JP4448220B2 - 炭素酸化物の水素化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素酸化物を有機化合物に変換し、若しくは炭化水素系の燃料に変換し、若しくは気体燃料に変換するためなどに利用する炭素酸化物の水素化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭素酸化物を触媒の存在下で水素化し、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド等の有機化合物を製造する方法が知られている。しかしながら、上記のような化学的な方法に用いる触媒は、希有金属系の原料から調整されるため、高価であるばかりでなく、反応を促進させるために、高い温度や高い圧力のもとで反応させる必要があり、反応の制御が難しく、しかも、装置が高価となるなどの問題があった。
【0003】
上記問題を解決すべく、例えば、特開平9−124515号公報に記載されているように、水素吸蔵合金に炭素酸化物を接触させて水素化させる方法、すなわち、水素吸蔵合金の表面に吸着した炭素酸化物と、水素吸蔵合金中に吸蔵されている活性水素とを水素吸蔵合金の表面で反応させ、他の化合物に変換し、若しくは気体燃料と製造するようにした炭素酸化物の水素化方法が提案されている。上記水素吸蔵合金は、空気、水分、一酸化炭素、二酸化炭素等と接触すると、表面が被覆されて水素吸蔵能力を失う被毒状態となるため、これを防止すべく、表面にフッ化物層を有する水素吸蔵合金を用いて炭素酸化物を水素化する方法についても提案されている。そして、上記水素化方法を用いることにより、緩和な条件下においても迅速、かつ効率的に目的物質を得ることができるとされている。
【0004】
ところで、燃料電池が将来のクリーン発電として期待されているが、この燃料電池の燃料は水素と酸素である。酸素は基本的に大気中の酸素を用いるが、水素は二次エネルギーであるため、人工的に製造する必要がある。水素の工業的製造方法としては、水の電解法、石炭コークスのガス化法、液体燃料のガス化法、ガス体燃料の変成法、コークス炉ガスの液化分離法、メタノールやアンモニアの分解法など、各種の方法が知られている。
【0005】
このうち、例えば、ガス体燃料の変成は、通常、天然ガスや都市ガスなどの炭化水素ガスの水蒸気改質、若しくは部分燃焼により行われる。この水蒸気改質法、若しくは部分燃焼改質法により得られる改質ガスには、主成分である水素のほか、一酸化炭素、二酸化炭素等の副生成分や余剰水分、メタンが含まれている。このため、改質ガスを燃料電池用の燃料として用いる場合、特に、一酸化炭素が電極の劣化を招き、電池性能を阻害してしまう。燃料ガス中の一酸化炭素は、燃料電池のうち、例えば、リン酸型燃料電池で用いる場合には、1%、固体高分子型燃料電池で用いる場合には、100ppm、望ましくは10ppm以下にする必要があり、これらを超えると電池性能が著しく劣化する。
【0006】
上記劣化を防止するには、改質ガスを燃料電池に供給する前に精製し、少なくとも一酸化炭素を除去しておく必要があり、改質ガスを燃料電池に供給する前にCO変成器に通して改質ガス中の一酸化炭素を酸化させ、二酸化炭素に変換して除去している。しかしながら、それだけでは十分ではなく、更に、その混合ガス内の一酸化炭素を白金などの貴金属系触媒を用いて酸化除去する手段がとられており、この方法はCO選択酸化と呼ばれ、一酸化炭素の酸化用として酸素が必要であり、その酸素は外部より空気を導入して供給している。その結果、空気導入のための動力を必要とするのに加え、理論反応量の6倍(O2/CO=3)もの酸素を添加しないと一酸化炭素を十分に除去することができず、しかも、過剰分の酸素は水素を消費し、空気導入によりN2分圧が増えることから、H2分圧が低下する。また、過剰分の酸素で消費された水素のエネルギーは熱となるので、このエネルギーを回収するためには熱回収が必要となる。したがって、可能であれば空気などを添加することなく、一酸化炭素を効率よく除去し得る方法が強く望まれている。
