以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(ホログラム記録媒体)
図1に、ホログラム記録媒体(光記録媒体)の構成を示す。本実施の形態で使用されるホログラム記録媒体24は、後述する通りディスク状に形成されているが、図では、矩形に切出した一部分を示した。図1(A)に示すように、ホログラム記録媒体24は、例えば100μm厚以上の厚膜状に成型された光記録層23で構成されている。光記録層担体では強度が不十分となる場合は、図1(B)又は(C)に示すように、片面又は両面に石英やプラスチック等の板状の透明な媒質で構成された基板25を設けることができる。
光記録層23は、光誘起複屈折性(光誘起異方性、光誘起2色性)を示す材料で構成されている。光誘起複屈折性を示す材料は、これに入射する光の偏光状態に感応して、入射光の偏光方向を記録することができる。例えば、側鎖に光異性化する基を有する高分子又は高分子液晶、又は光異性化する分子を分散させた高分子は、直線偏光を照射すると、光異性化が誘起されて、直線偏光の方向に応じて屈折率の異方性を生じ、偏光方向を記録し、保存することができる。このとき、同時に参照光を照射すれば、信号光の偏光方向をホログラムとして記録することができる。
通常のホログラムは、信号光(物体光)と参照光の偏光方向を同一(平行)にして記録する。このように記録される、又は記録されたホログラムを、この明細書では強度変調型ホログラムと称する。これに対して、上記の光誘起複屈折性を示す材料は、信号光と参照光の偏光方向を直交させて、信号光をホログラムとして記録することができる。このように記録される、又は記録されたホログラムを、この明細書では偏光変調型ホログラムと称する。ただし、偏光変調型ホログラムも、強度変調型ホログラムと同様に、2次元データに応じて空間的に2値に強度変調されたものとすることができる。
例えば、S偏光の信号光を、S偏光の参照光によって、強度変調型ホログラムとして記録することができるとともに、P偏光の参照光によって、偏光変調型ホログラムとして記録することができる。強度変調型ホログラムとして記録されたS偏光の信号光は、P偏光の読み出し光によって、P偏光の回折光として再生することができ、偏光変調型ホログラムとして記録されたS偏光の信号光は、P偏光の読み出し光によって、S偏光の回折光として再生することができる。記録時、参照光の偏光角を変える代わりに、信号光の偏光角を変えてもよい。
側鎖に光異性化する基を有する高分子としては、ポリエステル群から選ばれた少なくとも一種の重合体であって、その側鎖にアゾベンゼン骨格を有する材料が好適である。特に、下記の化学式で示される側鎖にシアノアゾベンゼンを有するポリエステル(特開平10−340479号公報参照)が好適である。
(記録・再生の条件)
本発明では、第1のデータを記録したホログラムからの再生光の偏光状態と、第2のデータを記録したホログラムからの再生光の偏光状態とが互いに異なるように、第1のデータを記録した領域に第2のデータを上書き記録し、再生光の偏光状態が異なることを利用して、第2のデータを選択的に再生する。この特徴を備えた記録・再生方法を実施することができれば、いかなる記録・再生条件を適用してもよい。
下記の表1〜表4に、信号光、参照光、読出し光、及び再生光の組み合わせ(以下、「記録再生条件」という)の一例を示す。表1には再生光の偏光状態がS偏光になる記録再生条件(Aグループ)を示し、表2には再生光の偏光状態がP偏光になる記録再生条件(Bグループ)を示す。また、表3には再生光の偏光状態がRC偏光(右回り円偏光)になる記録再生条件(Cグループ)を示し、表4には再生光の偏光状態がLC偏光(左回り円偏光)になる記録再生条件(Dグループ)を示す。各グループに属する記録再生条件は、例えば「A−1」というように、グループ名と表枠の外に付けた番号との組み合わせで表す。
上記A〜Dグループのうちの2つ以上の任意のグループからそれぞれ1つの記録再生条件を選んで組とする。例えば、表1の記録再生条件(A−1)と表2の記録再生条件(B−3)とを組とする。書き換え記録を行う場合には、第1のデータを記録再生条件(A−1)で記録した領域に、第2のデータを記録再生条件(B−3)で上書き記録する。更に第2のデータを書き換える場合には、再度、記録再生条件(A−1)で上書き記録する。このように、組とした記録再生条件を順に使用し、書き換え毎に記録再生条件を変えることによって、S/Nの良い再生像を得ることができる。
(ホログラム記録・再生方法)
