JP4473709B2 - 信号推定方法、信号推定装置、信号推定プログラム及びその記録媒体 - Google Patents
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1入力2出力伝達系11の入力端12(例えばスピーカ、発話者などの音源が設けられている)と、出力端に設けられた2個のセンサ13,14との間の各伝達関数をh1(z),h2(z)とする。これらの伝達関数は共通な零点を持たないと仮定する。入力端12において時刻nの信号s(n)がこの伝達系11に入力され、この信号は2つの出力端に設けられたセンサ13及び14で検出される。センサ13及び14の各出力信号x1(n),x2(n)は,まず、伝達関数推定部10において、フィルタ15,16へ供給される。これらフィルタ15,16で処理された出力信号は減算器17で互いに減算される。この減算器17の出力信号e(n)の二乗平均値を最小化するようにフィルタ15,16の各フィルタ係数がフィルタ計算部19で計算され、これら計算されたフィルタ係数がフィルタ15,16に設定される。これら計算されるフィルタ15,16の伝達関数をh^2(z,i),h^1(z,i)とする。ここでiはフィルタ次数を表す。
e(n)=x1(n)h^2(z,i)−x2(n)h^1(z,i)
=s(n)h1(z)h^2(z,i)−s(n)h2(z)h^1(z,i)
=s(n){h1(z)h^2(z,i)−h2(z)h^1(z,i)} (1)
ここで、伝達関数h1(z),h2(z)がj次でモデル化できるとすると、i=jかつ全てのnについてe(n)が零となれば、
h^1(z,i)=αh1(z),h^2(z,i)=αh2(z) (2)
が得られる。ここで、αは任意の定数である。すなわち、伝達関数h1(z),h2(z)は定数倍の違いを除いて正確に推定される。
h^1(z,i)g1(z)+h^2(z,i) g2(z)=1 (3)
(2)式より、
αh1(z)g1(z)+αh2(z)g2(z)=1
h1(z)g1(z)+h2(z)g2(z)=1/α
このようにして求めた逆フィルタ伝達関数g1(z),g2(z)をフィルタ21,22にセットする。センサ13,14の出力信号x1(n),x2(n)をフィルタ21,22でそれぞれフィルタ処理し、これらフィルタ21,22の出力を加算器23にて加算する。その結果、入力信号s(n)が定数倍の違いを除いて正確に推定される。
以上述べた従来技術では、伝達関数を模擬するフィルタ次数の決定が非常に重要であるが、伝達関数の次数は一般に未知であるため、以下の方法でフィルタ次数を決定している。様々な次数を用いて上記の処理を動作させ、残響除去音声信号を用いて伝達関数の推定精度を表わすコスト関数を計算する。そして、このコスト関数を最小化する次数を最適な次数として採用する。すなわち、この方法では、考えられる全ての次数について、上記の処理を行う必要がある。つまり図2に示すように、まず伝達関数を推定し(ステップS1)、これら推定伝達関数h^1(z,i),h^2(z,i)を用いて、逆フィルタ伝達関数g1(z),g2(z)をそれぞれ計算し(ステップS2)、これら逆フィルタ伝達関数g1(z),g2(z)を用いて先に述べたようにセンサ出力信号x1(n),x2(n)を処理して、入力信号s(n)を仮推定し(ステップS3)、その仮推定した入力信号を用いて伝達関数の推定精度を表わすコスト関数を計算し(ステップS4)、考えられる全ての次数についてコスト関数の計算が終了していなければ次数を更新してステップS1に戻り(ステップS5)、全ての次数についてコスト関数の計算が終了したら、最小のコスト関数が得られた伝達関数の次数を決定し(ステップS6)、その後はその次数の伝達関数を用いて入力信号の推定を行う(ステップS7)。
h^1(z,i)=c(z)h1(z),h^2(z,i)=c(z)h2(z) (4)
すなわち、共通項c(z)が掛かった推定伝達関数が求まる。この推定伝達関数の値を用いて、上記と同様に逆フィルタを求めると以下のようになる。
