JP4460148B2 - 治療用薬剤の細胞への送達を増強するための組成物および方法 - Google Patents

治療用薬剤の細胞への送達を増強するための組成物および方法 Download PDF

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Description

(発明の背景)
本発明は、治療用およびその他の薬剤を細胞へ送達する分野に関する。遺伝子、ポリペプチドおよびその他の分子は、特に、本発明の組成物および方法を用いて送達され得る薬剤である。細胞は個々にか、または生物学的組織または器官として存在し得る。
【0001】
化合物の細胞中への送達は、多くの診断プロセスおよび治療プロセスの最初の重要な工程である。例えば、遺伝子治療は、核酸の細胞への送達を必要とする治療用およびその他の使用のための高度に約束されたツールである。例えば、遺伝子移入法を基にした新生物を処置する別個のアプローチが開発された。新生物形質転換および新生物進行を生じる規定された遺伝子座における特定の損傷を矯正する方法が開発されている(Spandidosら、Anticancer Res.10:1543−1554(1990);Banerjeeら、Cancer Res.52:6297−6304(1992))。優性オンコジーンの過剰発現は、形質転換遺伝子または遺伝子産物を阻害する技術を用いて検討され得る。腫瘍サプレッサー遺伝子機能の損失は、野生型腫瘍サプレッサー遺伝子機能を再構築する方法を用いてアプローチされ得る(Goodrichら、Cancer Res.52:1968−1973(1992))。変異補償を達成するためのこれらの方法の他に、腫瘍細胞を特異的かつ選択的に根絶する遺伝子技法が開発された。分子化学療法のこれらのアプローチは、新形成細胞における毒性遺伝子の特異的発現に依存する(Abeら、Proc Soc Exp Biol Med.203:354−359(1993))。最後に、遺伝子移入法を用いて抗腫瘍免疫が達成されている。遺伝子免疫増強のこれらの方法は、遺伝子免疫調節の技法を用いて腫瘍の免疫認識を増強する。その結果として、種々の別個のアプローチが、癌の遺伝子治療を達成するために開発された。
【0002】
膀胱の癌腫の症例では、高い変異の発生数が、p53およびRBのような腫瘍サプレッサー遺伝子で観察されている(Fujimotoら、Cancer Res.52:1393−1398(1992);Cairnsら、Oncogene6:2305−2309(1991))。腫瘍サプレッサー遺伝子のこのような遺伝子損傷について、新形成表現型の復帰は、対応する野生型腫瘍サプレッサー遺伝子の置換により示され得る(Spandidos、前出;Banerjee、前出)。
【0003】
膀胱の癌腫は、罹病率および死亡率の顕著な供給源を代表する。膀胱癌は、癌に関連する死亡率では、男性で10番目および女性で12番目のランクである(癌の事実および外観、Amer.Can.Soc.5:11(1995))。膀胱癌の処置に利用可能な治療は、アジュバント化学治療または免疫治療、表在性疾患の経尿道的切除、しばしば全身化学治療と組み合わされる根治的膀胱切除または放射線治療を含む。これらの治療オプションにもかかわらず、全体の生存は、認識され得るほどに変化しなかった(前出)。従って、新たな治療様式が、膀胱癌の処置のために開発されなければならない。
【0004】
遺伝子治療戦略が、代替の治療アプローチとして開発された(例えば、Brewsterら、Eur Urol 25:177−182(1994);Takahashiら、Proc Natl Acad Sci USA 88:5257−5261(1991);Rosenberg,SA,J.Clin.Oncol.10:180−199(1992))。ヒトまたはその他の動物における癌およびその他の状態の成功する処置は、細胞に進入する治療薬剤の適切な量、および治療薬剤を摂取する標的細胞の十分に大きな比率に依存し得る。
【0005】
多くの他の治療薬およびその他の調整薬剤は、ポリペプチドまたは、例えば、小分子である。ここで再び、標的細胞集団に到達する薬剤の量は、処置の効力に対して大きなインパクトを有し得る。従って、細胞または細胞の集団に送達される薬剤の量を増強し得る化合物および方法に対する必要性が存在する。
【0006】
本発明は、このおよびその他の必要性を満たす。
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、薬剤の細胞への送達を増強し得る化合物を提供する。本発明の送達増強化合物は、代表的には式Iを有する:
【0008】
【化27】
Figure 0004460148
ここで:mおよびnは同じかまたは異なり、そして各々は2−8の整数であり;Rはカチオン性基であるか、または
【0009】
【化28】
Figure 0004460148
であり、
1は、 が結合するカルボニル基と一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;そして、X 2 およびX 3 は、各々独立して、サッカリド基であるか、あるいはX およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
ここでRが
【0012】
【化31】
Figure 0004460148
であるときX2およびX3の少なくとも1つがサッカリド基である。
【0013】
本発明の好適な送達増強化合物のいくつかの例は、図21に示されるような式III、IV、またはVを有する化合物である。
【0014】
いくつかの実施態様では、送達増強化合物は式IIを有する:
【0015】
【化32】
Figure 0004460148
ここでX1およびX2、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基およびデオキシコール酸からなる群より選択され;かつX 3 はサッカリド基である。
【0017】
本発明はまた、式Iの送達増強化合物を含む処方物中で、薬剤を細胞に投与することにより薬剤を送達する方法を提供する。
【0018】
さらなる実施態様で、本発明は、薬剤を細胞に送達するための組成物を提供する。この組成物は、送達されるべき薬剤および式Iの送達増強化合物を含む。
【0019】
本発明のさらなる局面は、細胞に、式Iの化合物を含む緩衝液中に処方される治療的に有効な量の治療薬剤を投与することにより、膀胱癌を含む癌を処置する方法である。
【0020】
(詳細な説明)
本発明は、上皮組織中に存在する細胞のような細胞への薬剤の輸送を増強する送達増強化合物および処方物を提供する。この化合物および処方物は、例えば、増殖または疾患状態に関連する細胞プロセスを調整し得、細胞に進入しおよび/または薬剤を取り込む組織または器官中の細胞の比率を増強する薬剤のような薬剤の量を増強し得る。本発明の送達増強化合物を用いる薬剤の細胞への送達方法もまた、提供される。
【0021】
本発明の送達増強化合物および方法は、細胞への分子の送達を必要とする多くの適用に有用である。例えば、多くの疾患状態の診断および/または処置は、しばしば、疾患プロセスに関与する細胞への薬剤の進入を必要とする。別の例は、細胞培養物中または組換え生物中のいずれかの目的のタンパク質を産生するための組換えDNA技術の使用である。細胞中に化合物を導入することが所望される状況の多くのさらなる例は、当業者に公知である。本発明の化合物および方法は、目的薬剤の標的細胞または組織への増強した送達に起因してこれらの適用の各々の有効性を改善し得る。
【0022】
(A.送達増強化合物)
本発明は、目的の薬剤と処方されるとき、この薬剤の細胞への送達を増強する送達増強化合物を提供する。いくつかの実施態様では、細胞は、組織または器官中に存在する。「送達増強化合物」とは、細胞、組織または器官への薬剤の送達を増強する任意の化合物をいう。増強した送達が生じる機構の理解は、本発明の実施には必須ではないが、増強した送達が任意の種々の機構によって生じ得ることに注目すべきである。1つのそのような機構は、送達増強化合物による組織または器官の上皮表面上の保護グリコサミノグリカン(GAG)層の破壊を含み得る。
【0023】
送達増強化合物を含む処方物中の薬剤を細胞に投与することは、送達増強化合物の非存在下で投与されるときに細胞に送達される薬剤の量に対して、細胞に送達される薬剤の量の増強を生じさせる。本明細書で用いる「増強した送達」とは、各細胞に進入する薬剤のコピー数の増加、または、例えば組織または器官中の薬剤を取り込む細胞の比率の増加のいずれか、または両方をいう。好適な実施態様では、送達増強化合物は、送達増強化合物の非存在下で細胞に投与されるとき送達される薬剤の量に比較して、細胞または細胞の集団への薬剤の送達において、少なくとも約20%の増加、より好ましくは少なくとも約50%の増加、そして最も好ましくは少なくとも約100%の増加を生じる。
【0024】
特定の化合物または処方物が、治療用薬剤または診断薬剤のような薬剤の細胞への増強送達において有効であるか否かは、当業者に公知の種々の手段により測定し得る。例えば、検出試薬を、標的細胞に投与される送達増強処方物に含め得る。送達増強処方物で処理される細胞中に存在する検出試薬の量は、送達増強化合物を含まない処方物で処理した細胞中で検出された量と比較される。例として、目的の薬剤が、遺伝子または遺伝子を含むベクターである場合、発現が容易に検出可能なレポーター遺伝子を処方物中に含め得る。調整薬剤がポリペプチドである場合、送達増強化合物を、例えば、標識を送達増強処方物中に存在するポリペプチドに結合させ、そして処方物の投与の後標的細胞中に見出される標識の存在および量を検出することにより試験し得る。同様に、調整薬剤としてポリペプチドおよびポリヌクレオチド以外の分子が用いられるべき場合、分子を標識し得、そして標的細胞集団に進入する量の標識を検出し得る。
【0025】
送達増強化合物の例は、界面活性剤、アルコール、グリコール、界面活性剤、胆汁酸塩、ヘパリンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼインヒビター、高浸透圧塩溶液、および酢酸塩を含むが、これらに限定されない。アルコールは、例えば、エタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、アセチルアルコールのような脂肪族アルコールを含む。グリコールは、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングルコール、およびグリセロールおよびチオグリセロールのようなその他の低分子量グリコールを含む。酢酸、グルコン酸、および酢酸ナトリウムのような酢酸塩は、送達増強化合物のさらなる例である。1M NaClのような高浸透圧塩溶液もまた、送達増強化合物の例である。界面活性剤の例は、ドデシル硫酸ナトウリム(SDS)およびリゾレシチン、ポリソルベート80、ノニルフェノキシ−ポリオキシエチレン、リゾホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、ポリオキシエチレンエーテル、ポリグリコールエーテル界面活性剤およびDMSOを含む。タウロコール酸、タウロ−デオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸、および硝酸銀のようなその他の収斂剤のような胆汁酸塩もまた、プロタミン硫酸塩のような第4級アミンのようなヘパリンアンタゴニストが用いられ得るように、用いられ得る。例えば、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸のようなシクロオキシゲナーゼインヒビター、ならびにインドメタシン、ナプロキセン、およびジクロフェナックのような非ステロイド抗炎症性薬剤(NSAIDS)もまた適切である。
【0026】
送達増強化合物として機能し得る界面活性剤は、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性、および非イオン性界面活性剤を含む。例示の界面活性剤は、タウロコール酸、デオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、セチルピリジウム、塩化ベナルコニウム、ZWITTERGENT73−14界面活性剤、CHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオール]-1-プロパンスルホネート水和物、Aldrich)、Big CHAP、デオキシBig CHAP、TRITON7-X-100界面活性剤、C12E8、オクチル-B-D-グルコピラノシド、PLURONIC7-F68界面活性剤、TWEEN 20界面活性剤、およびTWEEN7 80界面活性剤(CALBIOCHEM7 Biochemicals)を含む。
【0027】
薬剤が、例えば、核酸である、処方物のための好ましい送達増強化合物の1つの例は、コール酸誘導体であるBig CHAPである(例えば、Heleniusら(1979)「界面活性剤の性質」Methods in Enzymology,第66巻、734−749頁を参照のこと)。市販のBig-CHAP調製物を含む核酸処方物に対する改良された遺伝子移入を容易にするために、Big CHAPの濃度は、その市販の供給源を基に変動し得る。Big CHAPがCALBIOCHEM7から供給されるとき、2〜10ミリモル濃度の範囲にある濃度が好ましい。より好ましくは4〜8ミリモル濃度である。最も好ましくは約7ミリモル濃度である。Big CHAPがSigmaから供給されるとき、Big CHAPの濃度が、15〜35ミリモル濃度の範囲にあることが好ましい。より好ましくは20〜30ミリモル濃度である。最も好ましくは、約25ミリモル濃度である。
【0028】
さらなる実施態様では、本発明は、式Iをもつ送達増強化合物を提供する:
【0029】
【化34】
Figure 0004460148
式Iにおいて、mおよびnは同じかまたは異なるかのいずれかであり得、そして各々は2〜8の整数である。好ましい実施態様では、mおよびnは独立して各々2または3である。
【0030】
好ましくは、式I中のRは、以下の式を有するカチオン基または構造である
【0031】
【化35】
Figure 0004460148
適切なカチオン基は、化合物に正荷電を提供する任意の部分を含み得る。適切なカチオン基の例は、トリメチルアンモニウムおよびアンモニウムカチオンを含むがこれらに限定されない。
【0032】
1は、一般に、式IにおいてX が結合するカルボニル基と一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;そして、X 2 およびX 3 は、各々独立して、サッカリド基であるか、あるいはX およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基である。
【0034】
3が分子中に存在するとき、X2およびX3の少なくとも1つはサッカリド基である。
【0035】
本発明の送達増強化合物において用いられ得るサッカリド基は、モノサッカリドであり得るか、またはホモオリゴサッカリドまたはヘテロオリゴサッカリドのいずれかで連結した1つを超えるモノサッカリドを含み得る。好ましいモノサッカリドは、ペントース残基および/またはヘキソース残基を含む。例えば、サッカリド基は、ペントースモノサッカリド基、ヘキソースモノサッカリド基、ペントース−ペントースジサッカリド基、ヘキソース−ヘキソースジサッカリド基、ペントース−ヘキソースジサッカリド基、およびヘキソース−ペントースジサッカリド基からなる群から選択され得る。X3について好ましいサッカリド基の1つはラクトースである。
