JP4476567B2 - 耐衝撃性スチレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の構造を有する変性重合体を用いた衝撃強度、剛性、外観特性のバランスに優れた耐衝撃性スチレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレンは、剛性,透明性,光沢などに優れ、かつ良好な成形性を有していることから各種用途に使用されている。しかしながら、このポリスチレンは耐衝撃性に劣るという大きな欠点があり、この欠点を改良するために各種の未加硫ゴムが強靭化剤として用いられている。中でも、未加硫ゴムの存在下にスチレン系単量体をラジカル重合させ、ゴム状重合体にグラフト重合したスチレン系樹脂組成物が工業的に広く製造されている。
【0003】
この目的に使用される未加硫ゴムとしてはポリブタジエンとスチレン−ブタジエン共重合体があり、特にポリブタジエンは優れた耐衝撃性を付与するために広く使用されている。
近年、スチレン系樹脂組成物の用途が、家庭電気機器のハウジング及びその他の部品、車軸部品、事務機器の部品、日用雑貨品及び玩具などに広がるに伴い、より優れた各種特性が要求されるようになり、外観特性、剛性と耐衝撃性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物が強く要望されている。
【0004】
スチレン系樹脂組成物は、ゴム状重合体として、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムをスチレン単量体に溶解し、攪拌下、塊状重合または、塊状−懸濁重合法で製造するのが一般的である。
一般的に、耐衝撃性の向上はゴム状重合体の含量を増加させることにより可能となるが、ゴム状重合体を増加させたスチレン系樹脂は、衝撃強度が向上する反面、剛性や光沢が低下する。一方、光沢の向上は、ゴム状重合体の含量を低下させるか、或いは樹脂中に分散するゴム状重合体の粒子を微細化させることにより可能となるが、反面、耐衝撃性が著しく低下する。
【0005】
従来、スチレン系樹脂組成物を改良する方法として、共役ジエン系重合体の溶液粘度を特定化する方法(例えば特許文献1参照。)、共役ジエン系重合体の溶液粘度とムーニー粘度の関係を特定化する方法(例えば特許文献2参照。)、共役ジエン系重合体の溶液粘度と有機過酸化物架橋体における引張り弾性率、膨潤度の関係を特定化する方法(例えば特許文献3参照。)などが提案されている。しかしながら、これらの方法においては、従来のポリブタジエンを用いた場合に比べて、耐衝撃性と光沢のバランスは向上されているが、必ずしも満足しうるものではなかった。
【0006】
一方、特定の構造を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体を用いて、耐衝撃性と外観特性を改良する方法が提案されている。(例えば特許文献4〜7参照。)しかしながら、これらの方法について詳細に検討してみると、耐衝撃性と外観特性のバランスについて実用的に満足しうるものは得られていない。
また、変性共役ジエン系重合体を用いて衝撃強度を改良する方法が提案されているが(例えば特許文献8〜10参照。)、これらの方法について詳細に検討してみると、耐衝撃性と外観特性のバランスについて実用的に満足しうるものは得られていない。
【0007】
【特許文献1】
特公昭58−4934号公報
【特許文献2】
特公昭53−44188号公報
【特許文献3】
特開昭60−25001号公報
【特許文献4】
特開昭61−143415号公報
【特許文献5】
特開昭63−165413号公報
【特許文献6】
特開平2−132112号公報
【特許文献7】
特開平2−208312号公報
【特許文献8】
特開昭63−8411号公報
【特許文献9】
特開昭63−278920号公報
【特許文献10】
特開平6−228246号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のゴム状重合体を、スチレン系樹脂に使用した場合、耐衝撃性、剛性および外観特性とのバランスを満足ゆく程度まで改良することは困難であった。本発明は、上述したような課題を解決するものであり、特定構造を有する変性重合体を用い、耐衝撃性、剛性および外観特性の物性バランスが向上したスチレン系樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定の官能基で変性された共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる変性重合体又はその水添物を用いることで、耐衝撃性、剛性および外観特性光沢の物性バランスが著しく向上したスチレン系樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は以下の通りである。
【0010】
1.芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体との混合物である成分(A)75〜98重量部、および共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が3〜70重量%であり、しかもビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素量の50重量%以上である重合体に官能基が少なくとも1個結合している変性重合体である成分(B)2〜25重量部とをラジカル重合して得られることを特徴とする耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
2.成分(B)が、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックを有している変性重合体であることを特徴とする上記1に記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
3.成分(B)が、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基が少なくとも1個結合している変性重合体であることを特徴とする上記1又は2に記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
4.成分(B)が、下記式(1)〜式(14)から選ばれる官能基が少なくとも1個結合している変性重合体であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
【化2】
Figure 0004476567
(上式で、R1〜R4は、水素又は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基。R5は炭素数1〜48の炭化水素鎖、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素鎖。なおR1〜R4の炭化水素基、及びR5の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、珪素等の元素が結合していても良い。R6は水素又は炭素数1〜8のアルキル基)
【0011】
5.成分(B)に、さらに、該変性重合体の官能基と反応性を有する2次変性剤が結合していることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
6.2次変性剤が、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有することを特徴とする上記5に記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
