JP4479071B2 - 球状多孔体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は球状多孔体の製造方法に関し、より詳しくは、球状多孔体の含有比率および球状多孔体の粒径の均一性を高くすることの可能な球状多孔体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
直径1.5〜50nmのメソ孔が非常に規則的に配列したシリカ系の多孔体が、特定のシリカ原料と界面活性剤から得られることが見出されて以来(例えば、C. T. Kresge et al., Nature, vol.359, p710, 1992、S. Inagaki et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 680, 1993等参照)、規則性メソ多孔体の合成および機能開発の研究が積極的に行われてきた。
【0003】
例えば、Andersonらは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等の界面活性剤と水酸化ナトリウムとを含む水/メタノール溶液中で、テトラメトキシシランを反応させ多孔体を得る場合において、メタノールを特定の濃度にすることにより室温で簡単に多孔体を得ることができることを報告している(M. T. Anderson et al., Chem. Mater. 10, 1490-1500, 1998)。また、特開平10−328558号公報には、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の界面活性剤を含む水溶液中で、アルコキシシランを酸性条件下で反応させることにより球状の多孔体が得られることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Andersonらの方法により得られる多孔体は、ファイバー状、紡錘状(回転楕円体状)、および球状の多孔体の混合物となり形状の均一性に劣るために、多孔体を容器に充填した場合の充填率や、多孔体を圧粉して得られる圧縮成形物の密度を高くすることが困難となり、例えば、吸着材として用いる場合における単位体積当たりの吸着容量を大きくすることができないという問題があった。
【0005】
また、特開平10−328558号公報に開示の方法によれば球状の多孔体が得られるため、上記の方法に比較して充填率や密度の問題は生じ難いものの、球状以外の形状の多孔体が一部得られたり、粒径のばらつきが大きくなる場合があった。加えて、多孔体の耐湿性等の経時安定性が劣る場合があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、形状が球状の多孔体を高比率で得ることができ、さらに、多孔体の粒径の均一性を向上させることが可能な球状多孔体の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造のアルキルアンモニウムハライドを界面活性剤として用い、この界面活性剤とシリカ原料を特定の濃度となるように水に溶解させ、塩基性条件下で反応させる方法により、形状が球状の多孔体を高比率で得ることができ、さらに、多孔体の粒径の均一性を向上させることが可能であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、シリカ原料と界面活性剤と水とを含む溶液中で、塩基性条件下で該シリカ原料を反応させる球状多孔体の製造方法であって、前記界面活性剤は下記一般式(1)で表されるアルキルアンモニウムハライドであり、前記界面活性剤の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.001〜0.027mol/Lであり、前記シリカ原料の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.01〜0.25mol/Lであり、さらに、前記界面活性剤のモル数は、前記シリカ原料中のケイ素原子のモル数の1/10以上であることを特徴とする方法を提供するものである。
【0009】
【化2】
[式中、R1、R2およびR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、Xはハロゲン原子、nは8〜14の整数をそれぞれ示す。]
本発明においては、上記のように、炭素数が9〜15の長鎖アルキル基を有するアルキルアンモニウムハライドを界面活性剤として用い、この界面活性剤とシリカ原料を上記の濃度および比率となるように水に溶解させ、塩基性条件下で反応させるために、形状が球状の多孔体を高比率で得ることができ、さらに、得られる多孔体の粒径の均一性を向上させることが可能となる。
【0010】
本発明においては、前記界面活性剤はデシルトリメチルアンモニウムハライドであり、前記界面活性剤の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.01〜0.02mol/Lであり、さらに、前記シリカ原料の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.02〜0.03mol/Lであることが好ましい。また、前記界面活性剤はドデシルトリメチルアンモニウムハライドであり、前記界面活性剤の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.01〜0.02mol/Lであり、さらに、前記シリカ原料の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.02〜0.03mol/Lであることが好ましい。界面活性剤として上記のような種類のものを用い、界面活性剤とシリカ原料の濃度が上記の範囲内である場合は、得られる球状多孔体の粒径の均一性が特に優れる傾向にある。
