒からリッチ排気ガスが排出されるので、NOx触媒10にはリッチ排気ガスのみが流入する。ここで、リッチ排気ガス中の酸素は極めて少なく、NOx触媒内の酸素も極めて少ないので、NOx触媒に流入したリッチ排気ガス中のHCは、酸化反応しないままNOx触媒の上流側部分から下流側部分へとゆっくりと移動する。そして、HCがNOx触媒の下流側部分に移動している間に、所定数の機関サイクルが行われ、今度は、全ての気筒からリーン排気ガスが排出されるので、NOx触媒にはリーン排気ガスのみが流入する。ここで、リーン排気ガス中のHCは極めて少なく、先にNOx触媒に流入した排気ガス中のHCはNOx触媒の下流側部分へ移動しているので、NOx触媒に流入したリーン排気ガス中の酸素は、HCの燃焼に消費されずにそのままNOx触媒の上流側部分から下流側部分へと移動する。そして、この酸素がNOx触媒の下流側部分に達したとき、そこに溜まっているHCがこの酸素と酸化反応し、反応熱が発生する。これによれば、NOx触媒の上流側部分の温度を上昇させることなく(或いは、ほとんど上昇させることなく)、NOx触媒の下流側部分の温度を上昇させることができる。このため、NOx触媒の硫黄被毒回復が効率的に行われる。
なお、上述した実施形態において、硫黄被毒回復制御の実行中、NOx触媒10の下流側部分の温度を上昇させるために、全ての気筒の空燃比をリッチ空燃比としたりリーン空燃比としたりする場合におけるリッチ空燃比のリッチ度合とリーン空燃比のリーン度合とは、リッチ排気ガスによってNOx触媒に供給されるHCがリーン排気ガスによってNOx触媒に供給される酸素によって過不足なく消費されるように制御される。
なお、上述した実施形態において、温度を上昇させるべき部分がNOx触媒10の下流側部分ではなく、NOx触媒の上流側部分であるとき(すなわち、NOx触媒の上流側部分の温度が最も低いとき)には、各気筒の空燃比を特定空燃比とする。すなわち、上述した実施形態では、NOx触媒の最も温度が高い部分の温度が上記上限温度よりも低く且つNOx触媒の最も温度が低い部分の温度がSOx除去可能温度よりも低くなったときに、NOx触媒の最も温度が低い部分が下流側部分であるときには、所定数の機関サイクル毎に全ての気筒の機関空燃比をリッチ空燃比とする制御と全ての気筒の機関空燃比をリーン空燃比とする制御とを交互に行い、一方、NOx触媒の最も温度が低い部分が上流側部分であるときには、各気筒の空燃比を特定空燃比とすることになる。
また、NOx触媒10の最も温度が高い部分の温度が上記上限温度よりも低く且つNOx触媒の最も温度が低い部分の温度がSOx除去可能温度よりも低くなったときに、NOx触媒の最も温度が低い部分が上流側部分と下流側部分との間の部分(以下「中間部分」という)であるときには、この中間部分の温度を上昇させるためには、NOx触媒の最も温度が低い部分が下流側部分である場合と同様に、HCと酸素とを上流側部分で反応させずに中間部分まで供給すべきである。したがって、この場合には、所定数の機関サイクル毎に全ての気筒の空燃比をリッチ空燃比とする制御と全ての気筒の空燃比をリーン空燃比とする制御とを交互に行う。
なお、上述した例において、NOx触媒10の上端面からNOx触媒の中間部分までの距離(すなわち、HCおよび酸素を反応させずにNOx触媒内を移動させるべき距離が)は、NOx触媒の上端面からNOx触媒の下流側部分までの距離よりも短いことから、NOx触媒の最も温度が低い部分が中央部分である場合には、NOx触媒の最も温度が低い部分が下流側部分である場合に比べて、全ての気筒の空燃比をリッチ空燃比とする制御と全ての気筒の空燃比をリーン空燃比とする制御とを切り換えるタイミングを決定する上記機関サイクルの数を少なくすることが好ましい。
ところで、上述した硫黄被毒回復制御はNOx触媒10からSOxが十分に除去されたと判断されると終了される。ここで、全ての気筒の空燃比を内燃機関の運転状態に応じて設定される同じ空燃比とする制御(以下「通常空燃比制御」という)を再開してもよいが、本実施形態では、通常空燃比制御を再開する前に以下の空燃比制御(以下「終了時空燃比制御」という)を行う。
すなわち、各気筒群に対応する排気枝管5,6には、それぞれ、三元触媒8,9が配置されている。硫黄被毒回復制御の実行中は、一方の三元触媒8にはリッチ排気ガスのみが流入し、もう一方の三元触媒9にはリッチ排気ガスのみが流入する。このように、硫黄被毒回復制御の実行中、各三元触媒には、HCか酸素のいずれか一方しか供給されないので、各三元触媒内でHCの酸化反応が起こらず、したがって、各三元触媒の温度は低くなっている。三元触媒は、その温度が或る一定の温度(いわゆる活性温度)以上であるときに浄化作用を行うので、硫黄被毒回復制御の終了後、すぐに上記通常空燃比制御を再開してしまうと、各三元触媒は浄化作用を行わないか、或いは、浄化作用を行ったとしても高い浄化率を発揮しないことになる。
