JP4473387B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベルト層を有するトレッド部と、該トレッド部とビード部との間のサイドウォール部と、タイヤ軸方向に離隔されたビードコアの回りで端部を案内される少なくとも2枚のカーカスプライを具え、車両用のラジアルタイヤとして好適に採用しうる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
車両用の空気入りタイヤ(特に、ラジアル形式のタイヤ)では、特に縁石に乗上げた際に起きる損傷からカーカス層を保護することが必要であり、このためには、例えば、サイドウォール部の厚さを増加することも考えられるが、この厚さの増大は、場合によっては、サイドウォール剛性を過度に増し、かつ好ましくない重量増加を招く。従って、車両用タイヤの設計の場合、通常、多くの、概ね背反する要求をできる限り考慮してその妥協点が見出される。
【0003】
本発明は、本質的に、少なくとも2つのカーカスプライの間に該カーカスプライ間の相互間隔を設定する少なくとも1つの緩衝中間層を設けることを基本として、特に安定性の増加によって、タイヤの走行性を改善し、カーカス損傷の防止能を向上することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1にかかる発明は、ベルト層を有するトレッド部と、該トレッド部とビード部との間のサイドウォール部と、タイヤ軸方向に離間するビードコア(18)の周りで端部が案内される少なくとも2枚のカーカスプライ(12)、(14)を具えるとともに、
前記少なくとも2つのカーカスプライ(12)、(14)間に、該カーカスプライ(12)、(14)の相互間隔を設定する少なくとも1枚の緩衝中間層(10)を設け、
かつこの緩衝中間層(10)は、トレッド部(24)のトレッド縁をこえてサイドウォール部(16)を通り、前記ビードコア(18)の上方で終端するとともに、
前記緩衝中間層(10)は、トレッド部に設けられたトレッド部緩衝中間層(10)が、サイドウォール部(16)に設けられたサイドウォール部緩衝中間層(10)よりも硬度が大であり、しかも前記緩衝中間層(10)の厚さは、サイドウォール部(16)、及びビード部では一定とし、トレッド部(24)では、それぞれ、タイヤの中心面(30)の方向に向かって減少することを特徴とする空気入りタイヤである。
【0005】
なお、請求項2及び4記載の発明は、前記緩衝中間層(10)が、両側のサイドウォール部(16)、トレッド部(24)に配される2枚の相互に独立の緩衝中間層片(10A)、(10A)からなることを特徴とし、請求項3の発明は、ベルト層を有するトレッド部と、該トレッド部とビード部との間のサイドウォール部と、タイヤ軸方向に離間するビードコア(18)の周りで端部が案内される少なくとも2枚のカーカスプライ(12)、(14)を具えるとともに、前記少なくとも2つのカーカスプライ(12)、(14)間に、該カーカスプライ(12)、(14)の相互間隔を設定する少なくとも1枚の緩衝中間層(10)を設け、かつこの緩衝中間層(10)は、トレッド部(24)のトレッド縁をこえてサイドウォール部(16)を通り、前記ビードコア(18)の上方で終端するとともに、前記緩衝中間層(10)は、トレッド部に設けられたトレッド部緩衝中間層(10)が、サイドウォール部(16)に設けられたサイドウォール部緩衝中間層(10)よりも硬度が大であり、しかも前記緩衝中間層(10)は、全幅にわたって厚さがほぼ一定、かつ2mmよりも小さいことを特徴としている。
【0006】
前記緩衝中間層により、一方ではカーカスプライのある程度の相対運動を可能とする弾性層がカーカス層の間に形成されることになり、他方では、緩衝中間層によって、双方のカーカス層の相互間隔を抵抗モーメントに対応してタイヤ幅にわたって多様に定めることができる。従って、サイドウォール部における剛性を適切に定めることができ、またトレッド部における衝撃強度の改善も可能となる。
【0007】
前記衝撃強度は、角を落とした押し棒を、トレッド部を貫通するまで、タイヤトレッドに押しつける衝撃テストにより測定する。即ち、この衝撃テストによって、局部的な機械的ピーク負荷に対するタイヤの抵抗能を求める。米国ではこの衝撃テストが規定されている。
【0008】
本発明においては、カーカスをダブルT構造の態様に構成したことにより剛性又は安定性を向上している。この場合、緩衝中間層は、ダブルT構造での垂直ビームに対応し、双方のカーカスプライは、ダブルT構造における横梁と等価と見なしうる。ダブルT形構造の横梁、即ち、カーカスプライの相互間隔が、この構造の抵抗モーメントの基準をなし、従って、垂直ビームである緩衝中間層の厚さの選択によって、タイヤの各範囲に、それぞれ、望ましい抵抗モーメントを設定できる。
