JP4474551B2 - 神経膠腫細胞株u251の増殖能抑制剤及び浸潤能抑制剤 - Google Patents

神経膠腫細胞株u251の増殖能抑制剤及び浸潤能抑制剤 Download PDF

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本発明は、脳腫瘍の悪性度の指標となりうる脳腫瘍マーカーおよびその用途に関する。
神経膠腫は原発性脳腫瘍の中で最も頻度の多い腫瘍であり、また悪性神経膠腫は最も予後不良な悪性腫瘍の一つである。最も悪性度の高い神経膠芽腫では生存期間中央値は9〜12ヶ月にすぎない(非特許文献1及び2)。近年の腫瘍生物学や手術、放射線化学療法の進歩にも拘わらず、生存期間の延長は殆ど認められていない(非特許文献3)。それゆえ新たな診断、治療法に結びつくような新しい分子標的の発見等、腫瘍生物学的な解析が望まれていた。
HECT2,OSTはグアニンヌクレオチド交換因子である。グアニンヌクレオチド交換因子は、Rho,Rac−1,Cdc42などの低分子量GTP結合たんぱく質のレギュレーターであり細胞の増殖、分化、運動などのさまざまな機能を調節する。Hect2はMikiら(非特許文献4)により単離された癌遺伝子であり、細胞周期をコントロールし細胞質分裂を調節する(非特許文献5)。一方、Ostは Horiiらにより単離された癌遺伝子であり、脳での発現が高く、正常状態では軸索輸送に関与すると考えられている(非特許文献6−8)。
Karpeh MS, Kelsen DP, Tepper JE :Cancer of the Stomach. In: Cancer, principles & practice of oncology. 6th ed. Devita VT Jr (ed) Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia,pp 1092-1121, 2001. Stewart LA: Chemotherapy in adult high-grade glioma: a systematic review and meta-analysis of individual patient data from 12 randomized trials. Lancet 359:1011-1018,2002. Maher EA, Furnari FB, Bachoo RM, Rowitch DH, Louis DN, Cavenee WK, DePinho RA: Malignant glioma: genetics and biology of a grave matter. Genes Dev 15:1311-1333, 2001. Miki T, Smith CL, Long JE, Eva A, Fleming TP : Oncogene ect2 is related to regulators of small GTP-binding proteins. Nature 362(6419):462-465, 1993. Tatsumoto T, Xie X, Blumenthal R, Okamoto I, Miki T : Human ECT2 is an exchange factor for Rho GTPases, phosphorylated in G2/M phases, and involved in cytokinesis. J Cell Biol. 147(5):921-928, 1999. Horii Y, Beeler JF, Sakaguchi K, Tachibana M, Miki T: A novel oncogene, ost, encodes a guanine nucleotide exchange factor that potentially links Rho and Rac signaling pathways. EMBO J. 13(20):4776-4786,1994. Lorenzi MV, Castagnino P, Chen Q, Hori Y, Miki T : Distinct expression patterns and transforming properties of multiple isoforms of Ost, an exchange factor for RhoA and Cdc42. Oncogene 18(33):4742-4755,1999 Yamanaka R, Blumenthal R, Lorenzi MV, Tatsumoto T, Miki T : Ostip2, a novel oncoprotein that associates with the Rho exchange factor Ost. DNA Cell Biol. 20(7):383-390,2001