以下、図面を参照して、本発明のホログラム記録方法・再生方法を、デジタルホログラフィックストレージでのデータの書き換えに適用した3つの実施の形態を詳細に説明する。これらの実施の形態では、上記A〜Dグループの任意のグループを2つ選択し、選択したグループの各々から記録再生条件を選んで組とした。なお、以下の実施の形態では、上記の4つのグループから2つのグループを選択する例について説明するが、3つのグループ又は4つのグループを選択し、選択したグループの各々から記録再生条件を選んで組とすることもできる。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態では、表1の記録再生条件(A−1)と表2の記録再生条件(B−3)とを組とする。書き換え記録を行う場合には、第1のデータを記録再生条件(A−1)で記録した領域に、第2のデータを記録再生条件(B−3)で上書き記録する。更に第2のデータを書き換える場合には、再度、記録再生条件(A−1)で上書き記録する。このように、組とした記録再生条件を交互に繰り返し使用し、書き換え毎に記録再生条件を変更する。
次に、本実施の形態で使用するホログラム記録再生装置について説明する。
図2に示すように、本実施の形態のホログラム記録再生装置には、例えばNd:YVO4結晶を用いたレーザ発振器10が設けられている。レーザ発振器10からは、コヒーレント光である波長532nmのレーザ光が発振され、照射される。レーザ発振器10のレーザ光照射側には、P偏光を透過し且つS偏光を反射することにより、レーザ光を参照光用の光と信号光用の光との2つの光に分離する偏光ビームスプリッタ16が配置されている。
偏光ビームスプリッタ16の光反射側には、偏光ビームスプリッタ16で反射された光の偏光面を90度回転する1/2波長板52及び直線偏光を円偏光にする1/4波長板54の各々が、各々別々に光路中に挿入及び光路から退避可能に配置されている。1/4波長板54の光透過側には、参照光用のレーザ光を反射して光路をホログラム記録媒体方向に変更する反射ミラー18、及び参照光用のレーザ光を集光して球面参照波からなる参照光を生成する対物レンズ20が順に配置されている。この対物レンズ20のレーザ光集光側には、z面内でディスク状に形成されたホログラム記録媒体24を回転させるステッピングモータを備えたx−zステージ22が設けられている。対物レンズ20は、ホログラム記録媒体24に球面参照波を参照光として照射する。
偏光ビームスプリッタ16の光透過側には、偏光ビームスプリッタ16を透過した光を遮断するためのシャッター12及び偏光面を90度回転する旋光子26の各々が、各々別々に光路中に挿入及び光路から退避可能に配置されている。旋光子26の光透過側には、信号光用のレーザ光を45°の反射角で反射して光路をホログラム記録媒体方向に変更する、反射ミラー28、レンズ30、32、34で構成されたレンズ系が順に配置されている。
レンズ32とレンズ34との間には、液晶表示素子等で構成され、供給された各ページ毎の記録信号に応じて信号光用のレーザ光を変調し、ホログラムの各ページを記録するための信号光を生成する透過型の空間光変調素子36が配置されている。空間光変調素子36とレンズ34との間には、1/2波長板59及び直線偏光を円偏光にする1/4波長板56が光路中に挿入及び退避可能に配置されている。空間光変調素子36は偏光変調機能を備えており、例えば、空間光変調素子36への入射光がS偏光のとき、出射光はP偏光になる。
レンズ30、32は、レーザ光を大径のビームにコリメートして空間光変調素子36に照射し、レンズ34は空間光変調素子36で変調されて透過した光を信号光としてホログラム記録媒体24上に集光させる。このとき、信号光の集光スポットが、参照光の集光スポットより小さくなるように集光され、信号光と参照光とが同時にホログラム記録媒体24に照射される。
ホログラム記録媒体24の再生光透過側には、レンズ38、及びCCD等の撮像素子で構成され、受光した再生光を電気信号に変換して出力する検出器40が配置されている。検出器40は、パーソナルコンピュータ42に接続されている。レンズ38と検出器40との間には、直線偏光を円偏光にする1/4波長板58及び再生光から所定偏光方向の光(例えば、0°偏光成分、45°偏光成分、又は90°偏光成分)を選択して透過させる検光子44の各々が、各々別々に光路中に挿入及び光路から退避可能に配置されている。
パーソナルコンピュータ42は、CPU、ROM、RAM、メモリ等を備え、ディスプレイやキーボード等の図示しない入出力装置に接続されると共に、パーソナルコンピュータから所定のタイミングで供給された記録信号に応じてパターンを発生するパターン発生器46を介して空間光変調素子36に接続されている。メモリには、上書き記録処理を行う場合の記録・再生の条件が、最初の記録処理を行ったときの記録・再生の条件に応じてテーブルで記憶されている。本実施の形態では、最初の記録処理を行う場合の記録・再生の条件として表1の記録再生条件(A−1)と、最初の上書き記録処理を行う場合の記録・再生の条件として表2の記録再生条件(B−3)とが、テーブルで記憶されている。上述した通り、複数回の書き換えを行う場合にはこれらの記録再生条件が交互に使用される。
