JP2006104329A - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 透明性に優れ、かつコーティング剤との密着性に優れたPC樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)ポリカーボネート樹脂98.5〜60質量%及び(B)下記一般式(1)で表されるフェノキシ樹脂1.5〜40質量%を、それらの合計が100質量%となるように含み、(A)成分の樹脂と(B)成分の樹脂の屈折率差が0.005未満であるポリカーボネート樹脂組成物である。
【化1】
Figure 2006104329

(Xは、例えば−Ph−C(CH32−Ph−、Yは、例えば水素原子、nは重合度)
【選択図】 なし

Description

本発明は、透明性に優れ、かつコーティング剤との密着性に優れるポリカーボネート樹脂組成物に関する。このポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形基体表面に、オルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けてなるポリカーボネート樹脂成形体は、各種窓、例えば、住宅用窓、ショーウインドウ、車両用窓、車両用風防、遊戯機械のガラス代替、電気・電子、OA製品のハウジング、カバー、シート製品で傷付き防止等のためにコーティングを必要とする製品などに利用できる。
ポリカーボネート(以下、PCと略記することがある。)樹脂は透明性、衝撃性に優れる反面、傷付き易く、使用中にしばしば透明性が損なわれる。そのため傷付き防止のためのコーティング処理を行い、それらの欠点をカバーしている。
しかし、PC樹脂は無機系コーティング剤との密着性に劣るため、コーティング処理においては、アルコキシシランの加水分解縮合物、さらにはコロイダルシリカを併用したトップコート剤を、プライマーを介することなく塗布することは困難である。このプライマーの使用により、コーティング処理が煩雑となり、コスト上昇に繋がるため、プライマー処理することなくコーティング剤を密着させる方法が望まれている。
従来より、プライマーを使用しない1コートタイプのコーティング剤がいくつか提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、これらは密着性付与のためにポリオール等の粘着性の物質を添加する必要があるが、この場合、十分な硬度が得られないという問題がある。
特開平6−33013号公報 特開平6−256718号公報
本発明は、透明性に優れ、かつコーティング剤との密着性に優れたPC樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、先に、PC樹脂と、フェノキシ樹脂やエポキシ樹脂とをアロイ化したPC樹脂組成物により密着性が発現することを見出した。しかし、このPC樹脂組成物は、光線透過率がやや低く、成形体の厚みが増した場合には透明性が十分ではなかった。そこで、さらに鋭意検討した結果、PC樹脂と、フェノキシ樹脂との屈折率差を0.005未満とすることにより、透明性に優れ、かつコーティング剤との密着性に優れたPC樹脂組成物が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形体を提供するものである。
1. (A)ポリカーボネート樹脂98.5〜60質量%及び(B)下記一般式(1)
Figure 2006104329
[式中、Xは
Figure 2006104329
で表わされる二価の基、Yは水素原子又は
Figure 2006104329
(式中、Rは有機基を示す。)
で表される基、nは重合度を示す。]
で表されるフェノキシ樹脂1.5〜40質量%を、それらの合計が100質量%となるように含み、(A)成分の樹脂と(B)成分の樹脂の屈折率差が0.005未満であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2. (A)成分のポリカーボネート樹脂が、イオウ原子、フルオレン骨格及びシクロアルキリデン骨格から選ばれる一種以上を有するビスフェノール類から誘導されるポリカーボネート共重合体又は該ポリカーボネート共重合体を含むポリカーボネート樹脂混合物である上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3. (B)成分のフェノキシ樹脂が、その水酸基の一部がアルキルエステル化又はアルキルエーテル化された樹脂である上記1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4. (A)成分のポリカーボネート樹脂の粘度数が、37〜120である上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5. (B)成分のフェノキシ樹脂の重量平均分子量が、6,000〜70,000である上記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
6. 上記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形基体の表面にオルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けてなるポリカーボネート樹脂成形体。
本発明のPC樹脂組成物は、特定の構造を持つ樹脂とのアロイ化により、透明性に優れると共に、コーティング剤との密着性に優れ、このPC樹脂組成物を成形してなる成形基体の表面にオルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けることにより、プライマーを用いることなく、耐傷付き性が高く、かつ優れた物性を有するPC樹脂成形体を得ることができる。
