JP6399864B2 - 制御器設計装置、制御器設計方法及びプログラム - Google Patents

制御器設計装置、制御器設計方法及びプログラム Download PDF

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Description

本発明は、音響システム等の制御システムを構築する技術に関し、特に、制御対象となるシステムの制御点に所望の信号を提示するための制御器を設計する制御器設計装置、制御器設計方法及びプログラムに関する。
従来、音響システム等の制御システムを構築するために、逆システムを用いることが知られている。逆システムとは、制御対象となるシステムの逆の特性を有するシステムである。所定の目的に応じた逆システムを適切に設計することにより、所望の制御システムを構築することができる。
〔逆システム〕
図5及び図6は、逆システムを説明する概念図である。図5及び図6において、システム100は、信号Xinを入力して信号Xoutを出力し、システム101は、信号Yinを入力して信号Youtを出力するものとし、システム101を制御対象となるシステム(制御対象システム)Bとする。
図5を参照して、制御対象システムBであるシステム101は、システム100により出力される信号Xoutを信号Yinとして入力する。このようなシステム100,101において、システム101により出力される信号Youtを、システム100に入力する信号Xinに一致または近似させる場合、システム100は、制御対象システムBであるシステム101の逆システムAとなる。
また、図6を参照して、システム100は、制御対象システムBであるシステム101により出力される信号Youtを信号Xinとして入力する。このようなシステム100,101において、システム100により出力される信号Xoutを、システム101に入力する信号Yinに一致または近似させる場合も、システム100は、制御対象システムBであるシステム101の逆システムAとなる。
図7は、多入力多出力の逆システムを説明する概念図である。図7は、図5に示した1入力1出力のシステム100,101を多入力多出力のシステムに拡張したものである。システム102は、信号Xin1,Xin2,・・・,XinNを入力して信号Xout1,Xout2,・・・,XoutMを出力し、システム103は、信号Yin1,Yin2,・・・,YinMを入力して信号Yout1,Yout2,・・・,YoutNを出力するものとし、システム103を制御対象システムBとする。
図7に示すように、制御対象システムBであるシステム103は、システム102により出力される信号Xout1,Xout2,・・・,XoutMを信号Yin1,Yin2,・・・,YinMとしてそれぞれ入力する。このようなシステム102,103において、システム103により出力される信号Yout1,Yout2,・・・,YoutNを、システム102に入力する信号Xin1,Xin2,・・・,XinNに一致または近似させる場合、システム102は、制御対象システムBであるシステム103の逆システムAとなる。
図5において、制御対象システムBであるシステム101により出力される信号Youtを、逆システムAであるシステム100に入力される信号Xinに一致させることが、逆システムAを設計する目的となる。この場合の出力を観察する地点を制御点という。図5において、制御対象システムBであるシステム101により出力される信号Youtを観察する地点が制御点となる。同様に、図7では、制御対象システムBであるシステム103により出力される信号Yout1,Yout2,・・・,YoutNを観察する地点が制御点となる。ここで、図5に示した制御対象システムBであるシステム101の入力点、すなわち制御点へ信号Yinを提示する地点を提示点とする。図7に示した制御対象システムBであるシステム103の各入力点、すなわち各制御点へ信号Yin1,Yin2,・・・,YinMを提示する地点を提示点とする。
〔音響システム〕
次に、音響システムの例を挙げて、制御対象システム及び逆システムについて説明する。音響システムでは、音場再現または室内残響除去等の処理のために、逆システムが用いられる。制御対象システムは、音場再現が行われる音場または残響が除去される室内の音場である。
図8は、音響システムにおいて、聴取音場を制御対象システムとした場合の制御対象システム及び逆システムを説明する概念図であり、図7に示した多入力多出力のシステム102,103に対応している。図8に示すように、音場再現の処理を行うための制御システムを構築する場合には、聴取音場が制御対象システムBとなる。制御対象システムBであるシステム103は聴取音場であり、5台のスピーカ104−1〜104−5及び2本のマイクロホン105−1,105−2が配置されている。制御したい聴取位置(マイクロホン105−1,105−2の位置)が制御点となる。
聴取音場内に配置されたスピーカ104−1〜104−5から再生される音響信号により制御が行われるとすると、これらのスピーカ104−1〜104−5へ入力される音響信号が制御対象システムBへの入力信号となる。
音場再現では、スピーカ104−1〜104−5を二次音源といい、制御対象システムBであるシステム103は、各二次音源から制御点への音響伝搬を示す指標である伝達関数によって近似的にモデル化される。この場合、制御対象システムBは、制御点×二次音源の伝達関数のマトリクス(伝達関数行列)として表現される。図8の例では、制御点の数(マイクロホン105−1,105−2の数)は2であり、二次音源であるスピーカ104−1〜104−5の数は5であるから、制御対象システムBは、2×5=10の要素からなる行数2及び列数5の伝達関数行列として表現される。
〔制御器〕
