JP4475555B2 - 透明材料およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、様々なディスプレイデバイス、光学デバイスなど、光の利用効率を高めることが望まれる利用分野において好適に用いることができる透明材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜に代表される低反射な表面を有する透明材料は、従来、光学設計に基づいて材料及び層構造を決定し、製造されてきた。製造方法は、蒸着法に代表されるドライプロセス法とウェブコーティングに代表されるウェットプロセス法に大別される。いずれかの方法においても、以下の理由により、十分な低反射能を得るには、多層構造にせざるを得ない。以下、このような低反射な表面を有する透明材料を代表して「反射防止膜」を用いて説明する。
【0003】
反射防止膜は、光の波動性によって解釈すれば、光の干渉性を利用した光学材料であると言える。最も簡単な構造である一層の反射防止膜に関しては、対象とする波長の入射光に対して、それを反射させない条件は次の二つである。
【0004】
1)対象とする波長の四分の一の厚さであること。
2)nc=(ns×na1/2、ここで、ncは、対象とする波長に対する反射防止膜の屈折率、nsは、対象とする波長に対する基材の屈折率、naは、空気の屈折率である。
【0005】
上記の条件1)は、容易に達成されることは明らかであるが、条件2)を達成する材料は実在しない。例えば、基材の屈折率を1.5(これは、ガラスやアクリルなどの透明なプラスチックの値に相当する。)とすると、空気の屈折率は1であることから、理想的なncは、
(ns×na1/2=1.22
となる。ところが、性能の良い低屈折率材料として用いられているフッ素系材料でさえ、せいぜい屈折率は1.35程度であり、屈折率が1.3を下回る材料は実在しない。実際、フッ素系の材料を一層、四分の一波長の厚さでコーティングされた表面の反射率は、1%にも及ぶものであった。
【0006】
この問題点を解決する方策として、19世紀から現代まで、基材表面に微細な凹凸を設けることが様々な手法で検討されてきた。原理は、次のようなものである。
【0007】
例えば、基材表面に、四分の一波長程度の深さの凹凸を、可視光の波長より十分小さな細かさで均一に設けることができれば、見かけ上、その凹凸で規定される厚みの層は、一層の光学的層として入射光に対して作用する。つまり凸部の材料の屈折率部分と凹部の空気の屈折率の部分が平均化された屈折率が、作用上、その凹凸で規定される厚みの層の屈折率となる。その結果、見かけの屈折率が1.3を切る低反射層を作製できるのである。このような低反射層を作製する方法として。透明基板としてガラスを用い、これをエッチングして低反射層を作製する方法等を挙げることができる。
【0008】
しかしながら、このような方法で低反射層を形成する場合は、その厚みおよび空隙率の制御を行うことが極めて困難であり、簡単に最適に厚みおよび最適の空隙率を有する低反射層を形成することができない場合があった。また、このような方法で形成された場合、通常微細な凹凸はV字型等の開口部の広い形状を呈するものであるので、汚れ等が付着しやすく、反射防止効果が早期に低減してしまうといった問題もあった。
【0009】
また、反射防止方式が上述したコーティング方式(ドライコーティングまたはウェットコーティング)によるものである場合は、コーティング/コーティング界面や基材/コーティング界面の接着性と反射防止効果を両立させねばならないが、接着性を十分にするために反射防止効果を低減させざるをえない等の問題が生じる可能性があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、接着性と反射防止効果との両立等の問題点がなく、さらに最適厚みや最適の空隙率を容易に制御することが可能で、さらに長期間十分な反射防止効果等の光学的効果を維持することができる透明材料を提供することを主目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、透明基材と、その少なくとも一方の表面に位置し、表面に開口を有する多数の微細孔が形成された微細孔層とを有し、上記透明基材と上記微細孔層とが一体に形成されており、上記微細孔がその開口より幅広い内部を有するものであることを特徴とする透明材料を提供する。
【0012】
このように本発明においては、透明基材の一方の表面に一体に形成された微細孔層が形成されていることから、微細孔層と透明基材との接着性を考慮する必要がなく、したがって、接着性と反射防止効果との両立に関する問題が生じることがない。また、透明基材の一方の表面に形成された微細孔層中の微細孔の形状が、その開口より幅広い内部を有する形状であり、これは透明基材の一方の表面側に埋め込まれた微粒子が除去されてできた形状である。本発明の透明材料は、このように微細孔の大きさが充填する微粒子の大きさで自由に変更することができるので、空隙率や微細孔層の深さを自由に選択することができ、例えば透明材料を反射防止材として用いる場合には、反射防止に最適な空隙率と深さを有する微細孔層とすることができる。さらに、このように上記微細孔の開口が狭い形状となっているため、微細孔内に汚れが付着することを防止できる。したがって、汚れによる光学的な機能の低下を長期間にわたって防止することが可能である。
【0013】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、上記微細孔層の膜厚が、50nm以上300nm以下であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、例えば上記透明材料を反射防止材として用いた場合に、可視光域における反射防止効果を向上させることができるからである。
【0014】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記微細孔層の空隙率が10〜90%の範囲内であることが好ましい。この場合も同様に、この範囲内とすることにより、透明材料を反射防止材として用いた場合に良好な反射防止効果を有するからである。
【0015】