本発明のPC樹脂組成物において、(A)成分のPC樹脂としては、(B)成分の樹脂との屈折率差が0.005未満、好ましくは0.004以下、より好ましくは0.002以下であるPC樹脂であればよく、特に制限はない。また、PC樹脂は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。PC樹脂としては、通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族PC樹脂を用いることができる。
二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法、すなわち、二価フェノールとホスゲンの反応、二価フェノールとジフェニルカーボネート等とのエステル交換法により反応させて製造されたものを用いることができる。
二価フェノールとしては、様々なものを挙げることができるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル及びビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等を挙げることができる。
特に、好ましい二価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特に、ビスフェノールAを主原料としたものである。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、又はハロホルメート等であり、具体的にはホスゲン、二価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等である。この他、二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン及びカテコール等を挙げることができる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
なお、PC樹脂は、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α"−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸及びイサチンビス(o−クレゾール)等が挙げられる。
また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール及びp−クミルフェノール等が用いられる。
また、本発明に用いるPC樹脂としては、テレフタル酸等の2官能性カルボン酸、又はそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート等の共重合体、又は種々のPC樹脂の混合物を用いることもできる。
本発明のPC樹脂組成物においては、PC樹脂として、ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂を用いることができる。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂は、PC部とポリオルガノシロキサン部を有するものであり、例えば、PCオリゴマーとポリオルガノシロキサン部を構成する末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサンとを、塩化メチレン等の溶媒に溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を加え、トリエチルアミン等の触媒を用い、界面重縮合反応することにより製造することができる。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂は、例えば、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報及び特開平10−7897号公報等に開示されている。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂のPC部の重合度は、3〜100、ポリオルガノシロキサン部の重合度は2〜500程度のものが好ましく用いられる。また、ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂のポリオルガノシロキサンの含有量としては、通常0.1〜2質量%、好ましくは0.3〜1.5質量%の範囲である。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂は、難燃性及び耐衝撃性の向上の観点から有用である。ポリオルガノシロキサン含有芳香族PC樹脂において、ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が好ましく、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
さらに、本発明のPC樹脂組成物においては、PC樹脂として、分子末端が炭素数10〜35のアルキル基を有するPC樹脂を用いることができる。ここで分子末端が炭素数10〜35のアルキル基を有するPC樹脂は、PC樹脂の製造において、末端停止剤として、炭素数10〜35のアルキル基を有するアルキルフェノールを用いることにより得ることができる。
これらのアルキルフェノールとしては、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、トリデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ペンタデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、ヘプタデシルフェノール、オクタデシルフェノール、ノナデシルフェノール、イコシルフェノール、ドコシルフェノール、テトラコシルフェノール、ヘキサコシルフェノール、オクタコシルフェノール、トリアコンチルフェノール、ドトリアコンチルフェノール及びペンタトリアコンチルフェノール等が挙げられる。
