JP4448755B2 - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
しかし、PC樹脂は無機系コーティング剤との密着性に劣るため、コーティング処理においては、アルコキシシランの加水分解縮合物、さらにはコロイダルシリカを併用したトップコート剤を、プライマーを介することなく塗布することは困難である。このプライマーの使用により、コーティング処理が煩雑となり、コスト上昇に繋がるため、プライマー処理することなくコーティング剤を密着させる方法が望まれている。
従来より、プライマーを使用しない1コートタイプのコーティング剤がいくつか提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、これらは密着性付与のためにポリオール等の粘着性の物質を添加する必要があるが、この場合、十分な硬度が得られないという問題がある。
すなわち、本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形体を提供するものである。
1. (A)ポリカーボネート樹脂98.5〜60質量%及び(B)下記一般式(1)
で表される基、nは重合度を示す。]
で表されるフェノキシ樹脂1.5〜40質量%を、それらの合計が100質量%となるように含み、(A)成分の樹脂と(B)成分の樹脂の屈折率差が0.005未満であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2. (A)成分のポリカーボネート樹脂が、イオウ原子、フルオレン骨格及びシクロアルキリデン骨格から選ばれる一種以上を有するビスフェノール類から誘導されるポリカーボネート共重合体又は該ポリカーボネート共重合体を含むポリカーボネート樹脂混合物である上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3. (B)成分のフェノキシ樹脂が、その水酸基の一部がアルキルエステル化又はアルキルエーテル化された樹脂である上記1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4. (A)成分のポリカーボネート樹脂の粘度数が、37〜120である上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5. (B)成分のフェノキシ樹脂の重量平均分子量が、6,000〜70,000である上記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
6. 上記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形基体の表面にオルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けてなるポリカーボネート樹脂成形体。
二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法、すなわち、二価フェノールとホスゲンの反応、二価フェノールとジフェニルカーボネート等とのエステル交換法により反応させて製造されたものを用いることができる。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、又はハロホルメート等であり、具体的にはホスゲン、二価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等である。この他、二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン及びカテコール等を挙げることができる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール及びp−クミルフェノール等が用いられる。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂は、PC部とポリオルガノシロキサン部を有するものであり、例えば、PCオリゴマーとポリオルガノシロキサン部を構成する末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサンとを、塩化メチレン等の溶媒に溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を加え、トリエチルアミン等の触媒を用い、界面重縮合反応することにより製造することができる。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂は、例えば、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報及び特開平10−7897号公報等に開示されている。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂は、難燃性及び耐衝撃性の向上の観点から有用である。ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂において、ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が好ましく、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
これらのアルキルフェノールとしては、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、トリデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ペンタデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、ヘプタデシルフェノール、オクタデシルフェノール、ノナデシルフェノール、イコシルフェノール、ドコシルフェノール、テトラコシルフェノール、ヘキサコシルフェノール、オクタコシルフェノール、トリアコンチルフェノール、ドトリアコンチルフェノール及びペンタトリアコンチルフェノール等が挙げられる。
この置換基としては、少なくとも1個が上記の炭素数10〜35のアルキル基であればよく、他の4個は特に制限はなく、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子又は無置換であってもよい。
ここで、炭素数が10〜35のアルキル基を有するフェノールは、ポリカーボネートの片末端又は両末端を封止し、末端が変性される。この場合の末端変性は、全末端に対して20%以上、好ましくは50%以上とされる。すなわち、他の末端は、水酸基末端、又は下記の他の末端封止剤を用いて封止された末端である。
高屈折率のPC共重合体を得るためのコモノマーとしては、HO−Ph−S−C2H4−O−CH2−O−C2H4−S−Ph−OH(Phはフェニレン基を示す。)、4,4'−チオビスベンゼンチオール等のイオウ含有化合物、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、シクロヘキシリデンビスフェノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等のビスフェノールAのアルキリデン基が嵩高い置換基により置換されたものなどが挙げられる。