これらの制御点に対して所望の音響信号を提示する場合、逆システムAであるシステム102を適切に設計した後に、逆システムAに所望の音響信号を入力すればよい。図9は、音響システムにおいて、入力信号に所望の音響特性を付与する制御器Dを説明する概念図である。制御器Dは、制御点にて所望の音響特性を有する音響信号が観察されるように、音響信号を制御対象システムBへ出力する。図8に示した逆システムAであるシステム102に加え、制御点であるマイクロホン105−1,105−2に対して所望の音響信号を提示するように、入力信号に所望の音響特性を付与するシステムCであるシステム110を想定する。つまり、制御器Dであるシステム111は、システムC及び逆システムAを備えて構成される。
図10は、音響システムにおいて、聴取音場を制御対象システムとした場合の逆システムの伝達関数行列を周波数領域で計算する例を説明する概念図である。説明を簡単化するため、二次音源の数及び制御点の数を共に2とする。制御対象システムBであるシステム109は聴取音場であり、2台のスピーカ104−1,104−2及び2本のマイクロホン105−1,105−2が配置されている。制御したい聴取位置(マイクロホン105−1,105−2の位置)が制御点となる。制御器Dであるシステム108は、入力信号uに所望の音響特性を付与するシステムCであるシステム106、及び逆システムAであるシステム107を備えて構成される。
図10において、制御器Dであるシステム107に入力される信号をu、入力信号uに付与される所望の音響特性の伝達関数をxi、逆システムAであるシステム107を表す伝達関数をhij、制御対象システムBであるシステム109において、j番目の二次音源であるスピーカ104−jからi番目の制御点であるマイクロホン105−iまでの間の伝達関数をgij、制御点にて観察される音響信号をyiする。i=1,2、j=1,2である。ここで、システムCであるシステム106の伝達関数xiは、制御点にて観察される音響信号にて実現したい所望の音響特性を示す。
逆システムAの伝達関数行列を求める逆システム設計装置は、まず、j番目の二次音源であるスピーカ104−jからi番目の制御点であるマイクロホン105−iまでの間の伝達関数gij(ω)を求める。具体的には、逆システム設計装置は、インパルス応答を測定し、離散フーリエ変換等により、インパルス応答を周波数領域のスペクトルに変換することで、周波数領域の伝達関数gij(ω)を求める。
制御器Dの入力信号uから制御点にて観察される音響信号yiまでの関係は、離散周波数ビン毎に、次式で表される。
Figure 0006399864
ここで、ωkは離散周波数ビンを示し、周波数領域の表現であることを明示するために記述される。
逆システム設計装置は、次式に示すように、観察される音響信号yiと、入力信号uに所望の音響特性の伝達関数xiを付与した信号とを一致させることを目的として、処理を行う。
Figure 0006399864
また、各行列の要素は複素数である。逆システム設計装置は、次式に示すように、伝達関数gij(ωk)を要素とする制御対象システムBの伝達関数行列を用いて、逆行列計算により、伝達関数hij(ωk)を要素とする逆システムAの伝達関数行列を求める。
Figure 0006399864
逆システム設計装置は、離散周波数ビンωk毎に、前記式(3)の計算を行う。そして、逆システム設計装置は、次式に示すように、離散フーリエ逆変換等により、逆システムAの伝達関数行列を周波数領域から時間領域に戻す。
Figure 0006399864
ここで、kは、時間領域の表現であることを明示するために記述される。
このように、逆システム設計装置により逆システムAの伝達関数行列が求められ、逆システムAは、FIRまたはIIRフィルタとして実装される。
前述のとおり、インパルス応答が周波数領域のスペクトルに変換された際の表現は、複素スペクトルとなる。したがって、周波数領域において逆システムAを設計する場合、複素スペクトルの線形混合過程(制御点において、複数の複素スペクトルの音響信号が線形に混合(合成)される過程)を仮定し、離散周波数ビン毎に複素行列の逆行列を計算することが多い。これは、逆システムAが、制御対象システムBの伝達関数の位相及び振幅の両方を考慮し補償する厳密な設計を目指すものだからである。つまり、逆システムAは、位相及び振幅で表される複素スペクトルの線形混合過程を仮定することで、設計される。
しかしながら、制御対象システムBの多くは、様々な要因から、前述した仮定(複素スペクトルの線形混合過程)が成立しないことが多い。例えば、図10に示した制御対象システムBにおいて、二次音源であるスピーカ104−1,104−2または制御点であるマイクロホン105−1,105−2の向きまたは位置がわずかにずれた場合であっても、制御対象システムBの伝達関数gijが変化してしまう。
図11は、音響システムにおいて、図10に示したマイクロホン105−1,105−2の代わりに、制御点を聴取者の耳112−1,112−2とした場合の例を説明する概念図である。この制御対象システムBであるシステム109では、制御点である耳112−1,112−2の位置にて音響信号yiが観察され、制御対象システムBの伝達関数gijとして聴取者の頭部伝達関数gijが用いられる。
図11に示す制御対象システムBにおける音場の再生を、バイノーラル再生という。スピーカ104−1,104−2から制御点である耳112−1,112−2までの間の頭部伝達関数gijは、聴取者の頭または耳の形等によって変化することから、聴取者が代わると、制御対象システムBの伝達関数gijも変化してしまう。
図10を用いて説明した計算例では、逆システムAは厳密に設計され、制御対象システムBの伝達関数gijが変化することは勘案されていない。このため、図10の計算例では、制御対象システムBの伝達関数gijの変化に対して脆弱である。
図10から、音響システムにおける制御点では、二次音源から再生される音響信号の重ね合わせにより、合成された音響信号yiとなることがわかる。制御対象システムBの伝達関数gijが変化し、その位相が反転した場合には、加算されるべき音響信号が相殺されたり、相殺されるべき音響信号が加算増幅されたりする等の問題が生じる。特に、振幅の大きな音響信号を逆相で相殺している場合に位相が反転すると、振幅の大きな音響信号同士が加算され、大きな誤差及びノイズが発生してしまう。