各癌種に対しては、治療標的遺伝子、マーカー遺伝子の選択は試みられている。しかしながら、HECT2,OSTに関しては、実際の腫瘍サンプルを用いた解析から、治療標的遺伝子、マーカー遺伝子であると述べた報告はない。さらに脳腫瘍は未だ治療法が確立されておらず、新たな診断、治療法に結びつくような新しい分子標的の発見等、腫瘍生物学的な解析が期待されている。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであって、脳腫瘍に対する新たな治療法、診断学の開発のために悪性脳腫瘍の指標となる脳腫瘍マーカーおよびその用途を提供することを目的とする。
上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、悪性度の高い神経膠腫において、HECT2,OSTのmRNAレベルおよびタンパク質レベルの発現の亢進がみられることに着目し、その後細胞生物学的解析によりHECT2,OSTの発現と悪性神経膠腫細胞の増殖能及び浸潤能との関連が示されたことにより、HECT2,OSTが神経膠腫の悪性化へ関与していることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、HECT2siRNAからなる神経膠腫細胞株U251の増殖能抑制剤である
また、HECT2siRNAからなる神経膠腫細胞株U251の浸潤能抑制剤である
本発明によれば、新規抗癌剤など創薬への応用が可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の「脳腫瘍」は、頭蓋内に発生するすべての腫瘍をいう。このような脳腫瘍の中でも、発生頻度の高い代表的なものが神経膠腫であり、これはさらに、星状細胞腫、神経膠芽腫等を含む。脳腫瘍には、この他、下垂体腺腫、神経鞘腫などがある。
本発明におけるHECT2,OSTはグアニンヌクレオチド交換因子である。グアニンヌクレオチド交換因子は、Rho,Rac−1,Cdc42などの低分子量GTP結合たんぱく質のレギュレーターであり細胞の増殖、分化、運動などのさまざまな機能を調節する。Hect2は癌遺伝子であり、細胞周期をコントロールし細胞質分裂を調節する。一方、Ostも癌遺伝子であり、脳での発現が高く、正常状態では軸索輸送に関与すると考えられている。
本発明で使用することができるHECT2,OSTの起源は特に限定されず、任意の生物に由来する任意の遺伝子を使用することができる。本発明は、任意の起源に由来するHECT2,OSTを包含する。例えば、哺乳動物から入手できるHECT2,OSTを使用してもよい。用語「哺乳動物」とは、哺乳類の任意の個体を意味し、大型動物(牛、羊、馬など)、運動動物(犬及び猫を含む)、及び霊長類(旧世界ザル、新世界ザル、類人猿、ヒトなどを含む)などを含む。例えば、ヒトHECT2,OSTが使用される。本発明で使用するHECT2,OSTは、例えばPCRなどの当業者に公知の技術を用いて哺乳動物培養細胞などから得たcDNAでもよい。
本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子は、脳腫瘍の悪性度を判定するために使用する脳腫瘍マーカー遺伝子であって、HECT2又はOSTを含み、前記遺伝子の発現量が高いほど、前記脳腫瘍の悪性度が高いと判定することを特徴とする。
また、本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子は、脳腫瘍患者の予後を予測するために使用する脳腫瘍マーカー遺伝子であって、HECT2又はOSTを含み、前記遺伝子の発現量に基づいて脳腫瘍患者の予後を予測することを特徴とする。
本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子を用いて脳腫瘍の判定において、HECT2又はOSTの発現量を測定する場合、そのmRNAを定量してもよく、そのタンパク質を定量してもよい。したがって、HECT2mRNA又はOSTmRNAは、本発明の脳腫瘍の遺伝子マーカーを定量するためのmRNAマーカーとすることができ、HECT2タンパク質又はOSTタンパク質は、本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子を定量するためのタンパク質マーカーとすることができる。
本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子を定量するための前記mRNAマーカーを定量する方法としては、細胞内の特定mRNA量を定量できる方法であれば、特に制限されず、例えば、前記mRNAマーカーのmRNAもしくはそのcDNAの塩基配列またはそれらの相補塩基配列の一部からなるオリゴヌクレオチドであって、前記mRNAマーカーのmRNAまたはcDNAに部位特異的に結合するオリゴヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いた方法があげられる。前記プライマーやプローブは、前記オリゴヌクレオチドが前記マーカーmRNAのmRNAまたはそのcDNAと部位特異的塩基対を形成するものであれば、前記mRNAを検出・定量するための様々な修飾がされたものであってよい。さらに、本発明のプローブを固定化させたDNAチップを作製することも可能である。DNAチップの作製方法は、当業者には公知である。DNAチップを用いることにより、本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現レベルを検出、測定することができる。
