JP4474802B2 - アルミ電解コンデンサ用電極箔の化成方法 - Google Patents

アルミ電解コンデンサ用電極箔の化成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミ電解コンデンサ用電極箔の化成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的なアルミ電解コンデンサは、アルミニウム箔をエッチング処理によって実効表面積を拡大させたエッチング箔の表面に化成処理により化成皮膜を形成した陽極箔と、アルミニウム箔をエッチング処理によって実効表面積を拡大させた陰極箔と、この陽極箔と陰極箔をその間にセパレータを介在させて巻回することによりコンデンサ素子を作製し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸させるとともに、このコンデンサ素子を金属ケース内に封止することにより構成されている。
【0003】
図3は上記陽極箔に化成処理により化成皮膜を形成する製造装置を概念図で示したものであり、同図において、31はアルミニウム箔を電気化学的にエッチング処理することによって実効表面積が拡大されたエッチング箔で、厚さ0.07〜0.12mm、幅が500mm、長さ500〜1000mのものを用いる。このエッチング箔31は第1直流電源33の陽極に接続された給電ローラ32と接触させ、第1直流電源33の陰極に接続された複数の陰極板34と電解液(図示せず)を有する化成槽35内で一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する。なお、この電解液は、有機酸または無機酸もしくはこれらの塩からなる水溶液が用いられる。
【0004】
次に、上記一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成したエッチング箔31は化成皮膜に欠陥を作る減極処理槽36を経て、第2直流電源39の陽極を電極板37に接続した給電槽38にてエッチング箔31に液体給電し、その後、上記第2直流電源39の陰極を接続した陰極板40,42を設置した化成槽41,43にてエッチング箔31を再化成し、所定の耐電圧を有する化成皮膜を形成した陽極箔44が得られる。
【0005】
なお、上記化成処理において、第1直流電源33の電圧は、第2直流電源39の電圧よりも低く設定するようにしている。
【0006】
また、化成処理による化成皮膜の形成の別の方法として、特開平02−128415号公報に記載の技術では、エッチング箔に異なる化成電圧を多段階に印加して化成処理するときに、少なくとも各化成段階の間に所定時間の減極処理を行うことにより陽極箔の漏れ電流を小さくすることができるということが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の化成処理による化成皮膜の形成において、減極処理槽36による化成皮膜の欠陥が不充分であるために、第2直流電源39の陽極を電極板37に接続した給電槽38にてエッチング箔31に液体給電する電流量が低減してしまい、再化成での化成皮膜を均一に形成することができず、陽極箔44の静電容量や耐電圧のばらつきが大きくなるという課題を有している。
【0008】
特に、耐電圧が高電圧になるほど、エッチング箔31に充分な電流量を供給することができず、陽極箔44の静電容量や耐電圧のばらつきが大きくなるばかりでなく、給電槽38でエッチング箔31が箔切れするトラブルやエッチング箔31の表面に凹凸が発生するなどの品質問題が起きていた。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、陽極箔の静電容量、耐電圧のばらつきを低減し、化成処理の工程不良を低減することができるアルミ電解コンデンサ用電極箔の化成方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に記載の発明は、エッチング箔を直流電源の陽極に接続された給電ローラと接触させ、上記直流電源の陰極に接続された複数の陰極板と電解液を有した化成槽内で上記エッチング箔に一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する工程と、このエッチング箔の両面に機械的な応力を交互に加えて化成皮膜に亀裂を形成する工程と、上記直流電源とは別の直流電源の陽極に接続された電極板と給電液を有した給電槽内で上記エッチング箔に液体給電する工程と、上記別の直流電源の陰極に接続された複数の陰極板と電解液を有した複数の化成槽内で上記化成皮膜を再化成して所定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する工程とを備えたもので、この方法により、化成皮膜に均一な亀裂を形成することができるので、静電容量、耐電圧の特性のばらつきを低減し、化成処理における工程不良を低減した陽極箔を得ることができるという作用を有する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、化成皮膜に亀裂を形成する工程がエッチング箔の両面をローラに交互に少なくとも1回以上押しつけるようにしたもので、エッチング箔の両面の化成皮膜に均一に亀裂を形成することができるという作用を有する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、エッチング箔がローラと接触するときの接触角を110〜160度の範囲としたもので、請求項2に記載の発明による作用効果よりもさらに化成皮膜に亀裂を形成することができるという作用を有する。