【0009】
特に、タイヤのサイドウォール部において、剛性の適切な増大が可能であり、更に、緩衝中間層は、縁石乗上げの危険な状態においてカーカスプライの損傷を防止し本質的な改善に寄与する。これは、剛性および弾性作用を最適に組合せることにより、弾性層によってある程度許容されるカーカスプライ間の相対運動性が、上記カーカスプライを損傷から保護するのに役立つことによる。
【0010】
本発明に係るカーカスコンセプトの他の利点は、タイヤの全重量を本質的に増加することなく、タイヤの上述の改善が達成されるという点にある。さらに、本発明に係るタイヤの製造の場合にも、プレファブ工程の枠内において、緩衝中間層を対応するカーカスプライ上に位置合わせして載置することでよく、従って、タイヤ製造工程において製造技術工程を対して増加することはないのも重要事項といえる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1において本発明に係るラジアルタイヤは、ベルト層26を有するトレッド部24と、該トレッド部24とビード部22との間のサイドウォール部16と、タイヤ軸方向に離間するビードコア18の周りで端部が案内される少なくとも2枚、本例では2枚ののカーカスプライ12、14からなるカーカスを具えるとともに、前記少なくとも2つのカーカスプライ12、14間に、該カーカスプライ12、14の相互間隔を設定する少なくとも1枚の緩衝中間層10を設けている。
【0012】
前記カーカスプライ12,14は,それぞれ、両側のビード部22の間でサイドウォール部16,トレッド部24に沿って延在している。
【0013】
また前記トレッド部24には、カーカス12,14の半径方向外方に、環状ののバンド28で囲まれた前記2枚のベルトプライからなる前記ベルト層26が設けられ,かつビード部22には、ビードコア18と、半径方向外方へ先細となるビードエーペックス20とが配置される。
【0014】
またカーカスプライ12,14はビードエーペックス20のタイヤ軸方向内側から外側に通り、かつビードコア18の周りに巻かれて係止される。この場合、外側のカーカスプライ12の端部は、ビードコア18の僅か上方位置で終端し、他方、内側のカーカスプライ14の端部は、タイヤのサイドウォール16まで延び、ビードエーペックス20の上方で外側のカーカスプライ14に当接する。
【0015】
前記緩衝中間層10は、本形態では、トレッド部24からサイドウォール部16内をのび、その幅を、該緩衝中間層10がビード部22のビードコア18の付近で終端させうる程度とする。又は緩衝中間層10の幅をビードコア8の上方であって、かつビードコア18に巻かれた外側のカーカス層12の端部近傍の高さで終端する程度の大きさに選択することもできる。なお、緩衝中間層10は、ビードエーペックス20の半径方向外端まで、好ましくはその上方まで延在させることもできる。又はサイドウォール部16の半径方向の高さの1/2までの範囲において終端させることもできる。
【0016】
さらに緩衝中間層10は、一枚の連続体ではなくて、互に独立した緩衝中間層片(図示せず)を隣り合わせて、又は離間させて配することにより形成することができる。このとき、例えばサイドウォール部16,トレッド部24で分けて配置することができる。このとき、トレッド部24に設ける緩衝中間層10の硬度がサイドウォール部16の硬度よりも大とすることにより、トレッド部24の剛性を向上する。しかもトレッド部24を中心として配する緩衝中間層片は、その幅をトレッド幅の約40%〜80%(好ましくは、約50%)程度とすることが好ましい。
【0017】
また好ましい態様では、緩衝中間層10の厚さは、その全幅にわたって一定とし、その厚さを、好ましくは、2mmよりも小さく、特に、約0.4〜0.8mm、さらにはほぼ0.6mmとする。
【0018】
図1の形態では、緩衝中間層10の厚さは、サイドウォール部16、及びビード部ではほぼ一定とし、一方、トレッド部24では、それぞれ、タイヤの中心面30の方向に向かって減少させる。図2に、緩衝中間層10の他の例を示している。同図から明らかな如く、緩衝中間層10の厚さは、トレッド部24の中心部分では、ほぼ一定であり、端部に向かって漸減し、本例では、厚さの減少は、ショルダー部付近で生じている。この場合の緩衝中間層10の最大厚さは、2mm以下、好ましくは、0.5〜1.0mmの範囲とする。
【0019】
さらに、緩衝中間層10は好ましくはゴムを採用しうる。ゴムに変えて、ゴムおよび繊維材料からなる複合材料、その他、有機材料(例えば、ナイロンまたはケブラー)、有機繊維コードなどを用いてプライ状に形成することもできる。また緩衝中間層10は、弾性率E*を5〜15MPaの範囲、好ましくは6又は7〜11.5MPaの範囲とし、かつショアA硬さが50〜80゜、好ましくはショアA硬さを59〜71゜、正接損失係数Tanδを0.1〜0.2、好ましくは0.12〜0.16程度に設定する。しかしながら、上記数値にのみ拘束されるものではなく、他の物性によって変化しうる。
