JP4476619B2 - ドプラ超音波診断装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ドプラスペクトラムを表示することのできるドプラ超音波診断装置に係り、特に、ドプラスペクトラム画像の速度レンジ及びベースラインの自動調整が可能なドプラ超音波診断装置に関する。
従来、超音波パルス反射法と超音波ドプラ法を併用し、1つの超音波プローブを用いた超音波走査により診断部位の断層像とその血流情報を得るとともに、少なくともその血流情報をリアルタイム表示するドプラ超音波診断装置が知られている。この装置は、体内の血流等の流れのある診断部位に向けて送受波される超音波のドプラ効果により送信周波数に対して受信周波数が僅かに偏移し、その偏移周波数(ドプラ周波数)が血流速度に比例するといった超音波ドプラ法の原理に基づいてドプラ周波数の周波数解析を行い、その結果から血流情報を得るものである。
上記のドプラ超音波診断装置では、得られたドプラ信号に対する高速フーリエ変換(FFT)の周波数分析の結果を、縦軸に周波数f、横軸に時間t、各周波数成分のパワー(強さ)を輝度(階調)としてスペクトラム表示したドプラ周波数のスペクトラム画像を対象として、診断で用いる項目(パラメータ)の計測処理が行なわれる。
すなわち、この計測処理によれば、図24に示すように、
1)ドプラ周波数のスペクトラム画像上で、その周波数f軸方向の周波数分布内での最大周波数に対応する最大流速Vp(Vpeak)及び平均周波数に対応する平均流速Vm(Vmean)の位置を求め(図24(a)参照)、
2)その最大流速Vp、平均流速Vmの位置の時間変化をその時間軸t方向にトレースし(トレース波形検出処理:図24(b)参照)、
3)そのVp、Vmの時間的な位置変化曲線を示すトレース波形上で、心周期(1心拍)毎に心臓収縮期の波形ピークPS(Peak of Systolic)及び心臓拡張期の波形ピークED(End of Diastolic)の同期検出を行い(ピーク検出処理:図24(c)参照)、
4)そのPS/EDの情報を元に、血管内の血液流量や拍動流のHR(Heart Rate:心拍数)、PI(Pulsatility Index)、及びRI(Resistance Index)等の診断に関する各種パラメータ(指標)を計測し、その計測値を表示する処理(パラメータ計測処理)が実行される。
上記のVp、Vmのトレース波形検出処理、PS/EDのピーク検出処理、PI、RI等のパラメータ計測処理は、フリーズ画像を対象にしてマニュアル操作を基本に行なわれるものであるが、近年では、リアルタイム画像を対象にして自動操作で行なう装置も普及してきている。
ところで、パルスドプラ(PW)法では、周波数解析のためのサンプリング周波数fsがドブラ偏移周波数よりも低い場合には、エイリアシング現象(折り返り)が起きてしまう。そこで、これを防ぐために、パルスの繰り返し周波数(PRF:Pu1se Repetition Frequency)を上げ、毎回の観測時間間隔を短くする必要がある。この場合、測定したい場所位置を指定すると、必然的に最大のPRFが決定され、PRFが決まると、計測できる最高血流速も決定されてしまう。この計測できる最高血流速を速度レンジという。
例えば、30cm位の血流の速度を測りたいときに、10cm位の速度レンジにすると折り返ってしまって、血流を測ることができない。速度レンジは、50cm程度に設定する必要がある。
ドプラスペクトラム表示を行ったところ、速度レンジが小さ過ぎると、図25(a)に示すように,折り返し部分(同図中の(ア)部分)が発生する。このような場合、オペレータは速度レンジスイッチを操作して、ドプラスペクトラム画像の速度レンジを大きくする。このように速度レンジを大きくすると、図25(c)に示すように、折返し部分(ア)がナイキスト周波数内に収まり、表示上、繋がりの良いドプラスペクトラムが得られる。
逆に速度レンジが大き過ぎると、図25(b)に示すように、スペクトラムの波形が小さくなって観測し難くなる。このような場合、オペレータは速度レンジスイッチを操作して、ドプラスペクトラム画像の速度レンジを小さくして、図25(c)に示すような、表示画面の上下一杯を有効に使った、観測し易いドプラスペクトラムを得る。
また、ドップラー法においては、血流の方向が超音波プローブに向かってくる血流に正、遠ざかっていく血流に負という符号が付けられる。ある血管に超音波プローブを当てると、その血管が動脈の場合には血流の速度は拍動により変動するけれども、正負にまたがって変化することは少なく、通常正負どちらかに偏っている。
例えば、ドプラスペクトラム表示を行ったときに、先程の図25(a)に示したように、折り返し部分が発生した場合、ユーザはベースラインシフトスイッチを操作して、ドプラスペクトラム画像のベースラインBL(BL=0)をシフトさせることもある。これをベースラインシフト(BLS)という。このベースラインBLを−0.25だけシフトさせることで(つまり、ベースラインシフト量BLS=−0.25)、同図(d)に示すように、折り返し部分(ア)がナイキスト周波数を超えて移動し、表示上、繋がりの良いドプラスペクトラムが得られる。
ドプラ超音波診断装置で血流速度等を測定する際に、被検者の疾患や体調,プローブの当て方(角度),PWドプラでは血管内のレンジゲート位置や幅,診断部位によって測定する血流速度は大きく変化する。そのため、ユーザは、従来そのたびごとに装置の速度レンジを調整したり、ベースラインをシフトしたりという最適化を行い、拡大された波形から、HR,PI,RIの計測を行っていた。しかし、このように診断する血流の状態が変化する都度、速度レンジやベースラインシフト機能を調整するのは煩雑である。
そのため、自動で調整するものが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
特開2000−197634号公報 米国特許第5628321号明細書 米国特許第5871447号明細書 米国特許第5647366号明細書
しかしながら、これらの提案の処理アルゴリズムには問題も多い。例えば、ナイキスト周波数付近の速度の判別や、トレース方向が両符号にまたがるとき(DCラインをクロスするとき)、トレース波形での安定性に欠け、元に戻らなくなるとか、発振してしまうとか、全く変なプロセスに陥ってしまい、かえって混乱するという状態が発生するという技術的な問題点である。
このような不都合は、これら先行提案では、ドプラスペクトラム画像を基にし、ノイズ領域、信号領域の境界を基に逐次判別するアルゴリズムを用いて計算を行っていることから発生するものと思われる。また、この方法では、フリーズ後にベースラインシフトを行うことはできない。
このような問題は、スペクトラムのデータそのものを用いて計算すれば解決することが可能であるが、これでは計算量が膨大となり、リアルタイムでの追従性に問題が生じる。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、ドプラスペクトラム画像の速度レンジ及びベースラインシフトの操作を自動化し、血流計測の操作性を向上させて、ユーザが装置設定を気にせず診断できるドプラ超音波診断装置を提供することを目的とするものである。
本発明の他の目的は、上記自動調整を、特に高い安定性と、速い応答処理とで行うドプラ超音波診断装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、リアルタイム時のみならず、フリーズ後においてもベースラインをシフトすることが可能なドプラ超音波診断装置を提供することにある。
本発明に係るドプラ超音波診断装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、被検体内の運動流体を含む診断部位に向けて超音波を送受信させて得られる前記診断部位の流速に関する情報を担うドプラ周波数のスペクトラム信号に基づきスペクトラムドプラ画像を表示するドプラ超音波診断装置において、前記スペクトラム信号の周波数方向の最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方を時間方向にトレースしそのトレース波形を出力する処理をリアルタイムで実行するトレース手段と、所定観測時間毎に前記最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布に対する統計値に基づき、ドプラ速度レンジを調整する速度レンジ調整手段とを備え、前記速度レンジ調整手段は、所定観測時間毎に前記最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布を少なくとも±3ナイキスト周波数分折り返して拡大し、その分布形状に表示レンジ内と折り返しレンジ内とで設定されたベースラインに応じて適切な重みをかける重み付け手段と、該重みをかけられた最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布からドプラ速度レンジの上限と下限の統計計算を行う統計値計算手段と、を備えるものである。
