JP4469053B2 - アスタキサンチンシンターゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カロテノイドの組換え生産およびそれに有用な生物学的物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
Phaffia rhodozyma(P.rhodozyma)はアスタキサンチンを産生するカロテノイド生産酵母菌株である。アスタキサンチンは、動物(フラミンゴおよび紅色トキのような鳥類、ならびにニジマスおよびサケのような魚類)、藻類および微生物のような、非常に多様な生物に存在する。また、アスタキサンチンは酸素ラジカルに対する強力な抗酸化特性を有することが知られており、ガンのようないくつかの病気から、生細胞を守るための薬学的用途に応用することが期待されている。さらに、アスタキサンチンは動物を明瞭なオレンジレッドに染色し、市場での消費者の要望に応えることから、染色試薬としてのアスタキサンチンの産業上の必要性が、サケのような養殖魚産業で特に増加している。
【0003】
P.rhodozymaは、アスタキサンチンを生成するカロテノイド生産酵母菌株として知られている。他のカロテノイド生成酵母であるRhodotorula種と異なり、P. rhodozymaは、D-グルコースのようないくつかの糖を発酵することができる。この点は、産業上の応用の観点からみて、重要な特徴である。最近の分類学的研究において、P. rhodozymaの性周期が示され、その優性世代はXanthophyllomyces dendrorhousと命名された。(W.I. Golubev; Yeast 11, 101-110, 1995)。P. rhodozymaからアスタキサンチンの高生産株を得るための菌株改良研究が行われてきたが、ここ10年間は、そのような試みは通常の突然変異誘発法およびプロトプラスト融合法を利用することに限定されていた。最近、WeryらはP. rhodozymaのリボソームDNAのゲノム中に、複製できないプラスミドを多コピー数組み込んだP. rhodozymaを利用した宿主ベクター系を開発した(Weryら, Gene, 184, 89-97, 1997)。また、Verdoesらは、P. rhodozymaの形質転換体および、ゲラニルゲラニルピロリン酸からβ-カロテンへの反応を触媒する酵素をコードするP. rhodozymaの3つのカロテノイド生成遺伝子と共に、さらに改良されたベクターを報告した(国際公開公報第97/23633号)。
【0004】
カロテノイド生成に特有の生合成経路は、一般的イソプレノイド経路から重要な中間体であるファルネシルピロリン酸(FPP)の点で分岐する(図1)。FPPおよびIPPは、P. rhodozymaのcrtEによってコードされるゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)シンターゼにより縮合されて、GGPPを生成する。次いでGGPPは、crtBYによってコードされ、フィトエンシンターゼおよびリコペンシクラーゼとして二重に機能する酵素と、crtIによってコードされるフィトエンデサチュラーゼの連続反応によってβ-カロテンに変換される。
【0005】
細菌では、キサントフィル生成に関与する酵素および遺伝子が単離され、詳細に特徴付けられている。crtZによってコードされるβ-カロテンヒドロキシラーゼは、β-カロテンの両端のβ-イオノン環に対する水酸化の2段階に関与している。crtZ遺伝子は、エルウィニア・ウレドボーラ(Erwinia uredovora)(Misawaら、J. Bacteriol.、172、6704〜6712、1990)、フラボバクター属(Flavobacter)(L. Pasamontesら、185(1)、35〜41、1997)、およびアグロバクテリウム・オーランティアクム(Agrobacterium aurantiacum)(Misawaら、J. Bacteriol.、177(22)、6575〜6584、1995)などの多様な生物からクローニングされた。crtWによってコードされるβ-カロテンケトラーゼは、β-カロテンの両端のβ-イオノン環へのオキソ基導入の2段階を触媒する。Kajiwaraらは、ヘマトコッカス・ブルビアリス(Haematococcus bluvialis)から真正細菌のcrtWに対応するbkt遺伝子をクローニングして配列決定した(Kajiwaraら、P. Mol. Biol.、29、343〜352、1995)。Harkerらも、シネココッカス(Synechococcus)PCC7942から真正細菌のcrtWに対応するcrtO遺伝子をクローニングして配列決定した(Harkerら、FEBS Letters、404、129〜134、1997)。ヒドロキシラーゼおよびケトラーゼの両酵素は広い基質特異性を有しており、これによって両酵素が同時に反応した場合にその反応条件に応じて多様なキサントフィルが生成される。(図1)
【0006】
前述のとおり、FPPからのβ-カロテノイド生成に関与するすべての遺伝子が単離されたが、β-カロテンからキサントフィル生成の最終段階に関与すると考えられる酵素および遺伝子はP. rhodozymaの蛋白質およびDNAレベルでは同定されていない。Johnsonら(Crit. Rev. Biotechnol、11(4)、297〜326、191)は、彼らが単離したキサントフィル化合物の中にはアスタキサンチン生合成の中間体となるものがあると仮定することにより、アスタキサンチン生成には二つの別個の経路があることを提唱したが、このような二つの別個の経路に関与する酵素や遺伝子が単離できないため、これらの経路を証明することはできなかった。さらに、これらのキサントフィル化合物がこれら化合物の単離段階における実験上の人工産物から生じた可能性も排除することはできない。β-カロテンからアスタキサンチンへの生合成経路中の中間体を蓄積する突然変異体をP. rhodozymaから単離できなかったことにより、β-カロテンからアスタキサンチンへの生合成経路を明らかにすることが困難となった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、β-カロテンからアスタキサンチンへのアスタキサンチン生合成経路の最終段階に関与する遺伝子および酵素を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、AST遺伝子のような、P. rhodozymaにおけるβ-カロテンからアスタキサンチンへの反応に関与するアスタキサンチンシンターゼをコードするヌクレオチド配列を含む単離DNA、一例として特にcDNAを提供する。
【0009】
好ましい態様において、クローニングしたDNA断片は、
(a)前記ヌクレオチド配列が配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する酵素をコードする、または
(b)該ヌクレオチド配列が(i)対立遺伝子変異体、もしくは(ii)一つまたは複数のアミノ酸の付加、挿入、欠失および/または置換を有し、記述された酵素活性を有する酵素より選択される該酵素の変異体をコードすることによって特徴付けることができる。
【0010】
もう一つの好ましい態様において、単離cDNA断片はPhaffia rhodozymaの遺伝子から誘導することができ、
(i)配列番号:2に記載のcDNA配列、
(ii)配列番号:2に記載のcDNA配列の同義または対立遺伝子変異体、および
(iii)一つまたは複数のヌクレオチドの付加、挿入、欠失および/または置換を有する配列番号:2に記載のcDNA配列の誘導体で、前記酵素活性を有するポリペプチドをコードする誘導体から選択される。
【0011】
もう一つの好ましい態様において、本発明は、前記ヌクレオチド配列が
(i)配列番号:2に記載のヌクレオチド配列、
(ii)遺伝コードの縮退のために、ヌクレオチド配列(i)によってコードされるアミノ酸配列と同じ配列を有するアスタキサンチンシンターゼをコードするヌクレオチド配列、または
(iii)標準的なハイブリダイゼーション条件下でi)もしくはii)からのヌクレオチド配列相補鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列であることを特徴とする、前述の単離cDNAを包含する。
【0012】
さらにもう一つの好ましい態様において、単離ゲノムDNA断片は、Phaffia rhodozymaの遺伝子から誘導することができ、
(i)配列番号:3に記載のゲノムDNA配列、
(ii)配列番号:3に記載のゲノムDNA配列の同義または対立遺伝子変異体、および
(iii)一つまたは複数のヌクレオチドの付加、挿入、欠失および/または置換を有する配列番号:3に記載のゲノムDNA配列の誘導体で、前記酵素活性を有するポリペプチドをコードする誘導体から選択される。
【0013】
もう一つの好ましい態様において、本発明は、前記ヌクレオチド配列が
(i)配列番号:3に記載のヌクレオチド配列、
(ii)遺伝コードの縮退のために、ヌクレオチド配列(i)によってコードされるアミノ酸配列と同じ配列を有するアスタキサンチンシンターゼをコードするヌクレオチド配列、または
(iii)標準的なハイブリダイゼーション条件下でi)もしくはii)からのヌクレオチド配列相補鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列であることを特徴とする、前述の単離ゲノムDNAを包含する。
【0014】
本発明のもう一つの局面は、前述のクローニングされたDNA断片の発現によって得られる、P. rhodozymaにおけるβ-カロテンからアスタキサンチンへの反応に関与するアスタキサンチンシンターゼ活性を有する組換えポリペプチドを提供する。
【0015】
本発明の組換えポリペプチドの好ましい態様は、
(a)前記ポリペプチドが配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する、または
(b)該ポリペプチドが(i)対立遺伝子変異体または(ii)一つもしくは複数のアミノ酸の付加、挿入、欠失および/または置換を有し、且つ記述された酵素活性を有する酵素から選択される、(a)で定義されたペプチドの変異体であることを特徴とする。
【0016】
したがって、本発明は本発明のポリペプチドの変異体をも包含する。このような変異体は、本発明のアミノ酸配列に基づき、このような誘導体が依然として本発明の対応するポリペプチドと同じ型の酵素活性を有するか、またはこのような誘導体が対立遺伝子変異の周知の現象の結果である、このような配列の一つまたは複数のアミノ酸残基の付加、挿入、欠失および/または置換によって定義される。このような活性は当技術分野において公知の、または本明細書に具体的に記載されているいかなる解析によっても評価することができる。これらの変種は、当技術分野で公知のケミカルペプチド合成法により、または当技術分野で公知の方法、例えばSambrookらによって記された方法(Molecular Cloning, Cold Spring Harbour Laboratory Press, New York, USA second edition 1989)によって、本明細書に記載されたDNA配列を基にして組換え技術により作製できる。概してこのような分子の活性を変化させずにタンパク質およびペプチドのアミノ酸を改変する方法については、当技術分野で公知であり、例えばH. NeurathおよびR. L. Hillによって記された書「The Proteins」に記載されている(Academic Press, New York, 1979, 特に図6、14ページ参照)。最も一般的に行われている改変は次のようなものである:Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly、これらの逆も同様である。
