JP4474967B2 - 冷間加工による靭性劣化の小さい低降伏比高張力鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
ただし、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
Ti/N≧1.5 ・・・(2)
ただし、Ti、N:各元素の含有量(質量%)
Nb/Ti≧0.7 ・・・(3)
ただし、Nb、Ti:各元素の含有量(質量%)
59−140×Ceq≦v≦68−140×Ceq ・・・(4)
ただし、Ceqは(1)式で示される炭素当量、vは冷却速度(℃/sec)
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ただし、Ceqは(1)式で示される炭素当量、vは冷却速度(℃/sec)
[成分組成]
本発明では、鋼の成分組成を、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.6〜2%、P:0.02%以下、S:0.005%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.005〜0.03%、Nb:0.005〜0.03%、N:0.006%以下を含有し、以下の(1)式で示される炭素当量Ceqが0.3〜0.4%であり、かつ、以下の(2)式および(3)式を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなるものとする。さらに、Cu:0.1〜1%、Ni:0.1〜2%、Cr:0.05〜1%、Mo:0.05〜1%、V:0.005〜0.1%、B:0.0005〜0.002%の1種または2種以上を必要に応じて含有させてもよい。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
ただし、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
Ti/N≧1.5 ・・・(2)
ただし、Ti、N:各元素の含有量(質量%)
Nb/Ti≧0.7 ・・・(3)
ただし、Nb、Ti:各元素の含有量(質量%)
以下、これらについて説明する。
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、引張強度550MPa以上確保するためには、0.05%以上が必要である。しかし,過剰に添加すると低温溶接割れ感受性が増大する。このため、C含有量を0.05〜0.15%の範囲とする。
Siは、脱酸元素として作用し、製鋼上0.05%以上の含有が必要であるが、0.5%を超えて含有すると母材靭性が低下する。このため、Si含有量を0.05〜0.5%の範囲とする。
Mnは鋼の焼入れ性を増加し強度を向上させる元素であり、この効果を確保するために0.6%以上含有することを必要とする。一方、2%を超えて含有すると、溶接性が著しく劣化する。このため、Mn含有量を0.6〜2%の範囲とする。
Pは、不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼の靭性を劣化させるためにできるだけ低減することが望ましい。特に、0.02%を越えると、著しく靭性が劣化する。このため、P含有量を0.02%以下とする。
Sは、不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼の靭性や板厚方向引張試験における絞りを劣化させるためできるだけ低減することが望ましい。特に、0.005%を越えると、上記特性が著しく劣化する。このため、S含有量を0.005%以下とする。
Alは、脱酸材として作用し、溶鋼の脱酸プロセス上もっとも汎用的に使われる。しかし、0.1%を越えると、粗大な酸化物を形成して、母材の延性が著しく劣化する。このため、Al含有量を0.1%以下とする。
Tiは、TiNとしてNを固定することにより、固溶Nを低減させ、冷間加工後の靭性劣化を抑制する効果を有する。この効果を発揮するためには、0.005%以上必要である。しかし、0.03%を越えて添加すると靭性が劣化する。このため、Ti含有量を0.005〜0.03%の範囲とする。
Nbは、Tiと同様に炭窒化物としてNを固定することにより、固溶Nを低減させ、冷間加工後の靭性劣化を抑制する効果を有する。この効果を発揮するためには、0.005%以上必要である。しかし、0.03%を越えて添加すると、靭性が劣化する。このため、Nb含有量を0.005〜0.03%の範囲とする。
Nは、固溶Nとして存在することにより、冷間加工後の靭性を劣化させる。本発明においては、NをTiやNbで窒化物、炭窒化物として固定することによって、固溶Nを減少させることにより、冷間加工後の靭性劣化を抑制している。しかし、0.006%を越えて添加すると、TiおよびNbを添加したとしても冷間加工後の靭性が劣化する。このため、N含有量を0.006%以下とする。
Cuは、靭性を劣化させずに強度を上昇させるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、その効果を発揮するためには0.1%以上の添加が必要であり、一方、1%を越えて添加すると、熱間圧延時に表面疵が多発する。このため、Cuを添加する場合には、その含有量を0.1〜1%の範囲とする。
Niは、靭性を劣化させずに強度を上昇させるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、その効果を発揮するためには0.1%以上の添加が必要であり、一方、2%を越えて添加すると、合金コストが上昇する。このため、Niを添加する場合には、その含有量を0.1〜2%の範囲とする。
Crは、合金コストを著しく上昇させることなく強度を上昇させるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、その効果を発揮するためには0.05%以上の添加が必要であり、一方、1%を越えて添加すると、溶接性が劣化する。このため、Crを添加する場合には、その含有量を0.05〜1%の範囲とする。
