JP4453318B2 - 垂直記録磁気ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は特に垂直記録磁気ヘッドの主磁極層に用いられる軟磁性膜に係り、高い飽和磁束密度を維持できるとともに保磁力Hcを低減できる軟磁性膜を前記主磁極層に用いることで前記主磁極層からの残留磁化を低減でき、信号消去等の不具合を抑制できる垂直記録磁気ヘッドの製造方法に関する。
ディスクなどの記録媒体に磁気データを高密度で記録する装置として垂直磁気記録方式がある。垂直磁気記録は水平磁気記録に比べて高記録密度化を実現する上で有利である。
前記垂直磁気記録方式に用いられる磁気ヘッドには、基本的な構成として、記録媒体との対向面で膜厚方向に対向する主磁極層と補助磁極層(リターンパス層)と、前記主磁極層と補助磁極層とに記録磁界を誘導するためのコイル層とが設けられている。
前記主磁極層の前記媒体対向面はトラック幅Twとなっており、前記主磁極層の前記媒体対向面での面積は、前記補助磁極層の前記媒体対向面の面積に比べて十分に小さくされている。
垂直磁気記録方式では、前記コイル層に通電されることにより補助磁極層と、主磁極部とに記録磁界が誘導され、補助磁極層の媒体対向面と、主磁極部の媒体対向面との間での漏れ記録磁界が、記録媒体に垂直方向に向けられる。
前記記録媒体は、その表面に保磁力の高いハード膜と、内方に磁気透過率の高いソフト膜とを有する構成であり、垂直記録磁気ヘッドの主磁極層から前記記録媒体に向けられた垂直方向への記録磁界は、前記記録媒体のハード膜からソフト膜を通り、さらに補助磁極層に戻る磁気回路を構成する。
特開2002−57031号公報 特開2003−77723号公報 特公平7−44110号公報
ところで高記録密度化により前記主磁極層のトラック幅Twは0.1〜0.2μm程度、高さ寸法は0.2〜0.3μm程度まで狭小化され、また記録密度の向上に伴い更なる寸法の縮小が必要とされる。このように非常に小さい主磁極層内には磁区形成がなされず前記主磁極層からは記録媒体に向けて残留磁化が漏れ出す状態となることがある。
残留磁化は、記録時において主磁極から記録媒体に向けて出される記録磁界よりも十分に小さいが、垂直記録磁気ヘッドの場合、前記残留磁化が記録媒体の前記ソフト膜に引き込まれて、主磁極−記録媒体のハード膜−記録媒体のソフト膜−補助磁極層を経る閉磁路が形成されやすく、その結果、既に記録された信号が消去等され、記録特性に悪影響をもたらす結果となった。
上記した特許文献1〜特許文献3には、いずれも垂直磁気記録ヘッドに関する上記不具合の認識は無い。これら文献は、いずれも水平磁気記録に用いられる薄膜磁気ヘッドを意識したものである。水平磁気記録方式に用いられる記録媒体には垂直磁気記録方式に用いられる記録媒体のように、前記ソフト膜は存在しないため、狭小化されたコア層から残留磁化が記録媒体に向けて漏れ出しても、前記残留磁化が前記記録媒体に記録された信号を消去してしまうほど強く作用することはなく、よって水平磁気記録方式では、上記した問題がそもそも生じ得ない。
各文献をさらに詳しく見てみると、特許文献1は、NiFe合金やCoFeNi合金にFe組成比が変動する変動領域を設けるとした発明であり、保磁力Hc低下を目指したものである。
しかし特許文献1では、保磁力の低下とともに逆に飽和磁束密度Bsは比較的小さくなりやすく2.0Tを下回りやすくなっている。
また特許文献2では、FeNiS合金に関する発明で、保磁力と応力の低下を目指したものであるが、やはり飽和磁束密度Bsが低く2.0Tを下回る。また保磁力Hcも270(A/m)程度以下にできるとしているが、この保磁力自体はさほど小さい値ではない。
また特許文献3は、CoFeNi合金に関する発明であり、高い飽和磁束密度Bsを目指したものである。この発明では飽和磁束密度Bsを15000Gauss(=1.5T)以上にできるとしているが、このBs自体はさほど大きい値ではない。また特許文献3のCoFeNi合金の結晶構造は面心立方格子(fcc)であるが、CoFeNi合金で面心立方格子構造となるためには、Feの組成比は低く抑えられておりそれは表1を見ても明らかである。Feの組成比を低くすると飽和磁束密度Bsは低下するから、特許文献3は、ある程度高い飽和磁束密度Bsを得るとともに、面心立方格子の結晶面を規制して結晶磁気異方性定数や磁歪定数も良好な値になるように制御する点に特徴があるものと考えられる。
以上のようにいずれの特許文献も高い飽和磁束密度Bsや低い保磁力Hcを得られるように組成比等を制御するものであるが、垂直記録磁気ヘッドの主磁極としては、高飽和磁束密度とともに低保磁力Hcの双方が両立した磁性材料を使用しなければならない。具体的には少なくとも2.0T以上の飽和磁束密度Bsと2.5Oe(約197A/m)以下の保磁力Hcの双方を兼ね備えていることが必要である。
しかし上記した特許文献はいずれも垂直記録磁気ヘッドの主磁極に関する発明でないとともに、少なくとも2.0T以上の飽和磁束密度Bsと2.5Oe(約205A/m)以下の保磁力Hcの双方を兼ね備えた磁性材料の実現には至っていない。