【0011】
本発明においては、また、前記シリカ原料は、アルコキシシラン、ケイ酸ナトリウム、層状シリケートおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも1つのシリカ原料であることが好ましい。シリカ原料として上記のものを用いることにより、球状多孔体の比率や粒径の均一性がより高くなる傾向にある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、シリカ原料と界面活性剤と水とを含む溶液中で、塩基性条件下で該シリカ原料を反応させる球状多孔体の製造方法であって、前記界面活性剤は下記一般式(1)で表されるアルキルアンモニウムハライドであり、前記界面活性剤の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.001〜0.027mol/Lであり、前記シリカ原料の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.01〜0.25mol/Lであり、さらに、前記界面活性剤のモル数は、前記シリカ原料中のケイ素原子のモル数の1/10以上であることを特徴とする。
【0013】
【化3】
[式中、R1、R2およびR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、Xはハロゲン原子、nは8〜14の整数をそれぞれ示す。]
本発明において用いられるシリカ原料は、反応によりケイ素酸化物(ケイ素複酸化物を含む)を形成可能なものであればよく特に制限されないが、反応効率や得られるケイ素酸化物の物性の観点から、アルコキシシラン、ケイ酸ナトリウム、層状シリケート、シリカ、または、これらの任意の混合物を用いることが好ましい。
【0014】
アルコキシシランとしては、アルコキシ基を4個有するテトラアルコキシシラン、アルコキシ基を3個有するトリアルコキシシラン、アルコキシ基を2個有するジアルコキシシランを用いることができる。アルコキシ基の種類は特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のようにアルコキシ基中の炭素原子の数が比較的少ないもの(炭素数として1〜4程度のもの)が反応性の点から有利である。また、アルコキシシランが有するアルコキシ基が3または2個である場合は、アルコキシシラン中のケイ素原子には有機基、水酸基等が結合していてもよく、当該有機基はアミノ基やメルカプト基等の官能基をさらに有していてもよい。
【0015】
本発明において用いることのできるテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられ、トリアルコキシシランとしては、トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、ジアルコキシシランとしては、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等が挙げられる。
【0016】
本発明において上記アルコキシシランは、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。また、上記のアルコキシ基を2〜4個有するアルコキシシランは、アルコキシ基を1個有するモノアルコキシシランと組み合わせて使用することも可能である。このようにして用いることのできるモノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
アルコキシシランは、加水分解によりシラノール基を生じ、生じたシラノール基同士が縮合することによりケイ素酸化物が形成される。この場合において、分子中のアルコキシ基の数が多いアルコキシシランは、加水分解および縮合で生じる結合が多くなる。したがって、本発明において、アルコキシ基の多いテトラアルコキシシランをアルコキシシランとして用いることが好ましく、テトラアルコキシシランとしては、反応速度の観点からテトラメトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0018】
本発明においてシリカ原料として用いられるケイ酸ナトリウムとしては、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)等が挙げられる。ケイ酸ナトリウムとしては、このような単一物質の他、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のように組成が場合により異なるものを使用することもできる。
【0019】
層状シリケートとしては、カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si2O5)、マカタイト(Na2Si4O9・5H2O)、アイアライト(Na2Si8O17・xH2O)、マガディアイト(Na2Si14O17・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si20O41・xH2O)等が挙げられる。また、セピオライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、雲母、カオリナイト、スメクタイト等の粘土鉱物を酸性水溶液で処理してシリカ以外の元素を除去したものも層状シリケートとして使用可能である。
【0020】
本発明においてシリカ原料として用いられるシリカとしては、Ultrasil(Ultrasil社)、Cab-O-Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ;コロイダルシリカ;Aerosil(Degussa-Huls社)等のフュームドシリカを挙げることができる。
