JP4458684B2 - 電磁波吸収部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、マイクロ波、ミリ波集積回路等に組み込まれる整合回路に用いられる電磁波吸収部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
非放射性誘電体線路(Nonradiative Dielectric Waveguide,以下、単にNRDガイドという。)は、間隔dの平板導体間に誘電体を介装し、平板導体間の間隔dを、d<λ/2(λ:信号波長)となるように設計することによって、外部からNRDガイドへのノイズの侵入をなくし、かつ外部への高周波信号の放射をなくして信号を伝送できるものである。
【0003】
従来、回路を設計する上では、NRDガイドに終端が存在する場合があり、その場合、終端部に反射を防ぐターミネータ(無反射終端器)などを設けることが行われている。また、高周波デバイスを保護するために、入力信号の強度を減衰させる場合にも同様のことが行われている。
【0004】
例えば、NRDガイド用のターミネータとしては、図4(a)の電磁波吸収部材を用いた従来の整合回路40のように、平板導体43間にある誘電体42の終端部に樹脂からなる誘電体材料中に金属抵抗体粉や電波吸収体粉を分散混合した電磁波吸収部材41aを配置したもの(特開平7−94916号公報)や、図4(b)のように誘電体42の終端部に金属抵抗体や電磁波吸収部材41bを貼付したもの(特開平9−181505号公報、”非放射性誘電体線路を用いたミリ波集積回路”米山 務、電子情報通信学会誌C−I,vol,J73,No.3,P87〜94,1990、”35GHz帯NRDガイド送受信機の小型化”内田 偉津美他、電子情報通信学会誌C−I,vol,J76,No.7,P270〜276,1993)が知られている。
【0005】
この種の整合回路は、樹脂系の誘電体中に異なる材質、例えば、金属、磁性体またはカーボン等を存在させることにより、電気抵抗による損失や誘電損失、磁気損失によって高周波信号を減衰させるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図4(a)のように、樹脂からなる誘電体材料中に金属抵抗体粉や電波吸収体粉を混合した電磁波吸収部材41aを配置する方法では、誘電体42の誘電率が2〜4と低く、金属抵抗体粉や電波吸収体粉の誘電率が高いために、誘電体42と電磁波吸収部材41aとの間で誘電率が極端に変化し、インピーダンスの不整合が起こり、高周波信号の反射の原因となっていた。
【0007】
すなわち、高周波信号を伝送する整合回路40においては、誘電体42中の組織内にて誘電率が急激に変化してインピーダンスの急激な変化が生じると、その部分で高周波信号の反射が生じ、入力信号波と反射信号波とが合成されて、定在波が発生し、高周波回路に悪影響を及ぼすという問題があった。しかも、この整合回路では、金属抵抗体粉や電波吸収体粉を混在させた電磁波吸収部材41aを配置するにあたり、線路に対してインピーダンスの不整合を解消すべく、図4(a)に示すように複雑な形状にて配置する必要があり、組み立てが難しく、量産性を妨げていた。
【0008】
また、図4(b)のように誘電体42に電磁波吸収部材41bを貼付する方法では、上記と同様の理由でインピーダンスの急激な変化を抑制するために複雑な形状の電磁波吸収部材41bを精度良く貼付する必要があるため、量産性が低く、コスト高を招いていた。また、製造時や運搬時等の取り扱いにより、電磁波吸収部材41bがずれたり、剥離したりして所望の特性が得られない等の問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、良好な減衰特性を有するとともに、簡単な構造で容易に作製できる整合回路に用いられる電磁波吸収部材を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の電磁波吸収部材は、一対の平板導体間に誘電体を配置し、該誘電体の終端部に電磁波吸収部材を配置してなる整合回路に用いられる前記電磁波吸収部材であって、合成樹脂にカーボンおよび軟磁性粒子のうち少なくとも1種を53〜80体積%分散含有し、気孔率が5.1〜14.5%であることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明の電磁波吸収部材は、上記構成において、前記誘電体との境界部に向かって次第に前記気孔率を高くしたことを特徴とするものである。
【0012】
【作用】
