以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態による光検出器5の外観を示す図である。
図1に示すように、光検出器5は、所定サイズの正方形の受光面を有する4つの受光領域A〜Dを、A〜Dの順で正方形状に配置してなる4分割受光部を備えている。各受光領域A〜Dはそれぞれ受光量(光ビームの強度を受光面で面積分して得られる値)に応じた振幅を有する信号を出力する。以下、受光領域A,B,C,Dの出力信号をそれぞれIA,IB,IC,IDとする。
さらに、光検出器5は、図1に示すように、受光領域α1,α2,α3を2つずつ備えている。これらの受光領域は、多層化光ディスクの層間にピークを有する層間指示信号を出力する層間指示信号出力用受光部を構成する。なお、以下で説明する層間指示信号出力用受光部の数・形状・大きさ・配置はあくまで一例であり、どのような層間指示信号を作りたいかに応じて層間指示信号出力用受光部は様々な形状を取り得る。
各受光領域α1,α2,α3の面積は受光領域A〜Dの面積と同一である。ここでは、受光領域α1,α2は受光領域A〜Dに対して45度傾いた正方形である。一方、受光領域α3は4分割受光部の一辺を底辺とする二等辺三角形となっている。
受光領域α1,α2,α3は、光ビームが光検出器5上に生成するスポットの中心(=4分割受光部の中心)とは異なる位置に配置される。すなわち、スポットの中心と各受光領域α1,α2,α3との最小離隔距離は0より大きい。
図1の例では、2つある受光領域α1のうちの一辺の中点P1の位置は、4分割受光部の4頂点のうち受光領域Dの頂点と共通の頂点の位置と一致する。この場合の最小離隔距離は4分割受光部の中心から上記中点までの距離であり、受光領域Dの対角線長(>0)に等しい。また、2つある受光領域α1のうちの他方の一辺の中点の位置P2は、4分割受光部の4頂点のうち受光領域Bの頂点と共通の頂点の位置と一致する。最小離隔距離については上記同様である。このような配置の結果として2つの受光領域α1の受光量はほぼ一致するため、以下では2つの受光領域α1の出力信号をともにIα1とおく。
同様に、2つある受光領域α2のうちの一方の一辺の中点の位置P3は、4分割受光部の4頂点のうち受光領域Aの頂点と共通の頂点の位置と一致する。また、2つある受光領域α2のうちの他方の一辺の中点P4の位置は、4分割受光部の4頂点のうち受光領域Cの頂点と共通の頂点の位置と一致する。このような配置の結果として2つの受光領域α2の受光量はほぼ一致するため、以下では2つの受光領域α2の出力信号をともにIα2とおく。
また、2つある受光領域α3のうちの一方の底辺S1は、4分割受光部の4辺のうち受光領域A,Dによって構成される辺と一致する。この場合の最小離隔距離は4分割受光部の中心から上記底辺の中点までの距離であり、受光領域Dの一辺の長さ(>0)に等しい。また、2つある受光領域α3のうちの他方の底辺S2は、4分割受光部の4辺のうち受光領域B,Cによって構成される辺と一致する。最小離隔距離については上記同様である。このような配置の結果として2つの受光領域α3の受光量はほぼ一致するため、以下では2つの受光領域α3の出力信号をともにIα3とおく。
図2(a)(b)はそれぞれ、図1の光検出器5を用いた場合のプルイン信号PI((a)の破線)、層間検出用信号PI'((a)の実線)、及びフォーカス誤差信号FE((b)の実線)の時間変化を示すグラフである。また、図3(a)〜(b)はそれぞれ、図2(b)の時刻(1)〜(3)に光ビームが形成するスポットの形状を示している。なお、時刻(2)は対物レンズが層間のちょうど中間点にある時刻であり、時刻(1)及び(3)はそれぞれ、時刻(2)から所定時間前及び所定時間後の時刻である。
図2及び図3には、説明を簡単にするため2層分(L1及びL2)の信号及びスポットみを示している。また、図2は対物レンズを最端位置から一定速度で移動させた場合の各信号の時間変化を示している。
また、本実施の形態では、光ディスクとして、図56で示した例による光ディスクよりも層間距離が短いものを用いている。そのため、図2では、図56に比べて合焦ポイント間の距離が接近している。
図2(a)の破線で示されるプルイン信号PIは式(1)で表される信号である。図2の場合においては、プルイン信号PIは層間でも所定値SL1以下とはならない。また、図2(b)の実線で示されるフォーカス誤差信号FEは式(2)で表される信号である。
