JP4478073B2 - 連続鋳造鋳型の設計方法 - Google Patents
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また、特許文献2には、鋳型の横断面形状が4本の直線辺を4個の4分の1円弧で接続した四角形であり、内周長が上端側で大きく下端側で小さくなっており、内周長減少率が上端から下端に向かって小さくなっていることを特徴とする鋳型が開示されている。さらに、溶鋼湯面を上下に変位させることにより、初期凝固の収縮外形と近似的に等しい内周長の鋳型部分を常に使用し、鋳型と凝固シェルの接触状態を最適に保つようにすること、鋳型銅板と凝固シェルの接触状態を示す物理量として、鋳型内引き抜き抵抗値、銅板温度、鋳型冷却水の給水側と排水側の温度差の1または2以上の組み合わせを用い、この物理量に基づき溶鋼湯面を上下に変化させることが開示されている。
また、特許文献2では、鋳型銅板と凝固シェルの接触状態を示す物理量として、鋳型内引き抜き抵抗値、銅板温度、鋳型冷却水の給水側と排水側の温度差の1または2以上の組み合わせを用いているが、凝固シェル厚みを直接の指標としていないために、シェル厚不均一に伴う鋳片の割れやブレークアウト等のトラブルを回避して、鋳型形状を設計するのが難しい。
そこで、本発明は、凝固したシェル厚の均一性を確保するとともに、最小シェル厚をブレークアウト限界のシェル厚み以上に出来る様な、連続鋳造鋳型を設計する方法を提供することを目的とするものである。
(1)溶融金属の連続鋳造鋳型を設計するに際し、鋳型下端の任意の鋳型面部における最小シェル厚(B)を最大シェル厚(A)で除した値が所定値(X)以上(B/A≧X)、かつ、最小シェル厚(B)の値が所定値(Y)以上(B≧Y)を満足するように、鋳型の鋳造方向の傾きまたは曲率を設定することを特徴とする連続鋳造鋳型の設計方法。
(2)溶融金属の連続鋳造鋳型を設計するに際し、鋳型下端の任意の鋳型面部における最小シェル厚(B)を最大シェル厚(A)で除した値が所定値(X)以上(B/A≧X)、かつ、最小シェル厚(B)の値が所定値(Y)以上(B≧Y)を満足するように、鋳型の鋳造方向の形状を、異なる傾きの直線の組み合わせ、異なる曲率の曲線の組み合わせ、直線と曲線の組み合わせ、または異なる傾きの直線と異なる曲率の曲線の組み合わせとして設定することを特徴とする連続鋳造鋳型の設計方法。
(3)溶融金属の連続鋳造鋳型を設計するに際し、鋳型の鋳造方向の傾きまたは曲率の設定値を、(1)または(2)に記載の方法により設定された設定値に対して、大きな値に設定することを特徴とする連続鋳造鋳型の設計方法。
(4)鋳型とシェルの間の拘束力が所定値(Z)以下となるように、鋳型の鋳造方向の傾き、曲率のいずれか一方または双方を設定することを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の連続鋳造鋳型の設計方法。
(5)鋳型とシェルの間のギャップ量の最大値が所定値(G)以下になるように、鋳型の鋳造方向の傾き、曲率のいずれか一方または双方を設定することを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の連続鋳造鋳型の設計方法。
(6)鋳型の鋳造方向の傾き、曲率のいずれか一方または双方の値に対して、鋳型下端の任意の鋳型面部における最小シェル厚(B)、最大シェル厚(A)、鋳型とシェルの間の拘束力、および鋳型とシェルの間のギャップ量を、以下の(a)〜(d)の手順により計算で求めることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の連続鋳造鋳型の設計方法。
(a) 鋳造する鋼種に応じて、溶鋼のスーパーヒート(ΔT)、鋳造速度(Vc)を入力条件として、[式1]により鋳造方向の抜熱量(q)を計算し、周方向の抜熱量を均一として[式2]によりシェル厚(t)を計算。
q=α×(z/Vc)−β [式1]
t=γ×∫(q−δ×ΔT)dt [式2]
z:メニスカスからの距離、
α,β,γ,δ:定数、
但し、[式2]のqは、くりかえし計算ではq′を用いる。