このような問題を解決するために、例えば、逆行列を計算する際に正則項を挿入することにより、音響信号の振幅を抑え、誤差及びノイズの拡大を抑える手法が開示されている(例えば、非特許文献1を参照)。
また、制御対象システムBの伝達関数を特異値分解し、逆行列の特異値のうち値の大きな特異値を0として無視することにより、音響信号の振幅を抑え、誤差及びノイズの拡大を抑える手法も開示されている(例えば、非特許文献2を参照)。
しかしながら、前述の非特許文献1,2の手法では、周波数帯域によっては、音響信号の誤差及びノイズが過度に抑制されることがあるという問題があった。このため、前述の非特許文献1,2の手法では、制御対象システムBの伝達関数の変化に伴って、制御点にて観察される音響信号に大きな誤差及びノイズが発生するという問題を完全に解決することができない。
そこで、周波数帯域に依存することなく、音響信号の振幅を抑え、制御点にて観察される音響信号の誤差及びノイズの拡大を抑えることが所望されていた。すなわち、制御対象システムBの伝達関数の変化に伴い、加算されるべき音響信号が相殺されたり、相殺されるべき音響信号が加算増幅されたりする場合にも、その相殺及び増幅を抑制する制御器設計装置が所望されていた。
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、制御対象システムの伝達関数が変化した場合であっても、制御点にて観察される信号の誤差またはノイズの拡大を抑制する制御器を設計可能な制御器設計装置、制御器設計方法及びプログラムを提供することにある。
前記目的を達成するために、請求項1の制御器設計装置は、信号が観測される所定数の制御点と前記所定数の制御点へ信号をそれぞれ提示する所定数の提示点との間の伝達関数行列で表される制御対象システムに対し、所定の信号を出力する制御器であって、前記制御対象システムの前記制御点にて観察される信号の特性を、所望の特性に一致させるための伝達関数行列で表される特性システムと、前記制御対象システムの伝達関数行列に対する逆行列を制御対象逆行列とした場合の前記制御対象逆行列で表される逆システムとを備えた前記制御器の伝達関数行列を形成する制御器設計装置において、前記制御対象システムの伝達関数行列及び前記特性システムの伝達関数行列を、周波数ビン毎にそれぞれ形成する行列形成部と、前記行列形成部により形成された周波数ビン毎のそれぞれの伝達関数行列に基づいて、周波数ビン毎に制御器用逆行列を形成する逆行列形成部と、前記逆行列形成部により形成された周波数ビン毎の制御器用逆行列に基づいて、前記制御器の伝達関数行列を形成する制御器行列形成部と、を備え、前記逆行列形成部が、前記周波数ビンの周波数が所定の周波数であるか否かを判定する周波数ビン判定手段と、前記周波数ビン判定手段により所定の周波数であると判定された場合、前記周波数ビンにおける前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルを取得し、前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルが前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び形成する第1の制御器用逆行列の積と同じまたは所定の閾値以下で近似するように、前記第1の制御器用逆行列を形成する第1の逆行列形成手段と、前記周波数ビン判定手段により所定の周波数でないと判定された場合、前記制御対象逆行列を形成し、前記制御対象逆行列及び前記特性システムの伝達関数行列の積を、第2の制御器用逆行列として形成する第2の逆行列形成手段と、を備え、前記制御器行列形成部が、前記第1の逆行列形成手段により形成された第1の制御器用逆行列、及び前記第2の逆行列形成手段により形成された第2の制御器用逆行列に基づいて、前記制御器の伝達関数行列を形成する、ことを特徴とする。
また、請求項2の制御器設計装置は、請求項1に記載の制御器設計装置において、前記周波数ビン判定手段が、前記周波数ビンの周波数が所定の周波数であるか否かを判定する際に、前記周波数ビンの周波数と所定の閾値とを比較し、前記周波数が前記所定の閾値よりも高い場合、前記周波数ビンの周波数が前記所定の周波数であると判定し、前記周波数が前記所定の閾値以下である場合、前記周波数ビンの周波数が所定の周波数でないと判定する、ことを特徴とする。
また、請求項3の制御器設計装置は、請求項1または2に記載の制御器設計装置において、前記第1の逆行列形成手段が、前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルと、前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び形成する逆行列の積との間の乖離度が最小になるように、前記逆行列を形成する、ことを特徴とする。
さらに、請求項4の制御器設計方法は、信号が観測される所定数の制御点と前記所定数の制御点へ信号をそれぞれ提示する所定数の提示点との間の伝達関数行列で表される制御対象システムに対し、所定の信号を出力する制御器であって、前記制御対象システムの前記制御点にて観察される信号の特性を、所望の特性に一致させるための伝達関数行列で表される特性システムと、前記制御対象システムの伝達関数行列に対する逆行列を制御対象逆行列とした場合の前記制御対象逆行列で表される逆システムとを備えた前記制御器の伝達関数行列を形成する制御器設計装置による制御器設計方法において、前記制御対象システムの伝達関数行列及び前記特性システムの伝達関数行列を、周波数ビン毎に形成し、前記周波数ビン毎のそれぞれの伝達関数行列を記憶部に格納する第1のステップと、前記記憶部から周波数ビン毎の前記制御対象システムの伝達関数行列及び前記特性システムの伝達関数行列を読み出し、前記周波数ビンの周波数が所定の周波数であるか否かを判定する第2のステップと、前記周波数ビンの周波数が前記所定の周波数であると判定した場合、前記周波数ビンにおける前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルを取得し、前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルが前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び形成する第1の制御器用逆行列の積と同じまたは所定の閾値以下で近似するように、前記第1の制御器用逆行列を形成する第3のステップと、前記周波数ビンの周波数が前記所定の周波数でないと判定した場合、前記制御対象逆行列を形成し、前記制御対象逆行列及び前記特性システムの伝達関数行列の積を、第2の制御器用逆行列として形成する第4のステップと、前記第3のステップにて形成した第1の制御器用逆行列、及び前記第4のステップにて形成した第2の制御器用逆行列に基づいて、前記制御器の伝達関数行列を形成する第5のステップと、を有することを特徴とする。
