(発明の詳細な説明)
(I.微細製作(microfabrication)の概説)
以下の考察は、米国特許出願09/826,585号(2001年4月6日出願)、同第09/724,784号(2000年11月28日出願)、および同第09/605,520号(2000年6月27日出願)に一般的に記載される、エラストマー材料を利用した、微細製作された流体デバイスの形成に関する。これらの特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
(1.製造方法)
本発明の例示的な製造方法を本明細書中に提供する。本発明は、これらの方法のうちの1つまたは他のものによる製造に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、本発明の微細構造の他の適切な製造方法(本発明を改変することを含む)もまた意図される。
図1〜図7Bは、本発明の微細構造(これは、ポンプまたはバルブとして用いられ得る)の第一の好ましい製造方法の連続工程を図示する。図8〜図18は、本発明の微細構造(これもまた、ポンプまたはバルブとして用いられ得る)の第二の好ましい製造方法の連続工程を図示する。
説明するように、図1〜図7Bの好ましい方法は、集められて結合される事前硬化エラストマー層を用いることを含む。代替方法では、エラストマーの各層は、「適所で」硬化され得る。以下の説明では、「チャネル」とは、エラストマー構造中の、流体または気体の流れを含み得る溝をいう。
図1を参照して、第一の微細加工鋳型10が提供される。微細加工鋳型10は、多数の従来のシリコン加工方法(写真平板、イオンミリングおよび電子ビームリソグラフィーを含むがこれらに限定されない)によって製造され得る。
見られ得るように、微細加工鋳型10は、それに沿って延びる、隆起線または突出部11を有する。第一エラストマー層20は、示されるように、第一溝21(溝22は、突出部11に寸法が対応する)が、エラストマー層20の下表面に形成されるように、鋳型10の上部に鋳造される。
図2に見られ得るように、それに沿って延びる隆起した突出部13を有する第二の微細加工鋳型12もまた提供される。第二エラストマー層22は、溝23が、突出部13の寸法に対応するその下表面に形成されるように、示されるように、鋳型12の上部に鋳造される。
図3および図4に図示した連続工程において見られ得るように、次いで、第二エラストマー層22は鋳型12から取り出され、そして第一エラストマー層20の上部に配置される。見られ得るように、第二エラストマー層22の下表面に沿って延びる溝23は、フローチャネル32を形成する。
図5を参照して、次いで、別個の第一エラストマー層20および第二エラストマー層22(図4)は、一緒に結合されて、一体型(すなわち、モノリシック)エラストマー構造24が形成される。
図6および図7Aの連続工程において見られ得るように、次いで、エラストマー構造24は、鋳型10から取り出され、そして平面基板14の上部に配置される。図7Aおよび図7Bにおいて見られ得るように、エラストマー構造24がその下表面で平面基板14に対してシールされた場合、溝21は、フローチャネル30を形成する。
本発明のエラストマー構造は、ほぼ任意の平滑平面基板と可逆的気密シールを形成する。このようにしてシールを形成することに対する利点は、エラストマー構造が、はがされ得、洗浄され得、そして再使用され得ることである。好ましい局面では、平面基板14はガラスである。ガラスを使用することのさらなる利点は、ガラスは透明であって、エラストマーチャネルおよびレザバの光学的な取り調べ(optical interrogation)を可能にすることである。あるいは、エラストマー構造は、上記と同じ方法によって平坦なエラストマー層へと結合されて、永続的かつ高強度の結合を形成し得る。これは、より高い背圧が用いられる場合の利点を証明し得る。
図7Aおよび図7Bにおいて見られ得るように、フローチャネル30およびフローチャネル32は好ましくは、フローチャネル30の上部をフローチャネル32の下部と分離する、基板24の小さな膜25と、互いにある角度で配置される。
好ましい局面では、平面基板14はガラスである。ガラスを用いることの利点は、本発明のエラストマー構造がはがされ得、洗浄され得、そして再使用され得ることである。ガラスを用いることのさらなる利点は、光学検知が用いられ得ることである。あるいは、平面基板14は、より高い背圧が用いられる場合、有益であると判明し得る、エラストマー自体であり得る。
ここに記載した製造方法は、デバイスのチャネルの壁を形成する材料とは異なるエラストマー材料から構成される膜を有する構造を形成するように改変され得る。この異なる製造方法を図7C〜図7Gに図示する。
図7Cを参照して、第一微細加工鋳型10が提供される。微細加工鋳型10は、それに沿って延びた、隆起線または突出部11を有する。図7Dでは、第一エラストマー層20は、第一エラストマー層20の上部が隆起線または突出部11の上部で洗い流されるよう
に、第一の微細加工鋳型10の上部に鋳造される。これは、鋳型10上に吐出されるエラストマー材料の容積を、隆起線11の既知の高さに対して、注意深く制御することによって達成され得る。あるいは、所望の形状が、射出成形によって形成され得る。
図7Eでは、それに沿って延びた隆起した突出部13を有する第二の微細加工鋳型12もまた提供される。第二エラストマー層22は、溝23が、突出部13の寸法に対応するその下表面に形成されるように、示されるように第二鋳型12の上部に鋳造される。
図7Fでは、第二エラストマー層22は、鋳型12から取り出され、そして第三エラストマー層222の上部に配置される。第二エラストマー層22は、第三エラストマー層20に結合されて、以下に詳細に記載される技術を用いて、一体型エラストマーブロック224が形成される。このプロセスのこの点では、隆起線13によって以前は占められていた溝23が、フローチャネル23を形成する。
図7Gでは、エラストマーブロック224は、第一微細加工鋳型10および第一エラストマー層20の上部に配置される。次いで、エラストマーブロックおよび第一エラストマー層20は一緒に結合されて、別のエラストマー層222から構成される膜を有する一体型(すなわち、モノリシック)エラストマー構造24を形成する。
エラストマー構造24が、その下表面で、図7Aに関して上記で記載した様式で平面基板にシールされている場合、隆起線11によって以前占められていた溝は、フローチャネル30を形成する。
図7C〜図7Gに関連して上記で図示した別の製造方法は、膜部分が、その構造の残部のエラストマー材料とは別の材料から構成されるのを可能にするという利点を提供する。これは、重要である。なぜなら、膜の厚さおよび弾性特性は、デバイスの操作において重要な役割を果たすからである。さらに、この方法は、別のエラストマー層が、エラストマー構造に取り込まれる前にコンディショニングに容易に供されるのを可能にする。以下に詳細に考察するように、潜在的に望ましい条件の例としては、膜の作動および/またはその弾性を変更するための膜へのドーパントの導入を可能にする磁気伝導種または電気伝導種の導入が挙げられる。
上記の方法は、微細加工鋳型の上部での複製成形によって形成される種々の成形エラストマー層を形成することに関して例示されたが、本発明は、この技術に限定されない。他の技術を用いて、一緒に結合されるべき成形エラストマー材料の個々の層を形成し得る。例えば、エラストマー材料の成形層は、レーザー切断もしくは射出成形によって、または第二の例示的な方法に関連して以下に考察されるとおりの化学エッチングおよび/もしくは犠牲材料を利用する方法によって、形成され得る。
代替的な方法は、エラストマー材料内にカプセル化されたフォトレジストの現像を利用する、パターン形成エラストマー構造を製造する。しかし、本発明による方法は、フォトレジストを利用することに限定されない。他の材料(例えば、金属)もまた、周囲のエラストマー材料に対して選択的に除去されるべき犠牲材料として役立ち得、そしてこの方法は、本発明の範囲内にある。例えば、金金属は、適切な化学混合物を利用してRTV 615エラストマーに対して選択的にエッチングされ得る。
(2.層およびチャネルの寸法)
微細製作されたとは、本発明の実施形態に従って製造されたエラストマー構造の特徴の大きさをいう。一般に、微細製作された構造の少なくとも1つの寸法におけるバリエーションは、ミクロンレベルまで制御され、少なくとも1つの寸法は、微視的(すなわち、1000μm未満)である。微細製作は代表的に、顕微鏡レベルの特徴寸法を生じるために設計された、半導体またはMEMS製造技術(例えば、写真平板および回転被覆(spincoating))を含み、微細製作された構造の寸法の少なくともいくつかは、この構造を合理的に解明/画像化するために顕微鏡を必要とする。
好ましい局面では、フローチャネル30、32、60および62は好ましくは、約10:1の幅:深さ比を有する。本発明の実施形態に従った幅:深さ比の他の範囲の非限定的リストは、0.1:1〜100:1、より好ましくは1:1〜50:1、より好ましくは2:1〜20:1、そして最も好ましくは3:1〜15:1である。例示的な局面では、フローチャネル30、32、60および62は、約1〜1000ミクロンの幅を有する。本発明の実施形態に従ったフローチャネルの幅の他の範囲の非限定的リストは、0.01〜1000ミクロン、より好ましくは0.05〜1000ミクロン、より好ましくは0.2〜500ミクロン、より好ましくは1〜250ミクロン、そして最も好ましくは10〜200ミクロンである。例示的なチャネル幅としては、以下が挙げられる:0.1μm、1μm、2μm、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μmおよび250μm。
フローチャネル30、32、60および62は、約1〜100ミクロンの深さを有する。本発明の実施形態に従ったフローチャネルの深さの他の範囲の非限定的リストは、0.01〜1000ミクロン、より好ましくは0.05〜500ミクロン、より好ましくは0.2〜250ミクロン、そしてより好ましくは1〜100ミクロン、より好ましくは2〜20ミクロン、そして最も好ましくは5〜10ミクロンである。例示的なチャネル深さとしては、以下が挙げられる:0.01μm、0.02μm、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、7.5μm、10μm、12.5μm、15μm、17.5μm、20μm、22.5μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、および250μm。
これらのフローチャネルは、上記で与えたこれらの特定の寸法範囲および例に限定されず、そして、図27に関連して以下に詳細に考察したとおりに膜を反らせるために必要な大きさの力に影響を与えるために幅が変化し得る。例えば、0.01μmの桁の幅を有する極めて狭いフローチャネルは、以下に詳細に考察したとおり、光学的適用および他の適用において有用であり得る。上記よりもさらに大きな幅のチャネルを有する部分を含むエラストマー構造もまた、本発明によって意図され、そしてこのようなより幅の広いフローチャネルを利用する適用の例としては、流体レザバおよびチャネル構造の混合が挙げられる。
これらのエラストマー層は、機械的安定性のために厚く鋳造され得る。例示的な実施形態では、図1のエラストマー層22は、50ミクロン〜数センチメートルの厚さであり、そしてより好ましくは約4mmの厚さである。本発明の他の実施形態に従ったエラストマー層の厚さの範囲の非限定的リストは、約0.1ミクロン〜10cm、1ミクロン〜5cm、10ミクロン〜2cm、100ミクロン〜10mmの間である。
従って、図7Bの、フローチャネル30とフローチャネル32とを分離する膜25は、約0.01ミクロンと約1000ミクロンとの間、より好ましくは0.05〜500ミクロン、より好ましくは0.2〜250、より好ましくは1〜100ミクロン、より好ましくは2〜50ミクロン、そして最も好ましくは5〜40ミクロンの間の代表的厚さを有する。その結果、エラストマー層22の厚さは、エラストマー層20の厚さの約100倍である。例示的な膜の厚さとしては、以下が挙げられる:0.01μm、0.02μm、0.03μm、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、5μm、7.5μm、10μm、12.5μm、15μm、17.5μm、20μm、22.5μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、400μm、500μm、750μm、および1000μm。
(3.ソフトリソグラフィー結合)
好ましくは、エラストマー層は、パターン形成エラストマー層を含むポリマーに固有である化学を用いて化学的に一緒に結合される。最も好ましくは、結合は、二成分「添加硬化(addition cure)」結合を含む。
好ましい局面では、エラストマーの種々の層は、層が異なる化学的性質を有する不均一結合で一緒に結合される。あるいは、全ての層が同じ化学的性質のものである均一結合が用いられ得る。第三に、それぞれのエラストマー層は、必要に応じて、その代わりに、接着剤によって一緒に貼り付けられ得る。第四の局面では、エラストマー層は、加熱によって一緒に結合される熱硬化性エラストマーであり得る。
均一結合の1つの局面では、エラストマー層は、同じエラストマー材料から構成され、1つの層における同じ化学実体は、他の層における同じ化学実体と反応して、これらの層を一緒に結合する。1つの実施形態では、同様のエラストマー層のポリマー鎖の間の結合は、光、熱または別個の化学種との化学反応に起因した架橋剤の活性化から生じ得る。
あるいは、不均質な局面では、エラストマー層は、異なるエラストマー材料から構成され、1つの層における第一の化学実体は、別の層における第二の化学実体と反応する。1つの例示的な不均一局面では、それぞれのエラストマー層を一緒に結合するために用いられる結合プロセスは、RTV 615シリコーンの2つの層を一緒に結合することを含み得る。RTV 615シリコーンは、二部添加硬化シリコーンゴムである。A部は、ビニル基および触媒を含む;B部は、水素化ケイ素(Si−H)基を含む。RTV 615についての従来の比は、10A:1Bである。結合に関して、1つの層は、30A:1B(すなわち、過剰なビニル基)で作製され得、そして他方は、3A:1B(すなわち、過剰なSi−H基)で作製され得る。各層は、別々に硬化される。この2つの層を接触させて、高温で加熱した場合、これらは、不可逆的に結合して、モノリシックエラストマー基板を形成する。
本発明の例示的な局面では、Sylgard 182、184もしくは186、または脂肪族ウレタンジアクリレート(例えば、UCB ChemicalからのEbecryl 270またはIrr 245(しかしこれらに限定されない))を利用して、エラストマー構造が形成される。
本発明に従った1つの実施形態では、純粋なアクリレート化Urethane Ebe
270から2層エラストマー構造を製造した。薄い下層を、8000rpmで15秒間、170℃で回転被覆した。上層および下層を、Electrolite corporationによって製造されるModel ELC 500デバイスを利用して、紫外光下で窒素下にて10分間、最初に硬化させた。次いで、組立てられた層を、さらに30分間かけて硬化させた。反応は、Ciba−Geigy Chemicalsによって製造されたIrgacure 500の0.5% vol/vol混合物によって触媒された。得られたエラストマー材料は、中程度の弾性およびガラスへの接着を示した。
本発明に従った別の実施形態では、2層エラストマー構造は、薄い下層については25% Ebe 270/50% Irr245/25%イソプロピルアルコール、そして上層としての純粋なアクリレート化Urethane Ebe 270の組合せから製造された。薄い下層を、紫外光下で窒素下にて、Electrolite corporationによって製造されるModel ELC 500デバイスを利用して、最初に5分間かけて硬化させ、そして上層を最初に10分間かけて硬化させた。次いで、組立てられた層を、さらに30分間かけて硬化させた。反応は、Ciba−Geigy Chemicalsによって製造されたIrgacure 500の0.5% vol/vol混合物によって触媒された。得られたエラストマー材料は、中程度の弾性を示し、そしてガラスへ接着した。
あるいは、例えば、接触して配置した場合にエラストマー層/基板が結合するように、プラズマ曝露によってエラストマー表面を活性化することを含め、他の結合方法を用い得る。例えば、同じ材料から構成されるエラストマー層を一緒に結合するための1つの可能なアプローチは、本明細書中に参考として援用される、Duffyら,「Rapid Prototyping of Microfluidic Systems in Poly(dimethylsiloxane)」、Analytical Chemistry(1998),70,4974−4984によって示される。この論文は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)層を酸素プラズマに曝露することが、表面の酸化を引き起こし、2つの酸化層が接触するように配置された場合、不可逆的結合が生じると考察する。
エラストマーの連続層を一緒に結合するためのなお別のアプローチは、未硬化エラストマーの接着特性を利用することである。特に、未硬化のエラストマー(例えば、RTV 615)の薄層は、第一の硬化エラストマー層の上部に適用される。次に、第二の硬化エラストマー層は、未硬化のエラストマー層の上部に配置される。次いで、未硬化のエラストマーの薄い中間層を硬化させて、モノリシックエラストマー構造が生成される。あるいは、未硬化のエラストマーは、第一の硬化エラストマー層の下に適用され得、第一の硬化エラストマー層は、第二の硬化エラストマー層の上に配置される。ここでも、中間の薄いエラストマー層を硬化させることは、モノリシックエラストマー構造の形成をもたらす。
犠牲層のカプセル化を用いて、エラストマー構造を製造する場合、連続エラストマー層の結合は、予め硬化されたエラストマー層およびその上にパターン形成された任意の犠牲材料上に未硬化のエラストマーを注ぐことによって達成され得る。エラストマー層間の結合は、未硬化のエラストマー層のポリマー鎖と硬化エラストマー層のポリマー鎖との相互浸透および反応に起因して生じる。エラストマー層のその後の硬化は、エラストマー層の間に結合を作製し、そしてモノリシックエラストマー構造を作製する。
図1〜図7Bの第一方法を言及して、第一エラストマー層20は、微細製作された鋳型12にRTV混合物を2000rpmで30秒間にわたって回転被覆して、約40ミクロンの厚みを生じることによって作製され得る。第二エラストマー層22は、微細製作された鋳型11上にRTV混合物を回転被覆することによって作製され得る。層20および層22は両方とも、約80℃で1.5時間かけて別々に焼かれ得るかまたは硬化され得る。第二エラストマー層22は、第一エラストマー層20上に約80℃で約1.5時間かけて結合され得る。
微細加工鋳型10および12は、シリコンウェーハ上のパターン形成フォトレジストであり得る。例示的な局面では、Shipley SJR 5740フォトレジストを、2000rpmで回転させ、マスクとして高解像度の透明フィルムを用いてパターン形成され、次いで現像されて、約10ミクロンの高さの逆チャネルが得られた。約200℃で約30分間かけて焼かされた場合、フォトレジストは再度流動し、そして逆チャネルが丸くなる。好ましい局面では、鋳型は、シリコーンゴムの接着を防止するために、各使用の前にトリメチルクロロシラン(TMCS)蒸気で約1分間かけて処理され得る。
(4.適切なエラストマー材料)
Allcockら、Contemporary Polymer Chemistry、第2版は、エラストマーを、それらのガラス転移温度と液化温度との間の温度で存在するポリマーとして一般的に記載する。エラストマー材料は、弾性特性を示す。なぜなら、ポリマー鎖は、力に応答して骨格鎖のほぐれを可能にするねじれ運動を容易に受け、この力の非存在下では骨格鎖は巻き戻されて以前の形状をとるからである。一般に、エラストマーは、力がかけられた場合に変形するが、次いで、その力が取り除かれたときはその元の形状に戻る。エラストマー材料によって示される弾性は、ヤング率によって特徴付けられ得る。約1Pa〜1TPaの間、より好ましくは約10Pa〜100GPaの間、より好ましくは約20Pa〜1GPaの間、より好ましくは約50Pa〜10MPaの間、そしてより好ましくは約100Pa〜1MPaの間のヤング率を有するエラストマー材料は、本発明に従って有用であるが、これらの範囲外のヤング率を有するエラストマー材料もまた、特定の適用の必要性に依存して利用され得る。
本発明のシステムは、広範な種々のエラストマーから製造され得る。例示的な局面では、エラストマー層は、好ましくはシリコーンゴムから製造され得る。しかし、他の適切なエラストマーもまた使用され得る。
本発明の例示的な局面では、本発明のシステムは、エラストマーポリマー(例えば、GE RTV 615(調合物)(ビニルシラン架橋(型)シリコーンエラストマー(ファミリー))から製造される。しかし、本発明のシステムは、この1つの処方にも、型にも、このファミリーのポリマーにさえ制限されない;むしろ、ほぼ任意のエラストマーポリマーが適切である。本発明のミクロバルブの製造の好ましい方法についての重要な必要条件は、複数の層のエラストマーを一緒に結合する能力である。複数層ソフトリソグラフィーの場合、エラストマーの層を別々に硬化させ、次いで一緒に結合させる。このスキームは、硬化された層が、一緒に結合するに充分な反応性を有することを必要とする。いずれかの層は、同じ型のものであり得、そしてそれら自体を結合し得るか、または2つの異なる型のものであり得、そして互いに結合し得る。他の可能性としては、層の間での接着剤の使用および熱硬化性エラストマーの使用が挙げられる。
ポリマーの化学的性質、前駆体、合成方法、反応条件および潜在的添加剤の途方もなく大きな多様性を考慮すると、モノリシックエラストマーミクロバルブおよびポンプを作製するために用いられ得る、莫大な数の可能なエラストマーシステムが存在する。用いられる材料におけるバリエーションは、特定の材料の特性(すなわち、溶剤耐性、剛性、気体透過性または温度安定性)についての必要性によって支配される可能性が最も高い。
非常に多くの種類のエラストマーポリマーが存在する。比較的「標準的な」ポリマーを用いてさえ、結合についての多くの可能性が存在することを示すことを意図して、最も一般的なクラスのエラストマーの簡単な説明を本明細書中に提示する。一般的なエラストマーポリマーとしては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ポリウレタン、およびシリコーンが挙げられる。
(ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン:)
ポリイソプレン、ポリブタジエン、およびポリクロロプレンは全て、ジエンモノマーから重合され、それゆえ、重合した場合に1つのモノマーあたり1つの二重結合を有する。この二重結合は、このポリマーが、加硫(本質的に、硫黄を用いて、加熱によって二重結合の間に架橋が形成される)によってエラストマーへと変換されるのを可能にする。これは、層の不完全な加硫によって均一な複数層ソフトリソグラフィーが結合されるのを容易に可能にする;フォトレジストカプセル化は、類似の機構によって可能である。
(ポリイソブチレン:)
純粋なポリイソブチレンは、二重結合を有さないが、エラストマーとして使用するために、少量(約1%)のイソプレンを重合時に含めることによって架橋される。イソプレンモノマーは、ポリイソブチレン骨格にペンダント二重結合を与え、次いで、これは、上記のとおりに加硫され得る。
(ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン):)
ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)は、活発(living)アニオン重合(すなわち、反応中に天然の鎖終結工程は存在しない)によって生成され、それゆえ、「活発な」ポリマー末端が、硬化したポリマー中に存在し得る。これにより、このポリマーは、本発明のフォトレジストカプセル化システムについての天然の候補となり、ここで、硬化した層の上に注がれた液体層中に多数の未反応モノマーが存在する。不完全硬化は、均一な複数層ソフトリソグラフィー(AとAとの結合)を可能にする。この化学的性質もまた、(不均質な複数層ソフトリソグラフィーについては)過剰なブタジエンおよびカップリング剤を有する1つの層(「A」)およびブタジエン不足を有する他の層(「B」)が作製されるのを容易にする。SBSは、「熱硬化性エラストマー」であり、特定の温度より上では、これが溶けて(弾性とは対照的に)可塑性になり;温度を下げると、このエラストマーが再度得られることを意味する。従って、層は、加熱によって一緒に結合され得る。
(ポリウレタン)
ポリウレタンは、ジ−イソシアネート(di−isocyanates)(A−A)およびジ−アルコール(di−alcohols)またはジ−アミン(di−amines)(B−B)から生成される;非常に種々のジ−イソシアネートおよびジ−アルコール/アミンが存在するため、異なるタイプのポリウレタンの数は膨大である。しかし、ポリマーのA対Bの性質により、このポリウレタンは、ちょうどRTV 615のように、一方の層において過剰のA−Aを、そして他方の層において過剰のB−Bを使用することにより、不均一多層軟質リゾグラフィーについて有用になる。
(シリコーン)
シリコーンポリマーは、おそらく、最も多くの構造多様性を有し、そしてほとんどが必ず、最多数の市販の処方物を有する。ビニル−(Si−H)架橋のRTV 615(これは不均一多層軟質リゾグラフィーおよびフォトレジストカプセル化の両方を可能にする)は、すでに議論されているが、これは、シリコーンポリマー化学において使用されるいくつかの架橋方法のうちのわずか1つである。
(5.デバイスの操作)
図7Bおよび7Hは、共に、第2のフローチャネルを加圧することにより第1のフローチャネルを閉じることを示し、図7B(対応する図7Aにおけるフローチャネル32を通して切られた前断面図)は、開いている第1のフローチャネル30を示し、図7Hは、第2のフローチャネル32を加圧することにより閉じられた第1のフローチャネル30を示す。
図7Bを参照すると、第1のフローチャネル30および第2のフローチャネル32が示される。膜25は、フローチャネルを分離し、第1のフローチャネル30の上部および第2のフローチャネル32の底部を形成する。見られ得るように、フローチャネル30は、「開いて」いる。
図7Hにおいて見られ得るように、フローチャネル32の加圧(その中に導入された気体または液体のいずれかによって)は、膜25を下向に反らせ、それによりフローチャネル30を通過する流れFを締める。従って、チャネル32内の圧力を変更することにより、直線的に作動可能なバルブシステムが提供され、その結果、フローチャネル30は、膜25を必要に応じて動かすことにより、開閉され得る。(例示目的のみのために、図7Gのチャネル30は、「完全に閉じられた」位置ではなく「ほとんど閉じられた」位置で示される。)
このようなバルブは、チャネル自体のルーフを移動(すなわち、膜25を移動)させることにより作動されるので、この技術により製造されるバルブおよびポンプは、正確にゼロの死容積を有し、そしてこの技術により作製される切り換えバルブは、バルブの有効容積にほぼ等しい死容積(例えば、約100×100×10μm=100pL)を有する。膜を移動することにより消費されるこのような死容積および面積は、公知の従来のマイクロバルブよりも約2オーダー小さい。より小さいバルブおよび切り換えバルブならびにより大きいバルブおよび切り換えバルブが、本発明において意図され、そして死容積の範囲の非限定的な列挙としては、1aL〜1μL、100aL〜100nL、1fL〜10nL、100fL〜1nL、および1pL〜100pLが挙げられる。
本発明に従うポンプおよびバルブにより送達され得る非常に小さい容積は、実質的な利点を示す。詳細には、手動で測定可能な流体の最小の既知の容積は、約0.1μlである。自動化システムにより測定可能な最小の既知の容積は、約10倍大きい(1μl)。本発明に従うポンプおよびバルブを使用すると、10nl以下の液体の容積が、慣用的に測定され得、そして分配され得る。本発明により可能にされる非常に小さい容積の流体の正確な測定は、多数の生物学的用途(診断試験およびアッセイを含む)において非常に価値がある。
式1は、均一な厚みを有する矩形で線形の弾性の等方性のプレートの、適用された圧力による変形の非常に単純化された数学的モデルを表す:
(1)w=(BPb4)/(Eh3)
ここで、
w=プレートの変形;
B=形状係数(長さ対幅、およびプレートの縁部の支持に依存する);
P=適用される圧力;
b=プレートの幅
E=ヤング率;および
h=プレートの厚み。
従って、この非常に単純化された式においてでさえ、圧力に応答するエラストマー膜の変形は、以下の関数である:この膜の長さ、幅および厚み、この膜の可撓性(ヤング率)、ならびに適用される作動力。これらのパラメーターの各々は、本発明に従う特定のエラストマーデバイスの実施の寸法および物理的組成に依存して大きく異なるので、広範な膜の厚みおよび弾性、チャネル幅、および作動力が、本発明によって意図される。
一般的に、膜は均一な厚みを有さず、膜厚は長さおよび幅と比較して小さい必要はなく、そして変形は、この膜の長さ、幅または厚みと比較して小さい必要はないので、すぐ上で示された式は近似に過ぎないことが理解されるべきである。それにもかかわらず、この式は、変形 対 適用される力の所望の応答を達成するために有用なパラメーターを調整するための有用なガイドとしてはたらく。
図8Aおよび8Bは、100μm幅の第1のフローチャネル30、および50μm幅の第2のフローチャネル32についてのバルブ開口 対 適用される圧力を例示する。このデバイスの膜を、約30μmの厚みおよび約750kPaのヤング率を有するGeneral Electric Silicones RTV 615の層により形成した。図21aおよび21bは、バルブの開口の程度が適用される圧力の範囲のほとんどにわたって実質的に直線的であることを示す。
空気圧を、外径0.025インチおよび内径0.013インチのステンレス鋼皮下チューブの25mmの部品に取り付けられた外径0.025インチを有するプラスチックチューブの10cm長の部品を通して、このデバイスの膜に適用した。このチューブを、制御チャネルに対して垂直な方向で、エラストマーブロックに挿入することによって、この制御チャネルと接触させた。空気圧を、Lee Co.製の外部LHDA小型ソレノイドバルブから皮下チューブに適用した。
デバイスを通る材料の流れの制御は、従来、適用される気体圧を使用することが記載されているが、他の流体は使用できなかった。
例えば、空気は、圧縮可能であり、従って、外部ソレノイドバルブによる圧力の適用の時間とこの圧力が膜により経験される時間との間にある程度の有限の遅れを被る。本発明の代替の実施形態において、圧力は、外部供給源から非圧縮可能流体(例えば、水または水硬性油)に適用され得、その結果、膜に適用された圧力のほぼ即時の伝達が生じる。しかし、バルブの移動流体が大きいかまたは制御チャネルが狭い場合、より高い粘度の制御流体が、作動の遅延に寄与し得る。従って、圧力を伝達するために最適な媒体は、特定の用途およびデバイスの構成に依存し、そして気体媒体および液体媒体の両方が、本発明により意図される。
上記のような外部適用圧力は、圧力調整器および外部小型バルブを介してポンプ/タンクシステムにより適用されるが、外部圧力を適用する他の方法(ガスタンク、圧縮機、ピストンシステムおよび液体のカラム)もまた本発明において意図される。例えば、生きた生物内に見出されるような天然に存在する圧力供給源(例えば、血圧、胃圧、能脊髄液に存在する圧力、眼内空間に存在する圧力、および通常の湾曲の間の筋肉により及ぼされる圧力)の使用もまた、意図される。外部圧力を調節する他の方法(例えば、小型バルブ、ポンプ、巨視的蠕動ポンプ、ピンチバルブおよび当該分野で公知の他のタイプの流体調節機器)の使用もまた意図される。
見られ得るように、本発明の実施形態に従うバルブの応答は、最小のヒステリシスで、その移動範囲の大部分にわたってほとんど完全な線形であることが実験的に示されている。従って、本発明のバルブは、ミクロ流体測定および流体制御のために理想的に適している。バルブ応答の線形性は、個々のバルブが、フックの法則のバネとして十分にモデリングされていることを示す。さらに、フローチャネル内の高圧(すなわち、背圧)は、単に作動圧力を増加することによって打ち勝たれ(countered)得る。実験的に、本発明者らは、70kPaの背圧でバルブの閉鎖を達成したが、より高い圧力もまた意図される。以下は、本発明により包含される圧力範囲の非排他的な列挙である:10Pa〜25MPa;100Pa〜10MPa、1kPa〜1MPa、1kPa〜300kPa、5kPa〜200kPa、および15kPa〜100kPa。
バルブおよびポンプは、開閉するために線形作動を必要としないが、線形応答により、バルブは、測定デバイスとしてより容易に使用され得る。本発明の一実施形態において、バルブの開放は、公知の閉鎖の程度まで部分的に作動されることによって、流速を制御するために使用される。線形バルブ作動により、バルブを所望の閉鎖の程度まで閉じるのに必要な作動力の量を決定することが容易になる。線形作動の別の利点は、バルブの作動に必要な力が、フローチャネル内の圧力から容易に決定され得ることである。作動が線形である場合、フローチャネル内の圧力の増加は、同じ圧力(単位面積あたりの力)をバルブの作動部分に加えることにより、打ち勝たれ得る。
バルブの線形性は、構造、組成およびバルブ構造の作動方法に依存する。さらに、線形性がバルブにおける所望の特徴であるか否かは、用途に依存する。従って、線形および非線形の作動可能バルブが、本発明において意図され、そしてバルブが線形作動可能である圧力範囲は、特定の実施形態に伴って変化する。
図9は、上記のように、チップから空気圧式バルブに接続された10cm長の空気チューブを有する100μm×100μm×10μmのRTVマイクロバルブの時間応答(すなわち、適用される圧力の変化に応答する時間の関数としてのバルブの閉鎖)を例示する。
デジタル制御シグナルの2つの期間、チューブの末端における実際の空気圧およびバルブの開口が、図9に示される。制御ラインに適用される圧力は、100kPaであり、これは、バルブを閉鎖するのに必要な約40kPaよりも実質的に高い。従って、閉鎖する場合、バルブは、必要な圧力よりも60kPa高い圧力で、押し閉じられる。しかし、開く場合、バルブは、そのバネ直(40kPa以下)によりその静止位置まで戻される。従って、τcloseは、τopenよりも小さいことが予想される。圧力を制御するために使用される小型バルブの制限に起因して、制御シグナルと制御圧力応答との間のずれもまた存在する。このようなずれをt、1/e時間定数をτと呼ぶと、値は、topen=3.63ms、τopen=1.88ms、tclose=2.15ms、τclose=0.51msである。3つのτの各々が、開閉を可能にする場合、このバルブは、水溶液で満たされた場合、75Hzにおいて最適に作動する。
開口および閉鎖のずれを受けなかった別の作動方法を使用する場合、このバルブは、約375Hzで作動する。膜厚を変えることによってバネ定数が調節され得ることもまた注意のこと。これは、速い開口および速い閉鎖の最適化を可能にする。バネ定数はまた、膜にドーパントを導入することによってまたは膜として働く異なるエラストマー材料を使用することによって(図7C〜7Hと共に上で示される)とおそらく同様に、膜の弾性(ヤング率)を変えることによって調節され得る。