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、高い飽和磁束密度を維持できるとともに保磁力Hcを低減できる軟磁性膜を主磁極層に用いることで前記主磁極層からの残留磁化を低減でき、信号消去等の不具合を抑制できる垂直記録磁気ヘッドの製造方法を提供することを目的としている。
発明は、記録媒体との対向面で、トラック幅を有して構成される主磁極層と、前記主磁極層よりも広い幅寸法で形成された補助磁極層とが膜厚方向に対向して位置し、前記主磁極層と補助磁極層に記録磁界を与えるコイル層が設けられ、前記主磁極層に集中する垂直磁界によって、前記記録媒体に磁気データを記録する垂直記録磁気ヘッドの製造方法において、
前記主磁極層を、電解メッキ法により、FeとNiあるいは、FeとNiとCoとからなる軟磁性膜にてメッキ形成し、
このとき、電解メッキ工程に用いるメッキ浴に、前記軟磁性膜を構成する各元素イオンとともに、マロン酸を添加し、サッカリンナトリウムを添加せず、印加電流の電流密度を周期的に変動させることで、以下の(1)〜(3)を満たす前記軟磁性膜をメッキ形成することを特徴とするものである。
(1) Niの平均組成比が4質量%以上で28質量%以下で、Coの平均組成比が0質量%以上で8質量%以下で、残部がFeの平均組成比である。
(2) 少なくとも一部の領域に、膜厚方向に延びる柱状晶が形成される
(3) Feの平均組成比に対し、Feの組成比が膜厚方向に向けて高い領域と低い領域とが交互に繰り返される組成変調領域が、少なくとも一部の領域に形成される。
本発明ではメッキ浴中にマロン酸を添加することで、軟磁性膜の結晶質化を促進でき柱状晶の形成が図られる。そして前記マロン酸の添加により、前記マロン酸を添加しないものに比べて高い飽和磁束密度を維持しながら保磁力をより低く抑えることができる。
発明では印加電流の電流密度を周期的に変動させることで前記組成変調領域を形成できる。このような組成変調領域の形成により、軟磁性膜の結晶粒はより微細化し、さらに低い保磁力を得ることが可能になる。
本発明では、前記軟磁性膜の飽和磁束密度Bsが2.0T以上で、保磁力Hcが2.0Oeより小さいことが好ましい。
また本発明では、前記軟磁性膜をパルス電流を用いた電解メッキ法によってメッキ形成することが好ましい。これによってFeの平均組成比を簡単に且つ適切に大きくでき高い飽和磁束密度を得ることができるとともに、効果的に保磁力の低下を図ることができる。
また本発明では、前記軟磁性膜はFeとNiとCoからなり、Niの平均組成比は、4質量%以上で16質量%以下で、Coの平均組成比は、2質量%以上で8質量%以下で、残部がFeの平均組成比であることが好ましい。
また本発明では、Feの組成比の低い領域の膜厚は、Feの組成比の高い領域の膜厚よりも薄いことが好ましい。
本発明における軟磁性膜は、FeとNi、あるいはFeとNiとCoとからなる軟磁性膜であり、Niの平均組成比は4質量%以上で28質量%以下で、Coの平均組成比は0質量%以上で8質量%以下で、残部がFeの平均組成比であり、前記軟磁性膜には、少なくとも一部の領域に、膜厚方向に延びる柱状晶が形成されていることを特徴とするものである。
これにより、前記軟磁性膜の飽和磁束密度Bsを高くできるとともに保磁力Hcを低くできる。具体的には前記飽和磁束密度Bsを2.0T以上にでき前記保磁力Hcを2.5Oe(約197A/m)以下にできる。
そして上記の軟磁性膜を垂直記録磁気ヘッドの主磁極層として用いることで、前記主磁極層から記録媒体に向けて放出される残留磁化量を従来より小さくでき、この結果、前記残留磁化による信号消去等の不具合を効果的に抑制することが可能になる。
図1は本発明の実施形態の垂直磁気記録ヘッドの構造を示す断面図、図2A、図2BはII線矢視の部分拡大平面図である。
図1に示す垂直磁気記録ヘッドH1は記録媒体Mに垂直磁界を与え、記録媒体Mのハード膜Maを垂直方向に磁化させるものである。
前記記録媒体Mは例えばディスク状であり、その表面に保磁力の高いハード膜Maが、内方に磁気透過率の高いソフト膜Mbを有しており、ディスクの中心が回転軸中心となって回転させられる。
前記垂直磁気記録ヘッドH1のスライダ11はAl23・TiCなどの非磁性材料で形成されており、スライダ11の対向面11aが前記記録媒体Mに対向し、記録媒体Mが回転すると、表面の空気流によりスライダ11が記録媒体Mの表面から浮上し、またはスライダ11が記録媒体Mに摺動する。図1においてスライダ11に対する記録媒体Mの移動方向はY方向である。
前記スライダ11のトレーリング側端面11bには、Al23またはSiO2などの無機材料による非磁性絶縁層54が形成されて、この非磁性絶縁層の上に読取り部HRが形成されている。前記読取り部HRの上にAl23またはSiO2などの無機材料による非磁性絶縁層12が形成されて、前記非磁性絶縁層12の上に本発明の記録用の垂直磁気記録ヘッドH1が設けられている。そして垂直磁気記録ヘッドH1は無機非磁性絶縁材料などで形成された保護層13により被覆されている。そして前記垂直磁気記録ヘッドH1の記録媒体との対向面H1aは、前記スライダ11の対向面11aとほぼ同一面である。