【0017】
本発明のシンターゼの活性に重要な影響を及ぼすことなく、一つもしくは複数のアミノ酸残基を該酵素のN-末端および/またはC-末端において付加または欠失させることもまた可能である。
【0018】
さらに、本発明は、例えば配列表に開示されているDNA配列ならびにその相補鎖だけを目的としているのではなく、標準的な条件下でこのような配列またはその断片とハイブリダイズするDNA配列、および遺伝コードの縮退のために標準的な条件下でこのような配列とハイブリダイズしないが、まったく同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含むDNA配列も同様に目的とする。
【0019】
該酵素活性は、対応する遺伝子を該β-カロテノイド生成宿主生物中に発現する形質転換により、β-カロテノイド生成微生物にアスタキサンチン生産をもたらす酵素活性として表される。
【0020】
該酵素活性はさらに、図1に記載のβ-カロテンからアスタキサンチンへの中間体キサントフィル、例えば、エキネノン(echinenone)、β-クリプトキサンチン(β-cryptoxanthin)、カンタキサンチン(canthaxanthin)、3'-ヒドロキシエキネノン(3'-hydroxyechinenone)、3-ヒドロキシエキネノン(3-hydroxyechinenone)、ゼアキサンチン(zeaxanthin)、フェニコキサンチン(phoenicoxanthin)、アドニキサンチン(adonixanthin)を蓄積させる微生物にアスタキサンチン生産をもたらすという酵素活性として表される。
【0021】
該酵素活性はまた、NADPH等の適当な電子供与体を伴った膜画分、例えばミクロソーム等の天然膜及びリポソーム等の人工膜、を適当な試験管内条件下において多様な基質、例えばβ-カロテン、エキネノン、β-クリプトキサンチン、カンタキサンチン、3'-ヒドロキシエキネノン、3-ヒドロキシエキネノン、ゼアキサンチン、フェニコキサンチン、及びアドニキサンチン等からアスタキサンチンの生成を触媒する酵素活性としても表される。
【0022】
本発明においては、特記されていない限り、ハイブリダイゼーション反応は概して、ほとんどのDNAプローブのTmより15℃ないし35℃低い42℃で行われ、それによりハイブリダイゼーションの最高値を確実にしている。所望されるハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、例えば塩濃度及び、完全に適合するハイブリッドのためのTmより約5℃ないし15℃低い温度でフィルターを洗浄することにより達成される。しかしながら、塩濃度及び温度は、配列の重要なミスマッチが期待される場合(例えば異種における同一遺伝子または別だが関係する配列のプローブを行う場合)にはより低度なストリンジェント条件に調整されても良い。
【0023】
本明細書においてハイブリダイゼーションの「標準的な条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションシグナルを検出するために当業者が一般に用いる条件で、例えばSambrookら(前掲)によって記載されている条件、または好ましくはいわゆるストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび非ストリンジェントな洗浄条件、またはより好ましくは当業者であれば精通しており、例えばSambrookら(前記)に記載されているいわゆるストリンジェントなハイブリダイゼーションおよびストリンジェントな洗浄条件、またはより好ましくは例えばDIG(ジゴキシゲニン)標識キットおよびBoehringer Mannheim(ドイツ、マンハイム)の発光検出キットを製造元が提供するプロトコールにしたがって用い、ハイブリダイゼーション溶液として
ホルムアミド(和光純薬工業株式会社、日本、大阪)50%(V/V)
5xSSC
ブロッキング試薬(Boehringer)2%(W/V)
N-ラウロイルサルコシン0.1%(W/V)
SDS 0.3%(W/V)
を用いて42℃の温度で終夜反応させた後洗浄し、製造元が示すとおりに検出する、いわゆる中等度にストリンジェントな条件を意味する。
【0024】
例えば、典型的な洗浄順としては、ハイブリダイズしたブロットをまず最初に室温にて水溶液中2×SSC及び0.1%SDSを含む溶液Aにての洗浄が含まれる。次にブロットは所望されるストリンジェンシーの水準に基づき決定された温度にて水溶液中0.1×SSC及び0.1%SDSを含む溶液B中にて二度洗浄される。例えば、完全に合致したハイブリッドはおよそ55℃から65℃までの温度にて洗浄することができるであろうし、また或いは、関連遺伝子に対する或いは異種由来のプローブに対しては洗浄温度は例えばおよそ37℃から52℃までとなろう。特記されていない限り本発明においては本洗浄条件が用いられた。
【0025】
本発明のDNA配列にハイブリダイズする(前述参照)、またはこのようなDNA配列に基づいて設計したプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により構築できることから、本発明のDNA配列から誘導したDNA配列を、示されたとおり、すなわちPCR反応により、または部位特異的突然変異誘発[例えば、Smith、Ann. Rev. Genet. 19、423(1985)参照]により、または例えば欧州特許第747483号に記載のとおり合成的に、または例えばSambrookら(前掲)に記載の「分子クローニング」の通常の方法により、調製することができる。
【0026】
本発明はまた、前述のDNAを含むベクターまたはプラスミドおよび前述のDNAまたは前述のベクターもしくはプラスミドによって形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞も包含する。
【0027】
本発明はまた、組換えDNAを用いた宿主の形質転換によって得られる、前述のDNAを有する組換え生物も提供する。
【0028】
本発明はまた、β-カロテンからアスタキサンチンへの反応を触媒することができる酵素ポリペプチドの製造法であって、前述の組換え生物を該酵素ポリペプチドの産生を導く条件下で培養することを含む方法にも関する。
【0029】
さらなる局面において、本発明は、前述のDNAの一つまたは複数を適当な宿主生物に導入し、この形質転換された生物をアスタキサンチンの産生を導く条件下で培養することを含む、アスタキサンチンの生産法を提供する。
【0030】
本発明の酵素ポリペプチドは、適当な再構成膜を含む適当な反応混合物中、適当な電子供与体存在下で、前述のβ-カロテンからアスタキサンチンへの反応に関与するアスタキサンチンシンターゼ活性を有する組換えポリペプチドにβ-カロテンを接触させる段階を含む、アスタキサンチンの生産法に対しても有用であると考えられる。この方法において、前記組換えポリペプチドは、マイクロゾームまたはミトコンドリア膜などの生体膜から調製する再構成膜の形で存在してもよい。組換えポリペプチドはまた、リポソームなどの再構成人工膜の形で存在してもよい。チトクロームP450レダクターゼなどの電子供与体は、本発明の酵素の反応中心を還元することができる適当な電子供与体である。
【0031】
一般に、生合成酵素をコードする遺伝子をクローニングするための多くの方法がある。例えば、デジェネレートPCRを使用することができる。デジェネレートPCRは、同一または類似の機能を有する他の種由来の既知の酵素の一つと高いアミノ酸配列相同性を有する関心対象遺伝子をクローニングする方法である。デジェネレートPCRで一組のプライマーとして用いるデジェネレートプライマーを、アミノ酸配列の対応するヌクレオチド配列への逆翻訳によって設計した(「デジェネレーテッド」)。このようなデジェネレートプライマーにおいて、A、C、GもしくはTのいずれかからなる混合プライマー、または多義コードにイノシンを含むプライマーを一般に用いる。関心対象遺伝子の部分断片のクローニング後に、クローニングし、標識した部分DNA断片をプローブに用いて、完全な遺伝子を含む遺伝子断片をスクリーニングすることができる。
【0032】
活性を酵素アッセイによって測定することができる酵素をコードする遺伝子をクローニングする場合、酵素活性のモニタリングによるこのような酵素の精製と酵素のアミノ酸配列の決定が良い方法である。このようにして得たアミノ酸配列は、対応するヌクレオチド配列に容易に逆翻訳される。対応するヌクレオチド配列を有するDNA断片を、DNA合成機を用いてインビトロで合成し、ハイブリダイゼーションプローブとして直接用いるために標識することができる。ハイブリダイゼーションプローブを得るための別法は、アミノ酸配列情報を用いたデジェネレートPCR法である。
【0033】
機能を酵素的に特徴付けることができない遺伝子をクローニングするために、ショットガンスクリーニングと呼ばれる方法が通常のクローニング法として用いられてきた。この方法は、関心対象となるいかなる生合成酵素をコードする特定の遺伝子も持たない突然変異株の単離と、そのように突然変異した遺伝子に対応する無傷の遺伝子を有する生物から調製したDNAによる突然変異株の形質転換とを含む。このような突然変異体の単離には、通常の突然変異誘発を用いることが多い。親株のものと同じ表現型を獲得したことについては、その栄養要求性などの試験によって確認することができる。DNA供与体が突然変異株の突然変異遺伝子に対応する遺伝子を含む場合、そのような遺伝子による形質転換体は遺伝子相補の結果として親株と同じ表現型を獲得した。
【0034】
ショットガンクローニングのベクターとしては、クローニング宿主中で複製できるか否かには関係なく、いかなる形のベクターも用いることができる。複製ベクターの利用には、相補能力が必要条件であり、このようなベクターが受容体のゲノムに対する相同配列を含む必要はない。非複製ベクターを用いる場合は、ドナーとレシピエントDNA間で組換えを起こすために、このようなベクターが宿主のゲノムに対する相同配列を含むことが必須である。
【0035】
本発明のDNAのクローニングには、「色相補(color complementation)」と呼ばれる方法を用いることができる。大腸菌などの非カロテノイド生成生物は、エルウィニア・ウレドボーラ、エルウィニア・ヘルビコーラなどのカロテノイド生成生物からクローニングすることができるカロテノイド生成遺伝子による形質転換の結果、カロテノイド生成能を獲得することができる。crtE、crtB、crtIおよびcrtYを有する大腸菌はβ-カロテンを産生し、細胞を黄色に着色させることができる。このような特徴を利用して、多くのカロテノイド生成遺伝子が細菌および植物などの様々なカロテノイド生成生物からクローニングされている。例えば、リコペンシクラーゼをコードするcrtY遺伝子をクローニングするために、pUCベクターに対する適合性ベクター上のcrtE、crtBおよびcrtIを有する大腸菌を形質転換宿主として調製する。このような宿主はリコペンの蓄積を示す赤色に変わる。次に、カロテノイド生成生物からのcDNAまたはゲノムライブラリーをpUCベクターを用いて構築することができる。ドナーであるカロテノイド生成生物のcrtYに対応する遺伝子が形質転換したプラスミド中に存在する場合、遺伝子相補が起こり、大腸菌はβ-カロテン生産能力を獲得したことを示す黄色に変わると考えられる。事実、crtE、crtBYおよびcrtI遺伝子がこの方法によってP. rhodozymaからクローニングされた(Verdoesら、国際公開公報第97/23633号)。
