(発明の要旨)
本発明は、標的物質の結晶化の高スループットスクリーニングを実施するための方法よおび構造を記載する。再結晶化によって小サンプルを精製するための方法および構造もまた、提供される。
標的物質の結晶化の高スループットスクリーニングは、微細製作された流体デバイスの複数のチャンバ内に既知濃度の標的物質の溶液を同時に導入することによって達成される。次いで、この微細製作された流体デバイスは、チャンバの各々において溶媒濃度を変更するように操作され、それによって、多くの結晶化環境を同時に提供する。荷電した溶媒条件上の制御は、種々の技術から生じ得、この技術として、チャンバからの容積の排除を通して結晶化剤を計測すること、ミクロ流体デバイスの寸法によって決定されるような正確に制御された容積の結晶化剤の捕捉、または、直交フローチャネルを交差することによって規定される接合点のアレイへの交差チャネル注入が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に従って結晶化を促進するために一定容積の結晶化剤を計測する方法の1実施形態は、エラストマー膜によって制御リセスから分離されたエラストマーブロック内に一定容積を有するチャンバを提供する工程、およびその膜がチャンバ内に変形しそしてその容積が較正された量によって減少するように、制御リセスに圧力を供給し、それによって較正された一定容積の結晶化サンプルをチャンバから除外する工程、を包含する。この方法は、このチャンバの開口に第2の流体を提供する工程、および膜が元の位置に弛緩(relax)し、そして較正された容積の結晶化剤がチャンバ内に引き込まれるように圧力の適用をなくす工程を、さらに包含する。この方法はまた、異なる較正された容積を有する複数のチャンバの平行化をさらに包含する。
本発明に従って標的物質を結晶化するためのシステムの1実施形態は、一定容積の標的物質の溶液を含むように構成された微細製作チャンバを備えるエラストマーブロック、およびチャンバと流体連絡した微細製作フローチャネル、一定容積の結晶化剤をチャンバ内に導入するフローチャネルを備える。この結晶化システムは、フローチャネルが一定容積の結晶化剤を受容する際にフローチャネルからチャンバを選択的に単離し、次いで、チャンバ内の溶液条件を変更するために、チャンバをフローチャネルと接触させて配置するように構成された単離構造をさらに備える。あるいは、この結晶化システムは、チャンバ上に配置され、膜によってチャンバから分離された制御チャネルをさらに含み得、この膜は、較正された容積のサンプル溶液をチャンバから排除するようにチャンバ内に変形可能であり、その結果、この膜の弛緩は、較正された容積の結晶化剤をチャンバ内に引き込む。さらにあるいは、この結晶化システムは、標的物質と流体連絡した複数の第1の平行フローチャネル、および複数の接合点を作製するために第1のフローチャネルに直交しそして交差する複数の第2の平行フローチャネルを備え得、この第2のフローチャネルは、結晶化剤と流体連絡し、その結果、溶液環境のアレイが接合点において作製され得る。溶液環境のアレイが接合点で形成され得るように、結晶化剤と流体連絡した第2のフローチャネルを含み得る。
本発明に従って、標的物質を結晶化するためのシステムの別の実施形態は、一定容積の標的物質の溶液を含むように構成された微細製作チャンバを備えるエラストマーブロック、および透析膜を通して微細製作チャンバと流体連絡した結晶化剤リザバであって、この透析膜が、結晶化剤リザバ内への標的物質のフローを妨げるように構成されている、結晶化剤リザバを備える。この結晶化剤リザバは、第2のエラストマーブロック内に形成され得、この透析膜は、エラストマーブロック内に存在し得、そしてこの透析膜は、チャンバとリザバとの間に導入され、次いで架橋に供されるポリマーを備え得る。
本発明に従って標的物質を結晶化するための方法の1実施形態は、微細製作エラストマーブロックのチャンバを一定容積の標的物質の溶液で充填する工程;およびこのチャンバの溶媒環境を変化させるために一定容積の結晶化剤をチャンバに導入する工程を包含する。この容積の結晶化剤は、チャンバからその容積のサンプルを排除するためにチャンバ上に配置されるエラストマー膜を変形させ、続いて、膜を弛緩させその容積の周囲の結晶化剤をチャンバ内に流入させることによって、チャンバ内に導入され得る。あるいは、この容積の結晶化剤は、一定容積の結晶化剤をチャンバ付近に捕捉し、次いで、チャンバと結晶化剤との間に配置されたエラストマーバルブを開放して、チャンバへの結晶化剤の拡散を可能にすることによって、チャンバ内に導入され得る。さらにあるいは、この容積の結晶化剤は、透析膜を横たわる拡散によってチャンバ内に導入され得る。
なおさらにあるいは、このチャンバは、第2のフローチャネルと直交した第1のフローチャネルと、第2のフローチャネルとの間の接合点によって規定され得、ここで、このサンプルは第1のフローチャネルを通して流れ、そして結晶化剤は第2のフローチャネルを通って流れる。このようなチャンバのアレイは、第2の組の平行フローチャネルと直交した第1の組の平行フローチャネルと、第2の組の平行フローチャネルとの間の接合点によって規定され得、サンプルは第1のフローチャネルを通って流れ、結晶化剤は第2のフローチャネルを通って流れ、溶液状態のアレイを作製する。
標的物質を結晶化するための方法の1実施形態は、標的物質の結晶の形成のためのテンプレートとして役立つように計算されたモルフォロジーを有する表面の存在下で、標的物質溶液に結晶化剤を導入する工程を包含する。特定の実施形態において、このモルフォロジーは、鉱物表面の規則正しいモルフォロジーの形態、またはリソグラフィーによってパターン化された半導体基板の輪郭をとり得る。
本発明に従って蒸気拡散によって標的物質を結晶化するための方法の1実施形態は、微細製作チャンバ内に標的物質溶液を提供する工程、および微細製作チャンバと流体連絡した再結晶化剤を提供する工程、を包含する。空気ポケットは、チャンバと再結晶化剤との間に設けられ、その結果、結晶化剤は、気相中で、空気ポケットを横切って、標的物質溶液内に拡散する。特定の実施形態において、この空気ポケットは、ミクロ接触印刷技術を利用する疎水性材料の形成を通して、適切な位置に固定され得る。
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態、ならびにその利点および特徴は、以下の本文および添付の図面と組み合わせてより詳細に記載される。
(発明の詳細な説明)
(I.微細製作(microfabrication)の概説)
以下の考察は、米国特許出願09/826,585号(2001年4月6日出願)、同第09/724,784号(2000年11月28日出願)、および同第09/605,520号(2000年6月27日出願)に一般的に記載される、エラストマー材料を利用した、微細製作された流体デバイスの形成に関する。これらの特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
(1.製造方法)
本発明の例示的な製造方法を本明細書中に提供する。本発明は、これらの方法のうちの1つまたは他のものによる製造に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、本発明の微細構造の他の適切な製造方法(本発明を改変することを含む)もまた意図される。
図1〜図7Bは、本発明の微細構造(これは、ポンプまたはバルブとして用いられ得る)の第一の好ましい製造方法の連続工程を図示する。図7C〜図7Gは、本発明の微細構造(これもまた、ポンプまたはバルブとして用いられ得る)の第二の好ましい製造方法の連続工程を図示する。
説明するように、図1〜図7Bの好ましい方法は、集められて結合される事前硬化エラストマー層を用いることを含む。代替方法では、エラストマーの各層は、「適所で」硬化され得る。以下の説明では、「チャネル」とは、エラストマー構造中の、流体または気体の流れを含み得る溝をいう。
図1を参照して、第一の微細加工鋳型10が提供される。微細加工鋳型10は、多数の従来のシリコン加工方法(写真平板、イオンミリングおよび電子ビームリソグラフィーを含むがこれらに限定されない)によって製造され得る。
見られ得るように、微細加工鋳型10は、それに沿って延びる、隆起線または突出部11を有する。第一エラストマー層20は、示されるように、第一溝21(溝21は、突出部11に寸法が対応する)が、エラストマー層20の下表面に形成されるように、鋳型10の上部に鋳造される。
図2に見られ得るように、それに沿って延びる隆起した突出部13を有する第二の微細加工鋳型12もまた提供される。第二エラストマー層22は、溝23が、突出部13の寸法に対応するその下表面に形成されるように、示されるように、鋳型12の上部に鋳造される。
図3および図4に図示した連続工程において見られ得るように、次いで、第二エラストマー層22は鋳型12から取り出され、そして第一エラストマー層20の上部に配置される。見られ得るように、第二エラストマー層22の下表面に沿って延びる溝23は、フローチャネル32を形成する。
図5を参照して、次いで、別個の第一エラストマー層20および第二エラストマー層22(図4)は、一緒に結合されて、一体型(すなわち、モノリシック)エラストマー構造24が形成される。
図6および図7Aの連続工程において見られ得るように、次いで、エラストマー構造24は、鋳型10から取り出され、そして平面基板14の上部に配置される。図7Aおよび図7Bにおいて見られ得るように、エラストマー構造24がその下表面で平面基板14に対してシールされた場合、溝21は、フローチャネル30を形成する。
本発明のエラストマー構造は、ほぼ任意の平滑平面基板と可逆的気密シールを形成する。このようにしてシールを形成することに対する利点は、エラストマー構造が、はがされ得、洗浄され得、そして再使用され得ることである。好ましい局面では、平面基板14はガラスである。ガラスを使用することのさらなる利点は、ガラスは透明であって、エラストマーチャネルおよび容器の光学的な取り調べ(optical interrogation)を可能にすることである。あるいは、エラストマー構造は、上記と同じ方法によって平坦なエラストマー層へと結合されて、永続的かつ高強度の結合を形成し得る。これは、より高い背圧が用いられる場合の利点を証明し得る。
図7Aおよび図7Bにおいて見られ得るように、フローチャネル30およびフローチャネル32は好ましくは、フローチャネル30の上部をフローチャネル32の下部と分離する、基板24の小さな膜25と、互いにある角度で配置される。
好ましい局面では、平面基板14はガラスである。ガラスを用いることの利点は、本発明のエラストマー構造がはがされ得、洗浄され得、そして再使用され得ることである。ガラスを用いることのさらなる利点は、光学検知が用いられ得ることである。あるいは、平面基板14は、より高い背圧が用いられる場合、有益であると判明し得る、エラストマー自体であり得る。
ここに記載した製造方法は、デバイスのチャネルの壁を形成する材料とは異なるエラストマー材料から構成される膜を有する構造を形成するように改変され得る。この異なる製造方法を図7C〜図7Gに図示する。
図7Cを参照して、第一微細加工鋳型10が提供される。微細加工鋳型10は、それに沿って延びた、隆起線または突出部11を有する。図7Dでは、第一エラストマー層20は、第一エラストマー層20の上部が隆起線または突出部11の上部で洗い流されるように、第一の微細加工鋳型10の上部に鋳造される。これは、鋳型10上に吐出されるエラストマー材料の容積を、隆起線11の既知の高さに対して、注意深く制御することによって達成され得る。あるいは、所望の形状が、射出成形によって形成され得る。
図7Eでは、それに沿って延びた隆起した突出部13を有する第二の微細加工鋳型12もまた提供される。第二エラストマー層22は、溝23が、突出部13の寸法に対応するその下表面に形成されるように、示されるように第二鋳型12の上部に鋳造される。
図7Fでは、第二エラストマー層22は、鋳型12から取り出され、そして第三エラストマー層222の上部に配置される。第二エラストマー層22は、第三エラストマー層20に結合されて、以下に詳細に記載される技術を用いて、一体型エラストマーブロック224が形成される。このプロセスのこの点では、隆起線13によって以前は占められていた溝23が、フローチャネル23を形成する。
図7Gでは、エラストマーブロック224は、第一微細加工鋳型10および第一エラストマー層20の上部に配置される。次いで、エラストマーブロックおよび第一エラストマー層20は一緒に結合されて、別のエラストマー層222から構成される膜を有する一体型(すなわち、モノリシック)エラストマー構造24を形成する。
エラストマー構造24が、その下表面で、図7Aに関して上記で記載した様式で平面基板にシールされている場合、隆起線11によって以前占められていた溝は、フローチャネル30を形成する。
図7C〜図7Gに関連して上記で図示した別の製造方法は、膜部分が、その構造の残部のエラストマー材料とは別の材料から構成されるのを可能にするという利点を提供する。これは、重要である。なぜなら、膜の厚さおよび弾性特性は、デバイスの操作において重要な役割を果たすからである。さらに、この方法は、別のエラストマー層が、エラストマー構造に取り込まれる前にコンディショニングに容易に供されるのを可能にする。以下に詳細に考察するように、潜在的に望ましい条件の例としては、膜の作動および/またはその弾性を変更するための膜へのドーパントの導入を可能にする磁気伝導種または電気伝導種の導入が挙げられる。
上記の方法は、微細加工鋳型の上部での複製成形によって形成される種々の成形エラストマー層を形成することに関して例示されたが、本発明は、この技術に限定されない。他の技術を用いて、一緒に結合されるべき成形エラストマー材料の個々の層を形成し得る。例えば、エラストマー材料の成形層は、レーザー切断もしくは射出成形によって、または第二の例示的な方法に関連して以下に考察されるとおりの化学エッチングおよび/もしくは犠牲材料を利用する方法によって、形成され得る。
代替的な方法は、エラストマー材料内にカプセル化されたフォトレジストの現像を利用する、パターン形成エラストマー構造を製造する。しかし、本発明による方法は、フォトレジストを利用することに限定されない。他の材料(例えば、金属)もまた、周囲のエラストマー材料に対して選択的に除去されるべき犠牲材料として役立ち得、そしてこの方法は、本発明の範囲内にある。例えば、金金属は、適切な化学混合物を利用してRTV 615エラストマーに対して選択的にエッチングされ得る。
(2.層およびチャネルの寸法)
微細製作されたとは、本発明の実施形態に従って製造されたエラストマー構造の特徴の大きさをいう。一般に、微細製作された構造の少なくとも1つの寸法におけるバリエーションは、ミクロンレベルまで制御され、少なくとも1つの寸法は、微視的(すなわち、1000μm未満)である。
微細製作は代表的に、顕微鏡レベルの特徴寸法を生じるために設計された、半導体またはMEMS製造技術(例えば、写真平板および回転被覆(spincoating))を含み、微細製作された構造の寸法の少なくともいくつかは、この構造を合理的に解明/画像化するために顕微鏡を必要とする。
好ましい局面では、フローチャネル30、および32は好ましくは、約10:1の幅:深さ比を有する。本発明の実施形態に従った幅:深さ比の他の範囲の非限定的リストは、0.1:1〜100:1、より好ましくは1:1〜50:1、より好ましくは2:1〜20:1、そして最も好ましくは3:1〜15:1である。例示的な局面では、フローチャネル30、および32は、約1〜1000ミクロンの幅を有する。本発明の実施形態に従ったフローチャネルの幅の他の範囲の非限定的リストは、0.01〜1000ミクロン、より好ましくは0.05〜1000ミクロン、より好ましくは0.2〜500ミクロン、より好ましくは1〜250ミクロン、そして最も好ましくは10〜200ミクロンである。例示的なチャネル幅としては、以下が挙げられる:0.1μm、1μm、2μm、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μmおよび250μm。
フローチャネル30、および32は、約1〜100ミクロンの深さを有する。本発明の実施形態に従ったフローチャネルの深さの他の範囲の非限定的リストは、0.01〜1000ミクロン、より好ましくは0.05〜500ミクロン、より好ましくは0.2〜250ミクロン、そしてより好ましくは1〜100ミクロン、より好ましくは2〜20ミクロン、そして最も好ましくは5〜10ミクロンである。例示的なチャネル深さとしては、以下が挙げられる:0.01μm、0.02μm、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、7.5μm、10μm、12.5μm、15μm、17.5μm、20μm、22.5μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、および250μm。
フローチャネルは、上記で与えたこれらの特定の寸法範囲および例に限定されず、そして、図1および7Bに関連して以下に詳細に考察したとおりに膜を反らせるために必要な大きさの力に影響を与えるために幅が変化し得る。例えば、0.01μmの桁の幅を有する極めて狭いフローチャネルは、以下に詳細に考察したとおり、光学的適用および他の適用において有用であり得る。上記よりもさらに大きな幅のチャネルを有する部分を含むエラストマー構造もまた、本発明によって意図され、そしてこのようなより幅の広いフローチャネルを利用する適用の例としては、流体容器およびチャネル構造の混合が挙げられる。
エラストマー層は、機械的安定性のために厚く鋳造され得る。例示的な実施形態では、図1のエラストマー層22は、50ミクロン〜数センチメートルの厚さであり、そしてより好ましくは約4mmの厚さである。本発明の他の実施形態に従ったエラストマー層の厚さの範囲の非限定的リストは、約0.1ミクロン〜10cm、1ミクロン〜5cm、10ミクロン〜2cm、100ミクロン〜10mmの間である。
従って、図7Bの、フローチャネル30とフローチャネル32とを分離する膜25は、約0.01ミクロンと約1000ミクロンとの間、より好ましくは0.05〜500ミクロン、より好ましくは0.2〜250、より好ましくは1〜100ミクロン、より好ましくは2〜50ミクロン、そして最も好ましくは5〜40ミクロンの間の代表的厚さを有する。その結果、エラストマー層22の厚さは、エラストマー層20の厚さの約100倍である。例示的な膜の厚さとしては、以下が挙げられる:0.01μm、0.02μm、0.03μm、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、5μm、7.5μm、10μm、12.5μm、15μm、17.5μm、20μm、22.5μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、400μm、500μm、750μm、および1000μm。
(3.ソフトリソグラフィー結合)
好ましくは、エラストマー層は、パターン形成エラストマー層を含むポリマーに固有である化学を用いて化学的に一緒に結合される。最も好ましくは、結合は、二成分「添加硬化(addition cure)」結合を含む。
好ましい局面では、エラストマーの種々の層は、層が異なる化学的性質を有する不均一結合で一緒に結合される。あるいは、全ての層が同じ化学的性質のものである均一結合が用いられ得る。第三に、それぞれのエラストマー層は、必要に応じて、その代わりに、接着剤によって一緒に貼り付けられ得る。第四の局面では、エラストマー層は、加熱によって一緒に結合される熱硬化性エラストマーであり得る。
均一結合の1つの局面では、エラストマー層は、同じエラストマー材料から構成され、1つの層における同じ化学実体は、他の層における同じ化学実体と反応して、これらの層を一緒に結合する。1つの実施形態では、同様のエラストマー層のポリマー鎖の間の結合は、光、熱または別個の化学種との化学反応に起因した架橋剤の活性化から生じ得る。
あるいは、不均質な局面では、エラストマー層は、異なるエラストマー材料から構成され、1つの層における第一の化学実体は、別の層における第二の化学実体と反応する。1つの例示的な不均一局面では、それぞれのエラストマー層を一緒に結合するために用いられる結合プロセスは、RTV 615シリコーンの2つの層を一緒に結合することを含み得る。RTV 615シリコーンは、二部添加硬化シリコーンゴムである。A部は、ビニル基および触媒を含む;B部は、水素化ケイ素(Si−H)基を含む。RTV 615についての従来の比は、10A:1Bである。結合に関して、1つの層は、30A:1B(すなわち、過剰なビニル基)で作製され得、そして他方は、3A:1B(すなわち、過剰なSi−H基)で作製され得る。各層は、別々に硬化される。この2つの層を接触させて、高温で加熱した場合、これらは、不可逆的に結合して、モノリシックエラストマー基板を形成する。
本発明の例示的な局面では、Sylgard 182、184もしくは186、または脂肪族ウレタンジアクリレート(例えば、UCB ChemicalからのEbecryl 270またはIrr 245(しかしこれらに限定されない))を利用して、エラストマー構造が形成される。
本発明に従った1つの実施形態では、純粋なアクリレート化Urethane Ebe
270から2層エラストマー構造を製造した。薄い下層を、8000rpmで15秒間、170℃で回転被覆した。上層および下層を、Electrolite corporationによって製造されるModel ELC 500デバイスを利用して、紫外光下で窒素下にて10分間、最初に硬化させた。次いで、組立てられた層を、さらに30分間かけて硬化させた。反応は、Ciba−Geigy Chemicalsによって製造されたIrgacure 500の0.5% vol/vol混合物によって触媒された。得られたエラストマー材料は、中程度の弾性およびガラスへの接着を示した。
本発明に従った別の実施形態では、2層エラストマー構造は、薄い下層については25% Ebe 270/50% Irr245/25%イソプロピルアルコール、そして上層としての純粋なアクリレート化Urethane Ebe 270の組合せから製造された。薄い下層を、紫外光下で窒素下にて、Electrolite corporationによって製造されるModel ELC 500デバイスを利用して、最初に5分間かけて硬化させ、そして上層を最初に10分間かけて硬化させた。次いで、組立てられた層を、さらに30分間かけて硬化させた。反応は、Ciba−Geigy Chemicalsによって製造されたIrgacure 500の0.5% vol/vol混合物によって触媒された。得られたエラストマー材料は、中程度の弾性を示し、そしてガラスへ接着した。
あるいは、例えば、接触して配置した場合にエラストマー層/基板が結合するように、プラズマ曝露によってエラストマー表面を活性化することを含め、他の結合方法を用い得る。例えば、同じ材料から構成されるエラストマー層を一緒に結合するための1つの可能なアプローチは、本明細書中に参考として援用される、Duffyら,「Rapid Prototyping of Microfluidic Systems in Poly(dimethylsiloxane)」、Analytical Chemistry(1998),70,4974−4984によって示される。この論文は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)層を酸素プラズマに曝露することが、表面の酸化を引き起こし、2つの酸化層が接触するように配置された場合、不可逆的結合が生じると考察する。
エラストマーの連続層を一緒に結合するためのなお別のアプローチは、未硬化エラストマーの接着特性を利用することである。特に、未硬化のエラストマー(例えば、RTV 615)の薄層は、第一の硬化エラストマー層の上部に適用される。次に、第二の硬化エラストマー層は、未硬化のエラストマー層の上部に配置される。次いで、未硬化のエラストマーの薄い中間層を硬化させて、モノリシックエラストマー構造が生成される。あるいは、未硬化のエラストマーは、第一の硬化エラストマー層の下に適用され得、第一の硬化エラストマー層は、第二の硬化エラストマー層の上に配置される。ここでも、中間の薄いエラストマー層を硬化させることは、モノリシックエラストマー構造の形成をもたらす。
犠牲層のカプセル化を用いて、エラストマー構造を製造する場合、連続エラストマー層の結合は、予め硬化されたエラストマー層およびその上にパターン形成された任意の犠牲材料上に未硬化のエラストマーを注ぐことによって達成され得る。エラストマー層間の結合は、未硬化のエラストマー層のポリマー鎖と硬化エラストマー層のポリマー鎖との相互浸透および反応に起因して生じる。エラストマー層のその後の硬化は、エラストマー層の間に結合を作製し、そしてモノリシックエラストマー構造を作製する。
図1〜図7Bの第一方法を言及して、第一エラストマー層20は、微細製作された鋳型12にRTV混合物を2000rpmで30秒間にわたって回転被覆して、約40ミクロンの厚みを生じることによって作製され得る。第二エラストマー層22は、微細製作された鋳型11上にRTV混合物を回転被覆することによって作製され得る。層20および層22は両方とも、約80℃で1.5時間かけて別々に焼かれ得るかまたは硬化され得る。第二エラストマー層22は、第一エラストマー層20上に約80℃で約1.5時間かけて結合され得る。
微細加工鋳型10および12は、シリコンウェーハ上のパターン形成フォトレジストであり得る。例示的な局面では、Shipley SJR 5740フォトレジストを、2000rpmで回転させ、マスクとして高解像度の透明フィルムを用いてパターン形成され、次いで現像されて、約10ミクロンの高さの逆チャネルが得られた。約200℃で約30分間かけて焼かされた場合、フォトレジストは再度流動し、そして逆チャネルが丸くなる。好ましい局面では、鋳型は、シリコーンゴムの接着を防止するために、各使用の前にトリメチルクロロシラン(TMCS)蒸気で約1分間かけて処理され得る。
(4.適切なエラストマー材料)
Allcockら、Contemporary Polymer Chemistry、第2版は、エラストマーを、それらのガラス転移温度と液化温度との間の温度で存在するポリマーとして一般的に記載する。エラストマー材料は、弾性特性を示す。なぜなら、ポリマー鎖は、力に応答して骨格鎖のほぐれを可能にするねじれ運動を容易に受け、この力の非存在下では骨格鎖は巻き戻されて以前の形状をとるからである。一般に、エラストマーは、力がかけられた場合に変形するが、次いで、その力が取り除かれたときはその元の形状に戻る。エラストマー材料によって示される弾性は、ヤング率によって特徴付けられ得る。約1Pa〜1TPaの間、より好ましくは約10Pa〜100GPaの間、より好ましくは約20Pa〜1GPaの間、より好ましくは約50Pa〜10MPaの間、そしてより好ましくは約100Pa〜1MPaの間のヤング率を有するエラストマー材料は、本発明に従って有用であるが、これらの範囲外のヤング率を有するエラストマー材料もまた、特定の適用の必要性に依存して利用され得る。
本発明のシステムは、広範な種々のエラストマーから製造され得る。例示的な局面では、エラストマー層は、好ましくはシリコーンゴムから製造され得る。しかし、他の適切なエラストマーもまた使用され得る。
本発明の例示的な局面では、本発明のシステムは、エラストマーポリマー(例えば、GE RTV 615(調合物)(ビニルシラン架橋(型)シリコーンエラストマー(ファミリー))から製造される。しかし、本発明のシステムは、この1つの処方にも、型にも、このファミリーのポリマーにさえ制限されない;むしろ、ほぼ任意のエラストマーポリマーが適切である。本発明のミクロバルブの製造の好ましい方法についての重要な必要条件は、複数の層のエラストマーを一緒に結合する能力である。複数層ソフトリソグラフィーの場合、エラストマーの層を別々に硬化させ、次いで一緒に結合させる。このスキームは、硬化された層が、一緒に結合するに充分な反応性を有することを必要とする。いずれかの層は、同じ型のものであり得、そしてそれら自体を結合し得るか、または2つの異なる型のものであり得、そして互いに結合し得る。他の可能性としては、層の間での接着剤の使用および熱硬化性エラストマーの使用が挙げられる。
ポリマーの化学的性質、前駆体、合成方法、反応条件および潜在的添加剤の途方もなく大きな多様性を考慮すると、モノリシックエラストマーミクロバルブおよびポンプを作製するために用いられ得る、莫大な数の可能なエラストマーシステムが存在する。用いられる材料におけるバリエーションは、特定の材料の特性(すなわち、溶剤耐性、剛性、気体透過性または温度安定性)についての必要性によって支配される可能性が最も高い。
非常に多くの種類のエラストマーポリマーが存在する。比較的「標準的な」ポリマーを用いてさえ、結合についての多くの可能性が存在することを示すことを意図して、最も一般的なクラスのエラストマーの簡単な説明を本明細書中に提示する。一般的なエラストマーポリマーとしては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ポリウレタン、およびシリコーンが挙げられる。
(ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン:)
ポリイソプレン、ポリブタジエン、およびポリクロロプレンは全て、ジエンモノマーから重合され、それゆえ、重合した場合に1つのモノマーあたり1つの二重結合を有する。この二重結合は、このポリマーが、加硫(本質的に、硫黄を用いて、加熱によって二重結合の間に架橋が形成される)によってエラストマーへと変換されるのを可能にする。これは、層の不完全な加硫によって均一な複数層ソフトリソグラフィーが結合されるのを容易に可能にする;フォトレジストカプセル化は、類似の機構によって可能である。
(ポリイソブチレン:)
純粋なポリイソブチレンは、二重結合を有さないが、エラストマーとして使用するために、少量(約1%)のイソプレンを重合時に含めることによって架橋される。イソプレンモノマーは、ポリイソブチレン骨格にペンダント二重結合を与え、次いで、これは、上記のとおりに加硫され得る。
(ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン):)
ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)は、活発(living)アニオン重合(すなわち、反応中に天然の鎖終結工程は存在しない)によって生成され、それゆえ、「活発な」ポリマー末端が、硬化したポリマー中に存在し得る。これにより、このポリマーは、本発明のフォトレジストカプセル化システムについての天然の候補となり、ここで、硬化した層の上に注がれた液体層中に多数の未反応モノマーが存在する。不完全硬化は、均一な複数層ソフトリソグラフィー(AとAとの結合)を可能にする。この化学的性質もまた、(不均質な複数層ソフトリソグラフィーについては)過剰なブタジエンおよびカップリング剤を有する1つの層(「A」)およびブタジエン不足を有する他の層(「B」)が作製されるのを容易にする。SBSは、「熱硬化性エラストマー」であり、特定の温度より上では、これが溶けて(弾性とは対照的に)可塑性になり;温度を下げると、このエラストマーが再度得られることを意味する。従って、層は、加熱によって一緒に結合され得る。
(ポリウレタン)
ポリウレタンは、ジ−イソシアネート(di−isocyanates)(A−A)およびジ−アルコール(di−alcohols)またはジ−アミン(di−amines)(B−B)から生成される;非常に種々のジ−イソシアネートおよびジ−アルコール/アミンが存在するため、異なるタイプのポリウレタンの数は膨大である。しかし、ポリマーのA対Bの性質により、このポリウレタンは、ちょうどRTV 615のように、一方の層において過剰のA−Aを、そして他方の層において過剰のB−Bを使用することにより、不均一多層軟質リゾグラフィーについて有用になる。
(シリコーン)
シリコーンポリマーは、おそらく、最も多くの構造多様性を有し、そしてほとんどが必ず、最多数の市販の処方物を有する。ビニル−(Si−H)架橋のRTV 615(これは不均一多層軟質リゾグラフィーおよびフォトレジストカプセル化の両方を可能にする)は、すでに議論されているが、これは、シリコーンポリマー化学において使用されるいくつかの架橋方法のうちのわずか1つである。
(5.デバイスの操作)
図7Bおよび7Hは、共に、第2のフローチャネルを加圧することにより第1のフローチャネルを閉じることを示し、図7B(対応する図7Aにおけるフローチャネル32を通して切られた前断面図)は、開いている第1のフローチャネル30を示し、図7Hは、第2のフローチャネル32を加圧することにより閉じられた第1のフローチャネル30を示す。
図7Bを参照すると、第1のフローチャネル30および第2のフローチャネル32が示される。膜25は、フローチャネルを分離し、第1のフローチャネル30の上部および第2のフローチャネル32の底部を形成する。見られ得るように、フローチャネル30は、「開いて」いる。
図7Hにおいて見られ得るように、フローチャネル32の加圧(その中に導入された気体または液体のいずれかによって)は、膜25を下向に反らせ、それによりフローチャネル30を通過する流れFを締める。従って、チャネル32内の圧力を変更することにより、直線的に作動可能なバルブシステムが提供され、その結果、フローチャネル30は、膜25を必要に応じて動かすことにより、開閉され得る。(例示目的のみのために、図7Gのチャネル30は、「完全に閉じられた」位置ではなく「ほとんど閉じられた」位置で示される。)
このようなバルブは、チャネル自体のルーフを移動(すなわち、膜25を移動)させることにより作動されるので、この技術により製造されるバルブおよびポンプは、正確にゼロの死容積を有し、そしてこの技術により作製される切り換えバルブは、バルブの有効容積にほぼ等しい死容積(例えば、約100×100×10μm=100pL)を有する。膜を移動することにより消費されるこのような死容積および面積は、公知の従来のマイクロバルブよりも約2オーダー小さい。より小さいバルブおよび切り換えバルブならびにより大きいバルブおよび切り換えバルブが、本発明において意図され、そして死容積の範囲の非限定的な列挙としては、1aL〜1μL、100aL〜100nL、1fL〜10nL、100fL〜1nL、および1pL〜100pLが挙げられる。
本発明に従うポンプおよびバルブにより送達され得る非常に小さい容積は、実質的な利点を示す。詳細には、手動で測定可能な流体の最小の既知の容積は、約0.1μlである。自動化システムにより測定可能な最小の既知の容積は、約10倍大きい(1μl)。本発明に従うポンプおよびバルブを使用すると、10nl以下の液体の容積が、慣用的に測定され得、そして分配され得る。本発明により可能にされる非常に小さい容積の流体の正確な測定は、多数の生物学的用途(診断試験およびアッセイを含む)において非常に価値がある。
式1は、均一な厚みを有する矩形で線形の弾性の等方性のプレートの、適用された圧力による変形の非常に単純化された数学的モデルを表す:
(1)w=(BPb4)/(Eh3)
ここで、
w=プレートの変形;
B=形状係数(長さ対幅、およびプレートの縁部の支持に依存する);
P=適用される圧力;
b=プレートの幅
E=ヤング率;および
h=プレートの厚み。