7.成分(B)が水素添加されていることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明で使用する成分(B)は、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる重合体に官能基含有変性剤を付加反応させてなる変性重合体又はその水添物(以後、1次変性重合体等ともいう)、及び該1次変性重合体等に2次変性剤を反応させた2次変性重合体(以後、これらを総称して変性重合体等ともいう)である。変性重合体等のビニル芳香族炭化水素含有量は3〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、更に好ましくは5〜45重量%である。
【0013】
本発明で使用する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる変性重合体等は、該重合体中に少なくとも1個のビニル芳香族重合体ブロックを含有していることが好ましい。該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合(以後、重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量の割合をビニル芳香族炭化水素のブロック率という)が、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上の重合体である。変性重合体等において、ビニル芳香族重合体ブロックを形成していないビニル芳香族炭化水素は、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体部分に均一に分布していても、又テーパー状に分布していてもよい。又、該重合体中には、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。
【0014】
ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量の測定は、例えば四酸化オスミウムを触媒として共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分の重量(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めることができる。
ビニル芳香族炭化水素のブロック率(重量%)
=(重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの重量/重合体の重量)×100
【0015】
本発明において、変性反応及び水添反応前の共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とからなる重合体は、少なくとも1種類の共役ジエン系単量体及び少なくとも1種類のビニル芳香族芳香族炭化水素とを有機リチウム触媒の存在下で溶液重合させることにより製造することができる。本発明の変性重合体等の製造方法は、本発明の構造を有する共重合体を得ることができれば、如何なる製造方法も採用することができる。
【0016】
例えば、炭化水素溶媒中、共役ジエン体及びビニル芳香族炭化水素の混合物を有機リチウム触媒を用いてブロック共重合させて製造する方法、共役ジエン及びビニル芳香族炭化水素の混合物を有機リチウム触媒を用いてブロック共重合した後、引き続き、ビニル芳香族炭化水素を添加してビニル芳香族炭化水素ブロックを増加させて製造する方法、共役ジエン及びビニル芳香族炭化水素の混合物を有機リチウム触媒を用いてランダム共重合した後、引き続き、ビニル芳香族炭化水素を添加してビニル芳香族炭化水素ブロックを増加させて製造する方法、共役ジエンを有機リチウム触媒を用いて重合した後、引き続き、ビニル芳香族炭化水素を添加してビニル芳香族炭化水素ブロックを形成させて製造する方法等の溶液重合によって製造することができる。
【0017】
本発明において、水添前の変性重合体は、有機リチウム化合物を重合触媒として上述の方法等で得られる重合体のリビング末端に、後述する変性剤を付加反応することにより得られ、例えば下記一般式で表されるような構造を有する。
(A−B)n−X、 A−(B−A)n−X、
B−(A−B)n−X、 X−(A−B)n
X−(A−B)n−X、 X−A−(B−A)n−X、
X−B−(A−B)n−X、 [(B−A)nm−X、
[(A−B)n]m−X、 [(B−A)n−B]m−X、
[(A−B)n−A]m−X
【0018】
(上式において、Aはビニル芳香族炭化水素重合体ブロックであり、Bは共役ジエン重合体及び/又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体ブロックである。nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Xは、後述する官能基を形成する原子団が結合している変性剤の残基を示す。Xを後述するメタレーション反応で付加させる場合は、A及び/又はBの側鎖に結合している。また、Xに複数結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていても良い。)本発明で使用する変性重合体は、上記一般式で表される重合体の任意の混合物でもよい。
【0019】
本発明において、水添前の変性重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができ、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量は好ましくは5〜90%、好ましくは10〜70%、より好ましくは10〜50%である。共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は好ましくは3〜80%、より好ましくは5〜70%である。但し、重合体として水添物を使用する場合のミクロ構造は、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量は好ましくは10〜80%、更に好ましくは15〜75%、特に好ましくは20〜50%であり、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は好ましくは5〜70%、更に好ましくは10〜50%であることが推奨される。なお、本発明においては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)を以後ビニル結合量と呼ぶ。
本発明において、変性重合体等における共役ジエンに基づくビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて知ることができる。
【0020】
本発明において、変性重合体等に組み込まれている共役ジエン重合体及び/又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体中にビニル結合量が異なる部分がそれぞれ少なくとも1つ存在しても良い。例えばビニル結合量が25%以下、好ましくは10〜23%の部分とビニル結合量が25%を超える部分、好ましくは28〜80%の部分がそれぞれ少なくとも一つ存在しても良い。また、上記構造式においてブロックBを二つ以上有する重合体において、それぞれのブロックBのビニル結合量は同一でも異なっていても良い。
【0021】
本発明において、共役ジエンとは1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。これらは一つの重合体の製造において一種のみならず二種以上を使用してもよい。又、ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、などがあるが、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。これらは一つの重合体の製造において一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0022】