また、パーソナルコンピュータ42には、シャッター12、旋光子26、1/2波長板52、59、1/4波長板54、56、58、及び検光子44を各々別々に光路中に挿入するように駆動すると共に、光路中に挿入されているシャッター12等を光路から別々に退避させる駆動装置48が接続されている。また、パーソナルコンピュータ42には、x−zステージ22を駆動する駆動装置50が接続されている。
次に、図3を参照して、パーソナルコンピュータ42によって実行される記録再生処理ルーチンについて説明する。まず、操作者は、図示しない操作装置を操作して、ホログラムの各ページの記録処理かホログラムの再生処理かを選択する。ホログラムの各ページを記録する場合には、記録情報を予めパーソナルコンピュータに入力し、記録信号を生成しておく。
ステップ100では、ホログラムの各ページの記録処理が選択されたか、ホログラムの再生処理が選択されたかを判断し、ホログラムの各ページの記録処理が選択された場合には、ステップ102においてホログラムが記録されていない領域への記録か(最初の記録処理か)、又は既にホログラムが記録されている領域への記録か(上書き記録処理か)を判断する。ここでは、最初に記録処理される記録情報を第1のデータとし、上書き記録処理される記録情報を第2のデータとする。
上書き記録処理か否かは、例えば、ホログラム記録媒体に、書き込み回数を予め記録しておいて、後述するように再生光を照射して書き込み回数を読み込むことにより判断することができる。なお、記録時に操作者がホログラムの最初の記録処理か上書き記録処理かをホログラム記録再生装置に指示し、この指示に基づいて判断するようにしてもよい。
本実施の形態では、信号光及び参照光を共にS偏光として第1のデータの記録を行う。従って、最初の記録処理の場合には、ステップ104において駆動装置48を駆動し、シャッター12、1/2波長板52、及び1/4波長板54、56を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、旋光子26と1/2波長板59とを光路に挿入する。また、駆動装置50によりx−zステージ22のステッピングモータを駆動して、ホログラム記録媒体を所定の回転速度で回転させる。
次のステップ106で、レーザ光を照射すると共に、パーソナルコンピュータ42から第1のデータの記録信号を記録開始位置から所定のタイミングで出力し、ホログラム記録媒体24へのホログラムのシフト多重記録処理を実行する。
偏光ビームスプリッタ16を透過したP偏光は、旋光子26でS偏光にされた後、空間光変調素子36で変調されてP偏光となり、更に1/2波長板59でS偏光とされて信号光としてホログラム記録媒体24に照射される。一方、偏光ビームスプリッタ16で反射されたS偏光は、参照光としてホログラム記録媒体24に照射される。信号光及び参照光はS偏光であり、信号光の偏光方向と参照光の偏光方向とは平行である。従って、第1のデータは強度変調型ホログラムとして記録される。
本実施の形態のシフト多重記録方法では、参照光として球面波を用い、ホログラム記録材料をディスク状とし、ディスク状のホログラム記録媒体(ディスク)を回転させることによりシフト多重記録を行っている。このシフト多重記録方法では、ディスクの回転によって同じ領域に複数ページのホログラムを重ねて記録することができる。レーザ光の波長や記録メディアの膜厚、対物レンズのNAなどを適切に設定すると、次のページのホログラムを記録するために記録位置が数十μm移動するようにディスクを回転するだけで、ディスクの略同じ領域に次のページのホログラムを既に記録されているページとクロストーク無く記録し再生することができる。これは、参照光が球面波であるため、ディスク状のホログラム記録媒体のシフト(数十μmの移動)によって参照光の角度が変化したのと等価になることを利用したものである。
球面参照波を用いたシフト多重記録において、ディスク状ホログラム記録媒体のシフト量を定める距離、すなわち、互いのホログラムが独立に分離できる距離δsphericalは下記(1)式で与えられる。
ここで、λはレーザ光の波長、z0は球面参照波を生成する対物レンズとホログラム記録媒体の距離、Lはホログラム記録媒体の膜厚、NAは対物レンズの開口数、θsは信号光と参照光との角度である。上記(1)式より、ホログラム記録媒体の厚さLが大きいほど、互いのホログラムが独立に分離できる距離に応じて定まるシフト量δは小さくなり、したがって多重度を増加することができ、記録容量を増大させることができる。
パーソナルコンピュータ42は、ホログラム記録媒体24を回転させた状態で、ホログラムの各ページが記録開始位置からシフト量δの間隔で記録されるように定められたタイミングで各ページの記録信号を空間光変調素子36に供給する。
次のステップ108で、ホログラム記録媒体24に、最初の記録処理の記録条件、即ち、第1のデータを記録したときの信号光及び参照光の偏光状態に関する情報を特定の領域に記録し、処理ルーチンを終了する。特定の領域としては、例えば、記録されるファイルとこのファイルを記録した記録領域とを対応付けるファイル配置表(FAT;File Allocation Table)を記録した、いわゆるFAT領域を使用することができる。