従って、この非常に単純化された式においてでさえ、圧力に応答するエラストマー膜の変形は、以下の関数である:この膜の長さ、幅および厚み、この膜の可撓性(ヤング率)、ならびに適用される作動力。これらのパラメーターの各々は、本発明に従う特定のエラストマーデバイスの実施の寸法および物理的組成に依存して大きく異なるので、広範な膜の厚みおよび弾性、チャネル幅、および作動力が、本発明によって意図される。
一般的に、膜は均一な厚みを有さず、膜厚は長さおよび幅と比較して小さい必要はなく、そして変形は、この膜の長さ、幅または厚みと比較して小さい必要はないので、すぐ上で示された式は近似に過ぎないことが理解されるべきである。それにもかかわらず、この式は、変形 対 適用される力の所望の応答を達成するために有用なパラメーターを調整するための有用なガイドとしてはたらく。
図8Aおよび8Bは、100μm幅の第1のフローチャネル30、および50μm幅の第2のフローチャネル32についてのバルブ開口 対 適用される圧力を例示する。このデバイスの膜を、約30μmの厚みおよび約750kPaのヤング率を有するGeneral Electric Silicones RTV 615の層により形成した。図8Aおよび8Bは、バルブの開口の程度が適用される圧力の範囲のほとんどにわたって実質的に直線的であることを示す。
空気圧を、外径0.025インチおよび内径0.013インチのステンレス鋼皮下チューブの25mmの部品に取り付けられた外径0.025インチを有するプラスチックチューブの10cm長の部品を通して、このデバイスの膜に適用した。このチューブを、制御チャネルに対して垂直な方向で、エラストマーブロックに挿入することによって、この制御チャネルと接触させた。空気圧を、Lee Co.製の外部LHDA小型ソレノイドバルブから皮下チューブに適用した。
デバイスを通る材料の流れの制御は、従来、適用される気体圧を使用することが記載されているが、他の流体は使用できなかった。
例えば、空気は、圧縮可能であり、従って、外部ソレノイドバルブによる圧力の適用の時間とこの圧力が膜により経験される時間との間にある程度の有限の遅れを被る。本発明の代替の実施形態において、圧力は、外部供給源から非圧縮可能流体(例えば、水または水硬性油)に適用され得、その結果、膜に適用された圧力のほぼ即時の伝達が生じる。しかし、バルブの移動流体が大きいかまたは制御チャネルが狭い場合、より高い粘度の制御流体が、作動の遅延に寄与し得る。従って、圧力を伝達するために最適な媒体は、特定の用途およびデバイスの構成に依存し、そして気体媒体および液体媒体の両方が、本発明により意図される。
上記のような外部適用圧力は、圧力調整器および外部小型バルブを介してポンプ/タンクシステムにより適用されるが、外部圧力を適用する他の方法(ガスタンク、圧縮機、ピストンシステムおよび液体のカラム)もまた本発明において意図される。例えば、生きた生物内に見出されるような天然に存在する圧力供給源(例えば、血圧、胃圧、能脊髄液に存在する圧力、眼内空間に存在する圧力、および通常の湾曲の間の筋肉により及ぼされる圧力)の使用もまた、意図される。外部圧力を調節する他の方法(例えば、小型バルブ、ポンプ、巨視的蠕動ポンプ、ピンチバルブおよび当該分野で公知の他のタイプの流体調節機器)の使用もまた意図される。
見られ得るように、本発明の実施形態に従うバルブの応答は、最小のヒステリシスで、その移動範囲の大部分にわたってほとんど完全な線形であることが実験的に示されている。従って、本発明のバルブは、ミクロ流体測定および流体制御のために理想的に適している。バルブ応答の線形性は、個々のバルブが、フックの法則のバネとして十分にモデリングされていることを示す。さらに、フローチャネル内の高圧(すなわち、背圧)は、単に作動圧力を増加することによって打ち勝たれ(countered)得る。実験的に、本発明者らは、70kPaの背圧でバルブの閉鎖を達成したが、より高い圧力もまた意図される。以下は、本発明により包含される圧力範囲の非排他的な列挙である:10Pa〜25MPa;100Pa〜10MPa、1kPa〜1MPa、1kPa〜300kPa、5kPa〜200kPa、および15kPa〜100kPa。
バルブおよびポンプは、開閉するために線形作動を必要としないが、線形応答により、バルブは、測定デバイスとしてより容易に使用され得る。本発明の一実施形態において、バルブの開放は、公知の閉鎖の程度まで部分的に作動されることによって、流速を制御するために使用される。線形バルブ作動により、バルブを所望の閉鎖の程度まで閉じるのに必要な作動力の量を決定することが容易になる。線形作動の別の利点は、バルブの作動に必要な力が、フローチャネル内の圧力から容易に決定され得ることである。作動が線形である場合、フローチャネル内の圧力の増加は、同じ圧力(単位面積あたりの力)をバルブの作動部分に加えることにより、打ち勝たれ得る。
バルブの線形性は、構造、組成およびバルブ構造の作動方法に依存する。さらに、線形性がバルブにおける所望の特徴であるか否かは、用途に依存する。従って、線形および非線形の作動可能バルブが、本発明において意図され、そしてバルブが線形作動可能である圧力範囲は、特定の実施形態に伴って変化する。
図9は、上記のように、チップから空気圧式バルブに接続された10cm長の空気チューブを有する100μm×100μm×10μmのRTVマイクロバルブの時間応答(すなわち、適用される圧力の変化に応答する時間の関数としてのバルブの閉鎖)を例示する。
デジタル制御シグナルの2つの期間、チューブの末端における実際の空気圧およびバルブの開口が、図9に示される。コントロールラインに適用される圧力は、100kPaであり、これは、バルブを閉鎖するのに必要な約40kPaよりも実質的に高い。従って、閉鎖する場合、バルブは、必要な圧力よりも60kPa高い圧力で、押し閉じられる。しかし、開く場合、バルブは、そのバネ直(40kPa以下)によりその静止位置まで戻される。従って、τcloseは、τopenよりも小さいことが予想される。圧力を制御するために使用される小型バルブの制限に起因して、制御シグナルと制御圧力応答との間のずれもまた存在する。このようなずれをt、1/e時間定数をτと呼ぶと、値は、topen=3.63ms、τopen=1.88ms、tclose=2.15ms、τclose=0.51msである。3つのτの各々が、開閉を可能にする場合、このバルブは、水溶液で満たされた場合、75Hzにおいて最適に作動する。
開口および閉鎖のずれを受けなかった別の作動方法を使用する場合、このバルブは、約375Hzで作動する。膜厚を変えることによってバネ定数が調節され得ることもまた注意のこと。これは、速い開口および速い閉鎖の最適化を可能にする。バネ定数はまた、膜にドーパントを導入することによってまたは膜として働く異なるエラストマー材料を使用することによって(図7C〜7Hと共に上で示される)とおそらく同様に、膜の弾性(ヤング率)を変えることによって調節され得る。
図9に例示されるように、バルブ特性を実験的に測定する場合、バルブの開口を蛍光によって測定した。この実験において、フローチャネルを、緩衝液(pH≧8)中のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)の溶液で満たし、そして、チャネルの中心の約3分の1を占めるある平方面積の蛍光を、10kHzのバンド幅を有する光電子増倍管を備えるエピ蛍光顕微鏡でモニタリングする。この圧力を、ほとんど同じ空気圧式接続を介するコントロールラインと同時に加圧される、Wheatstone−bridge圧力センサ(SenSymSCC15GD2)を用いてモニタリングした。
(6.フローチャネルの断面)
本発明のフローチャネルは、必要に応じて、異なる断面サイズおよび形状で設計され得、それらの所望の用途に依存して、異なる利点を与える。例えば、下部フローチャネルの断面形状は、その長さ全体に沿ってかまたは上部交差チャネルの下に配置される領域中に湾曲上部表面を有し得る。このような湾曲上部表面は、以下のように、バルブのシーリングを容易にする。
図10を参照すると、フローチャネル30および32を通る断面図(図7Bの断面図と類似)が示される。見られ得るように、フローチャネル30は、矩形の断面形状である。本発明の代替の好ましい局面において、図10に示されるように、フローチャネル30の断面は、上部湾曲表面を有する。
最初に図10を参照すると、フローチャネル32が加圧される場合、フローチャネル30および32を分離しているエラストマーブロック24の膜部分25は、破線25A、25B、25C、25Dおよび25Eにより示される連続的な部分に向かって下向きに動く。見られ得るように、おそらく、不完全なシーリングが、平面基材14に隣接するフローチャネル30の縁部において生じ得る。
図11の代替の好ましい実施形態において、フローチャネル30aは、湾曲上部壁25Aを有する。フローチャネル32が加圧される場合、膜部分25は、破線25A2、25A3、25A4および25A5により示される連続した位置まで下向きに動き、膜の縁部分は、最初にフローチャネルに向かって動き、次いで、上部膜部分に向かって動く。このような湾曲上部表面を膜25Aにおいて有することの利点は、より完全なシールが、フローチャネル32が加圧される場合に提供されることである。詳細には、フローチャネル30の上部壁は、平面基材14に対して連続的に接触する縁部を提供し、それにより、壁25と図10に示されるフローチャネル30の底部との間に見られる接触の「島(island)」を回避する。
湾曲上部フローチャネル表面を膜25Aにおいて有することの別の利点は、この膜が、作動に応答して、フローチャネルの形状および容積により容易に適合し得ることである。詳細には、矩形のフローチャネルが用いられる場合、全周囲(2×フローチャネルの高さ+フローチャネルの幅)が、このフローチャネルに押しつけられなければならない。しかし、アーチ形のフローチャネルが使用される場合、材料のより小さい周囲(半円のアーチ形部分のみ)が、このチャネルに押しつけられなければならない。このように、膜は、作動のために周囲の小さい変化しか必要とせず、従って、フローチャネルをブロックするために適用される作動力により応答性である。
代替の局面(図示せず)、フローチャネル30の底部は丸く、その結果、この湾曲した表面は、上記の図20において見られるように、湾曲上部壁25Aと一致する。
まとめると、作動時に膜により受ける実際の構造変化は、特定のエラストマー構造の構成に依存する。詳細には、この構造変化は、膜の長さ、幅および厚みのプロフィール、その残りの構造への付着、フローチャネルおよび制御チャネルの高さ、幅および形状、ならびに使用されるエラストマーの材料特性に依存する。この構造変化はまた、適用される圧力に応答する膜の作動が、磁力または静電力に応答する作動とは幾分か異なる場合に、作動方法に依存する。
さらに、膜における所望の構造変化はまた、エラストマー構造についての特定の用途に依存して変わる。上記の最も単純な実施形態において、バルブは、バルブの閉鎖の程度を制御するために、測定しながら開かれるかまたは閉じられるかのいずれかであり得る。しかし、他の実施形態において、より複雑な流れの調節を達成するために、膜および/またはフローチャネルの形状を変更することが望まれ得る。例えば、このフローチャネルに、膜部分の下の隆起した突出部が設けられ得、その結果、作動時において、この膜は、フローチャネルを通る流れのある割合のみを遮断し、適用された作動力に非感受性の流れの割合がブロックされる。
多くの膜圧プロフィールおよびフローチャネルの断面(矩形、台形、円形、楕円形、放物線形、双曲線形および多角形、ならびに上記の形状の部分を含む)が、本発明によって意図される。より複雑な断面形状(例えば、すぐ上で議論された突出物を有する実施形態またはフローチャネル中に凹部を有する実施形態)もまた、本発明により意図される。
さらに、本発明は、フローチャネルの壁部および天井部がエラストマーから形成され、そしてこのチャネルの床部が下にある基材から形成されている実施形態と共に、主に上で記載されているが、本発明は、この特定の配向に限定されない。チャネルの壁部および床部はまた、下にある基材中に形成され得、フローチャネルの天井部のみがエラストマーから構築される。このエラストマーフローチャネルの天井部は、適用される作動力に応答して、チャネルに向かって下向きに突出し、それにより、このフローチャネルを通る材料の流れを制御する。一般に、本願の他の場所で記載されるようなモノリシックエラストマー構造は、ミクロ流体用途に好ましい。しかし、このような配置が利点を提供する場合、基材中に形成されたチャネルを用いることが有用であり得る。例えば、光導波管を備える基材が構築され、その結果、この光導波管は、光を、特にミクロ流体チャネルの側面に方向付ける。
(7.代替のバルブ作動技術)
上記の圧力ベースの作動システムに加えて、任意の静電的作動システムおよび磁気的作動システムもまた、以下のように、意図される。
静電的作動は、反対の電荷の電極(これは、電圧差がこれに適用された場合に、互いに引きつけ合う傾向がある)を、モノリシックエラストマー構造に直接形成することによって達成され得る。例えば、図7Bを参照すると、任意の第1の電極70(想像線で示される)は、膜25の上(または中)に配置され得、そして任意の第2の電極(これもまた想像線で示される)は、平面基材14の上(または中)に配置され得る。電極70および72が、反対の極性で荷電される場合、この2つの電極の間の引力が、膜25を下向きに反らせ、それにより、「バルブ」を閉じる(すなわち、フローチャネル30を閉じる)。
静電的作動を支持するのに十分導電性であるが、バルブの動きを妨害するには機械的にそれほど堅くない膜電極について、十分に可撓性の電極が、膜25の中または上に設けられるべきである。このような電極は、ポリマーを導電性材料でドープするか、または導電性材料から表面層を作製する、金属化薄層により提供され得る。
例示的な局面において、変形膜に存在する電極は、例えば、20nmの金の様な金属の薄層をスパッタリングすることにより提供され得る金属化薄層により提供され得る。スパッタリングによる金属化膜の形成に加えて、他の金属化アプローチ(例えば、化学エピタクシー、蒸発、電気メッキおよび無電解めっき)もまた有用である。金属を、この金属が付着しにくい平面基材に蒸発させ、次いでこのエラストマーをこの金属上にめっきし、そしてこの基材からこの金属を剥離することによる、エラストマー表面への金属層の物理的移動もまた、有用である。
導電性電極70はまた、エラストマー表面にカーボンブラック(すなわち、Cabot
Vulcan XC72R)を蒸着することによって、乾燥粉末をふき取ることによってまたはエラストマーの膨潤が生じる溶液(例えば、PDMSの場合、塩素化溶媒)中のカーボンブラックの懸濁液にエラストマーを曝露することによってのいずれかで、形成され得る。あるいは、電極70は、導電性材料(すなわち、カーボンブラックまたは微細に分割された金属粒子)をドープされたエラストマーから層20全体を構成することによって、形成され得る。なおさらにあるいは、この電極は、静電蒸着、または炭素を生成する化学反応によって、形成され得る。本発明により実施される実験において、導電性は、5.6×10−16〜約5×10−3(Ω・cm)−1のカーボンブラック濃度で増加することが示された。下部電極72(これは、動く必要がない)は、上記のようなしなやかな電極であり得るか、または従来の電極(例えば、蒸発させた金、金属プレート、またはドープした半導体電極)のいずれかであり得る。
フローチャネルの磁気的作動は、磁気的に分極可能な材料(例えば、イオン)または永久的に磁化された材料(例えば、分極したNdFeB)を有するフローチャネルを分離する膜を製造することによって、達成され得る。本発明により実施される実験において、磁気シリコーンを、鉄粉(約1μmの粒径)を20重量%鉄まで加えることによって、作製した。
膜が磁気的に分極可能な材料で製造される場合、この膜は、適用される磁場に応答する引力により作動され得る。この膜が、永久磁化を維持し得る材料で製造される場合、この材料は、最初に、十分に高い磁場に曝露することによって磁化され得、次いで、適用された不均一な磁場の極性に応答する引力および斥力のいずれかにより作動され得る。
膜の磁場誘導性作動は、種々の方法により生じ得る。一実施形態において、磁場は、エラストマー膜の中またはその近位に形成される非常に小さな誘導性コイルにより生じる。このような磁気コイルの作動効果は、局在し、個々のポンプおよび/またはバルブ構造の作動を可能にする。あるいは、磁場は、より大きくより強力な供給源により生じ得、この場合、作動は、全体的であり、そして複数のポンプおよび/またはバルブ構造を同時に作動する。
熱膨張または液体からの気体の生成によってのいずれかにより、熱エネルギーの適用に基づいて制御チャネル中に流体の流れを生じることによって、デバイスを作動することもまた可能である。例えば、本発明に従う1つの代替の実施形態において、流体のポケット(例えば、流体で満たされた制御チャネルの中)が、フローチャネルの上に配置される。このポケット中の流体は、温度変動システム(例えば、ヒーター)と連絡し得る。流体の熱膨張、または液相から気相への物質の変換は、圧力の増加を生じ、隣接するフローチャネルを閉じる。続く流体の冷却は、圧力を解放し、そしてフローチャネルを開き得る。
(8.相互接続システム)
図12Aおよび12Bは、上記のシステム(例えば、図7Aにおけるシステム)と同一の、単一オン/オフバルブの図を示す。図13Aおよび13Bは、図12において見られるように、複数の単一アドレス可能オン/オフバルブから構成されるが、一緒に相互接続された蠕動ポンプシステムを示す。図14は、図13の蠕動ポンプシステムについての実験的に達成されるポンプ速度 対 振動数を示すグラフである。図15Aはおよび15Bは、単一コントロールラインにより制御可能な複数のフローチャネルの概略図を示す。このシステムはまた、一緒に多重化された図12の複数の単一アドレス可能オン/オフバルブから構成されるが、図12のシステムとは異なる配置である。図16は、選択したチャネルを通る流体の流れを可能にするよう適合された多重化システムの概略図であり、これは、一緒に連結または相互接続された、図12の複数の単一オン/オフバルブから構成される。
図12Aおよび12Bを初めに参照すると、フローチャネル30および32の概略が示される。フローチャネル30は、好ましくは、これを通る流体(または気体)の流れFを有する。フローチャネル32(これは、本明細書中ですでに説明されたように、フローチャネル30の上を横切る)は、加圧され、その結果、このフローチャネルを分離する膜25は、説明されたように、フローチャネル30の通路に押し下げられ得、そこを通る流れFの通路を遮断する。このように、「フローチャネル」32はまた、「コントロールライン」とも呼ばれ得、これは、フローチャネル30中の単一バルブを作動する。図12〜15において、複数のこのようなアドレス可能バルブが、種々の配置で一緒に連結または相互接続されて、蠕動ポンピング可能なポンプ、および他の流体理論的適用を生成する。
図13Aおよび13Bを参照すると、蠕動ポンピングのためのシステムが、以下のように提供される。フローチャネル30は、その上を通過する複数のほぼ平行なフローチャネル(すなわち、コントロールライン)32A、32Bおよび32Cを有する。コントロールライン32Aを加圧することによって、フローチャネル30を通る流れFは、コントロールライン32Aおよびフローチャネル30の交差部において、膜25Aの下で遮断される。同様に、(図示しないが)コントロールライン32Bを加圧することによって、フローチャネル30を通る流れFは、コントロールライン32Bおよびフローチャネル30の交差部において膜25Bの下で遮断される。以下同様である。
各コントロールライン32A、32Bおよび32Cは個別にアドレス可能である。従って、蠕動は、32Aおよび32Cを一緒に作動させる様式によって作動され得、32Aによって作動され、32Aおよび32Bによって一緒に作動され、32Bによって作動され、32BおよびCによって一緒に作動される、などがある。このことは、継続的な「101、100、110、010、011、001」の様式に一致し、この場合、「0」は「バルブ開」を示し、そして「1」は「バルブ閉」を示す。この蠕動様式はまた、120°様式として知られる(3つのバルブ間の作動のフェーズ角度に関連している)。他の蠕動様式は等価的に可能であり、60°および90°の様式を含む。
本発明者らによって実施された実験において、2.35nL/sのポンプ速度は、作動圧力40kPaの下で100×100×10μmのバルブを有する細管(内径0.5mm)中の1カラムの水が移動する距離を測定することによって、測定される。このポンプ速度は、約75Hzまでの作動周波数に伴って増加し、それから約200Hz以上までほぼ一定であった。バルブおよびポンプはまた、かなり耐久性があり、そしてエラストマー膜も制御チャンネルもボンドも、全く破損が観察されなかった。本発明者らによって実施された実験において、本明細書中に記載される蠕動ポンプの全てのバルブは、400万回以上の作動後に摩耗の徴候も消耗の徴候も全く示さない。これらの耐久性に加えて、これらはまた軟質性でもある。チャンネルを通って汲み出され、そして生存率が試験されたE.coli溶液は、94%の生存率を示した。
図14は、図13の蠕動ポンプシステムについて、実験的に達成された蠕動速度 対 蠕動周波数を示すグラフである。
図15Aおよび図15Bは、図12のアドレス可能な複数のバルブの、別の組み立て方法を図示する。具体的には、複数の並行なフローチャンネル30A、30Bおよび30Cが提供される。フローチャンネル(すなわち、コントロールライン)32は、フローチャンネル30A、30Bおよび30Cを横断して通じる。コントロールライン32の加圧は、コントロールライン32ならびにフローチャンネル30A、30Bおよび30Cの交差部分に位置する膜25A、25Bおよび25Cを押し下げることによって、フローF1、F2およびF3を同時に閉じる。
図16は、以下のように、流体が選択されたチャンネルを通って選択的に流れ得るように適合された、多重化システムの模式図である。膜(例えば、図15Aおよび図15B中の膜25A、25Bおよび25C)上を通過するコントロールラインからそれぞれのフローチャンネルを分ける膜の下向きの偏向は、膜の大きさに強く依存する。従って、図15Aおよび15B中のフローチャンネルコントロールライン32の幅を変化することによって、コントロールラインを複数のフローチャンネルを越えて通過させ得、さらに所望のフローチャンネルのみを作動(すなわち、遮断)させ得る。図16は、以下の通り、このようなシステムの概略図を示す。
複数の並行フローチャンネル30A、30B、30C、30D、30Eおよび30Fは、複数の並行コントロールライン32A、32B、32C、および32Dの下に配置される。コントロールチャンネル32A、32B、32C、および32Dは、上記の任意のバルブシステムを使用して、以下の変形を備える、並行フローチャンネル30A、30B、30C、30D、30Eおよび30Fを通過する流体フローF1、F2、F3、F4、F5およびF6を遮断するように適合される。
各コントロールライン32A、32B、32C、および32Dは、幅広部分および狭部分の両方を有する。例えば、コントロールライン32Aは、フローチャンネル30A、30Cおよび30Eの上方に配置される位置で広がる。同様に、コントロールライン32Bは、フローチャンネル30B、30Dおよび30Fの上方に配置される位置で広がり、そしてコントロールライン32Cは、フローチャンネル30A、30B、30Eおよび30Fの上方に配置される位置で広がる。
それぞれのコントロールラインが広がる位置において、そのコントロールラインの加圧はフローチャンネルとコントロールラインとを分ける膜(25)がフローチャンネル内へと有意に押し下げさせて、これによってその場所を通るフローの通過を妨げる。対照的に、それぞれのコントロールラインが狭い位置において、膜(25)もまた狭い。従って、同程度の加圧では、膜(25)がフローチャンネル(30)内へ押し下がることを生じない。従って、流体のその場所の通過は、妨げられない。
例えば、コントロールライン32Aが加圧される場合、これはフローチャンネル30A、30Cおよび30Eの中のフローF1、F3およびF5を妨げる。同様に、コントロールライン32Cが加圧される場合、これはフローチャンネル30A、30B、30Eおよび30Fの中のフローF1、F2、F5およびF6を妨げる。理解され得るように、1本より多いコントロールラインは同時に作動され得る。例えば、コントロールライン32Aおよび32Cは加圧されて、F4を除く全ての流体フローを同時に妨げる(32AがF1、F3およびF5を妨げ、そして32CがF1、F2、F5およびF6を妨げる)。
異なるコントロールライン(32)を、一緒に、そして様々な順序の両方で選択的に加圧することによって、大規模(degree)な流体フローコントロールを達成し得る。さらに、本システムを6より多い並行フローチャンネル(30)および4より多い並行フローチャンネル(32)に拡張することによって、そしてコントロールラインの幅広領域および狭領域の位置を変化させることによって、非常に複雑な流体フローコントロールシステムを組み立て得る。このようなシステムの特徴は、2(log2n)本のみのコントロールラインを有するn本のフローチャンネルのうちの任意の1つのフローチャンネルを作動させることが可能であることである。
(9.フローラインに沿った、選択的にアドレス可能な反応チャンバー)
図17A、17B、17Cおよび17Dにおいて図示される、本発明のさらなる実施形態において、フローラインに沿って配置される、1つより多くの複数の反応チャンバーへと流体フローを選択的に導くためのシステムを提供する。
図17Aは、フローラインに沿って配置される複数の反応チャンバー80Aおよび80Bを有するフローチャンネル30の上面図を示す。好ましくは、フローチャンネル30ならびに反応チャンバー80Aおよび80Bは一緒になって、エラストマーの第1層100の底部表面への凹部として形成される。
図17Bは、別のエラストマー層110の底面図を示し、2本のコントロールライン32Aおよび32Bはそれぞれ全体的に細いが、エラストマー層110の凹部として形成される幅広拡大部分33Aおよび33Bを有する。
図17Cの分解図および図17Dの組み立て図において見られるように、エラストマー層110はエラストマー層100の上側に配置される。次いで、層100および110は一緒に結合され、そして統合されたシステムは、以下の通りに、反応チャンバー80Aおよび80Bのどちらか一方または両方の中へと流体フローFを(フローチャンネル30を通って)選択的に導くように操作する。コントロールライン32Aの加圧により膜25(すなわち、拡大部分33Aの下方かつ反応チャンバー80Aの領域82Aの上方に位置するエラストマー層100の薄い部分)が押し下げられ、これによって領域82Aにおいて流体フローの流通を遮断し、フローチャンネル30からの反応チャンバー80を効果的に封鎖する。また示されるように、拡大部分33Aはコントロールライン32Aの残部よりも幅広い。このようにして、コントロールライン32Aの加圧は、コントロールライン32Aがフローチャンネル30を閉じることを生じない。
理解され得るように、コントロールライン32Aおよび32Bのどちらか一方または両方は、同時に作動され得る。コントロールライン32Aおよび32Bの両方が一緒に加圧される場合、フローチャンネル30内のサンプルのフローは、反応チャンバー80Aにも80Bにも入らない。
フローラインに沿って配置される種々のアドレス可能な反応チャンバー(図17A〜17D)の中への流体の導入を選択的に制御する概念は、1本以上の複数の並行フローラインを通って流体フローを選択的に制御する概念(図16)と結び付けられて、流体サンプルが反応チャンバーのアレイの中の任意の特定の反応チャンバーへと送られ得るシステムを形成し得る。このようなシステムの例は図18中に提供され、この図において拡大部分34を有する並行コントロールチャンネル32A、32Bおよび32C(全て幻像で示される)は、上記に説明されるように、任意のアレイの反応ウェル80A、80B、80Cまたは80Dの中へ流体フローF1およびF2を選択的に導くが、コントロールライン32Cおよび32Dの加圧はそれぞれフローF2およびF1を選択的に遮断する。
なお別の新規の実施形態において、並行フローチャンネルの間の流体の通行が可能である。図19を参照して、コントロールライン32Aまたは32Dのどちらか一方または両方を減圧して、その結果、後方の通路35(並行フローチャンネル30Aと30Bとの間)を通る流体フローを可能とする。本発明のこの局面において、コントロールライン32Cおよび32Dの加圧は、後方通路35Aと35Bとの間のフローチャンネル30Aを遮断し、そしてまた後方通路35Bを遮断する。このように、フローF1のようなフローの流入は、30A、35Aを通って連続的に移動し、そしてフローF4として30Bを残す。
(10.切り換え可能なフローアレイ)
なお別の新規な実施形態において、流体の通行は2つの直交方向のどちらか一方に流れるように選択的に導かれ得る。このような「切り換え可能なフローアレイ」システムの例を、図20A〜20Dに提供する。図20Aは、固体支柱92のアレイ(各支柱はその周りにフローチャンネルを通過させる)によって規定されるフローチャンネルグリッドを形成する凹部の様式で底部表面を有する、エラストマー90(または任意の他の適切な基材)の第1層の底面図を示す。
好ましい局面において、エラストマーのさらなる層を、層90の表面上に結合して、その結果、流体フローが方向F1または直行方向F2のどちらかに移動するよう選択的に導かれ得る。図20は、エラストマー95の第2層の底部表面の底面図であり、交互性の「垂直」コントロールライン96および「水平」コントロールライン94の形に形成された凹部を示す。「垂直」コントロールライン96は、エラストマー層に沿って同じ幅を有するが、一方で「水平」コントロールライン94は、示されるように、交互性の幅広部分および狭部分を有する。
エラストマー層95は、エラストマー層90の上方に位置し、その結果、「垂直」コントロールライン96は図20C中に示されるように支柱92の上方に配置され、そして「水平」コントロールライン94は、図20D中に示されるように、支柱92の間に幅広部分を用いて配置される。
図20C中に示されるように、「垂直」コントロールライン96が加圧される場合、領域98において層90と95との間に初期配置されるエラストマー層によって形成される統合構造体の膜は、フローチャンネルのアレイの上方で、下方向に歪められ、その結果、示されるように、流入フロー(flow in)はフロー方向F2(すなわち、垂直方向)でのみ通過し得る。
図20D中に見られ得るように、「水平」コントロールライン94が加圧される場合、領域99において層90と95との間に初期配置されるエラストマー層によって形成される統合構造体の膜は、フローチャンネルのアレイの上方で(しかし、それらが最も幅広い領域でのみ)、下方向に歪められ、その結果、示されるように、流入フローはフロー方向F1(すなわち、水平方向)でのみ通過し得る。
図20中に示される設計によって、切り換え可能なフローアレイが、異なるエラストマー層においてコントロールライン間に通じる垂直の偏向(vias)を全く必要とせずに、2つのみのエラストマー層から構築され得る。全ての垂直フローコントロールライン94が接続される場合、これらのラインは1つの入力から加圧され得る。すべての水平フローコントロールライン96についても、同じことが成立する。
(11.通常は閉じたバルブ構造体)
上記の図7Bおよび7Hは、エラストマー膜が第1の弛緩位置から第2の作動位置(この位置でフローチャンネルがブロックされる)に移動可能であるバルブ構造を図示する。しかし、本発明はこの特定のバルブ構成に限定されない。
図21A〜21Jは、エラストマー膜が、フローチャンネルを妨げる第1の弛緩位置から、負の制御圧を利用してフローチャンネルを開放する第2の作動位置に移動可能である、通常は閉じたバルブ構造の種々の図面を示す。
非作動状態の通常は閉じたバルブ4200について、図21Aは平面図を示し、そして図21Bは線42B〜42B’に沿った断面図を示す。フローチャンネル4202およびコントロールチャンネル4204は、基材4205の上を覆うエラストマーブロック4206において形成される。フローチャンネル4202は、仕切り部分4208によって分けられる第1部分4202aおよび第2部分4202bを備える。コントロールチャンネル4204は、仕切り部分4208の上を覆う。図21B中に示されるように、弛緩した非作動位置において、仕切り部分4208は、フローチャンネル部分4202aと4202bとの間に依然として配置され、フローチャンネル4202を妨げる。
図21Cは、バルブ4200の断面図を示し、ここで、仕切り部分4208は作動位置にある。コントロールチャンネル4204内の圧力が低減されて(例えば、減圧ポンプによって)フローチャンネル中の圧力を下回る場合、仕切り部分4208は作動力を受けて仕切り部分4208をコントロールチャンネル4204の中へと引き出す。この作動力の結果、膜4208はコントロールチャンネル4204の中に突出して、これによってフローチャンネル4202を通る材料の流れに対する妨げを除去し、そして通路4203を形成する。コントロールチャンネル4204内での圧力上昇の際に、仕切り部分4208は本来の位置に配置され、フローチャンネル4202の中への戻りを緩和し、そしてフローチャンネル4202を遮断する。
作動力に応じた膜の挙動は、上に位置するコントロールチャンネルの幅を変化させることによって変更され得る。従って、図21D〜21Eは、コントロールチャンネル4207が仕切り部分4208よりも実質的に幅広い場合の、通常は閉じたバルブ4201の代替的な実施形態の、平面図および断面図を示す。図21Dの線42E−42E’の線に沿った図21E〜Fの断面図中に示されるように、エラストマー材料のより大きな範囲が作動中に移動されることが必要とされるので、適用に必要な作動力は低減される。
図21GおよびHは、図21Dの線40G−40G’に沿った断面図を示す。図21G中に示される非作動のバルブ構成と比較して、図21Hは、より幅広なコントロールチャンネル4207内で低減された圧力が、特定の状況下で、上に位置するエラストマー材料4206を牽引して基材4205から離すという所望されない効果を有し得、これによって所望されない気泡4212を生成し得る。
従って、仕切り部分4208に重なるセグメント4204a中を除いて最小限の幅を有するコントロールライン4204を特徴として有することによってこの問題を回避する、バルブ構造体4220について、図21Iは平面図を示し、そして図21Jは図21Iの線21J−21J’に沿った断面図を示す。図21J中に示されるように、作動条件下ですら、コントロールチャンネル4204のより狭い断面は、上に位置するエラストマー材料4206上の引力を低減させて、これによって、このエラストマー材料が基材4205から引き剥がされること、および所望されない気泡を生成することを妨げる。
圧力に応じて作動される、通常は閉じられるバルブ構造体は、図21A〜21J中に示されるが、本発明に従う通常は閉じられるバルブは、この構成に限定されない。例えば、フローチャンネルを遮断する仕切り部分は、代替的に、上記で頻繁に記載されるように、電場または磁場によって操作され得る。
(12.側方作動(side−activated)バルブ)