本発明において、共役ジエンとしてイソプレンと1,3−ブタジエンを併用する場合、イソプレンと1,3−ブタジエンの質量比は好ましくは95/5〜5/95、より好ましくは90/10〜10/90、更に好ましくは85/15〜15/85である。特に、低温特性の良好な組成物を得る場合には、イソプレンと1,3−ブタジエンの質量比は好ましくは49/51〜5/95、より好ましくは45/55〜10/90、更に好ましくは40/60〜15/85であることが推奨される。イソプレンと1,3−ブタジエンを併用すると高温での成形加工においても外観特性と機械的特性のバランス性能の良好な組成物が得られる。
【0023】
本発明において、重合体の製造に用いられる溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、或いはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素系溶媒が使用できる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
本発明の重合体の製造に用いられる有機リチウム化合物とは、モノ有機リチウム化合物または多官能性有機リチウム化合物であり、あるいはモノ有機リチウム化合物と多官能性有機リチウム化合物との混合物であってもよい。モノ有機リチウム化合物としては、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等が挙げられるが、好ましくは、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが用いられる。更に、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
【0025】
多官能性有機リチウム化合物としては、例えばジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,4−ジリチオシクロヘキセン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3−ジリチオ−4−フェニルブタン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニル−エタン、1,10−ジリチオデカン、1,20−ジリチオエイコサン、1,1−ジリチオジフェニレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,5−ジリチオナフタレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオイソプレン、ジリチオジイソプレン、ジリチオポリイソプレン、2,2’−2”−トリリチオ−p−ターフェニル、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等が挙げられる。
【0026】
上記の他にモノ有機リチウム化合物と他の化合物を反応させることによって得られる実質的に多官能性有機リチウム化合物を含んでいる有機リチウム化合物であってもよい。これらの例のうち、特に代表的なものは、モノ有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物の二者を含む反応生成物である。例えば、モノ有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物との反応生成物,モノ有機リチウム化合物と共役ジエン系単量体と反応させた後、ポリビニル芳香族化合物と反応させた反応生成物、又はモノ有機リチウム化合物とモノビニル芳香族単量体を反応させた後、ポリビニル芳香族化合物と反応させた反応生成物,或いは、モノ有機リチウム化合物と共役ジエン系単量体又はモノビニル芳香族単量体、及びポリビニル芳香族化合物の三者を同時に反応させた反応生成物等が用いられる。さらに、モノ有機リチウム化合物とモノビニル芳香族との反応生成物に、ポリビニル芳香族化合物を反応させ、次いで、更にモノビニル芳香族化合物を反応して得られた触媒も有効である。
【0027】
ここでいうポリビニル芳香族化合物とは、o,m及びp−ジビニルベンゼン、o,m及びp−ジイソプロペニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,2−ビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,3,5−トリビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、3,5,4’−トリビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,5,6−トリビニル−3,7−ジエチルナフタレン等であり、一種または二種以上用いることかできる。特にジビニルベンセンが好ましいが、ジビニルベンゼンには、o−,m−,p−の異性体があり、これら異性体の混合物である商業的に得られるジビニルベンセンで事実上満足される。また、ここでいうモノビニル芳香族単量体とは、スチレン、ビニルトルエン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等であるが、特にスチレンが好ましい。
【0028】
これらの有機リチウム化合物は一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。又、有機リチウム化合物は、重合体の製造において重合途中で1回以上分割添加してもよい。本発明において、重合体の製造時、重合速度の調整、重合した共役ジエン部分のミクロ構造の変更、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との反応性比の調整などの目的で極性化合物やランダム化剤を使用することができる。極性化合物やランダム化剤としては、エーテル類、アミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、カリウムまたはナトリウムのアルコキシドなどが挙げられる。
【0029】
適当なエーテル類の例はジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルである。アミン類としては第三級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、その他環状第三級アミンなども使用できる。ホスフィン及びホスホルアミドとしては、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミドなどがある。
【0030】
本発明において、共重合体を製造する際の重合温度は、好ましくは−10〜150℃、より好ましくは30〜120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、好ましくは48時間以内であり、特に好適には0.5〜10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲でおこなえばよく、特に限定されるものではない。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないようにすることが好ましい。
【0031】
本発明で用いる成分(B)の1次変性重合体等は、有機リチウム化合物を重合触媒として得た重合体のリビング末端に官能基含有変性剤(以後、1次変性剤ともいう)を付加反応させた変性重合体であり、また水添物の場合は該変性重合体を水添反応させた変性重合体であり、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、シラノール基、アルコキシシラン、ハロゲン化ケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している1次変性重合体等である。
