JP4475949B2 - 組換え抗マラリア原虫抗体 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばマラリア原虫(Plasmodium falciparum)などのマラリア寄生虫に対する組換え抗体、かかる抗体の製造方法、ならびにかかる抗体の使用および使用方法に関する。特に、本発明は特定の抗原MSP-3に対する抗体に関する。
先行技術
毎年250万人を超える人々がマラリア病によって死亡しており、その大部分は子供である。
この疾病の死亡率および罹患率は、発展途上国世界の社会に計り知れない負担をもたらしている。国際連合は、多くのアフリカの国々におけるマラリアによる生産性の損失は国民総生産の5%にあたると見積もっている。
既存の抗マラリア薬クロロキンに対するマラリア寄生虫(P. falciparum)の耐性は1960年代に出現し、それ以来広がってきている。また、このマラリア寄生虫は、過去10年の間に他のほとんどの抗マラリア薬に対しても耐性を生じさせてきた。このことは、公衆衛生に大きな脅威をもたらす。マラリアの流行と抗マラリア薬に対する耐性の程度が増加の一途をたどることは、疑う余地がない。さらに、例えばメフロキンのような多くの抗マラリア薬に有害な副作用があることはよく知られている。
免疫ドナー由来の抗寄生虫活性は、IgGとして非免疫レシピエントへ移入することができるが(McGregorら, 1963; McGregor 1964)、このような抗体は直接作用するのではなく、抗体依存性の細胞性増殖阻害(ADCI, Bouharounら, 1990)と呼ばれるメカニズムを介して間接的に作用することがこれまでに示されている。このメカニズムは選択的にIgG1およびIgG3とともに機能する(Bouharoun-Tayounら, 1992;Shiら, 1999);(Aribotら, 1996)。
メロゾイト表面抗原(MSP-3)がADCIアッセイを用いて既に同定されている(Oeuvrayら, 1994)。また、アフィニティー精製されたヒトポリクローナル抗MSP-3抗体も、マウスモデルにおいて使用されている(Badellら, 2000)。
上記の抗体、すなわち感染した宿主から精製された抗体をマラリアの予防または治療に用いるにはいくつか困難な点がある。現実的見地から言って、感染した個体由来の血清が仮にも医療用途として認可される可能性は極めて低い(明らかに安全上の理由で)。また、十分な量の抗体も入手できないであろう。
原理的には、適当な特異性と活性を有する組換えヒト抗体が望ましいとされていた。しかし、これらの開発は当技術分野では困難であった。例えばSeehausら(1992)は、ファージディスプレープロトコールにおける欠失変異体の出現に関連する問題、つまり該変異体は、望ましくないにもかかわらず「無傷の」ファージよりも速く複製する傾向があり、そのため過剰に現れるようになることについて記載している。
本発明の開示
本発明者らは初めてMSP-3抗原に特異的な組換えヒト抗体を開発した。これらの抗体は、天然の非滅菌(non-sterile)マラリア免疫を受動的に誘導し(相関免疫と呼ばれる)、ADCIメカニズムを介してそれらの作用を発揮することができる。また、組換え抗体は感染赤血球および遊離寄生虫の食作用を誘発し得る。さらにこれらの抗体のもう1つの作用メカニズムは、エピトープに結合することによるMSP-3分子および/またはMSP-6分子の機能の直接妨害であると考えられる。
具体的には、本発明者らは13人のマラリア免疫個体のヒト末梢血白血球から、抗体の可変領域(V)をコードする遺伝子を増幅することに基づいてファージディスプレー系を作製した。これらの遺伝子はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離した。
V領域の遺伝子の増幅に続いて、これらの遺伝子を抗体フラグメントの発現を誘導する互換性のあるファージミドベクター中にクローン化した。得られたファージディスプレーライブラリーを、メロゾイト表面タンパク質MSP-3のフラグメントであるMSP-3194-257を用いてスクリーニングした(Oeuvrayら, 1994)。
具体的には、本発明者らは、ライブラリーをスクリーニングするための新規のパンニング戦略を開発した。この方法では、ビオチン化MSP-3194-257 抗原を、ストレプトアビジンコーティングポリスチレンビーズ(Dynabeads)と結合させ、そしてファージライブラリーとともにインキュベートした。
本発明者らは、最初の原液中に望ましい結合体が存在する頻度は非常に低いと考えた。稀な望ましい結合体を高い比率で回収するためには、抗原の初期濃度が高い必要があると考えられた。しかし、その次の工程では望ましい結合体の存在頻度は高くなると想定された。従って、本発明者らは各々のパンニングにおいて使用する抗原量を減らした。このことにより、良くも悪くもない結合体が残ることを回避した。
本発明者らの戦略には、その後のパンニングにおける抗原コーティングビーズの数を減らすことを含めた。このようにして、抗原量および基質(ビーズ)の面積の双方を同時に減少させる。
基質の表面積および抗原量を同時に減少させることで、基質への非特異的な付着によって欠失突然変異体が残ってしまうという選択的優位性が回避される。
この選択手法によりRAM1、RAM2およびRAM3と呼ばれる3つの異なるクローンが単離された。検討した376のファージクローン中、RAM1が大部分を占めていた。これらのクローンに対してエピトープマッピングを行ったところ、これらのクローン間の関係が明らかになった。
これらのクローンの天然マラリア抗原との反応性が、免疫ブロット法、免疫蛍光法、およびフローサイトメトリーにより示された。
RAM1、RAM2およびRAM3クローンは、真核性CHO細胞中で完全ヒトIgG1および完全IgG3 抗体として製造された。これらの抗体は純度が99%を超えるよう精製された。
発明の態様
よって、第1の態様において本発明は、マラリア原虫のMSP-3抗原に特異的な抗体配列を含んでなる組換えヒト抗体を提供する。
抗体が他の抗原に優先して特定の抗原と結合する場合、該抗体はその特定の抗原に特異的である。特に、該抗体はその特定の抗原以外の分子に対しては有意な結合を示さなくてもよいし、特異性を標的抗原と他の非標的抗原との親和性の差異により定義してもよい。また、抗体は多くの抗原が有する特定のエピトープに対して特異的であってもよく、その場合、該抗体はそのエピトープを有する種々の抗原に結合することができる。例えば、抗体と抗原の二量体複合体の解離定数が1μM、好ましくは100nM、最も好ましくは1nM以下である場合に特異的結合が存在するとしてよい。
本発明の組換えヒト抗体は、MSP-3抗原のC末端、好ましくはMSP-3194-257 抗原に特異的であることが好ましい。
本発明の組換えヒト抗体は、MSP-3抗原の残基220〜230に相当するアミノ酸配列ILGWEFGGGVPを有するエピトープに特異的でありうる。また、この配列はマラリア原虫のMSP-6 抗原のような他の抗原においても保存されている(Truccoら, 2001)。
このような組換えヒト抗体は、図6に示された配列を有するRAM1 VHのCDR1; RAM1 VHのCDR2; RAM1 VHのCDR3; RAM1 VKのCDR1; RAM1 VKのCDR2; RAM1 VKのCDR3; RAM2 VHのCDR1; RAM2 VHのCDR2; RAM2 VHのCDR3; RAM2 VKのCDR1; RAM2 VK のCDR2; RAM2 VKのCDR3; RAM3 VHのCDR1; RAM3 VHのCDR2; RAM3 VHのCDR3; RAM3 VKのCDR1; RAM3 VKのCDR2; またはRAM3 VKのCDR3から選択されるCDR配列(図6ではCDRには印をつけ、下線で示している)を含んでもよい。
好ましくは、上記抗体は図6に示された配列を有するRAM1 VHのCDR3; RAM2 VHのCDR3; またはRAM3 VHのCDR3から選択されるCDRである、重鎖由来のCDR3を含んでなる。
より好ましくは、上記抗体は図6に示された2以上のCDR、すなわち図6に示された配列を有するRAM1 VHのCDR1; RAM1 VHのCDR2; RAM1 VHのCDR3; RAM1 VKのCDR1; RAM1 VKのCDR2; RAM1 VKのCDR3; RAM2 VHのCDR1; RAM2 VHのCDR2; RAM2 VH のCDR3; RAM2 VKのCDR1; RAM2 VKのCDR2; RAM2 VKのCDR3; RAM3 VHのCDR1; RAM3 VHのCDR2; RAM3 VHのCDR3; RAM3 VKのCDR1; RAM3 VKのCDR2; またはRAM3 VKのCDR3から選択される2以上のCDRを含んでなる。
上記抗体は、図6に示された重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のいずれか1つ、および図6に示された軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のいずれか1つを含んでもよい。例えば該抗体は、重鎖のCDR3および軽鎖のCDR1を含んでもよい。または該抗体は、図6に示された重鎖由来の2以上のCDR、もしくは軽鎖由来の2以上のCDRを含んでもよい。
上記抗体が、図6に示された軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに図6に示された重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3を含んでなることが最も好ましい。
上記抗体が2以上のCDRを含んでなる場合には、その2以上のCDRは同じRAMクローン由来、すなわちRAM1由来の2以上のCDR;RAM2由来の2以上のCDR;またはRAM3由来の2以上のCDRであることが好ましい。
上記抗体が軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3ならびに重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、かつ、例えば6つのCDR全てがRAM1由来であるというように、6つのCDR全てが同じRAMクローンに由来することが最も好ましい。
1つの抗体中ではCDRは1つのRAMクローン、例えばRAM1、RAM2またはRAM3に由来するのが好ましいが、任意の組み合わせもありうる。すなわち、本明細書に開示されているように抗体が2以上のCDRを含み、第1のCDRはRAM1、RAM2およびRAM3のうちいずれか1つ二由来し、そして第2のCDRはRAM1、RAM2およびRAM3のうちのいずれかに由来するものであってよい。CDRが異なるRAMクローンに由来するような組み合わせのものを作製するためには、CDRシャッフリング(Jirholt P, Ohlin M, Borrebaeck CA, Soderlind E. (1998) Exploiting sequence space: shuffling in vivo formed complementarity determining regions into a master framework. Gene 1998 Jul 30; 215(2):417-6)、またはDNAシャッフリング(Crameriら, 1996)を用いることができる。
好ましくは、組換えヒト抗体は、図6に示されたアミノ酸配列を有するRAM1 VH、RAM2 VHまたはRAM3 VHから選択される VHドメイン(重鎖の可変ドメイン)を含んでもよい(VHアミノ酸配列は図6中の各RAMクローンについて上の行に示されている)。
好ましくは、組換えヒト抗体は、図6に示されたRAM1、RAM2またはRAM3のアミノ酸配列を有するRAM1 VK、RAM2 VKまたはRAM3 VK から選択されるVLドメイン(軽鎖の可変ドメイン)を有する(これらVKアミノ酸配列は図6中の各RAMクローンについて下の行に示されている)。例えば、軽鎖と重鎖のシャッフリングによって、いずれかの軽鎖といずれかの重鎖を組み合わせてもよい(Marksら, 1992)。
しかし、組換えヒト抗体は、図6に示すRAM1 VKのVLドメインとRAM1 VHのVHドメイン;またはRAM2 VK のVLドメインとRAM2 VHの VHドメイン;またはRAM3 VK のVLドメインとRAM3 VKのVHドメインを有することが好ましい。
上述の可変重鎖領域は、γ1、γ2、γ3、γ4、my、α1、α2、δまたはεイソ型の定常領域ならびに人工定常領域をはじめとする、任意の好適な定常領域と組み合わせてもよい。好ましくは、組換えヒト抗体は、γ1、γ2、γ3またはγ4イソ型の定常領域を含み、IgG 分子を形成する。
より好ましくは、組換えヒト抗体は、γ1またはγ3イソ型の定常領域を含み、IgG1またはIgG3イソ型を形成する。
それぞれのイソ型に関しては、いずれのサブクラスおよびいずれのアロタイプも使用してよい。治療用の抗体としては、レシピエントにおいてできるだけ免疫原性作用を持たないことが望ましい。従って、治療用抗体のアロタイプはレシピエントが通常発現するものであることが望ましい。ゆえに、一般的なアロタイプが好ましい。好ましいIgG1およびIgG3アロタイプとしては、G1m(a,z)およびG3m(b)が挙げられる。さらに好ましいアロタイプとしては、G1m(f)、G3m(c3c5)、G3m(c3)およびG3m(s)が挙げられる。
別法として、例えば抗寄生虫作用を有する酵素などの、所望のエフェクター機能または抗寄生虫作用を誘発できる他の分子を抗体の抗原結合領域に結合させてもよい。例えば、そのような抗体の使用により、さもなければ有毒である薬剤または物質に、標的選択性を付与することができる。
好ましくは本発明の抗体は、in vitroにおいてマラリア原虫の抗体依存性細胞阻害(ADCI)を媒介することができるが、その抗体依存性細胞阻害は、本明細書に記載の方法または当技術分野で公知の方法(例えば、Bouharoun-Tayounら, 1995)によりマラリア原虫を死滅させるものである。
上記抗体は、例えば本明細書に記載のP.F.-HuRBC-BXNモデルまたはBadellら(1995; 2000)が記載しているマウスモデルのような、寄生されたヒト赤血球細胞を移植した好適な免疫無防備状態の動物モデルにおいて、マラリア原虫の寄生虫血症の抗原特異的な低減をもたらすことができることが好ましい。一部の実施形態においては、迅速な減少が達成される。
本発明の抗体は、このような動物モデルからマラリア原虫の寄生虫血症を排除できることが好ましい。
一部の実施形態において、本発明の抗体はin vivoまたはin vitroにおいて、例えば全IgGのような免疫ヒトドナーから精製したポリクローナル抗体、または全長もしくはC末端組換えMSP-3タンパク質もしくは本明細書に記載のMSP-3bペプチドのようなMSP-3抗原に対してアフィニティー精製された抗体により得られる作用に匹敵する作用を発揮する。一部の実施形態においては、その作用はin vivoにおいてもin vitroにおいても発揮される。一部の実施形態においては、組換え抗体はドナーから得た抗体と同程度のマラリア原虫の死滅をもたらす。このように、本発明の一部の実施形態はin vivoおよびin vitro双方の条件下においてマラリア原虫に対して著しい生物学的作用を示す。
本発明の組換えヒト抗体は、好適な核酸分子から発現させることにより製造することができる。