図9に例示されるように、バルブ特性を実験的に測定する場合、バルブの開口を蛍光によって測定した。この実験において、フローチャネルを、緩衝液(pH≧8)中のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)の溶液で満たし、そして、チャネルの中心の約3分の1を占めるある平方面積の蛍光を、10kHzのバンド幅を有する光電子増倍管を備えるエピ蛍光顕微鏡でモニタリングする。この圧力を、ほとんど同じ空気圧式接続を介する制御ラインと同時に加圧される、Wheatstone−bridge圧力センサ(SenSymSCC15GD2)を用いてモニタリングした。
(6.フローチャネルの断面)
本発明のフローチャネルは、必要に応じて、異なる断面サイズおよび形状で設計され得、それらの所望の用途に依存して、異なる利点を与える。例えば、下部フローチャネルの断面形状は、その長さ全体に沿ってかまたは上部交差チャネルの下に配置される領域中に湾曲上部表面を有し得る。このような湾曲上部表面は、以下のように、バルブのシーリングを容易にする。
図10を参照すると、フローチャネル30および32を通る断面図(図7Bの断面図と類似)が示される。見られ得るように、フローチャネル30は、矩形の断面形状である。本発明の代替の好ましい局面において、図10に示されるように、フローチャネル30の断面は、上部湾曲表面を有する。
最初に図10を参照すると、フローチャネル32が加圧される場合、フローチャネル30および32を分離しているエラストマーブロック24の膜部分25は、破線25A、25B、25C、25Dおよび25Eにより示される連続的な部分に向かって下向きに動く。見られ得るように、おそらく、不完全なシーリングが、平面基材14に隣接するフローチャネル30の縁部において生じ得る。
図11の代替の好ましい実施形態において、フローチャネル30aは、湾曲上部壁25Aを有する。フローチャネル32が加圧される場合、膜部分25は、破線25A2、25A3、25A4および25A5により示される連続した位置まで下向きに動き、膜の縁部分は、最初にフローチャネルに向かって動き、次いで、上部膜部分に向かって動く。このような湾曲上部表面を膜25Aにおいて有することの利点は、より完全なシールが、フローチャネル32が加圧される場合に提供されることである。詳細には、フローチャネル30の上部壁は、平面基材14に対して連続的に接触する縁部を提供し、それにより、壁25と図10に示されるフローチャネル30の底部との間に見られる接触の「島(island)」を回避する。
湾曲上部フローチャネル表面を膜25Aにおいて有することの別の利点は、この膜が、作動に応答して、フローチャネルの形状および容積により容易に適合し得ることである。詳細には、矩形のフローチャネルが用いられる場合、全周囲(2×フローチャネルの高さ+フローチャネルの幅)が、このフローチャネルに押しつけられなければならない。しかし、アーチ形のフローチャネルが使用される場合、材料のより小さい周囲(半円のアーチ形部分のみ)が、このチャネルに押しつけられなければならない。このように、膜は、作動のために周囲の小さい変化しか必要とせず、従って、フローチャネルをブロックするために適用される作動力により応答性である。
代替の局面(図示せず)、フローチャネル30の底部は丸く、その結果、この湾曲した表面は、上記の図20において見られるように、湾曲上部壁25Aと一致する。
まとめると、作動時に膜により受ける実際の構造変化は、特定のエラストマー構造の構成に依存する。詳細には、この構造変化は、膜の長さ、幅および厚みのプロフィール、その残りの構造への付着、フローチャネルおよび制御チャネルの高さ、幅および形状、ならびに使用されるエラストマーの材料特性に依存する。この構造変化はまた、適用される圧力に応答する膜の作動が、磁力または静電力に応答する作動とは幾分か異なる場合に、作動方法に依存する。
さらに、膜における所望の構造変化はまた、エラストマー構造についての特定の用途に依存して変わる。上記の最も単純な実施形態において、バルブは、バルブの閉鎖の程度を制御するために、測定しながら開かれるかまたは閉じられるかのいずれかであり得る。しかし、他の実施形態において、より複雑な流れの調節を達成するために、膜および/またはフローチャネルの形状を変更することが望まれ得る。例えば、このフローチャネルに、膜部分の下の隆起した突出部が設けられ得、その結果、作動時において、この膜は、フローチャネルを通る流れのある割合のみを遮断し、適用された作動力に非感受性の流れの割合がブロックされる。
多くの膜圧プロフィールおよびフローチャネルの断面(矩形、台形、円形、楕円形、放物線形、双曲線形および多角形、ならびに上記の形状の部分を含む)が、本発明によって意図される。より複雑な断面形状(例えば、すぐ上で議論された突出物を有する実施形態
またはフローチャネル中に凹部を有する実施形態)もまた、本発明により意図される。
さらに、本発明は、フローチャネルの壁部および天井部がエラストマーから形成され、そしてこのチャネルの床部が下にある基材から形成されている実施形態と共に、主に上で記載されているが、本発明は、この特定の配向に限定されない。チャネルの壁部および床部はまた、下にある基材中に形成され得、フローチャネルの天井部のみがエラストマーから構築される。このエラストマーフローチャネルの天井部は、適用される作動力に応答して、チャネルに向かって下向きに突出し、それにより、このフローチャネルを通る材料の流れを制御する。一般に、本願の他の場所で記載されるようなモノリシックエラストマー構造は、ミクロ流体用途に好ましい。しかし、このような配置が利点を提供する場合、基材中に形成されたチャネルを用いることが有用であり得る。例えば、光導波管を備える基材が構築され、その結果、この光導波管は、光を、特にミクロ流体チャネルの側面に方向付ける。
(7.相互接続システム)
図12Aおよび12Bは、上記のシステム(例えば、図7Aにおけるシステム)と同一の、単一オン/オフバルブの図を示す。図13Aおよび13Bは、図12において見られるように、複数の単一アドレス可能オン/オフバルブから構成されるが、一緒に相互接続された蠕動ポンプシステムを示す。図14は、図13の蠕動ポンプシステムについての実験的に達成されるポンプ速度 対 振動数を示すグラフである。図15Aはおよび15Bは、単一制御ラインにより制御可能な複数のフローチャネルの概略図を示す。このシステムはまた、一緒に多重化された図12の複数の単一アドレス可能オン/オフバルブから構成されるが、図12のシステムとは異なる配置である。図16は、選択したチャネルを通る流体の流れを可能にするよう適合された多重化システムの概略図であり、これは、一緒に連結または相互接続された、図12の複数の単一オン/オフバルブから構成される。
図12Aおよび12Bを初めに参照すると、フローチャネル30および32の概略が示される。フローチャネル30は、好ましくは、これを通る流体(または気体)の流れFを有する。フローチャネル32(これは、本明細書中ですでに説明されたように、フローチャネル30の上を横切る)は、加圧され、その結果、このフローチャネルを分離する膜25は、説明されたように、フローチャネル30の通路に押し下げられ得、そこを通る流れFの通路を遮断する。このように、「フローチャネル」32はまた、「制御ライン」とも呼ばれ得、これは、フローチャネル30中の単一バルブを作動する。図12〜15において、複数のこのようなアドレス可能バルブが、種々の配置で一緒に連結または相互接続されて、蠕動ポンピング可能なポンプ、および他の流体理論的適用を生成する。
図13Aおよび13Bを参照すると、蠕動ポンピングのためのシステムが、以下のように提供される。フローチャネル30は、その上を通過する複数のほぼ平行なフローチャネル(すなわち、制御ライン)32A、32Bおよび32Cを有する。制御ライン32Aを加圧することによって、フローチャネル30を通る流れFは、制御ライン32Aおよびフローチャネル30の交差部において、膜25Aの下で遮断される。同様に、(図示しないが)制御ライン32Bを加圧することによって、フローチャネル30を通る流れFは、制御ライン32Bおよびフローチャネル30の交差部において膜25Bの下で遮断される。以下同様である。
各制御ライン32A、32Bおよび32Cは個別にアドレス可能である。従って、蠕動は、32Aおよび32Cを一緒に作動させる様式によって作動され得、32Aによって作動され、32Aおよび32Bによって一緒に作動され、32Bによって作動され、32BおよびCによって一緒に作動される、などがある。このことは、継続的な「101、100、110、010、011、001」の様式に一致し、この場合、「0」は「バルブ開」を示し、そして「1」は「バルブ閉」を示す。この蠕動様式はまた、120°様式として知られる(3つのバルブ間の作動のフェーズ角度に関連している)。他の蠕動様式は等価的に可能であり、60°および90°の様式を含む。
本発明者らによって実施された実験において、2.35nL/sのポンプ速度は、作動圧力40kPaの下で100×100×10μmのバルブを有する細管(内径0.5mm)中の1カラムの水が移動する距離を測定することによって、測定される。このポンプ速度は、約75Hzまでの作動周波数に伴って増加し、それから約200Hz以上までほぼ一定であった。バルブおよびポンプはまた、かなり耐久性があり、そしてエラストマー膜も制御チャンネルもボンドも、全く破損が観察されなかった。本発明者らによって実施された実験において、本明細書中に記載される蠕動ポンプの全てのバルブは、400万回以上の作動後に摩耗の徴候も消耗の徴候も全く示さない。これらの耐久性に加えて、これらはまた軟質性でもある。チャンネルを通って汲み出され、そして生存率が試験されたE.coli溶液は、94%の生存率を示した。
図14は、図13の蠕動ポンプシステムについて、実験的に達成された蠕動速度 対 蠕動周波数を示すグラフである。
図15Aおよび図15Bは、図12のアドレス可能な複数のバルブの、別の組み立て方法を図示する。具体的には、複数の並行なフローチャンネル30A、30Bおよび30Cが提供される。フローチャンネル(すなわち、制御ライン)32は、フローチャンネル30A、30Bおよび30Cを横断して通じる。制御ライン32の加圧は、制御ライン32ならびにフローチャンネル30A、30Bおよび30Cの交差部分に位置する膜25A、25Bおよび25Cを押し下げることによって、フローF1、F2およびF3を同時に閉じる。
図16は、以下のように、流体が選択されたチャンネルを通って選択的に流れ得るように適合された、多重化システムの模式図である。膜(例えば、図15Aおよび図15B中の膜25A、25Bおよび25C)上を通過する制御ラインからそれぞれのフローチャンネルを分ける膜の下向きの偏向は、膜の大きさに強く依存する。従って、図15Aおよび15B中のフローチャンネル制御ライン32の幅を変化することによって、制御ラインを複数のフローチャンネルを越えて通過させ得、さらに所望のフローチャンネルのみを作動(すなわち、遮断)させ得る。図16は、以下の通り、このようなシステムの概略図を示す。
複数の並行フローチャンネル30A、30B、30C、30D、30Eおよび30Fは、複数の並行制御ライン32A、32B、32C、32D、32Eおよび32Fの下に配置される。コントロールチャンネル32A、32B、32C、32D、32Eおよび32Fは、上記の任意のバルブシステムを使用して、以下の変形を備える、並行フローチャンネル30A、30B、30C、30D、30Eおよび30Fを通過する流体フローF1、F2、F3、F4、F5およびF6を遮断するように適合される。
各制御ライン32A、32B、32C、32D、32Eおよび32Fは、幅広部分および狭部分の両方を有する。例えば、制御ライン32Aは、フローチャンネル30A、30Cおよび30Eの上方に配置される位置で広がる。同様に、制御ライン32Bは、フローチャンネル30B、30Dおよび30Fの上方に配置される位置で広がり、そして制御ライン32Cは、フローチャンネル30A、30B、30Eおよび30Fの上方に配置される位置で広がる。
それぞれの制御ラインが広がる位置において、その制御ラインの加圧はフローチャンネルと制御ラインとを分ける膜(25)がフローチャンネル内へと有意に押し下げさせて、これによってその場所を通るフローの通過を妨げる。対照的に、それぞれの制御ラインが狭い位置において、膜(25)もまた狭い。従って、同程度の加圧では、膜(25)がフローチャンネル(30)内へ押し下がることを生じない。従って、流体のその場所の通過は、妨げられない。
例えば、制御ライン32Aが加圧される場合、これはフローチャンネル30A、30Cおよび30Eの中のフローF1、F3およびF5を妨げる。同様に、制御ライン32Cが加圧される場合、これはフローチャンネル30A、30B、30Eおよび30Fの中のフローF1、F2、F5およびF6を妨げる。理解され得るように、1本より多い制御ラインは同時に作動され得る。例えば、制御ライン32Aおよび32Cは加圧されて、F4を除く全ての流体フローを同時に妨げる(32AがF1、F3およびF5を妨げ、そして32CがF1、F2、F5およびF6を妨げる)。
異なる制御ライン(32)を、一緒に、そして様々な順序の両方で選択的に加圧することによって、大規模(degree)な流体フローコントロールを達成し得る。さらに、本システムを6より多い並行フローチャンネル(30)および4より多い並行フローチャンネル(32)に拡張することによって、そして制御ラインの幅広領域および狭領域の位置を変化させることによって、非常に複雑な流体フローコントロールシステムを組み立て得る。このようなシステムの特徴は、2(log2n)本のみの制御ラインを有するn本のフローチャンネルのうちの任意の1つのフローチャンネルを作動させることが可能であることである。
(8.切り換え可能なフローアレイ)
なお別の新規な実施形態において、流体の通行は2つの直交方向のどちらか一方に流れるように選択的に導かれ得る。このような「切り換え可能なフローアレイ」システムの例を、図20A〜20Dに提供する。図20Aは、固体支柱92のアレイ(各支柱はその周りにフローチャンネルを通過させる)によって規定されるフローチャンネルグリッドを形成するレセスの様式で底部表面を有する、エラストマー90(または任意の他の適切な基材)の第1層の底面図を示す。
好ましい局面において、エラストマーのさらなる層を、層90の表面上に結合して、その結果、流体フローが方向F1または直行方向F2のどちらかに移動するよう選択的に導かれ得る。図20は、エラストマー95の第2層の底部表面の底面図であり、交互性の「垂直」制御ライン96および「水平」制御ライン94の形に形成されたレセスを示す。「垂直」制御ライン96は、エラストマー層に沿って同じ幅を有するが、一方で「水平」制御ライン94は、示されるように、交互性の幅広部分および狭部分を有する。
エラストマー層95は、エラストマー層90の上方に位置し、その結果、「垂直」制御ライン96は図20C中に示されるように支柱92の上方に配置され、そして「水平」制御ライン94は、図20D中に示されるように、支柱92の間に幅広部分を用いて配置される。
図20C中に示されるように、「垂直」制御ライン96が加圧される場合、領域98において層90と95との間に初期配置されるエラストマー層によって形成される統合構造体の膜は、フローチャンネルのアレイの上方で、下方向に歪められ、その結果、示されるように、流入フロー(flow in)はフロー方向F2(すなわち、垂直方向)でのみ通過し得る。
図20D中に見られ得るように、「水平」制御ライン94が加圧される場合、領域99において層90と95との間に初期配置されるエラストマー層によって形成される統合構造体の膜は、フローチャンネルのアレイの上方で(しかし、それらが最も幅広い領域でのみ)、下方向に歪められ、その結果、示されるように、流入フローはフロー方向F1(すなわち、水平方向)でのみ通過し得る。
図20A〜D中に示される設計によって、切り換え可能なフローアレイが、異なるエラストマー層において制御ライン間に通じる垂直の偏向(vias)を全く必要とせずに、2つのみのエラストマー層から構築され得る。全ての垂直フロー制御ライン94が接続される場合、これらのラインは1つの入力から加圧され得る。すべての水平フロー制御ライン96についても、同じことが成立する。
(9.セルペン/セルケージ)
本発明のなおさらなる適用において、エラストマー構造体を利用して、生物体または他の生物学的な材料を操作し得る。図26A〜26Dは、本発明に従うセルペン構造体の1つの実施形態の平面図を示す。
セルペンアレイ(cell pen array)4400は、直交に配向されたフローチャネル4402のアレイを特徴とし、交互したフローチャネルの交差点にて、細長「ペン」構造4404を有する。バルブ4406が、各ペン構造4404の入口および出口に配置される。蠕動ポンプ構造4408が、各水平フローチャネルおよびセルペン構造を欠く垂直フローチャネル上に配置される。
図26Aのセルペンアレイ4400は、先に区別したセルA〜Hを装填している。図26B〜26Cは、個々に貯蔵されたセルCの、以下の1)〜3)によるアクセスおよび除去を示す:1)隣接したペン4404aおよび4404bのいずれかの側へバルブ4406を操作する、2)水平フローチャネル4402aをポンピングして、セルCとGとを置換する、次いで、3)垂直フローチャネル4402bをポンピングして、セルCを除去する。図26Dは、水平フローチャネル4402aを通る液体の流れの方向を反転させることによって、第二セルGがセルペンアレイ4400の以前の位置に戻ることを示している。
上記のセルペンアレイ4404は、アクセスできるような、選択されたアドレス可能な位置内で材料を貯蔵し得る。しかしながら、細胞のような生存生体は、生存可能なままでいるために、食物の連続的な取り込みおよび廃棄物の排出を必要とし得る。従って、図27Aおよび27Bは、本発明に従うセルケージ構造の1つの実施形態の、それぞれ平面図および(線45B−45B’に沿った)断面図を示す。
セルケージ4500は、基材4505と接触して、エラストマーブロック4503内でフローチャネル4501の細長部分4500aとして形成される。セルケージ4500は、セルケージ4500の端部4500bおよび4500cが内部領域4500aを完全には閉鎖していないことを除いては、図26A〜26Dにおいて上記のような個々のセルペンと類似している。むしろ、ケージ4500の端部4500aおよび4500bは、格納可能な複数のピラー4502により形成されている。ピラー4502は、図21A〜21Jとともに広範に上記したように、通常は閉鎖されたバルブ構造の膜構造体の一部であり得る。
詳細には、コントロールチャネル4504が、ピラー4502を覆っている。コントロールチャネル4504の圧力が減少された場合、エラストマーピラー4502は、コントロールチャネル4504内に上向きに引き込まれ、それによって、セルケージ4500の端4500bが開き、細胞が侵入するのを可能にする。コントロールチャネル4504の圧力が上昇した場合、ピラー4502は、基材4505に対して下向きに緩み、細胞がケージ4500から出るのを防止する。
エラストマーピラー4502は、ケージ4500から細胞が移動するのを防止するのに十分な大きさおよび数のものであるが、貯蔵される細胞を維持するためにケージ内部4500a内への栄養素の流動を可能にするギャップ4508もまた備える。対向する端部4500c上のピラー4502は、第二のコーティングチャネル4506の下に同様に配置され、ケージの開口および所望の細胞の取り出しを可能にする。
図26A〜26Dに示される、例示される直交流チャネルアーキテクチャを使用して、まさに記載されるセルペン以外の機能を達成し得る。例えば、この直交硫チャネルアーキテクチャは、混合適用の際に利用される。
これは、図28A〜Bに示されており、この図は、本発明の別の実施形態に従う微細製作(microfabricated)構造によって達成される混合工程の平面図を示す。詳細には、微細製作混合構造の一部7400は、第二フローチャネル7404と直交しかつこのチャネルと交差した、第一フローチャネル7402を備える。コントロールチャネル7406が、フローチャネル7402および7404を覆い、そして各交差点7412を取り囲むバルブ対7408a〜bおよび7408c〜dを形成する。
図28Aに示されるように、バルブ対7408c〜dをはじめに開放し、他方バブル対7408a〜bを閉めると、流体サンプル7410は、フローチャネル7404を通って交差点7412に流れる。次いで、バルブ対7408a〜bを作動させ、交差点7412にて流体サンプル7410を捕捉する。
次に、図28Bに示されるように、バルブ対7408c〜dを閉じ、7408a〜bおよびを開くと、その結果、流体サンプル7410は、交差点7412から、流体の直交流を運搬する流体チャネル7402内に注入される。図28A〜Bに示されるプロセスは、任意の数の流体サンプルを直交流チャネル7402に正確に分配するように繰り返され得る。
図28A〜28Bに示されるプロセスチャネルフロー注入構造体(process−channel flow injector structure)の実施形態には、単一のジャンクションで交差するチャネルを特徴付けるが、これは、本発明によって必須ではない。したがって、図28Cは、本発明に従った注入構造体の別の実施形態の簡略化した平面図を示し、ここで、交差フローチャネル7452の間のジャンクション7450は、さらなる体積容量を提供することが当然のこととして期待される。図28Dは、本発明に従う注入構造体の更なる実施形態の簡略化した平面図を示し、ここで、交差フローチャネル7462の間の細長ジャンクションは、さらに多くの体積容量を提供する。
図28A〜28Dに接続した上で示したかまたは記載された実施形態が、そのフローチャネル交差の反対側において連結されたバルブを利用するが、これは、本発明にとって必須ではない。他の配置(交差点の隣接したバルブの連結法、または交差点の周囲のバルブの各々の独立した作動法を含む)が、その所望するフロー特徴を提供するために可能である。しかし、その独立バルブの作動アプローチを用いる場合、別個の制御構造体が、各々のバルブについて用いられるので、デバイスレイアウトが複雑化することが認識されるべきである。
図50は、本発明に従った交差フロー注入システムの1つの実施形態にとって注入されたスラグ数に対するLog(R/B)をプロットする。流体抵抗のようなプロセスパラメ
ータからの、交差フロー注入による合流の再現性および相対的独立性は、図51によってさらに明示される。この図51は、種々の流体条件の下での交差チャネルフロー注入の関する注入周期の数に対して注入体積をプロットする。交差フロー注入技術によって計量供給された体積は、注入周期の連続に亘って線形基底に基づいて増加することを示している。体積と注入周期の数との間の線形関係は、流体粘度の上昇(25%グリセロールの添加によって与えられる)およびフローチャネルの長さ(1.0〜2.5cm)のような流体抵抗パラメータから相対的に独立している。
(10.回転混合構造体)
本発明の実施形態に従ったミクロ流体制御およびフローチャネルは、閉回路フローチャネルに流体を循環させる回転ポンプデザインに関し得る。本明細書中で使用される場合、用語「閉回路」とは、当該分野で公知である意味を有し、そして、この用語は、円形である配置および長円体および楕円体のようなそれらのバリエーション、ならびに三角形、長方形またはそれらよりも複雑な形状であるような角を有する流体回路をいう。
図21において示されるように、フローチャネル2100を有する層は、複数のサンプル入口2102、混合Tジャンクション2104、中央循環ループ2106(すなわち、実質的に円形のフローチャネル)、および出口チャネル2108を有している。制御チャネルとフローチャネルとの重ね合わせによって、マイクロバルブが形成され得る。これは、その制御チャネルとフローチャネルが、薄いエラストマー性膜によって分離され、その膜が、そのフローチャネル方向に偏向しているか、それらから収縮され得るからである。
その実質的に円形の中央ループおよびそれと交差している制御チャネルが、その回転ポンプの中心部分を形成している。その実質的に円形のフローチャネルに液体を流すことが引き起こすポンプは、互いに隣接してその実質的に円形の分岐流体チャネル2106(すなわち、中央ループ)に交差する少なくとも3つの制御チャネル2110a〜cのセットからなる。
一連のオン/オフ作動系列(例えば、001、011、010、110、100、101)が、その制御チャネルに適用されるときに、その中央ロープ内の流体は、時計周りまたは反時計周りのいずれかの選択された方向に蠕動的にポンプで注入され得る。蠕動的ポンプ作動によって、そのフローチャネルの内または外側へと、その制御チャネルとフローチャネルを分離している膜の連続的な偏向を生じる。
一般的に、その作動周期が高ければ高いほど、その流体がその中央ループ内で速く回転する。しかし、その周期の上昇が、流速の上昇を生じない飽和点に、ついに、達し得る。これは、主に、その膜が作動不能な位置に戻され得るような速度の限界に起因する。図17A〜17Bにおいて示されるような連結混合デバイスと合わせて以下に記載されるように、種々の技術が、作動する速度上昇とフロー/混合の周期の上昇との関係を維持するために、種々の技術が採用され得る。
図21に示されるシステムは、2つのセットのポンプ(すなわち、実質的に円形のフローチャネルの上に重なる3つの制御チャネルのうちの2つ)を示し、単一のポンプ(すなわち、その実質的に円形のフローチャネルの単一のセット)が使用され得る。さらに、ポンプの各々は3つの制御チャネルを備えるものとして示されるが、様々な数の制御チャネルが、使用され得、交差点を有する単一の蛇行型の制御チャネルが使用され得る。
中央ループと流体連絡している種々の異なる付属的なフローチャネルが、その中央ループからサンプルを導入し、そして、反応溶液を引き抜くために使用され得る。同様に、その中央ループと流体連絡している1以上の出口フローチャネルまたは吹き出し口フローチャネルが、その中央ループから溶液を取り出すために使用され得る。例えば、制御バルブが、その引込口および吹出し口で使用され、その中央ループから溶液が流入することまたは流出することを防止し得る。
フローチャネルのサイズおよび形状は、変化し得る。特定のデバイスにおいて、そのチャネルの直径は、約1mm〜2cmの範囲にある傾向があるが、その直径は、特定のデバイスにおいては著しく大きい(例えば、4cm、6cm、8cm、または10cm)である。その円形フローチャネルの直径がどのくらいまで小さいかという制限は、主に、マルチレイヤーソフトリソグラフィーによることろの限界に関係ある。チャネル幅は、(フローチャネルまたは制御チャネルのいずれにおいても)通常は、約30μmと250μmとの間で変化する。しかし、いくつかのデバイスにおけるチャネル幅は、1μmぐらいの狭さである。大きい幅のチャネルも使用され得るが、一般的チャネルは、そのフローチャネル中になんらかの構造的支持体が必要とされる。チャネル高は、一般に、5μmと50μmとの間で変化する。100μm以下の幅を有するフローチャネルにおいて、そのチャネル高は、1μm以下であり得る。そのフローチャネルは、代表的には、そのチャネルにその膜が偏向したするとそのチャネルの完全な遮断が可能になるように丸められている。いくつかのデバイスにおいては、それらのチャネルは、八角形または六角形のような形状を有する。あるデバイスにおいては、そのフローチャネルは、丸められ、そして、100μm幅かつ10μm高であり、制御チャネルは、100μm幅かつ10μm高である。特定の研究において使用される1つのシステムは、直径2cmを有する中央ループ、100μm幅で10μmの深さを有するフローチャネルを備えている。
それらのチャネルは、代表的には、上述のサイズおよび形状を有しており、本明細書中で提供されるデバイスが、それらのサイズおよび形状に限定されるないことが認識されるべきである。例えば、閉回路フローチャネルで存在する分枝は、その分散を制御する役割を果たし、したがって、その中で流れる物質を混合し得る。
(II.組合せ混合)
上述したような種々のミクロ流体エレメントが、組み合わされて、ミクロ流体チップ上の任意の組合せの流入溶液の正確かつ迅速な混合を可能にするミクロ流体でデバイスを作り上げられ、したがって、比較的少ない基礎成分から多くの異なる溶液の製造を可能にし得る。
(1.組合せ混合構造体)
図17Aは、本発明に従った組合せ混合デバイスの1実施形態の平面図を示す。図17Bは、図17Aの組合せ混合デバイスのある領域の拡大図を示す。
組合せ混合デバイス1700は、フローチャネルネットワーク1702を備え、このフローチャネルネットワーク1702は、緩衝液取り込みフローライン(BF1−BF16)および試薬流入フローライン(RF1−RF16)を備え、分岐した交差フロー注入構造体1704で交差し、これは、順に、その回転混合構造体1706と流体連絡する。
制御チャネルネットワーク1710は、制御ラインC1−C24を備える。制御ラインC1−C8は、緩衝液流入フローラインBF1−BF16と交差して、第1のマルチプレクサ構造体1720をつくり、交差注入器1704への緩衝液の計量供給を管理し得る。
制御ラインC9−C11は、マインフローチャネル1750と相互作用して、交差フロー注入構造体1704へ流し込む役割を担う第1の蠕動ポンプ1752をつくりあげる。試薬が、外圧の影響下で、流入フローラインRF1−RF16を介して流れ込む。
最も右のフローチャネル1755は、別の制御ライン(C12)によって制御され、そして、それらのマルチプレクサ流入口を水/緩衝液で流して、そのチャネル内での相互汚染および不溶性の塩形成を避けるために使用される。この洗浄工程の前に、制御ラインC1−C8内の圧力は、そのポンプ作用を提供するために変化され得る。
具体的には、これらのラインを選択的に作動させることによって、選択したチャネルのみにポンプ作用を与えるか、または全てのチャネルに対して一緒に、同時にポンプ作用を与えることが可能である。さらに、この一連のポンプ作用は、特定の体積の流体を順方向なたは逆方向にポンプで送るように設計され得る。逆方向の流体ポンプ作用は、異なるラインに属する2種の流体の順方向での混合を防ぐように使用され得る。
逆方向流体ポンプ作用が重要であるひとつの例は、隣接するライン中の異なる可溶性塩の順方向に混合して、そのフローチャネルを遮断してしまう不溶性塩の形成を防ぐことである。このような順方向の混合は、以下のような様式で防止され得る。
実験の最初において、緩衝液は、マルチプレクサの入口から僅かに下流に位置する。
第1の塩を含むチャネルは、そのマルチプレクサから選択され、そして、その交差注入ジャンクションは洗浄された後に、制御ライン(例えば、C12)が、水または緩衝液をそのマルチプレクサ出口に通して流すように開放される。流水式洗浄工程は、そのマルチプレクサ出口の付近からその塩の大部分を除去する。しかし、少量の塩が近くの入口から拡散され得る。
したがって、ついで、このマルチプレクサが、同時に、その入口ラインへ向けてポンプ作用するように使用されて、その緩衝液/水がそのマルチプレクサ出口を通って動くことによって残留した塩溶液がはき出されるようにする。ついで、このマルチプレクサが使用されて、逆方向にポンプ作用して、その結果、流した緩衝液が、全てのライン向かって戻る。このように、ラインが選択され、そして、所望の試薬がその選択されたラインを通して流れ込むまで、緩衝溶液がそのマルチプレクサの各々のライン中に存在する。このフロープロセスは、それらの試薬の所望しない混合に対抗することを確実にする。まさにここで記載したフラッシュ/バックフロー法を使用して、1週間を超える間に亘る連続した操作が、両立しない塩(例えば、リン酸カリウムおよび塩化マグネシウム)が、望まない混合または不溶性塩の形成のいずれをも伴わずに、隣接したラインで使用され得ること示した。
制御ラインC13は、交差フロー注入器1704への試薬流入の開閉を担う。制御ラインC14およびC17は、回転ミキサ1706の流出入の開閉を担う。制御ラインC15、C16およびC18は、回転ミキサ1706と相互作用して、そのミキサ内の円形フローをつくり出すための第3の蠕動ポンプをつくりあげる。
第1の出口チャネル1770は、交差注入器1704と直接的に流体連絡しており、そして、代表的には、第1の出口1790に廃物質を運搬する。第2の出口チャネル1772は、交差フロー注入器構造体1704と回転ミキサ1706を介して流体接続しており、したがって、第2の出口1792に廃物質を運搬する。
図17A〜17Bにおいて示された組合せミキサは、第2の出口フローチャネルに隣接する代替的な蛇行型出口チャネル1781をさらに備える。この蛇行型チャネル1781の目的は、以下である。その入口、交差ジャンクション。混合リング、および出口は、流体として連続しており、その流体イピーダンスは、その成分のインピーダンスの和である。交差ジャンクションのインピーダンスが、入口または出口のインピーダンスと比較して小さい場合、交差注入器(cross−injective)中の流体の粘度を変化することは、その影響は極微であり、それによって、その計測感度の減少が所望されるように生じる。この理由により、チャネル1781は、(屈折部分を多く伴って)長いものであり、かつ小さな直径のものである。この組合せミキサの対する出口は、注入サイクルの間に、蛇行型チャネル1718へと切り換わる。
図17A〜17Bで示されたデバイスの代表的な操作は、以下の通りである。フローは、交差注入エリア1704を介して水平方向に方向付けられる。第1のマルチプレクサ1720は、分岐交差注入器1704、回転ミキサ1706を介し、第2の出口チャネル1772をの外で、流れる緩衝液フローチャネル入口(BF1−BF16)を選択するように使用される。
次いで、そのデバイスを介した緩衝液のフローは、蛇行型ポンプ1752のバルブを閉めることによって停止され、そして、フローは、その交差注入器1704を介して垂直方向に指向される。次いで、試薬が、第2のマルチプレクサを使用してその試薬フローチャネル入口(RF1−RF16)から選択される。この試薬は、交差注入領域1704を介して流れ込み、ついで、第1の出口チャネル1770を介してで流出した。
次いで、フローが、再度、交差注入器1704を介して水平方向に指向され、そして、その蛇行型ポンプ1752が使用されて、正確な量の試薬を回転混合リング1706に送り込むように使用される。蛇行型ポンプ1752のサイクルの各々は、十分に規定された体積(約80pL)を回転ミキサ1706に注入して、その結果、そのリングに注入された総体積が、注入サイクルの数によって制御され得る。
所望する量の第1の試薬が、回転ミキサ1706に注入されると、別の試薬が、チャネルライン(RFX)が選択されて、その注入プロセスが、反復される。このように、任意の組合せの試薬が、その回転ミキサ1706に導入され得る。この回転ミキサは、総体積5nLを有しており、その結果、その回転ミキサは、約60注入体積の収容能力を有し得る。
それらの成分が、その回転ミキサ1706に注入されると、拡散性混合が、その混合物円形ミキサ1706の蛇行型ポンプ作用から生じるポアズイユ流によって生じる。一旦、混合が完全なものとなると、その混合物は、フローチャネル1711を介して第2の出口チャネル1722へと流れ、それは、貯蔵、分析および/またはさらなる処理のために、そのチップの別の領域または別のチップと完全に流体連絡し得る(これらは、図17A〜17Bのいずれにも示されていない)。これらの工程は、連続する処理のために反復され得る。
図17A〜Bに示された組合せ混合デバイス1700の特定の実施形態はまた、フローチャネル1782を介して回転ミキサ1706と流体連絡しているサンプルポート1780を備え、そのフローチャネル1782は、制御チャネルC19−21の存在によって規定される蠕動ポンプ1784と圧力連絡している。所望される場合、サンプルは、サンプル入口ポートを介して導入され得、次いで、蠕動ポンプを使用してそのミキサに注入され得る。以下に詳細に記載されるように、このサンプル注入器を利用する1つの可能な用途は、沈降による位相空間のハイスループットマッピングを実施することである。