【0032】
かかる官能基を有する原子団が結合している1次変性重合体等は、重合体のリビング末端との付加反応により、該重合体に前記の官能基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合されている変性重合体を生成する官能基を有する変性剤、あるいは該官能基を公知の方法で保護した原子団が結合している変性剤を付加反応させる方法により得ることができる。
他の方法としては、重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加した重合体に上記の変性剤を付加反応させる方法が上げられる。変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般に水酸基やアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、水酸基やアミノ基等にすることができる。
【0033】
尚、本発明においては、重合体のリビング末端に変性剤を反応させる際に、一部変性されていない重合体が1次変性重合体等に混在しても良い。1次変性重合体等に混在する未変性の重合体の割合は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下であることが推奨される。
本発明で用いる1次変性重合体等として特に好ましいものは、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している1次変性重合体等である。
【0034】
本発明において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団として好ましい原子団は、下記式(1)〜式(14)のような一般式で示されるものから選ばれる原子団が挙げられる。
【0035】
【化3】
Figure 0004476567
【0036】
(上式で、R1〜R4は、水素又は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基。R5は炭素数1〜48の炭化水素鎖、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素鎖。なおR1〜R4の炭化水素基、及びR5の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、珪素等の元素が結合していても良い。R6は水素又は炭素数1〜8のアルキル基)
【0037】
本発明において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している1次変性重合体等を得るために使用される変性剤としては、下記のものが上げられる。
【0038】
例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジンである。
また、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシランである。
【0039】
また、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシランである。
【0040】
また、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシランである。
【0041】
また、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシランである。
【0042】
また、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシランである。
【0043】
また、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシランである。
【0044】
さらに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドン等が挙げられる。 上記の変性剤を反応させることにより、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を1個有する原子団が結合している変性重合体が得られる。ブロックAとブロックBを有する重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させる場合、重合体のリビング末端はブロックAでもブロックBのいずれでも良い。
【0045】
上記の変性剤の使用量は、重合体のリビング末端1当量に対して、0.5当量を超え、10当量以下、好ましくは0.7当量を超え、5当量以下、更に好ましくは1当量を超え、4当量以下で使用することが推奨される。なお、本発明において、重合体のリビング末端の量は、重合に使用した有機リチウム化合物の量と該有機リチウム化合物に結合しているリチウム原子の数から算出しても良いし、得られた重合体の数平均分子量から算出しても良い。
【0046】
本発明において、変性重合体の水添物は、上記で得られた水素添加前の変性重合体を水素添加することにより得られる。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物があげられる。
【0047】
チタノセン化合物としては、特開平8-109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
【0048】
水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜7MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0049】
本発明で使用する変性重合体の水添物において、共役ジエンに基づく不飽和二重結合の水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。熱安定性及び耐候性の良好な変性重合体の水添物を得る場合、重合体中の共役ジエンに基づく不飽和二重結合の70%を超える、好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上が水添されていることが推奨される。また、熱安定性及びグラフト反応性の良好な変性重合体の水添物を得る場合、水素添加率は3〜70%、或いは5〜65%、特に好ましくは10〜60%にすることが好ましい。なお、共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、水添率を50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下にすることが好ましい。水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)により知ることができる。
【0050】
本発明で使用する成分(B)の変性重合体等は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、樹脂組成物の機械的強度等の点から3万以上、ビニル芳香族炭化水素等への溶解性の点から80万以下であることが好ましく、より好ましくは5万〜70万、更に好ましくは10〜60万である。また、分子量分布は1.05〜6、好ましくは1.05〜5、更に好ましくは1.05〜4である。
【0051】
変性重合体等の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。重合体の分子量分布は、同様にGPCによる測定から求めることができる。
【0052】