【0036】
β-カロテンからアスタキサンチンへの反応に関与する遺伝子のクローニングに関して、KajiwaraらはE.ウレドボーラからのcrtE、crtB、crtIおよびcrtY遺伝子を有する宿主大腸菌でP. rhodozymaからcDNA発現ライブラリーを構築した(Kajiwaraら、国際公開公報第96/28545号、1996)。このようなクローニングシステムにおいて、β-カロテンからアスタキサンチンへの反応に関与する遺伝子を、理論的にはカンタキサンチンまたはアスタキサンチンの蓄積を示す赤色着色を判定することによってP. rhodozymaからクローニングすることができると考えられる。しかし、このような遺伝子はこれまでに報告されていない。多くの研究者らが膜に結合したカロテノイド生成酵素が酵素複合体を形成するという可能性について推測している。このようなモデルにおいて、カロテノイド生成酵素の間の親和性が効率的なカロテノイド生成に必須であると考えられる。このような仮定に基づき、カロテノイド生成の連続反応において外因性酵素はphaffiaのカロテノイド生成酵素に親和性を有していないと考えられるため、この色相補法はアスタキサンチン生合成の最終段階、すなわちβ-カロテンからアスタキサンチンへの段階に関与する酵素のクローニングには適していない。
【0037】
本文に用いられている通り、「蛋白質」及び「ポリペプチド」という用語は本文を通じて可換的に用いられている。「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語も同様に可換的に用いられている。
【0038】
「核酸」という用語は制限なくDNA、RNA、cDNA及びmRNAを包含する意味を有する。本文に用いられている通り、ここで述べるDNAとはゲノム由来の、合成の或いは半合成のものの可能性を有する。更には本発明における核酸とは一本鎖及び二本鎖の分子を包含する。
【0039】
本文に用いられているとおり、「由来の」という用語は例えばP.rhodozymaのような生物中で天然に存在する蛋白質、ポリペプチド及び/またはポリヌクレオチドを意味する。しかしながら、ポリペプチド及びポリヌクレオチドはどんな起源のものからも生成/取得できる可能性を有する。従って、本発明には組換え体の、合成の、そして半合成の蛋白質、ポリペプチドそしてポリヌクレオチドが包含される。
【0040】
本発明は例えば「単離されたポリペプチド」「単離されたポリヌクレオチド」などの様な「単離された」と表現される構成要素を有する。ここで用いられている通り「単離された」という語はポリペプチドもしくはポリヌクレオチドが精製された、または後の実施例で更に詳細に述べられるように少なくとも部分精製されたという意味を有する。
【0041】
本発明において、1999年2月18日に米国基準株収集(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託番号74486のブダペスト条約寄託として再寄託されており、β-カロテンからアスタキサンチンへの反応が遮断されたP. rhodozyma ATCC96815を形質転換宿主として用いた(Schroeder, W.A.およびJohnson, E.A.、J. Ind. Microbiol. 14、502〜507、1995)。1998年4月8日に米国基準株収集(ATCC)に寄託番号74438のブダペスト条約寄託として同様に再寄託されているP. rhodozyma ATCC96594の野生型株の染色体から調製したゲノムライブラリーによるこの突然変異体の形質転換を用いて、アスタキサンチンを産生するクローンを単離した。本発明において、P. rhodozymaにおけるβ-カロテンからアスタキサンチンへの反応を相補するこのような遺伝子断片を単離し、そのヌクレオチド配列を決定した。
【0042】
本発明のこのような遺伝子/DNAを、遮断された突然変異の相補以外の遺伝子増幅またはプロモーター改変を用いた遺伝子量効果によって、アスタキサンチンの過剰生産のために用いることができる。
【0043】
一般に遺伝子は、異なった機能を持ついくつかの部分から構成されている。真核生物では、リボゾームRNA(rRNA)、微小核RNA(snRNA)およびトランスファーRNA(tRNA)の遺伝子とは異なり、相当するタンパク質をコードする遺伝子は、未成熟メッセンジャーRNA(pre-mRNA)に転写される。RNAポリメラーゼII(PolII)は、この転写において中心的役割をしているが、プロモーターを含む上流域、および上流活性化配列(UAS)を含むシスエレメント、ならびにトランス作用タンパク質ファクターなしで、PolIIは単独で転写を始めることはできない。最初に、いくつかの基礎タンパク質成分からなる転写開始複合体は、発現する遺伝子の5’側に隣接した領域にあるプロモーター配列を認識する。この過程で、熱ショック応答、または栄養飢餓への適応などのある特別な調節の下で発現される遺伝子の場合、いくつかの付加的に動員される物質が必要である。そのような場合、UASがプロモーター配列の周辺にある5’末端非翻訳上流域に存在する必要があり、ポジティブまたはネガティブ調節タンパク質は、UASを認識し結合する。転写開始複合体のプロモーター配列への結合強度は、プロモーター周辺のトランス作用ファクターの結合のようなものに影響され、このことにより転写活性の調節が可能となる。
【0044】
リン酸化による転写開始複合体の活性化後、転写開始複合体は転写開始点から転写を開始する。転写開始複合体のいくつかの部分は、プロモーター領域から遺伝子の3’方向へ分離して伸長複合体となり(この段階は、プロモータークリアランスと呼ばれる)、伸長複合体は遺伝子の3’側の下流域に位置する終結配列へ到達するまで、転写を続ける。このようにして生成した前駆mRNAは核において、転写開始部位にほぼ相当するキャップサイトでのキャップ構造の付加により、修飾される。そして、3’側の下流域に位置するポリAシグナル部位で伸長したポリAの付加により修飾される。次に、イントロン構造はコード領域から除かれ、エキソン部分は結合し、相当するタンパク質の一次アミノ酸配列に相当するオープンリーディングフレームが生成される。成熟mRNAが生成されるこの修飾は安定な遺伝子の発現に必要である。一般的な意味でcDNAは、この成熟mRNA配列から逆転写されたDNA配列に相当する。cDNAは、実験的に成熟mRNAを鋳型として用い、ウイルス種に由来する逆転写酵素によって合成される。
【0045】
本発明において、P. rhodozyma野生型株にβ-カロテン生産を付与したP. rhodozyma ATCC96815株の変異点が決定された。塩基配列決定の結果から、AST遺伝子の第8イントロンのスプライシング配列における塩基の変化が、mRNAの不適当なスプライシングによってβ-カロテンの特異的な蓄積といった表現型の原因となっていることが示唆された。RT-PCR分析により、AST遺伝子の不適当にスプライシングされた産物が検出され、変異点の同定が強く支持された。
【0046】
本発明はまた、大腸菌などの異なる宿主生物で発現されうる組換えAST遺伝子をも提供する。本発明において、このような組換えAST遺伝子が大腸菌で発現され、そのサイズが導出された分子量に対応する蛋白質産物をAST遺伝子がコードすることが確認された。アスタキサンチンの生物的生産を、新規AST遺伝子およびこのような組換えDNA法の利用によって実現することができる。
【0047】
本発明にしたがい、アスタキサンチン生合成の最終段階に関与する酵素をコードする遺伝子を、P. rhodozymaのcDNAライブラリーからクローニングし、そのヌクレオチド配列を決定した。さらに、プロモーターおよびターミネーターを含むゲノムDNAの一部をクローニングし、プロモーターおよびターミネーター領域を含むその完全な遺伝子のクローニングに用いられた。
【0048】
そのコード領域、イントロン、ならびにプロモーターおよびターミネーターなどの調節領域を有する完全な遺伝子を、スクリーニングプローブとして標識cDNA断片を用いることにより適当な宿主中のファージまたはプラスミドベクターにおいて構築したゲノムライブラリーをスクリーニングすることによってクローニングすることができる。一般に、ゲノムライブラリー構築に最もよく用いられる宿主株の一つは大腸菌である。ベクターとしては、ラムダファージベクターなどのファージベクター、またはpUCベクターなどのプラスミドベクターを用いることができる。このようにして、例えばP. rhodozyma DNAから構築したゲノムライブラリーは、関心対象遺伝子の一部を含む標識DNA断片をプローブに用いることによってスクリーニングすることができる。次いで、ハイブリダイズしたプラークまたはコロニーを回収し、サブクローニングおよび/またはヌクレオチド配列の決定に用いることができる。
【0049】
関心対象となる蛋白質の所望の酵素活性を、そのDNA配列を利用することによって増強するいくつかの方法がある。
【0050】
一つのストラテジーは、遺伝子自体をその本来の形で用いるというものである。最も単純なアプローチは、プロモーターおよびターミネーターなどの調節配列を含むゲノム配列を増幅することである。これは、関心対象の酵素をコードするゲノム断片を、P. rhodozymaで機能する選択マーカーを有する適当なベクター中にクローニングすることにより実施することができる。宿主を毒性抗生物質存在下で生存可能にする酵素をコードする薬物耐性遺伝子を、選択マーカーとして用いることが多い。pGB-Ph9上にあるG418耐性遺伝子(Weryら、Gene、184、89〜97、1997)は、このようなベクター構築の一例である。ベクターとしては、二種類のベクターを一般に用いることができる。これらのうちの一つは自律複製配列を持たない組み込みベクターである。プラスミドpGB-Ph9はこの型のベクターの一例である。このようなベクターは自律複製配列を持たないため、前述のベクターはそれ自体では複製できず、ベクターと染色体との間の相同配列を用いた単交差組換えの結果、宿主の染色体に組み込まれた形でしか存在できない。選択培地中の対応する薬物濃度を上げることにより、組み込まれた遺伝子が染色体上で増幅した株だけが生き残ることができる。別の種類のベクターは、自律複製配列を有する複製可能なベクターである。このようなベクターは多コピー状態で存在しうる。この型のベクターにおいて、適当な栄養要求マーカーを有する宿主中で栄養相補マーカーを用いることもできる。増殖にシチジンを必要とするP. rhodozyma ATCC24221株は、このような栄養要求体の一例である。ATCC24221のDNA供与体としてCTPシンセターゼを用いることにより、栄養相補を用いた宿主ベクターシステムを確立することができる。
【0051】
関心対象酵素を過剰発現させるもう一つのストラテジーは、関心対象遺伝子を強力なプロモーターの下に置くことである。このようなストラテジーにおいて、関心対象遺伝子は必ずしも多コピー状態である必要はない。さらに、プロモーター活性が適当な増殖期および適当な培養時期に誘導されるプロモーターを用いることもできる。アスタキサンチンの生産は、二次代謝物生産期などの増殖後期に加速する。例えば、カロテノイド生成遺伝子をベジティティブプロモーターの制御下に置くことによって、これらの遺伝子の遺伝子発現を指数増殖期に誘導することができ、アスタキサンチンの生産を生産株の増殖に関連させることができる。