PI=IA+IB+IC+ID ・・・(1)
FE=(IA+IC)−(IB+ID) ・・・(2)
図2(a)の実線で示される層間検出用信号PI'は次のようにして生成される。まず、本実施の形態で用いられる光学ドライブ装置は、層間指示信号出力用受光部の出力信号を用いて式(3)で示される層間指示信号LIを生成する。k1,k2は層間検出用信号PI'に対する層間指示信号LIの寄与度を規定するための定数であり、ここではk1=0.5,k2=1.3である。k1,k2の具体的な値は、層間指示信号LIが多層化光ディスクの層間にピークを有する信号となり、かつ層間検出用信号PI'が層間で所定電圧Vrefよりも小さい値となる部分を有する信号となるよう適宜決定される。なお、ここでは光検出器5上における光ビームの強度分布を一様と仮定しているが、実際には強度分布があるので、強度分布も考慮してk1,k2の具体的な値を決めることがより好ましい。
LI=k1×(2×Iα1+2×Iα2)+k2×2×Iα3 ・・・(3)
さらに、光学ドライブ装置は、プルイン信号PIと層間指示信号LIとを用いて式(4)で示される層間検出用信号PI'を生成する。式(4)に示すように、層間検出用信号PI'はプルイン信号PIから層間指示信号LIを減算してなる信号である。
PI'=PI−LI ・・・(4)
図2(a)から明らかなように、層間検出用信号PI'は層間で所定値SL1以下の値となっている。一方、合焦ポイントの近くではプルイン信号PIと同じ値を有する。したがって、光学ドライブ装置は、プルイン信号PIに代えて層間検出用信号PI'を用いることにより、層判定処理を実行することができる。
図4(a)は、図2(a)の層間検出用信号PI'を層L1での反射光成分(実線)と層L2での反射光成分(点線)とに分解して描いたものである。同図では、プルイン信号PIについても同様に分解している。
図2に戻る。図2(a)に示した層間検出用信号PI'をそのまま用いて所定値SL1との比較を行うこととすると、余裕時間(プルイン信号PI'が所定値SL1を上回った後、フォーカス誤差信号FEが所定値SL2を上回るまでの時間)がマイナスの値となってしまう。これに対しては、k1,k2の値の調節によってもプラスの余裕時間を確保することが可能となる場合があるが、次に示すように、層間検出用信号PI'を増幅した上で層判定処理に用いることによってもプラスの余裕時間を確保することが可能となる。
図5は、層間検出用信号PI'の増幅について説明するための説明図である。同図(a)に示す破線は、図2(a)に示した層間検出用信号PI'(増幅前層間検出用信号PI')である。この破線で示される層間検出用信号PI'を所定電圧Vref(図5(a)ではt軸の電圧をこのVrefとしている。)を基準として所定の増幅率Aで増幅すると、図2(a)の実線のような信号(増幅後層間検出用信号PI')が得られる。式(5)は、この増幅を数式で表したものである。
増幅後のPI'=(PI'−Vref)×A+Vref ・・・(5)
図5の増幅後層間検出用信号PI'は、増幅前層間検出用信号PI'に比べて全体的に大きな値を持つため、所定値SL1を超えるタイミングも増幅前層間検出用信号PI'より早くなる。その結果、図5(b)に示すように、十分な余裕時間を確保することが可能になっている。
次に、比較のために、k1=0.5,k2=1とした場合の例を示しておく。図6は、この場合における、層L1での反射光成分と層L2での反射光成分とに分解した層間検出用信号PI'を示す図である。なお、同図には図4に示した層間検出用信号PI'(k1=0.5,k2=1.3とした場合の例)を細い破線で示している。図6の層間検出用信号PI'は、図4の場合に比べて小さなk2を採用したことにより、図4の層間検出用信号PI'に比べて層間での落ち込みが小さくなっている。
なお、図3(b)に示されるように、図6(b)に(2)で示した時刻では全受光領域が反射光L1,L2にすっぽり覆われており、各受光領域の出力信号はほぼ等しくなる。加えて、k1=0.5,k2=1としたことにより、プルイン信号PIと層間指示信号LIが等しくなる。したがって、その差分である層間検出用信号PI'の値は、図6(b)に(2)で示した時刻でほぼ0となっている。
