以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる無線アクセスシステムの全体構成を説明するための図である。
図1において、既存の公衆網81に有線または無線による通信回線80を介して接続された基地局10には、アンテナ11が設けられており、この基地局10を介して通信が可能な範囲であるゾーン1の内部には、複数の加入者無線局20が設置されている。図1に示すように、各加入者無線局20は、その設置場所により基地局10との間の距離は各々異なっている。
ゾーン1の内部において、基地局10と各加入者無線局20間には、それぞれ、上り回線(加入者無線局20から基地局10方向)と下り回線(基地局10から加入者無線局20方向)が設定され、これら両回線を利用して、基地局10と各加入者無線局20間のポイント・ツー・マルチポイント(PTMP)通信が行われる。
また、このシステム(PTMPシステム)において、基地局10は通信回線80、公衆網81を介してネットワーク管理装置(NMS)90に接続される。
ネットワーク管理装置90は、通信回線80、公衆網81を介してゾーン1内の基地局10及び加入者無線局20とデータ伝送を行うことにより、当該各ゾーンの動作の監視及び制御を行うものである。
更に、公衆網81は、ATM網82、I−専用線網83、インターネットやイントラネット等の通信網84、フレームリレー網85、N−ISDN86等の通信網と接続されている。
これら各網のうちの少なくともいずれか1つには、通信事業者の交換局(図示せず)が配置され、該交換局は当該通信事業者のサービスシステム(当該通信事業者が運営する各種通信サービスに対応するデータを管理するシステム)に接続されている。
通信事業者が運営する上記通信サービスへの加入者は、後述する加入者端末70から加入者無線局20を介して該通信事業者の上記サービスシステムにアクセスすることにより当該通信サービスを利用することができる。
なお、図1では1つの基地局10とこの基地局10のゾーン1内に配置される加入者無線局20しか開示していないが、実際のシステム構成においては、ゾーン1と同態様(1つの基地局10と複数の加入者無線局20がPTMP通信を行う)から成る複数のゾーンが存在し、これらゾーンによって上述した通信サービスを提供可能なエリア全体がカバーされるようになっている。
図2は、図1のシステムにおける基地局10と加入者無線局20の概略構成及び配置態様を示す概念図である。
図2において、基地局10は、アンテナ11、第1のユニットとしてアンテナ11に接続され、ビル等の建物の屋外に設置される屋外装置(OUTDOOR UNIT:以下、ODUという。)12、第2のユニットとして同建物の屋内に設置される屋内装置(INDOOR UNIT:以下、IDUという。)13、ODU12とIDU13間の接続線としての同軸ケーブル14とから構成される。
一方、加入者無線局20は、アンテナ30、第1のユニットとしてアンテナ30に接続され例えば加入者宅の屋外に設置される屋外装置(以下、ODUという。)40、接続線としての同軸ケーブル50、第2のユニットとして同加入者宅の屋内に設置される屋内装置(以下、IDUという。)60とから構成される。
なお、この加入者無線局20の動作に関する以下の説明では、便宜上、アンテナ30→ODU40→同軸ケーブル50→IDU60の向きの信号を受信信号(下り信号)とし、逆に、IDU60→同軸ケーブル50→ODU40→アンテナ30の向きの信号を送信信号(上り信号)として説明する。
加入者無線局20において、アンテナ30は基地局10との間で無線信号の送受信を行えるようにするため、該基地局10のアンテナ11と向き合うように方向調整を行った後、設置されている。
また、アンテナ30に接続されるODU40は、アンテナ30で送受信される無線周波数信号を中間周波数信号であるIF信号に変換するもので、通常アンテナ30と一体化成形されている場合が多い。そして、アンテナ30とODU40は、例えば建物の屋上等にポールを立て、このポールに締結されて設置される。
また、ODU40には、同軸ケーブル50が接続され、この同軸ケーブル50を介して屋内に設置されるIDU60と接続される。この同軸ケーブル50内は、IDU60からODU40に向けて伝送される中間周波数帯の送信信号(以下、送信IF信号という。)、ODU40からIDU60に向けて伝送される中間周波数帯の受信信号(以下、受信IF信号という。)、各種制御信号、及びIDU60からODU40に対して供給される電源電圧が多重して伝送される。