また、本発明に係るドプラ超音波診断装置は、請求項に記載したように、前記請求項1の構成に加えて、前記最大流速Vpの正側最大値及び負側最大値を計算し、ドプラスペクトラム画像表示におけるベースラインのシフト量を求めて、該ベースラインを調整するベースライン調整手段を備え、前記速度レンジ調整手段は、所定観測時間毎に前記最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布を少なくとも±3ナイキスト周波数分折り返して拡大し、その分布形状に表示レンジ内と折り返しレンジ内とで設定されたベースラインに応じて適切な重みをかける重み付け手段と、該重みをかけられた最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布からドプラ速度レンジの上限と下限の統計計算を行う統計値計算手段と、を備えるものである
この統計値計算手段は、より好適には、請求項に記載したように、前記重み付けした最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布から平均と分散を計算し、平均±係数*σを速度レンジの上限及び下限の推定値とするものや、請求項に記載したように、前記重み付けした最大流速Vpの分布から、ピーク値の係数%に相当する値を速度レンジの上限及び下限の推定値とするもの、或いは、請求項に記載したように、前記重み付けした平均流速Vmの分布のピーク値の位置から周波数レンジの上下方向にレンジを拡げ、該分布が予め設定された閾値以下となる点を速度レンジの上限及び下限の推定値とするものである。
さらには、この統計値計算手段は、請求項に記載したように、1)前記重み付けした最大流速Vpの分布から平均と分散を計算して、平均±係数*σを速度レンジの上限及び下限の推定値とする演算と、2)前記重み付けした平均流速Vmの分布から夫々平均と分散を計算して、平均±係数*σを速度レンジの上限及び下限の推定値とする演算と、3)前記重み付けした最大流速Vpの分布から、ピーク値の係数%に相当する値を速度レンジの上限及び下限を推定値とする演算と、4)前記重み付けした平均流速Vmの分布のピーク値の位置から周波数レンジの上下方向にレンジを拡げ、該分布が予め設定された閾値以下となる点を速度レンジの上限及び下限を推定し、該夫々の上限及び下限の推定値とする演算との中の少なくとも2つの演算を実行し、得られた夫々の推定値の中の最大値を、速度レンジの上限及び下限の推定値として選択するものとしてもよい。
以上述べたように、本発明に係るドプラ超音波診断装置によれば、ドプラスペクトラム画像の速度レンジ及びベースラインシフトの操作を自動化し、血流計測の操作性を向上させて、ユーザが装置設定を気にせず診断できるドプラ超音波診断装置を提供することが可能となる。
また、本発明は、上記自動調整を、特に高い安定性と、速い応答処理とで行うドプラ超音波診断装置を提供することができる効果が得られる。
本発明は、さらに、リアルタイム時のみならず、フリーズ後においてもベースラインをシフトすることが可能なドプラ超音波診断装置が得られる効果がある。
以下、本発明に係るドプラ超音波診断装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
(装置の構成)
図1は、本実施形態に係るドプラ超音波診断装置の全体的な概要を示すブロック図である。このドプラ超音波診断装置は、超音波断層像(Bモード断層像)を表示するBモード、超音波ビーム方向の反射源の時間的位置変化を運動曲線として表示するMモード、血流情報を表示するドプラモード(パルスドプラ(PW)/連続波ドプラ(CW))、血流情報を二次元的に表示するCFM(カラー・フロー・マッピング、或いはカラードプラともいう。)モード等の既知の各種モードに応じて動作可能なものである。
図1に示すドプラ超音波診断装置は、被検体P内の血流BFを含む診断部位に対し超音波を送信しその超音波エコーをそれに対応する電圧信号に変換して受信する複数の圧電振動子を有する電子走査型の超音波プローブ1と、この超音波プローブ1に接続される装置本体2とを備える。装置本体2には、被検体Pの心電波形(ECG波形)を計測するECGモジュール3が接続される。
装置本体2は、装置全体の制御中枢としての全体コントローラ11のほか、この全体コントローラ11からの制御信号に基づきその動作が制御可能な各部(後述)を備える。すなわち、この装置本体2には、超音波プローブ1に接続される送受信部21が含まれる。この送受信部21には、図示しない送信側の構成要素として、超音波プローブ1に接続されその各圧電振動子を励振するパルサ、そのパルサに遅延を与えた駆動信号を供給するディレイライン(受信時の遅延にも兼用される)、及びそのディレイラインに基準クロックを与える基準発信器が、また図示しない受信側の構成要素として、超音波プローブ1の各圧電振動子に接続されたプリアンプ、そのプリアンプの出力信号に遅延を与えるディレイライン、及びそのディレイラインからの遅延を与えた出力信号を整相加算する加算器が、それぞれ内蔵されている。
また、装置本体2には、上記の送受信部21の出力側に、その加算器出力を対数増幅及び包絡線検波に付す包絡線検波器22と、その検波出力をBモード断層像及びMモード画像等の画像信号として超音波走査から標準TV走査の信号に変換するデジタル・スキャン・コンバータ(DSC)23と、そのDSC23の変換信号をD/A変換器24を介してBモード断層像等として表示する表示器25とが含まれる。
そして、装置本体2には、上記の送受信部21の出力側に、ドプラモード(CW/PW)等に関する信号処理系として、2チャンネル構成で基準発信器からの基準信号及びその90度の位相差をもつ基準信号と送受信部21の加算器出力を混合する位相検波用の直交位相検波器26と、その混合信号の内の高周波成分を除去してドプラ偏移周波数成分のみから成るドプラ信号を得て、その内、被検体P内の所望深さ位置(ROIに相当するレンジゲートで指定された位置)のドプラ信号を抽出するローパスフィルタ及びサンプルホールド回路を有するレンジゲート(RG)処理部27と、後述するDSP(Digital Signal Processor)31内において、RG処理部27の出力から比較的動きの遅い血管壁、心臓壁等の不要低周波ドプラ信号を除去して検出すべき血流BFのドプラ信号を抽出し、そのドプラ信号の出力に対し周波数解析を行なってその解析結果であるドプラスペクトラム信号を得て、前述のDSC23に出力するスペクトラムドプラ処理ブロック28が装備される。これにより、表示器25上には、例えばBモード断層像と共にドプラスペクトラム画像が表示される。
さらに、装置本体2には、CFMモードに関する信号処理系として、ミキサ25の出力側に、直交位相検波器26の出力から心臓壁等の不要固定反射信号を除去するMTIフィルタ及びその出力に対し自己相関法を用いて各点の平均速度演算、分散演算、及びパワー演算を行い、その演算結果である二次元の血流情報(血流BFの速度、方向、分散)を前述のDSC23に出力するCFMモード処理ブロック30が接続される。これにより、表示器25上には、例えばBモード断層像上に2次元的に血流情報、例えば、血流BFの速度を輝度、その方向を赤と青、その分散を緑の色相とするカラー情報として表示される。
さらにまた、装置本体2には、前述のスペクトラムドプラ処理ブロック28、RG処理部27からのドプラスペクトラム信号を入力して、そのスペクトラムの周波数方向の最大速度Vp、平均速度Vmの位置を時間方向にトレースしてそのトレース波形をリアルタイムで検出する機能を有するDSP(Digital Signal Processor)31と、このDSP31からのVp、Vmトレース波形から上述のPS/EDのピーク位置をリアルタイム又はフリーズ後に検出する機能を有するPS/ED検出部32と、このPS/DS検出部32により検出されたPS/EDの情報を元に血管内の血液流量や拍動流のHR、PI、及びRI(Resistance Index)等の診断に関する各種パラメータを計測する機能を有する計測部33と、本発明のドプラ超音波診断装置の要部構成としての速度レンジ調整機能及びベースライン調整機能を有するオートレンジ/オートBLS処理部49とを備える。この内、PS/ED検出部32、計測部33及びオートレンジ/オートBLS処理部49は、例えば装置本体2に搭載されるコンピュータで実行されるソフトウェア部品を構成するアプリケーション・ソフトとして実装される。