【0036】
いくつかの実施態様では、式Iの送達増強化合物は、3つ以上のモノサッカリドからなるサッカリド基としてX2および/またはX3を有する。好ましくは、サッカリド基は1〜8のモノサッカリド、より好ましくは、1〜4のモノサッカリド、および最も好ましくは、約2〜3のモノサッカリドを有する。例えば、トリサッカリドの使用は、増強した溶解度をもつ化合物を提供し得る。
【0037】
本発明の適切な送達増強化合物の例は、X1およびX2 の各々が、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつX 3 がサッカリドである式Iの化合物を含むが、これに限定されない。
【0039】
の実施態様は、例えば、X1およびX2の両方を、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒にして、分子の残りの部分とアミド結合しているデオキシコール酸基として、かつX 3 をサッカリド基として有する。
【0040】
ましい化合物はまた、nが2または3であり、X1およびX2 の各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつX 3 がヘキソースモノサッカリド基である化合物;nが2または3であり、X 1 およびX 3 の各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつX がヘキソースモノサッカリド基である化合物;およびnが2または3であり、X 1 およびX 2 の各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつX がヘキソース−ヘキソースジサッカリド基である化合物を含む。
【0044】
nが2または3であり、X1およびX3 の各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつX がヘキソース−ヘキソースジサッカリド基である化合物、または、nが2または3であり、X 1 およびX 2 の各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつX 3 がヘキソース−ペントースジサッカリド基である化合物もまた適切である。
【0047】
特にX3位でトリサッカリド基を有する式Iの化合物もまた好ましい。
【0048】
本発明の好ましい送達増強化合物の1つの例は、図21で示されるような式IIIを有するSyn3である。Syn3は、Big CHAPの市販の調製物中に見出された不純物の合成アナログである(実施例参照)。Big CHAPの不純物2および3もまた、送達増強化合物としての使用に、特に例えば、Big CHAPのような界面活性剤を含む可溶化緩衝液中に処方されるとき適切である。
【0049】
いくつかの適用には、他の化合物と比較して、増強した水溶性および/または送達増強活性を示す送達増強化合物を用いることが所望される。このような化合物もまた、本発明により提供される。例えば、本発明は、Rがカチオン基である式Iを有する化合物を提供する。適切なカチオン基は、例えば、テトラメチルおよびアンモニウム部分、およびその塩を含む。このような化合物の例は、図21に示されるようなA−tma(式IV)およびA−HCl(式V)を含む。改良された溶解度および/または送達増強活性を有する他の化合物は、式Iの化合物中のサッカリド基(単数または複数)がトリサッカリドまたはより長い化合物を含む。
【0050】
いくつかの実施態様では、本発明の送達増強薬剤は式IIを有し:
【0051】
【化45】
Figure 0004460148
ここで、X1およびX2は、 およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり、かつX 3 は、サッカリド基である。適切なサッカリド基は、式Iの化合物について議論された上記の基を含む。適切な化合物の1つの例では、X 1 およびX 2 の両方が、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつX 3 がグルコース基である化合物を含む。
【0054】
適切な化合物のさらなる例は、X1およびX2 は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり、かつ、X 3 がラクトース基である化合物を含むがこれに限定されない。
【0056】
本発明はまた、細胞に送達されるべき薬剤および送達増強化合物を含む処方物を提供する。処方物中の送達増強化合物の濃度は、用いられている特定の送達増強化合物、緩衝液、pH、標的組織または器官、および投与の様式のような多くの因子に依存する。送達増強化合物の濃度は、しばしば、1%〜50%(v/v)、好ましくは、10%〜40%(v/v)、そして最も好ましくは、15%〜30%(v/v)の範囲にある。本発明の送達増強化合物は、本発明の処方物中、好ましくは、約0.002〜2mg/ml、より好ましくは約0.02〜2mg/mlの範囲、最も好ましくは約0.1〜1mg/mlの範囲で用いられる。
【0057】
代表的には、本発明の送達増強化合物は化合物が可溶である溶媒中に処方されるが、化合物が部分的に可溶化されるのみである処方物もまた好適である。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)は、これら化合物の適切な可溶化剤の1つの例であり、そしてその他は当業者に公知である。特定のさらなる賦形剤および添加剤が、種々の薬学的処方物のためにこれら薬剤の溶解性特徴を達成するために所望され得ることが認識される。例えば、界面活性剤、脂肪酸エステル、界面活性剤のような周知の可溶化剤は、使用される種々の溶媒における化合物の可溶化を容易にするように適切な濃度で添加され得る。処方物が界面活性剤を含む場合、患者に投与される最終処方物中の界面活性剤濃度は、好ましくは、約0.5−2×臨界ミセル化濃度(CMC)である。適切な界面活性剤は上記列挙されたものを含む。適切な界面活性剤およびそれらの使用のための適切な濃度の同定は、本明細書に記載のように決定され得る。
【0058】
Syn3および関連化合物のような化合物に対する好ましい可溶化剤の1つの例は、約0.05%〜約0.3%濃度の、より好ましくは約0.10%〜約0.15%の濃度のTween80である。Big CHAPもまたSyn3および関連化合物のための好ましい可溶化剤である。
【0059】
本発明の化合物は単独で、互いに組み合わせて、または別の送達増強薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0060】
(B.調整性薬剤)
本発明の送達増強化合物は、タンパク質、核酸、アンチセンスRNA、低分子等を含む薬剤の細胞への送達を増強するに有用である。例えば、送達増強化合物は、上皮膜を有する細胞を含む、任意の繊維または器官の部分である細胞へと薬剤を送達するのに有用である。
【0061】
送達増強化合物を使用する送達に適切である薬剤の中で、本明細書中で使用される「調整性薬剤」とは、生物学的プロセスを調節し得る薬剤をいう。このようなプロセスは、例えば、細胞成長、分化、増殖(ガンのような新形成性障害を含む)、調節、代謝経路または生合成経路、遺伝子発現などを含む。調整性薬剤はまた、例えば免疫応答(自己免疫障害を含む)、細菌および真菌病原体による感染、ならびに調整性薬剤の導入により調節可能である任意の他の生物学的プロセスに影響し得る。
【0062】
治療用薬剤は、送達増強薬剤を使用して送達し得る調整性薬剤の例である。このような薬剤は疾患に関連する細胞性プロセスを調整するのに有用である。本明細書中で使用される、用語「治療用薬剤」には、治療用タンパク質、治療用遺伝子、治療用遺伝子を含むベクター(プラスミドまたはウイルスベクター)、アンチセンス核酸または他の治療用核酸配列(例えば、三重鎖核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的のために、用語「治療用遺伝子」とは、細胞中に導入されて治療効果を達成する核酸配列をいう。このような治療用遺伝子の例には、腫瘍サプレッサー遺伝子、自殺遺伝子、アンチセンス核酸分子、三重鎖形成核酸分子、サイトカイン(例えば、インターフェロンα、β、δおよびγであるが、これらに限定されない)をコードする遺伝子、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−6、IL−7およびIL−10)をコードする遺伝子、ならびにGM−CSFのようなコロニー刺激因子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例において、治療用遺伝子は、天然に存在するか、または組換え的に改変されたウイルス中に存在し得る。
自殺遺伝子は、その発現が細胞を外部因子による殺傷に対して感受性にさせるか、または、その発現が細胞において毒性状態を引き起こす核酸配列である。自殺遺伝子の周知の例には、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子(例えば、Wooら、米国特許第5,631,236号(1997年5月20日発行);Freemanら、米国特許第5,601,818号(1997年2月11日発行))があり、ここで、TK遺伝子産物を発現する細胞は、ガンシクロビルの投与による選択的殺傷に対して感受性である。
【0063】
アンチセンス核酸分子は、ヌクレオチドの特定の配列に結合してタンパク質(疾患を引き起こすタンパク質を含む)の産生を阻害するように設計された、核酸の相補的オリゴヌクレオチド鎖である。特定のオンコジーンに結合するアンチセンス分子は、これらのガン発症因子の転写を阻害するために頻繁に使用される。これらの薬剤は単独で、または他の治療用遺伝子と組み合わせて使用され得る。
【0064】
三重鎖形成核酸は遺伝子の転写を阻害するように設計された分子であり、例えば、疾患発症遺伝子を含む。一般的には、このことは三重鎖形成核酸の、標的遺伝子の転写制御配列への結合および標的遺伝子の転写の阻害により達成される。三重鎖形成オリゴヌクレオチドは、Hoogsteen水素結合に起因する二本鎖DNAの主溝を認識し、そして結合する。三重鎖技術の使用の例には、前立腺ガン細胞における、アンドロゲンレセプターまたはインスリン様成長因子遺伝子の三重鎖技術を用いた標的化が含まれる。Boulikasら、T.,Anticancer Res.17(3A):1471−1505(1997)。三重鎖核酸は、いくつかの例において変異誘発性であることが実証されており、そしてこのような分子が使用されて、治療様式で腫瘍サプレッサー遺伝子の誘導を導く内因性DNA修復機構の応答を誘導し得、そして標的細胞においてアポトーシスを誘導するゲノム不安定性に寄与し得る。種々の三重鎖核化合物が現在研究中であり、そして科学文献において非常に良く報告されている。
【0065】
「腫瘍サプレッサー遺伝子」とは、腫瘍の形成を抑制するポリペプチドをコードする遺伝子をいう。腫瘍サプレッサー遺伝子は、哺乳動物細胞において天然に存在する遺伝子であり、その欠損または不活化が腫瘍の発生についての必要条件であると考えられている。腫瘍サプレッサー遺伝子治療は、一般に、腫瘍サプレッサー遺伝子の、その遺伝子が存在しないか不活化されている細胞への再導入を試みる。本発明の実施に有用な腫瘍サプレッサー遺伝子の例には、p53、p110Rb、p16およびp21を含む腫瘍サプレッサー遺伝子のINK4ファミリーのメンバー、ならびにp56Rb、p94Rb等のようなその治療的に有効なフラグメントが挙げられる。本発明の好ましい実施には、腫瘍サプレッサー遺伝子はRb遺伝子およびp53遺伝子、ならびにRb56のような、それらの機能的改変体をコードする核酸配列から選択される。本発明の最も好ましい実施において、腫瘍サプレッサー遺伝子はp53である。
【0066】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、送達増強化合物を含む緩衝液中に治療用薬剤の「治療的有効」量を含む。本発明で使用される「治療的有効」とは、疾患状態に関連する症状の予防、減少または治癒をいう。
【0067】
送達増強薬剤およびこれらの薬剤を含む処方物はまた、目的の遺伝子の、細胞、特に器官または組織の細胞への送達を容易にするために使用され得る。これらの遺伝子は、例えば、商業目的について興味深いタンパク質をコードし得る。例として、薬剤および処方物を使用して、哺乳動物の乳房組織へ栄養的に重要なタンパク質(これは、次いで、哺乳動物によって産生される乳汁中に分泌される)をコードする遺伝子を送達し得る。このような薬剤および処方物の他の使用は当業者に明らかである。
送達増強薬剤およびこのような薬剤を含む処方物はまた、診断用薬剤を、細胞、器官および組織に送達するために有用である。診断用薬剤の例には、細胞内で発現された場合に容易に検出可能であるタンパク質をコードするマーカー遺伝子(β−ガラクトシダーゼ、グリーン蛍光タンパク質、ルシフェラーゼなどを含むがこれらに限定されない)および標識された核酸プローブ(例えば、放射標識されたプローブ)が挙げられる。
【0068】
(C.遺伝子送達のためのベクター)
細胞に送達される薬剤が遺伝子である場合では、その遺伝子をベクター中に組み込み得る。このような目的に使用されるベクターの例には、標的細胞内で目的の遺伝子の発現を指向し得る発現プラスミドが挙げられる。他の例において、ベクターはウイルスベクター系であり、ここで目的の遺伝子は標的細胞をトランスフェクトし得るウイルスゲノムに組み込まれる。目的の遺伝子が標的細胞内での発現のために設計される場合、遺伝子は、所望の標的宿主細胞内での遺伝子の発現を指向し得る発現配列および制御配列に作動可能に連結され得る。それゆえ、適切な条件下において標的細胞内で遺伝子の発現を達成し得る。
【0069】
本発明の実施に有用なウイルスベクター系には、例えば、天然に存在するまたは組換えウイルスベクター系が挙げられる。特定の適用に依存して、適切なウイルスベクターには複製コンピテント、複製欠損、および条件的に複製するウイルスベクター系が挙げられる。例えば、ウイルスベクターはヒトアデノウイルスまたはウシアデノウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、マウスマイニュートウイルス(MVM)、HIV、シンドビスウイルスおよびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスを含むがこれに限定されない)ならびにMoMLVのゲノムに由来し得る。代表的には、目的の遺伝子はこのようなベクター中に挿入されて遺伝子構築物のパッケージングを可能にし、代表的には、ウイルスDNA、感受性宿主細胞の感染および目的の遺伝子の発現が付随する。好ましい組換えウイルスベクターはアデノウイルスベクター送達系であり、これは第IX遺伝子タンパク質の欠損を有する(国際特許出願WO95/11984を参照のこと、これは本明細書中で参考としてその全体が全ての目的のために援用される)。
【0070】
本明細書中で使用される「組換え」とは、核酸およびこれらによってコードされるタンパク質をいい、ここで、核酸は組換えDNA技術(「遺伝子操作」とも称される)の方法によって構築される。
【0071】
調整性遺伝子(例えば、送達増強薬剤を含む緩衝液中に処方される組換えウイルスベクター送達系におけるp53遺伝子または網膜芽細胞腫腫瘍サプレッサー遺伝子)を含む薬学的組成物の治療的有効量は、本発明の教示に従って投与される。例えば、送達増強薬剤を含む緩衝液中に処方される組換えアデノウイルスベクター送達系における治療遺伝子の治療的有効量は、約1×108粒子/ml〜1×1012粒子/ml、より代表的には、約1×108粒子/ml〜5×1011粒子/ml、最も代表的には、約1×109粒子/ml〜1×1011粒子/ml(PN/ml)の範囲にある。