本発明の抗体は、前記のタンパク質マーカーを定量するための抗体であって、HECT2タンパク質又はOSTタンパク質を認識することを特徴とする。本発明の抗体はHECT2タンパク質又はOSTタンパク質に特異的に結合する性質を有することから、前記抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現したHECT2タンパク質又はOSTタンパク質を特異的に検出することができる。
抗体の製造方法は公知であり、本発明の抗体も常法に従って製造することができる。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製したHECT2タンパク質又はOSTタンパク質を用いて、あるいは常法に従ってこれらHECT2タンパク質又はOSTタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製したHECT2タンパク質又はOSTタンパク質またはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる。該抗体は、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよいし、ビオチン等により適当に修飾されていてもよい。それゆえ、該抗体には、標識物質によって標識化された抗体も含まれる。
本発明のキットは、前記のmRNAマーカーを定量するために使用するキットであって、少なくとも、前記mRNAのcDNAを定量可能なように増幅するために前記のプライマーと、検出のため前記増幅産物に対合させる前記のプローブとを含むことを特徴とする。
さらに、本発明のキットは、前記のタンパク質マーカーを定量するために使用するキットであって、少なくとも、前記の抗体及び/又はその標識化抗体を含むことを特徴とする。この診断キットは、抗体や標識化抗体を液相中に含むものであってもよく、あるいは抗体や標識化抗体を固相担体に結合したものであってもよい。さらにこの診断キットは、例えば標識化抗体の標識が酵素の場合にはその基質を含むものであってもよく、固相担体を含むものの場合には、固相への非結合分子を洗浄除去するための溶液を含むものであってもよい。このようなキットは、被検成分の種類に応じて各種のものが市販されており、この発明の診断キットも、この発明によって提供される抗体及び/又は標識化抗体を用いることを除き、公知公用のキットに用いられている各要素によって構成することができる。
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法は、下記の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする:(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドにおける、HECT2又はOSTを含む脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定する工程、(b)前記発現量が健常者のそれと比較して多い被験者を悪性脳腫瘍と診断する工程。
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法において、「被験者」は、例えばMRI検査等によって脳腫瘍の疑いがあると診察された患者であり、その「生体試料」とは患者脳からの切除組織あるいは血液等である。評価対象の生体試料は、遺伝子マーカーを含む任意の試料であり得る。患者脳からの切除組織あるいは血液等から常法に従って、生体試料からRNAを調製することができる。また、患者脳からの切除組織あるいは血液等から常法に従って、該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを調製することができる。例えば、被験者の細胞から単離したmRNAを鋳型として、cDNAを合成し、PCR増幅する。その際に、標識dNTPを取り込ませて標識cDNAとすることができる。