さらに、請求項5のプログラムは、コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の制御器設計装置として機能させることを特徴とする。
以上のように、本発明によれば、制御対象システムの伝達関数が変化した場合であっても、制御点にて観察される信号の誤差またはノイズの拡大を抑制する制御器を設計することが可能となる。
本発明の実施形態による制御器設計装置のハードウェア構成を示す概略図である。 本発明の実施形態による制御器設計装置における制御部の機能構成を示すブロック図である。 制御部による制御器の伝達関数行列を形成する処理を示すフローチャートである。 非負近似逆行列を形成する処理(ステップS305の処理)を示すフローチャートである。 逆システムを説明する概念図である。 逆システムを説明する概念図である。 多入力多出力の逆システムを説明する概念図である。 音響システムにおいて、聴取音場を制御対象システムとした場合の制御対象システム及び逆システムを説明する概念図である。 音響システムにおいて、入力信号に所望の音響特性を付与する制御器を説明する概念図である。 音響システムにおいて、聴取音場を制御対象システムとした場合の逆システムの伝達関数行列を周波数領域で計算する例を説明する図である。 音響システムにおいて、制御対象システムの制御点を聴取者の耳とした場合の例を説明する概念図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、入力信号に所望の特性を付与するシステム(特性システム)と、制御対象システムに対する逆システムとを備えて構成する制御器を周波数領域にて設計する際に、位相情報の重要でない周波数帯域について、制御対象システムの伝達関数の振幅スペクトルのみに注目し、その線形混合過程を仮定すると共に、制御対象システムの各制御点における所望の特性についても、その振幅スペクトルのみに注目することを特徴とする。また、本発明は、逆システム及び制御対象システムを経て、各制御点において観察される信号の特性が所望の特性に一致するまたは近似するように、制御器を設計する。
これにより、制御器は、位相情報の重要でない周波数帯域について、振幅スペクトルのみに着目して設計されるから、制御器の伝達関数行列を構成する全ての要素の伝達関数は、非負の係数を持つことになる。したがって、制御対象システムでの再生の際に、制御器から制御対象システムへ入力される信号の振幅は抑えられ、結果として、制御点にて観察される信号の誤差またはノイズの拡大を抑制することができる。以下、音響システムを例に挙げて説明する。
〔ハードウェア構成〕
まず、本発明の実施形態による制御器設計装置のハードウェア構成について説明する。図1は、本発明の実施形態による制御器設計装置のハードウェア構成を示す概略図である。この制御器設計装置1は、CPU51と、プログラム及びテーブル等を記憶するROM及びRAMからなる記憶部52と、アプリケーションのプログラム、テーブル及びデータ等を記憶する記憶装置(ハードディスク装置)53と、当該制御器設計装置1のオペレータによるキーボード及びマウス等の操作に伴い、所定のデータを入力制御する操作/入力部54と、オペレータに対しデータ入力操作等を促すための画面情報を表示器に出力する表示出力インタフェース部55と、インターネット等のネットワークを介してプログラム及びデータの送受信を行う通信部56と、を備えて構成され、これらの構成部はシステムバス57を介して相互に接続される。
記憶装置53には、制御器設計装置1の基本的な機能を提供するOS(オペレーティングシステム)プログラム、人間の方向知覚の観点から音響信号の振幅情報が重視される高周波の帯域について、振幅に基づいた近似解の伝達関数行列を形成することで、制御器Dを設計する制御器設計プログラム、及び、制御器設計プログラムにて使用する各種テーブル及びデータ等が記憶されている。
尚、制御器設計プログラムは、当該制御器設計装置1が処理を行うときに、CPU51により記憶装置53から記憶部52のRAMに読み出されて実行される。また、各種テーブル及びデータは、制御器設計プログラムの実行に伴い生成され、CPU51によって記憶部52のRAMから記憶装置53へ書き込まれ、また、制御器設計プログラムの実行に伴い、CPU51によって記憶装置53から記憶部52のRAMに読み出される。
ここで、OSプログラムは、CPU51により実行され、制御器設計装置1の基本的な機能として、記憶部52、記憶装置53、操作/入力部54、表示出力インタフェース部55及び通信部56を管理する。そして、このOSプログラムがCPU51によって実行された状態で、前述の制御器設計プログラムが実行される。
制御部50は、CPU51及び記憶部52により構成され、CPU51が記憶装置53に記憶された制御器設計プログラムを記憶部52に読み出して実行することにより、制御器設計装置1全体を統括制御する。図1は、制御器設計プログラムが記憶装置53から記憶部52に読み出された状態を示している。このように、制御器設計装置1は、図1に示したハードウェア構成により、制御部50が制御器設計プログラムに従って各種処理を行う。
〔機能構成〕
図2は、図1に示した制御器設計装置1における制御部50の機能構成を示すブロック図であり、図1に示した制御部50が制御器設計プログラムの処理を実行する際の機能構成を示している。この制御部50は、初期行列形成部10、逆行列形成部11、制御器行列形成部12及び記憶部52を備えている。逆行列形成部11は、周波数ビン判定手段13、非負近似逆行列形成手段14及び逆行列形成手段15を備えている。