上で記載されたような混合化チップは、それ自体で使用され得るか、またはより規模の大きいデバイスにおける重要な構成要素として組み込まれ得る。このチップは、任意の組合せの流体を混合または計測するために使用され得、これらの流体は、下流にある測定システムまたは貯蔵システムへと送達され得る。貯蔵エレメントまたは記録エレメントを付加することによって、この混合機能は、サンプルの大規模なスクリーニングまたは処理を可能にする。例えば、以下に議論されるように、そのリングの出口は、連続的に試薬を混合するために使用され得、次いで、それらを送って、貯蔵目的またはスクリーニング目的のための数千の反応チャンバのアレイを満たす。
上の記載は、組合せ混合の連続的な実施に関するものであるが、基礎的な混合得れ面tの並列した実施も可能である。例えば、図17A〜17Bに示されるような複数の流体構造体のアレイは、単一チップ上に組み込まれ得る。
例えば、図22は、本発明の1つの実施形態に従った組合せミキサのカラムの、全体の平面図を示し、そして図23は、そのカラムの拡大図を示す。組合せ混合デバイス2200は、フローネットワークチャネル2202を備え、それは、蠕動ポンプ構造体2204によって制御される入口フローチャネルBF1−BF10を備える。この蠕動ポンプ構造体は、制御チャネルC2−C4を重ねることによって形成される。緩衝液入口チャネルBF1−BF10は、混合構造体2208と別個の分岐交差チャネル注入器2210を介して流体連絡している。試薬フローラインから選択された試薬は、制御チャネルネットワークC1をかせね合わせることによってつくり出されるマルチプレクサ2212を利用して選択され得、次いで、交差フロー注入器2210へと流入される。
閉回路混合構造体に亘る、コントロールチャネルC7、C8、およびC10の重ね合わせが、蠕動混合ポンプ2214を規定する。制御ラインC6とC9の重ね合わせによって、混合構造体のためのそれぞれのゲートバルブ2216が作られる。その混合構造体からの物質出口では、廃棄のための出口ライン2218を介して流れ出る。
高分子サンプルが、サンプルレザバ2222で共通の流体で連絡しているサンプル入口ライン2220から注入され得、具体的には、制御ラインC11−C13の重ね合わせによって規定される蠕動ポンプ作用構造体を利用する。一旦、高分子サンプルがその混合構造体に注入されると、その固相の形成が、光学的検査(interrogation)によってモニタされ得、この光学的な検査は、通常の光源およびその混合構造体に近接して適当な位置に位置づけられた一連の検出器を利用する。あるいは、チップ上の複数の混合構造体が、電動化されたステージを利用して単一の検出器上でスキャンされ得る。
図22〜23において示されるように、混合成分の各々についての制御ラインが、接続されて、混合成分の全体のアレイが、制御することが複雑になることなく、走査され得る。1つの実施形態において、全ての緩衝液が、同じ試薬を用いて同時に使用され得る。あるいは、全てのリングが、同一の様式であるが異なるサンプルを用いて用意され得る。滋賀って、並列化された構造体が、(異なるpHを有する)異なる緩衝液を用いて、同じ試薬に対する1つのサンプルの同時スクリーニングを可能するか、または同一条件に対する多くの異なるサンプルのスクリーニングが可能となる。このようにして、このシステムのスループットが、その並列化の程度に比例して増大され得る。
例えば、本発明の実施形態従う組合せ混合構造体は、1日当たり約3000タンパク質の溶解度アッセイを実施することが可能であり、その結果、10の並列混合構造体を有する、図22〜23のデザインによって、1日当たり30,000の実験を実施し得る。これらの実験の各々は、1nLのタンパク質サンプルの平均を必要として、その結果、総じて100,000の実験が、総体積にして約100μLのタンパク質サンプルを使用して3日間あまりの時間で実施され得る。
スループットを増大する別の方法は、その組合せ混合構造体を、一定の混合機能を十知るように設計された別の流体構造体に結合することである。例えば、その組み合わせ混合構造体は、流体混合マトリクスにマルチプレクサを介して結合され得る。その組合せ混合構造体は、特有の溶液を用いてそのN行のマトリクスを満たすために使用され、他方、その列は、N個の様々なサンプルに結合されている。このようにして、Nの混合操作が、N2の独自の反応を作り出すために使用され得る。
1つのアプローチにおいて、このような組合せ混合チップは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するのに適したフローチャネルと流体連絡され得る。あるいは、流体構造体は、広範囲の混合比が、上述された形状計測スキームに基づいて同時に実行することを可能するように設計され得る。
組合せ混合デザインが、実行され、そして使用されて、異なる物理学的特性(イオン強度、pH、粘度、表面張力)を有する広範な流体の超精密計測が実施される。この計測および混合のシステムは、非常に正確で、頑強であり、その流体特性に対して反応しないものであることが実証された。流体が、約80pLの体積増分でそのリングに注入され得るが、誤差は、1%未満である。このシステムは、僅か5%の変化量を注入体積において伴って、1〜400cPの範囲の粘度を有する流体を計測し得る。
本発明の実施形態に従うミクロ流体構造体の実施形態のチャネルを介して流体を計測する速度は、以下の式(2):
Q=(πa4ΔP)/(8μL)
(ここで、
Q=チャネル内の体積流量(vol/s)
a=チャネルの寸法
L=チャネル長
ΔP=チャネル内の圧力変化
μ=チャネル内の作動流体の粘度
)で十分に近似され、この式は、円形状交差部分を通る体積流量を記述する。
式(2)は、ミクロ流体内の流体の体積変化に影響得を与える能力を記載する。この流体が作動流体であり、かつそのミクロ流体チャネルが制御チャネルであるときに、この体積流量は、物質がその制御チャネルに隣接するフローチャネルを介して流れ得る速度を示す。
式(2)によると、作動/混合の速度増加を達成する1つの方法は、制御チャネルの寸法(a)を大きくすることである。図17A〜Bに記載の組合せ混合デバイスの実施形態において、これは、その制御チャネルの寸法を大きくして、それぞれ、その作動/脱作動された制御チャネルの内外に動く作動流体の体積の流れ抵抗を低減することによって達成された。具体的には、その制御チャネルの高さは、30μm〜10μmに増大される。
作動/混合の速度増加を達成する別の方法は、ベースライン(グラウンド)圧力を大気圧よりも大きくすることである。具体的には、作動された膜は、速度限定因子であり得る。なぜならば、その圧力駆動収縮は、代表的には、ただ、ほぼ大気圧であるチャネル圧であり得るからである。したがって、その反発性は、しばしば、その膜の弾性にのみ起因し得る。そのグラウンド圧を上昇させることによって、本発明の実施形態に従うと、その膜はまた、その流れた流体による制御チャネルに戻り得る。特定の実施形態において、この基礎圧は、約6psiであるが、そのベースライン圧が高ければ高いほど、そのバルブの応答は、速くなる。
さらに、式(2)によると、より迅速な作動の達成するためのなお別の方法は、その作動流体の粘度(μ)を低減することである。一般に、0.001kg/m・sの粘度を有する水、または0.000018kg/m・sの粘度を有する空気は、作動流体として使用され得る。空気よりも水が、フローチャネルにおける気泡の形成を避けることが望まれるために、作動流体として使用されてきた。しかし、図17A〜Bにおいて示された組合せ混合デバイスの実施形態は、作動速度を上昇させるために空気で満たされた制御チャネルを利用する。さらに、圧力を挙げることによって、気泡の形成の発生確率が実質的に低減されることが発見された。
要約すると、1)より大きな周囲制御チャネル寸法、2)ベースライン圧の上昇、および3)作動流体としての空気の使用の組合せが、図17A〜17Bの組合せ混合デバイスのバルブの作動の最大振動数を、約10Hz〜約100Hzに増大し、その閉回路ミキサを通して流体を移動する得られた振動数は、約4Hzである。
組合せ混合チップによって実施される計測および混合が、非常に高速であることが見出された。単一の混合配置が、1日につき3000サンプルを処理し得る。単一のチップの上にこのような20のミキサを並列に統合することによって、1日当たりおよそ60,000を処理することが可能であり、このデバイスが、ハイスループットスクリーニング用途のとって適切なものとなる。
以下の図18および図19は、チップ上で実施されるいくつかの計測実験の結果を示す。図18は、「注入体積」対「2mMブロモフェノールブルー(pH 8.1における0.1 M Tus−HCl)の滴定に関する注入されたスラグ数」をプロットする。図18の吸収測定は、その計測の精度および再現性を実証するものである。9つのクラスターのうちの各々は、10時間の期間に亘って実施された100の独立した計測実験のからなる。
図19は、以下の表に要約されるように、「濃度」対「4つの異なる粘度を示すサンプルについての注入されたスラグ番号」をプロットする。
(表)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
サンプル グリセロール(%) 粘度(cP) スラグ体積(pL) R2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A 0 1 90.72 0.999
B 76 40 88.2 0.997
C 84 100 84.84 0.998
D 92 400 86.52 0.998
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
図19において注入された体積によって実証された狭い偏差は、流体の特性に対する計測の非感受性、特に、広範な粘度に対する非感受性を示す吸収測定を実証する。
組合せ混合デバイスが、配合における最適な組合せを見出すことが必要である、生物学、化学、化学工学などの問題を解決するための処方ツールとしての種々の用途を見出し得る。このデバイスチップおよびそのれらの改変体は、これらの配合のパラメータにおける多くのバリーションを同時にスクリーニングするために使用され得、したがって、配合および処方を最適化するための迅速で安価な手段を提供する。使用の可能性ある分野としては、微生物学、化学合成、ハイスループットスクリーニング、薬物発見、医学的診断法、病原体同定、および酵素反応(ポリメラーゼ連鎖反応およびそれらの改変型が挙げられるが、それらに限定されない)が挙げられる。このデバイスはまた、種々のローション、クリーム、食料品、化学合成物などを処方する役割も果たし得る。
本発明に従うミクロ流体構造体の実施形態は、PCT出願PCT/USO 1/44869(2001年11月16日出願)により完全に記載され、そして、「細胞アッセイおよびハイスループットスクリーニング(Cell Assays and High Throughput Screening)」と題されるような用途(本明細書中で全ての目的のために参考として援用される)のために、用いられ得る。このような用途を実施するのに適切なミクロ流体構造体の例としては、本明細書中で記載されるような構造体、ならびに米国非仮特許出願場番号10/118,466である「Nucleic Acid Amplification Utilizing Microfluidic Devices」(代理人管理番号20174C−004430として、2002年4月5日に出願)(本明細書中で全ての目的のために参考として援用される)に記載されるような他のものが挙げられる。
図17A〜Bに示されたかつ記載された1つの有望な用途は、膜タンパク質の可溶化である。
膜タンパク質は、代表的には、真核生物細胞において発現され、ここで、これらのタンパク質は、細胞膜内に組み込まれている。これら膜タンパク質の3次元構造は、結晶の形態でそのX線回折法によって決定され得る。
しかし、このような結晶化が実施される前に、タンパク質が細胞に細胞膜に取り込まれているときに保持する3次元的に折り畳まれた形状で溶液中のタンパク質を安定化することがまず、必要である。代表的には、界面活性剤を添加することによって達成され、これによって、両親媒性分子(その界面活性剤)の小さなエンベロープ中に膜タンパク質を包み込み、その細胞膜の環境を模倣して、変性を防止する。このような様式でそれらの膜タンパク質を安定化することは、代表的には、様々なpH値、イオン強度での緩衝液を用いて、そして、様々な界面活性剤を用いて、タンパク質を可溶化することが必要である。したがって、膜タンパク質の可溶化が、本質的に、処方上の問題である。
それらの膜タンパク質は、代表的には、少量でのみ、研究者にとって利用可能であり、少量で、自動化様式で、溶解性研究を実施することが所望される。したがって、ここで記載したこの組合せ混合デバイスは、この問題に対して十分に適したものである。
図61A〜Gは、スクリーニング条件が膜タンパク質を可溶化することにおける成功に首尾がよいとして評価され得るアッセイの概略図である。この技術は、対応するレセプターまたは抗体が既知である膜タンパク質の可溶化のとって適切である。
図61Aは、その方法の第1の工程を示し、ここで、試験管6102中にあるセル6100が、溶解されて、そして、遠心分離され、その試験管の底でのペレット6104中の膜タンパク質を含む膜を濃縮される。ペレットp6104は、その溶解物として参照される。
図61Bは、その方法の第2の工程を示し、ここで、上記の溶解物中の膜タンパク質6106は、ヒスタジン(HIS)6108でタグ化され、そのHISタグ化膜タンパク質6110は、ミクロ流体入口6112、さらに、閉回路混合構造体6114に流れ込む。図61Cは、第3工程を示し、ここで、界面活性剤、緩衝液および塩の混合物6115が、混合構造体6114に注入され、そして、そのHISタグ化膜タンパク質6110と今後されて、その膜タンパク質を可溶化する。この段階において、その可溶化された膜タンパク質は、その細胞膜内で示される折り畳まれた3次元構造を示しても示さなくともよい。
図61Dは、第4の工程を示し、ここで、その溶解した膜タンパク質混合物が、マルチプレクサ6119を介してその混合構造体6115の外に流れて、ニッケル基質6118上で第1のフローチャネル6116aへと流れ、そのタンパク質を固定する。図61Eは、第5の工程を示し、ここで、蛍光タグ化されたリガンドまたは抗体6118は、その固定化されたHISタグ化タンパク質サンプル6110上に流される。その対応するタグ化リンガンド/抗体は、その細胞膜中で同じように折り畳まれた形状を示す固定化されたタンパク質のみに結合する。
図61Fに示されるように、そのニッケルを含むフローチャネルは、洗浄され、そして、源6150からチャネルの内容物に放射線を照射し、そして、検出器6152でその得られた放出された蛍光を検出することによって蛍光測定がなされる。その検出された蛍光シグナルの強度によって、所望の天然に存在する折り畳まれ方をする3次元構造の形状を示すタンパク質の数を明らかにした。この形状によって。その相補的な蛍光リガンド/抗体の結合を可能にする。その可溶化条件のその後のバリエーションが、所望の三次元折り畳み形状を伴って溶液に入るタンパク質分子の数を最適化し得る。その可溶化プロセスの最適化は、両親媒性部分または他の溶液成分の様々な濃度/強度を有する混合物から検出されるシグナルの大きさを比較することによって達成され得る。
1つの可溶化プロセスの結論において、その閉回路混合構造(closed circuit mixing structure)は、低pH緩衝液で洗浄されて、結合および標識されたタンパク質が溶出され得、別の可溶化実験が行われ得る。新たなニッケル表面が必要とされる場合、その次の混合物は、その混合構造から別の流動チャネルへと、マルチプレクサーによって方向付けられ得る。
上記の図61A〜Fと関連して例示されかつ議論された実施形態は、その閉回路ミクロ流体混合構造において混合した後に、その可溶化された膜タンパク質をその相補的な検出可能リガンドに曝すことを包含するが、これは、本発明に必須ではない。代替的実施形態に従って、その相補的リガンド/抗体は、その混合構造中のタグ化タンパク質と直接混合され得る。この代替的実施形態は、より正確な結果を提供し得、ここでニッケル基材へのタグ化タンパク質の結合は、タンパク質とその相補的リガンドとの間の結合を阻害し得る。
そして上記の図61A〜Fに関連して例示されかつ議論された実施形態は、平坦なニッケル基材上に可溶化タンパク質を固定化することを包含するが、これはまた、本発明に必須ではない。代替的実施形態は、所望の固定化機能を示す表面を有するビーズとともに充填された流動チャネルを利用し得る。
そして上記の図61A〜Fに関連して例示されかつ議論された実施形態は、その蛍光特性によって検出可能なリガンドの使用を包含するが、これもまた、本発明に必須ではない。代替的実施形態は、PET検出器を利用して検出可能な放射性型のリガンドを利用し得る。
図17A〜Bに関連して示されかつ記載された組み合わせデバイスののための別の特定の有望な適用は、高分子(例えば、可溶化がちょうど議論された膜タンパク質)の結晶化である。このような結晶化は、濃縮されかつ精製されたタンパク質または高分子のサンプルに対して多くの異なる試薬をの大規模スクリーニングを要する。タンパク質は、一般に、大量に獲得しかつ精製するのは困難であるので、スクリーニング試験においてサンプル消費を最小にすることは最も重要なことである。従来の手段は、1回のアッセイあたりマイクロリットルのサンプル容積を必要とする一方で、本発明は、ナノリットル未満の反応容積を実現し得る。
さらに、多くの数千もの特有の溶液がチップ上で直接混合され得るので、本発明は、タンパク質結晶化条件の徹底的なスクリーニングを行うために使用され得る。このスクリーニングは、無作為な様式または体系化された様式で行われ得る。一旦混合されると、結晶化反応は、例えば、以下により詳細に記載されるように、保存および調査のための位置探索デバイス(locations device)に送られ得る。
(2.保存構造)
組み合わせ混合構造の基本的な測定機能および混合機能を流体保存構造と組み合わせると、完全タンパク質結晶化ワークステーションをチップ上に実装することが可能になる。このようにして、研究者は、種々の化学におけるタンパク質の可溶性を探索し得、どれが最も有望な結晶化条件であるかを決定し得、次いで、結晶成長のための反応を設定し、インキュベートする。このようにして、スクリーニング、位相空間調査、最適化、およびインキュベーションは、単一のミクロ流体ワークステーションで達成され得る。保存のあり得る方法の非網羅的リストは、以下に提供される。
本発明の一実施形態に従って、反応は、予め混合された試薬(結晶化剤、添加剤、低温保護剤(cryo−protectants)...、サンプル)を保存チャネルへとポンプ輸送し、非混和性流体(例えば、パラフィン油)により実験を分離することによって保存され得る。図58A〜Cは、この保存技術の1つの実装の模式図である。
図58Aにおいて、サンプルは、環状混合デバイス5800へと、直列バルブ5802a〜cの蠕動ポンプ輸送作用を介して流される。次いで、混合物5803が作り出され、横断連結(cross−junction)5804へと流される。図58Bにおいて、横断連結5804内のサンプルは、バルブ5810によって制御される端部5806aを有する、蛇行した保存チャネル5806に送られる。図58Cにおいて、そのバルブ構成は変更され、不活性分離流体5808(例えば、油)は、横断連結5804に流される。図58Dにおいて、その分離流体5808は、保存チャネル5806へ流される。図58A〜Dに例示されるそのサイクルは、次いで、繰り返されて、保存ライン5806内に新たなサンプル容積が提供され得る。チャネル5806内に保存されたサンプルは、ゲートバルブ5810を通る端部5806aを通じて、回収され得る。
その保存チャネルが100μm幅×100μm高の寸法を有するとすると、1nLのサンプルが100μmに等しいチャネルの長さを満たす。そのチャネルが蛇行しておりかつ隣接するレッグが100μmだけ離れているとすると、1平方cmの保存領域にフィットするチャネルの合計の長さは、約1cm×100/2=0.5mである。このことは、0.5m/100μm=5000反応の保存を可能にする。
流体の全長は、追加される毎に進まなければならないので、この流体の長さをポンプ輸送することは困難であることが分かり得る。この問題を避けるために、図59は、反応/保存スキームの実施形態5900の模式図を示し、ここでマルチプレクサー5902は、実験サンプルおよび不活性分離流体を、複数の並行保存チャネル5904のうちの1つに方向付けるために使用され得る。
なお別の代替的実施形態に従って、各反応物は、流体の縦列全体が一緒に動かされる必要が決してないように、保存ラインの端部に行き止まりになるまで充填され得る。図60は、このようなアプローチの簡略化した模式図を示し、ここで保存チャネル6000は、行き止まりにされている。
空気の流れは、そのサンプルおよび不活性分離流体を保存チャネルへと付勢するために利用され得、その空気は、最終的には、そのエラストマー材料を通ってチャネルから拡散する。このような実施形態において、行き止まりになるまで充填を行うために必要とされる比較的高い圧力は、外部圧力源を使用して達成され得、それによって、油ライン上の別個のポンプに対する必要性が排除される。この行き止まりまで充填する技術は、図58A〜Dに示される実施形態におけるように、単一の保存ライン、または図59に示される実施形態におけるようにマルチプレクサーを介する多くの並行保存ラインを充填するために使用され得る。
図58A〜60は、そのチップ上のチャネルとして平坦な様式で一体化されるように保存ラインを示すが、これは、本発明に必須ではない。本発明の代替的実施形態に従って、その試薬は、その垂直な方向に、チップから、例えば、ガラスキャピラリーへと除去され得る。
化合物を保存するためのなお別のアプローチは、拡散アッセイを利用することである。図54A〜Dは、組み合わせ混合構造5400とアドレス指定可能保存アレイ5402とを組み合わせるデバイスの配置図を示す。アレイ5402は、256個の個々のバッチ実験または128個のフリー界面拡散実験のチップ上でのインキュベーションを可能にする。
図54Bは、保存アレイ5402への入り口の誇張を示す。アレイ5402は、上記で議論されるその行き止まりの充填原理に取り組む。一旦その試薬が環5406中で混合されると、それらは、一時的保存のために蛇行したチャネル5408へとポンプ輸送される。保存アレイ入り口におけるマルチプレクサー5410は、次いで、16個ののあり得る入り口のうちの1つを開放するように作動され、それによって、そのアドレス指定されるべきアレイの横列を選択し得る。
図54Cは、図54Aの保存アレイの拡大図を示す。図54Dは、図54Dのアレイにおける単一のセルの拡大図を示す。
保存アレイの各横列は、保存チャンバ5456をチャネル入り口から分離するバルブ5454を作動する制御ライン5452、およびその保存アレイの縦列を分離する制御ライン5458を有する。単一の制御ライン5460は、流体により連結されたチャンバ5462a〜bのあらゆる対にさらに送られて、流体界面を作り出すことが望まれるまで、それらを分離する。
一旦その横列がマルチプレクサーによって選択されると、そのアレイ縦列5470は、対応する縦列バルブ5472を作動することによって選択される。このようにして、そのアレイの単一のチャンバは、充填するために選択される。
環の出口付近のバルブは、その蛇行した保存ラインをマルチプレクサー入り口に接続するように作動され、その保存された溶液は、その蛇行した保存ラインを出て圧縮空気によってマルチプレクサー領域へと押し戻される。この加圧は、その流体をその保存アレイの適切な横列に駆動し、保存アレイの前の空気を圧縮し、そのポリマーに拡散させる。
チャンバ入り口バルブは閉じたままである間、その流体は、チャンバに入らないが、むしろマルチプレクサーとその保存アレイとの間のデッドボリュームに(または部分的にこのボリュームにおよび部分的に保存アレイチャネルに)残る。そのマルチプレクサーの新たなラインは、次いで、選択され、その縦列バルブは、一時的に開放されて、相互汚染を避けるための予防措置として、新たな横列が緩衝液で洗い流されることを可能にする。マルチプレクサーのわずか1つのラインが開いているので、その保存アレイの他の横列は、固定されたままである。
この新たな横列は、次いで、空気をこの横列を通るように吹き込むことによって空にされ、次の溶液のための準備がされる。これらの工程は、全ての横列が固有の溶液で充填されるまで繰り返される。
その縦列バルブは、次いで、作動され、その入り口バルブが開放され、全ての横列が同時に加圧される。このことによって、その溶液がそれらそれぞれのチャンバへと駆動される。この全体のプロセスは、そのアレイが溶液で充填されるまで全ての縦列について繰り返され得る(潜在的には、全てのチャンバにおいて異なる溶液)。
その界面バルブが閉じたままである場合、図54A〜Dのアレイは、256個(8縦列×16横列)のバッチ反応を収容する。ミクロ流体フリー界面を横断する拡散が望まれるタンパク質結晶学のような適用において、その界面バルブが開放されて、その反応が始められ得る。全ての溶液は、予め、その環において別個に混合されているので、実験者は、溶液に対する制御を有する。
例えば、結晶化についてのフリー−界面拡散実験が行われ得、その実験において以下のうちの1つ以上が変化される:沈澱剤の正体および/または初期濃度;結晶化された種の正体および/または初期濃度;添加物の正体および/または初期濃度;ならびに低温保護剤の正体および/または初期濃度。フリー界面拡散実験の前に、多くの異なる薬剤を少量のタンパク質溶液へと混合する能力は、従来の結晶化アプローチを超える重要なり点を提供し、ここで代表的には、標準的なタンパク質ストックが、異なる結晶化剤に対して使用される。上記のそのミクロ流体ネットワークは、このようにして、結晶化のための融通性の高いプラットフォームを提供する。
図54A〜Dのアレイもまた、サンプル回収、アドレス指定可能なウェル洗浄、および反応チャンバの再使用を可能にする。具体的には、サンプルを回収するために、またはウェルを洗浄するために、ウェルを空にする/洗浄する縦列上の適切な入り口バルブが開放される。マルチプレクサーの横列のうちの1つ(これは、洗浄されるべき対のチャンバのうちの1つとつながる)が選択される。
そのマルチプレクサーにおいて開放されていない対とつながるそのアレイの横列は、次いで、そのアレイの端部において開放され、マルチプレクサーにおいて開放されたその横列は、そのアレイの端部で閉鎖される。
この操作は、そのマルチプレクサーの選択された横列を通り、空にされ/洗浄されるべきチャンバ対を通って、その出口にて選択された横列を出る流体経路を生じ、開放する。このようにして、単一のチャンバ対は、アドレス指定され、洗浄され得る。
(III.結晶化構造および結晶化方法)
標的物質の結晶化の高スループットスクリーニング、または結晶化による標的物質の少量のサンプルの精製は、既知の濃度で、標的物質の溶液を、微細製作流体デバイスの複数のチャンバに同時に導入することによって達成される。次いで、この微細製作流体デバイスは、チャンバ内の溶液条件を変化するように操作され、それによって、多数の結晶化環境が同時に提供される。溶媒条件の変化したコントロールは、種々の技術から生じ得、これらとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:容積排除によってか、微細製作構造の寸法によって決定される液体容積の捕捉によってか、または直交したフローチャネルが交差することによって規定される交差点のマトリクス内への交差チャネル注入によって、チャンバ内での結晶化因子の容積を測定する技術。
本発明の実施形態によって結晶化を生じる結晶は、X線結晶学に用いられ、三次元分子構造が決定され得る。あるいは、本発明の実施形態に従う高スループットスクリーニングが直接X線結晶学に十分なサイズの結晶を生成しない場合、結晶は、さらなる結晶化実験用の核結晶として用いられ得る。見込みのあるスクリーニング結果もまた、標準化された低密度マトリクス技術を使用するのと類似の様式で、狭いスペクトルの結晶化条件に焦点を当てたさらなるスクリーニングのための基準として使用され得る。
本発明の実施形態に従うシステムおよび方法は、より大きい生物学的高分子またはその凝集体(例えば、タンパク質、核酸、ウイルス、およびタンパク質/リガンドの複合体)を結晶化するのに特に適している。しかしながら、本発明に従う結晶化は、任意の特定の型の標的物質に制限されない。
以下の考察において用いられるように、用語「結晶化剤」は、標的物質の溶液に導入され、この標的物質の溶解度を低下させ、それによって結晶形成を誘導する、物質を記載する。結晶化剤としては、代表的に、標的が溶解度の減少を示す対溶媒(countersolvent)が挙げられるが、溶液のpHに影響を及ぼす材料、またはポリエチレングリコールのような、標的物質に利用可能な溶媒の容積を効果的に減少させる材料もまた記載し得る。用語「対溶媒」は、「結晶化剤」と相互交換可能に使用される。
(1.容積捕捉による結晶化)
図45Aは、結晶化システムの一実施形態の簡略化した平面図を示し、ここで対溶媒の異なる容積の計量供給は、流動チャネルの形成の間のフォトリソグラフィーによって決定される。図45Bは、図45Aのデバイスの3つの化合物ウェルのセットの簡略化した拡大平面図を示す。図45Cは、図45Bのウェルの線C−C’に沿ったウェルの簡略化した断面図を示す。このチップ設計は、容積捕捉技術を利用して、標的溶液および結晶化剤の計量供給を用いた。
具体的には、各チップ9100は、48個の異なるスクリーン条件の各々につき3つの化合物ウェル9102(1チップあたり計144アッセイ)を含む。化合物ウェル9102は、ガラス基板9104中にエッチングされ、微小チャネル9106を介して流体接続状態にある2つの隣接ウェル9102aおよび9102bからなる。その化合物ウェル9102の各々において、そのタンパク質溶液は、隣接ウェル9102a〜bの相対サイズによって規定される比において、スクリーン溶液と合わせられる。図45A〜Cに示される特定の実施形態において、その3つの比は、(タンパク質:溶液)4:1、1:1、および1:4であった。各アッセイの総容積は、スクリーン溶液を含め、約25nLであった。しかし、本発明は、いかなる特定の容積にもまたは容積範囲にも限定されない。本発明に従う代替的実施形態は、10nL未満、5nL未満、2.5nL未満、1.0nL未満、および0.5nL未満の総アッセイ容積を利用し得る。
そのチップ制御層9106は、界面制御ライン9108、閉じこめ制御ライン9110および2つの安全性制御ライン9112を含む。制御ライン9108、9110、および9112は、そのチップ内の湿潤な環境を維持し、かつ結晶化が行われるべき流動チャネルおよびチャンバの脱水を防止するために、空気よりむしろ水で充填される。
界面バルブ9114は、その化合物ウェル9102を二分し、充填が完了するまで、タンパク質をスクリーンから分離する。閉じこめバルブ9116は、各化合物ウェル9102のポートをブロックし、その実験の継続のための各条件を分離する。その2つの安全バルブ9118は、タンパク質充填の間に作動され、失敗した界面バルブの事象においてタンパク質溶液の漏れを防止する。
この実験において利用されるミクロ流体デバイスの製造を、標準的な多層ソフトリソグラフィー技術によって調製し、80℃において5時間以上ベーキングすることによってエッチングされたスライドガラスにシールされる。そのガラス基材は、5740フォトレジストの16μm層でマスクされ、標準的なフォトリソグラフィーによってを使用してパターン形成される。そのガラス基材は、次いで、1:1:1(BOE:H2O:2N HCl)の溶液中で60分間エッチングされ、最大深さ約80μmを有するマイクロウェルが作り出される。
ちょうど記載されたチップ製造プロトコルは、本発明の可能な実施形態のほんの一例である。代替の実施形態に従って、結晶化チャンバおよびフローチャネルは、平坦な基板と、エラストマー部分の下部表面に全体に形成された凹部のパターンとの間に、規定され得る。なおさらに代替的に、結晶化チャンバおよびフローチャネルは、エラストマー部分の平坦な、特徴のない下部表面と、基板全体に形成された凹部のパターンとの間に規定され得る。
チップ上での結晶化は、以下のように設定される。チップ制御層9106におけるすべての制御ラインに、15〜17psiの圧力で水を充填される。一旦、これらの制御ラインが満たされ、そして弁9114および9116が完全に作動されると、汚染物弁9116が解放され、そしてタンパク質が、約5〜7psiを使用して、9120を介して、中心を通して充填される。このタンパク質溶液は、各化合物ウェル9102のタンパク質側を完全に満たす。破損した弁が存在する場合、同定され、そして減圧グリースが、対応するスクリーンバイアを覆って配置されて、引き続く加圧および残りの条件の可能な汚染を防止する。次いで、2.5〜4μLのまばらなマトリックススクリーン(代表的に、Hampton Crystal Screen I,1−48)が、スクリーンバイア9122内にピペッティングされる。安全弁9118が解放され、そして特別に設計されたチップホルダ(以下に記載される)が、加圧された(5〜7psi)シールを、全48のスクリーンバイア9122にわたって作製するために使用される。スクリーン溶液が、行き止まりに充填され、各化合物ウェルのスクリーン側を満たす。タンパク質および結晶のスクリーン試薬が、全てのウェルが充填されるまで、界面弁で別々に維持され、この時点で、汚染物弁が閉じられ、そして界面弁が開かれて、化合物ウェル9102の2つの半体に存在する液体の体積の間での拡散を可能にする。
これらの実験のために、実験を設定する際(制御ラインを充填することを含む)に費やされる平均時間は、約35分であり、最も速い実験は、設定するために20分しかかからなかった。この設定時間は、潜在的に、チップへの溶液のロボットピペッティングの使用を介して、または送達された溶液の充填およびプライムするための圧力の使用を介して、またはミクロ流体計量供給デバイス(例えば、先に記載されたコンビナトリアル混合構造体)の使用を介して、なおさらに減少され得る。
先に示されたように、本発明に従うミクロ流体デバイスの実施形態は、オンチップリザーバーまたはウェルを利用し得る。しかし、多数の溶液の充填を必要とするミクロ流体デバイスにおいては、各ウェルとインターフェースするための別々のピンを用いる、対応する多数の投入管の使用は、その流体デバイスの比較的小さい寸法を考慮して、非実用的であり得る。さらに、小さい体積の液体を分配するためのピペットの自動化された使用が公知であり、従って、チップの面上に存在するウェルに直接溶液をピペッティングするためにこのような技術を利用することは、最も容易であることを示し得る。
毛管作用は、特に、行き止まりチャンバが栄養分でプライムされる場合には、溶液をオンチップウェルからチップの活性領域に引くためには、十分ではないかもしれない。このような実施形態において、材料をチップ内に充填するための1つの様式は、外部加圧の使用を介する。また、しかし、多数の可能な材料供給源を結合されたデバイスの小さい寸法は、ピンまたはチュービングを通してここのウェルへと圧力を付与することを、非実用的にし得る。
従って、図44は、本発明の1つの実施形態に従うチップホルダ11000の分解図である。チップホルダ11000の底部11002は、上昇した周囲の部分11004を備え、チップ11008の寸法に大きさが対応する凹部領域11006を囲み、ミクロ流体チップ11008がこの内部に配置されることを可能にする。周囲領域11004は、さらに、ねじ穴11010を規定する。
ミクロ流体デバイス11008は、チップホルダ11000の底部11002の奥部領域11006内に位置決めされる。ミクロ流体デバイス11008は、活性領域11011を備え、この領域は、第一の行11012aおよび第二の行11012b内に構成された、周囲ウェル11012と流体連絡する。ウェル11012は、デバイス11008が機能することを可能にするために十分な料の材料を保持する。ウェル11012は、例えば、結晶化剤の溶液、標的材料の溶液、または染料のような他の化学試薬を含み得る。底部11002は、チップ11008の活性領域11011が観察されることを可能にする、窓11003を備える。