次に、以上説明した処理を実現する光学ドライブ装置1の構成について説明する。
図7は、本実施の形態による光学ドライブ装置1の模式図の一例である。
光学ドライブ装置1は光ディスク11の再生及び記録を行う。光ディスク11としてはにはCD、DVD、HD−DVD、BD等の各種光記録媒体を用いることができるが、本実施の形態では特に、多層膜によって3層以上に多層化された記録面を有する円盤状の光ディスクを用いる。
図7に示すように、光学ドライブ装置1は、レーザ光源2、光学系3、対物レンズ4、光検出器5、及び処理部6を備えて構成される。これらのうち、レーザ光源2、光学系3、対物レンズ4、及び光検出器5は光ピックアップを構成する。
光学系3は、回折格子21、ビームスプリッタ22、コリメータレンズ23、1/4波長板24、センサレンズ(シリンドリカルレンズ)25を有している。光学系3は、レーザ光源2が発した光ビームを光ディスク11に導く往路光学系として機能するとともに、光ディスク11からの戻りビームを光検出器5に導く復路光学系としても機能する。
まず、往路光学系では、回折格子21は、レーザ光源2が発した光ビームを3ビーム(0次回折光及び±1次回折光)に分解しP偏光としてビームスプリッタ22に入射させる。ビームスプリッタ22は、入射されたP偏光を反射して、その進路を光ディスク11方向に折り曲げる。コリメータレンズ23は、ビームスプリッタ22から入射される光ビームを平行光とする。1/4波長板24は、コリメータレンズ23を通過した光ビームを円偏光とする。1/4波長板24を通過した光ビームは対物レンズ4に入射する。
次に、復路光学系では、ビームスプリッタ22は、記録面で反射してS偏光となり復路光学系を逆行してきた光ビームを100%透過してセンサレンズ25に入射させる。センサレンズ25は、ビームスプリッタ22から入射された光ビームに非点収差を付与する。非点収差を付与された光ビームは光検出器5に入射する。
対物レンズ4は、光学系3から入射される光ビーム(平行光状態の光ビーム)を光ディスク11上に集光させるとともに、光ディスク11からの戻り光ビームを平行光に戻す機能を備えている。
光検出器5は、図3に示すように光学系3から出射される戻り光ビームの光路に交差する平面上に設置される。その詳細な構成は図1に示した通りである。
処理部6は、一例として多チャンネル分のアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換機能を備えたDSP(Digital Signal Processor)で構成されており、光検出器5の出力信号を受け付けて、プルイン信号PI、フォーカス誤差信号FE、及び層間検出用信号PI'を生成する。処理部6は、このうちフォーカス誤差信号FEに基づいて対物レンズ4を光ディスク11の記録面に対して垂直方向に移動させることにより、光ビームが記録面上に形成するスポットの位置を記録面に対して接離動させる(フォーカスサーボ)。また、生成したプルイン信号PIをCPU7に出力する。
CPU7はコンピュータやDVDレコーダー等に内臓される処理装置であり、図示しないインターフェイスを介し、処理部6に対して光ディスク11上のアクセス位置を特定するための指示信号を送信する。この指示信号を受信した処理部6は、光ディスク11に対するアクセスを開始し、その結果得られるプルイン信号をCPU7に対して出力する。
図8は、処理部6の機能ブロック図である。
図8に示すように、処理部6は機能的にフォーカス誤差信号生成部61、層間検出用信号生成部62、焦点制御部63、記憶部64を含んで構成される。
フォーカス誤差信号生成部61は、光検出器5の4分割受光部から出力信号IA,IB,IC,IDの入力を受け付け、式(2)によりフォーカス誤差信号FEを生成する。
層間検出用信号生成部62は、光検出器5の4分割受光部から出力信号IA,IB,IC,IDの入力を受け付けるとともに、同じく光検出器5の層間指示信号出力用受光部から出力信号Iα1,Iα2,Iα3の入力を受け付ける。
層間検出用信号生成部62は、図8に示すように、減算処理部620、増幅部621、増幅制限処理部622、寄与度制御部623を含んで構成される。