また、IDU60には、LAN等のネットワークを介して加入者端末70が接続され、既存網(公衆網81等)との通信ができるようになっている。加入者端末70としては、電話機、PC(パーソナルコンピュータ)、各種10Base-T端末、ISDN端末等の通信端末機器が用いられる。なお、IDU60と加入者端末70との接続は、LAN等を介することなく直接接続するようなものでも良い。
次に、加入者無線局20の詳しい構成について各実施例毎に説明する。
第1の実施例:
図3は、第1の実施例に係わる加入者無線局20Aの詳細構成を示すブロック図である。
この加入者無線局20A全体は、図2の説明で述べたように、アンテナ30が接続されたODU40と、このODU40に同軸ケーブル50を介して接続されるIDU60とから構成される。
ODU40の大まかな構成としては、図3に示すように、送信系、受信系、ODU40全体の制御を行う制御部41から構成されている。
ODU40において、アンテナ30との接続端は分岐され、受信用フィルタ421と送信用フィルタ434に接続されている。ここで受信用フィルタ421は受信信号用の無線周波数帯信号を通過し、送信信号用の無線周波数帯の信号を遮断する特性を有している。逆に、送信用フィルタ434は送信信号用の無線周波数帯信号を通過し、受信信号用の無線周波数帯の信号を遮断する特性を有している。
受信信号が通過する受信系は、受信用フィルタ421から受信用アンプ422、周波数変換部423、受信用可変減衰部(以下、受信用ATTという。)424を介してODU多重分離部44に接続されている。
一方、送信信号が通過する送信系は、上記ODU多重分離部44から、送信用可変減衰部(以下、送信用ATTという。)431、周波数変換部432、送信用アンプ433を介して、上記送信フィルタ434に接続されている。そして、ODU多重分離部44はIDU60と接続するための同軸ケーブル50を接続するための端子と接続されている。
周波数変換部423,432には、局部発振器461からハイブリッド回路462を介してローカル発振周波数が供給されている。
また、ODU多重分離部44には、DC/DCコンバータ45が接続されており、後述する方法でIDU60から供給される電源電圧を所望の電圧に変換して、ODU40内の各部に供給している。
また、ODU40には制御信号用端子46が設けられており、制御部41に接続されている。
また、本実施例に係わるODU40では、ODU多重分離部44と制御部41間に電源監視部47と予備電源48が設けられる。
また、制御部41内には、電源断認識部411、電源断操作認識部412、電源断通知処理部413が設けられる。
電源監視部47は、IDU60から同軸ケーブル50、ODU多重分離部44を介して供給される電源のオン/オフを監視し、その監視結果を制御部41の電源断認識部411に通知する。
電源断認識部411は、電源監視部47から通知される監視結果に基づき電源オンなのか電源オフ(電源断)なのかを認識する。
電源断操作認識部412は、当該加入者無線局20Aの電源をオフにする電源断操作がなされたか否かを認識する。一例として、本実施例では、後述するように、加入者端末70で加入者無線局20Aの電源断操作がなされることにより該加入者端末70から送出され、ODU60を経由して転送されてくる電源断操作信号に基づき電源断操作がなされたことを認識する。
電源断通知処理部413は、電源断操作がなされたことが電源断操作認識部412で認識され、かつ電源断となったことが電源断認識部411で認識された場合に、電源断操作通知信号を生成して基地局10に送出する。
予備電源48は、加入者端末70からの上記電源断操作信号に基づきIDU60の制御部65がAC/DCコンバータ66から自IDU60各部及びODU40への給電を停止する制御を行なった後の当該ODU40内での上記電源断操作通知信号の送信に係わる制御部41及び送信系の動作補償用電源として利用される。
次に、IDU60の構成について説明する。
IDU60において、同軸ケーブル50に接続される端子には、IDU60からODU40へ伝送される送信IF信号と、ODU40からIDU60へ伝送される受信IF信号と、電源電圧とを分離するIDU多重分離部61が接続されている。