チップホルダ11000の頂部11014は、底部チップホルダ部分11002、およびその中に配置されるミクロ流体チップ11008の上にフィットする。図示を容易にするために、図80において、チップホルダ部分11014は、アセンブリにおけるその実際の位置に対して、反転されて示されている。頂部チップホルダ部分11014は、下部ホルダ部分11002のねじ穴11010と整列したねじ穴11010を備え、その結果、ねじ11016が、穴11010を通して挿入され得、ホルダ11000の部分11002と11014との間にチップを固定し得る。チップホルダ上部11014は、チップ11008の活性領域11011が観察されることを可能にする、窓11005を備える。
頂部ホルダ部分11014の下部表面11014aは、凹部11024および11026をそれぞれ囲む、隆起した環状リング11020および11022を備える。チップホルダ11000の頂部11014が、ねじ11016を利用してチップ11008と接触されて圧迫される場合に、リング11020および11022は、チップ11008の頂部表面上の柔軟な弾性材料内に押し込まれ、その結果、凹部11024が、ウェル11012の頂部行11012aを覆う第一のチャンバを規定し、そして凹部11026が、ウェル11012の下部行11012bを覆う第二のチャンバを規定する。頂部ホルダ部分11014の側部の穴11030および11032は、それぞれ、凹部11024および11026と連絡しており、正圧が、穴11030および11032にそれぞれ挿入されたピン11034を通してチャンバに付与されることを可能にする。従って、正圧は、行内の全てのウェルに同時に付与され得、各ウェルに対して別個の接続デバイスを利用する必要性を除く。
操作の際に、溶液が、ウェル11012内にピペッティングされ、次いで、チップ11008が、ホルダ11000の底部11002に入れられる。頂部ホルダ部分11014は、チップ11008を覆って配置され、そしてねじによって、下方に押される。頂部ホルダ部分11014の下部表面の隆起した環状リング11020および11022が、ウェルが位置するチップの上部表面とのシールを作製する。ウェル内の溶液は、チャンバ内の正圧に曝露され、そしてこれによって、ミクロ流体デバイスの活性領域に押し込まれる。
チップホルダによって付与される下向きの圧力はまた、充填の間の、基板からのチップの層間剥離を防止するという利点を提示し得る。この層間剥離の防止は、より高いプライミング圧力の使用を可能にし得る。
図44に示されるチップホルダは、本発明に従う構造体の1つのみの可能な実施形態を代表する。
(2.結晶化に影響を与える他の要因に対する制御)
上記結晶化構造体は、適切な結晶化薬剤の体積の導入を介して、標的材料の実施形態を変更することを記載するが、他の多くの要因が、結晶化に関連する。このようなさらなる要因としては、温度、圧力、溶液中の標的材料の濃度、平衡動力学、およびシード材料の存在が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の特定の実施形態において、結晶化の間の温度に対する制御は、先に記載された、複合エラストマー/シリコン構造体を利用して達成され得る。具体的には、Peltier温度制御構造体が、結晶化チャンバがPeltierデバイスの近くに来るようにエラストマーがシリコンと整列している、下に重なるシリコン基板において製造され得る。適切な極性および規模の電圧の、Peltierデバイスへの印加は、チャンバ内の溶媒および対溶媒(countersolvent)の温度を制御し得る。
あるいは、Wuらによって「MEMS Flow Sensors for Nano−fluidic Applications」Sensors and Actuators A 89 152−159(2001)に記載されるように、結晶化チャンバは、オーム熱を生じる微小機械加工されたレジスタ構造体に電流を選択的に印加することによって、加熱および冷却され得る。さらに、結晶化の温度は、ヒータの抵抗を経時的にモニタリングすることによって、検出され得る。Wuらの論文は、全ての目的で、本明細書中に参考として援用される。
本発明に従う微小作製されたエラストマー結晶化構造体にわたって、温度勾配を確立することもまた、有用であり得る。このような温度勾配は、標的材料を、結晶化の間、広範な温度に曝露し、結晶化のための最適な温度の非常に正確な決定を可能にする。
結晶化の間に圧力を制御することに関して、体積排除による対溶媒の計量供給を使用する本発明の実施形態は、特に有用である。具体的には、一旦、チャンバが適切な体積の溶媒および対溶媒を充填されると、チャンバ入口弁が閉じて維持され、一方で、このチャンバの上に重なる膜が作動され、これによって、このチャンバ内の圧力を上昇させる。体積排除以外の技術を使用する、本発明に従う構造体は、フローチャネルおよび付随する膜を結晶化チャンバに隣接して備えることによって、圧力制御を付与し得、そして具体的には、チャネル内の圧力を制御するように格下げされる。
結晶化に影響を与える別の要因は、溶液中で利用可能な標的材料の量である。結晶形態の場合、この材料は、溶液中に残っている標的材料の量が連続した結晶成長を維持するために授受得分であり得るまで、溶液中で利用可能な標的材料のシンクとして働く。従って、十分に大きい結晶を成長させるためには、結晶化プロセスの間に、さらなる標的材料を提供することが必要であり得る。
従って、図27A〜27Bに関して先に記載されたセルペン(cell pen)構造体は、本発明の実施形態に従う結晶化構造体において有利に使用されて、成長中の結晶をチャンバ内に閉じ込め得る。このことは、成長中の結晶を、さらなる標的材料を提供して
いるフローチャネルから洗い流して、成長中の結晶が廃液内に失われる危険性を除く。
さらに、図27A〜27Bのセルペン構造体はまた、結晶道程のプロセスの間に有用であり得る。具体的には、塩が、しばしば、サンプルまたは対溶媒中に存在し、そしてこれらの塩は、結晶化の試みの間に、結晶を形成し得る。塩結晶の成長を目的の標的結晶から区別するための1つの一般的な方法は、Hampton Research of Laguna Niguel,Californiaによって製造されるIZITTMのような染色色素に曝露することによる。IZITTM色素は、タンパク質結晶を青色に染色するが、塩結晶を染色しない。
しかし、IZITTM色素を、結晶を保持している結晶化チャンバに流すプロセスにおいて、これらの結晶は、移動され得、一掃され得、そして失われ得る。従って、セルペン構造体が、本発明に従う結晶化構造体および方法においてさらに使用されて、染色プロセスの間、結晶を適所に固定し得る。
図49は、セルペン概念に基づく、結晶のための選別デバイスの実施形態を示す。具体的には、種々の大きさの結晶8501が、選別デバイス8500の上流のフローチャネル8502において形成され得る。選別デバイス8500は、異なる距離で間隔を空けたピラー8506の連続的な行8504を備える。分枝チャネル8510の入口8508が、行8504の前方に位置決めされる。結晶8501がチャネル8502に沿って流れるにつれて、これらの結晶は、ピラー8506の行8504に遭遇する。最も大きい結晶は、第一の行8504aのピラー8506の間のギャップYの間を通過し得ず、そして行8504aの前に蓄積する。より小さいサイズの結晶は、ピラーの間で連続的により小さくなる間隔を有する連続的な行の前に集められる。一旦、上記の様式で選別されると、先に記載されたような蠕動ポンプ8514を利用して、分枝チャネル8510を通して流体をポンピングすることによって、種々の大きさの結晶が、チャンバ8512内に収集され得る。この選別構造体によって収集される、より大きい結晶は、x線結晶学分析に供され得る。この選別構造体によって収集される、より小さい結晶は、さらなる結晶化の試みにおいて、シード結晶として利用され得る。
結晶の成長に影響を与える別の要因は、シードを入れることである。シード結晶を標的溶液に導入することによって、溶液中の分子が整列し得る温度を提供することによって、結晶の形成が大いに増強され得る。シード結晶が利用可能ではない場合、本発明に従うミクロ流体結晶化方法およびシステムの実施形態は、類似の機能を実施するために、他の構造体を利用し得る。
例えば、上で議論されたように、本発明に従う構造体のチャネルおよびチャンバは、代表的に、微小製造された特徴を含むエラストマー層を、ガラスのような下に重なる基板と接触させては位置することによって、規定される。この基板は、平坦である必要がなく、むしろ、結晶形成を誘導するために計算された大きさおよび/または形状の突出部または奥部を備え得る。本発明の1つの実施形態に従って、下に重なる基板は、規則的な所望の形態を示す好物マトリックスであり得る。あるいは、下に重なる基板は、結晶形成を誘導するように計算された所望の形態または一連の形態を示すために、パターン付けされ得る(すなわち、従来の半導体リソグラフィー技術によって)。このような構造体の表面形態の最適な形態は、標的結晶についての以前の知識によって、決定され得る。
本発明に従う結晶化構造体および方法の実施形態は、従来のアプローチより優れた多数の利点を与える。1つの利点は、極度に小さい体積(ナノリットル/ナノリットル未満)のサンプルおよび結晶化剤が、比較的少量のサンプルを利用して、広範な種々の再結晶条件が使用されることを可能にすることである。
本発明の実施形態に従う結晶化構造体および方法の別の利点は、小さいサイズの結晶化チャンバが、何百、または何千さえもの異なるセットの条件下で、結晶化の試みが同時に実施されることを可能にすることである。再結晶の際に使用される小さい体積のサンプルおよび結晶化剤はまた、価値のある精製された標的材料の最小の廃棄を生じる。
本発明の実施形態に従う結晶化の更なる利点は、操作が比較的単純であることである。具体的には、平行な作動を利用する、流れに対する制御は、少数のみの制御ラインの存在を必要とし、サンプルおよび結晶化剤の導入は、微小加工されたデバイスの操作によって自動的に実施され、多数のサンプルについて、非常に迅速な調製時間を可能にし、サンプル溶液の少ない使用、設定の容易さ、十分に規定された流体界面の作製、平衡動力学に対する制御、およびハイスループットの平行実験を実施する能力というさらなる利点を伴う。これらの利点は、本発明の多数の特徴によって、可能にされる。
ミクロ流体力学は、ナノリットル未満の規模での流体の取り扱いを可能にする。その結果、大きい収容チャンバを使用する必要性がなく、従って、アッセイは、ナノリットルまたはナノリットル未満の規模で実施され得る。極端に小さい体積の利用は、1つの巨視的なフリー界面拡散実験のために必要とされるものと同じサンプル体積を消費して、何千ものアッセイが実施されることを可能にする。このことは、費用のかかる、時間を浪費する増幅工程および精製工程を減少させ、そして容易には発現されない、従って、多量のサンプルから精製されなければならないタンパク質のスクリーニングを可能にする。
ミクロ流体力学は、さらに、調製時間の節約を与える。なぜなら、何百、または何千ものアッセイが、同時に実施され得るからである。先に記載されたような、秤量可能な計量供給技術の使用は、並行実験が、制御機構の複雑さを増加させることなく実施されることを可能にする。
本発明の実施形態に従う結晶化システムのなお別の利点は、溶液並行速度を制御する能力である。結晶成長は、しばしば、非常にゆっくりであり、そしてこの溶液が、平衡化の途中で最適濃度を通過する場合、結晶が形成されない。従って、平衡化の速度を制御し、これによって、中間の濃度で結晶成長を促進することは、有利であり得る。従来の結晶化のアプローチにおいて、ゆっくりにされた平衡化は、蒸気拡散、ゆっくりした透析、および非常に小さい物理的界面のような技術を使用して、達成される。
しかし、本発明の実施形態に従う結晶化は、溶液平行の速度に対する制御を可能にする。体積排除によって結晶化剤を計量供給するシステムにおいて、上に重なる膜は、繰り返し変形し得、各寸法が、さらなる結晶化剤の導入を生じる。体積捕捉によって結晶化剤を計量供給するシステムにおいてサンプルを結晶化剤から分離する弁は、短時間にわたって開かれて、部分的な拡散混合を可能にし得、次いで、閉じられて、中間の濃度でのチャンバ平衡化を可能にする。このプロセスは、最終濃度が達成されるまで繰り返される。体積排除アプローチまたは体積捕捉アプローチのいずれも、中間濃度の全範囲が、単一の反応チャンバを利用して、1回の実験でスクリーニングされることを可能にする。以下に詳細に議論されるように、結晶化プロセスの速度論に対する制御は、サンプルおよび結晶化剤をそれぞれ含むリザーバー内の毛管接続の長さまたは断面積を変化させることによって、制御され得る。
溶液平衡の経時的な操作はまた、より小さい結晶化剤(例えば、塩)に対する高分子(例えば、タンパク質対)の拡散の差示的速度を利用する。大きいタンパク質分子は、塩よりずっとゆっくりと拡散し、界面の弁を迅速に開閉して、結晶化剤の濃度を優位に変化させ、同時に、非常に小さいサンプルは、拡散によって、より大きい体積の結晶化剤中に失われる。さらに、上記のように、すでに記載された多くの結晶化構造体は、異なる時点で同じ反応チャンバ内に異なる結晶化剤を導入することを可能にする。このことは、経時的に変化する溶媒条件を規定する結晶化プロトコルを可能にする。平衡に対する温度制御が、以下で詳細に議論される。
(3.チップ上のタンパク質からの結晶構造の分析)
そのチップの有用性は、低下したコストで高品質回折パターンを迅速に生成するその能力に最終的に依存する。チップ−対−タンパク質構造からの透明な経路は、それゆえに、非常に価値がある。チップ中の結晶から回折データまでのいくつからの経路は、以下で議論される。
チップについての1つのあり得る適用は、従来の技術を使用してその後に再現され得る都合のよい結晶化条件の決定である。そのチップと2つの従来技術(マイクロバッチおよび垂下小滴(hanging drop)との間の対応は、様々である(45%と80%との間)ことが示された。しかし、この変動は、そのチップに特有の特徴ではない。これらの広く使用される結晶化技術は、周辺の対応のみを示し(例えば、リゾチームについての16個の垂下小滴のヒットのうちの14個は、マイクロバッチ中で存在しない)、しばしば、それらの技術自体の中で変動を示す。最初の結晶化条件をスクリーニングするためのツールとして、そのチップは、多くの有望な条件として同定され得る。
図52は、3つの異なる技術を使用する、6つの異なるタンパク質サンプル(リゾチーム、グルコースイソメラーゼ、プロテイナーゼK、トポイソメラーゼIVのBサブユニット、キシラナーゼ、およびウシ膵臓トリプシン)に対して生成されるヒット数の比較を示す。図52において、結晶、微結晶、ロッドおよび針のみがヒットとして計数される一方で、球粒(spherulite)および沈澱は、計数されない。プロテイナーゼKに関するデータは、PMSFありまたはPMSFなしでの実験の合計であり、トポイソメラーゼVIのBサブユニットに関するデータは、垂下小滴データがないので含めなかった(そのチップ(Chip)は、この場合においてマイクロバッチを遙かにしのぐにも拘わらず)。図52を調べると、6つの場合のうちの4つにおいて、そのチップは、いずれの従来の方法よりもより多くのヒットをもたらしたことを示す。
そのチップの生産性のあり得る理由を同定するために、結晶化方法の間の差異を理解するために、本発明者らは、その3つの方法は、短時間スケールおよび長時間スケールの両方に対して異なる熱力学的条件をもたらすことを認識しなければならない。タンパク質結晶化を誘導するために、その結晶化をエネルギー的に好都合にされなければならず(過飽和条件)、これらの条件を結晶の成長が生じるに十分長く維持されなければならない。
過飽和の異なる程度もまた存在する。低い過飽和において、結晶の成長は、支持される傾向がある一方で、新たな結晶の核形成は、起こる可能性が比較的低い。高い過飽和において、核形成は迅速であり、多くの小さな低品質の結晶がしばしば形成され得る。ここで考慮されるその3つの方法において、その過飽和条件は、タンパク質および対溶媒(counter−solvent)の相対濃度および絶対濃度の操作を通じて達成される。
その3つの方法の位相空間の進展/平衡化の比較は、図57に示される。そのマイクロバッチ技術に関して、2つの溶液の混合は、迅速であり、非透過性油層下で維持される場合、有意な濃縮は、時間がたってもほとんど起こらない。従って、マイクロバッチは、位相空間において単一の点のみをサンプリングする傾向があり、経時的にほぼ同じ条件を維持する。
垂下小滴は、2つの溶媒を迅速に混合して、マイクロバッチのように始まるが、次いで、より多くの濃縮された塩/沈澱物レザバを有する蒸気平衡化に起因して、より長い時間スケール(数時間から数日)で濃縮を受ける。その小滴の蒸発脱水の間に、タンパク質対沈殿剤の比は、一定のままである。
ミクロ流体フリー界面拡散(microfluidic free interface diffusion)の記載において以下に詳細に記載されるように、短時間スケールにおいて、そのチップの動力学は、フリー界面拡散実験に最もよく似ている。混合は緩慢であり、種平衡化(タンパク質/沈澱剤/タンパク質/塩)の速度は、種の拡散定数に依存する。塩のような低分子は、より大きな拡散定数を有し、従って、迅速に平衡化する。高分子(例えば、タンパク質)は、小さな拡散定数を有し、よりゆっくりと平衡化する。
キャピラリー中のフリー界面拡散の結晶化技術は、そのチップ結果により近く匹敵し得る。伝統的に、この方法は、十分に規定された界面を信頼性高く設定する困難性に起因して、それほどの頻度では使用されない。しかし、ミクロ流体環境において、信頼性の高いフリー界面拡散実験を確立することは比較的容易である。ミクロ流体フリー界面の形成のさらなる議論は、以下に提示される。結晶化チップの別の適用において、結晶は、従来の方法を使用して回収するために成長させ得る。
高品質結晶がチップで成長され得、そのチップから抽出され得る場合、結晶化方法は、エクスポートされる必要はない。そのチップは、ガラス基材から除去され得るので、タンパク質結晶を抽出することは可能である。
上記で記載されるように、いったんタンパク質結晶が形成されると、その三次元構造についての情報は、その結晶によるx線の回折から得られ得る。しかし、非常にエネルギーが高い放射線をそのタンパク質に適用することによって、熱を発する傾向がある。X線はまたイオン化して、フリーラジカルおよび破壊された結合の生成を生じ得る。熱またはイオン化のいずれかが、結晶が入射x線を回折する能力を破壊または分解し得る。
従って、結晶の形成に際して、低温物質は、代表的には、その結晶性物質をその変化した状態で保つために添加される。しかし、低温液体(cryogen)を突然添加すると、結晶を傷つけることもある。従って、本発明に従う結晶化チップの実施形態にとって、いったん結晶性物質がそこで形成された後に結晶化チャンバに低温液体を直接添加することを可能にすることは有利である。
さらに、タンパク質結晶は、非常に繊細であり、物理的外傷に応じて急激に砕け得るかまたは崩壊し得る。従って、チップの小さなチャンバから無傷の結晶を採取することによって、潜在的障害がその結晶性材料についての価値ある情報の獲得を引き起こす。
従って、本発明に従う結晶化チップの代替的実施形態にとって、チップ中に形成される結晶性材料のx線照射による直接的質問を可能にし、それによって、別個の結晶採取手順の必要性を完全に不要にすることもまた有利である。
従って、図53Aは、本発明に従う結晶成長チップの簡略化した実施形態の平面図を示す。図53Bは、図53Aに示された結晶成長チップの実施形態の線B−B’に沿った簡略化した断面図を示す。
採取/成長チップ9200は、ガラス基材9204を覆うエラストマー部分9202を含む。ガラス基材9204は、3つのエッチングされたウェル9206a、9206bおよび9206cを計算する。エラストマー部分9202をガラス基材9204の上に配置することによって、フローチャネル9208を通って違いと流体連絡状態にある3つの対応するチャンバが規定される。フローチャネル9208を通る物質の流れは、制御チャネル9208に制御ライン9212が重なり合うことによって規定されるバルブ9210によって制御される。
成長/採取チップ9200の操作の間に、バルブ9210は、チャンバ9206a、9206bおよび9206cの内容間の接触を防止するように、最初に作動される。チャンバ9206a、9206bおよび9206cは、次いで、結晶化をもたらすために異なる物質で、ウェル9214を通って別個に充填される。例えば、チャンバ9206aは、タンパク質溶液で充填され得、チャンバ9206bは、結晶化剤で充填され得、チャンバ9206cは、低温液体で充填され得る。
その第1の制御ライン9212は、次いで、バルブ9210aを開放するように作動停止(deactivate)され得、それによって、タンパク質溶液および結晶化剤の拡散を可能にする。結晶9216の形成に際して、残りの制御ライン9212は、作動停止されて、チャンバ9206cからの低温液体の拡散が可能になり、結晶9216が保たれ得る。
次に、チップ全体9200は、x線回折装置に取り付けられ得、x線ビーム9218が、供給源9220から結晶9216に対して適用され、検出器9222によって回折が検知される。図53Bに示されるように、ウェル9206の普通の位置は、エラストマー部分9202および下にあるガラス部分9204の両方の厚みが減少した領域に対応する。このようにして、放射線ビーム9218は、結晶9216に遭遇する前およびその後に、最小量のエラストマーおよびガラス材料を横断することが必要であり、それによって、受容される回折シグナルに対するノイズの悪影響を低下させる。
タンパク質成長/採取チップの一例は、図53A〜Bに関連して上記で記載されているが、本発明に従う実施形態は、この特定の構造に限定されない。例えば、記載されているこの実施形態は、マイクロチャンバがエッチングされているガラス基材を利用するが、本発明に従うミクロ流体構造の製造は、ガラス基材の利用に限定されない。基材において外形を製造するためのあり得る選択肢としては、プラスチックの射出成形、プラスチック(例えば、PMMA)の熱エンボス加工または光硬化性ポリマー(例えば、SU8フォトレジスト)を利用するウェルの製作が挙げられる。
さらに、外形は、レーザー切除を利用して基材(例えば、ガラス)上に形成され得るか、または外形は、ガラス以外の基材(例えば、シリコン)の等方性(isotropic)エッチングもしくは異方性(aniosotropic)エッチングによって形成され得る。
代替の製造方法によって付与される潜在的な利点としては、より密な一体化を可能にする外形のより正確な規定、および製造(例えば、エンボス加工)が容易であることが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、特定の材料(例えば、炭素ベースのプラスチック)は、x線の散乱の発生が少なく、それによって、チップから直接回折データを収集することが容易になる。
結晶採取についてのさらなる可能性は、チップから除去する(off−load)方法を有することである。一旦結晶が形成された後に、または代わりにインキュベーションの前に、除去が行われ得る。これらの除去された結晶は、次いで、巨視的反応を導入するために使用され得るか、または抽出および低温ループに置かれ得る。テイオン流体の添加のための方法もまた開発されれば、その結晶は、急速凍結され得、x線ビームに直接取り付けられ得る。
(4.平衡化に対する一時的制御)
結晶の成長および品質は、平衡化の間に調査される熱力学的条件のみならず、平衡化が起こる速度によっても決定される。従って、平行の動力学を制御することは潜在的に価値がある。
従来の結晶化方法の過程において、平衡化の動力学に対する制御のみが、最初の条件の操作を通じて利用可能であり得る。巨視的なフリー界面拡散について、一旦拡散が開始すると、実験者は、その後の平行加速度に対する制御を有さない。垂下小滴実験について、その平衡化速度は、最初の小滴の大きさ、レザバの全体のサイズ、またはインキュベーションの温度を変えることによって変更され得る。マイクロバッチ実験において、そのサンプルが濃縮される速度は、その小滴の大きさ、ならびに周辺の油の正体および量によって変化され得る。その平衡化速度は、これらのパラメーターに複雑な様式で依存するので、その平衡化の動力学は、精密でない様式で変化され得るに過ぎない。さらに、一旦その実験が開始してしまうと、その平衡化の動力学に対するさらなる制御は、不能である。
対照的に、ゲートが設けられた(gated)4−Fib実験におけるその流体界面は、反応チャンバの寸法および接続チャネルの寸法の操作によって制御され得る。より良好な近似値になるまで、平衡化に要する時間は、必要とされる拡散の長さとして変化する。平衡化速度はまた、その接続チャネルの断面積に依存する。平衡化に必要とされる時間は、従って、その長さ、および接続チャネルの断面積の両方を変化させることによって制御され得る。
図38Aは、3セットの化合物チャンバ9800、9802、および9804の対を示し、各対は、異なる長さΔxのマイクロチャネル9806によって接続される。図38Bは、平衡化時間 対 平衡化距離をプロットする。図38Bは、図38Aのチャンバの平衡化に要する時間が、接続チャネルの長さに従って変化することを示す。
図39は、4つの化合物チャンバ9900、9902、9904、および9906を示し、各々、接続マイクロチャネル9908の異なる配置を有する。マイクロチャネル9908は、同じ長さを有するが、断面積および/または接続チャネルの数が異なる。平衡化の速度は、そのようにして、断面積を減少/増大させることによって(例えば、接続チャネルの数またはそれらのチャネルの寸法を減少/増大させることによって)、増大/減少され得る。
接続チャネルの外形を減価させることによって、平衡化の速度の変化は、結晶成長に対する平衡化動力学の効果を調査するために単一のデバイスで使用され得る。図37A〜Dは、微小自由化胃面からの2つの溶液の部分的拡散平衡により最初に確立された濃度勾配が、封じ込めバルブの作動によって維持され得る実施形態を示す。
図37Aは、別個に作動される界面バルブ10004のいずれかの側面に配置される複数のチャンバ(A〜G)を規定するために、フォーク状制御チャネル10002によって間隔を空けて重なり合うフローチャネル10000を示す。図37Bは、界面バルブ10004が作動され、フローチャネルの最初の半分10000aが第2の溶液と混合され、そのフローチャネルの第2の半分10000bに第2の溶液が入れられた場合の初期時間における溶媒濃度をプロットする。図37Cは、制御チャネル10002が、その特定の時点での濃度勾配を捕捉するその7つのチャンバ(A〜G)を規定するように作動される場合、その後の時間T1での溶媒濃度をプロットする。図37Dは、時間T1でのでのチャンバ(A〜G)の相対濃度をプロットする。
図37Aに示される実施形態において、フォーク状制御チャネルの作動は、その複数のチャンバA〜Gを同時に作り出す。しかし、これは必須ではなく、本発明の代替的実施形態において、複数の制御チャネルは、異なる時間間隔でチャンバA〜Gを独立して作り出し、それによって、最初のチャンバセットがフリー界面にすぐ隣接してつく理恵出された後にさらなる拡散を起こすことを可能にするように利用され得る。
2つの流体間の濃度勾配を捕捉する方法の一実施形態は、ミクロ流体チャネル内に存在するエラストマー膜の第1の側面に第1の流体を提供すること、およびそのエラストマー膜の第2の側面に第2の流体を提供することを包含する。そのエラストマー膜は、その第1の流体と第2の流体との間のミクロ流体フリー界面を規定するために、ミクロ流体チャネルから置き換えられる。その第1の流体およびその第2の流体は、ミクロ流体フリー界面を横断して拡散するようにされる。そのミクロ流体フリー界面からの増大する距離において流動チャネルに沿って配置されるエラストマーバルブの群は、その第1の流体および第2の流体の相対濃度が、ミクロ流体フリー界面を横断して拡散する時間を反映するチャンバの連続を規定するように作動される。
(5.標的物質)
結晶化のための標的は多様である。結晶化のための標的は、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1)成体高分子(サイトゾルタンパク質、細胞外タンパク質、膜タンパク質、DNA、RNAおよびそれらの複雑な組み合わせ)、2)翻訳前に修飾された生体分子および翻訳後に修飾された生体分子(リン酸化、スルホン化、グルコシル化、ユビキチン化などのタンパク質、およびハロゲン化、脱塩基化(abasic)、アルキル化などの核酸、が挙げられるが、これらに限定されない);3)意図的に誘導した高分子(例えば、重原子で標識したDNA、RNAおよびタンパク質(およびそれらの複合体)、セレノメチオニンで標識したタンパク質および核酸(およびそれらの複合体)、ハロゲン化したDNA、RNAおよびタンパク質(およびそれらの複合体)、4)ウイルス全体または巨大な細胞粒子(例えば、リボソーム、レプリソーム、スプライセオソーム、チューブリンフィラメント、アクチンフィラメント、染色体など)、5)低分子化合物(例えば、薬物、リード化合物、リガンド、塩および有機化合物または金属有機化合物、ならびに6)低分子/生体高分子複合体(例えば、薬物/タンパク質複合体、酵素/基質複合体、酵素/産物複合体、酵素/レギュレーター複合体、酵素/インヒビター複合体およびそれらの組み合わせ)。このような標的は、生物学、生化学、物質科学、薬学、化学および物理学を含む広範な科学分野について研究の目標である。
可能なタンパク質修飾の非排他的な列挙は、以下の通りである:5’脱リン酸;デスモシン(リジンから);分解されたカルボキシメチル化メチオニン;オルニチン(アルギニンから);リシノアラニン(システインから);ランチオニン(システインから);デヒドロアラニン(システインから);CNBr処理によってMetから形成されたホモセリン;脱水(−H2O);S−γ−グルタミル(システインに架橋);O−γ−グルタミル−(セリンに架橋);セリンからデヒドロアラニン;アラニノヒスチジン(ヒスチジンのθ炭素またはπ炭素に架橋したセリン);Glnから形成されたピログルタミン酸;N−ピロリドンカルボニル(N末端);Nα−(γ−グルタミル)−リジン;N−(β−アスパルチル)−リジン(架橋);3,3’,5,5’−TerTyr(架橋);ジスルフィド結合形成(シスチン);S−(2−ヒスチジル)−(システインに架橋);S−(3−Tyr)(システインに架橋);3,3’−BiTyr(架橋);イソジTyr(架橋);アリシン(リジンから);アミド形成(C末端);アスパラギンおよびグルタミンの、アスパラギン酸およびグルタミン酸への脱アミド化;シトルリン(citrulline)(アルギニンから);シンデシン(syndesine)(リジンから);メチル化(N末端、リジンのNε、セリンのO、スレオニンまたはC末端、アスパラギンのN);δ−ヒドロキシ−アリシン(リジンから);ヒドロキシル化(リジンのδC、トリプトファンのβC、プロリンのC3またはC4、アスパラギン酸のβC);メチオニンの酸化(スルホキシドに);スルフェン酸(システインから);ピルボイル−(セリン);3,4−ジヒドロキシ−フェニルアラニン(チロシンから)(DOPA);ナトリウム;エチル;N,Nジメチル化(アルギニンまたはリジン);2,4−ビスTrp−6,7−ジオン(トリプトファンから);ホルミル化(CHO);6,7ジオン(トリプトファンから);3,4,6−トリヒドロキシ−フェニルアラニン(チロシンから)(TOPA);3,4−ジヒドロキシル化(プロリン);メチオニンの酸化(スルホンに);3−塩素化(35Clを用いてチロシン);3−塩素化(37Clを用いてチロシン);カリウム;カルバミル化;アセチル化(N末端、リジンのNε、セリンのO)(Ac);N−トリメチル化(リジン);グルタミン酸のγカルボキシル化またはアスパラギン酸のβカルボキシル化;二ナトリウム;ニトロ(NO2);t−ブチルエステル(OtBu)およびt−ブチル(tBu);グリシル(−G−、−Gly−);カルボキシメチル(システイン上);ナトリウム+カリウム;セレノシステイン(セリンから);3,5−ジクロロ化(35Clを用いてチロシン);デヒドロアラニン(Dha);3,5−ジクロロ化(35Clと37Clとの混合物を用いてチロシン);ピルビン酸;アクリルアミジルまたはアクリルアミド付加体;サルコシル;アラニル(−A−、−Ala−);アセトアミドメチル(Acm);3,5−ジクロロ化(37Clを用いてチロシン);S−sn−1−グリセリル)(システイン上);グリセロールエステル(グルタミン酸側鎖上);グリシン(G、Gly);βメルカプトエタノール付加体;フェニルエステル(OPh)(酸性);3−ブロモ化(79Brを用いてチロシン);リン酸化(セリン、スレオニン、チロシンおよびアスパラギン酸のO、リジンのNε);3−ブロモ化(81Brを用いてチロシン);スルホン化(SO3H)(PMC基);硫酸化(チロシンのO);シクロヘキシルエステル(OcHex);ホモセリルラクトン;デヒドロアミノ酪酸(Dhb);γアミノブチリル;2−アミノ酪酸(Abu);2−アミノイソ酪酸(Aib);ジアミノプロピオニル;t−ブチルオキシメチル(Bum);N−(4−NH2−2−OH−ブチル)−(リジン)(ハイプシン);セリル(−S−、−Ser−);t−ブチルスルフェニル(StBu);アラニン(A、Ala);サルコシン(Sar);アニシル;ベンジル(Bzl)およびベンジルエステル(OBzl);1,2−エタンジチオール(EDT);デヒドロプロリル;トリフルオロアセチル(TFA);N−ヒドロキシスクシンイミド(ONSu、OSu);プロリル(−P−、−Pro−);バリル(−V−、−Val−);イソバリル(−I−、−Iva−);t−ブチルオキシカルボニル(tBoc);スレオイル(−T−、−Thr−);ホモセリル(−Hse−);シスチル(−C−、−Cys−);ベンゾイル(Bz);4−メチルベンジル(Meb);セリン(S、Ser);HMP(ヒドロキシメチルフェニル)リンカー;チオアニシル;チオクレシル;ジフタミド(diphthamide)(ヒスチジンから);ピログルタミル;2−ピペリジンカルボン酸(Pip);ヒドロキシプロリル(−Hyp−);ノルロイシル(−Nle−);イソロイシル(−I−、−Ile−);ロイシル(−L−、−Leu−);オルニチル(−Orn−);アスパラギル(−N−、−Asn−);t−アミルオキシカルボニル(Aoc);プロリン(P、Pro);アスパルチル(−D−、−Asp−);スクシニル;バリン(V、Val);ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル(HOBt);ジメチルベンジル(diMeBzl);トレオニン(T、Thr);システイニル化;ベンジルオキシメチル(Bom);p−メトキシベンジル(Mob、Mbzl);4−ニトロフェニル、p−ニトロフェニル(ONp);システイン(C、Cys);クロロベンジル(ClBzl);ヨウ素化(ヒスチジン[C4]またはチロシン[C3]);グルタミル(−Q−、−Gln−);N−メチルリジル;リジル(−K−、−Lys−);O−メチルアスパルタミル;グルタミル(−E−、−Glu−);Nα−(γ−グルタミル)−Glu;ノルロイシン(Nle);ヒドロキシアスパルタミル;ヒドロキシプロリン(Hyp);bb−ジメチルシステニル;イソロイシン(I、Ile);ロイシン(L、Leu);メチオニル(−M−、−Met−);アスパラギン(N、Asn);ペントース(Ara、Rib、Xyl);アスパラギン酸(D、Asp);Dmob(ジメトキシベンジル);ベンジルオキシカルボニル(Z);アダマンチル(Ada);p−ニトロベンジルエステル(ONb);ヒスチジル(−H−、−His−);N−メチルグルタミル;O−メチルグルタミル;ヒドロキシリジル(−Hyl−);メチルメチオニル;グルタミン(Q、Gln);アミノエチルシステニル;ペントシル;デオキシヘキソース(Fuc、Rha);リジン(K、Lys);アミノエチルシステニル(−AECys−);4−グリコシルオキシ−(ペントシル、C5)(プロリン);メチオニルスルホキシド;グルタミン酸(E、Glu);フェニルアラニル−(−F−、−Phe−);ピリジルアラニル;フルオロフェニルアラニル;2−ニトロベンゾイル(NBz);メチオニン(M、Met);3−メチルヒスチジル;2−ニトロフェニルスルフェニル(Nps);4−トルエンスルホニル(トシル、Tos);3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys);ヒスチジン(H、His);3,5−ジブロモ化(79Brを用いてチロシン);アルギニル(−R−、−Arg−);シトルリン;3,5−ジブロモ化(79Brおよび81Brの混合物を用いてチロシン);ジクロロベンジル(Dcb);3,5−ジブロモ化(81Brを用いてチロシン);カルボキシアミドメチルシステニル;カルボキシメチルシステニル;メチルフェニルアラニル;ヘキソースアミン(GalN、GlcN);カルボキシメチルシステイン(Cmc);N−グルコシル(リジンのN末端またはNε)(アミノケトース);O−グリコシル−(セリンまたはスレオニン);ヘキソース(Fru、Gal、Glc、Man);イノシトール;メチオニルスルホン;チロシニル(−Y−、−Tyr−);フェニルアラニン(F、Phe);2,4−ジニトロフェニル(Dnp);ペンタフルオロフェニル(Pfp);ジフェニルメチル(Dpm);ホスホセリル;2−クロロベンジルオキシカルボニル(CIZ);ナフチルアセチル(napthyl