【0021】
上記のシリカ原料は、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。2種類以上のシリカ原料を用いる場合は、球状多孔体の製造時の反応条件が複雑化することがあるため、本発明においてはシリカ原料は単独で使用することが好ましい。
【0022】
本発明において用いられる界面活性剤は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0023】
【化4】
[式中、R1、R2およびR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、Xはハロゲン原子、nは8〜14の整数をそれぞれ示す。]
一般式(1)におけるR1、R2、R3は同一でも異なっていてもよいが、界面活性剤分子の対称性の観点から同一であることが好ましい。界面活性剤分子の対称性が優れる場合は、界面活性剤同士の凝集(ミセルの形成等)が容易となる傾向にある。また、R1、R2、R3のうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましく、R1、R2、R3の全てがメチル基であることがより好ましい。また、上記一般式(1)におけるnは9〜13の整数であることが好ましく、9、11または13であることがさらに好ましい。Xのハロゲン原子の種類は特に制限されないが、入手の容易さの観点からXは塩素原子または臭素原子であることが好ましい。
【0024】
したがって、上記一般式(1)で表される界面活性剤としては、R1、R2、R3の全てがメチル基であるアルキルトリメチルアンモニウムハライドであることが好ましい。アルキルトリメチルアンモニウムハライドとしては、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムハライドが好ましい。なかでも、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライドが特に好ましい。デシルトリメチルアンモニウムハライドとしてはデシルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミドが好ましく、ドデシルトリメチルアンモニウムハライドとしてはドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが好ましい。
【0025】
このような界面活性剤は、シリカ原料と共に水中で複合体を形成する。複合体中のシリカ原料は反応によりケイ素酸化物へと変化するが、界面活性剤が存在している部分ではケイ素酸化物が生成しないため、界面活性剤が存在している部分に孔が形成されることになる。すなわち、界面活性剤は孔形成のためのテンプレートとして機能する。本発明において、界面活性剤は1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いることが可能であるが、上記のように界面活性剤はシリカ原料の反応生成物に孔を形成させる際のテンプレートとして働き、その種類は多孔体の孔の形状に大きな影響を与えるため、より均一な球状多孔体が得るためには、界面活性剤は1種類のみを用いることが好ましい。
【0026】
本発明においては、上述したようなシリカ原料と界面活性剤と水とを含む溶液中で、シリカ原料を塩基性条件下で反応させる。シリカ原料は、一般に塩基性条件下においても酸性条件下においても反応が生じケイ素酸化物へと変化するが、本発明におけるシリカ原料と界面活性剤の濃度は従来技術の方法に比較してかなり低いものとなっているために、酸性条件下では反応がほとんど進行しない。したがって、本発明においては塩基性条件下でシリカ原料を反応させる必要がある。なお、シリカ原料は、酸性条件で反応させる場合よりも塩基性条件で反応させる場合の方がケイ素原子の反応点が増加し、耐湿性や耐熱性等の物性に優れたケイ素酸化物を得ることができるため、本発明の方法はこの点においても有利である。
【0027】
上記溶液を塩基性にするためには、通常、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性物質を添加する。反応時の塩基性条件に関しては特に制限されないが、添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1〜0.9となるようにすることが好ましい。この値は、0.2〜0.5であることがより好ましい。添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1未満である場合は、収率が極端に低下してしまう傾向があり、0.9を超える場合は、多孔体の形成が困難となる傾向がある。
【0028】
本発明においては、上述した界面活性剤の濃度を上記溶液の全容量を基準として0.001〜0.027mol/Lとし、上述したシリカ原料の濃度を上記溶液の全容量を基準として0.01〜0.25mol/Lとし、さらに、界面活性剤のモル数を、シリカ原料中のケイ素原子のモル数の1/10以上とする。
【0029】
本発明においては、界面活性剤およびシリカ原料の濃度および比率を上記のように厳密に制御することによって、形状が球状の多孔体を高比率で得ることが可能となり、さらに、多孔体の粒径の均一性を向上させることが可能となる。濃度および比率が上記のような範囲内にない場合、例えば、界面活性剤の濃度が0.01mol/L未満である場合は、テンプレートとなるべき界面活性剤の量が不足するために多孔体を得ることができない。一方、0.027mol/Lを超す場合は、形状が球状である多孔体を高比率で得ることができず、多孔体の粒径の均一性も低下する。また、シリカ原料の濃度が0.01mol/L未満である場合は、生成する粒子が非常に細かく回収が非常に困難であり、0.15mol/Lを超える場合は、形状が球状である多孔体の比率および多孔体の粒径の均一性が低くなる。