上記のDSP31及び計測部33の各出力は、ビデオI/F34を介してDSC23に供給される。これにより、表示器25上には、Vp、Vmのトレース波形の画像上に、PS/ED、及び各計測結果がリアルタイムで表示される。また、DSP31のVp、Vmのトレース波形データは、画像ストレージ部35に保持され、フリーズ後にPS/ED検出部32に供給可能となっている。
DSP31は、図2に示す例では、機能上、レンジゲート処理部27からのレンジゲートで指定された被検体P内の所望位置のドプラ信号から、比較的動きの遅い血管壁、心臓壁等の不要低周波ドプラ信号を除去して検出すべき血流BFのドプラ信号を抽出するドプラフィルタとしてのウォール・フィルタ(Wall Filter)41と、その抽出されたドプラ信号をシネメモリバッファ42を介して入力し、そのドプラ信号の出力に対し周波数解析を行なってその解析結果であるドプラスペクトラム信号を得て、前述のDSC23に出力するFFTスペクトラム処理部43とが装備される。これらウォール・フィルタ41、シネメモリバッファ42及びDSC23が上述のスペクトラムドプラ処理ブロック28を構成する。
また、DSP31は、FFTスペクトラム処理部43から出力されたスペクトラム信号からVp、Vmのトレース波形を得るVp、Vmトレース波形検出処理部44と、そのVp、Vmのトレース波形を入力する表示用オーディオ・ビデオ・バッファ45とを備える。
さらに、このDSP31には、FFTスペクトラム処理部43からのドプラスペクトラム信号を音声信号(ドプラ音)に変換して表示用オーディオ・ビデオ・バッファ45に出力するオーディオ処理部46と、ECGモジュール3からのECG波形データに所定の波形処理を施して表示用オーディオ・ビデオ・バッファ45に出力するECG波形処理部54と、包絡線検波器22からのMモード像等の検波出力やCFMモード処理ブロック30からの二次元的な血流情報に所定のカラー処理を施して表示用オーディオ・ビデオ・バッファ45に出力するM/Mカラー処理部55とを備える。
これにより、Vp、Vmトレース波形検出処理部44からのトレース波形データは、表示用オーディオ・ビデオ・バッファ45からピンポンバッファ34aを介してビデオ・インターフェース34に供給され、表示器25上でVp、Vmのオートトレース波形としてリアルタイム表示される。また、オーディオ処理部46からのドプラ信号の音声信号は、表示用オーディオ・ビデオ・バッファ45からピンポンバッファ34aを介してオーディオ・インターフェース38に供給され、オーディオ出力器(スピーカ)から音声出力される。
また、図2に示す例では、Vp、Vmトレース波形検出処理部44からのトレース波形データは、PS/ED検出部32(図2中ではCPU32aの処理により実行されるピーク検出処理部32bを有する)及び計測部33(図2中では、リアルタイムオート計測処理部33a及びシネ・フリーズ後の再計測処理部33bの機能上の各部を有する)を介して、ビデオ・インターフェース34に供給され、表示器25上で、Vp、Vmのオートトレース波形に加え、PS/EDの情報に基づくオート計測値としてリアルタイムに数値表示される。このPS/EDの情報は、フリーズ後においては、PS/EDバッファ29から計測部33中のシネ・フリーズ後の再計測処理部33bを介して、ビデオ・インターフェース34に供給され、表示器25上で、画像ストレージ部35からのVp、Vmのオートトレース波形とともに、数値表示される。
DSP31内の表示用オーディオ・ビデオ・バッファ45及びPS/EDバッファ29の出力側には、図1に示すように、オートレンジ/オートBLS処理部49が接続される。このオートレンジ/オートBLS処理部49は、表示用オーディオ・ビデオ・バッファ45からのVp、Vmのオートトレース波形を、PS/EDバッファ29からの同期情報に合せてVp、Vmの観測時間毎の分布を計算し、その分布形状を表す統計値等から最適な速度レンジとベースラインシフト量を計算し、速度レンジとベースラインシフト(BLS)を自動最適調整する。
上記のDSP31、PS/ED検出部32及びオートレンジ/オートBLS処理部49には、図1に示すように、パラメータ設定部36が接続又は内蔵され、このパラメータ設定部36は、本発明の操作手段を成すオペレータ操作用のユーザインターフェース37に接続される。
ユーザインターフェース37には、図1に示すように、装置本体2の操作パネル上の各種操作器(スイッチ、ジョイスティック、キーボード、マウス等)からの操作信号(パラメータ設定等)を入力する操作パネル回路38と、その操作パネル上に搭載されたTCS(Touch Command Screen)の画面上からの操作信号(パラメータ設定等)を入力するTCS回路39と、表示器23上のGUI(Graphical User Interface)からの操作信号(パラメータ設定等)を入力するGUI回路40とが含まれる。
装置を作動させる上で必要な指示、例えば上記のレンジゲート(ROI)の指定等は、このユーザインターフェース37により操作可能となっている。
そして、オートレンジ/オートBLS処理部49により実行される、速度レンジとベースラインシフトの自動最適調整用アルゴリズムのパラメータ、例えば、速度レンジのみ自動調整するのかベースラインシフトも行うのかといったことや、速度レンジ更新タイミング等が、ユーザインターフェース37を通してパラメータ設定部36で設定される。
このパラメータ設定部36は、速度レンジの変化が観測時間に対して激しい場合にも、速度レンジとベースラインシフトを速い応答性で自動最適調整できるように、内部にPID制御回路50を備える。
(速度レンジ自動調整の演算アルゴリズム)
続いて、オートレンジ/オートBLS処理部49で実行される速度レンジ及びベースラインシフトの自動最適調整のアルゴリズムについて説明する。図3は、この処理に関する一連の処理の概略の流れを示すフローチャートである。
オートレンジ/オートBLS処理部49は、まず、Vp、Vmトレース波形検出処理部44で検出されたVp及び/又はVmのトレース波形を、パラメータ設定部36で設定された観測時間分抽出する(ステップS2)。
図4は、横軸に時間を、縦軸に速度をとって、各時間におけるVp、Vmの速度を示している。この場合、観測時間が4秒に設定されていると(図中、太線で囲われた部分)、1秒当たり60カラムに分割したとして、Vp、Vmの各々について240カラムのデータが収集される。
このように収集されたVp、Vmの速度データは、ヒストグラムの形でプロットされる(ステップS4)。図5は、この速度分布の一例を示すものであり、横軸に周波数、縦軸に度数をとっている。図5に示すように、同じ形状の分布図が3つ並んでいる。中央に位置するものが実際に得られた分布図であり、左右のものは、それを±3ナイキスト周波数(f)まで拡張したものである。すなわち、本来の分布が−fからf間に存在するのに対し、左側の分布はこの本来の分布を−3fから−fの間でコピーしたものである。同様に右側の分布は、本来の分布をfから3fの間でコピーしたものである。これは後述する「重み付け」の準備作業といえる。
次に、表示器25に表示される速度レンジ内及び先程の折り返し領域内で、その時点のBLSに応じてVp、Vmの分布に適切な重みを掛ける重み付け処理を行う(ステップS6)。単純に表示範囲内での分布のみでは折り返し付近で不連続となり、判別不能となることがある。そのような事態を回避すべく、折り返しもある程度考慮して、連続性を確保するために、Vp、Vmの速度分布を±3ナイキスト周波数(f)まで拡張し、それに重み付けを行う。
図6に示す例は、BLSを行っていない場合に、台形状の重み関数を採用したときのものである。表示領域内での重み付け係数は1で不変であるが、マイナス側では、−2fから−fの間で、重み付け係数が0から1まで直線的に変化している。これとは対照的に、プラス側では、fから2fの間で、重み付け係数が1から0まで直線的に変化する。
図6に示した場合では、BLSを行っていないために、重み付け関数は左右対称の二等辺台形になる。BLSを行っている場合には、図7に示すように、その対象性が崩れた台形となる。また、重み付け関数の基本形は、台形状のものであるが、これに限定されず、診断部位のドプラ波形の速度ヒストグラムの分布に応じて、矩形、正規分布、ガウス分布等などの変形例を用いることもできる。