減算処理部620は、入力された出力信号IA,IB,IC,IDを用いて式(1)によりプルイン信号PIを生成するとともに、入力された出力信号Iα1,Iα2,Iα3を用いて式(3)により層間指示信号LIを生成する。なお、定数k1及びk2は予め設定される。そして、生成したこれらの信号を用いて式(4)の減算処理を行い、層間検出用信号PI'(例えば図2(a)の実線で示される信号)を生成する。
増幅部621は減算処理部620が生成した層間検出用信号PI'を所定電圧Vrefを基準にして所定の増幅率で増幅し、増幅後層間検出用信号PI'(例えば図5(a)の実線で示される信号)を生成する。
増幅制限処理部622は、減算処理部620が生成した層間検出用信号PI'が第1の所定値以下であるか否かに応じて増幅部621による増幅を制限する。また、層間検出用信号PI'が上記第1の所定値より小さい第2の所定値以下であるか否かにも応じて増幅部621による増幅を制限する。以下、詳細に説明する。
図9は、増幅制限処理部622の処理の説明図である。
図9(a)は層間検出用信号PI'の時間変化を示すグラフである。ここでは図2(a)と同じ層間検出用信号PI'を用いている。増幅制限処理部622は、まずこの層間検出用信号PI'から電圧値0(Vref)以下の部分のみを取り出して符号を反転し、図9(b)に示す信号PI1を生成する。
次に、増幅制限処理部622は、信号PI1を所定値SL3(第1の所定値)及び所定値SL4(第2の所定値)でスライスし、図9(c)に示す2値のロジック信号PI2及び図9(d)に示す2値のロジック信号PI3を生成する。さらに、ロジック信号PI2を微小時間だけ遅延させて図9(e)に示す2値のロジック信号PI4を生成する。
増幅制限処理部622は、ロジック信号PI4のバーストを立ち上がりポイントで監視する。ただし、ロジック信号PI3がハイとなっている期間には、増幅制限処理部622は上記監視を行わない。そして、初めに検出されたバースト(図9(c)のバーストB1)の立ち上がりから2度目に検出されたバースト(図9(c)のバーストB3)の立ち上がりまでの期間ハイとなり、それ以外の期間でローとなるデジタル信号PI5を生成する。なお、図9(c)の例では、バーストB2の立ち上がりポイントはロジック信号PI3がハイとなっている期間内にあるため、増幅制限処理部622はこれを検出しない。
増幅制限処理部622は、以上のようにして生成したデジタル信号PI5がローとなっている間、増幅を行わないよう増幅部621を制御する。これにより、層間検出用信号PI'の増幅期間を必要な期間のみに制限することができるので、ノイズ成分による誤動作の防止や低消費電力化が実現される。また、このようにすれば、層間距離が小さい場合に、層間では増幅制限しないようにすることができる。
さて、図8に戻る。寄与度制御部623は層間検出用信号PI'に対する層間指示信号LIの寄与度を制御する。この寄与度制御部623の処理は後ほど詳細に説明することとする。
焦点制御部63は、フォーカス誤差信号生成部61によって生成されたフォーカス誤差信号FEと、層間検出用信号生成部62によって生成された層間検出用信号PI'とに基づいて焦点制御(フォーカスサーボ)を行う。以下、焦点制御部63の処理について詳細に説明する。
焦点制御部63の処理には、対物レンズの位置と層番号との対応付けを学習するための学習モードと、実際に再生や書き込みを行う際の再生記録モードとがある。以下では、それぞれについて説明する。
まず学習モードでは、焦点制御部63は、制御信号により対物レンズを一方の最端位置から一定速度で移動させつつ、層間検出用信号PI'と所定値SL1とを比較する。層間検出用信号PI'が所定値SL1を上回ったら、フォーカス誤差信号FEと所定値SL2との比較を開始する。その後、フォーカス誤差信号FEが所定値SL2を上回ったら計時を開始し、次にフォーカス誤差信号FEが所定値SL2を下回るまでの時間を測定する。そして、測定時間が所定時間長を上回ったことをもって上記有効期間を検出し、次にフォーカス誤差信号FEがゼロクロスしたときの対物レンズの位置を合焦ポイントと判定する。
学習モードでは、以上の処理を対物レンズの一方の最端位置から他方の最端位置まで行い、検出された各合焦ポイントについて、検出時の対物レンズの位置と合焦ポイントの検出順番号(層番号)とを対応付けて記憶部64に記憶させる。表1は記憶部64の記憶内容の例を示している。