これらのアルキルフェノールのアルキル基は、水酸基に対して、o−、m−、p−のいずれの位置であってもよいが、p−の位置が好ましい。また、アルキル基は、直鎖状、分岐状又はこれらの混合物であってもよい。
この置換基としては、少なくとも1個が上記の炭素数10〜35のアルキル基であればよく、他の4個は特に制限はなく、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子又は無置換であってもよい。
この分子末端が炭素数10〜35のアルキル基を有するポリカーボネートは、後述するポリカーボネート系のいずれの場合でもよく、例えば、二価フェノールとホスゲン又は炭酸エステル化合物との反応において、分子量を調節するために、これらのアルキルフェノールを末端封止剤として用いることにより得られるものである。
例えば、塩化メチレン溶媒中において、トリエチルアミン触媒、上記炭素数が10〜35のアルキル基を有するフェノールの存在下、二価フェノールとホスゲン、又は、ポリカーボネートオリゴマーとの反応により得られる。
ここで、炭素数が10〜35のアルキル基を有するフェノールは、ポリカーボネートの片末端又は両末端を封止し、末端が変性される。この場合の末端変性は、全末端に対して20%以上、好ましくは50%以上とされる。すなわち、他の末端は、水酸基末端、又は下記の他の末端封止剤を用いて封止された末端である。
ここにおいて、他の末端封止剤として、ポリカーボネートの製造で常用されているフェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−tert−アミルフェノール、ブロモフェノール及びトリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール等を挙げることができる。中でも、環境問題からハロゲンを含まない化合物が好ましい。
また、高流動化のためには、芳香族PC樹脂の分子末端は、炭素数10〜35のアルキル基であるものが好ましい。分子末端を炭素数10以上のアルキル基にすると、PC樹脂と水酸基含有樹脂との樹脂混合物の流動性が向上する。しかし、分子末端が炭素数36以上のアルキル基では、耐熱性及び耐衝撃性が低下する。
(A)成分のPC樹脂としては、(B)成分の樹脂との屈折率差が0.005未満となるように二種以上のPC樹脂を混合して用いてもよい。(A)成分のPC樹脂としては、イオウ原子、フルオレン骨格及びシクロアルキリデン骨格から選ばれる一種以上を有するビスフェノール類から誘導されるPC共重合体又はこのPC共重合体を含むPC樹脂混合物が、特に好ましい
高屈折率のPC共重合体を得るためのコモノマーとしては、HO−Ph−S−C24−O−CH2−O−C24−S−Ph−OH(Phはフェニレン基を示す。)、4,4'−チオビスベンゼンチオール等のイオウ含有化合物、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、シクロヘキシリデンビスフェノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等のビスフェノールAのアルキリデン基が嵩高い置換基により置換されたものなどが挙げられる。
(A)成分のPC樹脂は、粘度数が37〜120であることが好ましく、より好ましくは42〜98、さらに好ましくは42〜76である。粘度数が37以上であると、機械物性や透明性が良好であり、粘度数が120以下であると、射出成形が容易である。なお、粘度数は、ISO 1628−4(1999)に準拠し測定して測定した値である。
(B)成分のフェノキシ樹脂は、下記一般式(1)
Figure 2006104329
で表されるものである。式中、Xは、下記式
Figure 2006104329
で表される二価の基を、Yは、水素原子又は下記式
Figure 2006104329
(式中、Rは有機基を示す。)
で表される基を、nは重合度を示す。ここで、Rで示される有機基としては、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基,アリル基,ブテニル基,ペンテニル基,ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基,トリル基,キシリル基等のアリール基、ベンジル基,フェネチル基等のアラルキル基が挙げられる。本発明においては、炭素数1〜8のものが好ましい。
上記フェノキシ樹脂は、二価フェノール類とエピクロルヒドリンから製造することができる。二価フェノール類としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〔ビスフェノールF〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン又は4,4'−ジヒドロキシビフェニルが用いられる。
(B)成分のフェノキシ樹脂としては、その水酸基の一部がアルキルエステル化又はアルキルエーテル化された樹脂が好ましい。(B)成分の水酸基含有樹脂は、(A)成分のPC樹脂との屈折率差が0.005未満となるように、フェノキシ樹脂の二種以上を混合して用いてもよい。フェノキシ樹脂としては、下記一般式(2)
Figure 2006104329
(式中、xは1〜3の数、m及びnは重合度である。)
で表されるものが好ましい。フェノキシ樹脂として、市販品を用いることもできる。フェノキシ樹脂(ビスフェノールA型)の市販品としては、PKHB(INCHEM社製、Mw=13,700、屈折率=1.595)、PKFE(INCHEM社製、Mw=36,800、屈折率=1.595)、YP−50(東都化成社製、Mw=43,500、屈折率=1.595)、PKCP−80(INCHEM社製、Mw=20,100、屈折率=1.586)等が挙げられる。