acetyl);イソプロピルリジル;N−メチルアルギニル、エタンジチオール(ethaneditohiol)/TFA環式付加体;カルボキシグルタミル(Gla);アセトアミドメチルシステニル;アクリルアミジルシステニル;アルギニン(R、Arg);N−グルクロニル(N末端);デルタ−グリコシルオキシ−(リジン)またはβ−グリコシルオキシ−(フェニルアラニンおよびチロシン);4−グリコシルオキシ−(ヘキソシル、C6)(プロリン);ベンジルセリル;N−メチルチロシニル;p−ニトロベンジルオキシカルボニル(4Nz);2,4,5−トリクロロフェニル;2,4,6−トリメチルオキシベンジル(Tmob);キサンチル(Xan);ホスホスレオニル;チロシン(Y、Tyr);クロロフェニルアラニル;メシチレン−2−スルホニル(Mts);カルボキシメチルリジル;トリプトファニル(−W−、−Trp−);N−リポイル−(リジン上);マトリックスαシアノMH+;ベンジルスレオニル;ベンジルシステニル;ナフチルアラニル;スクシニルアスパルタミル;スクシンイミドフェニルカルボ・・・;HMP(ヒドロキシメチルフェニル)/TFA付加体;N−アセチルヘキソースアミン(GalNAc、GlcNAc);トリプトファン(W、Trp);シスチン((Cys)2);ファルネシル化;S−ファルネシル−;ミリストレイル化(1つの二重結合を有するミリストイル);ピリジルエチルシステニル;ミリストイル化;4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr);2−ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ);ホルミルトリプトファニル;ベンジルグルタミル;アニソール付加グルタミル;S−システニルシステニル;9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc);リポ酸(リジンへのアミド結合);ビオチニル化(リジンへのアミド結合);ジメトキシベンズヒドリル(Mbh);N−ピリドキシル(リジン上);ピリドキサルリン酸(リジンから形成されるシッフ塩基);ニコチニルリジル;ダンシル(Dns);2−(p−ビフェニル)イソプロピル−オキシカルボニル(Bpoc);パルミトイル化;「トリフェニルメチル(トリチル、Trt)」;チロシニルスルフェート;ホスホチロシニル;Pbf(ペンタメチルジヒドロベンゾフランスルホニル);3,5−ジヨード化(チロシン);「3,5−ジ−I」;Nα−(γ−グルタミル)−Glu2;O−GlcNAc−1−ホスホリル化(セリン);「2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)」;ステアロイル化;ゲラニルゲラニル化;S−ゲラニルゲラニル;5’phos dシチジニル;ヨードチロシニル;アルドヘキソシルリジル;シアリル;N−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc、NANA、SA);5’phos dチミジニル;5’phosシチジニル;グルタチオン化;O−ウリジニル化(チロシン);5’phosウリジニル;S−ファルネシルシステニル;N−グリコールノイラミン酸(NeuGc);5’phos dアデノシル;O−パンテテインリン酸化(セリン);SucPhencarbリジル;5’phos dグアノシル;5’phosアデノシニル;O−5’−アデノシル化(チロシン);4’−ホスホパンテテイン;GL2;S−パルミチルシステニル;5’phosグアノシル;ビオチニルリジル;Hex−HexNAc;Nα−(γ−グルタミル)−Glu3;ジオクチルフタレート;PMCリジル;アエダンス(Aedans)システニル;ジオクチルフタレートナトリウム付加体;ジヨードチロシニル;PMCアルギニル;S−補酵素A;AMPリジル;3,5,3’−トリヨードサイロニン;(チロシンから);S−(sn−1−ジパルミトイル−グリセリル)−(システイン上);S−(ADP−リボシル)−(システイン上);N−(ADP−リボシル)−(アルギニン上);O
−ADP−リボシル化(グルタミン酸またはC末端上);ADP−リボシル化(NADから);S−フィコシアノビリン(システイン上);S−ヘム(システイン上);Nθ−(ADP−リボシル)ジフタミド(ヒスチジン);NeuAc−Hex−HexNAc;MGDG;O−8α−フラビン([FAD])−(チロシン);S−(6−フラビン[FAD])−(システイン上);NθおよびNπ−(8α−フラビン)(ヒスチジン上);(Hex)3−HexNAc−HexNAc;(Hex)3−HexNAc−(dHex)HexNAc。
可能な核酸改変(例えば、塩基特異的改変、糖特異的改変、またはリン特異的改変)の非排他的な一覧は、以下の通りである:ハロゲン化(F、Cl、Br、I):無塩基部位;アルキル化;架橋可能な付加物(例えば、チオールまたはアジド);チオール化;脱アミド;蛍光基標識、およびグリコシル化。
可能な重原子誘導体化剤の非排他的な一覧は、以下の通りである:ヘキサクロロイリジウム酸(III)カリウム;ヘキサクロロイリジウム酸(IV)カリウム;ヘキサクロロイリジウム酸(IV)ナトリウム;ヘキサクロロイリジウム酸(III)ナトリウム;ヘキサニトリトイリジウム酸(III)カリウム;ヘキサクロロイリジウム酸(III)アンモニウム;塩化イリジウム(III);ヘキサニトラトイリジウム酸(III)カリウム;臭化イリジウム(III);塩化バリウム(II);酢酸バリウム(II);硝酸カドミウム(II);ヨウ化カドミウム(II);硝酸鉛(II);酢酸鉛(II);塩化トリメチル鉛(IV);酢酸トリメチル鉛(IV);ヘキサクロロ鉛酸(IV)アンモニウム;塩化鉛(II);ヘキサクロロロジウム酸(III)ナトリウム;酢酸ストロンチウム(II);チオマロナト金酸(I)二ナトリウム;ジシアノ金酸(I)カリウム;ジシアノ金酸(I)ナトリウム;チオスルファト金酸(III)ナトリウム;テトラシアノ金酸(III)カリウム;テトラクロロ金酸(III)カリウム;テトラクロロ金酸(III)水素;テトラクロロ金酸(III)ナトリウム;テトラヨード金酸(III)カリウム;テトラブロモ金酸(III)カリウム;(アセタト−o)メチル水銀;メチル(ニトラト−o)水銀;クロロメチル水銀;ヨードメチル水銀;クロロエチル水銀;メチル水銀カチオン;トリエチル(m3−ホスファト(3−)−O,O’,O’’)トリ水銀eth;[3[(アミノカルボニル)アミノ]−2−メトキシプロピル]クロム;1,4ジアセトキシ水銀2−3ジメトキシブタン;メトキシル(meroxyl)マーキュヒドリン;テトラキス(アセトキシ水銀)−メタン;1,4ビス(クロロ水銀)−2,3−ブタンジオール;ジアセトキシ水銀クロロ酢酸エチル(dame);酸化水銀(II);メチル水銀−2−メルカプトエタノール;3,6ビス(水銀メチルジオキサン酢酸);エチル水銀カチオン;Billman’s dimercurial;パラクロロ水銀フェニルアセテート(pcma);水銀フェニルグリオキサル(mpg);Thiomersal、チオサリチル酸エチル水銀[emts];4−クロロマーキュリベンゼンスルホン酸(4−chloromercuribenesulphonic acid);2,6ジクロロ水銀−4−ニトロフェノール(dcmnp);[3−[[2(カルボキシメトキシ)ベンゾイル]アミノ(mino)−2メトキシprop;パラクロロ水銀ベンゾエート(pcmb),4−クロロ水銀;(アセタト−o)フェニル水銀;安息香酸フェニル水銀(pmb);パラヒドロキシ水銀ベンゾエート(phmb);イミドコハク酸水銀/水銀スクシンイミド;3−ヒドロキシ水銀ベンズアルデヒド;2−アセトキシ水銀スルファニルアミド(sulhpanilamide);3−アセトキシ水銀−4アミノベンゼンスルホンアミド;メチル水銀チオグリコール酸(thioclycolic acid)(mmtga);2−ヒドロキシ水銀−トルエン−4−スルホン酸(hmts);アセトアミノフェニル水銀アセテート(apma);[3−[(アミノカルボニル)アミノ]−3−メトキシプロピル2−クロロ;パラ−ヒドロキシ水銀ベンゼンスルホネート(phmbs);オルト−クロロ水銀フェノール(ocmp);ジアセトキシ水銀ジプロピレンジオキシド(dmdx);パラ−アセトキシ水銀アニリン(pama);(4−アミノフェニル)クロロ水銀;アニリン水銀カチオン;3−ヒドロキシ−水銀−sスルホサリチル酸(msss);3または5ヒドロキシ水銀サリチル酸(hmsa);ジフェニル水銀;2,6ジアセトキシ水銀メチル1−4チオキサン(dmmt);2,5−ビス(bls)(クロロ水銀)フラン;オルトクロロ水銀ニトロフェノール(ocmnp);5−水銀デオキシウリジンモノ硫酸;サリチル酸水銀;[3−[[2−(カルボキシメトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−メトキシpro;3,3ビス(ヒドロキシ水銀)−3−ニトラト水銀ピルビン酸(pyruvic);3−クロロ水銀ピリジン;3,5ビスアセトキシ水銀メチルモルホリン;オルト−水銀フェノールカチオン;パラ−カルボキシメチルメルカプト水銀ベンゼンスルホニル;パラ−水銀ベンゾイルグルコサミン;3アセトオシ水銀(acetetoxymercuri)−5−ニトロサリチルアルデヒド(msa);テトラクロロ水銀(II)アンモニウム;テトラチオシアナト水銀(II)カリウム;テトラチオシアナト水銀(II)ナトリウム;テトライソチオシアナト水銀(II)カリウム;テトラヨード(tetraido)水銀(II)カリウム;テトラチオシアナト水銀(II)アンモニウム;テトラブロモ水銀(II)カリウム;テトラシアノ水銀(II)カリウム;臭化水銀(II);チオシアン酸水銀(II);シアン化水銀(II);ヨウ化水銀(II);塩化水銀(II);酢酸水銀(II);酢酸水銀(I);ジクロロジアミノ水銀(II);β水銀−メルカプトエチルアミン塩酸;硫酸水銀(II);水銀(II)クロロanilate;酢酸二水銀;クロロ(2−オキソエチル)水銀;硝酸フェノール水銀;メルカプトエタノール水銀;塩化水銀メルカプトエチルアミン;チオグリコール酸水銀(ナトリウム塩);o−ヒドロキシ水銀−p−ニトロフェノール/2−ヒドロキシ水銀−4−;パラクロロ水銀フェノール(pcmp);チオサリチル酸アセチル水銀(amts);ヨウ素;ヨウ化カリウム(ヨウ素);4−ヨードピラゾール;O−ヨードベンゾイルグルコサミン(O−iodobenzoylglucasamine);P−ヨードベンゾイルグルコサミン(P−iodobenzoylglucasamine);ヨウ化カリウム/クロラミンt;ヨウ化アンモニウム;3−イソチオシアナト−4−ヨードベンゼンスルホンネート;ヨウ化カリウム;3’−ヨードフェニルトリアジン(3’−iodo phenyltrazine);4’−ヨードフェニルトリアジン(4’−iodo phenyltrazine);ヨウ化ナトリウム/ヨウ素;硝酸銀;トリニトリドスルホキシル酸銀();Tobenamed;塩化サマリウム(III);塩化ツリウム(III);塩化ルテチウム(III);塩化ユーロピウム(III);塩化テルビウム(III);塩化ガドリニウム(III);塩化エルビウム(III);塩化ランタン(III);硝酸サマリウム(III);酢酸サマリウム(III);サマリウム(III)カチオン;塩化プラセオジミウム(III);塩化ネオジミウム(III);塩化イッテルビウム(III);硫酸ツリウム(III);硫酸イッテルビウム(III);硫酸ガドリニウム(III);酢酸ガドリニウム(III);塩化ジスプロシウム(III);硝酸エルビウム(III);塩化ホルミウム(III);塩化ペンタアミノルテニウム(III);セシウムニトリドトリオキソ(nitridotiroxo)オスミウム(viii);テトラオキソオスミウム酸カリウム;ヨウ化ヘキサアミノオスミウム(III);ヘキサクロロオスミウム酸(IV)アンモニウム;塩化オスミウム(III);ヘキサクロロオスミウム酸(IV)カリウム;トリクロロトリスカルボニルオスミウム酸(?)セシウム;ジニトリドジアミン白金(II);シスジクロロジメチルアミン(dichlorodimethylammido)白金(II);ジクロロジアンミン白金(II);ジブロモジアンミン白金(II);ジクロロエチレンジアミン白金(II);ジクロロジニトリト白金酸(II)カリウム;ジエチレンジアミン(Diethylenediamene)白金(II);ジオキシラト白金酸(II)カリウム;ジクロロビス(ピリジン)白金(II);カリウム(トリメチル ジベンジルアミン)白金(?);テトラブロモ白金酸(II)カリウム;テトラクロロ白金酸(II)カリウム;テトラニトリト白金(II)カリウム;テトラシアノ白金酸(II)カリウム;テトラシアノ白金酸(II)ナトリウム;テトラチオシアナト白金酸(II)カリウム;テトラニトリト白金酸(II)アンモニウム;テトライソシアナト白金酸(II)カリウム;テトラシアノ白金(II)アンモニウム;テトラクロロ白金酸(II)アンモニウム;ジニトリトジオキサラト白金酸(IV)カリウム;ジクロロテトラアミノ(Dichlorotetraammino)白金(IV);ジブロモジニトリトジアンミン白金(IV);ヘキサニトリト白金酸(IV)カリウム;ヘキサクロロ白金酸(IV)カリウム;ヘキサブロモ白金酸(IV)カリウム;ヘキサクロロ白金酸(IV)ナトリウム;ヘキサヨード白金酸(IV)カリウム;ヘキサチオシアナト白金酸(IV)カリウム;テトラクロロビス(ピリジン)白金(IV);ヘキサクロロ白金酸(IV)アンモニウム;ジ−μ−ヨードビス(エチレンジアミン)二白金(II)n;ヘキサイソチオシアナト白金酸(IV)カリウム;テトラヨード白金酸(II)カリウム;2,2’,2’’ターピリジル白金(II);2ヒドロキシエタンチオレート(2,2’,2’’ターピリジン(terpyeidine))pla;テトラニトロ白金酸(II)カリウム;硝酸トリメチル白金(II);テトラオキソレニウム酸(VII)ナトリウム;テトラオキソレニウム酸(VI)カリウム;テトラオキソレニウム酸(VII)カリウム;ヘキサクロロレニウム(IV)カリウム;塩化レニウム(III);ヘキサクロロレニウム酸(IV)アンモニウム;二塩化ジメチルすず(II);硝酸トリウム(IV);オキシ塩化ウラン(VI);オキシ硝酸ウラン(VI);オキシ酢酸ウラン(VI);オキシピロリン酸ウラン(VI);ペンタフルオロオキシウラン酸(VI)カリウム;ペンタフルオロオキシウラン酸(VI)ナトリウム;ナノフルオロジオキシウラン酸(VI)カリウム;トリ酢酸オキシウラン酸(VI)ナトリウム;オキシシュウ酸ウラン(VI);セレノシアン酸アニオン;タングステン酸ナトリウム;12−タングストリン酸ナトリウム;酢酸タリウム(I);フッ化タリウム(I);硝酸タリウム(I);テトラクロロパラジウム酸(II)カリウム;テトラブロモパラジウム酸(II)カリウム;テトラシアノパラジウム酸(II)カリウム;テトラヨードパラジウム酸(II)カリウム;塩化コバルト(II)。
チップを形成し得るPDMS材料は、これらの標的の多く(特に、生物学的サンプル)に十分に適している。PDMSは、そのような分子が可溶化状態でそれらの適切な形状、折り畳み、および活性を維持することを可能にする、非反応性で生物学的に不活性な化合物である。このマトリクスおよび系は、数百ダルトンからメガダルトンのレジーム(regime)の範囲の標的サイズおよび分子量に適応し得る。小タンパク質およびペプチドからウイルスおよび高分子複合体にわたる生物学的標的がこの範囲に含まれ、そして、一般的に、3〜10kDaから>1〜2MDaのいずれかの大きさである。
(6.溶質/試薬の型)
結晶化スクリーニングの間に、多くの化学化合物が使用され得る。これらの化合物としては、塩、低分子量有機化合物および高分子量有機化合物、緩衝液、リガンド、低分子薬剤、界面活性剤、ペプチド、架橋剤、ならびに誘導体化剤が挙げられる。合わせて、これらの化学物質は、液滴中のイオン強度、pH、溶質濃度、および標的濃度を変化させるために使用され得、そして標的を改変するためにさえも使用され得る。結晶化を達成するためのこれらの化学物質の所望の濃度は変化し得、そしてナノモル濃度からモル濃度の範囲であり得る。代表的な結晶化混合物は、固定されているが、経験的に決定された型および濃度の「沈殿剤」、緩衝液、塩、および他の化学添加物(例えば、金属イオン、塩、低分子化学添加物、凍結防止剤、など)のセットを含む。水は、多くの生物学的標的の結晶化試験において重要な溶媒である。なぜならば、これらの分子の多くは、活性および折り畳みを維持するために水和する必要があり得るからである。
加圧化ガスプライミング(POP)技術と結び付けて上述したように、気体に対するPDMSの浸透性、およびPDMSと溶媒との適合性は、使用する沈殿剤を決定する上で重要な因子であり得る。
「沈殿」剤は、標的を可溶状態から不溶状態への押し進めるよう作用し、そして容積の排除、溶媒の誘電率の変更、電荷遮蔽、および分子の集中化をもって作用し得る。このチップの特定の実施形態のPDMS材料と適合性の沈殿剤としては、不揮発性塩、高分子量ポリマー、極性溶媒、水溶液、高分子量アルコール、二価金属が挙げられるがこれらに限定されない。
沈殿化合物(高分子量有機物質および低分子量有機物質、ならびに特定の塩が挙げられる)は、1%未満〜40%より高い濃度、または<0.5M〜4Mより高い濃度で使用され得る。水自体は、可溶性を維持するために特定レベルのイオン強度を必要とするサンプルに対して、沈殿様式で作用し得る。多くの沈殿剤はまた、結晶化スクリーニングの化学的多様性を増加させるために、互いに混合され得る。本明細書に記載されるミクロ流体デバイスは、広範囲のこのような化合物に容易に適合され得る。さらに、多くの沈殿剤(例えば、長鎖有機物質および短鎖有機物質)は、高濃度で非常に粘稠性であり、ほとんどの流体操作デバイス(例えば、ピペットまたはロボットシステム)に対して問題を引き起こす。本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスのポンプおよびバルブの作用により、粘稠性因子の操作が可能となる。
特定のエラストマー材料と適合性の溶媒/沈殿剤の調査は、最適な結晶化剤を同定するために実施され得、最適な結晶化剤は、標準的なスクリーニングよりも効率的な、チップ用に仕立てられた結晶化スクリーニング反応を開発するのに使用され得る。
沈殿剤として使用され得る塩の非排他的な一覧は、以下の通りである:酒石酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);リン酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);酢酸塩(Li、Na、K、Na/K、Mg、Ca、Zn、NH4);蟻酸塩(Li、Na、K、Na/K、Mg、NH4);クエン酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);塩化物塩(Li、Na、K、Na/K、Mg、Ca、Zn、Mn、Cs、Rb、NH4);硫酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);リンゴ酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4);グルタミン酸塩(Li、Na、K、Na/K、NH4)。
沈殿剤として使用され得る有機性材料の非排他的な一覧は、以下の通りである:PEG400;PEG1000;PEG1500;PEG2k;PEG3350;PEG4k;PEG6k;PEG8k;PEG10k;PEG20k;PEG−MME550;PEG−MME750;PEG−MME2k;PEG−MME5k;PEG−DME2k;ジオキサン;メタノール;エタノール;2−ブタノール;n−ブタノール;t−ブタノール;Jeffamine M−600;イソプロパノール;2−メチル−2,4−ペンタンジ
オール;1,6ヘキサンジオール。
溶液のpHは、緩衝化剤の含有により変更され得る;生物学的材料の代表的なpH範囲は、3.5〜10.5の値の間のいずれかであり、そして緩衝液の濃度は、一般的に、0.01Mと0.25Mとの間である。本明細書中に記載されるミクロ流体デバイスは、広範囲のpH値(特に、生物学的標的に適したpH値)に容易に適合され得る。
可能な緩衝剤の非排他的な一覧は、以下の通りである:酢酸ナトリウム;HEPES;カコジル酸ナトリウム;クエン酸ナトリウム;コハク酸ナトリウム;リン酸ナトリウムカリウム;TRIS;マレイン酸TRIS;マレイン酸イミダゾール;ビストリスプロパン;CAPSO、CHAPS、MES、およびイミジゾール(imidizole)。
添加物は、標的の溶解度および/または活性の挙動に影響を及ぼす低分子である。このような化合物は、結晶化スクリーニングを迅速化し得るか、または標的の代替の結晶形態を生成し得る。添加物は、化学物質のほぼ全ての考えられ得る形態を取り得るが、代表的には、一価塩または多価塩(無機または有機)、酵素リガンド(基質、生成物、アロステリックエフェクター)、化学架橋剤、界面活性剤および/または脂質、重金属、有機金属化合物、微量の沈殿剤、ならびに低分子量有機物質である。
以下は、可能な添加物の非排他的な一覧である:2−ブタノール;DMSO;ヘキサンジオール;エタノール;メタノール;イソプロパノール;フッ化ナトリウム;フッ化カリウム;フッ化アンモニウム;無水塩化リチウム;塩化マグネシウム六水和物;塩化ナトリウム;塩化カルシウム二水和物;塩化カリウム;塩化アンモニウム;ヨウ化ナトリウム;ヨウ化カリウム;ヨウ化アンモニウム;チオシアン酸ナトリウム;チオシアン酸カリウム;硝酸リチウム;硝酸マグネシウム六水和物;硝酸ナトリウム;硝酸カリウム;硝酸アンモニウム;蟻酸マグネシウム;蟻酸ナトリウム;蟻酸カリウム;蟻酸アンモニウム;酢酸リチウム二水和物;酢酸マグネシウム四水和物;酢酸亜鉛二水和物;酢酸ナトリウム三水和物;酢酸カルシウム水和物;酢酸カリウム;酢酸アンモニウム;硫酸リチウム一水和物;硫酸マグネシウム七水和物;硫酸ナトリウム十水和物;硫酸カリウム;硫酸アンモニウム;酒石酸二ナトリウム二水和物;酒石酸カリウムナトリウム四水和物;酒石酸二アンモニウム;リン酸二水素ナトリウム一水和物;リン酸水素二ナトリウム二水和物;リン酸二水素カリウム;リン酸水素二カリウム;リン酸二水素アンモニウム;リン酸水素二アンモニウム;クエン酸三リチウム四水和物;クエン酸三ナトリウム二水和物;クエン酸三カリウム一水和物;クエン酸水素二アンモニウム;塩化バリウム;塩化カドミウム二水和物;塩化コバルト二水和物;塩化銅二水和物;塩化ストロンチウム六水和物;塩化イットリウム六水和物;エチレングリコール;グリセロール無水物;1,6ヘキサンジオール;MPD;ポリエチレングリコール400;トリメチルアミンHCl;グアニジンHCl;尿素;1,2,3−ヘプタントリオール;ベンズアミジンHCl;ジオキサン;エタノール;イソ−プロパノール;メタノール;ヨウ化ナトリウム;L−システイン;EDTAナトリウム塩;NAD;ATP二ナトリウム塩;D(+)−グルコース一水和物;D(+)−スクロース;キシリトール;スペルミジン;スペルミンテトラ−HCl;6−アミノカプロン酸;1,5−ジアミノペンタンジHCl;1,6−ジアミノヘキサン;1,8−ジアミノオクタン;グリシン;グリシル−グリシル−グリシン;三塩化ヘキサミンコバルト;タウリン;ベタイン一水和物;ポリビニルピロリドンK15;非界面活性剤スルホ−ベタイン195;非界面活性剤スルホ−ベタイン201;フェノール;DMSO;硫酸デキストランナトリウム塩;jeffamine M−600;2,5ヘキサンジオール;(+/−)−1,3ブタンジオール;ポリプロピレングリコールP400;1,4ブタンジオール;tert−ブタノール;1,3プロパンジオール;アセトニトリル;γブチロラクトン;プロパノール;酢酸エチル;アセトン;ジクロロメタン;n−ブタノール;2,2,2トリフルオロエタノール;DTT;TCEP;ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、ノナエチレングリコールモノラウリルエーテル;ポリオキシエチレン(9)エーテル;オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノラウリルエーテル;ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル;ドデシルβ−D−マルトピラノシド;ラウリル酸スクロースエステル;シクロヘキシル−ペンチル−β−D−マルトシド;ノナエチレングリコールオクチルフェノールエーテル;臭化セチルトリメチルアンモニウム;N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)−デオキシコールアミン;デシル−β−D−マルトピラノシド;ラウリルジメチルアミンオキシド;シクロヘキシル−ペンチル−β−D−マルトシド;n−ドデシルスルホベタイン、3−(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート;ノニル−β−D−グルコピラノシド;オクチル−β−D−チオグルコピラノシド,OSG;N,N−ジメチルデシルアミン−β−オキシド;メチル−6−O−(N−ヘプチルカルバモイル)−a−D−グルコピラノシド;スクロースモノカプロイル酸;n−オクタノイル−β−Dフルクトフラノシル−a−D−グルコピラノシド;ヘプチル−β−D−チオグルコピラノシド;オクチル−β−D−グルコピラノシド、OG;シクロヘキシル−プロピル−β−D−マルトシド;シクロヘキシルブタノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;n−デシルスルホベタイン、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート;オクタノイル−N−メチルグルカミド、OMEGA;ヘキシル−β−D−グルコピラノシド;Brij35;Brij58;TritonX−114;TritonX−305;TritonX−405;Tween20;Tween80;ポリオキシエチレン(6)デシルエーテル;ポリオキシエチレン(9)デシルエーテル;ポリオキシエチレン(10)ドデシルエーテル;ポリオキシエチレン(8)トリデシルエーテル;イソプロピル−β−D−チオガラクトシド;デカノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;ペンタエチレングリコールモノオクチルエーテル;3−[(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−l−プロパンスルホネート;3−[(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート;シクロヘキシルペンタノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;ノナノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;シクロヘキシルプロパノール−N−ヒドロキシエチルグルカミド;オクタノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;シクロヘキシルエタノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド;臭化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム;n−ヘキサデシル−β−D−マルトピラノシド;n−テトラデシル−β−D−マルトピラノシド;n−トリデシル−β−D−マルトピラノシド;ドデシルポリ(エチレングリコエーテル)n;n−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート;n−ウンデシル−β−D−マルトピラノシド;n−デシル−β−D−チオマルトピラノシド;n−ドデシルホスホコリン;a−D−グルコピラノシド、β−D−フルクトフラノシルモノデカン酸、スクロースモノカプリン酸;1−s−ノニル−β−D−チオグルコピラノシド;n−ノニル−β−D−チオマルトピラノシド(thiomaltoyranoside);N−ドデシル−N,N−(ジメチルアンモニオ(dimethlammonio))酪酸;n−ノニル−β−D−マルトピラノシド;シクロヘキシル−ブチル−β−D−マルトシド;n−オクチル−β−D−チオマルトピラノシド;n−デシルホスホコリン;n−ノニルホスホコリン;ノナノイル−N−メチルグルカミド;1−s−ヘプチル−β−D−チオグルコピラノシド;n−オクチルホスホコリン;シクロヘキシル−エチル−β−D−マルトシド;n−オクチル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート;シクロヘキシル−メチル−β−D−マルトシド。
凍結溶媒は、寒剤(例えば、液体窒素、液体プロパン、液体エタン、または窒素ガスもしくはヘリウムガス)中での急速冷却(全て、約100〜120°K)に対して標的結晶を安定化し、結晶が氷ではなくガラス質のガラス中に包埋されるようにする薬剤である。任意の数の塩または低分子量有機化合物が、凍結防止剤として使用され得、代表的な凍結防止剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:MPD、PEG−400(ならびにPEG誘導体および高分子量PEG化合物の両方)、グリセロール、糖(キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、グルコースなど)、エチレングリコール、アルコール(短鎖および長鎖の両方、揮発性および不揮発性の両方)、LiOAc、LiCl、LiCHO2、LiNO3、Li2SO4、Mg(OAc)2、NaCl、NaCHO2、NaNO3など。繰り返すが、本発明に従うミクロ流体デバイスを構築する材料は、一定範囲のこのような化合物と適合性であり得る。
これらの化学物質の多くは、研究者が「疎行列(sparse matrix)」スクリーニング実験および「グリッド」スクリーニング実験の両方を実施するのを可能にする、種々の販売元(Hampton Research of Laguna Niguel、CA、Emerald Biostructures of Bainbridge
Island、WA、およびJena BioScience of Jena、Germanyが挙げられるがこれらに限定されない)からの予め規定されたスクリーニングキットにおいて獲得され得る。疎行列スクリーニングは、可能な限り少ない条件で可能な限り多くの沈殿剤、緩衝液、および添加剤化学物質の空間(additive chemical space)を無作為にサンプリングすることを試みる。グリッドスクリーニングは、代表的に、互いに対する2つまたは3つのパラメータ(例えば、沈殿剤濃度 対
pH)の体系的な変動で構成される。両方の型のスクリーニングの使用が、結晶化試験において成功しており、そしてこれらのスクリーニングにおいて使用される化学物質および化学的物質の組み合わせの大部分が、本発明の実施形態に従うチップ設計およびマトリクスと適合性である。
さらに、ミクロ流体デバイスの現在および将来の設計は、特定の標的または標的のセットに対する異なる化学物質のアレイの柔軟なコンビナトリアルスクリーニングを可能にし得る。これは、ロボットスクリーニングまたは手作業のスクリーニングのいずれによっても困難なプロセスである。この後者の局面は、初回スクリーニングによりなされる最初の成功を最適化するために特に重要である。
(7.結晶化のためのさらなるスクリーニングの変数)
化学的可変性に加えて、多数の他のパラメータは、結晶化スクリーニングの間に変更され得る。このようなパラメータとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:1)結晶化試験の容量、2)結晶化溶液に対する標的溶液の比率、3)標的濃度、4)二次的な低分子または高分子との標的の共結晶化、5)水和、6)インキュベーション時間、7)温度、8)圧力、9)接触表面、10)標的分子に対する改変、および11)重力。
結晶化試験の容量は、ピコリットルからミリリットルの範囲の全ての考えられ得る値の容量であり得る。代表的な値としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:0.1、0.2、0.25、0.4、0.5、0.75、1、2、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、400、450、500、550、600、700、750、800、900、1000、1100、1200、1250、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2250、2500、3000、4000、5000、6000、7000、7500、8000、9000、および10000nL。先に記載されたミクロ流体デバイスは、これらの値を使用し得る。
特に、結晶化試験についての低容量範囲(<100nL)の使用は、本発明の実施形態に従うミクロ流体チップの実施形態の明確な利点である。なぜならば、このような低容量の結晶化チャンバが容易に設計および構築され得、多量の貴重な標的分子に対する必要性を最小限に抑えるからである。本発明に従う実施形態の標的物質の低消費は、十分でない生物学的サンプル(例えば、膜タンパク質、タンパク質/タンパク質複合体、およびタンパク質/核酸複合体)を結晶化する試み、および目的の標的に対する結合についてのリードライブラリーの低分子薬物スクリーニングにおいて特に有用である。
結晶化混合物に対する標的溶液の比率はまた、結晶化スクリーニングおよび最適化における重要な変数を構成し得る。これらの比率は、全ての考えられ得る値の比率であり得るが、代表的には、1:100〜100:1の範囲の標的:結晶化溶液である。代表的な標的:結晶化溶液または結晶化溶液:標的の比率としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:25、1:20、1:15、1:10、1:9、1:8、1:7.5、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2.5、1:2、1:1、2:3、3:4、3:5、4:5、5:6、5:7、5:9、6:7、7:8、8:9、および9:10。先に記載されたように、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスは、単一のチップにおいて複数の比率を同時に使用するよう設計され得る。