そこで、硫黄被毒回復制御の終了後であって通常空燃比制御の開始前に行う終了時空燃比制御では、各気筒群において、一部の気筒の空燃比をリッチ空燃比とすると共に残りの気筒の空燃比をリーン空燃比とする。すなわち、図示した例では、例えば、第1気筒群では、第1気筒の空燃比をリッチ空燃比とすると共に第4気筒の空燃比をリーン気筒とし、第2気筒群では、第2気筒の空燃比をリッチ空燃比とすると共に第3気筒の空燃比をリーン空燃比とする。これにより、各三元触媒8,9にHCと酸素とが供給され、各三元触媒においてHCと酸素とが反応して熱を発するので、各三元触媒の温度が上昇せしめられる。そして、各三元触媒の温度が活性温度に達したとき(或いは、達したと推定されたとき)、当該終了時空燃比制御を終了する。
なお、上記終了時空燃比制御において、各気筒群の気筒の空燃比は、リッチ排気ガスによって各三元触媒8,9に供給されるHCがリーン排気ガスによって各三元触媒に供給される酸素によって過不足なく消費されるように、すなわち、各三元触媒に流入する排気ガスの平均空燃比が理論空燃比となるように制御される。
また、上述した終了時空燃比制御では、各気筒群において一部の気筒の空燃比をリッチ空燃比とすると共に残りの気筒の空燃比をリーン空燃比としているが、これに代えて、各気筒の空燃比を交互にリッチ空燃比とリーン空燃比とすることによって、各三元触媒8,9にHCと酸素とを供給するようにしてもよい。なお、この場合にも、各気筒の空燃比は、各三元触媒に流入する排気ガスの平均空燃比が理論空燃比となるように制御される。
図3は、上述した実施形態に従って硫黄被毒回復制御を実行するルーチンの一例である。図3に示したルーチンでは、まず、ステップ10において、硫黄被毒回復制御の実行が要求されているか否かが判別される。ここで、硫黄被毒回復制御の実行が要求されていると判別されたときには、ルーチンはステップ11に進む。一方、硫黄被毒回復制御の実行が要求されていないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。なお、この例では、NOx触媒10に保持されているSOxの量が所定量よりも多くなったことをもって硫黄被毒回復制御の実行が要求される。
ステップ11では、そのときのNOx触媒10の上流側部分の温度と吸気量とに基づいて上述した特定空燃比(リッチ気筒に関しては、リッチ空燃比であり、リーン気筒に関しては、リーン空燃比である)が算出される。次いで、ステップ12において、燃料噴射量制御Iが実行される。この燃料噴射量制御Iでは、各気筒の空燃比が特定空燃比となるように燃料噴射量が制御される。
次いで、ステップ13において、硫黄被毒回復制御の終了が要求されているか否かが判別される。ここで、硫黄被毒回復制御の終了が要求されていないときには、ルーチンはステップ14に進む。一方、硫黄被毒回復制御の終了が要求されているときには、ルーチンはステップ18に進む。
ステップ14では、NOx触媒10の上流側部分の温度Tmaxが上限温度TH以上になっている(Tmax≧TH)か否かが判別される。ここで、Tmax<THであると判別されたときには、ルーチンはステップ12に戻り、以後、ステップ14にてTmax≧THであると判別されるまで、ステップ12とステップ13とが繰り返される。一方、ステップ14において、Tmax≧THであると判別されたときには、ルーチンはステップ15に進んで、燃料噴射量制御IIが実行される。この燃料噴射量制御IIでは、各気筒の空燃比が基準空燃比となるように燃料噴射量が制御される。
次いで、ステップ16において、硫黄被毒回復制御の終了が要求されているか否かが判別される。ここで、硫黄被毒回復制御の終了が要求されていないときには、ルーチンはステップ17に進む。一方、硫黄被毒回復制御の終了が要求されているときには、ルーチンはステップ18に進む。
ステップ17では、NOx触媒10の上流側部分の温度Tmaxが上限温度THよりも低く且つNOx触媒の下流側部分の温度TminがSOx除去可能温度Tsよりも低い(Tmax<THかつTmin<Ts)か否かが判別される。ここで、Tmax≧THまたはTmin≧Tsであると判別されたときには、ルーチンはステップ15に戻り、以後、ステップ17にてTmax<THかつTmin<Tsであると判別されるまで、ステップ15とステップ16とが繰り返される。一方、ステップ17において、Tmax<THかつTmin<Tsであると判別されたときには、ルーチンはステップ12に進んで、燃料噴射量制御Iが実行される。