本発明によれば、例えば、NRDガイドにおいて、誘電体の終端部に配置されている電磁波吸収部材によって高周波信号を減衰し、信号強度を低下することができる。しかも、電磁波吸収部材の気孔率を5.1〜14.5%とすることにより、誘電体との誘電率の差を小さくすることができる。
【0013】
例えば、誘電体の誘電率が2〜10程度であれば、電磁波吸収部材の気孔率を調整することによって、電磁波吸収部材の誘電率を誘電体の誘電率と容易に同程度にすることができるため、誘電体と電磁波吸収部材との境界部において、誘電率が極端に変化することがないために、インピーダンスの不整合による高周波信号の反射がなく、高周波回路へ影響を及ぼすことを防止できる。また、電磁波吸収部材中のカーボン、軟磁性粒子の含有量を制御することにより、容易に減衰定数を制御することができるために、容易に所望の信号減衰特性を得ることができる。
【0014】
さらに、電磁波吸収部材の気孔率を、誘電体との境界部に向かって次第に高くすることによって、インピーダンスの不整合をより小さくでき、高周波回路への影響がより低減される。
【0015】
なお、かかる電磁波吸収部材の形成にあたり、粉末加圧成形法を用いて部分的に成型圧縮比を変えることで、電磁波吸収部材の気孔率を部位によって変化する構造に容易に形成できるために、単純な設備で容易に作製することが可能である。
【0016】
さらに、電磁波吸収部材は開気孔も存在するため、アンカー効果により接着剤でも強固に接合できることから、回路設計の自由度が向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態としてNRDガイドについて説明する。
【0018】
本発明の電磁波吸収部材を用いる整合回路は、例えば図1に示す一対の平板導体13間に、誘電体12を配置し、誘電体12の終端に電磁波吸収部材11を一対の平板導体13によって挟持してなる減衰領域が形成されている。つまり、本発明の電磁波吸収部材11を用いる整合回路10は、少なくとも一般線路部を形成するための誘電体12と、信号減衰領域を形成するための電磁波吸収部材11とから形成されている。
【0019】
平板導体13は、高い電気伝導度を有すること、および加工性の点で、Cu、Al、Fe、SUS(ステンレス)、Ag、AuまたはPt等の導体板、あるいはこれらの材料からなる導体層を表面に形成したセラミックス、樹脂等の絶縁体により形成される。
【0020】
一方、誘電体12は、誘電特性、加工性および強度などの点で、コーディエライト、アルミナまたはガラスセラミックス等のセラミックス、または四フッ化エチレン樹脂等の合成樹脂によって形成されるものである。
【0021】
また、電磁波吸収部材11は、図1(b)に示すように合成樹脂11aにカーボン11bおよび軟磁性粒子11cのうち少なくとも1種を53〜80体積%分散含有したものである。カーボン11bまたは軟磁性粒子11cの含有量が53体積%未満であると保形ができず、逆に、80体積%を超えると結合剤となる合成樹脂11aが少ないため強度が著しく低下する。また、カーボン11bまたは軟磁性粒子11cは、電磁波吸収部材11の誘電損失、磁気損失を高めるために含有するものである。他の粒子では、損失が低いことから、十分に吸収することができない。
【0022】
なお、カーボン11bおよび軟磁性粒子11cのうち少なくとも一種の含有率は、電磁波吸収部材11の断面3箇所において、反射電子像の写真を画像解析するか、写真をトレースし、写真中のカーボン11bおよび軟磁性粒子11cの面積占有率を測定し、この面積占有率の平均値をカーボン11bおよび軟磁性粒子11cの含有率と定義する。画像解析する場合は、観察面を加工する際にカーボン11bおよび軟磁性粒子11cの変形や脱粒などの影響を受けない様にすることが必要である。なお、観察する断面3箇所は、誘電体12と電磁波吸収部材11との境界部を基準面とし、基準面から電磁波吸収部材11の最も遠い位置までの距離をAとした場合、基準面から0.25A、0.5Aおよび0.75Aの距離にある断面とする。
【0023】
さらに、電磁波吸収部材11は、誘電率、加工性および強度などの点で、気孔率が5.1〜14.5%であることが重要である。気孔率が5.1%未満であると、電磁波吸収部材11の誘電率が、誘電体12の誘電率より大きくなることから、誘電体12と電磁波吸収部材11との境界部で、インピーダンスの不整合が生じ、その部分で高周波信号の反射、定在波が発生してしまう。逆に、気孔率が14.5%を超えると、強度が急激に低下するため構造部材としての使用が困難となる。
【0024】