上記のようにして得られた変性重合体等の溶液は、必要に応じて触媒残渣を除去し、変性重合体等を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば重合後の溶液にアセトンまたはアルコール等の重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、変性重合体等の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。尚、本発明で使用する変性重合体等には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
【0053】
本発明で使用する2次変性重合体は、上記の1次変性重合体等に、該変性重合体等の官能基と反応性を有する2次変性剤を反応させた2次変性重合体である。
本発明において、2次変性剤は、好ましくはカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する2次変性剤である。2次変性剤は、これらの官能基から選ばれる官能基を少なくとも2個有する架橋剤である。但し官能基が酸無水物基の場合、酸無水物基が1個の2次変性剤であっても良い。1次変性重合体等に2次変性剤を反応させる場合、1次変性重合体に結合されている官能基1当量あたり、2次変性剤が0.3〜10モル、好ましくは0.4〜5モル、更に好ましくは0.5〜4モルであることが推奨される。
【0054】
1次変性重合体等と2次変性剤を反応させる方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、溶融混練方法や各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法などが挙げられる。各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法において、溶媒としては各成分を溶解又は分散するものであれば特に制限はなく、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などの炭化水素系溶媒の他、含ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが使用できる。かかる方法において各成分を反応させる温度は、一般に−10〜150℃、好ましくは30〜120℃である。反応に要する時間は条件によって異なるが、一般に3時間以内であり、好ましくは数秒〜1時間である。特に好ましい方法は、1次変性重合体等を製造した溶液中に2次変性剤を添加して反応させて2次変性重合体を得る方法が推奨される。この場合、1次変性重合体等の溶液を中和処理して2次変性剤と反応させても良い。
【0055】
2次変性剤として具体的なものは、カルボキシル基を有する架橋剤としては、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、カルバリル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0056】
酸無水物基を有する2次変性剤としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、シス−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキシテトラヒドロキシフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。 イソシアネート基を有する2次変性剤としてはトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、多官能芳香族イソシアナート等が挙げられる。
【0057】
エポキシ基を有する2次変性剤としてはテトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、エチレングリコールジグリシジル、プロピレングリコールジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート等の他、1次変性重合体等を得るために使用される変性剤として記載されているエポキシ化合物などが挙げられる。
【0058】
シラノール基を有する2次変性剤としては1次変性重合体等を得るために使用される変性剤として記載されているアルコキシシラン化合物の加水分解物等が挙げられる。アルコキシシラン基を有する2次変性剤としてはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジスルファン、エトキシシロキサンオリゴマー等の他、1次変性重合体等を得るために使用される変性剤として記載されているシラン化合物などであるが挙げられる。
【0059】
本発明において特に好ましい2次変性剤は、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸又はその酸無水物、或いは酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基を2個以上有する変性剤であり、例えば無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トルイレンジイソシアナート、テトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン等である。
【0060】
本発明の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物を得る方法については、本発明の構成用件を満足しうるように配慮されている限り特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
通常、成分(B)である変性重合体等を芳香族ビニル単量体又は芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体との混合物に溶解し、ゴム溶液に剪断応力がかかるように攪拌しながら、塊状重合法または塊状懸濁重合法または溶液重合法によりグラフト重合させ、芳香族ビニル系単量体、又は芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体をとの共重合体よりなるマトリックス中に、該重合体が粒子状に分散してなるスチレン系樹脂組成物を得る方法が好ましい。
【0061】
本発明で用いられる芳香族ビニル単量体としては、スチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルビニルベンゼン、p−tert−ブチルスチレン、などの核アルキル置換スチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリブロモスチレン、テトラブロモスチレン等のハロゲン化スチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−メトキシスチレン等が挙げられ、1種又は2種以上の混合物として用いられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましい。
【0062】
芳香族ビニル単量体以外の共重合可能な単量体としては、不飽和ニトリル単量体、(メタ)アクリル酸エステル、その他共重合可能な単量体等から選ばれたものである。
不飽和ニトリル単量体の例としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等が挙げられ、1種又は2種以上の混合物として用いられる。特に、アクリロニトリルが好ましい。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられ、1種又は2種以上の混合物として用いられる。特に、メチルメタクリレートが好ましい。
【0064】