【0072】
(D.遺伝送達系)
本明細書中で使用される場合、「遺伝子送達系」とは、標的細胞への薬剤の送達のための任意の手段をいう。薬剤は、次いで送達増強化合物を含む処方物を使用して細胞へと送達される遺伝子送達系に付随し得る。
【0073】
本発明のいくつかの実施態様において、遺伝子構築物または他の薬剤は、DNA連結部分のような適切な連結部分を介して、容易にされた取り込み(例えば、被覆されたくぼみの陥入およびエンドソームのインターナリゼーション)のために細胞性レセプターリガンドへと連結される(Wuら、J.Biol.Chem.263:14621−14624(1988);WO92/06180)。例えば、遺伝子構築物はポリリジン部分を介してアシアロ−オロムコシド(oromucocid)(これは肝細胞のアシアログリコプロテインレセプターについてのリガンドである)へと連結され得る。
【0074】
同様に、遺伝子構築物のパッケージングのために使用されるウイルスエンベロープは、特定の細胞へのレセプター媒介性エンドサイトーシスを可能にするレセプターに特異的なレセプターリガンドまたは抗体の付加によって改変され得る(例えば、WO93/20221,WO93/14188,WO94/06923を参照のこと)。本発明のいくつかの実施態様において、本発明のDNA構築物はアデノウイルス粒子のようなウイルスタンパク質に連結されてエンドサイトーシスを容易にする(Curielら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:8850−8854(1991))。他の実施態様において、本発明の分子結合体は微小管インヒビター(WO/9406922);インフルエンザウイルス凝血素模倣合成ペプチド(Plankら、J.Biol.Chem.269:12918−12924(1994));およびSV40 T抗原のような核局在化シグナル(WO93/19768)を含み得る。
【0075】
本発明のいくつかの実施態様において、調整性薬剤はアンチセンス核酸である。アンチセンス核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチドとして提供され得る(例えば、Murayamaら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.7:109−114(1997)を参照のこと)。アンチセンス核酸をコードする遺伝子もまた、提供され得る;このような遺伝子は、当業者に公知の方法により、送達増強薬剤とともに処方され得、そして細胞中に導入され得る。例えば、アンチセンス核酸をコードする遺伝子をウイルスベクター中(例えば、B型肝炎ウイルス(例えば、Jiら、J.Viral Hepat.4:167−173(1997)を参照のこと)中;アデノ随伴ウイルス(例えば、Xiaoら、Brain Res.756:76−83(1997)を参照のこと)中または以下を含むがこれらに限定されない他の系中;HVJ(センダイウイルス)リポソーム遺伝子送達系(例えば、Kanedaら、Ann.N.Y.Acad.Sci.811:299−308(1997)を参照のこと);「ペプチドベクター」(例えば、Vidalら、CR Acad.Sci.III 32:279−287(1997)を参照のこと);エピソームベクターまたはプラスミドベクター中の遺伝子として(例えば、Cooperら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:6450−6455(1997)、Yewら、Hum Gene Ther.8:575−584(1997)を参照のこと);ペプチド−DNA凝集体中の遺伝子として(例えば、Niidomeら、J.Biol.Chem.272:15307−15312(1997)を参照のこと);「裸のDNA」として(例えば、米国特許第5,580,859号および米国特許第5,589,466号を参照のこと);脂質性ベクター系中で(例えば、Leeら、Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.14:173−206(1997)を参照のこと);ポリマーコートリポソーム(Marinら、1993年5月25日に発行された、米国特許第5,213,804号;Woodleら、1991年5月7日に発行された米国特許第5,013,556号);カチオン性リポソーム(Epandら、1994年2月1日に発行された米国特許第5,283,185号;Jessee,J.A.、1996年11月26日に発行された米国特許第5,578,475号;Roseら、1994年1月18日に発行された米国特許第5,279,833号;Gebeyehuら、1994年8月2日に発行された米国特許第5,334,761号);気体充填ミクロスフィア(Ungerら、1996年8月6日に発行された米国特許第5,542,935号)、リガンド標的化カプセル化高分子(Lowら、1992年4月28日に発行された米国特許第5,108,921号;Curielら、1996年5月28日に発行された米国特許第5,521,291号;Gromanら、1996年9月10日に発行された米国特許第5,554,386号;Wuら、1992年11月24日に発行された米国特許第5,166,320号))に導入し得る。
【0076】
(E.薬学的処方物)
薬学的目的のために使用される場合、本発明の処方物は送達増強化合物を含む緩衝液を含む。緩衝液は任意の薬学的に受容可能な緩衝液(リン酸緩衝化生理食塩水またはナトリウムリン酸塩/ナトリウム硫酸塩、Tris緩衝液、グリシン緩衝液、滅菌水および例えばGoodら(1966)Biochemistry5:467により記載されるような当業者に公知の他の緩衝液)であり得る。アデノウイルスベクター送達系中に含まれる調整性遺伝子を含む薬学的組成物中の緩衝液のpHは、例えば、代表的には6.4〜8.4、好ましくは、7〜7.5、および最も好ましくは7.2〜7.4の範囲である。
【0077】
さらに、本発明の組成物は安定化剤、増強剤あるいは他の薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクルを含み得る。薬学的に受容可能なキャリアーは生理学的に受容可能な化合物を含み得、これは、例えば、腫瘍サプレッサー遺伝子を含む組換えアデノウイルスベクター送達系を安定化するように作用する。生理学的に受容可能な化合物には、例えば、炭水化物(例えば、グルコース、スクロースまたはデキストラン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げられ得る。他の生理学的に受容可能な化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤または保存剤(これは微生物の増殖または活動を予防するのに特に有用である)が挙げられる。種々の保存剤が周知であり、そして、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、投与経路ならびに組換えアデノウイルスベクター送達系およびそこに含まれる特定の腫瘍サプレッサー遺伝子の特定の生理化学特性に依存して、薬学的に受容可能なキャリアの選択を知る。キャリア、安定化剤またはアジュバントの例は、Martin,Remington‘s Pharm.Sci.第15版(Mack Publ.Co.,Easton,PA 1975)(これは本明細書中に参考として援用される)に見いだされ得る。
【0078】
(F.処方物の投与)
いくつかの実施態様において、送達増強化合物は、調整性薬剤が処方される緩衝液中に含まれる。送達増強化合物は、調整性薬剤の前、または調整性薬剤と同時に投与され得る。いくつかの実施態様において、送達増強化合物は、患者への投与の直前に調整性薬剤調製物を送達増強化合物処方物と混合することによって調整性薬剤とともに提供される。他の実施態様において、送達増強化合物および調整性薬剤は投与のために介護者へと単一のバイアル中に提供される。
【0079】
送達増強薬剤をさらに含む緩衝液中に処方された組換えアデノウイルスベクター送達系中に含まれる、腫瘍サプレッサー遺伝子を含む薬学的組成物の場合では、薬学的組成物は、約5分〜3時間、好ましくは、約10分〜120分、および最も好ましくは約15分〜90分の範囲の時間にわたって投与され得る。別の実施態様において、送達増強薬剤は、腫瘍サプレッサー遺伝子を含む組換えアデノウイルスベクター系の投与前に投与され得る。送達増強薬剤の前投与は、腫瘍サプレッサー遺伝子を含むアデノウイルスベクター送達系の投与前約30秒〜1時間、好ましくは約1分〜10分、および最も好ましくは約1分〜5分の範囲であり得る。
【0080】
送達増強薬剤を含む緩衝液中に処方された調整性薬剤は、当業者に公知である任意の送達方法(例えば、腫瘍内または膀胱内投与)を使用して、ガン組織のような新形成性組織を含む任意の組織または器官へと送達され得る。組織および器官には、胃腸管、膀胱、気道および肺のような上皮膜を有する任意の組織または器官を含む。例には、膀胱および上部気道、外陰部、子宮頸管、膣、または気管支のガン腫;腹膜の局所的転移性腫瘍;気管支肺胞ガン腫;胸膜転移性ガン腫;口および扁桃のガン腫;鼻咽頭、鼻、喉頭、食道、胃、結腸および直腸、胆嚢または皮膚のガン腫;あるいは黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本発明のいくつかの実施態様において、治療用薬剤は、粘膜用、局所用および/または頬処方物、特に、粘膜接着用ゲルおよび局所用ゲル処方物中に処方される。経皮送達のための例示的な透過増強化合物、ポリマー性マトリクスおよび粘膜接着性ゲル調製物は、米国特許第5,346,701号に開示される。このような処方物は、特に、口のガン、頭部および頚部ガン(例えば、気管支上皮のガン)皮膚ガン(例えば、黒色腫、基底および扁平上皮細胞ガン腫)、小腸粘膜のガン、膣粘膜、および子宮頚管ガンの処置のために有用である。
【0082】
本発明のいくつかの実施態様において、治療用薬剤は、眼への投与のための眼用処方物中に処方される。このような処方物は、必要に応じてp53の送達と組み合わせて、網膜芽細胞腫(RB)遺伝子の眼への送達に有用である。
【0083】
(G.処置方法)
本発明の処方物は、代表的には、薬剤の細胞への移入を増強するために投与される。細胞は組織の一部(例えば、上皮膜)として、または単離された細胞(例えば、組織培養物中で)として、提供され得る。細胞はインビボ、エキソビボまたはインビトロで提供され得る。
【0084】
送達増強化合物および調整性薬剤を含む処方物は、目的の組織へと、種々の方法によって、インビボまたはエキソビボで導入され得る。本発明のいくつかの実施態様において、調整性薬剤はマイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈澱、リポソーム融合または微粒子銃のような方法により細胞へと導入される。さらなる実施態様において、治療用薬剤は目的の組織により直接的に取り込まれる。
【0085】
本発明のいくつかの実施態様において、本発明の組成物は患者から外植された細胞または組織へとエキソビボで投与され、次いで患者へと戻される。治療用遺伝子構築物のエキソビボ投与の例には、Arteagaら、Cancer Research 56(5):1098−1103(1996);Noltaら、Proc Natl.Acad.Sci.USA 93(6):2414−9(1996);Kocら、Seminars in Oncology 23(1):46−65(1996);Raperら、Annals of Surgery 223(2):116−26(1996);Dalesandroら、J.Thorac.Cardi.Surg.,11(2)416−22(1996);およびMakarovら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(1):402−6(1996)が挙げられる。
【0086】
(実施例)
以下の実施例は例示することを意図するが、本発明の範囲を制限することは意図しない。以下の実施例において、「g」はグラムを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「mol」はモルを意味し、「℃」は摂氏温度を意味し、「min.」は分を意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味し、そして「PN」は粒子数を特定する。全ての温度は、特別に他に記載しない限り、摂氏温度である。
【0087】
(実施例1)
(エタノールは膀胱中への遺伝子移入を改善する)
最初の実験は、ウイルス濃度、投与時間および用量の容量を含むいくつかの因子が、ラットへの静脈内投与後の膀胱上皮への遺伝子移入に影響を与え得ることを示した。染料の増加した透過が異なる溶媒の膀胱内投与により達成され得るので、アデノウイルス処方物の改変もまた、膀胱内でのアデノウイルストランスジーンの発現を増加させるための代替的ストラテジーとして調査された(Monsonら、Urology 145:842−845(1991))。本発明の実験は、膀胱内でのアデノウイルストランスジーン発現を増加させるためのエタノールの使用に焦点を当てた。
【0088】
9匹の雌性buffaloラット(Harlan Sprague Dawley)をイソフルランで麻酔し、そしてlacZ遺伝子をコードするヒト組換えアデノウイルス(rAd−βgal)の単回膀胱内投与を与えた。lacZ遺伝子を含むヒト組換えアデノウイルス(rAd−βgal)ベクターは、Willsら、Human Gene Therapy 5:1079−1088(1994)に記載される。点滴の前に、膀胱をPBSでフラッシュし、そして空にした。次いで、rAd−βgalを希釈して、1.7×1011PN/mLの最終濃度を、1)VPBS(PBS中、2%(w/v)スクロースおよび2mM MgCl)中に、2)30%(v/v)エタノール中に、または3)50%(v/v)DMSO中に達成し、そして250μL容量で点滴した(N=3匹/グループ)。投与した物質を膀胱中に45分間保持した。次いで膀胱をPBSでフラッシュし、そして動物を手順から回復させた。投与の2日後、ラットを屠殺して、膀胱を採取し、固定し、そして器官全体をXgal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)溶液を用いて染色してレポーター遺伝子の移入を評価した。次いで、Xgal染色した組織をパラフィンに包埋し、切片化し、そしてヘマトキシリンおよびエオシンを用いて対染色した。β−ガラクトシダーゼによるXgalの加水分解は青色を生じ、これは表在性管腔膀胱上皮に局在した。
【0089】
アデノウイルスベクターによる送達に続くトランスジーン発現を、rAd−βgalで処置した全ての動物から膀胱で検出したが、非処置コントロールでは検出しなかった。トランスジーン発現は、以前に発行されたPBS/スクロース処方物を用いた結果(Bassら、Cancer Gene Therapy 2:2:97−104(1995))に類似した。きわめて対照的に、管腔上皮表面におけるβ−ガラクトシダーゼの発現は、30%エタノールで希釈したrAd−βgalを受けた動物で非常に増強された(図1)。図1に記載される膀胱標本を、包埋し、切片化し、そしてヘマトキシリンおよびエオシンを用いて対染色した。膀胱組織の組織学的評価は、エタノールをアデノウイルス処方物に添加した場合の、一過性の膀胱上皮の増加したβ−ガラクトシダーゼ発現を実証した(図2)。エタノールと保護的グルコサミノグリカン(GAG)層との上皮表面での相互作用は、トランスジーン発現において観察された増加についてのメカニズムを提供する。この層の破壊は、表面でのウイルス−細胞相互作用を容易にし得、そして潜在的に粘膜下への透過を増強し得る。