次に記録再生モードでは、焦点制御部63はまず、CPU7から入力される指示信号により、アクセスすべき層の層番号を取得する。そして、取得した層番号に対応する対物レンズ位置を記憶部64から取得し、その位置まで対物レンズを移動させる。そして、その付近においてフォーカス誤差信号FEが0となるよう対物レンズの位置を微調整する。
以上説明したように、光学ドライブ装置1によれば、層間指示信号LIにより層を分離できるので、多層化された光ディスクにおける層判定処理を実現できる。また、光検出器5は、層間指示信号出力用受光部を備えたことにより、適切な層間指示信号を生成することができる。
さらに、層間検出用信号PI'では層間での落ち込みが確保されるので、層判定処理を確実に行える。
また、層間検出用信号PI'に対する層間指示信号LIの寄与度を適切に設定することや層間検出用信号PI'の増幅を行うことにより、最適な余裕時間を得ることができる。そして、層間検出用信号の増幅を必要な期間のみに制限することも可能になっているので、ノイズ成分による誤動作の防止や低消費電力化が実現される。一方で、層間距離が小さい場合には、層間では増幅制限しないようにすることも可能になっている。
ところで、光検出器5における層間指示信号出力用受光部の形状や配置は図1の態様に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。以下、層間指示信号出力用受光部及び層間距離の組み合わせの13通りのバリエーションを、それぞれについて図3、図4、及び図6に対応する図面を示しながら説明する。
まず、第1のバリエーションでは、図10,図11,図12がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図10に示すように、図1で説明した光検出器5から受光領域α3を2つとも取り除いた光検出器5を用いる。光ディスクの層間距離は図2の場合と同一である。層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、図10ではk1=1.15であり、図11ではk1=1である。なお、Iα3は常に0となるため、パラメータk2は層間指示信号LIの値に影響しない。第1のバリエーションによれば、図3,図4,図6の場合に比べ、大きな余裕時間を得ることができる。
なお、図11と図4を比較すると、図11ではPI'が層の中間点から合焦ポイントに至る過程で一度落ち込んでいるのに対し、図4ではこのような落ち込みは現れない。これは図4の例で受光領域α3を設けていることによる効果である。
第2のバリエーションでは、図13,図14,図15がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図13に示すように、図1で説明した光検出器5から受光領域α1,α2を全て取り除き、図1の受光領域α3を新受光領域α1とし、さらに2つの新受光領域α2を付加した光検出器5を用いる。新受光領域α2は新受光領域α1(図1の受光領域α3)と同一形状の二等辺三角形となっている。
2つの新受光領域α2のうちの一方の底辺は、4分割受光部の4辺のうち受光領域A,Bによって構成される辺と一致する。また、他方の底辺は、層間指示信号出力用受光部の4辺のうち受光領域C,Dによって構成される辺と一致する。このような配置の結果として2つの新受光領域α2の受光量はほぼ一致する。
第2のバリエーションでも、光ディスクの層間距離は図2の場合と同一である。層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、図14ではk1=1.15であり、図15ではk1=1である。なお、Iα3は常に0となるため、パラメータk2は層間指示信号LIの値に影響しない。第2のバリエーションでは余裕時間がほぼ0となる。
第3のバリエーションでは、図16,図17,図18がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図17に示すように、4分割受光部を構成する受光領域A,B,C,Dの各一部を層間指示信号出力用受光部として用いる。具体的には、4分割受光部の4つの頂点それぞれについて層間指示信号出力用受光部用の受光領域α1又はα2を設ける。受光領域α1及びα2はそれぞれ2つずつ設けられる。各受光領域α1はそれぞれ受光領域B,Dの一部によって構成され、各受光領域α2はそれぞれ受光領域A,Cの一部によって構成される。受光領域α1及びα2はいずれも同一面積の正方形であり、4つの頂点のうちの1つが対応する4分割受光部頂点と同じ位置となるよう各受光領域内に設けられる。なお、受光領域α1及びα2は受光領域A〜Dと重畳して設けられるものであり、受光領域A〜Dの出力信号は図1の場合と変わらない。