ここで、気孔率とは、電磁波吸収部材11内の平均気孔率のことをいう。気孔率の測定は、カーボン11bまたは軟磁性粒子11cの含有率の測定と同様に、気孔11dの面積占有率より算出する。
【0025】
このように本発明の電磁波吸収部材11は所定の気孔率として誘電体12との誘電率の差を小さくできることから、図4の従来例のような複雑な形状とする必要がなく簡単な構造とすることができる。
【0026】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
例えば図2に示す電磁波吸収部材21を用いる整合回路20は、一対の平板導体23間に、誘電体22を配置し、誘電体22の終端に電磁波吸収部材21を一対の平板導体13によって挟持したものであり、電磁波吸収部材21は、合成樹脂21a内にカーボン21bおよび軟磁性粒子21cの少なくとも一種を分散含有し、気孔21dを多く有する部分からなる高気孔率領域21eと、低気孔率領域21fとをくさび型に配置することによって、境界部に向かって、気孔21dを次第に多くしたものである。このようにすることによって、電磁波吸収部材21と誘電体22との境界部のインピーダンスの不整合を抑制しつつ、電磁波吸収部材21の減衰定数をしだいに高めることができるため、電磁波吸収部材21の長さを短くすることができる。
【0027】
本発明の電磁波吸収部材11、21を構成する合成樹脂11a、21aとしては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂6,66、ポリアミド樹脂11,12、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリブチレンテフタレート、ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、メチルペンテンポリマー等の樹脂を使用することができ、これらの中でも耐熱性、寸法安定性、強度等の点からフェノール樹脂、エポキシ樹脂が好適である。
【0028】
なお、電磁波吸収部材11、21は電磁波を熱に変換することで電磁波の減衰特性を得るため、ガラス転位温度が100℃以上の合成樹脂を用いることが好ましい。ガラス転位温度が100℃未満の合成樹脂をマトリックスとして選定すると、吸収した電磁波を変換した熱が原因で合成樹脂が変質、熱変形し、信頼性が低下するため、本発明の材料としては適当でない。
【0029】
また、電磁波吸収部材11、21は熱膨張による寸法変化を抑えるために、合成樹脂11a、21aの線膨張係数は20×10−5未満であることが好ましい。線膨張係数は20×10−5以上の合成樹脂をマトリックス樹脂として選定すると、大気中の温度変化により寸法がばらつくため、本発明の材料としては適当でない。
【0030】
また、電磁波吸収部材11、21は吸水による誘電率の変化を抑えるために、合成樹脂11a、21aの吸水率は0.2%未満であることが好ましい。吸水率が0.2%以上の合成樹脂をマトリックス樹脂として選定すると、大気中の湿度変化により誘電率がばらつくため、本発明の材料としては適当でない。
【0031】
なお、必要に応じて公知の硬化剤、硬化助剤、滑剤、可塑剤、分散剤、離型剤および着色剤等を少量添加しても何ら差し支えない。
【0032】
また、本発明の電磁波吸収部材11、21中に充填するカーボン11b、21bとしては、例えば、PAN系カーボンファイバー、ピッチ系カーボンファイバー、黒鉛およびカーボンマイクロコイル等があり、本発明においてはこれらのうち1種類以上を混合して使用することができる。
【0033】
また、本発明の電磁波吸収部材を用いる整合回路に配置される電磁波吸収部材11、21中に充填する軟磁性粒子11c、21cとしては、例えば、フェライト粒子としては、Ni−Zn系フェライト、Ni−Zn−Cu系フェライト、Mn−Zn系フェライトおよびBaフェライト等があり、Fe系合金粒子としてパーマロイ、フェロシリコン、センダストおよびアモルファス合金等があり、本発明においてはこれらのうち1種類以上を混合して使用することができる。
【0034】
また、カーボンおよび軟磁性粒子のうち少なくとも1種を混合して使用することができる。
【0035】
さらに、カーボン11b、21bおよび軟磁性粒子11c、21cの平均粒径は、1μm以上300μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下とすることが好ましい。平均粒径が1μmよりも小さくなるとコストアップとなり経済的に合わなくなるためであり、また、300μmより大きくなると、カーボン11b、21bおよび軟磁性粒子11c、21cの表面積が小さくなり、加熱硬化時に成形体の変形、ダレが発生し易くなるため、本発明の材料としては適当でない。