重み付けしたVp、Vmの分布が得られると、続いて速度レンジの上限及び下限を推定するために、統計値計算処理を行う(ステップS8)。この統計値計算処理には、大別して二つの方法がある。
一つは、重み付けしたVpの分布から平均と分散を計算し、平均±係数*σを速度レンジの上限及び下限の推定値とする正規分布モデルである。例えば、速度レンジの上限及び下限をVpの分布の平均値±3倍の標準偏差とする3シグマ法がある。図7にその一例を示す。この場合、診断部位のドプラ波形の速度ヒストグラムの分布に応じて、上限のみ、或いは下限のみを設定することもできる。
また、Vmについても同様にして上限及び下限を求めることができるが、係数*σはVpの場合よりも大き目に設定する。
もう一つは、重み付けしたVpの分布からピーク値の係数%に相当する値を速度レンジ上限及び下限の推定値とする平滑化後閾値処理モデルである。具体的には、まず、重み付けされたVpの分布を平滑化し、そのピーク値から、例えば−6dBの値をヒストグラム閾値に定め、平滑化されたVpの分布が最初にヒストグラム閾値以下となる限界を速度レンジの上限及び下限と推定するものである。図8にその一例を示す。この場合も、正規分布モデルの場合と同様、診断部位のドプラ波形の速度ヒストグラムの分布に応じて、上限のみ、或いは下限のみを設定することもできる。
Vmについても同様にして上限及び下限を求めることができるが、係数*σはVpの場合よりも小さ目に設定する。また、閾値の探索も、ピークの位置から周波数軸上を上下方向にスタートし、最初に閾値以下となった点を速度レンジの上限及び下限と推定する(図8参照)。
これらのうち、拍動性を有する血流の速度レンジ推定には、平滑化後閾値処理モデルの方が有効であり、動脈系より拍動の少ない静脈系の速度レンジ推定には、正規分布モデルのほうがフィットする傾向にある。したがって、診断部位のドプラ波形の速度ヒストグラムの分布に応じて、これらモデルを使い分けることができるように構成される。
また、上記の方法を組み合わせて用いることも可能である。例えば、正規分布モデルで得られたVp、Vmの上限及び下限のうち速度レンジの大きい方を選択する方法や、平滑化後閾値処理モデルで得られたVp、Vmの上限及び下限のうち速度レンジの大きい方を選択する方法がある。正規分布モデル及び平滑化後閾値処理モデルの両方で得られたVp、Vmの上限及び下限のうち速度レンジの大きい方を選択する方法、さらには、正規分布モデル及び平滑化後閾値処理モデルの両方で得られたVp及びVmの上限及び下限の中から速度レンジの最大のものを選択する方法もある。
こうして観測時間毎の速度レンジの上限及び下限が推定されると、逐次速度レンジが更新される(ステップS10)。これは、観測時間内の統計値計算処理等で得られた速度レンジの上限及び下限推定値を、パラメータ設定部36のドプラレンジに予め登録されているレンジテーブルの中から推定値より大きい値を自動的に選択することによって行われる。これは従来、ユーザがドプラの速度レンジをマニュアルで、必要が生じる都度切り替えて行っていたものである。なお、得られた推定値の何倍、例えば1.1倍や1.5倍を上限及び下限とするかは、ユーザインターフェース37より入力することにより、バラメータ設定部36を介し、パラメータとして(以下「レンジ係数」という。)選択することが可能である。
図9は、±3ナイキスト区間で重み付けされたVp、Vm分布の経時変化に、正規分布モデル及び平滑化後閾値処理モデルにより統計値計算処理された速度レンジの上限及び下限を重ねて表示する図であり、(a)はVpについてのもの、(b)はVmについてのものである。この図からも速度レンジが、Vp、Vmの変化に追従して変化していることが分かる。
図10は、速度レンジの経時的変動を示す図である。ここではベースラインのシフトは行われていない場合の例を示す。ある時刻におけるVp、Vmは、同図で示す「上限」から「下限」の間が表示器25の表示エリア一杯に表示される。すなわち、上限/下限間が狭い時間帯では、ドプラスペクトラム画像は拡大して表示される。また、ドプラスペクトラム画像が上限/下限間を超えることはないので、折り返し等が生じるおそれもない。
この図からも分かるように、速度レンジの変動は、若干の時間遅れはあるものの、ドプラスペクトラム画像に精度良く追従している。速度レンジの観測は、一定の時間毎に行われ、また、速度レンジの値は、予め登録されているレンジテーブルの値の中から選択されるので、速度レンジの更新は、同図に示すように、ステップ状に行われる。
ここで、オートBLSが予め選択されていなければ(ステップS10:No)、オートレンジ/オートBLS処理部49は、以上の処理を終了の指示があるまで繰り返す(ステップS16:No)。
一方、オートBLSが予め選択されている場合は(ステップS10:Yes)、オートレンジ/オートBLS処理部49は、BLSの自動更新処理を実行する(ステップS14)。このBLSの自動更新処理は、ある特定区間速度レンジの変化がない場合に、速度レンジの上限と下限の中央にBLSがくるように制御するものである。これは、逐次BLSの自動更新処理が行われると表示が不安定になる可能性があるので、これを防止するための措置である。この特定区間は、ユーザインターフェース37より入力することにより、バラメータ設定部36を介して選択することが可能である。また、スイッチを押してPRFを固定し(すなわち、速度レンジの固定)、それからBLSを行うという選択も可能である。
図11は、±3ナイキスト区間で重み付けされたVp、Vm分布の経時変化に、正規分布モデル及び平滑化後閾値処理モデルにより統計値計算処理された速度レンジの上限及び下限並びにベースラインシフトを重ねて表示する図であり、(a)はVpについてのもの、(b)はVmについてのものである。この図からも速度レンジ及びベースラインシフトが、Vp、Vmの変化に追従して変化していることが分かる。
図12は、速度レンジ及びベースラインシフトの経時的変動を示す図である。ある時刻におけるVp、Vmは、同図で示す「上限」から「下限」の間が表示器25の表示エリア一杯に表示される。すなわち、上限/下限間が狭い時間帯では、ドプラスペクトラム画像は拡大して表示される。また、ドプラスペクトラム画像が上限/下限間を超えることはないので、折り返し等が生じるおそれもない。
図中の高さ方向ほぼ中央を左右に横断する線は、ベースライン(BL=0)の位置の変動を示すものである。ドプラスペクトラム画像がベースラインより上又は下の一方に偏在している場合には、このようにベースラインをシフトすることにより、必要な表示領域をより大きく拡大することができる。この図からも分かるように、ベースラインの変動は、ドプラスペクトラム画像に精度良く追従している。
オートレンジ/オートBLS処理部49は、以上の処理を終了の指示があるまで繰り返す(ステップS16:No)。すなわち、毎回観察しながら次のレンジを決めていくというループを形成している。
(PID制御)
このように、オートレンジ/オートBLS処理部49は、現在の速度レンジ及びベースラインの位置を基準に1ステップずつ自動調整を行う。また、拍動やプローブの当て方(角度)の変化に素早く追従する必要がある。そのため、応答速度を速くするためには、フィードバック制御を行うことが有効である。本実施形態に係るドプタ超音波診断装置では、パラメータ設定部37内にPID制御回路50を備える。本実施形態においては、応答速度を速める制御例としてPID制御を示したが、IIR(Infinite Impulse Response)型等の平滑化フィルタで制御に最適なレスポンスを持つものを備える構成としてもよい。
PID制御回路50は、図13に示すように、例えば、比較器51、調整器52及び変換器53を備える。
比較器51は、ユーザインターフェース37により目標値として選択されたレンジ係数rと、現行の速度レンジで正規化された速度レンジ推定値とを比較する。その比較結果は、偏差eとして調整器52に送られる。
調整器52は、比例動作部52a、積分動作部52b及び微分動作部52cを備える。調整器52では、比例動作部52aにおいて、偏差eの定常偏差が小さく抑えられ、積分動作部52bにおいて、偏差eの定常偏差が0にされ、微分動作部52cにおいて偏差eの振動(時間変化率)が小さく抑えられる。その結果得られる伝達関数Gc(s)は、
Figure 0004476619
で表される。式(1)の第2辺の各項は、順に比例、積分、微分の動作を示す。ここに、Kは比例ゲイン、Tは積分時間、Tは微分時間である。これらK,T,Tは可変に構成され、また、T及び/またはTを実行することなく通過させることもできる。