第3のバリエーションでも、光ディスクの層間距離は図2の場合と同一である。層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、4分割受光部と層間指示信号出力用受光部との面積比(=4分割受光部面積/層間指示信号出力用受光部面積)を用いて表される。具体的には、図17ではk1=面積比×1.15であり、図18ではk1=面積比である。なお、Iα3は常に0となるため、パラメータk2は層間指示信号LIの値に影響しない。第3のバリエーションでも余裕時間はほぼ0となる。
なお、図19は第3のバリエーションの更なる変形例を示している。同図に示すように、図16の受光領域α1及びα2を三角形とすることも好適である。また、他の形状とすることも可能である。
第4のバリエーションでは、図20,図21,図22がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図20に示すように、図1で説明したものと同一の光検出器5を用いる。ただし、層間距離がより短くなっており、その結果、対物レンズが層間のちょうど中間点にある時刻(2)での層L1及び層L2での反射光のスポットが図3の場合に比べて小さくなっている。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1及びk2の値は、図21ではk1=0.5、k2=1.8であり、図22ではk1=0.5、k2=1である。図21の場合において図4の場合(k1=0.5、k2=1.3)よりも大きいk2を用いるのは、層間距離が短くなっているために層間指示信号LIの値をより大きくしないと、層間検出用信号PI'の層間での落ち込みが不十分となるからである。
第5のバリエーションでは、図23,図24,図25がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図23に示すように、第1のバリエーション(図10)と同一の光検出器5を用いる。また、層間距離は第4のバリエーションと同じである。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、図24ではk1=2.3であり、図25ではk1=1である。図24の場合においてk1の値を第1のバリエーションの図11の場合(k1=1.15)よりも大きいk1を用いる理由は第4のバリエーションと同様である。
第6のバリエーションでは、図26,図27,図28がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図26に示すように、第2のバリエーション(図13)と同一の光検出器5を用いる。また、層間距離は第4,第5のバリエーションと同じである。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、図27ではk1=1.15であり、図28ではk1=1である。
第7のバリエーションでは、図29,図30,図31がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図29に示すように、第3のバリエーション(図16)と同一の光検出器5を用いる。また、層間距離は第4,第5,第6のバリエーションと同じである。なお、図29の受光領域α1及びα2の絵(四角形内に対角線のうちの一方を描いたもの)は、これらが図16に示したような四角形でもよいし、図16−1に示したような三角形でもよいことを示している。以下の他の図面でも同様である。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、図30ではk1=面積比×1.15であり、図31ではk1=面積比である。