前記垂直磁気記録ヘッドH1では、パーマロイ(Ni−Fe)などの強磁性材料がメッキされてリターンパス層(補助磁極層)21が形成されている。前記非磁性絶縁層12は、前記リターンパス層21の下(リターンパス層21とスライダ11のトレーリング側端面11bとの間)および前記リターンパス層21の周囲に形成されている。そして図1に示すように、リターンパス層21の表面(上面)21aと前記非磁性絶縁層12の表面(上面)12aとは同一の平面上に位置している。
前記対向面H1aよりも奥側では、前記リターンパス層21上にNi−Feなどの接続層25が形成されている。
前記接続層25の周囲において、前記リターンパス層21の表面21aおよび前記非磁性絶縁層12の表面12a上に、Al23などの非磁性絶縁層26が形成されて、この非磁性絶縁層26の上にCuなどの導電性材料によりコイル層27が形成されている。このコイル層27はフレームメッキ法などで形成されたものであり、前記接続層25の周囲に所定の巻き数となるように螺旋状にパターン形成されている。コイル層27の巻き中心側の接続端27a上には同じくCuなどの導電性材料で形成された底上げ層31が形成されている。
前記コイル層27および底上げ層31は、レジスト材料などの有機材料の絶縁層32で被覆されており、さらにAl23などの無機絶縁層33で覆われている。
そして、接続層25の表面(上面)25a、底上げ層31の表面(上面)31a、および無機絶縁層33の表面(上面)33aは、同一面となるように加工されている。そして、前記無機絶縁絶縁層33の表面に主磁極層24がメッキ下地層(図示しない)を介してメッキ形成されている。前記主磁極層24のハイト方向の後端側には、前記主磁極層24と一体成形されたヨーク層35が形成されている(いわゆるモノポール構造)。
このヨーク層35は、前記接続層25の表面25aに接続されており、これにより、リターンパス層21、接続層25および主磁極層24を結ぶ磁路が形成されている。
また、前記底上げ層31の表面31aにはリード層36が形成され、リード層36から前記底上げ層31およびコイル層27に記録電流の供給が可能となっている。なお、前記リード層36は、前記主磁極層24及びヨーク層35と同じ材料で形成でき、前記主磁極層24及びヨーク層35とリード層36を、同時にメッキで形成することが可能である。なお前記リード層36はCuなどの導電性材料で形成されても良い。
そして、前記主磁極層24、ヨーク層35および前記リード層36が前記保護層13に覆われている。
図3の平面図に示すように、主磁極層24は、その前端面24のトラック幅方向の幅寸法がトラック幅Twで形成され、前記前記主磁極層24のハイト方向の後端側で一体成形された前記ヨーク層35は、対向面H1aから離れる方向に向って幅寸法Wyが徐々に広がる形状となっている。
図3に示すように、対向面H1aに現れている前記リターンパス層21の前端面21bのトラック幅方向の幅寸法Wrよりも、対向面H1aに現れている前記主磁極層24の前端面24bのトラック幅Twが十分に小さくなっている。また図1に示すように前記リターンパス層21の厚みよりも主磁極層24の厚みが小さくなっている。よって、対向面H1aに現れている前記主磁極層24の前端面24bの面積は、リターンパス層21の前端面21bの面積よりも十分に小さくなっている。また、主磁極層24の厚みは、ヨーク層35の厚みよりも小さい。具体的には前記主磁極層24のトラック幅Twは0.1〜0.2μm程度、高さ寸法は0.2〜0.3μm程度まで狭小化され、このように非常に小さい主磁極層24内には磁区が形成されにくくなっている。
図1に示す垂直記録磁気ヘッドの構造は一例である。垂直記録磁気ヘッドであるには、少なくとも主磁極層24、リターンパス層(補助磁極層)21及びコイル層27を兼ね備えていればよい。
図2は、図1とは異なる構造の垂直記録磁気ヘッドの縦断面図である。図1と同じ符号が付けられている層は図1と同じ層を示している。
図2は、図1と異なり、ヨーク層35及び主磁極層24がスライダ11側に形成され、前記主磁極層24の上側にコイル層27を介して補助磁極層21が形成されている。
図2に示すように、前記非磁性絶縁層12の上には前記ヨーク層35が形成されている。前記ヨーク層35は、対向面11aからややハイト方向の奥側に離れて形成され、前記ヨーク層35の周囲を埋める絶縁層60が前記対向面11aから露出する。
図2に示すように前記ヨーク層35及び絶縁層60の上に主磁極層24が形成される。主磁極層24は、図3と同様に対向面11aに露出する前端面がトラック幅Twで形成される。例えば前記主磁極層24は前記トラック幅Twを保ちながらハイト方向に向けて延びる形状か、あるいはハイト方向に向けて徐々に幅寸法が広がる形状で形成される。
図2に示すように、記録媒体との対向面側では、前記主磁極層24上に非磁性絶縁層26を介して補助磁極層21が形成される。前記補助磁極層21はそのハイト方向後端で前記主磁極層24と磁気的に接続されており、前記主磁極層24−補助磁極層21−記録媒体Mを経る磁気回路が形成される。
本発明では、前記主磁極層24は以下の軟磁性膜を用いてメッキ形成されたものである。