結晶化化学物質濃度と同様に、標的濃度は、一定範囲の値であり得、そして結晶化スクリーニングにおいて重要な変数である。代表的な濃度範囲は、<0.5mg/ml〜>100mg/mlのいずれかであり得、5〜30mg/mlの間の値が最も一般的に使用され得る。本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスは、この範囲の値と容易に適合され得る。
共結晶化は、一般的に、天然または非天然の結合パートナーである二次的因子との標的の結晶化を示す。このような二次的因子は、小さくあり得る(約10〜1000Daのオーダー)か、または大きな高分子であり得る。共結晶化分子としては、低分子酵素リガンド(基質、生成物、アロステリックエフェクターなど)、低分子薬物リード物質、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNA、補体タンパク質(例えば、パートナーまたは標的タンパク質またはサブユニット)、モノクローナル抗体、および融合タンパク質(例えば、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、プロテイン−G、または発現、溶解度、および標的の挙動を補助し得る他のタグ)が挙げられ得るがこれらに限定されない。これらの化合物の多くは、生物学的化合物または合理的な分子量の化合物のいずれかであるので、共結晶化分子は、ミクロ流体チップにおけるスクリーニングに慣用的に含まれ得る。実際、これらの試薬の多くが高価であり、そして/または限られた量なので、本発明の実施形態に従うミクロ流体チップによりもたらされる低容量さは、これらを共結晶化スクリーニングに理想的に適するようにする。
標的の水和は、重要な問題であり得る。特に、水は、生物学的標的およびサンプルに極めて有力な溶媒であり得る。本明細書中に記載されるミクロ流体デバイスは、比較的疎水性であり、そして水ベースの溶液と適合性である。
結晶化実験の時間の長さは、分または時間から週または月の範囲であり得る。生物学的系におけるほとんどの実験は、代表的に、24時間〜2週間で結果を示す。このインキュベーション時間のレジームは、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスにより適応され得る。
結晶化実験の温度は、成功または失敗の割合に大きな影響を有し得る。このことは特に、結晶化実験の温度が0〜42℃の範囲であり得る生物学的サンプルに当てはまる。最も一般的な結晶化温度のうちのいくつかは、以下の通りである:0、1、2、4、5、8、10、12、15、18、20、22、25、30、35、37、および42。本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスは、列挙される温度で保存され得るか、または代替的に、小さな温度制御構造(例えば、抵抗加熱器またはPeltier冷却構造)との熱接触下に置かれ得る。
さらに、本発明に従う実施形態の小さなフットプリントおよび迅速な準備時間は、所望の標的温度へのより迅速な平衡化および一定範囲の温度のより小さいインキュベーターにおける保存を可能にする。さらに、本発明の実施形態に従うミクロ流体系は、蒸気相との接触下で結晶化実験を行わないので、従来の巨視的な蒸気拡散技術に伴う問題である温度変化に伴う蒸気相から液滴への水の凝縮が回避される。この特徴は、多くの従来の手動またはロボット操作の系(この系は、所望の温度で維持されなければならいか、またはこの実験は、新しい温度に移される前に一定期間室温で維持されなければならないかのいずれかである)を上回る利点を示す。
圧力の変動は、今なお研究中である結晶化パラメーターである。これは、部分的には、従来の拡散蒸着プロトコルおよびマイクロバッチプロトコルが、代表的には大気圧以外のすべて圧力におけるスクリーニングを容易には可能にしないからである。PDMSマトリックスの剛性により、チップ上での標的結晶化に対する圧力の効果を探索する実験が可能である。
結晶化「滴下物」が存在する表面は、実験の成功および結晶の品質に影響し得る。拡散蒸着プロトコルおよびマイクロバッチプロトコルにおいて使用される固体支持体接触表面の例としては、ポリスチレンまたはシラン化ガラスのいずれかが挙げられる。両方の型の支持体が、標的に依存して、結晶成長を促進または阻害する異なる性向を示し得る。さらに、その結晶化「滴下物」は、空気または何らかの型のポリ炭素油のいずれかと接触しており、このことは、この実験が、それぞれ、拡散蒸着の設定またはマイクロバッチの設定であるか否かに依存する。空気の接触は、遊離酸素が生物学的標的と容易に反応し、これによりタンパク質変性をもたらし得そして結晶化の成功を阻害または低下し得るという点で、不利を有する。油は、微量炭化水素が結晶化実験中に浸出するのを可能にし、そして同様に、結晶化の成功を阻害または低下し得る。
本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスの設計は、結晶化反応を完全に取り囲む非反応性の生体適合性環境を提供することによって、これらの制限を克服し得る。さらに、ミクロ流体チップにおける結晶化チャンバの組成は、結晶化反応と接触するための新しい表面を提供するように多分変化され得る。このことは、結晶化を促進する異なる表面および表面特性の慣用的スクリーニングを可能にする。
結晶化標的(特に、生物学的起源の標的)は、しばしば、結晶化を可能にするように改変され得る。そのような改変としては、短縮、限定的タンパク質分解性消化物、部位特異的変異体、阻害状態または活性化状態、化学的改変または誘導体化などが挙げられるが、これらに限定されない。標的改変は、時間およびコストがかかり得る。改変標的は、非改変標的が必要とするのと同じ徹底的スクリーニングを必要とする。本発明のミクロ流体デバイスは、もとの標的を用いるのと同じ程度容易に、そのような改変標的を用いて作動し、そして同じ利益を提供する。
結晶化についてのパラメーターとしての重力の効果は、なお研究中である別の結晶化パラメーターである。これは、そのような物理的特性を変化させることが困難であることが原因である。それにもかかわらず、無重力環境における生物学的サンプルの結晶化実験は、重力の影響下にて地球上で得られる結晶よりも優れた品質の結晶の成長を生じた。
重力が無いことは、従来の拡散蒸着設定およびマイクロバッチ設定に関して問題を提示する。なぜなら、すべての流体は、表面張力によって適所に保持されなければならないからである。しばしばそのような実験を手で設定する必要性もまた、困難を引き起こす。この困難は、空間に作業者を維持する費用が原因である。しかし、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスは、結晶化条件としての微小重力のさらなる調査を可能にする。小型の自動計測および結晶成長系は、以下の1)〜4)を可能にする:1)冷却されているが液体の状態で標的分子を含む衛星工場の打ち上げ、2)標的の分配および結晶の成長、3)生じた結晶の収集および低温凍結、および4)低温貯蔵された結晶を分析のために陸上ステーションに戻すこと。
(8.インサイチュ結晶化スクリーニング)
顕微鏡を用いて結晶の成長を観察する能力は、結晶化試験の成功または失敗を決定する段階である。従来の結晶化プロトコルは、可視化を可能にする透明物質(例えば、ポリスチレンまたはシラン化ガラス)を使用し得る。本発明に従う実験のPDMSマトリックスの透明性は、結晶化試験が伝統的に得られる以下の2つの主要な方法に特に適する:1)光学顕微鏡により可視光体制での直接観察、および2)偏光の複屈折。
複屈折は、従来の実験において判断するのが困難であり得る。なぜなら、多くのプラスチックは、それ自体が複屈折性であり、サンプルの評価を妨害するからである。しかし、本明細書中に記載されるミクロ流体デバイスは、そのような光学的干渉特性を伴うことなく作製され得、偏光特徴および非偏光特徴の両方を用いて直接の可視化を慣用的に可能にする自動スキャニングシステムの設計を可能にする。
さらに、ロボットを利用する(特に手動で設定する)結晶化実験は、表面上の結晶化滴下物の配置を数10〜数100ミクロン変動させ得る。この変動性は、自動スキャニングシステムについての問題を提示する。なぜなら、安定な基準を伴わずにそのような柔軟な位置決めの必要性をプログラムすることは困難であるからである。しかし、本発明の実施形態のミクロ流体チップにおける結晶化チャンバの固定配置は、そのような問題を克服する。なぜなら、どのウェルも、ミクロン未満の精度で特定の位置に位置決めされ得るからである。さらに、そのようなシステムは、異なるサイズおよび位置の結晶化チャンバの設計のために容易に拡張可能である。なぜなら、本発明の実施形態に従うミクロ流体デバイスを設計するために使用されるマスクおよび他のテンプレートは、簡単にデジタル化され得、そして可視化のためのスキャニングソフトウェア中に移植され得るからである。
一旦結晶が視覚的観察により得られると、チップ自体を直接通る回折についてスクリーニングすることが可能であり得る。例えば、チップ内の結晶化チャンバは、ガラス、石英、または弾性材料自体の薄化部分を含む透明な「窓」が、そのチャンバの対向する壁に装備され得る。その後、結晶は、回折キャピラリーについてアッセイするためにチップを通るX線に直接曝され得、結晶サンプルを除去することにより結晶サンプルを多分損傷させる必要性が排除される。そのようなアプローチは、追跡調査のための最良の開始条件候補を決定するために最初の結晶化試験から成功をスクリーニングするために使用され得る。同様に、特定の条件の組の下で成長した結晶が、新しい溶液(例えば、低温安定化剤、低分子薬物リード化合物またはリガンドなど)で「再平衡化」され得、そしてそのような環境変化に対するその結晶の安定性が、X線回折により直接モニターされ得る。
(9.精製/結晶化のためのミクロ流体デバイスの利用)
標的生物学的サンプル(例えば、タンパク質)の結晶化は、実際には、事前の多数の複雑かつ困難な工程の頂点であり、そのような工程としては、タンパク質の発現、精製、誘導体化、および標識が挙げられるが、これらに限定されない。結晶化の前のそのような工程は、1組の溶液特性を備えるチャンバから異なる組の特性を備える別の領域へ液体を往復させる工程を包含する。ミクロ流体技術は、そのような作業を実施するために適切であり、それにより、単一チップの範囲内において必要なすべての工程の組み合わせが可能になる。
プレ結晶化工程の実施を可能にするミクロ流体取扱い構造の例が、上記の第I節に記載されている。例えば、ミクロ流体チップは、調節されたバイオリアクターとして作用し得、それにより、セルペン(cell pen)構造中に含まれる増殖中の細胞中へと栄養素を流すことを可能にすると同時に、老廃物を除去し、そして組換え改変生物が細胞増殖の所望の段階で標的分子(例えば、タンパク質)を生成するのを誘導する。誘導後に、これらの細胞は、セルペン(cell pen)からチップの異なる領域へと、酵素的手段または機械的手段による溶解のために押しやられ得る。その後、可溶化した標的分子は、チップ上に直接組み込まれた分子濾過ユニットによって細胞破片から分離され得る。
その後、標的分子と混入する細胞タンパク質および細胞核酸との粗混合物は、種々の化学特性の多孔性マトリックス(例えば、カチオン交換、アニオン交換、アフィニティ、サイズ排除)を通して分離を達成するために流され得る。標的分子が、可溶性を促進する特定の型の融合タンパク質でタグ化された場合、その標的分子はアフィニティ精製され得、同様にタグ化された部位特異的プロテアーゼを用いてその融合産物を分離するように短時間処理され得、その後、清浄化工程としてアフィニティマトリックスに再び通される。
一旦純粋になると、その標的は、異なる安定化剤と混合され得、活性についてアッセイされ得、その後、結晶化実施領域へと輸送される。チップまたはチップホルダー上の種々の点に位置する局所的加熱ユニット(例えば、電極)および冷蔵ユニット(例えば、Peltier冷却器)は、処理および結晶化全体にわたるすべての段階で差次的な温度調節を可能にする。従って、タンパク質の産生、精製、および結晶化は、本発明に従う単一ミクロ流体デバイスの実施形態にて達成され得る。
(IV.微小フリー界面拡散)
従来の結晶化へのアプローチは、結晶化剤をゆっくりとした拡散を介して導入することによって、標的溶液王権の次第の変化を生じている。広範な種々の条件のサンプリングの際に特に有用な1つの方法は、巨視的なフリー界面拡散である。この技術は、2つ以上の溶液(代表的に、タンパク質ストック)と沈殿剤との間での十分に規定された流体界面の作製、および引き続く、拡散プロセスを介するこれらの2つの溶液の平衡化を必要とする。これらの溶液が互いに拡散するにつれて、その拡散経路に沿って勾配が確立され、そして条件の連続物が、同時にサンプリングされる。これらの条件における、空間と時間との両方での変動が存在するので、結晶形成の一および時間に関する情報が、さらなる最適化に置いて使用され得る。図29A〜29Dは、フリー界面に沿って接触した溶液Aおよび溶液Bについての距離に対して、濃度をプロットする、単純化された概略図である。図29A〜Dは、これらの2つの溶液の、経時的な、連続的な、かつ広範な濃度プロフィールが、最終的に作製されることを示す。
巨視的なフリー界面拡散技術の効率にもかかわらず、技術的困難が、この技術を、ハイスループットのスクリーニング用途のために適切ではなくし、そしてこの技術は、いくつかの理由により、結晶学会において広範には使用されない。第一に、流体界面が、代表的に、溶液を狭い容器内(例えば、毛細管または培養プレートの深いウェル)に分配することによって、確立される。図30A〜Bは、巨視的なフリー界面の、毛細管9300への試みられた形成の、単純化された断面図を示す。第二の溶液9302を第一の溶液9304内に拡散させる作用は、対流混合を引き起こし、そして乏しく規定された流体界面9306を生じる。
さらに、これらの溶液は、この問題を排除するために、毛細管内に連続的に吸引されないかもしれない。図31A〜Bは、第一の溶液9400と第二の溶液9402との間での、毛細管9404内での混合を示し、これは、圧力駆動式のPoiseulle流れの放物線状の速度分布に起因して生じ、乏しく規定された流体界面9406を生じる。さらに、巨視的なフリー界面結晶化レジメのための容器は、この容器を、ピペットチップまたは分配ツールに対して接近可能にする寸法を有さなければならず、そして大きい(10〜100μl)の体積のタンパク質および沈殿剤溶液の使用を必須にする。
所望でない対流混合を回避するために、分配の間と結晶インキュベーションの間との両方において、注意を払わなければならない。この理由により、厄介なプロトコルは、しばしば、巨視的フリー界面を規定するために使用される。例えば、第二の溶液の添加前に、1つの溶液を凍結させる。さらに、2つの溶液が適切な配向で貯蔵されない場合、これらの異なる密度の2つの溶液を、重力によって誘導される対流によって混合して、反応の保存をさらに複雑にする。このことは、図32A〜Cに示されており、これらの図において、経時的に、第二の溶液9502の密度より大きい密度を有する第一の溶液9500は、単に沈降して、静的底部層9504を形成し、この層は、毛細管の長さに沿った拡散勾配の形成を導かない。
本発明の実施形態に従って、従来の巨視的フリー界面拡散と類似の結晶化技術(ゲーティングされた微小フリー界面拡散(ゲーティングされたμ−FID))が開発された。ゲーティングされたμ−FIDは、巨視的なフリー界面拡散技術によって達成される、相間間隔の効率的なサンプリングを保持する。
本発明の実施形態に従うミクロ流体フリー界面(μFI)は、少なくとも1つの静止流体と別の流体との間に局在した界面であり、ここで、これらの流体の間での混合は、対流によってではなく、拡散の方が優勢である。この適用の目的で、用語「流体」とは、特定の極大未満の粘度を有する材料をいう。このような極大粘度の例としては、1000CPoise、900CPoise、800CPoise、700CPoise、600CPoise、500CPoise、400CPoise、300CPoise、250CPoise、および100CPoiseが挙げられるが、これらに限定されず、従って、排除ゲルまたはポリマー含有材料が、内部に捕捉される。
本発明の実施形態に従うミクロ流体フリー界面において、この界面の少なくとも1つの寸法は、粘性力が他の力より優れるような大きさに制限される。例えば、本発明の実施形態に従うミクロ流体フリー界面において、流体に作用する優勢な力は、浮力よりむしろ粘性であり、従って、このミクロ流体フリー界面は、極度に低いGrashof数(以下の議論を参照のこと)によって特徴付けられ得る。このミクロ流体フリー界面はまた、流体の全体積に対して局在した性質によって特徴付けられ得、その結果、純粋な流体の間の界面の形成後に最初に存在する、急な移行濃度勾配に曝露される流体の体積が、制限される。
本発明の実施形態に従って作製される、ミクロ流体フリー界面の特性は、図33Aおよび33Bに図示されるように、フリーでないミクロ流体界面と対照的であり得る。具体的には、図33Aは、本発明の実施形態に従うミクロ流体フリー界面の、単純化された断面図を示す。図33Aのミクロ流体フリー界面7500は、チャネル7502内に存在する、第一の流体Aと第二の流体Bとの間に形成される。フリーミクロ流体界面7500は、実質的に線状であり、その結果、流体AとBとの間に生じる急激な濃度勾配は、このチャネル内に高度に局在化される。
上記のように、チャネル7502の寸法は、極度に小さく、その結果、チャネルの壁にすぐ隣接したスリップしない層が、実際に、このチャネルの体積の大部分を占める。その結果、粘性力は、浮力よりずっと大きく、そして流体Aと流体Bとの間での、界面7500に沿った混合は、対流混合がほとんどまたは全くなしで、ほぼ全体として拡散の結果として起こる。
本発明の実施形態のミクロ流体フリー界面に付随する条件は、以下の式(3)に従って、Grashof数(Gr)の項で現され得、浮力と粘性力との相対的な大きさの表現は、以下である:
(3) Gr=B/V=αΔcgL3/v2
ここで:
Gr=Grashof数;
B=浮力;
V=粘性力;
α=溶質の拡大性;
c=濃度;
g=重力加速度;
L=チャンバの臨界寸法;および
v=速度論粘度。
式(3)に従って、Grashof数、および従って、所望でない補正流れの存在を減少させるための、多数のアプローチがなされ得る。1つのこのようなアプローチは、gを減少させることであり、そしてこれは、空間において実施される微量重量結晶化実験によって採用される戦術である。別のアプローチは、vを増加させることであり、そしてこれは、Garcia−Ruizら、「Agarose as Crystallization Media for Proteins I:Transport Proccesses」J.Crystal Glowth 232,165−172(2001)(全ての目的で、本明細書中に参考として援用される)によって記載されるような、ゲル針療法技術を用いて働く調査者によって採用される戦術である。
本発明に従う実施形態は、Lを減少させ、そして極端に小さい寸法を有するミクロ流体フローチャネルおよび容器の使用を介することを目的とする。このアプローチの効果は、式(3)における変数(L)の3乗だけ増幅される。
本発明の実施形態に従うミクロ流体フリー界面は、1以下のGrashof数を示すと予測される。同じ密度を有する2つの流体において予測されるGrashof数は、0であり、従って、0に非常に近いGrashof数は、達成されると予測される。
図33Aにおいて上に図示されるミクロ流体フリー界面の実施形態は、図33Bに示される従来の非ミクロ流体フリー界面と対比され得る。具体的には、第一の流体Aおよび第二の流体Bは、界面7504によって分離され、この界面は、均一ではないか、またはチャネル7052の断面幅によって制限される。この界面に生じる急激な濃度勾配は、局在せず、その代わりに、このチャネルの長さに沿った種々の地点に存在し、それに対応して大きい体積の流体を、この急激な勾配に曝露する。さらに、粘性力は、浮力に必ずしも勝らず、その結果、流体AおよびBの、界面7504を横切る混合は、拡散と対流との両方の結果として起こり得る。従来の非ミクロ流体界面によって示されるGrashof数は、1を超えると予測される。
(1.ミクロ流体フリー界面の生成)
本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面は、種々の方法により生成され得る。1つのアプローチは、先に記載のミクロ製作されたエラストマー構造物を利用することである。詳細には、特定の実施形態では、これらミクロ流体構造物が形成されるエラストマー材料は、特定のガスに比較的透過可能である。このガスの透過可能性性質は、良好に規定された再現可能な流体界面を形成するために、加圧化ガスプライミング(POP)の技法を利用して開発され得る。
図34Aは、本発明の実施形態によるミクロ流体デバイスのフローチャネル9600の平面図を示す。フローチャネル9600は、作動されたバルブ9602によって二等分される。材料の導入の前に、フローチャネル9600はガス9604を含む。
図34Bは、圧力下での第1のフローチャネル部分9600aへの第1の溶液9606の導入、および圧力下での第2のフローチャネル部分9600bへの第2の溶液9608の導入を示す。周辺のエラストマー材料9607のガス透過可能性のため、ガス9604は、入来する溶液9608および9610によって置換され、そしてエラストマー9607を通ってガスが除かれる。
図34Cに示されるように、フローチャネル部分9600aおよび9600bの加圧されたガスが出るプライミングは、気泡なしに、これらの行き詰まりのフローチャネル部分の均一な充填を可能にする。図34Dに示されるようなバルブ9602の非作動化に際し、ミクロ流体フリー界面9612が形成され、流体間の拡散勾配の形成を可能にする。
ゲート型μ−FIDを利用するタンパク質結晶の形成は、多くの付加された利点とともに、巨視的フリー界面拡散技法によって達成される位相空間の効率的なサンプリングを保持し、これには、サンプル溶液の倹約使用、セットアップの容易さ、ウェルで規定される流体界面の生成、平衡動力学に対する制御、および高スループット平行実験を実施する能力が含まれる。
ゲート型μ−FIDを利用するタンパク質結晶の形成の別の可能な利点は、図36Aおよび36Bと組み合わせて示されるような、高品質結晶の形成である。図36Aは、従来の巨視的フリー界面拡散技法を利用して形成されるタンパク質結晶の単純化した略図を示す。詳細には、初期のタンパク質結晶9200は、浮力の作用の結果として、サンプルの正味の伝達フローを経験している溶液9202からのサンプルに曝される。この伝達フローの方向性の結果として、タンパク質結晶9200の成長もまた方向性がある。しかし、Neradら、「溶液からの結晶の成長の間の対流の最小化に関する地上実験」、Journal of Crystal Growth 75、591〜608(1986)に記載のように、タンパク質結晶の非対照的成長が、成長する結晶の格子中に所望されないひずみを生じ得、格子内に不純物の転位および/または取り込みを促進し、そしてその他に結晶の質に悪影響を及ぼす。
対照的に、図36Bは、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面を横切る拡散を利用して形成されるタンパク質結晶の単純化した略図を示す。初期のタンパク質結晶9204は、結晶化剤内で拡散しているサンプル溶液9206に曝される。この拡散は、方向性がなく、そしてタンパク質結晶9204の成長もまた対応して方向性がない。従って、この成長する結晶は、図36Aに示される成長する結晶により経験される、格子上のひずみおよび不純物の付随する取り込みおよび転位を避ける。従って、図36B中の結晶の質は高品質である。
まさに記載された詳細な実施形態は、閉鎖されたバルブによって分離された行き詰まり充填の2つ以上のチャンバまたはチャネルへのバルク材料の透過可能性を開発し、そしてこのバルブの引き続く開放によって静止流体間のミクロ流体フリー界面を生成するけれども、ミクロ流体フリー界面を実現するためのその他の機構が可能である。
例えば、図46は、本発明によるミクロ流体フリー界面を確立するための1つの可能な代替方法を示す。ミクロ流体チャネル8100は、矢印によって示される方向の対流を、静止非スリップ層8102がフローチャネル8100の壁に沿って生成されるように経験する流体Aを運搬する。分岐チャネル8104および行き詰まりのチャンバ8106は、静止流体Bを含む。行き詰まりのチャネルおよびチャンバを取り囲む材料は逆圧を提供するので、流体Bは静止したままであり、そしてミクロ流体フリー界面8110が、流れる流体Aと静止流体Bとの間の分岐チャネル8108の口8112で生成される。以下に記載されるように、ミクロ流体フリー界面を横切る流体Aまたはその成分の拡散が、有用な結果を得るために開発され得る。図46に示される実施形態は、行き詰まりの分岐チャネルおよびチャンバを含むが、これは、本発明では必要ではなく、そしてこの分岐チャネルは、このチャネルを通る流体の任意の正味の流れを防ぐために十分な逆圧が維持される限り、デバイスの別の部分と連結され得る。
ミクロ流体フリー界面拡散アッセイを確立するための別の可能な代替の方法は、ブレークスルー(break−through)バルブおよびチャンバの使用である。ブレークスルーバルブは、真の閉鎖バルブではなく、むしろ流体の進行を停止するための作動流体の表面張力を用いる構造である。これらバルブは、流体の表面張力に依存するので、それらは、バルブにおいて、流体がバルブ構造の両側面および内部を連続的に充填するときではなく、フリー表面が存在する間でのみ作用し得る。
このようなバルブを達成するための方法の非排他的なリストは、制限されないで、疎水性材料のパッチ、特定領域の疎水性処理、チャネルの幾何学的圧縮(高さおよび幅の両方)、幾何学的膨張(チャネルの高さおよび幅の両方)、チャネルの壁の表面粗さの変化、および壁上に付与される電位を含む。
これらの「ブレークスルー」バルブは、それらが「ブレークスルー」され、そして流体をほぼ妨害されないで通過させる前に、固定かつ良好に規定された圧力に耐えるように設計され得る。チャネル中の圧力は制御され得、そしてそれ故、この流体は、所望されるとき進行させられ得る。この圧力を制御する異なる方法は、制限されないで、入力または出力ポートで外から付与される圧力、遠心分離力由来の圧力(すなわち、デバイスをスピンすることによる)、直線状加速由来の圧力(すなわち、チャネルに平行なコンポーネントでデバイスに加速を付与する)、動電学的圧力、泡形成からの内部に生成される圧力(化学反応によるか、または加水分解による)、機械的ポンプ輸送に由来する圧力、または浸透圧を含む。
「ブレークスルー」バルブは、図35A〜Eと組み合わせて示されかつ説明されるように、ミクロ流体フリー界面を生成するために用いられ得る。図35Aは、ブレークスルーバルブを利用してミクロ流体フリー界面を生成するためのデバイスの単純化した平面図を示す。第1のチャンバ9100は、それぞれ、T形状チャネル9104の分岐9104aおよび9104bを通じて第2のチャンバ9102と液体連絡している。
第1のブレークスルーバルブ9106は、第1のチャンバ9100の出口9108に位置している。第2のブレークスルーバルブ9110は、第2のチャンバ9102の入口9105の上流の分岐9104b中に位置する。第3のブレークスルーバルブ9112は、第2のチャンバ9102の出口9114に位置する。ブレークスルーバルブ9106、9110、および9112は、上記で一般的に説明されるような、疎水性パッチ、フローチャネルの幅の圧縮、または特定のその他の方法から形成され得る。図35A〜Eでは、開放ブレークスルーバルブが、斜線のない丸として描写され、そして閉鎖ブレークスルーバルブが斜線の丸として描写されている。
図35B中に示される初期ステージでは、第1のチャンバ9100は、任意のバルブ9106、9110、および9112のブレークスルー圧力未満の圧力で、T形状チャネル9104およびチャンバ入口9107のステム9104cおよび分岐9104aを通って導入された第1の流体9116で充填される。図35Cに示される第2のステージでは、第2のチャンバ9102は、バルブ9106のブレークスルー圧力未満であるが、バルブ9110および9112のブレークスルー圧力より大きい圧力で、T形状チャネル9104のステム9104cおよび入口9105を通って導入された緩衝液またはその他の媒介流体9118で充填される。
図35Dで示される第3のステージでは、媒介流体9118は、第2のチャンバ9102中で、バルブ9106のブレークスルー圧力未満であるが、バルブ9110および9112のブレークスルー圧力より大きい圧力で、T形状チャネル9104のステム9104cおよび入口9105を通って導入された第2の流体9120で置換される。図35Eに描写される最後のステージでは、第2の流体9120は、媒介流体を置換し、第1および第2の流体9116および9120を、別個ではあるが、T接合部9104を通じて連結されるチャンバ内の残し、ミクロ流体フリー界面9122を生成する。
本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面を生成するためのブレークスルーバルブの使用は、上記で与えられる特定の例に制限されない。例えば、代替の実施形態では、緩衝液または媒介溶液でフラッシュする工程は要求されず、そして第1の溶液は、第2の溶液で直接フラッシュすることにより除去され得、混合の所望されない可能な副産物は、上記チャネルおよびチャンバを通る第2の溶液の初期フローによって除去される。
まさに記載された実施形態は、閉鎖ミクロ流体デバイス中にミクロ流体フリー界面を生成するが、これは、本発明による実施形態では必要ではない。例えば、本発明による代替の実施形態は、流体の2つのリザバを連結するためにキャピラリー力を利用し得る。1つのアプローチでは、マイクロタイタープレートの開放ウェルがガラスキャピラリーのセグメントによって連結され得る。第1の溶液は、1つのウェルに、それがウェルを満たし、そしてガラスキャピラリーと接触するように分与され得る。キャピラリー力は、第1の溶液をキャピラリーの端部に侵入かつ流す。一旦、端部達すると、流体の運動は止まる。次に、第2の溶液が第2のウェルに添加される。この溶液は、キャピラリー入口で第1の溶液と接触し、そしてキャピラリーの端部で2つのウェル間のミクロ流体界面を生成する。
2つのウェル間の連結経路はガラスキャピラリーである必要はなく、そして代替の実施形態では、それに代わって、例えば、ガラスのストリップである親水性ストリップ、または従来のCVDもしくはPVD技法により堆積されたリシカのラインを備え得る。あるいは、この連結経路は、高度に疎水性材料のパターン化された領域間の疎水性のより少ない材料の経路によって確立され得る。さらに、ウェル、または種々の形態にある複数の相互連結チャンバ間のこのような複数の連結が存在し得る。このような相互連結は、デバイスの使用の前にユーザーによって確立され得、流体状態における迅速かつ効率的な変形を可能にする。
先の例におけるように、2つのリザバがミクロ流体デバイスによって囲われていないが、その代わりにミクロ流体経路を通じて連結されている場合、代替の実施形態は、囲われた、および囲われていない、両方のリザバを有し得る。例えば、サンプルは、ミクロ流体デバイス中に装填され得、そして出口キャピラリーまたはオリフィスの端部に(上記のいずれかの圧力方法により)押される。一旦、出口キャピラリーの端部にあると、このキャピラリーは、試薬のリザバ中に浸漬され得る。このようにして、ミクロ流体フリー界面が、外部リザバとチップ中の試薬のリザバとの間に生成される。この方法は、単一の試薬を、ミクロ流体フリー界面拡散を用いて複数の異なる試薬に対してスクリーニングするために、多くの異なる出力キャピラリーまたはオリフィスを用いてパラレルに用いられ得る。
まさに記載された例では、試薬は、1つまたは多くの入口から、ミクロ流体デバイスを「通って」、1つまたは多くの異なる出口に送達される。あるいは、この試薬は、ミクロ流体界面を生成するために用いられるべき同じオリフィスを通って導入され得る。サンプル含有溶液は、キャピラリー中に吸引され(吸引を付与するか、キャピラリー力によるか、または溶液に圧力を付与することによるかのいずれかで)、そして次に、キャピラリーは、対比試薬中に浸漬され得、キャピラリーの端部とリザバとの間にミクロ流体界面を生成する。これは、多くの異なる試薬のパラレルスクリーニングのためのキャピラリーの大アレイで行われ得る。ごく小容量のサンプルが用いられ得る。なぜなら、これらキャピラリーは、それを超えてサンプルが進行する固定長さを有し得るからである。結晶化適用には(以下を参照のこと)、これらキャピラリーは取外され、そして結晶に触れる必要なくして、回折研究のためにX線ビーム中にマウントされ得る。
(2.平衡パラメータに対する再現性あるコントロール)
本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面拡散の使用の1つの利点は、広範な状態を再現性よくサンプリングする均一および連続的な濃度勾配を生成する能力である。界面のいずれかの側の流体は互いの中に拡散するので、勾配が拡散経路に沿って確立され、そして状態の連続体が同時にサンプリングされ得る。状態には変動があるので、空間および時間の両方において、陽性の結果(すなわち結晶形成)の位置および時間に関する情報が、さらなる最適化で用いられ得る。
多くの適用において、pH、濃度、または温度のような状態の勾配を生成することが所望される。このような勾配は、適用をスクリーニングすること、反応状態の最適化、動力学研究、結合親和性の決定、解離定数、酵素−速度プロファイリング、高分子の分離、およびその他の多くの適用のために用いられ得る。主に対流フローの抑制に起因して、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面を横切る拡散は、信頼性があり、かつ良好に形成された勾配を確立するために用いられ得る。
次元のEinstein等式(4)が、ミクロ流体フリー界面を横切る拡散時間の粗い推定を得るために採用され得る。
(4)t=x2/4D;ここで:
t=拡散時間;
x=最長の拡散長さ;および
D=拡散係数である。
一般に、以下の等式(5)に示されるように、拡散係数は、回転運動の半径とは逆に、そしてそれ故、1/分子量の立方根、として変動する。
(5)D∝1/r∝/1/m1/3;ここで:
D=拡散係数;
r=回転運動の半径;および
m=分子量である。
等式(5)を再考する際に、回転運動の半径(r)と分子量(m)との間の相関は近似に過ぎないことを認識することが重要である。粘性力が慣性力に対して優位であるため、拡散係数は、実際、分子量とは独立しており、そしてそれに代わってサイズに依存し、そしてそれ故、拡散粒子によって引かれることが経験される。
色素に対する粗い1.5時間の平衡時間と比較して、同じ距離に対する20KDaのタンパク質の近似平衡時間は、約45時間であると推定される。同じ距離に対する100Daの分子量の小さな塩の平衡時間は約45分である。
流体界面を横切る拡散から生じる相対濃度は、平衡の間に探索された熱力学状態のみならず、平衡が生じる速度によって決定される。従って、平衡の動力学を制御することが、潜在的に価値がある。
従来の巨視的拡散方法では、平衡の動力学に対する粗い制御のみが、初期状態の操作を通じて利用可能であり得る。巨視的フリー界面拡散では、一旦、拡散が始まると、実験者は、引き続く平衡速度に対する制御はもたない。ドロップ実験を行うために、平衡速度は、初期ドロップのサイズ、リザバの合計サイズ、またはインキュベーションの温度を改変することにより変更され得る。微小バッチの実験では、サンプルが濃縮される速度は、ドロップのサイズ、および周辺オイルの同一性および量を操作することにより変更され得る。平衡速度は、錯綜した様式でこれらのパラメータに依存するので、平衡の動力学は、粗い様式でのみ変更され得る。さらに、一旦、実験が開始されると、平衡動力学に対するさらなる制御は利用可能ではない。