h^1(z,i)g1(z)+h^2(z,i)g2(z)=1 (5)
(4)式より、
c(z)h1(z)g1(z)+c(z)h2(z)g2(z)=1 (6)
h1(z)g1(z)+h2(z)g2(z)=1/c(z)
この結果から、フィルタ次数として大きすぎる値を用いて入力信号の推定を行った場合、推定された入力信号は共通項c(z)の影響を受け、正しい入力信号が得られない。
M.Gurelli and C.Nikias,"EVAM:An eigenvector-based algorithm for multichannel blind deconvolution of input colored signals,"IEEE Trans.Signal Processing,vol.43,no.1,134-149(1995). M.Miyoshi and Y.Kaneda,"Inverse filtering of room acoustics,"IEEE Trans.Acoustics,Speech,and Signal Proc.,vol.36,145-152(1988). K.Furuya and Y.Kaneda,"Two-channel blind deconvolution of nonminimum phase FIR systems,"IEICE Trans.Fundamentals,vol.E80-A,no.5,804-808 (1997)
従来と同様に、1入力2出力伝達系の出力端に備える第1及び第2のセンサの出力信号から伝達関数を推定し、これらから第1及び第2の前記自己相関行列から、共通項が畳み込まれた2つの伝達関数の推定値を求める過程と、前記2つの逆フィルタ伝達関数を計算し、これらの第1及び第2の逆フィルタ伝達関数で第1及び第2のセンサ出力信号をそれぞれ処理し、更にこれらフィルタ処理結果を加算するが、この発明では特に前記2つの伝達関数の推定値から共通項を求め、この共通項により前記加算信号をフィルタ処理する。
伝達関数推定部40ではセンサ13,14の出力信号x1(n),x2(n)から入力端12とセンサ13,14間の各伝達関数が推定される。この伝達関数の推定は図1中に示した伝達関数推定部10の方法によってもよいし、また前述したようにセンサ出力信号x1(n),x2(n)から自己相関行列を求め、この自己相関行列から各伝達関数を推定してもよいし、他の方法によって推定してもよい。
一方伝達関数推定部40で推定された伝達関数値h^1(z),h^2(z)から共通項計算部36で共通項が計算され、この共通項が後段フィルタ34に設定される。加算器33の出力信号が後段フィルタ34により処理されて、共通項の影響が除去された信号、つまり推定入力信号s^(n)が出力される。
このようにして共通項を求めるには伝達関数行列Hと、シフト行列Sと積行列Qとを用いるが、これらの関係について説明する。
この発明では伝達関数の推定値について、正確な次数を求める必要がないため、(4)式と異なり引数iを省略して表す。まず、次の関係式を考える。
h^1(z)w1(z)+h^2(z)w2(z)=z+1h^1(z)
c(z)h1(z)w1(z)+c(z)h2(z)w2(z)=z+1c(z)h1(z) (7)
ここで、z+1h^1(z)は、h^1(z)を1離散時刻進めたものを表わす。また
hi(z)=hi,0 +hi,1z-1+…+hi,jz-j,i=1,2
c(z)=c0+c1z-1+…+cmz-m
このような関係を満たすフィルタ係数w1(z),w2(z)を考える。これらw1(z),w2(z)は、2つのセンサ出力信号x1(n),x2(n)から、1時刻先の1つのセンサ出力x1(n+1)を予測するフィルタのフィルタ係数に相当する。(7)式を行列表現すると、次のようになる。
CHw=SCh1 (8)
w=[w1,0 ,w1,1 ,…,w1,k ,w2,0 ,w2,1 ,…,w2,k ]T