【0052】
本発明において、このような構成的プロモーターおよびターミネーターの一例として、トリオースホスフェートイソメラーゼ(TPI)遺伝子のプロモーターおよびターミネーター断片をP. rhodozymaからクローニングした。さらに、アスタキサンチン生産の回復が、TPI遺伝子由来の構成的プロモーターおよびターミネーターによって推進されるβ-カロテン生産性P. rhodozyma ATCC96815の染色体上の異なる遺伝子座(アミラーゼ遺伝子があるAMY遺伝子座)でAST遺伝子が発現される形質転換体で確認された。
【0053】
関心対象酵素を過剰発現するさらにもう一つの方法は、その調節エレメントにおける変異である。この目的のために、β-ガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光蛋白質をコードする遺伝子などの一種のレポーター遺伝子を関心対象遺伝子のプロモーター配列とターミネーター配列との間に挿入し、プロモーター、ターミネーターおよびレポーター遺伝子を含むすべての部分が融合し、共に機能するようにする。前述のレポーター遺伝子が染色体またはベクター上に導入されたP. rhodozyma形質転換体を生体内で変異処理して、関心対象遺伝子のプロモーター領域における突然変異を誘導することができる。変異は、レポーター遺伝子によってコードされる活性の変化の検出によってモニターすることができる。変異が遺伝子のシスエレメントで起こった場合、変異点は変異を起こした遺伝子の回収と配列決定によって決定できると考えられる。次いでこの変異を、本来のプロモーター配列と変異配列との間の組換えによって、染色体上のプロモーター領域に導入することができる。同様に、トランス作用ファクターをコードする遺伝子の変異も起こすことができる。
【0054】
プロモーター領域のシスエレメントのインビトロ変異誘発によって、変異を誘導することもできる。このアプローチでは、5’末端に目的の遺伝子に由来するプロモーター領域、および3’末端に目的の遺伝子に由来するターミネーター領域が融合したレポーター遺伝子を含む遺伝子カセットを、変異誘発し、次にP. rhodozymaへ導入する。レポーター遺伝子の活性の違いを検出することにより、効果的な変異をスクリーニングすることができる。そのような変異は、インビボの変異導入の場合と同じ方法で、染色体上の本来のプロモーター領域の配列に導入できる。
【0055】
DNA供与体として、β-カロテンからアスタキサンチンへの反応を触媒する酵素をコードする遺伝子を導入することができる。もともとの配列と同一なコード配列は、1つ以上のアミノ酸が付加、欠失、および/または置換されているアリル変異体同様、相当する酵素が同種の酵素活性を持つ限り利用できる。そしてそのようなベクターは、P. rhodozymaへ形質転換によって導入でき、形質転換体は、pGB-Ph9の場合にはジェネチシンを含むYPD寒天培地または栄養要求株ATCC24221をレシピエントとして使う場合にはシチジンを欠く最小寒天培地のような適当な選択培地上に、形質転換した細胞を播くことにより選択することができる。
【0056】
そのような遺伝子的に処理されたP. rhodozymaを、適当な培地で培養し、アスタキサンチンの生産性を評価することができる。このようにして選択されたアスタキサンチンの高生産株は、その生産性と遺伝子工学によって導入された遺伝子またはタンパク質の発現のレベルとの関係をみて、確かめることができると思われる。
【0057】
本発明に係る単離DNAにおいては、(1)好ましくはP. rhodozymaにおけるβ-カロテンからアスタキサンチンへの反応を触媒するアスタキサンチンシンターゼ活性を有する酵素をコードするヌクレオチド配列を含む単離DNAであることを特徴とする。
【0058】
また、本発明に係る単離DNAにおいては、(2)(a)前記ヌクレオチド配列が配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する酵素をコードする、または
(b)該ヌクレオチド配列が(i)対立遺伝子変異体、または(ii)一つもしくは複数のアミノ酸の付加、挿入、欠失および/または置換を有するが、依然として同じタイプの酵素活性を有する酵素より選択される該酵素の変異体をコードすることを特徴とする、上記(1)記載の単離DNAであることを特徴とする。。
【0059】
また、本発明に係る単離DNAにおいては、(3)前記ヌクレオチド配列が
(i)配列番号:2に記載のヌクレオチド配列、
(ii)遺伝コードの縮退のために、ヌクレオチド配列(i)によってコードされるアミノ酸配列と同じ配列を有するアスタキサンチンシンターゼをコードするヌクレオチド配列、または
(iii)標準的なハイブリダイゼーション条件下でi)もしくはii)からのヌクレオチド配列相補鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列であることを特徴とする、上記(1)記載の単離DNAであることを特徴とする。
【0060】
また、本発明に係る単離DNAにおいては、(4)前記ヌクレオチド配列が
(i)配列番号:3に記載のヌクレオチド配列、
(ii)遺伝コードの縮退のために、ヌクレオチド配列(i)によってコードされるアミノ酸配列と同じ配列を有するアスタキサンチンシンターゼをコードするヌクレオチド配列、または
(iii)標準的なハイブリダイゼーション条件下でi)もしくはii)からのヌクレオチド配列相補鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列であることを特徴とする、上記(1)記載の単離DNAであることを特徴とする。
【0061】
また、本発明に係るベクターまたはプラスミドにおいては(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項記載の単離DNAを含むベクターまたはプラスミドであることを特徴とする。
【0062】
また、本発明に係る宿主細胞においては、(6)上記(1)〜(4)のいずれか一項記載の単離DNAまたは上記(5)記載のベクターもしくはプラスミドによって形質転換またはトランスフェクションされた宿主細胞であることを特徴とする。
【0063】
また、本発明に係るポリペプチドにおいては、(7)上記(1)〜(4)のいずれか一項記載の単離DNAによってコードされるポリペプチドであることを特徴とする。
【0064】
また、本発明に係る製造方法においては、(8)上記(6)記載の形質転換された宿主細胞を前記酵素の産生を導く条件下で培養する段階を含む、アスタキサンチンシンターゼ活性を有するポリペプチドの製造方法であることを特徴とする。
【0065】
また、本発明に係る製造方法においては、(9)上記(1)〜(4)のいずれか一項記載の単離DNAの一つまたは複数を適当な宿主生物に導入する段階と、得られた生物をアスタキサンチンの産生を導く条件下で培養する段階と、培養物からアスタキサンチンを回収する段階とを含む、アスタキサンチンの生物学的製造方法であることを特徴とする。
【0066】
また、本発明に係る製造方法においては、(10)適当な再構成膜を含む適当な反応混合物中、適当な電子供与体存在下で、アスタキサンチンシンターゼ活性を有するポリペプチドにβ-カロテンを接触させる段階を含む、アスタキサンチンの製造方法であることを特徴とする。
【0067】
また、本発明に係る方法においては、(11)ポリペプチドがミクロゾームまたはミトコンドリア膜などの生体膜から調製した再構成膜の形で存在する、上記(10)記載の方法であることを特徴とする。
【0068】
また、本発明に係る方法においては、(12)ポリペプチドがリポソームなどの再構成人工膜の形で存在する、上記(10)記載の方法であることを特徴とする。
【0069】
また、本発明に係る方法においては、(13)前記電子供与体がチトクロームP450レダクターゼのように反応中心を還元することができる適当な電子供与体である、上記(10)記載の方法であることを特徴とする。
【0070】
【発明の実施の形態】
以下に記載する特定の実施例において、次に示す物質および方法を使用した。また、図面は、本明細書の詳細な説明と共に本発明をさらに例示するために含まれる。
【0071】
株
P. rhodozyma ATCC96594(この株は1998年4月8日に寄託番号74438としてブダペスト条約寄託の下、再寄託された。)
【0072】
P. rhodozyma ATCC96815(この株は1999年2月18日に寄託番号74486のブダペスト条約寄託として再寄託された)
【0073】
ベクター
pUC19(宝酒造、大津、日本)
λZAPII(Stratagene)
pCR2.1-TOPO(Invitrogen)
pET11c(Stratagene)
【0074】
培地
P. rhodozyma株はYPD培地(DIFCO、デトロイト、USA)で通常に維持される。大腸菌株は、LB培地(1リットルあたり、10gバクトトリプトン、5g酵母抽出物(DIFCO)、5g NaCl)で維持された。寒天培地を調製するときは、1.5%の寒天(WAKO、大阪、日本)を添加した。
【0075】
方法
一般的な分子生物学的方法は、「Molecular cloning: a Laboratory Manual, 第二版(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989年)」に記載されている方法に従って行った。制限酵素およびT4DNAリガーゼは宝酒造から購入した。
【0076】
P. rhodozymaからの染色体DNAの単離は、QIAGEN Genomic Kit (QIAGEN、Hilden、Germany)を用い、製造元が提供したプロトコールに従って行った。形質転換した大腸菌からのプラスミドDNAのミニプレップは、自動DNA単離システム(PI-50,倉紡株式会社、大阪、日本)を用いて行った。大腸菌形質転換体からのプラスミドDNAのミディプレップは、QIAGENカラム(QIAGEN)を用いて行った。アガロースからのDNA断片の単離と精製はQIAquickまたはQIAEX II (QIAGEN)を用いた。
【0077】
DNA塩基配列決定のための蛍光DNAプライマーはPharmaciaから購入した。DNA塩基配列決定は自動蛍光DNAシーケンサー(ALFred、Pharmacia、スウェーデン、ウプサラ)を用いて実施した。
【0078】
DH5αのコンピテント細胞は、東洋紡から購入した。
【0079】
P. rhodozymaのバイオリスティック法による形質転換のための機器および試薬を日本バイオラッド・ラボラトリーズ株式会社(日本、東京)から購入した。
【0080】
【実施例】
実施例1.
P.rhodozymaからのゲノムDNAの単離
P.rhodozyma(ATCC96594)からゲノムDNAを単離するため、QIAGENゲノムキットを、製造者の説明書に従って用いた。
【0081】
はじめに、YPD培地で終夜培養した100ml培養液からP.rhodozyma ATCC96594の細胞を、遠心分離(1500xg、10分)で回収し、TE緩衝液(1mM EDTAを含む10mM トリス/HClでpH 8.0に調製)で1回洗浄した。QIAGENゲノムキットのY1緩衝液8mlに懸濁した後、リチカーゼ(SIGMA、St.Louis, USA)を2mg/mlの濃度で加えて酵素消化により細胞を破壊させ、反応混合液を30℃で90分インキュベートしてから、次の抽出段階に進んだ。最終的に、20μgのゲノムDNAが得られた。
【0082】
実施例2.