これは、制御出力uとして、制御対象であるオートレンジ/オートBLS処理部49へ出力される。オートレンジ/オートBLS処理部49の伝達関数Gp(s)は、
Figure 0004476619
で表されるタイムラグのある一次遅れ要素である。
オートレンジ/オートBLS処理部49は、現行の速度レンジで正規化されたスペクトラムトレース波形を、プロセス出力yとして、計測部33を介して、表示器25に送出する一方、変換器53へも送出する。変換器53は、トレース波形の速度分布図から得られた速度レンジ上限/下限の推定値をフィードバック信号zとして比較器51に送る。
このフィードバック制御のループにおいて、時間遅れがなければ、すなわち、速度レンジの変化が観測時間に対して小さければ、比例動作だけで制御が可能である。しかし、例えば、呼吸等でレンジゲートが外れた時のように、速度レンジの変化が観測時間に対して激しい場合には、実際にはプロセス中に存在する一次遅れ要素(Gp(s))等により固有のレスポンスが生じる。
そこで、比較器51は、その比較結果に応じて、係数K,T,Tの値を自動的に決定し、その情報を比較結果とともに、調整器52に送出する。そして、調整器52は、与えられた係数K,T,Tに基いて、微分要素や積分要素を加えた計算を行い、応答を速くすることができる。
言い換えれば、PID制御部50は、速度レンジの変化率に対応して、P制御やPID制御のみならず、PI制御やPD制御を行うことも可能に構成されている。
このPID制御による応答を説明するのが、図14である。図14(a)は、P制御による場合の応答特性を示している。同図に示すように、P制御では、変動に時間を要するために、各ステップも大きく、また、ドプラスペクトルの変動に対しても若干の時間遅れを生じている。これに対し、図14(b)には、PID制御による理想応答が付け加えられている。同図の太線で示したように、PID制御によれば、速度レンジの変化が滑らかに、且つ、時間遅れを生じることなく行われることが分かる。
本ドプラ超音波診断装置は、斯かるフィードバック制御機能を備えることにより、速度レンジの変化に対して素早く対応し、より早く安定した速度レンジやベースラインシフトを得ることが可能となる。
(初期値の設定)
図14(a)にも示したように、速度レンジの変化が観測時間に対して激しい場合には、速度レンジの自動調整に時間遅れが生じることがある。これは、スペクトルドプラモードを起動する場合、すなわち、自動速度レンジ調整を開始する場合にも当てはまる。速度レンジが0或いは最大の状態からオート速度レンジ調整を開始すると、所望の速度レンジを得るまでに長い時間を要することもある。そこで、速度レンジに何らかの初期値を与えておき、その値から処理を開始するようにすれば、所望の速度レンジに到るまでの時間を短縮することができる。
このような場合、まず、診断部位毎の、その部位の一般的な速度レンジを初期値に設定することが考えられる。本発明に係るドプラ超音波診断装置では、これに加え、カラードプラの速度レンジ値を初期値として採用することも選択できる構成とした。
血流の測定を行う場合、通常、まずカラードプラモードに入って、血管の捜索、すなわち、断層像中の血流動態を把握することから始める。そして、必要に応じて、スペクトラムドプラモードを起動し、PWドプラではレンジゲート内の,CWドプラではラスタ上のドプラ信号スペクトラムを表示し、詳細な血流測定を行う。
このカラードプラモードにおいても、スペクトラムドプラモードと同様に、カラードプラのレンジがあり、ユーザは、ユーザインターフェース37を介して、これを変更する操作を行う。そして、2次元的なカラードプラの画像は、やはりスペクトラムドプラモードの画像と同様に、ある場所の流速をマッピングしたものである。そうすると、このカラードップラモードで設定された値を読み込んで、スペクトラムドプラモードにおける速度レンジやBLSの自動調整の初期値として採用することは可能である。そして、この採用により、速度レンジやBLSの自動調整の応答性を改善することができる。
また、Bモードからいきなりスペクトラムドプラモードへ入る場合は(このようなことは滅多にない)、上述の、診断部位毎の一般的な速度レンジを初期値に設定することができる。
(更新タイミング)
速度レンジの自動調整は、上述のように、診断部位のドプラトレース波形データを逐次抽出して行われるので、演算に先立って一定時間血流を観測する必要がある。この観測時間は、診断部位の態様等に合せて、1秒、2秒、4秒、8秒の中からユーザインt−フェース37を介して設定することができる。また、速度レンジの更新は、基本的には、4秒、8秒、12秒、16秒の中から設定するようになっている。なお、観測時間より短い時間で速度レンジの更新を行うことはできない。
一方、ドプラスペクトルの画像は、時間波形であり、ム−ビングバーというバーを先頭に、表示器25の画面上を、左端から右側へとリアルタイムで描きながら進んでいく。そして、ムービングバーが右端に到達すると、また左端に戻って表示を更新していく。この画面の更新をスクロールという。また、ム−ビングバーが左端から右端に到るまでの時間をスクロール速度といい、1秒、2秒、4秒、8秒の中から選択できるようになっている。
したがって、このム−ビングバーが画面の中間にある時は、一定の観測時間についての演算が終了していても、画面上で速度レンジを更新することはできない。すなわち、速度レンジの更新は、ム−ビングバーが左端にあって、画面が更新される時と同時にしか行うことができない。図15は、スクロール速度と速度レンジの更新との関係を示すものである。この図におけるスクロール速度の行では、ム−ビングバーの動きが、模式的に三角形で示されている。ムービングバーが、時間の経過とともに斜辺上を左から右へと移動するとして、底辺上にあるときが画面上では左端にあるときを、頂点にあるときが画面上では右端にあるときを示す。
例えば、スクロール速度が1秒に設定されている場合において、速度レンジの更新タイミングを4秒とすれば、画面が4回スクロールされる度に速度レンジが更新される。このように、画像表示1スクロールに4回の自動更新を行うことを、4EOS(End Of Scroll)と呼ぶ。8秒とすれば、画面が8回スクロールされる度に速度レンジが更新されるので、8EOSとなる。スクロール速度が2秒に設定されている場合において、速度レンジの更新タイミングを4秒とすれば、2EOSで速度レンジが更新されることになる。
ところが、スクロール速度が6秒に設定されている場合に、速度レンジの更新タイミングを4秒としても、スクロールの途中であるため、画面は更新されず、したがって速度レンジを更新することもできない。そのため、速度レンジの更新は、最寄の画面更新時、すなわち、6秒毎に1EOSの更新が行われる。12秒毎に行われれば、2EOSとなる。
このように速度レンジの更新を秒単位で行うと、画面の更新と同期させることができない場合が生じるが、EOSを単位として行えば、このような不都合が生じることはない。そこで、本ドプラ超音波診断装置は、パラメータ設定部36に、図16に示すようなEOS設定テーブルを備え、このテーブルに従って速度レンジの更新タイミングを割り振っていく。
また、このままでは、スクロール速度を例えば8秒に設定している場合等に、スクロールの途中で速度レンジを更新したくなっても、画面のスクロ−ルを待たなければならない。そこで、ユーザインターフェース37のスイッチを押下することにより、再スクロールという処理を行う。この再スクロール処理によれば、ム−ビングバーがスクロール開始点(左端)に移動して、画像表示自体をやり直すことになるので、スクロールの終了を待つことなく速度レンジやベースラインシフトを更新することが可能となる。
(フリーズ後のオートBLS)
以上説明してきたのは、リアルタイム動作での動作モードの切り替えであるが、フリーズ後であっても自動BLSを選択することができる。これは、表示用オーディオ・ビデオ・バッファ45に蓄えられた画像データをオートレンジ/BLS処理部49で上述の演算処理を行い、その結果を計測部33のシネ・フリーズ後の再計測処理部33bを介して表示器25に送信することにより実現される。
BLS更新スイッチを押した時点から、予め選択された過去の特定の時間までの範囲のドプラ波形の最大値が速度レンジに入るようにベースラインがシフトする。以後、BLS更新スイッチを押すごとに、1回だけ同様なベースライン位置の更新を行う。
