JP4457674B2 - 耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
ところが、近年、自動車の軽量化のために、燃料タンク用の鋼板には薄肉化による軽量化と複雑な形状への加工性が求められるようになってきた。
この要求に応えるためには、下地鋼板の引張強さを 420 MPa級以上に高強度化すると共に、加工性の一層の向上を図らなければならない。
しかしながら、この鋼板は、耐食性には優れるものの、下地鋼板の強度を上げた場合、タンクへの成形性としては下地鋼板の成形性を超えるものではないため、複雑なタンク形状に成形することはできないという問題があった。
しかしながら、この鋼板では、燃料タンクに必要とされる強度:420 MPa 級以上の強度を得ることができない上に、深絞り成形性を示すr値は1.5 程度と成形性の点でも十分ではなかった。しかも、この鋼板は、結晶粒が大きく、めっきと下地の反応が下地鋼板の粒界に集中するため、めっき密着性が部分的に低いという問題があった。この様に一部でもめっき密着性が低い場合、プレス時にめっきが剥がれ、タンク加工後に必要な耐食性を保持できない。
しかしながら、この技術では、スラブ加熱温度を 950℃程度と超低温化しなければならず、このような低い温度で熱間圧延することは圧延機への負荷を考えると、実際には不可能である。
しかしながら、この技術で得られる鋼板の強度とr値のバランスは、490 MPa 級でr値1.3 程度であり、十分な深絞り性を有しているとはいえなかった。
しかしながら、この方法では、粒界のCがTiとNbによって固定除去されてしまうため、粒界強度が弱く、耐二次加工脆性の点に問題を残していた。しかも、例えば溶融めっきを行った場合には、粒界にめっきが浸透して液体金属脆化を起こしてしまうという問題があった。従って、このような鋼板に溶融めっきを施しても、耐二次加工脆性およびめっき密着性の優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板を得ることは事実上不可能である。
(1) Cuがオーステナイト粒界に偏析するとオーステナイトの粒成長が抑制されるものの、フェライト変態後のフェライト粒界では粒成長が抑制されない。
(2) Bを同時に添加するとめっきによる粒界脆化が抑制され、
(3) しかもその後のCu析出処理により鋼を有利に高強度化でき、
(4) さらにフェライト粒径を25μm 以下に抑制することにより、良好な耐二次加工脆性が得られ、
(5) その結果、引張強度:420 MPa 以上、r値:1.6 以上という優れた強度−r値バランスを有し、しかも耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れためっき熱延鋼板が得られる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.質量%で、
C:0.01%以下、
Si:0.5 %以下、
Mn:0.15%以上、0.5 %以下、
P:0.03%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.1 %以下、
N:0.006 %以下、
Cu:0.5 %以上、2.0 %以下および
B:0.0002%以上、0.0025%以下
を含み、かつ
Ti:0.01%以上、0.1 %未満および
Nb:0.07%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になり、フェライト単相でかつフェライト粒径が25μm 以下の鋼組織を有し、引張強さが 420 MPa以上で、表面にめっき層をそなえることを特徴とする、耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板。
V:0.1 %以下および
Ni:0.2 %以上、1.0 %以下
のうちから選んだ1種または2種を含有する組成になることを特徴とする、耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板。
C:0.01%以下、
Si:0.5 %以下、
Mn:0.15%以上、0.5 %以下、
P:0.03%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.1 %以下、
N:0.006 %以下、
Cu:0.5 %以上、2.0 %以下および
B:0.0002%以上、0.0025%以下、
を含み、かつ
Ti:0.01%以上、0.1 %未満および