そして、受信系は、IDU多重分離部61から受信機621、A/Dコンバータ622、復調/誤り訂正復号部623を介して端末I/F部63に接続されている。
一方、送信系は、端末I/F部63に、変調/誤り訂正符号化部641、周波数変換部642、可変減衰部643を介して、前記IDU多重分離部61に接続されている。
また、IDU60には外部電源が接続する外部電源端子68が設けられている。この外部電源端子68には、電源スイッチ67を介してAC/DCコンバータ66が接続される。
AC/DCコンバータ66は、電源スイッチ67がオン状態(閉成状態)の時、外部電源端子68から供給されるAC電源(この例では、AC100V)を直流に変換して所定の直流電源電圧を生成する。
この直流電源電圧は、IDU60内の各部に供給されると共に、IDU多重分離部61、同軸ケーブル50を介してODU40にも供給される。
制御部65は、IDU60全体の制御を行うものであり、該制御の中にはIDU60の電源オフ制御も含まれる。このIDU60の電源オフ制御は、例えば、加入者端末70から端末I/F部63を介して与えられる電源断操作信号に基づき電源スイッチ67をオン状態(閉成状態)からオフ状態(開成状態)に切り換えることにより実現する。
なお、IDU60の電源をオンにする(電源を投入する)には、加入者端末70から端末I/F部63を介して電源投入操作信号を与えて電源スイッチ67をオン状態(閉成状態)に切り換える方法があるが、この他、加入者が電源スイッチ67を直接操作してオン状態にすることもできる。
次に、加入者無線局20Aの基本動作について説明する。
基地局10から受信した無線周波数帯の受信信号は、受信用フィルタ421を介して、受信用アンプ422に入力される。この受信用アンプ422で所定のレベルに増幅される。
その後、無線周波数帯の受信信号は、周波数変換部423により、局部発振器461からハイブリッド回路462を介して出力される局発信号とミキシングすることにより、受信用IF信号に周波数変換され、受信用ATT424に入力される。
ここで、受信用ATT424は、制御部41からの制御に基づくレベルに減衰するもので、このレベルを調整することにより、ODUの受信ゲインを調整することができる。受信用ATT424で所望のレベルに減衰された受信IF信号は、ODU多重分離部44に入力される。
ここで、受信IF信号の周波数は、送信IF信号の周波数と帯域を異ならせている。このため、送信IF信号と多重しても、後で分離が可能となっている。また、IDU60から伝送されてくる電源電圧は、直流電圧であるため分離が可能となっている。
同軸ケーブル50を介してIDU60に伝送された受信IF信号は、IDU多重分離部61で分離され、受信部621に入力される。そしてA/Dコンバータ622でデジタル信号に変換された後、復調/誤り訂正復号部623で復調と誤り訂正符号の復号が行われる。
復調/誤り訂正復号部623では、基地局10からの送信レベル制御を行うためのTPC(Transmit Power Control)制御信号が抽出され、このTPC制御信号は制御部65へ出力される。また、復調された受信信号は、端末I/F部63を介して、IDU60に接続された加入者端末70へ出力される。
一方、加入者端末70からIDU60に入力される送信信号は、変調/誤り訂正符号化部641に入力され、例えばリードソロモン符号等の誤り訂正符号化が行われ、変調される。そして、周波数変換部642で送信用IF信号に周波数変換される。ここで、送信用のIF信号は、前にも説明したように、受信用のIF信号とは異なる周波数帯域になっている。
そして、可変減衰部643で、基地局10から送信された送信レベル制御を行うためのTPC制御信号に基づいたレベルにレベル制御され、IDU多重分離部61に入力される。ここで、電源電圧等と多重化され、同軸ケーブル50に入力される。
同軸ケーブル50を介してODU40に伝送された送信IF信号は、ODU多重分離部44で電源電圧等と分離され、送信用ATT431に入力される。
ここで、送信用ATT431は、制御部41からの制御に基づくレベルに減衰するもので、このレベルを調整することにより、ODU40の送信ゲインを調整することができる。
送信用ATT431で所望のレベルに減衰された送信IF信号は、周波数変換部432に入力される。そして、送信IF信号は、周波数変換部432により、局部発振器461からハイブリッド回路462を介して出力される局発信号とミキシングすることにより、無線周波数帯信号に周波数変換され、送信用アンプ433で所定電圧に増幅された後、送信用フィルタ434を介して、アンテナ30から基地局10に対して出力される。