抗体配列の他、該抗体は、例えば抗原に結合する能力に加えて、別の機能的特性をその分子に付与する目的で、他のアミノ酸を含んでいてもよい。例えば、特異的結合メンバーは標識または酵素など(以下に、より詳細に記載)を含んでもよい。
完全抗体の他、該抗体のフラグメントも(MSP-3のような)適当な抗原に結合する能力を有し、従ってこれらもまた本発明に包含される。例えば、完全抗体のフラグメントも抗原結合機能を果たし得ることが示されている。結合フラグメントの例としては、(i) VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFabフラグメント; (ii) 単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント; (iii) 単離されたCDR領域; (iv) F(ab')2 フラグメント、すなわち2つの連結されたFabフラグメントを含んでなる二価フラグメント; (v) 抗原結合部位を形成するように2つのドメインを結合させるペプチドリンカーにより、VHドメインとVLドメインが連結された一本鎖Fv分子(scFv)(Birdら, Science, 242, 423-426, 1988; Hustonら, PNAS USA, 85, 5879-5883, 1988); (vi)二重特異性一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965号)、および(vii)遺伝子融合により構築された多価または多重特異性フラグメントである「ダイアボディー(diabody)」(WO94/13804; P. Holligerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 6444-6448, 1993)が挙げられる。Fv、scFvまたはダイアボディー分子はVHおよびVLドメインを連結しているジスルフィド架橋を組み込むことにより安定化させてもよい(Y. Reiterら, Nature Biotech, 14, 1239-1245, 1996)。CH3ドメインに結合させたscFvを含んでなるミニボディーも作製できる(S. Huら, Cancer Res., 56, 3055-3061, 1996)。
よって、さらなる態様において本発明は、第一の態様の組換えヒト抗体をコードする核酸配列を含んでなる単離された核酸分子を提供する。
このような核酸分子は組換え体の形態であってよく、複製可能なベクターであることが好ましい。
このような「ベクター」は、二本鎖または一本鎖直鎖状または環状の形態の任意のプラスミド、コスミド、またはファージであってもよく、自己伝播性または自己移動性のものであってもなくてもよく、細胞ゲノム中に組み込むか、染色体外に存在させるかのいずれかにより、原核または真核性宿主を形質転換することができるもの(例えば、複製起点を有する自律複製型プラスミド)でありうる。例えば、古細菌などの細菌、植物体、植物細胞、真菌類または動物細胞をはじめとする任意の好適な宿主を用いてもよい。
一般には、当業者ならばベクターを構築し、組換え遺伝子発現のためのプロトコールを設計することは十分可能である。さらに詳しくは、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual:第2版, Sambrookら, l989, Cold Spring Harbor Laboratory Press (またはこの最新版)およびProtocols in Molecular Biology, 第2版, Ausubelら編, John Wiley & Sons, 1992を参照のこと。なお、これらは参照により本明細書に組み入れる。
好ましいベクターとしては、Norderhaugら, 1997に記載されている(そして後に詳細に述べる)プラスミドpLNOH2またはpLNOKが挙げられる。抗体の発現のために好適なその他のベクターは、Sannaら, 1999; Persicら, 1997; Wallsら, 1993に記載されている。
プラスミドpLNOH2およびpLNOKは、例えば哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞または植物細胞、特にBHK細胞、CHO細胞またはCOS細胞のような哺乳類細胞などの任意の好適な細胞型により、当技術分野で標準的な方法を用いて発現させることができる。CHOまたはBHK細胞が最も好ましい。
上記抗体は、それを発現する細胞により培地中に分泌されるのが好ましい。
本発明のさらなる態様は、宿主細胞において本明細書に記載の核酸分子から本明細書に記載の抗体を発現させる方法;本明細書に記載の抗体を発現させるのに適切な培養条件下で該抗体を発現させることができる宿主細胞;かかる宿主細胞を適当な条件下で培養することを含んでなる抗体の製造方法であって、さらに細胞培養物から該抗体を単離することを含んでもよく、そして単離した抗体を好適なさらなる成分(例えば、別の抗体または賦形剤もしくは担体でありうる)と混合することをさらに含んでもよい該方法に関する。
哺乳類細胞は、リポフェクションなどの任意の好適な技術によってトランスフェクトしてもよい。1つの好適な方法が実施例に記載されている。別法として、標準的なリン酸カルシウムトランスフェクションまたはエレクトロポレーションを用いてもよく、これらは当業者に十分理解されている。
本発明のこれらの発現系および核酸分子から製造される組換え抗体は、実質的に純粋または均質な形態で提供されるのが好ましい。組換え抗体は、硫酸アンモニウム沈殿法などの任意の好適な方法により精製してもよく、次いでDEAEセファロースカラムおよびABxカラム(Baker Bond)を用いて精製するのが好ましい。次いで所望により、例えばSuperdex200を用いるゲルろ過工程を行ってもよい。
本発明のさらなる態様において、以下の工程(i)〜(v):
(i) 標的分子(抗原など)を、好適なリンカーを用いてビーズに付着させる工程、
(ii) 標的分子を付着させたビーズを第1の量で、該標的分子と結合しうる、抗体配列などの配列を発現するファージディスプレーライブラリー由来の第1のファージ集団と混合する工程、
(iii) その第1のファージ集団から、標的分子と結合するファージが富化された第2のファージ集団を選択する工程、
(iv) この第2のファージ集団を、第1の量より少ない第2の量の上記ビーズと混合する工程、
(v) 第2のファージ集団から、標的分子と結合するファージが富化された第3のファージ集団を選択する工程、
を含んでなるファージディスプレーライブラリーをスクリーニングする方法が提供される。
工程(iv)および(v)を繰り返して第4および第5の集団を作製してもよい。
この方法を用いることにより、標的分子の量および結合している基質の面積(ビーズ表面積の合計)はともに減少する。
上記標的分子が抗原であり、ファージディスプレーライブラリーが抗原配列を含むことが好ましい。
標的分子をビーズに付着させるための好適なリンカーは、アビジン−ビオチンリンカーである。
ビーズの第1の量と第2の量の間での好適な減少は、10分の1への減少である。例えば、第1の量のビーズが7×105個である場合、第2の量のビーズはおよそ70000個でありうる。その後工程(iv)および(v)を繰り返す場合は、第3の量のビーズはおよそ7000個でありうる。
また、ビーズの量におけるこれ以外の減少も可能であり、当業者が変更することができる。この減少は本法を通じて同じである必要はない。例えば、第1の量と第2の量の間では10分の1に減少させ、第2の量と第3の量の間では5分の1に減少させてもよい。別の例では、第1の量と第2の量の間では2分の1に減少させ、第2の量と第3の量の間では5分の1に減少させてもよい。
ファージディスプレーライブラリーをスクリーニングする方法(ファージディスプレーライブラリーが抗体配列を含む場合)の後に、完全抗体を製造するさらなる工程を行ってもよい。完全抗体の製造は、ファージディスプレーライブラリーから単離された抗体配列を好適なベクター(本明細書に記載のpLNOH2およびpLNOKなど)に挿入し、適当な細胞型においてそのベクターから抗体を発現させることを含みうる。
このような方法により製造された、または製造され得る抗体は、本発明のさらなる態様である。
抗体の使用
本明細書に開示された抗体は、マラリア病の治療または予防のために使用することができる。
「マラリア病」とは、臨床上の、例えば臨床症候性感染、臨床無症候性感染および大脳マラリアを含む。
よって、さらなる態様において本発明は、マラリア病の治療または予防における使用のための本明細書で開示された組換えヒト抗体を提供する。
本発明はさらに、マラリアの治療または予防のための医薬(例えば、ワクチン)の製造における、本明細書で開示された組換えヒト抗体の使用を包含する。この医薬はさらに、好適な賦形剤または担体を含んでもよい。
好適な賦形剤、担体、バッファー、安定剤は当業者に周知である。担体または他の物質の厳密な特性は投与経路によって決まり、その投与経路は経口であってもよく、例えば皮内、皮下もしくは静脈内への注射によるものであってもよい。
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤または液剤の形態であってよい。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントのような固形担体を含んでもよい。液体医薬組成物は一般に、水、石油、動物性または植物性油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩水、デキストロースもしくは他の糖類溶液、または、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールのようなグリコール類を含んでもよい。
静脈内、皮内もしくは皮下注射、または罹患部位への注射のために、有効成分は、パイロジェンフリーであり、かつ好適なpH、等張性および安定性を示す非経口的に許容される水溶液の形態のものである。当業者ならば、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液または乳酸加リンゲル注射液のような等張ビヒクルを用いて、好適な溶液を調製することは十分可能である。保存剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤および/または他の添加剤も必要に応じて含んでもよい。
マラリアの治療または予防方法は本発明のさらなる態様をなし、このような方法は本明細書に記載の組換えヒト抗体を個体に投与することを含み得る。
上記の方法および使用において、組換え抗体は以下に示すいずれの方法で個体に投与してもよい;静脈内注射;筋肉内注射;皮下注射;例えば胃を通過する間、抗体を保護するためのカプセルを用いる経口投与;歯磨き粉に含めた投与(抗体は口腔粘膜における研磨作用により血液循環中へ移行する);経皮浸透のための密封性プラスターまたは皮膚軟膏剤の使用による投与;スプレーを用いる送達による鼻粘膜を介する投与;および直腸内投与。
治療のための好適な用量は、抗体の親和性に応じて、抗体10μg〜10mg/kg体重以下、好ましくは1mg〜10mg、より好ましくは0.1mg〜3.5mg、より好ましくは1.5 mg〜3.5mg、最も好ましくは2mg/kg体重であってよい。
予防のための好適な用量は、排除されるべき寄生虫の負荷量がより少ないため用量もより少なくてよく、例えば0.1μg〜3mg、好ましくは0.1mg〜2mg、より好ましくは0.5mg〜1.5mg、より好ましくは0.75mg〜1mg、最も好ましくは抗体1mg/kg体重であってよい。
好適な投与計画は、IgG1クラスの抗体のin vivoにおける半減期がおよそ23日、そしてIgG3クラスの抗体のin vivoにおける半減期がおよそ6日であることに基づけばよい。
あるいは、またはそれに加えて、上記抗体をコードする核酸分子をマラリア病の治療または予防に用いてもよい。この方法ではDNAを個体に注射し、その個体において内生的に抗体が生成される。
よって、本発明のさらなる態様は、マラリア病の治療または予防における使用のための本明細書に記載の核酸分子;マラリアの治療または予防のための医薬(例えば、ワクチン)の製造における、本明細書に記載の核酸分子の使用;および本明細書に記載の核酸分子を個体に投与することを含んでなる、マラリアの治療または予防方法に、関する。
核酸分子を個体に投与するための好ましいベクターとしては、リポソームなどの、DNAを細胞へ導入する他の粒子の他、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス、およびレトロウイルスベクターが挙げられる。
本発明のさらなる態様は、本明細書で提供する抗体の標的抗原への結合を引き起こす、または可能とすることを含んでなる方法を提供する。
このような結合は、例えば抗体または抗体をコードする核酸を投与した後にin vivoで生じるものでもよく、あるいは例えばELISA、ウエスタンブロット法、免疫細胞化学法、免疫沈降法またはアフィニティークロマトグラフィーにおいてin vitroで生じるものでもよい。
in vivoにおいて、本明細書で開示された抗体が内因性免疫応答を促進するアジュバントとして機能しうる場合、これはワクチンとして有用であり得る。あるいは、本明細書で開示された抗体は、例えば腸管からのMSP-3抗原の取り込みを促進する輸送分子として働き得る(この後者の機能のためにはIgAが好ましい)。マラリア原虫に自然感染した際に本明細書で開示された抗体をin vivo投与した場合、防御的内因性免疫応答が促進され、すなわち感染と組み合わせた受動免疫が能動免疫を促進する(Zhangら, 2002; Mancaら, 1988)。
標的抗原への特異的結合メンバーの結合の量または程度を測定してもよい。定量を、診断対象である試験サンプル中の抗原の量と関連付けることができる。
サンプルに対する特異的結合メンバーの反応性を任意の適切な方法で測定してもよい。ラジオイムノアッセイ(RIA)も1つの可能性である。放射性標識抗原を非標識抗原(試験サンプル)と混合して、特異的結合メンバーと結合させる。結合した抗原を非結合抗原から物理的に分離して、特異的結合メンバーと結合した放射性抗原の量を測定する。試験サンプル中に存在する抗原が多いほど、特異的結合メンバーと結合する放射性抗原は少なくなる。また、結合アッセイは、レポーター分子に連結された抗原または類似体を用いる非放射性抗原とともに用いてもよい。このレポーター分子は、スペクトル的に分離された吸収または発光特性を有する蛍光色素、蛍光体、レーザー色素であってもよい。好適な蛍光色素として、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリンおよびテキサスレッドが挙げられる。好適な発色色素としてはジアミノベンジジンが挙げられる。
また、本発明は、競合アッセイにおいて抗原レベルを測定するための、すなわち競合アッセイにおいて本発明により提供される特異的結合メンバーを用いてサンプル中の抗原レベルを測定する方法のための、上記の特異的結合メンバーの使用を提供する。この方法では結合抗原を非結合抗原から物理的に分離する必要がない。結合時に物理的または光学的変化が起こるように、特異的結合メンバーにレポーター分子を連結させることも1つの可能性である。レポーター分子は検出可能な、そして好ましくは測定可能なシグナルを、直接的または間接的に生じ得る。レポーター分子の連結は直接的でも間接的でもよく、例えばペプチド結合を介する共有結合であっても非共有結合であってもよい。ペプチド結合を介する連結は、抗体とレポーター分子をコードする遺伝子融合体の組換え発現の結果としてのものであってもよい。