また、上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記微細孔層のバルクの屈折率が1.05以上1.45以下であることが好ましい。この場合も同様に、この範囲内とすることにより、透明材料を反射防止材として用いた場合に良好な反射防止効果を有するからである。
【0016】
さらに、上記請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項5に記載するように、フッ素含有化合物およびケイ素含有化合物の少なくとも一方の化合物を構成成分として含むことが好ましい。この透明材料を例えば反射防止材等として用いた場合は、通常各種ディスプレイの表面に配置される場合が多い。この際、上述したようにフッ素含有化合物およびケイ素含有化合物の少なくとも一方の化合物を構成成分として含むことにより、表面の防汚性を発揮させることが可能となるからである。
【0017】
また、本発明は、請求項6に記載するように、上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された透明材料を用いたことを特徴とする反射防止材を提供する。このような反射防止材は、上述したように、接着性と反射防止効果との両立に関する問題が生じることがなく、さらに微細孔層が反射防止効果に対して最適な空隙率と深さを有する反射防止材とすることができる。
【0018】
さらに、本発明は、請求項7に記載するように、基材表面に微粒子を付着させて、基材上に微粒子層を形成する微粒子層形成工程と、上記基材の微粒子層が形成された面に樹脂を充填する樹脂充填工程と、充填された樹脂から基材を除去した後、微粒子を除去することにより微細孔層を形成する微粒子除去工程とを有することを特徴とする透明材料の製造方法をも提供する。
【0019】
このような製造方法によれば、基材表面に付着させる微粒子の密度およびその径を変更することにより、得られる透明材料の微細孔層の空隙率やその膜厚を容易に制御することが可能となる。したがって、この透明材料を反射防止材として用いる場合は、容易に最適の空隙率と最適の膜厚を有する反射防止材を得ることができる。
【0020】
上記請求項7に記載された発明においては、請求項8に記載するように、上記微粒子層形成工程が、上記基材表面に電荷を付与する電荷付与工程と、上記基材表面に付与された電荷と逆符号の表面電荷を有する微粒子を含有する微粒子分散液を上記透明基材上に塗布し、微粒子層を形成する微粒子塗布工程とを有することが好ましい。このような工程とすることにより、基材に対して安定的に微粒子を付着させることが可能となり、得られる微細孔層の空隙率の制御等を容易に行うことが可能となるからである。
【0021】
上記請求項7または請求項8に記載された発明においては、請求項9に記載するように、上記微粒子がシリカ微粒子であり、この微粒子を除去する際にフッ酸を用いて除去するようにすることが好ましい。微粒子としてシリカ微粒子を用いることが入手の容易性等の観点から好ましく、この場合除去に際してはフッ酸を用いることが一般的であるからである。
【0022】
【発明の実施の形態】
A.透明材料について
以下、本発明の透明材料について詳しく説明する。本発明の透明材料は、透明基材と、その少なくとも一方の表面に位置し、表面に開口を有する多数の微細孔が形成された微細孔層とを有し、上記透明基材と上記微細孔層とが一体に形成されており、上記微細孔がその開口より幅広い内部を有するものであることを特徴とするものである。
【0023】
図1は、本発明の透明材料を模式的に示したもので、透明基材1と透明基材1の一方の表面に多数の微細孔2を有する微細孔層3とから構成されるものである。透明基材1と微細孔層3とは一体に形成されたものであり、微細孔層3に形成された各微細孔2の深さの平均値が透明基材1と微細孔層3との境界線となる。すなわち、微細孔層3の膜厚は、微細孔2の深さの平均値となる。なお、微細孔は、図1に示すように一層に限定されるものではなく、複数層であってもよい。そして、その場合の微細孔層3の膜厚は、最外層の微細孔における深さの平均値となる。
【0024】
このような微細孔層3の好ましい膜厚は、透明材料の用途等によって大きく異なるものではあるが、一般に50nm以上300nm以下が望ましく、70nm以上250nm以下がさらに望ましい。微細孔層の膜厚が上記範囲より小さい場合は、微細孔層の膜厚が薄すぎて十分な光学的効果を得られない可能性があることから好ましくない。また、微細孔層の膜厚が上記範囲を越える場合は、微細孔層が入射した可視光を散乱・拡散反射してしまい、可視光透過率を下げてしまうことから好ましくない。
【0025】
上記透明基材1および微細孔層3の材料は、一体に形成されるものであることから通常同一の材料が用いられる。しかしながら、本発明は特にこれに限定されるものではなく、例えば複数の種類の材料を同時に用いて成形する場合等であってもよい。
【0026】
このような透明基材1および微細孔層3を形成するための材料については、その成形方法により種々の材料を用いることが可能であり、これらの材料に関しては、後述する製造方法の項で列記されるものが好適に用いられる。
【0027】
この際、これらの材料の内、フッ素含有化合物もしくはケイ素含有化合物の少なくとも一方を構成成分として含む材料が好ましい。本発明の透明材料は、反射防止材等の用途に用いられることから、通常ディスプレイ等の最表面に配置される場合が多い。この際、このようにフッ素含有化合物もしくはケイ素含有化合物の少なくとも一方を構成成分として含む材料を用いれば、防汚性の効果を発揮することができるからである。
【0028】
本発明における微細孔層3の特徴は、表面に開口を有する多数の微細孔2が形成されている点、およびその微細孔2が開口より幅広い内部を有する点にある。
【0029】
表面に開口を有する多数の微細孔2は、少なくとも一層形成されていればよいのであるが、上述したように微細孔2が複数層形成されたものであってもよい。このように微細孔が複数層形成された場合は、少なくとも表面に存在する微細孔が開口を有すればよく、2層目以降の各微細孔は必ずしも連通している必要はない。
【0030】