次に、加入者無線局20Aの電源断操作通知制御について説明する。
加入者無線局20Aでは、加入者により電源がオフ(電源断)された場合、電源断操作による電源断であることを基地局10に通知する機能を有する。
まず、加入者無線局20Aの電源をオフにしようとする場合、加入者は、IDU60に接続された加入者端末70において、電源オフ操作を行なう。
この電源オフ操作により、加入者端末70では、電源断操作信号が生成され、該電源断操作信号は端末I/F部63を介してIDU60の制御部65に入力される。
制御部65は、上記電源断操作信号が入力されると、該電源断操作信号をIDU多重分離部61、同軸ケーブル50を介してODU40に転送する。
また、制御部65は、上記電源断操作信号が入力されると、該信号に基づき電源スイッチ67をオフ状態(開成状態)に切り換える。
この切り換え制御により、それまで外部電源端子68から電源スイッチ67を介してAC/DCコンバータ66に供給されていたAC電源が絶たれ、該AC/DCコンバータ66からIDU60内各部へのDC電源の供給が停止する。また、これと同時に、AC/DCコンバータ66からIDU多重分離部61、同軸ケーブル50を介してのODU40への直流電源電圧の供給も停止する。
一方、ODU40では、IDU60の制御部65から転送される電源断操作信号が、ODU多重分離部44で分離され、制御部41の電源断操作認識部411に取り込まれる。
ここで、電源断操作認識部411は、取り込まれた上記電源断操作信号に基づき当該加入者無線局20Aの電源断操作が実施されたことを認識する。
また、ODU40では、IDU60から同軸ケーブル50を介して供給される直流電源電圧をODU多重分離部44で分離してDC/DCコンバータ45に引き込み、所定の直流電圧に変換して各部に供給すると共に、このDC/DCコンバータ45に引きこまれる直流電源電圧がオンかオフかを電源監視部47で監視している。
この間、上述した加入者端末70での電源オフ操作によりIDU60に入力されてくる電源断操作信号に基づく制御部65での電源スイッチ67の切り換え制御によりAC/DCコンバータ66からの直流電源電圧の供給が停止すると、ODU40側においてもODU多重分離部44からDC/DCコンバータ45への直流電源電圧の引き込みが停止する。
電源監視部47は、この状態を直流電源断であるとして検出し、その検出結果を制御部41の電源断認識部412に送出する。電源断認識部412は、電源監視部47での電源オフの監視結果を基に電源断となったことを認識する。
ここで、制御部41の電源断通知処理部413は、電源断操作認識部411で“電源断の操作がなされたこと”が認識され、電源断認識部412で“電源断となったこと”が認識されているかどうかをチェックし、当該2つの条件を満足した場合、電源断操作通知信号を生成し、該電源断操作通知信号を送信系を介してアンテナ30より基地局10に送出する。
なお、ODU40において、IDU60からの直流電源の供給が停止し、DC/DCコンバータ45から各部への電源供給ができなくなった後は、制御部41、電源監視回路46及び送信系に対して予備電源47から給電を行なって基地局10に対する上述した電源断操作通知制御を維持する。この予備電源48は、例えば、スーパーキャパシタ等を用いて実現できる。
図4は、ODU40の制御部41内の電源断通知処理部413による電源断通知制御動作を示すフローチャートである。
電源断通知処理部413は、電源監視部47での電源監視結果に基づき電源が断したかどうかを監視している(ステップS401)。
電源断が検出された場合(ステップS401YES)、それ以前に、当該加入者無線局20Aの電源断操作がなされたことが電源断操作認識部412により既に認識されているかどうかをチェックする(ステップS402)。
ここで、電源断操作が既になされていれば(ステップS402YES)、当該加入者無線局20Aが電源断操作により電源断となったことを通知するための電源断操作通知信号を生成して基地局10に送出する(ステップS403)。
これに対し、電源断操作が未だなされていない場合(ステップS402NO)、故障等による異常な電源断であると判断し、その旨を通知するための異常電源断通知信号を基地局10に送出する(ステップS404)。