ステップ102において、上書き記録処理と判断された場合には、ステップ110において、1/4波長板54、56、58、及び1/2波長板52を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、シャッタ12と検光子44とを光路中に挿入し、ステップ112でホログラム記録媒体24に読み出し光を照射して、最初の記録処理を行ったときの記録再生条件を読み取る。偏光ビームスプリッタ16を透過したレーザ光は、シャッタ12で遮光され、偏光ビームスプリッタ16で反射されたレーザ光のみがホログラム記録媒体24に照射される。ホログラム記録媒体24で回折された再生光は、レンズ38を透過し、検光子44により所定偏光成分の再生光のみが選択的に透過され、検出器40に受光された再生光が検出器40により電気信号に変換されて、パーソナルコンピュータ42に入力される。
次のステップ114で、メモリに記憶されたテーブルを読み出し、ステップ116で、読み出されたテーブルを参照して、読み取った最初の記録処理の記録再生条件から、第2のデータを上書き記録するときの記録条件を決定する。
本実施の形態では、上書き記録の条件として、信号光がP偏光、参照光がS偏光という条件が設定されている。この場合、読み出し光としてS偏光を照射するとP偏光の再生光が得られる。上書き記録の条件が決定されると、ステップ118において、駆動装置48を駆動し、シャッター12と検光子44とを光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、旋光子26を光路中に挿入する。
次のステップ120で、レーザ光を照射すると共に、パーソナルコンピュータ42から第2のデータの記録信号を記録開始位置から所定のタイミングで出力し、ホログラム記録媒体24へのホログラムのシフト多重記録処理を実行する。
偏光ビームスプリッタ16を透過したP偏光は、旋光子26でS偏光に変換された後、空間光変調素子36で変調されて、P偏光の信号光としてホログラム記録媒体24に照射される。一方、偏光ビームスプリッタ16で反射されたS偏光は、参照光としてホログラム記録媒体24に照射される。信号光はP偏光、参照光はS偏光であり、信号光の偏光方向と参照光の偏光方向とは直交している。従って、第2のデータが偏光変調型ホログラムとして記録される。
次のステップ122で、ホログラム記録媒体24に、上書き記録処理の記録条件、即ち、第2のデータを記録したときの信号光及び参照光の偏光状態に関する情報を特定の領域に記録し、処理ルーチンを終了する。
次に、ホログラムの再生処理について説明する。ステップ100でホログラムの再生処理が選択されたと判断された場合には、ステップ124で、シャッタ12と検光子44とを光路中に挿入し、ステップ126で、ホログラム記録媒体24に読み出し光を照射して、最後に記録処理を行ったときの記録再生条件を読み取る。即ち、上書き記録された最新データの記録再生条件を読み取る。本実施の形態では、最初の記録処理と上書き記録処理とで、読み出し光の偏光状態は共通(両方ともS偏光)であるため、同じ読み出し光を照射して記録再生条件を読み取ることができる。
最後に記録処理を行ったときの記録再生条件か否かは、得られた再生光の強度に基づいて判断することができる。例えば、上書き記録されたデータと上書き記録前のデータとを同じ偏光状態の読み出し光を照射して読み出す場合には、上書き記録前後のデータの各々に対応して複数の再生光が得られる。最新データに対応する再生光の強度は、他のデータに対応する再生光の強度よりも大きい。従って、最も強度が大きい再生光から読み取った記録再生条件が、最後に記録処理を行ったときの記録再生条件である。本実施の形態では、S偏光の読み出し光を照射すると、S偏光とP偏光の2つの再生光が得られる。この場合には、検光子44の透過軸を回転するなどして、両者の強度差を検出し、より強度が大きい再生光から記録再生条件を読み取る。
以下では、(B−3)の条件で上書き記録された第2のデータを再生する場合について説明する。次のステップ128で、第2のデータの再生処理を実行する。偏光ビームスプリッタ16を透過したレーザ光がシャッタ12で遮光され、偏光ビームスプリッタ16で反射されたS偏光は、読み出し光としてホログラム記録媒体24に照射される。なお、この例では、記録再生条件を読み取るための読み出し光と、第2のデータを再生するための読み出し光とは、同じ偏光状態の光である。従って、記録再生条件の読み取りに引き続いて、第2のデータの再生処理を行うことができる。