(b) シェルの変形量(u)を[式3]により計算し、鋳型の鋳造方向の傾き、曲率のいずれか一方または双方の値における、鋳型とシェルの間のギャップ量(gap)を[式4]により計算。
[K]{u}={Lt}+{LT}+{Lm}+{Lvp} [式3]
gap=u(鋳型面に垂直方法の変位量) [式4]
u:変位(変形量)
Lt:外力
LT:温度変化による荷重
Lm:相変態による荷重
Lvp:粘塑性荷重
K:FEMで計算する場合の全体合成マトリックス({}列ベクトル)
鋳型とシェルの間の拘束力は、ギャップ量(gap)が0(鋳型とシェルの間に隙間なし)の部位で、その部位の面積にその部位に作用する溶鋼静圧を乗じて、鋳型全体で積分して求める。
(c) 鋳型とシェルの間にギャップが生じた部位の抜熱量(q′)を[式5]により計算。
q′=f(gap)×q [式5]
gap:ギャップ量
f:ギャップ量に反比例する任意の関数
(d) 上記の[式2]〜[式5]を、シェルの変形量(u)が収束するまで、繰り返し計算。
(7) 鋳型下端での最小シェル厚(B)、最大シェル厚(A)を、鋳片の鋳造断面凝固組織観察により求めることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の連続鋳造鋳型の設計方法。
図1は、鋳型下端での鋳片の凝固均一度を表す指標を表す模式図である。鋳型のコーナー部近傍は、鋳片鋳型面部の凝固収縮と鋳型の傾きや曲率との不一致に伴い、鋳型と鋳片の間に空隙が生じやすく、鋳片の凝固が遅れる。
この様な鋳型のコーナー部近傍での鋳片の凝固遅れにより、シェル厚の不均一な鋳片が鋳造されることや、あるいはシェル厚が薄い部分で鋳造中にブレークアウトが生じることが懸念される。従って、凝固シェル厚が極力均一な鋳片を鋳造でき、さらにシェル厚が薄い部分がブレークアウトを生じることのない厚みで鋳造できる様な、連続鋳造鋳型を設計することは、極めて重要である。
ここで、鋳型下端の任意の面での凝固遅れ部の最小シェル厚をB(通常はコーナー部近傍の50mm範囲程度位置のシェル厚)、鋳型下端の同じ面での最大シェル厚をA(通常は面中央部のシェル厚)として、B/Aを凝固均一度と定義する。B/A=1の時に凝固は鋳型下端の周方向で均一であることを示す。
また、鋳型には面が4面あるので、B/Aは各面ごとに4つ定義されるが、本発明の指標には、4つのB/Aの中の最小値を用いることが最も厳しい評価をする点で好ましい。さらに、同様にBも各面ごとに4つ定義されるが、最小のシェル厚Bの値を用いることがブレークアウト限界を表現する点で好ましい。
実験で求める手法としては、鋳造中にS等の特殊元素を添加して、凝固過程での偏析度から、凝固シェル厚を測定する方法、鋳片のエッチングによりホワイトバンド(吐出流等の影響で凝固組織に変化が現れることにより生成(通常は鋳型下端近傍))からシェル厚を推定する方法等が一般的である。
また、計算で求める方法としては、コーナー部の凝固遅れを計算出来る手法である、凝固計算と鋳片の変形解析を連成して解析する方法が有効である。
尚、計算方法の一例として、後述の、凝固と鋳片変形を連成させて解く方法を用いて、B及びAを求めた。(ここで、[式1]、[式2]のα,β,γ,δを実測に合うようにフィッティングした。具体的には、α=7.0×105(W/m2)、β=0.5、δ=5000W/m2K、γを実測シェル厚にあうようにフィッティングした。[式1]において、(z/Vc)の単位は分である。)
その結果、B及びAは、実測と計算とで差がほとんどなかったので、計算結果のみを図2に示す。図2の横軸の短辺傾き(以降、テーパと記載することがある。)は、鋳造方向1mの間に、長辺幅が何%小さくなるかという指標で、単位は%/mである。
例えば、図2において、B(図の□)についてブレークアウト限界のシェル厚を考慮して設定される所定値(Y)を10mmと設定し、さらに、B/A(図の◇)について要求される鋳片の凝固均一度等を考慮して設定される所定値(X)を0.5に設定すると、これらを同時に満足する鋳型短辺傾きは1.0%/m以上の任意の値に設定して、鋳型を設計すれば良い。
ここでは、操業条件一定(鋳造速度2.0m/min、同鋼種(低炭素鋼)、溶鋼スーパーヒート30℃で実施した。)でテーパだけ変化させた試験を行ったので、鋳型下端でのシェル厚最大値Aは各試験で一定であった。そのため、B/AとBのテーパに対する傾向は同じであった。尚、Xの値は、鋼種や欠陥の種類(内部割れ、表面割れ等)により、適宜設定すると、さらに好ましい。