対照的に、本発明の実施形態による流体フリー界面実験では、拡散の平衡速度のパラメータもまた、チャンバの寸法を操作すること、およびミクロ流体構造物のチャネルを連結することにより制御され得る。例えば、圧縮チャネルを通じて流体連絡しているリザバを備えるミクロ流体構造物では、物質の高濃度または補充に起因して感知し得る勾配は存在せず、平衡のために必要な時間の良好な近似は、必要な拡散長さと直線的に変化する。平衡速度はまた、連結チャネルの断面積に依存する。平衡に必要な時間は、従って、連結チャネルの長さ、および断面積の両方を変更することにより制御され得る。
例えば、図40Aは、本発明によるミクロ流体構造物の簡単な実施形態の平面図を示す。ミクロ流体構造物9701は、第1の流体Aおよび第2の流体Bを含むリザバ9700および9702をそれぞれ備える。リザバ9700および9702は、チャネル9704によって連結される。バルブ9706は、リザバ9700と9702との間の連結チャネル上に配置される。
連結チャネル9704は、いずれのリザバよりもかなり小さな断面積を有する。例えば、本発明によるミクロ流体構造物の特定の実施形態では、リザバ/チャネル断面積の比、そしてそれ故、2つの流体を分離する断面積の比の最大比は、500と25,000との間に入り得る。この範囲の最小は、50×10μmチャネルに連結された50×50×50μmチャンバを記載し、そしてこの範囲の最大は、10×1μmチャネルに連結された500×500×500μmチャンバを記載する。
最初に、リザバ9700および9702は個々の流体で満たされ、そしてバルブ9706は閉鎖される。バルブ9706の開放に際し、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面が生成され、そして流体AおよびBは、この界面を横切り、チャネルを通って個々のリザバ中に拡散する。さらに、1つのリザバ中に存在する拡散物質の量が大きく、そして有意な濃度変化を受けることなく材料を受ける他方のリザバの容量もまた大きい場合、これらリザバ中の物質の濃度は、経時的に感知し得るほど変化せず、そして拡散の定常状態が確立される。
図40に示される単純なミクロ流体構造物における流体の拡散は、比較的簡単な等式によって記載され得る。例えば、1つのチャンバから他方への化学種の正味のフラックスは、等式(6)によって単純に記載され得る:
(6)J=D*A*ΔC/L;ここで:
J=化学種の正味のフラックス
D=化学種の拡散定数;
A=連結チャネルの断面積;
ΔC=2つのチャネル間の濃度差;および
L=連結チャネルの長さである。
式(6)の項の積分および広範な操作の後、1つの容量V1が当初濃度Cであり、そして他方の容量V2が当初濃度0である2つのチャンバの平衡のための特徴時間τは、従って以下の式(7)に示されるように得られ得る:
(7)τ=(1/(V1/V2+1))*(1/D)*(L/(A/V1));ここで:τ=平衡時間;
V1=初期に化学種を含むチャンバの容量;
V2=化学種が拡散して入るチャンバの容量;
D=化学種の拡散定数;
A=連結チャネルの断面積;および
L=連結チャネルの長さ、である。
従って、規定された容量のチャンバ中のある化学種の所定の初期濃度について、特徴的平衡時間は、拡散長さL、および容積に対する断面積の比(以後、単に「面積」という)に依存し、用語「領域」は、関係あるチャンバの容量によって規準化された面積をいうという理解である。2つのチャンバが図40Aの構造物中のような、圧縮チャネルによって連結される場合、1つのチャネルから他方への濃度ドロップは、主にこの連結チャネルに沿って起こり、そしてチャンバ中には感知し得る勾配は存在しない。これは、図40Bに示され、図40Aの構造物について、濃度 対 距離の単純化したプロットである。
図40Aのミクロ流体構造物のチャンバ間の拡散の挙動は、例えば、Natick,MassのThe MathWorks Inc.によって販売されるMATLAB(登録商標)ソフトウェアプログラムのPDEツールボックスを利用してモデル化され得る。従って、図41および42は、1000umの断面積をもつ300um長チャネルを通る、300um×300um×100umチャンバから等しい寸法の別のチャンバへの塩化ナトリウムの拡散をシミュレートした結果を示す。これらチャンバの初期濃度は、それぞれ、1Mおよび0Mである。
図41は、1つのリサバ中の濃度が最終平衡濃度の0.6に到達するために必要な時間を、チャネル長さに対してプロットする。図41は、この単純なミクロ流体システムについて、拡散時間とチャネル長さとの間の直線的関係を示す。
図42は、1つのリサバ中の濃度が最終平衡濃度の0.6に到達するために必要な時間(T0.6)逆数を、バルブの開放に際し生成される流体界面の面積に対してプロットする。図42は、これらパラメータ間の直線的関係を示す。平衡時間定数とチャネル長さおよび1/チャネル面積のパラメータととの間の単純な関係は、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面を横切る拡散混合の速度を制御するための信頼性があり、かつ直感的方法を可能にする。
この関係は、1つの試薬が、連結チャネル幾何学によって制御され得る拡散速度で、複数の試薬と拡散により混合されることを可能にする。例えば、図38Aは、各々ペアが異なる長さΔxのミクロチャネル9806により連結される配合チャンバ9800、9802、および9804のペアの3つのセットを示す。図38Bは、平衡時間 対 平衡距離をプロットする。図38Bは、図38Aのチャンバの平衡のために必要な時間が、連結チャネルの長さによって変化することを示す。
図39は、各々が異なる配列の連結ミクロチャネル(単数または複数)9908を有する4つの配合チャンバ9900、9902、9904、および9906を示す。ミクロチャネル9908は同じ長さを有するが、断面積および/または連結チャネルの数が異なる。平衡の速度は、従って、例えば、連結チャネルの数またはこれらチャネルの寸法を減少/増加することによって、その断面積を減少/増加することにより増加/減少され得る。
本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面拡散研究の別の望ましい局面は、広範な範囲の位相空間を再現性よく探索する能力である。例えば、推測的に、どの熱力学状態が特定の適用(すなわち、タンパク質結晶の核形成/成長)のために好ましいかを決定することは困難であり得、そしてそれ故、スクリーニング方法が可能な限り多くの位相空間(多くの状態)をサンプリングすることが所望される。これは、複数のアッセイを実施すること、そしてまた、各アッセイの展開の間に間に合ってサンプリングされる位相空間により達成され得る。
図43は、異なる相対容量の2つのリザバをもち、そして1に規準化された初期濃度をもつ、図40に示されるミクロ流体構造物を利用するリゾチームと塩化ナトリウムの対向拡散をシミュレートする結果を示す。図43は、流体AとBとの間の位相空間を描写する相のダイアグラム、および、流体が図40中のバルブの開放により生成されるミクロ流体フリー界面を横切って拡散するときのリザバ中で横切られる位相空間中の経路を提示する。ず43は、サプリングされた位相空間が、2つのリザバ中に含まれる流体の初期相対容量に依存することを示す。異なるサンプル容量をもつチャンバのアレイを利用すること、そして次にチャネルを横切る拡散が所望の結果(すなわち、結晶形成)を生じた事例を識別することにより、有望なさらなる実験の開始点が決定され得る。
上記のように、2つのリザバを連結するチャネルの長さまたは断面積を変更することは、複数種が混合される速度を変更する。しかし、チャネル容量が、総反応容量と比較したとき小さいままである限り、位相空間を通るチャンバ中の濃度の展開に対する影響はほとんどないか、または全くない。混合の動力学は、従って、反応の位相空間展開から脱共役され、拡散の動力学的および熱力学的挙動に対して影響が独立の制御を可能にする。
例えば、結晶学では、より遅い成長、およびより高い品質の結晶を可能にするように、平衡化を遅延することがしばしば所望される。従来技法では、これは、しばしば、グリセロールのような新たな化学的成分を添加することによるか、または微小バッチを用いることによって試みられている。しかし、成分のこの添加は良好に特徴付けられておらず、常に有効であるとは限らず、そして結晶の形成を阻害し得る。微小バッチ方法もまた、結晶を取り囲む溶液中のタンパク質が枯渇するとき、継続する結晶成長を促進する駆動力を欠く欠点を引き起こし得る。本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面を横切る拡散の使用により、結晶形成は、連結チャネルの幅または断面積を単に変更することにより、位相空間展開を改変することなく良好に規定された量によって遅延され得る。
平衡が進行する速度を制御する能力は、熱力学およびミクロ流体フリー界面拡散混合の両方を保存しながら、反応の合計容量を増加することを望む場合、さらなる重要性を有する。1つのこのような事例は、再び、タンパク質結晶学の文脈で生じ、そこでは、初期の小容量結晶化アッセイが、回折研究のためには不十分なサイズの結晶を生じる。このような場合、反応容量を増加すること、そしてそれによって、同時に同じ拡散混合および位相空間を通る経路を維持しながら、結晶成長のために利用可能なより多くのタンパク質を提供することが所望される。チャンバ容量を比例して増加すること、およびチャネルの面積を減少することにより、総アッセイ容量に対する界面の面積が低減され、そしてより大きな容量が、当初の小容量状態中と同じ位相空間を通過し得る。
上記の説明は単一種の拡散に焦点を当ててきたが、互いに相互作用しない2つ以上の種の勾配が同時に生成され得、そして重ね合わされて濃度状態のアレイを生成する。図47は、このような重ね合わせ勾配を生成するためのミクロ流体構造物の1つの例の平面図を示す。垂直方向に圧縮された平坦な浅いチャンバ8600が、その周縁で、化学種AおよびBのそれぞれ固定濃度を有するリザバ8602および8604に連結されている。リザバの形態のシンク8606は、種AおよびBが実質的により低い濃度で維持される。初期の一時的な平衡の後、種AおよびBの安定かつ良好に形成された勾配8608および8610がそれぞれ、二次元で確立される。
図47の検査から明らかなように、この濃度勾配の正確な形態およびプロフィールは、これもまたその中に含まれていない化学種に対する濃度シンクとして作用し得る(すなわち、リザバ8604は化学種Aに対するシンクとして作用し得る)、相対位置およびチャンバへの入口の数を含むがこれらに制限されないホストの因子に従って変動する。しかし、チャンバ内の各化学種の空間的濃度プロフィールは、二次元の良好に形成され、かつ連続的な空間的勾配を記載するための先に記載のMATLABプログラムを用いて容易にモデル化され得る。
図47に示される特定の実施形態は、物質の連続的拡散の不利益を提供する。それ故、拡散種間の反応の産物の拡散を識別することが求められる場合、これら産物は、連続勾配中でそれら自身が拡散し、それによって分析を複雑にする。
従って、図48は、二次元の拡散を達成するためのミクロ流体構造物の代替の実施形態の単純化された平面図を示す。直交するチャネル8702を横切るグリッド8700は、空間的濃度勾配を確立する。固定濃度の化学種AおよびBのリザバ8704および8708は、グリッド8700の隣接するエッジ上に配置される。グリッド上のこれらリザバに対向して、より低い濃度の化学薬品の2つのシンク8703が対向するリザバ中に存在する。
各チャネル連結部8710を取り囲んで、グリッドを垂直方向および水平方向に通る拡散を制御する2対のバルブ8712および8714がそれぞれある。最初、バルブペア8714のみが開かれ、水平方向に第1の化学薬品の良好に形成された拡散勾配を生成する。次に、バルブペア8714が閉鎖され、そしてバルブペア8712が開放されて垂直方向に第2の化学薬品の良好に形成された拡散勾配を生成する。隣接する水平方向バルブにより単離されて、第1の化学種の勾配は、これら連結部の間の領域中に存在して残る。
一旦、第2(垂直)勾配が確立されると、これら2つの勾配は組み合わせられ、そしてすべてのバルブペアを短時間開放することにより、部分的拡散平衡を可能にする。拡散の期間が通過した後、重ね合わせた勾配を含むためにすべてのバルブペアが閉鎖される。あるいは、バルブペア8712および8714は、別個の単離されたチャンバを生成するためにすべての第2の水平方向バルブを開放し、垂直方向の拡散を停止するために閉鎖され得る。
要約すれば、従来の巨視的ミクロ流体フリー界面技法は、mmのオーダーの寸法を有するキャピラリーチューブまたはその他のコンテナを採用する。対照的に、本発明の実施形態による流体界面は、μmのオーダーの寸法を有するミクロチャネル中で形成される。このように小さな寸法では、所望されない対流は、粘度の影響に起因して抑制され、そして混合は拡散によって支配される。良好に形成された流体界面は、それ故、有意な所望されない対流混合なくして確立され得る。
(3.溶解度研究(プロテオミクス))
上記の論議は、タンパク質結晶化のためのフリー界面拡散の適用に焦点を当てており、ここでは、タンパク質サンプルを含む溶媒の環境は、ミクロ流体フリー界面を横切る結晶化剤の拡散によって改変され、タンパク質の相および結晶の形成における変化を生じた。しかし、このような結晶化研究への重要な前駆体は、このタンパク質が十分に可溶性かつ単一分散で、結晶化剤への曝露に際し結晶を形成する溶液を識別かつ得ていることである。
従って、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面拡散のための代替の適用は、種々の溶媒中のタンパク質の溶解度を決定することである。詳細には、フリーのミクロ流体界面は、タンパク質サンプルへの溶媒の流れを計測するため、そしてそれ故、タンパク質の溶解度特徴を識別するために利用され得る。詳細には、フリーのミクロ流体界面の存在は、既知容量のチャネルに沿った均一かつ正確な濃度勾配を生成し得、それによって、研究者が、溶液中に入るタンパク質サンプルの既知量の能力を正確に識別することを可能にする。この情報は、次に、結晶を次に形成し易い濃縮されたタンパク質溶液の生成を可能にするために利用され得る。
(4.準透析によるサンプル精製)
上記の論議は、サンプルおよび溶媒の相対量が正確に制御され、溶液中のサンプルの濃度を、そしてそれ故、サンプルが溶液から固体である結晶形態に出現する性向を支配する、タンパク質結晶化およびプロテオミクス溶解度適用に関して焦点を当ててきた。しかし、サンプル濃度以外の多くの因子もまた、サンプル挙動において重要な役割を演じ得る。
1つのこのような因子はサンプル純度である。タンパク質単離および/または精製のための多くの一般的プロセスの1つのアーチファクトは、サンプルとの小塩の濃度である。これらの塩は、溶液中でタンパク質を安定化し得、そしてそうでなければ、結晶の核形成および成長を妨害する。これらの塩を除去するための1つの従来のアプローチは、膜を横切る透析による。しかし、このアプローチは、代表的には、巨視的スケールで起こり、比較的大きなサンプル容量の使用を含み、かつ、塩のバルク量の粗い除去を含む。
従って、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面拡散のなお別の代替の適用は、サンプル溶液からの所望されない成分の除去にある。例えば、小塩の有意な濃度を含む単離および/または精製されたタンパク質を含む溶液が、バルブの1つの側にあるミクロ流体チャネル中に位置決めされ得る。バルブの作動を止めるに際し、タンパク質溶液と希釈剤との間のミクロ流体フリー界面が、より少ない塩が希釈剤中に迅速に拡散し、そしてそれによってサンプル中で枯渇されるように生成され得る。勿論、サンプル中に存在する特定量のタンパク質はまた、ミクロ流体フリー界面を横切って拡散することが予期され、そしてそれによって、このプロセスの間に希釈剤に失われ得る。しかし、小塩と大きなタンパク質分子との間のサイズにおける相違は、相対的拡散を束縛し、サンプル中のタンパク質の損失を制限することが期待され得る。
(5.タンパク質以外の結晶の成長)
本発明による実施形態は、これまでは、タンパク質のような生物学的高分子の結晶の成長に焦点を当ててきた。しかし、その三次元構造が研究され得る他のタイプの分子もまた、結晶を形成し得る。1つのこのような結晶形成のための有望な候補は、単一原子を包括するために利用され得る無機ナノ結晶である。
最近、科学コミュニティは、無機物質からナノ結晶を成長することに興味を示している。このような結晶は、ナノメートルスケールの寸法を有し、そしていくつかの例は、個々の原子を囲み得る。これらの結晶は、量子機械的影響によって支配される光の吸収および発光のような光学的性質を示す。これらの光学的性質は、結晶のサイズおよび質のような因子、およびそれによって囲まれる原子種の同一性に従って制御または変化され得る。
タンパク質結晶でのように、このようなナノ結晶のサイズおよび質は、大きな程度でそれが成長される状態に依存する。従って、相空間展開、およびナノ結晶の成長の間のこの展開の速度の両方を制御することが重要であることが証明され得る。このような制御は、タンパク質結晶化と組み合わせて先に記載されたように、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面拡散を利用して達成され得る。
さらに、特定の場合には、結晶化の1つの要素の濃度を変化する結晶性質に対する影響を決定する重要性が証明され得る。これは、いずれかの端部における大きなリサバとともに(または、単に2つの大きなリザバを連結するチャネルに沿って)、連結チャンバの列による勾配をセットアップすることにより、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面拡散を用いて達成され得る。次いで、結晶が各状態で(または状態の連続体に沿って)成長され、そして次にそれらの吸収/発光性質が尋問される。このようにして、単一の結晶化パラメータ(サンプルの濃度、結晶化剤、沈殿剤、またはいくつかのその他の種)を独立に変化させることが可能である。
チップ上に異なる光学的性質をもつナノ結晶の空間的分布を成長することもまた可能である。
(6.拡散免疫アッセイ)
本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面の可能な価値ある別の適用は、標的への分析物の結合の分析である。従来は、分析物の標的への結合は、対流流れにおける分析物または標的単独のいずれかに対する分析物/標的組み合わせの変化した速度が、結合された組み合わせの存在を識別するために採用されるクロマトグラフィーのような技法により決定されている。
本発明による実施形態は、標的への分析物の結合がまた、分析物または標的単独のいずれかに対する分析物/標的組み合わせの変化したサイズ、そしてそれ故拡散の係数を生じるという事実を開拓する。この変化した拡散係数は、結合した組み合わせを識別するために利用され得る。
図62Aは、本発明よるミクロ流体フリー界面を横切る拡散を検出し得るデバイスの1つの実施形態の単純化した平面図を示す。流体AおよびBを含むチャンバ8000および8002は、それぞれ、少なくとも1つの寸法が制限されている幅を有するチャネル8004によって連結されている。最初は閉じているバルブ8006が、チャネル8004内に位置決めされ、流体AおよびBを分離して維持する。チャンバ8003は、連結チャネル8005を通じてチャンバ8002と流体連絡しており、そしてまた流体Bを含む。
第1の流体Aは、制限されないで、蛍光、屈折率、電導度、光散乱、および比色センサの使用での変化を検出することを含む、分析技法により検出可能な分析物8008を含む。第2の流体Bは、分析物8008に結合することが知られる標的8010を含む。分析物8008の標的8010への結合に際し、分析物/標的組み合わせは、分析物単独のそれに対して実質的に減少した拡散の係数を示す。
最初の時間T0において、バルブ8006は開かれ、流体AとBとの間にミクロ流体フリー界面8012を生成する。時間T1で始まり、分析物8008は、チャネル8004、チャンバ8002、およびチャネル8005を通り、チャンバ8003中に拡散し始める。分析物8008と標的8010との間に結合反応がないと、分析物は、経時的に、所定の速度で末端チャンバ8003中に出現し始めることが予期され得る。これは、図62Bに示され、これは、拡散の時間に対する末端チャンバ8003中で検出されることが予期される信号の強度をプロットする。
しかし、チャネル中で、ある程度の反応が分析物8008と標的8010との間で生じるので、ある%の分析物8008が標的8010に結合し、この%の分析物の拡散の速度を効率的に遅延する。結果として、末端チャンバ中の信号の観察された強度は、経時的に減少し、結合した分析物/標的組み合わせのより遅い拡散の速度を反映する。これはまた図62B中に示され、これは、拡散の時間に対する第2のチャンバ中で観察された信号の強度をプロットする。
予期される信号と観察された信号との間の差異は、経時的に分析され、流体システムに関する潜在的に価値ある情報を示す。例えば、個々の溶液中の標的および分析物の濃度が既知である場合、強度信号の経時的な展開の分析は、標的と分析物との間の反応性、すなわち、分析物が標的に結合し、そして結果としてその拡散が遅延される速度を示し得る。あるいは、標的と分析物との間の反応性が既知である場合、強度信号の時間展開の分析は、標的の初期濃度を示し得る。さらに、それに代わって、初期濃度および反応性が既知である場合、強度信号の時間展開は、標的のサイズを示し得、これは分析物単独に対する分析物/標的組み合わせの減少した拡散速度によって表される。
まさに提供された例は、拡散する分析物からの信号の強度の時間展開の分析を利用した。しかし、本発明による実施形態は、この特定のアプローチに制限されない。
例えば、図63Aは、拡散アッセイにおける使用のための構造の代替実施形態を示す。構造物8100は、バルブ8104によって二分される一定幅および深さのミクロ流体8102を備える。検出可能な分析物8106を含む流体Aは、バルブ8104の1つの側に位置決めされる。標的8108をも含む流体Bは、バルブ8104の他方の側に位置決めされる。
開始時間T0において、バルブ8104は開放され、流体AとBとの間にミクロ流体フリー界面8110を生成する。時間T1で始まり、分析物8106は、界面8110を横切って拡散し始める。分析物8106と標的8108との間に結合反応がないと、特定の時間の後、チャネルの距離に対する信号の強度のプロフィールは、特徴的な形状を示すことが予期され得る。これは、図63Bに示され、これは、拡散の時間に対する第2のチャンバ中で検出されることが予期される信号の強度をプロットする。
しかし、ある程度の反応が分析物8106と標的8108との間で生じるので、ある%の分析物が標的に結合し、この%の分析物の拡散の速度を効率的に遅延する。結果として、チャンバ中の後期における信号の観察された強度は変化し得、結合した分析物/標的組み合わせのより遅い拡散の速度を反映する。これはまた図63Bに示され、これは、拡散の距離に対する第2のチャンバ中で観察された信号の強度をプロットする。
図63A〜B中に示される実施形態でのように、距離に対する予期される信号と観察された信号との間の差異は、潜在的に価値ある情報を示すために分析され得る。例えば、個々の溶液中の標的および分析物の濃度が既知である場合、強度信号の空間的展開の分析は、標的と分析物との間の反応性、すなわち、分析物が標的に結合し、そして結果としてその拡散が遅延される速度を示し得る。あるいは、標的と分析物との間の反応性が既知である場合、強度信号の空間的展開の分析は、標的の初期濃度を示し得る。さらに、それに代わって、初期濃度および反応性が既知である場合、強度信号の空間的展開は、標的の質量を示し得、これは分析物単独に対する分析物/標的組み合わせの減少した拡散速度によって表される。
(7.粘度測定)
上記の論議は、既知の状態下でミクロ流体フリー界面を横切るサンプルの拡散に基づく濃度または反応性のような化学的サンプルの性質を識別することに焦点を当てた。本発明の代替の実施形態によれば、しかし、流体内で拡散するサンプルよりむしろ、拡散が生じている流体の性質が、フリーミクロ流体界面を横切る拡散の性質を観察することによって決定され得る。
例えば、粘度を測定することへの1つの従来のアプローチは、サンプル流体をも含む閉鎖ベッセル中へのピストンの挿入すること、および次に、このベッセル中でピストンを回転するために必要なトルクを測定することを必要とする。このアプローチは、より大きな流体サンプルの粘度を測定するためには適切であるが、それは、比較的大きな容量のサンプル流体を必要かつ消費するという不利益を提供する。このような容量は、特に、生物学的分析の文脈では、分析のために入手可能ではないかも知れない。
本発明の代替の実施形態によれば、流体内で生成されるミクロ流体フリー界面を横切る既知のサイズおよび拡散係数のマーカー(すなわち、蛍光標識されたビーズまたは高分子)の拡散が、その粘度を決定するために利用され得る。このような技法は、生物学的または生理学的サンプルの粘度の分析に特に適用かのうである。なぜなら、拡散が生じるミクロ流体チャネルの寸法が比較的小容量を占めるからである。
(8.競合結合アッセイ)
上記で論議された拡散免疫アッセイとは異なるタイプのアッセイは、競合結合アッセイである。競合結合アッセイは、タンパク質のような標的分子に結合される現存するリガンドを置換する競合リガンドの性向を決定する。この置換傾向は、元のリガンド/標的分子組み合わせを、競合リガンドと、種々の濃度で混合することにより決定され得る。従来は、このような結合アッセイは、適切な濃度範囲を十分な分解度でカバーするために多数の別個の実験を必要としている。
しかし、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面を横切る拡散は、多数のアッセイ状態が一度にサンプリングされ得るように、連続的または別個の勾配を確立することを可能にする。例えば、本発明の1つの実施形態によれば、競合結合アッセイが、チャネルによって連結されるチャンバの列で生成される競合リガンド濃度の個別の勾配を利用して実施され得る。
このアプローチは図65に示され、これは、狭いチャネル8302によって連結され、そしてリザバ8304と8306との間に位置決めされたチャンバ8300a〜cの列を示す。リザバ8304は高濃度の競合リガンド8308を含み、そしてリザバ8306は、競合リガンドを含まない。リザバからまたは互いからのチャンバ8300a〜cの各々中への流れは、連結チャネル8302中に位置決めされたバルブ8305によって独立に制御され得る。チャンバの列のいずれかの末端における濃度は、チャンバに対するリザバの大容量によって、またはリザバへの物質の連続的流れによって固定され得る。
最初は、列中のチャンバは、標的8312に結合した元のリガンド8310の特定濃度を含む第1の流体で充填される。次に、チャンバ8300a〜cが、界面バルブ8305を開くことにより、リザバおよび互いとの流体連絡に置かれる。一旦、これらの界面バルブが開放されると、チャンバ間にミクロ流体フリー界面が確立され、そして溶液は拡散により平衡化する。列に沿った各チャンバの位置は、その特定のチャンバ内の競合リガンドの濃度を決定する。
競合リガンドは、代表的には、標的分子よりかなり小さく、そしてそれ故、迅速に平衡化する。競合リガンドによって標的から置換された元のリガンドは遊離し、標的チャンバから別のチャンバに拡散する。リガンド/標的組み合わせに対して元のリガンドの減少したサイズのために、置換された元のリガンドは、より大きな拡散係数を示し、そしてそれ故、より速い速度で拡散することが予期され得る。図62A〜Bおよび63A〜Bと組み合わせて上記で記載されたのと類似の様式で、元のリガンドが蛍光を発すれば、その存在、そしてそれ故、標的からの置換の速度は、予期される時間的または空間的プロフィールからの偏差について蛍光信号を分析することにより示され得る。
まさに記載された実施形態は、蛍光信号の位置における変化を経時的にモニターし、競合的結合を識別するが、本発明の代替の実施形態によれば、蛍光信号の強度における減少がまた、競合結合アッセイを実施するために検出され得る。詳細には、蛍光リガンドが、消光分子の存在下で利用され得る。蛍光分子は、それが別の分子と相互作用し、蛍光発光を抑制するとき消光される。
図66は、消光物質を利用する競合結合アッセイを実施するためのミクロ流体システムの単純化した実施形態の平面図である。第1のチャンバ8400は、標的分子8402、第1の蛍光リガンド8404、および消光分子8406を含む。第1のチャンバ8400は、ミクロ製作チャネル8408を経由して、競合リガンド8412、および同じ濃度の標的分子8402、第1の蛍光リガンド8404、および第1のチャンバ8400中に存在するような消光分子8406を含む第2のチャンバ8410に連結される。
第1の蛍光リガンド8404が標的8402に結合されるとき、それは、消光分子と相互作用することができず、そしてそれ故、蛍光発光が観察され得る。しかし、第1の蛍光リガンドが標的に結合しないとき、それは消光されて、そしてそれ故、蛍光発光は観察されない。このようにして、蛍光信号強度における減少は、競合結合挙動を示し得る。
当初はチャンバ8400および8410の内容物を分離するバルブ8414は開放され、ミクロ流体フリー界面8414を生成し、そして拡散により2つの流体を混合する。これら流体は、第2のチャンバ中の競合リガンドの存在を除いて同一であるので、競合リガンドのみが、チャンバ間の正味の拡散輸送を経験し、そしてチャンバ間に直線状勾配を確立する。チャネルの異なる部分に沿った蛍光強度を観察することにより、第1の蛍光リガンドを置換するために必要な競合リガンドの濃度が決定され得る。あるいは、経時的な末端チャンバ中の蛍光のレベルがモニターされ、標的から第1の蛍光リガンドを置換するために必要な競合リガンドの濃度を決定し得る。いずれかの方法を用い、単一の実験が採用されて、状態の連続体下の競合結合アッセイの結果を決定し得る。
(9.基質/インヒビターアッセイ)
酵素の活性は、異なる濃度のリガンドの存在に応答して測定され得る。例えば、反応を触媒するタンパク質は、タンパク質の活性部位に強く結合する小分子によって損なわれ得る。基質代謝回転アッセイは、酵素活性に対するこのようなリガンドの影響を決定するために用いられ得る。
酵素が蛍光産物を生成する反応を触媒する場合、この酵素の活性は、蛍光をモニターすることにより決定され得る。蛍光を生成する反応の触媒の1つの例は、酵素β−ガラクトシダーゼによるβ−D−ガラクトピラノシドのレゾルフィンへの加水分解である。レゾルフィンは、経時的にモニターされ得る蛍光産物である。Ramseyら、Analytical Chem.69、3407〜3412(1997)。阻害分子の濃度の関数として酵素の活性を決定することにより、反応のMichaelis−Menten速度定数が決定され得る。本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面を横切る拡散勾配の生成は、単一の実験におけるこの濃度依存性の決定を可能にし得る。
図67は、このような基質代謝回転アッセイを実施するためのミクロ流体構造物の実施形態の単純化した平面図を示す。ここで再び、リザバ8500および8502は、チャンバの寸法よりかなり小さな幅を有するチャネル8504によって連結される。リザバ8500および8502は、基質8509を同じ濃度で含み、そしてリザバ8502はまた、インヒビター分子8508を含む。インヒビター分子濃度の勾配は、チャネルに対するそれらの大容量、または外部供給源からの材料の補充のいずれかに起因して、リザバ8500および8502中の物質の固定された濃度を維持することにより達成される。チャンバは、チャネル8504の長さに沿って含めてもよく、または含めなくてもよく、特定の濃度で反応部位のより大きな容量を提供する。
一旦、インヒビター分子の濃度勾配が確立されると、バルブ8510が作動されて、チャネルのセクション(またはチャネルによって連結される個々のチャンバ)を隔離し、これらは、次に、酵素8514を含む別個のウェル8512と混合される。各ウェルの蛍光を経時的にモニターすることにより、各チャンバにおける酵素の活性を決定することが可能である。
本発明の実施形態による活性の検出は、蛍光によることを要求されない。識別されるべき基質に依存して、酵素活性および得られる触媒は、ほんのわずか指名して、比色法、屈折率、表面プラスモン共鳴、または電導度の分析により決定され得る。
(10.バイオセンサ)
ほんの少数%の既知の微生物が、実験室設定で培養および増殖され得る。この比較的低い成功率は、代表的には、細胞増殖を誘導するために要求される実質的な数の因子に大部分は起因する。細胞増殖を促進するための構造の成功は、増殖する細胞に栄養物を連続的に供給し、そして細胞代謝によって生成される廃棄産物を除去する能力に基本的に依存している。
本発明の実施形態によれば、ミクロ流体フリー界面拡散は、必要な食物を細胞に連続的に供給し、そして廃棄産物を除くために採用され得る。細胞は、食物、増殖因子、緩衝液、および細胞増殖を支持するその他の材料を含む種々のリザバに、細胞が通過するには、小さすぎるチャネルを経由して連結されるチャンバ中に導入され、かつ含まれ得る。フリー界面拡散を次に用いて、食物、増殖因子、または廃棄物のチャンバへのおよびそれからのフラックスを制御する。
例えば、図27Aおよび27Bは、本発明によるセルペン構造物の1つの実施形態の平面図および(線45B−45B’に沿った)断面図をそれぞれ示す。セルペン4500は、基板4505と接触するエラストマーブロック4503中のフローチャネル4501の拡大部分4500aとして形成される。セルペン4500は、セルペン4500の端部4500bおよび4500cは内部領域4500aを完全に囲わないことを除いて、図26A〜26Dで上記に記載されたような個々のセルペンに類似している。むしろ、ケージ4500の端部4500aおよび4500bは、複数の退避可能な支柱4502によって形成される。支柱4502は、図21A〜21Jと組み合わせて上記で詳細に記載されたような通常は閉鎖されるバルブ構造物のメンブレン構造物の一部分であり得る。
詳細には、制御チャネル4504は支柱4502の上に横たわる。制御チャネル4504中の圧力が減少するとき、エラストマー支柱4502は上方に制御チャネル4504中に引かれ、それによってセルペン4500の端部4500bを開き、そして細胞が入ることを許容する。制御チャネル4504中の圧力の上昇の際、支柱4502は基板4505に対して下方に弛緩し、そして細胞がケージ4500が出るのを防ぐ。
エラストマー支柱4502は、ケージ4500からの細胞の移動を防ぐために十分なサイズおよび数であるが、また、その中に貯蔵された細胞(単数または複数)を維持するためにケージ内部4500a中への栄養物の流れまたは拡散を可能にするギャップ4508を含む。対向する端部4500c上の支柱4502は、第2の制御チャネル4506の下に同様な形態とされ、所望によりケージの開放および細胞の除去を許容する。
本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面拡散は、セルペン内で増殖する細胞への栄養物および増殖因子の定常的供給を提供するため、およびセルペンからの低分子量塩類のような廃棄産物を除去するために利用され得る。1つの実施形態が図64中に示され、ここでは、セルペン8200は、ミクロ流体フリー界面8206を横切る拡散により栄養分8205を供給するフローチャネル8204の行き詰まり分岐チャネル8202と流体連絡している。セルペン8200からの廃棄産物8207もまた、次いで、ミクロ流体フリー界面8206を横切って拡散し、そして除去のためにフローチャネル8204中に入る。
セルペンへの、およびそれからの物質の拡散の速度に対する制御は、幅、高さ、および長さ、連結チャネルの数、リザバのサイズ、チャンバのサイズのようなミクロ流体チャネルの寸法、ならびに栄養物供給およびまたは廃棄産物の濃度を変化することにより達成され得る。上記で列挙した因子を変化することにより、とりわけ、細胞増殖および分裂の速度、そしてそれ故、細胞の最大密度を調節することが可能である。そしてミクロ流体寸法では、狭いチャネルによって連結されるより大きな容量のチャンバ内に感知し得る濃度勾配はないので、このようなチャンバ内の全細胞集団は、類似の状態に同時に曝され得る。