上記の説明は、コントロールチャンネルが下に位置するフローチャンネルから、介在エラストマー膜の上方に配置され、そして介在エラストマー膜によって分けられる、微細製作されたエラストマーバルブ構造体に着目したが、本発明はこの構造に限定されない。図22Aおよび22Bは、本発明の1つの実施形態に従う、側方作動バルブ構造体の1つの実施形態の平面図を示す。
図22Aは、非作動位置における側方作動バルブ構造体4800を示す。フローチャンネル4802は、エラストマー層4804中に形成される。フローチャンネル4802に接しているコントロールチャンネル4806もまた、エラストマー層4804中に形成される。コントロールチャンネル4806は、エラストマー膜部分4808によってフローチャンネル4802から分けられる。第2のエラストマー層(示さず)は底面のエラストマー層4804の上に結合されて、フローチャンネル4802およびコントロールチャンネル4806を閉塞する。
図22Bは、作動位置における側方作動バルブ4800を示す。コントロールチャンネル4806内の圧力の増進に応じて、膜4808はフローチャンネル4802の中へと変形して、フローチャンネル4802を遮断する。コントロールチャンネル4806内の圧力の開放に際して、膜4808は弛緩してコントロールチャンネル4806内へと戻り、そしてフローチャンネル4802を開く。
圧力に応じて作動される側方作動バルブ構造体は図22Aおよび図22B中に示されるが、本発明に従う側方作動バルブはこの構造に限定されない。例えば、隣接するフローチャンネルとコントロールチャンネルとの間に位置するエラストマー膜部分は、代替的に、上記で頻繁に記載されるように、電場または磁場によって操作され得る。
(13.複合構造体)
本発明の微細製作されたエラストマー構造体は、非エラストマー材料と組み合わされて複合構造体を形成し得る。図23は、本発明に従う複合構造体の1つの実施形態の断面図を示す。図23は、内部に形成されるチャンネル5706を有する半導体型の基材5704に重なる第1の薄いエラストマー層5702を備える、複合バルブ構造体5700を示す。第2のより薄いエラストマー層5708は、第1エラストマー層5702に重なる。チャンネル5706内へと駆動するための第1エラストマー層5702の作動は、複合構造体5700をバルブとして機能させる。
図24は、この主題に対する多様性の断面図を示し、ここで、薄いエラストマー層5802は、2つの硬い半導体基材5804と5806との間に挟まれ、チャンネル5808を特徴付けるより下方の基材5804を備える。さらに、チャンネル5808内へと駆動するための薄いエラストマー層5802の作動は、複合構造体5810をバルブとして機能させる。
図23または24中に示される構造体は、上記の多層柔軟リソグラフィー技術またはカプセル化技術のどちらか一方を利用して組み立てられ得る。多層柔軟リソグラフィー方法において、エラストマー層を形成して、次いでチャンネルを有する半導体基材上に配置される。カプセル化方法において、そのチャンネルは最初に半導体基材中に形成され、次いでそのチャンネルは感光性耐食膜(photoresist)のような犠牲材料で満たされる。次いでこのエラストマーを基材上に適切に形成し、犠牲材料の除去でエラストマー膜によって重ねられるチャンネルを形成する。エラストマーの他の型の材料への接着と組み合わせについて以下に詳細に考察されるように、カプセル化アプローチは、エラストマー膜成分と上に重なる非エラストマー基材成分との間のより強固な接着を生じ得る。
図23および24中に示されるように、本発明の実施形態に従う複合構造体は、チャンネルのような透過性特徴を有する硬い基材を含み得る。しかし、本発明はこのアプローチに限定されず、そして上に重ねられる硬い基材は、凹部を有するエラストマー成分と相互作用する活性の特徴を有し得る。このことは、図25中に示され、ここで、複合構造体5900は、壁5906および天井5908を有する凹部5904を備えるエラストマー成分5902を備える。天井5908は、可撓性膜部分5909を形成する。エラストマー成分5902は、活性化デバイス5912を備える、実質的に平面な非エラストマー成分5910に対してシールされる。活性デバイス5912は、凹部5904および/または可撓性膜部分5909に存在する材料と相互作用し得る。
多くの型の活性構造体が、非エラストマー基材に存在する.重なっている硬い基材において存在し得る活性構造体としては、レジスタ、キャパシタ、フォトダイオード、トランジスタ、化学電界効果トランジスター(chem FET)、電流的/電量的電気化学センサー、光ファイバー、光ファイバー相互接続、光励起ダイオード、レーザーダイオード、鉛直空洞表面励起レーザー(VCSEL)、微細鏡(micromirror)、加速度計、圧力型、流量計、CMOS画像化アレイ、CCDカメラ、電子論理回路、マイクロプロセッサ、サーミスタ、ペルチェクーラー、導波管、抵抗型ヒーター、化学センサー、歪みゲージ、インダクター、アクチュエーター(静電気的、磁性、電磁的、異種金属性、圧電的、形状記憶合金ベース、およびその他を含む)、コイル、磁石、電磁石、磁場センサ(ハードドライブ、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)および他の型において使用されるセンサ)、無線周波数ソースおよびレシーバー、マイクロ波周波数ソースおよびレシーバー、電磁スペクトルの他の領域についてのソースおよびレシーバー、放射活性粒子カウンター、ならびに電位計が挙げられるが、これらに限定されない。
当該分野で周知の通り、多くの種々の技術を使用して、半導体および他の型の硬い基材において能動的特徴を組み込み得、プリント回路基板(PCB)技術、CMOS、表面微細加工、バルク微細加工、プリント可能なポリマーエレクトロニクス、ならびにTFTおよびその他アモルファス/多結晶技術(ラップトップディスプレイおよび平面スクリーンディスプレイに組み込むために使用される)が挙げられるが、これらに限定されない。
種々のアプローチが非エラストマー基材に対してエラストマー構造体を封着するために使用され得、これらのアプローチは、複合構造体について、エラストマー成分と非エラストマー成分との間のファンデルワールス結合の形成から、エラストマー成分と非エラストマー成分との間の共有結合またはイオン結合の形成までの範囲に渡る。これら成分を一緒にシールするための例示的なアプローチは、以下に考察され、大抵は強度を向上させることを目的とする。
第1アプローチは、実質的に平坦なエラストマー層を配置して、より硬い非エラストマー材料の実質的に平坦な層と接触する場合に形成されるファンデルワールス力から生じる、簡単なハーメチックシールに依存することである。1つの実施形態において、RTVエラストマーのガラス基材への接着は、約3〜4psiの圧力まで耐え得る複合構造体を形成した。このことは、多くの潜在的な適用について十分であり得る。
第2のアプローチは、液体層を利用して結合を補助することである。このことの1つの例は、エラストマーを硬質ガラス基材に結合させることに関し、ここで、弱酸溶液(H2O中に5μlのHCl、pH2)をガラス基材に適用する。次いでエラストマー成分を配置してガラス基材と接触させ、そしてその複合構造体を37℃でベーキングして水分を除去する。これより、約20psiの圧力に耐え得るエラストマーと非エラストマーとの間の結合が生じる。この場合、酸はガラス表面上に存在するシラノール基を中和し得、このことはエラストマーおよび非エラストマーを、互いに良好なファンデルワールス接触を可能にし得る。
エタノールへの曝露もまた、デバイス成分を一緒に接着させ得る。1つの実施形態において、RTVエラストマー材料およびガラス基材をエタノールで洗浄し、次いで窒素雰囲気下で乾燥させる。ついで、このRTVエラストマーを配置してガラスと接触させ、そしてこの組み合わせを80℃で3時間ベーキングする。必要に応じて、このRTVをまた真空に曝して、スライドとRTVとの間に閉じ込められた全ての気泡を取り除き得る。この方法を使用したエラストマーとガラスとの間の結合強度は、過剰の35psiの圧力に耐えた。この方法を使用して形成された接着は、永続的ではなく、そしてエラストマーはガラスから剥離され得、洗浄してそしてガラスに再シールされ得る。このエタノール洗浄アプローチをまた使用して、エラストマーの良好な層を互いに十分な強度で結合させて、30psiの圧力に耐え得た。代替の実施形態において、他のアルコールまたはジオールのような化学物質を使用して、層の間の接着を増進し得る。
本発明に従う、微細製作される構造体の層の間の接着を増進させる方法の実施形態は、第1成分層の表面を化学物質に曝す工程、第2成分層の表面を化学物質に曝す工程、および第1成分層の表面を配置して第2のエラストマー層の表面と接触させる工程を包含する。
第3のアプローチは、エラストマー成分と非エラストマー成分の表面上に導入された官能基との間の共有化学結合を形成することである。このような官能基を生成するための、非エラストマー基材表面の誘導体化の例は、ガラス基材をビニルシランまたはアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)のような薬剤に曝露する工程を含み、このことは、シリコーンエラストマー材料およびポリウレタンエラストマー材料それぞれに対するこのガラス基材の結合を可能とするために、有用であり得る。
第4のアプローチは、エラストマー成分と、非エラストマー成分の表面に元から在る官能基との間の共有化学結合を形成することである。例えば、RTVエラストマーは、その表面に過剰のビニル基を有して形成され得る。これらのビニル基は、硬基材材料の外面上に存在する、対応する官能基と反応させられ得、例えば、エッチングによって元から在る酸素の除去後に単一シリコン結晶基材の表面上に一般的に在るSi−H結合が挙げられる。この例において、エラストマー成分と非エラストマー成分との間に形成される結合の強度は、エラストマー成分の材料強度を越えることが観察された。
(14.セルペン/セルケージ)
本発明のなおさらなる適用において、エラストマー構造体を利用して、生物体または他の生物学的な材料を操作し得る。図26A〜26Dは、本発明に従うセルペン構造体の1つの実施形態の平面図を示す。
セルペンアレイ(cell pen array)4400は、直交に配向されたフローチャネル4402のアレイを特徴とし、交互したフローチャネルの交差点にて、細長「ペン」構造4404を有する。バルブ4406が、各ペン構造4404の入口および出口に配置される。蠕動ポンプ構造4408が、各水平フローチャネルおよびセルペン構造を欠く垂直フローチャネル上に配置される。
図26Aのセルペンアレイ4400は、先に区別したセルA〜Hを装填している。図26B〜26Cは、個々に貯蔵されたセルCの、以下の1)〜3)によるアクセスおよび除去を示す:1)隣接したペン4404aおよび4404bのいずれかの側へバルブ4406を操作する、2)水平フローチャネル4402aをポンピングして、セルCとGとを置換する、次いで、3)垂直フローチャネル4402bをポンピングして、セルCを除去する。図26Dは、水平フローチャネル4402aを通る液体の流れの方向を反転させることによって、第二セルGがセルペンアレイ4400の以前の位置に戻ることを示している。
上記のセルペンアレイ4404は、アクセスできるような、選択されたアドレス可能な位置内で材料を貯蔵し得る。しかしながら、細胞のような生存生体は、生存可能なままでいるために、食物の連続的な取り込みおよび廃棄物の排出を必要とし得る。従って、図27Aおよび27Bは、本発明に従うセルケージ構造の1つの実施形態の、それぞれ平面図および(線45B−45B’に沿った)断面図を示す。
セルケージ4500は、基材4505と接触して、エラストマーブロック4503内でフローチャネル4501の細長部分4500aとして形成される。セルケージ4500は、セルケージ4500の端部4500bおよび4500cが内部領域4500aを完全には閉鎖していないことを除いては、図26A〜26Dにおいて上記のような個々のセルペンと類似している。むしろ、ケージ4500の端部4500aおよび4500bは、格納可能な複数のピラー4502により形成されている。ピラー4502は、図21A〜21Jとともに広範に上記したように、通常は閉鎖されたバルブ構造の膜構造体の一部であり得る。
詳細には、コントロールチャネル4504が、ピラー4502を覆っている。コントロールチャネル4504の圧力が減少された場合、エラストマーピラー4502は、コントロールチャネル4504内に上向きに引き込まれ、それによって、セルケージ4500の端4500bが開き、細胞が侵入するのを可能にする。コントロールチャネル4504の圧力が上昇した場合、ピラー4502は、基材4505に対して下向きに緩み、細胞がケージ4500から出るのを防止する。
エラストマーピラー4502は、ケージ4500から細胞が移動するのを防止するのに十分な大きさおよび数のものであるが、貯蔵される細胞を維持するためにケージ内部4500a内への栄養素の流動を可能にするギャップ4508もまた備える。対向する端部4500c上のピラー4502は、第二のコーティングチャネル4506の下に同様に配置され、ケージの開口および所望の細胞の取り出しを可能にする。
図26A〜26Dに示される、例示される直交流チャネルアーキテクチャを使用して、まさに記載されるセルペン以外の機能を達成し得る。例えば、この直交硫チャネルアーキテクチャは、混合適用の際に利用される。
これは、図28A〜Bに示されており、この図は、本発明の別の実施形態に従う微細製作(microfabricated)構造によって達成される混合工程の平面図を示す。詳細には、微細製作混合構造の一部7400は、第二フローチャネル7404と直交しかつこのチャネルと交差した、第一フローチャネル7402を備える。コントロールチャネル7406が、フローチャネル7402および7404を覆い、そして各交差点7412を取り囲むバルブ対7408a〜bおよび7408c〜dを形成する。
図28Aに示されるように、バルブ対7408c〜dを閉めたままバルブ対7408a〜bを最初に開くと、流体サンプル7410は、フローチャネル7402を通って交差点7412に流れる。次いで、バルブ対7408c〜dを作動させ、交差点7412にて流体サンプル7410を捕捉する。
次に、図28Bに示されるように、バルブ対7408a〜bおよび7408c〜dを開くと、その結果、流体サンプル7410は、交差点7412から、流体の直交流を運搬する流体チャネル7404内に注入される。図28A〜Bに示されるプロセスは、任意の数の流体サンプルを直交流チャネル7404に正確に分配するように繰り返され得る。図44は、本発明に従う直交流注入システムの1つの実施形態についての、Log(R/B)
対 注入されたスラグ数のプロットである。粘性のようなプロセスパラメータから、直交流注入によって測定される再現性および相対的な独立性は、図82によってさらに証明され、これは、種々の流動条件下での交差チャネル流動注入についての、注入容積 対 注入サイクル数のプロットである。図82は、直交流注入技術によって測定された容積が、一連の注入サイクルにわたって線形基準で増加することを示す。用量と注入サイクル数との間のこの線形関係は、上昇した流体粘度のような粘性パラメータ(25%グリセロールを加えることによって与えられる)、およびフローチャネルの長さ(1.0〜2.5cm)から相対的に独立している。
図28A〜28Bとともに上で示され記載された実施形態は、フローチャネル交差点の対向する側に連結バルブ対を使用しているが、これは、本発明に必要ではない。他の配置(交差点の隣接したバルブの連結を含む)、または交差点周辺の各バルブの独立した作動は、所望の流動特性を提供するのを可能にする。しかしながら、この独立したバルブの作動アプローチを用いると、各バルブのために別個のコントロール構造が使用され、デバイスの設計を複雑にすることが認識されるべきである。
(15.容積排除による測定)
多くの高スループットスクリーニングおよび診断適用は、反応チャンバ内での異なる試薬の正確な組み合わせを必要とする。流体の流れを確実にするためにマイクロ流体デバイスのチャネルをプライム(prime)することがしばしば必要とされる場合、混合溶液が、サンプルを導入する前に反応チャンバの含有量によって希釈も汚染もされないことを確実にすることは、困難であり得る。
容積排除は、反応チャンバ内への流体の導入の正確な測定を可能にする、1つの技術である。このアプローチにおいて、反応チャンバは、サンプルを注入する前に、完全に空であっても部分的に空であってもよい。この方法は、チャンバ含有量の残りの含有量からの汚染を減少させ、そして、反応チャンバ内への溶液の導入を正確に測定するために使用され得る。
詳細には、図29A〜29Dは、反応チャンバの断面図を示し、ここにおいて、容積排除は、反応物を測定するために用いられる。図29Aは、マイクロ流体デバイスの一部6300の断面図を示し、このデバイスは、第一のエラストマー層6302を備え、この層は、第二のエラストマー層6304を覆っている。第一のエラストマー層6302は、コントロールチャネル(図示せず)と流体連絡したコントロールチャンバ6306を含む。コントロールチャンバ6306は、膜6310と重なり合い、そしてこの膜6310によって第二のエラストマー層6304の終端反応チャンバ6308から分離されている。第二のエラストマー層6304は、終端反応チャンバ6308まで導くフローチャネル6312をさらに含む。
図29Bは、コントロールチャンバ6306内の圧力増加の結果を示す。詳細には、コントロールチャンバ圧の増加により、膜6310が反応チャンバ6308内に下向きに曲げられ、容積Vによって、反応チャンバ6308の有効容積が減少される。次いで、これは、反応チャンバ6308からの等容積Vの反応物を排除し、その結果、容積Vの第一反応物Xが、フローチャネル6312から出力される。コントロールチャンバ6306の圧力増加とフローチャネル6312からの材料出力容積との間の正確な相関が、正確に較正され得る。
図29Cに示されるように、上昇圧は、コントロールチャンバ6306内で維持されるが、容積V’の第二反応物Yは、フローチャネル6312および反応チャンバ6308と接触して配置される。
図29Dに示される次の工程において、コントロールチャンバ6306内の圧力は、元のレベルまで減少される。結果として、膜6310は緩み、そして反応チャンバ6308の有効容積が増加する。容積Vの第二反応物Yが、このデバイス内に吸い込まれる。反応チャンバおよびコントロールチャンバの相対サイズを変更することによって、特定の相対濃度での溶液の正確な混合が可能である。デバイス内に吸い込まれた第二反応物Yの量が、排除された容積Vにのみ依存し、フローチャネルの開口状態にて入手可能になったYの容積V’とは無関係であることに注目する価値がある。
図29A〜29Dは、単一反応チャンバを含む本発明の単純な実施形態を示しているが、より複雑な実施形態において、数百または数千の反応チャンバの並列構造は、単一コントロールラインにおける圧力増加によって作動され得る。
さらに、上の記載は、コントロールチャンバおよび反応チャンバのサイズによって決定される相対濃度にて組み合わされた2種の反応物を記載しているが、容積排除技術は、単一反応チャンバにおいて種々の濃度にて、数種の試薬を組み合わせて用いられ得る。1つの可能なアプローチは、各反応チャンバについて、別個にアドレス可能な数種のコントロールチャンバを使用することである。このアーキテクチャの例は、単一コントロールチャンバの代わりに、10個の別個のコントロールラインを有することであり、これにより、10個の等容積が押し出されるかまたは吸い込まれる。
別の可能なアプローチは、反応チャンバ全体を覆う単一コントロールチャンバを使用し、この反応チャンバの有効容積は、コントロールチャンバの圧力を変化させることによって調節される。この様式において、反応チャンバの有効容積を越えるアナログコントロールが可能である。次いで、アナログ容積コントロールは、不定な相対濃度にて、多数の溶液反応物の組み合わせを可能にする。
本発明に従って流体の容積を測定する方法の実施形態は、エラストマー膜によってコントロール溝から分離されたエラストマーブロックの容積を有するチャンバを提供する工程、およびこの膜がチャンバ内に曲げられそしてこの容積が較正量だけ減少されるように、このコントロール溝に圧力を与え、それにより、このチャンバから流体の較正容積を排除する工程、を包含する。
(II.結晶化構造および結晶化方法)
標的物質の結晶化の高スループットスクリーニング、または結晶化による標的物質の少量のサンプルの精製は、既知の濃度で、標的物質の溶液を、微細製作流体デバイスの複数のチャンバに同時に導入することによって達成される。次いで、この微細製作流体デバイスは、チャンバ内の溶液条件を変化するように操作され、それによって、多数の結晶化環境が同時に提供される。溶媒条件の変化したコントロールは、種々の技術から生じ得、これらとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:容積排除によってか、微細製作構造の寸法によって決定される液体容積の捕捉によってか、または直交したフローチャネルが交差することによって規定される交差点のマトリクス内への交差チャネル注入によって、チャンバ内での結晶化因子の容積を測定する技術。
本発明の実施形態によって結晶化を生じる結晶は、X線結晶学に用いられ、三次元分子構造が決定され得る。あるいは、本発明の実施形態に従う高スループットスクリーニングが直接X線結晶学に十分なサイズの結晶を生成しない場合、結晶は、さらなる結晶化実験用の核結晶として用いられ得る。見込みのあるスクリーニング結果もまた、標準化された低密度マトリクス技術を使用するのと類似の様式で、狭いスペクトルの結晶化条件に焦点を当てたさらなるスクリーニングのための基準として使用され得る。
本発明の実施形態に従うシステムおよび方法は、より大きい生物学的高分子またはその凝集体(例えば、タンパク質、核酸、ウイルス、およびタンパク質/リガンドの複合体)を結晶化するのに特に適している。しかしながら、本発明に従う結晶化は、任意の特定の型の標的物質に制限されない。
以下の考察において用いられるように、用語「結晶化剤」は、標的物質の溶液に導入され、この標的物質の溶解度を低下させ、それによって結晶形成を誘導する、物質を記載する。結晶化剤としては、代表的に、標的が溶解度の減少を示す対溶媒(countersolvent)が挙げられるが、溶液のpHに影響を及ぼす材料、またはポリエチレング
リコールのような、標的物質に利用可能な溶媒の容積を効果的に減少させる材料もまた記載し得る。用語「対溶媒」は、「結晶化剤」と相互交換可能に使用される。
(1.容積排除による結晶化)
図30は、先の図29A〜Dとともに記載された容積排除技術を用いて、質量結晶化の試行を可能にする結晶化システムの1つの実施形態の平面図を示す。
結晶化システム7200は、コントロールチャネル7202、ならびにフローチャネル7204a、7204b、7204cおよび7204dを備える。各フローチャネル7204a、7204b、7204cおよび7204dは、終端チャンバ7206を特徴とし、これは、結晶化のための部位として働く。コントロールチャネル7202は、膜7208に重なり合い、そしてコントロールチャンバ7205と同じ幅を有する膜7208によってチャンバ7206から分離されている、幅が変化したコントロールチャンバ7205のネットワークを特徴とする。図面には明確に示されていないが、膜の二次ネットワークを特徴とする第二のコントロールは、終端チャンバ7206の開口部を選択的に開閉するための停止バルブを作製するために用いられる。このような停止バルブの機能および役割の十分な記載は、図31とともに以下に提供される。
結晶化システム7200の操作は、以下の通りである。最初に、標的タンパク質を含有する水溶液を、各フローチャネル7204a、7204b、7204cおよび7204dを通して流し、各終端チャンバ7206を満たす。次に、コントロールチャンバ7202に高圧を付与して、膜7208を下にあるチャンバ7206内に曲げ、このチャンバ7206から所定容積を排除し、そしてチャンバ7206から、最初のタンパク質溶液のこの排除容積を流す。
次に、圧力をコントロールチャネル7202内で維持しながら、異なる対溶媒を、各フローチャネル7204a、7204b、7204cおよび7204d内に流す。次いで、圧力を、コントロールライン7202内に解放し、膜7208が緩まってそれらの元の位置に戻り、以前に排除された容積の対溶媒がチャンバ7206に入り、元のタンパク質溶液と混合するのを可能にする。コントロールチャンバ7205と下にある膜7208の幅は異なっているので、種々の容積の対溶媒が、このプロセスの間にチャンバ7206に入る。
例えば、システム7200の最初の2列のチャンバ7206aは、対溶媒を全く受け入れない。なぜなら、重なり合った膜によって容積が排除されないからである。システム7200の第二の2列のチャンバ7206bは、元のタンパク質溶液と1:5である対溶媒の容積を受容する。システム7200の第三の2列のチャンバ7206cは、元のタンパク質溶液と1:3である対溶媒の容積を受容する。システム7200の第四の2列のチャンバ7206dは、元のタンパク質溶液と1:2である対溶媒の容積を受容し、そしてシステム7200の第五の2列のチャンバ7206eは、元のタンパク質溶液と4:5である対溶媒の容積を受容する。
一旦、対溶媒がチャンバ7206内に導入されると、対溶媒は、コントロールライン7202に高圧を再度付与して、このチャンバ内へ膜を曲げることによって、その環境に対して再閉塞され得る。再閉塞は、結晶化が起こるのに数日または数週間のオーダーを必要とする場合に、必要であり得る。チャンバの可視検査により、高品質の結晶の存在が明らかになり、この結晶は、使い捨て可能なエラストマーシステムのチャンバから物理的に取り出され得る。
(2.容積エントラップメントによる結晶化)
上の記述は、対溶媒の変化量を測定するために、容積排除に頼る結晶化システムを記載しているが、本発明は、この特定の実施形態に限定されない。従って、図31は、代替の結晶化システムの平面図を示し、ここで、異なる容積の対溶媒の測定は、フローチャネルの形成の間の光リソグラフィー(photolithography)によって決定される。
結晶化システム7500は、フローチャネル7504a、7504b、7504cおよび7504dを備える。各フローチャネル7504a、7504b、7504cおよび7504dは、終端チャンバ7506を特徴とし、これは、再結晶化のための部位として働く。
システム7500は、2つのセットのコントロールチャネルをさらに備える。コントロールチャネルの第一のセット7502は、チャンバ7506の開口部に重なり、そして作動された場合、チャンバ7506への接近をブロックする停止バルブ7503を規定する。第二のコントロールチャネル7505は、フローチャネル7504a〜dに重なり、そして作動された場合、フローチャネル7404の異なるセグメント7514間の流れをブロックするセグメントバルブ7507を規定する。
結晶化システム7500の操作は、以下の通りである。最初に、標的タンパク質を含有する水溶液を、各フローチャネル7504a、7504b、7504cおよび7504dを通して流し、終端チャンバ7506を満たす。次に、コントロールチャネル7502に高圧を付与して、停止バルブ7503を作動させ、それによって、流体のチャンバ7506への出入りを防止する。
停止バルブ7503の閉鎖を維持しながら、次いで、各フローチャネル7504a〜dを、異なる対溶媒で満たす。次に、第二のコントロールライン7505を加圧して、セグメント7514へとフローチャネル7504a〜dを分離し、そして異なる容積の対溶媒を捕捉する。詳細には、図31に示されるように、セグメント7514は、不等な容積のセグメントである。ソフトリソグラフィーによってタンパク質結晶化構造7500を形成する間、異なる幅7514aおよび長さ7514bのセグメント7514を有するフローチャネル7504a〜dを規定する技術が用いられ得る。
従って、圧力が第一コントロールライン7502から解放されて、停止バルブ7503が開く場合、種々のセグメント7514からの異なる容積の対溶媒が、チャンバ7506内に拡散され得る。この様式において、光リソグラフィーによって規定される正確な寸法を使用して、フローチャネルセグメント内に捕捉される対溶媒の容積を決定し、次いでタンパク質溶液に導入し得る。次いで、対溶媒のこの容積が、タンパク質の結晶化のための環境を設定する。
図31とともに記載される結晶化システムは、結晶化チャンバ内に導入される対溶媒の容積を決定するために、そのフローチャネルの寸法を用いるが、本発明は、このアプローチに限定されない。
図32は、微細製作結晶化システムを示しており、ここで、再結晶化チャンバについて測定された対溶媒の容積は、下にあるフローチャネルに対するコントロールチャネルの配向角度によって決定される。詳細には、微細製作結晶化システム8000は、隣接した蛇行フローチャネル8002aおよび8002bを備え、これらチャネルは、一連の架橋チャネル8004を介して接続される。第一のコントロールライン8006は、架橋チャネル8004の上にあり、それによって、蛇行チャネル8002aおよび8002bを互いから分離するバルブ8008を形成する。第二のコントロールライン8010は、バルブ8020を規定する、第一の蛇行チャネル8002aの一部にわたる突起を備える。
最初に、第二のコントロールライン8010および第三のコントロールライン8012は開いたままで、第一のコントロールライン8006を閉じる。第一の蛇行チャネル8002aは、入口8014を通る標的物質溶液で満たされる。図31の第一の蛇行チャネル8002aは、出口8015を有するように示されているが、チャネル8002aはまた、終端であり得る。第二の蛇行チャネル8002bは、標的物質溶液と混合されるべき対溶媒で満たされる。第一の蛇行チャネル8002aを用いる場合、第二の蛇行チャネル8002bはまた、出口かまたは終端にて終結し得る。
次に、第二のコントロールチャネル8010は、バルブ8020を閉じるように作動し、それによって、領域8022内に捕捉された、等容積の標的溶液が分離される。第三のコントロールチャネル8012もまた、バルブ8024を閉じるように作動し、それによって、領域8026b内に捕捉された対溶媒が分離される。しかしながら、第三のチャネル8012は、第二の蛇行チャネル8002bを斜めに横切って延びているので、バルブ8008と8024との間で捕捉される対溶媒の容積は、等しくなくそして次第に小さくなる。
次に、第一のコントロールチャネル8006が作動され、バルブ8008が開く。ここで、領域8026内に捕捉された対溶媒容積は、領域8022内に捕捉されたサンプル容積中には拡散せず、それぞれの混合比は、第三のコントロールチャネル8012の相対的な角配向によって決定される。
図32の結晶化システムは、単一の蛇行チャネルを通ってサンプルに導入されるべき対溶媒の1つの型を可能にする。しかしながら、高スループット結晶化状態を容易にするために、通常のサンプル供給源を共有する、図32に示されるような一連の結晶化システムが基材上に作製され得、異なる対溶媒が各システムに提供される。
さらに、捕捉による対溶媒容積の測定を用いる結晶化システムの実施形態の他のバリエーションもまた、可能である。例えば、1つの代替の実施形態において、相対的なサンプル容積は、そのサンプルと重なり合う第二のコントロールチャネルの配向角度によって決定され得る。さらに、架橋チャネルのいずれかの側のフローチャネルの形状は、連続バルブ間にさらなる容積を提供するように改変され得る。リソグラフィーによって決定される他の寸法(例えば、フローチャネルの深さおよび幅)もまた、対溶媒およびサンプルの相対容積に影響を及ぼすように制御され得る。
図43は、容積エントラップメントを用いる本発明に従う再結晶化システムの代替の実施形態の平面図である。図43のシステムは、より多数のフローチャネルを備えること以外は、図31のシステムと類似しており、これらのチャネルの下で材料の流れにわたる制御を増強させる、いくつかの特徴を有する。
結晶化システム9000は、フローチャネル9004a、9004b、9004c、9004d、9004e、9004f、9004gおよび9004hを備える。各フローチャネル9004a〜hは、終端チャンバ9006を特徴とし、これは、再結晶のための部位として働く。本発明のこの実施形態において例示されるタンパク質結晶化構造は、1μL未満のサンプルを使用し得ると同時に、64の1nLの再結晶化環境を作製する。
各フローチャネル9004a〜hの下での材料の流れは、数個のバルブおよびポンプ構造によって制御される。ゲートバルブ9024の最初のセットは、それぞれのフローチャネル9004a〜hの上流部分より上方のゲートコントロールチャネル9026の重ね合わせによって形成される。
コントロールチャネルの第一のセット9002は、チャンバ9006の開口部に重なり、そして作動された場合、チャンバ9006への近接をブロックする停止バルブ9003を規定する。第二のコントロールチャネル9005は、フローチャネル9004a〜hに重なり、そして作動された場合、フローチャネル9004の異なるセグメント9014間の流れをブロックするセグメントバルブ9007を規定する。
システム9000の操作は、図31のシステムについて上記された操作と類似しており、サンプル容積とともにチャンバおよびセグメントが荷電され、続いて対溶媒の容積が導入される。しかしながら、全てのフローチャネル8604を通るサンプルまたは対溶媒の同時流れを使用するのではなく、システム9000は、そのフローチャネルの出力側にマルチプレクサ構造9020を備える。詳細には、幅が変化した、蠕動のポンピングコントロールチャネル9020a〜fは、各フローチャネル9004a〜hの下流端上にある。ポンピングコントロールチャネル9020a〜f内の圧力の選択操作によって、サンプルまたは対溶媒は、各フローチャネル9004a〜hの下で、独立して流され得る。
このシステムのフローチャネルの下での、材料の流れにわたる制御における精度の向上は、多くの利点を提供する。1つの利点は、相互汚染の危険性を低減させる。フローチャネルは独立して制御され、かつマルチプレクサ構造9020の下流のみで互いに接触するので、フローチャネル間に生じる偶発的な圧力差は、フローチャネル間の材料の望ましくない逆流を生じない。
(3.交差チャネル注入による結晶化)
先の図26A〜26Dに例示される直交流チャネルアーキテクチャを使用して、標的物質の高スループットの結晶化を行い得る。このアプローチは、図33に示され、これは、本発明に従う結晶化構造の代替の実施形態を例示する。
図33の微細製作交差チャネルの高スループット結晶化構造は、交差注入交差点8102の5×5のアレイ8100を備え、この交差点は、平行な水平フローチャネル8104および平行な垂直フローチャネル8106の交差によって形成される。アレイ8100は、全体で5×5=25の同時結晶化状態に関して、各サンプルS1〜S5の、各対溶媒C1〜C5との混合およびこれらのサンプルの貯蔵を可能にする。水平フローチャネル8104に沿った流体の移動は、コントロールチャネル8110を重ねることによって形成される蠕動ポンプ8108によって、平行に制御される。垂直フローチャネル8106に沿った流体の移動は、コントロールチャネル8114を重ねることによって形成される蠕動ポンプ8112によって、平行に制御される。先の図28A〜Bに示されるように、カラムバルブ8116およびロウバルブ8118は、水平流動ライン8104および垂直流動ライン8106の交差によって形成される各交差注入交差点8102を取り囲む。