P. rhodozyma ATCC96594からのゲノムライブラリーの構築
上述したとおり、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAP)の遺伝子のプロモーター領域とターミネーター領域との間にG418耐性構造遺伝子を挿入し、本薬物耐性マーカーカセットをKpnI-およびHindIII-消化pUC19にライゲートすることにより、このようなカセットを有するプラスミドを構築した。このプラスミドをpUC-G418と命名し、その後の試験に用いた。次いで、ClaIリンカーをpUC-G418ベクターの唯一のEcoRI部位にライゲートし、その結果プラスミドpUC-G418Cl512を得、Phaffiaのゲノムライブラリー構築においてベクター基本骨格として用いた。
【0083】
次いで、実施例1で述べたとおり、P. rhodozyma ATCC96594から調製した染色体DNA 10μgを1.6ユニットのHpaIIを用いて37℃で45分間部分消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。臭化エチジウムで染色後、部分消化した4〜10kbのDNA種を透析膜を用いた電気溶出によって回収した。回収したHpaII断片のエタノール沈降後、1.215μgのDNAを得た。
【0084】
次に、3μgのpG418Cl512を10ユニットのClaIにより37℃で1時間消化し、エタノールで沈降した。次いで、ClaI消化したpG418Cl512をウシ腸アルカリ性ホスファターゼを用いて脱リン酸化した。ClaI消化し、脱リン酸化したpG418Cl512ベクターを次いで、アガロースゲル電気泳動にかけ、QIAquickプロトコールを製造元の指示に従って用い、DNA断片を回収した。最終的に、2.62μgのClaI消化し、脱リン酸化したpG418Cl512を得た。
【0085】
2.62μgのClaI消化し、脱リン酸化したpG418Cl512を1.22μgのHpaII部分消化したPhaffiaゲノムDNAと16℃で終夜ライゲートし、得られたライゲーション溶液を大腸菌DH5α株の形質転換にDNA供与体として用いた。全ライゲーション混合物(270μl)を1mlのDH5αコンピテント細胞(東洋紡)にトランスファーした。42℃で45秒間の熱ショック処理に続き氷上に30分間維持した後、形質転換した細胞を氷上に2分間置き、次いで下記の成分を含む5mlのSOC培地を加えて37℃で1時間インキュベートした:
0.5%酵母抽出液(DIFCO)
2%トリプトン(DIFCO)
10mM NaCl
2.5mM KCl
10mM MgCl2
20mM MgSO4
20mMグルコース。
【0086】
このようにインキュベートした細胞を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地100mlに移した。培養を37℃で終夜継続し、次いで細胞をプラスミドのミディ調製のために回収した。
【0087】
QIAGENミディプレップカラムを製造元が提供する方法に従って用い、回収した細胞からプラスミドライブラリーを調製した。最終的に0.3mg/mlのPhaffiaゲノムライブラリーを全量にして5ml得、その後の試験でゲノムライブラリーとして用いた。
【0088】
実施例3.
P. rhodozyma ATCC96815のバイオリスティック法を用いた形質転換
「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」(Johnstonら、53;147〜153、1996)に記載の方法に従い、形質転換を実施した。宿主株として、P. rhodozyma ATCC96815をYPD培地中で定常期まで培養した。培養液の遠心分離後、滅菌水を用いて細胞を10倍に濃縮し、細胞懸濁液200μlを100μg/mlのジェネチシン、0.75Mのマンニトールおよびソルビトールを含むYPD培地上に播種した。実施例2に記載のとおりに調製したゲノムライブラリー5μgを0.9μm金粒子1.5mgにコーティングし、バイオリスティック法による形質転換にDNA供与体として用いた。20℃で1週間のインキュベーション後、約20,000のジェネチシン耐性クローンが得られた(各プレートに300〜500コロニー)。ほとんどの形質転換体が黄色を呈した(宿主株ATCC96815と同様に)が、3つのコロニーは赤に着色し、これらをその後の試験に用いた。
【0089】
実施例4.
赤色着色形質転換体から得られたカロテノイドの分析
P. rhodozyma ATCC96815から得た赤色着色形質転換体を、試験管内で10mlのYPD培地中20℃で培養した。次いで、培養液0.5mlから細胞を回収し、細胞からカロテノイドを抽出するために用いた。P. rhodozymaの細胞から前述のガラスビーズを用いた破壊によるカロテノイド抽出後、P. rhodozymaのカロテノイド含有量をHPLCによって測定した。抽出後、破壊した細胞を遠心分離により回収し、得られた上清をHPLCでカロテノイド含有量について分析した。
HPLCカラム:Chrompack Lichrosorb si-60(4.6mm、250mm)
温度:室温
溶出液:アセトン/ヘキサン(18/82)の溶出液に1ml/Lの水を添加
注入量:10μl
流速:2.0ml/分
検出:UV450nm
β-カロテンのサンプルはSIGMAから購入し、アスタキサンチンはHoffman La-Roche(スイス、バーゼル)から購入した。
【0090】
HPLC分析の結果、宿主株ATCC96815はβ-カロテンしか産生しないが、3つの赤色形質転換体はすべてアスタキサンチンを特異的に産生することが確認された。
【0091】
実施例5.
アスタキサンチンを産生した赤色形質転換体の染色体からのプラスミド回収
染色体DNAをすべてのアスタキサンチン生産形質転換体から調製した。この目的のために、実施例1に記載のとおり、QIAGENゲノムキットを製造元が指定する方法にしたがって用いた。このようにして調製した5μgの染色体DNAをHindIIIによって消化し、次いでQIAquickプロトコールに従って精製した。大腸菌DH5αコンピテント細胞を、ライゲートしたDNA溶液により形質転換し、次いで100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に播種した。形質転換体はすべて、そのプラスミドの配列解析から判断して、プラスミド中に同じ挿入断片を有していた。このことから、P. rhodozyma ATCC96815由来の3つの別々の赤色形質転換体は、ゲノムライブラリーのDNA供与体と染色体DNAとの間の同じ型の組換え事象によって生じたことが示された。このようにして回収したプラスミドの一つをpR2-4と命名し、その後の試験に用いた。
【0092】
実施例6.
pR2-4をハイブリダイゼーションプローブとして用いることによる元のゲノムライブラリーのスクリーニング
回復したpR2-4の断片はP. rhodozymaの赤色形質転換体を生じる組換え事象の方向によっては突然変異を有し得るため、元のゲノムライブラリーのスクリーニングをpR2-4をハイブリダイゼーションプローブとして用いることにより実施した。
【0093】
この目的のために、実施例2に記載のとおり、元のゲノムライブラリーの20,000の大腸菌形質転換体をナイロンメンブレンフィルター(Hybond-N+、Amersham、英国バッキンガムシア)に移し、コロニーハイブリダイゼーションに供した。インサート中にpR2-4と同じヌクレオチド配列を保持する3つの形質転換体が単離された。これらの形質転換体から単離されたプラスミドをpR3、pR5.1およびpR16と命名した。
【0094】
次に、P. rhodozyma ATCC96815を、pR3、pR5.1およびpR16によって形質転換した。すべての形質転換体は赤に着色した。この結果から、単離したプラスミドがP. rhodozymaにおけるβ-カロテンからアスタキサンチンへの反応に関与する酵素をコードする遺伝子を含む可能性が示唆される。本発明者らはこの遺伝子をAST遺伝子と命名した。これらのプラスミドのうち、pR16をその後の試験で用いた。
【0095】
実施例7.
cDNA分析のためのP. rhodozymaからのmRNAの単離
P. rhodozymaからの転写物のパターンを分析するために、全RNAを、ガラスビーズを用いた細胞破壊の組み合わせによるフェノール抽出法によってP. rhodozyma ATCC96594およびATCC96815から単離し、mRNAをmRNA分離キット(Clontech、米国パロアルト)を用いて精製した。
【0096】
はじめに、YPD培地で2日間培養した10mlからATCC96594およびATCC96815株の細胞を、遠心分離(1500xg、10分)で回収し、抽出緩衝液(0.1M LiClおよび0.1mM EDTAを含む100mM Tris/ HCl(pH 7.5))で1回洗浄した。50mlのディスポーザブル遠心管(岩城ガラス、日本、東京)中、同じ抽出緩衝液で細胞懸濁液を5.0mlに合わせた後、1.5mlのisogen-LS(株式会社ニッポンジーン、日本、富山)および10gのガラスビーズを加えた。細胞懸濁液とisogen-LSおよびガラスビーズを含む遠心管を、水平卓上振盪機で1時間振盪した。この段階で、300μgの全RNAが回収された。
【0097】
次いで、mRNA分離キット(Clontech)を用いてmRNAを精製した。P. rhodozyma ATCC96594およびATCC96815株から8.0μgのmRNAを得た。
【0098】
cDNAを合成するために、製造元が指定する方法に従って、SMART cDNA構築キット(Clontech)を用いた。2μgの精製したmRNAを、最初の鎖の合成、続いてPCR増幅に用い、1mgのcDNAを得た。
【0099】
実施例8.
pR16のサブクローニングおよびその挿入断片の機能分析
pR16の制限地図を図2に示す。長さが0.7および2.7kbの各EcoRI断片をpUC-G418にサブクローニングし、それぞれpRS913およびpRLR913と命名した。
【0100】
次いで、アスタキサンチンを生産するP. rhodozyma ATCC96594株をpRS913で形質転換した。この形質転換試験の結果、黄色の形質転換体が得られた。このことから、0.7kbのEcoRI断片が切断されたAST遺伝子を含み、0.7kbのEcoRI断片とP. rhodozymaの染色体上にあるその相同配列との間の単交差組換えを介した形質転換の結果、P. rhodozymaの染色体上のAST遺伝子破壊が起きることが示唆された。
【0101】
次に、β-カロテンを生産するATCC96815株をpRLR913で形質転換し、赤色の形質転換体を得た。このことから、アスタキサンチンを生産する野生型株にβ-カロテンを生産させるよう誘導するATCC96815株の変異点は、本来pR16における0.7kbのEcoRI断片に隣接する2.7kbのEcoRI断片上にあることが示唆された。
【0102】
実施例7で調製した200μgのcDNAを仮想ノーザン分析のためにアガロースゲル電気泳動にかけた。ATCC96594および96815から調製したcDNAの場合、いずれの場合にもpRLR913の2.7kbのEcoRI断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いることによって2つのバンド、すなわち3.2および2.0kbのバンドがハイブリダイズした。このことから、ATCC96815のast変異はミスセンス変異のようにmRNAの長さの変化に影響しない点変異であることが示唆された。
【0103】
pRS913の0.7kbのEcoRI断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いた場合、2.0kbのバンドがハイブリダイズした。この試験から、AST遺伝子はP. rhodozymaにおいて2.0kbの転写物を与えると考えられた。
【0104】
実施例9.