【0090】
(実施例2)
(ラット膀胱における用量依存性トランスジーン発現)
別の実験において、18匹の雌性Sprague−Dawleyラットをイソフルランで麻酔し、そして22.5%(v/v)エタノール処方物中、2×107、2×108、2×109、2×1010および2×1011、PN/mLの濃度で、rAd−βgalの単回0.5ml膀胱内大量投与を与えた。45分のインキュベーション後、膀胱をPBSでフラッシュし、そして動物を麻酔から回復させた。2日後、動物を屠殺して、膀胱を採取し、固定し、そして器官全体をXgal溶液を用いて染色してアデノウイルストランスジーン発現を評価した。管腔膀胱上皮でのβ−ガラクトシダーゼ発現は、投与された組換えアデノウイルス濃度と相関した(図3)。2×1010または2×1011PN/mLを受容した動物間では著しい差異は観察されず、このことはこのモデルにおけるトランスジーン発現の飽和を示唆する。点滴後に無効にされた用量の分析は、これらの高用量での投与物質の感染力価におけるほんの最小限の減少を示す。β−ガラクトシダーゼの発現は、より低い濃度で減少した。β−ガラクトシダーゼ発現の証拠は、1×107PN/mLの濃度で投与された動物または非処置コントロール動物では検出されなかった。
【0091】
(実施例3)
(マウス膀胱におけるACNRB遺伝子移入)
RT−PCRアッセイを使用してRBトランスジーンの発現を詳細に評価するパイロット研究を行った。この研究に使用した組換えアデノウイルスは、E1a、E1bおよびpIXタンパク質をコードするウイルス性初期領域1が欠損された血清型5ヒトアデノウイルスに基づいた。このアデノウイルスは、複製のために必要とされるAd5 E1遺伝子産物を生成する293細胞で増殖するように制限されている。完全長または短縮型Rbのいずれかをコードする移入プラスミドを、pACNから生成し(Willsら、Cancer Gene Therapy 2:191−197(1995))、次に組換えアデノウイルスを構築するのに使用した。完全長RB cDNA(1〜928アミノ酸)(プラスミドpETRbcから、2.8KbのXba I−Bam HIフラグメントとしてサブクローン化した)(Huangら、Nature 350:160−162(1991))または短縮型フラグメント(381〜928アミノ酸)(1.7kbのXbaI−BamHI cDNAフラグメントとしてサブクローン化した)のいずれかを、プラスミドpACNのCMVプロモーター/エンハンサーおよびAd2三分節リーダーcDNAの下流に配置した。続いて、これらのプラスミドを、Eco RIで線状化し、そして部分的E4欠失を含むAd−RB56(ACN56)を作製するための、H5ilE4の単離したClaI消化大型フラグメント(Hemstromら、J.Virol.62:3258−3264(1988))、またはベクターのE3およびE4領域の両方の欠失を含むAd−Rb110(ACNRB)を作製するための、dl327(Ginsbergら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:3823−3827(1989))とH5ilE4とのハイブリッドウイルス由来の大型フラグメントのいずれかを用いて、同時トランスフェクト(CaPO4、Stratagene)した。
【0092】
8匹の雌性ICRマウス(Charles River Laboratories)をアベルチンで麻酔し、そしてそれぞれに(ACNRB)の単回80μl膀胱内投与を与えた。ACNRB(4×1011PN/mL)を、PBS溶液または30%(v/v)エタノール溶液中に希釈し、そして調製した。ウイルスを膀胱中に45分間保持した後、動物を手順から回復および放尿させた。ACNRB投与の2日後または14日後、マウスを屠殺し、そして各動物からの膀胱、肝臓および腎臓を採取し、ホモジナイズし、そして分析のために処理した(N=2匹/グループ)。ACNRBに対して特異的なプライマーを用いるRT−PCRアッセイを使用してトランスジーンの発現を決定した。より詳細には、ACNRBを同定し、そしてCMV配列の3‘末端からRB配列の5’末端までの領域を増幅するためのプライマーを作成した。増幅(30サイクル)の後、RT−PCR産物を10%ポリアクリルアミドゲル上で分離し、エチジウムブロミドで染色し、そして写真をとった。VPBS中のACNRBでの処理後の非常に低い発現と比較して、30%(v/v)エタノール中のACNRBでの処理後で増加したACNRB発現を検出した。アッセイについてのポジティブコントロールは、ACNRB感染5637ヒト膀胱がん細胞(コントロール)からのサンプルを含んだ。β−アクチンに特異的なプライマーを用いて増幅されたACNRB感染動物からの膀胱RNAサンプルは、RNAの質についての内部コントロールを提供した。逆転写酵素(RT)を用いない非処置サンプルおよび膀胱サンプルは、DNAの夾雑についてのコントロールを提供した。投与の2日後、膀胱ホモジネート中のACNRB発現のレベルを、30%エタノール中に調製したACNRBを受けた動物から検出した(図4)。非膀胱組織中または投与14日後に採取したサンプルにはいずれも発現の証拠は検出されなかった。
【0093】
(実施例4)
(マウスへの膀胱内投与後の生体分布およびACNRB発現の速度論)
膀胱内投与後の発現の時間経過を調査するために、40匹の雌性マウス(Charles River Laboratories)をアベルチンで麻酔し、そしてACNRB(22%(v/v)エタノール中4×1010PN/mL)の単回80μL大量投与を与えた。点滴物質を膀胱中に約45分間保持し、そして動物を手順から回復させた。投与の1、2、3、4、5、6、7および14日後、分析のためにマウス(N=4/回)を屠殺した。膀胱、肝臓および腎臓を採取し、そして続いての分析のために液体窒素中ですぐに凍結した。ACNRB発現の検出のために、組織サンプルをホモジナイズし、そして総RNAをTRI−Reagent7を用いて抽出した。総RNAのアリコートを内因性RB発現からトランスジーン発現を区別するためにACNRBに特異的なプライマーを用いてRT−PCRアッセイで増幅した。ACNRB DNAの検出のために、DNA抽出キット(Stratagene)を組織ホモジネートに対して使用した。RT−PCR分析について上記のように、ACNRBに特異的なプライマーを用いてPCRを行った。
【0094】
膀胱ホモジネート中におけるACNRBトランスジーン発現は1〜6日目に採取したサンプル中においてのみ検出され、これは時間とともに減少する内因性p53に関する発現を伴った(図5、上部パネル)。投与7日および14日後に採取したサンプルからは発現を検出しなかった。興味深いことに、腎臓では1,2および3日目にACNRB発現がいくらか検出されたが、肝臓では観察されなかった(図5、下方パネル)。
【0095】
投与14日後に採取したものを含めて、ACNRBを受けた動物全ての膀胱組織において、ACNRB DNAを検出した(図6、(左パネル))。腎臓ホモジネートからもまた、DNAを採取し、これはこの組織中で検出したACNRB発現と一致した(図6、右パネル)。実験中に回収した肝臓サンプルにおいては、ACNRB DNAについての証拠は検出しなかった(データは示さず)。非処置動物由来のサンプル(U)および精製ACNRB DNA(PC)を、それぞれ、ネガティブおよび25ポジティブコントロールとして使用した。
【0096】
組換えアデノウイルスの全身投与が、主に肝臓におけるトランスジーン発現を生じる(Liら、Human Gene Therapy 4:403−409(1993))ので、肝臓サンプルにおけるACNRB DNAおよび発現の非存在(図5および図6)は、膀胱内投与後のACNRBのごく微量の全身曝露を示唆する。尿管を介した逆流は、腎臓におけるACNRBの検出に寄与し得た。
【0097】
上に提示したデータは、ACNRBの膀胱内投与後の齧歯類膀胱におけるトランスジーン発現を実証する。これらの研究は、さらに、膀胱上皮へのアデノウイルス媒介性遺伝子移入が、処方物中の送達増強薬剤(例えば、エタノール)の存在によって増強され得ることを示す。増加した遺伝子移入についての1つのメカニズムは、膀胱上皮表面における保護的グリコサミノグリカン層の破壊であり得る。20〜30%(v/v)エタノール処方物中のACNRBの単回膀胱内投与は、約1週間の間持続する、膀胱中でのトランスジーンの発現を生じる。逆行性尿管流入は、腎臓において検出されたACNRBの一過性発現についてのありそうな説明を提供する。肝臓におけるACNRB発現およびACNRB DNAの非存在は、膀胱内投与後の制限された全身性曝露を示す。
【0098】
(実施例5)
(界面活性剤処方物の使用)
遺伝子移入効率の損失を伴わずに副作用を最小化するために、他の賦形剤を試験した。界面活性剤は細胞膜と相互作用すること、および細胞にさらなる損傷を与えずに大きな孔を形成することが公知である。より毒性の少ない界面活性剤中に処方された組換えアデノウイルスの効率を、ラットおよびマウス遺伝子移入モデル中で研究した。
【0099】
rAd−βgalを臨界ミセル濃度で異なる界面活性剤中に処方して、膀胱上皮への遺伝子移入の効率を評価した。雌性ラット(約200g b/w、Harlan Sprague Dawley)をイソフルランを用いて麻酔し、そして異なる界面活性剤処方物中でrAd−βgal(1×1011PN/ml)の単回膀胱内投与を与えた(表1を参照のこと)。点滴の前に、膀胱をPBSでフラッシュし、次いで空にした。次いで、0.5mlの容量でrAd−βgalを点滴した。点滴した溶液を膀胱内に45分間保持した。次いで膀胱をPBSでフラッシュし、そして動物を手順から回復させた。投与の48時間後、ラットを屠殺し、膀胱を採取およびホルマリン中で固定した。固定後、レポーター遺伝子(β−ガラクトシダーゼ)発現が存在する場合、青色に変化する色素(Xgal)に尿路上皮が曝されるように、長軸方向に膀胱を開いた。膀胱全体の管腔上皮表面を写真に撮り、青色染色:+(最小染色)、++(中程度の染色)、+++膀胱上皮表面全体を覆う強い染色を、スコア付けした。結果を表1に示す。アニオン性界面活性剤のいくつか(タウロデオキシコレート)、両性イオン性界面活性剤(CHAPS、ZWITTERGENT7)および非イオン性界面活性剤(Big CHAP(CALBIOCHEM7)、TRITON7 X−100)は、遺伝子移入を劇的に増強した。カチオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいくつか(PLURONIC7 F68、TWEEN7)は、同様の効果を有さなかった。遺伝子移入の改善は、しばしば、膀胱炎を伴った。両性イオン性界面活性剤は、膀胱結石形成を促進した。
【0100】
エタノールを用いて観察される膀胱炎の可能性のある症状を、7mM Big CHAP(CALBIOCHEM7)(2×CMC)または0.05mM TRITON7−X−100界面活性剤(CMC)処方物を使用してマウス中で評価した。処方物を80μLの容量で膀胱内に投与し、そして動物を7日間隔にわたり観察した。病理学的評価のために、屠殺後、膀胱をパラフィン包埋し、切片化し、そしてヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色した。Big CHAP(CALBIOCHEM7)を用いて処理したマウスにおいて、膀胱組織中への微量のマクロファージ浸潤のみを観察した。マクロファージのより顕著な(微量〜中程度)浸潤は、TRITON7−X−100界面活性剤により誘導された。きわめて対照的に、22%エタノールで処置した動物において顕著な膀胱炎を検出した。
【0101】
(実施例6)
(ACNRBの遺伝子移入)
レポーター遺伝子を用いる実験に加えて、異なる一連の研究を、ACNRBの遺伝子移入を詳細に評価するために行った。雌性のICRマウスをアベルチンで麻酔し、そして個々のマウスにACNRBの単回の80μLの膀胱内投与を受容させた。ACNRB(4×1010PN/mL)を、VPBS、22%(v/v)エタノール、または3mMのBigCHAP(CALBIOCHEM7)中で処方した。ウイルスを膀胱内で45分間維持した後、動物を回復させた。マウスをACNRBの投与後48時間で堵殺し、そして膀胱採取物を液体窒素中で凍結させた。トランスジーンの発現を、RT−PCRを使用して決定した。組織を、RNAseを含まない水中でリンスし、ホモジナイズし、Tri−Reagent(Molecular Research Center)中で消化し、そして全細胞のRNAを抽出した。ACNRBを、ACNRBベクターのCMV領域中に配置した5’プライマーおよびRbゲノムの5’末端に配置した3’プライマーを使用してプローブした。RT−PCRを、Perkin Elmer 9600 GeneAmp PCR Systemにおいて行った。サイクル条件は、65ECで10分間、50℃で8分間、95℃で5分間であった。32サイクルのPCRを行い、各サイクルは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、そして72℃で30秒間であった。32回目のサイクルには、不完全なDNAフラグメントの完全な伸張を確実にするために、72℃で10分間の伸張工程を含んだ。ACNRB−RNAバンドを、エチジウムブロマイドを用いて染色した。エタノールまたはBigCHAP(CALBIOCHEM7)処方物を用いて増強させた発現の結果を、図9に示す。
【0102】
(実施例7)
(最小限度の(minimal)膀胱炎でBigCHAP(CALBIOCHEM7)はトランスジーンの発現を増強する)
BigCHAP(CALBIOCHEM7)が最小膀胱炎で遺伝子移入を増強したので、この処方物をさらなる評価(上記のものと類似の研究における、濃度および用量依存性を含む)のために選択した。簡潔には、麻酔した雌性のラットにおいて、rAd−βgal(1×1011PN/ml)を、膀胱内カテーテルを介して膀胱に投与した。rAd−βgalを、種々の濃度のBigCHAP(CALBIOCHEM7)中で処方した。0.5mlの容量を注射し、そして45分間膀胱内に注入したまま維持した。動物を48時間後に屠殺し、膀胱を、4%のホルマリン/グルタルアルデヒド中に固定し、縦に開き、そしてβ−ガラクトシダーゼ酵素活性を、Xgal基質を使用して測定した。青色の染色の強度は、βgal−トランスジーンの発現と相関する。図7は、Xgal染色した膀胱の上皮表面を示す。結果は、上皮への遺伝子の移入の濃度依存性の増加を示す。3.5〜7mMの濃度のBigCHAP(CALBIOCHEM7)は、遺伝子の移入を有意に改善した。処方物のみ(図7、下のパネル)では、Xgal基質による青色を示さなかった。より高い濃度(17.5)mMでは、遺伝子移入または発現を著しくは改善しなかったが、試験した動物のいくつかにおいて膀胱炎を誘導した。
【0103】
【表1】
Figure 0004460148