【0007】
また、燃料電池システムの運転上の観点では、燃料電池自体は水素と酸素を電極に供給することで、比較的早期運転が可能であり、供給燃料を制御することにより、発電量を容易に制御することが可能である。しかし、炭化水素ガスを原料として水蒸気改質法で水素を生成する場合には、改質器の温度を700℃以上の高温にする必要があり、運転開始時には昇温のための時間を要す。そのため、燃料電池の燃料である水素が直ぐに得られず、実質的な運転(発電)開始までに時間が必要であるなど、早期運転が困難であった。
【0008】
改質器を運転する場合、700℃以上の運転温度までの昇温に消費されるエネルギーロスを考慮し、できるだけ連続運転を行うのが好ましい。また、改質器を効率よく安定的に運転させるためには、原料ガス供給量など、定常状態で運転を行うのが好ましい。しかしながら、改質器における水素供給能力と燃料電池における水素使用量とにはギャップがあり、例えば、改質器を連続運転し、燃料電池は運転と停止が交互に行われ、燃料電池の運転時の負荷が急激にアップするなど、供給と消費のバランスに変動がある。このため、余剰に生成される水素は、COなどの有害な不純ガスを除去する水素精製装置を通った後、昇圧して高圧タンクなどの貯蔵容器に充填するか、若しくは水素吸蔵合金などに蓄えておくか、生成される水素はすべて燃料電池で発電し、電気として二次電池に蓄えておくなど、発電と消費の負荷変動を吸収するための設備を別途に必要とし、燃料電池システムが大型化し、ひいてはコスト高につながってしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、種々試験、研究した結果、上記従来例の炭素酸化物の水素化方法においては、表面のフッ化物層に炭素酸化物が吸着し、その吸着した炭素酸化物と、フッ化物層の下にある合金に吸蔵された活性な水素および水素吸蔵合金表面で原子状に解離した活性な水素とが、フッ化物層の下にある水素吸蔵合金の表面で化学反応を起こし、炭素酸化物の水素化を可能にすることがわかった。そして、上記従来例の炭素酸化物の水素化方法を用いることにより、緩和な条件下において、比較的迅速に、かつ効率的に炭素酸化物の水素化を行うことができるが、上記のような燃料電池、燃料電池システム等に実用化するには、迅速、かつ効率的な水素化において、なお、不十分であることがわかった。
【0010】
本発明者等は、種々試験、研究した結果、酸素とフッ素とが混在した金属の化合物層を表面に有する水素吸蔵合金を用いて炭素酸化物を水素化することにより、単にフッ素と金属との化合物層を表面に有する水素吸蔵合金を用いて炭素酸化物を水素化する場合に比べて、炭素酸化物を緩和な条件下で、より迅速に、かつ効率的に水素化することができることを見出し、これに基づき本発明の炭素酸化物の水素化方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の炭素酸化物の水素化方法は、酸素とフッ素とを含有する化合物層を表面に有する水素吸蔵合金に水素と炭素酸化物とを含有する混合ガスを接触させ、炭素酸化物を水素化することを特徴とする。
【0012】
そして、上記のように炭素酸化物を水素化することにより他の化合物に変換することができる。また、上記混合ガスが水素と一酸化炭素とを含有し、上記のように一酸化炭素を水素化することにより除去することができる。また、上記混合ガスが水素と一酸化炭素とを含有し、上記のように一酸化炭素を水素化することにより除去して気体燃料を製造することができ、気体燃料の製造に際し、混合ガス中の水素を水素吸蔵合金に吸蔵させることができる。
【0013】