Nb:0.07%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成よりなる鋼片を、950℃超え、1100℃未満の温度に加熱したのち、仕上圧延温度:750℃未満、750 ℃以下における圧下率:50%以上の条件で熱間圧延し、550 ℃以下の温度で巻き取り、ついで酸洗後、めっき処理を施したのち、450℃以上、650℃以下の温度でCuの析出処理を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板の製造方法。
4.上記3において、鋼片の組成が、さらに質量%で、
V:0.1 %以下および
Ni:0.2 %以上、1.0 %以下
のうちから選んだ1種または2種を含有する組成よりなることを特徴とする、耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板の製造方法。
まず、本発明において鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.01%以下
Cは、鋼の高強度化には有用であるが、0.01%を超えて含有されるとプレス成形性の指標であるr値を極端に低下させてしまう。そこで、C量の上限を0.01%とした。
Siは、伸びの顕著な劣化を伴うことなしに鋼を高強度化できる有用元素であるが、熱間圧延時には赤スケールと呼ばれるFe−Si酸化物を生成して表面性状を劣化させる。この表面性状の劣化は、表面の摩擦係数の増大を招いてプレス成形性を劣化させる。そこで、本発明では、Si量の上限を 0.5%とした。
Mnは、鋼中のSとMnSを形成して、表面欠陥の発生を防止する。そのため、本発明では0.15%以上を添加する。また、Mn量が0.15%未満では、変態点が高くなり微細粒とすることが難しくなる。一方、0.5 %を超えて添加すると表面に薄い酸化物を形成し、めっき密着性の低下を招く。そこで、本発明では、Mn量は0.15%以上、0.5 %以下の範囲に限定した。
Pは、固溶強化に寄与する元素であるが、多量に添加すると粒界に偏析して耐二次加工脆性を劣化させる。そのため、P量の上限を0.03%とした。
Sは、Mnと結合してMnSを形成する。このMnSは、上述したとおり、表面欠陥の防止に有効に寄与するが、その反面、粒界で展伸した介在物となり、鋼の局部伸びを低下させる。そのため、S含有量は低いほうが好ましい。そこで、本発明では、S量の上限を0.02%とした。
Alは、脱酸剤として使用されるため、鋼中にある程度は含まれる。このAl量が 0.1%を超えると、鋼が硬質化し、延性が極端に低下することから、本発明ではAl量は 0.1%以下に限定した。
Nは、鋼に固溶して、延性を低下させる。また、AlやTiと結合して、析出物を形成する。特にN量が 0.006%を超えると窒化物による析出強化が顕著となり、延性が低下する。そこで、本発明では、N量の上限を 0.006%とした。
Cuは、本発明において最も重要な元素である。通常、r値は、冷間圧延前のフェライト粒が微細なほど向上する。また、圧延されたフェライトの再結晶時には、フェライトの粒成長が促進されるほどr値は向上する。低炭素鋼のオーステナイトの粒成長を抑制する元素として、通常Ti, Nbが知られているが、これらは微細析出物で粒界移動を抑制するため、オーステナイトの粒成長を抑制すると同時にフェライトの粒成長まで抑制してしまう。このため、例えば、Cを粒成長抑制に必要な0.01%以上添加してオーステナイトの粒成長を抑制しても、r値の向上は望めない。
これに対し、Cuは、オーステナイト粒界に偏析して熱間圧延の加熱工程や粗圧延工程ではオーステナイトの粒成長を抑制し、結晶粒の微細化に寄与するが、フェライト中ではフェライトの粒成長を抑制しない。このため、γ→α変態直後のフェライト粒を微細とし、フェライト変態完了後は加工フェライトの再結晶時の粒成長を阻害しない。このため、r値はCu無添加の鋼よりも大幅に向上する。
また、Cuは、析出処理を施すと鋼中に微細に析出するため、高強度化にも有効に寄与する。
ここに、Cu量が 0.5%を下回ると、上記の粒成長抑制機能が十分ではなく、強度も 420MPa 級以上にはならない。一方、2.0 %を超えると、オーステナイトの粒成長を過剰に抑制して、整粒組織が得られなくなるだけでなく、Cu固溶量の増加により焼きが入り易くなってしまう。そのため、本発明では、Cu量は 0.5%以上、2.0 %以下の範囲に限定した。
Bは、フェライト粒界に偏析して粒界を強化し、耐二次加工脆性を向上させる有用元素である。また、本発明では、上記したCuと複合含有させることによって、めっきによる粒界脆化を効果的に阻止する働きがある。しかしながら、含有量が0.0002%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.0025%を超えて添加されると焼きが入り易くなり、整粒組織が得にくくなるので、B量は0.0002%以上、0.0025%以下の範囲に限定した。