このように1層もしくは複数層の微細孔より形成された微細孔層3の空隙率は、10〜90%の範囲内とすることが好ましく、20〜80%の範囲内とすることが特に好ましい。空隙率が上記範囲より小さい場合は、例えば透明材料を反射防止材として用いる場合に、微細孔層のバルクの屈折率を十分低下させることができず、結果的に十分な反射防止効果を得ることができない可能性があるからである。一方、空隙率が上記範囲を超える場合は、微細孔層の強度の面で問題が生じる可能性があるから好ましくない。
【0031】
上記微細孔層3の空隙率は、例えば、以下2つの方法により測定することができる。すなわち、第1の方法は、微粒子層形成工程後の微粒子占有率は微粒子除去工程後の空隙率と等しいという仮定に基づく方法である。例えば、平均粒子半径をr、単位体積当たりの粒子数をN、単位体積をSとし、膜厚をdと定めて、空隙率φを(式1)で得る方法である。
【0032】
φ=(4πr3N)/(3Sd) (式1)
ここで、r及びNは、後述する微粒子層形成工程後の試料を用い、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面及び断面観察による実測・画像解析などにより得られる値である。
【0033】
第2の方法としては、反射スペクトルデータなどを用いてシミュレーションによりバルクの屈折率を求め、(式2)により空隙率を求める方法である。
【0034】
φ=(ncal 2−nmat 2)/(1−nmat 2) (式2)
ただし、ncalはシュミレーションによる屈折率、nmatは微細孔層を形成する材料の屈折率である。
【0035】
本発明においては、上記のいずれの方法を用いて空隙率を測定してもよい。例えば、粒子膜の段階でSEM観察が容易に行えるのであれば、第1の方法が簡便で好ましい。もちろん、粒子膜段階の観察が困難な場合でも、第2の方法によればよい。
【0036】
第1の方法と第2の方法の結果が厳密に一致することはほとんどないことに留意すべきである。なぜなら、微粒子除去工程時の材料歪や、シュミレーション式の不完全性などが影響するからである。さらには、第1の方法において、他の統計的手法を用いることもできるし、第2の方法で示した空隙率を求めるときに他の計算式を用いることもできる。
【0037】
よって、先に示した好ましい空隙率の範囲は、採用された種々の空隙率測定法による個々の結果に当てはめることができるものとする。
【0038】
また、微細孔層3のバルクの屈折率、すなわち微細孔層3の全体としての屈折率は、上述した空隙率を変化させることにより調整することが可能であり、容易にバルクの屈折率を最適値とすることができる。これにより、透明材料を反射防止材として用いた場合、最良の反射防止効果を有する反射防止材を得ることができる。このバルクの屈折率の最適値は、透明材料の材質の種類により変化するものではあるが、通常1.05以上1.45未満の範囲内であり、特に1.10〜1.45の範囲内、中でも1.15〜1.40の範囲内であることが望ましい。なお、このバルクの屈折率は、反射スペクトルデータなどを用いてシミュレーションにより求めることができる。
【0039】
また、上記微細孔2は、図1に示すようにその開口4より内部5の方が幅広に形成されている。なお、微細孔の形状が崩れた場合等においては、表面の開口よりその内部側に幅の狭い部分が形成される場合があるが、この場合は、この表面より内側に形成された最も幅の狭い部分を本発明においては開口ということとする。
【0040】
この開口および内部の径の測定方法は、例えば、走査型電子顕微鏡による表面や断面の観察による実測・画像解析などで求める方法等を挙げることができる。
【0041】
本発明においては、上記微細孔2表面の開口4の幅を1とした場合、その内部5の幅の値は、透明材料の形成方法や、用いる微粒子の種類により大きく変化するものではあるが、概ね1.1〜10の範囲内に形成される。
【0042】
このような微細孔層3は、図1に示すように透明基材1の一方の面に形成されてもよいが、これに限定されるものではなく、透明基材の両面に形成されたものであってもよい。
【0043】
本発明に用いられる透明基材の肉厚は、透明材料の用途等によって大きく異なるものであり、少なくとも透明材料としての強度が保てる程度の肉厚を有することが好ましい。
【0044】
上述したような本発明の透明材料は、機能的光学層として種々の用途に用いることができ、具体的には、反射防止材、近赤外線反射防止材、光学フィルターの構成層の一部、誘電体ミラーの構成層の一部、DNAチップなど各種分析用チップの基材などとして用いることが可能である。本発明においては、中でも反射防止材として用いることが本発明の透明材料の特性を効果的に発揮することができる点で好ましい。
【0045】
このような反射防止材の用途としては、例えばフラットパネルディスプレイの反射防止用を挙げることができ、具体的には陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)等の反射防止材として用いることができる。
【0046】
B.透明材料の製造方法について
次に、本発明の透明材料の製造方法について説明する。本発明の透明材料の製造方法は、基材表面に微粒子を付着させて、基材上に微粒子層を形成する微粒子層形成工程と、上記基材の微粒子層が形成された面に樹脂を充填する樹脂充填工程と、充填された樹脂から基材を除去した後、微粒子を除去する微粒子除去工程とを有することを特徴とするものである。
【0047】
図2は、このような本発明の透明材料の製造方法を説明するための概略図であり、まずこの例では板状の基材11上に微粒子12を付着させて微粒子層13を形成する微粒子層形成工程が行われる(図2(a))。次に基材11上に付着した微粒子12間に透明樹脂14を充填する樹脂充填工程が行われる(図2(b))。そして、基材11が除去され(図2(c))、さらに微粒子12を除去する微粒子除去工程が行われ(図2(d))、本発明の透明材料15が得られる。以下、このような各工程について説明する。
【0048】
1.微粒子層形成工程
本発明においては、まず基材表面に微粒子を付着させて、基材上に微粒子層を形成する微粒子層形成工程を行う。
【0049】
このように基材表面に微粒子を付着させる方法としては、具体的には基材表面と微粒子との静電的相互作用により透明基材表面に微粒子を配し微粒子層を形成する方法、粘着層付き基材を用いる方法等を挙げることができる。