より高い組換えアデノウイルス濃度の影響もまた、試験した。簡潔には、麻酔した雌性ラットにおいて、7mMのBigCHAP(CALBIOCHEM7)中で処方した種々の濃度のrAd−βgalを、膀胱内カテーテルを通じて膀胱内に投与した。動物を48時間後に屠殺し、膀胱を4%のホルマリン/グルタルアルデヒド中に固定し、縦に開き、そしてXgal染色した。図8は上皮への遺伝子移入の濃度依存性の増加を示す。1.3×1011PN/mlの濃度で、最大の遺伝子移入を誘導した。より高い濃度(6.5×1011PN/ml)では、青色の染色を顕著には改善しなかった。より低い濃度のrAd−βGal(1.3×1010PN/mlまたは1.3×109PN/ml)では、トランスジーンの発現は、用量依存的に低下した。3.5mMと7mMの処方物とを比較した場合、β−ガラクトシダーゼの発現は類似であったが、増強された影響は、7mMのBigCHAP(CALBIOCHEM7)処方物で処理した動物においては、より再現性があるようであった。
【0104】
(実施例8)
(BigCHAP(CALBIOCHEM7)処方物での腫瘍におけるトランスジーンの発現)
インタクトな膀胱上皮を有する動物に対して、最初に研究が集中したので、移行性上皮ガンの動物モデルにおいて評価されたアデノウイルス媒介性の遺伝子移入もまた、研究された。腫瘍を、雄性のFisherラットにおいて、6ヶ月間、飲料水中への0.05%のBBNの添加によって誘導した。4mMのBigCHAP(CALBIOCHEM7)またはVPBS中に処方したrAd−βGal(1×1011PN/ml)を、直接的な注射によって45分間膀胱内に注入した。β−galの発現を、処置の48時間後に評価した。腫瘍を有さない動物を使用する以前の実験と一致して、腫瘍組織への遺伝子の移入は、VPBS処方物と比較して、BigCHAP(CALBIOCHEM7)処方物を用いて改善された(図10)。
【0105】
p53遺伝子(rAd−p53)(Willsら、Human Gene Therapy 5:1079−1088(1994))を保有するrAdの遺伝子移入もまた、膀胱ガンのこの動物モデルにおいて試験した。簡潔には、膀胱の腫瘍を、雌性のFisherラット(Charles River)において、3ヶ月間、飲料水中への0.05%のBBN(N−ブチル−N−N−(4−ヒドロキシブチル)ニトロソアミン)の添加によって誘導した。rAd−p53(1×1011PN/ml)を、7mMのBigCHAP(CALBIOCHEM7)中に処方した。イソフルラン麻酔下で、カテーテル(24G)を、投与のために膀胱に挿入した。rAd−p53を、45分間膀胱内に注入した。次いで、動物を、麻酔から回復させた。24時間後、動物を屠殺し、そして膀胱をホルマリン中に固定した。パラフィン包埋および切片化後、p53の発現を、基質としてAEC(AEC−キット、Vector Labs)を使用するp53ES−キット(Oncogene)を使用して免疫組織化学によってアッセイした。組織を、ヘマトキシリンを用いて対比染色した。図12は、増殖性の上皮の表面領域でのp53遺伝子の発現(左側のパネル)を示し、そしてより高い倍率でのp53の発現についての核染色(右側のパネル)を示す。未処理の動物に由来する腫瘍組織においては、染色は検出されなかった。
【0106】
(実施例9)
(BigCHAP(CALBIOCHEM7)はブタの尿路上皮においてトランスジーンの発現を増強する)
臨床的な研究のために予想される容量をシミュレートするために、7mMのBigCHAP(CALBIOCHEM7)処方物を、SPRI Drug Safety and Metabolismとの、共同研究において常用的にカテーテルを通した成体のブタモデルにおいて試験した。rAd−βgal(1×1011PN/ml)を、VPBSまたは7mMのBigCHAP(CALBIOCHEM7)中で処方した。50mlの容量を、意識がある動物の膀胱中にカテーテルを介して注射した。注入物質を2時間維持した。動物を48時間後に屠殺し、そして膀胱の中心の切片を回収し、そしてβ−ガラクトシダーゼの発現について染色した。遺伝子発現の強度における増加を、VPBS処理したブタと比較して、7mMのBigCHAP(CALBIOCHEM7)処理したブタにおいて観察した(図11)。組織学的な評価は、BigCHAP(CALBIOCHEM7)を使用するいくつかの上皮層の形質導入を実証したが(左側のパネル)、VPBS緩衝液では表面の形質導入のみを示した(右側のパネル)。
【0107】
(実施例10)
(ラットにおける腸上皮への遺伝子移入)
Sandbergら(Human Gene Therapy 5:323−329(1994))の方法のわずかな改変を、遺伝子移入研究のためのラットの回腸セグメントを調製するために使用した。簡潔には、雌性のSprague−Dawleyラットをイソフルランで麻酔した。腹腔を開き、そして最後のパイアー斑に由来するくちばし状の回腸セグメントを単離した。セグメント(約3cm)から、食物の残りを注意深く取り除き、そして両方の側部を、非外傷性の血管のクランプで閉じた。rAd−βgal(1×1011PN/ml)、0.5ml容量を、24G針を用いてセグメントに直接注射し、そして45分間インキュベートした。rAd−βgalを、10mMのタウロデオキシコール酸(蒸留水中、濾過滅菌した)中で(処置群1)、またはVPBS中で(処置群2)処方した。第3の処置群は、10mMのタウロデオキシコール酸で処置した動物を含んだ。その後、クランプを除去し、そして剖検時の認識のために両方の末端をゆるい絹糸での縫合で固定した。腹部の切開を閉じ、そして動物をそれらの籠の中で回復させた。動物を48時間後に屠殺した。感染させたセグメントおよびコントロールセグメントを、器官全体のXgal染色のための固定剤中に回収した。
【0108】
結果を、図13に示す。Xgalの青色染色の程度は、回腸切片中でのトランスジーンの発現の証拠を実証した。増強された遺伝子移入は、界面活性処方物中で明らかであった(中央のパネル)。
【0109】
(実施例11)
(遺伝子移入に対するBIGCHAP中の不純物の影響)
(1.序論)
BigCHAP(BC)の別の市販の供給源を、rAd(組換えアデノウイルス)媒介性の遺伝子移入および発現を増強する能力について、本質的には、実施例8に先に記載した方法に従って試験した。6mg/mlの濃度でのより「純粋な」BC−Sigma(98%純度;Sigma Catalog:Biochemicals and Reagents for Life Science Research、1997、182頁、#B 9518)がrAd媒介性の遺伝子移入を顕著には改善しなかったことを決定した(図14、最上列)。対照的に、BC(CALBIOCHEM7;CALBIOCHEM7 Biochemical & Immunochemical Catalog 1996/97、43頁、#200965、95%純度)は、同じ濃度で遺伝子の移入および発現を実質的に増強した(図14、下列)。
【0110】
CALBIOCHEM7およびSigmaのBCをさらに、TLCによって分析し、そしてカラムクロマトグラフィーによって精製した。精製したBCおよび単離した不純物を、膀胱の上皮中でのrAd媒介性の遺伝子移入および発現を増強するそれらの能力について試験した。
【0111】
以下により詳細に議論するように、3つの不純物をBCから単離した。不純物のうちの2つは、rAd媒介性の遺伝子移入および発現の改善を実証した。市販のBCに加えて、両方の不純物が、局所的な遺伝子送達を改善するrAd処方物緩衝液にとって好ましい。
【0112】
(2.薄層クロマトグラフィーによるBigCHAPの分析:)
BC(SigmaまたはCALBIOCHEM7)を、3/1のメタノール/水中に溶解させ、そしてTLCを、Silica gel60、0.25mm(EM Industries)上で行った;移動相は以下から構成した:6/2.5/1.5の1−ブタノール/水/氷酢酸。クロマトグラムを、5/95の硫酸/エタノール中の0.5gのチモールと加熱を用いて可視化した。図15に示すように、わずかに1つの異なるバンドが、BC−Sigmaのサンプル(B)から生じ、一方、3つのさらなるバンドが、BC−CALBIOCHEM7のサンプル中(A)で明らかになった。
【0113】
BC(CALBIOCHEM7)の不純物をさらに、カラムクロマトグラフィーによって単離し、そして薄層クロマトグラフィー(Silica Gel 60)によって、6/5/1のクロロホルム/メタノール/水の移動相を使用して分析した。結果を、図16に示す(レーン1:BC(CALBIOCHEM7);レーン2:不純物I;レーン3:不純物II;レーン4:不純物IIと不純物IIIとの混合物;レーン5:不純物III;レーン6:BC(CALBIOCHEM7)純粋;レーン7:BC(CALBIOCHEM7))。
【0114】
(3.漸増濃度のBC(Sigma)は遺伝子移入を増強する。)
遺伝子移入の増強についてBCの不純物を試験するために、rAd−βGal(1×1011PN/ml)を、漸増濃度のBC(Sigma)中で処方し、そして上記のように動物において試験した。結果を、図17に示す。より高い濃度(すなわち、20mg/ml)のSigma BCは、上皮での遺伝子発現を改善した(上段および中段のパネル)。対照的に、同様の遺伝子発現が、より低い濃度(6mg/ml、図17、下段)でBC(CALBIOCHEM7)によって誘導された。
【0115】
(4.カラムクロマトグラフィーによって精製したBCは遺伝子移入を増強しない。)
rAd−βgalを、両方のBCのカラムクロマトグラフィー精製した物質30mg/ml中に処方し、そして膀胱の上皮への遺伝子移入を上記のように試験した。30mg/mlの濃度では、遺伝子移入および発現は、CALBIOCHEM7サンプルにおいてわずかに増強されただけであった(図18、上段のパネル、右)。精製されたSigma BCは全く影響を有さなかった(図18、下段のパネル、左)。両方のBC(SigmaおよびCALBIOCHEM7)の精製は、減少した遺伝子移入および発現を生じた。
【0116】
(5.不純物IIと不純物IIIとの混合物は遺伝子移入を増強する。)
BC(CALBIOCHEM7)の3つの不純物をTLCによって検出し(図15)、そして遺伝子移入研究のためにカラムクロマトグラフィーによって単離した。不純物I、および不純物IIと不純物IIIとの混合物を、膀胱の上皮へのrAd媒介性遺伝子移入を改善することにおけるそれらの効率を試験するために、VPBS(0.6mg/mlまたは6mg/ml)中に希釈した。不純物Iは、膀胱の上皮におけるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の発現の増加を導かなかったが、むしろ膀胱炎を生じた(図19、下段のパネル、右)。ちょうど対照的に、不純物IIと不純物IIIとの混合物は、用量依存的に遺伝子移入および発現を増強した(図19、下段のパネル、左)。ポジティブコントロールの処方物(BC、CALBIOCHEM7、上段のパネル、左)およびネガティブコントロールの処方物(BC−CALBIOCHEM7、カラムクロマトグラフィーで精製した、およびBC−Sigma)を、6mg/mlの濃度で使用した(上段のパネル、右)。
【0117】
(6.BigCHAP中への不純物の再構成は遺伝子移入の増強を導く。)
この実験において、10mg/mlのBC(Sigma、図20、上段中央のパネル)を、不純物III(上段右のパネル)、不純物II(下段左のパネル)または不純物IIIの合成したアナログ(下段右のパネル)とともに再構成した。1×1011PN/mlのrAd−βgalを、上記のように薬物を加えた処方物中で調製し、そして膀胱内に投与した。図20に示すように、改善されたレポーター遺伝子の発現(β−ガラクトシダーゼ)を、10mg/mlのBigCHAP(Sigma)の濃度でAを添加した物に類似の(A spiked)BC(Sigma)処方物中に溶解させたrAdを受容させた動物の膀胱の上皮において観察した。
【0118】
(実施例12)
(3−アミノプロピル−3’−N−グルコンアミドプロピル−アミン(3−Aminopropyl−3’−N−gluconamidopropyl−amine)の合成)
(1.3’−N−グルコンアミドプロピル−3’’−N−コラミドプロピル−N−コラミド(3’−N−gluconamidopropyl−3’’−N−cholamidopropyl−N−cholamido))
グルコノ−δ−ラクトン(0.1mol、17.8g)を、400mlの還流している無水メタノール中の0.1mol(13.1)gのイミノビスプロピルアミンの溶液に対して小さい部分で添加する。2時間の還流後、溶液を氷上で1時間冷却させる。溶媒を乾燥によってエバポレートさせる。
【0119】
(2.3−アミノプロピル−3’−N−グルコンアミドプロピル−アミン(3−Aminopropyl−3’−N−gluconamidopropyl−amine))
トリエチルアミン(0.2mol、28ml)を、1リットルのフラスコ中の500mlの無水DMF中に溶解させた0.2mol(81.6g)のコール酸の溶液に添加する。溶液を、氷−塩浴中で0ECに冷却し、その後、0.2mol(20g)のイソブチルクロロホルメートを添加する。混合物を、氷−塩浴中で5分間立たせておく。その後、トリエチルアミンヒドロクロリド沈殿物を可視化する。反応によって、混合された無水物の中間体を得る。
【0120】
別の2リットルのフラスコ中で、0.1mol(30.9g)の3’−N−グルコンアミドプロピル−3’’−N−コラミドプロピル−N−コラミドを、500mlのDMF中に40〜60ECまで穏やかに暖めることによって溶解させる。この溶液を、濁りが生じる直前まで約10ECの氷−塩浴中で迅速に冷却させる。混合した無水物の中間体を、DMF中の3’−N−グルコンアミドプロピル−3’’−N−コラミドプロピル−N−コラミドの溶液中に濾過する。トリエチルアミンヒドロクロリド沈殿物を濾過によって取り除く。その後、溶液を24時間冷却しながら攪拌する。DMFを減圧および加熱下でのエバポレートによって除去し、そして粗混合物を、移動相として65/5/1のクロロホルム/メタノール/水を用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーに供する。純粋な画分を回収し、そして減圧によって溶媒をエバポレートさせる。この反応によって、約27g(25%)の生成物を得る。
【0121】
生成物の質量スペクトル分析によって以下のピークを生じた:337.2、394.2、412.2、503.8、682.4、700.5、755.1、801.1、823.1、912.3、1054.8、1074.7、1090.6、1112.4、1119.3。
【0122】
(実施例13)
(BigCHAP中のトランスフェクション増強成分の特徴付けおよび合成。)
実施例11に示すように、BigCHAP中に存在する不純物が、遺伝子移入を増強するように作用する。この実施例では、これらの化合物のさらなる特徴付けおよび合成を記載する。
【0123】
Calbiochem BigCHAPを、生物学的試験および構造的分析のための本質的に純粋な不純物「1」、「2」、および「3」を得るために、カラムクロマトグラフィーによって分画した。不純物1を、最初の実験において観察した膀胱の刺激に起因して、生物学的活性については試験しなかった。不純物2および3が水にあまり可溶性ではないので、これらを、6mg/mlのSigma BigCHAPと、0.12および1.2mg/mlのレベルで混合し、そしてこれらが遺伝子移入を増強することを見出した(6mg/ml用量のSigma BigCHAPのみでは遺伝子移入を増強しない)。
【0124】
不純物1、2、および3の構造を、MALDI−MSおよびNMR分析によって決定した。図22は、不純物1の構造、MALDI−MS、および1H−NMRスペクトルを示す。不純物2の構造、MALDI−MS、および1H−NMRスペクトルを図23に、そして不純物3の構造、MALDI−MS、および1H−NMRスペクトルを図24に示す。BigCHAPのスペクトルに対するこれらのスペクトルの比較によって、これらの不純物が、BigCHAPに分解物としてというよりもむしろ、BigCHAPを合成するために使用したプロセスによって生じることを実証する。