このことから、本発明のさらなる態様は、マラリアの診断方法である。このような方法は、個体から体液サンプルを採取し、そのサンプルを本明細書に記載の抗体と接触させ、該抗体のサンプルへの結合を測定し、それによりサンプル中の標的抗原の有無を判定することを含みうる。すなわち、本明細書に記載の抗MSP-3抗体の結合が、サンプル中のMSP-3抗原の存在を示す。
さらに、本発明の抗体は、抗寄生虫活性、例えば抗マラリア原虫活性を有する分子の同定または製造を支援する方法において使用されうる。このような方法では、抗体は、MSP-3抗原または交差反応性抗原に対する新規抗体の選択を導くために使用することができるし(Ohlinら, 1996; Jirholtら, 1998)、あるいは該抗体は抗寄生虫作用を担う防御メカニズムにおける単一成分の同定、およびこれらの作用を促進または妨害する他の物質の同定のために使用することもできる。
ここで、以下の図面および実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
図面および表1の簡単な説明
図1は、種々の末端切断型MSP-3のELISA反応性を示す。3つの異なるクローンから製造したFab-ΔpIIIフラグメントをELISAで分析した。別の分析では、組換え生産された末端切断型のMSP-322-257 (黒い棒グラフ)、MSP-3194-257 (灰色の棒グラフ)をコーティング抗原として用いた。種々のFabフラグメントを確実に同程度の量で使用できるようにFabフラグメント(抗Fab)検出のためのELISAも含めた(白い棒グラフ)。バックグラウンドは、HibCPに対する対照Fabとの反応性およびバッファーとの反応性として測定した。反応性はOD405-OD490として示した。棒グラフは中央値を示し、エラー・バーは、3回反復実験の標準偏差の2倍を示す。
図2は、抗原競合試験の結果を示す。ELISAにおいて、3つの異なるクローン由来のFab-ΔpIIIを可溶性パンニング抗原と競合させた。3つのクローンは全て可溶性MSP-3194-257による競合を受けた。この3つの異なるクローンそれぞれから製造した一定量のFab-ΔpIIIを種々の量の競合抗原MSP-3194-257と混合し、同じ抗原でコーティングしたELISA用ウェルに添加した。ELISAにおける反応性%は、抗原を添加しなかった場合の反応性を100%として計算した。
図3は、MSP-3抗原全体(一番上、MSP-31-380)および末端切断型抗原(MSP-322-257、MSP-3194-257、MSP-3190-217およびMSP-3211-237を使用)の関係を示した概略図である。上記のナンバリングはMcCollら, 1994により配列決定されたマラリア原虫クローンD10(Genbankアクセッション番号L07944)に従って指定されたものである。このナンバリングはもう1つのクローンMSP-3194-257(Oeuvrayら, 1994, アクセッション番号AF024624)とアラインする場合には異なるので、アミノ酸配列を図中に示した。インタクトな抗原は、3つの7個からなるリピート領域(HELIX 1、HELIX 2、HELIX 3)に均等に分布した12の7個からなるリピートを含んでなる。この領域の配列の分析により、それらは両親媒性のαへリックス二次構造を有することが示唆され、3つの領域全てが存在すれば、コイルドコイル三重鎖へリックスバンドルの構造を有することができる(McCollら, 1994; Mulhernら, 1995)。このへリックス領域およびシグナルペプチド(SIGNAL)は図の一番上の囲みで示されている。Huberら(1997)が記載している二形性領域は灰色の陰影で示されている。MSP-3190-217ペプチドは、K1クローンのHELIX 3配列を表す(McCollら, 1997, アクセッション番号U08851)。アミノ酸残基220〜230のILGWEFGGGVPにより表されるモチーフは楕円で示されている。このモチーフはMSP-3だけでなく別のマラリア原虫抗原MSP-6にも存在する(Truccoら, 2001)。
図4は、シゾントと組換え抗体との反応性についてのフローサイトメトリー解析の結果を示す。パネルA1は、エタノール固定および浸透処理した感染赤血球についての前方散乱および側方散乱を示し、パネルA2は同様に処理した非感染赤血球についての同じパラメーターを示す。感染細胞の大部分を含むようにゲーティングした。このゲーティングは以下に記載するヒストグラムにも使用した。パネルB1〜4はHibCP抗原に対する対照抗体(灰色の陰影をつけた曲線)と比較した、種々の組換え抗マラリア抗体のヒストグラムを示している。パネルB1では、対照のヒストグラムはM1と記されているバーより下にある事象の2%を占める。B1はFab-ΔpIII型のRAM1を示す。そのバーは記録された事象の76%を占める。B2はFab-ΔpIII型のRAM2を示す。そのバーは記録された事象の28%を占める。B3はFab-ΔpIII型のRAM3を示す。そのバーは記録された事象の4%を占める。B4はIgG1型のRAM1を示す。そのバーは記録された事象の47%を占める。IgG1型の対照はバーの下の事象の4%を占める。シゾントは非同調マラリア原虫培養体から精製した。固定および透過化処理はエタノールを用いて行った。組換え抗体との一次反応を一晩行い、FITC標識二次抗体を該細胞とともに30分間インキュベートした。
図5は、パンニング方法の概略図を示す。3組のパンニング(A〜C)を並行して4回行い、それらを1〜4と称した。それぞれの回で用いた抗原コーティングビーズ数は、試験を通じて一定の減少率に基づき減らしていった。各段階で使用したビーズ数を図に示す。
図6は、3つのクローンの推定アミノ酸配列を示す。それぞれのクローンRAM1、RAM2およびRAM3のVHおよびVKの全配列を示し、四角で囲んだ。CDR領域のアミノ酸残基を下線で示した。本発明者らはKabatのCDR定義を示すように選択を行った(Kabatら, 1991)。
図7は、IgG1として作製したRAM1、RAM2およびRAM3と反応させた、マラリア原虫クローン3D7のシゾントおよびメロゾイトタンパク質の免疫ブロッティングを示す。3つのレーンは全て、4〜12%の勾配ゲル上で逓減条件下で分離した、精製シゾント由来のタンパク質のブロッティングを示す。RAM1 IgG1をレーン1のブロッティングと反応させ、RAM2 IgG1をレーン2のブロッティングと反応させ、RAM3 IgG1をレーン3のブロッティングと反応させた。RAM1は分子量がそれぞれ51および53kDの2つのタンパク質と反応する。RAM2はおよその相対分子量がそれぞれ約64kDおよび14kDの2つのタンパク質と反応する。RAM3はRAM2により認識されるタンパク質と同じ、およその相対分子量が約64kDのタンパク質と反応する。
図8は、免疫蛍光顕微鏡分析を示す。パネルは、FITCコンジュゲートRAM1 IgG1またはRAM2 IgG1またはRAM3 IgG1とともに、次いでFITCコンジュゲート二次抗ヒトFabとともにインキュベートしたマラリア原虫クローン3D7の固定化培養体の免疫蛍光顕微鏡分析を示す。パネルA(左)中の点は、RAM1、RAM2またはRAM3と反応性のある抗原を有する赤血球を示す。パネルB(右)は、DNAをヨウ化プロピジウムで染色した同じスライドである。パネルB中の大きな点は、後期シゾントに感染した赤血球を表している。パネルAおよびB中の点の位置を比較することにより、パネルB中の大きな点は左のパネルと重複していることが観察される。パネルB中の小さな点はパネルAと重複していない。このことは、メロゾイトを宿している後期シゾントはRAM1、RAM2またはRAM3と反応性のある抗原を提示するが、初期のものは提示しないことを示している。in vitro非同調マラリア原虫培養体をスライド上で風乾させ、アセトンで固定し、FITCコンジュゲートRAM1 IgG1と反応させるか、あるいはRAM2 IgG1またはRAM3 IgG1と反応させた後、FITCコンジュゲート抗ヒトFabと反応させた。グルタルアルデヒド固定では、反応性は検出できなかった。
図9は、RAM1 IgG1、RAM2 IgG1およびRAM3 IgG1と、合成ペプチドMSP-3190-217および MSP-3211-237とのELISA反応性を示す。また、より大きな組換えMSP-3194-257も含めた。エラー・バーは、2回反復実験の標準偏差の2倍を示す。
図10は、PEPSCANスクリーニングの結果を示す。連続したアミノ酸配列を含んでなる14merおよび15merのペプチドを34セット合成することにより、MSP-3194-257の配列全体をカバーした。2つのペプチドを、リンカー(PEPSCAN)の位置で2つのアミノ酸残基を置換する独自仕様のリンカーで連結した。すなわち、ある1セットのペプチドは、15位および16位で2つのアミノ酸残基が独自仕様のリンカー残基により置換された31個のアミノ酸残基のストレッチをカバーしている。連結されたペプチドは、洗浄および繰り返し使用を可能にするためにさらに基質に化学的に結合させた。2つの隣接したペプチドセット間の重複は、2アミノ酸残基であった。このペプチドコレクションを、IgG1として作製したRAM1およびRAM2との反応性について検討した。RAM2は抗原のアミノ末端部分、中央部分およびカルボキシ末端部分と反応するが、中央部分との反応性が最も高い。RAM1はこの方法により作製されたペプチドとは弱い反応しか示さない。RAM3はPEPSCANでFab-ΔpIIIとして試験したが反応しなかった。
図11は、RAM1 IgG1のMSP-3194-257への結合に対する免疫血清の阻害作用を示す。FITCコンジュゲートRAM1 IgG1抗体を添加した。MSP-3194-257でコーティングしたELISAウェルを、免疫血清または陰性対照血清の希釈物を加えて2時間プレインキュベートした後、一定量のFITCコンジュゲートRAM1 IgG1抗体を各ウェルに添加した。免疫血清はRAM1の結合を阻害した。
図12は、発現ベクターの構築を示す。プラスミドのV領域は、5'末端をBsmIで切断し、また3'末端をHpaIまたはBsiWIまたはHindIIIで切断することにより置換することができる。ベクターとV領域を連結する前に、RAM1、RAM2またはRAM3 のV領域をベクターと同じ制限酵素で切断する必要がある。次にVH領域をpLNOH2に連結し、VK領域をpLNOKに連結する。pLNOH2の定常領域は、BamHIおよびHindIIIで切断し、ベクター部分を単離し、同じ酵素で切断した別の定常領域を(ライゲーションにより)導入することによって置換することができる。完全抗体を作製するためには、プラスミド(pLNOH2およびpLNOKの両方)をCHO細胞へ同時トランスフェクトする。V領域およびC領域は、mRNAスプライシングにより組み立てる。あるいは、これらの遺伝子を1つのベクターへと組み立てることもでき、それによりベクターはVH+CHおよびVL+CLを保持することになる。これにより、2つの遺伝子が等モル数で存在することが保証される。
略語:CMV=CMVプロモーター、L=リーダー、VH=可変重鎖、VK=可変κ鎖、CH=定常重鎖遺伝子、CK=定常κ鎖遺伝子、BGHpA=ウシ成長ホルモンポリアデニル化部位、f1=f1複製起点、SV40ori=SV40複製起点/プロモーター、Neo=ネオマイシン耐性遺伝子、Amp=アンピシリン耐性遺伝子
図13。抗体の競合。RAM3クローン由来のFabフラグメントを2つの形態で作製した。1つの形態は、末端切断型ファージタンパク質であるΔpIIIでタグ付けされた、Fab-ΔpIIIと呼ばれる融合タンパク質であり、もう1つの形態はΔpIIIタグをもたない通常のFabフラグメントである。ΔpIIIタグは、ファージpIIIタンパク質に対する抗体を用いて容易に検出される。従って、ΔpIIIをもたないFabは競合物として存在できるが、Fab-ΔpIIIのみが検出される。MSP-3194-257コーティング上でのELISAにおいてOD405がおよそ1となるRAM1、RAM2およびRAM3 Fab-ΔpIIIの量を用いた。次に、逓増量の競合物、すなわちΔpIIIをもたないRAM3を加えることによりFab-ΔpIIIの結合に競合させる。この図はFab RAM3が、Fab-ΔpIII RAM2と競合するのと同程度に、Fab-ΔpIII RAM1と競合し得ることを示す。このことは、RAM1およびRAM2クローンの結合はRAM3クローンが利用するエピトープに依存することを実証している。Fab-ΔpIII RAM3の結合に対するRAM3の競合作用がより低いことは、RAM1およびRAM2と比較してRAM3の親和性がより高いことによって説明できる。この作用は、RAM1およびRAM2に対するRAM3の競合作用がRAM3自体に対するものよりも大きいということである。
図14は、pLNOH2およびpLNOKのそれぞれにおける重鎖および軽鎖遺伝子の構成、および得られる抗体の構造を示す。抗体の、抗原への結合を担う部分は可変領域すなわちV領域である。この領域は2つの別個のポリペプチドからなる。一方のポリペプチドは軽鎖由来のものであり、もう一方は重鎖由来のものである。この完全抗体では、軽鎖由来の可変領域のポリペプチドは軽鎖の定常ドメインへと続いており、こうして全部で2つのドメインを有する約200アミノ酸残基長のポリペプチドがもたらされる。この完全抗体では、重鎖由来の可変領域は定常ドメイン1〜3へと続いており、全部で4つのドメインを有する400アミノ酸残基長のポリペプチドがもたらされる。この完全抗体では、2本の重鎖が2本の軽鎖と組み合わさっている。従って、完全抗体は2つのV領域を含み、同時に2つの抗原と結合することができる。重鎖の定常領域は、免疫系のエフェクター機能と相互作用する。
図15は、P.f.-HuRBC-BXNマウスモデルにおける、正常ヒト単球、寄生虫血症の免疫ヒトドナー由来のポリクローナル抗RESA抗体およびポリクローナル抗MSP3抗体の接種の効果を示す。
図16は、P.f.-HuRBC-BXNマウスにおける、クロロキンおよび寄生虫血症の免疫ヒトドナー由来のポリクローナル抗MSP3抗体の効果を比較したものである。
図17は、P.f.-HuRBC-BXNマウスモデルにおける、正常ヒト単球、寄生虫血症の免疫ヒトドナー由来のポリクローナル抗RESA抗体およびポリクローナル抗MSP3抗体の接種の効果を示す。
図18は、P.f.-HuRBC-BXNマウスにおける寄生虫血症に対する、免疫ドナー由来の総IgGおよびMSP3bペプチドに対してアフィニティー精製された抗体の効果を比較したものである。それぞれの曲線は6匹のマウスから得た結果の平均値を表す。
図19は、1匹のP.f.-HuRBC-BXNマウスにおける寄生虫血症に対する、ヒト単球単独の接種、そのIgG1対照抗体との併用、およびそのRAM1 IgG1との併用の効果を示す。
表Iは、4回目のパンニング後の3組の実験系から得られた単一クローンのスクリーニングの結果を示す。
発明の詳細な説明
実施例1 ライブラリーの構築
末梢血リンパ球のサンプリング