垂直方向の流れを遮断するカラムバルブ(column valve)8116は、単一のコントロールライン8120により制御される。水平方向の流れを遮断するロウバルブ(row valve)8118は、単一のコントロールライン8122により制御される。例示の目的のために、コントロールライン8120および8122の第1の部分のみを図33に示すが、全てのロウバルブおよびカラムバルブが、これらのコントロールラインにより制御されることが理解されるべきである。
結晶化の間に、水平フローチャネル8104は、5つの異なる濃度の標的物質のサンプルを、交差注入交差点8102に導入し、一方垂直フローチャネル8106は、交差注入交差点8102に、5つの異なる濃度および/または組成の対溶媒(countersolvent)を導入する。図34A〜34Cと関連して以下に記載される計量技術により、可能な5×5=25個すべての、サンプルと対溶媒との組合せが、アレイ8100の5×5=25個の交差注入交差点8102にて記録される。
図34A〜34Cは、図33のアレイ8100の隣接する合流点の拡大平面図を示す。例示の目的のために、コントロールラインを、図34A〜34Cでは省略する。また、合流点間の横方向の距離は、かなり短くされており、そして実際には、これらの合流点は、交差汚染を防ぐために、相当な距離で分離されている。
図34Aに示される第1の工程において、カラムバルブ8116は、閉じており、そして所定の濃度の標的物質のサンプルは、最初に水平フローチャネル8104の各々に流れる。図34Aに拡大して示されるアレイの部分において、横行間バルブ領域8126は、それによりサンプル物質S1で充填される。
次に、図34Bに示されるように、ロウバルブ8118は、閉じており、そしてカラムバルブ8116は、開いている。異なる濃度および/または組成の対溶媒は、垂直フローチャネル8106の各々に流れる。図34Bに拡大して示されるアレイの部分において、合流点8102は、これにより対溶媒C1およびC2で充填される。
図34Cに示されるように、カラムバルブ8116は、閉じており、そしてロウバルブ8118は、開いている。アレイの周辺蠕動ポンプで汲み出すことにより、バルブ間領域8126中のサンプルおよび合流点8102の対溶媒の両方が合流点8102およびバルブ間領域8126に流入するにつれて、バルブ間領域8126中のサンプルは、合流点8102の対溶媒と混ざる。次いで、ロウバルブ8118が閉じられ、カラムバルブ8116は、結晶化部位間の交差汚染を防ぐために、閉じたままにされている。次いで、図34Cに拡大して示されるアレイの部分において、溶媒環境S1C1およびS1C2において結晶化が起こり得る。
本発明の代替の実施形態において、別々のコントロールラインを使用して。交互のロウバルブの作動を制御し得る。このような実施形態において、図34Aおよび34Bに上記されるように、一旦、横行間領域および合流点がサンプルおよび対溶媒で充填されると、第3の工程において、交互ロウバルブが開かれ、その結果、ロウバルブ間領域中のサンプルが、拡散により合流点における対溶媒と混合する。この代替の実施形態は、ポンプによるくみ出し(pumping)を必要とせず、そして交互のロウバルブの他方の組が閉鎖した状態であることにより、交差汚染が防止される。
本発明に従う高スループット結晶化スクリーニングを実行するための構造のなお別の代替の実施形態において、単一のコントロールラインを利用して、複数の結晶化スクリーニングチャンバを規定するために交互のロウバルブを制御し得る。この実施形態は、図81A〜81Bに示される。
図81Aは、本発明の代替の実施形態に従う1つのフローチャネルの一部の拡大図を示す。図81Bは、図81Aの拡大したフローチャネルの部分の線B−B’に沿った断面図を示し、これは、交互のロウバルブを使用停止(deactuation)にして、隣接するチャンバ中の結晶化剤と標的物質との間の拡散を可能にする前である。図81Cは、図81Aの拡大したフローチャネル部分の線B−B’に沿った断面図を示し、これは、交互のロウバルブを使用停止にして隣接するチャンバ中の結晶化剤と標的物質との間の拡散を可能にした後である。
コントロールライン8150は、フローチャネル8104のいずれかの側に位置付けられた平行な分岐8150aおよび8150bを備える。分岐8150a〜bは、交互に配置される幅広の交差部分8152および狭い交差部分8154により接続されており、それにより大バルブ8156および小バルブ8158をそれぞれ規定する。異なる幅の交差部分8152および8154に起因して、バルブ8156および8158のエラストマー膜8160aおよび8160bは、異なる圧力がコントロールライン8150に加えられた場合に、それぞれ使用停止にされかつ作動される。
詳細には、コントロールライン8150に最も高い圧力を加えることにより、エラストマー膜8160aおよび8160bの両方が下にあるフローチャネル8104中に撓み、大バルブ8156および小バルブ8158の両方を閉じる。コントロールライン8150に最も低い圧力を加えることにより、エラストマー膜8160aおよび8160bの両方は、下にあるフローチャネル8104から緩和して、大バルブ8156および小バルブ8158の両方を開く。
それらの増大した面積に起因して、幅広の膜8160aは、幅の狭い膜8160bよりも作動させるのが容易である。従って、中間の圧力をコントロールライン8150に加えることにより小バルブ構造8158の幅の狭い膜8160bが、使用停止にされてバルブを開きながら、大バルブ構造8156の幅広の膜8160aのみを作動したままにさせる。加えられた圧力に対するこの異なる応答は、複数の結晶化スクリーニングチャンバを規定するためにコントロールラインを1つだけ使用することを可能にし、次いで、水平フローチャネルに沿った交互のバルブを緩和させて、標的物質および結晶化剤の拡散を可能にする。
図81A〜Cに示されるミクロ流体構造の操作の間、図34A〜Bに関連して上記したように、図81A〜Bにおいて、高圧および低圧をコントロールライン8150に適用することにより、フローチャネル合流点8102は、結晶化剤で満たされ、そしてバルブ間領域8126は、標的サンプルで満たされる。
図81Cに示されるように、中間の圧力がコントロールライン8150に加えられる場合、隣接する結晶化部位間の交差汚染を防ぐために、大バルブ構造8156の幅広膜8160aがフローチャネル8104内に残ったまま、小バルブ構造8158の幅の狭い膜8160aは、フローチャネル8104から緩和する。
(4.拡散/透析を利用する結晶化)
結晶化への1つの従来のアプローチは、遅い拡散により結晶化剤を導入すること、または透析と関連した遅い拡散により、標的溶液状態における逐次的変化をもたらすことである。例えば、タンパク質の結晶化において、サンプルと結晶化剤との間に透析膜を介在させることにより、タンパク質サンプルの濃度が減少することのない、タンパク質溶液への結晶化剤の拡散を生じる。
遅い拡散および/または透析を利用する、本発明の実施形態に従う結晶化の方法および構造は、種々の技術を使用し得る。いくつかの可能なアプローチを、以下に記載する。
図35に示される第1の実施形態において、微細製作(microfabricate)されたエラストマー構造8200は、種々の容積のチャンバ8202を特徴とし、これらのチャンバは、ポンプ/バルブネットワークにより最初にサンプルで充填され得る。チャンバ8202はまた、構造8200の表面8200aと流体連絡している。透析膜8204は、面8200aに固定され、次いで、微細製作された構造8200全体が、示されるようにバルク対溶媒容器8206に浸漬される。時間が経過するにつれて、容器8206からの対溶媒は、膜8204を横切って、チャンバ8202中へと拡散し、そしてサンプルからの溶媒は、膜8204を横切って容器8206中に拡散する。膜8204により、このサンプルのタンパク質が拡散するのを防ぐ。所望の溶液状態が達成された場合、結晶がチャンバ8202内で形成され得る。
結晶化へのこのアプローチの利点は、一旦サンプルで充填されると、この微細製作されたエラストマー構造が単に対溶媒中につけられるという点において単純である。このアプローチはまた、溶液の状態を直接モニタリングすることを可能にする。なぜなら、バルク対溶媒容器のpH、温度および他の局面は、従来の検出方法を使用して、変化をモニタリングされ得るからである。さらに、本発明の代替の実施形態において、溶解した標的物質の連続的な供給は、透析膜を通過して流れて、大きな結晶の成長のために適切な供給を確実にし得る。
本発明に従う実施形態はまた、二重透析と関連して実施され得、ここで標的溶液の状態における変化の速度は、第2の透析膜および中間溶液を、結晶化剤と第1の透析膜との間に介在させることにより遅くなる。このようなアプローチにおいて、この中間溶液は、結晶化剤の拡散から生じる標的溶液における変化を緩衝するように作用する。直前に記載した技術において、二重透析は、ミクロ流体構造および付随した透析膜を、第2の透析膜を通して結晶化剤容器と流体連絡した中間溶液に浸漬することにより達成され得る。
透析技術を使用する本発明の第2の実施形態は、図36に例示される。このアプローチは、対向する、微細製作されたエラストマー構造8302および8304の間に挟まれた透析膜8300を利用する。この構造の組み立てならびに対向する構造8302および8304のそれぞれのチャンバ/チャネル8306の適切な配置の際に、構造8302の容器8308からの対溶媒は、膜8300を横切って、構造8304の対応する結晶化チャンバ8310中に拡散する。結晶化チャンバ8310からの溶媒は、同様に、膜8300を横切って、第1の構造8302の容器8308中に拡散する。しかし、膜8300は、結晶化チャンバ8310中のタンパク質が同様に拡散するのを防ぎ、従って、このタンパク質は、溶液環境が変化する場合にチャンバ8310中に保持される。
図36の構造と同様の構造を使用する二重透析は、結晶化チャンバと第1の透析膜との間に中間チャンバを設け、次いで、この中間チャンバを緩衝溶液で満たすことにより達成され得る。第2の透析膜は、以下で図37において記載されるように、架橋ポリマーのプラグの形態で中間チャンバと結晶化チャンバとの間の微細製作された構造に導入され得る。
図35および36に直前に記載される実施形態は、微細製作された構造の表面全体への、透析膜の大規模な結合を使用する。しかし、他の実施形態は、微細製作された構造の局所的領域内の透析膜の挿入または配置を利用し得る。これは、図36に示され、ここで透析膜は、ポリアクリルアミドゲルの形態で微細製作された構造内に作製される。
詳細には、図37の再結晶化構造8400は、水平フローチャネル8406を通して閉鎖末端チャンバ8404と流体連絡している第1のチャンバ8402を備える。水平フローチャネル8406および垂直フローチャネル8408の挿入は、合流点8410を生じる。第1のバルブセット8412は、合流点8410の反対の側における、第1の制御チャネルおよび水平フローチャネル8406の部分の重なりにより規定される。第2のバルブセット8416は、合流点8410の反対側における第2の制御チャネルおよび垂直フローチャネル8408の部分の重なりにより規定される。
この実施形態の操作は以下の通りである。第2のバルブセット8416は、第1のバルブセット8412が開いている間は閉じている。閉鎖末端チャンバ8404は、水平フローチャネル8406を通してサンプルで充填される。
次に、第2のバルブセット8416が開かれ、そして第1のバルブセット8412が閉じられる。垂直フローチャネル8408は、ポリアクリルアミドゲルのような架橋可能なポリマー8420で充填される。次いで、垂直フローチャネル内でのこのポリマーの架橋が、例えば、フローチャネルの照射により、または遅延作用性架橋化学物質とこのポリマーとを垂直フローチャネルにゲルで充填する前もしくは充填する間に混合することにより、誘導される。一旦、ポリマーの所望の量の架橋が起これば、拡散に対する選択的バリア(すなわち、透析膜)として作用する。
最後に、第2のバルブセット8416は、閉じられ、そして第1のバルブセット8412は、再び開けられ、そして第1のチャンバ8402は、対溶媒で充填される。この対溶媒は、架橋されたポリマー膜8420を横切って拡散し、閉鎖末端チャンバ8404中の溶液状態を変更する。
標的物質溶液の状態における経時的な変化をさらに媒介するための二重透析は、微細製作されたチャンバおよび第2のポリアクリルアミドプラグ中間体を、結晶化チャンバおよび結晶化剤を含有するチャンバに導入することによりもたらされ得る。
上記の二重透析の実施形態のいずれかにおいて、第2の透析膜は、除外され得、そして中間溶液を横切る結晶化剤の拡散は、標的物質溶液の状態における遅い変化に依存する。中間溶液を横切る結晶化剤の拡散速度は、介在する構造の物理的寸法(すなわち、長さ、断面)(例えば、微細製作されたチャンバ/チャネルまたは微細製作された構造が浸漬された容器を接続するキャピラリもしくはより大きな直径の管)により制御され得る。
他の実施形態において、微細製作されたエラストマー構造は、垂直に(しばしば、好ましくは、チャネルの断面に沿って)分割され得る。本発明の実施形態に従って、非エラストマー成分は、このような切断により開かれたエラストマー構造中に挿入され得、次いでこのエラストマー構造は、再密閉される。このようなアプローチの一例は、図38A〜38Cに示され、これらは、内部に位置付けられた膜を有するフローチャネルを形成するためのプロセスの断面図を例示する。詳細には、図38Aは、フローチャネル6204に重なるエラストマー膜6202、およびエラストマー基板6206を備えるデバイス6200の一部の断面を示す。
図38Bは、フローチャネル6204の長さにそって延びる垂直線6208に沿ってデバイス6200をカットした結果を示し、その結果、半分6200aおよび6200bが形成される。図38Cは、半分6200aと半分6200bとの間の浸透膜要素6210の挿入、次いで、半分6200aおよび6200bの浸透膜6210への装着を示す。この構成の結果として、このデバイスのフローチャネルは、実際には、浸透膜6210で分離されたチャネル部分6204aおよび6204bを備える。
図38Cの構造は、種々の適用において利用され得る。例えば、この膜は、透析を実行するために使用され得、フローチャネル内のサンプルの塩濃度を変更する。これは、結晶化された標的物質の溶液環境の変化を生じる。
これまでに考察した本発明の実施形態は、液相における結晶化剤の拡散を利用するが、蒸気拡散は、結晶形成を誘導するために使用されている別の技術である。従って、図39〜41は、本発明の実施形態に従う蒸気拡散構造のいくつかの実施形態の平面図を示す。
図39は、蒸気拡散構造8600の単純な実施形態を示し、ここで、入り口8602aおよび出口8602bを有する第1の微細製作されたチャンバ8602、ならびに入口8604aおよび出口8604bを有する第2の微細製作されたチャンバ8604は、交差フローチャネル8606により接続される。最初に、全体構造8600は、空気で満たされる。次いで、交差バルブ8608は、交差フローチャネル8606内に空気を捕捉するように作動される。次いで、標的溶液は、入口8602aを通して第1のチャンバ8602に導入され、置換された空気は、出口8602bを通って抜ける。結晶化剤は、入り口8604aを通して第2のチャンバ8604に導入され、置換された空気は、出口8604bを通って抜ける。
次いで、交差バルブ8608が開かれ、その結果、空気は、サンプルと結晶化剤との間で交差フローチャネル8606内に捕捉されたままになる。次いで、溶媒および結晶化剤の蒸気拡散が、交差フローチャネル8606のエアポケットを横切ってゆっくりと起こり、溶液の状態を変化させ、それにより、第1のチャンバ8602における結晶の形成を誘導する。構造8600は、このプロセスの間にバルブ8610により外側の環境に対して密閉され得る。
上記の実施形態は、機能的であるが、液体が満たされるチャンバの間に捕捉されたエアポケットは、環境の状態に応じて移動または変形し得、標的物質溶液と結晶化剤との間の望ましくない直接の流体接触を可能にする。従って、このエアポケットを、微細製作された構造内の特定の場所に係留することが望ましい。
従って、図40は、蒸気拡散により結晶化を実行するための構造の代替の実施形態を示す。詳細には、構造8700は、第1の末端8702aにおいて第1の入口8704を有し、第2の末端8702bにおいて第2の入口8706を有し、そして中間部分8702cにおいてベント8707を有するチャンバ8702を備える。チャンバ8702の中間部分8702cは、疎水性領域8712含み、これは、微小接触印刷(microcontact printing)により形成され得る。微小接触印刷技術は、Anderssonらにより、「Consecutive Microcontact Printing−Ligands for Asymmetric Catalysis in Silicon Channels」、Sensors and Actuators B,39971〜7頁(2001)(あらゆる目的のために参考として援用される)に詳細に記載される。
詳細には、構造8700の製造の間に、下にある基板は、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)のパターン8710をスタンプされ得る。パターン8710上への微細製作されたエラストマーチャンバ8702の続く配置は、中央疎水性領域8712を形成する。
最初に構造8700は、空気で満たされる。次いで、水性標的溶液は、第1の入口8706を通して注意深く導入され、空気はチャンバ8702からベント8707を通して置換される。疎水性チャンバ領域8712の存在に起因して、チャンバ8702の標的溶液での充填は、この溶液が領域8712に当たる場合に停止する。同様に、疎水性結晶化剤は、第2の入口8706を通してチャンバ8702に注意深く導入され、疎水性領域8712において停止する。結晶化剤でチャンバ8702を満たすことにより置換される空気は、ベント8707を通ってチャンバ8702を出る。このようにして、下にあるパターン付けされた疎水性領域8712により適所に固定されて、中央領域8712におけるエアポケットは、標的サンプル中への結晶化剤の遅い蒸気拡散を可能にして、チャンバ8702の右側における結晶形成を誘導する。周囲のバルブ8714は、このプロセスの間にこの構造を単離するように作動され得る。
有用であるが、図40に関連して直前に記載される蒸気拡散構造の実施形態は、下にある基板上のパターン付けされた疎水性領域に対する、微細製作されたエラストマーチャネルの配置を必要とする。この配置プロセスは、本発明の実施形態に従う構造の小さな特徴サイズを考慮すると、困難であり得る。さらに、製造プロセスの間、この疎水性物質は、下にある基板上のみに形成されて、チャネルの壁には形成されないようである。
従って、図41は、蒸気拡散により標的物質の結晶化を実行するための構造のさらに別の実施形態を示し、これは、配置工程を必要としない。詳細には、再結晶構造8800は、交差フローチャネル8806により第2のチャンバ8804に接続された第1のチャンバ8802を備える。第2のフローチャネル8808は、交差フローチャネル8806と交差し、合流点8810を形成する。交差フローチャネル8806に沿って合流点8810を横切る流れは、第1のバルブ対8812により制御される。第2のフローチャネル8808に沿って合流点8810を横切る流れは、第2のバルブ対8814により制御される。
最初に、第1のチャンバ8802は、標的物質溶液で充填され、そして第2のチャンバ8804は、結晶化剤で充填される。次に、第1のバルブ対8812は閉じられ、そして第2のバルブ対8814は開かれ、そして疎水性物質(例えば、OTS)は、第2のフローチャネル8808から合流点8810に流れる。この物質の流れの結果として、疎水性残部8816は、基板上、そしておそらく合流点8810にけるフローチャネル壁上に残る。
次に、空気が、第2のフローチャネル8808中に導入され、そして第2のバルブ対8814が閉じられる。次いで、第1のバルブ対8812は開けられて、空気を満たされた合流点8810を横切る、チャンバ8802中の標的物質溶液中への、チャンバ8804中の結晶化剤の蒸気拡散を可能にする。この蒸気拡散プロセスの間、エアポケットは、閉じられたバルブ対8814および疎水性残部8816の存在により合流点8810に固定される。バルブ8818は、外側の環境に対して構造8800を完全に密閉するように閉じられ得る。
上記の実施形態は、蒸気拡散の間エアポケットを適所に固定するための疎水性部分の微小接触印刷に焦点を合わせたが、本発明は、このアプローチに限定されない。本発明に従う微細製作された結晶化構造の部分に選択的に導入される疎水性領域は、疎水性油の形態で拡散に対するバリアまたは障害物を適所に固定するために代替的に利用され得る。
疎水性油物質はまた、本発明の実施形態に従う微細製作されたエラストマー構造の外表面をコーティングするために利用され得る。このようなコーティングは、エラストマーからの蒸気の外拡散(outdiffusion)に対して不浸透性であり得、それにより、長くなる可能性のある結晶化期間の間この構造の脱水を防止する。あるいは、このコーティング油は、水または他の気体にある程度浸透性であり得、それにより、水または気体の遅い制御された外拡散を、結晶化に有利な構造状態内に生じさせることを可能にする。
(5.結晶化に影響を及ぼす他の要因に対する制御)
上記の結晶化構造は、多量の適切な結晶化剤の導入により標的物質の環境を変更することを記載するが、多くの他の要因が、結晶化に関連する。このようなさらなる要因としては、温度、圧力、溶液中の標的物質の濃度、平衡力学、および種物質の存在が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の特定の実施形態において、結晶化の間の温度制御は、以前に記載した複合エラストマー/ケイ素構造を利用して達成され得る。詳細には、Peltier温度制御構造は、下にあるケイ素基板に作製され得、エラストマーは、結晶化チャンバがPeltierデバイスの付近にあるようにケイ素に対して配置される。Peltierデバイスに適切な極性および大きさの電圧を印加することにより、チャンバ内の溶媒および対溶媒の温度が制御され得る。
あるいは、Wuらにより「MEMS Flow Sensors for Nano−fluidic Applications」、Sensors and Actuators A89 152−158(2001)に記載されるように、結晶化チャンバは、オーム加熱を生じる、微細機械加工された抵抗構造に対して電流を選択的に印加することにより、加熱および冷却され得る。さらに、結晶化の温度は、経時的に加熱器の抵抗をモニタリングすることにより検出され得る。Wuらの文献は、あらゆる目的のために本明細書中に参考として援用される。
本発明に従う微細製作されたエラストマー結晶化構造を横切る温度勾配を確立することもまた有用であり得る。このような温度勾配は、結晶化の間の広範な温度スペクトルに標的物質を供し、結晶化に最適な温度の非常に正確な決定を可能にする。
結晶化の間の圧力の制御に関して、容積排除による対溶媒の計量を使用する本発明の実施形態は、特に有利である。詳細には、一旦チャンバが適切な容積の溶媒および対溶媒で充填されると、チャンバ入口バルブは、このチャンバの上にある膜が作動されている間閉鎖して維持され得、それにより、チャンバ内の圧力を増加させる。容積排除以外の技術を使用する本発明に従う構造は、結晶化チャンバに隣接してフローチャネルおよび付随する膜を備えることにより圧力制御を及ぼし得、そして詳細にはチャネル内の圧力を制御する。
結晶化に影響を及ぼす別の要因は、溶液中で利用可能な標的物質の量である。結晶が形成する場合、この結晶は、溶液中に残っている標的物質の量が、連続した結晶成長を持続するのに不適切になり得る時点まで、溶液中で利用可能な標的物質に対してシンクとして作用する。従って、十分に大きな結晶を成長させるために、結晶化プロセスの間にさらなる標的物質を提供することが必要であり得る。
従って、図27A〜27Bに関連して以前に記載したセルペン構造は、成長した結晶をチャンバ内に制限するために、本発明の実施形態に従う結晶化構造において有利に使用され得る。このことは、成長している結晶を、さらなる標的物質を提供しているフローチャネルに洗い流して、成長している結晶を廃液に損失する危険性を未然に防ぐ。
さらに、図27A〜27Bのセルケージ構造はまた、結晶同定のプロセスの間有用であり得る。詳細には、塩がしばしばサンプルまたは対溶媒中に存在し、そしてこれらの塩は、結晶化の試みの間に結晶を形成し得る。塩の結晶の成長と目的の標的結晶とを区別する1つの一般的な方法は、Hampton Research of Laguna Niguel,California製のIZITTMのような染色色素への曝露による。このIZITTM色素は、タンパク質結晶を青色に染色するが、塩結晶は染色しない。
しかし、このIZITTM色素を、結晶を保持している結晶化チャンバに流すプロセスにおいて、この結晶は、取り除かれ得、洗い流され得、そして失われ得る。従って、セルペン構造は、染色プロセスの間結晶を適所に固定するために、本発明に従う結晶化構造および方法においてさらに使用され得る。
図42は、セルケージ概念(cell cage concept)に基づく結晶の分類デバイスの実施形態を示す。詳細には、種々のサイズの結晶8501が、分類デバイス8500の上流のフローチャネル8502に形成され得る。分類デバイス8500は、異なる距離で間隔を空けたピラーの連続したロウを備える。ブランチチャネル8510の入口は、ロウに前面に位置付けられる。結晶8501がチャネル8502を下流に流れる場合、ピラーのロウに遭遇する。最も大きな結晶は、第1のロウのピラーの間のギャップYの間を通過することが出来ず、そしてロウの前面に蓄積する。より小さなサイズの結晶は、ピラーの間により小さな連続する間隔を有する連続したロウの前面に集められる。一旦、上記の様式で分類されると、種々のサイズの結晶が、以前に記載したように、蠕動ポンプ8514を利用して、流体をブランチチャネル8510にポンプで通すことにより、チャンバ8512中に収集され得る。分類構造により収集されたより大きな結晶は、X−線による結晶学的な分析に供され得る。分類構造により収集されたより小さな結晶は、さらなる結晶化の試みにおける種(seed)結晶として利用され得る。
結晶成長に影響する別の因子は、シーディング(seeding)である。標的溶液へのシード結晶の導入は、溶液中の分子が整列し得るテンプレートを提供することにより、結晶形成を非常に増大させ得る。シード結晶が利用可能はでない場合、本発明に従うミクロ流体結晶化法およびミクロ流体結晶化システムの実施形態は、他の構造を利用して、類似の機能を実行し得る。
例えば、上で議論されるように、本発明に従う構造のフローチャネルおよびチャンバは、代表的には、微細製作した特徴を含むエラストマー層を下にある基材(例えば、ガラス)と接触して配置することにより規定される。この基材は、平面である必要はなく、むしろ、結晶形成を誘導するように計算されたサイズおよび/または形状の突起または窪みを含み得る。本発明の1つの実施形態に従って、下にある基材は、規則正しい所望の形態を示す無機物マトリクスであり得る。あるいは、下にある基材は、結晶形成を誘導するように計算された所望の形態または形態のスペクトルを示すようにパターン化され得る(すなわち、従来の半導体リソグラフィー技術によりパターン化され得る)。このような基材表面の形態の最適な形状は、標的結晶の既知の知見により決定され得る。
本発明に従う結晶化構造および方法の実施形態は、従来のアプローチを越える多数の利点を提供する。1つの利点は、極めて小さな容積(ナノリットル/ナノリットル以下)のサンプルおよび結晶化剤によって、広範な種々の再結晶条件が比較的少量のサンプルを利用して用いられ得ることである。
本発明の実施形態に従う結晶化構造および方法の別の利点は、小さなサイズの結晶化チャンバによって、結晶化の試みが、数百、さらには、数千の異なるセットの条件下で、同時に行われ得ることである。再結晶化に用いられる少ない容積のサンプルおよび結晶化剤はまた、貴重な精製された標的物質の最小限の浪費を生じる。
本発明の実施形態に従う結晶化のさらなる利点は、操作の比較的簡単さである。詳細には、並行作動(parallel actuation)を利用する流れの制御は、数本のコントロールラインのみの存在を必要とし、そして微細製作デバイスの操作により自動的に実施される結晶化剤およびサンプルの導入は、多数のサンプルについて非常に迅速な調製時間を可能にする。
本発明の実施形態に従う結晶化システムのなおさらなる利点は、溶液平衡化速度の制御を制御する能力である。結晶成長は、しばしば、非常に遅く、そして結晶は、溶液が、最適な濃度で、平衡状態への道のりを迅速に通過する場合に、形成される。従って、平衡化の速度を制御して、それにより、中間の濃度で結晶成長を促進させることは有利であり得る。結晶化に対する従来のアプローチでは、ペースの遅い平衡が、蒸気拡散、低速透析、および非常に小さい物理的界面(very small physical interface)のような技術を用いて達成される。
しかし、本発明に従う結晶化は、溶液平衡化の速度に対する先例のない制御を可能にする。容積排除により結晶化剤を計測するシステムにおいて、重なった膜は、繰返し変形され得、各々の変形は、さらなる結晶化剤の導入を生じる。容積エントラップメント(volume entrapment)により結晶化剤を計測するシステムにおいて、サンプルを結晶化剤から分離するバルブは、短時間解放され得、部分的に拡散性の混合を可能にし、次いで、閉鎖されてチャンバを中間の濃度で平衡化させる。このプロセスは、最終濃度に達するまで繰り返される。容積排除または容積エントラップメントのアプローチのいずれかは、中間の濃度の全範囲を、単一の反応チャンバ利用して、一回の実験でスクリーニングすることを可能にする。
経時的な溶液平衡状態の操作はまた、高分子(例えば、タンパク質) 対 ずっとより小さい結晶化剤(例えば、塩)の様々な拡散速度を開発する。大きなタンパク質分子は、塩よりもずっとより遅く拡散するので、迅速な解放界面バルブおよび閉鎖界面バルブは、結晶化剤の濃度を、著しく変更することを可能にする一方、同時に、非常に小さなサンプルを、大容積の結晶化剤への拡散により失わせる。さらに、上記のように、記載される多くの結晶化構造は、異なる結晶化剤を、異なる時間で、同じ反応チャンバへと導入することを容易に可能にする。このことは、経時的に変化した溶媒条件を規定する結晶化プロトコルを可能にする。
(6.実験結果)
現在のタンパク質結晶化チップを利用する結晶化の結果と、タンパク質結晶化の2つの現在普及している肉眼的な方法(懸滴蒸気拡散およびマイクロバッチ)から得られた結果を比較するために、多数の実験を行った。結果を以下で議論する。
モデルタンパク質を、これらの入手可能性および結晶化に対する困難性に基づいて選択した。タンパク質結晶化の困難性を、蒸気拡散技術またはマイクロバッチ技術を用いて、タンパク質を結晶化するために、販売業者Hampton Research(Laguna Nigel,CA)により主張される条件の数として規定した。容易、中間、および困難の困難性のレベルは、48個の内10個よりも多い条件が結晶化を生じるタンパク質、5個と10個の間の条件が結晶化を生じるタンパク質、および5個未満の条件が結晶化を生じるタンパク質に割り当てられる。容易なタンパク質および困難なタンパク質の両方を選択した。
結晶化が困難なタンパク質を選択して、チップに対してストリンジェントな試験を適用し、このチップが非常に特異的な結晶化条件を必要とするタンパク質を結晶化し得るか、さらに、標準的な結晶化技術を使用して検出可能ではない結晶化条件を検出し得るかを示した。容易タンパク質を選択して、チップと従来の技術との間の挙動の差異をより良く理解し、そしてどの条件がチップと不適合性であるのかを発見する。この研究に用いられるモデルタンパク質は、グルコースイソメラーゼ(中間)プロテイナーゼK(容易)、ウシ肝臓カタラーゼ(困難)、ウシ膵臓トリプシン(中間)、リゾチーム(容易)、およびキシラナーゼ(中間)、およびトポイソメラーゼVIのBサブユニット(中間、これまで結晶化されていない)であった。
本発明の実施形態は、従来の結晶化法に対して実行可能な代替を提供する。ミクロ流体デバイスは、従来の方法と比較して、タンパク質の使用の節減、より簡単かつより迅速な実験の組み立て、および貯蔵空間の所要量の減少を提供する。下で議論するように、ほぼ全てのタンパク質モデルにおいて、チップは、従来の方法よりもより多くのヒットを生じる。大きく高品質の結晶が、チップ中で成長され得、そしてこれらの結晶をチップから直接回収することが可能であることがさらに示されている。
収集のための、チップからX線までのいくつかの経路が、提案されており、これは、チップからの結晶の直接的収集を含む。チップと従来の方法との間での約50〜80%の一致が決定される(一致のレベルは、従来の方法の間でほぼ同じである)。チップ平衡の分析は、マクロ自由界面拡散(macro free interface diffusion)は、チップを良好にエミュレートすることを示唆する。この分析は、さらに、チップが相空間の大きな領域をサンプリングし、従って、都合の良い結晶化条件に遭遇する傾向が高いことを示す。
チップのPDMS材料の透過性は、結晶化において有意な因子であるが、結晶を生じたHamptonスクリーンにおけるほぼ全ての条件は、標的スクリーニングの過程にわたりヒットする。チップ条件に対応する肉眼的方法の開発における透過性材料の使用は、マイクロバッチの場合に示されているように、有益であり得る。
(a.試薬およびタンパク質)
Crystal Screen Kit 1、Izit色素、グリースを塗ったLinbroプレート、およびシリコーン処理したカバーガラスを、Hampton Researchから購入した。Coster96ウェル丸底プレートを、VWR(West Chester,PA)から購入した。HEPESを、Fluka(St.Louis,MO)から購入した。塩化カルシウム、PMSF、ベンズアミジン塩酸塩、および鉱油を、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)から得た。
グルコースイソメラーゼを、Hampton Researchから得、そして蒸留した脱イオン水中で、4℃にて一晩透析した。タンパク質濃度は、約30mg/mLであった。タンパク質を1mLのサンプルにアリコート化し、液体窒素中でスナップ凍結し、そして−20℃で保存した。
プロテイナーゼKを、Worthington Biochemicals(Lakewood,NJ)から得、1mM塩化カルシウム、25mM HEPES緩衝液(pH7.0)中で、4℃で、5〜6時間透析し、0.22 mシリンジフィルターを通してろ過し、100 Lのサンプルにアリコート化し、そして−20℃で凍結保存した。プロテイナーゼKは、約20mg/mLであり、そしてインヒビターPMSFを、いくつかの実験に使用する前に、最終濃度1mMで添加した。
ウシ肝臓カタラーゼを、Sigma−Aldrichから購入し、25mM HEPES(pH7.0)中で4℃にて一晩透析し、1mLのサンプルにアリコート化し、液体窒素中でスナップ凍結し、そして−20℃で保存した。ウシ肝臓カタラーゼは、約30mg/mLであり、そして使用の前に12,000rpmにて5分間遠心分離して、溶液を濃褐色からわずかに色が付いた溶液へと変化させた。