(B)成分のフェノキシ樹脂は、下記一般式(1)
上記フェノキシ樹脂は、二価フェノール類とエピクロルヒドリンから製造することができる。二価フェノール類としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〔ビスフェノールF〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン又は4,4'−ジヒドロキシビフェニルが用いられる。
(B)成分のフェノキシ樹脂としては、その水酸基の一部がアルキルエステル化又はアルキルエーテル化された樹脂が好ましい。(B)成分の水酸基含有樹脂は、(A)成分のPC樹脂との屈折率差が0.005未満となるように、フェノキシ樹脂の二種以上を混合して用いてもよい。フェノキシ樹脂としては、下記一般式(2)
(A)成分のPCと樹脂と(B)成分の樹脂の配合比は、それらの合計量に基づき、(A)成分98.5〜60質量%、(B)成分1.5〜40質量%であることを要し、好ましくは、(A)成分98〜70質量%、(B)成分2〜30質量%である。(B)成分の樹脂の配合比が40質量%以下であると、耐熱性や透明性が低下することがなく、(B)成分の樹脂の配合比が1.5質量%以上であると、密着性の発現効果が大きくなる。
なお、上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量の測定及び分析、屈折率の測定は下記のようにして行なった。
〔分子量測定〕
GPCカラム:TOSOH TSK−GEL MULTIPORE HXL−M
(2本)、Shodex KF801(1本)
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)、温度:40℃、流速:1.0ml/min
検出器:RI、注入濃度:0.1質量%、注入量:100μl
分子量換算:Universal Calibration法
上記条件で測定し、PS(ポリスチレン)換算で分子量を算出した後、Universal Calibration法にて、以下の式を用いPC換算で分子量を算出した。
logMPC=[(1/1+apc)log(Kps/Kpc)]+(1+aps)/
(1+apc)]×logMps
ここで、apc=0.70、aps=0.72、Kpc=3.85×10-4、Kps=1.22×10-4(参考:サイズ排除クロマトグラフィー、森定雄著、共立出版株式会社)である。
屈折率測定装置:カールツァイス・イエナ社製、屈折計 PR−2型
測定方法:Vブロック法、波長:587.562nm、温度:25℃
本発明のPC樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤等、通常PC樹脂組成物に添加する添加剤を添加してもよい。
R1−Si(OR2)3 (3)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又はアクリロキシ基、メタクリロキシ基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、シアノ基、塩素原子及びフッ素原子から選ばれる1個以上の基もしくは原子で置換された炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2は、炭素数が1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルコキシアルキル基、炭素数2〜5のアシル基を示し、3個のOR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、下記一般式(4)
Si(OR3)4 (4)
(式中、R3は、炭素数が1〜5のアルキル基を示し、4個のOR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物及びコロイダルシリカから選ばれる一種以上の化合物を含むことができる。
上式中、R1の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。炭素数2〜4のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基等が挙げられる。各基及び/又は原子で置換された炭素数1〜3のアルキル基のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
一般式(3)で表わされる化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
一般式(4)で表わされる化合物の具体例としては、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラn−プロピルシリケート、テトラn−ブチルシリケート、テトラsec−ブチルシリケート、テトラt−ブチルシリケート等が挙げられる。
コロイダルイシリカは、上記一般式(3)で表わされる化合物、一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、上記一般式(4)で表わされる化合物、一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物100質量部に対し、通常、10〜150質量部、好ましくは10〜100質量部配合して用いることが好ましい。
ケイ素分の含有量が上記範囲内で他の樹脂や金属酸化物粒子、添加剤を添加することができる。他の樹脂としては、アクリル系樹脂及びその変性体、メタクリル系樹脂及びその変性体等が挙げられる。
これらの樹脂としては、例えば、下記一般式(5)
一般式(5)で表わされる繰り返し単位を形成する化合物の具体例としては、アクリル酸エチレングリコールモノエステル、メタクリル酸エチレングリコールモノエステル、アクリル酸ブチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ブチレングリコールモノエステル等が挙げられる。一般式(6)で表わされる繰り返し単位を形成する化合物の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
また、アクリル系樹脂及びその変性体、メタクリル系樹脂及びその変性体と、上記一般式(3)で表わされる化合物におけるビニル基を有する化合物と反応させることにより、シロキサン結合を導入した化合物を用いることもできる。
で表わされる化合物及び一般式(8)
で表わされる化合物が挙げられる。
式中、R6の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R8及びR13の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。R6の炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキソキシ基等が挙げられる。R12の炭素数1〜8のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が挙げられる。