【0050】
この場合、用いることができる基材としては、表面に微粒子を付着させることが可能であり、所定の強度を有するものであれば特に限定されるものでなく、透明な基材であっても不透明な基材であっても用いることができる。具体的な材料としては、樹脂、ガラス、金属、セラミックス、金属、ゴム、エラストマー等が適用でき、形状的にはフィルム、シート、板の他、曲面を有する形状、筒状構造物、複雑な形状等のいかなる形状の基材であっても用いることができる。
【0051】
本発明においては、上述した微粒子を付着させる方法の中でも、基材表面と微粒子との静電的相互作用により透明基材表面に微粒子を配し微粒子層を形成する方法が好ましい。この方法を行う場合は、微粒子層形成工程において、上記基材表面に電荷を付与する電荷付与工程と、上記基材表面に付与された電荷と逆符号の表面電荷を有する微粒子を含有する微粒子分散液を上記透明基材上に塗布し、微粒子層を形成する微粒子塗布工程とを少なくとも行うことが好ましい。
【0052】
(電荷付与工程)
まず、基材表面に電荷を付与する電荷付与工程について説明する。
【0053】
基材表面に電荷を付与する方法としては、単に物理的に基材表面を帯電させる場合と、物理的あるいは化学的に基材表面にイオン性官能基を付与する場合がある。本発明においては、前者は電荷の安定性に乏しいことから、後者の基材表面にイオン性官能基を付与する方法によることが好ましい。
【0054】
この基材表面にイオン性官能基を導入する手法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、加水分解処理、シランカップリング処理、高分子電解質の塗布、高分子電解質多層膜の形成などが挙げられるが、本実施態様においては、高分子電解質を塗布等することにより得られる高分子電解質膜を形成することが好ましい。これは、以下の理由による。
【0055】
まず、一般に基材表面の電荷密度が高い方が基材上に均一に微粒子が付着した微粒子層を形成できる。一方、基材上に高分子電解質膜を形成することにより、他の方法と比較して電荷密度を高くすることができる。したがって、高分子電解質膜を基材上に形成し、この高分子電解質膜と微粒子との静電的相互作用により微粒子を基材上、すなわち高分子電解質上に付着させることにより、微粒子が均一に付着した微粒子層とすることができる。
【0056】
また、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、及び加水分解処理では、一般的に導入されるイオン性官能基はアニオン性基であることが多い。したがって、微粒子表面の電荷はカチオンに限定されることになる。一方、高分子電解質はアニオン性、カチオン性、それらの密度やバランスを任意に選択できるので、微粒子表面の電荷がアニオン、カチオンのいずれか一方に限定されることがない。この点からも基材表面に電荷を付与する方法としては、高分子電解質からなる高分子電解質膜を形成することが好ましい。
【0057】
なお、基材表面は、疎水性であることが多いことから、上記手法を併用することも基材表面に十分な電荷を付与する手法として効果的である。例えば、基材表面に、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、加水分解処理、シランカップリング処理の少なくとも一つを施した後、高分子電解質塗布または、高分子電解質多層膜形成を行なうことも可能であり、好ましい方法である。
【0058】
高分子電解質膜を形成して基材表面に電荷を付与する場合、高分子電解質膜の膜厚は微粒子の平均粒径より薄いことが好ましく、さらに高分子電解質の膜厚を微粒子の平均粒径の50%未満とすることが好ましい。高分子電解質膜の膜厚が微粒子の平均粒径以上であると、微粒子が部分的に二層以上積層されて入射する可視光を散乱したり、微粒子間の空隙を減少する、あるいは埋めるなど、反射防止膜としては不良の膜となってしまう可能性があるので好ましくない。
【0059】
本発明において、このような高分子電解質膜としては、互いに極性の異なる2種以上の高分子電解質が積層されて形成された多層膜であることが好ましい。このような高分子電解質多層膜の形成方法としては、公知のいわゆる交互吸着膜作製法(Layer-by-Layer Assembly法)を好適に用いることができる。この方法は、基材をカチオン性高分子電解質水溶液とアニオン性高分子電解質水溶液とに交互に浸漬することによって、ナノオーダーの膜厚制御で基材上に高分子電解質多層膜を形成する手法である(例えばGero Decherら、Science、277巻、1232ページ、1997年;白鳥世明ら、信学技報、OME98-106、1998年;Joseph B. Schlenoffら、Macromolecules、32巻、8153ページ、1999年)。この方法によると、高分子電解質多層膜が微粒子の粒径以上の厚膜であっても、微粒子膜は、単粒子膜で形成される。なぜなら、高分子電解質多層膜は、媒体(主に水)不溶の高分子錯体になっており、ほとんど媒体に拡散せず、微粒子は高分子電解質多層膜の、ほとんど表面とのみ相互作用するからである。
【0060】
また本発明においては、上記高分子電解質膜を形成する高分子電解質が架橋された高分子電解質であることが好ましい。架橋された高分子電解質を用いることにより、微粒子層において不必要で不都合な粒子の多層化を防止することができるからである。この架橋された高分子電解質は、高分子電解質を単層で形成する場合も、上記高分子電解質多層膜とした場合も好適に用いられ、高分子電解質多層膜とした場合は、その最上層のみ架橋された高分子電解質を用いてもよいし、全ての層を架橋された高分子電解質で形成してもよい。
【0061】
本発明において、このような高分子電解質膜を用いた静電相互作用により微粒子層を形成する場合であって、微粒子を複数層形成する場合は、高分子電解質膜を形成してこれに微粒子を付着させた後、さらにその上に高分子電解質膜を形成し再度微粒子を付着させる工程を繰り返す方法、また高分子電解質を所定の膜厚で形成し、これと微粒子分散液と接触させることにより高分子電解質膜を膨潤させ、この高分子電解質膜中に微粒子を取り込むことにより微粒子を複数層形成する方法等を用いることができる。