リゾチームを、Sigma−Aldrichから購入し、50mg/mLの最終濃度まで、0.2Mの酢酸ナトリウム(pH4.7)に溶解した。次いで、この溶液を4℃にて10分間エッペンドルフ遠心管中で遠心分離した(16000g)。
キシラナーゼを、Hampton Researchから購入した。結晶化実験の前に、36mg/mLのタンパク質、43%のグリセロール、および0.18MのMa/Kホスフェートを含むストック溶液を、脱イオン水の半分で希釈した。
ウシ膵臓トリプシンを、10mM塩化カルシウム、25mM HEPES緩衝液(pH7.0)中で、4℃にて5〜6時間透析し、0.22μmシリンジフィルターを通してろ過し、100μLのサンプルにアリコート化し、そして−20℃で凍結保存した。ウシ膵臓トリプシンは、約60mg/mLであり、そして10mg/mLのインヒビターであるベンズアミジン塩酸塩を含んでいた。未公開の構造を有する、1つのさらなるタンパク質をまた、チップで評価した。トポイソメラーゼVIのBサブユニットは、50KDa、ATPに結合する、強制的に生成させた、古細菌のIIB型トポイソメラーゼ複合体のサブユニットである。このタンパク質を、12mg/mLの濃度で、20mM TRISを用いてpH7.0で緩衝化した、NaClの100mM溶液中で調製した。
タンパク質を含まないネガティブコントロールの緩衝液を、塩結晶とタンパク質結晶との間の差異を決定するのを補助するために、チップ上に配置した。チップ上で、タンパク質なしのコントロールは、20mM塩化カルシウム、25mM HEPES(pH7.0に緩衝化)を含む1つのチップおよび20mM塩化カルシウム、1mM HEPES(pH7.0に緩衝化)を含む1つのチップを含んだ。キシラナーゼ、リゾチーム、グルコースイソメラーゼ、およびトポイソメラーゼVIのBサブユニットについて個々のタンパク質なしのコントロールを、上記の特定の緩衝液を用いて行った。コントロールをまた、1mM塩化カルシウム、25mM HEPES(pH7.0)、および蒸留した脱イオン水と共にマイクロバッチ中に配置した。
(c.懸滴を利用する結晶化)
従来の懸滴技術は、液滴(ドロップ)(代表的には、より高い濃度の結晶化剤混合物)よりも、より高い浸透ポテンシャルを有するいくつかの型の流体のウェルを覆って、標的分子/結晶化剤混合物(「液滴と呼ばれる」)を密閉シールして、この液滴中の標的分子および結晶化剤の両方の濃度の同時増加と共に、液滴のゆっくりとした脱水を誘導することを伴う。この濃縮プロセスが生じる場合、標的は、液相から固相(望ましくは、結晶形態)へとゆっくりと進む。
懸滴実験を、グリースを塗ったLinbro24ウェルプレート中で行った。500μLのHampton Crystal Screen 1−48をウェルの底に置いた。1μLのタンパク質および1μLの結晶スクリーンを、シリコーン処理したカバーガラスの中央へ合わせた。カバーガラスを、0.5mLのスクリーン溶液を含むウェルを覆ってシールし、そしてプレートを2週間にわたり周囲温度で維持した。プレートを、1〜2週間の期間にわたり結晶成長についてモニターした。二連にするため、両方の液滴を、同じ試薬ウェルを覆う単一のカバーガラス上に置いた。
(d.マイクロバッチを利用する結晶化)
マイクロバッチは、別の従来の結晶化アプローチである。マイクロバッチは、上記の懸滴技術に類似するが、「液滴」をいくつかの型の非浸透性または半浸透性蒸気バリア(例えば、油)の下に配置することを伴う。経時的に、懸滴において生じる蒸気拡散に類似する様式で、結晶化試薬は、標的の凝集を、再び、好ましくは、結晶段階で促進する。
マイクロバッチ実験を、96ウェルプレート中で行った。100μLの鉱油を、各ウェルへとピペットで移した。1μLのHampton Crystal Screen 1−48、次いで、1μLのタンパク質を、各ウェルに添加し、そしてこのプレートを1000rpmにて5分間遠心分離して、油層の下の2つの液滴を混合した。このプレートを周囲温度で2週間まで維持し、そして結晶成長についてモニターした。
(e.チップ上での結晶化)
実験で利用される結晶化チップについての特定の設計を、図45A〜Cに示す。図45Aは、チップの代替の実施形態の単純化した平面図を示す。図45Bは、1組の3化合物ウェルの単純化した拡大平面図を示す。図45Cは、線C−C’に沿った図45Bのウェルの単純化した断面図を示す。このチップ設計は、ボリュームエントラップメント技術を利用する標的溶液および結晶化剤の計測を用いた。
具体的には、各チップ9100は、1チップあたり合計144のアッセイに関して、48の異なるスクリーン条件の各々について、3化合物ウェル9102を備える。化合物ウェル9102は、ガラス基材9104中にエッチングされ、そしてマイクロチャネル9106を介して流体接触する、2つの隣接するウェル9102aおよび9102bからなる。化合物ウェル9102の各々において、タンパク質溶液を、隣接するウェル9102a−bの相対的サイズにより規定される割合で、スクリーン溶液と合わされる。図45A〜Cに示される特定の実施形態において、3つの比率(タンパク質:溶液)は、4:1、1:1、および1:4である。スクリーン溶液を含む各アッセイの総容積は、約25nLである。しかし、本発明は、任意の特定の容積または容積の範囲に制限されない。本発明に従う代替の実施形態は、10nL未満、5nL未満、2.5nL未満、1.0nL未満、および0.5nL未満の総アッセイ容積を利用し得る。
マイクロチャネル9106は、界面コントロールライン9108、封じ込めコントロールライン9110および2つの安全コントロールラインを備える。コントロールライン9108、9110、および安全コントロールラインを、チップ内の湿潤環境を維持し、そして結晶化が行われるフローチャネルおよびチャンバの脱水を防ぐため、空気よりむしろ水で満たす。
界面バルブ9114は、化合物ウェル9102を二等分し、ローディングの完了まで、タンパク質をスクリーンから分離する。封じ込めバルブ9116は、各化合物ウェル9102のポートをブロックし、実験の間、各条件を隔離する。2つの安全バルブ9118は、タンパク質ローディングの間、作動され、そして界面バルブが故障した場合、タンパク質溶液の流出を防ぐ。
実験で利用されるミクロ流体デバイスの組み立てを、標準的な多層ソフトリソグラフィー技術により調製し、そしてエッチングしたスライドガラスに、80℃にて5時間以上ベーキングすることによりシールした。ガラス基材を、5740フォトレジストの16μmの層でマスクし、そして標準的な光リソグラフィーを用いてパターン形成した。次いで、ガラス基材を、1:1:1(BOE:H2O:2N HCl)の溶液中で、60分間、エッチングして、約80μmの最大深さを有するマイクロウェルを作製した。
直前に記載したチップ組み立てのプロトコルは、本発明の可能な実施形態の単に1つの例である。代替の実施形態に従って、結晶化チャンバおよびフローチャネルは、平面基材とエラストマー部分のより低い表面の全体に形成された凹のパターンとの間に規定され得る。なおさらなる代替として、結晶化チャンバおよびフローチャネルは、平面(エラストマー部分の特徴のないより低い表面)と、基材の全体に形成された凹のパターンとの間に規定され得る。
チップ上の結晶化を、以下のように準備した。マイクロチャネル9106中の全てのコントロールラインは、15〜17psiの圧力で水を用いてローディングされる。一旦、このコントロールラインが満たされ、そしてバルブ9114および9116が、完全に作動されると、封じ込めバルブ9116が解放され、そしてタンパク質が、約5〜7psiを用いて9120を介して中央を通ってロードされる。タンパク質溶液は、各化合物ウェル9102のタンパク質側を充填する。存在する場合、故障したバルブが識別され、そして真空グリースが、引き続いての加圧および残りの条件の可能な汚染を防ぐため、対応するスクリーンバイアを覆って配置される。次いで、2.5〜4μLの低密度マトリクススクリーン(代表的には、Hampton Crystal Screen I,1−48)が、スクリーンバイア9122へとピペットで入れられる。安全バルブ9118は解放され、そして特別に設計されたチップホルダー(以下に記載される)を用いて、48個全てのスクリーンバイア9122を覆う加圧(5〜7psi)シールを作製する。このスクリーン溶液を、デットエンドロードし、各化合物ウェルのスクリーン面を充填する。タンパク質および結晶スクリーン試薬は、全てのウェルがロードされるまで、界面バルブとの分離を維持し、ロードされた時点で、封じ込めバルブが閉鎖され、そして界面バルブが解放されて、化合物ウェル9102の2つの半分に存在する流体容積の間での拡散を可能にする。
(f.チップ性能)
チップ性能は、実験の間で変化した。最初に、チップは、約30%のバルブ故障率を示した。しかし、後の実験は、代表的に、48の条件のうち、約3〜10の故障を有した。合計9個のチップが、100%の成功率を有した。
タンパク質メニスカスをトラッキングすることにより測定された、1つのチップあたりに用いられる平均タンパク質溶液容積は、約3μLであった。
これらの実験について、実験を準備する(コントロールラインを充填することを含む)のに費やした平均時間は、約35分であり、最も早い実験では、準備するまでにわずか20分しかかからなかった。この準備時間は、図80と組合わせて以下で議論されるように、チップに対する溶液のロボット化ピペッティングの使用を通してか、または送達される溶液のロードおよびプライムのための圧力の使用を通して、なおさらに、潜在的に減少され得る。
(g.一般的結晶成長観察およびデータ分析)
懸滴、マイクロバッチ、およびチップ実験を、2週間までヒットについて観察した。他で指摘しない限り、ヒットとは、単一の結晶、針状結晶、板状結晶、棒状結晶、球晶、または沈殿として定義される。相分離または油滴は、ヒットとして計数されない。いくつかの場合において、結晶を、塩結晶を染色しないIzit色素を用いる染色によりタンパク質結晶であることを確認した。Izit色素を、対応する結晶スクリーンにおいて1/20に希釈し、そして1μLを結晶滴に添加する。タンパク質結晶をまた、結晶を結晶プローブでプロービングすることにより確認した。
技術の間での結晶の成長パターンに対する比較は、ヒットを生じる条件における類似性に基づく。二連および三連の試験について、比較をして、その結果、二連の一方または両方が両方の技術においてヒットを生じた場合、2つの技術は、同じ成長パターンを有すると考えられる(例えば、チップ1またはチップ2がヒットを生じ、そしてマイクロバッチ1またはマイクロバッチ2がヒットを生じる場合、チップおよびマイクロバッチは、類似の成長パターンを有すると考えられる)。
(h.グルコースイソメラーゼの結晶化)
グルコースイソメラーゼの結晶化を、1つの懸滴実験、2つのマイクロバッチ実験、および6つの別個のチップにおいて準備した。懸滴実験を、1週間の間毎日、次いで、第2の1週間の間一日おきにモニタリングし、マイクロバッチプレートを、2週間観察し、そしてチップを9日までモニタリングした。結果は、他の因子(バルブ故障、タンパク質のロードの失敗または結晶スクリーンの失敗)を考慮にいれた場合、チップの間で一致した。
これらの実験の結果を、図46に示されるヴェン図形に要約する。1つの結晶スクリーン(試薬番号33)は、いずれかの実験において結晶または沈殿の生成に失敗した。48のスクリーンのうち33が、懸滴実験においてヒットを生じ;48のうち28が、マイクロバッチ法においてヒットを生じ、そして48のうち47は、チップにおいてヒットを生じた。マイクロバッチと懸滴実験との間に有意な一致が存在した:マイクロバッチ結果の81%は、懸滴結果と一致し、ここで13の条件が、いずれの技術においてもヒットを生じず、そして26の条件が、両方の技術において結晶または沈殿を生じた。
チップ結果とマイクロバッチ結果との間(60%の一致)でも、チップ法と懸滴法との間(71%)でもあまり一致がなかった。12の条件が、チップにおいてヒットを生じるが、他の方法ではヒットを生じなかった。表1は、3つの技術におけるグルコースイソメラーゼ結晶化の結果を示す。
結晶の成長が、マイクロバッチおよび懸滴法において観察された場合、これらの結晶を結晶プローブで突くことによって、これらの結晶がタンパク質であることを確認した。図47A〜Bに示されるように、圧力下で崩れる結晶(図47B)は、タンパク質であるはずである。崩れも砕けもしない結晶(図47A)は、塩結晶である。図48A〜Bに示されるように、大きな高品質の結晶が、チップを利用して生成された。
マイクロバッチに対する、チップ上でのグルコースイソメラーゼの結晶化もまた、別のセットの実験において評価した。グルコースイソメラーゼを、31mg/mLの最終濃度まで、脱イオン水に対して透析した。これらの実験におけるヒットを、結晶、微結晶、針状晶、板状晶、柱状晶(rod)、または球晶として規定し、一方で沈澱物はヒットとして計数しなかった。マイクロバッチ実験を2週間行い、一方でチップ実験を3日間行った。これらの日の最後に、封じ込めコントロール管内の不十分な水に起因して、チップは脱水された。これらの実験の結果を、図49に示されるベン図に要約する。
結晶の同定、およびその結果の再現性を、以下の実験において調べた。最初のスクリーンからのヒット(Hampton条件3、4、6、9、10、14、15(三連)、17、18、20、22、28、30、32、38、39、42、43、および46(二連))を、単一のチップ上に再度設定した。同じチップ上に、タンパク質対水の2つのコントロール、および水対スクリーンの完全なセットのコントロールを設定した。22の条件の全てが、再度ヒットを得た。タンパク質対水と、24個全ての水対スクリーンのコントロールの両方が、透明であった(いくらかの相分離を除く)。二連の条件の46のウェルが、mpms(中くらいのタンパク質:中くらいの溶液)およびspls(少量のタンパク質:多量の溶液)のウェルにおいて、類似の結晶を示し、形態は、タンパク質対溶液の比に依存した。lpss(多量のタンパク質:少量の溶液)のウェルは、両方の場合において透明であった。三連の条件15は、すべてのmpms条件およびspls条件において結晶を示し、そしてlpss条件において透明であった。全てのspls条件の形態は同一であったが、mpms条件のうちの1つは、異なる形態を示した。
条件15の3つの比較の結果を、図50に示す。結晶の多くは大きく、そしてX線回折の品質であり、150μmより大きな最大寸法および約30μmの最小寸法を示した。最初の結晶は、インキュベーションの4時間後に現れ、そして結晶の約80%が、1日後に現れた。これらの写真のより抜きの集合を、図51に示す。全ての結晶を、インキュベーションの1日後で示す。
(i.プロテイナーゼK)
プロテイナーゼKを、2つのマイクロバッチ実験、2つの懸滴実験、および3つのミクロ流体チップ実験において、結晶化した。2つのマイクロバッチ実験および2つの懸滴実験を、7日間モニタリングした。3つのチップ実験を、1つについて5日間、別のものについて6日間、そして第三のものについて7日間モニタリングした。プロテインキナーゼKを結晶化させることの困難性に起因して、2つの条件(インヒビターPMSFを含むプロテイナーゼKおよびインヒビターPMSFを含まないプロテイナーゼK)を使用した。
図52は、観察の最後の日の結晶化の結果を要約するベン図である。これらの結果は、プロテイナーゼKのタンパク質結晶化が、技術ごとに比較的不一致であることを示す。48の条件のうちの15の条件(すなわち、31%)のみが、3つ全ての技術にわたって類似の結果を与えた。3つ全ての技術においてヒットを生じた5つの条件、および結晶化も沈澱も見出されない10の条件が存在した。8つの条件が、チップのみにおいてヒットを生じ、10の条件が、マイクロバッチにおいてのみヒットを生じ、そして4つの条件が、懸滴のみにおいてヒットを生じた。38のヒットまたは非ヒット(チップおよび懸滴における合計28のヒットならびに両方の方法における10の非ヒット)のうちの18のみは、チップおよび懸滴において共通であった(47%)。44のヒットおよび非ヒットのうちの20は、チップおよびマイクロバッチにおいて共通であった(45%)。40のヒットまたは非ヒットのうちの18は、懸滴およびマイクロバッチにおいて共通であった(45%)。表2は、これら3つの技術におけるプロテイナーゼKの結晶化の、実際の結果を示す。
これらの結果は、結晶化が確率的事象であり、技術、核生成、および他の変数に依存することを示す。ヒットは、いくつかの技術において見られたが、他の技術においては見られなかった。ヒットはまた、1つの二連において見られたが、他のものでは見られなかった。懸滴における二連が同じカバーガラス上の同じウェル中に設定される場合、ヒットは、1つの液滴において見られたとしても隣の液滴においては見られず、これは、特定のタンパク質の結晶化に対する変則的な結果ではない。また、技術の間のヒットの多くの重なりが存在するが、ヒットの型は変化する。マイクロバッチによって生じる多くのヒットは、単結晶であり、懸滴によって生じるヒットのいくつかは、結晶および大部分が沈澱物であり、そしてチップにおいて生じるヒットは、針状晶または沈澱物のいずれかである傾向がある。
図53Aは、マイクロバッチにおいて観察されたプロテイナーゼKの結晶を示す。図53Aは、チップ上で観察された針状晶を示す。試薬30は、ヒットの型の変動の良い例である。マイクロバッチにおいて、結晶が1つの二連において形成し、そして針状晶が他方において生成され、沈澱が懸滴において見出され、そして1つのチップは沈澱を生じ、一方で他のものは針状晶を生じた。
チップは、酸性緩衝剤(pH5.6またはpH4.6)、塩基性緩衝剤(pH8.5)、およびイソプロピルアルコールをさえ含む条件において、ヒットを生じ得た。さらに、懸滴またはマイクロバッチにおいてヒットを生じたがチップにおいては生じなかった17の条件において、試薬は、有機物またはポリマーの沈澱剤から塩の沈澱剤まで、高塩から無塩まで、そして酸性緩衝剤から塩基性緩衝剤までの範囲であった。これらの結果は、チップが、Hampton結晶化スクリーンにおいて使用される酸性物質、塩基性物質、および有機性物質に耐え得ることを示す。
本発明の特定の実施形態において利用されるPDMSエラストマー材料は、一般に、タンパク質の結晶化において使用されるほとんどの溶媒と適合性である。PDMSと適合性ではない溶媒の非排他的な列挙は、濃厚な酸(例えば、フッ化水素酸、硝酸、硫酸、および王水)、ならびにベンズアルデヒド、ベンゼン、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、クロロヘキサン、エーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル(isopopyl ether)、メチルケトン、エチルケトン、塩化メチレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、トリクロロエチレン、アセテート、およびキシレンを含む。このような物質が、本発明の実施形態に従うPDMSに基づくミクロ流体デバイスと組み合わせて利用される場合、PDMSの表面コーティングまたは改変が必要とされ得る。あるいは、PDMSは、適切な溶媒適合性を有する異なるエラストマー材料で置換され得る。代替の可能な多数のエラストマー材料が、以前に議論されている。
(j.ウシ肝臓カタラーゼの結晶化)
ウシ肝臓カタラーゼを、2つのチップ、2つの懸滴、および1つのマイクロバッチの実験において、結晶化させた。結晶スクリーン1〜48(6を除く)を、懸滴において二連で試験し、そして7日間実施した。結晶スクリーン25〜36を、チップにおいて二連で3日間試験し、そして結晶スクリーン1〜48を、別のチップに設定し、そして7日間モニタリングした。マイクロバッチにおける結晶スクリーン1〜48を、7日間観察した。図54に示されるように、いくつかの場合において、結晶は、十分な脱水を受けたウェル中で成長した。表3は、ウシ肝臓カタラーゼの結晶化の結果を示す。
ウシ肝臓カタラーゼは、従来の懸滴技術においてより、チップにおいて、より確実な条件を示す。図55のベン図に示されるように、条件は、懸滴における36およびマイクロバッチにおける28に対して、チップにおいて、ヒットを生じた。2つのみの条件が、3つの技術のいずれにおいてもヒットを生じなかった。このことは、Hamptonの研究が48のスクリーンのうちの2つのみにおいて結晶を報告したような、ウシ肝臓カタラーゼが結晶化が困難なタンパク質であるという予測に反する。
最初に、チップは、懸滴よりもマイクロバッチの条件を模倣することを仮定した。しかし、チップは、マイクロバッチよりも懸滴により類似した結果を生じた。48のヒットまたは非ヒットのうちの36が、チップおよび懸滴において共通であった(75%)。47のうちの29(62%)、および41のうちの27(66%)が、それぞれチップとマイクロバッチとの間、およびマイクロバッチと懸滴との間で共通であった。
図56Aは、従来のマイクロバッチ技術により得られたウシ肝臓カタラーゼ結晶(図56B)が、チップにおいて形成した結晶に類似の形態を生じたことを示す。チップにおいて針状晶であった17のヒットのうちの8つもまた、マイクロバッチにおいて針状晶であった。
(k.ウシ膵臓トリプシンの結晶化)
ウシ膵臓トリプシンを、一旦、懸滴、マイクロバッチ、およびチップにそれぞれ設定した。条件1〜24を1つのチップに設定し、そして条件25〜48を、第二のチップに設定した。条件25〜48を含むチップは、4日目に内容物を失ったが、4日後に、これらの条件において、変化がほとんどまたは全く予測されない。マイクロバッチおよび懸滴の実験を7日間観察し、そしてマイクロバッチの結晶(グルコースイソメラーゼに類似)を、結晶プローブを用いて確認した。表4は、この実験からのデータを要約する。
表4に見られるように、28の条件は、3つの方法のいずれにおいてもヒットを与えず、そして3つのみの条件が、3つ全ての技術においてヒットを与えた。7つの条件が、チップのみにおいてヒットを生じ、そして7つの別の条件は、懸滴のみにおいてヒットを生じた。いずれの条件も、マイクロバッチに独特ではなかった。チップおよび懸滴における独特のヒットにもかかわらず、これら3つの方法の間に良好な一致が存在する。48の条件のうちの32が、チップと懸滴との両方においてヒットを生じ(67%)、そして41の条件のうちの32が、チップおよびマイクロバッチにおいてヒットを生じ(78%)、そして41の条件のうちの31が、マイクロバッチおよび懸滴においてヒットを生じた(76%)。
図58Aは、マイクロバッチにおいて観察されたウシ膵臓トリプシン結晶を示す。図58Bは、チップから観察されたウシ膵臓トリプシン結晶を示す。
(l.リゾチームの結晶化)
リゾチームの結晶化を、チップ、マイクロバッチ、および懸滴において評価した。これらの実験におけるヒットを、結晶、微結晶、針状晶、板状晶、柱状晶、または球晶として規定し、一方で沈澱物は、ヒットとして計数しなかった。マイクロバッチ実験を2週間実施し、一方でチップ実験を7日間実施した。プレートが直射日光中に放置されることから生じる温度の変動に起因して、懸滴実験を、3日後に終えた。懸滴実験を続けたならば、さらなる結晶化条件がおそらく明らかになった。これらの実験の結果を、図59に示すベン図に要約する。
図59を調べると、チップがほとんどの結晶化条件を明らかにしたこと、およびこれらの結晶化条件のうちの約40%が、従来の技術を使用してもまた観察されたことが示される。この一致は、懸滴実験を早期に終えなければ、改善されたかもしれない。リゾチームは代表的に、非常に結晶化しやすいタンパク質であると考えられ、そしてチップと懸滴との両方において多くのヒットを与えたが、マイクロバッチの実験においては4つのヒットのみを示したこともまた、注目される。
グルコースイソメラーゼの結果(ここでは、結晶化がチップにおいて加速された)とは対照的に、リゾチームの結晶化は、チップにおいて、より遅かった。1日で懸滴において63%のヒットおよびマイクロバッチにおいて75%のヒットを明らかにしたが、23のチップのうちの1のみのヒットが、インキュベーションの最初の24時間以内に起こった。
3つ全ての方法が、X線回折品質の大きな単結晶を生成した。図60A〜Bは、それぞれチップおよびマイクロバッチにおいて形成した結晶の比較を示す。
(m.キシラナーゼの結晶化)
キシラナーゼの結晶化を、チップ、マイクロバッチ、および懸滴において評価した。これらの実験におけるヒットを、結晶、微結晶、針状晶、板状晶、柱状晶、および球晶として規定し、一方で沈澱物は、ヒットとして計数しなかった。マイクロバッチの実験を2週間実施し、一方でチップの実験を10日間実施した。プレートが直射日光中に放置されることから生じる温度の変動に起因して、懸滴実験を、3日後に終えた。懸滴実験を続けたならば、さらなる結晶化条件がおそらく明らかになった。これらの実験の結果を、図61に示すベン図に要約する。
図61を調べると、チップにおけるヒットの75%が、懸滴またはマイクロバッチにおいて再生されたことが示される。チップとマイクロバッチとの両方における最高品質の結晶は、条件14を使用して形成された。図62A〜Bは、それぞれマイクロバッチおよびチップにおいて成長したこれらの結晶の比較を示す。7つのマイクロバッチのうちの6つのヒットが、インキュベーションの初日のうちに起こったが、8つのチップのうちの7のヒットが、48時間を超えたインキュベーション時間で起こった。条件14は、引き続く実験において、6倍の冗長性で再生され、そして7日間のインキュベーションの間に2つのみのヒット(72時間目で起こる)を示した。これらの結晶は、一晩で、完全な大きさ(約100μm)に成長した。結晶の形成のための長い時間、一致しない結果、および急速に続く結晶の成長は、核生成が、チップにおけるキシラナーゼの結晶化の律速段階であることを示唆する。
Hamptonの研究によって提供される情報は、キシラナーゼが、7〜8.2のpH範囲、および0.6Molと1.4Molとの間の濃度のNa/Kリン酸塩溶液を使用して結晶化され得ることを示す。2つの別個の実験において、キシラナーゼの系統的スクリーン対Na/Kリン酸塩を、チップにおいて実施した。
1つの実験は、50%のストックキシラナーゼを、Na/Kリン酸塩条件の格子(6.4〜7.8のpH値を0.2の目盛で、そして1.0モル濃度〜3.0モル濃度の濃度を0.4の目盛で網羅する)に対して試験した。他の実験は、25%のストックキシラナーゼを、同じ格子に対して試験した。1日後、微結晶(最大寸法が10μm未満)が、1.4モル濃度より高濃度で、全てのpH値に対して、両方の実験において見られた。これらのウェルは、次の6日間、さらなる変化を示さなかった。
7日目に、大きな板状構造/星状構造が、両方のチップ上で、同じ条件(pH6.4、1M)において観察された。50%キシラナーゼのチップは、このヒットをmpms(中くらいのタンパク質:中くらいの溶媒)の条件で示し、一方で25%のキシラナーゼのチップは、このヒットをlpss(多量のタンパク質:少量の溶媒)の条件において示した;これは、タンパク質の濃度が類似であることに一致する。これらのヒットを、図63A〜Bに示す。この結果は、キシラナーゼの結晶化が、pHの変化およびNa/Kリン酸塩濃度の変化に感受性であることを示す。チップ/チップの対応もまた、長いインキュベーション時間においてさえ、反復可能に良好であることを示す。格子の角部においてはヒットが起こらなかったが、この結果はさらに、7日後でさえも、近くのウェルに結晶化を示させるほどには、チップ上の条件が(pHおよび塩濃度において)十分にはブレンドされなかったことを示唆する。
(n.トポイソメラーゼVIのBサブユニット)
トポイソメラーゼVIのBサブユニットを、以下の3つの市販の低密度マトリックススクリーンに対して、チップにおいて試験した:Hampton Crystal Screen I(HCS1)、Hampton Crystal Screen II(HCS2)およびEmerald Wizard Screen II(WIZ2)。少量のタンパク質溶液(50μL)のみが利用可能であったので、バルクコントロールは行わなかった。3つ全ての実験を、8日間インキュベートした。これらの実験の結果を、表5に作表する。
(表5)
(トポイソメラーゼVIのBサブユニットの結果)
このチップは、多数の大きいプレート結晶を示し、そのうちいくつかは、X線回折に十分な大きさである。これらのプレートの2つの実験を、図64A〜Bに示す。従来の実験は、トポイソメラーゼVIのBサブユニットが、PEG条件において十分に結晶化し、そして代表的にはプレート形態を示すことを明らかにした。このチップの結果は、この挙動の優れた再現性を実証し、14個全てのプレートヒットがPEG条件においてである。さらに、このチップは、懸滴実験およびマイクロバッチ実験において好成績を示し、より高頻度のヒットを示した。このチップの結果をマイクロバッチの結果と比較すると、チップが、プレート結晶を生じる23の条件をカバーせず、一方で10の条件のみがマイクロバッチにおいて発見されたことを示す。さらに、マイクロバッチにおいて結晶を生じた10の条件のうち6はまた、チップにおいても結晶を生じ、一方で3つの条件は顆粒状の沈殿物を生じ、そして1つだけがチップにおいてヒットを生じなかった。最後に、マイクロバッチにおいて形成された結晶は、数日間存在しなかったが、チップ結晶は6時間未満で形成され始めた。
(o.ネガティブコントロール)
タンパク質結晶 対 塩結晶の同定を補助するために、タンパク質コントロールをチップ上に設けなかった。チップを、タンパク質結晶化実験において記載したように設けた。1mM 塩化カルシウム、25mM HEPES(pH7.0)をプロテイナーゼKについてのネガティブコントロールとして使用し、そして20mM 塩化カルシウム、25mM HEPES(pH7.0)をウシ膵臓トリプシンについてのネガティブコントロールとして使用した(塩化カルシウム濃度は10mMであるはずであり、そしてベンズアミジン塩酸塩は添加しなかった)。コントロールをまた、マイクロバッチならびに1mM 塩化カルシウム、25mM HEPES(pH7.0)および濾過した蒸留脱イオン水での懸滴において設けた。特異的非タンパク質コントロール(非タンパク質を含むそれぞれの緩衝液)を、リゾチーム、グルコースイソメラーゼ、キシラナーゼおよびトポイソメラーゼVIのBサブユニットについて行った。結晶が報告された場合、非タンパク質コントロールは透明であった。
(7.チップ上のタンパク質由来の結晶構造の分析)
チップの有用性は、減少したコストで高品質の回折パターンを迅速に生じるその能力に最終的に依存する。従って、チップからタンパク質への明確な経路は、非常に有益である。チップ中の(in−chip)結晶から回折データへのいくつかの経路を、以下に考察する。
(a.従来技術を使用して結晶を再現するためのスクリーニングとしてのチップ上(on−chip)結晶化)
チップについての1つの可能な適用は、従来技術を使用して実質的に再現され得る好ましい結晶化条件の決定である。チップと2つの従来技術(マイクロバッチおよび懸滴)との間の対応は、可変的であることが示されている(45%と80%との間)。しかし、この変動は、チップ独自の特徴ではない。これらの広く使用される結晶化技術は、僅かな対応しか示さず(例えば、16の懸滴のうち14は、リソソームについてはヒットするが、マイクロバッチにおいてはヒットしない)、そしてしばしば、それら自体の中で変動を示す(例えば、表2(プロテイナーゼK))。開始結晶化条件をスクリーニングするためのツールとして、このチップは、多数の有望な条件として同定することが可能であり得る。
図65は、3つの異なる技術を使用して各タンパク質について生じたヒットの数の比較を示す。図65において、結晶、微小結晶、ロッドおよび針状物のみが、ヒットとして計数されるが、スフェルライトおよび沈殿物は計数されない。プロテイナーゼKについてのデータは、PMSFを用いた実験および用いない実験の合計であり、そしてトポイソメラーゼVIのBサブユニットについてのデータは、懸滴データの欠如のために含めていない(この場合、チップは、マイクロバッチよりもかなり性能が良かったが)。図65の検討は、6つの場合のうち4つにおいて、チップが、従来のいずれの方法よりもより多いヒットを生じたことを示す。プロテイナーゼKについてのみ、従来技術は、有意により好ましい結果を提供した。
チップの生産性についての可能な理由を同定するための結晶化方法間の差異を理解するために、本発明者らは、3つの方法が、短い時間規模および長い時間規模の両方について、異なる熱力学的条件を生じることを理解する必要がある。タンパク質結晶化を誘導するために、結晶化をエネルギー的に好ましくし(過飽和条件)、そして結晶成長が生じるのに十分長期にわたってこれらの条件を維持する必要がある。
程度の異なる過飽和もまた存在する。低い過飽和では、結晶成長は支持される傾向があるが、新たな結晶の核形成は比較的起こりにくい。高い過飽和では、各形成が迅速であり、そして多数の小さい低品質の結晶がしばしば形成され得る。本明細書で考慮される3つの方法において、過飽和の条件は、タンパク質および対応溶媒の相対濃度および絶対濃度の操作によって達成される。
3つの方法の相空間進化/平衡化の比較を、図66に示す。マイクロバッチ技術について、2つの溶液の混合は迅速であり、そして不透過性油層下に維持される場合、時間がたっても有意な濃縮はほとんど起こらない。従って、マイクロバッチは、相空間の一点でのみサンプリングする傾向があり、時間がたってもほぼ同じ条件を維持する。
懸滴は、マイクロバッチと同様に開始し、2つの溶液の混合は迅速であるが、次いでより濃縮された塩/沈殿物容器での蒸気平衡化に起因して、より長い時間規模(数時間〜数日間)の濃縮を受ける。液滴の蒸発脱水の間、沈殿物に対するタンパク質の比は、一定のままである。
以下のミクロ流体自由界面の説明において詳細に記載されるように、短い時間規模では、チップ力学は、自由界面拡散実験に最も密に類似する。混合はゆっくりであり、そして種の平衡化速度(タンパク質/沈殿物/プロトン/塩)は、種の拡散定数に依存する。塩のような低分子は、大きい拡散定数を有し、従って、迅速に平衡化する。大きい分子(例えば、タンパク質)は、小さい拡散定数を有し、そしてよりゆっくりと平衡化する。
図67A〜Dは、3つの化合物ウェルにおける2日間の時間分解平衡化の写真を示す。使用した色素は、約700Daの分子量を有する。これらの写真から、色素の平衡化時間は、約1.5時間と概算される。次元アインシュタイン等式が、拡散時間の大まかな概算を得るために使用され得る。
ここで:
t=拡散時間;
x=最長の拡散距離;および
D=拡散係数。
一般に、拡散係数は、回転半径と反比例して変化し、従って、分子量の三乗根分の1として変化する。
ここで:
D=拡散係数;
r=回転半径;および
m=分子量。
この色素についての約1.5時間の平衡化時間と比較すると、同じ距離にわたる20KDaのタンパク質についての近似平衡化時間は、約45時間であると概算される。同じ距離にわたる100Daの分子量の小さい塩についての平衡化時間は、約45分間である。