ステップ13またはステップ16において、硫黄被毒回復制御の終了が要求されていると判別されたときに進むステップ18では、上述した終了時空燃比制御が行われる。次いで、ステップ19において、三元触媒8,9の温度Tcが活性温度Ta以上となっている(Tc≧Ta)か否かが判別される。ここで、Tc<Taであると判別されたときには、ルーチンはステップ18に戻り、以後、ステップ19にてTc≧Taであると判別されるまで、ステップ18が繰り返される。一方、ステップ19において、Tc≧Taであると判別されたときには、ルーチンはステップ20に進んで、上述した通常空燃比制御が実行される。
ところで、本発明の実施形態では、三元触媒8,9上流の空燃比センサ11,12および三元触媒とNOx触媒10との間の空燃比センサ13として、リニア空燃比センサを採用し、NOx触媒下流の空燃比センサ14として、O2センサを採用している。そして、本実施形態では、これらセンサからの出力に基づいて、各気筒の空燃比を目標とする空燃比に制御している。そこで、最後に、こうした空燃比の制御の一例として、まず、通常空燃比制御の実行中に各気筒の空燃比を理論空燃比に制御する制御(以下「通常ストイキ制御」という)を説明し、その後、硫黄被毒回復制御の実行中に各気筒の空燃比を所定の空燃比(すなわち、リッチ気筒ではリッチ空燃比であり、リーン気筒ではリーン空燃比である)に制御する制御(以下「硫黄被毒回復空燃比制御」という)を説明する。
リニア空燃比センサは、図4に示されている特性でもって電流を出力する。すなわち、リニア空燃比センサは、排気ガスの空燃比が理論空燃比であるとき、0Aの電流を出力し、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるほど大きな0A以下の電流を出力し、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるほど大きな0A以上の電流を出力する。すなわち、リニア空燃比センサは、排気ガスの空燃比に応じてリニアに変化する電流を出力する。
一方、O2センサは、図5に示されている特性でもって電圧を出力する。すなわち、O2センサは、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるとき、略0Vの電圧を出力し、理論空燃比よりもリッチであるとき、略1Vの電圧を出力する。そして、出力電圧は、排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍にある領域で急激に変化して、0.5Vを横切る。すなわち、O2センサは、排気ガスの空燃比が理論空燃比に対してリーンであるかリッチであるかに応じて異なる一定の電圧を出力する。
そして、通常ストイキ制御の実行中は、三元触媒8,9上流のリニア空燃比センサ11,12が排気ガスの空燃比(以下「排気空燃比」という)が理論空燃比よりもリーンであることを示しているときには、対応する気筒の空燃比は理論空燃比よりもリーンであるので、対応する気筒の空燃比が理論空燃比に近づくように燃料噴射弁から噴射される燃料の量(以下「燃料噴射量」という)が増量される。逆に、リニア空燃比センサ11,12が排気空燃比が理論空燃比よりもリッチであることを示しているときには、対応する気筒の空燃比が理論空燃比に近づくように燃料噴射量が減量される。
このように燃料噴射量を制御することにより、基本的には、各気筒の空燃比(機関空燃比)は理論空燃比に制御されるはずである。ところが、リニア空燃比センサ11,12に出力誤差があると、機関空燃比は理論空燃比に制御されない。例えば、リニア空燃比センサが実際の排気空燃比に対応する電流値よりもリッチ側にずれた空燃比に対応する電流値を出力してしまう傾向にあると、実際の排気空燃比が理論空燃比になっていたとしても、リニア空燃比センサは、排気空燃比が理論空燃比よりもリッチであることを示してしまう。この場合、燃料噴射量が少なくされ、結果的に、機関空燃比は理論空燃比よりもリーンに制御されてしまう。逆に、リニア空燃比センサが実際の排気空燃比に対応する電流値よりもリーン側にずれた空燃比に対応する電流値を出力してしまう傾向にあると、機関空燃比は理論空燃比よりもリッチに制御されてしまう。
そこで、本実施形態では、こうしたリニア空燃比センサ11,12の出力誤差をNOx触媒10下流のO2センサ14の出力値を利用して補償する。すなわち、リニア空燃比センサに出力誤差がなく、機関空燃比が理論空燃比に制御されていれば、NOx触媒から流出する排気ガスの空燃比は理論空燃比になっているはずであり、このとき、O2センサは理論空燃比に対応する0.5V(以下「基準電圧値」という)を出力する。
しかしながら、リニア空燃比センサ11,12に出力誤差があって、例えば、機関空燃比が理論空燃比よりもリッチに制御されていると、NOx触媒10から流出する排気ガスの空燃比は理論空燃比よりもリッチになっている。このとき、O2センサ14は理論空燃比よりもリッチな空燃比に対応する電圧値を出力する。ここで、このときにO2センサから出力される電圧値と基準電圧値との差は、リニア空燃比センサの出力誤差を示している。そこで、本実施形態では、このO2センサから実際に出力される電圧値と基準電圧値との差に基づいて、リニア空燃比センサの出力誤差が補償されるように、リニア空燃比センサの出力電流値を補正する。