【0062】
本発明に用いられる高分子電解質としては、ポリエチレンイミンおよびその4級化物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−ジメチレン−ピペリジニウムクロライド)、ポリアリルアミンおよびその4級化物、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級化物、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびその4級化物、ポリジメチル(メタ)アクリルアミドおよびその4級化物、ポリ(メタ)アクリル酸およびそのイオン化物、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリアミック酸、ポリビニルスルホン酸カリウム、さらには上記ポリマーを構成するモノマーと(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのノニオン性水溶液モノマーとの共重合体などを上げることができる。
【0063】
本発明においては、中でもポリエチレンイミン4級化物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−ジメチレン−ピペリジニウムクロライド)、ポリアリルアミン4級化物、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド4級化物、ポリジメチル(メタ)アクリルアミド4級化物、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリビニルスルホン酸カリウム、さらには上記ポリマーを構成するモノマーと(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのノニオン性水溶液モノマーとの共重合体を用いることが好ましい。
【0064】
また、架橋された高分子電解質としては、上記高分子電解質を構成するモノマーとメチレンビスアクリルアミドなどの多官能モノマーとの架橋体や上記高分子電解質とアルデヒド類との反応による架橋体、上記高分子電解質への電子線、ガンマ線照射による架橋体などを挙げることができる。
【0065】
(微粒子塗布工程)
このようにして電荷が付与された基材上に微粒子分散液を塗布して微粒子層を形成する。この際の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、公知の種々の塗布方法、例えばスプレーコート、バーコート等を用いることも可能であるが、微粒子分散液に電荷が付加された基材を浸漬する方法が特に好適に用いられる。
【0066】
本工程において用いられる微粒子分散液は、微粒子を、適当な媒体に分散・懸濁して形成されるものである。媒体系としては、水系が最も好ましい。これは、本発明が、基材表面と微粒子表面の静電的相互作用を利用しているからである。また、微粒子を安定に分散・懸濁させるために乳化剤や分散安定剤を用いてもよい。この場合、乳化剤及び分散安定剤はイオン性であるものが好ましく、基材表面の電荷と逆の符号、つまり、微粒子の表面電荷と同符号のイオン性であることが好ましい。
【0067】
このような組成の微粒子分散液としては、市販品を用いることが可能である。具体的には、日産化学工業(株)製の各種コロイダルシリカ、JSR(株)製の各種アクリルエマルジョンや各種ラテックスなどが挙げられる。また、綜研化学(株)製の各種高分子微粒子粉体などの微粒子を粉体として入手し、適当な乳化剤や分散安定剤存在下、水に分散させて微粒子分散液を作ることもできる。
【0068】
上記のような市販の微粒子分散液のpHは、酸性からアルカリ性まで様々である。上記電荷付与工程において、透明基材上の高分子電解質膜あるいは、高分子電解質が積層されてなる多層膜の表面が弱電解質高分子で形成されている場合であり、かつそれがカルボン酸系高分子のような弱アニオン性高分子電解質の場合は、微粒子分散液のpHは中性からアルカリ性であることが好ましい。これは、酸性下ではカルボキシル基のような弱アニオンは、イオン解離しないからである。また、例えば、イミン系高分子のような弱カチオン性高分子電解質の場合は、微粒子分散液のpHは中性から酸性であることが好ましい。なぜなら、アルカリ性下では、イミノ基のような弱カチオンはイオン解離しないからである。ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩のような強アニオン性高分子電解質やポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウムのような強カチオン性高分子電解質を用いた場合は、酸性からアルカリ性までの微粒子分散液を用いることができる。これは、強電解質は、イオン解離性においてpHの影響を受けにくいからである。
【0069】
このような微粒子分散液の濃度を調整することにより、形成される微粒子層中の微粒子の密度を変化させることが可能である。そしてこの微粒子層中の微粒子の密度を変化させることにより、最終的に得られる透明材料の微細孔層のバルクの屈折率を変化させることが可能であることから、微粒子分散液中の微粒子の濃度は得られる透明材料の光学特性に大きく影響を与える因子であるといえる。このような微粒子分散液中の微粒子の濃度としては、目標とする微細孔層のバルクの屈折率や、微粒子の種類、どのような分散液であるか等の種々の要因によって大きく変化するものであるが、一般的には、3重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜50重量%の範囲内のものが用いられる。
【0070】
この工程で用いることができる微粒子としては、透明な微粒子であっても不透明な微粒子であっても用いることが可能であるが、後述する微粒子溶解工程において、除去可能な微粒子である必要がある。具体的には、非架橋の高分子微粒子などの有機微粒子、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、塩化ナトリウムなどの無機微粒子等を挙げることができる。本発明においては、上記微粒子の材料の内、シリカ(SiO2)微粒子を用いることが特に好ましい。