(1) FeとNiとかなる軟磁性膜であり、Niの平均組成比が4質量%以上で28質量%以下で、残部がFeの平均組成比であり、前記軟磁性膜には、少なくとも一部の領域に、膜厚方向に延びる柱状晶が形成されている軟磁性膜。
(2) FeとNiとCoとからなる軟磁性膜であり、Niの平均組成比が4質量%以上で28質量%以下で、Coの平均組成比が0質量%より大きく8質量%以下で、残部がFeの平均組成比であり、前記軟磁性膜には、少なくとも一部の領域に、膜厚方向に延びる柱状晶が形成されている軟磁性膜。
図4及び図5は、上記した(1)あるいは(2)の軟磁性膜の各元素の平均組成比と飽和磁束密度Bs及び保磁力Hcとの関係を示す三元図である。なお図4及び図5は、後述する組成変調領域を形成するための製造処理(具体的にはメッキ浴への印加電流の電流密度を周期的に変動させる等)を施さないで測定された各元素の平均組成比と飽和磁束密度Bs、及び前記平均組成比と保磁力Hcとの関係を示す三元図である。
ここで「平均組成比」について説明する。
「平均組成比」は例えばTEM(透過型電子顕微鏡)−EDS(エネルギー分散型X線分析装置)によって測定される。TEM−EDSでは、数nmの限定された領域で発生する特性X線を捉える為、複数のポイントで測定を実施し、平均組成比を算出する。
あるいは前記「平均組成比」を蛍光X線(XRF)を用いて測定してもよい。XRFでは、微小領域で生じる組成変動に対して、十分に広いエリアと深さ方向から発生する特性X線を分析し、組成比測定を行うものである。
さらにはSEM(走査電子顕微鏡)付属のEDSを用いて測定してもよい。この測定においてもXRFでの上述と同様の領域から発生する特性X線を分析し、組成比測定を行うものである。
いずれの方法においてもある所定のエリア内における平均された組成比の測定が可能である。
図4は飽和磁束密度Bsに関する三元図、図5は保磁力Hc(磁化困難軸方向の保磁力Hc)に関する三元図である。
図4、図5に示す斜線で囲まれた平均組成比の範囲(A)(以下、斜線領域(A)という)と、上記(1)あるいは(2)の軟磁性膜の各元素の平均組成比の範囲とは一致している。
図4に示すように、斜線領域(A)での軟磁性膜であると飽和磁束密度Bsを2.00Tより大きくすることが可能になっている。また図5に示すように、斜線領域(A)での軟磁性膜であると保磁力Hcを2.5(Oe)(=約197A/m)以下にすることが可能になっている。
さらにFeNiCo合金において、Coの組成比を2質量%以上にすれば、図4に示すようにより確実に2.00T以上の飽和磁束密度Bsを得ることができて好ましい。
またさらにFeNiCo合金において、Coの組成比を2質量%以上にするとともに、Ni組成比を16質量%以下にすれば、図4に示すように2.10T以上のより高い飽和磁束密度Bsを確実に得ることが可能になる。
以上、主磁極層24に使用される軟磁性膜の組成比についてまとめると、
(1) FeとNiとからなる軟磁性膜を使用する場合は、Niの平均組成比が4質量%以上で28質量%以下で、残部がFeの平均組成比である。
(2−1) FeとNiとCoとからなる軟磁性膜を使用する場合は、Niの平均組成比が4質量%以上で28質量%以下で、Coの平均組成比は0質量%より大きく8質量%以下で、残部がFeの平均組成比である。
(2−2) FeとNiとCoとからなる軟磁性膜を使用する場合は、Niの平均組成比が4質量%以上で28質量%以下で、Coの平均組成比は2質量%以上で8質量%以下で、残部がFeの平均組成比であることが好ましい。
(2−3) FeとNiとCoとからなる軟磁性膜を使用する場合は、Niの平均組成比が4質量%以上で16質量%以下で、Coの平均組成比は2質量%以上で8質量%以下で、残部がFeの平均組成比であることがより好ましい。
次に本発明では、前記軟磁性膜に図6に示すような柱状晶構造が少なくとも一部の領域に形成される。図6は軟磁性膜を膜厚方向に切断した断面形状を模式化して示したものである。前記柱状晶構造は、膜厚方向に延びて形成され、複数形成されていることが良い。
前記柱状晶構造の形成は、後述する製造方法で説明するように、メッキ浴中にマロン酸を添加することで促進される。柱状晶構造の形成は、結晶化が促進し、密な結晶構造となることで生じているものと考えられ、メッキ浴中にマロン酸を添加しないために柱状晶構造を形成しなかった軟磁性膜に比べて飽和磁束密度をより高くできるとともに保磁力もより低くできる。
また本発明では、Feの平均組成比に対し、Feの組成比が膜厚方向に向けて高い領域と低い領域とが交互に繰り返される組成変調領域が、前記軟磁性膜の少なくとも一部の領域に形成されていることが好ましい。
図6の模式図を用いて説明すると、図6に示すように、Feの平均組成比に対しFeの組成比の高い領域と組成比の低い領域とが膜厚方向に交互に繰り返して積層されている。
図6に示すように、組成比の低い領域の膜厚は、組成比の高い領域の膜厚よりも薄くなるものと予測される。このような傾向はFeの平均組成比を上げるほど顕著化すると考えられる。
また柱状晶は、前記組成比の高い領域及び低い領域を完全に貫くようにして形成されていてもよいし、あるいは途中で途切れていてもよい。例えば前記柱状晶は組成比の高い領域と低い領域との境界で途切れることがあるものと推測される。