AST遺伝子のcDNAのクローニング
P. rhodozymaからAST遺伝子のcDNAをクローニングするために、P. rhodozyma ATCC96594からcDNAライブラリーを構築した。実施例7に記載のとおり、全RNAを、ガラスビーズを用いた細胞破壊の組み合わせによるフェノール抽出法によって単離した。
【0105】
はじめに、YPD培地で2日間培養した50mlからATCC96594株の細胞を、遠心分離(1500xg、10分)で回収し、抽出緩衝液(0.1M LiClおよび0.1mM EDTAを含む100mM Tris/ HCl(pH 7.5))で1回洗浄した。50mlのディスポーザブル遠心管(岩城ガラス、日本、東京)中、同じ抽出緩衝液で細胞懸濁液を5.0mlに合わせた後、1.5mlのisogen-LS(株式会社ニッポンジーン)および10gのガラスビーズを加えた。細胞懸濁液とisogen-LSおよびガラスビーズを含む遠心管を、水平卓上振盪機で1時間振盪した。この段階で、1.8mgの全RNAが回収された。
【0106】
次いで、製造元が指定する方法に従って、PolyATtract mRNA分離キット(Promega corp.、米国マディソン)を用いてmRNAを精製した。最終的に、P. rhodozyma ATCC96594株から8.0μgのmRNAが得られた。
【0107】
cDNAライブラリーを構築するために、製造元が指定するプロトコールにより、8.0μgの精製mRNAをCOPYキット(Invitrogen、米国カールスバッド)で用いた。EcoRIアダプター(Stratagene)のライゲーション後、合成cDNAをアガロースゲル電気泳動にかけた。長さ1.9から2.3kbのcDNAに相当するアガロースゲルの切片を切り出した後、回収したcDNA種をQIAEX II(QIAGEN)によって精製した。このサイズによって分画したcDNAをEcoRI消化し、脱リン酸化したλZAPII(Stratagene)にライゲートした。終夜ライゲートした混合物をGigapack III gold extract(Stratagene)を用いてインビトロパッケージングし、大腸菌XL1-Blue MRF'株への感染に用いた。
【0108】
通常のプラークスクリーニングを、実施例8に記載の2.7および0.7kbのEcoRI断片をハイブリダイゼーションプローブに用いて、6000のプラークに対して実施した。一つのプラークがこれらのプローブに強くハイブリダイズし、滅菌つまようじで回収し、溶出したファージ粒子を製造元が指定する方法にしたがってインビボ切り出しに用いた。最終的に、アンピシリンに耐性を示す大腸菌SOLR細胞の感染形質転換体を単離した。これらの形質転換体から得た単離プラスミドの配列決定後、これらのプラスミドが実施例6に記載したpR16の配列の一部と同一の断片を含むことが判明した。
【0109】
AST遺伝子のcDNAの全配列を決定して配列番号:2に示し、その推定アミノ酸配列を配列番号:1に示す。
【0110】
実施例10.
大腸菌におけるAST遺伝子の発現
AST遺伝子のORFが実際に蛋白質をコードしていることを確認するために、AST遺伝子の発現試験を大腸菌発現システムで実施した。はじめに、次の精製段階を容易にするために、6xヒスチジン(His)タグをAST産物のカルボキシ末端に付加した。PCRプライマーを合成した(配列を表1に示す)。
【0111】
【表1】
6xHisタグを付加したAST遺伝子の3'部分をクローニングするためのPCRプライマー
【0112】
次に、pAST1207の1.5kbのNdeIEcoRI断片およびpAST114の0.3kbのEcoRIBamHI断片をNdeIおよびBamHIで消化したpET11cにライゲートし、ライゲートしたDNAを大腸菌JM109株に形質転換した。6つの独立したアンピシリン耐性クローンを制限酵素解析によって試験し、6つのクローンのうち5つがAST遺伝子を含む組換え発現プラスミドの正しい構造を有することが判明した。そのうちの1つをその後の試験のために選択し(pAST120)、次いで大腸菌BL21(DE3)(pLysS)株に形質転換した。制限酵素解析によって試験したアンピシリン耐性クローンはすべて、pAST120を適切に有することが明らかとなった。次に、発現試験を、大腸菌BL21(DE3)(pLysS)(pAST120)増殖培養物に、600nmの光学密度(OD)が0.8に達した時点で1mM IPTGを加え、行った。培養を37℃で4時間続けた後、細胞を遠心分離により回収し、SDSサンプル緩衝液(125mM Tris-HCl、pH6.8、20%グリセロール、4%SDS、0.005%ブロモフェノールブルー、5%メルカプトエタノール)中で煮沸することにより溶解した。次いで溶解産物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)にかけた。クーマシーブリリアントブルー(Rapid stain CBBキット、ナカライテスク株式会社、日本、京都)による染色後、発現した蛋白質は観察されなかった(データは示していない)。
【0113】
一般に、大腸菌発現システムでP450蛋白質を発現させるには、P450蛋白質のアミノ末端領域におけるアミノ酸配列にいくらかの改変が必要であると報告されている。事実、無傷の配列を有していたAST遺伝子は大腸菌で発現されず(データは示していない)、AST遺伝子の場合にも他のP450酵素と同様にアミノ末端の配列におけるいくらかの改変が必要であることが判明した。組換えAST遺伝子発現の次のストラテジーとして、AST遺伝子のアミノ末端にある疎水性アンカー配列欠失させた上でAST蛋白質のアミノ末端に6xHisタグ配列を付加した構造を作成した。
【0114】
アミノ末端で欠失したアンカー配列上のAST蛋白質のアミノ末端に6xHisタグ配列を付加するために、下記のPCRプライマーを合成し、PCRクローニングに用いた。
【0115】
【表2】
アンカー配列が欠けた5'部分に6xHisタグを付加したAST遺伝子をクローニングするためのPCRプライマー
【0116】
PCR条件は以下のとおりであった:94℃15秒、55℃30秒、72℃30秒を25サイクル。プラスミドpAST1207をPCRの鋳型として用いた。所望の長さのPCR断片をpCR2.1-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、予想されるインサートを有する6つの独立したクローンをそのインサートの配列について調べた。その結果、2つのクローンがそれぞれ正確なインサート配列を有しており、1つのクローンを選んでその後の試験に用いた(それぞれ、AST遺伝子の3'末端用のpAST228とAST遺伝子の5'末端用のpAST302#3202)。pAST302#3202から0.2kbのNdeISphI断片、pAST1207から1.5kbのSphIEcoRI断片、およびpAST228から0.05kbのKpnIBamHI断片をNdeIおよびBamHIで消化したpET11cにライゲートし、ライゲーション混合物を大腸菌DH5αに形質転換した。6つの独立したクローンの制限酵素解析の結果、すべてのクローンがその発現のためのAST遺伝子を有する正しい構造を持つことが判明した。一つのクローンを選択し、その後の試験に用いた(pAST315)。次に、pAST315を発現宿主の大腸菌BL21(DE3)(pLysS)にトランスファーした。制限酵素解析の結果、6つの形質転換体はすべて正しくpAST315を有することが確認された。
【0117】
次に、発現試験を、大腸菌BL21(DE3)(pLysS)(pAST315)増殖培養物に1.5mM IPTGを、600nmの光学密度(OD)が0.93に達した時点で加え、行った。培養を37℃で4時間続けた後、細胞を遠心分離により回収し、SDSサンプル緩衝液中で煮沸することにより溶解した。次いで溶解産物をPAGEにかけた。クーマシーブリリアントブルーによる染色後、分子量がその推定アミノ酸配列とよく一致する発現蛋白質(約60kDa)が観察された(図3)。この結果から、AST遺伝子がその導出されたオープンリーディングフレームから予想される蛋白質をコードすることが確認された。
【0118】
実施例11.
AST遺伝子産物の試験管内の特徴付け
AST遺伝子産物の酵素的特徴付けのために、P450酵素の特性解析に用いる標準的なアッセイを利用することができる。この目的のために、反応混合物は再構成膜を含んでいる必要がある。再構成膜としては、ミトコンドリア膜またはミクロゾームなどの天然単離物および人工膜を使用することが多い。いずれの場合にも、電子受容体とレセプターとの間で電子の移動が起こる必要がある。電子供与体としては、チトクロームP450レダクターゼを反応混合物に加えることが多い。電子受容体としては、酸素分子が含まれる。還元型NADPH+などの電子供給源の存在下で、アスタキサンチンシンターゼの基質であるβ-カロテンをアスタキサンチンに変換することできる。生成したアスタキサンチンは、HPLC分析によって定性的且つ定量的に分析することができる。
【0119】
実施例12.
AST遺伝子を含むゲノム断片のクローニング
AST遺伝子を含むゲノム配列を決定するために、プライマーウォーキング法を用いて配列決定実験を行った。pRS913の配列解析により、pRS913はAST遺伝子の3'末端を含まないことが判明した。AST遺伝子の3'隣接ゲノム断片を得るために、ゲノムウォーキング実験を実施した。このために、ユニバーサルゲノムウォーカーキット(Clontech)を、製造元が指定する方法に従って利用した。PCRの鋳型として、実施例1で調製した染色体DNAを用いた。配列を表3に示す遺伝子特異的プライマー、ast15を合成し、PCRプライマーに用いた。
【0120】
【表3】
AST遺伝子のゲノムウォーキングに用いるプライマーの塩基配列
【0121】
適当な長さ(1kb未満)のPCR断片をEcoRVおよびStuIライブラリーから得、精製してpCR2.1-TOPO(Invitrogen)にクローニングした。配列決定の結果、いずれの断片もAST遺伝子を含むゲノム断片を含むことが判明した。AST遺伝子のポリA部位から200bpに位置する配列に基づき、表4に示すPCRプライマーを設計した。
【0122】
【表4】
AST遺伝子の3'隣接断片をクローニングするためのプライマーの塩基配列
【0123】
PCRプライマーとしてast15およびast18プライマーと、PCRの鋳型として実施例1で調製した染色体DNAを用いることにより、PCRを実施した。プルーフリーディングポリメラーゼ(HFポリメラーゼ、Clontech)によって正しい配列を持つPCR断片の増幅を確実にした。PCR条件は以下のとおりであった:94℃15秒、55℃30秒、72℃30秒を25サイクル。400bpのインサートを有する6つの独立したクローンは同一の配列を示した。
【0124】
pRS913およびpRL913の配列を組み合わせることにより、474bpのプロモーター領域および269bpのターミネーター領域を含むAST遺伝子を有する3.9kbの配列が決定された(配列番号:3)。その結果、AST遺伝子はイントロンの多い構造を示した(17イントロン)。
【0125】
実施例13.