以上、鋳型短辺が直線の場合について説明したが、曲線の場合も同様に、曲率を大きくするほど、B/AおよびBも大きくできるため、適切な曲率に設定して、鋳型を設計すれば良い。
また、前記B/AおよびBに影響を及ぼす因子の別の形態として、鋳型の鋳造方向の形状を、異なる傾きの直線の組み合わせ、異なる曲率の曲線の組み合わせ、直線と曲線の組み合わせ、または異なる傾きの直線と異なる曲率の曲線の組み合わせとして設定しても良い。
その一例として、鋳型の鋳造方向の半分の高さ位置より上部の傾きを大きく、下部の傾きを小さくした鋳型短辺(2段テーパ鋳型)を用いて鋳造試験を実施した場合、および鋳型の鋳造方向の傾きが同じ鋳型短辺(1段テーパ鋳型)を用いて鋳造試験を実施した場合について説明する。ここで、1段テーパの傾きをC(%/m)とし、鋳型の長さをLとした時に、C×L=D×L/2+E×L/2となるように(鋳型全長での傾き量を同じとした)、2段テーパの上部傾きDと下部傾きEを設定した。ただし、D>C>Eとなるように傾きを調整した。
また、鋳造速度2.0m/min一定(同鋼種(低炭素鋼)、スーパーヒート30℃)の条件で計算を行ったため、Aがほぼ同じ値であった。従って、B/Aが大きくなった分に対応して、最小シェル厚Bも大きくなった。
鋳型の鋳造方向の形状については、上記の様な異なる傾きの直線の組み合わせだけでなく、異なる曲率の曲線の組み合わせ、直線と曲線の組み合わせ、または異なる傾きの直線と異なる曲率の曲線の組み合わせとして設定でき、また、それぞれを複数段としても良い。
そこで、200mm×200mmのビレット鋳型を用いて、長時間鋳造の試験を行い、鋳型形状として、鋳造方向の傾きが大きい鋳型(1.5%/m)と鋳造方向の傾きが小さい鋳型(1.0%/m)について、B/A及びBがどのように変化するかを調査した。ここで傾きの単位である%/mは、鋳造方向に1m進む間に、鋳型の幅(ここでは200mm)の何%が縮まるかの設定値である。
従って、前記B/Aは所定値(X)以上を満足し、また同時に、Bは所定値(Y)以上を満足する様に設計する際に、長時間鋳造を実施した場合の鋳型の減肉によるB/AおよびBの低下幅を考慮して、初期に設定する鋳型の鋳造方向の傾きや曲率を、計算や実験で求めたこれらの設定値に対して、予め大きな値に設定することで、鋳型の寿命末期においても、均一な鋳片の凝固が確実に実現でき、ブレークアウトの限界値以上を、より確実に確保できる。
ここで、鋳型の鋳造方向の傾きや曲率を、計算や実験で求めたこれらの設定値に対して、どの程度大きな値に設定するかは、特に規定するものではなく、想定している操業条件等を考慮して、鋳片と鋳型の摩擦拘束力が極度に大きくならない範囲で、適宜設定すれば良い。
従って、鋳型と凝固したシェルの間の拘束力が所定値(Z)以下となるように、鋳型の鋳造方向の傾きや曲率を設定することが好ましい。ここで、前記拘束力の所定値(Z)は、特に規定するものではなく、鋼種や鋳造条件等により、適宜設定すれば良い。
尚、鋳型と凝固シェルの間の拘束力については、鋳型にロードセルを設置して鋳型に生じる引抜力を測定する方法等があり、また後述の計算で凝固と鋳片変形を連成させて解く方法により計算で求めることもできる。
ここで、前記ギャップ量の所定値(G)は、特に規定するものではなく、鋼種や鋳造条件等により、適宜設定すれば良い。
尚、鋳型と凝固シェルの間のギャップ量については、鋳型銅板に熱電対等の温度測定素子を設置して、測定した温度データから推定して求めることができ、また後述の凝固と鋳片変形を連成させて解く方法により計算で求めることもできる。
この様に、鋳型のテーパを大きくすることで、拘束力が増加し、ギャップ量の最大値が減少することが計算(後述の凝固と鋳片変形を連成させた解析手法を用いた)で示された。
従って、鋳型のテーパを大きくするほど、ギャップ量が減少するため、この点は好ましいが、同時に拘束力も増加するため、それぞれの所定値を満足する様に鋳型テーパを設計することが重要であることがわかる。
これらの因子を計算で推定するための好ましい手順(a)〜(d)を、以下に示す。