【0071】
本発明に用いることができる微粒子の平均粒径としては、50nm以上300nm以下が望ましく、70nm以上250nm以下がさらに望ましい。後述する微粒子除去工程において微粒子を溶解した際にできる微細孔を上述したような好適な大きさとするためである。
【0072】
また、用いる微粒子の粒径分布は特に限定されるものではないが、比較的粒径分布の小さいものが好ましい。具体的には、粒径が300nmを越える微粒子を含まない、つまり、粒径分布範囲が300nm以下であることが好ましい。
【0073】
(洗浄工程)
このようにして微粒子塗布工程を行った後、必要に応じて洗浄工程が行われる。洗浄工程を行うことにより、上記微粒子付着工程において静電的相互作用により透明基材に付着していない微粒子が洗浄除去される。この洗浄工程は、一般的な洗浄工程と同様にして行うことができる。
【0074】
2.樹脂充填工程
本発明においては、上記基材の微粒子層が形成された面に樹脂を充填する樹脂充填工程が行われる。
【0075】
この樹脂充填工程は、熱プレス法、射出成形法、溶液塗布法、熱・UV・EB硬化法等を用いて行うことができる。以下、各々の方法について説明する。
【0076】
(熱プレス法)
上述した微粒子層形成工程において形成した微粒子層を有する基材の微粒子層側に、透明樹脂を配置し、熱プレスを用いて押圧する。これにより、透明樹脂が熱により軟化して上記微粒子層中の微粒子間に侵入する。これにより微粒子層中に樹脂を充填する方法である。
【0077】
この方法に用いることができる樹脂は、透明で熱可塑性の樹脂であれば特に限定されるものではないが、特に(メタ)アクリレート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、脂環式アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素樹脂などを好適に用いることができる。具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ARTON(日本合成ゴム)、ZEONEX(日本ゼオン)、オプトレッツ(日立化成)、O-PET(鐘紡)、CYTOP(旭硝子)などから、要求性能と作製条件を考慮して選択すれば良い。
【0078】
(射出成形法)
上述した微粒子層形成工程において微粒子層が形成された基材を、予め金型内に配置し、射出成形により成形するいわゆるインサート成形法である。この際、射出される樹脂と微粒子層とが接触するように基材が金型内に配置される。これにより、微粒子層の微粒子内に樹脂を充填することができる。
【0079】
この際、好適に用いることができる材料としては、射出成形可能でかつ透明な樹脂であれば特に限定されるものではないが、具体的には上述した熱プレス法で列挙した樹脂を用いることができる。
【0080】
(溶液塗布法)
上述した微粒子層形成工程において微粒子層が形成された基材上の微粒子層が形成された側の面に、溶媒に透明樹脂を溶解させた樹脂溶液を塗布し、乾燥させることにより微粒子層内の微粒子間に樹脂を充填する方法である。
【0081】
この際、好適に用いることができる樹脂と溶媒の組合せは、樹脂溶液を塗布し、乾燥させた際に透明な樹脂層が形成される組合せであれば特に限定されるものではない。具体的には、樹脂としては、熱プレス法や射出成形法で用いられる樹脂の内、溶剤可溶のものであれば好適に用いることができる。また、溶剤としては一般的には、芳香族溶剤やケトン類が溶剤として好適である。例えば、ポリメチルメタクリレート/トルエン、ARTON/メチルエチルケトン−トルエン混合溶剤、ZEONEX/トルエンなどを挙げることができる。なお、樹脂としてフッ素系樹脂を用いた場合は、特にフッ素系溶剤を用いることが好ましい。例えば、CYTOP/パーフルオロアルカン類を挙げることができる。
【0082】
(熱・UV・EB硬化法)
上述した微粒子層形成工程において微粒子層が形成された基材上の微粒子層が形成された側の面に、重合性の材料を塗布し、熱、紫外線、もしくは電子線等を照射して硬化させることにより、微粒子層内の微粒子間に樹脂を充填する方法である。
【0083】
この際用いることが可能な重合性材料としては、(メタ)アクリレートモノマー類、多官能(メタ)アクリレートモノマー類、ビニルモノマー類、多官能ビニルモノマー類等を挙げることができる。
【0084】
(その他)
この樹脂充填工程において、板状の透明材料を形成する場合等においては、透明樹脂の両面に、上記微粒子層形成工程において微粒子層が形成された基材上の微粒子層が配置されるように形成することにより、両面に微細孔層が形成された透明材料を形成することが可能となる。
【0085】
3.微粒子除去工程
このように基材上の微粒子層内に透明樹脂を充填した後、まず基材を除去する。この基材の除去方法は、単に基材を透明樹脂から剥離させる方法であってもよく、また基材を何らかの溶媒で溶解させる方法や、何らかの薬剤で分解させる方法等を用いることが可能である。
【0086】
基材を透明樹脂から除去することにより、少なくとも一方側の表面に多数の微粒子が埋設された透明樹脂が得られる。このような透明樹脂に対し、透明樹脂は溶解もしくは分解させず、微粒子のみを溶解もしくは分解する微粒子除去剤で処理することにおり、本発明の透明材料が得られる。
【0087】
この微粒子除去剤は、用いられている透明樹脂と微粒子との組合せに応じて用いられるものである。また、微粒子除去剤としては、透明樹脂は分解せずに微粒子のみ分解する分解性微粒子除去剤と、透明樹脂は溶解させずに微粒子のみ溶解させる溶解性微粒子除去剤を挙げることができる。
【0088】
このような透明樹脂、微粒子、および微粒子除去剤の組合せの代表的な例としては、例えば、酸化物粒子/非水溶性樹脂/酸性水溶液の組合せ、ポリマー粒子/耐溶剤性樹脂/ポリマー粒子溶剤を挙げることができる。
【0089】
酸化物粒子/非水溶性樹脂/酸性水溶液の組合せの好ましい例としては、シリカ(SiO2)微粒子/非水溶性樹脂/フッ酸水溶液の組合せ、アルミナ(Al2O3)微粒子/非水溶性樹脂/フッ酸水溶液の組合せ等を挙げることができる。また、ポリマー粒子/耐溶剤性樹脂/ポリマー粒子溶剤の組合せとしては、ポリスチレン系非架橋ポリマー粒子/耐溶剤性樹脂/ポリマー粒子溶剤の組合せ、(メタ)アクリレート系非架橋ポリマー粒子/耐溶剤性樹脂/ポリマー粒子溶剤の組合せ等を挙げることができる。