【0020】
更に、複数の緩衝中間層10・・・を用いて、サンドウィッチ構造の態様で例えば部分的に重ねつつ形成することもできる。この場合、各緩衝中間層10は、同一材料から製造するのが好ましく、また同一厚さのものを用いることも異なる厚さの層を用いることもできる。さらに緩衝中間層10は異なる形状、厚さ、材質などの仕様が異なるものを同時に用いることもできる。
【0021】
またカーカスを2枚以上のカーカスプライを用いる場合は、各カーカスプライの間にも緩衝中間層10を配置しうるが、通常、最外側のカーカスプライとその内側のカーカスプライの間に緩衝中間層10を配するのがよい。トレッド部24の緩衝中間層10は、トレッド部24の結合強度を増大することにより、衝撃強度を改善する。
【0022】
なお、緩衝中間層10は、タイヤ製造中に始めてカーカスプライに組み込むのではなく、タイヤ製造の作業を増加しないため、プレファブ工程において既に上記緩衝中間層10を各カーカスプライ上に正確に設置するのが好ましい。
【0023】
【発明の効果】
このように本発明の空気入りタイヤは、緩衝中間層によって特に、タイヤのサイドウォール部において、剛性の適切な増大が可能であり、かつ緩衝中間層は、縁石乗上げの危険な状態においてカーカスプライの損傷を防止し保護するのに役立つとともにトレッド部の剛性を向上することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を例示する断面図である。
【図2】他の形態のカーカスプライと緩衝中間層とを取り出して示す断面図である。
【符号の説明】
10 緩衝中間層
12 外側のカーカスプライ
14 内側のカーカスプライ
16 サイドウォール部
18 ビードコア
20 ビードエーペックス
22 ビード部
24 トレッド部
26 ベルト層
28 バンド
30 中心面
Claims (4)
- ベルト層を有するトレッド部と、該トレッド部とビード部との間のサイドウォール部と、タイヤ軸方向に離間するビードコア(18)の周りで端部が案内される少なくとも2枚のカーカスプライ(12)、(14)を具えるとともに、
前記少なくとも2つのカーカスプライ(12)、(14)間に、該カーカスプライ(12)、(14)の相互間隔を設定する少なくとも1枚の緩衝中間層(10)を設け、
かつこの緩衝中間層(10)は、トレッド部(24)のトレッド縁をこえてサイドウォール部(16)を通り、前記ビードコア(18)の上方で終端するとともに、
前記緩衝中間層(10)は、トレッド部に設けられたトレッド部緩衝中間層(10)が、サイドウォール部(16)に設けられたサイドウォール部緩衝中間層(10)よりも硬度が大であり、しかも
前記緩衝中間層(10)の厚さは、サイドウォール部(16)、及びビード部では一定とし、トレッド部(24)では、それぞれ、タイヤの中心面(30)の方向に向かって減少することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記緩衝中間層(10)は、両側のサイドウォール部(16)、トレッド部(24)に配される2枚の相互に独立の緩衝中間層片(10A)、(10A)からなることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
- ベルト層を有するトレッド部と、該トレッド部とビード部との間のサイドウォール部と、タイヤ軸方向に離間するビードコア(18)の周りで端部が案内される少なくとも2枚のカーカスプライ(12)、(14)を具えるとともに、
前記少なくとも2つのカーカスプライ(12)、(14)間に、該カーカスプライ(12)、(14)の相互間隔を設定する少なくとも1枚の緩衝中間層(10)を設け、
かつこの緩衝中間層(10)は、トレッド部(24)のトレッド縁をこえてサイドウォール部(16)を通り、前記ビードコア(18)の上方で終端するとともに、
前記緩衝中間層(10)は、トレッド部に設けられたトレッド部緩衝中間層(10)が、サイドウォール部(16)に設けられたサイドウォール部緩衝中間層(10)よりも硬度が大であり、しかも
前記緩衝中間層(10)は、全幅にわたって厚さがほぼ一定、かつ2mmよりも小さいことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記緩衝中間層(10)は、両側のサイドウォール部(16)、トレッド部(24)に配される2枚の相互に独立の緩衝中間層片(10A)、(10A)からなることを特徴とする請求項3記載の空気入りタイヤ。
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