Tiは、鋼中に微量に含まれるCとNを析出物として固定することで、延性やr値を劣化させる固溶C, N量を低下させる効果がある。優れたr値を得るには、0.01%以上の添加が必要であるが、0.1 %以上では、必要以上に圧延荷重が上昇し、圧延材の表面性状が劣化する。また、Ti量が 0.1%以上になると、熱延のスラブ加熱時に未固溶のTiC量が増加して、固溶Ti量が減り、熱延鋼板の結晶粒が微細化し難くなる。そのため、Ti量は0.01%以上、0.1 %未満の範囲に限定した。
Nbは、Tiと同様、Cを析出物として固定して固溶C量を減じる働きがある。そのため、本発明においては、Tiの代わりに、またはTiと共に添加することができる。ただし、含有量が0.07%を超えると熱間圧延荷重が著しく増大して、鋼板の表面性状が劣化すると共に形状も安定しなくなる。また、スラブ加熱時にNbCが溶解せず、微細粒も得難くなる。そのため、Nb量は0.07%以下に限定した。
V:0.1 %以下
Vは、NやCと鋼中で析出物を形成する。また、熱間圧延時の圧延荷重を上昇させない。このため、C, Nを十分に固定することを目的として、Tiと同時に添加することができる。しかしながら、V含有量が 0.1%を超えると、微細なVCやVNが析出して鋼が低延性化するので、V量は 0.1%以下に限定した。
Niは、Cu添加で生じる表面疵を軽減するのに有効に寄与する。しかしながら、Ni含有量が 0.2%未満ではその添加効果に乏しく、一方 1.0%を超えて含有されると、焼入れ組織が現れ易くなり、加工性が劣化する。このため、Ni量は 0.2%以上、1.0 %以下の範囲に限定した。
すなわち、本発明においては、鋼組織をフェライト単相組織にすると共に、フェライト粒径を25μm 以下に規制することが重要である。
本発明において、鋼組織をフェライト単相組織にした理由は、パーライトは、鋼の深絞り性(r値)を低下させ成形性を劣化させるために好ましくなく、またマルテンサイトやベイナイト等の低温変態相の含有もr値を劣化させるからである。
本発明におけるフェライト単相組織とは、ナイタールエッチングした鋼板断面を、光学顕微鏡で 400倍の倍率で観察した時に、炭窒化物などの析出物以外に、フェライト粒のみが観察されるされることをいう。また、本発明のフェライト粒径は、ASTM公称粒径を指す。ASTM公称粒径とは、結晶粒1つ当たりの面積の平方根で定義されており、切断長さlの1.13倍である。すなわち、切断法(JIS G 0552)に従って求めたフェライト粒切片長さを1.13倍して、これをフェライト粒径とする。
すなわち、r値は、フェライト粒径の増大と共に上昇することから、粒径が粗大なものであれば、良好なr値を得ることができるが、熱延板においてフェライト粒径が25μm を超えると、耐二次加工脆性が著しく劣化する。例えば、通常のIF鋼は、r値は高いものの、フェライト粒径は約40μm と粗大であり、耐二次加工性は良好ではない。そのため、フェライト粒径が25μm 以下で、かつr値が高い鋼板が要望されていたが、従来ではそのような熱延鋼板は開発されていなかった。
この点、本発明では、Cuの利用により、オーステナイト−フェライト変態直後のフェライト粒を微細に保持し、耐二次加工脆性を良好としつつ、優れたr値を実現することができる。このとき、オーステナイトから変態した直後のフェライト粒は微細なため、r値確保のために十分に粒成長させた後でも、フェライト粒径を25μm 以下に保持できる。このため、本発明では、フェライト粒径の上限を25μm とした。
また、めっきの密着性は、下地鋼板のフェライト粒径に強く依存する。そのため、フェライト粒径を25μm 以下とすることで、めっきの結晶を微細化することができ、めっきの表面性状も良好となる。
本発明におけるめっき層は、特に限定されるものではないが、例えば、Alを主体としたAl系めっき、Zn系めっき、Zn−Al系めっき、Zn−Sn系めっき等が有利に適合する。また、電気めっきおよび溶融めっきのいずれもが適合する。さらに、めっき層と下地鋼板を合金化させた、いわゆる合金化めっき層でもかまわない。
なお、めっき層の厚みは、5〜10μm 程度とすることが好ましい。
加熱温度:950 ℃超え、1100℃未満
加熱温度は、本発明において重要な製造条件である。この加熱温度が1100℃以上になるとスラブのオーステナイト粒が著しく粗大化し、Cuによるオーステナイト粒成長抑制効果が弱くなると共に、組織が混粒化してしまう。また、加熱温度が 950℃未満では、圧延荷重が高くなりすぎて圧延が不可能になるおそれがあるだけでなく、表面性状が著しく劣化する。このため、熱間圧延時のスラブ加熱温度は、950 ℃超え、1100℃未満の範囲に限定した。