(B)成分のフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、通常6,000〜70,000、好ましくは10,000〜50,000、さらに好ましくは10,000〜40,000である。この重量平均分子量が6,000以上であると、機械的物性が良好であり、70,000以下であると透明性が良好となる。
(A)成分のPCと樹脂と(B)成分の樹脂の配合比は、それらの合計量に基づき、(A)成分98.5〜60質量%、(B)成分1.5〜40質量%であることを要し、好ましくは、(A)成分98〜70質量%、(B)成分2〜30質量%である。(B)成分の樹脂の配合比が40質量%以下であると、耐熱性や透明性が低下することがなく、(B)成分の樹脂の配合比が1.5質量%以上であると、密着性の発現効果が大きくなる。
なお、上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量の測定及び分析、屈折率の測定は下記のようにして行なった。
〔分子量測定〕
GPCカラム:TOSOH TSK−GEL MULTIPORE HXL−M
(2本)、Shodex KF801(1本)
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)、温度:40℃、流速:1.0ml/min
検出器:RI、注入濃度:0.1質量%、注入量:100μl
分子量換算:Universal Calibration法
上記条件で測定し、PS(ポリスチレン)換算で分子量を算出した後、Universal Calibration法にて、以下の式を用いPC換算で分子量を算出した。
logMPC=[(1/1+apc)log(Kps/Kpc)]+(1+aps)/
(1+apc)]×logMps
ここで、apc=0.70、aps=0.72、Kpc=3.85×10-4、Kps=1.22×10-4(参考:サイズ排除クロマトグラフィー、森定雄著、共立出版株式会社)である。
〔屈折率測定〕
屈折率測定装置:カールツァイス・イエナ社製、屈折計 PR−2型
測定方法:Vブロック法、波長:587.562nm、温度:25℃
本発明のPC樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤等、通常PC樹脂組成物に添加する添加剤を添加してもよい。
本発明のPC樹脂成形体は、上記PC樹脂組成物を成形してなる成形基体の表面にオルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けてなるものである。本発明で用いるコーティング剤には、下記一般式(3)
1−Si(OR23 (3)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又はアクリロキシ基、メタクリロキシ基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、シアノ基、塩素原子及びフッ素原子から選ばれる1個以上の基もしくは原子で置換された炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2は、炭素数が1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルコキシアルキル基、炭素数2〜5のアシル基を示し、3個のOR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、下記一般式(4)
Si(OR34 (4)
(式中、R3は、炭素数が1〜5のアルキル基を示し、4個のOR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物及びコロイダルシリカから選ばれる一種以上の化合物を含むことができる。
上式中、R1の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。炭素数2〜4のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基等が挙げられる。各基及び/又は原子で置換された炭素数1〜3のアルキル基のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
2、R3の炭素数が1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。R2の炭素数2〜5のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられる。R2の炭素数2〜5のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
一般式(3)で表わされる化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
一般式(4)で表わされる化合物の具体例としては、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラn−プロピルシリケート、テトラn−ブチルシリケート、テトラsec−ブチルシリケート、テトラt−ブチルシリケート等が挙げられる。
コロイダルイシリカは、上記一般式(3)で表わされる化合物、一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、上記一般式(4)で表わされる化合物、一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物100質量部に対し、通常、10〜150質量部、好ましくは10〜100質量部配合して用いることが好ましい。