β-カロテン生産株P. rhodozyma ATCC96815における変異点の決定
P. rhodozyma ATCC96815株によるβ-カロテンの生産がAST遺伝子内の変異が原因であったという事実を確認するために、ATCC96815とその親株P. rhodozyma ATCC24230から得たAST遺伝子を含むゲノム配列を決定した。このために、配列を表5に示すPCRプライマーを合成し、PCRクローニングに用いた。
【0126】
【表5】
全長ゲノムAST遺伝子をクローニングするためのPCRプライマー
【0127】
PCRポリメラーゼとしてHFポリメラーゼ(Clontech)と、PCRの鋳型として実施例1と同じプロトコールによりATCC96815およびATCC24230株から調製した染色体DNAを用いることにより、PCRを以下の条件で実施した:94℃15秒、55℃30秒、72℃4分を25サイクル。得られた約3.5kbの長さのPCR断片をpCR2.1-TOPOにクローニングし、プライマーウォーキング法によってその全配列を決定した。P. rhodozyma ATCC96594株とATCC24230株の配列間には7塩基の変化が認められた。4塩基の変化がそのエキソン配列に認められたが、これらはアミノ酸の変化をもたらすものではなかった。3塩基の変化がそのイントロン構造中に認められた。β-カロテン生産株ATCC96815とその親株ATCC24230との比較において、第8イントロン内の5'スプライシング配列に1塩基の変化が見られた(GTAAGT>GTAAAT)。このことは、アスタキサンチンを生産するP. rhodozymaにβ-カロテン蓄積の表現型を与える変異はAST遺伝子のmRNAの不適当なスプライシングに起因することを示していると考えられる。
【0128】
この仮説を確認するために、PCRの鋳型としてP. rhodozyma ATCC96815から調製したcDNAを用いることによりRT-PCRを実施した。mRNAを実施例9と同じプロトコールによってP. rhodozyma ATCC96815から単離し、cDNA合成に用いた。ATCC96815から調製したこのmRNAからPCR法によってcDNAを得るために、SMART PCR cDNAライブラリー構築キット(Clontech)を製造元が指定する方法に従って利用した。第8イントロンをカバーする下記のプライマーを合成し、PCRプライマーに用いた(配列を表6に示す)。
【0129】
【表6】
AST遺伝子の不適当なスプライシング産物を検出するためのRT-PCRのためのPCRプライマー
【0130】
RT-PCR条件は以下のとおりであった:94℃15秒、55℃30秒、72℃30秒を25サイクル。PCRの結果、300bpのPCR産物が増幅され、pCR2.1-TOPOにクローニングした。300bpのインサートを有する2つの独立したクローンの配列を決定した。その結果、AST遺伝子の不適当なスプライシング産物は、P. rhodozyma ATCC96815株中で合成されたことが確認された。停止コドンが第8イントロンにあることから、AST遺伝子の第8イントロンの不適当なスプライシングが、適当にスプライシングされたAST蛋白質よりも短縮されたAST蛋白質生産を引き起こすと考えられる。この結果から、変異点は適当なスプライシング能を失ったAST遺伝子にあることが示された。
【0131】
実施例14.
β-カロテンを生産するPhaffia rhodozymaにおけるAST遺伝子の発現
AST遺伝子がβ-カロテンからアスタキサンチンへの変換に関与する酵素をコードしていたという事実を確認するために、AST遺伝子をβ-カロテン生産株にクローニングした。染色体上のAST遺伝子の本来の遺伝子座において組換えが起こる可能性を排除するために、Phaffia rhodozymaの染色体のAMY遺伝子座上のAST遺伝子発現プラスミドを構築した。このために、Phaffia rhodozymaからいくつかの遺伝エレメントをクローニングする必要があった。
【0132】
1)Phaffia rhodozymaからの構成的プロモーターおよびターミネーターのクローニング
Phaffia rhodozymaから構成的プロモーターおよびターミネーターをクローニングするために、デジェネレートPCR法を利用した。酵母の遺伝子操作で構成的プロモーターおよびターミネーターとしてよく用いられる遺伝子の中で、トリオースホスフェートイソメラーゼをコードするTPI遺伝子のクローニングを試みた。Blocksデータベース(http://www.blocks.fhcrc.org/)に登録されている保存アミノ酸配列の中で、2つのモティーフ配列(Arg-Thr-Phe-Phe-Val-Gly-Gly-AsnおよびAsp-Val-Asp-Gly-Phe-Leu-Val-Gly-Gly-Ala)を選択し、そのデジェネレートプライマーを下記の通りに合成した。
【0133】
【表7】
P. rhodozymaからTPI遺伝子をクローニングするためのデジェネレートPCRプライマー
(M=AまたはC;N=A、C、GまたはT;Y=CまたはT;R=AまたはG)
【0134】
PCR条件は以下のとおりであった:94℃15秒、46℃30秒、72℃15秒を25サイクル。ExTaqポリメラーゼ(宝酒造株式会社)をPCRポリメラーゼとして用いた。PCRの鋳型として、SMART PCR cDNAライブラリー構築キット(Clontech)を用いることにより、P. rhodozyma ATCC96594から単離したmRNAからcDNAプールを調製した。0.7kbのPCR断片を精製し、pCR2.1-TOPOにクローニングした。制限酵素解析から判断して、6つの独立したクローンが所望の長さのインサートを有していた。そのうちの2つを配列決定し、その両方が様々な生物由来の既知のTPI遺伝子に著しい相同性を示すインサート配列を有することが確認された。そのうちの1つを選択してその後の試験に用いた(pTPI923)。
【0135】
次に、pTPI923のインサート配列に基づき、配列を表8に示すいくつかのPCRプライマーを合成し、TPI遺伝子のプロモーターおよびターミネーターをクローニングするためのゲノムウォーキングを行った。この実験のために、ユニバーサルゲノムウォーカーキット(Clontech)を製造元が指定する方法にしたがって利用した。
【0136】
【表8】
TPIプロモーターおよびターミネーターをクローニングするゲノムウォーキングのためのPCRプライマー
【0137】
PCR条件は以下のとおりであった:94℃4秒、74℃3分を7サイクルに続き94℃4秒、69℃3分を32サイクル、および69℃で4分の伸長。KODポリメラーゼ(東洋紡績株式会社)をPCRポリメラーゼとして用いた。PCRの鋳型としてP. rhodozyma ATCC96594から調製した染色体DNAを用いた。その結果、ターミネーター領域の候補がEcoRVおよびStuIライブラリーから得られた。これらの候補の配列解析により、いずれのクローンもTPI構造遺伝子の推定3'末端およびターミネーター領域を含むTPI遺伝子の下流配列を有することが明らかとなった。プロモーター領域をクローニングした場合、EcoRVライブラリーから得た候補はTPI構造遺伝子の導出された5'末端およびプロモーター領域を含んでいた。
【0138】
次いで、PCRプライマー(配列を表9に示す)を合成し、TPI遺伝子由来のプロモーターカセットおよびターミネーターカセットを構築した。
【0139】
【表9】
TPIプロモーターおよびTPIターミネーターカセットを構築するためのPCRプライマー
【0140】
PCR条件は以下のとおりであった:94℃15秒、55℃30秒、72℃30秒を25サイクル。HFポリメラーゼ(Clontech)をPCRポリメラーゼとして用い、得られたPCR断片をpCR2.1-TOPOにクローニングした。制限酵素解析および配列解析の結果、同一の配列を有するクローンが得られたことが判明した。それぞれ1つのクローンを選択して、その後の試験に用いた(それぞれ、プロモーターカセットにpTPIP1104およびターミネーターカセットにpTPIT1104)。
【0141】
2)Phaffia rhodozymaからの部分アミラーゼ遺伝子のクローニング
P. rhodozymaの染色体上に外来遺伝子を所在させ発現させるために、アミラーゼ遺伝子をP. rhodozymaからクローニングした。外来遺伝子がクローニングされた発現ベクターが、アミラーゼ遺伝子などのP. rhodozymaの染色体配列に相同の遺伝子配列を含みうる場合、発現ベクターは単交差組換え後にP. rhodozymaの染色体上の相同領域上に組み込まれる。
【0142】
様々な生物由来アミラーゼをコードする11のアミノ酸配列を、Entrezデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez/)から選択し、clustal Wによるアミノ酸アライメントに用いた(Thompson, J.D., Higgins, D.G.およびGibson, T.J.、Nucleic Acids Research、22:4673〜4680、1994)。アミラーゼ配列がデータベースに登録されている11の生物を表10に示す。
【0143】
【表10】
Clustal W分析のためのデータベースに登録されている様々なアミラーゼ遺伝子
アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)アワモリ(awamori)変種amyA遺伝子(登録番号X52755)
アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)アワモリ(awamori)変種amyB遺伝子(登録番号X52756)
アスペルギルスカワチ(Aspergillus kawachii)酸安定αアミラーゼ遺伝子(登録番号AB008370)
アスペルギルスオリザ(Aspergillus oryzae) amy1遺伝子(登録番号X12725)
アスペルギルスシロウサミ(Aspergillus Shirousamii)αアミラーゼ遺伝子(登録番号P30292)
クリプトコッカス属(Cryptococcus)αアミラーゼ遺伝子(登録番号D83541)
リポマイセスコノネンコエ(Lipomyces kononenkoae)スペンセルマルチンシエ(spencermartinsiae)亜種αアミラーゼ遺伝子(登録番号U30376)デバリョマイセスオクシデンタリス(Debaryomyces occidentalis) amy1遺伝子(登録番号X16040)
サッカロマイコプシスフィブリゲラ(Saccharomycopsis fibuligera) ALP1遺伝子(登録番号X05791)
シゾサッカロマイセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)αアミラーゼ遺伝子(登録番号Z64354)
【0144】
デジェネレートPCR法によりP. rhodozymaからアミラーゼ遺伝子をクローニングするために、アミラーゼの2つの保存アミノ酸配列(Asp-Tyr-Ile-Gln-Gly-Met-Gly-Phe-Asp/Thr-Ala-Ile-TrpおよびAsp-Gly-Ile-Pro-Ile-Ile-Tyr-Tyr-Gly-Thr-Glu-Gln)を選択し、次いで、P. rhodozymaからAMY遺伝子をクローニングするために、PCRプライマーを合成した(配列を表11に示す)。
【0145】
【表11】
P. rhodozymaからアミラーゼ(AMY)遺伝子をクローニングするためのデジェネレートPCRプライマー
(Y=CまたはT;H=A、CまたはT;R=AまたはG;N=A、C、GまたはT;M=AまたはC;D=A、GまたはT)
【0146】