第8のバリエーションでは、図32,図33,図34がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図32に示すように、図1や第4のバリエーション(図20)で説明したものと同一の光検出器5を用いる。ただし、層間距離が第4のバリエーションよりもさらに短くなっており、その結果、対物レンズが層間のちょうど中間点にある時刻(2)での層L1及び層L2での反射光のスポットが図20の場合に比べてさらに小さくなっている。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1及びk2の値は、図33ではk1=1.6、k2=3.4であり、図34ではk1=0.5、k2=1である。図34は、層間検出用信号PI'が層間で所定値SL1以下にならない例である。
ここで、図8の寄与度制御部623の処理について詳しく説明する。
図35は、図33の層間検出用信号PI'及びプルイン信号PIを層の成分ごとに分けずに描いたものである。実線が層間検出用信号PI'、破線がプルイン信号PIを示している。図35に示すように合焦ポイントに近い位置でも層間検出用信号PI'の値が十分大きくならない場合、十分な余裕時間をとるためには大きな増幅率で増幅する必要が生ずる。
また、図36は、図35の例よりも層間検出用信号PI'の落ち込みが大きい例を示しているが、このように合焦ポイントに近い位置で層間検出用信号PI'の値が所定電圧Vref以下となる場合、増幅率に関わらず余裕時間を確保することができなくなる。
また、図37は、層間検出用信号PI'の値が層の中間点に近いところで不連続に所定値SL1を超える場合を示している。このような場合、焦点制御部63は不適切なフォーカスサーボを実施してしまうおそれがある。
そこでこれらの場合に対応すべく、寄与度制御部623は、フォーカス誤差信号FEの値に基づいて、層間検出用信号PI'に対する層間指示信号LIの寄与度を制御する。
図38及び図39は、寄与度制御部623の処理の説明図である。
図38(a)及び図39(a)はフォーカス誤差信号FEの時間変化を示すグラフであり、図35(b)及び図36(b)と同じものである。寄与度制御部623は、まずこのフォーカス誤差信号FEから所定値SL5(SL5>0)以上の部分と所定値−SL5以下の部分とを取り出す。そして取り出した部分においてハイとなり、他の部分ではローとなるデジタル信号FE2(図38(b)及び図39(b))を生成する。
寄与度制御部623は、以上のようにして生成したデジタル信号FE2がハイの間には、層間検出用信号PI'に対する層間指示信号LIの寄与度を0とする。具体的には、k1及びk2の値をいずれも0とし、減算処理部620に出力する。その結果、減算処理部620が生成する層間検出用信号PI'はプルイン信号PIと同一となる。
一方、以上のようにして生成したデジタル信号FE2がローの間、寄与度制御部623は層間検出用信号PI'に対する層間指示信号LIの寄与度を通常値とする。具体的には、例えば図38の例ではk1=1.6、k2=3.4とし、減算処理部620に出力する。
図38(c)は、図35(a)に示した層間検出用信号PI'に以上の処理を施した結果として減算処理部620が生成する層間検出用信号PI'を示す図である。同図と図35(a)とを比べると理解されるように、図38(c)では、デジタル信号FE2がハイのときには図35(a)に破線で示したプルイン信号PIがそのまま新たな層間検出用信号PI'となり、デジタル信号FE2がローのときには図35(a)に実線で示した層間検出用信号PI'が新たな層間検出用信号PI'となっている。このようにすることで、焦点がある程度合っているにも関わらず、他層からの迷光によって層間指示信号LIが大きな値を持ってしまうことを防止でき、したがって比較的小さな増幅率での層間検出用信号PI'の増幅により十分な余裕時間を確保できるようになる。
図39(c)は、図36(a)に示した層間検出用信号PI'に以上の処理を施した結果として減算処理部620が生成する層間検出用信号PI'を示す図である。同図に示すように、新たに生成される層間検出用信号PI'の値は合焦ポイントに近い位置で所定電圧Vref以上となるので、増幅によって十分な余裕時間を確保できるようになる。また、増幅制限が適切に機能しない場合には、増幅部621の増幅率は小さいほうが望ましいが、このようにすることによりこの増幅率を小さくしたり、なくしたりすることができるようになる。