ホログラム記録媒体24で回折された再生光は、第1のデータに対応するS偏光成分と第2のデータに対応するP偏光成分とを含んでいる。この再生光は、レンズ38を透過し、検光子44により第2のデータに対応するP偏光成分のみが選択的に透過され、検出器40で受光される。受光された再生光は、検出器40により電気信号に変換され、パーソナルコンピュータ42に入力される。この通り、第1のデータに対応するS偏光成分は検光子44により遮断されるので、第2のデータがクロストーク無く再生される。また、第1のデータに起因するノイズが防止され、S/Nの大きな再生光を得ることができる。
以上説明した通り、本実施の形態では、第1のデータを消去することなく第2のデータを上書き記録するので、高速にデータの書き換えを行うことができる。また、第2のデータを上書き記録する場合に、第1のデータが記録されたときの記録再生条件を参照して、第1のデータとは異なる偏光方向の再生光が得られるように記録再生条件を決めているので、検光子を用いることにより、第2のデータの再生光を第1のデータの再生光から容易に分離して検出することができる。即ち、第2のデータをクロストーク無く再生することができる。
なお、本実施の形態では、ホログラムの再生処理が選択されたと判断された場合に、最後に記録処理を行ったときの記録再生条件を読み取り、得られた記録再生条件に基づいて再生処理を行う例について説明したが、記録再生条件を読み取ることなく、直接、記録再生処理を行ってもよい。例えば、ホログラム記録媒体で回折された再生光が、第1のデータに対応するS偏光成分と第2のデータに対応するP偏光成分とを含んでいる場合に、検光子の透過軸を回転するなどして、再生光に含まれる2つの成分の強度を光検出器で比較することによって、いずれの成分が最新データからの再生光かを知ることができる。また、最新データの再生光成分から該データを再生することができる。
また、同一領域に複数ページのホログラムが記録される場合には、一部のページだけが書き換えられる場合がある。この場合でも、検光子の透過軸を回転するなどして、これら2つの再生光の強度を光検出器で比較することによって、最新データを記録した記録再生条件を知ることができる。
例えば、全2ページのホログラムが(B−3)の条件で上書き記録され、第1のページだけが(A−1)の条件で書き換えられた場合、S偏光の参照光を照射すると、第1のページからは主にS偏光の再生光が出射され、第2のページからは主にP偏光の再生光が出射される。複数ページのホログラムは第1のページから記録されるので、この例でいえば、第1のページについて再生光の強度を比較して、S偏光の再生光強度がP偏光の再生光強度より大きい場合には、(A−1)の条件が最新データを記録した記録再生条件であることがわかる。なお、比較のために読み出すホログラムのページ数は何ページでも良いが、高速化のためには少ないページ数がよい。
なお、図2に示すホログラム記録再生装置において、光路に挿入又は光路から退避可能な素子のうち、本実施の形態の記録再生条件に応じて挿入する素子の符号を下記表5にまとめて示す。挿入する素子以外は光路から退避させるものとする。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、表3の記録再生条件(C−5)と表4の記録再生条件(D−3)とを組とする。書き換え記録を行う場合には、第1のデータを記録再生条件(C−5)で記録した領域に、第2のデータを記録再生条件(D−3)で上書き記録する。更に第2のデータを書き換える場合には、再度、記録再生条件(C−5)で上書き記録する。このように、組とした記録再生条件を交互に繰り返し使用し、書き換え毎に記録再生条件を変更する。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同じホログラム記録再生装置を使用してホログラムの記録及び再生を行う。図4を参照して、第2の実施の形態の記録再生処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の処理ルーチンと同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
本実施の形態では、信号光を右回りの円偏光(RC偏光)、参照光を左回りの円偏光(LC偏光)として第1のデータの記録を行う。従って、最初の記録処理の場合には、ステップ200において駆動装置48を駆動し、シャッタ12、1/2波長板52、59、1/4波長板58、及び検光子44を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、旋光子26と1/4波長板54、56とを光路に挿入する。
次のステップ202で、レーザ光を照射すると共に、パーソナルコンピュータ42から第1のデータの記録信号を記録開始位置から所定のタイミングで出力し、ホログラム記録媒体24へのホログラムのシフト多重記録処理を実行する。偏光ビームスプリッタ16を透過したP偏光は、旋光子26でS偏光にされた後、空間光変調素子36で変調されてP偏光となり、更に1/4波長板56でRC偏光とされて信号光としてホログラム記録媒体24に照射される。一方、偏光ビームスプリッタ16で反射されたS偏光は、1/4波長板54でLC偏光とされ、参照光としてホログラム記録媒体24に照射される。