西アフリカのセネガルのマラリア流行地に居住している13人の成人のそれぞれからインフォームドコンセントの後、100ml量の末梢血を得た。血液は、ヘパリンよりも良好にRNAを保存する抗凝固剤ACD(クエン酸デキストロースアデニン)中に採取した。これらのサンプルを実験室に送り、簡易遠心分離を行い、軟膜を吸引し、細胞を塩酸グアニジニウム、β-メルカプトエタノールおよびサルコシンを含有するRNアーゼ保護バッファーに懸濁させた。次に、この材料を液体窒素中で凍結させ、さらなる処理のために発送した。
RNAの精製
RNAは、Chirgwinら(Chirgwinら, 1979)の方法に従って酸フェノール抽出によりサンプルから単離した。Orumら(1993)により記載されたようにして、メッセンジャーRNAをcDNAへ変換した。
抗体コード遺伝子のPCR
抗体遺伝子の増幅はこれまでに記載されているようにして行った(Dziegielら, 1995)。簡単に説明すると、VH遺伝子、λ軽鎖遺伝子について、およびκ軽鎖遺伝子について別個の反応を行った。12の個々のプライマーのプールをVH遺伝子の5'領域におけるプライミングに用い(逆方向プライマー)、3'プライマーのプールをJH領域のプライミングに用いた(順方向プライマー)。これらのプライマーの詳細はDziegiel (1995)に示されている。
約350bpの増幅産物を、低融点アガロースから、該アガロースをアガラーゼ(Boehringer-Mannheim, Germany)で消化することにより精製した。この断片を、一次産物の末端に相補的で、かつ、さらに制限酵素NheI (5')およびApaI (3')に対応する配列を含むプライマーを用いた二次伸長PCRの鋳型として用いた。こうして伸長したVH断片は5' NheI部位および3' ApaI部位を有する。8つのプライマーのプールをκ軽鎖遺伝子の5'領域におけるプライミングに用い、1つのプライマーを3'領域におけるプライミングに用いた。λ軽鎖遺伝子の増幅のため、12の逆方向プライマーのプールと1つの順方向プライマーとを用いた。得られた約700bpの断片を上記のように精製し、制限酵素部位SfiI (5')およびAscI (3')を導入する二次伸長PCRの鋳型として用いた。こうして伸長したκ鎖遺伝子は5' SfiI部位および3' AscI部位を有する。
ポリメラーゼ連鎖反応
抗体遺伝子をcDNAから、VH領域遺伝子、λ鎖遺伝子、およびκ鎖遺伝子のそれぞれについて別個の反応によるPCRによって増幅した。PCRは、0.2mM dNTPsおよび製造業者(HT Biotechnology, UK)により供給されている反応バッファー、総量20μMのプライマー等モル混合物(すなわち、0.65μMの各VHプライマー、0.74μMの各Vκプライマー、0.83μMの各Vλプライマー、20μMのκ鎖定常ドメインプライマー、5μMの各λ鎖定常ドメインプライマー、および5μMの各J領域プライマー)、cDNA、および酵素を含む100μl量で行った。最初に94℃で1分行った後、酵素を添加し、次に、サイクル(94℃で1分、55℃で1分、72℃で1分)を30回繰り返した。反応は、HYBAID Omnigeneサーモサイクラーを用いたこと以外は記載(Orumら, 1993)のようにして行った。
プラスミドpFAB73HHui
pFAB73HHuiベクターはpFAB73H(Dziegielら, 1995; Engbergら, 1996)から作製した。このベクターはlacIリプレッサーの高効率突然変異体をコードする完全なlacIq遺伝子を担持している。これにより細菌のバックグラウンドとは無関係に高レベルの遺伝子抑制が確保できる。NheI-ApaI部位間の配列およびSfiI-AscI部位間の配列はヒトインスリンに対するマウス抗体に由来する配列で置き換えられていた。これにより、二次消化の効率が改善され、次に行う低融点アガロース電気泳動の際の二重消化されたプラスミドの単離が容易となる。このプラスミドのその他の特徴はpFAB4Hと同じである。簡単に説明すると、pFAB73HHUIは、定常ドメイン1(CH1)に相当するヒトγ1 H鎖のアミノ酸残基118〜230をコードするDNA断片を含む。スペーサーおよびトリプシン切断部位をコードするDNA断片を介して、CH1遺伝子が末端切断型の遺伝子III(ΔgIII)へとイン・フレームで続いている。ΔgIIIは繊維状ファージf1の末端切断型表面タンパク質pIII(ΔpIII)をコードする(Bassら, 1990; Orumら, 1993)。lacZプロモーターおよびPelBリーダー遺伝子の5'部分を、L鎖遺伝子のクローニング部位の前に配置した。リボゾーム結合部位(RBS)およびPelBリーダーをコードする遺伝子の5'部分を含むDNA断片はH鎖可変領域(VH)遺伝子のクローニング部位の5'側に配置した。
pFAB73HHUIにより、二段階クローニング法(まず、VH遺伝子を制限酵素部位NheIおよびApaIを挿入し、次に、L鎖遺伝子をSfiIおよびAscI部位に挿入する)によってVH遺伝子およびL鎖遺伝子を挿入することが可能となる。このベクター中には必要な全ての遺伝エレメントとCH1が存在し、従って、PCRサイクルの総数を最小にできる。
抗体遺伝子のクローニング
二次伸長PCR由来の増幅産物を低融点アガロース上で分離した後、アガラーゼで消化することにより分離した。伸長したVH断片を、逐次の二反応で制限酵素NheIおよびApaIにより消化した。NheI-ApaIで消化したVH遺伝子断片を低融点アガロースゲル上で精製した後、アガラーゼで消化した。このクローニングベクターpFAB73HHUIを逐次の二反応で制限酵素NheIおよびApaIで消化した。NheI-ApaI消化5.4kbプラスミドを低融点アガロースゲル上で精製した後、アガラーゼで消化した。このVH遺伝子をプラスミド中にライゲーションし、ライゲーション混合物をフェノールおよびクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿し、大腸菌(E. coli)パルサーセット(BioRad)を用いて大腸菌Top10Tet中へエレクトロポレーションした。細菌をSOC培地(Sambrookら, 1989)に再懸濁し、振盪しながら37℃で1時間インキュベートした後、50mg/lカルベニシリン、12.5mg/lテトラサイクリンおよび2%グルコースを含むLB寒天(Sambrookら, 1989)上にプレーティングした。プレートを37℃で一晩インキュベートした。プレートからコロニーを、カルベニシリン、テトラサイクリンおよびグルコースを含むLB培地で洗い出し、これを用いて液体培養を開始し、OD600=1の時点でそれを用いて、Qiagenカラム(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を製造業者が推奨する手順に従って使用して、この組換えベクターを調製した。H鎖遺伝子を含む精製ベクターを、κおよびλ軽鎖遺伝子のクローニングのためのクローニングベクターとして用いた。
伸長したκ鎖産物を制限酵素AscIおよびSfiIにより別個の二反応にて消化した。次に、このκ鎖遺伝子を、VH領域遺伝子を保持するSfiIおよびAscIで消化したpFAB73HHUI中にクローニングした。
ライブラリー
得られたライブラリーは5x107の各種H鎖、1x108のκ軽鎖および1x108のλ軽鎖を含んだ。66クローンに由来するVH遺伝子をPCRおよびBstNI消化により検討したところ、同一の消化パターンはに認められないことが示され、従って許容される多様性が示唆された。
この系において重鎖(H)フラグメントFdは末端切断型の繊維状f1ファージタンパク質III(ΔpIII)(Bass ETら, 1990)との融合タンパク質として産生される。H鎖融合タンパク質は細胞周辺腔において完全な軽(L)鎖と結合してFabヘテロ二量体を形成し、これがΔpIIIタンパク質と融合する。ヘルパーファージが感染すると、これらの融合タンパク質はヘルパーファージ由来の野生型pIIIの数コピーとともにファージの一方の末端に配置される(Clacksonら, 1991; Hoogenboomら, 1991)。こうして、Fabはその特異的抗原と結合することができると同時に、Fabをコードする遺伝子を保持するファージミドDNAとの物理的結合を維持しており、すなわち、認識と複製の間の物理的連携が確立されている。これにより、多数の異なるFab-ファージから、所定の抗体特異性およびその対応する遺伝子を選択できる(Marksら, 1991)。
実施例2− 選択
一次ファージストックの作製
50mg/lカルベニシリン、12.5mg/lテトラサイクリンおよび2%グルコースを含むLB培地中のライブラリー培養物50mlに、OD600=0.8のVCSM13ヘルパーファージ(Stratagene)を用いて重複感染させた。感染多重度を100として用いて、その混合物を37℃で穏やかに振盪(500rpm)しながら1時間インキュベートした。次に、この培養物を、グルコースを含まない上記培地950ml中に希釈し、30℃で一晩インキュベートした。10,000 x gで15分スピンした後、ファージを含む上清について、PEG6000および塩化ナトリウムをそれぞれ終濃度4%および0.5Mで用いて沈殿させた。この上清を氷上で1時間インキュベートし、12,000 x gで30分遠心分離した。沈殿させたファージを、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁させ、すぐに使用した。コロニー形成単位の総数は1.3 x 1013であった(Sambrookら, 1989と同様に測定)。
1回目のパンニングにおける特異的結合体の選択
ビオチン化MSP-3194-257を、ダイナビーズ(Dynabeads)M-280ストレプトアビジン(カタログ番号112.05)に、製造業者が記載しているようにして結合させた。この抗原コーティングビーズを、上下反転型(end-over-end)ミキサー中で、ファージとともに1時間インキュベートした後、磁性粒子濃縮装置(MPC-6, Dynalカタログ番号120.02)を用いて5分間かけてビーズを捕捉し、次に、0.05% Tween20を含む10ml PBSで2分間にわたる洗浄を6回行った。最後の洗浄の後、ビーズを1mgトリプシン(Worthington, USA)を含む1ml PBSに再懸濁させ、37℃で1時間インキュベートして、ファージを溶出した。次に、OD600=1である指数増殖期のTop10を3ml量加え、混合物を37℃で30分間インキュベートして、溶出したファージを大腸菌に付着させた。最後にこの細菌を、50mg/lカルベニシリン、12.5mg/lテトラサイクリンおよび2%グルコースを含むLB寒天(Sambrookら, 1989)上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。プレートからLB培地でコロニーを洗い出し、グリセロールストックとして-80℃で保存するか、またはファージおよびDNAの作製のために増殖させた。DNAは記載のように作製した。
続いてのパンニングのためのファージの産生
ヘルパーファージVCSM13(Stratagene, USA)を添加することにより、OD600=0.6(約3時間後)のグリセロールストックの培養物15mlを重複感染させて、ファージを産生させた。感染多重度は約100であった。1時間穏やかに振盪した後、培養物を200mlのLB培地に希釈し、さらにイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)(終濃度50μMとなるように)、70mg/lカナマイシン、50mg/lカルベニシリンおよび12.5mg/lテトラサイクリンを添加した。この培養物を一晩増殖させた。ファージは、パンニングの前に17,320 x gで各20分のスピンをさらに2回行うことにより清澄化したこと以外は上記と同様にして単離した。
続いてのパンニングにおける特異的結合体の選択
1回目のパンニングに続いて、3組の実験系のパンニングを並行して、計4ラウンド行った。第1の組では、ビーズの数はその後のパンニング毎に5分の1に減らした。第2および第3の組では、ビーズの数は、あるパンニングからその次のパンニングに移る毎にそれぞれ10分の1および20分の1に減らした。4回目のパンニングの後、3組の実験系全てからの単一コロニーを、Fab-ΔpIIIの産生のために無菌マイクロタイタープレート中で増殖させた。
最終溶出物の試験
4回目のパンニングからの溶出物を、Fab-ΔpIII産生体および抗原結合体のそれぞれが存在するかどうかについてスクリーニングした。Fab-ΔpIIIは、マイクロタイターウェル中で個々のコロニーを増殖させることにより産生させた。全部で376のクローンを調べた。23のクローンに由来する上清に遊離のFab-ΔpIIIが含まれ、これらのうち17がMSP-3194-257と結合することができた(表I参照)。これら17のクローンの抗体遺伝子を、Big Dyeを用いて製造業者(Applied Biosystems, USA)の手順に従い配列決定した。
この選択手法により、RAM1、RAM2およびRAM3と呼ばれる3つの異なるクローンが単離された。
実施例3− 特異性の判定
これらクローンの、天然マラリア抗原との反応性を証明した。
直接的ELISA
ELISAプレート(Maxisorb, NUNC 4-39454, Denmark)を、10〜650ng/ウェルの精製組換えMSP-322-257もしくはMSP-3194-257、またはそのペプチドMSP-3190-217もしくはMSP-3211-237を含むPBSでコーティングし、非希釈上清またはPBS-BSAで希釈した上清を用い、これまでに記載されているようにして(Dziegielら, 1991; Dziegielら, 1995)標準的ELISAに用いた。洗浄後、アルカリホスファターゼとコンジュゲートさせたヤギ抗ヒトFab(Sigma A8542)または抗ヒトIgG Fc(Sigma A9544)抗体を検出用抗体として添加した。最後に、p-ニトロフェニルリン酸(Sigmaホスファターゼ基質タブレット104-105)を基質として用いた。発色をOD405-OD490で測定した(図1参照)。RAM1およびRAM2の両者はMSP-3抗原の組換え形態である短鎖MSP-3194-257および長鎖MSP-322-257と結合する。これに対し、RAM3は短鎖MSP-3194-257形態とのみ結合する。対照(抗Hib CPおよびPBS 1%BSA)はこの抗原と反応しない。
抗原の競合
固定希釈率のFab-ΔpIII 50μlを含むウェルに、種々の希釈率の競合抗原MSP-3193-256を50μl加えた。MSP-3194-257によるウェルのコーティングおよび結合した抗原の検出は上記のように行った。競合抗原の濃度は4nM〜1250nMの範囲とした。各希釈率の競合抗原を2回重複して試験した(図2参照)。3つのクローン全てが可溶性組換えMSP-3194-257抗原による競合を受けた。このことは、これらの抗体が溶液中の抗原のコンホメーションを指向しており、何らかの変性依存的なコンホメーション、例えばプラスチックとの結合に依存するエピトープを指向するものではないことを示す。
免疫蛍光顕微鏡分析