【0013】
なお、エッチング箔の接触角が110度未満では、エッチング箔への機械的応力が強くなりすぎて箔切れを起こしやすくなり、また、接触角が160度を越えると化成皮膜に亀裂を形成しにくくなる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する工程を複数の直流電源と複数の化成槽により段階的に耐電圧を有する化成皮膜を形成するようにしたもので、一定の耐電圧を有する化成皮膜を均一に形成することができるという作用を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
本発明の一実施の形態による化成処理による化成皮膜を形成する製造装置の概念図を図1に示す。同図1において、1はアルミニウム箔をエッチング処理したエッチング箔で、厚さ0.07〜0.12mm、幅が500mm、長さ100〜2000mのものが用いられる。2は第1直流電源3および第2直流電源6の陽極側が接続されてエッチング箔1に電流を供給する給電ローラ、5および8は化成槽で、この化成槽5,8内には複数の陰極板4,7がそれぞれ設置され、電解液(図示せず)で満たされている。上記複数の陰極板4,7には第1直流電源3および第2直流電源6の陰極がそれぞれ接続されており、上記エッチング箔1が複数の陰極板4,7の間を通過することにより一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する。
【0017】
9は亀裂形成部で、上記化成槽5および化成槽8で一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成したエッチング箔1の表裏に、ローラで交互に機械的な応力を加えることにより上記化成皮膜に均一な亀裂を形成することができる。12は給電槽で、第3直流電源10の陽極を接続した電極板11と給電液(図示せず)を有しており、この電極板11の間をエッチング箔1が通過することにより電流をエッチング箔1に液体給電することができる。14および16は上記第3直流電源10の陰極と接続された陰極板13,15を有した化成槽で、エッチング箔1を上記化成槽14および化成槽16にて再化成して、所定の耐電圧を有する化成皮膜を形成した陽極箔17を得ることができる。
【0018】
このようにして得られた陽極箔17は、静電容量および耐電圧のばらつきが小さく、また、給電槽12でのエッチング箔1の箔切れや表面の凹凸などの問題を起こすことがないので、化成処理の工程不良を低減することができるという効果を奏するものである。
【0019】
なお、上記亀裂形成部9はローラとローラの距離やローラの大小、ローラとローラの中心軸の違いなどにより、エッチング箔1がローラと接触するときの接触角を110〜160度の範囲になるようにする。
【0020】
図2は上記ローラとエッチング箔の関係を示す概念図である。同図2(a)は複数のローラ21aを同一軸上に設置し、ローラ21a間の距離でエッチング箔22aの接触角23aを変えるようにしたものである。同図2(b)は上記同図2(a)の構成において、ローラ21bを大きくすることによりエッチング箔22bの接触角23bを変えるようにしたものである。同図2(c)はローラ21cとローラ21cの中心軸を違うようにしてエッチング箔22cの接触角23cを変えるようにしたものである。
【0021】
以下、本実施の形態について実施例を用いて説明する。
【0022】
(実施例1)
上記実施の形態に示す製造装置において、(表1)に示す化成条件でエッチング箔を化成処理して陽極箔を作製した。
【0023】
【表1】
Figure 0004474802
【0024】
なお、亀裂形成部9は図2(a)に示す構成のものを用い、エッチング箔1がローラ21aと接触するときの接触角を110度とした。
【0025】
(実施例2)
上記実施例1において、亀裂形成部9を図2(a)に示す構成のものを用い、ローラ間の距離を調整して、エッチング箔1がローラ21aと接触するときの接触角を130度とした以外は実施例1と同様にして陽極箔を作製した。
【0026】
(実施例3)
上記実施例1において、亀裂形成部9を図2(a)に示す構成のものを用い、ローラ間の距離を調整して、エッチング箔1がローラ21aと接触するときの接触角を160度とした以外は実施例1と同様にして陽極箔を作製した。
【0027】
(実施例4)
上記実施例1において、亀裂形成部9を図2(c)に示す構成のものを用い、エッチング箔1がローラ21cと接触するときの接触角を130度とした以外は実施例1と同様にして陽極箔を作製した。
【0028】
(実施例5)
上記実施例1において、亀裂形成部9を図2(b)に示す構成のものを用い、ローラ径を図2(a)のローラ径の1.5倍にしたローラ21bを使用し、エッチング箔1がローラ21bと接触するときの接触角を130度とした以外は実施例1と同様にして陽極箔を作製した。
【0029】
(比較例1)
上記実施の形態1に示す製造装置において、亀裂形成部の代わりに、温度30℃の5%のアジピン酸アンモニウム水溶液を満たした減極処理槽を用いて化成皮膜に亀裂を形成するようにした以外は実施例1と同様にして陽極箔を作製した。