この場合、速度レンジの最適化は行わない。BLSは、単に画像の位置をシフトさせるのみで、画像サイズを変更するものではないので、画質に影響を与えることはない。しかし、既存の画像データの速度レンジを変更することは、デジタルカメラのデジタルズーミングのように、デジタル処理によって画像の一部を切り取り、あたかも拡大しているように見せることであり、倍率を上げるほど画像が粗くなるという問題が生じるからである。
(操作スイッチ)
以下に、速度レンジやBLSの自動調整の開始の指示を出したり、種々のパラメータを設定したりするための主な操作スイッチについて説明する。これらの操作スイッチは、ユーザインターフェース37の操作パネルのボタンに割り当てられ、或いはTCS、又は表示器25に立ち上がるGUIとしてのポップアップ・メニューに表示される。また、これらの内の複数の方法で操作できるようにしてもよい。操作スイッチにより出された指示や設定されたパラメータは、パラメータ設定部36を介して所定の各部に伝達される。
1)自動速度レンジ/BLS調整選択スイッチ
自動速度レンジ/BLS調整を行わない「Off」、自動速度レンジの調整のみ行う「自動速度レンジ」、及び自動速度レンジ/BLSの両方の調整を行う「自動速度レンジ/BLS」の三態様を選択するためのスイッチである。
2)自動速度レンジ/BLSの更新タイミング選択スイッチ
速度レンジの更新を手動で行う「マニュアル」と、自動更新では、画像表示1スクロールに1回更新を行う1EOS、2スクロールに1回行う2EOS以下、3EOS、4EOSの中から選択できる。
3)観測時間設定スイッチ
速度レンジの更新のための波形の観測を、速度レンジ更新がOnになった時点から何秒前までの時間演算するかを選択するスイッチであり、1,2,4,8秒の中から選択することができる。
4)レンジ係数選択スイッチ
速度レンジの調整において、最大速度の何倍を表示の上限値とするかを選択するスイッチであり、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍の中から選択できる。
5)速度レンジ更新スイッチ
速度レンジ/BLSの更新タイミング選択スイッチで、「マニュアル」が選択されている場合において、速度レンジ/BLS更新の指示を出すスイッチである。
6)BLS更新スイッチ
リアルタイム観測時に手動操作でベースラインをシフトする場合や、フリーズ後において、ベースラインをシフトさせる場合に指示を出すスイッチである。
7)統計値計算処理選択スイッチ
速度レンジ調整演算で採用するモデルを選択するためのスイッチで、正規分布モデル、平滑化後閾値処理モデルのいずれかを選択できる。また、正規分布モデルで得られたVp、Vmの上限及び下限のうち速度レンジの大きい方を選択する方法、平滑化後閾値処理モデルで得られたVp、Vmの上限及び下限のうち速度レンジの大きい方を選択する方法、正規分布モデル及び平滑化後閾値処理モデルの両方で得られたVp又はVmの上限及び下限のうち速度レンジの大きい方を選択する方法、正規分布モデル及び平滑化後閾値処理モデルの両方で得られたVp及びVmの上限及び下限の中から速度レンジの最大のものを選択する方法の中からいずれかを選択できる機能を持たせることも可能である。
8)初期値選択スイッチ
先行するカラードプラモードで設定された値をスペクトラムドプラモードにおける速度レンジやBLSの自動調整の初期値として採用するか、或いは診断部位を指定することによりその部位の一般的な速度レンジを初期値に設定するかを選択するためのスイッチである。
(全体動作)
速度レンジ及びベースラインシフト自動最適調整の全体の流れについて、いくつかのケースに分けて説明する。まず、リアルタイムで観測中に、連続して自動速度レンジ更新及びBLS更新の両方が行われる場合について、図17に示すフローチャートを参照して説明する。前提として、自動速度レンジ/BLS調整選択スイッチでは「自動速度レンジ/BLS調整」スイッチが選択されていることが必要である。また、オートトレースのパラメータのひとつである、トレースライン描画の極性(正(+又はForward)、負(−又はReverse)、両方(±又はBoth)のいずれかが選択されているものとする。
まず、ドプラ(PWまたはCWモード)検査が行なわれているときに、自動速度レンジ/BLSの更新タイミング選択スイッチ中の「マニュアル」以外のスイッチが選択されると(ステップS102)、予めパラメータ設定部36により設定された速度レンジが、初期値としてオートレンジ/オートBLS処理部49に送られる(ステップS104)。「マニュアル」以外のスイッチとは、1EOS,2EOS,4EOSのいずれかのスイッチである。この初期値は、上述のように、先行するカラードプラモードで設定された値又は診断部位を指定することによって設定されたその部位の一般的な速度レンジである。
初期値が与えられると、オートレンジ/オートBLS処理部49は、図3に示したアルゴリズムに従って、オート速度レンジ調整の演算を行う(ステップS106〜S110)。なお、このステップS106〜S110の処理は、図3におけるステップS2〜S8に相当するものであり、詳細はここでは省略する。
この演算処理の結果、速度レンジの変更が必要と判断されると(ステップS112:Yes)、速度レンジを1ステップだけ上げる又は下げる変更を行う(ステップS114)。そして、観測時間設定スイッチで予め選択された過去の特定時間内のドプラ波形の最大値を予めレンジ係数選択スイッチで設定されたレンジ係数倍した値が、表示器25一杯に表示されているか−上限/下限に達したか−否かを判断する(ステップS116)。この場合、トレースライン描画の極性が(正)に設定されているときは、ベースラインの上側のみについて最大値のレンジ係数倍に到ったか否かを判断し、(負)に設定されていれば下側のみ、(両方)のときは上下両方について判断する。
ここで、速度レンジが上限/下限に達していないと判断されたときは(ステップS116:No)、達するまで上述のステップS106〜S114の処理を繰り返す。
一方、速度レンジが上限/下限に達していると判断されたとき(ステップS116:Yes)、及び速度レンジの変更が不要と判断されたときは(ステップS112:No)、続いてBLSの調整を行う(ステップS118〜S122)。なお、厳密には、BLS処理への移行は、速度レンジの安定を確実にするため、2回の観測時間で上限/下限に達していることが確認されてから行うようにする。
BLSの自動調整は、まず、ベースラインより上側の最大レンジ(MaxVel)及び下側の最小レンジ(負側の絶対値が最大:MinVel)を計算する(ステップS118)。そして、最大レンジと最小レンジとの比較を行い、ベースラインのシフト量を計算する(ステップS102)。この計算は、例えば、最大レンジと最小レンジとの平均値を画面中央に据えるとして、その平均値とベースラインBL=0との距離を求めることにより行われる。
BLSも、ステップ単位で行われるので、オートレンジ/オートBLS処理部49は、パラメータ設定部36に有するBLSパラメータ設定テーブルから、例えばマイナスナイキストからプラスナイキストまで17段階のBLSパラメータ中から最寄のパラメータを選択し、ベースラインをその値だけシフトする(ステップS122)。
オートレンジ/オートBLS処理部49は、上述した処理を終了の指示があるまで、具体的には、自動速度レンジ/BLSの更新タイミング選択スイッチにおいて、「マニュアル」スイッチが選択されるまで、繰り返し行う(ステップS124:No)。
図18は、上記の処理結果の一例を時系列的に説明するタイムチャートである。観測時間t,t,t,t…t,tN+1,tN+2,tN+3,tN+4は、オート速度レンジ調整開始の指示が出されてから、すなわち、自動速度レンジ/BLSの更新タイミング選択スイッチで「マニュアル」以外のスイッチが選択されてからの、予め設定された時間間隔の推移を示す。
速度レンジは、まず初期値に設定された後、観測時間が経過するに従って、1ステップずつ更新される。そして、速度レンジが、一定の値に達し(tN+1時)、その値が次回の観測時間においても維持されると(tN+2時)、すなわち、速度レンジの更新を行う必要がなければ、そこで初めてベースラインが1ステップ分シフトされる。その後、速度レンジが更新されても、それが2回連続するものでなければ、ベースラインのシフトは行われない。
リアルタイム観測中に、BLSの更新は行わず、連続して自動速度レンジの更新のみを行う場合は、自動速度レンジ/BLS調整選択スイッチでは「自動速度レンジ/BLS調整」ではなく、「自動速度レンジ調整」スイッチが選択されていることを前提として、図17のステップS118〜S122がスキップされたフローに従って処理される。