[・]Tは転置を表わす。
ここで、上記に示す通り、ベクトルh1が行列Hの第1列目に一致することを利用して、ベクトルh1を行列Hで置き換え、ベクトルwを行列Qで置き換え、つまり第1列目がベクトルwに一致する行列Qを生成する。
CHQ=SCH (9)
この式(9)をQについて解くと、次のように整理される(例えば文献「児玉,須田,システム制御のためのマトリクス理論,コロナ社,1978年,p.332,p339」参照)。
Q=(HTCTCH)-1HTCTSCH
=(CH)+SCH
=HT(HHT)-1(CTC)-1CTSCH (10)
ここで、(A)+は行列AのMoore-Penrose一般逆行列を表わす。
fc(Q)=fc(HT(HHT)-1(CTC)-1CTSCH)
=fc(HHT(HHT)-1(CTC)-1CTSC)
=fc((CTC)-1CTSC)) (11)
ここで、Q′=(CTC)-1CTSCと置く。行列の形に着目すると、以下に示す通り、CTCはToeplitz型の相関行列、CTSCはCTCを一行上にシフトさせた形となっている。
fc(Q)=fc(Q′)
=1−(d1z-1+…+dm’z-m’) (12)
すなわち、行列Qの特性多項式は、共通項c(z)の逆特性を表わす多項式に一致する。
Q=(H^TH^)-1H^TSH^ (14)
すなわち、伝達関数の推定値を用いて構成される行列H^とシフト行列Sを用いて、積行列Qが計算できる。こうして得られる積行列Qの特性多項式は、共通項c(z)の逆特性を表わす多項式に一致する。
共通項計算部36の具体的機能構成を図4に、その処理手順の例を図5に示す。伝達関数推定部40からの伝達関数推定値h^1(z),h^2(z)は伝達関数行列生成部41で伝達関数行列H^が構成され(ステップS11)、その伝達関数行列H^の転置行列H^Tが転置部42で構成される(ステップS12)。積行列計算部43に伝達関数行列H^とその転置行列H^Tと、シフト行列Sが入力されて(14)式の行列計算が行われて積行列Qが生成される(ステップS13)。つまり、H^の相関行列H^TH^の逆行列(H^TH^)−1と、相関行列H^TH^を1行上にシフトした行列H^TSH^との積が積行列計算部43で計算される。積行列Qは特性多項式計算部44で特性多項式が計算される(ステップS14)。この特性多項式の逆特性が逆特性計算部45で計算されて、その結果として共通項c(z)が得られる(ステップS15)。
共通項計算の方法として、上に述べた方法の他にも、2つの多項式の最大公約多項式を求めるQiuの方法を利用して求めてもよい(例えば文献W.Qiu,Y.Hua,and K.Abed-Meraim,“A subspace method for the computation of the GCD of polynomials,”Automatica, vol.33,no.4,741-743(1997)を参照)。この場合、共通項計算の方法は次のようにまとめられる。
[UrU0]は固有ベクトルから作られた行列であり、その零空間固有ベクトルU0は次式で表せる。
U0=[ur+1,...,u2j′+1]
更に式(16)を用いて行列Rを計算する。
従来技術では、図2を参照して説明したように様々な次数を用いて残響除去処理を行い、伝達関数の推定精度を表わすコスト関数を計算する。そして、このコスト関数を最小化する次数を最適な次数として採用する。これに対して、この実施形態では、一度残響除去処理を行えばよく、アルゴリズム構成が非常に簡単になる。
図6を参照してこの発明方法の実施形態を説明する。センサ13,14よりの第1、第2出力信号x1(n),x2(n)から第1、第2伝達関数値を推定し(ステップS31)、これら第1、第2伝達関数推定値h^1(z),h^2(z)から、第1、第2逆フィルタ係数をそれぞれ計算する(ステップS32)。これら第1、第2逆フィルタ係数を用いて出力信号x1(n),x2(n)に対しそれぞれフィルタ処理し(ステップS33)、これら処理結果を加算して残響信号や回折波信号などを除去した信号を得る(ステップS34)、一方伝達関数推定値h^1(z),h^2(z)を用いてこれら関数に共通な共通項を計算し(ステップS35)、この共通項を用いてステップS34で得られた加算信号中から共通項の成分を除去するフィルタ処理を行って入力信号の推定値とする(ステップS36)。