マラリア原虫クローン3D7のin vitro培養からの寄生赤血球をスライドグラスに接着させ、風乾した後、記載(Druilheら, 1987)のようにして室温にて5分間かけてアセトンで固定した。Fab-ΔpIIIまたは完全IgG1を加え、30分後にスライドグラスをPBS中で洗浄した。結合したFab-ΔpIIIはFITCコンジュゲートヤギ抗ヒトFab(Sigma F5512)の1:25希釈物を用いて検出した。Hib-CP特異的抗体を対応する濃度で対照として用いた。この、DNAを含む感染赤血球を染色するため、ヨウ化プロピジウムを二次抗体溶液に加えた。後期シゾントステージが、そのメロゾイトDNA含量が高いためにヨウ化プロピジウムで強く染色された。RAM1 Fabはまさにこのステージを染色した。これに対し、寄生虫DNAを少量しか含まない赤血球はRAM1 Fabと結合しなかった。少量のDNAしか含まない赤血球は初期ステージ、すなわち、輪状体期および栄養体期に相当する(図8参照)。
免疫ブロッティング
精製した寄生虫を、氷上にて超音波で4 x 15秒処理することにより2% Triton X-100中に可溶化し、氷上で2時間インキュベートした後、サンプルバッファーと混合し、100℃まで10分間加熱し、MOPS緩衝4〜12%グラジェントゲル(NOVEX)にてSDS-PAGEに付した。タンパク質をウェットブロッティングにより電気泳動法でPVDFメンブラン(Immobilon, Millipore)に転写し、膜を乾燥させ、使用直前に0.1% Tween20および0.2% I-Block(Tropixカタログ番号AI300)中でインキュベートすることによりブロッキングした。このブロットをIgG1として作製した抗マラリア抗体RAM1、RAM2またはRAM3とともに3時間インキュベートし、0.1% Tween20および0.2% I-Blockを添加したPBSにより3 x 5分間洗浄した後、アルカリホスファターゼコンジュゲートタンパク質G(Pierceカタログ番号32391)とともに1時間インキュベートした。膜を上記のように3回洗浄した。最後に、このブロットにCSPD化学発光基質(Tropixカタログ番号CD100R)を加え、Alpha Innotech FluorChem 8000 systemで発光を検出した。Hib-CP特異的抗体を対応する濃度で陰性対照として用いた(図7参照)。RAM1は、相対分子量が約51kDおよび53kDの寄生虫タンパク質のそれぞれと反応した。RAM2は、相対分子量が約14kDおよび64kDの寄生虫タンパク質のそれぞれと反応した。RAM3は約64kDの寄生虫タンパク質と反応した。ヒトおよびウサギ由来のポリクローナル抗体を用いても同じ範囲の分子量が認められた(Oeuvrayら, 1994; McCollら, 1994)。これら2つの抗体によって認識されたバンドの分子量の変動についてのバックグラウンドとしては、翻訳後修飾、タンパク質分解プロセシングまたはコンホメーションの異なる分子の部分集団の存在が考えられる。後者の可能性は、MSP-3が分子内または分子間のコイルドコイルコンホメーションを有する推定上の傾向(McColl et al, 1994)から導かれるものであり、これは後にMSP-1およびMSP-6のような他のメロゾイト特異的タンパク質に当てはめるようにTruccoら(2001)により拡張された。このような三次元コンホメーションは電気泳動移動度に影響を及ぼし、従って観察される分子量範囲の原因になりうる。14kDのバンドはタンパク質分解によるものであると考えられる。この範囲のバンドについての別の報告はなされていない。
フローサイトメトリー
精製したシゾントを、氷上で30分間、32%エタノール中でインキュベートすることにより透過化処理および固定した。次に寄生虫を1% BSAを含むPBS中で洗浄し、抗体(Fab-ΔpIIIまたはIgG1)とともに一晩インキュベートし、1% BSAを添加したPBSで2回洗浄し、FITCコンジュゲートヤギ抗ヒトFab(Sigma F5512)の1:25希釈物とともに30分間インキュベートした。細胞をCoulter EPICS-2フローサイトメーターで分析した。Hib-CP特異的抗体を、対応する濃度で対照として用いた。固定した感染赤血球および固定した非感染赤血球をヨウ化プロピジウムで染色し、比較することにより、感染赤血球に対してゲーティングすることが可能になる(図4参照)。
エピトープマッピング
本発明者らのエピトープマッピングは、以前に利用した、MSP-3194-257のMSP-3a、MSP-3bおよびMSP-3c(Oeuvrayら, 1994)と呼ばれる3つのペプチドへの任意の分割と関連する。MSP-3194-257の切断の生物学的妥当性は、MSP-3211-237に相当するMSP-3bに対するポリクローナル抗体がADCIにおいてもマウスモデルにおいても明確な抗寄生虫作用を示すことである(Badellら, 2000)。
2つのペプチドMSP-3190-217とMSP-3211-237をそれぞれ合成し、ELISAに用いた。RAM1は主としてMSP-3211-237と反応する。RAM2はMSP-3190-217およびMSP-3211-237と同程度に反応したが、RAM3はこれら2つのペプチドと弱い反応しか示さなかった(図9参照)。
さらに、連続したアミノ酸配列を含んでなる2つのペプチドを34セット合成することでMSP-3194-257の配列全体をカバーした。これら2つのペプチドを、リンカーの位置で2つのアミノ酸残基を置換する独自仕様のリンカー(PEPSCAN)により連結した。すなわち、ある1セットのペプチドは、独自仕様のリンカー残基によって15位および16位で2つのアミノ酸残基が置換された31個のアミノ酸残基のストレッチをカバーする。連結されたペプチドは、洗浄および繰り返し使用を可能にするために、さらに基質に化学的に結合させた。。2つの隣接するペプチドセット間の重複は2アミノ酸残基であった。このペプチドコレクションを、IgG1として作製したRAM1およびRAM2との反応性について検討した。結果は図10に示されている。RAM2は抗原のアミノ酸末端部分、中央部分およびカルボキシ末端部分と反応するが、中央部分との反応性が最も高い。RAM1はこの方法により作製されたペプチドとは弱い反応しか示さない。RAM3はPEPSCANにおいてFab-ΔpIIIと同様にして試験したが、反応はなかった。
これらの結果からは、RAM1もRAM2も、抗原において隣接する位置にはないアミノ酸残基を含む立体構造をとる非直線状のエピトープと反応するものと解釈される。
RAM1に対するエピトープは明らかに中央部分の残基を含む。抗原のアミノ末端およびカルボキシ末端部分の残基の寄与は明らかではない。ペプチドMSP-3190-217で表される抗原のアミノ酸末端部分は7個からなるリピート配列のみを含む。MSP-3211-237の最初の数残基は7個からなるリピートの一部であり、このことからRAM1に対するエピトープはMSP-3211-237のC末端部分である可能性がある。残基220〜230、すなわちILGWEFGGGVPで表される領域は、MSP-3中にもその他のマラリア原虫抗原MSP-6(Truccoら, 2001)にも存在することから、際立ったものである。
PEPSCANの結果に基づき、本発明者らは、RAM2が本抗原のあらゆる部分に由来する残基と反応するが、その反応には主として中央部分由来のものが寄与すると結論づける。
抗体の競合
末端切断型抗原に対する結合についての研究に抗体競合実験を付け加えた。RAM3クローン由来のFabフラグメントを2つの形態で作製した。1つの形態は末端切断型ファージタンパク質ΔpIIIでタグ付けされた、Fab-ΔpIIIと称する融合タンパク質であり、もう1つの形態はΔpIIIタグをもたない通常のFabフラグメントであった。ΔpIIIタグはファージpIIIタンパク質に対する抗体を用いて容易に検出される。従って、ΔpIIIをもたないFabは競合物として存在できるが、Fab-ΔpIIIのみが検出される。
MSP-3194-257コーティング上でのELISAにおいて、OD405がおよそ1となるRAM1、RAM2およびRAM3 Fab-ΔpIIIの量を用いた。次に、逓増量の競合物、すなわちΔpIIIをもたないRAM3を添加することにより、Fab-ΔpIIIの結合に競合させた。図13は、Fab RAM3が、Fab-ΔpIII RAM2と競合するのと同程度にFab-ΔpIII RAM1と競合しうることを示している。このことは、RAM1クローンおよびRAM2クローンの結合は、RAM3クローンが利用するエピトープに依存することを実証している。Fab-ΔpIII RAM3の結合に対するRAM3の競合作用がより低いことは、RAM1およびRAM2と比較してRAM3の親和性がより高いことによって説明できる。この作用は、RMA1およびRAM2に対するRAM3の競合作用がRAM3自体に対するものよりも大きいということである(図13参照)。
RAM3は完全なパンニング抗原に対してしか反応性を示さず、末端切断形態とは反応しなかった。さらに、RAM3はフローサイトメトリーにおいて寄生虫とは反応しなかった。しかし、上記の抗体競合実験からは、RAM1、RAM2およびRAM3に対するエピトープは、それがエピトープの重複による、または抗原の正確な折りたたみに対するRAM3の結合の影響による直接的立体障害によるものである通り極めて相互依存的である。
本発明者らは次に、マラリア流行地に居住する人から得たマラリア免疫血清が、RAM1クローンのMSP-3194-257への結合を妨害する抗体を含むかどうかについて調べた。RAM1クローンをIgG1として作製し、FITCとコンジュゲートさせた。このFITC-IgG1を、マイクロタイタープレートを用いる蛍光光度計で蛍光測定することにより結合の検出を行ったこと以外はELISAと同じアッセイに使用した。FITC-IgG1の量は最大の競合効果が得られるように調節した。逓増量の競合免疫血清をマイクロタイタープレートの個々のウェルに加えた。非免疫ヨーロッパ人ドナーからの血清を陰性対照として用いた。マラリア免疫血清はRAM1 IgG1の結合を有意に阻害する抗体を含んでいた。技術の詳細については以下を参照。
方法:免疫血清の競合
MSP-3194-257をコーティングしたELISAプレート(Maxisorb, NUNC 475515, Denmark)を免疫血清(マラリア免疫個体からのもの)または対照血清のいずれかの連続希釈液とともにインキュベートした。2時間後、プレートをPBS 0.05% Tween 20で5回洗浄した。FITCコンジュゲートRAM1 IgG1抗体を最大反応性が得られる希釈率で添加した。FITCのコンジュゲーションは製造業者(Molecular Probes, カタログ番号F-6434)が記載しているようにして行った。プレートを1時間インキュベートした後、5回洗浄し、その後、Polarstar蛍光リーダー(BMG, Germany)を用いて相対蛍光を測定した。
本発明者らは、RAM1により認識されるこの抗原上のエピトープが実際にマラリア免疫個体の免疫系によっても認識されるものであると結論づける。このことは、RAM1クローン、そしてまた、3つのクローンは極めて密接に関連するエピトープと結合することから、RAM2クローンおよびRAM3クローンのin vivoにおける臨床上の関連性を実証するものである(図13参照)。
実施例4− 真核性IgG1およびIgG3の産生
方法
プラスミド
2つのプラスミドpLNOH2およびpLNOKを用いて完全抗体の真核生物における発現を行った(Norderhaugら, 1997)。
これらのプラスミドの構造および組み立てられる抗体とのそれらの関係を図12および14に示している。
簡単に説明すると、プラスミドのV領域は、5'末端でBsmIを用いて切断し、3'末端でHpaIまたはBsiWIまたはHindIIIを用いて切断することにより置換される。ベクターとV領域を連結する前に、RAM1、RAM2またはRAM3のV領域をベクターと同じ制限酵素で切断する必要がある。次に、VH領域をpLNOH2に連結し、VK領域をpLNOKに連結する。pLNOH2の定常領域は、BamHIおよびHindIIIで切断し、ベクター部分を単離し、同じ酵素で切断した別の定常領域を(ライゲーションにより)導入することによって置換することができる。
pLNOH2は、任意の定常フラグメント(Fc)遺伝子と組み合わせて重鎖V領域遺伝子を発現させるためのベクターである。抗体の2つのイソ型変異体の組換え発現を可能とするために、2つの形態のベクターを用いたが、その1つはヒトγ1定常フラグメント遺伝子(アロタイプG1m(a,z))を有するもの、もう1つはヒトγ3遺伝子(アロタイプG3m(b))を有するものであった。
pLNOKは、κ定常ドメイン遺伝子と組み合わせてκ軽鎖V領域遺伝子を発現させるためのベクターである。上記2つのベクターに共通の特徴を以下に簡単に記載する。マウス免疫グロブリン遺伝子のリーダー領域を含む遺伝子カセットの5'側にCMVプロモーターが置かれ、制限部位BsmIとBsiWIの間にV領域が挿入され、それに続いてイントロン、および3'末端にポリAシグナルを有するゲノムC領域全体が存在する。イントロンはmRNAの適切なプロセシングのためのスプライス受容シグナルおよびスプライス供与シグナルを含む。稀に存在する制限部位がV領域遺伝子にフランキングしており、それらはPCRにより、クローニングすべき遺伝子断片に導入される。これらのベクターのさらなる特徴は、大腸菌における選択のためのアンピシリン耐性マーカー、f1複製起点、好適な発現のためのネオマイシン耐性選択マーカー、および一時的発現を可能にするSV40複製起点である。
完全抗体を作製するため、プラスミド(pLNOH2とpLNOKの双方)をCHO細胞に同時トランスフェクトした。V領域およびC領域はmRNAスプライシングによって組み立てられる。ある細胞、例えばCHO細胞中に同時トランスフェクトすると、その細胞は完全かつ正確に組み立てられた抗体を産生する。
別法として、これらの遺伝子を1つのベクター中に、そのベクターがVH、CH、VLおよびCLドメインを保持するように構築してもよい。
抗体遺伝子のPCR
各抗体について、2つの別個のPCR増幅、すなわち重鎖に対するものと軽鎖に対するものを行った。鋳型はpFAB73H+RAM1、pFAB73H+RAM2およびpFAB73H+RAM3であった。RAM1重鎖V領域断片の増幅のための、EuHVH-1と呼ばれる一方のプライマーにはRAM1 VHの5'配列(太字で示す)に基づくものであり、さらに制限酵素BsmIの認識配列(下線と斜体で示す)を含めた。
EuHVH-1:
Figure 0004475949
このプライマーをDziegielら, 1995が報告しているプライマーセットと適合させるため、不確定な塩基(下線で強調)が導入された。
もう一方のプライマーEuHJHには、RAM1 VHの3'配列に相補的であり(太字で示す)、さらに制限酵素HindIII、BsiWIおよびHpaIの配列(下線で示す)、ならびにスプライス供与配列5' AGGTGAGT 3'と相補的な配列(大文字で示す)を含めた。
EuHJH:
Figure 0004475949
RAM1軽鎖V領域遺伝子断片を増幅するため、EuHVKユニバーサルおよびEuHJK-14aと呼ばれる2つのプライマーを用いた。EuHVKユニバーサルは、このプライマーセットに由来する全てのκ鎖遺伝子の不変5'配列(二重下線で示す)を利用することによって、Dziegielら, 1995が報告しているプライマーセットと適合させた。
このプライマーにはさらに制限酵素BsmIの認識配列(太字で示す)およびファージディスプレーベクターに見出されるpelBリーダー配列の一部(下線で示す)を含めた。
EuHVKユニバーサル:
Figure 0004475949
