JP4478636B2 - シリンダ装置並びにロックナットの緩み及びロッドの伸び変形検知方法 - Google Patents
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Description
一般に、油圧シリンダ装置は、中空円筒状のシリンダチューブの軸方向に沿って、シリンダチューブの外部から内部へピストンロッドが挿通されるとともに、ピストンロッドの一端部に、ロックナットを用いてピストンが締め付け固定され、シリンダチューブ内の空間がこのピストンによってロッド室とヘッド室とに分割されている。そして、ロッド室とヘッド室とへ供給される作動油の流量や油圧を制御することでピストンをシリンダチューブ内で往復摺動させ、油圧の大きさに応じた駆動力でピストンロッドを伸縮移動させるようになっている。
しかし、上述の何れの技術の場合であっても、一旦油圧シリンダ装置を組み立てた状態では、ロックナットやピストンの緩みを検出することができない。つまり、従来の油圧シリンダ装置においては、シリンダチューブを分解してその内部のロックナットやピストンを再度締め付け直す以外にこれらの緩みを確認する手だてがないのである。
特に、油圧シリンダ装置においては、ロックナットが緩むとヘッド端面(11b)とロックナットとが干渉し、金属破片(コンタミネーション)を生じさせるおそれがある。この場合、全油圧回路内の金属破片を取り除くフラッシング作業を行う必要が生じるため、その労力やコストを考慮すると、ロックナットに緩みが生じさせないことが最も望ましいが、万一ロックナットに緩みが生じた場合には、可能な限り早期にその緩みを発見したい。
また、該ピストンロッド,該ピストン及び該ロックナットは、非弾性部材であることが好ましい。該非弾性部材とは、殆ど弾性変形しない材質(例えばセラミックや金属)からなる部材の総称であって、該ピストンロッド,該ピストン及び該ロックナットは、該シリンダ装置の通常作動時における該ロッド室,該ヘッド室内の圧力によって弾性変形しない強度及び剛性を備えている。
また、本発明のロックナットの緩み及びロッドの伸び変形検知方法(請求項3)は、請求項1又は2記載のシリンダ装置における該ロックナットの緩み又は該ピストンロッドの伸び変形を検知する方法であって、該通路へ作動流体がリークしたことを以て、ロックナットが緩んだ又はロッドが伸び方向へ塑性変形したと検知することを特徴としている。
また、ロックナットの締結時には、当接面又は接触面をメタルシールとして機能させることができ、ヘッド室及びロッド室間における作動流体の流通を遮断することができる。なお、当接面及び接触面のうち第1通路が形成されていない何れか一方の面がメタルシールとして機能する。
また、本発明のシリンダ装置(請求項2)によれば、ロッド室とヘッド室とを連通する通路として複数の経路が確保されるため、ロックナットが緩んだ際に、第1及び第2通路を流通する作動流体量(すなわち、作動流体のリーク量)を増加させることができる。これにより、シリンダドリフトをより大きくすることができ、ロックナットの緩み又はピストンロッドの伸び方向への塑性変形の発見がより容易となる。
図1〜図5は、本発明の一実施形態としてのシリンダ装置を示すものであり、図1は本シリンダ装置の要部構成を示す断面図であって、(a)はロックナット締結時の状態を示す断面図、(b)はロックナット緩み時の状態を示す断面図、図2は図1のピストンの斜視図、図3は図1のピストンの断面図(図2のA−A断面図)、図4は図1の全体構成を示す断面図、図5はシリンダ装置が適用された油圧ショベルの斜視図である。
本シリンダ装置は、図5に示すような油圧ショベル20に適用されている。この油圧ショベル20は、上部旋回体22と下部走行体21と油圧駆動式の作業用装置26とを備えるとともに、作業用装置26としてブーム23,スティック(アーム)24,バケット25を備えて構成される。下部走行体21には無限軌道からなるクローラ装置が設けられており、その上部に上部旋回体22が水平方向へ旋回可能に載置されている。
また、上部旋回体22とブーム23との間には、ブーム23を上下方向へ揺動駆動するためのブームシリンダ(シリンダ装置)10が一対設けられるとともに、ブーム23とスティック24との間には、スティック24をブーム23に対して揺動駆動するためのスティックシリンダ30が設けられ、さらに、スティック24とバケット25との間には、バケット25をスティック24の先端で揺動駆動するためのバケットシリンダ40が設けられている。
図4に示すように、ブームシリンダ10は、内部に作動油(作動流体)が充填された中空円筒状のシリンダチューブ1と、シリンダチューブ1の軸心線Cの方向(以下、単に軸方向Cという)に沿ってシリンダチューブ1の外部から内部へ挿通された軸状のピストンロッド(以下、単にロッドと呼ぶ)2とを備える。ロッド2は、シリンダチューブ1内の作動油圧に応じた駆動力をシリンダチューブ1の外部へ伝達する部材である。なお、図1(a),(b)及び図4におけるロッド2については、その外周面を図示している。
また、ロッド側ポート12aからロッド室12へ作動油が供給されると、ピストン4が図4中下方向へ押し出され、シリンダチューブ1に対してロッド2が縮小作動し、ブームシリンダ10が縮む。このとき、ヘッド室11内の作動油はヘッド側ポート11aから排出される。
なお、ロッド2,ピストン4及びロックナット5は、ブームシリンダ10の通常作動時において殆ど弾性変形しない材質の部材(ここでは表面強化加工等が施された一般的な鋼材)で形成されている。これにより、ロッド2,ピストン4及びロックナット5は、ブームシリンダ10の通常作動時におけるロッド室12及びヘッド室11内の圧力によって弾性変形しない強度及び剛性を備えている。