【0030】
本発明においては、界面活性剤としてデシルトリメチルアンモニウムハライドを用い、シリカ原料と界面活性剤と水とを含む溶液の全容量を基準として、界面活性剤の濃度を0.005〜0.025mol/Lとし、シリカ原料の濃度を上記溶液の全容量を基準として0.01〜0.15mol/Lとして、さらに、上記界面活性剤のモル数を上記シリカ原料中のケイ素原子のモル数の1/10以上とし、シリカ原料を反応させることが好ましい。
【0031】
この場合において、界面活性剤の濃度は0.005〜0.02mol/Lであることがより好ましく、0.01〜0.02mol/Lであることがより好ましい。また、シリカ原料の濃度は0.01〜0.1mol/Lであることがより好ましく、0.01〜0.05mol/Lであることがさらに好ましく、0.02〜0.03mol/Lであることが特に好ましい。界面活性剤の濃度が0.01〜0.02mol/Lであり、且つシリカ原料の濃度が0.02〜0.03mol/Lである場合は、得られる球状多孔体の粒径の均一性が特に高くなる。例えば、得られる全ての多孔体粒子の粒径が平均粒径の±20%の範囲内となるようにすることが可能である(実施例4参照)。
【0032】
本発明においては、また、界面活性剤としてドデシルトリメチルアンモニウムハライドを用い、シリカ原料と界面活性剤と水とを含む溶液の全容量を基準として、界面活性剤の濃度を0.001〜0.025mol/Lとし、シリカ原料の濃度を上記溶液の全容量を基準として0.01〜0.15mol/Lとして、さらに、上記界面活性剤のモル数を上記シリカ原料中のケイ素原子のモル数の1/10以上とし、シリカ原料を反応させることが好ましい。
【0033】
この場合において、界面活性剤の濃度は0.005〜0.02mol/Lであることがより好ましく、0.01〜0.02mol/Lであることがより好ましい。また、シリカ原料の濃度は0.01〜0.1mol/Lであることがより好ましく、0.01〜0.05mol/Lであることがさらに好ましく、0.02〜0.03mol/Lであることが特に好ましい。界面活性剤の濃度が0.01〜0.02mol/Lであり、且つシリカ原料の濃度が0.02〜0.03mol/Lである場合は、得られる球状多孔体の粒径の均一性が特に高くなる。例えば、得られる全ての多孔体粒子の粒径が平均粒径の±20%の範囲内となるようにすることが可能である(実施例2参照)。
【0034】
本発明においては、上記のように、炭素数が9〜15の長鎖アルキル基を有するアルキルアンモニウムハライドを界面活性剤として用いる。アルキル基の炭素数が9〜15のアルキルトリメチルアンモニウムハライドに代えて、アルキル基の炭素数が9未満または15超のアルキルトリメチルアンモニウムハライドを用いた場合は、球状多孔体が得られなかったり、得られた場合であっても、球状以外の形状の多孔体が混入していたり粒径の均一性が劣るようになったりする。
【0035】
このように、従来技術では多孔体を形成可能な、アルキル基の炭素数が9未満または15超のアルキルトリメチルアンモニウムハライド界面活性剤であっても本発明の方法では球状多孔体を形成できないのは、本発明の方法においては、シリカ原料および界面活性剤の濃度が従来技術の方法に比較してかなり低いものとなっているためであると考えられる。
【0036】
本発明においては、界面活性剤のモル数はシリカ原料中のケイ素原子のモル数の1/10以上となるようにする必要がある(以下、界面活性剤のモル数とシリカ原料中のケイ素原子のモル数の比を、界面活性剤/Siと呼ぶことがある)。上述のように、界面活性剤はシリカ原料の反応生成物に孔を形成させる際のテンプレートとして働き、界面活性剤/Siが1/10未満である場合は、テンプレートが形成されなかったり形成されても不安定になったりするため、多孔体が形成できない。一方、界面活性剤/Siが大きな値であっても球状多孔体が形成される(ただし、界面活性剤とシリカ原料の濃度は上記範囲内でなければならない)。これは、反応途中でシリカ原料と複合体を形成しなかった界面活性剤は、余剰分としてシリカ原料の反応に影響を及ぼすことなく溶液中で安定に存在可能であるからである。本発明においては、界面活性剤/Siは1/5以上であることがより好ましく、界面活性剤の余剰分を低減する観点から、界面活性剤/Siは1/5〜1/1であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の球状多孔体の製造方法における、シリカ原料の反応条件(反応温度、反応時間等)は特に制限されない。反応温度は、例えば、0℃〜100℃とすることができる。本発明においては、シリカ原料と界面活性剤と水とを含む溶液に対して、メタノール等のアルコールやその他有機溶剤を溶媒として添加することも可能であり、このような場合は、反応温度は−20℃〜100℃とすることができる。反応は攪拌状態で進行させることが好ましい。反応条件は用いるシリカ原料の種類等に基いて決定することが好ましい。
【0038】
すなわち、シリカ原料としてアルコキシシランを用いる場合は、例えば、以下のようにして球状多孔体を得ることができる。まず、水(水とアルコール等の有機溶媒の混合物であってもよい)に対して、界面活性剤および塩基性物質を添加して界面活性剤の塩基性溶液を調製し、この溶液にアルコキシシランを添加する。添加されたアルコキシシランは溶液中で加水分解(または、加水分解および縮合)するために、添加後数秒〜数分で白色粉末が析出する。この場合において、反応温度は0℃〜80℃とすることが好ましく、10℃〜40℃とすることがより好ましい。また、溶液は攪拌することが好ましい。
【0039】