次に、リアルタイムで観測中に、任意の時に1回だけ自動速度レンジ更新及びBLS更新の両方を行う場合について、図19に示すフローチャートを参照して説明する。前提として、自動速度レンジ/BLS調整選択スイッチでは、「自動速度レンジ/BLS調整」スイッチが選択され、自動速度レンジ/BLSの更新タイミング選択スイッチでは「マニュアル」スイッチが選択されていることが必要である。なお、連続して自動速度レンジ更新及びBLS更新の両方が行われる場合と同様の処理については、同じ符号を付して説明を省略する。
まず、ドプラ(PWまたはCWモード)検査が行なわれているときに、速度レンジ更新スイッチがONされると(ステップS202)、連続して自動速度レンジ更新及びBLS更新の両方が行われる場合と同じく、速度レンジ自動調整の演算が行われる(ステップS104〜S110)。
この演算処理の結果、速度レンジの変更が必要と判断されると(ステップS112:Yes)、速度レンジを1ステップだけ上げる又は下げる変更を1回だけ行う(ステップS114)。そして、その速度レンジが上限/下限に達したか否かを判断することは行わず、速度レンジの更新処理を終了する。この場合も、連続して自動速度レンジ更新及びBLS更新の両方が行われる場合と同じく、トレースライン描画の極性が(正)に設定されているときは、ベースラインの上側のみについて最大値のレンジ係数倍に到ったか否かを判断し、(負)に設定されていれば下側のみ、(両方)のときは上下両方について判断する。
また、速度レンジの更新が必要ないと判断されたときも(ステップS112:No)、速度レンジの更新を行うことなく次のステップへと進む。もっとも、ユーザが速度レンジ更新スイッチを選択するのは、その必要を感じた場合に限られるであろうから、通常は更新されることになる。
こうして、速度レンジが手動で更新されると、次に速度レンジ更新スイッチが選択されるまで速度レンジは固定されるので、BLSを行うことが可能となる。そこで、BLS更新スイッチが選択されると(ステップS204)、BLSの自動更新が、連続して自動速度レンジ更新及びBLS更新の両方が行われる場合と同様に処理され(ステップS118〜S122)、一連の自動更新処理は終了する。BLS更新スイッチが選択されない場合も同様に終了する(ステップS204:No)。
ユーザは、このようにして更新された速度レンジやBLSに満足できないときは、繰り返し速度レンジ更新スイッチやBLS更新スイッチを選択することにより、所望の設定に近づけることができる。これにより、従来装置において操作パネルにアサインされたスイッチを操作して手動で速度レンジを更新することに比べユーザの負担は軽減される。
図20は、上記の処理結果の一例を時系列的に説明するタイムチャートである。観測時間t,t,t…t,tK+1,tK+2…t,tN+1,tN+2は、速度レンジ更新のために予め設定された時間間隔の推移を示す。
速度レンジ更新スイッチがONされると、速度レンジは初期値に設定される。続いて速度レンジ更新スイッチをONすれば、その初期値をベースとして1ステップ変更される。そこで、繰り返し速度レンジ更新スイッチをONすることにより、速度レンジを、所望の値に近づけることができる。
自動速度レンジ/BLSの更新タイミング選択スイッチで「マニュアル」が選択されていると、このように、速度レンジは、速度レンジ更新スイッチがONされると1ステップ変更され、その値に固定される。したがって、連続して自動速度レンジ更新が行われる場合のように、速度レンジが2観測時間以上安定するまで待つ必要はなく、任意の時間にBLS更新スイッチをONすることができ、その毎に再計算されて、最適値に近づけていくことができる。
リアルタイム観測中に、BLSの更新は行わず、任意の時に1回のみ自動速度レンジの更新のみを行う場合は、自動速度レンジ/BLS調整選択スイッチでは「自動速度レンジ調整」スイッチが選択されていることを前提として、図19のステップS204〜S122の一連の処理がスキップされたフローに従って処理される。
続いて、フリーズ後に、BLS更新を行う場合について、図21に示すフローチャートを参照して説明する。なお、連続して自動速度レンジ更新及びBLS更新の両方が行われる場合等と同様の処理については、同じ符号を付して説明を省略する。この場合、自動速度レンジ/BLSの更新タイミング選択スイッチで何が選択されているかとは無関係に、マニュアルで作動する。
まず、ドプラ(PWまたはCWモード)検査が行なわれている場合に、画像がフリーズされ(ステップS302)、BLS更新スイッチがONされると(ステップS204)、まず、予めパラメータ設定部36により設定されたBLSに関する初期値が、オートレンジ/オートBLS処理部49に送られる(ステップS104)。
そして、BLSの自動更新が、前述の場合と同様に、但し1回だけ処理される(ステップS118〜S122)。フリーズ後においては、リアルタイム観測時と異なり、速度レンジの更新は行わないので、速度レンジの安定を待つことなく、任意の時にBLS更新スイッチをONすることができる。
この場合の処理結果は、時系列的には、図20に示すBLSと同様になる。これにより、フリーズ後においても、ベースラインをシフトすることが可能となり、より観測し易いドプラスペクトル画像を得ることができる。
(適用例)
以上のように構成され作動する本発明に係るドプラ超音波診断装置を用いて観察した例を2つ、以下説明する。
図22に示す第1の例は、頚動脈系を観察したものである。具体的には、1)血流ピークが120cm/sのICA(内頚動脈:Internal Carotid Artery)を10秒間観察した後、2)0.5秒のブランクを置いて、血流ピークが60cm/sのCCA(総頚動脈:Common Carotid Artery)を10秒間観察し、3)1秒のブランクを置いて、再度血流ピーク120cm/sのICAを10秒間観察し、4)1.2秒のブランクを置いて、最後に血流ピークが60cm/sのCCAを30秒間観察したものである。
観測条件として、ベースラインは−4に固定され、トレースライン描画の極性は(正)に設定されている、また、スクロール速度は垂直同期信号当たり2カラム、4秒で、観測時間は1EOS、レンジ係数は1.3倍である。
図22(a)は、平滑化後閾値処理モデルによる統計値計算処理の一例を示し、(b)は重み付けされたVp、Vm分布の経時変化を表示する。(c)は、これらの演算により得られた速度レンジ及びベースラインの経時的変動を示す図である。
この例によれば、全般的には高い追従性を有するものの、血流速度が断続的に変化する場合、特にブランクが発生する場合は、ブランク直後でヒストグラムの乱れが大きく、4秒程度の応答ラグが発生している。
図23に示す第2の例は、肋間でセクタプローブを用いてLV(左心室:Left Ventricle)を計測したものである。この例では、1)最初の10秒間は血流ピークが40cm/sから60cm/sまで徐々に上がり、2)次の10秒で60cm/sから40cm/sに下がり、3)その次の10秒では、再び40cm/sから60cm/sまで上がり、4)その後の30秒間は、60cm/sで一定している。
観測条件として、スクロール速度は垂直同期信号当たり4カラム、4秒で、観測時間は2EOS、レンジ係数は1.4倍である。
図23(a)は、平滑化後閾値処理モデルによる統計値計算処理の一例を示し、(b)は重み付けされたVp、Vm分布の経時変化を表示する。(c)は、これらの演算により得られた速度レンジ及びベースラインの経時的変動を示す図である。
図23(c)中、PRF1は、オートBLSを行わない場合の上下の速度レンジ、BL1はこの場合のベースラインを示す。また、PRF2は、オートBLSを行った場合の上下の速度レンジ、BL2はこの場合のベースラインを示している。
この例によれば、一部に4秒程度の応答ラグが生じているものの、このように連続的に波形のレンジが変化するものは追従性が比較的良いことが分かる。
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