次のステップ108で、ホログラム記録媒体24に最初の記録処理の記録条件を特定の領域に記録し、処理ルーチンを終了する。
ステップ102において、上書き記録処理と判断された場合には、ステップ204において駆動装置48を駆動し、旋光子26、1/2波長板52、59、及び1/4波長板54、56を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、シャッタ12、1/4波長板58、及び検光子44を光路中に挿入し、ステップ206でホログラム記録媒体24に読み出し光を照射して、最初の記録処理を行ったときの記録再生条件を読み取る。偏光ビームスプリッタ16で反射されたレーザ光(S偏光)がホログラム記録媒体24に照射される。ホログラム記録媒体24で回折された再生光(RC偏光)は、1/4波長板58でS偏光に変換されて、レンズ38を透過し、検光子44によりS偏光成分のみが選択的に透過され、検出器40に受光された再生光が検出器40により電気信号に変換されて、パーソナルコンピュータ42に入力される。
次のステップ114で、メモリに記憶されたテーブルを読み出し、ステップ116で、読み出されたテーブルを参照して、読み取った最初の記録処理の記録再生条件から、第2のデータを上書き記録するときの記録条件を決定する。
本実施の形態では、上書き記録の条件として、信号光がLC偏光、参照光がRC偏光という条件が設定されている。この場合、読み出し光としてS偏光を照射するとLC偏光の再生光が得られる。上書き記録の条件が決定されると、ステップ208において、駆動装置48を駆動し、シャッター12、1/4波長板58、及び検光子44を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、旋光子26と1/4波長板54、56とを光路に挿入する。
次のステップ210で、レーザ光を照射すると共に、パーソナルコンピュータ42から第2のデータの記録信号を記録開始位置から所定のタイミングで出力し、ホログラム記録媒体24へのホログラムのシフト多重記録処理を実行する。偏光ビームスプリッタ16を透過したP偏光は、旋光子26でS偏光に変換された後、空間光変調素子36でP偏光に変調され、1/4波長板56でLC偏光に変換されて、LC偏光の信号光としてホログラム記録媒体24に照射される。一方、偏光ビームスプリッタ16で反射されたS偏光は、1/4波長板54でRC偏光に変換されて、RC偏光の参照光としてホログラム記録媒体24に照射される。
次のステップ122で、ホログラム記録媒体24に、上書き記録処理の記録条件を特定の領域に記録し、処理ルーチンを終了する。
次に、ホログラムの再生処理について説明する。ステップ100でホログラムの再生処理が選択されたと判断された場合には、ステップ212で、旋光子26、1/2波長板52、59、及び1/4波長板54、56を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、シャッタ12、1/4波長板58、及び検光子44を光路中に挿入し、ステップ214でホログラム記録媒体24に読み出し光を照射して、最後に記録処理を行ったときの記録再生条件を読み取る。本実施の形態では、最初の記録処理と上書き記録処理とで、読み出し光の偏光状態は共通(両方ともS偏光)であるため、同じ読み出し光を照射して記録再生条件を読み取ることができる。
この例では、記録再生条件を読み取るための読み出し光と、第2のデータを再生するための読み出し光とは、同じ偏光状態の光である。従って、記録再生条件の読み取りに引き続いて、第2のデータの再生処理を行うことができる。以下では、(D−3)の条件で上書き記録された第2のデータを再生する場合について説明する。
次のステップ216で、第2のデータの再生処理を実行する。偏光ビームスプリッタ16を透過したレーザ光がシャッタ12で遮光され、偏光ビームスプリッタ16で反射されたS偏光は、読み出し光としてホログラム記録媒体24に照射される。
ホログラム記録媒体24で回折された再生光は、第1のデータに対応するRC偏光成分と第2のデータに対応するLC偏光成分とを含んでいる。この再生光は、レンズ38を透過し、1/4波長板58によりRC偏光はS偏光に変換され、LC偏光はP偏光に変換されて、検光子44により第2のデータに対応するP偏光成分のみが選択的に透過され、検出器40で受光される。受光された再生光は、検出器40により電気信号に変換され、パーソナルコンピュータ42に入力される。
この通り、第1のデータに対応するS偏光成分は検光子44により遮断されるので、第2のデータがクロストーク無く再生される。また、第1のデータに起因するノイズが防止され、S/Nの大きな再生光を得ることができる。