その他共重合可能な単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、N−メチルマレイミド,N−フェニルマレイミドなどが挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物を得るに際し、前記の芳香族ビニル単量体、又は芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体との混合液に不活性溶媒を加えて重合をおこなっても良い。不活性溶媒としては、エチルベンゼン、トルエンなどのほか、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどの極性溶媒を1種又は2種以上使用しても良い。これらの不活性溶媒の量は、変性重合体等を溶解したビニル単量体混合液100重量部に対し、好ましくは100重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。
【0065】
本発明において、成分(B)である変性重合体等を溶解した芳香族ビニル単量体、又は芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体との混合液をラジカル重合するに際し、有機過酸化物又はアゾ化合物の存在下で重合をおこなうこともできる。
有機過酸化物としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類が挙げられる。
【0066】
また、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類が挙げられる。
また、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサオド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類が挙げられる。
また、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類が挙げられる。
【0067】
また、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類が挙げられる。
また、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類が挙げられる。
さらに、p−メンタハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類などが用いられる。
【0068】
また、アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカーボニトリル等が用いられる。これらは一種又は二種以上の組み合わせで用いられる。有機過酸化物又はアゾ化合物の使用量は、前記ビニル単量体混合物中10〜1000ppmの範囲が好ましい。
また、本発明において、公知の連鎖移動剤が用いられる。連鎖移動剤として、例えばn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、1−フェニルブテン−2−フルオレン、ジペンテン、クロロホルム等のメルカプタン類、テルペン類、ハロゲン化合物等を用いることができる。
【0069】
本発明の樹脂組成物において、公知の酸化防止剤、紫外線安定剤等の安定剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、例えばオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス −(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられ、その添加量は樹脂組成物100重量部当たり、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0070】
紫外線安定剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系、その他にp−t−ブチルフェニルサリシレート、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。特に好ましくはトリアゾール系、ヒンダードアミン系の単独又は併用系である。これらの紫外線安定剤の添加量は好ましくは樹脂組成物100重量部当り0.01〜5重量部、更に好ましくは0.05〜2重量部である。
【0071】
また、必要に応じて通常用いられる流動パラフィン、ミネラルオイル、有機ポリシロキサン等の内部潤滑剤を添加することも可能である。例えば、有機ポリシロキサンであるポリジメチルシロキサンを樹脂組成物100重量部に対して0.005〜10重量部添加してもよい。
以上のようにして得られたスチレン系樹脂組成物におけるゲル含有量(トルエン不溶分の含有量)は5〜75重量%の範囲とすることが好ましく、更に好ましくは、10〜50重量%である。ゲル含有量が少なすぎると樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、多すぎると樹脂組成物の流動性が低下して加工する上で好ましくない。
【0072】
また、樹脂組成物中のゲルのトルエン中での膨潤指数(トルエン膨潤物の重量/脱溶媒後の乾燥重量)は5〜15の範囲が好ましく、更に好ましくは、7〜12である。膨潤指数が小さすぎると耐衝撃性が劣り、大きすぎると耐衝撃性が低下し、光沢性も悪化するので好ましくない。膨潤指数の制御は、ビニル単量体を塊状重合、塊状懸濁重合または溶液重合にてグラフト重合する際の最終反応率及び未反応単量体の脱揮温度などにより調整することができる。
マトリックス樹脂部分の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で7万〜50万が好ましく、より好ましくは、10万〜30万の範囲である。7万未満のものは、耐衝撃性が低下し、50万を越えるものは流動性が悪く加工する上で好ましくない。
【0073】
更に、本発明で得られる樹脂組成物の加工に際し、必要に応じて、難燃剤及び難燃助剤を配合し、難燃処方を施すことが可能である。難燃剤としては、種々のタイプがあるが、従来公知の全ての難燃剤が含まれ、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、水酸化物系難燃剤、シリコン系難燃剤等が有効である。例えば、デカブロモジフェニルオキシド、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのオリゴマー、トリス−(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、リン酸アンモニウム、赤リン、トリクレジルホスフェート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。難燃助剤としては、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
【0074】
また、必要に応じて、滑剤、離型剤、充填剤、帯電防止剤、着色剤等の各種添加剤を配合することができる。更に他の熱可塑性樹脂、例えば一般用ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、MBS樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体樹脂、無水マレイン酸・スチレン共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などと混合してもよい。これらの樹脂を加えることによって、耐熱性、剛性、耐衝撃性、外観性、塗装性などが付与され、その用途によってブレンド使用される。
本発明のスチレン系樹脂組成物は、射出成形、押出成形等の加工方法で成型され、多種多様に実用上有用な製品とすることができる。その用途は、電気製品、OA機器のキャビネット、ハウジングなどや、自動車の内外装部品、住宅・家具などの部品、放送・通信用アンテナ部品、その他多岐にわたって使用される。