チップ界面バルブが開いた直後、タンパク質側のタンパク質濃度は、ほとんど変化しなかったが、塩濃度は、タンパク質および溶媒ウェルの相対的な大きさによって決定される3つの最終値の1つにまで増加した。次に、約45時間にわたって、タンパク質濃度を平衡化し、溶媒側については増加し、タンパク質側については減少する。最終タンパク質濃度を再び、相対的なチャンバの大きさによって決定する。類似のプロセスがチップの溶媒側に生じ、溶媒濃度はその最も高い値で始まり、そしてタンパク質濃度は0で始まった。従って、このチップは、より多くの相−空間をサンプリングし、そして結果として結晶化に有利な条件を検出するよりよい機会を有する。図66に示される時間規模よりも大きい時間規模では、いくつかの溶質および溶媒に対するPDMSの透過性に起因する、チップ条件における引き続く変化が存在し得る。
平衡化プロセスを遅延または中断することが所望の場合、バルブ起動衝撃係数を変化させることによって平衡速度を調節して、界面バルブは閉じられ得る。このことは、本発明に従う実施形態の重要な利点である、平衡化プロセスの一時的制御を得る機会を提供する。平衡化プロセスについての一時的制御のさらなる考察は、図76A〜Cと組み合わせて以下に記載される。
キャピラリーにおける自由界面拡散の結晶化技術は、チップ結果をより密に模倣し得る。伝統的に、この方法は、十分に規定された界面を確実に設ける困難性に起因して、頻繁には使用されない。しかし、ミクロ流体環境において、確実な自由界面拡散実験を確立することは、比較的容易である。ミクロ流体自由界面の形成のさらなる考察については、図71〜75と組み合わせて、以下に示される。
自由界面拡散に基づいて、結晶の容易な回収を提供しながらチップ条件を模倣する、巨視的結晶化技術を開発することもまた、可能であり得る。
(b.従来技術を使用して、結晶化のための種結晶を得るための、チップ上結晶化)
結晶化チップの別の適用において、結晶は、従来の方法を使用して回収するために、成長され得る。図66の検討は、好ましい条件をチップから別の方法に移すことが、おそらく、この条件の周囲についてスクリーニングすることを必要とすることを示唆する。予備実験において、チップにおいてグルコースイソメラーゼ結晶を生じたが、マイクロバッチにおいては結晶を生じなかった10の条件を、マイクロバッチにおけるさらなるスクリーニングの基礎として使用した。各条件は、パラフィン油およびシリコーン油の両方の下での、ストックタンパク質溶液との1:4、1:1および4:1の比での混合であった。シリコーン油は、PDMSの透過性と類似の透過性を有するので、これを使用した。6日間の最後に、マイクロバッチにおいては以前に結晶化しなかった10種のタンパク質のうち6種が、結晶を示した。HCSI−6の結晶が、特に目的の結晶であり、これは、シリコーン油の下で、溶液に対するタンパク質の4:1の比において、高品質の結晶を形成した。この条件は、他の条件(パラフィン油の下での同一の条件を含む)のいずれにおいても、結晶を示さなかった。図68Aは、シリコーン油の下で形成された結晶を示し、そして図68Bは、パラフィン油の下でのネガティブな結果を示す。この結果は、封じ込め物質の透過性が、タンパク質結晶化に対して有意な影響を有し得ることを示す。
このことはまた、PDMSの透過性と類似の透過性を有する物質が、チップとより密に類似するマクロ結晶化技術の確立において有用であり得ることを示唆する。
(c.チップ上の結晶成長の直接的分析)
高品質の結晶がチップ中で成長し、そしてチップから抽出される場合、結晶化条件は、移される必要がない。図50〜51(グルコースイソメラーゼ)、60A(リゾチーム)、62B(キシラナーゼ)および64A〜B(トポイソメラーゼVIのBサブユニット)に示すように、X線結晶学のために十分な大きさの高品質の結晶が、チップ上で成長し得る。チップは、ガラス基材から除去され得るので、タンパク質結晶を抽出することもまた可能である。6つの結晶(1つはキシラナーゼ、5つはトポイソメラーゼVIのBサブユニット)を、チップから除去し、低温ループ(cryo−loop)中に取り付け、そして液体窒素中で瞬間冷凍する。HCS1−14において成長したキシラナーゼ結晶の場合、チップを剥離し、そして30%グリセロール、70%溶媒の5μLを、ウェル上にピペッティングした。次いでこの結晶を、300μmの低温ループを用いて抽出し、液体窒素中で瞬間冷凍した。図69は、低温ループに取りつけられた、このキシラナーゼ(図62A〜Bに示される結晶と同じ)を示す。
(d.成長/回収チップ)
以前に記載されたように、一旦タンパク質結晶が形成されると、その三次元構造についての情報が、結晶によるX線の回折から獲得され得る。しかし、タンパク質に対するエネルギーの高い照射の適用は、熱を発生させる傾向がある。X線はまた、イオン化し、そしてフリーラジカルの発生および共有結合の分解を生じ得る。熱またはイオン化のいずれかが、結晶が入射X線を回折する能力を破壊または低減し得る。
従って、結晶形成の際に、低温物質が、代表的に、その変更された状態での結晶性物質を保存するために添加される。しかし、クライオジェンの突然の添加もまた、結晶に損傷を与え得る。従って、本発明に従う結晶化チップの実施形態について、一旦結晶性物質がチップ中に形成されると、結晶化チャンバへクライオジェンを直接的に添加できることが有利である。
さらに、タンパク質結晶は非常にデリケートであり、物理的外傷に応答して迅速に崩れるかまたは崩壊し得る。従って、チップの小さいチャンバから無傷の結晶を回収することは、結晶性物質についての価値ある情報を獲得するためには、潜在的な障害を示す。
従って、本発明に従う結晶化チップの代替の実施形態について、チップ中に形成された結晶性物質のX線照射による直接的問い合わせを可能にし、それによって別個の結晶回収手順の必要性を完全に排除することもまた、有利である。
従って、図70Aは、本発明に従う結晶成長チップの単純化した実施形態の平面図を示す。図70Bは、図70Aの線B−B’に沿って示される結晶成長チップの実施形態の単純化した断面図を示す。
回収/成長チップ9200は、ガラス基材9204に被さるエラストマー部分9202を備える。ガラス基材9204は、3つのエッチングされたウェル、9206a、9206bおよび9206cを計算する。従って、ガラス基材9204上のエラストマー部分9202の配置は、フローチャネル9208を介して互いに流体連絡した3つの対応するチャンバを規定する。フローチャネル9208を通る物質の流れは、フローチャネル9208上へのコントロールライン9212の重複によって規定される、バルブ9210によって制御される。
成長/回収チップ9200の作動中に、バルブ9210は最初に起動して、チャンバ9206a、9206bおよび9206cの内容物間の接触を防止する。次いで、チャンバ9206a、9206bおよび9206cは、ウェル9214を介して、結晶化をもたらすための異なる物質によって別々に充填される。例えば、チャンバ9206aは、タンパク質溶液で充填され得、チャンバ9206bは、結晶化剤で充填され得、そしてチャンバ9206cは、クライオジェンで充填され得る。
次いで、第一コントロールライン9212は作動停止されて、バルブ9210aを開き得、そしてそれによってタンパク質溶液および結晶化剤の拡散を可能にする。結晶9216の形成の際に、残りのコントロールライン9212は作動停止されて、チャンバ9206cからのクライオジェンの拡散が、結晶9216を保存することを可能にし得る。
次に、全チップ9200が、X線回折装置中に取り付けられ得、光源9220から結晶9216に対して適用される、回折を有するX線ビーム9218は、検出器9222によって感知される。図70Bに示されるように、ウェル9206の一般的な位置は、エラストマー部分9202およびその下にあるガラス部分9204の両方の厚さの減少した領域対応する。この様式において、照射ビーム9218は、結晶9216に遭遇する前およびその後に、最少量のエラストマーおよびガラス材料を横切り、それによって、受容される回折された信号に対するノイズの有害効果を減少させる必要がある。
タンパク質成長/回収チップの1例を、図70A〜70Bと組み合わせて上記してきたが、本発明に従う実施形態は、この特定の構造に限定されない。例えば、記載された本実施形態の実施は、ミクロチャンバがエッチングされたガラス基材を利用するが、本発明に従うミクロ流体構造の製造は、ガラス基材の使用に限定されない。基材中に特徴を製造するための可能な代替としては、プラスチックの射出成形、PMMAのようなプラスチックのホットエンボス加工、またはSU8フォトレジストのような光硬化性のポリマーを利用してウェルを製造することが挙げられる。さらに、特徴は、レーザーアブレーションを利用して、ガラスのような基材上に形成され得るか、または特徴は、ガラス以外の基材(例えば、シリコーン)の等方性または非等方性のエッチングによって形成され得る。
代替的製造方法によって付与される潜在的な利点としては、より高密度の統合を可能にする特徴のより正確な規定、および生成の容易さ(例えば、ホットエンボス加工)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、炭素ベースのプラスチックのような特定の物質は、X線をあまり散乱させず、それにより、チップからの直接的な回折データの収集を容易にする。
結晶の成長および分析を容易にするミクロ流体構造の実施形態は、下部表面上に溝を有するエラストマー部分を含む。基材は、このエラストマー部分の下部表面と接触して、第一のミクロ流体チャンバ、第二のミクロ流体チャンバおよび第三のミクロ流体チャンバを規定し、この第一、第二および第三のミクロ流体チャンバは、エラストマー部分と基材との間を規定するフローチャネルを介して流体連絡している。第一のチャンバは、標的物質溶液で開始され得、第二のチャンバは、結晶化剤で開始され得、そして第三のチャンバは、クライオジェンで開始され得、その結果、結晶化剤および標的溶液の拡散によってこの構造中で形成される結晶は、クライオジェンの導入によって生じる温度の低下によって保存され得る。
(e.結晶オフロード(off−loading)法)
結晶の回収のためのさらなる可能性は、チップからオフロードする方法を有することである。オフロードは、一旦結晶が形成されると、あるいはインキュベーション前に、実行され得る。次いで、これらのオフロードされた結晶は、巨視的反応を播種するために使用され得るか、または低温ループにおいて抽出および取り付けられ得る。クライオジェン添加のための方法がまた開発される場合、結晶は、瞬間凍結され得るか、またはX線ビーム中に直接取り付けられ得る。
(8.ミクロ自由界面拡散)
熱力学的条件が結晶化を誘導するかどうかを先験的に決定することは困難であり得るので、スクリーニング方法は、可能な限り多数の相−空間(可能な限り多数の条件)をサンプリングするべきである。このことは、複数のアッセイを行うことによって達成され得、そしてまた、時間内の各アッセイの進化の間にサンプリングされた相空間を介して達成され得る。広範な条件のサンプリングの際に特に有効な1つの従来方法は、巨視的自由界面拡散である。この技術は、2つ以上の溶液、代表的にはタンパク質溶液と沈殿剤との間の十分規定された流体界面の創出、および拡散プロセスによる2つの溶液の引き続く平衡化を必要とする。溶液が互いに拡散するにつれて、拡散経路にそって勾配が確立され、そして一連の条件が同時にサンプリングされる。条件には、空間および時間の両方において変動が存在するので、結晶形成の位置および時間に関する情報は、さらなる最適化において使用され得る。図71A〜71Dは、自由界面に沿って接触した溶液Aおよび溶液Bについて、濃度 対 距離をプロットする、単純化した模式図である。図71A〜Dは、時間がたつと、連続的かつ広い範囲の2つの溶液の濃度プロフィールが最終的に創出されることを示す。
巨視的自由界面拡散技術の有効性にもかかわらず、技術的困難が、この技術を高スループットのスクリーニング適用のためには不適切にし、そしていくつかの理由に起因して、結晶学者の間で広く使用されていない。第一に、流体界面は、代表的に、溶液を狭い容器(例えば、キャピラリーチューブまたは培養プレート中の深型ウェル)に拡散させることによって確立される。図72A〜Bは、キャプラリーチューブ9300中の巨視的自由界面形成の試みの、単純化した断面図である。第二の溶液9302を第一の溶液9304中に拡散させる作用は、対流混合を創出し、そして乏しく規定された流体界面9306を生じる。
さらに、これらの溶液は、この問題を排除するために、キャピラリー中に連続的に吸収されないかもしれない。図73A〜Bは、キャピラリーチューブ9404における第一の溶液9400と第二の溶液9402との間の混合を示し、この混合は、圧力駆動性のポアズイユの流れの放物線状の速度分布に起因して生じ、乏しく規定された流体界面9406を生じる。さらに、マクロ自由界面結晶化方式のための容器は、ピペットチップまたは分配ツールを受容できるようにする寸法を有するべきであり、そして大きい容量(10〜100μl)のタンパク質溶液および沈殿物溶液を使用する必要がある。
所望でない対流混合を回避するために、分配および結晶インキュベーションの両方の間に、注意を払わなければならない。この理由に起因して、厄介なプロトコルが、マクロ自由界面を規定するためにしばしば使用される。例えば、第二の溶液を添加する前に、1つの溶液を凍結させる。さらに、異なる密度の2つの溶液は、適切な配向で保存されない場合、重力誘導された対流によって混合し、反応の保存をさらに複雑にする。このことは、図74A〜Cにおいて示される。ここで、時間がたつと、第二の溶液9502の密度よりも高い密度を有する第一の溶液9500は、単に沈降して、キャピラリーチューブの長さに沿った拡散勾配の形成を導かない静的な下部層9504を形成する。
本発明の実施形態に従って、伝統的なマクロ自由界面拡散(ゲート型ミクロ自由界面拡散(ゲート型μ−FID)と称される)に類似する結晶化技術が開発されている。ゲート型μ−FIDは、巨視的自由界面拡散技術によって達成される相空間の効率的なサンプリングを保持し、サンプル溶液を倹約して使用すること、設定の容易さ、十分規定された流体界面の創出、平衡化力学についての制御および高スループットの並行実験を実施する能力という利点を付け加える。これらの利点は、本発明の多数の特徴によって可能とされる。
ミクロ流体工学は、ナノリットル下の規模で流体を取り扱うことが可能である。結果として、大きい封じ込めチャンバを使用する必要がなく、従って、アッセイは、ナノリットル規模またはナノリットル下の規模で実行され得る。非常に小さい容量の利用により、実行されるべき膨大なアッセイが、1回の巨視的自由界面拡散実験に必要なサンプル容量と同じサンプル容量を消費することを可能とする。これは、費用および時間がかかる増幅工程および精製工程を減少し、そして容易に発現されない、従って、バルクサンプルから精製される必要があるタンパク質のスクリーニングを可能にする。
ミクロ流体工学は、さらに、調製時間の節約を提供し、数百または数千ものアッセイが同時に実行され得る。以前に記載されたような、拡張可能な測定技術の使用は、制御機構の複雑性を増大させることなく、並行実験が行われることを可能にする。
ミクロ流体構造が本発明の実施形態に従って形成され得るエラストマー材料は、特定の気体に対して比較的透過性である。この気体透過特性は、十分規定された再現性のある流体界面を形成するために、加圧化ガスプライミング(pressurized out−gas priming)(POP)の技術を利用して調査され得る。
図75Aは、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスのフローチャネル9600の断面図を示す。フローチャネル9600は、起動されたバルブ9602によって2つの半体に分離される。材料の導入前に、フローチャネル9600は、気体9604を含む。
図75Bは、加圧下での、第一のフローチャネル部分9600aへの第一の溶液9606の導入、および加圧下での、第二のフローチャネル部分9600bへの第二の溶液9608の導入を示す。取り囲むエラストマー物質6907の気体透過性に起因して、気体9604は、入ってくる溶液9608および9610によって置換され、そしてエラストマー6907を介して気体を出す。
図75Cに示されるように、フローチャネルの9600a位置および9600b位置の加圧された、出てきたガスのプライミングは、気泡を伴わずに、これらのデッドエンドフローチャネル部分を均質に満たすことを可能にする。図75Dに示すように、バルブ9602の作動していない場合、十分に規定された流体界面9612を作製し、拡散勾配の構成を可能にする。
要約すると、従来のマクロ自由界面技術は、mm程度の寸法を有する毛細管または他の容器を使用する。それに比べて、本発明の実施形態に従う流体界面は、μm程度の寸法を有するミクロチャネルにおいて作製される。このような小さい寸法においては、粘度の効果によって、所望ではない対流が抑制され、そして拡散によって、混合が優勢になる。従って、十分に規定された流体界面は、所望ではない有意な対流混合を伴わずに確立され得る。
標的物質を結晶化するための方法の実施形態は、以下の工程を包含する:第一ミクロ流体チャンバを規定する工程、標的物質を含む溶液で第一ミクロ流体チャンバをプライムする工程、第二ミクロチャンバを規定する工程、および結晶化剤を含む第二溶液で第二ミクロ流体チャンバをプライムする工程。第一ミクロ流体チャンバは、標的物質と結晶化剤との間にミクロ流体自由界面を規定するために、第二ミクロ流体チャンバと流体連絡内して位置される。拡散は、標的物質と結晶化剤との間に生じることが可能であり、その結果、標的物質の溶解環境における変化は、標的物質に結晶を形成させる。
(9.平衡についての一時的制御)
結晶の成長および質は、平衡の間に調査された熱力学的状態によってだけでなく、平衡が生じる速度によって決定される。従って、平衡の動態を制御することは、潜在的に価値がある。
従来の結晶化方法において、平衡の動態に関する粗い(course)制御だけが、初期条件の操作を介して利用可能であり得る。巨視的な自由界面拡散については、一旦拡散が始まると、実験者は結果として生じた平衡速度に関して制御しない。懸滴実験について、平衡速度は、出発液滴の大きさ、容器の総量、またはインキュベーション温度を改変することによって変更され得る。マイクロバッチ実験において、サンプルが濃縮される速度が、液滴の大きさ、ならびに周囲の油の同一性および量を操作することによって変更され得る。平衡速度はこれらのパラメーターに複雑な様式で依存するので、平衡の動態は大まかな様式で変更され得るのみである。さらに、一旦実験が始まると、平衡動態に関するさらなる制御が利用可能ではない。
対照的に、門のついたμ−FID実験における流体界面は、界面バルブの開閉によって制御され得、平衡動態の正確な調節を可能にする。例えば、図76Aは、2つのミクロ流体チャンバ9700および9702の単純な平面図を示し、フローチャネル9704を通るこれらのチャンバの連絡は、バルブ9706によって制御される。図76Bは、このバルブが100%のデューティーサイクルで作動される場合の、第一チャンバにおける第一溶液の濃度を経時的にプロットする。図76Cは、このバルブが図76Bの50%のデューティーサイクルで作動される場合の、第一チャンバにおける第一溶液の濃度を経時的にプロットする。図76Cの調査は、チャンバAにおける第一溶液の濃度がそのオリジナル値の半分に減少するために、2倍長い時間がかかることを示す(t50% 1/2=2t100% 1/2)。
本発明の代替の実施形態に従って、デューティーサイクルによって規則的な基礎に基づいて開閉しているのではなく、接続バルブは、不規則に連続する作動の中間時間またはそれを越える時間で閉じられ得、それによって、一旦好都合な条件が達成されると、平衡が維持される。
2つの流体間の拡散に対し一時的制御を及ぼす方法の実施形態は、エラストマー材料においてミクロ流体フローチャネルを提供する工程を包含し、フローチャネル内に配置されたエラストマー材料の膜部分をバルブに規定する。膜の片側のフローチャネルの第一部分を、第一流体でプライムする。フローチャネルの反対側のフローチャネルの第二部分を、第二流体でプライムする。エラストマー膜は、バルブを横切って、第一流体および第二流体との間に拡散することを可能にする時間にわたって、フローチャネル内に入り、そしてフローチャネル外に出ることを繰り返す。
平衡速度はまた、反応チャンバおよび接続チャネルの寸法を操作することによって制御され得る。良好な概算のために、平衡のために必要とされる時間は、必要とされる拡散の長さの二乗として変化する。平衡速度はまた、接続チャネルの断面積に依存する。従って、平衡に必要とされる時間は、接続チャネルの長さおよび断面積の両方の変化によって制御され得る。
図77Aは、対の配合チャネルチャンバ9800、9802および9804の3つのセットを示し、各対は、異なった長さΔxのミクロチャネル9806によって接続される。図77Bは、平衡時間が平衡距離をプロットする。図77Bは、図77Aのチャンバの平衡のために必要とされる時間 対 接続チャネルの長さの二乗とともに変化することを示す。
図78は、4つの配合チャンバ9900、9902、9904および9906を示し、各々は接続ミクロチャネル9908の異なる配置を有する。ミクロチャネル9908は、同じ長さであるが、断面積および/または接続チャネルの数が異なる。従って、平衡速度は、断面積の減少/増加(例えば、接続チャネル数もしくはこれらのチャンネルの寸法の減少/増加によって)によって、増加/減少され得る。
接続チャネルの幾何学的変化による平衡速度の変化は、結晶成長に関する平衡動態の影響を調査するために単一デバイスにおいて使用され得る。図79A〜Dは、濃度勾配(ミクロ流体自由界面からの2つの溶液の部分的拡散の平衡によって最初に確立される)が封じ込めバルブの作動によって維持される実施形態を示す。
図79Aは、分岐した制御チャネル10002によってある間隔で重複したフローチャネル10000を示し、これは、別々に作動する界面バルブ10004のいずれかの側に配置された複数のチャンバ(A〜G)を規定する。図79Bは、界面バルブ10004が作動し、そしてフローチャネルの第一半体の10000aを第一溶液と混合し、そしてフローチャネルの第二半体10000bを第二溶液でプライムした場合の、開始時での溶媒濃度をプロットする。図79Cは、制御チャネル10002を、7つのチャンバ(A〜G)を規定するために作動させた場合、その後の時間T1における溶媒の濃度をプロットし、これは、特定時点での濃度勾配を記録する。図79Dは、時間T1におけるチャンバ(A〜G)の相対濃度をプロットする。
図79Aに示す1つの実施形態において、分岐した制御チャネルの作動は、複数のチャネルA〜Gを同時に作製する。しかし、このことは必要ではなく、そして本発明の代替の実施形態において、複数の制御チャネルは、種々の時間間隔でチャンバA〜Gの独立した作製を可能にするために使用され得、それによって、チャンバの出発セットが、自由界面にすぐ隣接して作製される後に、さらなる拡散を生じさせることを可能にする。
2つの流体間の濃度勾配を記録する方法の実施形態は、ミクロ流体フローチャネル内に存在するエラストマー膜の第一側に第一流体を提供する工程、およびエラストマー膜の第二側に第二流体を提供する工程を包含する。このエラストマー膜は、第一流体と第二流体との間に、ミクロ自由界面を規定するために、ミクロ流体フローチャネルから置換される。第一流体および第二流体は、ミクロ流体自由界面を横切って拡散することを可能にする。ミクロ流体自由界面からの次第に増大する距離でのフローチャネルに沿って配置されるエラストマーバルブの群は、チャンバの連続を規定するために作動し、第一流体および第二流体の相対濃度は、ミクロ流体自由界面を横切って拡散する時間を反映する。
(10.チップホルダ)
先に示したように、本発明に従うミクロ流体デバイスの実施形態は、オンチップ容器またはウェルを利用し得る。しかし、多量の溶液のローディングを必要とするミクロ流体デバイスにおいて、各ウェルに作用を及ぼすための分離ピンを用いる、対応する多くの投入チューブの使用は、流体デバイスの比較的小さな寸法にとって実用的とはなり得ない。さらに、少ない容積の液体を分注するためのピペットの自動化された使用は公知であり、従って、チップの表面に存在するウェルに直接、溶液をピペッティングするために、このような技術を利用することは最も容易であることが証明され得る。
毛管現象は、特に、デッドエンドチャンバが材料でプライムされるべき場合、オンチップウェルからチップの作動領域へ溶液を吸い込むために十分ではないかもしれない。このような実施形態において、チップ内へ材料をローディングする1つの方法は、外部圧力の使用を介する。しかし、さらに、可能性のある多量の材料供給源と接続した、小さな寸法のデバイスは、ピンまたはチューブを介する個々のウェルへの圧力付与を実現不可能にし得る。
従って、図80は、本発明の1つの実施形態に従うチップホルダ11000の分解図を示す。チップホルダ11000の底部11002は、チップ11008の寸法に対応する大きさのリーセス領域11006の周りの高くした周辺部分11004を備え、これは、ミクロ流体チップ11008をその中に配置することを可能にする。周辺領域11004はさらに、ネジ穴11010を規定する。
ミクロ流体デバイス11008は、チップホルダ11000の底部11002のリーセス領域11006内に配置される。ミクロ流体デバイス11008は、第一ロウおよび第二ロウ(それぞれ、11012aおよび11012b)に構成される周囲ウェル11012と流体連絡する作動領域11011を備える。ウェル11012は、デバイス11008を機能させることを可能にする十分な容積の材料を保持する。例えば、ウェル11012は、結晶化剤の溶液、標的物質の溶液または染色剤のような他の化学的試薬を含み得る。底部11002は、チップ11008の作動領域11011が観察されることを可能にするのためのウインドウ11003を備える。
チップホルダ11000の上端部分11014は、下側のチップホルダ部分11002およびその中に配置されたミクロ流体チップ11008を覆って適合させる。図解の容易さのために、図80において、上端チップホルダ部分11004は、アセンブリにおける実際の位置に対して逆転して示されている。上端チップホルダ部分11014は、より低いホルダ部分11002のネジ穴11010と一列に並ぶネジ穴11010を備え、その結果、ネジ11016は、ホルダ11000の部分11002と11014との間のチップを固定する穴11010を介して挿入され得る。チップホルダの上方部分11014は、チップ11008の作動領域11011が観察されることを可能にするのためのウインドウ11005を備える。
上端ホルダ部分11014の下表面11014aは、リセス11024および11026の周囲に、それぞれ一段高い環状リング11020および11022を備える。チップホルダ11000の上端部分11014が、ネジ11016を利用して、チップ11008と接触してプレスされた場合、リング11020および11022は、チップ11008の表面の上の柔らかいエラストマー材料に圧入し、その結果、リセス11024は、ウェル11012の上端ロウ11012aを覆う第一チャンバを規定し、そしてリセス11026は、ウェル11012の下端ロウ11012bを覆う第二チャンバを規定する。上端ホルダ部分11014の側部の穴11030および11032は、それぞれリセス11024および11026と連絡し、穴11030および11032、それぞれに挿入されたピン11034によって、チャンバに正の圧力をかけることを可能にする。従って、正の圧力は、ロウ内の全てのウェルに同時にかけられ得、各ウェルに別々に接続したデバイスを利用する必要性を取り除く。
操作において、溶液はウェル11012内にピペッティングされ、次いで、チップ11008は、ホルダ11000の底部11002内に配置される。上部ホルダ部分11014はチップ11008の上に配置され、そしてネジによって下方向にプレスされる。上端部分11014の下表面上の一段高い環状リング11020および11022を、チップの上表面と密着させ、ウェルを配置する。ウェル内の溶液を、チャンバ内の正の圧力に曝露させ、それによりミクロ流体デバイスの作動領域に押される。
チップホルダによって与えられる下向きの圧力はまた、ローディングの間、基質からチップの層割れを防ぐという利点を提示する。この層割れの防止は、より高いプライム圧力の使用を可能にし得る。
図80において示されるチップホルダは、本発明に従う構造の1つの可能性のある実施形態を示すのみである。例えば、チップホルダはまた、チップの前部または後部のコントロールラインを出口ポート超えて適合させる第三部分を備え得、それによって、チップ内のバブル作動を制御するためにコントロールラインに圧力をかけることを可能にする。さらに、記載されたホルダの実施形態は、チップを見るためのウインドウを備えるが、一旦、チップ充填プロセスが完了すると、チップがホルダから取り外される場合は、(このウインドウは)必要ではないかもしれない。
なお他の代替的な実施形態において、本発明に従うチップホルダは、チップがその中に配置されるための、空間的および一時的温度のプロフィールを提供するための加温エレメントを備え得る。このような代替的な実施形態は、加温エレメント(使い捨てであってもよい)を基板に直接組み込むことに関連する複雑性および費用を取り除く。
図80に図示されるチップホルダの特定の実施形態において、上端の部品は、ネジを回転させることによってチップにプレスされる。しかし、本発明に従う代替の実施形態において、下向きの力は、プレスまたはロボットアームを介して加えられ得、それによって、底部ホルダ部品の必要性を潜在的に排除する。
さらに、図80に図示されるチップホルダの特定の実施形態において、正の圧力を加えることが可能なウェルを覆うシールは、エラストマーチップの準拠している上端表面内に、一段高いリングをプレスすることによって作製される。しかし、本発明の代替的な実施形態に従って、シールは、チップホルダへの可撓性o−リングを加えることによって作製され得る。このようなo−リングは、硬い上端表面を特徴とするミクロ流体デバイスの実施形態を伴うチップホルダの使用を可能にする。
最後に、本発明の実施形態に従うチップホルダ構造の使用は、タンパク質の結晶化に限定されず、多様な用途を実行するために、ミクロ流体チップ上への多量の溶液のローディングを可能にすることを認識することは重要である。
本発明に従うエラストマーミクロ流体デバイスに圧力をかけるための構造の実施形態は、ミクロ流体デバイスの上端表面に接触し、そしてその中に配置される材料のウェルを取り囲むために構成される、その下方表面の、連続した一段高い縁を備えるホルダ部分を包含する。ミクロ流体デバイスの一段高い縁と上端表面との間の接触は、材料ウェルを覆う気密チャンバ、ミクロ流体デバイスの作動領域に材料ウェルの内容物を導くために、気密チャンバへ正の圧力をかけることを可能にする、チャンバとの連絡の開口部を規定する。
本発明に従って、液体材料でミクロ流体デバイスをプライムする方法の実施形態は、液体材料を有するミクロデバイスの上方表面の複数のウェルにローディングする工程を包含する。ホルダ部品は、上方表面に対して偏り、その結果、ホルダ部品の連続した一段高い縁は、ウェルの周囲の上方表面に対してプレスされ、チャンバはウェルの上に作製される。ミクロ流体構造の作動領域内にウェルから材料を導くために、正の圧力を気密チャンバにかける。
ミクロ流体エラストマーデバイス内のバルブを作動する方法の実施形態は、出口の上にチャンバを作製するために、連続する一段高い縁を有するホルダ部品を、複数のコントロールライン出口を有するミクロ流体デバイスの表面に適応させる工程を包含する。正または負の圧力を、コントロールライン内で圧力を制御するために気密チャンバにかけ、それによって、コントロールラインと連絡するミクロ流体デバイスのエラストマーバルブ膜を作動させる。
(11.標的物質)
結晶化のための標的は多様である。結晶化のための標的は、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1)成体高分子(サイトゾルタンパク質、細胞外タンパク質、膜タンパク質、DNA、RNAおよびそれらの複雑な組み合わせ)、2)翻訳前に修飾された生体分子および翻訳後に修飾された生体分子(リン酸化、スルホン化、グルコシル化、ユビキチン化などのタンパク質、およびハロゲン化、脱塩基化(abasic)、アルキル化などの核酸、が挙げられるが、これらに限定されない);3)意図的に誘導した高分子(例えば、重原子で標識したDNA、RNAおよびタンパク質(およびそれらの複合体)、セレノメチオニンで標識したタンパク質および核酸(およびそれらの複合体)、ハロゲン化したDNA、RNAおよびタンパク質(およびそれらの複合体)、4)ウイルス全体または巨大な細胞粒子(例えば、リボソーム、レプリソーム、スプライセオソーム、チューブリンフィラメント、アクチンフィラメント、染色体など)、5)低分子化合物(例えば、薬物、リード化合物、リガンド、塩および有機化合物または金属有機化合物、ならびに6)低分子/生体高分子複合体(例えば、薬物/タンパク質複合体、酵素/基質複合体、酵素/産物複合体、酵素/レギュレーター複合体、酵素/インヒビター複合体およびそれらの組み合わせ)。このような標的は、生物学、生化学、物質科学、薬学、化学および物理学を含む広範な科学分野について研究の目標である。