R7及びR11の炭素数1〜10のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられる。R7及びR11の炭素数1〜10のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。
R9のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。R10の炭素数1〜6の炭素水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
R12のアミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、アミノメチレン基、アミノエチレン基、アミノプロピレン基、アミノブチレン基、アミノへキシレン基、アミノオクチレン基などが挙げられる。R12のヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシプロピレン基、ヒドロキシブチレン基、ヒドロキシへキシレン基、ヒドロキシオクチレン基などが挙げられる。
また、アクリル系樹脂及びその変性体、メタクリル系樹脂及びその変性体等をプライマーとして用いることもできる。
芳香族系ジイソシアネート、脂肪族系ジイソシアネート、脂環式系ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
イソシアネート基とシラン基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(9)
OCN−R14−Si(OR15)3 (9)
(式中、R14は炭素数1〜10のアルキレン基又は他の二価の有機基を示し、R15は、炭素数が1〜5のアルキル基を示し、3個のOR15は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる化合物が挙げられる。
R14の炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられる。R15の炭素数が1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
一般式(9)で表わされる化合物の具体例としては、γ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのブロック化イソシアナートは、上記イソシアネート系化合物とブロック化剤を反応させることにより容易に得ることができる。
ブロック化剤としては、通常、オキシム系化合物(例えば、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム)、β−ジカルボニル化合物(例えば、マロン酸ジエチル)、アルコ−ル(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール)、フェノール類(例えば、フェーノール、クレゾール、エチルフェノール)、イミン(例えば、1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチルピラゾール)、アミン(例えば、ジイソプロピルアミン)、ラクタム、(例えば、カプロラクタム)等を用いることができる。
さらに、本発明に係るコーティング剤には、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
コーティング層の厚みは、通常0.5〜30μm、好ましくは1〜20μm、より好ましくは1.5〜15μmである。この厚みが0.5μm以上であると、十分な硬度が発現し、30μm以上であると剥離し易い。
本発明に係るコーティング剤は、通常の熱硬化型のオルガノシロキサン系コーティング剤と同様の条件で塗工し、硬化することができる。本発明に係るコーティング剤の硬化温度としては、通常80〜130℃、好ましくは90〜130℃である。
ブロック化イソシアネート基を有する化合物を含むコーティング剤の場合、硬化温度としては、脱ブロック化に必要な温度以上で硬化させ、ブロック化剤の種類に応じ、通常100℃〜ポリカーボネートのガラス転移温度Tgを超えない範囲で硬化を行い、好ましくは100〜140℃、より好ましくは100〜130℃で硬化を行うのがよい。
製造例1(PC−DHTD共重合体の製造)
以下のようにして、ポリカーボネートとHO−Ph−S−C2H4−O−CH2−O−C2H4−S−Ph−OH(DHTD)との共重合体を製造した。
(1)PCオリゴマーの合成工程
濃度5.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解させるビスフェノールA(BPA)に対して2000質量ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにBPA濃度が13.5質量%となるようにBPAを溶解させ、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
このBPAの水酸化ナトリウム水溶液を40L/hr、塩化メチレンを15L/hr、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)の24質量%塩化メチレン溶液を0.32L/hr、ホスゲンを4.0kg/hrの流量で、内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。
管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらに、上記と同様のBPAの水酸化ナトリウム水溶液2.8L/hr、25質量%水酸化ナトリウム水溶液0.07L/hr、水17L/hr、1質量%トリエチルアミン水溶液を0.64L/hrの流量で添加して反応を行なった。槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたPCオリゴマーは濃度326g/L、クロロホーメート基濃度0.71mol/Lであった。
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた内容積50Lの槽型反応器に、上記PCオリゴマー溶液15.0L、塩化メチレン9.4L、PTBP 33g及びトリエチルアミン1.4mlを仕込み、ここに、DHTDの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH596gと亜二チオン酸ナトリウム3.0gを水8.7Lに溶解した水溶液に、DHTD 1500gを溶解させたもの)を添加し、1時間重合反応を行った。
希釈のために塩化メチレン10.0Lを加えた後、静置することによりPCを含む有機相と、過剰のDHTD及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
このようにして得られたPCの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して5容量%の0.03mol/L NaOH水溶液、0.2mol/L 塩酸で順次洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたPCの塩化メチレン溶液を濃縮した後、アセトン4Lを加えて十分に混合し、白濁した溶液をさらに濃縮し粉砕することによりPC−DHTD共重合体フレークを得た。