沈殿物が析出した後、0℃〜80℃(好ましくは10℃〜40℃)で1時間〜10日、溶液をさらに攪拌してシリカ原料の反応を進行させる。攪拌終了後、必要に応じて室温で一晩放置して系を安定化させ、揮発成分を除去すると球状多孔体が得られる。
【0040】
なお、アルコキシシランを用いて上記のような工程により多孔体を作製する場合において、アルコキシシランおよび界面活性剤の濃度が本発明の範囲内にある場合と、アルコキシシランと界面活性剤の少なくとも一方の濃度が本発明の濃度の範囲外である場合とでは、アルコキシシランを添加して白色沈殿が生成するまでの時間が大きく異なる。濃度が本発明の範囲内である場合は、範囲外である場合に比較して、白色沈殿が生じるまでの時間が数倍〜数十倍長くなる。この現象は、本発明における白色沈殿が生じるまでの反応は比較的ゆっくりと進行することを示すものである。本発明者らはいかなる理論にも制約されることを望むものではないが、このような反応の低速度化が、多孔体粒子間の形状等のばらつきを抑制するものと考えられる。
【0041】
シリカ原料として、アルコキシシラン以外のシリカ原料(ケイ酸ナトリウム、層状シリケートまたはシリカ)を用いる場合は、シリカ原料を水(水とアルコール等の有機溶媒の混合物であってもよい)に添加し、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度になるように、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性物質をさらに添加して均一な溶液を調製した後に、希薄酸溶液をシリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モル添加するという方法により球状多孔体を作製することができる。塩基性物質は、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部を切断する目的のために過剰分必要となるが、その過剰分を酸により中和する必要がある。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸等の有機酸のいずれを用いてもよい。
【0042】
本発明において、シリカ原料として非層状シリカ原料(アルコキシシラン、ケイ酸ナトリウムおよびシリカ)を用いる場合と、層状シリカ原料(層状シリケート)を用いる場合とでは、球状多孔体の生成機構が異なると考えられる。
【0043】
非層状シリカ原料を用いる場合は、以下のような球状多孔体の生成機構が考えられる。まず、水に界面活性剤を添加することにより、界面活性剤は水中で規則的に配列したミセルを形成する。ミセルが形成された水溶液に対して非層状シリカ原料が添加されると、界面活性剤の周囲に非層状シリカ原料が集合し複合体(典型的にはハニカム状の複合体)が形成される。そして、界面活性剤の周囲において塩基性条件下で非層状シリカ原料が反応しケイ素酸化物に変化する。したがって、界面活性剤がミセルを形成していた部分にはケイ素酸化物が形成されないため反応生成物は多孔体(典型的にはハニカム状に孔が形成された球状多孔体)となる。
【0044】
一方、シリカ原料として層状シリカ原料である層状シリケートを用いる場合は、以下のような球状多孔体の生成機構が考えられる。すなわち、界面活性剤の水溶液に層状シリケートが添加されると、層状シリケートの層間に界面活性剤が入り込み複合体(典型的にはハニカム状の複合体)が形成される。このとき、隣接する層状シリケートの各層は結合しないが、塩基性条件下で層状シリケートの反応が進行することにより隣接する層が結合する。これにより、界面活性剤が存在していた部分が孔となるようにして球状多孔体(典型的にはハニカム状に孔が形成された球状多孔体)が形成される。
【0045】
本発明の製造方法によれば、上記のような反応機構でシリカ原料の反応が進行すると考えられ、得られる球状多孔体は、孔内部に界面活性剤を有したものとなる。球状多孔体は孔内部に界面活性剤が存在した状態でも各種用途に使用することが可能であるが、大きな比表面積が必要な用途に用いる場合は、界面活性剤を除去してもよい。
【0046】
多孔体から界面活性剤を除去する方法としては、例えば、焼成による方法、有機溶媒で処理する方法、イオン交換法等を挙げることができる。焼成による方法においては、多孔体を300〜1000℃、好ましくは400〜700℃で加熱する。加熱時間は30分程度でもよいが、完全に界面活性剤を除去するには1時間以上加熱することが好ましい。焼成は空気中で行うことが可能であるが、多量の燃焼ガスが発生するため、窒素等の不活性ガスを導入して行ってもよい。
【0047】
有機溶媒で処理する場合は、用いた界面活性剤の良溶媒中に多孔体を浸漬して界面活性剤を抽出する。イオン交換法においては多孔体を酸性溶液(少量の塩酸を含むエタノール等)に浸漬し、例えば50〜70℃で加熱しながら攪拌を行う。これにより、多孔体の孔中に存在する界面活性剤が水素イオンでイオン交換される。なお、イオン交換により孔中には水素イオンが残存することになるが、水素イオンのイオン半径は十分小さいため孔の閉塞の問題は生じない。
【0048】
上述した本発明の方法により、規則的な細孔配列構造を有した多孔体が得られる。細孔配列構造は、2次元ヘキサゴナル、3次元ヘキサゴナルまたはキュービックのいずれであってもよい。なお、本発明においては、用いる界面活性剤が上記一般式(1)で表される化学構造を有しており、上記のような条件でシリカ原料を反応させるため、直径1〜2nmの孔が2次元ヘキサゴナルに配列した球状多孔体が得られやすい。また、本発明の方法により得られる球状多孔体の平均粒径は特に制限されないが、平均粒径は0.1〜5μmであることが好ましく、0.2〜1μmであることが好ましい。球状多孔体の平均粒径は、界面活性剤およびシリカ原料の濃度、反応時の温度や攪拌状態などにより変化させることが可能である。