EuHJK-14aは上記で示したEuHJHと同じ原理、すなわち、RAM1 Vκの3'配列に対する相補性(太字で示す)、制限酵素HindIII、BsiWIおよびHpaIの配列(下線で示す)、およびスプライス供与配列と相補的な配列5'A CTC ACG T 3' (大文字で示す)に基づいていた。
EuHJK-14a:
Figure 0004475949
RAM2重鎖V領域断片を増幅するため、EuHVH-2と呼ばれる一方のプライマーはRAM2 VHの5'配列に基づいており(太字で示す)、さらに制限酵素BsmIの認識配列(下線と斜体で示す)を含んだ。
EuHVH-2:
Figure 0004475949
このプライマーをDziegielら, 1995が報告しているプライマーセットと適合させるため、不確定な塩基(下線で強調)が導入された。
もう一方のプライマーEuHJHは上記の通りである。
RAM2軽鎖V領域遺伝子断片を増幅するため、EuHVKユニバーサルおよびEuHJK-15と呼ばれる2つのプライマーを用いた。EuHVKユニバーサルは上記の通りである。
EuHJK-15は上記で示したEuHJK-14aと同じ原理、すなわち、RAM2 Vκの3'配列に対する相補性(太字で示す)、制限酵素HindIII、BsiWIおよびHpaIの配列(下線で示す)、およびスプライス供与配列と相補的な配列5'A CTC ACG T 3'(大文字で示す)に基づいていた。
EuHJK-15:
Figure 0004475949
RAM3重鎖V領域フラグメントを増幅するため、RAM1に関するものと同じプライマーを用いた(上記参照)。
RAM3軽鎖V領域遺伝子断片を増幅するため、EuHVKユニバーサルおよびEuHJK-8と呼ばれる2つのプライマーを用いた。EuHVKユニバーサルは上記の通りである。
EuHJK-8は上記で示されたEuHJK-14aと同じ原理、すなわち、RAM3 Vκの3'配列に対する相補性(太字で示す)、制限酵素HindIII、BsiWIおよびHpaIの配列(下線で示す)、およびスプライス供与配列に相補的な配列5'A CTC ACG T 3'(大文字で示す)に基づいていた。
EuHJK-8:
Figure 0004475949
Gene Amp PCR System 9600、AmpliTaq Goldおよびその供給バッファーを用いてPCRを行った。プライマーは0.2μMの終濃度で用いた。PCRサイクルには以下の工程:95℃で10分(ホットスタート、AmpliTaqの活性化); 94℃で30秒、40℃で30秒、および72℃で30秒のサイクルを14回; 最後に72℃で10分を1サイクル含めた。
予測された大きさの増幅産物がゲル電気泳動により単離され、これをGene Clean(Bio 101, Inc., CA, USA)で精製し、製造業者に従ってpGem-T Easy(Promega, USA)中へのライゲーションを行った。
ライゲーション反応物を用いてエレクトロコンピテントXL-1ブルー(Stratagene)を形質転換した。次にこれらの細胞を、Sambrookら, 1989に記載されているようにX-galおよびIPTGを含むLB上にプレーティングした。白色のクローンを、Big dye(Applied Biosystems, USA)ならびにプライマーSP-6およびT7を製造業者が推奨するように用いてシークエンシングした。このシークエンシング反応物をABI PRISMシーケンサー310(Perkin Elmer, USA)に適用した。
各重鎖および軽鎖について、鋳型と同じかまたは推定アミノ酸配列が変化しなかったクローンを選択した。
選択したクローンをBsmIおよびBsiWIで、またはBsmIおよびHindIIIで消化した。次にこれらの断片を同じ酵素で消化した適当なベクター中に連結した。
細胞系
インタクトな抗原を安定発現させるため、真核宿主細胞としてCHO細胞を用いた。
トランスフェクションおよび発現
細胞を、10%不活性化ウシ胎児血清(Life Technologies)を添加したハムF-12培地中で50〜80%集密になるまで増殖させた。次に細胞をリポフェクタミン(Life Technologies)を用いて製造業者の手順に従ってトランスフェクトした。翌日、トランスフェクト細胞をマイクロタイタープレートに移し、限定希釈によりクローンを選択した。約14日後、単一細胞コロニーを含むウェルを、ELISAにて抗MSP-3抗体の産生について調べた。ELISAアッセイで最も高い反応を示す約20個のウェル由来の細胞を24ウェルマイクロタイタープレートの新しいウェルに移し、集密になるまで増殖させ、それを6ウェルマイクロタイタープレートの新しいウェルに移し、集密になるまで増殖させ、最後に25cm2 TCフラスコに移した。1つのフラスコ内の細胞を集密になるまで増殖させた後、凍結させた。第2のフラスコ内では細胞を約4週間増殖させ、その時点で上清をELISAにて抗MSP-3抗体の産生について調べた。ELISAアッセイで最も高い反応を示すクローンを2回目の限界希釈に用いた。ELISAアッセイで最も高い反応を示す2回目の限界希釈から得られたクローンを、1)凍結用に、および2)抗体の発現用に用いるのに適当な細胞数まで増殖させた。発現用には、細胞を3個のTCフラスコ(NUNC, Denmark)中で約10%の集密となるように播き、約4週間増殖させた。続いてのアッセイで使用する前に、上清を20,000 x gで30分間遠心分離して、細胞片を除去した。
免疫化学
細胞培養物からの上清中のヒト抗体の組成をキャプチャーELISAにより調べた。ヒト抗体を、ヤギ抗ヒトFabフラグメント(Sigma I5260)のコーティング上に捕捉し、マウス抗ヒトIgG1(Zymed 05-3600)またはIgG3(Zymed 05-3300)をそれぞれ用いて検出した後、ウサギ抗マウスコンジュゲートホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(DAKO P260)で検出した。特異的抗原との反応性についてのELISAは、実施例3で記載したようにして行った。なお、IgG1型のRAM1、RAM2およびRAM3をウエスタンブロット法に用い、RAM1 IgG1をフローサイトメトリーに用いた。
IgGの定量のためのキャプチャーELISA
組換えIgGの捕捉はFc部分に特異的なヤギ抗ヒトIgGの1:5,000希釈物(Sigma I2136)を用いて行い、検出はアルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトκ鎖の1:10,000(Sigma A3813)を用いて行った。精製したヒト組換え抗D IgG1、κ(751μg/mL)およびIgG3、κ(135μg/mL)をそれぞれ標準として用いた。標準IgGはマラリア抗体と同じアロタイプであった。ELISAの手順およびバッファーはDziegielら, 1991に記載の通りとした。
結果
抗MSP-3抗体由来のVHおよびVκ遺伝子をプラスミドpLNOH2およびpLNOK中のそれぞれの定常ドメイン遺伝子と組み合わせた。2つの異なる形態の重鎖ベクターpLNOH2を用いた。すなわち、1つの形態はγ1定常ドメイン遺伝子を含み、もう1つの形態はγ3定常ドメイン遺伝子を含むものである。これら2つのベクターを抗MSP-3抗体のIgG1型ならびにIgG3型の産生のために用いた。これらの抗体の組成はELISAでの免疫化学により調べた。IgG1型およびIgG3型の特異性はELISA法で調べた。
実施例5− 真核性IgG1およびIgG3の精製
清澄化した培養上清を硫酸アンモニウム沈殿(70%)させた後、タンパク質ペレットを水に再懸濁した。透析により、70mM酢酸ナトリウム pH5.0へのバッファー交換を行った。組換えIgGをDEAEセファロースFF(Pharmacia BioTech)を用いて精製した後、ABxカラム(Baker Bond)に流した。バッファーを50mMビシン pH8.5に交換し、0.5M NaClを添加した50mMビシン pH8.5の勾配でIgGを溶出させた。必要であれば、Abxカラムから抗体を含む画分を上記のように硫酸アンモニウムで沈殿させ、ゲル濾過カラム(Superdex200)に適用する。純度はSuperdex200を用いたゲルクロマトグラフィーおよびSDS-PAGE、その後の銀染色により確認した。
実施例6− ADCIおよびその他の機能的および寄生虫学的試験による組換え抗体の生物活性の特性解析
これらのアッセイは防御の臨床状態を反映するものである。ADCIは、Bouharoun-Tayounら(1995)に記載のようなヒト血液単球との協働により、マラリア原虫の増殖をin vitroで妨害する個々のIgGの能力を反映する。抗体の存在下でのマラリア原虫メロゾイト食作用アッセイはDielmoの住民200人の間で行われたが、それはその住民の臨床状態を密接に反映している。
ADCIおよび食作用アッセイは標準化された手順に従い、選択された抗体およびヒト単球を用いて行った。
真核細胞においてFc部分を伴って発現された抗体については、Shiら, 1999が記載しているように古典的なADCIアッセイを用いればよい。
寄生虫を組換え抗体および健康なドナー由来の単球の存在下で培養する。以下に記載のADCIの特異的増殖阻害(SGI)を求めるためには、適当な対照を含める。
Figure 0004475949
単球は、lymfoprep法により、そして自己血漿コーティングプラスチック組織培養ペトリ皿(Nunc)への接着により、単離する。
マラリア寄生虫は96ウェル組織培養プレート中で、Trager and Jensen 1976が記載しているようにして増殖させればよい。IgGおよび単球の効果は0.5%の初期寄生虫血を用いて48時間培養物において測定する。単球を用いた試験では、rhIFN-γでこれらを活性化し、各ウェルに加える。
48時間後、van der Heydeら, (1995)が記載しているように、寄生虫血をフローサイトメトリーにより評価する。48時間後、培養物を、代謝活性を示す細胞によりエチジウムへと変換される生体色素であるヒドロエチジンとともにインキュベートする。エチジウムは感染細胞内で寄生虫由来のDNAと相互作用し、それにより感染赤血球と非感染赤血球とをフローサイトメトリーにより識別できる(Shiら, 1999)。
Kumaratilake and Ferrante (2000)が開発したフローサイトメトリーに基づく食作用アッセイを用いて、産生された抗体のオプソニン化および食作用媒介能を調べてもよい。このアッセイではFITCコンジュゲートメロゾイトを消光する好中球の能力を調べる。このアッセイは他の白血球(単球など)による食作用を抗体のオプソニン化の効果として検出するようになっている(Kushmith & Druilhe, 1983)。
さらに、産生された抗体はBadellら(1995)および(2000)が開発したマウスモデルにおいてin vivoで試験してもよい。このモデルは、ヒト赤血球ならびにヒト単球によって再構築した免疫無防備状態のマウスにおいてマラリア原虫の持続的増殖を得る可能性に基づいている。
この性質の研究は以下に記載する。RAM1 IgG1およびRAM1 IgG3組換え抗体の抗マラリア性生物活性は、ヒトにおけるマラリア原虫に対する防御を媒介する免疫防御機構を反映するものとしてこれまでに確立されているin vitroおよびin vivo双方のアッセイを用いて評価した(Druilheら, 1995; Bouharoun-Tayounら, 1995; Badellら, 1995)。
in vitro ADCI試験
このin vitro試験は、マラリア原虫に感染したタイ人の受容者への、アフリカ人IgGの受動移入によって得られた防御の状態と密接な相関があることがこれまでに分かっているADCI(Antibody-Dependant Cellular Inhibition of P. falciparum; マラリア原虫の抗体依存性細胞阻害)と呼ばれる単球依存性抗体媒介型の協働機構(Sabchareonら, 1991; Bouharou-Tayounら, 1990)、ならびにメロゾイト表面のメロゾイト表面タンパク質-3(MSP-3)分子の同定および該抗原のC末端領域内のMSP-3.bエピトープの同定の原点に存在する機構(Oeuvrayら, 1994)を測定することを目的とした。RAM1 IgG1およびRAM1 IgG3を、陽性対照、すなわち、マラリア原虫感染被験者における受動移入のためにより効果的であることが分かっているアフリカ成人IgGプール、MSP-3.bペプチドに対するアフィニティー精製抗体、およびHisテールベクターで発現させたC末端組換え抗原に対する、同じアフリカ人IgGプールの免疫精製によって得られた抗MSP-3 C末端抗体とともに、ADCIアッセイで試験した。陰性対照としては、マラリア流行地に旅行したことのない個体から得たヨーロッパ人の全IgG、アフリカ人被験者由来のRESA (Ring Infected Surface Antigen)に吸着された抗体 、およびメロゾイト表面タンパク質-1(MSP-1)抗原を含めた。これらの試験は3人の異なる正常な血液単球ドナー、およびマラリア原虫の、Ouganda Palo Alto株、またはNF54株由来の3D7クローンのいずれかを用いて3回繰り返した。
陽性対照IgG(PIAG)は、マラリアが全域地方病となっているコートジボワールの農村地域に永住しているアフリカ人成人から得た血清プールから精製した。彼らは臨床的および疫学的観点から選ばれた(Sabchareonら, 1991)。彼らは子供時代に数え切れない程のマラリアの攻撃を経験しており、症状も重篤な寄生虫血症も認められなかったので、免疫個体であるとみなされた(Bouharoun-Tayounら, 1990)。IgGはDEAE-セファデックス(Pharmacia)でのイオン交換クロマトグラフィーにより抽出した。IgGを含む画分をプールし、タンパク質含量および抗体レベルをそれぞれビシンコニン酸タンパク質測定試薬(Sigma)およびIFAにより測定した。タンパク質含量は16.2mg/ml、調製終了時のIFA力価は1:52,000であることが分かった。終濃度2mg/ml(血清濃度10%, IFA力価650)をADCIアッセイで用いた(Bouharoun-Tayounら, 1990)。
陰性対照IgG(NIG)も上記と同様に1,000人を超える健康なフランス人血液ドナーからの市販のプール(Biotransfusion CRTS, Lille, France)を用いて調製した。そのIFA試験は1:200で陰性であった。
間接免疫蛍光抗体(IFA)試験はこれまでに記載されているように行った(Bouharoun-Tayounら, 1990)。簡単に説明すると、マラリア原虫3D7シゾント感染RBCの薄膜を、加湿チャンバー内で37℃にて30分間、1:200から始まる組換え抗体またはIgGのPBS(pH7.4)中の連続希釈液とともにインキュベートした。Alexa Fluorコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Molecular Probe, USA)のPBS中1:300希釈液を用いて結合した免疫グロブリンを検出した。目に見える特異的免疫蛍光を生じた抗体の最高希釈率を終点力価とした。
寄生虫の培養:NF54由来のマラリア原虫3D7クローンおよびPaloAltoを、AB+ Rh- RBCにヒポキサンチン、0.5%アルブマックス(Gibco BRL)、重炭酸ナトリウム、HEPES、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したRPMI 1640培地で培養した。ソルビトール処理および原形質ゲル浮遊を交互に行うことで寄生虫を同調化した。ADCIアッセイ当日、原形質ゲル浮遊から寄生虫を調製した。