このように、第1の実施例では、加入者無線局20Aで電源断操作により電源断となった場合、その旨を電源断操作通知信号により基地局10に通知する。
一方、基地局10では、加入者無線局20Aから上記電源断操作通知信号を受信すると、該電源断操作通知信号を公衆網81を介してNMS90に伝送する。
NMS90は、基地局10から受信される上記電源断操作通知信号に基づき、該当する加入者無線局20Aで電源断操作により電源断がなされたものと認識し、当該認識結果が分かるような所定の態様でその旨を報知する。
これにより、NMS90では、各加入者無線局20Aの電源断操作による電源断を故障等に起因する電源断とは区別して認識でき、電源断操作により電源断とされた加入者無線局20Aを利用する加入者宅に電源断異常の問合せを行なわずに済むようになる。
第2の実施例:
図5は、第2の実施例に係わる加入者無線局20Bの詳細構成を示すブロック図である。
第2の実施例に係わる加入者無線局20Bは、本実施例特有の構成として、IDU60の制御部65内に、初期設定部651、初期設定データ格納部652、初期設定制御部653を備えている。
それ以外の基本構成部分については、第1の実施例に係わる加入者無線局20AのODU40から電源監視回路47、予備電源48、電源断認識部411、電源断操作認識部412、電源断通知処理部413を省いたものと同等である。また、この基本構成部分による動作も第1の実施例に係わる加入者無線局20Aの該当部分による動作と同等である。
第2の実施例に係わる加入者無線局20Bは、電源投入後、基地局10との通信開始前に、当該基地局10との通信を可能にする通信パラメータ等のデータの初期設定処理に特徴を有するものである。
すなわち、第2の実施例に係わる加入者無線局20Bでは、前回の初期設定時に設定された通信パラメータ等のデータを格納しておき、電源が投入された場合、格納しておいた前回初期設定データ(以下、前データという)を参照して今回の通信にも適用可能かどうかを判断し、適用可能でないと判断された場合にのみ後述する通常のサーチ・照合ルーチンを経て適用可能なデータを取得し、初期設定するようにしたものである。
図5に示す構成において、IDU60の制御部65内に設けられる初期設定部651は、基地局10との通信に必要な各種通信パラメータ等のデータを後述する通常のサーチ・照合ルーチンを経て順次取得して初期設定する手段である。
初期設定データ格納部652は、前回の初期設定時に設定された通信パラメータ等のデータ(前データ)を格納する手段である。
初期設定制御部653は、電源投入後、初期設定データ格納部652に格納されている前データを参照して今回の通信にも適用可能か否かを判断し、前データが適用可能であれば当該前データをそのまま設定し、適用可能でない場合は、初期設定部651を起動し、該初期設定部61での通常のサーチ・照合ルーチンにより取得されたデータを初期設定する制御を行なう手段である。
次に、本実施例に係わる加入者無線局20Bの初期設定動作について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
なお、図6において、ステップS610に示す“通常のサーチ・照合ルーチン”は、この種の装置で従来一般に行われている初期設定処理ルーチンに相当するものである。
本実施例に係わる加入者無線局20Bでは、この通常のサーチ・照合ルーチンを、前データが適用できないと判断された場合しか行なわないが、ここでは、説明の便宜上、当該加入者無線局20Bを使って従来一般的な通常のサーチ・照合ルーチンについて先に説明する。
まず、加入者無線局20Bにおいて、加入者によりIDU60の電源スイッチ67を電源オンの状態にする操作がなされると、電源端子68からAC/DCコンバータ66にAC電源が供給され、AC/DCコンバータ66ではこのAC電源が直流電源電圧に変換されて当該IDU60内の各部に供給される。
また、IDU60のAC/DCコンバータ66からの直流電源電圧はIDU多重分離部61、同軸ケーブル50、ODU多重分離部44を介してODU40のDC/DCコンバータ45に供給され、該DC/DCコンバータ45で所定の電圧に変換されてODU40の各部に供給される。
以上の如くに電源投入がなされ、当該加入者無線局20B(IDU60及びODU40)が動作可能になると、IDU60の制御部65(初期設定部651)は、基地局10からの電波を受信可能な状態を確立すべく、ダウンストリーム設定処理を実施する。