図39(d)は、図37(a)に示した層間検出用信号PI'に以上の処理を施した結果として減算処理部620が生成する層間検出用信号PI'を示す図である。同図に示すように、新たに生成される層間検出用信号PI'では、層の中間点に近いところで不連続に所定値SL1を超えることがなくなるので、焦点制御部63による適切なフォーカスサーボの実施が期待できる。
さて、バリエーションの説明を続ける。
第9のバリエーションでは、図40,図41,図42がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図40に示すように、第8のバリエーション(図32)で用いた光検出器5の受光領域α1,α2を対角線で4等分して4分割受光部に最も近い部分のみを残すとともに、受光領域α3を同一形状の二等辺三角形で4等分して4分割受光部の各辺を底辺とする二等辺三角形のみを残した光検出器5を用いる。また、層間距離は第8のバリエーションと同じである。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1及びk2の値は、図41ではk1=3、k2=3.6であり、図42ではk1=2、k2=2である。第8のバリエーションに比べて大きな数値を用いているが、これは受光領域α1,α2,α3の面積が小さくなっていることによるものである。
第10のバリエーションでは、図43,図44,図45がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図43に示すように、第1,第5のバリエーション(図10,図23)と同一の光検出器5を用いる。また、層間距離は第8,第9のバリエーションと同じである。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、図44ではk1=3.3であり、図45ではk1=1である。
第11のバリエーションでは、図46,図47,図48がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図46に示すように、第2,第6のバリエーション(図13,図26)と同一の光検出器5を用いる。また、層間距離は第8,第9,第10のバリエーションと同じである。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、図47ではk1=3.3であり、図48ではk1=1である。
第12のバリエーションでは、図49,図50,図51がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図49に示すように、第11のバリエーション(図46)で用いた光検出器5の受光領域α1及びα2をそれぞれ同一形状の二等辺三角形で4等分して4分割受光部の各辺を底辺とする二等辺三角形のみを残した光検出器5を用いる。また、層間距離は第8,第9,第10,第11のバリエーションと同じである。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、図47ではk1=3.3であり、図48ではk1=2である。図48では第11のバリエーション(k1=1)に比べて2倍の数値を用いているが、これは受光領域α1,α2の面積が半分になっていることによるものである。
第13のバリエーションでは、図52,図53,図54がそれぞれ図3,図4,図6に対応し、図52に示すように、第3,第7のバリエーション(図16,図29)と同一の光検出器5を用いる。また、層間距離は第8,第9,第10,第11,第12のバリエーションと同じである。
層間指示信号LIの算出式(3)におけるパラメータk1の値は、図53ではk1=面積比×1.65であり、図54ではk1=面積比である。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、増幅部621により層間検出用信号PI'を増幅し、焦点制御部63は増幅後の層間検出用信号PI'と所定値SL1とを比較するようにしているが、上記所定値SL1を上記Vrefとし、増幅を行わないこととしてもよい。増幅制限処理部622による増幅制限が適切に機能することを期待できる場合には、このようにしても適切なフォーカスサーボを実施できる。