【0075】
【実施例】
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
1.重合体の特性
(1)スチレン含有量
紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
(2)ポリスチレンブロック含量
水添前の重合体を用い、I.M.Kolthoff,et.al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法で測定した。
【0076】
(3)ビニル結合量
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX−400)を用いて測定した。
(4)分子量及び分子量分布
GPC〔装置:島津製作所社製LC10〕で測定し、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
【0077】
(5)未変性重合体の割合
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用し、変性重合体と低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液について、上記(4)で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する変性重合体の割合と、シリカ系カラムGPC〔装置はデュポン社製:Zorbax〕で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する変性重合体の割合を比較し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定した。未変性重合体の割合は、シリカカラムへ吸着しなかったものの割合である。
【0078】
2.衝撃性スチレン系樹脂組成物の物性
(1)ノッチ付きアイゾット衝撃強度
JIS−K−7110に準拠して測定した。
(2)光沢
ASTM D−638に従ってゲート部とエンド部の光沢度(入射角60°)を測定し平均した。
(3)ゴム粒子径
得られた樹脂をジメチルフォルムアミド(DMF)に超音波振動を加えながら溶解した後、レーザー回折式粒度分布測定装置(LA−920:堀場製作所製)にて測定し、50%メジアン径として算出された値である。
【0079】
3.水添触媒の調製
水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法で調製した。
(1)水添触媒I
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジ−(p−トリル)40ミリモルと分子量が約1,000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムを溶解した後、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して室温で5分反応させ、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加攪拌して室温で保存した。
【0080】
4.変性重合体の調整
(1)共重合体A
内容積10リットルで、攪拌機およびジャケットを付けた温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、不純物を除去したブタジエンを680g、シクロヘキサンを5500g、極性物質としてテトラヒドロフラン1.37gを反応器へ入れ、反応器内温を40℃に保持した。重合開始剤としてn−ブチルリチウム0.8gを含むシクロヘキサン溶液を反応器へ供給した。反応開始後、重合による発熱で反応器内温は徐々に上昇した。反応終了後、スチレン120gを反応容器に入れ重合を継続し、最終的な反応器内温は75℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤として、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを重合に使用したn−ブチルリチウムに対して1モル添加し75℃で5分間保持して変性反応を実施した。その後メタノールを添加し、次に安定剤添加した後に溶媒を除去した。得られた共重合体の特性を表1に示す。
【0081】
(2)共重合体B
内容積10リットルで、攪拌機およびジャケットを付けた温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、不純物を除去したブタジエンを560g、スチレンを240g、シクロヘキサンを5500g、極性物質としてテトラヒドロフラン1.37gを反応器へ入れ、反応器内温を40℃に保持した。重合開始剤としてn−ブチルリチウム0.55gを含むシクロヘキサン溶液を反応器へ供給した。反応開始後、重合による発熱で反応器内温は徐々に上昇した。重合反応終了後、反応器に変性剤として、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを重合に使用したn−ブチルリチウムに対して1モル添加し、75℃で5分間保持して変性反応を実施した。その後メタノールを添加し、次に安定剤添加した後に溶媒を除去した。得られた共重合体の特性を表1に示す。
【0082】
(3)共重合体C
内容積10リットルで、攪拌機およびジャケットを付けた温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、不純物を除去したブタジエンを680g、シクロヘキサンを5500g、極性物質としてテトラヒドロフラン1.37gを反応器へ入れ、反応器内温を40℃に保持した。重合開始剤としてn−ブチルリチウム1.3gを含むシクロヘキサン溶液を反応器へ供給した。反応開始後、重合による発熱で反応器内温は徐々に上昇した。反応終了後、スチレン120gを反応容器に入れ重合を継続し、最終的な反応器内温は75℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤として、テトラグリシジル−1、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを重合に使用したn−ブチルリチウムに対して1.5当量添加し75℃で5分間保持して変性反応を実施した。その後メタノールを添加し、次に安定剤添加した後に溶媒を除去した。
【0083】
(4)共重合体D
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器に、ブタジエン/スチレンの重量比が75/25のモノマーを16重量%の濃度で含有するn−ヘキサン溶液を157g/分の供給速度で、n−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液をモノマー100gに対してn−ブチルリチウム0.15gになるような供給速度で、90℃で連続重合した。
次に、連続重合で得られたリビングポリマーに、変性剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを重合に使用したn−ブチルリチウムに対して1モル反応させた。得られた共重合体の特性を表1に示す。
【0084】
(5)共重合体E
変性剤としてN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンを使用する以外は、共重合体Aと同様の方法で共重合体(E)を得た。
(6)共重合体F
変性剤としてγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを使用する以外は、共重合体(B)と同様の方法で共重合体(F)を得た。
【0085】
(7)共重合体G