以上説明した通り、本実施の形態では、第1のデータを消去することなく第2のデータを上書き記録するので、高速にデータの書き換えを行うことができる。また、第2のデータを上書き記録する場合に、第1のデータが記録されたときの記録再生条件を参照して、第1のデータとは異なる方向に回転する円偏光の再生光が得られるように記録再生条件を決めているので、1/4波長板と検光子とを用いることにより、第2のデータの再生光を第1のデータの再生光から容易に分離して検出することができる。即ち、第2のデータをクロストーク無く再生することができる。
なお、図2に示すホログラム記録再生装置において、光路に挿入又は光路から退避可能な素子のうち、本実施の形態の記録再生条件に応じて挿入する素子を下記表6にまとめて示す。挿入する素子以外は光路から退避させるものとする。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態では、表3の記録再生条件(C−7)と表4の記録再生条件(D−5)とを組とする。書き換え記録を行う場合には、第1のデータを記録再生条件(C−7)で記録した領域に、第2のデータを記録再生条件(D−5)で上書き記録する。更に第2のデータを書き換える場合には、再度、記録再生条件(C−7)で上書き記録する。このように、組とした記録再生条件を交互に繰り返し使用し、書き換え毎に記録再生条件を変更する。
上記の記録再生条件の組み合わせでは、(C−7)の条件で記録したホログラムに、条件(D−5)の読み出し光であるRC偏光を照射した場合、(C−7)の条件で記録したホログラムからは再生光が出射しない。また、(D−5)の条件で記録したホログラムに、条件(C−7)の読み出し光であるLC偏光を照射した場合、(D−5)の条件で記録したホログラムからは再生光が出射しない。従って、S/Nの良い再生光を得ることができる。
第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同じホログラム記録再生装置を使用してホログラムの記録及び再生を行う。図5を参照して、第3の実施の形態の記録再生処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の処理ルーチンと同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
本実施の形態では、信号光をRC偏光、参照光をLC偏光として第1のデータの記録を行う。従って、最初の記録処理の場合には、ステップ300において駆動装置48を駆動し、シャッタ12、1/2波長板52、59、1/4波長板58、及び検光子44を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、旋光子26と1/4波長板54、56とを光路に挿入する。
次のステップ302で、レーザ光を照射すると共に、パーソナルコンピュータ42から第1のデータの記録信号を記録開始位置から所定のタイミングで出力し、ホログラム記録媒体24へのホログラムのシフト多重記録処理を実行する。偏光ビームスプリッタ16を透過したP偏光は、旋光子26でS偏光にされた後、空間光変調素子36で変調されてP偏光となり、更に1/4波長板56でRC偏光とされて、信号光としてホログラム記録媒体24に照射される。一方、偏光ビームスプリッタ16で反射されたS偏光は、1/4波長板54でLC偏光とされ、参照光としてホログラム記録媒体24に照射される
次のステップ108で、ホログラム記録媒体24に最初の記録処理の記録条件を特定の領域に記録し、処理ルーチンを終了する。
ステップ102において、上書き記録処理と判断された場合には、ステップ304において駆動装置48を駆動し、旋光子26、1/2波長板52、59、1/4波長板56、58、及び検光子44を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、シャッタ12と1/4波長板54とを光路中に挿入し、ステップ306でホログラム記録媒体24に読み出し光を照射して、最初の記録処理を行ったときの記録再生条件を読み取る。
偏光ビームスプリッタ16で反射されたレーザ光(S偏光)が1/4波長板54でLC偏光に変換されて、読み出し光としてホログラム記録媒体24に照射される。ホログラム記録媒体24で回折された再生光(RC偏光)は、レンズ38を透過し、検出器40で受光された再生光が検出器40により電気信号に変換されて、パーソナルコンピュータ42に入力される。
なお、上述した通り、条件(D−5)の読み出し光であるRC偏光を照射しても(C−7)の条件で記録したホログラムからは再生光が出射せず、条件(C−7)の読み出し光であるLC偏光を照射しても、(D−5)の条件で記録したホログラムからは再生光が出射しない。従って、書き換え回数が不明の場合には、記録再生条件を読み出すのに、RC偏光の読出し光とLC偏光の読出し光とをそれぞれ照射し、得られた再生光の強度を比較する。これにより、最新データを記録した記録再生条件を知ることができる。