PCR条件は以下のとおりであった:94℃15秒、50℃30秒、72℃2分を25サイクル。ExTaqポリメラーゼ(宝酒造株式会社)をPCRポリメラーゼとして用いた。PCRの鋳型として、実施例1で調製した染色体DNAと、SMART PCR cDNAライブラリー構築キット(Clontech)を用いることによりP. rhodozyma ATCC96594から単離したmRNAから調製したcDNAプールとを用いた。PCRの鋳型として染色体およびcDNAを用いた場合、それぞれ1.7kbおよび0.9kbのPCR断片が得られた。両方の断片を精製し、pCR2.1-TOPOにクローニングした。制限酵素解析から判断して、6つの独立したクローンが所望の長さのインサートを有していた。そのうちの2つを配列決定し、その両方が様々な生物由来の既知のアミラーゼ遺伝子に著しい相同性を示すインサート配列を有することが確認された。そのうちの染色体AMY断片を含む1つを選択してその後の試験に用いた(pAMY216)。部分アミラーゼカセットを構築するために、pAMY216のインサート断片の内部配列に基づき、2つのPCRプライマーを合成した(配列を表12に示す)。
【0147】
【表12】
部分的AMYカセットを構築するためのPCRプライマー
【0148】
PCR条件は以下のとおりであった:94℃15秒、55℃30秒、72℃2分を25サイクル。HFポリメラーゼ(Clontech)および染色体DNAをそれぞれPCRポリメラーゼおよびPCRの鋳型として用いた。得られたPCR断片をpCR2.1-TOPOにクローニングした。制限酵素解析および配列解析の結果、正しい配列を有するクローンが得られたことが判明した。1つのクローンを選択して、その後の試験に用いた(pAMY1113)。
【0149】
3)Phaffia rhodozymaで機能したAST遺伝子の発現ベクター構築
AST遺伝子の発現プラスミドを、各遺伝子成分の制限酵素による消化およびライゲーションにより構築した。はじめに、pTPIT1104からの0.3kbのKpnIPstI断片およびpG418Sa512からの1.7kbのSacIKpnI断片を、SacIおよびPstIで消化したpGEM-Tプラスミドにライゲートした。制限酵素による消化の結果、12の形質転換体のうち9つのクローンが正しい構造を有することが判明し、そのうちの1つをその後の試験のために選択した(pTPITG1120)。
【0150】
次に、両端に適当な制限酵素切断部位を付加するために、AST遺伝子のPCRクローニングを実施した。PCRプライマーを合成した(配列を表13に示す)。
【0151】
【表13】
完全なAST遺伝子カセットをクローニングするためのPCRプライマー
【0152】
PCR条件は以下のとおりであった:94℃15秒、55℃30秒、72℃2分を25サイクル。HFポリメラーゼ(Clontech)およびpAST1207をそれぞれPCRポリメラーゼおよびPCRの鋳型として用いた。得られたPCR断片をpCR2.1-TOPOにクローニングした。制限酵素解析および配列解析の結果、正しい配列を有する1つのクローンが得られたことが判明した。このクローンを選択して、その後の試験に用いた(pAST113)。
【0153】
最終的に、pAMY1113からの1.6kbのSacIINotI断片、pTPIP1104からの0.3kbのNotIXbaI断片およびpAST113からの1.5kbのXbaISse8387I断片を、SacIIおよびSse8387Iで消化したpTPITG1120にライゲートした。制限酵素解析の結果、5つの試験した形質転換体すべてが正しい構造を有することが確認され、そのうちの1つをその後の試験のために選択した(pAATG123)。
【0154】
4)β-カロテン生産Phaffia rhodozymaにおけるアスタキサンチン生産の回復
AST遺伝子の発現プラスミド(pAATG123)をβ-カロテン生産Phaffia rhodozyma ATCC96815に形質転換した。バイオリスティック法による形質転換を、実施例3に記載のとおりに実施した。赤色に着色した2つのジェネチシン耐性コロニーを回収し、その後の試験のために選択した。P. rhodozyma染色体上のAMY遺伝子座における組込みを確認するために、PCRプライマーを合成した(配列を表14に示す)。
【0155】
【表14】
P. rhodozyma染色体上のAMY遺伝子座における発現プラスミドの組込みを確認するためのPCRプライマー
【0156】
これらの形質転換体から染色体を調製し、PCRの鋳型に用いた。PCR条件は以下のとおりであった:94℃15秒、55℃30秒、72℃2分を25サイクル。ExTaqポリメラーゼ(宝酒造株式会社)をPCRポリメラーゼとして用いた。赤色形質転換体から得た染色体を鋳型DNAとして用いたPCR反応において、陽性の2.0kb PCRバンドが得られた。宿主株P. rhodozyma ATCC96815由来の染色体をPCRの鋳型として用いたPCR反応混合物には、PCRバンドは認められなかった。
【0157】
5)組換えAST遺伝子がβ-カロテン生産P. rhodozymaの染色体上に組み込まれた組換え体によるフラスコ発酵
アスタキサンチンの生産性をフラスコ発酵で評価した。フラスコ発酵のための培地の組成は以下のとおりである。
【0158】
【表15】
フラスコ発酵のための播種培地組成
グルコース 30.0g/l
NH4Cl 4.83g/l
KH2PO4 1.0g/l
MgSO4-7H2O 0.88g/l
NaCl 0.06g/l
CaCl2-2H2O 0.2g/l
フタル酸水素カリウム 20.0g/l
FeSO4-7H2O 28mg/l
クエン酸-1H2O 15.0mg/l
ZnSO4-7H2O 40.0mg/l
CuSO4-5H2O 0.75mg/l
MnSO4-4,5H2O 0.6mg/l
H3BO3 0.6mg/l
Na2MoO4-2H2O 0.6mg/l
KI 0.15mg/l
ミオイノシトール 60.0mg/l
ニコチン酸 3.0mg/l
D-パントテン酸Ca 3.0mg/l
ビタミンB1(塩酸チアミン) 3.0mg/l
p-アミノ安息香酸 1.8mg/l
ビタミンB6(塩酸ピリドキシン) 0.3mg/l
ビオチン 0.048mg/l
7ml/試験管(直径21mm)
【0159】
【表16】
フラスコ発酵のための培地組成
MgSO4-7H2O 2.1g/l
CaCl2-2H2O 0.865g/l
(NH4)2SO4 3.7g/l
FeSO4-7H2O 0.28g/l
グルコース(別に滅菌済み) 22g/l
KH2PO4(別に滅菌済み) 14.25g/l
クエン酸-1H2O 0.21g/l
ZnSO4-7H2O 70.14mg/l
CuSO4-5H2O 10.5mg/l
MnSO4-4,5H2O 8.4mg/l
H3BO3 8.4mg/l
Na2MoO4-2H2O 8.4mg/l
KI 2.1mg/l
ミオイノシトール 0.374g/l
ニコチン酸 18.7mg/l
D-パントテン酸Ca 28.05mg/l
ビタミンB1(塩酸チアミン) 18.7mg/l
p-アミノ安息香酸 11.22mg/l
ビタミンB6(塩酸ピリドキシン) 1.87mg/l
ビオチン 1.122mg/l
CaCO3 10g/l
【0160】
各フラスコにActcol(武田薬品工業株式会社、日本、大阪)1滴を加えた。
50ml(5%の接種材料を含む最終容量)/500mlバッフル付きフラスコ
【0161】
7日間の発酵後、発酵液から細胞を回収し、実施例4に記載のとおり、HPLCによって細胞のアスタキサンチンおよびβ-カロテン蓄積について分析した。結果を表17にまとめている。
【0162】
【表17】
AST遺伝子が組み込まれた組換え体によるアスタキサンチン生産の回復。(データはP. rhodozyma ATCC96815によって蓄積されたβ-カロテンの収量に対するアスタキサンチンおよびβ-カロテンの相対収量で示している)
【0163】
ATCC96815::pAATG123によるアスタキサンチン生産の部分的回復により、TPIプロモーターによるプロモーター強度がアスタキサンチン生産の完全な回復に十分ではないことが明らかにされた。
【発明の効果】
本発明により、β-カロテンからアスタキサンチンへのアスタキサンチン生合成経路の最終段階に関与する遺伝子および酵素が提供される。アスタキサンチンシンターゼ活性を有するポリペプチド、アスタキサンチンシンターゼをコードするDNA断片、組換え生物などの、β-カロテンからアスタキサンチンへの調製に有用な遺伝物質が提供され、これらの新規な遺伝物質はPhaffia rhodozyma由来のものであり得る。またアスタキサンチンの製造方法も提供された。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】アスタキサンチンを生産する細菌系、P.rhodozymaにおけるアセチルCoA(GGPP)からアスタキサンチンへの生合成経路を示す図である。
【図2】 Phaffia rhodozyma由来AST遺伝子の機能分析に用いた部分ゲノムAST遺伝子を有するプラスミドpR16の制限地図を示す図である。これらのプラスミドのベクター基本骨格はpUC-G418であった。Eで示す制限酵素はEcoRIである。
【図3】 AST遺伝子の膜貫通ドメイン除去時にそのアミノ末端に6xHisを加えた、AST遺伝子の大腸菌における発現試験を示す図である。培養液0.1mlからの細胞を10%ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にかけた。レーン1:分子量マーカー(上から105kDa、82.0kDa、49.0kDaおよび33.3kDa、Bio-RAD、米国リッチモンド)、レーン2:大腸菌(BL21(DE3)(pLysS)(pAST315)IPTGなし)、レーン3:大腸菌(BL21(DE3)(pLysS)(pAST315)および1.5mM IPTG)、レーン4:分子量マーカー)。
Claims (7)
- β−カロテンからアスタキサンチンへの反応を触媒するアスタキサンチンシンターゼ活性を有する酵素をコードするヌクレオチド配列を含む単離DNAであって、
前記ヌクレオチド配列が
(i)配列番号:3に記載のヌクレオチド配列、
(ii)遺伝コードの縮退のために、ヌクレオチド配列(i)によってコードされるアミノ酸配列と同じ配列を有するアスタキサンチンシンターゼをコードするヌクレオチド配列、または
(iii)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(i)のヌクレオチド配列相補鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列であることを特徴とする、単離DNA。 - 請求項1記載の単離DNAを含むベクターまたはプラスミド。
- 請求項1記載の単離DNAまたは請求項2記載のベクターもしくはプラスミドによって形質転換またはトランスフェクションされた宿主細胞。
- 請求項1記載の単離DNAによってコードされるポリペプチド。
- 請求項3記載の形質転換された宿主細胞を前記酵素の生産を導く条件下で培養する段階を含む、アスタキサンチンシンターゼ活性を有するポリペプチドの製造方法。
- 請求項1記載の単離DNAの一つまたは複数を適当な宿主生物に導入する段階と、得られた生物をアスタキサンチンの生産を導く条件下で培養する段階と、培養物からアスタキサンチンを回収する段階とを含む、アスタキサンチンの生物学的製造方法。
- 再構成膜を含む反応混合物中、電子供与体存在下で、請求項4に記載のポリペプチドにβ−カロテンを接触させる段階を含む、アスタキサンチンの製造方法。
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