コーティング剤に用いることができる溶剤としては、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸エトキシエチル等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。
本発明で用いるコーティング剤は、ポリカーボネート及び水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む成形体の表面硬度を長期間持続するために、上記一般式(3)で表わされる化合物、一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、一般式(4)で表わされる化合物、一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物及びコロイダルシリカから選ばれる一種以上の化合物の由来分の含有量が、全固形分の75質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。
ケイ素分の含有量が上記範囲内で他の樹脂や金属酸化物粒子、添加剤を添加することができる。他の樹脂としては、アクリル系樹脂及びその変性体、メタクリル系樹脂及びその変性体等が挙げられる。
これらの樹脂としては、例えば、下記一般式(5)
Figure 2006104329
(式中、Zは水素原子又はメチル基、R4は炭素数2〜5のアルキレン基を示す。)
で表わされる繰り返し単位を有する化合物及び一般式(6)
Figure 2006104329
(式中、R5は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表わされる繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。式中、R4の炭素数2〜5のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ペンチレン基等が挙げられる。また、R5の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
一般式(5)で表わされる繰り返し単位を形成する化合物の具体例としては、アクリル酸エチレングリコールモノエステル、メタクリル酸エチレングリコールモノエステル、アクリル酸ブチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ブチレングリコールモノエステル等が挙げられる。一般式(6)で表わされる繰り返し単位を形成する化合物の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
また、アクリル系樹脂及びその変性体、メタクリル系樹脂及びその変性体と、上記一般式(3)で表わされる化合物におけるビニル基を有する化合物と反応させることにより、シロキサン結合を導入した化合物を用いることもできる。
さらに、トリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン等の紫外線吸収構造を含むモノマーを共重合した樹脂を用いることもできる。上記モノマーとしては、下記一般式(7)
Figure 2006104329
(式中、R6は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、R7は炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。X1はエステル結合、アミド結合、エーテル結合又はウレタン結合を示し、pは0又は1を示す。)
で表わされる化合物及び一般式(8)
Figure 2006104329
(式中、R9は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を示し、R10は水素原子又は炭素数1〜6の炭素水素基を示し、R11は炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、R12は炭素数1〜8のアルキレン基、アミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基又はヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基を示し、R13は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。X2はエステル結合、アミド結合、エーテル結合又はウレタン結合を示し、qは0又は1、rは0又は1を示す。)
で表わされる化合物が挙げられる。
式中、R6の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R8及びR13の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。R6の炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキソキシ基等が挙げられる。R12の炭素数1〜8のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が挙げられる。
7及びR11の炭素数1〜10のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられる。R7及びR11の炭素数1〜10のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。
9のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。R10の炭素数1〜6の炭素水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
12のアミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、アミノメチレン基、アミノエチレン基、アミノプロピレン基、アミノブチレン基、アミノへキシレン基、アミノオクチレン基などが挙げられる。R12のヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシプロピレン基、ヒドロキシブチレン基、ヒドロキシへキシレン基、ヒドロキシオクチレン基などが挙げられる。
上記紫外線吸収構造を含む樹脂としては、ヒドロキシベンゾフェノン構造を有する水分散ミクロゲル(固形分30質量%)として、ULS−383MG(一方社油脂工業(株)製)、又ベンゾトリアゾール構造を有する水分散ミクロゲル(固形分30質量%)として、ULS−1383MG(一方社油脂工業(株)製)及びULS−1385MG(一方社油脂工業(株)製)等がある。
また、アクリル系樹脂及びその変性体、メタクリル系樹脂及びその変性体等をプライマーとして用いることもできる。
また、本発明で用いるコーティング剤には、芳香族系ジイソシアネート、脂肪族系ジイソシアネート、脂環式系ジイソシアネート、イソシアネート基とシラン基を有する化合物のブロック化イソシアナートを用いることができる。
芳香族系ジイソシアネート、脂肪族系ジイソシアネート、脂環式系ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
イソシアネート基とシラン基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(9)
OCN−R14−Si(OR153 (9)
(式中、R14は炭素数1〜10のアルキレン基又は他の二価の有機基を示し、R15は、炭素数が1〜5のアルキル基を示し、3個のOR15は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる化合物が挙げられる。
14の炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられる。R15の炭素数が1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
一般式(9)で表わされる化合物の具体例としては、γ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのブロック化イソシアナートは、上記イソシアネート系化合物とブロック化剤を反応させることにより容易に得ることができる。
ブロック化剤としては、通常、オキシム系化合物(例えば、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム)、β−ジカルボニル化合物(例えば、マロン酸ジエチル)、アルコ−ル(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール)、フェノール類(例えば、フェーノール、クレゾール、エチルフェノール)、イミン(例えば、1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチルピラゾール)、アミン(例えば、ジイソプロピルアミン)、ラクタム、(例えば、カプロラクタム)等を用いることができる。
本発明で用いるコーティング剤には、耐紫外線性を向上させるために、金属酸化物粒子を含有させることができる。この金属酸化物粒子としては、チタン、セリウム、亜鉛等の酸化物を挙げることができ、粒子径は、好ましくは1〜300μm、より好ましくは1〜200μmである。
さらに、本発明に係るコーティング剤には、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、上記コーティング剤を、例えば、スプレー、浸漬、カーテンフロー、ロールコーティング、バーコート、スピンコート等の方法で成形基体の表面に塗工し、硬化させてコーティング層を設けることにより得ることができる。
コーティング層の厚みは、通常0.5〜30μm、好ましくは1〜20μm、より好ましくは1.5〜15μmである。この厚みが0.5μm以上であると、十分な硬度が発現し、30μm以上であると剥離し易い。
本発明に係るコーティング剤は、通常の熱硬化型のオルガノシロキサン系コーティング剤と同様の条件で塗工し、硬化することができる。本発明に係るコーティング剤の硬化温度としては、通常80〜130℃、好ましくは90〜130℃である。
ブロック化イソシアネート基を有する化合物を含むコーティング剤の場合、硬化温度としては、脱ブロック化に必要な温度以上で硬化させ、ブロック化剤の種類に応じ、通常100℃〜ポリカーボネートのガラス転移温度Tgを超えない範囲で硬化を行い、好ましくは100〜140℃、より好ましくは100〜130℃で硬化を行うのがよい。
本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、各種窓、例えば、住宅用窓、ショーウインドウ、車両用窓、車両用風防、遊戯機械のガラス代替、電気・電子、OA製品のハウジング、カバー、シート製品で傷付き防止等のためにコーティングを必要とする製品などに利用できる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
製造例1(PC−DHTD共重合体の製造)
以下のようにして、ポリカーボネートとHO−Ph−S−C24−O−CH2−O−C24−S−Ph−OH(DHTD)との共重合体を製造した。
(1)PCオリゴマーの合成工程