【0125】
粗Sigma BigCHAPが、26mg/mlの濃度で使用された場合に、遺伝子移入を増強することを見出した。極微量のレベルの不純物がSigma BigCHAP中に存在するかどうかを決定するために、1mgをシリカゲルプレート上にアプライした。Calbiochem BigCHAP中に不純物2とともに移動する不純物を観察した。MALDI−MSおよびNMRによって、この不純物がCalbiochem BigCHAP中の不純物2と同じ構造を有する事を確認した。数グラムのSigma BigCHAPをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって分画し、そして不純物を含有する画分を合わせ、濃縮し、そしてTLCによって分析した。不純物2および3を含むいくつかの不純物が、この極微量の不純物を富化した画分中で明らかであった。
【0126】
(不純物2の合成)
不純物2を以下のように合成した(図25を参照のこと)。最初に、図25に示すように、化合物IIIを200mlの還流メタノール中に1.78g(10mmol)のグルコノラクトンを溶解させ、そして4.2ml(30mmol)のN−3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン(N−3−aminopropyl)−1,3−propanediamene)を添加することによって合成した。還流を、2時間継続した。次いで、メタノールを回転式エバポレーター上でエバポレートさせ、そして得られる油を、白色の固形物が形成されるまでクロロホルムを用いて細かく砕いた。白色の固形物を濾過し、クロロホルムで洗浄し、そして吸引によって乾燥させて2.1gの生成物(純粋ではない化合物III)を得た。
【0127】
化合物IVを、加熱および攪拌しながら40mlのN,N−ジメチルホルムアミド中に0.65g(1.6mmol)のコール酸を溶解させることによって合成した。次いで、この溶液を、攪拌を維持しながら氷浴中で冷却した。次いで、トリエチルアミン(0.223ml(1.6mmol))を添加し、続いて0.208ml(1.6mmol)のイソブチルクロロホルメートを添加した。攪拌を10分間続けた場合、化合物IVを溶液中に残しながら、白色の沈殿物を形成した。
【0128】
不純物2(図25の化合物V)を合成するために、0.5g(1.6mmol)の化合物IIIを55℃で攪拌することによって100mlのジメチルスルホキシド中に溶解させた。化合物IVを含有する懸濁物をこの溶液中に濾過し、そして得られる溶液を室温で一晩攪拌した。水の添加、およびメチレンクロリドまたはメチレンクロリド/メタノールでの抽出による、生成物からのジメチルスルホキシドの分離(反応混合物の半分を使用する)の試みは、成功しなかった。反応混合物の他方の半分をほとんどのジメチルスルホキシドを除去するために減圧下で蒸留した。残査を、溶出剤としてメタノール/クロロホルム(40/60)を使用して、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。カラムから溶出した画分の分析を、クロロホルム/メタノール/水(6/5/1)から構成される移動相を使用してシリカゲル薄相クロマトグラフィーによって行い、そして硫酸エタノール(ethanolic sulfuric acid)を噴霧した後の焦げによって可視化した。最も純粋な生成物を含有する画分を合わせ、エバポレートさせて乾燥させ、そしてヘキサンを用いて細かく砕いて、明るい黄褐色の固体を生じた。これを濾過し、そしてヘキサンで洗浄した。生成物の1H−NMRおよびMALDI質量スペクトル分析は、示した構造と一致した。
【0129】
この化合物の生物学的な評価は、水におけるその可溶性の欠失によっていくらか妨げられた。しかし、化合物が完全には溶解していない場合もなお、膀胱への遺伝子の移入は、不完全に溶解した化合物によって増強された。BigCHAP中の不純物2の処方は、例えば、細胞への遺伝子移入を増強するために有効である処方物を生じた。
【0130】
(Syn3(不純物3のアナログ)の合成)
不純物3が不純物2よりも極性であり、従ってより水に可溶であるので、この化合物の合成を試みた。精製したBigCHAPを、コール酸の混合した無水物(イソブチルクロロホルメートとコール酸とを反応させることによって形成した)と反応させた。この反応によって、少量でそして多数の生成物を生じ、このようにして不純物3のアナログを合成した。このアナログ(不純物3のものと類似の極性を有する)を、「Syn3」と呼んだ。
【0131】
(第1部:化合物IIIの合成)
Syn3の合成のスキームを、図26に示す。ラクトビオン酸(II)のラクトンを、1g(2.8mmol)のラクトビオン酸(I)を50mlのメタノール中に溶解させ、回転式エバポレーター上でエバポレートさせて乾燥させ、そしてこのプロセスを6回繰り返すことによって合成した。化合物IIIを得るために、得られた残査(II)を50mlのイソプロパノール中で50℃に加熱することによって溶解させた。この溶液に、1.2ml(8.4mmol)のN−3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンを添加した。温度を、100℃まで上昇させ、そして溶液を3時間攪拌した。溶媒を回転式エバポレーションによって除去し、そして得られる残査を数回クロロホルムで洗浄して、過剰の未反応のN−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンを除去した。残っている残査(III)を、以下で第3部において使用した。
【0132】
(第2部:化合物IVの合成)
化合物IVを、2.28gのコール酸(5.6mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド中で60℃に加熱して溶解させることによって合成した。トリエチルアミン(0.78ml(5.6mmol))を添加し、そして溶液を氷浴中で冷却した。次いで、イソブチルクロロホルメート(0.73ml(5.6mmol)を添加し、そして10分間、攪拌を連続しながら、白色の沈殿物を形成した。
【0133】
(第3部:Syn3(化合物V)の合成)
化合物IIIを、N,N−ジメチルホルムアミド中に溶解させ、氷浴中で冷却し、そして攪拌した、化合物IVの合成によって得られる懸濁物を、化合物IIIを含有する溶液中に濾過した。得られる溶液を室温で6時間攪拌した。溶媒を、高真空度の回転式エバポレーションを使用して除去し、そして残査を、100mlのクロロホルム/メタノール(50/50)中に溶解した。25mlのこの溶液を、溶出溶媒としてクロロホルム/メタノール(60/40)を使用してシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。カラムから溶出される画分の分析を、クロロホルム/メタノール/水/濃水酸化アンモニウム(100/80/10/5)から構成される移動相を使用するシリカゲル薄層クロマトグラフィーによって行った。化合物を、硫酸エタノールを噴霧した後の焦げによって可視化した。生成物を含有する画分を合わせ、そしてフラッシュクロマトグラフィーおよび溶出溶媒としてのクロロホルム/メタノール/水/濃水酸化アンモニウム(100/80/10/5)を使用して再度精製した。生成物を含有する画分を合わせ、そして白色の粉末にエバポレートさせた(300mgの化合物V)。生成物の1H−NMRおよびMALDI質量スペクトル分析は、示される構造と一致した。
【0134】
水中での溶解を10mg/mlで試みた場合にSyn3はゲルを形成し、そして1mg/mlではベシクルを形成するようであった。しかし、0.1%のTween80中での1mg/mlでは、Syn3の透明な溶液が得られた。この処方物が、遺伝子移入を増強することを見出した。Tween80のみでは、試験した場合には、遺伝子移入に対して全く影響を有さなかった。
【0135】
不純物2または3を添加した精製したBigCHAPは、遺伝子移入の有効なエンハンサーである。合成の不純物2のみおよび不純物3の合成のアナログ(Syn3)のみは、遺伝子移入を増強し得る。従って、BigCHAPと不純物との間の相乗的な関係は、遺伝子移入の増強には必要ではない。BigCHAPは高度に水に可溶性であり、そして不純物およびそれらのアナログを溶液中にもたらす(おそらく、混合したミセルとして)ことにおいて有効であり、従って、活性な不純物および/またはアナログのためのビヒクルとして作用する。
【0136】
不純物2は遺伝子移入を増強することにおいて有効である一方で、これは、水溶液中でその安定性が制限されているのが、これはBigCHAPのような適切な可溶化剤中で処方した場合に有用である。不純物2とは対照的に、Syn3は、例えば0.1%のTween80および本明細書中で記載されるような他の水溶液中で1mg/mlで容易に可溶化される。従って、この化合物は、遺伝子移入の増強試薬として特に有用である。
【0137】
(実施例14)
(膀胱への遺伝子移入を増強する合成の不純物3アナログ(Syn3)の効率)
この実施例は、不純物3のSyn3アナログが膀胱への遺伝子移入を増強することにおいて有効であることを実証する。
【0138】
(方法:)
(1.Syn3の溶解)
Syn3の最初の試験は、これが、緩衝化した生理食塩水またはdH2Oのいずれかにおいてもそれほど高度に可溶性ではないことを示した。しかし、Syn3が界面活性剤BigCHAP、および界面活性剤Tween80(BigCHAP中への溶解と比較していくらかより困難ではあるが)中にかなり容易に溶解することを見出した。より高い濃度のBigCHAP溶液を、溶解され得るより大量のSyn3の溶解のために使用した。5mg/mlまでのSyn3が15mMのBigCHAP中に溶解することを見出した。
【0139】
Tween80中のSyn3を使用する以下の研究のために、Syn3の100mg/mlの溶液を、10%のTween80中に調製した。このストック溶液をdH2O中に希釈(1:100)して、0.1%のTween80中の最終濃度1mg/mlのSyn3を得た。
【0140】
表IIは、インビボでの試験のために選択したSyn3の濃度をまとめる:
【0141】
【表2】
Figure 0004460148
(2.インビボ試験)
Syn3の遺伝子移入活性を、上記の界面活性溶液の1つ中で送達されるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を含有するアデノウイルスの投与後に見出される、β−ガラクトシダーゼ発現のレベルを決定することによってインビボで試験した。この手順において、雌性のHarlan Sprague−Dawleyラットにカテーテルを通し、そしてSyn3を上記の濃度の1つで含有するBigCHAPまたはTween80のいずれか中に1:10で希釈したアデノウイルスを45分間で投与した。ウイルスの除去および膀胱の洗い流した後、動物を回復させた。48時間後に動物を屠殺し、それらの膀胱を固定し、そしてβ−galの発現について染色した。写真撮影後、膀胱を切片化および組織学的試験のためにパラフィン中に包埋した。
【0142】
(結果:)
(1.BigCHAP中のSyn3の遺伝子移入活性)
Syn3を、7.8MMのBigCHAP中で0.5mg/mlで試験した。この濃度では、Syn3は比較的容易に溶解し、そして滅菌濾過が可能であった(0.2Φm Acrodiscシリンジフィルター;Gelman Science)。最初の実験は、Calbiochem BigCHAP、ロット# B19546を利用したが、後の実験では、Sigma BigCHAPロット#37H5023を利用した。BigCHAPのいずれのストックも、使用した濃度で、単独で実験遺伝子移入活性を有する。ポジティブコントロールとして、Calbiochemロット#679793をrAd送達のための処方物として利用した。BigCHAPのこの特定のロットを、同定し、そしてそれからSyn3が作成された活性な不純物を含有するとして同定した。図27に見られるように、Syn3(I3A)が、7.8mMのBigCHAP中の単独でのウイルスの投与と比較して、遺伝子移入およびβ−gal発現を非常に増強することを見出した。
【0143】
より低いSyn3の濃度がより高い濃度での遺伝子移入の増強と同様の有効性であることを検証するかどうか決定するために、Syn3を、3.9mMのBigCHAP中で0.25mg/mlで投与した(図28A)。非常に高レベルの遺伝子移入を得たが、0.5mg/mlでSyn3を用いた場合に見られる高さほど一様には高くなかった(図28B)。
【0144】
(2.Tween80中のI3A/Syn3の遺伝子移入活性)
Tween80中のI3Aの最初の試験を、0.4%のTween80中の1mg/mlのI3Aを使用して開始した。しかし、この濃度のTweenを使用した場合には、遺伝子移入はほとんど得られなかった(データは示さない)。高濃度のTween80が、I3Aの膜中への分配およびウイルスの侵入の許容から隔離することが仮定されているので、I3Aの濃度を1mg/mlに維持しながらTween80の濃度を0.1%まで低下させた。Syn3の2つの異なる調製物を、0.1%のTween80中の1mg/mlでのそれらの遺伝子移入活性について試験した。この濃度では、第1のロット(I3A)(図29A)またはSyn3の第2のロット(図29B)のいずれを使用した場合でも、非常に高いレベルの遺伝子移入が見られた。Syn3の第2のロットはまた、7.8mMのBigCHAP中の0.5mg/mlで非常に高いレベルの遺伝子移入活性を実証した。従って、全てのその後の実験を、I3Aの代わりにSyn3を使用して行った。
【0145】
BigCHAP(7.8mM中の0.5mg/ml)中のSyn3の遺伝子移入活性を、Tween80中のその活性(0.1%Tween80中の1mg/ml)と比較した。両方の処方物が、BigCHAP中のSyn3を用いて見られる、おそらくわずかにより大きい移入を伴う、ほぼ等レベルの遺伝子移入の増強を有することを見出した(それぞれ、図30Aおよび図30C)。β−ガラクトシダーゼアッセイがそれほど高度には定量的ではないので、小さな差異を見分けることが困難である。しかし、7.8mMのBigCHAP中の0.5mg/mlのSyn3で処置した膀胱は、一貫して、最も高いレベルのβ−ガラクトシダーゼ発現を有した。Syn3は、Tween80へはそれほど容易には溶解しないが、いずれの界面活性剤中でも遺伝子移入を増加する。
【0146】
BigCHAP中のSyn3の濃度が、Tween中の濃度の2倍であったので、次に、Syn3を、これらの2つの界面活性剤中の同じ濃度でその遺伝子移入活性について試験した。0.5mg/mlでは、Syn3は、0.05%のTween80中でSyn3を使用して得られたものよりも、7.8mMのBigCHAP中でより良好な遺伝子移入を生じるようであった(図31A)。Syn3を0.05%のTween80中で0.5mg/mlで使用した場合、これらは、Syn3/(I3A)の濃度を3.9mMのBigCHAP中の0.25mg/mlまで減少させた場合に観察されるものと類似の、β−ガラクトシダーゼ発現を欠いているより多くの領域が存在するようであった(図28A)。このことは、BigCHAP対Tween80中の、Syn3の遺伝子移入活性におけるいくつかの差異が、おそらくSyn3が溶解される界面活性剤に由来する影響の一部に起因することを示唆する。
【0147】
(3.Syn3で処置した膀胱の組織学的実験)