【0090】
本発明においては、透明樹脂として(メタ)アクリレート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、脂環式アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素樹脂などを用い、微粒子としてシリカ微粒子を用い、微粒子除去剤としてはフッ酸水溶液を用いる組合せが最も好適に用いられる。
【0091】
なお、上記微粒子除去剤で上述した基材をも除去することが可能であれば、微粒子除去剤におる処理を行うだけで、基材および微粒子を同時に除去することが可能となる。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0093】
【実施例】
以下、本発明の透明材料について、実施例を通じてさらに具体的に説明する。
【0094】
[実施例1]
(基材上への微粒子層の作製:微粒子層形成工程)
基材として、トリアセチル化セルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム製、商品名:T80UNZ)を用いた。まず、TACフィルムを2規定水酸化カリウム水溶液で70℃で2分間処理し、表面を親水化処理した。処理後のTACフィルムを用い、交互吸着膜作成法によりポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム(PDDA)(アルドリッチ社製、分子量10万〜20万)20mM(モノマー単位換算)水溶液(純水に溶解)とポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)(アルドリッチ社製、分子量7万)20mM(モノマー単位換算)水溶液(純水に溶解)を用いて、ガラス基材の両面に交互吸着膜を成膜した。最上層の成膜は、PDDAで行った。
【0095】
上記基材をコロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名:MP-1040、平均粒径110nm)に30秒間、室温で浸漬した後、十分に洗浄し、乾燥させて基材両面に単粒子膜が形成された試料1-1を形成した。
【0096】
(熱プレス:樹脂充填工程)
上記試料1-1を用い、熱プレス法により、樹脂充填工程を行った。熱プレスの成形機としては油圧成形機(東邦マシンナリー株式会社製、商品名:TBD-100)を用いた。手順としては、鏡面金属板(3mm厚)の間にアクリル板(住友化学社製、商品名:スミベックE、グレード011)2mm厚と上記試料1-1とを、その微粒子層がアクリル板と接するようにして成形機にセットした。プレス条件は、油圧成形機の上下基板温度120℃、圧力90kg・cm-2であった。5分間プレスした後、成形機から取り出し、常温まで放置した後、金属板から取り出した。これにより、一方の面に微粒子が埋め込まれたアクリル板を得た(試料1-2)。その後、TACフィルムを剥離した。TACフィルムは容易に剥離することができた。
【0097】
(微粒子の抽出:微粒子除去工程)
上記試料1-2を、室温で1分間5%フッ酸水溶液に浸漬することによって、試料1-2からシリカ微粒子を溶解抽出した。抽出後、よく水洗し、乾燥させて試料1-3を得た。
【0098】
(反射率評価)
島津製作所社製のスペクトロメータUV-3100PCおよび大型試料室MPC-3100を用いた。反射率は、入射角5°において、正反射率測定により評価した。図3にTACフィルム、試料1-1、試料1-2、および試料1-3の反射スペクトルを示した。
【0099】
(空隙率評価)
試料1-3の反射率スペクトルデータを基に、シュミレーションソフトWVASE32(J. A. Woollam社製)を用いて計算した膜の屈折率と、アクリル板の屈折率を用い、第2の測定法の(式2)で求めた空隙率は、57.0%であった。
【0100】
[実施例2]
(基材上への微粒子層の作製:微粒子層形成工程)
まず、実施例1と同様にして1層目の微粒子層をTACフィルム上に形成した。次に、このフィルムをPDDA水溶液に浸漬して水洗する工程を2度繰り返した。次いで、このフィルムに、MP-1040に浸漬して水洗する工程を施すことにより2層目の微粒子層を形成した。同様にして3層目の微粒子層を形成することにより、3層の微粒子層を有するTACフィルムを得た(試料2-1)。
【0101】
(熱プレス:樹脂充填工程)
実施例1と同様にして行った。
【0102】
(微粒子の抽出:微粒子除去工程)
実施例1と同様にして行った。
【0103】
(反射率評価)
実施例1と同様にして行った。図4に試料2-1、樹脂を充填した状態の試料2-2、および微粒子を溶解抽出した状態の試料2-3の反射率スペクトルを示す。
【0104】
(断面観察)
試料2-2および試料2-3の断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S-4500)を用いて観察した。断面写真を図5に示す。微粒子層を3層形成したので、フッ酸処理後(試料2-3)は、微粒子が除去された後の微細孔が3次元的に連結していることがわかる。また、試料2-3の微細孔の形状が、開口の幅が狭く、内部の幅が広い形状を有していることが認められる。
【0105】
[実施例3]
(基材への微粒子層の作製:微粒子層形成工程)
実施例1と同様にし、コロイダルシリカとして触媒化成工業製スフェリカスラリー(粒子径:約120nm)を用いてTACフィルム上に微粒子層を形成した(試料3-1)。
【0106】
(UV硬化:樹脂充填工程)
紫外線硬化性アクリル系組成物を試料3-1上に塗布した後、紫外線照射により該組成物を硬化した。
【0107】
(微粒子の抽出:微粒子除去工程)
実施例1と同様にして行った(試料3-2)。
【0108】
(反射率評価)
実施例1と同様にして行った。図6に試料3-1及び3-2の反射率スペクトルを示す。
【0109】
(空隙率評価)