【0049】
以上説明したように、本発明の方法によれば、形状が球状の多孔体を高比率で得ることができ、さらに、多孔体の粒径の均一性を向上させることも可能となる。したがって、本発明で得られた多孔体は、篩等による分級を行わなくても形状や粒径がそろっており、容器に充填した場合の充填率や、圧粉して得られる圧縮成形物の密度を高くすることが可能となる。したがって、吸着材、誘電材、充填材等として特に好適に用いることが可能である。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
[ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドを用いた多孔体の作製]
(実施例1)
水747mLおよびメタノール250mLの混合溶液に対して、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)1.54gおよび1規定水酸化ナトリウム3.28mLを添加して均一になるまで攪拌した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)1.9gを添加して攪拌を続けたところテトラメトキシシランは完全に溶解し、約60秒後に白色粉末が析出してきた。なお、上記全ての成分(水、メタノール、ドデシルトリメチルアンモニウム、1規定水酸化ナトリウムおよびテトラメトキシシラン)の全容量を基準とする、ドデシルトリメチルアンモニウムの濃度は0.005mol/Lであり、テトラメトキシシランの濃度は0.0125mol/Lであった。また、界面活性剤/Siは0.4であった。
【0052】
室温でさらに8時間攪拌して一晩放置した後、濾過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより界面活性剤を含む有機成分を除去し多孔体を得た。この多孔体のX線回折パターンを図1に示す。図1に示されたX線回折パターンより、得られた多孔体は2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることが示された。次に、この多孔体の電子顕微鏡観察を行った。その結果、電子顕微鏡により観察された100個程度の多孔体はいずれも球状の形状を有しており、その粒径は0.65〜1.27μmであった。図2には、倍率5000倍で撮影された本実施例による多孔体の電子顕微鏡写真を示す。図2において、黒色球状部分が本実施例で得られた多孔体を示すものである。
【0053】
(実施例2)
水742mLおよびメタノール250mLの混合溶液に対して、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)4.62gおよび1規定水酸化ナトリウム7.86mLを添加して均一になるまで攪拌した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)4.55gを添加して攪拌を続けたところテトラメトキシシランは完全に溶解し、約60秒後に白色粉末が析出してきた。なお、上記全ての成分(水、メタノール、ドデシルトリメチルアンモニウム、1規定水酸化ナトリウムおよびテトラメトキシシラン)の全容量を基準とする、ドデシルトリメチルアンモニウムの濃度は0.015mol/Lであり、テトラメトキシシランの濃度は0.0299mol/Lであった。また、界面活性剤/Siは0.5であった。
【0054】
室温でさらに8時間攪拌して一晩放置した後、濾過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより界面活性剤を含む有機成分を除去し多孔体を得た。この多孔体のX線回折パターンより、得られた多孔体は2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることが示された。次に、この多孔体の電子顕微鏡観察を行った。その結果、電子顕微鏡により観察された任意の100個の多孔体の粒径は0.625〜0.75μmの範囲内であり、平均粒径は0.63μmであった。また、平均粒径の±19%の範囲に全ての粒子の粒径が入っており、粒径の分布が非常に狭く、粒径の均一性に非常に優れた球状多孔体が得られたことが示された。図3に、倍率10000倍で撮影された本実施例による多孔体の電子顕微鏡写真を示す。図3において、黒色球状部分が本実施例で得られた多孔体を示すものである。
【0055】
(比較例1)
水727mLおよびメタノール250mLの混合溶液に対して、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)17gおよび1規定水酸化ナトリウム22.8mLを添加して均一になるまで攪拌した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)13.2gを添加して攪拌を続けたところテトラメトキシシランは完全に溶解し、約2秒後に白色粉末が析出してきた。なお、上記全ての成分(水、メタノール、ドデシルトリメチルアンモニウム、1規定水酸化ナトリウムおよびテトラメトキシシラン)の全容量を基準とする、ドデシルトリメチルアンモニウムの濃度は0.055mol/Lであり、テトラメトキシシランの濃度は0.0867mol/Lであった。また、界面活性剤/Siは0.63であった。
【0056】
室温でさらに8時間攪拌して一晩放置した後、濾過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより界面活性剤を含む有機成分を除去し多孔体を得た。この多孔体のX線回折パターンより、得られた多孔体は2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることが示された。次に、この多孔体の電子顕微鏡観察を行った。図4には、倍率10000倍で撮影された本比較例による多孔体の電子顕微鏡写真を示す。図4に示されるように本比較例で得られた多孔体の形状は米粒状であった。