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法は、前記生体試料における脳腫瘍マーカー遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。本発明の診断方法により、脳腫瘍の悪性度の判定、或いは、脳腫瘍患者の生存期間の予後予測を行うことが可能である。健常者の生体試料におけるHECT2又はOSTを含む脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を基準とし、被験者の生体試料における前記脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量が前記基準より高いと悪性脳腫瘍とする。具体的には、本発明の検出方法は、RT−PCR法、ノーザンブロット法、DNAマイクロアレイ解析法、in situ ハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法により前記脳腫瘍の遺伝子マーカーの発現量を測定する。このとき、本発明のプローブやプライマーを適宜用いることができる。
さらに、本発明の悪性脳腫瘍の診断方法は、下記の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする:(a)被験者の生体試料から調整されるタンパク質における、HECT2タンパク質又はOSTタンパク質を含む脳腫瘍のタンパク質マーカーの発現量を測定する工程、(b)前記発現量が健常者のそれと比較して多い被験者を悪性脳腫瘍と診断する工程。
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法は、前記生体試料における脳腫瘍のタンパク質マーカーの発現レベルを検出し、測定することによって実施される。本発明の診断方法により、脳腫瘍の悪性度の判定、或いは、脳腫瘍患者の生存期間の予後予測を行うことが可能である。健常者の生体試料におけるHECT2タンパク質又はOSTタンパク質を含む脳腫瘍のタンパク質マーカーの発現量を基準とし、被験者の生体試料における前記脳腫瘍のタンパク質マーカーの発現量が前記基準より高いと悪性脳腫瘍とする。具体的には、公知の方法に基づいて、患者の組織の一部を採取し、そこから常法に従ってタンパク質を調製する。その後、例えば、ウェスタンブロット法、ELISA法、蛍光抗体法など公知の検出方法に基づいて、脳腫瘍マーカーの発現量を検出することができる。このとき、後述する抗体を適宜用いることができる。
本発明のHECT2又はOSTを含む脳腫瘍マーカー遺伝子又はHECT2タンパク質又はOSTタンパク質を含む脳腫瘍のタンパク質マーカーの発現を抑制する物質のスクリーニング方法は、以下の工程(a)、(b)及び(c)を含むことを特徴とする:(a)被験物質と、前記脳腫瘍マーカーを発現している細胞とを接触させる工程、(b)被験物質を接触させた細胞における前記脳腫瘍マーカーの発現量を測定し、被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する脳腫瘍マーカーの発現量と比較する工程、(c)上記(b)の比較結果に基づいて、脳腫瘍マーカーの発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
本発明のHECT2又はOSTを含む脳腫瘍マーカー遺伝子又はHECT2タンパク質又はOSTタンパク質を含む脳腫瘍のタンパク質マーカーの発現を抑制する物質のスクリーニング方法は、前記脳腫瘍マーカー遺伝子又はタンパク質マーカーの発現量を低下させる物質を探索することによって、悪性脳腫瘍を抑制する候補物質を提供するものである。
本発明のスクリーニングに用いられる細胞としては、HECT2又はOSTを含む脳腫瘍マーカー遺伝子又はHECT2タンパク質又はOSTタンパク質を含む脳腫瘍のタンパク質マーカーを発現する培養細胞全般を挙げることができる。培養細胞においてこれら脳腫瘍マーカーが発現しているか否かは、公知のウェスタンブロット法などにて検出することにより、容易に確認することができる。培養細胞としては、具体的には、例えば癌患者より単離、調製した生体組織や血球由来の細胞、または本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれかを導入した細胞等を挙げることができる。
また、本発明のスクリーニング方法に際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つ本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子又はタンパク質マーカーを発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
以下に本発明の実施例によって、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例1〜3において使用される細胞培養、実験方法等は次の通りである。
(細胞培養)