また、上記酸素とフッ素を含有する化合物が水素吸蔵合金自体の成分を含有してもよく、また、上記水素吸蔵合金として、希土類系水素吸蔵合金を用いることができ、また、上記の水素と一酸化炭素とを含有する混合ガスとして、炭化水素系ガス、若しくはアルコールの水蒸気改質法、部分燃焼改質法、或いはそれら改質法の併用改質法によって得られたガスを用いることができる。
【0014】
上記のような本発明の炭素酸化物の水素化方法によれば、水素吸蔵合金の表面に設けた酸素とフッ素とが混在した金属との化合物層自体に炭素酸化物を緩和な条件で迅速に水素化する高い触媒活性が発現しており、この触媒効果と水素吸蔵合金に吸蔵された活性な水素および水素吸蔵合金表面で原子状に解離した活性な水素と炭素酸化物との反応の相乗効果により、単にフッ素と金属との化合物層を表面に有する水素吸蔵合金を用いる場合に比べて炭素酸化物を迅速に、かつ効率的に水素化することが可能となった。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明において用いる水素吸蔵合金としては、従来から知られている水素吸蔵合金の中から任意に選ぶことができる。例えば、希土類系合金であるLaNi5やそのNiの一部がAl,Cr,Fe,Cu,Si,Mn,Coなどによって置換されたもの、或いはLaがレアメタルの混合物であるMm(ミッシュメタル)、Ce,Smなどによって置き換えられたもの、その他、マグネシウム系合金、カルシウム系合金、チタン系合金、ジルコニウム系合金などから選ぶことができる。
【0016】
本発明では水素吸蔵合金をフッ化処理し、表面にフッ素と酸素とを含む化合物層を形成した水素吸蔵合金を用いる。フッ化処理方法としては、例えば、所望の酸化物および水酸化物がそれぞれ単独で、または混在した状態で表面に形成された上記水素吸蔵合金を、フッ素を含有するガス(フッ化水素ガス、フッ素ガスなどの単体、またはそれらガスを不活性ガスなどで希釈したガス、若しくは酸素を含むガスを混合したガス)、無水フッ化水素溶液、またはそれを含有する溶液(無水フッ化水素をピリジン、トリエチルアミン、イソプロピルアルコールなどで希釈した混合溶液など)に所望の温度で接触させ、処理を行うことができる。
【0017】
本発明方法により水素化される炭素酸化物としては、CO,CO2などが挙げられ、その代表的な反応生成物としてCH4への変換が可能である。
CO+3H2→CH4+H2O
CO2+4H2→CH4+2H2O
【0018】
また、反応条件によってはメタノールやホルムアルデヒドなども生成可能であり、本発明方法によると、炭化水素系の気体および液体燃料の製造に利用することができる。また、炭素酸化物の種類によって反応条件が違うため、温度、圧力を適宜選択することで、比較的水素化しやすいCOなどは、他の炭素酸化物を含有する場合においても選択的にCH4などに変換することができる。
【0019】
更に、この反応特性を利用することにより、H2とCOとを含有する混合ガス内のCOを選択的に水素化して除去することができるので、COを有害とする触媒に対して無毒化することができる。例えば、燃料電池に供給する燃料を炭化水素ガスの水蒸気改質法で得られた改質ガスを原料として用いる場合、その気体燃料内に含有するCOは燃料電池の性能を著しく劣化させることが知られている。本発明方法によればCOを水素化により除去することができるので、燃料電池の燃料として十分利用することができる。
【0020】