可能なタンパク質修飾の非排他的な列挙は、以下の通りである:5’脱リン酸;デスモシン(リジンから);分解されたカルボキシメチル化メチオニン;オルニチン(アルギニンから);リシノアラニン(システインから);ランチオニン(システインから);デヒドロアラニン(システインから);CNBr処理によってMetから形成されたホモセリン;脱水(−H2O);S−γ−グルタミル(システインに架橋);O−γ−グルタミル−(セリンに架橋);セリンからデヒドロアラニン;アラニノヒスチジン(ヒスチジンのθ炭素またはπ炭素に架橋したセリン);Glnから形成されたピログルタミン酸;N−ピロリドンカルボニル(N末端);Nα−(γ−グルタミル)−リジン;N−(β−アスパルチル)−リジン(架橋);3,3’,5,5’−TerTyr(架橋);ジスルフィド結合形成(シスチン);S−(2−ヒスチジル)−(システインに架橋);S−(3−Tyr)(システインに架橋);3,3’−BiTyr(架橋);イソジTyr(架橋);アリシン(リジンから);アミド形成(C末端);アスパラギンおよびグルタミンの、アスパラギン酸およびグルタミン酸への脱アミド化;シトルリン(citrulline)(アルギニンから);シンデシン(syndesine)(リジンから);メチル化(N末端、リジンのNε、セリンのO、スレオニンまたはC末端、アスパラギンのN);δ−ヒドロキシ−アリシン(リジンから);ヒドロキシル化(リジンのδC、トリプトファンのβC、プロリンのC3またはC4、アスパラギン酸のβC);メチオニンの酸化(スルホキシドに);スルフェン酸(システインから);ピルボイル−(セリン);3,4−ジヒドロキシ−フェニルアラニン(チロシンから)(DOPA);ナトリウム;エチル;N,Nジメチル化(アルギニンまたはリジン);2,4−ビスTrp−6,7−ジオン(トリプトファンから);ホルミル化(CHO);6,7ジオン(トリプトファンから);3,4,6−トリヒドロキシ−フェニルアラニン(チロシンから)(TOPA);3,4−ジヒドロキシル化(プロリン);メチオニンの酸化(スルホンに);3−塩素化(35Clを用いてチロシン);3−塩素化(37Clを用いてチロシン);カリウム;カルバミル化;アセチル化(N末端、リジンのNε、セリンのO)(Ac);N−トリメチル化(リジン);グルタミン酸のγカルボキシル化またはアスパラギン酸のβカルボキシル化;二ナトリウム;ニトロ(NO2);t−ブチルエステル(OtBu)およびt−ブチル(tBu);グリシル(−G−、−Gly−);カルボキシメチル(システイン上);ナトリウム+カリウム;セレノシステイン(セリンから);3,5−ジクロロ化(35Clを用いてチロシン);デヒドロアラニン(Dha);3,5−ジクロロ化(35Clと37Clとの混合物を用いてチロシン);ピルビン酸;アクリルアミジルまたはアクリルアミド付加体;サルコシル;アラニル(−A−、−Ala−);アセトアミドメチル(Acm);3,5−ジクロロ化(37Clを用いてチロシン);S−sn−1−グリセリル)(システイン上);グリセロールエステル(グルタミン酸側鎖上);グリシン(G、Gly);βメルカプトエタノール付加体;フェニルエステル(OPh)(酸性);3−ブロモ化(79Brを用いてチロシン);リン酸化(セリン、スレオニン、チロシンおよびアスパラギン酸のO、リジンのNε);3−ブロモ化(81Brを用いてチロシン);スルホン化(SO3H)(PMC基);硫酸化(チロシンのO);シクロヘキシルエステル(OcHex);ホモセリルラクトン;デヒドロアミノ酪酸(Dhb);γアミノブチリル;2−アミノ酪酸(Abu);2−アミノイソ酪酸(Aib);ジアミノプロピオニル;t−ブチルオキシメチル(Bum);N−(4−NH2−2−OH−ブチル)−(リジン)(ハイプシン);セリル(−S−、−Ser−);t−ブチルスルフェニル(StBu);アラニン(A、Ala);サルコシン(Sar);アニシル;ベンジル(Bzl)およびベンジルエステル(OBzl);1,2−エタンジチオール(EDT);デヒドロプロリル;トリフルオロアセチル(TFA);N−ヒドロキシスクシンイミド(ONSu、OSu);プロリル(−P−、−Pro−);バリル(−V−、−Val−);イソバリル(−I−、−Iva−);t−ブチルオキシカルボニル(tBoc);スレオイル(−T−、−Thr−);ホモセリル(−Hse−);シスチル(−C−、−Cys−);ベンゾイル(Bz);4−メチルベンジル(Meb);セリン(S、Ser);HMP(ヒドロキシメチルフェニル)リンカー;チオアニシル;チオクレシル;ジフタミド(diphthamide)(ヒスチジンから);ピログルタミル;2−ピペリジンカルボン酸(Pip);ヒドロキシプロリル(−Hyp−);ノルロイシル(−Nle−);イソロイシル(−I−、−Ile−);ロイシル(−L−、−Leu−);オルニチル(−Orn−);アスパラギル(−N−、−Asn−);t−アミルオキシカルボニル(Aoc);プロリン(P、Pro);アスパルチル(−D−、−Asp−);スクシニル;バリン(V、Val);ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル(HOBt);ジメチルベンジル(diMeBzl);トレオニン(T、Thr);システイニル化;ベンジルオキシメチル(Bom);p−メトキシベンジル(Mob、Mbzl);4−ニトロフェニル、p−ニトロフェニル(ONp);システイン(C、Cys);クロロベンジル(ClBzl);ヨウ素化(ヒスチジン[C4]またはチロシン[C3]);グルタミル(−Q−、−Gln−);N−メチルリジル;リジル(−K−、−Lys−);O−メチルアスパルタミル;グルタミル(−E−、−Glu−);Nα−(γ−グルタミル)−Glu;ノルロイシン(Nle);ヒドロキシアスパルタミル;ヒドロキシプロリン(Hyp);bb−ジメチルシステニル;イソロイシン(I、Ile);ロイシン(L、Leu);メチオニル(−M−、−Met−);アスパラギン(N、Asn);ペントース(Ara、Rib、Xyl);アスパラギン酸(D、Asp);Dmob(ジメトキシベンジル);ベンジルオキシカルボニル(Z);アダマンチル(Ada);p−ニトロベンジルエステル(ONb);ヒスチジル(−H−、−His−);N−メチルグルタミル;O−メチルグルタミル;ヒドロキシリジル(−Hyl−);メチルメチオニル;グルタミン(Q、Gln);アミノエチルシステニル;ペントシル;デオキシヘキソース(Fuc、Rha);リジン(K、Lys);アミノエチルシステニル(−AECys−);4−グリコシルオキシ−(ペントシル、C5)(プロリン);メチオニルスルホキシド;グルタミン酸(E、Glu);フェニルアラニル−(−F−、−Phe−);ピリジルアラニル;フルオロフェニルアラニル;2−ニトロベンゾイル(NBz);メチオニン(M、Met);3−メチルヒスチジル;2−ニトロフェニルスルフェニル(Nps);4−トルエンスルホニル(トシル、Tos);3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys);ヒスチジン(H、His);3,5−ジブロモ化(79Brを用いてチロシン);アルギニル(−R−、−Arg−);シトルリン;3,5−ジブロモ化(79Brおよび81Brの混合物を用いてチロシン);ジクロロベンジル(Dcb);3,5−ジブロモ化(81Brを用いてチロシン);カルボキシアミドメチルシステニル;カルボキシメチルシステニル;メチルフェニルアラニル;ヘキソースアミン(GalN、GlcN);カルボキシメチルシステイン(Cmc);N−グルコシル(リジンのN末端またはNε)(アミノケトース);O−グリコシル−(セリンまたはスレオニン);ヘキソース(Fru、Gal、Glc、Man);イノシトール;メチオニルスルホン;チロシニル(−Y−、−Tyr−);フェニルアラニン(F、Phe);2,4−ジニトロフェニル(Dnp);ペンタフルオロフェニル(Pfp);ジフェニルメチル(Dpm);ホスホセリル;2−クロロベンジルオキシカルボニル(CIZ);ナフチルアセチル(napthyl acetyl);イソプロピルリジル;N−メチルアルギニル、エタンジチオール(ethaneditohiol)/TFA環式付加体;カルボキシグルタミル(Gla);アセトアミドメチルシステニル;アクリルアミジルシステニル;アルギニン(R、Arg);N−グルクロニル(N末端);デルタ−グリコシルオキシ−(リジン)またはβ−グリコシルオキシ−(フェニルアラニンおよびチロシン);4−グリコシルオキシ−(ヘキソシル、C6)(プロリン);ベンジルセリル;N−メチルチロシニル;p−ニトロベンジルオキシカルボニル(4Nz);2,4,5−トリクロロフェニル;2,4,6−トリメチルオキシベンジル(Tmob);キサンチル(Xan);ホスホスレオニル;チロシン(Y、Tyr);クロロフェニルアラニル;メシチレン−2−スルホニル(Mts);カルボキシメチルリジル;トリプトファニル(−W−、−Trp−);N−リポイル−(リジン上);マトリックスαシアノMH+;ベンジルスレオニル;ベンジルシステニル;ナフチルアラニル;スクシニルアスパルタミル;スクシンイミドフェニルカルボ・・・;HMP(ヒドロキシメチルフェニル)/TFA付加体;N−アセチルヘキソースアミン(GalNAc、GlcNAc);トリプトファン(W、Trp);シスチン((Cys)2);ファルネシル化;S−ファルネシル−;ミリストレイル化(1つの二重結合を有するミリストイル);ピリジルエチルシステニル;ミリストイル化;4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr);2−ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ);ホルミルトリプトファニル;ベンジルグルタミル;アニソール付加グルタミル;S−システニルシステニル;9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc);リポ酸(リジンへのアミド結合);ビオチニル化(リジンへのアミド結合);ジメトキシベンズヒドリル(Mbh);N−ピリドキシル(リジン上);ピリドキサルリン酸(リジンから形成されるシッフ塩基);ニコチニルリジル;ダンシル(Dns);2−(p−ビフェニル)イソプロピル−オキシカルボニル(Bpoc);パルミトイル化;「トリフェニルメチル(トリチル、Trt)」;チロシニルスルフェート;ホスホチロシニル;Pbf(ペンタメチルジヒドロベンゾフランスルホニル);3,5−ジヨード化(チロシン);「3,5−ジ−I」;Nα−(γ−グルタミル)−Glu2;O−GlcNAc−1−ホスホリル化(セリン);「2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)」;ステアロイル化;ゲラニルゲラニル化;S−ゲラニルゲラニル;5’phos dシチジニル;ヨードチロシニル;アルドヘキソシルリジル;シアリル;N−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc、NANA、SA);5’phos dチミジニル;5’phosシチジニル;グルタチオン化;O−ウリジニル化(チロシン);5’phosウリジニル;S−ファルネシルシステニル;N−グリコールノイラミン酸(NeuGc);5’phos dアデノシル;O−パンテテインリン酸化(セリン);SucPhencarbリジル;5’phos dグアノシル;5’phosアデノシニル;O−5’−アデノシル化(チロシン);4’−ホスホパンテテイン;GL2;S−パルミチルシステニル;5’phosグアノシル;ビオチニルリジル;Hex−HexNAc;Nα−(γ−グルタミル)−Glu3;ジオクチルフタレート;PMCリジル;アエダンス(Aedans)システニル;ジオクチルフタレートナトリウム付加体;ジヨードチロシニル;PMCアルギニル;S−補酵素A;AMPリジル;3,5,3’−トリヨードサイロニン;(チロシンから);S−(sn−1−ジパルミトイル−グリセリル)−(システイン上);S−(ADP−リボシル)−(システイン上);N−(ADP−リボシル)−(アルギニン上);O
−ADP−リボシル化(グルタミン酸またはC末端上);ADP−リボシル化(NADから);S−フィコシアノビリン(システイン上);S−ヘム(システイン上);Nθ−(ADP−リボシル)ジフタミド(ヒスチジン);NeuAc−Hex−HexNAc;MGDG;O−8α−フラビン([FAD])−(チロシン);S−(6−フラビン[FAD])−(システイン上);NθおよびNπ−(8α−フラビン)(ヒスチジン上);(Hex)3−HexNAc−HexNAc;(Hex)3−HexNAc−(dHex)HexNAc。
可能な核酸改変(例えば、塩基特異的改変、糖特異的改変、またはリン特異的改変)の非排他的な一覧は、以下の通りである:ハロゲン化(F、Cl、Br、I):無塩基部位;アルキル化;架橋可能な付加物(例えば、チオールまたはアジド);チオール化;脱アミド;蛍光基標識、およびグリコシル化。
可能な重原子誘導体化剤の非排他的な一覧は、以下の通りである:ヘキサクロロイリジウム酸(III)カリウム;ヘキサクロロイリジウム酸(IV)カリウム;ヘキサクロロイリジウム酸(IV)ナトリウム;ヘキサクロロイリジウム酸(III)ナトリウム;ヘキサニトリトイリジウム酸(III)カリウム;ヘキサクロロイリジウム酸(III)アンモニウム;塩化イリジウム(III);ヘキサニトラトイリジウム酸(III)カリウム;臭化イリジウム(III);塩化バリウム(II);酢酸バリウム(II);硝酸カドミウム(II);ヨウ化カドミウム(II);硝酸鉛(II);酢酸鉛(II);塩化トリメチル鉛(IV);酢酸トリメチル鉛(IV);ヘキサクロロ鉛酸(IV)アンモニウム;塩化鉛(II);ヘキサクロロロジウム酸(III)ナトリウム;酢酸ストロンチウム(II);チオマロナト金酸(I)二ナトリウム;ジシアノ金酸(I)カリウム;ジシアノ金酸(I)ナトリウム;チオスルファト金酸(III)ナトリウム;テトラシアノ金酸(III)カリウム;テトラクロロ金酸(III)カリウム;テトラクロロ金酸(III)水素;テトラクロロ金酸(III)ナトリウム;テトラヨード金酸(III)カリウム;テトラブロモ金酸(III)カリウム;(アセタト−o)メチル水銀;メチル(ニトラト−o)水銀;クロロメチル水銀;ヨードメチル水銀;クロロエチル水銀;メチル水銀カチオン;トリエチル(m3−ホスファト(3−)−O,O’,O’’)トリ水銀eth;[3[(アミノカルボニル)アミノ]−2−メトキシプロピル]クロム;1,4ジアセトキシ水銀2−3ジメトキシブタン;メトキシル(meroxyl)マーキュヒドリン;テトラキス(アセトキシ水銀)−メタン;1,4ビス(クロロ水銀)−2,3−ブタンジオール;ジアセトキシ水銀クロロ酢酸エチル(dame);酸化水銀(II);メチル水銀−2−メルカプトエタノール;3,6ビス(水銀メチルジオキサン酢酸);エチル水銀カチオン;Billman’s dimercurial;パラクロロ水銀フェニルアセテート(pcma);水銀フェニルグリオキサル(mpg);Thiomersal、チオサリチル酸エチル水銀[emts];4−クロロマーキュリベンゼンスルホン酸(4−chloromercuribenesulphonic acid);2,6ジクロロ水銀−4−ニトロフェノール(dcmnp);[3−[[2(カルボキシメトキシ)ベンゾイル]アミノ(mino)−2メトキシprop;パラクロロ水銀ベンゾエート(pcmb),4−クロロ水銀;(アセタト−o)フェニル水銀;安息香酸フェニル水銀(pmb);パラヒドロキシ水銀ベンゾエート(phmb);イミドコハク酸水銀/水銀スクシンイミド;3−ヒドロキシ水銀ベンズアルデヒド;2−アセトキシ水銀スルファニルアミド(sulhpanilamide);3−アセトキシ水銀−4アミノベンゼンスルホンアミド;メチル水銀チオグリコール酸(thioclycolic acid)(mmtga);2−ヒドロキシ水銀−トルエン−4−スルホン酸(hmts);アセトアミノフェニル水銀アセテート(apma);[3−[(アミノカルボニル)アミノ]−3−メトキシプロピル2−クロロ;パラ−ヒドロキシ水銀ベンゼンスルホネート(phmbs);オルト−クロロ水銀フェノール(ocmp);ジアセトキシ水銀ジプロピレンジオキシド(dmdx);パラ−アセトキシ水銀アニリン(pama);(4−アミノフェニル)クロロ水銀;アニリン水銀カチオン;3−ヒドロキシ−水銀−sスルホサリチル酸(msss);3または5ヒドロキシ水銀サリチル酸(hmsa);ジフェニル水銀;2,6ジアセトキシ水銀メチル1−4チオキサン(dmmt);2,5−ビス(bls)(クロロ水銀)フラン;オルトクロロ水銀ニトロフェノール(ocmnp);5−水銀デオキシウリジンモノ硫酸;サリチル酸水銀;[3−[[2−(カルボキシメトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−メトキシpro;3,3ビス(ヒドロキシ水銀)−3−ニトラト水銀ピルビン酸(pyruvic);3−クロロ水銀ピリジン;3,5ビスアセトキシ水銀メチルモルホリン;オルト−水銀フェノールカチオン;パラ−カルボキシメチルメルカプト水銀ベンゼンスルホニル;パラ−水銀ベンゾイルグルコサミン;3アセトオシ水銀(acetetoxymercuri)−5−ニトロサリチルアルデヒド(msa);テトラクロロ水銀(II)アンモニウム;テトラチオシアナト水銀(II)カリウム;テトラチオシアナト水銀(II)ナトリウム;テトライソチオシアナト水銀(II)カリウム;テトラヨード(tetraido)水銀(II)カリウム;テトラチオシアナト水銀(II)アンモニウム;テトラブロモ水銀(II)カリウム;テトラシアノ水銀(II)カリウム;臭化水銀(II);チオシアン酸水銀(II);シアン化水銀(II);ヨウ化水銀(II);塩化水銀(II);酢酸水銀(II);酢酸水銀(I);ジクロロジアミノ水銀(II);β水銀−メルカプトエチルアミン塩酸;硫酸水銀(II);水銀(II)クロロanilate;酢酸二水銀;クロロ(2−オキソエチル)水銀;硝酸フェノール水銀;メルカプトエタノール水銀;塩化水銀メルカプトエチルアミン;チオグリコール酸水銀(ナトリウム塩);o−ヒドロキシ水銀−p−ニトロフェノール/2−ヒドロキシ水銀−4−;パラクロロ水銀フェノール(pcmp);チオサリチル酸アセチル水銀(amts);ヨウ素;ヨウ化カリウム(ヨウ素);4−ヨードピラゾール;O−ヨードベンゾイルグルコサミン(O−iodobenzoylglucasamine);P−ヨードベンゾイルグルコサミン(P−iodobenzoylglucasamine);ヨウ化カリウム/クロラミンt;ヨウ化アンモニウム;3−イソチオシアナト−4−ヨードベンゼンスルホンネート;ヨウ化カリウム;3’−ヨードフェニルトリアジン(3’−iodo phenyltrazine);4’−ヨードフェニルトリアジン(4’−iodo phenyltrazine);ヨウ化ナトリウム/ヨウ素;硝酸銀;トリニトリドスルホキシル酸銀();Tobenamed;塩化サマリウム(III);塩化ツリウム(III);塩化ルテチウム(III);塩化ユーロピウム(III);塩化テルビウム(III);塩化ガドリニウム(III);塩化エルビウム(III);塩化ランタン(III);硝酸サマリウム(III);酢酸サマリウム(III);サマリウム(III)カチオン;塩化プラセオジミウム(III);塩化ネオジミウム(III);塩化イッテルビウム(III);硫酸ツリウム(III);硫酸イッテルビウム(III);硫酸ガドリニウム(III);酢酸ガドリニウム(III);塩化ジスプロシウム(III);硝酸エルビウム(III);塩化ホルミウム(III);塩化ペンタアミノルテニウム(III);セシウムニトリドトリオキソ(nitridotiroxo)オスミウム(viii);テトラオキソオスミウム酸カリウム;ヨウ化ヘキサアミノオスミウム(III);ヘキサクロロオスミウム酸(IV)アンモニウム;塩化オスミウム(III);ヘキサクロロオスミウム酸(IV)カリウム;トリクロロトリスカルボニルオスミウム酸(?)セシウム;ジニトリドジアミン白金(II);シスジクロロジメチルアミン(dichlorodimethylammido)白金(II);ジクロロジアンミン白金(II);ジブロモジアンミン白金(II);ジクロロエチレンジアミン白金(II);ジクロロジニトリト白金酸(II)カリウム;ジエチレンジアミン(Diethylenediamene)白金(II);ジオキシラト白金酸(II)カリウム;ジクロロビス(ピリジン)白金(II);カリウム(トリメチル ジベンジルアミン)白金(?);テトラブロモ白金酸(II)カリウム;テトラクロロ白金酸(II)カリウム;テトラニトリト白金(II)カリウム;テトラシアノ白金酸(II)カリウム;テトラシアノ白金酸(II)ナトリウム;テトラチオシアナト白金酸(II)カリウム;テトラニトリト白金酸(II)アンモニウム;テトライソシアナト白金酸(II)カリウム;テトラシアノ白金(II)アンモニウム;テトラクロロ白金酸(II)アンモニウム;ジニトリトジオキサラト白金酸(IV)カリウム;ジクロロテトラアミノ(Dichlorotetraammino)白金(IV);ジブロモジニトリトジアンミン白金(IV);ヘキサニトリト白金酸(IV)カリウム;ヘキサクロロ白金酸(IV)カリウム;ヘキサブロモ白金酸(IV)カリウム;ヘキサクロロ白金酸(IV)ナトリウム;ヘキサヨード白金酸(IV)カリウム;ヘキサチオシアナト白金酸(IV)カリウム;テトラクロロビス(ピリジン)白金(IV);ヘキサクロロ白金酸(IV)アンモニウム;ジ−μ−ヨードビス(エチレンジアミン)二白金(II)n;ヘキサイソチオシアナト白金酸(IV)カリウム;テトラヨード白金酸(II)カリウム;2,2’,2’’ターピリジル白金(II);2ヒドロキシエタンチオレート(2,2’,2’’ターピリジン(terpyeidine))pla;テトラニトロ白金酸(II)カリウム;硝酸トリメチル白金(II);テトラオキソレニウム酸(VII)ナトリウム;テトラオキソレニウム酸(VI)カリウム;テトラオキソレニウム酸(VII)カリウム;ヘキサクロロレニウム(IV)カリウム;塩化レニウム(III);ヘキサクロロレニウム酸(IV)アンモニウム;二塩化ジメチルすず(II);硝酸トリウム(IV);オキシ塩化ウラン(VI);オキシ硝酸ウラン(VI);オキシ酢酸ウラン(VI);オキシピロリン酸ウラン(VI);ペンタフルオロオキシウラン酸(VI)カリウム;ペンタフルオロオキシウラン酸(VI)ナトリウム;ナノフルオロジオキシウラン酸(VI)カリウム;トリ酢酸オキシウラン酸(VI)ナトリウム;オキシシュウ酸ウラン(VI);セレノシアン酸アニオン;タングステン酸ナトリウム;12−タングストリン酸ナトリウム;酢酸タリウム(I);フッ化タリウム(I);硝酸タリウム(I);テトラクロロパラジウム酸(II)カリウム;テトラブロモパラジウム酸(II)カリウム;テトラシアノパラジウム酸(II)カリウム;テトラヨードパラジウム酸(II)カリウム;塩化コバルト(II)。
チップを形成し得るPDMS材料は、これらの標的の多く(特に、生物学的サンプル)に十分に適している。PDMSは、そのような分子が可溶化状態でそれらの適切な形状、折り畳み、および活性を維持することを可能にする、非反応性で生物学的に不活性な化合物である。このマトリクスおよび系は、数百ダルトンからメガダルトンのレジーム(regime)の範囲の標的サイズおよび分子量に適応し得る。小タンパク質およびペプチドからウイルスおよび高分子複合体にわたる生物学的標的がこの範囲に含まれ、そして、一般的に、3〜10kDaから>1〜2MDaのいずれかの大きさである。
(12.溶質/試薬の型)
結晶化スクリーニングの間に、多くの化学化合物が使用され得る。これらの化合物としては、塩、低分子量有機化合物および高分子量有機化合物、緩衝液、リガンド、低分子薬剤、界面活性剤、ペプチド、架橋剤、ならびに誘導体化剤が挙げられる。合わせて、これらの化学物質は、液滴中のイオン強度、pH、溶質濃度、および標的濃度を変化させるために使用され得、そして標的を改変するためにさえも使用され得る。結晶化を達成するためのこれらの化学物質の所望の濃度は変化し得、そしてナノモル濃度からモル濃度の範囲であり得る。代表的な結晶化混合物は、固定されているが、経験的に決定された型および濃度の「沈殿剤」、緩衝液、塩、および他の化学添加物(例えば、金属イオン、塩、低分子化学添加物、凍結防止剤、など)のセットを含む。水は、多くの生物学的標的の結晶化試験において重要な溶媒である。なぜならば、これらの分子の多くは、活性および折り畳みを維持するために水和する必要があり得るからである。
加圧化ガスプライミング(POP)技術と結び付けて上述したように、気体に対するPDMSの浸透性、およびPDMSと溶媒との適合性は、使用する沈殿剤を決定する上で重要な因子であり得る。
「沈殿」剤は、標的を可溶状態から不溶状態への押し進めるよう作用し、そして容積の排除、溶媒の誘電率の変更、電荷遮蔽、および分子の集中化をもって作用し得る。このチップの特定の実施形態のPDMS材料と適合性の沈殿剤としては、不揮発性塩、高分子量ポリマー、極性溶媒、水溶液、高分子量アルコール、二価金属が挙げられるがこれらに限定されない。
沈殿化合物(高分子量有機物質および低分子量有機物質、ならびに特定の塩が挙げられる)は、1%未満〜40%より高い濃度、または<0.5M〜4Mより高い濃度で使用され得る。水自体は、可溶性を維持するために特定レベルのイオン強度を必要とするサンプルに対して、沈殿様式で作用し得る。多くの沈殿剤はまた、結晶化スクリーニングの化学的多様性を増加させるために、互いに混合され得る。本明細書に記載されるミクロ流体デバイスは、広範囲のこのような化合物に容易に適合され得る。さらに、多くの沈殿剤(例えば、長鎖有機物質および短鎖有機物質)は、高濃度で非常に粘稠性であり、ほとんどの流体操作デバイス(例えば、ピペットまたはロボットシステム)に対して問題を引き起こす。本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスのポンプおよびバルブの作用により、粘稠性因子の操作が可能となる。
特定のエラストマー材料と適合性の溶媒/沈殿剤の調査は、最適な結晶化剤を同定するために実施され得、最適な結晶化剤は、標準的なスクリーニングよりも効率的な、チップ用に仕立てられた結晶化スクリーニング反応を開発するのに使用され得る。
沈殿剤として使用され得る塩の非排他的な一覧は、以下の通りである:酒石酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);リン酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);酢酸塩(Li、Na、K、Na/K、Mg、Ca、Zn、NH4);蟻酸塩(Li、Na、K、Na/K、Mg、NH4);クエン酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);塩化物塩(Li、Na、K、Na/K、Mg、Ca、Zn、Mn、Cs、Rb、NH4);硫酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);リンゴ酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);グルタミン酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4)。
沈殿剤として使用され得る有機性材料の非排他的な一覧は、以下の通りである:PEG400;PEG1000;PEG1500;PEG2k;PEG3350;PEG4k;PEG6k;PEG8k;PEG10k;PEG20k;PEG−MME550;PEG−MME750;PEG−MME2k;PEG−MME5k;PEG−DME2k;ジオキサン;メタノール;エタノール;2−ブタノール;n−ブタノール;t−ブタノール;Jeffamine M−600;イソプロパノール;2−メチル−2,4−ペンタンジオール;1,6ヘキサンジオール。
溶液のpHは、緩衝化剤の含有により変更され得る;生物学的材料の代表的なpH範囲は、3.5〜10.5の値の間のいずれかであり、そして緩衝液の濃度は、一般的に、0.01Mと0.25Mとの間である。本明細書中に記載されるミクロ流体デバイスは、広範囲のpH値(特に、生物学的標的に適したpH値)に容易に適合され得る。
可能な緩衝剤の非排他的な一覧は、以下の通りである:酢酸ナトリウム;HEPES;カコジル酸ナトリウム;クエン酸ナトリウム;コハク酸ナトリウム;リン酸ナトリウムカリウム;TRIS;マレイン酸TRIS;マレイン酸イミダゾール;ビストリスプロパン;CAPSO、CHAPS、MES、およびイミジゾール(imidizole)。
添加物は、標的の溶解度および/または活性の挙動に影響を及ぼす低分子である。このような化合物は、結晶化スクリーニングを迅速化し得るか、または標的の代替の結晶形態を生成し得る。添加物は、化学物質のほぼ全ての考えられ得る形態を取り得るが、代表的には、一価塩または多価塩(無機または有機)、酵素リガンド(基質、生成物、アロステリックエフェクター)、化学架橋剤、界面活性剤および/または脂質、重金属、有機金属化合物、微量の沈殿剤、ならびに低分子量有機物質である。
以下は、可能な添加物の非排他的な一覧である:2−ブタノール;DMSO;ヘキサンジオール;エタノール;メタノール;イソプロパノール;フッ化ナトリウム;フッ化カリウム;フッ化アンモニウム;無水塩化リチウム;塩化マグネシウム六水和物;塩化ナトリウム;塩化カルシウム二水和物;塩化カリウム;塩化アンモニウム;ヨウ化ナトリウム;ヨウ化カリウム;ヨウ化アンモニウム;チオシアン酸ナトリウム;チオシアン酸カリウム;硝酸リチウム;硝酸マグネシウム六水和物;硝酸ナトリウム;硝酸カリウム;硝酸アンモニウム;蟻酸マグネシウム;蟻酸ナトリウム;蟻酸カリウム;蟻酸アンモニウム;酢酸リチウム二水和物;酢酸マグネシウム四水和物;酢酸亜鉛二水和物;酢酸ナトリウム三水和物;酢酸カルシウム水和物;酢酸カリウム;酢酸アンモニウム;硫酸リチウム一水和物;硫酸マグネシウム七水和物;硫酸ナトリウム十水和物;硫酸カリウム;硫酸アンモニウム;酒石酸二ナトリウム二水和物;酒石酸カリウムナトリウム四水和物;酒石酸二アンモニウム;リン酸二水素ナトリウム一水和物;リン酸水素二ナトリウム二水和物;リン酸二水素カリウム;リン酸水素二カリウム;リン酸二水素アンモニウム;リン酸水素二アンモニウム;クエン酸三リチウム四水和物;クエン酸三ナトリウム二水和物;クエン酸三カリウム一水和物;クエン酸水素二アンモニウム;塩化バリウム;塩化カドミウム二水和物;塩化コバルト二水和物;塩化銅二水和物;塩化ストロンチウム六水和物;塩化イットリウム六水和物;エチレングリコール;グリセロール無水物;1,6ヘキサンジオール;MPD;ポリエチレングリコール400;トリメチルアミンHCl;グアニジンHCl;尿素;1,2,3−ヘプタントリオール;ベンズアミジンHCl;ジオキサン;エタノール;イソ−プロパノール;メタノール;ヨウ化ナトリウム;L−システイン;EDTAナトリウム塩;NAD;ATP二ナトリウム塩;D(+)−グルコース一水和物;D(+)−スクロース;キシリトール;スペルミジン;スペルミンテトラ−HCl;6−アミノカプロン酸;1,5−ジアミノペンタンジHCl;1,6−ジアミノヘキサン;1,8−ジアミノオクタン;グリシン;グリシル−グリシル−グリシン;三塩化ヘキサミンコバルト;タウリン;ベタイン一水和物;ポリビニルピロリドンK15;非界面活性剤スルホ−ベタイン195;非界面活性剤スルホ−ベタイン201;フェノール;DMSO;硫酸デキストランナトリウム塩;jeffamine M−600;2,5ヘキサンジオール;(+/−)−1,3ブタンジオール;ポリプロピレングリコールP400;1,4ブタンジオール;tert−ブタノール;1,3プロパンジオール;アセトニトリル;γブチロラクトン;プロパノール;酢酸エチル;アセトン;ジクロロメタン;n−ブタノール;2,2,2トリフルオロエタノール;DTT;TCEP;ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、ノナエチレングリコールモノラウリルエーテル;ポリオキシエチレン(9)エーテル;オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノラウリルエーテル;ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル;ドデシルβ−D−マルトピラノシド;ラウリル酸スクロースエステル;シクロヘキシル−ペンチル−β−D−マルトシド;ノナエチレングリコールオクチルフェノールエーテル;臭化セチルトリメチルアンモニウム;N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)−デオキシコールアミン;デシル−β−D−マルトピラノシド;ラウリルジメチルアミンオキシド;シクロヘキシル−ペンチル−β−D−マルトシド;n−ドデシルスルホベタイン、3−(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート;ノニル−β−D−グルコピラノシド;オクチル−β−D−チオグルコピラノシド,OSG;N,N−ジメチルデシルアミン−β−オキシド;メチル−6−O−(N−ヘプチルカルバモイル)−a−D−グルコピラノシド;スクロースモノカプロイル酸;n−オクタノイル−β−Dフルクトフラノシル−a−D−グルコピラノシド;ヘプチル−β−D−チオグルコピラノシド;オクチル−β−D−グルコピラノシド、OG;シクロヘキシル−プロピル−β−D−マルトシド;シクロヘキシルブタノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;n−デシルスルホベタイン、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート;オクタノイル−N−メチルグルカミド、OMEGA;ヘキシル−β−D−グルコピラノシド;Brij35;Brij58;TritonX−114;TritonX−305;TritonX−405;Tween20;Tween80;ポリオキシエチレン(6)デシルエーテル;ポリオキシエチレン(9)デシルエーテル;ポリオキシエチレン(10)ドデシルエーテル;ポリオキシエチレン(8)トリデシルエーテル;イソプロピル−β−D−チオガラクトシド;デカノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;ペンタエチレングリコールモノオクチルエーテル;3−[(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−l−プロパンスルホネート;3−[(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート;シクロヘキシルペンタノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;ノナノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;シクロヘキシルプロパノール−N−ヒドロキシエチルグルカミド;オクタノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;シクロヘキシルエタノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;臭化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム;n−ヘキサデシル−β−D−マルトピラノシド;n−テトラデシル−β−D−マルトピラノシド;n−トリデシル−β−D−マルトピラノシド;ドデシルポリ(エチレングリコエーテル)n;n−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート;n−ウンデシル−β−D−マルトピラノシド;n−デシル−β−D−チオマルトピラノシド;n−ドデシルホスホコリン;a−D−グルコピラノシド、β−D−フルクトフラノシルモノデカン酸、スクロースモノカプリン酸;1−s−ノニル−β−D−チオグルコピラノシド;n−ノニル−β−D−チオマルトピラノシド(thiomaltoyranoside);N−ドデシル−N,N−(ジメチルアンモニオ(dimethlammonio))酪酸;n−ノニル−β−D−マルトピラノシド;シクロヘキシル−ブチル−β−D−マルトシド;n−オクチル−β−D−チオマルトピラノシド;n−デシルホスホコリン;n−ノニルホスホコリン;ノナノイル−N−メチルグルカミド;1−s−ヘプチル−β−D−チオグルコピラノシド;n−オクチルホスホコリン;シクロヘキシル−エチル−β−D−マルトシド;n−オクチル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート;シクロヘキシル−メチル−β−D−マルトシド。
凍結溶媒は、寒剤(例えば、液体窒素、液体プロパン、液体エタン、または窒素ガスもしくはヘリウムガス)中での急速冷却(全て、約100〜120°K)に対して標的結晶を安定化し、結晶が氷ではなくガラス質のガラス中に包埋されるようにする薬剤である。任意の数の塩または低分子量有機化合物が、凍結防止剤として使用され得、代表的な凍結防止剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:MPD、PEG−400(ならびにPEG誘導体および高分子量PEG化合物の両方)、グリセロール、糖(キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、グルコースなど)、エチレングリコール、アルコール(短鎖および長鎖の両方、揮発性および不揮発性の両方)、LiOAc、LiCl、LiCHO2、LiNO3、Li2SO4、Mg(OAc)2、NaCl、NaCHO2、NaNO3など。繰り返すが、本発明に従うミクロ流体デバイスを構築する材料は、一定範囲のこのような化合物と適合性であり得る。