Syn3−rAd(β−Gal)で処置した動物に由来する膀胱を、ウイルス感染のレベル、および膀胱の尿路上皮へのウイルスの侵入の程度を決定するための組織学的試験のために調製した。いずれの界面活性剤中でもSyn3の濃度の低下が、それに伴うβ−Gal発現の低下を生じた(図32A〜F)。7.8mMのBigCHAP中の0.5mg/mlでのSyn3の投与によって生じるβ−ガラクトシダーゼの発現が、Tween80を用いる場合よりもわずかにより大きかったが(図32A対図32D)、Syn3のこの濃度が、膀胱への浸潤の大量の補充を代表的に生じることに注目した(図32A)。
【0148】
β−ガラクトシダーゼの発現および浸潤のレベルが、Syn3がTween80中で1mg/mlである膀胱においてよりも、Syn3をBigCHAP中で0.5mg/mlで使用した膀胱においてより高かったので、このことは、浸潤が、rAdがBigCHAP中で投与される場合に生じるウイルスの侵入および発現における増加に起因したことを示唆する。Syn3が浸潤の補充において有し得る寄与を識別するために、Syn3およびウイルスに対して暴露した膀胱の切片を、Syn3のみに対して暴露した膀胱の切片と比較した(それぞれ、図33Aおよび図33B)。Syn3を単独で投与する場合、有意な量の浸潤が見られ、Syn3およびウイルスをともに用いて見られたよりもわずかに少ないだけである。Syn3を伴わずに投与したウイルスは、感染および浸潤の極端に低いレベルを生じ(図33C)、一方、ネガティブコントロール(ウイルスなし、Syn3なし)は浸潤を示さなかった(図33D)。
【0149】
(4.溶液中でのSyn3の安定性)
Syn3は、BigCHAP界面活性剤中に溶解した場合に非常に安定である。Syn3をBigCHAP中に、0.25mg/mlまたは0.5mg/mlのいずれかで溶解した場合、これは、室温で保存した場合でさえ、延長された期間(30日以上)、その遺伝子移入活性を保持した。Syn3を、10%のTween80中に100mg/mlで溶解した場合、これは、4ECで維持した場合に、少なくとも1週間安定であった。しかし、室温でこの高い濃度(100mg/ml)で放置した場合は、これは、24時間以内に凝固する。0.1%のTween80中に1mg/mlに希釈したSyn3は、少なくとも30日間(試験した最も長い期間)安定である。
【0150】
(考察)
Syn3の遺伝子移入活性は、7.8mMのBigCHAP中の0.5mg/mlで極端に高いようである。しかし、より高い濃度での副作用の可能性に起因して、より低い濃度のSyn3(例えば、3.9mMのBigCHAP中の0.25mg/ml)が好ましい。Syn3はまた、0.1%のTween80中の1mg/mlで一貫して高いレベルの遺伝子移入を実証した。これらの研究の結果に基づくと、遺伝子移入剤としての使用のためのSyn3の1つの特に適切な処方物は、0.1%のTween80中の1mg/mlである。
【0151】
(実施例15)
(Syn3の臨床的処方物)
この実施例は、例示の目的のために、ウイルスベクターの送達のための臨床的な処方物としての使用に適切な、Syn3の処方物の1つの例を提供する。この処方物はまた、他の送達増強化合物について使用され得る;本明細書中で記載されているような多くの他の処方物もまた、Syn3および他の化合物との使用に適切である。
【0152】
Syn3ストック溶液を、10%のTween80中に100mg/mlでSyn3を溶解させることによって調製した。次いで、このストック溶液を、水中にTris(1.7mg/ml)、リン酸ナトリウム(一ナトリウム、二水和物、1.7mg/ml)、スクロース(20mg/ml)、塩化マグネシウム(六水和物、0.4mg/ml)、およびグリセロール(100mg/ml)を含有する水溶性の緩衝液を使用して、6mg/mlのSyn3濃度に希釈した。
【0153】
この溶液を、0.1%のTween80中に1mg/mlのSyn3を含むウイルス溶液を得るために、ウイルスベクターを含有する溶液を用いて希釈した。この溶液は、遺伝子移入を増強することにおいて有効であった。
【0154】
(実施例16)
(水中で増加した安定性を有するSyn3アナログの合成)
Syn3は、インビボで高い遺伝子移入増強活性を実証したが、これは、水溶液中には比較的不溶性であり、そして完全な溶解のためには界面活性剤の存在を必要とする。さらに、Syn3は、10%のTween80中への完全な溶解のために数時間を要し、この試薬の臨床的な使用をさらに複雑にする。これらの困難を解決するために、水溶液中でより大きな可溶性を有する2つのSyn3アナログを合成した。Syn3のラクトース部分の除去、および続くメチル化または生じるアミンの還元によって、それぞれ、A−トリメチルアンモニウムクロリド(A−tma)およびA−ヒドロクロリド(A−HCl)として知られる、2つの新規の化合物を合成した。ここで、Aは、両方の分子に共通のSyn3の保存された領域を示す(図21を参照のこと)。これらの2つの陽イオン性化合物をさらに、溶解を容易にするためにそれらの塩化物塩に中和した。
【0155】
A−TMAを、図35に示すように合成した。簡潔には、DMF(30mL、0℃)中のコール酸(CA)(2.0g、5mmol)を、Et3N(0.72mL、5.1mmol)で処理し、次いで、注意深くイソブチルクロロホルメート(0.67mL、5.1mmol)で処理した。混合物を3日間攪拌し、そして1つの化合物を得た。これを、SiO2上で、DCM/MeOH(6:1から4:1)を用いて溶出して容易に精製した。室温で30分後、DMF(4mL)中のアミン(J−2/55)(522mg、2.26mmol)の溶液を添加した。アミンを、Han,Y−PおよびHang,H−S、Bull.Korean Chem. Soc.(1994)15:1025−1027に従って合成した。1.8gの得られる化合物J−2/5C(BOC−A)を得、72%の収率を生じた。
【0156】
DMF(10mL)中のアミン(250mg、61/11、0.27mmol)を、Hungs塩基(ジイソプロピルエチルアミン)(200μL、1.15mmol)およびMeI(75μL、1.2mmol)で処理した。TLCは、主要な1つの化合物および2つの不純物を示した。反応混合物を減圧下で濃縮し、シリカカラム上にアプライし、そしてMeCN/AcOH/H2O(4:1:1)で溶出した。中央の画分を組み合わせ、そしてDowex50W−X8−200陽イオン交換樹脂のNa+形態のイオン交換クロマトグラフィーに供し、そして1:1の0.5MのNaCl/MeOHで溶出した。最も純粋な画分をLH−20親油性Sephadex上で脱塩し、そして凍結乾燥させて純粋なトリメチルアンモニウムクロリド(J−2/90(A−tma))を得た。82mgの生じた化合物を得、32%の収率を生じた。
【0157】
A−HClを得るために、MeOH(60mL)中のBOC−A(1.0g、1mmol)を、0℃にてMeOH中のAcClの溶液(20mL中に2mL)で処理した。反応系を、ゆっくりと室温にした。3時間後のTLCは、出発物質を全く示さなかった。エバポレーション(EtOH/トルエンで)後、残査をDowex50W−X8−200イオン交換カラムのNa+形態にアプライした。しかし、生成物はまっすぐに素通りした。0.5MのNaClでの溶出によっては、さらなる物質を全く生じなかった。SiO2上でのフラッシュクロマトグラフィーは、成功した(DCM/MeOH/H2O;60:35:5)が、生成物は2つのバンドにおいて溶出されたと思われた。NMRは、後期および初期の画分が同じであることを示した。650mgの得られる化合物A−HClを得、65%の収率を生じた。塩基処理(−Omeまたは樹脂)が生成物のTLCの挙動を変更し得ることに注目した。
【0158】
(実施例17)
(A−tmaおよびA−HClはインビボでの遺伝子移入を増強する。)
この実施例は、化合物A−tmaおよびA−HClがインビボでの遺伝子移入活性を有することを実証する。
【0159】
(方法:)
(1.投与のために溶液の調製)
1mg/mlの濃度を、両方の化合物の最初の試験のために選択した。これらの化合物のそれぞれについての遺伝子移入活性の決定のために、Syn3アナログ/ウイルス/緩衝液の投与後に得られるβ−ガラクトシダーゼ活性のレベルを、ウイルス/緩衝液のみを使用した場合の活性と比較した。
【0160】
A−TMAの溶液を、10mlのダルベッコ(Dulbecco)のPBS中に10mgのA−TMAを溶解させることによって調製した。グリセロールを、10mg/mlの最終濃度を提供するように添加した。全ての溶液を、使用する前に滅菌濾過した(0.2Фm、Acrodiscシリンジフィルター)。ウイルス(BGCG 70AAB)を、投与の前に、このA−TMA溶液か、またはダルベッコのPBS−グリセロール中のいずれかに1:10で希釈した。
【0161】
A−HClは、生理食塩水には完全には溶解しないので、そしてdH2Oへの溶解がpHが4.7である溶液を生じるので、Tris緩衝化溶液を組成が以下の通りであるA−HClの溶解のために選択した:
溶解緩衝液(緩衝液D)
2.8mM Tris、pH7.5
1.2mM NaH2PO4
2mM MgCl2
0.2% スクロース
10mg/ml グリセロール
最終pH6.5
10mgのA−HClをこの緩衝液中に溶解させ、そして使用の前に滅菌濾過した(0.2μm Acrodiscシリンジフィルター)。ウイルス(BGCG 70AAB)を、投与の前にこの溶液中に1:10に希釈した。比較のために、A−HClを伴わずにこの緩衝液中に希釈したウイルスもまた試験した。
【0162】
(2.インビボでの投与)
雌性のHSDラットを、イソフルランを使用して麻酔した。このラットにK−Yゼリーを用いて滑らかにしたPE50チューブを使用して膀胱内に経尿道カテーテルを挿入した。逆もれを防ぐために、外尿道に結さつを設置した。必要であれば、尿を除去し、そして膀胱を0.5mlのPBSで洗い流し、そして空にした。rAdを所望の濃度(1:10)に希釈し、そして45分間で注ぎ込んだ。容量の戻りに気を付けながら用量物質を除去した。膀胱を、0.5mlのPBSで洗い流し、そして空にした。結さつおよびカテーテルを除去し、そして動物を籠の中で回復させた。
【0163】
48時間後、動物を屠殺し、そしてそれらの膀胱の膨張を、1時間、0.5mlの固定剤で固定した。次いで、膀胱を一晩リンスし、そして全器官のX−gal染色を行った。
【0164】
(結果:)
2つの化合物の両方が、コントロールと比較して増強された遺伝子移入活性を生じた。遺伝子移入活性のレベルを、表IIIにまとめる。遺伝子移入活性の相対的なレベルを示す:遺伝子移入活性の最も高いレベルを、「++++」で示し、そして低いレベルを「+」で示す(移入活性がないことを0で示す)。
【0165】
【表3】
Figure 0004460148
(考察:)
2つの化合物A−tmaおよびA−HClの両方が、コントロールによって得られる活性のレベルを有意に超える遺伝子移入活性を示した。これらのレベルは、Tween80中のSyn3を使用して得られるレベルよりも低いが、これらは、A−tmaおよびA−HClのような水性ベースのトランスフェクション増強剤を使用する遺伝子移入の増強が可能であることを示す。Syn3のラクトース部分が無水コハク酸部分で置き換えられている化合物A−SCは、遺伝子移入増強化合物としては有効ではなかった。この化合物は、コントロールと同等のレベルの遺伝子移入活性を生じた(データは示さない)。表IVは、1mg/mlのSyn3の遺伝子移入活性と比較した、これらの化合物を使用する遺伝子移入の結果をまとめる。
【0166】
【表4】
Figure 0004460148
両方の化合物がdH2O中ではるかに高い可溶性を有することが見出されているので(5mg/mlまで)、これらのアナログの濃度を増加させることは、おそらく、インビボでのなおより大きい遺伝子移入活性を生じる。
【0167】
本明細書中で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が、詳細にそして個々に参考として援用されることが示されるかのように、それらの全体において本明細書中で参考として援用される。
【0168】
本発明にかかわる当業者に明らかであるように、本発明は、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、上記に詳細に開示される実施態様以外の形態の実施態様であり得る。従って、上記に記載されている本発明の特定の実施態様は、例示と考えられ、そして限定的ではない。本発明の範囲は、上記の記載に含まれる実施例に限定されるよりもむしろ、添付の請求の範囲に示される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、膀胱内投与後のラット膀胱上皮におけるアデノウイルス媒介遺伝子移入および発現に対する処方物の影響を示す。
【図2】 図2は、膀胱内投与後の膀胱上皮細胞中のアデノウイルストランスジーン発現を示す。
【図3】 図3は、膀胱内投与後のラット膀胱における用量依存性アデノウイルストランスジーン発現を示す。
【図4】 図4は、膀胱内投与後のマウス膀胱における組換えアデノウイルストランスジーン発現の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析を示す。
【図5】 図5は、ウイルスの膀胱内投与後の、膀胱、腎臓、および肝臓組織における組換えアデノウイルストランスジーン発現の時間経過を示す。
【図6】 図6は、膀胱内投与後の膀胱および腎臓ホモジネート中の組換えアデノウイルストランスジーンDNAを示す。
【図7】 図7は、BigCHAP(N,N,ビス-(3−D−グルコンアミドプロピル)−コラミド(CALBIOCHEM7 Biochemicals,San Diego,California)処方物を用いる膀胱上皮への遺伝子移入の改良を示す。
【図8】 図8は、7mM Big CHAP処方物中の異なる濃度の組換えアデノウイルスを用いる膀胱上皮への遺伝子移入の改良を示す。
【図9】 図9は、エタノール(ETOH)またはBig CHAP処方物を用いることによる膀胱組織中の組換えアデノウイルストランスジーンの増強を示す。
【図10】 図10は、4mM Big CHAP処方物を用いる腫瘍への遺伝子移入を示す。
【図11】 図11は、ブタ膀胱上皮へのトランスジーン移入を示す。
【図12】 図12は、腫瘍組織中のp53の発現を示す。
【図13】 図13は、ラット回腸の粘膜への遺伝子移入を示す。
【図14】 図14は、ラットからの膀胱切片の写真である。ここで、2つの供給源からのBig CHAPの遺伝子移入を増強する能力が比較された。下の列における、上の列に比較したより強いXgal染色は、Sigma(Sigma Chemical Company,St.Louis,Missouri)からのBig Chapに比較したCALBIOCHEM7からのBig CHAPによる遺伝子移入のより大きな増強を示した。
【図15】 図15のAおよびBは、CALBIOCHEM7およびSigmaからのBig CHAPの薄層クロマトグラフィー(TLC)を示す。BC−Sigmaの試料からは1つの明瞭なバンドのみが展開されたが(図15B)、BC−CALBIOCHEM7の試料には3つのさらなるバンドが明瞭になった(図15A)。
【図16】 図16は、Big CHAP不純物のTLCを示す。レーンは以下のようにラベルされる:レーン1:Big CHAP(CALBIOCHEM7);レーン2:不純物I;レーン3:不純物II;レーン4:不純物IIおよびIIIの混合物;レーン5:不純物III;レーン6:純粋Big CHAP(CALBIOCHEM7);レーン7:Big CHAP(CALBIOCHEM7)。