【0036】
また、カーボン11b、21bおよび軟磁性粒子11c、21cの最大粒径は500μm以下、好ましくは300μm以下とすることが好ましい。最大粒径が500μmより大きくなると、合成樹脂11a、21aとの混合時における分散性が悪いため、強度を十分に保つことができないと同時に、後述する粉末加圧成形後の離型時において欠けが発生し易くなるため、本発明の材料としては適当でない。
【0037】
なお、カーボン11b、21bおよび軟磁性粒子11c、21cの平均粒径とは、各カーボンおよび軟磁性粒子の前後、左右、上下の寸法を各々測定した値の平均値であり、最大粒径とは、前後、左右、上下の寸法を測定した時に最も長い部分の長さのことである。電磁波吸収部材11、21からカーボン11b、21bおよび軟磁性粒子11c、21cの粒径を求める時には、便宜的に電磁波吸収部材11、21の任意の表面又は断面を画像解析装置で分析する。
【0038】
本発明の電磁波吸収部材11、21を用いる整合回路10、20は、以下の方法によって作製される。まず、誘電体(比誘電率2〜12)12は公知のセラミックスの製法を用いて作製される。
【0039】
また、合成樹脂にカーボンおよび軟磁性粒子のうち少なくとも一種を配合する方法は特に制限は無く、公知の方法を採用することができる。例えば、熱硬化樹脂に軟磁性粒子をミキサーで混合し、ブラベンダーで混練した後、粉砕する方法や、あるいは、配合物を加熱ロールで溶融混練後、粉砕する方法等があげられる。また、必要に応じて、所定の粒度になるように造粒し、成形に用いても良い。成形は、公知の粉末加圧成形法を用いることができるが、気孔を形成することが必要であるため、粉末加圧成形後、常圧100℃〜250℃で熱処理を行い、重合反応を進める。このとき、合成樹脂中の揮発成分が電磁波吸収部材の表面から抜けきれずに気孔が形成される。
【0040】
さらに、図2に示す電磁波吸収部材21のように気孔率の異なるものは、図3に示す粉末加圧成形用金型30を使用することによって、作製することができる。この粉末加圧成形用金型30は上金型31とダイス32と分割した下金型33a、33bとからなり、原料34を粉末加圧成形用金型30内に充填する際、下金型33bの充填深さを下金型33aよりも深くする。次に、上金型31をダイス32内に押し込むと同時に、下金型33a、33bを上側に押し上げ、図3(b)のように下金型33a、33bの上面の高さ位置を一致させ、原料34を圧縮する。このようにすることによって、充填密度を異ならせ、図2(b)のように、電磁波吸収部材21内に高気孔率領域21eと低気孔率領域21fとを形成し、気孔率を一端面に向かって次第に高くすることができる。
【0041】
誘電体12、22と電磁波吸収部材11、21とを上記のようにして個別に作製し、接着剤等で接続する。
【0042】
上記のようにして得られた誘電体12、22および電磁波吸収部材11、21を、一対の平板導体13、23間に配設することにより、容易にかつ優れた特性を有する整合回路10、20が得られる。なお、平板導体13、23と誘電体12、22および電磁波吸収部材11、21とを所望によって接着剤等で接着することにより、取り扱い等による位置ずれを防ぐことができる。
【0043】
このような整合回路は、マイクロ波、ミリ波の高周波帯域で好適に使用可能である。例えば、NRDガイド用ターミネータ、減衰素子、ダミーロード、回路基板、マイクロ波およびミリ波パッケージ等に用いることができる。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
誘電体12としてコーディエライトを用い、電磁波吸収部材11は、合成樹脂としてエポキシ樹脂、カーボンとして黒鉛、軟磁性粒子としてBaフェライトを所定の比率で混合した造粒粉を粉末加圧成形した後、加熱硬化して作製した。誘電体12の寸法は高さ2.25mm×幅1mm×長さ70mmであり、電磁波吸収部材11の寸法は高さ2.25mm×幅1mm×長さ30mmである。
【0045】
これらを、縦100mm×横100mm×厚み8mmの2枚の銅からなる平板導体間に接着剤を用いて配置し、図1の整合回路10とした。そして、この整合回路に対して、ネットワークアナライザを用いて60GHzにおける入力信号に対する反射率を測定し、表1に示した。
【0046】