【0030】
上記の実施例1〜5と比較例1の陽極箔について、静電容量および耐電圧を測定した。その結果を(表2)に示す。
【0031】
【表2】
Figure 0004474802
【0032】
なお、静電容量および耐電圧の測定は、陽極箔17を50mごとに切断し、その部分を10cm2に切断した試験片を用意し、静電容量はアジピン酸アンモニウム150g/l、30℃の水溶液中で測定した値を示し、耐電圧はアジピン酸アンモニウム30g/l、70℃の水溶液中で、0.2mA/cm2で電流を流して所望の電圧の90%の電圧値に到達後、5分間保持したときの電圧を値とし、そのときの電流値を漏れ電流の値とした。
【0033】
(表2)から明らかなように、実施例1〜5の陽極箔17は、エッチング箔1が給電槽12に入る前に機械的な応力を加えて上記エッチング箔1の表面に形成した化成皮膜に亀裂を形成することにより、エッチング箔1への液体給電を均一に給電することができ、その後の再化成により、所定の耐電圧を有する化成皮膜を均一に形成することができるので、静電容量および耐電圧のばらつきが少なくて漏れ電流特性の優れた陽極箔17を得ることができる。
【0034】
また、比較例1では給電槽でエッチング箔の表面に凹凸が発生し、陽極箔としての品質が悪いものであったが、実施例1〜5の陽極箔17は給電槽12でのエッチング箔1の表面に凹凸の発生がなく、品質的にも優れている。
【0035】
なお、上記実施例1〜5では一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する化成層と、所定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する2つの化成槽を用いて、その各化成槽内をエッチング箔が1往復するようにしたが、化成槽の数および往復回数をさらに増しても、陽極箔の化成皮膜特性を向上させる効果を発揮することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明は、エッチング箔を直流電源の陽極に接続された給電ローラと接触させ、上記直流電源の陰極に接続された複数の陰極板と電解液を有した化成槽内で上記エッチング箔に一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する工程と、このエッチング箔の両面に機械的な応力を交互に加えて化成皮膜に亀裂を形成する工程と、上記直流電源とは別の直流電源の陽極に接続された電極板と給電液を有した給電槽内で上記エッチング箔に液体給電する工程と、上記別の直流電源の陰極に接続された複数の陰極板と電解液を有した複数の化成槽内で上記化成皮膜を再化成して所定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する工程とを備えた化成方法にすることにより、静電容量、耐電圧の特性のばらつきを低減した陽極箔を得ることができ、化成処理の工程不良を低減することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による化成皮膜を形成する製造装置を示す概念図
【図2】(a)同実施の形態による亀裂形成部の構成を示す概念図
(b)同実施の形態による他の亀裂形成部の構成を示す概念図
(c)同実施の形態による別の他の亀裂形成部の構成を示す概念図
【図3】従来の化成皮膜を形成する製造装置を示す概念図
【符号の説明】
1 エッチング箔
2 給電ローラ
3 第1直流電源
4,7 陰極板
5,8 化成槽
6 第2直流電源
9 亀裂形成部
10 第3直流電源
11 電極板
12 給電槽
13,15 陰極板
14,16 化成槽
17 陽極箔

Claims (4)

  1. エッチング箔を直流電源の陽極に接続された給電ローラと接触させ、上記直流電源の陰極に接続された複数の陰極板と電解液を有した化成槽内で上記エッチング箔に一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する工程と、このエッチング箔の両面に機械的な応力を交互に加えて化成皮膜に亀裂を形成する工程と、上記直流電源とは別の直流電源の陽極に接続された電極板と給電液を有した給電槽内で上記エッチング箔に液体給電する工程と、上記別の直流電源の陰極に接続された複数の陰極板と電解液を有した複数の化成槽内で上記化成皮膜を再化成して所定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する工程とを備えたアルミ電解コンデンサ用電極箔の化成方法。
  2. 化成皮膜に亀裂を形成する工程がエッチング箔の両面をローラで交互に少なくとも1回以上押しつけるようにした請求項1に記載のアルミ電解コンデンサ用電極箔の化成方法。
  3. エッチング箔がローラと接触するときの接触角を110〜160度の範囲とした請求項2に記載のアルミ電解コンデンサ用電極箔の化成方法。
  4. 一定の耐電圧を有する化成皮膜を形成する工程を複数の直流電源と複数の化成槽を用いて段階的に耐電圧を有する化成皮膜を形成するようにした請求項1に記載のアルミ電解コンデンサ用電極箔の化成方法。
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