逆に、リニア空燃比センサ11,12に出力誤差があって、機関空燃比が理論空燃比よりもリーンに制御されているときにも、O2センサ14から出力される電圧値と基準電圧値との差に基づいて、リーン空燃比センサの出力誤差が補償されるように、リニア空燃比センサの出力電流値を補正する。
次に、本実施形態の通常ストイキ制御をより具体的に説明する。本実施形態では、機関空燃比を理論空燃比とするのに基準となる燃料噴射弁の開弁時間(以下「基準開弁時間」という)が次式1に従って決定される。
TAUB=α×Ga/Ne …(1)
ここで、αは定数、Gaは吸入空気量(気筒に吸入される空気の量)、Neは機関回転数である。すなわち、本実施形態によれば、基準開弁時間は、単位機関回転数当たりの吸入空気量に基づいて算出され、単位機関回転数当たりの吸入空気量が多いほど長くなる傾向にある。
そして、燃料噴射弁の実際の開弁時間(以下「実開弁時間」という)TAUが次式2に従って算出される。
TAU=TAUB×F1×β×γ …(2)
ここで、F1は後述するようにして求められる補正係数(以下「メイン補正係数」ともいう)であり、β,γはそれぞれ機関運転状態に応じて決まる定数である。
また、メイン補正係数F1は、次式3に従って算出される。
F1=Kp1×(I−F2−I0)+Ki1×∫(I−F2−I0)dt+Kd1×d(I−F2−I0)/dt …(3)
ここで、I0は排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときにリニア空燃比センサ11,12から出力されるべき電流値であり、Iはリニア空燃比センサ11,12から実際に出力される電流値であり、F2は後述するようにして求められる補正係数(以下「サブ補正係数」ともいう)であり、Kp1は比例ゲインであり、Ki1は積分ゲインであり、Kd1は微分ゲインである。すなわち、これによれば、メイン補正係数F1はPID制御されることになる。
一方、サブ補正係数F2は、次式4に従って算出される。
F2=Kp2×(V0−V)+Ki2×∫(V0−V)dt+Kd2×d(V0−V)/dt …(4)
ここで、V0は排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときにO2センサ14から出力されるべき電圧値であり、VはO2センサ14から実際に出力される電圧値であり、Kp2は比例ゲインであり、Ki2は積分ゲインであり、Kd2は微分ゲインである。すなわち、これによれば、サブ補正係数F2もPID制御されることになる。
こうして、本実施形態によれば、機関空燃比が理論空燃比に維持される。
次に、本実施形態の硫黄被毒回復空燃比制御について、NOx触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比となるように各気筒の空燃比を特定空燃比に制御する場合を例に説明する。本実施形態では、硫黄被毒回復制御の実行中、NOx触媒10に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比に制御する場合、機関空燃比を理論空燃比とするのに基準となる燃料噴射量(以下「基準燃料噴射量」という)を、リッチ気筒では所定量だけ多くして機関空燃比を特定空燃比にすると共にリーン気筒では前記所定量と同じ量だけ少なくして機関空燃比を特定空燃比にする。これにより、一方の気筒群からはリッチ空燃比の排気ガスが排出されると共に他方の気筒群からはリーン空燃比の排気ガスが排出され、理論的には、NOx触媒に流入する排気ガスの空燃比は理論空燃比となる。
ところが、実際には、燃料噴射弁の性能のバラツキなどの理由から、NOx触媒10に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比とならないことが多い。ここで、例えば、NOx触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときには、リニア空燃比センサ13がリッチ空燃比に対応する電流値を出力する。そこで、本実施形態では、リニア空燃比センサがリッチ空燃比に対応する電流値を出力したときには、リッチ気筒における燃料噴射量を少なくするか、或いは、リーン気筒における燃料噴射量を少なくするか、或いは、これらを組み合わせるかして、NOx触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比に近づくようにする。