このような組成変調領域の形成は、後述する製造方法で説明するように、例えばメッキ浴への印加電流の密度を周期的に変動させることによって促進される。このような組成変調領域では、結晶粒の粗大化が抑制される結果、結晶粒がさらに微細化されており、より綿密に結晶の積み重ねが図られているものと予測される。前記組成変調領域の形成は特に保磁力Hcの低下に効果的であり、後述する実験結果でもかなり低い保磁力(具体的には1Oe(=約79A/m)以下)を得ることが可能になっている。
従って上記したように図4及び図5は、組成変調領域を形成するための処理を施していない軟磁性膜に対する実験結果であるが、前記組成変調領域を有する軟磁性膜であれば、図5に示す斜線領域(A)内で得られた2.5Oe(約197A/m)以下の保磁力Hcをさらに低くすることが可能となる。言い換えれば、より広い組成比の範囲内において保磁力の低減が可能となる。
また図6に示すように各柱状晶構造内であって、Feの平均組成比よりFeの組成比が高い各組成領域(B)(C)(D)及びFeの平均組成比よりFeの組成比が低い各組成領域(E)(F)(G)では、それぞれある所定の結晶面が膜面と平行な方向に優先配向されていることが好ましい。柱状晶構造と組成変調領域とをともに有する軟磁性膜では、上記したように緻密に結晶が積み重なりやすいため、ある結晶面が膜面と平行な方向に揃う規則化された状態でメッキ成長するものと考えられる。
なお各組成領域(B)〜(G)では、それぞれの各領域において優先配向している結晶面の種類が異なっていても同じであってもよい。
なお本発明での軟磁性膜は、Feの組成比が比較的高いことから体心立方構造(bcc)が主体であると考えられるが、一部に面心立方構造(fcc)が混在していてもかまわない。組成変調領域では、Fe組成比の変動幅が広い場合には、体心立方構造(bcc)と面心立方構造(fcc)の混相領域が形成され、これにより結晶粒の微細化をより促進させることができる。
本発明では上記した(1)または(2)の軟磁性膜、あるいはさらに各元素の平均組成比及び結晶構造等を適正化した軟磁性膜を主磁極層24として用いることにより、前記主磁極層24の飽和磁束密度Bsを高い値(約2.0T以上)に維持しながら、保磁力Hcを低い値(約197A/m以下)に抑制でき、よって高記録密度化を適切に図ることができるとともに、前記主磁極層24から記録媒体に向けて発生する残留磁化量を従来に比べて適切に小さくでき、この結果、前記残留磁化により記録媒体に記録された信号が消去されるのを適切に防ぐことができる。
次に本発明のFeNi合金あるいはFeNiCo合金の製造方法について説明する。
本発明では、上記軟磁性膜を電解メッキ法を用いてメッキ形成する。本発明では前記電解メッキ工程に用いるメッキ浴に、FeNi合金をメッキ形成するには、FeイオンとNiイオンと、FeNiCo合金をメッキ形成するには、FeイオンとNiイオンとCoイオンとを含有させる。
ただし本発明では、一般的にメッキ浴中に含有されるサッカリンナトリウム(応力緩和剤)を添加しないことが好ましい。サッカリンナトリウムを添加すると飽和磁束密度Bsが低下し所望の飽和磁束密度Bsを得ることが困難になる。
本発明では前記メッキ浴中にマロン酸[HOOC(CH2)COOH]を添加する。
前記メッキ浴中にマロン酸を添加すると、結晶化の促進とともに結晶が綿密に積層されていき、柱状晶が膜厚方向に延びて形成されやすくなる。
本発明ではメッキ浴中における各種のイオン量等を適切に制御するなどして、FeNi合金の場合、Niの平均組成比が4質量%以上で28質量%以下で、残部がFeの平均組成比となり、またFeNiCo合金の場合、Niの平均組成比が4質量%以上で28質量%以下で、Coの平均組成比が0質量%より高く8質量%以下で、残部がFeの平均組成比となり、且つ少なくとも一部の領域に、膜厚方向に延びる柱状晶が形成される軟磁性膜をメッキ形成する。
また本発明では、電解メッキ法には、例えばパルス電流を用いた電解メッキ法を用いる。パルス電流を用いた電解メッキ法では、例えば電流制御素子のON/OFFを繰返し、メッキ形成時に、電流を流す時間と、電流を流さない空白な時間を設ける。このように電流を流さない時間を設けることで、軟磁性膜を、少しずつメッキ形成し、そしてメッキ浴に占めるFeイオンの濃度を増やしても、直流電流を用いた場合に比べメッキ形成時における電流密度の分布の偏りを緩和することが可能になっている。
なおパルス電流は、例えば数秒サイクルでON/OFFを繰返し、デューティ比を0.1〜0.5程度にすることが好ましい。パルス電流の条件は、軟磁性膜の平均結晶粒径及び膜面の中心線平均粗さRaなどに影響を与える。
上記のようにパルス電流による電解メッキ法では、メッキ形成時における電流密度の分布の偏りを緩和することができるから、直流電流による電解メッキ法に比べて軟磁性膜に含まれるFe含有量を従来よりも増やすことが可能になる。
また本発明では、前記パルス電流による電気メッキの際、印加電流の電流密度を周期的に変動させる。