ADCIアッセイ:2つのマラリア原虫株であるNF54由来3D7クローンおよびPaloAlto株を用いた。ADCIアッセイは、いくつか改良を加えながら記載のように行った(Bouharoun-Tayounら, 1990)。正常な単球はマラリア感染に曝されていない健康なドナーから得て、96ウェル平底培養プレート(TPP, Switzerland)に接着させることにより末梢血単核細胞から分離した。良好な接着のためにドナーの血漿をプレートにコーティングした。2 x 105の単球を含む単核細胞を各ウェルに分配した。よく同調したシゾント期のマラリア原虫を、最終ヘマトクリットが2%である0.5%寄生虫血となるよう調整して、各ウェルに加えた。抗MSP3 RAM1組換え抗体を、単球を含む、および含まない各ウェルに、3つの異なる濃度、それぞれIFA力価200、500および1000で加えた。各ウェルの最終容量は100μlに調整した。対照組換えIgG1およびIgG3の他、以下の対照も各プレートで同時に実験した:a)単球を含まない培養液、b)単球を含む培養液、c)NIGを含む培養液、d)単球およびNIGを含む培養液、e)PIAGを含む培養液、f)単球およびPIAGを含む培養液。0.5%アルブマックス、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むRPMI50μlを48時間および72時間の時点で各ウェルに加えた。アッセイは96時間続けて、アッセイの終了時に、ギムザ染色フィルム上で50,000を超えるRBCを顕微鏡下でカウントすること、およびヒドロエチジンで染色した後のFACSの双方により、寄生虫血症を測定した。
単球または抗体それ自体が誘導する阻害の可能性を考慮した特異的増殖阻害指数(SGI)は上記のように算出した。
寄生虫血症の測定はvan der Heydeら(1995)が報告しているようにして行った。各ADCIウェルからの寄生虫ペレットを、新たに希釈したPBS pH7.4中50μg/mlのヒドロエチジン200μlとともに、暗所、37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、寄生虫ペレットをPBSで2回洗浄し、蛍光活性化セルソーター(FACS)チューブ中で最終容量700μにて再懸濁した。データの取得および解析はFACScalibur(Becton-Dickinson, san jose, CA)にて行った。前方散乱および側方散乱の検出器は対数モードに設定し、100,000細胞をカウントした。この解析では感染RBCと非感染RBCの双方にゲーティングし、寄生虫血症のパーセンテージはCellquest-Proプログラム(Becton-Dickinson)を用いて求めた。寄生赤血球は大きさと蛍光強度をもとにして単球から識別した。ヒドロエチジンで同様に処理した非感染ヒトAB+ Rh-は領域1に割り当てられ、感染RBCは領域2に割り当てられた。代謝している、すなわち健常な寄生虫のパーセンテージは顕微鏡により得られた割合と同程度であった。
Figure 0004475949
IFAT=記載のようなマラリア原虫クローン3D7成熟シゾントが感染RBCを用いた間接免疫蛍光の終点力価。SGI%はマラリア原虫クローン3D7を用いた3回の異なるADCIアッセイの平均値および標準偏差(括弧内)。DI%=マラリア原虫培養体に対する抗体の直接的阻害効果のパーセンテージ
3回の独立したアッセイから、Palo Alto株および3D7クローンの双方で同じ結果が得られ、RAM1 IgG3よりもRAM1 IgG1を用いた場合により強いADCI作用が得られた(表II参照)。この一連のin vitro試験では、MSP-3.bエピトープに結合するRAM1が、マラリアに起因する死亡の大部分についての原因となる主要マラリア種であるマラリア原虫P. falciparumに対する寄生虫死滅作用を強力かつ効果的に発揮し、すなわち、防御状態に達したアフリカ人由来の抗体についてそれらの免疫グロブリンがナイーブ感染受容者への受動移入によて示されうるのと少なくとも同程度の強力さで該寄生虫死滅作用を発揮することが明らかに確認される。この生物学的作用は、強力なだけでなく、組換え抗体の極めて低い濃度、すなわち、アフリカ人IgGの防御性プールにおけるポリクローナル抗MSP-3抗体のわずか5%の濃度に相当する濃度でも得られた。上述の陽性対照を用いた場合と同様、RAM1抗体を用いた場合も、赤血球へのメロゾイト侵入に対する直接的作用は示されなかった。従って、RAM1組換え抗体は天然抗体、ポリクローナル抗体、防御抗体を用いてこれまでになされた観察の全てを再現するものであった。
免疫無防備状態のマウスにおけるin vivo試験
上記のようにin vivo試験はBadellら(1995, 2000)が記載しているマウスモデルで行ってもよい。ここで記載するin vivo試験は新たに開発された免疫無防備状態のマウスモデル、すなわち、ヒト赤血球を移植でき、4ヶ月半までの継続期間にわたってマラリア原虫血症を得られるモデルを用いて行った。このモデルは本質的に、Badellら(1995)(下記参照)による初期の説明のものを改良したものであり、本質的にBadellら(1995)(下記参照)およびMorenoら(2000)(下記参照)に記載のプロトコールに一致する。このマラリア原虫動物モデルの霊長類モデルに優る主な利点の1つは、寄生虫血症が慢性レベル、すなわちヒト被験者で得られるものと同等の濃度で持続することである。これは寄生虫血症が急速に発症し、また、数日内に動物を治療する必要があり、そうしなければそれらが感染によって死に至るであろう霊長類モデルとは対照的である。従って、この新しいマウスモデルでは、数日または数週間にわたって連続した実験を行うことができ、従って種々の成分の効果を検討する際に、対照抗体を同じ動物に逐次的に注射することができることから、この動物をそれ自身の対照とすることができる。
マウス:6〜8週齢の雄のベージュ/XID/ヌード(BXN)マウスを用いた。これらはCharles River, USAから購入し、病原体の存在しない条件下(無菌隔離室および層流フード)で維持および操作した。
BXNマウスにおける先天性免疫の免疫調節:マクロファージおよび多形核好中球(PMN)の数をそれぞれ、4〜5日毎に、Cl2MDPを含むリポソーム0.2ml(24)、およびNIMP-R14モノクローナル抗PMN抗体300μgを腹腔内注射(i.p.)することにより、低減させた。NIMP-R14 MAbを産生するハイブリドーマはDr. Malcolm Strathから譲渡されたものである。
寄生虫および培養:マラリア原虫アフリカ株である3D7およびPalo Altoを用いた。寄生虫の血中段階物をヒポキサンチン30mM(RPMI-Hypox)および0.5%アルブマックス(Gibco BRL, Grand Island, NY)を添加したRPMI 1640(Gibco BRL, Grand Island, NY)中で培養し、反復的なソルビトール処理と原形質ゲル(Plasmagel, BELLON, Neuilly-Sur-Seine, France)での浮遊により、同調させた。
ヒト赤血球(HuRBC)のマウスへの移植:マラリア病歴のないAB+血液ドナーからのヒト血液を、静脈穿刺によりCPD抗凝固剤(MacoPharma, Tourcoing-France)またはヘパリンナトリウム(Sanofi Winthrop, Gentilly- France)のいずれか中へ採取し、それを20℃で600gにて10分スピンした。白血球(軟膜)を除去した後、濃縮赤血球を生理食塩水-アデニン-グルコースSAGM(MacoPharma, Tourcoing-France)に懸濁させ、4℃で最大30日間保持した。使用前に、HuRBCを、ヒポキサンチンを添加したRPMI-1640(Gibco BRL, Grand Island, NY)(RPMI-Hypox)を用い、600gで3回洗浄した。洗浄したHuRBC(ヘマトクリット50%)2mlを各マウスに3〜4日おきに腹腔内注射した。
ヒト寄生赤血球(P.f.-HuRBC)のマウスへの移植:高度に同調させた輪状体形態(寄生虫血の1〜3%)をRPMI-ヒポキサンチン中、400gで5分間洗浄した。このRPMI-ヒポキサンチン中の懸濁液2ml(ヘマトクリット50%)を各マウスに腹腔内注射した後、上記のように非感染hu-RBCを3〜4日おきに繰り返し注射した。毎日、尾静脈から採取した血液薄膜を用い、寄生虫血症の発症をモニターした。
P.f.-HuRBC-BXNマウスモデルにおける受動移入
ヒト末梢血単核細胞(hu-PBMC):上記と同じ基準を用いて採血した。フィコール-ハイパックにより全hu-PBMC細胞を単離し、35mMのHepes(Gibco, BRL)で緩衝化したハンクス平衡塩溶液(HBSS)で2回洗浄した。HuMNを、プラスチックに接着させることにより富化した。付着した単球をセルスクラッパーで取り出し、非特異的エステラーゼ(NSE)染色により単球数を測定し(平均70%)、生存能をトリパンブルーにより評価した(平均80%)。3 x 107のhu-PBMCまたは3 x 106の精製HuMNのいずれかを各マウスに移植した。
対照IgGの調製:超免疫アフリカ人IgGプール(PIAG)を、Bouharoun-Tayounらが記載しているようにしてコートジボワールに居住している免疫防御を示す個人からの200人のプール血清から精製した。これらの被験者はマラリアに対して臨床学的に免疫状態に達していることから防御されていると言える。マラリア病歴のない正常なフランス人血液ドナーからの対照IgGプールも同じ手順に従って調製した。受動移入試験のため、全HI-IgGを200mg/kg(6mg/マウス)の用量で注射した。
IgG移入後、一定間隔でマウスのサンプリングを行い、ELISAにより抗体濃度を測定したところ、異化作用によって、7日以内に、移入された抗体が段階的に消失したことが示された。
抗MSP3/bおよび抗RESA抗体の調製:IgGを、MSP3/b-CysペプチドでコーティングしたSulfolinkカラム(Pierce, Rockford, IL)に製造業者の説明書に従って負荷し、閉鎖系で24時間かけて速度1ml/10分で流動させた。PBSで18時間かけて洗浄した後、特異的IgGをグリシン0.2M, pH2.5(Sigma, St-Louis, MO)によりカラムから溶出させた。1ml画分を回収し、2M Trisを含むNaOH(Sigma, St-Louis, MO)でpHを5.0に調整した。抗体の生物活性を保存するためBSA 2mg/mlを加えた(Boehringer, Manheim)。ペプチドに対する各画分の反応性をこれまでに記載されているようにELISAによりモニターし、特異的抗MSP3/b抗体を含むものをプールし、centricon30(Millipore, Bedford, MA)を用いて500μlに濃縮した。これらの抗体の分解を回避するため、濃縮後すぐに1%のウシアルブミン(Sigma, St Louis, USA)を加える。次に、抗体をPBSおよびRPMI 1640に対して透析し、濾過し、使用するまで4℃で保存した。上記と同じ実験手順に従って抗RESA抗体を得た。用いたペプチド配列は(H-(EENVEHDA)2-(EENV)2-OH)であった。
受動移入実験のため、免疫精製した抗MSP3またはRESA抗体の量をIFAT力価により調整し、各回、250μl/マウスの溶液を加えた。
抗RAM1 IgG1およびIgG3抗体ならびに対照抗RhD抗体を腹腔内経路により1.2mg/kg体重の割合で注射した。
免疫アッセイ:天然タンパク質に対する精製抗体の力価測定:各濃縮抗体調製物の力価はNF54株の風乾した薄い血液塗抹標本に対して連続二倍希釈物をインキュベートすることにより求めた。その後、PBS中に1/200希釈した抗ヒトFITC標識二次抗体(Biosys, France)およびEvansブルー1/5000(Sigma, St-Louis, MO)を加えた。この力価とは陽性反応を示す最も高い希釈率である。MSP3抗体は、十分成熟したシゾントを高いパーセンテージで含む培養物をスライドグラス上に調製して、力価測定した。RESA抗体については、輪状体形態を高いパーセンテージで含む培養物を用いた。
ウエスタンブロット:抗体の特異性も、SDS-page分離での寄生虫抽出液および原形質ゲル浮遊後のNF-54株のニトロセルロースペーパーへの転写物に対するウエスタンブロットにより調べた。抗体は1/100希釈し、発色反応用NBT/BCIPシステム(Promega, Madison,WI, USA)を用い、二次抗ヒトIgG PAL標識1/7500希釈物(Promega, Madison,WI, USA)で検出した。
結果:
マラリア原虫BXNマウスでは、正常血液単球を接種しても寄生虫血症の経過に有意な変化はなかった(図15および17参照)。同様に、対照抗RESA抗体を単独で、または正常ヒト単球の接種後に注射しても効果は全くなかった(図15)。同様に、抗MSP-1抗体も寄生虫血症の経過に有意な効果はないことが分かった。これに対し、アフィニティー精製したヒト抗MSP-3抗体を接種した場合、それがMSP-3.b合成ペプチドに対してアフィニティー精製することで得られたものであれ、組換えC末端MSP-3組換え体に対してアフィニティー精製することで得られたものであれ、クロロキンやアルテミシンなどの即効性抗マラリア薬による薬物治療と同程度に迅速にBXNマウスにおける寄生虫血症を排除した(図16)。これらの実験において、合成ペプチドまたは組換え抗原のいずれかに対してアフィニティー精製された抗MSP-3抗体は、抗MSP-3抗体が精製されたものと同様の濃度で、完全な防御を示すアフリカ人成人IgGよりも迅速で著しい効果を示したことは注目すべきことである(図18)。組換えRAM1 IgG1または組換えRAM1 IgG3抗体のいずれかを受容する動物では、正常な血液単球のみの接種では寄生虫血症の経過に有意な効果はなかった(顕著な例は図19に示されている)。同じ動物で、続いて陰性対照抗体であるRh D抗原に対する組換え抗体を接種しても有意な効果はなかった(初日は若干の低下が見られるが、その後は寄生虫血症は初期レベルまで再び上昇した)(図19)。これに対し、組換え抗体RAM1 IgG1を最終的に接種すると、これらのヒト化マウスにおいてマラリア原虫の循環寄生虫血症が迅速かつ完全に排除された(図19)。同様に、組換え抗体RAM1 IgG3を接種しても寄生虫血症の著しい低減が引き起こされたが、完全なものではなかった。すなわち、in vitro条件下で、組換えRAM1 IgG1とRAM1 IgG3の間で見られたものと同じ差異が、in vivo条件下のヒト化免疫無防備状態のマウスでも見られた。この組換えRAM1 IgG1がMSP-3.bに対するアフィニティー精製ポリクローナルヒト抗体と同程度の強度で寄生虫血症の低減をもたらすこと、およびこの寄生虫血症の排除が完全なものであり、すなわち、MSP-3に対するアフィニティー精製ポリクローナル抗体と同じように、そして、完全防御的なアフリカ人IgGとは対照的に、96時間で寄生虫血症が認められなくなったことは注目すべきことである。