これらの化学物質の多くは、研究者が「疎行列(sparse matrix)」スクリーニング実験および「グリッド」スクリーニング実験の両方を実施するのを可能にする、種々の販売元(Hampton Research of Laguna Niguel、CA、Emerald Biostructures of Bainbridge
Island、WA、およびJena BioScience of Jena、Germanyが挙げられるがこれらに限定されない)からの予め規定されたスクリーニングキットにおいて獲得され得る。疎行列スクリーニングは、可能な限り少ない条件で可能な限り多くの沈殿剤、緩衝液、および添加剤化学物質の空間(additive chemical space)を無作為にサンプリングすることを試みる。グリッドスクリーニングは、代表的に、互いに対する2つまたは3つのパラメータ(例えば、沈殿剤濃度 対 pH)の体系的な変動で構成される。両方の型のスクリーニングの使用が、結晶化試験において成功しており、そしてこれらのスクリーニングにおいて使用される化学物質および化学的物質の組み合わせの大部分が、本発明の実施形態に従うチップ設計およびマトリクスと適合性である。
さらに、ミクロ流体デバイスの現在および将来の設計は、特定の標的または標的のセットに対する異なる化学物質のアレイの柔軟なコンビナトリアルスクリーニングを可能にし得る。これは、ロボットスクリーニングまたは手作業のスクリーニングのいずれによっても困難なプロセスである。この後者の局面は、初回スクリーニングによりなされる最初の成功を最適化するために特に重要である。
(13.結晶化のためのさらなるスクリーニングの変数)
化学的可変性に加えて、多数の他のパラメータは、結晶化スクリーニングの間に変更され得る。このようなパラメータとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:1)結晶化試験の容量、2)結晶化溶液に対する標的溶液の比率、3)標的濃度、4)二次的な低分子または高分子との標的の共結晶化、5)水和、6)インキュベーション時間、7)温度、8)圧力、9)接触表面、10)標的分子に対する改変、および11)重力。
結晶化試験の容量は、ピコリットルからミリリットルの範囲の全ての考えられ得る値の容量であり得る。代表的な値としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:0.1、0.2、0.25、0.4、0.5、0.75、1、2、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、400、450、500、550、600、700、750、800、900、1000、1100、1200、1250、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2250、2500、3000、4000、5000、6000、7000、7500、8000、9000、および10000nL。先に記載されたミクロ流体デバイスは、これらの値を使用し得る。
特に、結晶化試験についての低容量範囲(<100nL)の使用は、本発明の実施形態に従うミクロ流体チップの実施形態の明確な利点である。なぜならば、このような低容量の結晶化チャンバが容易に設計および構築され得、多量の貴重な標的分子に対する必要性を最小限に抑えるからである。本発明に従う実施形態の標的物質の低消費は、十分でない生物学的サンプル(例えば、膜タンパク質、タンパク質/タンパク質複合体、およびタンパク質/核酸複合体)を結晶化する試み、および目的の標的に対する結合についてのリードライブラリーの低分子薬物スクリーニングにおいて特に有用である。
結晶化混合物に対する標的溶液の比率はまた、結晶化スクリーニングおよび最適化における重要な変数を構成し得る。これらの比率は、全ての考えられ得る値の比率であり得るが、代表的には、1:100〜100:1の範囲の標的:結晶化溶液である。代表的な標的:結晶化溶液または結晶化溶液:標的の比率としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:25、1:20、1:15、1:10、1:9、1:8、1:7.5、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2.5、1:2、1:1、2:3、3:4、3:5、4:5、5:6、5:7、5:9、6:7、7:8、8:9、および9:10。先に記載されたように、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスは、単一のチップにおいて複数の比率を同時に使用するよう設計され得る。
結晶化化学物質濃度と同様に、標的濃度は、一定範囲の値であり得、そして結晶化スクリーニングにおいて重要な変数である。代表的な濃度範囲は、<0.5mg/ml〜>100mg/mlのいずれかであり得、5〜30mg/mlの間の値が最も一般的に使用され得る。本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスは、この範囲の値と容易に適合され得る。
共結晶化は、一般的に、天然または非天然の結合パートナーである二次的因子との標的の結晶化を示す。このような二次的因子は、小さくあり得る(約10〜1000Daのオーダー)か、または大きな高分子であり得る。共結晶化分子としては、低分子酵素リガンド(基質、生成物、アロステリックエフェクターなど)、低分子薬物リード物質、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNA、補体タンパク質(例えば、パートナーまたは標的タンパク質またはサブユニット)、モノクローナル抗体、および融合タンパク質(例えば、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、プロテイン−G、または発現、溶解度、および標的の挙動を補助し得る他のタグ)が挙げられ得るがこれらに限定されない。これらの化合物の多くは、生物学的化合物または合理的な分子量の化合物のいずれかであるので、共結晶化分子は、ミクロ流体チップにおけるスクリーニングに慣用的に含まれ得る。実際、これらの試薬の多くが高価であり、そして/または限られた量なので、本発明の実施形態に従うミクロ流体チップによりもたらされる低容量さは、これらを共結晶化スクリーニングに理想的に適するようにする。
標的の水和は、重要な問題であり得る。特に、水は、生物学的標的およびサンプルに極めて有力な溶媒であり得る。本明細書中に記載されるミクロ流体デバイスは、比較的疎水性であり、そして水ベースの溶液と適合性である。
結晶化実験の時間の長さは、分または時間から週または月の範囲であり得る。生物学的系におけるほとんどの実験は、代表的に、24時間〜2週間で結果を示す。このインキュベーション時間のレジームは、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスにより適応され得る。
結晶化実験の温度は、成功または失敗の割合に大きな影響を有し得る。このことは特に、結晶化実験の温度が0〜42℃の範囲であり得る生物学的サンプルに当てはまる。最も一般的な結晶化温度のうちのいくつかは、以下の通りである:0、1、2、4、5、8、10、12、15、18、20、22、25、30、35、37、および42。本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスは、列挙される温度で保存され得るか、または代替的に、小さな温度制御構造(例えば、抵抗加熱器またはPeltier冷却構造)との熱接触下に置かれ得る。
さらに、本発明に従う実施形態の小さなフットプリントおよび迅速な準備時間は、所望の標的温度へのより迅速な平衡化および一定範囲の温度のより小さいインキュベーターにおける保存を可能にする。さらに、本発明の実施形態に従うミクロ流体系は、蒸気相との接触下で結晶化実験を行わないので、従来の巨視的な蒸気拡散技術に伴う問題である温度変化に伴う蒸気相から液滴への水の凝縮が回避される。この特徴は、多くの従来の手動またはロボット操作の系(この系は、所望の温度で維持されなければならいか、またはこの実験は、新しい温度に移される前に一定期間室温で維持されなければならないかのいずれかである)を上回る利点を示す。
圧力の変動は、今なお研究中である結晶化パラメーターである。これは、部分的には、従来の拡散蒸着プロトコルおよびマイクロバッチプロトコルが、代表的には大気圧以外のすべて圧力におけるスクリーニングを容易には可能にしないからである。PDMSマトリックスの剛性により、チップ上での標的結晶化に対する圧力の効果を探索する実験が可能である。
結晶化「滴下物」が存在する表面は、実験の成功および結晶の品質に影響し得る。拡散蒸着プロトコルおよびマイクロバッチプロトコルにおいて使用される固体支持体接触表面の例としては、ポリスチレンまたはシラン化ガラスのいずれかが挙げられる。両方の型の支持体が、標的に依存して、結晶成長を促進または阻害する異なる性向を示し得る。さらに、その結晶化「滴下物」は、空気または何らかの型のポリ炭素油のいずれかと接触しており、このことは、この実験が、それぞれ、拡散蒸着の設定またはマイクロバッチの設定であるか否かに依存する。空気の接触は、遊離酸素が生物学的標的と容易に反応し、これによりタンパク質変性をもたらし得そして結晶化の成功を阻害または低下し得るという点で、不利を有する。油は、微量炭化水素が結晶化実験中に浸出するのを可能にし、そして同様に、結晶化の成功を阻害または低下し得る。
本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスの設計は、結晶化反応を完全に取り囲む非反応性の生体適合性環境を提供することによって、これらの制限を克服し得る。さらに、ミクロ流体チップにおける結晶化チャンバの組成は、結晶化反応と接触するための新しい表面を提供するように多分変化され得る。このことは、結晶化を促進する異なる表面および表面特性の慣用的スクリーニングを可能にする。
結晶化標的(特に、生物学的起源の標的)は、しばしば、結晶化を可能にするように改変され得る。そのような改変としては、短縮、限定的タンパク質分解性消化物、部位特異的変異体、阻害状態または活性化状態、化学的改変または誘導体化などが挙げられるが、これらに限定されない。標的改変は、時間およびコストがかかり得る。改変標的は、非改変標的が必要とするのと同じ徹底的スクリーニングを必要とする。本発明のミクロ流体デバイスは、もとの標的を用いるのと同じ程度容易に、そのような改変標的を用いて作動し、そして同じ利益を提供する。
結晶化についてのパラメーターとしての重力の効果は、なお研究中である別の結晶化パラメーターである。これは、そのような物理的特性を変化させることが困難であることが原因である。それにもかかわらず、無重力環境における生物学的サンプルの結晶化実験は、重力の影響下にて地球上で得られる結晶よりも優れた品質の結晶の成長を生じた。
重力が無いことは、従来の拡散蒸着設定およびマイクロバッチ設定に関して問題を提示する。なぜなら、すべての流体は、表面張力によって適所に保持されなければならないからである。しばしばそのような実験を手で設定する必要性もまた、困難を引き起こす。この困難は、空間に作業者を維持する費用が原因である。しかし、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスは、結晶化条件としての微小重力のさらなる調査を可能にする。小型の自動計測および結晶成長系は、以下の1)〜4)を可能にする:1)冷却されているが液体の状態で標的分子を含む衛星工場の打ち上げ、2)標的の分配および結晶の成長、3)生じた結晶の収集および低温凍結、および4)低温貯蔵された結晶を分析のために陸上ステーションに戻すこと。
(14.インサイチュ結晶化スクリーニング)
顕微鏡を用いて結晶の成長を観察する能力は、結晶化試験の成功または失敗を決定する段階である。従来の結晶化プロトコルは、可視化を可能にする透明物質(例えば、ポリスチレンまたはシラン化ガラス)を使用し得る。本発明に従う実験のPDMSマトリックスの透明性は、結晶化試験が伝統的に得られる以下の2つの主要な方法に特に適する:1)光学顕微鏡により可視光体制での直接観察、および2)偏光の複屈折。
複屈折は、従来の実験において判断するのが困難であり得る。なぜなら、多くのプラスチックは、それ自体が複屈折性であり、サンプルの評価を妨害するからである。しかし、本明細書中に記載されるミクロ流体デバイスは、そのような光学的干渉特性を伴うことなく作製され得、偏光特徴および非偏光特徴の両方を用いて直接の可視化を慣用的に可能にする自動スキャニングシステムの設計を可能にする。
さらに、ロボットを利用する(特に手動で設定する)結晶化実験は、表面上の結晶化滴下物の配置を数10〜数100ミクロン変動させ得る。この変動性は、自動スキャニングシステムについての問題を提示する。なぜなら、安定な基準を伴わずにそのような柔軟な位置決めの必要性をプログラムすることは困難であるからである。しかし、本発明の実施形態のミクロ流体チップにおける結晶化チャンバの固定配置は、そのような問題を克服する。なぜなら、どのウェルも、ミクロン未満の精度で特定の位置に位置決めされ得るからである。さらに、そのようなシステムは、異なるサイズおよび位置の結晶化チャンバの設計のために容易に拡張可能である。なぜなら、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスを設計するために使用されるマスクおよび他のテンプレートは、簡単にデジタル化され得、そして可視化のためのスキャニングソフトウェア中に移植され得るからである。
一旦結晶が視覚的観察により得られると、チップ自体を直接通る回折についてスクリーニングすることが可能であり得る。例えば、チップ内の結晶化チャンバは、ガラス、石英、または弾性材料自体の薄化部分を含む透明な「窓」が、そのチャンバの対向する壁に装備され得る。その後、結晶は、回折キャピラリーについてアッセイするためにチップを通るX線に直接曝され得、結晶サンプルを除去することにより結晶サンプルを多分損傷させる必要性が排除される。そのようなアプローチは、追跡調査のための最良の開始条件候補を決定するために最初の結晶化試験から成功をスクリーニングするために使用され得る。同様に、特定の条件の組の下で成長した結晶が、新しい溶液(例えば、低温安定化剤、低分子薬物リード化合物またはリガンドなど)で「再平衡化」され得、そしてそのような環境変化に対するその結晶の安定性が、X線回折により直接モニターされ得る。
(15.精製/結晶化のためのミクロ流体デバイスの利用)
標的生物学的サンプル(例えば、タンパク質)の結晶化は、実際には、事前の多数の複雑かつ困難な工程の頂点であり、そのような工程としては、タンパク質の発現、精製、誘導体化、および標識が挙げられるが、これらに限定されない。結晶化の前のそのような工程は、1組の溶液特性を備えるチャンバから異なる組の特性を備える別の領域へ液体を往復させる工程を包含する。ミクロ流体技術は、そのような作業を実施するために適切であり、それにより、単一チップの範囲内において必要なすべての工程の組み合わせが可能になる。
プレ結晶化工程の実施を可能にするミクロ流体取扱い構造の例が、上記の第I節に記載されている。例えば、ミクロ流体チップは、調節されたバイオリアクターとして作用し得、それにより、セルペン(cell pen)構造中に含まれる増殖中の細胞中へと栄養素を流すことを可能にすると同時に、老廃物を除去し、そして組換え改変生物が細胞増殖の所望の段階で標的分子(例えば、タンパク質)を生成するのを誘導する。誘導後に、これらの細胞は、セルペン(cell pen)からチップの異なる領域へと、酵素的手段または機械的手段による溶解のために押しやられ得る。その後、可溶化した標的分子は、チップ上に直接組み込まれた分子濾過ユニットによって細胞破片から分離され得る。
その後、標的分子と混入する細胞タンパク質および細胞核酸との粗混合物は、種々の化学特性の多孔性マトリックス(例えば、カチオン交換、アニオン交換、アフィニティ、サイズ排除)を通して分離を達成するために流され得る。標的分子が、可溶性を促進する特定の型の融合タンパク質でタグ化された場合、その標的分子はアフィニティ精製され得、同様にタグ化された部位特異的プロテアーゼを用いてその融合産物を分離するように短時間処理され得、その後、清浄化工程としてアフィニティマトリックスに再び通される。
一旦純粋になると、その標的は、異なる安定化剤と混合され得、活性についてアッセイされ得、その後、結晶化実施領域へと輸送される。チップまたはチップホルダー上の種々の点に位置する局所的加熱ユニット(例えば、電極)および冷蔵ユニット(例えば、Peltier冷却器)は、処理および結晶化全体にわたるすべての段階で差次的な温度調節を可能にする。従って、タンパク質の産生、精製、および結晶化は、本発明に従う単一ミクロ流体デバイスの実施形態にて達成され得る。
(16.結晶化スクリーニング以外の適用)
これまで、本願は、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスが、標的物質の結晶化を実施することに関して小容量の物質を計測する能力に焦点を当ててきた。しかし、本発明に従うミクロ流体構造の実施形態は、他の適用に使用され得る。そのような適用の例が、下記に要約される。可能な適用のより完全な記載は、2001年11月6日に出願された「Cell Asssays and High Throughput Screening」という発明の名称のPCT出願PCT/US01/44869(本明細書によりすべての目的のために参考として援用される)に見出され得る。そのような適用を実施するために適切なミクロ流体構造の例としては、本明細書中に記載されるもの、ならびに2002年4月5日に出願された「Nucleic Acid Amplification Utilizing Microfluidic Devices」という発明の名称の米国特許出願番号_/__(代理人事件番号20174C−004430)(本明細書によりすべての目的のために参考として援用される)に記載される他のものが挙げられる。
広範な種類の結合アッセイが、本明細書中に開示されるミクロ流体デバイスを使用して実施され得る。本質的にすべてのリガンドとアンチリガンドとの間の相互作用が、検出され得る。調査され得るリガンド/アンチリガンド結合相互作用の例としては、酵素/リガンド相互作用(例えば、基質、補因子、インヒビター);レセプター/リガンド;抗原/抗体;タンパク質/タンパク質(同種親和性/異種親和性相互作用);タンパク質/核酸;DNA/DNA;およびDNA/RNAが挙げられるが、これらに限定されない。従って、それらのアッセイは、例えば、目的のレセプターに対するアゴニストおよびアンタゴニストを同定するため、レセプターと結合して細胞内シグナルカスケードを誘発可能なリガンドを同定するため、および相補的核酸を同定するために、使用され得る。リガンドと推定アンチリガンドとが互いに接触される直接結合形式でか、または当業者に周知の競合的結合形式で、アッセイは実施され得る。
異種結合アッセイは、複合体が未反応因子から分離されて、標識複合体が非複合体化標識反応物のいずれかから区別され得る工程を包含する。しばしば、これは、そのリガンドまたはアンチリガンドを支持体に付着することによって達成される。リガンドとアンチリガンドとが接触された後で、非複合体化反応物が洗い流され、その後、残りの複合体が検出される。
本明細書中で提供されるミクロ流体デバイスを用いて実施される結合アッセイはまた、同種形式でも実施され得る。この同種形式では、リガンドとアンチリガンドとが、溶液中で互いに接触され、そして結合している複合体が、非複合体化リガンドおよび非複合体化アンチリガンドを除去する必要なく検出される。同種アッセイを実施するために頻繁に利用される2つのアプローチは、蛍光偏光(FP)アッセイおよびFRETアッセイである。
本ミクロ流体デバイスはまた、既知の結合パートナー間の相互作用を阻害する因子を同定するために競合形式で利用され得る。そのような方法は、一般的に、結合パートナーが相互作用し複合体を形成するのを可能にするに十分な条件下かつそれに十分な時間、それらの結合パートナーを含む反応混合物を調製する工程を包含する。化合物を阻害活性について試験するために、その反応混合物が、その試験化合物の存在下(試験反応混合物)および非存在下(コントロール反応混合物)で調製される。その後、結合パートナー間の複合体の形成が検出され、この検出は、代表的には、それらの結合パートナーのうちの一方または両方により生じる標識を検出することによる。その後、統計学的に有意な差異を構成するレベルで、試験反応混合物中のコントロール反応においてより多くの複合体を形成することは、その試験化合物が、それらの結合パートナー間の相互作用を妨害することを示す。
免疫学的アッセイは、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスを用いて実施され得るアッセイの1つの一般的なカテゴリーである。特定のアッセイが、目的の特定の抗原に特異的に結合し得る抗体について抗体集団をスクリーニングするために実施される。そのようなアッセイにおいて、試験抗体または抗体集団が、その抗原と接触される。代表的には、その抗原は、固体支持体に付着されている。免疫学的アッセイの例としては、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)および当該分野で公知である競合アッセイが挙げられる。
本明細書中で提供されるミクロ流体デバイスを使用して、種々の酵素的アッセイが実施され得る。そのような酵素的アッセイは、一般に、アッセイを実施するための必要成分を含むアッセイ混合物を種々の枝フローチャネル中へと導入する工程を包含する。そのアッセイ混合物は、代表的には、例えば、その酵素の基質、必要な補因子(例えば、金属イオン、NADH、NAPDH)、および緩衝液を含む。共役アッセイが実施されるべき場合、そのアッセイ溶液はまた、一般的に、酵素、基質、およびその酵素的共役に必要な補因子を含む。
本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスは、生成される酵素産物に選択的に結合する物質を含むように手配され得る。いくつかの場合、その物質は、反応産物自体について特異的結合親和性を有する。いくらかより複雑な系が、転移反応を触媒する酵素のために開発され得る。例えば、この型の特定のアッセイは、ドナー基質から親和性標識を有するアクセプター基質へと検出可能な部分が転移して、検出可能な部分と親和性標識との両方を有する産物を生成するのを触媒する酵素をインキュベートする工程を包含する。この産物は、その親和性標識に特異的に結合する相補的因子を含む物質によって捕捉され得る。この物質は、代表的には、捕捉された産物が容易に検出され得るように、検出領域中に位置する。特定のアッセイにおいて、その物質は、その検出区域のチャネル内壁にコーティングされる;あるいは、その物質は、その因子でコーティングされている検出領域中に位置する支持体であり得る。
本デバイスを使用する特定のアッセイは、細胞ではなく小胞を用いて実施される。そのようなアッセイの1例は、蛍光相関分光法(FCS)を使用するGタンパク質共役レセプターアッセイである。目的のレセプターを過剰発現する細胞から構築された膜小胞が、主フローチャネルに導入される。小胞は、これもまた主フローチャネルにより導入される蛍光天然リガンドと混合される前に、インヒビターと予め混合され、そして枝フローチャネルまたは主フローチャネルのうちの1つのいずれかを介して導入され得る。成分は、所望の時間インキュベートされ、そして蛍光シグナルが、FCS読み取り機(例えば、Evotec/Zeiss Confocor(単一光子計数デバイスまたは二重光子計数デバイス))を使用してフローチャンバ中で直接分析され得る。
FRETアッセイは、本明細書中に開示されるデバイスを使用して、多数のリガンド−レセプター相互作用を実行するために利用され得る。例えば、FRETペプチドレポーターは、リンカー配列(リン酸化部位のようなタンパク質の誘導性ドメインに対応する)を、青にシフトしたGFP改変体からおよび赤にシフトしたGFP改変体から構成される蛍光タンパク質をコードするベクター中に導入することによって構築され得る。このベクターは、細菌発現ベクター(生化学的研究のために)または哺乳動物発現ベクター(インビボでの研究のために)であり得る。
核レセプターのアッセイはまた、本発明のミクロ流体デバイスを用いて実行され得る。例えば、コアクチベーター/核レセプター相互作用についてのFRETベースのアッセイが実行され得る。特定の例として、このようなアッセイは、以下:(a)CFP(GFP誘導体であるシアン蛍光タンパク質)でタグ化されたレセプターのリガンド結合ドメインと(b)黄色蛍光タンパク質(YFP)でタグ化されたレセプター結合タンパク質(コアクチベーター)との間のFRET相互作用を検出するために実行され得る。
蛍光偏光(FP)は、核レセプター−リガンド置換およびキナーゼ阻害についての高スループットスクリーニング(HTS)アッセイを開発するために利用され得る。FPは、溶液ベースの均質な技術なので、反応成分の固定化も分離も必要としない。一般に、この方法は、このレセプターについての蛍光標識されたリガンドと関連の試験化合物との間の競合を用いることを含む。
多数の異なる細胞レポーターアッセイが、提供されたミクロ流体デバイスで実行され得る。実行され得る1つの一般的な型のレポーターアッセイとしては、細胞レセプターに結合し、そしてレポーター構築物の転写を活性化する細胞内のシグナルもしくはシグナルカスケードの活性化の引き金を引き得る薬剤を同定するために設計されたアッセイが挙げられる。このようなアッセイは、目的の遺伝子の発現を活性化し得る化合物を同定するために有用である。以下に議論されるツーハイブリッドアッセイは、このデバイスを用いて実行され得る、別の主要な群の細胞レポーターアッセイである。このツーハイブリッドアッセイは、タンパク質間の結合相互作用を調査するために有用である。
しばしば、細胞レポーターアッセイは、化合物のライブラリーをスクリーニングするために利用される。一般に、このような方法は、メインフローチャネル中に細胞を導入する工程を包含し、その結果、細胞は、メインフローチャネルと分枝チャネルとの間の交差点に位置するチャンバ中に保持される。次いで、(例えば、ライブラリー由来の)異なる試験薬剤が、異なる分枝チャネルに導入され得、ここで、この試験薬剤は、チャンバにおいて細胞と混合される。あるいは、細胞は、メインフローチャネルを介して導入され得、次いで分枝チャネルへと移され、ここで細胞は、保持領域中で保存される。一方、異なる試験化合物は、異なる分枝フローチャネルに導入され、メインフローチャネルと分枝フローチャネルとの交差点に位置するチャンバを、通常少なくとも部分的に満たす。保持領域に保持される細胞は、適切なバルブを開くことによって放出され得、そして細胞は、異なる試験化合物との相互作用のためにチャンバに移る。一旦細胞と試験化合物とが混合されると、得られた溶液は、保持空間に戻されるか、またはレポーター発現の検出のために検出区画に輸送される。細胞および試験化合物は、必要に応じて、上記の設計のミキサーを使用してさらに混合およびインキュベートされ得る。
遺伝子発現を誘発し得る化合物を同定するために化合物のスクリーニングにおいて利用される細胞は、代表的に、目的のレセプターを発現し、そして異種レポーター構築物を保有する。このレセプターは、レセプターへのリガンドの結合の際に遺伝子の転写を活性化するレセプターである。レポーター構築物は、通常、転写制御エレメントおよびこの転写制御エレメントに作動可能に連結したレポーター遺伝子を含むベクターである。この転写制御エレメントは、調査中のレセプターへのリガンドの結合の際に生じる細胞内シグナルに対して応答性の遺伝的エレメント(例えば、転写因子)である。レポーター遺伝子は、検出可能な転写産物または翻訳産物をコードする。しばしば、レポーター(例えば、酵素)は、ミクロ流体デバイスに関連する検出器によって検出され得る光学的シグナルを生じ得る。
広範な種々のレセプター型がスクリーニングされ得る。これらのレポーターは、しばしば、細胞表面レセプターであるが、但し、スクリーニングされている試験化合物が、細胞に侵入し得る場合は、細胞内レポーターもまた調査され得る。調査され得るレポーターの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イオンチャネル(例えば、カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル、カリウムチャネル)、電位依存性イオンチャネル、リガンド依存性イオンチャネル(例えば、アセチルコリンレセプターおよびGABA(γ−アミノ酪酸)レセプター)、増殖因子レセプター、ムスカリン性レセプター、グルタミン酸レセプター、アドレナリン作用性レセプター、ドパミンレセプター。
実行され得る別の一般的分類の細胞アッセイは、ツーハイブリッドアッセイである。一般に、ツーハイブリッドアッセイは、多くの真核生物転写因子が、別個のDNA結合ドメインおよび別個の転写活性化ドメインを含むという事実を利用して、2つの異なるハイブリッドタンパク質または融合タンパク質の間の相互作用を検出する。従って、ツーハイブリッドアッセイにおいて使用される細胞は、2つの融合タンパク質をコードする構築物を含む。これら2つのドメインは、特定の条件下で潜在的に互いに相互作用し得る別個の結合タンパク質と融合される。ツーハイブリッドアッセイの実行において利用される細胞は、その発現が2つの融合タンパク質間の相互作用または相互作用の欠如のいずれかに依存するレポーター遺伝子を含む。
上記のアッセイに加えて、細胞膜電位についてアッセイするための種々の方法が、本明細書中に開示されるミクロ流体デバイスを用いて実行され得る。一般に、膜電位およびイオンチャネル活性をモニタリングするための方法は、2つの代替的方法を使用して測定され得る。1つの一般的アプローチは、細胞内のイオン濃度のバルク変化を測定するために、蛍光イオンシェルターを使用することである。第二の一般的アプローチは、膜電位に感受性のFRET色素を使用することである。
本明細書中に開示されるミクロ流体デバイスは、細胞増殖をモニタリングするための種々の異なるアッセイを実行するために利用され得る。このようなアッセイは、種々の異なる研究において利用され得る。例えば、細胞増殖アッセイは、例えば、毒物学的分析において利用され得る。細胞増殖アッセイはまた、腫瘍を含む種々の細胞増殖障害の処置のための化合物をスクリーニングする際に、価値を有する。
本明細書中に開示されるミクロ流体デバイスは、毒性条件を同定するため、潜在的な毒性について薬剤をスクリーニングするため、毒性傷害に対する細胞応答を調査するため、そして細胞死についてアッセイするために設計された種々の異なるアッセイを実行するために利用され得る。種々の異なるパラメータが、毒性を評価するためにモニタリングされ得る。このようなパラメータの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:細胞増殖、遺伝子またはタンパク質の発現分析によって毒物学的応答のための細胞経路の活性化をモニタリングすること、DNA断片化;細胞膜の組成の変化、膜透過性、死レセプターの成分または下流のシグナル伝達経路(例えば、カスケード)の活性化、一般的ストレス応答、NF−κB活性化およびマイトジェンに対する応答。関連のアッセイを、アポトーシス(プログラムされた細胞死プロセス)および壊死についてアッセイするために使用する。
種々の微生物細胞を異なる試験化合物に接触させることによって、抗菌アッセイを実施するために、本明細書中に提供されるデバイスをまた利用し、それによって、潜在的抗菌化合物を同定し得る。用語「微生物」は、本明細書中で使用する場合、任意の顕微鏡的および/または単細胞の真菌、任意の細菌または任意の原生動物をいう。いくつかの抗菌アッセイは、細胞ケージ中に細胞を保持する工程、およびこの細胞を少なくとも1つの潜在的抗菌化合物と接触させる工程を包含する。化合物の効果は、細胞の健康および/または代謝における何らかの検出可能な変化として検出され得る。このような変化の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:成長、細胞増殖、細胞分化、遺伝子発現、細胞分裂などにおける変化。
本明細書中で提供される特定のミクロ流体デバイスは、標的核酸中の多型部位に存在するヌクレオチドを同定するために、ミニ配列決定反応またはプライマー伸長反応を実行するために利用され得る。一般に、これらの方法において、標的核酸のセグメントと相補的なプライマーは、この反応が多型部位のヌクレオチドと相補的なヌクレオチドの存在下で実行される場合、伸長する。しばしば、このような方法は、単一塩基対伸長(SBPE)反応である。このような方法は、代表的に、プライマーの3’末端が、多型部位に直接隣接するか、または多型部位の数塩基上流であるように、相補的標的核酸にプライマーをハイブリダイズさせる工程を包含する。この伸長反応は、1以上の標識された伸長不能なヌクレオチド(例えば、ジデオキシヌクレオチド)およびポリメラーゼの存在下で実行される。プライマーの3’末端への伸長不能なヌクレオチドの組込みは、一旦その伸長不能なヌクレオチドがプライマーの3’末端に組み込まれると、ポリメラーゼによるプライマーのさらなる伸長を防止する。
上記の方法に関して、本発明のデバイスはまた、当該分野において十分確立されている増幅技術を使用して、複数のサンプル中の標的核酸を増幅し、引き続いて同定するために利用され得る。一般に、このような方法は、標的核酸を潜在的に含むサンプルを、この標的核酸に特異的にハイブリダイズする順方向プライマーおよび逆方向プライマーと接触させる工程を包含する。この反応は、プライマー配列を伸長させるために、4種全てのdNTPおよびポリメラーゼを含む。
本発明に従うミクロ流体デバイスを製造する方法の実施形態は、ガラス基材の上表面をエッチングして複数のウェルを作製する工程、下表面が、パターン凹部を有するようにエラストマーブロックを成形する工程、パターン凹部がウェルと共に配置されて、それらのウェル間にフローチャネルを形成するように、成形されたエラストマーブロックの下表面を、ガラス基材の上表面と接触して配置する工程、を包含する。
標的物質の結晶を形成するための方法の実施形態は、弾性ミクロ流体デバイスの第一チャンバを第一の所定の容量の標的物質溶液で満たす工程を包含する。弾性ミクロ流体デバイスの第二チャンバは、第二の所定の容量の結晶化剤で満たされる。第一チャンバは、第二チャンバと流体接触するように配置されて、標的物質と結晶化剤との間の拡散を可能にし、その結果、標的物質の環境は、結晶の形成を引き起こすように変化する。
本発明を、その特定の実施形態を参照して、本明細書中で記載してきたが、許容範囲内の改変、種々の変化および置換が、上記の開示において意図され、そしていくつかの例において、本発明のいくつかの特徴は、示されたような本発明の範囲から逸脱することなく、他の特徴の対応する使用なしに使用されることが理解される。従って、本発明の本質的な範囲および精神から逸脱することなく、本発明の教示に対して、特定の状況または材料を適応するために多くの改変がなされ得る。本発明は、本発明を実行するために意図された最良の様式として開示された特定の実施形態に限定されないが、本発明は、特許請求の範囲内に入る全ての実施形態および等価物を含むことが意図される。