〔制御器Dの伝達関数行列を形成する処理〕
図3は、制御部50による制御器Dの伝達関数行列を形成する処理を示すフローチャートである。以下、図2に示す各構成部及び図3に示すフローチャートについて、図10及び図11に示した音響システムを例にして説明する。
初期行列形成部10は、制御対象システムBの伝達関数(二次音源であるスピーカ104−1,104−2から制御点であるマイクロホン105−1,105−2及び耳112−1,112−2までの間の伝達関数g11(ωk)〜g22(ωk))、及びシステムCの伝達関数(制御点であるマイクロホン105−1,105−2及び耳112−1,112−2において実現したい所望の音響特性を示す伝達関数x1(ωk),x2(ωk))を用いて、前記式(1)に示した行列のうち、制御対象システムBの伝達関数行列及びシステムCの伝達関数行列を、初期の伝達関数行列として離散周波数ビン毎に形成する(ステップS301)。
前記式(1)に示した各行列とは、入力信号uと制御点にて観察される音響信号yiとの間の関係を表す各行列をいう。前記式(1)において、制御点にて観察される音響信号y1(ωk),y2(ωk)を要素とする行列をY、伝達関数g11(ωk)〜g22(ωk)を要素とする制御対象システムBの伝達関数行列をG、伝達関数h11(ωk)〜h22(ωk)を要素とする逆システムAの伝達関数行列をH、入力信号u(ωk)に付与される所望の音響特性の伝達関数x1(ωk),x2(ωk)を要素とする行列をXとすると、前記式(1)は、Y=GHXu=GHcuで表される。伝達関数行列Hcは、伝達関数行列Hに伝達関数行列Xを乗算した行列積であり(Hc=HX)、後述するように、制御器Dの伝達関数行列である。
つまり、制御対象システムBは伝達関数行列Gで表され、逆システムAは伝達関数行列Hで表され、システムCは伝達関数行列Xで表され、制御器Dは伝達関数行列Hcで表される。
初期行列形成部10は、ステップS301において、制御対象システムBの伝達関数行列G及びシステムCの伝達関数行列を、離散周波数ビン毎に形成する。そして、初期行列形成部10は、ステップS301にて形成した伝達関数行列G,Xを離散周波数ビン毎に記憶部52に格納する。
逆行列形成部11の周波数ビン判定手段13は、記憶部52から伝達関数行列G,Xを離散周波数ビン毎に読み出し、中心周波数の低い離散周波数ビンから昇順に、後述するステップS303の処理を行うと共に、非負近似逆行列形成手段14に後述するステップS304及びステップS305の処理を行わせ、逆行列形成手段15に後述するステップS306の処理を行わせる(ステップS302)。
離散周波数ビンの数をNとし、中心周波数の低い離散周波数ビンから昇順に、離散周波数ビンに1からNの番号を付ける。周波数ビン判定手段13は、この順番にi=1,・・・,Nまで処理を行うと共に、非負近似逆行列形成手段14及び逆行列形成手段15に処理を行わせる。
周波数ビン判定手段13は、i番目の離散周波数ビンが対象の離散周波数ビンであるか否か、すなわち、振幅のみを考慮した振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域か否かを判定する(ステップS303)。
例えば、周波数ビン判定手段13は、i番目の離散周波数ビンの周波数と予め設定された閾値とを比較し、その周波数が閾値よりも高い場合、振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域であると判定し、その周波数が閾値以下である場合、振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域でないと判定する。
一般に、人間の方向知覚は、低い周波数では両耳間位相差等の位相情報を重視し、高い周波数では両耳間レベル差等の振幅情報を重視する。つまり、周波数が高くなるに従って、位相情報から振幅情報へと重要度が移る。そこで、制御部50は、位相情報が重要でなくなる周波数を閾値として用い、離散周波数ビンの中心周波数がその閾値より高い場合には、その周波数は、振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域であって、位相を無視しても人間の方向知覚の観点から影響をあまり受けない帯域であるとし、後述するステップS304、ステップS305及びステップS307にて、振幅情報のみに基づいて、制御器Dの伝達関数行列Hcを形成するようにする。
また、周波数ビン判定手段13は、i番目の離散周波数ビンの周波数と予め設定された閾値とを比較し、その周波数が所定の帯域幅を定める閾値の範囲内にある場合、振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域であると判定し、周波数が所定の帯域幅を定める閾値の範囲内にない場合、振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域でないと判定するようにしてもよい。
また、周波数ビン判定手段13は、i番目の離散周波数ビンの周波数と予め設定された閾値とを比較し、その周波数が所定の帯域幅を定める閾値の範囲外にある場合、振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域であると判定し、周波数が所定の帯域幅を定める閾値の範囲外にない場合、振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域でないと判定するようにしてもよい。
周波数ビン判定手段13は、ステップS303において、i番目の離散周波数ビンが対象の離散周波数ビンであると判定した場合(ステップS303:Y)、記憶部52から読み出したi番目の離散周波数ビンの伝達関数行列G,Xを非負近似逆行列形成手段14に出力し、非負近似逆行列形成手段14に対し、後述するステップS304及びステップS305の処理を行わせる。