Moは、焼入れ性を増加させ、強度を上昇させるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、その効果を発揮するためには0.05%以上の添加が必要であり、一方、1%を越えて添加すると、溶接性が劣化する。このため、Moを添加する場合には、その含有量を0.05〜1%の範囲とする。
Vは、析出強化により強度を上昇させるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、その効果を発揮するためには、0.005%以上必要であり、一方、0.1%を越えて添加すると、溶接性が劣化する。このため、Vを添加する場合には、その含有量を0.005〜0.1%の範囲とする。
Bは、極微量の添加で焼入れ性を増加させ、強度を上昇させるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、その効果を発揮するためには、0.0005%以上必要であり、一方、0.002%を越えて添加すると、溶接性が劣化する。このため、Bを添加する場合には、その含有量を0.0005〜0.002%の範囲とする。
炭素当量Ceqは、溶接構造物として必要不可欠である溶接継手の強度を確保するために0.3%以上必要である。しかし、0.4%を越えて添加すると、溶接性が劣化する。このため、Ceqを0.3〜0.4%の範囲とする。
Nb/Ti≧0.7 …(3)
上記式(2)および(3)を満足することは、冷間加工後の靭性を確保するために必要である。図1にTi/Nの値およびNb/Tiの値と15%の引張予歪を与えた鋼材の冷間加工後の靭性劣化度ΔvTs(℃)との関係を示す。図1では、横軸をNb/Tiとしている。Ti/Nが1.5を下回る場合、何れのNb/Ti値においても靭性劣化度は40℃以上と大きく、さらにTi/Nが1.5以上において、Nb/Tiが0.7を下回る場合には、靭性劣化度は40℃以上と大きいことがわかる。一方、Ti/N≧1.5かつNb/Ti≧0.7の場合においてのみ、靭性劣化度が40℃以下となっていることがわかる。以上より、Ti/N≧1.5、かつ、Nb/Ti≧0.7とする。これにより、冷間加工後の靭性劣化度を小さくすることができる。
本発明においては、上述のように鋼組成、炭素当量、Ti/Nの値およびNb/Tiの値を適切に制御した上で、その鋼を1050〜1250℃の範囲に加熱後、圧延終了温度が表面で800〜950℃となるように熱間圧延を施した後、以下の(4)式を満足する冷却速度v(℃/sec)で室温〜600℃まで加速冷却を行う。加速冷却後に、200℃〜Ac1点以下で焼戻してもよい。
59−140×Ceq≦v≦68−140×Ceq ・・・(4)
加熱温度は、1050℃以下では変形抵抗が大きくなり、圧延装置に負荷をかける。また、1250℃を越えると、熱間加工時に表面疵が多発する。そのため、加熱温度は1050〜1250℃とする。
熱間圧延終了温度は、800℃以下では組織がフェライト化して強度が確保できず、950℃を越えると粒径が粗大化して靭性が劣化する。そのため、熱間圧延終了温度は、800〜950℃とする。
冷却速度は、それぞれのCeqにおいて、強度を確保するための最低値と低降伏比を確保するための最大値が存在する。図2にそれぞれのCeqにおける最適冷却速度範囲を示す。冷却速度v(℃/sec)が59−140×Ceq未満の場合、強度確保が出来ず、また、冷却速度v(℃/sec)が68−140×Ceqより大きい場合、低降伏比を確保することが出来ないことがわかる。以上より、冷却速度v(℃/sec)は59−140×Ceq≦v≦68−140×Ceqとする。これにより、板厚にかかわらず低降伏比および高強度を実現できる。
冷却停止温度が600℃を越える場合には、強度が低下する。そのため、冷却停止温度を600℃以下とした。
焼戻し熱処理は、水冷による鋼板内の残留応力を軽減するために実施する。200℃を下回る温度では、残留応力軽減効果が得られず、Ac1点を越えると強度などの材質が著しく変化する。そのため、200℃〜Ac1点以下とした。
表1に示した成分組成を有する鋼を溶製しスラブとした後、表2に示した条件で鋼板とした。ここでは、冷却速度は、1.5ton/m2/min.以上の水量密度の強冷却と空冷を複数回繰り返すことにより制御した。具体的には、表2に示す各冷却速度となるように、冷却ON時間とOFF時間とを設定した。機械的性質として、降伏点または0.2%耐力(MPa)、引張強度(MPa)、降伏比YR(%)、シャルピー衝撃特性vTs(℃)、15%予歪付与後のシャルピー衝撃特性を測定した。引張試験は、板厚40mm以下については、JIS Z 2201 5号試験片で実施し、板厚40mm越えについては、1/4板厚位置から採取したJIS Z 2201 5号試験片で評価を実施した。シャルピー衝撃試験については、何れの板厚においても1/4t位置から採取したJIS Z 2202 2mmVノッチシャルピー衝撃試験片で実施した。これらの機械的特性の測定結果も併せて表2に示す。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.05〜0.15%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.6〜2%、
P:0.02%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.1%以下、
Ti:0.005〜0.03%、
Nb:0.005〜0.03%、
N:0.006%以下
を含有し、以下の(1)式で示される炭素当量Ceqが0.3〜0.4%であり、かつ、以下の(2)式および(3)式を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を、1050〜1250℃の範囲に加熱後、圧延終了温度が表面で800〜950℃となるように熱間圧延を施した後、以下の(4)式を満足する冷却速度で室温〜600℃まで加速冷却を行うことを特徴とする、引張強さ550MPa以上、降伏比80%以下の冷間加工による靭性劣化の小さい低降伏比高張力鋼板の製造方法。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