濃度5.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解させるビスフェノールA(BPA)に対して2000質量ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにBPA濃度が13.5質量%となるようにBPAを溶解させ、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
このBPAの水酸化ナトリウム水溶液を40L/hr、塩化メチレンを15L/hr、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)の24質量%塩化メチレン溶液を0.32L/hr、ホスゲンを4.0kg/hrの流量で、内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。
管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらに、上記と同様のBPAの水酸化ナトリウム水溶液2.8L/hr、25質量%水酸化ナトリウム水溶液0.07L/hr、水17L/hr、1質量%トリエチルアミン水溶液を0.64L/hrの流量で添加して反応を行なった。槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたPCオリゴマーは濃度326g/L、クロロホーメート基濃度0.71mol/Lであった。
(2)重合工程
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた内容積50Lの槽型反応器に、上記PCオリゴマー溶液15.0L、塩化メチレン9.4L、PTBP 33g及びトリエチルアミン1.4mlを仕込み、ここに、DHTDの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH596gと亜二チオン酸ナトリウム3.0gを水8.7Lに溶解した水溶液に、DHTD 1500gを溶解させたもの)を添加し、1時間重合反応を行った。
希釈のために塩化メチレン10.0Lを加えた後、静置することによりPCを含む有機相と、過剰のDHTD及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
このようにして得られたPCの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して5容量%の0.03mol/L NaOH水溶液、0.2mol/L 塩酸で順次洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
(3)フレーク化工程
洗浄により得られたPCの塩化メチレン溶液を濃縮した後、アセトン4Lを加えて十分に混合し、白濁した溶液をさらに濃縮し粉砕することによりPC−DHTD共重合体フレークを得た。
得られた共重合体フレークは、粘度数が61.7、NMRにより求めたDHTD含有量が19mol%、屈折率が1.597のものであった。
製造例2(PC−BCFL共重合体の製造)
製造例1(2)において、DHTD 1,500gの代わりに、ビスクレゾールフルオレン(BCFL)1610gを用いた以外は実施例1と同様にして、PC−BCFL共重合体フレークを得た。
得られた共重合体フレークは、粘度数が63.2、NMRにより求めたBCFL含有量が19.8mol%、屈折率が1.610のものであった。
製造例3(PC−TBBT共重合体の製造)
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた内容積50Lの槽型反応器に、製造例(1)で得られたPCオリゴマー溶液15.0L、PTBP 3g、トリエチルアミン1.4ml、及び4,4'−チオビスベンゼンチオール(TBBT)1095gを塩化メチレン9.4L溶解した溶液を仕込み、ここに水酸化ナトリウム水溶液(NaOH596gと亜二チオン酸ナトリウム3.0gを水8.7Lに溶解した水溶液)を添加し、1時間重合反応を行った以外は実施例1と同様にして、PC−TBBT共重合体フレークを得た。
得られた共重合体フレークは、粘度数が54.9、NMRにより求めたTBBT含有量が20mol%、屈折率が1.606のものであった。
製造例4(F末端PC共重合体の製造)
製造例1(1)において、PTBPの塩化メチレン溶液を添加しない以外は、製造例(1)同様にしてPCオリゴマーを得た。得られたPCオリゴマー溶液の濃度は329g/L、クロロホーメート基濃度0.72mol/Lであった。
次に、邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた内容積50Lの槽型反応器に、上記PCオリゴマー9.0L、塩化メチレン5.8L、9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(メトキシフェニル)フルオレン(アドケムコ社製)256g及びトリエチルアミン0.9mlを仕込み、ここにBPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH 363gと亜二チオン酸ナトリウム1.2gを水5.3Lに溶解した水溶液にBPA 591gを溶解させたもの)を添加し、1時間重合反応を行った。次いで、製造例1(2)と同様に洗浄を行い、製造例1(3)と同様のフレーク化を行い、フェノールフルオレン末端(F末端)PC共重合体フレークを得た。
得られた共重合体フレークは、粘度数が41.4、ガラス転移温度(Tg)が155℃、屈折率が1.590のものであった。
実施例1〜7及び比較例1〜4