一方、周波数ビン判定手段13は、ステップS303において、i番目の離散周波数ビンが対象の離散周波数ビンでないと判定した場合(ステップS303:N)、記憶部52から読み出したi番目の離散周波数ビンの伝達関数行列G,Xを逆行列形成手段15に出力し、逆行列形成手段15に対し、後述するステップS306の処理を行わせる。
非負近似逆行列形成手段14は、周波数ビン判定手段13により、ステップS303にて対象の離散周波数ビンであると判定されると、周波数ビン判定手段13からi番目の離散周波数ビンの伝達関数行列G,Xを入力する。そして、非負近似逆行列形成手段14は、次式に示すように、入力したi番目の離散周波数ビンの伝達関数行列G,Xの振幅スペクトル|g(ω)|,|x(ω)|を取得する(ステップS304)。すなわち、非負近似逆行列形成手段14は、i番目の離散周波数ビンの伝達関数行列G,Xをそれぞれ構成する各要素の絶対値を算出する。
Figure 0006399864

Figure 0006399864
非負近似逆行列形成手段14は、次式に示すように、伝達関数行列Xの振幅スペクトル|x(ω)|が伝達関数行列Gの振幅スペクトル|g(ω)|及び非負近似解の(負でない要素からなる)行列(非負近似逆行列、制御器用逆行列)hc(ω)の積である乗算結果と同じまたは近似するように、非負近似逆行列hc(ω)を形成する(ステップS305)。ステップS305の処理の詳細については後述する。
Figure 0006399864
尚、振幅スペクトル|x(ω)|が乗算結果と近似するとは、両データの差が所定の閾値以下であることをいう。また、前記式(7)は、前記式(1)及び(2)から導出される。
ここで、非負近似逆行列hc(ω)は、以下の式で表され、逆システムAの伝達関数行列H及びシステムCの伝達関数行列Xの積である乗算結果(Hc=HX)を示す。
Figure 0006399864
非負近似逆行列形成手段14は、ステップS305にて形成した非負近似逆行列hc(ω)を記憶部52に格納する。
逆行列形成手段15は、周波数ビン判定手段13により、ステップS303にて対象の離散周波数ビンでないと判定されると、周波数ビン判定手段13からi番目の離散周波数ビンの伝達関数行列G,Xを入力する。そして、逆行列形成手段15は、ステップS304及びステップS305の処理とは異なる他の手段により、逆行列hc(ω)を形成する(ステップS306)。
例えば、逆行列形成手段15は、前記式(1)〜(4)にて説明した従来の手法により、逆システムAの伝達関数行列H(制御対象システムBの伝達関数行列Gに対する逆行列(制御対象逆行列))を算出し、前記式(8)により、逆システムAの伝達関数行列HにシステムCの伝達関数行列Xを乗算することで、逆行列hc(ω)を形成する。そして、逆行列形成手段15は、ステップS306にて形成した逆行列(制御器用逆行列)hc(ω)を記憶部52に格納する。
制御器行列形成部12は、離散周波数ビン数分のステップS303〜ステップS306の処理が完了した後、記憶部52から非負近似逆行列hc(ω)及び逆行列hc(ω)を読み出し、これらを周波数の順に並べ、制御器Dの伝達関数行列Hcを形成する(ステップS307)。そして、制御器行列形成部12は、形成した制御器Dの伝達関数行列Hcを記憶部52に格納する。
〔非負近似逆行列hc(ω)を形成する処理〕
次に、図3のステップS305に示した非負近似逆行列hc(ω)を形成する処理の詳細について説明する。前述のとおり、非負近似逆行列形成手段14は、ステップS305において、前記式(7)に示したとおり、伝達関数行列Xの振幅スペクトル|x(ω)|が伝達関数行列Gの振幅スペクトル|g(ω)|及び非負近似逆行列hc(ω)の積である乗算結果と同じまたは近似するように、非負近似逆行列hc(ω)を形成する。
図4は、非負近似逆行列hc(ω)を形成する処理(ステップS305の処理)を示すフローチャートである。図4の処理は、非負近似逆行列hc(ω)を形成する処理の一例であり、教師あり非負値行列因子分解を用いた例である。尚、本発明は、非負近似逆行列hc(ω)を形成する処理を、図4の処理に限定するものではなく、他の手法を用いるようにしてもよい。
まず、非負近似逆行列形成手段14は、次式に示すように、システムCの伝達関数行列Xの振幅スペクトル|x(ω)|と、制御対象システムBの伝達関数行列Gの振幅スペクトル|g(ω)|及び非負近似逆行列hc(ω)の積である乗算結果との間の乖離度を示す基準式D(乖離度D)を設定する(ステップS401)。
Figure 0006399864
m,nは、各行列を構成する要素の番号を示す。
前記式(9)は、Frobeniusノルムの2乗を示す式であり、振幅応答を表す|・|及び離散周波数ビンを表すωは省略してある。前記式(9)の最小化は、非負値制限付きの非線形最適化問題となる。この解法については特に定めはないが、例えば、後述する補助関数Aを用いて解を求める。尚、本発明は、後述する補助関数Aを用いて前記式(9)を解くことに限定するものではなく、他の解法を用いるようにしてもよい。
非負近似逆行列形成手段14は、前記式(9)に示した乖離度Dに対する補助関数Aの一例として、式(10)を設定する(ステップS402)。補助関数Aは、後述する最小化処理において、乖離度Dの代わりに用いられる。
Figure 0006399864
λmnは変数である。
尚、前記式(10)に示した補助関数Aについては既知であり、例えば以下の文献を参照されたい。
「亀岡弘和、“非負値行列因子分解”、計測と制御、第51巻第9号、p.835−844、2012年9月号」
また、前記式(10)に示した補助関数Aは一例であり、非負近似逆行列形成手段14は、他の補助関数を設定するようにしてもよい。
非負近似逆行列形成手段14は、乖離度Dの最小化処理の代わりとなる補助関数Aの最小化処理(後述するステップS403〜ステップS406の処理)を、後述するステップS406の条件を満たさない限り、反復する(ステップS403)。
非負近似逆行列形成手段14は、補助関数Aを最小化する変数λmnを求め、求めた変数λmnを変数λとする(ステップS404)。そして、非負近似逆行列形成手段14は、前記式(10)の変数λmnに変数λを代入し、補助関数Aを最小化する変数hnを求め、求めた変数hnを変数hcとする(ステップS405)。