例えば図7に示すように、まずON時の電流密度(通電電流密度)がi1であり、ON時間がT1a(秒)、OFF時間がT1b(秒)のパルス電流をT1(秒)流す。次に電流密度が前記電流密度i1よりも大きいi2であり、ON時間がT2a、OFF時間がT2bのパルス電流をT2(秒)流す。
図7に示すように高い電流密度i2を有するパルス電流と低い電流密度i1を有するパルス電流とを交互に繰返し周期的に流し、前記軟磁性膜を電気メッキしていくと、前記軟磁性膜にはFe組成比が膜厚方向に変動する組成変調領域が形成される。
電解メッキ時における前記電流密度が大きくなれば、Fe組成比は大きくなり、前記電流密度が小さくなれば、Fe組成比は小さくなる。このため図7に示す高い電流密度i2と低い電流密度i1との差を大きくすることで、軟磁性膜中に含まれるFe組成比の変動差を大きくできる。
また図7に示すようにパルス電流を、低い電流密度i1でT1の時間流した後、高い電流密度i2でT2の時間流し、これを一サイクルとして、周期的にこのサイクルを繰り返している。このようにパルス電流を所定時間、周期的に変動させることで、メッキ形成される軟磁性膜のFe組成比は、Feの平均した組成比に対し、膜厚方向に向けて高い領域と低い領域とが交互に繰り返され、このようなFe組成比が変動する組成変調領域が軟磁性膜の少なくとも一部の領域に形成されるようになる。
なお図7では1周期目と2周期目、及びそれ以降の周期が全く同じパルス条件となっているが、周期毎にパルス条件(電流密度の大きさや電流時間など)を変えてもかまわない。これによってFe組成比の変動差が途中から変わったり、あるいはFe組成比の変動周期の長さが途中で変化する軟磁性膜を製造できる。
また図7では、最初、低い電流密度i1のパルス電流を流し、次に高い電流密度i2のパルス電流を流しているが、逆に、最初に高い電流密度i2のパルス電流を流した後、次に低い電流密度i1のパルス電流を流し、これを周期的に繰返してもよいことは言うまでもない。
また本発明では、パルス電流以外に直流電流を用いた電解メッキ法を使用してもよい。図8のタイミング図に示すように、まず電流密度がi3の直流電流をT3流した後、直流電流の電流密度をi4に上昇させてT4時間流す。これによってもFeの平均組成比に対し組成比が高くなる領域と低くなる領域とが膜厚方向に交互に繰り返される組成変調領域が、軟磁性膜の少なくとも一部の領域に形成される。
本発明では上記した方法を用いた電解メッキ法により図1に示す主磁極層24磁極層をメッキ形成する。これにより高い飽和磁束密度Bs(約2.00T以上)と低い保磁力(約197A/m以下)の双方を兼ね備えた主磁極層24を容易に且つ適切にメッキ形成することが可能になる。
図9は、Feの平均組成比(XRFで測定)と保磁力Hc(磁化困難軸方向)との関係を示すグラフである。ここで図9中「with M 1st」「with M 2nd」「with M 3rd」とあるのは、メッキ浴中にサッカリンナトリウムは添加していないがマロン酸を添加してFeNi合金をメッキ形成したときの実験結果、「with saccharine」とあるには、メッキ浴中にマロン酸は添加していないがサッカリンナトリウムを添加してFeNi合金をメッキ形成したときの実験結果、「with M+3Co」とあるのは、メッキ浴中にサッカリンナトリウムは添加していないがマロン酸を添加してFeNiCo(Co組成比は3質量%)合金をメッキ形成したときの実験結果、「with M+7Co」とあるのは、メッキ浴中にサッカリンナトリウムは添加していないがマロン酸を添加してFeNiCo(Co組成比は7質量%)合金をメッキ形成したときの実験結果、「with M+6Co Lami」とあるのは、メッキ浴中にサッカリンナトリウムは添加していないがマロン酸を添加してFeNiCo(Co組成比は6質量%)合金をメッキ形成するとともに、Feの組成比を膜厚方向に組成変調させたときの実験結果、「no Additive」とは、メッキ浴中にサッカリンナトリウム及びマロン酸の双方を添加せずしてFeNi合金をメッキ形成したときの実験結果である。
図9に示すように、「with M 1st」「with M 2nd」「with M 3rd」の各試料では、いずれも保磁力Hcが1.5Oe(=約119A/m)以下に抑えられていることがわかった。
一方、「with M+3Co」「with M+7Co」の各試料では、「with M 1st」「with M 2nd」「with M 3rd」の各試料に比べて保磁力Hcが高くなりやすい傾向が見られ、特に「with M+7Co」の試料では、前記保磁力Hcが約2Oe(=約158A/m)程度にまで上昇することがわかった。
また「with saccharine」の試料では概ね保磁力Hcは低く抑えられているが、Fe平均組成比が大きくなると保磁力Hcが大きくなる傾向が見られた。
ここで「with M+6Co Lami」の試料を見ると、「with M+3Co」「with M+7Co」の各試料に比べて保磁力をより効果的に低く抑えることができるとわかった。
以上の実験結果によれば、サッカリンナトリウムを添加せず、マロン酸を添加しても十分に保磁力を低く抑えることができ、しかもFeの組成比を膜厚方向に組成変調させた方がさせないよりも効果的に保磁力Hcを低減できることがわかった