次のステップ114で、メモリに記憶されたテーブルを読み出し、ステップ116で、読み出されたテーブルを参照して、読み取った最初の記録処理の記録再生条件から、第2のデータを上書き記録するときの記録条件を決定する。
本実施の形態では、上書き記録の条件として、信号光がLC偏光、参照光がRC偏光という条件が設定されている。この場合、読み出し光としてRC偏光を照射するとLC偏光の再生光が得られる。上書き記録の条件が決定されると、ステップ308において、駆動装置48を駆動し、シャッター12を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、旋光子26と1/4波長板54、56とを光路に挿入する。
次のステップ310で、レーザ光を照射すると共に、パーソナルコンピュータ42から第2のデータの記録信号を記録開始位置から所定のタイミングで出力し、ホログラム記録媒体24へのホログラムのシフト多重記録処理を実行する。偏光ビームスプリッタ16を透過したP偏光は、旋光子26でS偏光に変換された後、空間光変調素子36でP偏光に変調され、1/4波長板56でLC偏光に変換されて、LC偏光の信号光としてホログラム記録媒体24に照射される。一方、偏光ビームスプリッタ16で反射されたS偏光は、1/4波長板54でRC偏光に変換されて、RC偏光の参照光としてホログラム記録媒体24に照射される。
次のステップ122で、ホログラム記録媒体24に上書き記録処理の記録条件を特定の領域に記録し、処理ルーチンを終了する。
次に、ホログラムの再生処理について説明する。ステップ100でホログラムの再生処理が選択されたと判断された場合には、ステップ312で、旋光子26、1/2波長板52、59、及び1/4波長板56、58を光路から退避させてレーザ光が通過できるようにすると共に、シャッタ12と1/4波長板54とを光路中に挿入し、ステップ314で、ホログラム記録媒体24に読み出し光を照射して、最後に記録処理を行ったときの記録再生条件を読み取る。上述した通り、本実施の形態では、最初の記録処理と上書き記録処理とで読み出し光の偏光状態が異なっているため、2種類の読み出し光を各々照射して記録再生条件を読み取る。
次のステップ316で、読み取った記録再生条件に基づいて、第2のデータの再生処理を実行する。以下では(D−7)の条件で上書き記録された第2のデータを再生する場合について説明する。偏光ビームスプリッタ16を透過したレーザ光がシャッタ12で遮光され、偏光ビームスプリッタ16で反射されたS偏光は、1/4波長板54でRC偏光に変換されて、読み出し光としてホログラム記録媒体24に照射される。
本実施の形態では、第1のデータを記録したときの信号光はRC偏光、参照光はLC偏光である。この場合、読み出し光としてLC偏光を照射するとRC偏光の再生光が得られる。一方、第2のデータを記録したときの信号光はLC偏光、参照光はRC偏光である。この場合、読み出し光としてRC偏光を照射するとLC偏光の再生光が得られる。以上の通り、第1のデータと第2のデータとで読み出し光の偏光状態が異なっているので、読み出し光としてRC偏光を照射して第2のデータを再生する場合、第1のデータは再生されない。
ホログラム記録媒体24で回折される再生光は、第2のデータに対応するLC偏光だけを含んでいる。この再生光は、レンズ38を透過し、検出器40で受光される。受光された再生光は、検出器40により電気信号に変換され、パーソナルコンピュータ42に入力される。この通り、第2のデータに対応する再生光だけが出射され、第1のデータに対応する再生光は出射されないので、第2のデータだけがクロストーク無く再生される。また、第1のデータに起因するノイズが防止され、S/Nの大きな再生光を得ることができる。
以上説明した通り、本実施の形態では、第1のデータを消去することなく第2のデータを上書き記録するので、高速にデータの書き換えを行うことができる。また、第2のデータを上書き記録する場合に、第1のデータが記録されたときの記録再生条件を参照して、第1のデータが再生されない読み出し光で第2のデータの再生光が得られるように記録再生条件を決めているので、第2のデータの再生光だけを検出することができる。即ち、第2のデータをクロストーク無く再生することができる。
なお、図2に示すホログラム記録再生装置において、光路に挿入又は光路から退避可能な素子のうち、本実施の形態の記録再生条件に応じて挿入する素子を下記表7にまとめて示す。挿入する素子以外は光路から退避させるものとする。
なお、上記では、ホログラム記録媒体を回転させてシフト多重記録する例について説明したが、ホログラム記録媒体を直線状に移動させてシフト多重記録するようにしてもよく、ホログラム記録媒体を回転又は直線状に移動する代わりに、信号光及び参照光をホログラム記録媒体上に走査するようにしてもよい。
また、上記では、シフト多重記録方法を適用した実施の形態について説明したが、角度多重記録方法、波長多重記録方法、又は位相多重記録方法にも本発明を適用することができる。