【0057】
[デシルトリメチルアンモニウムブロミドを用いた多孔体の作製]
(実施例3)
水745mLおよびメタノール250mLの混合溶液に対して、デシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)7gおよび1規定水酸化ナトリウム5.7mLを添加して均一になるまで攪拌した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)3.3gを添加して攪拌を続けたところテトラメトキシシランは完全に溶解し、約10秒後に白色粉末が析出してきた。なお、上記全ての成分(水、メタノール、デシルトリメチルアンモニウム、1規定水酸化ナトリウムおよびテトラメトキシシラン)の全容量を基準とする、デシルトリメチルアンモニウムの濃度は0.025mol/Lであり、テトラメトキシシランの濃度は0.0217mol/Lであった。また、界面活性剤/Siは1.15であった。
【0058】
室温でさらに8時間攪拌して一晩放置した後、濾過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより界面活性剤を含む有機成分を除去し多孔体を得た。この多孔体のX線回折パターンより、得られた多孔体は2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることが示された。次に、この多孔体の電子顕微鏡観察を行った。その結果、電子顕微鏡により観察された100個程度の多孔体はいずれも球状の形状を有しており、その粒径は0.2〜0.9μmであった。
【0059】
(実施例4)
水745mLおよびメタノール250mLの混合溶液に対して、デシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)3.84gおよび1規定水酸化ナトリウム5.7mLを添加して均一になるまで攪拌した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)3.3gを添加して攪拌を続けたところテトラメトキシシランは完全に溶解し、約50秒後に白色粉末が析出してきた。なお、上記全ての成分(水、メタノール、デシルトリメチルアンモニウム、1規定水酸化ナトリウムおよびテトラメトキシシラン)の全容量を基準とする、デシルトリメチルアンモニウムの濃度は0.0137mol/Lであり、テトラメトキシシランの濃度は0.0217mol/Lであった。また、界面活性剤/Siは0.63であった。
【0060】
室温でさらに8時間攪拌して一晩放置した後、濾過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより界面活性剤を含む有機成分を除去し多孔体を得た。この多孔体のX線回折パターンより、得られた多孔体は2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることが示された。次に、この多孔体の電子顕微鏡観察を行った。その結果、電子顕微鏡により観察された任意の100個の多孔体の粒径は0.74〜0.9μmの範囲内であり、平均粒径は0.89μmであった。また、平均粒径の±17%の範囲に全ての粒子の粒径が入っており、粒径の分布が非常に狭く、粒径の均一性に非常に優れた球状多孔体が得られたことが示された。図5に、倍率5000倍で撮影された本実施例による多孔体の電子顕微鏡写真を示す。図5において、黒色球状部分が本実施例で得られた多孔体を示すものである。
【0061】
(比較例2)
水745mLおよびメタノール250mLの混合溶液に対して、デシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)8.4gおよび1規定水酸化ナトリウム5.7mLを添加して均一になるまで攪拌した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)3.3gを添加して攪拌を続けたところテトラメトキシシランは完全に溶解し、約6秒後に白色粉末が析出してきた。なお、上記全ての成分(水、メタノール、デシルトリメチルアンモニウム、1規定水酸化ナトリウムおよびテトラメトキシシラン)の全容量を基準とする、デシルトリメチルアンモニウムの濃度は0.03mol/Lであり、テトラメトキシシランの濃度は0.0217mol/Lであった。また、界面活性剤/Siは1.38であった。
【0062】
室温でさらに8時間攪拌して一晩放置した後、濾過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより界面活性剤を含む有機成分を除去し多孔体を得た。この多孔体のX線回折パターンより、得られた多孔体は2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることが示された。次に、この多孔体の電子顕微鏡観察を行った。その結果、球状多孔体に混ざってシート状の多孔体が生成していることがわかった。
【0063】
(比較例3)
水636mLおよびメタノール250mLの混合溶液に対して、デシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)77gおよび1規定水酸化ナトリウム114mLを添加して均一になるまで攪拌した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)66gを添加して攪拌を続けたところテトラメトキシシランは完全に溶解し、約2秒後に白色粉末が析出してきた。なお、上記全ての成分(水、メタノール、デシルトリメチルアンモニウム、1規定水酸化ナトリウムおよびテトラメトキシシラン)の全容量を基準とする、デシルトリメチルアンモニウムの濃度は0.275mol/Lであり、テトラメトキシシランの濃度は0.434mol/Lであった。また、界面活性剤/Siは0.63であった。