またマロン酸をメッキ浴中に添加する方がサッカリンナトリウムを添加することに比べて軟磁性膜の飽和磁束密度Bsを効果的に高めることができて好ましい。
ここで図9に示す各軟磁性膜等から、各軟磁性膜を構成する各元素の平均組成比と飽和磁束密度Bsとの関係、各元素の平均組成比と保磁力Hcとの関係をまとめたものが図4及び図5に示す三元図である。なお図4及び図5に示す三元図は、メッキ浴中にサッカリンナトリウムを添加せずマロン酸を添加してメッキ形成された軟磁性膜の実験結果であり、各軟磁性膜は、膜厚方向に組成変調領域を形成するための製造処理を施さないでメッキ形成されたものである。
図4及び図5に示す斜線領域(A)が実施例の組成比の範囲であるが、この斜線領域(A)から外れた領域(例えばFeの平均組成比が60質量%前後、Niの平均組成比が1質量%〜12質量前後、Coの平均組成比が24質量%〜36質量%前後)では、特に図5に示すように保磁力Hcが急激に大きくなることがわかった。
図10は、Feの平均組成比が78質量%、Niの平均組成比が18質量%、Coの平均組成比が4質量%であるFeNiCo合金のTEM写真(平均組成比はTEM−EDSで測定)、図11ないし図13は、図10に示す点3、点4、点5の位置から膜面と平行な方向に向けて測定された透過電子線回折像、図14は図10に示すTEM写真の一部を模式化して示したもの、である。
図10に示すFeNiCo合金は、メッキ浴中にマロン酸を添加する(サッカリンナトリウムの添加はなし)とともに、図7で説明したのと同様にパルス電流の電流密度を周期的に変動させることでメッキ形成されたものである。
図10及び図14に示すように、FeNiCo合金には膜厚方向に延びる複数の柱状晶が形成されていることが確認された。このような柱状晶の形成は図10に示すようにTEM写真において色が濃い部分と薄い部分とのコントラストで確認できる。また図10及び図14に示すように、膜厚と平行な方向に向けて延びる境界部が膜厚方向に複数見られたが、この部分はFeの組成比が前記Feの平均組成比よりも低い部分であるものと思われる。なおこの境界部(Fe組成比の低い領域)も図10に示すTEM写真から色のコントラストで確認できる。
そこで膜厚方向で対向する境界部内のFe組成比を調べてみたところ、境界部と境界部とに挟まれた領域領域(H)(I)(J)は、いずれもFe組成比が、前記Feの平均組成比よりも高くなっていた。このことから、前記境界部の非常に狭い領域では、Fe組成比はFeの平均組成比よりも低くなっているものと推測される。
また図11ないし図13に示す各透過電子線回折像を見てみると、規則的で且つはっきりとした回折斑点が見られ、適切な結晶化の促進とともに、膜面と平行な方向に所定の結晶面が優先配向されていることもわかった。
図15は、図7で説明したのと同様にパルス電流の電流密度を周期的に変動させてFeNiCo合金のメッキ形成し、そのFeNiCo合金の下端から膜厚方向への距離と、Fe、Ni及びCoの組成比の変動を測定した実験結果である。図15の実験のために用いたFeNiCo合金のFeの平均組成比は76質量%、Niの平均組成比は18質量%、Coの平均組成比は6質量%であった。この平均組成比はTEM−EDSで測定されたものである。
図15に示すように、Feの平均組成比(76質量%)に対し、前記Feの組成比は膜厚方向に向けて組成比が高くなる領域と低くなる領域とが交互に繰り返されていることがわかった。このような傾向はNi組成比にも見られるが、Niの組成比はFeの組成比が高くなるときに低くなり、Fe組成比が低くなるときに高くなりやすく、FeとNi組成比との間にはトレードオフ的な関係が成り立っているものと考えられる。
図16は、Feの平均組成比が82質量%、Niの平均組成比が6質量%、Coの平均組成比が12質量%であるFeNiCo合金のTEM写真(平均組成比はTEM−EDSで測定)、図17は図16に示すTEM写真の一部を模式化して示したもの、である。
なお図16に示すFeNiCo合金のメッキ浴中にはマロン酸を添加している(サッカリンナトリウムの添加はなし)。またパルス電流を用いてメッキ形成しているが、図7のように、パルス電流の電流密度を周期的に変動させることはしていない。
図16及び図17に示すように、CoFeNi合金には膜厚方向に延びる柱状晶が複数見られた。しかしパルス電流の電流密度を周期的に変動させていないため、図10及び図14のように、膜面方向に延びる境界部は見当たらず、Fe組成比の組成変調領域の形成は見られなかった。
図18は、Feの平均組成比が89質量%、Niの平均組成比が11質量%であるFeNi合金のTEM写真(平均組成比はTEM−EDSで測定)、図19は図18に示すTEM写真の一部を模式化して示したもの、である。
図18に示すFeNi合金は、メッキ浴中にマロン酸を添加する(サッカリンナトリウムの添加はなし)とともに、図7で説明したのと同様にパルス電流の電流密度を周期的に変動させてメッキ形成されたものである。