q=α×(z/Vc)−β [式1]
t=γ×∫(q−δ×ΔT)dt [式2]
z:メニスカスからの距離、
α,β,γ,δ:定数、
但し、[式2]のqは、くりかえし計算ではq′を用いる。
尚、[式1]、[式2]の定数α,β,γ,δについては、鋳造する鋼種に応じて、鋳造試験によるシェル厚測定とともに、鋳型に熱電対を設置して温度測定等を行い、鋼種、鋳造速度等の操業条件を各種変化させて、決定するのが好ましい。
但し、上記[式1]は、一般的に、凝固のシェル厚が凝固時間(z/Vc)の平方根((z/Vc)0.5)に比例する(鉄鋼便覧等)ことから類推すると、β=0.5を用いることができる。
さらに、上記[式2]は、(鋳型からの抜熱量q)−(溶鋼側からの入熱量δ×ΔT)=凝固潜熱×(シェル厚増分)なので、シェル厚(t)は、q−δ×ΔTを時間で積分して求めることが出来ることから、求めることができる。
但し、tの計算については、[式2]の簡易方法でも良いし、エンタルピー法、等価比熱法等でも計算可能である。
[K]{u}={Lt}+{LT}+{Lm}+{Lvp} [式3]
gap=u(鋳型面に垂直方法の変位量) [式4]
u:変位(変形量)
Lt:外力
Lvp:粘塑性荷重
LT:温度変化による荷重
Lm:相変態による荷重
K:FEMで計算する場合の全体合成マトリックス({}列ベクトル)
ここで、外力(Lt)は、溶鋼静圧、鋳型との接触による反力等から求めることが出来る。粘塑性荷重(Lvp)については、材料のクリープ試験等から応力歪関係を決定して求めることが可能である。温度変化による荷重(LT)は、材料の線膨張係数×温度差(温度低下量)で計算できる。相変態による荷重(Lm)は、鋼の炭素量に応じて凝固過程で線膨張係数の違う各相間を変態するときの荷重であり、温度と炭素量から鉄−炭素2元系状態図から決定できる。
ここで、[式3]は、例えば文献(王ら,日本機械学会論文集A編,Vol.53,No.492)を参照して、プログラムを作成するか汎用の有限要素法構造解析ソフトにサブルーチンで取り込むかの方法で計算出来る。汎用の有限要素法構造解析ソフトを用いる場合は、[式3]の各項の材料非線形性を考慮した取り扱いが出来るソフトであることが好ましい。
さらに、シェルの変形量が[式3]により求まるため、鋳型とシェルの間のギャップ量が[式4]により求まる。
また、鋳型とシェルの間の拘束力については、ギャップ量(gap)が0(鋳型とシェルの間に隙間なし)の部位で、その部位の面積にその部位に作用する溶鋼静圧を乗じて、鋳型全体で積分することで、求めることができる。
q′=f(gap)×q [式5]
gap:ギャップ量
f:ギャップ量に反比例する任意の関数
[式5]については、鋳型とシェルの間にギャップが生じた時に、距離が離れるほど熱伝導が悪くなると一般的に仮定(熱流束は、距離に反比例する)できるため、fをgapに反比例する関数として求めることができる。反比例の係数については、シェル厚の実測等から適宜フィッティングで求めるのが良い。
ここで、シェルの変形量(u)の収束条件は、特に規定するものではなく、計算結果の精度や計算時間を考慮して、適宜設定すれば良い。
シェルの変形量(u)が収束した際の、[式2]により求まるシェル厚(t)により、鋳型下端の任意の鋳型面部における最小シェル厚(B)、最大シェル厚(A)が求まる。
同様に、シェルの変形量(u)が収束した際に、[式3]により鋳型とシェルの間のギャップ量(gap)が求まり、また、ギャップ量(gap)が0(鋳型とシェルの間に隙間なし)の部位で、その部位の面積にその部位に作用する溶鋼静圧を乗じて、鋳型全体で積分することで、鋳型とシェルの間の拘束力を求めることができる。
この様に、試行錯誤を行いながら、鋳型の鋳造方向の傾きあるいは曲率を設定するための検討を、計算により行うことができ、適切な鋳型を設計することができる。
従って、例えば種々の鋳型を用いて鋳造することにより得られた鋳片のサンプルを試作し、それらのサンプルの断面観察を行うことにより、最小シェル厚(B)および最大シェル厚(A)をデーターベース化しておくことで、目的に応じた鋳型を設計することも可能である。