【0064】
室温でさらに8時間攪拌して一晩放置した後、濾過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより界面活性剤を含む有機成分を除去し多孔体を得た。この多孔体のX線回折パターンより、得られた多孔体は2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることが示された。次に、この多孔体の電子顕微鏡観察を行った。その結果、不定形の多孔体が生成していることがわかった。
【0065】
[ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを用いた多孔体の作製]
(比較例4)
水744mLおよびメタノール250mLの混合溶液に対して、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)5gおよび1規定水酸化ナトリウム5.7mLを添加して均一になるまで攪拌した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)3.3gを添加して攪拌を続けたところ、溶液は透明のままで析出物は得られなかった。なお、上記全ての成分(水、メタノール、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、1規定水酸化ナトリウムおよびテトラメトキシシラン)の全容量を基準とする、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの濃度は0.014mol/Lであり、テトラメトキシシランの濃度は0.0217mol/Lであった。また、界面活性剤/Siは0.65であった。
【0066】
[酸性条件下での多孔体の作製]
(比較例5)
水742mLおよびメタノール250mLの混合溶液に対して、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)4.62gおよび1規定塩酸7.86mLを添加して均一になるまで攪拌した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)4.55gを添加して攪拌を続けたところ、溶液は透明のままで析出物は得られなかった。なお、上記全ての成分(水、メタノール、ドデシルトリメチルアンモニウム、1規定塩酸およびテトラメトキシシラン)の全容量を基準とする、ドデシルトリメチルアンモニウムの濃度は0.015mol/Lであり、テトラメトキシシランの濃度は0.0299mol/Lであった。また、界面活性剤/Siは0.5であった。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、形状が球状の多孔体を高比率で得ることができ、さらに、多孔体の粒径の均一性を向上させることが可能な球状多孔体の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた球状多孔体のX線回折パターンを示す図である。
【図2】実施例1で得られた球状多孔体の電子顕微鏡写真である(倍率5000倍)。
【図3】実施例2で得られた球状多孔体の電子顕微鏡写真である(倍率10000倍)。
【図4】比較例1で得られた多孔体の電子顕微鏡写真である(倍率10000倍)。
【図5】実施例4で得られた球状多孔体の電子顕微鏡写真である(倍率5000倍)。
Claims (4)
- シリカ原料と界面活性剤と水とを含む溶液中で、塩基性条件下で該シリカ原料を反応させる球状多孔体の製造方法であって、
前記界面活性剤は下記一般式(1)で表されるアルキルアンモニウムハライドであり、前記界面活性剤の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.001〜0.027mol/Lであり、前記シリカ原料の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.01〜0.25mol/Lであり、さらに、前記界面活性剤のモル数は、前記シリカ原料中のケイ素原子のモル数の1/10以上であることを特徴とする方法。
- 前記界面活性剤はデシルトリメチルアンモニウムハライドであり、前記界面活性剤の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.01〜0.02mol/Lであり、さらに、前記シリカ原料の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.02〜0.03mol/Lであることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記界面活性剤はドデシルトリメチルアンモニウムハライドであり、前記界面活性剤の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.01〜0.02mol/Lであり、さらに、前記シリカ原料の濃度は前記溶液の全容量を基準として0.02〜0.03mol/Lであることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記シリカ原料は、アルコキシシラン、ケイ酸ナトリウム、層状シリケート、およびシリカからなる群より選ばれる少なくとも1つのシリカ原料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
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