このダウンストリーム設定処理において、初期設定部651は、(1)受信周波数のサーチ、(2)周波数帯域幅の照合、(3)変調方式の照合といった一連の処理を順次に実施し、これらサーチ及び照合結果に基づき基地局10との通信に適用可能な各データ(受信周波数、周波数帯域幅、変調方式)の設定を行なう。
具体的には、受信周波数については、受信系の周波数変換部423の周波数(ch:チャネル)を順に代えて受信動作させるといった方法で、1チャネルからnチャネルまで順次サーチしていき、復調/誤り訂正復号部623で信号が受信できたチャネルを受信周波数として設定する。
また、周波数帯域幅の照合並びに変調方式の照合は、上記設定チャネルで受信された信号を監視することにより周波数帯域幅及び変調方式を特定して設定する。
上記ダウンストリーム設定処理により上記各データ設定が完了し、基地局10からの電波を正常に受信できるようになると、次に、初期設定部651は、アップストリーム設定処理に移る。
このアップストリーム設定処理において、初期設定部651は、基地局10への送信電波に関する通信パラメータとして、例えば、(4)送信周波数、(5)スパン等価アッテネータ値(基地局10との伝播距離の違いにより生ずる伝播損を各加入者無線局20B毎に同等レベルに保つための値)、(6)ケーブル等価アッテネータ値(ODU60とIDU40とを接続する同軸ケーブル50の長さに違いによって生じるケーブル損を各加入者無線局20B毎に同等レベルに保つための値)、(7)送信出力電力の設定処理を順次実施する。
なお、これら(4)〜(7)等の各パラメータの設定処理は、基地局10からの受信電波に含まれる設定情報に基づいて行なわれる。
具体的には、送信周波数については、上記設定チャネルの下で復調/誤り訂正復号部623で受信された信号に含まれる該当設定情報に基づき、送信系の周波数変換部432の周波数を可変設定する。
同様に、スパン等価アッテネータ値及びケーブル等価アッテネータ値については、上記受信信号に含まれる該当設定情報に基づき、受信用ATT424並びに送信用ATT431の減衰レベルをそれぞれ所定の受信ゲイン並びに送信ゲインが得られるように調整する。
同じく、送信出力電力については、上記受信信号に含まれる該当設定情報に基づき、送信用アンプ433の利得を調整する。
上記ダウンストリーム設定処理及びアップストリーム設定処理を経て受信及び送信に必要なデータ並びに通信パラメータの初期設定が全て完了すると、基地局10との間の回線が確立され、上記初期設定されたデータ並びに通信パラメータに従って基地局10との間の通信が開始される。
以上、本実施例の加入者無線局20Bを使って説明したように、この種の従来一般的な加入者無線局20では、電源が投入される度に、上記一連のダウンストリーム設定処理並びにアップストリーム設定処理を行なって例えば(1)〜(7)の各初期設定項目データを最初から順番に設定しなくてはならず、通信開始までに長い時間(例えば、約5分)待たされることになった。
これに対して、第2の実施例に係わる加入者無線局20Bの実際の動作では、前回の初期設定時に設定された通信パラメータ等のデータをIDU60の制御部65内の初期設定データ格納部652に格納しておき、電源が投入された場合、同制御部65内の初期設定制御部653が、初期設定データ格納部652に格納されているデータ(前データ)を参照して今回の通信にも適用可能かどうかを判断し、適用可能でないと判断された場合にのみ上述した通常のサーチ・照合ルーチンを経て適用可能なデータを取得し、初期設定するように制御する。
ここで、再び、図6に戻り、第2の実施例に係わる加入者無線局20Bにおける通信パラメータの初期設定動作について説明する。
この加入者無線局20Bにおいて、IDU60の制御部65(初期設定制御部653)は、上述した手順でIDU60の電源が投入されたか否かを監視している(ステップS601)。
ここで、電源が投入されたことが認識されると(ステップS601YES)、初期設定制御部653は、初期設定制御を開始する。ここでは、まず、最初の初期設定項目を選定し(ステップS602)、該初期設定項目について初期設定データ格納部652に格納されている前データを参照する(ステップS603)。
次に、初期設定制御部653は、この参照した前データを設定し(ステップS604)、この前データが今回の通信パラメータとしても適用可能であるかどうかを判定する(ステップS605)。