図18及び図19に示すように、FeNi合金には膜厚方向に延びる複数の柱状晶が形成されていることが確認された。また図18及び図19に示すように、膜厚と平行な方向に向けて延びる境界部が膜厚方向に複数見られ、Feの平均組成比に対し膜厚方向に向けてFe組成比が高い領域と低い領域とが互いに繰り返られる組成変調領域が形成されているとわかった。
図20は、Feの平均組成比が72質量%、Niの平均組成比が28質量%であるFeNi合金のTEM写真(平均組成比はTEM−EDSで測定)、図21ないし図23は図20に示す点1、点2及び点3の各点から膜面と平行な方向に向けて測定された透過電子線回折像である。
図20は比較例である。図20に示すFeNi合金のメッキ浴にはマロン酸は添加されておらず、一方サッカリンナトリウムが添加されている。また図20のFeNi合金のメッキ形成にはパルス電流を用いているが、図7のようにパルス電流の電流密度を周期的に変動させることはしていない。
図20に示すように、FeNi合金には柱状晶の形成が見られず、また膜面と平行な方向に向けて延びる境界部も見られない。また図21ないし図23に示す透過電子線回折像では、いずれも回折斑点像がぼやけ、回折斑点の規則性に乏しい。このため図20に示すFeNi合金は配向性の高い結晶状態に無く一部でその結晶状態が崩れ、配向性の低い非晶質に近い微結晶状態になっているものと予測される。
垂直記録磁気ヘッドの部分縦断面図、 他の垂直記録磁気ヘッドの部分縦断面図、 図1に示す矢印方向から見た前記垂直記録磁気ヘッドの部分拡大平面図、 FeとNiとCoの各平均組成比と飽和磁束密度Bsとの関係を示す三元図、 FeとNiとCoの各平均組成比と保磁力(磁化困難軸方向)との関係を示す三元図、 本発明における軟磁性膜を膜厚方向に切断した断面構造を示す模式図、 本発明の軟磁性膜をパルス電流による電気メッキ法でメッキ形成する際の、前記パルス電流のタイミング図、 本発明の軟磁性膜を直流電流による電気メッキ法でメッキ形成する際の、前記直流電流のタイミング図、 Feの平均組成比と保磁力(磁化困難軸方向)との関係を示すグラフ、 実施例のFeNiCo合金のTEM写真、 図10の点3の位置での透過電子線回折像、 図10の点4の位置での透過電子線回折像、 図10の点5の位置での透過電子線回折像、 図10に示すTEM写真の部分模式図、 組成変調領域が形成されたFeCoNi合金の、下端から膜厚方向への距離と、Fe、Ni及びCoの各組成比との関係を示すグラフ、 実施例のFeNiCo合金のTEM写真、 図16に示すTEM写真の部分模式図、 実施例のFeNi合金のTEM写真、 図18に示すTEM写真の部分模式図、 比較例のFeNi合金のTEM写真、 図20の点1の位置での透過電子線回折像、 図20の点2の位置での透過電子線回折像、 図20の点3の位置での透過電子線回折像、
符号の説明
H1 垂直記録磁気ヘッド
M 記録媒体
Ma ハード膜
Mb ソフト膜
11 スライダ
21 リターンパス層(補助磁極層)
24 主磁極層
27 コイル層
35 ヨーク層

Claims (5)

  1. 記録媒体との対向面で、トラック幅を有して構成される主磁極層と、前記主磁極層よりも広い幅寸法で形成された補助磁極層とが膜厚方向に対向して位置し、前記主磁極層と補助磁極層に記録磁界を与えるコイル層が設けられ、前記主磁極層に集中する垂直磁界によって、前記記録媒体に磁気データを記録する垂直記録磁気ヘッドの製造方法において、
    前記主磁極層を、電解メッキ法により、FeとNiあるいは、FeとNiとCoとからなる軟磁性膜にてメッキ形成し、
    このとき、電解メッキ工程に用いるメッキ浴に、前記軟磁性膜を構成する各元素イオンとともに、マロン酸を添加し、サッカリンナトリウムを添加せず、印加電流の電流密度を周期的に変動させることで、以下の(1)〜(3)を満たす前記軟磁性膜をメッキ形成することを特徴とする垂直記録磁気ヘッドの製造方法。
    (1) Niの平均組成比が4質量%以上で28質量%以下で、Coの平均組成比が0質量%以上で8質量%以下で、残部がFeの平均組成比である。
    (2) 少なくとも一部の領域に、膜厚方向に延びる柱状晶が形成される
    (3) Feの平均組成比に対し、Feの組成比が膜厚方向に向けて高い領域と低い領域とが交互に繰り返される組成変調領域が、少なくとも一部の領域に形成される。
  2. 前記軟磁性膜の飽和磁束密度Bsが2.0T以上で、保磁力Hcが2.0Oeより小さい請求項1記載の垂直記録磁気ヘッドの製造方法。
  3. 前記軟磁性膜をパルス電流を用いた電解メッキ法によってメッキ形成する請求項1又は2に記載の垂直記録磁気ヘッドの製造方法。
  4. 前記軟磁性膜はFeとNiとCoからなり、Niの平均組成比は、4質量%以上で16質量%以下で、Coの平均組成比は、2質量%以上で8質量%以下で、残部がFeの平均組成比である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の垂直記録磁気ヘッドの製造方法。
  5. Feの組成比の低い領域の膜厚は、Feの組成比の高い領域の膜厚よりも薄い請求項1ないし4のいずれか1項に記載の垂直記録磁気ヘッドの製造方法。
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