神経膠腫細胞株(U251、T98G、ON12、NP3、GI−1)を、10%非働化ウシ胎児血清を添加したイーグル最小必須培地(MEM)(Nissui Pharmacoceutical Inc.,Tokyo, Japan)を用いて、37℃、5%COインキュベーターで培養した。
(対象症例)
新潟大学脳研究所脳神経外科にて手術摘出された神経膠腫47例(WHO グレードII:9例、III:11例、IV:27例、平均年齢44歳)を対象とした(表1)。高悪性度のものは術後、放射線治療(腫瘍局所40Gy、全脳照射20Gy)並びにニトロソウレアを中心とした化学療法を施行した。生存期間は診断確定日より患者の死亡日もしくは最終受診日とした。組織診断はWHO脳腫瘍組織分類(Kleihues P, Louis DN, Scheithauer BW, Rorke LB, Reifenberger G, Burger PC, Cavenee WK: The WHO classification of tumors of the nervous system. J Neuropathol Exp Neurol 61:215-225, 2002)に基づいて行った。なお、本明細書に記載の実験は、新潟大学倫理委員会の規則に則り、全ての対象者からインフォームドコンセントを得ている。
(免疫組織化学染色)
5ミクロン切片を作成し、脱パラフィン化の後に10mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)中にて121℃、10分間加温した。0.3%Hにて内因性ペルオキシダーゼ活性の阻害を行った。10%ヤギ血清にてブロッキング後、抗HECT2ウサギポリクローナル抗体,抗OSTウサギポリクローナル抗体(1:50;Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)と4℃で12時間反応させた。洗浄後、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼシステム(Vectasin elite ABC kit, Vector Labs, Burlingame, CA)を反応させ、0.01%3,3−ジアミノベンジジン(DAB)(Sigma)とPBS0.01%過酸化水素水にて発色させた。
(RNA分離と定量PCR)
試料47例全例でHECT2mRNA,OSTmRNAの発現を検討した。RNAは凍結組織よりIsogen(Nippongene, Toyama, Japan)を用いて抽出した。第1鎖cDNAは試料から得られたmRNAから、オリゴ(dT)プライマー、逆転写酵素(Super Script II RNase H, Life Technologies, Grand Island, NY)を用いて作成した。定量PCRはライトサイクラー(Idaho Technology, Salt Lake City, UT)によるリアルタイムPCRで行った。PCR試薬の組成は1×ライトサイクラーDNAマスターSYBRグリーンI(Rosche Moleculer Biochemicals, Mannheim, Germany)、各プライマー0.5μM、3mM MgCl、2μl cDNAテンプレートにて行った。PCRは95℃10分間で変性後、95℃15分、55℃5分、72℃10分の各サイクルを40サイクル行った。反応産物はPCRの融解サイクルを経て各サイクルで蛍光強度を測定した。標準化曲線はHECT2プラスミドDNA,OST プラスミドDNA(Dr.Toru MIKI,NIHから供与)から得られたHECT2cDNA,OSTcDNAの一連の段階的10倍希釈溶液により作成した。PCR増幅のためのプライマーの塩基配列は以下の通りである。HECT2センス鎖:5'-CAAATGGATGCCCGAGCTG-3';HECT2アンチセンス鎖:5'-GGTGGAAATGGTGACACGTCTG-3';OSTセンス鎖:5'-GCCTCACAACCTGTGGACAA-3';OSTアンチセンス鎖:5'-ATCTTGGTTGAGGATGGATTCG-3'。
(RNAサイレンシングによる細胞増殖アッセイ)
ヒトHECT2,OSTに対する特異的なsiRNAはAMBION(Tokyo,japan)より購入した。HECT2(AMBION,#26070),OST(AMBION,#32098),ARK5(AMBION,#964),非サイレンシングコントロールおよびMAPK1(QIAGEN)を含めたこれらトランスフェクションにはRNAi ヒト/マウスコントロールキット (Qiagen, Tokyo)を用い、プロトコールに従って実験を行った。細胞株を96ウェルプレート(100μl/well)に培養し80%コンフレントに達した時点で培地を交換(75μl/well)し、SiRNA100nM/25μlを混和、トランスフェクションさせた。48時間の培養後、テトラカラーワン(Seikagaku CO.,Tokyo)を用いて発色し、MTTアッセイにより生存度を評価した。これらの値は非サイレンシングsiRNAによるネガティブコントロールと比較検討した。全て増殖試験は3回以上行い、結果は平均±標準偏差で示した。