内容積10リットルで、攪拌機およびジャケットを付けた温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、不純物を除去したブタジエンを640g、シクロヘキサンを5500g、極性物質としてテトラヒドロフラン1.37gを反応器へ入れ、反応器内温を40℃に保持した。重合開始剤としてn−ブチルリチウム0.8gを含むシクロヘキサン溶液を反応器へ供給した。反応開始後、重合による発熱で反応器内温は徐々に上昇した。反応終了後、スチレン160gを反応容器に入れ重合を継続し、最終的な反応器内温は75℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤として、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを重合に使用したn−ブチルリチウムに対して1モル添加し75℃で5分間保持して変性反応を実施した。その後メタノールを添加し、次に、得られたポリマーに、水添触媒をポリマー100重量部当たりTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。得られた共重合体の特性を表1に示す。
【0086】
(8)共重合体H
変性剤を加えなかったこと以外、共重合体Aと同様の方法で未変性の共重合体を得た。得られた共重合体の特性を表1に示す。
(9)2次変性重合体の調整
上記で得られた1次変性重合体に所定量の2次変性剤をブレンドし、温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量1.7リットル)を使用し、充填率65%、ローター回転数66/77rpmの条件で混練、又は30mmφ二軸押出機で220℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練して反応させ共重合体I〜共重合体Kを得た。こうして得られた2次変性重合体の特性を第2表に示した。
【0087】
【実施例1〜9】
各種変性重合体を用いて、以下に述べる塊状重合法によりスチレン系樹脂組成物を得た。
攪拌装置、ジャケット付き反応器にスチレン90重量部、変性重合体10重量部、を加え、次いで安定剤として、n−オクタデシル−3−(3’、5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.3重量部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.05重量部を添加し攪拌して溶解した。これに、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンをスチレンモノマーに対して60ppm添加し105℃で3時間、120℃で2時間、150℃で2時間、170℃で2時間重合を行った。更に、230℃で30分間加熱後、未反応生成物を減圧除去した後、得られたスチレン樹脂組成物を粉砕し押出機にてペレット状にした。こうして得られたスチレン系樹脂組成物の特性を表3に示した。これらのスチレン系樹脂組成物は、衝撃強度と光沢のバランスに優れていた。
【0088】
【実施例10および実施例11】
実施例1と同様の反応器を用い、スチレン67重量部、アクリロニトリル23重量部とする以外は、実施例1と同様の方法でスチレン樹脂組成物(かかる樹脂組成物は一般にABS樹脂と呼ばれる)を得た。こうして得られたスチレン系樹脂組成物の特性を表2に示した。得られたスチレン系樹脂組成物は衝撃強度と光沢のバランスに優れていた。
【0089】
【実施例12】
実施例1と同様な反応器を用い、スチレン42重量部、メチルメタクリレート48重量部とする以外は、実施例1と同様の方法でスチレン樹脂組成物(かかる樹脂組成物は一般にMBS樹脂と呼ばれる)を得た。こうして得られたスチレン系樹脂組成物の特性を表2に示した。得られたスチレン系樹脂組成物は衝撃強度と光沢のバランスに優れていた。
【0090】
【比較例1】
実施例1と同様の方法によって、表1に示した未変性重合体を用いてABS樹脂組成物を得た。こうして得られたABS樹脂組成物の特性を表2に示した。得られたABS樹脂組成物は衝撃強度と光沢のバランスに劣っていた。
【0091】
【比較例2】
実施例10と同様の方法によって、表1に示した未変性重合体を用いてABS樹脂組成物を得た。こうして得られたABS樹脂組成物の特性を表2に示した。得られたABS樹脂組成物は衝撃強度と光沢のバランスに劣っていた。
【0092】
【比較例3】
実施例12と同様の方法によって、表1に示した未変性重合体を用いてMBS樹脂組成物を得た。こうして得られたMBS樹脂組成物の特性を表2に示した。得られたMBS樹脂組成物は衝撃強度と光沢のバランスに劣っていた。
【0093】
【表1】
Figure 0004476567
【0094】
【表2】
Figure 0004476567
【0095】
【表3】
Figure 0004476567

Claims (5)

  1. 芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体との混合物である成分(A)75〜98重量部、および共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が3〜70重量%であり、しかもビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素量の50重量%以上である重合体に官能基が少なくとも1個結合している変性重合体である成分(B)2〜25重量部とをラジカル重合して得られることを特徴とする耐衝撃性スチレン系樹脂組成物であって、
    前記成分(B)が下記式(1)〜(3)、(5)、(6)、(9)、(10)〜(12)から選ばれる官能基が少なくとも1個結合している変性重合体であることを特徴とする耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
    Figure 0004476567
    (上式で、R1、R2は、水素又は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基。R5は炭素数1〜48の炭化水素鎖、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素鎖。なおR1、R2の炭化水素基、及びR5の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、珪素元素が結合していても良い。R6は水素又は炭素数1〜8のアルキル基)
  2. 成分(B)が、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックを有している変性重合体であることを特徴とする請求項1に記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
  3. 成分(B)に、さらに、該変性重合体の官能基と反応性を有する2次変性剤が結合していることを特徴とする耐衝撃性スチレン系樹脂組成物であって、前記2次変性剤が、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有することを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
  4. 前記2次変性剤が、アミノ基、酸無水物基、エポキシ基から選ばれる官能基を少なくとも1個有することを特徴とする請求項3に記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
  5. 成分(B)が水素添加されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。
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