本発明は、熱延鋼板で良好なr値を実現する。オーステナイトから変態したフェライトの集合組織はランダムに近く、r値は 1.0以下である。そのため、750 ℃未満で仕上圧延を完了してフェライト域で圧延することにより、フェライトを再結晶させて、好適な集合組織を形成させる。このため、仕上圧延は 750℃未満で終了させるものとした。なお、仕上圧延温度が 500℃を下回ると、表面性状が劣化すると共に平面な鋼板形状を保てなくなるため、仕上圧延温度は500 ℃以上とすることが好ましい。望ましくは 650℃以上である。
本発明において、750 ℃以下での圧下率は極めて重要である。フェライトは、回復し易いため、単純にフェライト域で熱間圧延しただけでは再結晶に必要な歪エネルギーが蓄積されない。そのため、回復の遅い 750℃以下で圧延を行う必要がある。この 750℃以下での圧下率が50%に満たないと、再結晶に必要な歪エネルギーが蓄積されないので、750 ℃以下での圧下率を50%以上とした。熱延板を焼鈍する場合には、再結晶に必要な歪エネルギーが蓄積されないので、750 ℃以下での圧下率を50%以上とした。
フェライト域では、回復により歪エネルギーが開放される。従って、巻取り温度が 550℃を超えると歪エネルギーの開放が進行して、熱延板中に残留した歪エネルギーで再結晶することが不可能になる。このため、巻取り温度は 550℃以下に限定した。
本発明では、熱間圧延したスケールを有する鋼板を酸洗し、スケールを除去した後にめっきを行う。酸洗でスケールを除去せず、直接溶融亜鉛めっき等を行うこともできるが、この場合、表面外観が劣化し、さらには還元できずにめっき層と鋼板界面に残留したスケールにより、めっき密着性が劣化する。このため、めっき前に酸洗を行う。
燃料タンクは重要保安部品であり、腐食によりタンクに穴が開いてはならない。従って、めっきは必須である。本発明においては、燃料タンクに適しためっきを施す必要がある。例えば、Alを主体としたAl系めっき、Zn系めっき、Zn−Al系めっき、Zn−Sn系めっき等が有利に適合する。めっき法としては、電気めっきでも溶融めっきでもどちらでもかまわない。電気めっきの場合には、めっき前に焼鈍工程が入るが、焼鈍温度は 600℃から750℃が好ましい。焼鈍方法は箱焼鈍でも連続焼鈍でもかまわない。また、溶融めっきの場合には、溶融めっき前の加熱処理にこの焼鈍を兼務させればよい。この時の焼鈍温度は 700℃以上 850℃以下とするのが好ましい。さらに、めっき後にめっき層と下地鋼板を合金化させる、いわゆる合金化処理を施しても差し支えない。なお、めっきは、鋼板の少なくとも片面に施せばよい。
本発明では、以上のような方法でr値の良好な鋼板を作製した後に、Cu析出処理を行い、r値を高く維持したまま、鋼板強度を 420 MPa以上に高強度化する。ここに、Cu析出処理における処理温度が 450℃未満では、Cuは微細となるが十分な析出量が得られず、420MPa 以上の強度を確保することができない。一方、650 ℃を超えると、Cuが粗大化もしくは再固溶してやはり 420 MPa以上の引張強さを得るのが難しくなる。そこで、Cu析出処理温度は、450 ℃以上、650 ℃以下の範囲に限定した。なお、このCu析出処理は、溶融めっき時のめっき槽浸漬による温度保持や合金化による温度保持に兼務させることも可能である。
また、圧延方向に平行、45°方向、直角方向にそれぞれJIS 5 号試験片を採取し、r値を測定した。r値の評価は、各方向のr値の平均値(バーr)で行った。圧延方向に平行なr値をr0 、同じく45°方向をr45、直角方向をr90としたとき、バーrは、次式
バーr=(r0 +2r45+r90)/4
で表わされる。
さらに、得られた鋼板から、円盤状のブランクを切り出し、深絞り加工を行った。そして、深絞り品の耳をトリムした後に、頂角:120 °の円錐ポンチで成型品の縁を静的に押し広げた。この時、成形温度を常温から次第に下げていき、成形により割れが生じた時の温度を脆性遷移温度とした。
鋼板のフェライト粒径および組織は、ナイタール腐食した板厚断面の光学顕微鏡組織写真(×400 倍)より切断した。上述のように、切断法(JIS G 0552)で求めたフェライト粒の切片長さを1.13倍して、フェライト粒径とした。
また、得られた鋼板を長さ:100 mm、幅:30mmに切断後、長手方向中央部で90°曲げを行い、曲げ部の外側にセロハンテープを貼着して剥がしたのち、めっきが剥離するか否かを観察し、めっきが剥離しなかったものを○、剥離したものを×として目視評価した。
得られた結果を表2に示す。
なお、表1の成分系に基づく表2の実施例は、発明例、比較例の如何にかかわらず、全てフェライト単相であった。
No.11 からNo.15 はCu添加量の影響を示したものである。No.11 はCu添加量が少なく、No.15 はCuの添加量が本発明の上限を超えている。No.16, 17, 18 はそれぞれ、Mnが下限、Tiが上限、Nbが上限を外れた例である。
No.1〜8および No.12〜14の発明例はいずれも、引張強さは 420 MPa以上、r値は 1.6以上、脆性遷移温度は−30℃以下と優れた機械的性質をそなえており、まためっき剥離はなしとめっき密着性もに優れている。