本発明の実施形態に係るドプラ超音波診断装置の全体構成を示す概略ブロック図。 本実施形態のドプラ超音波診断装置の要部構成を示す概略の機能ブロック図。 速度レンジ及びベースラインシフト自動最適調整の演算の流れを示すフローチャート。 ドプラトレース波形の抽出を説明する図。 Vp、Vmのスペクトラム分布を±3ナイキスト周波数分プロットした図。 重み付けを加えたVpのスペクトラム分布を示す図。 速度レンジの上限及び下限を推定するための、正規分布モデルによる統計値計算処理の一例を示す図。 速度レンジの上限及び下限を推定するための、平滑化後閾値処理モデルによる統計値計算処理の一例を示す図。 重み付けされたVp、Vm分布の経時変化に、速度レンジの上限及び下限を重ねて表示する図であり、(a)はVpについての図、(b)はVmについての図。 速度レンジの経時的変動を示す図。 重み付けされたVp、Vm分布の経時変化に、速度レンジの上限及び下限並びにBLSを重ねて表示する図であり、(a)はVpについての図、(b)はVmについての図。 速度レンジ及びベースラインの経時的変動を示す図。 PID制御部の機能を示す概略ブロック図。 PID制御による応答を説明する図であり、(a)はP制御による場合、(b)はPID制御による場合の図。 EOSを説明する図。 EOSテーブルの一例を示す図。 リアルタイムで観測中に、連続して自動速度レンジ更新及びBLS更新の両者が行われる場合の処理の流れを示すフローチャート。 図17の処理結果の一例を時系列的に説明するタイムチャート。 リアルタイムで観測中に、任意の時に1回だけ自動速度レンジ更新及びBLS更新の両者を行う処理の流れを示すフローチャート。 図19の処理結果の一例を時系列的に説明するタイムチャート。 画像フリーズ後に、任意の時に1回だけBLS更新を行う処理の流れを示すフローチャート。 頚動脈系を観察した例を示すものであり、(a)は平滑化後閾値処理モデルによる統計値計算処理の一例を示す図、(b)は重み付けされたVp、Vm分布の経時変化を表示する図、(c)は速度レンジ及びベースラインの経時的変動を示す図。 肋間でLV計測を行った例を示すものであり、(a)は平滑化後閾値処理モデルによる統計値計算処理の一例を示す図、(b)は重み付けされたVp、Vm分布の経時変化を表示する図、(c)は速度レンジ及びベースラインの経時的変動を示す図。 スペクトラム信号の計測の概要を説明する図であり、(a)はドプラスペクトラム画像、(b)はVp,Vmのトレース画像、(c)はPS/EDの同期検出画像を示す図。 ドプラスペクトラム表示における速度レンジを説明する画面図であり、(a)は折り返りが発生している状態、(b)は速度レンジが大き過ぎる状態、(c)は速度レンジを調整した状態、(d)はベースラインをシフトした状態を示す図。
符号の説明
1 超音波プローブ
2 装置本体
3 ECGモジュール
11 全体コントローラ
21 送受信部
22 包絡線検波器
23 デジタル・スキャン・コンバータ(DSC)
24 D/A変換器
25 表示機
26 直交位相検波器
27 RG処理部
28 スペクトラムドプラ処理ブロック
29 PS/EDバッファ
30 CFMモード処理ブロック
31 DSP
32 PS/ED検出部、32a CPU、32b ピーク検出処理部
33 計測部、33a リアルタイムオート計測処理部、33b シネ・フリーズ後の再計測処理部
34 ビデオ・インターフェース(I/F)、34a ピンポンバッファ
35 画像ストレージ部
36 パラメータ設定部
37 ユーザインターフェース
38 操作パネル回路
39 TCS回路
40 GUI回路
41 ウォール・フィルタ
42 シネメモリバッファ
43 FFTスペクトラム処理部
44 Vp,Vmトレース波形検出処理部
45 表示用オーディオ・ビデオ・バッファ
46 オーディオ処理部
47 オーディオ・インターフェース(I/F)
48 オーディオ出力器
49 オートレンジ/オートBLS処理部
50 PID制御回路
51 比較器
52 調整器
53 変換器
54 ECG波形処理部
55 M/Mカラー処理部
P 被検体
BF 血流

Claims (6)

  1. 被検体内の運動流体を含む診断部位に向けて超音波を送受信させて得られる前記診断部位の流速に関する情報を担うドプラ周波数のスペクトラム信号に基づきスペクトラム画像を表示するドプラ超音波診断装置において、
    前記スペクトラム信号の周波数方向の最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方を時間方向にトレースしそのトレース波形を出力する処理をリアルタイムで実行するトレース手段と、
    所定観測時間毎に前記最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布に対する統計値に基づき、ドプラ速度レンジを調整する速度レンジ調整手段と、
    を備え
    前記速度レンジ調整手段は、
    所定観測時間毎に前記最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布を少なくとも±3ナイキスト周波数分折り返して拡大し、その分布形状に表示レンジ内と折り返しレンジ内とで設定されたベースラインに応じて適切な重みをかける重み付け手段と、
    該重みをかけられた最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布からドプラ速度レンジの上限と下限の統計計算を行う統計値計算手段と、
    を備えることを特徴とするドプラ超音波診断装置。
  2. 被検体内の運動流体を含む診断部位に向けて超音波を送受信させて得られる前記診断部位の流速に関する情報を担うドプラ周波数のスペクトラム信号に基づきスペクトラム画像を表示するドプラ超音波診断装置において、
    前記スペクトラム信号の周波数方向の最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方を時間方向にトレースしそのトレース波形を出力する処理をリアルタイムで実行するトレース手段と、
    所定観測時間毎に前記最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布に対する統計値に基づき、ドプラ速度レンジを調整する速度レンジ調整手段と、
    前記最大流速Vpの正側最大値及び負側最大値を計算し、ドプラスペクトラム画像表示におけるベースラインのシフト量を求めて、該ベースラインを調整するベースライン調整手段と、
    を備え
    前記速度レンジ調整手段は、
    所定観測時間毎に前記最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布を少なくとも±3ナイキスト周波数分折り返して拡大し、その分布形状に表示レンジ内と折り返しレンジ内とで設定されたベースラインに応じて適切な重みをかける重み付け手段と、
    該重みをかけられた最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布からドプラ速度レンジの上限と下限の統計計算を行う統計値計算手段と、
    を備えることを特徴とするドプラ超音波診断装置。
  3. 前記統計値計算手段は、前記重み付けした最大流速Vp及び平均流速Vmの少なくとも一方の分布から平均と分散を計算し、平均±係数*σを速度レンジの上限及び下限の推定値とすることを特徴とする請求項1又は2記載のドプラ超音波診断装置。
  4. 前記統計値計算手段は、前記重み付けした最大流速Vpの分布から、ピーク値の係数%に相当する値を速度レンジの上限及び下限の推定値とすることを特徴とする請求項1又は2記載のドプラ超音波診断装置。
  5. 前記統計値計算手段は、前記重み付けした平均流速Vmの分布のピーク値の位置から周波数レンジの上下方向にレンジを拡げ、該分布が予め設定された閾値以下となる点を速度レンジの上限及び下限の推定値とすることを特徴とする請求項1又は2記載のドプラ超音波診断装置。
  6. 前記統計値計算手段は、
    1)前記重み付けした最大流速Vpの分布から平均と分散を計算して、平均±係数*σを速度レンジの上限及び下限の推定値とする演算と、
    2)前記重み付けした平均流速Vmの分布から夫々平均と分散を計算して、平均±係数*σを速度レンジの上限及び下限の推定値とする演算と、
    3)前記重み付けした最大流速Vpの分布から、ピーク値の係数%に相当する値を速度レンジの上限及び下限を推定値とする演算と、
    4)前記重み付けした平均流速Vmの分布のピーク値の位置から周波数レンジの上下方向にレンジを拡げ、該分布が予め設定された閾値以下となる点を速度レンジの上限及び下限を推定し、該夫々の上限及び下限の推定値とする演算と、
    の中の少なくとも2つの演算を実行し、得られた夫々の推定値の中の最大値を、速度レンジの上限及び下限の推定値として選択することを特徴とする請求項1又は2記載のドプラ超音波診断装置。
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