(A)成分のPC樹脂として、FN2200(出光興産(株)製、粘度数54)、製造例1〜4で得られたPC共重合体を用いた。(B)成分のフェノキシ樹脂としては、PKHB(INCHEM社製、Mw=13,700、屈折率=1.595)、PKFE(INCHEM社製、Mw=36,800、屈折率=1.595)、PKCP−80(INCHEM社製、Mw=20,100、屈折率=1.586)を用いた。添加剤としては、イルガフォス168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、イルガノックス1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ケミソーブ79(ケミプロ化成(株)製)を用いた。これらの配合成分を用い、以下のようにしてPC樹脂成形体を製造した。
(1)成形基体の製造
(A)成分、(B)成分及び添加剤を、表1に示す配合比で混合した後、二軸押し出し機にて設定温度270℃でペレット化し、120℃で4時間乾燥させた。
乾燥後、射出成形機(東芝機械製(株)製、IS150E)を用いて成形温度280℃、金型温度70℃で、80×80×3.2mmのテストプレートを射出成形し、透明性の評価を行った。透明性の評価は、デジタルヘーズコンピューター(スガ試験機(株)製)を用い、全光線透過率、ヘーズを測定することにより行った。結果を表1に示す。
(2)PC樹脂成形体の製造
表2に示すA液とB液を、表2に示す配合比で混合し、コーティング剤C1を調製した。すなわち、高分子紫外線吸収剤を含むアクリル共重合体の水分散液(一方社油脂工業(株)製、ULS383MG)に、2−メトキシエタノール及び酢酸メチルを加え、攪拌しながら、テトラメトキシシランを滴下した。引き続き、20質量%p−トルエンスルホン酸メタノール溶液を滴下し、30分間攪拌した。これをA液とした。メチルトリメトキシシラン溶液(B液)に対し、A液を滴下し、2時間攪拌した。その後、暗所に25℃にて、3日間静置し、コーティング剤C1を得た。
また、上記コーティング剤C1の調製において、ULS383MGを用いない以外は、同様にしてコーティング剤C2を得た。
次に、バーコーターを用いて、上記成形基体に、コーティング層の厚みが4μmとなるように、コーティング剤C1又はC2を塗布した。塗布後120℃で1時間加熱してコーティング剤を硬化させた。
この試料について、下記の試験法に従い、コーティング剤の密着性及び傷付き性の評価を行った。結果を表1に示す。
〔密着性試験1:初期密着性〕
初期密着性は、コーティング剤を塗布し、硬化した後、温度23℃、相対湿度50%で24時間放置したテストプレートを用いて試験を行った。
JIS K5400に準じ、1mm間隔で縦横11本の切り込みを入れて、計100個の碁盤目を作り、ニチバン(株)製セロテープを接着した後、90度方向に急激に剥がした。被膜が剥離せずに残った桝目の数を「残存桝目数/100」で表わした。
〔密着性試験2:耐候試験後の密着性〕
サンシャインウェザーメータ−(スガ試験機(株)製、サンシャイン・スーパー・ロングライフ・ウエザーメーター)を用い、ブラックパネル63℃、相対湿度50%、降雨サイクル12/60分、照射強度(300〜450nm)60W/cm2の環境下に500時間曝した後に、温度23℃、湿度50%で24時間放置し、上記の密着試験を行った。
〔傷付き性評価:テーパー摩耗試験〕
スチールウール#0000を用い、荷重4.9N、20mm/secで10往復し、傷の付かないものを良好とした。
Figure 2006104329
Figure 2006104329
Figure 2006104329
本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、透明性に優れ、かつ密着性に優れたコーティング層を有するため、各種窓、例えば、住宅用窓、ショーウインドウ、車両用窓、車両用風防、遊戯機械のガラス代替、電気・電子、OA製品のハウジング、カバー、シート製品で傷付き防止等のためにコーティングを必要とする製品などに利用できる。


Claims (6)

  1. (A)ポリカーボネート樹脂98.5〜60質量%及び(B)下記一般式(1)
    Figure 2006104329
    [式中、Xは
    Figure 2006104329
    で表わされる二価の基、Yは水素原子又は
    Figure 2006104329
    (式中、Rは有機基を示す。)
    で表される基、nは重合度を示す。]
    で表されるフェノキシ樹脂1.5〜40質量%を、それらの合計が100質量%となるように含み、(A)成分の樹脂と(B)成分の樹脂の屈折率差が0.005未満であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. (A)成分のポリカーボネート樹脂が、イオウ原子、フルオレン骨格及びシクロアルキリデン骨格から選ばれる一種以上を有するビスフェノール類から誘導されるポリカーボネート共重合体又は該ポリカーボネート共重合体を含むポリカーボネート樹脂混合物である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. (B)成分のフェノキシ樹脂が、その水酸基の一部がアルキルエステル化又はアルキルエーテル化された樹脂である請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. (A)成分のポリカーボネート樹脂の粘度数が、37〜120である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. (B)成分のフェノキシ樹脂の重量平均分子量が、6,000〜70,000である請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形基体の表面にオルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けてなるポリカーボネート樹脂成形体。

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