これに対し、No.9は、Bが添加されていないことから、脆性遷移温度は0℃と高い。粒径も大きいことから、めっき密着性も低い。
No.10 は、CuとBが添加されておらず、引張強さが 420 MPaを大きく下回っており、脆性遷移温度も0℃と高い。また、粒径も大きいことから、めっき密着性も低い。
No.11 はCu添加量が少ないため、引張強さが 420 MPaを下回っていた。さらに、粒径も大きいことから、めっき密着性も低い。
No.15 は、Cu量が本発明の上限を超えているため、r値が低く、脆性遷移温度も−10℃と高い。
No.16, 17, 18 は、熱延板のフェライト粒が大きいため、r値が低く、脆性遷移温度も高い。また、めっき剥離も認められた。
かくして得られためっき熱延鋼板のフェライト粒径、引張強さ(TS)、r値、脆性遷移温度およびめっき密着性について調べた結果を表3に併記する。
なお、表3の実施例は、発明例、比較例の如何にかかわらず、全てフェライト単相であった。
No.1〜3, No.7〜9, No.12〜13の発明例はいずれも、引張強さは 420 MPa以上、r値は 1.6以上、脆性遷移温度は−30℃以下と優れた機械的性質をそなえ、まためっき密着性もに優れている。
これに対し、No.4は、仕上圧延温度が高いため、フェライト粒が粗大化し、r値、脆性遷移温度およびめっき密着性ともに劣化していた。
No.5は圧下率が低いため、引張強さが低く、r値および脆性遷移温度も劣っていた。
No.6は加熱温度が高いことから、フェライト粒が粗大化し、r値が低く、脆性遷移温度も高かった。まためっき密着性にも劣っていた。
No.10 は、巻取り温度が高いため、r値が低かった。
No.11 は、Cu析出処理温度が低いため、引張強さが低い。
No.14 は、Cu析出処理温度が高いため、引張強さが低く、また脆性遷移温度も高く、めっき密着性にも劣っていた。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.01%以下、
Si:0.5 %以下、
Mn:0.15%以上、0.5 %以下、
P:0.03%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.1 %以下、
N:0.006 %以下、
Cu:0.5 %以上、2.0 %以下および
B:0.0002%以上、0.0025%以下
を含み、かつ
Ti:0.01%以上、0.1 %未満および
Nb:0.07%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になり、フェライト単相でかつフェライト粒径が25μm 以下の鋼組織を有し、引張強さが 420 MPa以上で、表面にめっき層をそなえることを特徴とする、耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板。 - 請求項1において、鋼組成が、さらに質量%で、
V:0.1 %以下および
Ni:0.2 %以上、1.0 %以下
のうちから選んだ1種または2種を含有する組成になることを特徴とする、耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板。 - 質量%で、
C:0.01%以下、
Si:0.5 %以下、
Mn:0.15%以上、0.5 %以下、
P:0.03%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.1 %以下、
N:0.006 %以下、
Cu:0.5 %以上、2.0 %以下および
B:0.0002%以上、0.0025%以下、
を含み、かつ
Ti:0.01%以上、0.1 %未満および
Nb:0.07%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成よりなる鋼片を、950℃超え、1100℃未満の温度に加熱したのち、仕上圧延温度:750℃未満、750 ℃以下における圧下率:50%以上の条件で熱間圧延し、550 ℃以下の温度で巻き取り、ついで酸洗後、めっき処理を施したのち、450℃以上、650℃以下の温度でCuの析出処理を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板の製造方法。 - 請求項3において、鋼片の組成が、さらに質量%で、
V:0.1 %以下および
Ni:0.2 %以上、1.0 %以下
のうちから選んだ1種または2種を含有する組成よりなることを特徴とする、耐二次加工脆性およびめっき密着性に優れた高成形性燃料タンク用めっき熱延鋼板の製造方法。
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