図2,図3に、ピストン4の斜視図及び断面図を示す。ピストン4のロックナット5との当接面(メタルシート面)14上には、溝状の通路として第1通路6が切削形成される。この第1通路6は、図1(a)に示すように、ピストン4及び縮径部3間の環装面15(すなわち、ピストン4の内周面)とヘッド室11とを連通するように、ピストン4の径方向へ溝切りされている。
第1通路6,第2通路7及び後述する第3通路8は、ピストン4及び段差9間の接触面16とヘッド室11とを連通する作動油通路27として機能している。
本ブームシリンダ10は上記のように構成されて、以下のように作用する。
(A)ロックナットの締結時
まず、ロックナット5がロッド2の螺合部17にしっかりと締結されている状態では、ピストン4がロックナット5と段差9との間に挟装固定されるとともに、ピストン4と段差9の端面とによってメタルシールが形成される。このとき、図1(a)に示すように、ヘッド室11は第1通路6及び第2通路7へ連通しているが、第2通路7の終端(接触面16側の端部)においてメタルシールにより作動油流通が封止される。これにより、ヘッド室11及びロッド室12間において互いに作動油がリークすることがない。
一方、ロックナット5の締結が緩んだときには、ロックナット5によるピストン4の挟装固定が解除されて、ロックナット5が当接面14から離れ、図1(b)に示すように、ピストン4及び段差9間に第3通路8が形成される。これにより、第1通路6,第2通路7及び第3通路8が繋がり、ヘッド室11とロッド室12とが連通して、作動油漏れが生じる。
本実施形態にかかるブームシリンダ10は、以下のような効果を奏する。
まず、ロックナット5の締結時には、段差9の端面及びピストン4の接触面16をメタルシールとして機能させることができる。また、このメタルシールによりヘッド室11及びロッド室12間における作動油リークが防止されるため、各ヘッド室11,ロッド室12へ供給される作動油量を制御することによって、正確にブームシリンダ10を伸縮動作させることができる。
また、積極的に作動油をリークさせることによって、オペレータが認識可能なシリンダドリフトを生じさせることができる。つまり、オペレータは、ロックナット5の締結緩みによって生じるシリンダドリフトをブーム23の操作感(操作に対する反応)によって早期に発見することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態では、ピストン4の表面に第1通路6及び第2通路7が形成されているが、第1通路6は、ピストン4及びロックナット5の当接面14上に形成されていればよく、また、第2通路7は、ピストン4及び縮径部3間の環装面15上に形成されていればよい。つまり、第1通路6をロックナット5側に形成することができ、あるいは、第2通路7を縮径部3側に形成することも可能である。
2 ピストンロッド(ロッド)
3 縮径部
4 ピストン
5 ロックナット
6 第1通路(作動油通路のひとつ)
7 第2通路(作動油通路のひとつ)
8 第3通路(作動油通路のひとつ)
9 段差
10 ブームシリンダ(シリンダ装置)
11 ヘッド室
11a ヘッド側ポート
11b ヘッド端面
12 ロッド室
12a ロッド側ポート
12b ロッド室端部
13 縮径部の外周面
14 ピストン及びロックナットの当接面
15 ピストン及び縮径部間の環装面
16 ピストン及び段差間の接触面
17 螺合部
18 ロッドの外周面
19 シリンダチューブの内周面
20 油圧ショベル
21 下部走行体
22 上部旋回体
23 ブーム
24 スティック
25 バケット
26 作業用装置(通路)
27 作動油通路
28 クッションリング
29 シールリング
30 スティックシリンダ
31 隙間
40 バケットシリンダ
41 スプリングワッシャ(付勢部材)
Claims (3)
- 中空円筒状のシリンダチューブと、
該シリンダチューブの軸方向に沿って該シリンダチューブの内部へ挿通されたピストンロッドと、
該シリンダチューブの内部側の該ピストンロッドの一端部において、該ピストンロッドの外周面に対し段差を有して縮径形成された縮径部と、
該シリンダチューブの内周面に摺接するとともに、該縮径部の外周面に対して該軸方向へ摺動自在に環装されて、該シリンダチューブの内部をロッド室とヘッド室とに区画するピストンと、
該ロッド室と該ヘッド室とを連通する通路と、
該ピストンロッドの一端部に締結されて該ピストンに当接し、該縮径部に環装された該ピストンを該段差との間で該軸方向に挟んで固定するとともに、緩んだ時には該通路へ作動流体をリークさせるロックナットとを備え、
該通路は、
該ピストン及び該ロックナットの当接面上又は該ピストン及び該段差の接触面上に形成されて、該ロッド室又は該ヘッド室内の作動流体を該ピストン及び該縮径部間の環装面まで導入する第1通路と、
該ピストン及び該縮径部間の環装面上に形成され、該第1通路により導入された該作動流体を該当接面及び該接触面のうちの該第1通路が形成されていない一方まで導入する第2通路と、を有し、
該第1通路は、該当接面の該ピストン側において溝状の通路として形成され、
該第2通路は、該環装面の該ピストン側において溝状の通路として形成されている
ことを特徴とする、シリンダ装置。 - 該当接面上及び該環装面上において、該第1通路及び該第2通路が複数組設けられている
ことを特徴とする、請求項1記載のシリンダ装置。 - 請求項1又は2記載のシリンダ装置における該ロックナットの緩み又は該ピストンロッドの伸び変形を検知する方法であって、
該ロックナットの緩み又は該ピストンロッドの伸び変形が生じていない状態で該第1通路及び該第2通路に該作動流体を導入しておき、
該通路の該作動流体が該ロッド室側又は該ヘッド室側へとリークしたことを以て、該ロックナットが緩んだ又は該ピストンロッドが伸び方向へ塑性変形したと検知する
ことを特徴とする、ロックナットの緩み及びロッドの伸び変形検知方法。
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