非負近似逆行列形成手段14は、ステップS405にて求めた変数hcを前記式(9)の変数hnに代入し、乖離度Dを算出する。そして、非負近似逆行列形成手段14は、算出した乖離度Dと予め設定された閾値aとを比較すると共に、ステップS403における反復回数(補助関数Aの最小化処理(ステップS403〜ステップS406の処理)を反復した回数)と予め設定された閾値bとを比較する(ステップS406)。
非負近似逆行列形成手段14は、ステップS406において、乖離度Dが閾値a未満であると判定した場合、または、反復回数が閾値bを超えたと判定した場合(ステップS406:Y)、ステップS407へ移行する。一方、非負近似逆行列形成手段14は、ステップS406において、乖離度Dが閾値a未満でないと判定し、かつ、反復回数が閾値bを超えていないと判定した場合(ステップS406:N)、ステップS403へ移行し、補助関数Aの最小化処理を反復する。
つまり、非負近似逆行列形成手段14は、乖離度Dが閾値a未満になるまで、または、反復回数が閾値bを超えるまで、補助関数Aの最小化処理を反復する。
非負近似逆行列形成手段14は、ステップS406から移行して、ステップS405にて求めた現在の変数hc(ステップS406から移行する前に最後に求めた変数hc)を非負近似逆行列hc(ω)として形成する(ステップS407)。
以上のように、本発明の実施形態による制御器設計装置1によれば、初期行列形成部10は、制御対象システムBの伝達関数(二次音源から制御点までの間の伝達関数g11(ωk)〜g22(ωk))、及びシステムCの伝達関数(制御点において実現したい所望の音響特性を示す伝達関数x1(ωk),x2(ωk))を用いて、初期の伝達関数行列として、制御対象システムBの伝達関数行列G、及びシステムCの伝達関数行列Xを離散周波数ビン毎に形成するようにした。
そして、逆行列形成部11の周波数ビン判定手段13は、離散周波数ビンの周波数が振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域であるか否かを判定し、逆行列形成部11の非負近似逆行列形成手段14は、離散周波数ビンの周波数が振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域であると判定された場合、伝達関数行列G,Xの振幅スペクトル|g(ω)|,|x(ω)|を取得して各要素の絶対値を算出し、前記式(7)のとおり、伝達関数Xの振幅スペクトル|x(ω)|が伝達関数行列Gの振幅スペクトル|g(ω)|及び非負近似逆行列hc(ω)の積である乗算結果と同じまたは近似するように、非負近似逆行列hc(ω)を形成するようにした。
また、逆行列形成部11の逆行列形成手段15は、離散周波数ビンの周波数が振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域でないと判定された場合、従来の手法にて逆行列hc(ω)を形成するようにした。そして、制御器行列形成部12は、離散周波数ビン数分の処理が完了した後、非負近似逆行列形成手段14により形成された非負近似逆行列hc(ω)及び逆行列形成手段15により形成された逆行列hc(ω)を周波数の順に並べ、制御器Dの伝達関数行列Hcを形成するようにした。
これにより、人間の方向知覚の観点から音響信号の振幅情報が重視される高周波の帯域を、振幅スペクトルの線形混合過程を仮定する帯域とすることで、制御器Dの伝達関数行列Hcは、高周波の帯域について、伝達関数行列G,Xの振幅スペクトル|g(ω)|,|x(ω)|である各要素の絶対値に基づいて形成されるから、高周波の帯域の要素は非負値となる。
つまり、制御器設計装置1は、人間の方向知覚の観点から振幅情報が重視される高周波の帯域について、従来の手法を用いて制御器Dの厳密な伝達関数行列を求める代わりに、振幅に基づいた近似解の伝達関数行列を求めるようにしたから、制御器Dの伝達関数の振幅を低く抑えることができる。
従来の手法では、前記式(1)及び(2)から導出されるx(ω)=g(ω)hc(ω)を用いて、制御器Dの伝達関数行列Hcが形成される。本発明の実施形態にて用いる前記式(7)、すなわち絶対値に基づいた計算式と、従来の手法にて用いるx(ω)=g(ω)hc(ω)の式とを比較すると、いずれも、伝達関数行列Xの要素は、伝達関数行列Gの要素に伝達関数行列Hcの要素を乗算した結果を加算することにより算出される。従来の手法では、伝達関数行列G,Xの要素は0を含む正の値及び負の値を係数とするのに対し、本発明の実施形態では、伝達関数行列G,Xの要素は0を含む正の値のみを係数とする。このため、本発明の実施形態における伝達関数行列Hcの要素は、従来の手法よりも乗算及び加算の過程で制限を受けるから、その振幅は小さくなる。つまり、制御器Dの伝達関数の振幅を低く抑えることができる。
したがって、制御器Dの伝達関数の振幅を低く抑えることができるから、制御器Dから制御対象システムBへ入力される信号の振幅も低く抑えることができる。その結果、制御対象システムBの伝達関数が変化した場合であっても、制御点において、大きな振幅の音響信号同士が加算されることがなく、制御点にて観察される音響信号に大きな誤差及びノイズが発生するという問題を解決することができる。
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。前記実施形態では、説明を簡単化するために、二次音源であるスピーカ104−1,104−2の数を2、制御点であるマイクロホン105−1,105−2の数を2としたが、本発明は、二次音源及び制御点の数を限定するものではない。
また、前記実施形態では、音響システムを例に挙げて説明したが、音響システムは一例であり、本発明は、音響システム以外の制御システムにも適用がある。例えば、複数の制御点を温度制御したり、湿度制御したりする制御システム等にも適用がある。
1 制御器設計装置
10 初期行列形成部
11 逆行列形成部
12 制御器行列形成部