(マトリゲルによる細胞浸潤アッセイ)
細胞浸潤アッセイにはマトリゲル(Matrigel)(Becton-Dickinson, Tokyo)を購入し、プロトコールに従って実験を行った。神経膠腫細胞株(U251、T98G)は前述のごとくコントロールを含めてsiRNAトランスフェクションを行い24時間後、細胞解離溶液 (Sigma)に浮遊させ、洗浄後使用した。MEM10%FBSを満たしたウェル(24ウェルプレート)にマトリゲルチャンバー(底面がマトリゲルで被膜された8μm多孔膜よりなる)を静置して充分水和させた後、チャンバーに細胞を播き、24時間培養した。マトリゲルチャンバー内の細胞を払拭除去し、浸潤して多孔膜裏面に浸潤付着した細胞をギムザ染色液にて染色し、光顕200倍で10視野の細胞数を評価した。結果はコントロールとの比率で表し、平均±標準偏差で示した。
(統計学的解析)
神経膠腫の各グループ間におけるHECT2,OSTの発現はMann−WhitneyのU検定にて評価し、p<0.05を統計学的に有意と判定した。生存曲線はKaplan−Meier法にて表現し、2群間の検定にはLog−rank検定で評価した。
(神経膠腫組織におけるHECT2,OST発現の免疫組織化学的検討)
神経膠腫組織におけるHECT2,OSTの局在を調べる為に免疫組織染色を行った。図1に示すように、HECT2(A)及び OST(B)のいずれにおいてもHECT2,OSTは全ての細胞質あるいは核で症例によって様々な程度に染色された。次いで、任意の3視野での各タンパク質の発現強度を0−3、および発現面積を0,0.25,0.5,0.75,1.0と表示し、それらの積の平均値を求め発現レベルとした。発現レベルからポジティブとネガティブの2群に分け、各群の生存曲線を描き、Logrank 検定にて2群間の有意差を検討した。染色強度の高いものほど生存期間が短く、2群間に有意差を認めた(A:HECT2,P=0.028, B:OST,P<0.05 Logrank検定 図2)。
(神経膠腫におけるHECT2遺伝子,OST遺伝子発現と予後の相関)
神経膠腫組織中のHECT2mRNA,OSTmRNAの発現を定量リアルタイムPCRにて測定した。HECT2mRNA,OSTmRNAの発現によって症例を 高発現群、低発現群に分けて生存曲線で比較したところ、高発現群において生存期間が短いことが認められた(A:HECT2,P<0.001, B:OST,P=0.015 Logrank検定 図3)。
(HECT2,OSTによる神経膠腫細胞株(U251)の増殖能と浸潤能の抑制)
HECT2,OSTの過剰発現はこれまでの検討から神経膠腫の生物学的悪性度を反映していたと考えられる。そこで内因性のHECT2,OSTを抑制することにより神経膠腫細胞株の増殖能や浸潤能を抑制することができるかどうか確かめるため、HECT2,OSTに特異的なsiRNAを導入し、mRNAを下方制御することでHECT2タンパク質,OSTタンパク質の発現を押さえて細胞増殖能と浸潤能について検討した。HECT2(E0531,26070),OST(M477)に特異的なsiRNAを導入し、mRNAが下方制御されることが確認された(P<0.01,図4A)。siRNA導入によるU251細胞株の細胞増殖試験ではHECT2(E053)siRNA,OST(M477)siRNAを導入することで増殖抑制効果が見られた(P<0.01,図4B)。
また、U251において抗−HECT2siRNA,抗−OSTsiRNAを導入し、マトリゲルマトリックスに対する細胞浸潤能を検討したところ、コントロールsiRNAでは全く影響がなかったが、HECT2(26070,E053)siRNA,OST(M477)siRNA導入では著しい浸潤抑制効果が認められた(P<0.01,図4C)。
HECT2(A),OST(B)の免疫組織化学染色の結果を示す顕微鏡写真である(拡大率×200)。 免疫組織化学染色によるHECT2タンパク質(A),OSTタンパク質(B)の発現強度と生存期間の相関を示すグラフである。 HECT2mRNA(A),OSTmRNA(B)発現量と生命予後の相関を示す図である。 (A)抗−HECT2siRNA,抗−OSTsiRNAによるU251神経膠腫細胞株におけるHECT2mRNA,OSTmRNAの発現抑制を示す図である。
(B)HECT2,OST遺伝子サイレンシング下における細胞増殖能試験の結果を示す図である。
(C)HECT2,OST遺伝子サイレンシング下におけるマトリゲルマトリックスに対する細胞湿潤能試験の結果を示す図である。

Claims (2)

  1. HECT2siRNAからなる神経膠腫細胞株U251の増殖能抑制剤。
  2. HECT2siRNAからなる神経膠腫細胞株U251の浸潤能抑制剤。
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