試料3-1の倍率5万倍のSEM写真を用い、1.5μm四方の領域の粒子数および平均粒子径を求めた。膜の厚みは、平均粒子径と等しいので、第1の測定法(式1)で求めた空隙率は、18.4%であった。
【0110】
(表面及び断面観察)
図7に試料3-1の表面、試料3-2の表面及び断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。表面を比べると、明らかに試料3-1の微粒子径より試料3-2の微細孔径の方が小さい。また試料3-2の断面写真からは、試料3-2の微細孔の形状が、開口の幅が狭く、内部の幅が広いものであることが明瞭に判る。さらに、粒子が連結していた部分は、微空孔で連結されていることも良くわかる。
【0111】
[実施例4]
(基材上への微粒子層の作製:微粒子層形成工程)
実施例1と同様にして、日産化学製コロイダルシリカMP-2040(粒子径:約190 nm)を用いてTACフィルム上に微粒子層を形成した。
【0112】
(UV硬化:樹脂充填工程)
実施例3と同様にしてUV硬化樹脂を充填した。
【0113】
(微粒子の抽出:微粒子除去工程)
実施例1と同様にして微粒子を除去した(試料4)。
【0114】
(反射率評価)
図8に試料4の反射率スペクトルを示した。800nm付近の近赤外域で最も反射防止能が高いことがわかる。
【0115】
(空隙率評価)
実施例4の微粒子膜の倍率5万倍のSEM写真を用い、1.5μm四方の領域の粒子数及び平均粒子径を求めた。膜の厚みは、平均粒子径と等しいので、第1の測定法の(式1)で求めた空隙率は、26.0%であった。
【0116】
(表面観察)
図9に実施例4の微粒子膜及び微粒子抽出膜(試料4)の表面SEM写真を示した。図より明らかなように、微粒子径より細孔径の方が小さい。これにより、微細孔の形状が、開口の幅が狭く、内部の幅が広いことが容易に推測される。
【0117】
【発明の効果】
本発明の透明材料によれば、このように透明基材の一方の表面に一体に形成された微細孔層が形成されていることから、微細孔層と透明基材との接着性を考慮する必要がなく、したがって、接着性と反射防止効果との両立に関する問題が生じることがない。また、透明基材の一方の表面に形成された微細孔層中の微細孔の形状が、その開口より幅広い内部を有する形状であり、これは透明基材の一方の表面側に埋め込まれた微粒子が除去されてできた形状である。本発明の透明材料は、このように微細孔の大きさが充填する微粒子の大きさで自由に変更することができるので、空隙率や微細孔層の深さを自由に選択することができる。また、充填する微粒子の量でも空隙率を自由に選択することができる。したがって、例えば透明材料を反射防止材として用いる場合には、反射防止に最適な空隙率と深さを有する微細孔層とすることができる。さらに、このように上記微細孔の開口が狭い形状となっているため、微細孔内に汚れが付着することを防止できる。したがって、汚れによる光学的な機能の低下を長期間にわたって防止することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明材料の一例の概略断面図である。
【図2】本発明の透明材料の製造方法を示す工程図である。
【図3】実施例1で得た試料の反射率を示すグラフである。
【図4】実施例2で得た試料の反射率を示すグラフである。
【図5】実施例2で得た試料の断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例3で得た試料の反射率を示すグラフである。
【図7】実施例3で得た試料の電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例4で得た試料の反射率を示すグラフである。
【図9】実施例4で得た試料の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 …… 透明基材
2 …… 微細孔
3 …… 微細孔層
4 …… 開口
5 …… 内部
11 …… 基材
12 …… 微粒子
13 …… 微粒子層
14 …… 樹脂
15 …… 透明材料

Claims (9)

  1. 透明基材と、その少なくとも一方の表面に位置し、表面に開口を有する多数の微細孔が形成された微細孔層とを有し、前記透明基材と前記微細孔層とが一体に形成されており、前記微細孔がその開口より幅広い内部を有するものであることを特徴とする透明材料。
  2. 前記微細孔層の膜厚が、50nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1記載の透明材料。
  3. 前記微細孔層の空隙率が10〜90%の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の透明材料。
  4. 前記微細孔層のバルクの屈折率が1.05以上1.45以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の透明材料。
  5. フッ素含有化合物およびケイ素含有化合物の少なくとも一方の化合物を構成成分として含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の透明材料。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の透明材料を用いたことを特徴とする反射防止材。
  7. 基材表面に微粒子を付着させて、基材上に微粒子層を形成する微粒子層形成工程と、前記基材の微粒子層が形成された面に樹脂を充填する樹脂充填工程と、充填された樹脂から基材を除去した後、微粒子を除去する微粒子除去工程とを有することを特徴とする透明材料の製造方法。
  8. 前記微粒子層形成工程が、前記基材表面に電荷を付与する電荷付与工程と、前記基材表面に付与された電荷と逆符号の表面電荷を有する微粒子を含有する微粒子分散液を前記透明基材上に塗布し、微粒子層を形成する微粒子塗布工程とを有することを特徴とする請求項7記載の透明基材の製造方法。
  9. 前記微粒子がシリカ微粒子であり、この微粒子を除去する際にフッ酸を用いて除去することを特徴とする請求項7または請求項8記載の透明材料の製造方法。
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