【図17】 図17は、ラットからの膀胱切片の写真である。ここで、漸増濃度のBig CHAP(Sigma)の遺伝子移入を増強する能力が、Big CHAP(CALBIOCHEM7)標準に対して比較された。より強いXgal染色は、より高い濃度のBig CHAP(Sigma)において増強した遺伝子移入を示した。
【図18】 図18は、ラットからの膀胱切片の写真である。ここで、精製後のBig CHAP(CALBIOCHEM7)およびBig CHAP(Sigma)の遺伝子移入を増強する能力が、評価され、そしてコントロールとしてそれらの供給源からの精製されていないBig CHAPに対して比較された。Xgal染色の強度は、いずれかの供給源由来のBig CHAPがカラムクロマトグラフィーによって精製された後の遺伝子移入を増強する能力の減少を示した。
【図19】 図19は、ラットからの膀胱切片の写真である。ここで、精製後のBig CHAP(CALBIOCHEM7)およびBig CHAP(Sigma)の遺伝子移入を増強する能力を評価し、そしてこれらの供給源からの非精製Big CHAPと、ならびに不純物Iおよび不純物IIと不純物IIIとの組み合わせと比較した。Xgal染色の強度は、6mg/mlの不純物IIと不純物IIIとの組み合わせを用いた遺伝子移入の増強を示した。
【図20】 図20は、ラットからの膀胱切片の写真である。ここで、精製後のBig CHAP(Sigma)の遺伝子移入を増強する能力を評価し、そして不純物II、不純物III、または不純物IIの合成アナログで再構成された精製Big CHAP(Sigma)と比較した。Xgal染色の強度は、精製Big CHAP(Sigma)が再構成されたときの遺伝子移入の増強を示した。Big CHAP(CALBIOCHEM7)をコントロールとして含める。
【図21】 図21は、Syn3およびSyn3の2つの水溶性アナログの構造を示す。2つのアナログ中で保存されているSyn3のドメインを「A」として示す。アナログA−TMAおよびA−HClは、Syn3のラクトース部分を塩化トリメチルアンモニウム(A−TMA)または塩化水素(A−HCl)で置換して得られた。
【図22】 図22は、不純物1の構造、MALDI−MS、および1H−NMRを示す。
【図23】 図23は、不純物2の構造、MALDI−MS、および1H−NMRを示す。
【図24】 図24は、不純物3の構造、MALDI−MS、および1H−NMRを示す。
【図25】 図25は、不純物2の合成経路を示す。
【図26】 図26は、Syn3の合成経路を示す。Syn3合成の代替経路を図34に示す。
【図27】 図27A〜図27Cは、I3A(Syn3)がアデノウイルス媒介βガラクトシド発現を増強することを示す。高レベルの遺伝子移入が、7.8mM Big CHAP中0.5mg/mlでI3Aを用いるときに得られた(図27A)。コントロールを比較のために示す:I3Aなし(図27B)、およびポジティブコントロールとしての7.8mM Big CHAP Calbiochemロット番号679693(図27C)。
【図28】 図28Aおよび図28Bは、I3A(Syn3)の遺伝子移入増強活性の滴定の結果を示す。3.9mMのBig CHAP中の0.25mg/mlへのI3Aの低減(図28A)はなお、7.8mM Big CHAP中の0.5mg/mlのI3Aを用いたときに得られた遺伝子移入活性(図28B)と比較してなお高レベルの遺伝子移入を生じた。固定のとき、0.25mg/ml I3Aで処理した膀胱は、0.5mg/ml I3Aで処理した膀胱に比べより少ない炎症を有するようであった。
【図29】 図29A〜図29Bは、I3AおよびSyn3遺伝子移入活性の比較を示す。高レベルのβ-ガラクトシダーゼ活性が、I3Aを、0.1% Tween80中1mg/mlで用いて得られた(図29A)。ほぼ等しいレベルの遺伝子移入が、Syn3を0.1% Tween80中の1mg/mlで用いて得られた(図29B)。
【図30】 図30A〜図30Dは、0.1%Tween80対7.8mM Big CHAPにおけるSyn3遺伝子移入活性の比較を示す。0.1%Tween80中1mg/mlでSyn3を用いて(図30A)、7.8mM Big CHAP中0.5mg/mLでSyn3を用いたときに得られたレベル(図30C)に匹敵したレベルの遺伝子移入を得た。0.1%Tween80(図30B)または7.8mM BigCHAP(図30D)のいずれかを用いるときのネガティブコントロール(Syn3なし)もまた示される。
【図31】 図31A〜図31Dは、Big CHAPおよびTween80界面活性剤中の同濃度でのSyn3遺伝子移入活性の比較を示す。Syn3を、7.8mM BigCHAP中0.5mg/mlで溶解したとき(図31A)、非常に高いレベルの遺伝子移入が得られた。これに対し、0.05% Tween80中のSyn3の遺伝子移入活性(図31C)は、β-ガラクトシダーゼ活性が欠如したより多くの領域とともにわずかに減少した。7.8mM BigCHAP(図31B)および0.05%Tween80(図31D)の両方に対するネガティブコントロールもまた示す。
【図32】 図32A〜図32Fは、Syn3投与後の浸潤の比較を示す。Syn3のより低い用量で、膀胱において比例的により低い浸潤が観察された。漸減濃度のSyn3を、BigCHAP(図32A、B)またはTween80(図32D、E)のいずれかを用いたとき、膀胱のrAd感染において用いた。Big CHAP(図32C)またはTween80(図32F)のいずれかとともに界面活性剤のみ(Syn3なし)で処理した膀胱もまた示される。
【図33】 図33A〜図33Dは、Syn3の投与が、細胞浸潤の誘導を生じることを示す投与を示す。ウイルスおよびSyn3の投与から得られる浸潤のレベル(図33A)を、Syn3単独から得られたレベル(図33B)と比較したとき、Syn3投与が、浸潤の顕著な誘導を生じることが見出された。ウイルス単独(図33C)またはウイルスなし/Syn3なしコントロール(図33D)で処理した動物からの膀胱もまた示される。
【図34】 図34は、Syn3の合成経路を示す。反応3をDMF中で24時間行った後、産物をエバポレートして乾燥し、そしてSiO2上でDCM/MeOH/H2O(60:35:5)を用いて精製した。
【図35】 図35は、水溶液中で増加した溶解性を示す、Syn3のアナログであるA−tmaおよびA−HClを合成するために用いたプロトコルを示す。

Claims (41)

  1. 治療用薬剤の送達を必要とする被験体の細胞への治療用薬剤のインビボ送達を増強するための医薬の製造における、送達増強化合物の使用であって、該送達増強化合物は、式I:
    Figure 0004460148
    ここで:mおよびnは同じかまたは異なり、そして各々は2〜8の整数であり;
    1、X が結合するカルボニル基と一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
    2 、サッカリド基であるか、あるいはX が結合するカルボニルと一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
    は、サッカリド基であるか、あるいはX が結合するカルボニルと一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
    ただし、X2およびX3の少なくとも1つがサッカリド基である、
    化合物である、使用
  2. 前記医薬中の前記送達増強化合物の濃度が約0.002〜約2mg/mlである、請求項1に記載の使用
  3. 前記医薬中の前記送達増強化合物の濃度が約0.02〜約2mg/mlである、請求項に記載の使用
  4. 前記医薬中の前記送達増強化合物の濃度が約0.2〜2mg/mlである、請求項に記載の使用
  5. 前記医薬が膀胱内投与のために処方される、請求項1に記載の使用
  6. 前記薬剤がタンパク質である、請求項1に記載の使用
  7. 前記薬剤が遺伝子である、請求項1に記載の使用
  8. 前記遺伝子がベクター内で投与される、請求項に記載の使用
  9. 前記ベクターがウイルスベクターである、請求項に記載の使用
  10. 前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクターからなる群から選択される、請求項に記載の使用
  11. 前記ウイルスベクターが、ウイルスベクターの約1×108粒子/ml〜約5×1011粒子/mlを含む懸濁液として投与される、請求項10に記載の使用
  12. 前記懸濁液が、ウイルスベクターの約1×109粒子/ml〜約1×1011粒子/mlを含む、請求項11に記載の使用
  13. 細胞に薬剤を送達するための組成物であって、該薬剤および式I:
    Figure 0004460148
    ここで:mおよびnは同じかまたは異なり、そして各々は2〜8の整数であり
    1、X が結合するカルボニル基と一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
    2 、サッカリド基であるか、あるいはX が結合するカルボニルと一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
    は、サッカリド基であるか、あるいはX が結合するカルボニルと一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
    ただし、X2およびX3の少なくとも1つがサッカリド基である、
    の送達増強化合物を含む、組成物。
  14. 前記 2 またはX 3 サッカリド基が1つ以上のペントースまたはヘキソース残基を含む、請求項13に記載の組成物。
  15. 前記 2 またはX 3 サッカリド基が、ペントースモノサッカリド基、ヘキソースモノサッカリド基、ペントース−ペントースジサッカリド基、ヘキソース−ヘキソースジサッカリド基、ペントース−ヘキソースジサッカリド基、およびヘキソース−ペントースジサッカリド基からなる群が選択される、請求項13に記載の組成物。
  16. 前記 2 またはX 3 サッカリド基がトリサッカリドである、請求項13に記載の組成物。
  17. 前記送達増強化合物の濃度が約0.002〜約2mg/mlである、請求項13に記載の組成物。
  18. 前記送達増強化合物の濃度が約0.2〜2mg/mlである、請求項17に記載の組成物。
  19. 前記薬剤が細胞中に存在するとき該薬剤が該細胞中の生物学的プロセスを調整する、請求項13に記載の組成物。
  20. 前記生物学的プロセスが、細胞成長、分化、増殖、代謝経路、生合成経路、遺伝子発現、疾患関連プロセス、および免疫応答からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
  21. 前記薬剤がポリヌクレオチドを含む、請求項13に記載の組成物。
  22. 前記ポリヌクレオチドが、アンチセンス核酸、三重鎖形成性核酸、およびポリペプチドをコードする遺伝子を含む核酸からなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
  23. 前記組成物がポリマーマトリックスをさらに含む、請求項13に記載の組成物。
  24. 前記組成物が粘膜接着剤(mucoadhesive)をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
  25. およびX の各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつX 3 がサッカリド基である、請求項13に記載の組成物。
  26. 前記送達増強化合物が式III:
    Figure 0004460148
    を有する、請求項13に記載の組成物。
  27. 式I:
    Figure 0004460148
    ここで:mおよびnは同じかまたは異なり、そして各々は2〜8の整数であり;
    1、X が結合するカルボニル基と一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
    2 、サッカリド基であるか、あるいはX が結合するカルボニルと一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
    は、サッカリド基であるか、あるいはX が結合するカルボニルと一緒になって、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基またはデオキシコール酸基であり;
    ただし、X2およびX3の少なくとも1つがサッカリド基である、
    を有する、化合物。
  28. 前記 2 またはX 3 サッカリド基が、1つ以上のペントースまたはヘキソース残基を含む、請求項27に記載の化合物。
  29. 前記サッカリド基が、ペントースモノサッカリド基、ヘキソースモノサッカリド基、ペントース−ペントースジサッカリド基、ヘキソース−ヘキソースジサッカリド基、ペントース−ヘキソースジサッカリド基、およびヘキソース−ペントースジサッカリド基からなる群が選択される、請求項27に記載の化合物。
  30. 前記サッカリド基が、3〜約8のモノサッカリド残基を含む、請求項27に記載の化合物。
  31. 前記サッカリド基がトリサッカリドである、請求項27に記載の化合物。
  32. mおよびnの各々が独立に2または3である、請求項27に記載の化合物。
  33. 1およびX2各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつ3がサッカリド基である、請求項27に記載の化合物。
  34. 前記サッカリド基がヘキソース−ヘキソースジサッカリド基である、請求項27に記載の化合物。
  35. mおよびnが各々3であり、X1およびX2各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつ3がヘキソースモノサッカリド基である、請求項27に記載の化合物。
  36. mおよびnが各々3であり、X1およびX3各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつ2がヘキソースモノサッカリド基である、請求項27に記載の化合物。
  37. mおよびnが各々3であり、X1およびX2各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつ3がヘキソース−ヘキソースジサッカリド基である、請求項27に記載の化合物。
  38. mおよびnが各々3であり、X1およびX3各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつ2がヘキソース−ヘキソースジサッカリド基である、請求項27に記載の化合物。
  39. 前記化合物が式III:
    Figure 0004460148
    を有する、請求項27に記載の化合物。
  40. 1 およびX 2 の各々は、X およびX がそれぞれ結合するカルボニル基と一緒になって、両方が、分子の残りの部分とアミド結合しているコール酸基であり、かつX がグルコース基である、請求項27に記載の化合物。
  41. 治療用薬剤の送達を必要とする被験体の細胞への治療用薬剤のインビボ送達を増強するための医薬の製造における、請求項28〜40のいずれか1項に記載の化合物の使用。
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