ただし、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
Ti/N≧1.5 ・・・(2)
ただし、Ti、N:各元素の含有量(質量%)
Nb/Ti≧0.7 ・・・(3)
ただし、Nb、Ti:各元素の含有量(質量%)
59−140×Ceq≦v≦68−140×Ceq ・・・(4)
ただし、Ceqは(1)式で示される炭素当量、vは冷却速度(℃/sec) - 質量%で、
C:0.05〜0.15%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.6〜2%、
P:0.02%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.1%以下、
Ti:0.005〜0.03%、
Nb:0.005〜0.03%、
N:0.006%以下
を含有し、さらに
Cu:0.1〜1%、
Ni:0.1〜2%、
Cr:0.05〜1%、
Mo:0.05〜1%、
V:0.005〜0.1%、
B:0.0005〜0.002%
の1種または2種以上を含有し、以下の(1)式で示される炭素当量Ceqが0.3〜0.4%であり、かつ、以下の(2)式および(3)式を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を、1050〜1250℃の範囲に加熱後、圧延終了温度が表面で800〜950℃となるように熱間圧延を施した後、以下の(4)式を満足する冷却速度で室温〜600℃まで加速冷却を行うことを特徴とする、引張強さ550MPa以上、降伏比80%以下の冷間加工による靭性劣化の小さい低降伏比高張力鋼板の製造方法。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
ただし、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
Ti/N≧1.5 ・・・(2)
ただし、Ti、N:各元素の含有量(質量%)
Nb/Ti≧0.7 ・・・(3)
ただし、Nb、Ti:各元素の含有量(質量%)
59−140×Ceq≦v≦68−140×Ceq ・・・(4)
ただし、Ceqは(1)式で示される炭素当量、vは冷却速度(℃/sec) - 質量%で、
C:0.05〜0.15%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.6〜2%、
P:0.02%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.1%以下、
Ti:0.005〜0.03%、
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N:0.006%以下
を含有し、以下の(1)式で示される炭素当量Ceqが0.3〜0.4%であり、かつ、以下の(2)式および(3)式を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を、1050〜1250℃の範囲に加熱後、圧延終了温度が表面で800〜950℃となるように熱間圧延を施した後、以下の(4)式を満足する冷却速度で室温〜600℃まで加速冷却を行い、200℃〜Ac1点以下で焼戻すことを特徴とする、引張強さ550MPa以上、降伏比80%以下の冷間加工による靭性劣化の小さい低降伏比高張力鋼板の製造方法。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
ただし、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
Ti/N≧1.5 ・・・(2)
ただし、Ti、N:各元素の含有量(質量%)
Nb/Ti≧0.7 ・・・(3)
ただし、Nb、Ti:各元素の含有量(質量%)
59−140×Ceq≦v≦68−140×Ceq ・・・(4)
ただし、Ceqは(1)式で示される炭素当量、vは冷却速度(℃/sec) - 質量%で、
C:0.05〜0.15%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.6〜2%、
P:0.02%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.1%以下、
Ti:0.005〜0.03%、
Nb:0.005〜0.03%、
N:0.006%以下
を含有し、さらに
Cu:0.1〜1%、
Ni:0.1〜2%、
Cr:0.05〜1%、
Mo:0.05〜1%、
V:0.005〜0.1%、
B:0.0005〜0.002%
の1種または2種以上を含有し、以下の(1)式で示される炭素当量Ceqが0.3〜0.4%であり、かつ、以下の(2)式および(3)式を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を、1050〜1250℃の範囲に加熱後、圧延終了温度が表面で800〜950℃となるように熱間圧延を施した後、以下の(4)式を満足する冷却速度で室温〜600℃まで加速冷却を行い、200℃〜Ac1点以下で焼戻すことを特徴とする、引張強さ550MPa以上、降伏比80%以下の冷間加工による靭性劣化の小さい低降伏比高張力鋼板の製造方法。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
ただし、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
Ti/N≧1.5 ・・・(2)
ただし、Ti、N:各元素の含有量(質量%)
Nb/Ti≧0.7 ・・・(3)
ただし、Nb、Ti:各元素の含有量(質量%)
59−140×Ceq≦v≦68−140×Ceq ・・・(4)
ただし、Ceqは(1)式で示される炭素当量、vは冷却速度(℃/sec)
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