なお、得られた誘電体について60GHzにおける比誘電率をネットワークアナライザ(アジレントテクノロジー社製)を用いて誘電体共振器法により測定したところ、比誘電率5.1であった。また、得られた電磁波吸収部材の比誘電率については、ネットワークアナライザを用いて導波管サンプルホルダ法により、誘電体との境界部の面から0.5mm厚さの部分のみを測定した。また、電磁波吸収部材の気孔率については、誘電体との境界部を基準とし、最も遠い位置までの距離をAとした場合の、0.25A、0.5Aおよび0.75Aの距離にある断面での測定結果とした。但し、測定断面は、境界部の断面に対して平行であり、境界部に近い断面より、気孔率1、2、3と明記する。また、強度については、3点曲げ強度を測定した(JIS K 6911に準拠)。
【0047】
表1の結果から明らかなように、気孔率が14.5%を超える試料No.10については、強度が著しく低下することから使用することができない。また、気孔率が5.1%を下回るNo.11は逆にコーディエライトより比誘電率が高くなることから反射率が−0.9dBと高くなる。
【0048】
また、黒鉛とBaフェライトとの充填率の合計が53体積%を下回る試料No.8においては、樹脂量が多いことから、加熱硬化時に合成樹脂が軟化し保形することができなかった。また、黒鉛とBaフェライトとの充填率の合計が80体積%を超える試料No.9については、樹脂量が少ないため、黒鉛と、Baフェライトとが十分に結合できず粉末加圧成形できなかった。
【0049】
一方、本発明の範囲内の試料No.1〜7については、反射率が−4.6dB以下と小さくなり、特に電磁波吸収部材の気孔率が誘電体と電磁波吸収部材との境界部に向かって次第に高くなる試料No.5〜No.7については、反射率が−11.5dB以下と良好な減衰特性を示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、一対の平板導体間に誘電体を配置し、誘電体の終端部に電磁波吸収部材を配置してなる整合回路に用いられる電磁波吸収部材であって、合成樹脂にカーボンおよび軟磁性粒子のうち少なくとも1種を53〜80体積%分散含有し、気孔率が5.1〜14.5%であることにより、複雑な構造や高い精度を必要とせずに容易に作製でき、安価で量産性の高い電磁波吸収部材を用いた整合回路を作製することが可能である。また、誘電体と電磁波吸収部材との境界部でのインピーダンスの急激な変化がないため、境界部での反射の小さい優れた特性を有する電磁波吸収部材を用いた整合回路が得られる。さらに、電磁波吸収部材は、誘電体との境界部に向かって次第に気孔率を高くした構造にすることにより、整合回路の小型化ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明の電磁波吸収部材を用いる整合回路の一例を示す一部切り欠き斜視図、(b)は整合回路内に配置された電磁波吸収部材の一例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】 (a)は本発明の電磁波吸収部材を用いる整合回路の一例を示す一部切り欠き斜視図、(b)は整合回路内に配置された電磁波吸収部材の一例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図3】 (a)、(b)は本発明の電磁波吸収部材を用いる整合回路に配置する電磁波吸収部材を成形する金型の一例を示す断面図である。
【図4】 (a)、(b)は従来の電磁波吸収部材を用いた整合回路の一例を示す一部切り欠き斜視図である。
【符号の説明】
10、20、40・・・整合回路
11、21、41a、41b・・・電磁波吸収部材
12、22、42・・・誘電体
13、23、43・・・平板導体
11a、21a・・・合成樹脂
11b、21b・・・カーボン
11c、21c・・・軟磁性粒子
11d、21d・・・気孔
21e・・・高気孔率領域
21f・・・低気孔率領域
30・・・粉末加圧成形用金型
31・・・上金型
32・・・ダイス
33a、33b・・・下金型
Claims (2)
- 一対の平板導体間に誘電体を配置し、該誘電体の終端部に電磁波吸収部材を配置してなる整合回路に用いられる前記電磁波吸収部材であって、合成樹脂にカーボンおよび軟磁性粒子のうち少なくとも1種を53〜80体積%分散含有し、気孔率が5.1〜14.5%であることを特徴とする電磁波吸収部材。
- 前記誘電体との境界部に向かって次第に前記気孔率を高くしたことを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収部材。
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