13 周波数ビン判定手段
14 非負近似逆行列形成手段
15 逆行列形成手段
50 制御部
51 CPU
52 記憶部
53 記憶装置
54 操作/入力部
55 表示出力インタフェース部
56 通信部
57 システムバス
100−103,106,107,109,110 システム
104 スピーカ
105 マイクロホン
108,111 制御器
112 耳

Claims (5)

  1. 信号が観測される所定数の制御点と前記所定数の制御点へ信号をそれぞれ提示する所定数の提示点との間の伝達関数行列で表される制御対象システムに対し、所定の信号を出力する制御器であって、前記制御対象システムの前記制御点にて観察される信号の特性を、所望の特性に一致させるための伝達関数行列で表される特性システムと、前記制御対象システムの伝達関数行列に対する逆行列を制御対象逆行列とした場合の前記制御対象逆行列で表される逆システムとを備えた前記制御器の伝達関数行列を形成する制御器設計装置において、
    前記制御対象システムの伝達関数行列及び前記特性システムの伝達関数行列を、周波数ビン毎にそれぞれ形成する行列形成部と、
    前記行列形成部により形成された周波数ビン毎のそれぞれの伝達関数行列に基づいて、周波数ビン毎に制御器用逆行列を形成する逆行列形成部と、
    前記逆行列形成部により形成された周波数ビン毎の制御器用逆行列に基づいて、前記制御器の伝達関数行列を形成する制御器行列形成部と、を備え、
    前記逆行列形成部は、
    前記周波数ビンの周波数が所定の周波数であるか否かを判定する周波数ビン判定手段と、
    前記周波数ビン判定手段により所定の周波数であると判定された場合、前記周波数ビンにおける前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルを取得し、前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルが前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び形成する第1の制御器用逆行列の積と同じまたは所定の閾値以下で近似するように、前記第1の制御器用逆行列を形成する第1の逆行列形成手段と、
    前記周波数ビン判定手段により所定の周波数でないと判定された場合、前記制御対象逆行列を形成し、前記制御対象逆行列及び前記特性システムの伝達関数行列の積を、第2の制御器用逆行列として形成する第2の逆行列形成手段と、を備え、
    前記制御器行列形成部は、
    前記第1の逆行列形成手段により形成された第1の制御器用逆行列、及び前記第2の逆行列形成手段により形成された第2の制御器用逆行列に基づいて、前記制御器の伝達関数行列を形成する、ことを特徴とする制御器設計装置。
  2. 請求項1に記載の制御器設計装置において、
    前記周波数ビン判定手段は、
    前記周波数ビンの周波数が所定の周波数であるか否かを判定する際に、前記周波数ビンの周波数と所定の閾値とを比較し、前記周波数が前記所定の閾値よりも高い場合、前記周波数ビンの周波数が前記所定の周波数であると判定し、前記周波数が前記所定の閾値以下である場合、前記周波数ビンの周波数が所定の周波数でないと判定する、ことを特徴とする制御器設計装置。
  3. 請求項1または2に記載の制御器設計装置において、
    前記第1の逆行列形成手段は、
    前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルと、前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び形成する逆行列の積との間の乖離度が最小になるように、前記逆行列を形成する、ことを特徴とする制御器設計装置。
  4. 信号が観測される所定数の制御点と前記所定数の制御点へ信号をそれぞれ提示する所定数の提示点との間の伝達関数行列で表される制御対象システムに対し、所定の信号を出力する制御器であって、前記制御対象システムの前記制御点にて観察される信号の特性を、所望の特性に一致させるための伝達関数行列で表される特性システムと、前記制御対象システムの伝達関数行列に対する逆行列を制御対象逆行列とした場合の前記制御対象逆行列で表される逆システムとを備えた前記制御器の伝達関数行列を形成する制御器設計装置による制御器設計方法において、
    前記制御対象システムの伝達関数行列及び前記特性システムの伝達関数行列を、周波数ビン毎に形成し、前記周波数ビン毎のそれぞれの伝達関数行列を記憶部に格納する第1のステップと、
    前記記憶部から周波数ビン毎の前記制御対象システムの伝達関数行列及び前記特性システムの伝達関数行列を読み出し、前記周波数ビンの周波数が所定の周波数であるか否かを判定する第2のステップと、
    前記周波数ビンの周波数が前記所定の周波数であると判定した場合、前記周波数ビンにおける前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルを取得し、前記特性システムの伝達関数行列の振幅スペクトルが前記制御対象システムの伝達関数行列の振幅スペクトル及び形成する第1の制御器用逆行列の積と同じまたは所定の閾値以下で近似するように、前記第1の制御器用逆行列を形成する第3のステップと、
    前記周波数ビンの周波数が前記所定の周波数でないと判定した場合、前記制御対象逆行列を形成し、前記制御対象逆行列及び前記特性システムの伝達関数行列の積を、第2の制御器用逆行列として形成する第4のステップと、
    前記第3のステップにて形成した第1の制御器用逆行列、及び前記第4のステップにて形成した第2の制御器用逆行列に基づいて、前記制御器の伝達関数行列を形成する第5のステップと、
    を有することを特徴とする制御器設計方法。
  5. コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の制御器設計装置として機能させるプログラム。
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