Claims (4)
- 1入力2出力伝達系の出力端に備える第1及び第2のセンサの出力信号を第1、第2のフィルタでフィルタ処理した結果の差を最小化するように第1及び第2のフィルタ係数を計算し、前記計算された第1、第2のフィルタ係数を入力端と両出力端間の第1及び第2の伝達関数推定値とする過程、または、前記第1、第2のセンサの出力信号から自己相関行列を求め、自己相関行列の最小固有値に対応する固有ベクトルを求め、前記固有ベクトルを入力端と両出力端間の第1及び第2の伝達関数推定値とする過程のいずれかと、
前記第1及び第2の伝達関数推定値を用いて第1及び第2の逆フィルタ係数を計算する過程と、
これら第1及び第2の逆フィルタ係数により前記第1及び第2のセンサ出力信号をそれぞれフィルタ処理する過程と、
これらフィルタ処理された信号を加算する過程と、
前記第1及び第2の伝達関数推定値から共通項を計算する過程と、
この共通項により前記加算した信号をフィルタ処理して入力信号を推定する過程を有し、
前記共通項を計算する過程は、前記第1及び第2の伝達関数推定値を用いて伝達関数行列H^を構成し、
その伝達関数行列H^の転置行列H^Tを求め、
伝達関数行列H^の相関行列H^TH^の逆行列と、伝達関数行列H^の相関行列を1行上にシフトさせた行列H^TSH^との積を計算して積行列Qを生成し、
その積行列Qの特性多項式を計算し、
その特性多項式の逆特性を計算して共通項を求める過程である
ことを特徴とする信号推定方法。 - 1入力2出力伝達系の出力端に備える第1及び第2のセンサ出力信号が入力され、これら両出力信号を第1及び第2のフィルタでフィルタ処理した結果の差を最小化するように第1及び第2のフィルタ係数を計算し、前記計算された第1及び第2のフィルタ係数を入力端と両出力端間の第1及び第2の伝達関数推定値とする、または、前記第1及び第2のセンサの出力信号から自己相関行列を求め、自己相関行列の最小固有値に対応する固有ベクトルを求め、前記固有ベクトルを入力端と両出力端間の第1及び第2の伝達関数推定値とする伝達関数推定部と、
前記第1及び第2の伝達関数推定値が入力され、第1及び第2の逆フィルタ係数を計算する逆フィルタ計算部と、
第1及び第2の逆フィルタ係数がそれぞれ設定され、第1及び第2のセンサ出力信号をそれぞれ入力する第1及び第2前段フィルタと、
第1及び第2の前段フィルタの出力信号を加算する加算器と、
前記第1及び第2の伝達関数推定値が入力され、これら伝達関数の共通項を計算する共通項計算部と、
前記共通項が設定され、前記加算器の出力信号が入力され、その加算出力信号から共通項成分を除去して推定入力信号を出力する後段フィルタと
を具備し、
前記共通項計算部は、前記第1及び第2の伝達関数推定値が入力され、伝達関数行列H^を構成する伝達関数行列構成部と、
伝達関数行列のH^が入力され、その転置行列H^Tを構成する転置部と、
伝達関数行列と、その転置行列と、行列を1行上にシフトさせる行列Sとが入力され、(H^TH^)−1H^TSH^=Qを演算する積行列演算部と、
積行列Qが入力されその特性多項式を計算し、その特性多項式の逆特性を計算して共通項を求める特性多項式計算部とを備えることを特徴とする信号推定装置。 - 請求項1記載の入力信号推定方法の各過程をコンピュータに実行させるための信号推定プログラム。
- 請求項3記載の信号推定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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