ここで、前データが適用可能であれば(ステップS605YES)、次いで初期設定制御部653は、初期設定項目が全て終了したかどうかをチェックする(ステップS606)。
そして、初期設定項目が全て終了していない場合(ステップS606NO)は、次の初期設定項目を選定したうえで(ステップS608)、当該初期設定項目について初期設定データ格納部652に格納されている前データを参照する(ステップS603)。
更に、この参照した前データを設定し(ステップS604)、この前データが今回の通信パラメータとしても適用可能であるかどうかを判定する(ステップS605)。
ここで、前データが適用可能であれば(ステップS605YES)、上述したステップS606以降の処理を続ける。
一方、前データが適用可能でない場合(ステップS605NO)、初期設定制御部653は、初期設定部651を起動して当該初期設定項目についての通常のサーチ・照合ルーチンを実行させる(ステップS610)。
そして、当該サーチ・照合ルーチンで取得されたデータ(通信パラメータ)を初期設定したうえで(ステップS611)、ステップS606の処理に戻る。
なお、ステップS611でデータを初期設定した場合には、当該初期設定したデータを初期設定データ格納部652に格納する処理も併せて行なう。
その後、初期設定制御部653は、初期設定項目が終了していないと判断される間(ステップS606NO)、ステップS608→S603〜S605→S606若しくはステップS608→S603〜S605→S610→S611→S606の処理を繰り返し実施し、初期設定項目が全て終了した場合(ステップS606YES)、それまでに設定されたデータ(通信パラメータ)を用いて基地局10との通信開始する(ステップS607)。
この第2の実施例に係わる初期設定制御によれば、電源投入後、前回の初期設定時に初期設定データ格納部652に格納された各初期設定項目毎の前データを参照して今回の通信パラメータとして適用できるかどうかを判断し、適用可能でない場合のみ初期設定部651での通常のサーチ・照合ルーチンを経て取得されたデータを設定するようにしているため、前データが適用できる場合は、当該初期設定項目についての通常のサーチ・照合ルーチン(図6におけるステップS610,S611(図中、点線で示す部分))を省略できる。
一例を挙げると、受信周波数については、前回の初期設定で設定された例えば3チャネルを設定して、これが適用可能な場合には、そのまま次の初期設定項目の設定へと進むことができ、1チャネルからnチャネルまで順次サーチしていくといった煩雑さがなくなる。
ここで、本実施例の加入者無線局20Bは一般家庭向けのものを想定しており、その運用形態を考えると、加入者が節電等を目的として、加入者端末70から通信サービスを利用する期間だけ加入者無線局20Bの電源を投入する場合が想定される。
この場合には、システム構成、設置環境条件のいずれも変化していない訳であるから、殆どの初期設定項目で前データが適用可能となり、これら初期設定項目分の通常のサーチ・照合ルーチンを省略して初期設定時間を大幅に短縮できる。
従って、上記目的に沿って、加入者が加入者無線局20Bの電源の入り切り(オン/オフ)を頻繁に行なう運用環境においても、電源投入(電源オン)の度に、通信開始までに数分間も待たされるといった煩わしさを解消できる。
また、移設等、設置環境条件が変化した加入者無線局20Bでは、前回設定されたデータ(前データ)は適用できなくなり、通常のサーチ・照合ルーチンが増える可能性が高いものの、適用できる前データが1つでも存在する限り、その分の初期設定時間の短縮効果が見込める。
この他、本発明は、上記し、且つ図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
例えば、第1の実施例において、電源断操作を認識する方法は、加入者端末70で電源断操作を行ない、この操作により加入者端末70から送られてくる電源断操作信号に基づき認識する方法に限らず、IDU60で電源スイッチ67がオフ操作されたことを検出してODU40に通知する等、他の適宜な方法でも良い。
また、上記の説明では、第1の実施例に係わる電源断操作通知機能と、第2の実施例に係わる初期設定制御機能とを別々に持つ加入者無線局の構成について述べたが、これら電源断操作通知機能と初期設定制御機能とを併有する構成としても良い。