得られた共重合体フレークは、粘度数が61.7、NMRにより求めたDHTD含有量が19mol%、屈折率が1.597のものであった。
製造例1(2)において、DHTD 1,500gの代わりに、ビスクレゾールフルオレン(BCFL)1610gを用いた以外は実施例1と同様にして、PC−BCFL共重合体フレークを得た。
得られた共重合体フレークは、粘度数が63.2、NMRにより求めたBCFL含有量が19.8mol%、屈折率が1.610のものであった。
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた内容積50Lの槽型反応器に、製造例(1)で得られたPCオリゴマー溶液15.0L、PTBP 3g、トリエチルアミン1.4ml、及び4,4'−チオビスベンゼンチオール(TBBT)1095gを塩化メチレン9.4L溶解した溶液を仕込み、ここに水酸化ナトリウム水溶液(NaOH596gと亜二チオン酸ナトリウム3.0gを水8.7Lに溶解した水溶液)を添加し、1時間重合反応を行った以外は実施例1と同様にして、PC−TBBT共重合体フレークを得た。
得られた共重合体フレークは、粘度数が54.9、NMRにより求めたTBBT含有量が20mol%、屈折率が1.606のものであった。
製造例1(1)において、PTBPの塩化メチレン溶液を添加しない以外は、製造例(1)同様にしてPCオリゴマーを得た。得られたPCオリゴマー溶液の濃度は329g/L、クロロホーメート基濃度0.72mol/Lであった。
次に、邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた内容積50Lの槽型反応器に、上記PCオリゴマー9.0L、塩化メチレン5.8L、9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(メトキシフェニル)フルオレン(アドケムコ社製)256g及びトリエチルアミン0.9mlを仕込み、ここにBPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH 363gと亜二チオン酸ナトリウム1.2gを水5.3Lに溶解した水溶液にBPA 591gを溶解させたもの)を添加し、1時間重合反応を行った。次いで、製造例1(2)と同様に洗浄を行い、製造例1(3)と同様のフレーク化を行い、フェノールフルオレン末端(F末端)PC共重合体フレークを得た。
得られた共重合体フレークは、粘度数が41.4、ガラス転移温度(Tg)が155℃、屈折率が1.590のものであった。
(A)成分のPC樹脂として、FN2200(出光興産(株)製、粘度数54)、製造例1〜4で得られたPC共重合体を用いた。(B)成分のフェノキシ樹脂としては、PKHB(INCHEM社製、Mw=13,700、屈折率=1.595)、PKFE(INCHEM社製、Mw=36,800、屈折率=1.595)、PKCP−80(INCHEM社製、Mw=20,100、屈折率=1.586)を用いた。添加剤としては、イルガフォス168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、イルガノックス1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ケミソーブ79(ケミプロ化成(株)製)を用いた。これらの配合成分を用い、以下のようにしてPC樹脂成形体を製造した。
(1)成形基体の製造
(A)成分、(B)成分及び添加剤を、表1に示す配合比で混合した後、二軸押し出し機にて設定温度270℃でペレット化し、120℃で4時間乾燥させた。
乾燥後、射出成形機(東芝機械製(株)製、IS150E)を用いて成形温度280℃、金型温度70℃で、80×80×3.2mmのテストプレートを射出成形し、透明性の評価を行った。透明性の評価は、デジタルヘーズコンピューター(スガ試験機(株)製)を用い、全光線透過率、ヘーズを測定することにより行った。結果を表1に示す。
表2に示すA液とB液を、表2に示す配合比で混合し、コーティング剤C1を調製した。すなわち、高分子紫外線吸収剤を含むアクリル共重合体の水分散液(一方社油脂工業(株)製、ULS383MG)に、2−メトキシエタノール及び酢酸メチルを加え、攪拌しながら、テトラメトキシシランを滴下した。引き続き、20質量%p−トルエンスルホン酸メタノール溶液を滴下し、30分間攪拌した。これをA液とした。メチルトリメトキシシラン溶液(B液)に対し、A液を滴下し、2時間攪拌した。その後、暗所に25℃にて、3日間静置し、コーティング剤C1を得た。
また、上記コーティング剤C1の調製において、ULS383MGを用いない以外は、同様にしてコーティング剤C2を得た。
次に、バーコーターを用いて、上記成形基体に、コーティング層の厚みが4μmとなるように、コーティング剤C1又はC2を塗布した。塗布後120℃で1時間加熱してコーティング剤を硬化させた。
この試料について、下記の試験法に従い、コーティング剤の密着性及び傷付き性の評価を行った。結果を表1に示す。
初期密着性は、コーティング剤を塗布し、硬化した後、温度23℃、相対湿度50%で24時間放置したテストプレートを用いて試験を行った。
JIS K5400に準じ、1mm間隔で縦横11本の切り込みを入れて、計100個の碁盤目を作り、ニチバン(株)製セロテープを接着した後、90度方向に急激に剥がした。被膜が剥離せずに残った桝目の数を「残存桝目数/100」で表わした。
〔密着性試験2:耐候試験後の密着性〕
サンシャインウェザーメータ−(スガ試験機(株)製、サンシャイン・スーパー・ロングライフ・ウエザーメーター)を用い、ブラックパネル63℃、相対湿度50%、降雨サイクル12/60分、照射強度(300〜450nm)60W/cm2の環境下に500時間曝した後に、温度23℃、湿度50%で24時間放置し、上記の密着試験を行った。
〔傷付き性評価:テーパー摩耗試験〕
スチールウール#0000を用い、荷重4.9N、20mm/secで10往復し、傷の付かないものを良好とした。
Claims (6)
- (A)成分のポリカーボネート樹脂が、イオウ原子、フルオレン骨格及びシクロアルキリデン骨格から選ばれる一種以上を有するビスフェノール類から誘導されるポリカーボネート共重合体又は該ポリカーボネート共重合体を含むポリカーボネート樹脂混合物である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)成分のフェノキシ樹脂が、その水酸基の一部がアルキルエステル化又はアルキルエーテル化された樹脂である請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (A)成分のポリカーボネート樹脂の粘度数が、37〜120である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)成分のフェノキシ樹脂の重量平均分子量が、6,000〜70,000である請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形基体の表面にオルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けてなるポリカーボネート樹脂成形体。
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