逆に、リニア空燃比センサ13がリーン空燃比に対応する電流値を出力したときには、リッチ気筒における燃料噴射量を多くするか、或いは、リーン気筒における燃料噴射量を多くするか、或いは、これらを組み合わせるかして、NOx触媒10に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比に近づくようにする。
このように各気筒における燃料噴射量を制御したとき、リニア空燃比センサ13に出力誤差がなければ、NOx触媒10に流入する排気ガスの空燃比は理論空燃比に制御されることになる。ところが、リニア空燃比センサに出力誤差があり、例えば、リニア空燃比センサがよりリッチ側の空燃比に対応する電流値を出力する傾向にあると、NOx触媒に流入する排気ガスの空燃比は理論空燃比よりもリーンに制御されてしまうことになる。逆に、リニア空燃比センサがよりリーン側の空燃比に対応する電流値を出力する傾向にあると、NOx触媒に流入する排気ガスの空燃比は理論空燃比よりもリッチに制御されてしまうことになる。
ここで、例えば、NOx触媒10に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるとき、上述したように、O2センサ14は基準電圧値(排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときにO2センサが出力する電圧値)よりもリッチ側の空燃比に対応する電圧値を出力する。そして、このO2センサが実際に出力する電圧値と基準電圧値との差は、リニア空燃比センサ13の出力誤差を示している。そこで、本実施形態では、このO2センサから実際に出力される電圧値と基準電圧値との差に基づいて、リニア空燃比センサの出力誤差が補償されるように、リニア空燃比センサの出力電流値を補正する。
逆に、NOx触媒10に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときにも、O2センサ14から実際に出力される電圧値と基準電圧値との差に基づいて、リニア空燃比センサ13の出力誤差が補償されるように、リニア空燃比センサの出力電流値を補正する。
次に、本実施形態の硫黄被毒回復空燃比制御をより具体的に説明する。本実施形態では、基準開弁時間(機関空燃比を理論空燃比とするのに基準となる燃料噴射弁の開弁時間)が次式5に従って決定される。
TAUB=α×Ga/Ne …(5)
この式5は上式1と同じであり、αは定数、Gaは吸入空気量、Neは機関回転数である。
そして、リッチ空燃比で燃焼を行わせる気筒における実開弁時間(燃料噴射弁の実際の開弁時間)TAURが次式6に従って算出され、リーン空燃比で燃焼を行わせる気筒における実開弁時間TAULが次式7に従って算出される。
TAUR=TAUB×R×F3×β×γ …(6)
TAUL=TAUB×L×F3×β×γ …(7)
ここで、Rは1よりも大きい値であって燃料噴射量が多くなるように基準開弁時間を長くするための定数であり、Lは1よりも小さい値であって燃料噴射量が少なくなるように基準開弁時間を短くするための定数であり、F3は後述するようにして求められる補正係数(以下「硫黄被毒回復メイン補正係数」ともいう)であり、β,γはそれぞれ機関運転状態に応じて決まる定数である。
そして、硫黄回復被毒メイン補正係数F3は、次式8に従って算出される。
F3=Kp3×(I−F4−I0)+Ki3×∫(I−F4−I0)dt+Kd3×d(I−F4−I0)/dt …(8)
ここで、I0は排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときにリニア空燃比センサ13から出力されるべき電流値であり、Iはリニア空燃比センサ13から実際に出力される電流値であり、F4は後述するようにして求められる補正係数(以下「硫黄被毒回復サブ補正係数」ともいう)であり、Kp3は比例ゲインであり、Ki3は積分ゲインであり、Kd3は微分ゲインである。すなわち、これによれば、硫黄被毒回復メイン補正係数F1はPID制御されることになる。
一方、硫黄被毒回復サブ補正係数F4は、次式9に従って算出される。
F4=Kp4×(V0−V)+Ki4×∫(V0−V)dt+Kd4×d(V0−V)/dt …(9)
ここで、V0は排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときにO2センサ14から出力されるべき電圧値であり、VはO2センサ14から実際に出力される電圧値であり、Kp4は比例ゲインであり、Ki4は積分ゲインであり、Kd4は微分ゲインである。すなわち、これによれば、硫黄被毒回復サブ補正係数F4もPID制御されることになる。
こうして、本実施形態によれば、硫黄被毒回復制御の実行中、NOx触媒10に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比に維持される。