本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面拡散を利用して、隣接するチャンバ中に位置決めされた、2つ以上の異なる株の細胞を、チャンバ間を移動する栄養分、廃棄物、および細胞増殖のその他の産物の拡散を可能にしながら培養することもまた可能であり得る。このタイプのミクロ流体構造物および方法は、近接する細胞間の、制限されないで、細胞信号伝達、細胞/細胞毒性、および細胞/細胞共生を含む相互作用を研究することで特に価値があり得る。
最後に、本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面拡散は、所望の細胞増殖状態をスクリーニングするために栄養分/廃棄物状態の勾配を確立するためにさらに用いられ得る。細胞培養を増殖するための拡散の使用は、これらの小寸法で現実的であり、ここでは、拡散長さが短く、そして容量は、短時間に亘り状態を有意に変化させる拡散輸送を可能にするに十分小さい。
(11.化学走化性)
本発明による実施形態のなお別の可能な適用は、化学走化性の研究である。化学走化性は、特定の化学薬品の濃度勾配に応答する運動性細胞の移動の方向の変化である。方向のこの変化は、特有の速度で感知された化学薬品に向かうか、またはそれから離れて動く細胞を生じ得る。化学走化性は、免疫応答で鍵となる役割を演じ、ここで、免疫系の成分は、外来因子の存在に起因する化学的環境における感知した変化に応答して外来因子に移動し、かつそれを破壊する。
本発明の実施形態によって生成されたミクロ流体フリー界面は、化学物質濃度勾配を正確に再現するための価値ある方法を提供し得る。これらの濃度勾配への曝露に応答する運動性細胞の活性は、研究者が化学走化性の現象を研究および理解することを可能にする。
(12.架橋/多孔性勾配をもつポリマーを作成すること)
多くの生物学的適用では、重合ゲルが、代表的には均一組成であるこのゲルを通る分子の拡散する移動度に基づいてこれらを分離するために用いられている。しかし、分子を効率的に分離するゲルの能力は、ゲルの形成の間のpH、密度、または重合架橋のような性質に関して勾配を課すことにより改善され得る。
本発明の実施形態によれば、ミクロ流体フリー界面拡散が、特定の性質の良好に形成された勾配を有する重合化ゲルを製作するために用いられ得る。例えば、1つの例では、濃縮された、重合されていない、光硬化可能なゲル(アガロースなど)が、緩衝溶液を含む第2のミクロ流体チャンバとミクロ流体チャネルを経由して流体連絡しているミクロ流体チャンバ中に導入され得る。個々のチャンバの内容物は、チャネルを通じて互い中に拡散するので、ゲル濃度勾配が確立される。一旦、この勾配が形成されると、ゲルは、UV照射に曝され得、固形ゲルを生成する架橋を生じる。このゲル濃度勾配は、そしてそれ故、ゲルの多孔性は、この重合の結果としてゲル中に固定される。
まさに記載されたような勾配を示すゲルは、電位を付与すること、および分子を最大の多孔度および最低のゲル濃度の領域から最小の多孔度および最高のゲル濃度の領域までゲルを通じて移動させることにより高分子のサイズを決定するために用いられ得る。一旦、ゲルの平均ポアサイズが、この分子を通過させるには小さ過ぎるようになると、この分子は、ゲル中に捕獲されて残り、そして標準的な蛍光または銀染色方法によって検出可能である。従って、ゲル中の分子の位置は、この分子のサイズの直接的反映である。
本発明によるミクロ流体フリー界面拡散を用いる重ね合わせ勾配でゲルを形成する代替の実施形態では、重合したゲルは、インプリントされたpH勾配で形成され得る。このような代替の実施形態では、第1のチャンバは、1つのpHの1つの緩衝液で非重合ゲルで充填され、そして第2のチャンバは、第2のpHの第2の緩衝液で同じ濃度の非重合ゲルの組み合わせで充填される。次いで、分子は、チャンバを連結するミクロ流体チャネルを横切って拡散され、pH勾配を確立する。ゲルは、次に、重合されて均一多孔度の固形ゲルを生成する。拡散する分子が、ゲルマトリックスに永久的に結合され得る場合、均一なpH勾配が、連結チャネルの長さに沿って永久的に確立され得る。このようなpH勾配は、付与された電場との組み合わせで採用され得、ゲルを通って移動する分子をそれらの異なる等電位点に基づいて分離する。
(13.薬物送達システム)
ミクロ流体チャンバからまたはその中へのフラックスの速度を制御する能力は、時計のような能動的制御戦略なくして、化学薬品または薬物の時限放出を可能にする。例えば、移植されたミクロ流体薬物送達デバイスは、変化する幾何学的形状のミクロ流体チャネルを通じて出口オリフィスに連結された複数のチャネルを含み得る。このようにして、チャネル中の化学薬品の各々の輸送の速度が、別個および組み合わせて制御され得る。このような構造を利用し、いくつかの異なる薬物が、異なりかつ良好に規定された速度で身体中に導入され得る。
例えば、ミクロ流体フリー界面拡散を利用する薬物送達の実施形態では、複数のチャンバが、最初、緩衝溶液で満たされたチャンバに変動する寸法のチャネルを経由して連結され得る。これらの緩衝液で満たされたチャンバは、次いで、順に、種々の寸法のチャネルを経由して出口オリフィスに連結され得る。ミクロ流体チャンバおよび連結チャネルの寸法は、チャンバから身体中への薬物の放出の速度およびタイミングの両方に対する制御を可能にする。幅および長さ、ならびにチャンバ容量および形状のようなチャネル寸法、ならびに薬物濃度の思慮深い選択により、経時的に薬物送達の合計速度に対する非常に正確な制御を達成することが可能である。
(14.高度に反応性の化学薬品種の混合)
本発明の実施形態によるミクロ流体フリー界面にとって可能な適用のなお別の例は、高度に反応性の種の制御された混合にある。例えば、特定の状況下では、2つ以上の化学種間で遅いかまたは段階的なペースで反応を生じさせることが所望され得る。しかし、対流流れを含む従来の状態では、これらの種は、突然および/または激しく反応し得、反応産物の有用性を和らげる。
しかし、本発明の実施形態によれば、これら化学種間の接触および反応は、対流流れはなく、専ら拡散により支配される。従って、これら化学種間の反応を遅延しかつ支配可能なペースで行うことが可能であり得る。本発明による実施形態がかなりの利点を提供し得る1つの分野は、爆発性であるか、またはその他の潜在的に不安定な産物の調製にあり、そこでは、迅速に変化する反応体濃度が、危険またはそうでなければ所望されない状態を生じ得る。本発明による実施形態はまた、最終または中間産物が不安定、高度に反応性、および/または揮発性である組み合わせ合成適用のために潜在的に有用であり得る。
(15.生物学的アッセイ)
本発明によるミクロ流体フリー界面の実施形態は、種々の適用のために採用され得る。このような適用の例は以下に要約される。可能な適用のより完全な記載は、すべての目的のために参考として本明細書によって援用される、2001年11月16日に出願され、そして「細胞アッセイおよび高スループットスクリーニング」と題するPCT出願PCT/US01/44869中に見出され得る。このような適用を実施するために適切なミクロ流体構造物の例は、本明細書に記載のものを含み、ならびにその他は、すべての目的のために参考として本明細書によって援用される、代理人事件番号第20174C−004430号として2002年4月5日に出願された、米国非仮特許出願第 / 号、「ミクロ流体デバイスを利用する核酸増幅」中に記載されている。
広範な種々の結合アッセイが本明細書に開示のミクロ流体デバイスを利用して実施され得る。本質的に任意のリガンドおよび抗リガンド間の相互作用が検出され得る。調査され得るリガンド/抗リガンド相互作用の例は、制限されないで、酵素/リガンド相互作用(例えば、基質、コファクター、インヒビター);レセプター/リガンド;抗原/抗体;タンパク質/タンパク質(同種親和性/異種親和性相互作用);タンパク質/核酸;DNA/DNA;およびDNA/RNAを含む。従って、これらのアッセイは、例えば、目的のレセプターに対するアゴニストおよびアンタゴニストを同定するため、レセプターに結合し、かつ細胞内信号カスケードを誘引し得るリガンドを同定するため、および相補的核酸を同定するために用いられ得る。アッセイは、当業者の周知の、リガンドおよび推定の抗リガンドが互いに接触される直接結合フォーマットか、または競合結合フォーマットで実施され得る。
異種結合アッセイは、複合体が、非反応因子から、標識された複合体が非複合体化標識反応体から区別され得るように分離されるステップを含む。しばしば、これは、リガンドまたは抗リガンドのいずれかを支持体に付着することによって達成される。リガンドおよび抗リガンドが接触された後、非複合体化反応体は洗浄され、そして残存する複合体が次いで検出される。
本明細書中に提供されるミクロ流体デバイスで実施される結合アッセイはまた、均一フォーマットで実施され得る。この均一フォーマットでは、リガンドおよび抗リガンドが溶液中で互いと接触され、そして結合複合体は、非複合体化リガンドおよび抗リガンドを除去しなければならないことはなく検出される。均一アッセイを実施するためにしばしば利用される2つのアプローチは、蛍光偏光(FP)およびFRETアッセイである。
ミクロ流体デバイスはまた、競合フォーマットで利用され得、既知の結合パートナー間の相互作用を阻害する薬剤を同定する。このような方法は、一般に、結合パートナーが相互作用し、そして複合体を形成することを可能にするに十分な状態下および時間の間、結合パートナーを含む反応混合物を調製することを含む。阻害活性について化合物を試験するために、この反応混合物は、試験化合物の存在下(試験反応混合物)および非存在下(コントロール反応混合物)で調製される。結合パートナー間の複合体の形成が、次いで、検出され、代表的には、結合パートナーの1つまたは両方による保持される標識を検出することによる。コントロール反応におけるより多くの複合体、次いで、試験反応混合物中の統計学的に有意な差異を構成するレベルの形成は、この試験化合物が結合パートナー間の相互作用を妨害することを示す。
免疫学的アッセイは、本発明の実施形態によるミクロ流体デバイスで実施され得るアッセイの1つの一般的カテゴリーである。特定のアッセイが、目的の特定の抗原に特異的に結合し得る抗体について、抗体の集団をスクリーニングするために実施される。このようなアッセイでは、試験抗体または抗体の集団が抗原と接触される。代表的には、抗原は固体支持体に付着される。免疫学的アッセイの例は、当該分野で公知のような酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)および競合アッセイを含む。
本明細書で提供されるミクロ流体デバイスを利用して、種々の酵素アッセイが実施され得る。このような酵素アッセイは、一般に、アッセイを実施するために必要な成分を含むアッセイ混合物を、種々の分岐フローチャネル中に導入することを含む。このアッセイ混合物は、代表的には、例えば、酵素のための基質(単数または複数)、必要なコファクター類(例えば、金属イオン、NADH、NADPH)、および緩衝液を含む。カップルしたアッセイが実施されるべき場合、アッセイ溶液はまた、一般に、酵素、基質(単数または複数)および酵素カップルのために必要なコファクターを含む。
本発明の実施形態によるミクロ流体デバイスは、産生される酵素産物に選択的に結合する物質を含むために配列され得る。いくつかの事例では、この材料は、この反応産物自体に対して特異的な結合親和性を有する。幾分より複雑なシステムは、転移反応を触媒する酵素のために開発され得る。このタイプの特定のアッセイは、例えば、ドナー基質から、検出部分および親和性標識の両方を保持する産物を産生するために親和性標識を保持するアクセプター基質への検出可能部分の転移を触媒する酵素をインキュベートすることを含む。この産物は、この親和性標識に特異的に結合する相補的試薬を含む物質によって捕獲され得る。この物質は、代表的には、捕獲された産物が容易に検出され得るような検出領域中に位置決めされる。特定のアッセイでは、この物質は、検出セクションの内部チャネル壁にコートされ;あるいは、この物質は、試薬でコートされる検出領域中に位置決めされた支持体であり得る。
本発明のデバイスを利用する特定のアッセイは、細胞よりもむしろベシクルで実施される。このようなアッセイの1つの例は、蛍光相関分光法(FCS)を利用するGプロテインカップルレセプターアッセイである。目的のレセプターを過剰発現する細胞から構築された膜ベシクルが、主フローチャネル中に導入される。ベシクルは、これもまた主フローチャネルによって導入される蛍光天然リガンドと混合される前に、インヒビターと予備混合され、そして分岐フローチャネルを経由するか、または主フローチャネルの1つを経由するかのいずれかである。成分は所望の時間の間インキュベートされ、そして蛍光信号が、Evotec/Ziess Confocor(シングルまたはダブル光子計数デバイス)のようなFCSリーダーを用いてフローチャンバー中で直接分析され得る。
FRETアッセイはまた、本明細書に開示されるデバイスを用い、多くのリガンド−レセプター相互作用を行うために利用され得る。例えば、FRETペプチドレポーターは、青−および赤−シフトGFP改変体から構成される蛍光タンパク質をコードするベクター中にリンカー配列(リン酸化部位のようなタンパク質の誘導可能なドメインに対応する)を導入することにより構築され得る。このベクターは細菌発現ベクター(生化学的研究のため)また哺乳動物発現ベクター(インビボ研究のため)であり得る。
核レセプターのアッセイもまた、本発明のミクロ流体デバイスで実施され得る。例えば、コアクチベーター/核レセプター相互作用のためのFRET−ベースのアッセイが実施され得る。詳細な例として、このようなアッセイは:(a)CFP(シアン蛍光タンパク質、GFP誘導体)でタグ化されたレセプターのリガンド結合性ドメイン、および(b)Yellow蛍光タンパク質(YFP)でタグ化されたレセプター結合性タンパク質(コアクチベーター)間のFRET相互作用を検出するために実施され得る。
蛍光偏光(FP)は、核レセプター−リガンド置換およびキナーゼ阻害のための高スループットスクリーニング(HTS)を開発するために利用され得る。FPは溶液−ベースの均一技法であるので、反応成分の固定化または分離は要求されない。一般に、これらの方法は、レセプターのための蛍光標識されたリガンドと関連する試験化合物との間の競合を用いることを含む。
多くの異なる細胞レポーターアッセイが、提供されたミクロ流体デバイスで実施され得る。実施され得る1つの一般的タイプのレポーターアッセイは、細胞レセプターに結合し、そしてレポーター構築物の転写を活性化する細胞内信号または信号カスケードの活性化を誘引し得る試薬を同定するために設計されたアッセイを含む。このようなアッセイは、目的の遺伝子の発現を活性化し得る化合物を同定するために有用である。以下に論議されるツーハイブリッドアッセイは、本発明のデバイスで実施され得る細胞レポーターアッセイの別の主要なグループである。このツーハイブリッドアッセイは、タンパク質間の結合相互作用を調査するために有用である。
しばしば、細胞レポーターアッセイは、化合物のライブラリーをスクリーニングするために利用される。一般に、このような方法は、細胞を主フローチャネル中に導入することを含み、その結果、細胞は、主フローチャネルと分岐チャネルとの間の交差点に位置決めされるチャンバ中に保持される。異なる試験試薬(例えば、ライブラリーから)が、次いで、異なる分岐チャネル中に導入され得、そこで、それらは、チャンバ中の細胞と混合されるようになる。あるいは、細胞は主フローチャネルを経由して導入され得、そして次に分岐チャネル中に移され、そこで、細胞は、保持領域中に貯蔵される。一方では、異なる試験化合物が、異なる分岐フローチャネル中に導入され、通常は主フローチャネルと分岐フローチャネルとの交差点に位置決めされるチャンバを少なくとも部分的に満たす。保持領域中に保持された細胞は、適切なバルブを開放することにより放出され得、そしてこれら細胞は、異なる試験化合物との相互作用のためのチャンバに移される。一旦、細胞と試験化合物とが混合されると、得られる溶液は、保持スペースに戻されるか、またはレポーター発現の検出のための検出セクションに輸送される。この細胞および試験試薬は、必要に応じてさらに混合され、そして上記で提示された設計の混合器を用いてインキュベートされる。
遺伝子発現を誘引し得るような化合物をスクリーニングすることで利用される細胞は、代表的には目的のレセプターを発現し、そして異種レポーター構築物を宿す。このレセプターは、リガンドのレセプターへの結合に際し、遺伝子の転写を活性化するものである。このレポーター構築物は、通常は、転写制御要素およびそれに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターである。この転写制御要素は、調査下にあるレセプターへのリガンドの結合に際して生成される細胞内信号(例えば、転写因子)に応答する遺伝子要素である。このレポーター遺伝子は、検出可能な転写または翻訳産物をコードする。しばしば、レポーター(例えば、酵素)は、ミクロ流体デバイスと関連する検出器によって検出され得る光学的信号を生成し得る。
広範な種々のレセプタータイプがスクリーニングされ得る。これらレセプターは、しばしば細胞表面レセプターであるが、細胞内レセプターもまた、スクリーニングされる試験化合物が細胞中に侵入し得ることを前提に調査され得る。調査され得るレセプターの例は、制限されないで、イオンチャネル(例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウムチャネル)、電圧−ゲートイオンチャネル、リガンド−ゲートイオンチャネル(例えば、アセチルコリンレセプター、およびGABA(γ−アミノ酪酸)レセプター)、成長因子レセプター、ムスカリンレセプター、グルタメートレセプター、アドレナリン作動性レセプター、ドーパミンレセプターを含む。
実施され得る細胞アッセイの別の一般的カテゴリーは、ツーハイブリッドアッセイである。一般に、このツーハイブリッドアッセイは、多くの真核生物転写因子は、2つの異なるハイブリッドまたは融合タンパク質間の相互作用を検出するための別個のDNA結合ドメインおよび別個の転写活性化ドメインを含むという事実を開拓する。従って、ツーハイブリッドアッセイで利用される細胞は、2つの融合タンパク質をコードする構築物(単数または複数)を含む。これら2つのドメインは、特定条件下で互いと潜在的に相互作用し得る別個の結合性タンパク質に融合される。ツーハイブリッドアッセイを実施することで利用される細胞は、その発現が2つの融合タンパク質間の相互作用、または相互作用の欠如のいずれかに依存するレポーター遺伝子を含む。
まさに記載したアッセイに加えて、細胞膜電位をアッセイするための種々の方法が、本明細書に開示のミクロ流体デバイスで実施され得る。一般に、膜電位およびイオンチャネル活性をモニターするための方法は、2つの代替方法を用いて測定され得る。1つの一般的アプローチは、細胞内側のイオン濃度におけるバルク変化を測定するために蛍光イオンシェルターを用いることである。第2の一般的アプローチは、膜電位に感受性のFRET色素を用いることである。
本明細書に開示のミクロ流体デバイスは、細胞増殖をモニターするための種々の異なるアッセイを実施するために利用され得る。このようなアッセイは、種々の異なる研究で利用され得る。例えば、これら細胞増殖アッセイは、例えば、中毒学分析で利用され得る。細胞増殖アッセイはまた、腫瘍を含む種々の細胞増殖障害の処置のための化合物をスクリーニングすることで価値を有する。
本明細書に開示のミクロ流体デバイスは、毒性状態を同定するため、可能な毒性について試薬をスクリーニングするため、毒性侵襲に対する細胞応答を調査するため、および細胞死をアッセイするために設計された種々の異なるアッセイを実施するために利用され得る。種々の異なるパラメータが、毒性を評価するためにモニターされ得る。このようなパラメータの例は、制限されないで、細胞増殖、遺伝子またはタンパク質発現分析による中毒学応答の細胞経路の活性化をモニターすること、DNA断片化;細胞膜の組成における変化、膜透過性、死滅レセプターまたは下流信号伝達経路の成分(例えば、カスパーゼ)の活性化、遺伝子ストレス応答、NF−κB活性化および有糸分裂促進剤に対する応答を含む。関連するアッセイは、アポトーシス(細胞死のプログラムされたプロセス)および壊死をアッセイするために用いられる。
種々の微生物細胞を異なる試験化合物と接触することにより、抗微生物アッセイを実施し、それによって可能な抗細菌化合物を同定するために本明細書で提供されるデバイスをまた利用し得る。本明細書中で用いられる用語「微生物」は、任意の顕微鏡による、および/または単細胞真菌、および任意の細菌または任意の原生動物をいう。いくつかの抗微生物アッセイは、細胞をセルペン中に保持すること、およびそれを少なくとも1つの可能な抗微生物化合物と接触することを含む。この化合物の影響は、細胞の健康および/または代謝における任意の検出可能な変化として検出され得る。このような変化の例は、制限されずに、成長、細胞増殖、細胞分化、遺伝子発現、細胞分裂などにおける改変を含む。
本明細書で提供されるミクロ流体デバイスのあるものは、ミニ配列決定反応またはプライマー伸長反応を実施するために利用され得、標的核酸中の多形部位に存在するヌクレオチドを識別する。一般に、これらの方法では、標的核酸のセグメントに相補的なプライマーは、反応がこの多形部位のヌクレオチドに相補的であるヌクレオチドの存在下で実施される場合に伸長される。しばしば、このような方法は、単一塩基対伸長(SBPE)反応である。このような方法は、代表的には、プライマーを、相補的な標的核酸配列に、プライマーの3’末端が多形部位にすぐ隣接するようにか、または多形部位の2〜3塩基上流にあるようにハイブリダイズすることを含む。伸長反応は、1つ以上の標識された非伸長性ヌクレオチド(例えば、ジデオキシヌクレオチド)およびポリメラーゼの存在下で実施される。プライマーの3’末端上への非伸長性ヌクレオチドの取り込みは、一旦、非伸長性ヌクレオチドがプライマーの3’末端上に取り込まれると、ポリメラーゼによるプライマーのさらなる伸長を防ぐ。
まさに記載された方法に関連して、本発明のデバイスはまた、当該分野で良好に確立されている増幅技法を用いて複数サンプル中の標的核酸を増幅し、および次に同定するために利用され得る。一般に、このような方法は、標的核酸を潜在的に含むサンプルを、この標的核酸に特異的にハイブリダイズする正プライマーおよび逆プライマーと接触することを含む。反応は、このプライマー配列を伸長するために4つすべてのdNTPおよびポリメラーゼを含む。
(V.位相空間の探索)
タンパク質結晶学の問題に緊密に関係するのは、いくつかの化学的変数の関数としてタンパク質の溶解度を決定することである。推測的に、結晶化を誘導する熱力学的状態を決定することは困難であり得るので、スクリーニング方法は、可能な限り多くの位相空間(多くの状態)をサンプリングするべきである。これは、複数のアッセイを実施することにより、そしてまた各アッセイの展開の間に間に合ってサンプリングされる位相空間による達成され得る。
本発明によるミクロ流体デバイスおよび方法の混合および計測機能性は、この課題に適合されており、それによって、タンパク質サンプルは、その化学が系統的に変更される複数の関連溶液と混合され得る。結晶成長を達成する機会を増加する実験を系統的に設計するために沈殿物タンパク質相互作用の一般的な相性質を用いることが可能である。これようにして溶解度「位相空間」が生成され得る。この位相空間の知識は、成功する結晶化状態を予想するか、または同定された状態を洗練するために用いられ得る。
図55は、高分子および沈殿剤を含む混合物の位相空間を示す単純化した概略図である。この位相空間は、溶解度曲線5500によって、高分子溶解度によって決定される溶解(S)および過飽和(SS)領域に分割される。
Gibbsの自由エネルギー図は、エネルギー的に好まれない状態からエネルギー的に好ましい状態に移動するために必要な障壁エネルギー(Eb)によって分割される溶解相および沈殿相の相対エネルギーをグラフにより表す。図56Aは、図55の溶解領域(S)の自由エネルギー図である。図56Bは、溶解度曲線5500に沿った自由エネルギー図である。図56Cは、図55の過飽和領域(SS)の自由エネルギー図である。図56A〜Cの比較は、この溶解度曲線の沿って等しくバランスされる溶解相および沈殿相のエネルギーを示し、溶解領域では溶解形態がエネルギー的に好まれ、そして過飽和領域では固相がエネルギー的に好まれる。
図55はまた、過飽和領域(SS)が、長い範囲のオーダーを欠く無定形沈殿物(すなわち、非結晶)が迅速に形成される沈殿領域(P)、沈殿曲線5502の近傍の不安定領域(L)、および溶解度曲線5500の近傍の準安定性領域(M)にさらに分割され得ることを示す。図56D、56Eおよび56Fは、それぞれ、沈殿領域、不安定領域、および準安定領域の自由エネルギー図を示す。
沈殿領域(P)では、無定形凝集物が結晶固体よりも好まれ、そして活性化エネルギー(Eb)は低く、その結果、溶解状態と固形状態との間の遷移が迅速に起こる。不安定領域(L)では、結晶形態が好まれるが、Ebは低く、迅速な核形成および対応する小結晶の形成が生じる。対照的に、準安定領域(M)では、比較的高い活性化エネルギーが、核形成を抑制するが、現存する結晶の成長を支持する。
臨界的核凝集に必要な三次元核形成は、一般に、引き続く結晶面成長に必要な一次元または二次元核形成の活性化エネルギーより大きな活性化エネルギーを有するので、最適結晶化スキームは、結晶成長のこれらの2つの相に対して独立の制御を提供すべきである。BIM計測スキームは、沈殿物とタンパク質溶液との間の「フリー界面拡散」を履行することによりこれの性質を正確に提供する。
図57は、従来のハンギングドロップおよびミクロバッチ実験の、高分子濃度および沈殿剤濃度を変数として有する二次元位相空間による展開と、本発明の実施形態によるμFID実験とを比較する単純化した概略図である。平衡の間のチップによってとられた相−空間軌道は、含まれる種の拡散定数に依存する。チップ界面バルブが開放された後、短時間で、タンパク質側のタンパク質濃度はほとんど変化せず、その一方、代表的には、かなりより大きい拡散定数を有する対向溶媒のそれは、リソグラフィーにより規定された混合比によって決定される3つの最終値の1つまで増加する。次に、約8〜24時間の時間に亘りタンパク質濃度が平衡化し、溶媒側で増加し、そしてタンパク質側で減少する。最終のタンパク質濃度がもう一度混合比により決定される。従って、チップは、位相空間を通る曲がった経路をとり、これは、原則的に、タンパク質溶液が不安定領域中で効率的な結晶核形成を有し、次いで、準安定領域で高品質成長が続くことを可能にする。
従って、図57は、3つの異なる混合比を有するμFID反応部位の展開を示す。曲線は、各化合物のサンプル側および沈殿剤側の両方の平均状態を良好に示す。最終的状態(I、II、III)は、混合比によって決定され、そしてこれらの曲線が、核形成の高い確率をもつ領域から高品質結晶成長を支持する領域まで通過するより大きな機会を有することを観察し得る。これら曲線の区切りは、混合比によって決定される。
対照的に、従来のマイクロバッチおよびハンギングドロップアプローチは、標的分子が沈殿剤と1:1で組み合わされる点IVで開始する。マイクロバッチ実験は、混合不能オイル下でインキュベートされ、引き続く試薬の濃縮を避け、そしてそれ故、位相空間における単一の点のみをサンプリングする。ハンギングドロップ実験では、混合物は、沈殿剤の大きなリザバでの蒸気拡散を通じて平衡化され、試薬を濃縮し、そしてサンプルを過飽和領域中に駆動する。これは望ましくない。なぜなら、得られる位相空間軌道は沈殿領域中に移動するからである。
フリー界面拡散技法の使用は、位相空間をサンプリングする有望な方法を提供するが、任意の所定の高分子のための可能な結晶化剤の真の数および濃度は、より系統的でかつ迅速な位相空間マッピング技法を所望されるようにする。
例えば、結晶成長を調査するための実験または実験のセットを設計する前に、まず、高分子および結晶化剤の特定の組み合わせの曲線の位置を同定することがより効率的である
と証明され得る。一旦、このような溶解度曲線が位相空間でマップされると、調査者は、次いで、軌道がこの溶解度曲線に隣接する位相空間領域を約束する領域を横断すると予期され得るスクリーニング実験のセットを効率的に設計することに進行し得る。
高分子の過飽和のレベルは、一般に、以下の式(8)によって規定される:
(8)SS=(PC−MC)/MC・100、ここで:
SS=高分子の過飽和のレベル;
PC=高分子濃度;および
MC=平衡にある最大可溶性高分子濃度である。
本発明の目的には、これまで中間の過飽和(ISS)と称される、高分子の過飽和の代替の測定は、MCがタンパク質の中間最大高分子濃度(IMC)によって置換される場合に得られる。本発明の目的には、このIMCは、1分以内に、固相(結晶または無定形のいずれか)を生成することができない高分子の最大濃度として規定される。中間の過飽和(ISS)は、以下の式(9)によって規定される:
(9)ISS=(PC−IMC)、ここで:
ISS=中間過飽和;
PC=高分子濃度;および
IMC=中間最大高分子濃度である。
高分子の結晶化は、一般に、代表的には、50%〜500%の範囲にある高過飽和値を必要とする。さらに、結晶化実験において正のISS値で開始することは所望されない。なぜなら、これは、固相の即座の形成をもたらすからである。
所定の位相空間で、IMC曲線によって上に境界され、およびMC曲線によって下に境界される領域は、タンパク質結晶成長が支持され得る領域を規定する。従って、このIMC曲線が、例えば、組み合わせ混合を利用する高スループットスクリーニングの間の迅速固体形成の観察によって既知である場合、結晶化実験は、IMCの近くで、かつ負のISS値で発展するようセットされるべきである。本出願の目的には、約±50%の間のISS値を有する状態は、IMC曲線の近傍であると考えられる。
図17A〜Bと組み合わせて先に論議された組み合わせ混合デバイス、およびその改変体は、結晶化剤および高分子の溶解度曲線をマップするための迅速かつ効率的な方法を提供する。詳細には、この結晶化剤サンプルは、緩衝液および試薬を、特異的かつ正確な濃度を達成するために回転ミキサーフローチャネル中に注入することにより調製され得る。次いで、サンプル注入ポートライン、およびポンプが、高分子サンプルを回転ミキサー中に導入するために用いられ得、この回転ミキサーにおける沈殿物の形成の検出が続く。
沈殿物/結晶凝集物の検出は、いくつかの方法でなされ得る。凝集物検出の1つの方法は、カメラ上に混合リングをイメージすることである。単純なイメージ処理が、次いで、沈殿物を有するチャネルから清澄なチャネルを区別するためになされ得る。さらに、いくつかの結晶は、ある程度の複屈折を示すので、偏光レンズを用いて結晶を無定形固体から区別し得る。より小さな長さスケールでタンパク質凝集物を検出するために光散乱のような方法を用いることもまた可能である。
図24は、塩溶液(3.6M NaCl、およびpH4.6にある100mM 酢酸ナトリウム(NaAc))に対し滴定されているタンパク質サンプル(リゾチーム84mg/ml)に対する溶解度「位相空間」を示す。図24は、120mLの合計容量を消費する100のアッセイの結果を示す。図24は、溶解度相−空間を含むこのようなグラフの数千のうちの1つだけを表す。
図24に示されるグラフは、可溶性状態と沈殿状態との間の区別のみを示す。しかし、両方の方向にこの溶解度曲線を通過するために、高分子と結晶化剤との相対濃度における変化の方向をシフトすることによってより多くの情報を得ることが可能であり得る。例えば、タンパク質サンプルに十分な塩が添加される場合、無定形(沈殿物)または結晶(微結晶)のいずれかであり得る固体が形成される。この溶液がゆっくりと希釈される場合、この固体は、最終的に溶液中に溶解して戻る。しかし、その溶解が生じる濃度は、代表的には、凝固が当初生じる同じ濃度ではなく、そして、一般に、この固体が結晶であるか、または無定形であるかに依存する。
詳細には、沈殿は、ほぼ即座に生じるが、結晶は形成するのにより長くかかり、結晶化プロセスのためのより高い活性化エネルギーを示唆している。結晶核形成/形成のためのより高い活性化エネルギーは、実験室時間スケールでの核形成の観察は、実質的な過飽和を必要とすることを意味する。対照的に、結晶形態は、一旦それが出現すると、ゼロより大きいすべての過飽和値について可溶性形態よりも好まれる。従って、固相が溶解度相に戻って再変換される状態と対比して、溶解度相が固体に変換される状態下のヒステリシスの大きさは、沈殿物に対する結晶の存在を、そしてそれ故、結晶化に好適な状態を示し得る。
図25は、結晶化剤(3.6M NaCl、およびpH4.6にある0.11Mクエン酸ナトリウム)との混合により沈殿されたリゾチーム(84mg/ml)のサンプルの沈殿を示す。矩形(黒四角)と丸(黒丸)シンボルとの間の一致の欠如は、ヒステリシスおよび結晶成長を同定するための位相空間の探索をさらに約束する点を示す。
まさに記載されたような沈殿形成におけるヒステリシスの検出はまた、特定の高分子/結晶化剤の組み合わせが結晶形成の有望性を全く保持するか否かを識別するために非常に価値があることを証明するために供し得る。例えば、図55の検査は、結晶形成に好適な不安定領域および準安定過飽和領域が溶解度曲線に沿って均一に生じないことを示す。その代わり、このような不安定/準安定領域が、局在化され、そして固体物質の形成が無定形であり、かつ整列された結晶物質の形成が可能ではない隣接する沈殿領域によって取り囲まれ得る。本発明の実施形態によるヒステリシスの検出は、特定タイプの結晶の形成を示し得、そしてそれ故、位相空間の可能な好適な領域をマップするために必要な時間および努力を最小にする予備的スクリーニング機構を提供する。
結晶化サンプル中の凝集した固体のサイズを直接測定するために光散乱技法を利用することがさらに可能であり得る。詳細には、入射電磁放射の形態に対するチップのPDMSの事実上の透明度は、回転またはその他のタイプの混合デバイスのフローチャネルの光学的尋問を可能にし得る。準−弾性光散乱(QELS)または動的光散乱(DLS)のような技法を利用するサンプルから散乱された放射の検出は、サンプル中に存在する固体のサイズの決定を可能にし得、それによって、結晶核形成が好まれるとき、固体形成の開始のサンプル状態の決定を可能にする。
さらに、「希釈溶液性質からタンパク質結晶化を予測すること」、Acta Crystallogr.D.50:361〜365(1994)において、GeorgeおよびWilsonは、タンパク質結晶化挙動と、距離に亘る分子内電位の積分を表す基礎的パラメータであるタンパク質浸透圧第2ビリアル係数(B22)との間の関係を示した。このGeorgeおよびWilsonの論文は、すべての目的のためにその全体が本明細書中に援用される。
高分子溶液の第2ビリアル係数は、高分子溶液の散乱挙動から検出され得る。さらに、結晶化を起こすタンパク質溶液の第2ビリアル係数の値は、一般に、狭い範囲にあることが見出されている。従って、小容量サンプルとの迅速組み合わせ混合を実施する能力とカップルされた光散乱技法による第2ビリアル係数のオンチップ評価は、可能な結晶可能性について異なる混合物の迅速スクリーニングを可能にし得る。
本発明を、その特定の実施形態を参照して本明細書中に記載してきたが、許容範囲の改変、種々の変更および置換が先行する開示で意図され、そしていくつかの事例では、本発明のいくつかの特徴は、提示されたような本発明の範囲から逸脱することなくその他の特徴の対応する使用なくして採用され得ることが認識される。従って、多くの改変が、本発明の本質的な範囲および思想から逸脱することなく、本発明の教示に対して特定の状況または材料を適合するためになされ得る。本発明は、本発明を実施するために企図されたベストモードとして開示された特定の実施形態に制限されないことが意図され、本発明は、請求項の範囲内に入るすべての実施形態および等価物を含むことが意図される。