ここで、凝固シェル厚の断面観察からの計測方法としては、鋳造中に特殊元素(例えばS等)を添加して、その偏析量からシェル厚を測定する方法で求めることが出来、また、吐出流等の影響で生じる凝固組織変化(ホワイトバンド)位置(通常は鋳型の下端近傍)から推定することも出来る。
Claims (7)
- 溶融金属の連続鋳造鋳型を設計するに際し、鋳型下端の任意の鋳型面部における最小シェル厚(B)を最大シェル厚(A)で除した値が所定値(X)以上(B/A≧X)、かつ、最小シェル厚(B)の値が所定値(Y)以上(B≧Y)を満足するように、鋳型の鋳造方向の傾きまたは曲率を設定することを特徴とする連続鋳造鋳型の設計方法。
- 溶融金属の連続鋳造鋳型を設計するに際し、鋳型下端の任意の鋳型面部における最小シェル厚(B)を最大シェル厚(A)で除した値が所定値(X)以上(B/A≧X)、かつ、最小シェル厚(B)の値が所定値(Y)以上(B≧Y)を満足するように、鋳型の鋳造方向の形状を、異なる傾きの直線の組み合わせ、異なる曲率の曲線の組み合わせ、直線と曲線の組み合わせ、または異なる傾きの直線と異なる曲率の曲線の組み合わせとして設定することを特徴とする連続鋳造鋳型の設計方法。
- 溶融金属の連続鋳造鋳型を設計するに際し、鋳型の鋳造方向の傾きまたは曲率の設定値を、請求項1または2に記載の方法により設定された設定値に対して、大きな値に設定することを特徴とする連続鋳造鋳型の設計方法。
- 鋳型とシェルの間の拘束力が所定値(Z)以下となるように、鋳型の鋳造方向の傾き、曲率のいずれか一方または双方を設定することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の連続鋳造鋳型の設計方法。
- 鋳型とシェルの間のギャップ量の最大値が所定値(G)以下になるように、鋳型の鋳造方向の傾き、曲率のいずれか一方または双方を設定することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の連続鋳造鋳型の設計方法。
- 鋳型の鋳造方向の傾き、曲率のいずれか一方または双方の値に対して、鋳型下端の任意の鋳型面部における最小シェル厚(B)、最大シェル厚(A)、鋳型とシェルの間の拘束力、および鋳型とシェルの間のギャップ量を、以下の(a)〜(d)の手順により計算で求めることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の連続鋳造鋳型の設計方法。
(a) 鋳造する鋼種に応じて、溶鋼のスーパーヒート(ΔT)、鋳造速度(Vc)を入力条件として、[式1]により鋳造方向の抜熱量(q)を計算し、周方向の抜熱量を均一として[式2]によりシェル厚(t)を計算。
q=α×(z/Vc)−β [式1]
t=γ×∫(q−δ×ΔT)dt [式2]
z:メニスカスからの距離、
α,β,γ,δ:定数、
但し、[式2]のqは、くりかえし計算ではq′を用いる。
(b) シェルの変形量(u)を[式3]により計算し、鋳型の鋳造方向の傾き、曲率のいずれか一方または双方の値における、鋳型とシェルの間のギャップ量(gap)を[式4]により計算。
[K]{u}={Lt}+{LT}+{Lm}+{Lvp} [式3]
gap=u(鋳型面に垂直方法の変位量) [式4]
u:変位(変形量)
Lt:外力
LT:温度変化による荷重
Lm:相変態による荷重
Lvp:粘塑性荷重
K:FEMで計算する場合の全体合成マトリックス({}列ベクトル)
鋳型とシェルの間の拘束力は、ギャップ量(gap)が0(鋳型とシェルの間に隙間なし)の部位で、その部位の面積にその部位に作用する溶鋼静圧を乗じて、鋳型全体で積分して求める。
(c) 鋳型とシェルの間にギャップが生じた部位の抜熱量(q′)を[式5]により計算。
q′=f(gap)×q [式5]
gap:ギャップ量
f:ギャップ量に反比例する任意の関数
(d) 上記の[式2]〜[式5]を、シェルの変形量(u)が収束するまで、繰り返し計算。 - 鋳型下端での最小シェル厚(B)、最大シェル厚(A)を、鋳片の鋳造断面凝固組織観察により求めることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の連続鋳造鋳型の設計方法。
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