従って、in vitroの結果でもin vivoの結果でも、組換えRAM1 IgG1抗体の強力な生物学的作用と、MSP-3標的抗原の発見に端を発するADCI作用において正常血液単球と協働してマラリア原虫の死滅を媒介するその能力とを証明するための収束的データが得られた。
考察
ライブラリーの構築のために続いて行った戦略は、アフリカのセネガル由来のマラリア免疫個体13人からできる限り多くの抗体遺伝子のクローニングを試みるということであった。このことにより、1人または数人だけから全レパートリーをカバーしようとする戦略とは対照的な重要ないくつかの利点が得られた。マラリアに対する免疫は進化の過程でマラリア流行地の人間が曝された主要な選択圧の1つであると考えられる。各個体においてマラリア免疫が首尾よく生起する上での重要な要因は広範な反応性を示す抗体をコードする選択された重鎖遺伝子を限定された数、例えば105個持つことであると仮定された(Antibody repertoires and pathogen recognition: the role of germline diversity and somatic hypermutation. PhD thesis by Mihaela Oprea, 1999, Santa Fe Institute)。このような抗体の役割は、全く同一の個体において段階的により質の高い応答をもたらす抗体応答を誘発するために、重要かつ有害なあらゆる抗原と相互作用するというものであろう。その質の高さは特異性、親和性および防御的生物学的作用で表される。13人から5 x 107の異なる重鎖遺伝子をクローニングすることにより、ライブラリーには平均して各個体由来の4 x 106の異なる遺伝子が含まれ、従って、105個の重要な遺伝子が各々少なくとも1コピークローニングされた見込みが高まる。1個体から同様のサイズのライブラリーをクローニングすることに基づく別の戦略では、たいていの場合、105種の抗体の基本レパートリーからなる1つの完全レパートリーをクローニングすることになる。
本明細書で提供される抗体はマラリアの予防および治療のための新しい戦略を提供する。通常のADCCおよび食作用が唯一の作用機構であるとすれば、初期の寄生虫血症が高レベルであると、大量の免疫グロブリン消費につながり、その結果、寄生虫血症の低減率はより低くなるであろう。従って、抗体-メロゾイト複合体は、接触に依存する様式で単球を刺激して、その後の寄生虫増殖の接触非依存性阻害を担うエフェクター物質を分泌させると考えられる。阻害物質の候補となる分子としては窒素酸化物およびTNF-αがある。このように、寄生虫の初期濃度が高いことにより、抗寄生虫物質が有効な高濃度で誘導され、それにより高い減少率がもたらされると思われる。
天然に生じる抗寄生虫性の宿主/病原体相互作用(相関免疫、ADCI)の利用が治療的抗寄生虫活性を生起させる新たな方途となる。これらの抗体によって利用される免疫機構は、3つの要素、すなわちメロゾイト-抗体-単球間の協働であり、TNF-α、および例えば窒素酸化物種や酸素ラジカルなどのその他の物質の分泌を通じた寄生虫増殖阻害(ADCI)をもたらす。この防御機構は少数のメロゾイトが抗体および単球と物理的に相互作用することのみを必要とする。実際、寄生虫の大多数は、すぐ近くの(bystander)メロゾイト-抗体-単球の相互作用の結果として放出される物質に曝されるのみである。
組換え抗体を用いれば、適切なイソ型の使用を保証できる。感染者から精製した抗体を用いた場合にはそれとは異なり、例えばADCI機構では、IgG1およびIgG3イソ型が重要となる。
標的抗原を逸脱した突然変異体からなる亜集団は野生型と比較して直接的な生存優位性を持たないであろうから、抗寄生虫活性の全体的レベルには影響を及ぼさない。野生型寄生虫の数が劇的に減少した状況下でのみ、その単球刺激は低下するであろう。単球を刺激して抗寄生虫活性を有する物質を放出させるには、野生型標的抗原を有する少数の寄生虫で十分である。従って、この抗寄生虫機構に対する耐性はあまり問題にはならない。実際、標的分子MSP-3の関連ドメインの保存についての研究からは、上記の免疫機構の結果として免疫学的選択圧が一見して存在しないことが確認された(Strickerら 1999)。
単球およびその他のエフェクター細胞によって放出される物質の作用に対する寄生虫の感受性は問題ではないと思われる。このことは、いわゆる相関免疫がひとたび獲得され、それが寄生虫に継続的に曝されることによって維持されていれば、その相関免疫は終生維持されるという臨床的観察によって実証されている。
この機構に対する耐性は、それが無数の世代を経た宿主/病原体の共生により確立された間接的な制御機構を模倣し利用しているのであるから、問題にはならないであろう。従って、これらの抗体は寄生虫耐性を誘導するリスクなしに、抗寄生虫作用を提供する。
組換え抗体の使用は、古典的なワクチン開発過程の各段階に影響を及ぼすパラメーター、すなわち、抗原、ワクチン製剤、免疫原性、個々の免疫応答遺伝子、免疫応答、そして最終的には宿主/寄生虫/抗体の相互作用、と関連する不確実性を回避するものである。
ブダペスト条約に基づく寄託
RAM Fabフラグメントをコードするプラスミドを含む大腸菌TOP10菌株はブダペスト条約の規約に基づき以下のように寄託された。
クローン:
TOP10/F' Tet(R)/pFAB73H+RAM1
寄託機関:
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Mascheroder Weg 1b, D-38124 Braunschweig, Germany.
寄託日:
2002年8月14日
アクセッション番号:
DSM 15134
寄託者:
Morten Hanefeld Dziegiel, HS Blodbank, Copenhagen University Hospital, Blegdamsvej 9, DK-2100 Copenhagen, Denmark.

クローン:
TOP10/F' Tet(R)/pFAB73H+RAM2
寄託機関:
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Mascheroder Weg 1b, D-38124 Braunschweig, Germany.
寄託日:
2002年8月14日
アクセッション番号:
DSM 15135
寄託者:
Morten Hanefeld Dziegiel, HS Blodbank, Copenhagen University Hospital, Blegdamsvej 9, DK-2100 Copenhagen, Denmark.

クローン:
TOP10/F' Tet(R)/pFAB73H+RAM3
寄託機関:
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Mascheroder Weg 1b, D-38124 Braunschweig, Germany.
寄託日:
2002年8月14日
アクセッション番号:
DSM 15136
寄託者:
Morten Hanefeld Dziegiel, HS Blodbank, Copenhagen University Hospital, Blegdamsvej 9, DK-2100 Copenhagen, Denmark.
これらの各クローン中のベクターは、上記のように対応する抗MSP3 FabをコードするVk、CkおよびVH遺伝子を保持している。
参考文献
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種々の末端切断型MSP-3のELISA反応性を示す。 抗原競合試験の結果を示す。 MSP-3抗原全体(一番上、MSP-31-380)および末端切断型抗原(MSP-322-257、MSP-3194-257、MSP-3190-217およびMSP-3211-237を使用)の関係を示した概略図である。 シゾントと組換え抗体との反応性についてのフローサイトメトリー解析の結果を示す。 パンニング方法の概略図を示す。 3つのクローンの推定アミノ酸配列を示す。 IgG1として作製したRAM1、RAM2およびRAM3と反応させたマラリア原虫クローン3D7シゾントおよびメロゾイトタンパク質の免疫ブロッティングを示す。 免疫蛍光顕微鏡分析の結果を示す。 RAM1 IgG1、RAM2 IgG1およびRAM3 IgG1と、合成ペプチドMSP-3190-217および MSP-3211-237とのELISA反応性を示す。 PEPSCANスクリーニングの結果を示す。 RAM1 IgG1のMSP-3194-257への結合に対する免疫血清の阻害作用を示す。 発現ベクターの構築を示す。 抗体の競合を示す図である。 pLNOH2およびpLNOKのそれぞれにおける重鎖および軽鎖遺伝子の構成、および得られる抗体の構造を示す。 P.f.-HuRBC-BXNマウスモデルにおける、正常ヒト単球、寄生虫血症の免疫ヒトドナー由来のポリクローナル抗RESA抗体およびポリクローナル抗MSP3抗体の接種の効果を示す。 P.f.-HuRBC-BXNマウスにおける、クロロキンおよび寄生虫血症の免疫ヒトドナー由来のポリクローナル抗MSP3抗体の効果を比較したものである。 P.f.-HuRBC-BXNマウスモデルにおける、正常ヒト単球、寄生虫血症の免疫ヒトドナー由来のポリクローナル抗RESA抗体およびポリクローナル抗MSP3抗体の接種の効果を示す。 P.f.-HuRBC-BXNマウスにおける寄生虫血症に対する、免疫ドナー由来の総IgGおよびMSP3bペプチドに対してアフィニティー精製された抗体の効果を比較した図である。 1匹のP.f.-HuRBC-BXNマウスの寄生虫血症に対する、ヒト単球単独、IgG1対照抗体との併用、およびRAM1 IgG1の併用の効果を示す。 表Iとして、4回目のパンニング後の3組の実験系から得られた単一クローンのスクリーニングの結果を示す。

Claims (39)

  1. マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のMSP-3抗原に特異的な抗体配列を含んでなる組換えヒト抗体であって、該抗体のそれぞれの相補性決定領域(CDR)として、以下:アミノ酸配列SYAMHからなるRAM1 VHのCDR1、アミノ酸配列VISYDGSNKYYADSVKGからなるRAM1 VHのCDR2、アミノ酸配列GASSからなるRAM1 VHのCDR3、アミノ酸配列RASQSISSWLAからなるRAM1 VKのCDR1、アミノ酸配列KASSLESからなるRAM1 VKのCDR2、およびアミノ酸配列QQYKSFPYTからなるRAM1 VKのCDR3を有している、組換えヒト抗体。
  2. 配列番号1のアミノ酸配列を有するRAM1のVHドメインを含んでなる、請求項1に記載の組換えヒト抗体。
  3. 配列番号2のアミノ酸配列を有するRAM1のVLドメインを含んでなる、請求項1または2に記載の組換えヒト抗体。
  4. γ1、γ2、γ3、γ4、my、α1、α2、δ、またはεイソ型から選択される定常領域を含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の組換えヒト抗体。
  5. 上記定常領域がγ1、γ2、γ3またはγ4イソ型から選択され、IgG分子を形成する、請求項に記載の組換えヒト抗体。
  6. 上記定常領域がγ1またはγ3イソ型から選択され、IgG1またはIgG3イソ型を形成する、請求項に記載の組換えヒト抗体。
  7. アロタイプGlm(a,z)、Glm(f)、G3m(b)、G3m(c3c5)、G3m(c3)またはG3m(s)を有する、請求項に記載の組換えヒト抗体。
  8. アロタイプGlm(a,z)またはG3m(b)を有する、請求項に記載の組換えヒト抗体。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の組換えヒト抗体をコードする核酸配列を含んでなる、単離された核酸分子。
  10. 組換えベクターの形態である、請求項に記載の核酸分子。
  11. 請求項10に記載の核酸分子を含んでなる、宿主細胞。
  12. 請求項10に記載の核酸分子から、請求項1〜のいずれか一項に記載の抗体を宿主細胞中で発現させる方法。
  13. 請求項11に記載の宿主細胞を適切な条件下で培養することを含んでなる、抗体の製造方法。
  14. 宿主細胞が植物細胞である、請求項13に記載の方法。
  15. 上記抗体を細胞培養物から単離することをさらに含んでなる、請求項13または14に記載の方法。
  16. 単離された抗体を、別の抗体または賦形剤もしくは担体のような好適なさらなる成分と混合することをさらに含んでなる、請求項15に記載の方法。
  17. マラリア病の治療に使用するための、請求項1〜のいずれか一項に記載の組換えヒト抗体。
  18. マラリア病の治療用の医薬の製造における、請求項1〜のいずれか一項に記載の組換えヒト抗体の使用。
  19. その用量が抗体10μg〜10mg/kg体重である、請求項17に記載の組換えヒト抗体
  20. その用量が抗体1.5mg〜3.5mg/kg体重である、請求項19に記載の組換えヒト抗体
  21. その用量が抗体2mg/kg体重である、請求項20に記載の組換えヒト抗体
  22. その用量が抗体10μg〜10mg/kg体重である、請求項18に記載の使用。
  23. その用量が抗体1.5mg〜3.5mg/kg体重である、請求項22に記載の使用。
  24. その用量が抗体2mg/kg体重である、請求項23に記載の使用。
  25. マラリア病の予防に使用するための、請求項1〜のいずれか一項に記載の組換えヒト抗体。
  26. マラリア病の予防用の医薬の製造における、請求項1〜のいずれか一項に記載の組換えヒト抗体の使用。
  27. その用量が抗体0.1mg〜3mg/kg体重である、請求項25に記載の組換えヒト抗体
  28. その用量が抗体0.2mg〜2mg/kg体重である、請求項27に記載の組換えヒト抗体
  29. その用量が抗体0.5mg〜1.5mg/kg体重である、請求項28に記載の組換えヒト抗体
  30. その用量が抗体0.75mg〜1mg/kg体重である、請求項29に記載の組換えヒト抗体。
  31. その用量が最も好ましくは抗体1mg/kg体重である、請求項30に記載の組換えヒト抗体
  32. その用量が抗体0.1mg〜3mg/kg体重である、請求項26に記載の使用。
  33. その用量が抗体0.2mg〜2mg/kg体重である、請求項32に記載の使用。
  34. その用量が抗体0.5mg〜1.5mg/kg体重である、請求項33に記載の使用。
  35. その用量が抗体0.75mg〜1mg/kg体重である、請求項34に記載の使用。
  36. その用量が最も好ましくは抗体1mg/kg体重である、請求項35に記載の使用。
  37. マラリア病の治療または予防に使用するための、請求項または10に記載の核酸分子。
  38. 請求項1〜のいずれか一項に記載の抗体の標的抗原へのin vitroでの結合を引き起こすか、該結合を可能にすることを含んでなる方法。
  39. 個体から採取された体液サンプルを請求項1〜のいずれか一項に記載の抗体と接触させ、該抗体のサンプルへの結合を測定し、それによりサンプル中の標的抗原の有無を判定することを含んでなる、マラリアの診断に有用なマラリア原虫のMSP-3抗原を検出する方法。
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