また、本発明の方法では、例えば、フッ化処理した水素吸蔵合金を充填した反応容器内に、H2とCOを含有する混合ガスを所望の条件でフローするだけで、合金に予めH2が吸蔵されていない場合には、選択的にH2のみを上記水素吸蔵合金に吸蔵させ、また、フローの最中でCOは上記水素吸蔵合金により水素化され、CH4に変換されてほぼ完全に除去される。原料ガス内に含まれていたH2以外のCO2,CH4ガスは反応容器外にほぼそのままで排出される。また、合金に水素が十分吸蔵された状態では、COは上記水素吸蔵合金により水素化され、CH4となってほぼ完全に除去されてその他のガスと共に排出される。したがって、本発明の方法によれば、例えば、燃料電池に供給する気体燃料を燃料電池に供給する前に、フッ化処理した水素吸蔵合金に接触させることにより、有害であるCOをほぼ完全に除去した状態で燃料電池に供給することが可能となり、また、運転中に合金が吸蔵した水素を燃料電池の負荷に合わせて供給することで、安定した燃料電池発電システムの運転が可能となる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
LaNi4.5Al0.5合金を機械的に250μm以下に粉砕し、この粒子100gをステンレス製の反応容器内に充填した後、その反応容器内を353Kに加熱しながら1Paまで真空排気を行った。その後、7Nの高純度水素ガスを2.5MPaの供給圧力で反応容器内に導入し、合金の水素化を行い、続けて真空排気による合金の脱水素化を行った。この水素化と脱水素化を1サイクルとし、計10サイクルの水素の吸脱蔵を行って合金粒子を微粉化した。その後、反応容器内に大気を導入した後、無水フッ化水素溶液を50ml反応容器に入れ、窒素ガスフローしながら反応容器内の無水フッ化水素を蒸散させ、その後、393K、3時間の熱処理を行った。得られた合金粉末の表面をオージェ電子分光およびX線光電子分光により分析した結果、表面並びに表層部には合金元素であるLa,Ni,Alの他にF,Oが存在した化合物状態であることがわかった。
【0023】
上記合金粉末の試料100gをステンレス製の反応容器(内径10φ×長さ320mm)に入れ、423Kに加熱した状態で原料ガスを供給した。また、合金の水素吸蔵に伴う反応容器内の他のガス成分の濃度上昇を防止するため、原料ガスの供給は反応容器に溜めるバッチ式ではなく、ガスが反応容器を通過するフロー式による方法で行った。原料ガスは、CO2濃度5%に調整された水素ガスボンベを用い、また、反応容器内の圧力は1.5MPaとなるように反応容器下流側の圧力調節弁を調節し、また、ガスの供給流量はマスフローコントローラにより1NL/min一定となるように制御しながら供給した。また、合金に吸蔵されなかったガスは二次側に排出させ、湿式積算流量計によるガス流量の計測とガスクロマトグラフによるガス組成の分析を行った。合金への水素吸蔵は供給流量と二次側流量がほぼ同じ値になった時点で終了と判断したが、吸蔵終了後も原料ガスを流し続け、そのときの二次側ガス成分の分析を行った。また、上記評価終了後、合金内の吸蔵水素ガスを0.5NL/min一定の放出速度で0.15MPaまで放出させ、さらにそのときのガス成分の分析を行った。
【0024】
合金に原料ガスを供給したときの二次側ガス成分のCH4,CO2含有量の変化を図1に示す。原料ガスを供給し始めて直ちにCH4が検出され始め、3min後ぐらいからは50NmL/min程度の一定量のCH4が確認され、水素吸蔵が終了したと思われる一次側流量と二次側流量とがほぼ同じ値になった後も同様であり、終始、CO2は検出されなかった。
【0025】
上記水素供給時の評価終了後、合金内に吸蔵している水素を放出させ、そのときの放出量とガス成分の分析を行った。放出ガス中のCO2,CH4の含有濃度を図2に示す。放出初期時に4.8%程度のCH4が検出されるものの、5min程度で検出限界以下まで減少し、それ以降、放出ガスはほぼ100%の水素ガスのみとなった。CO2は終始、検出されなかった。また、放出量から合金内にはほぼ評価条件における理論水素量に相当する水素を吸蔵していたことがわかった。
【0026】
(比較例1a)
上記実施例1において、合金粒子の微粉化後の大気導入を行わなかった以外は全く同じ処理を行ったものを用いた。この比較例1aの合金粉末を実施例1と同様に分析したところ、表面には大気に曝されたときに吸着したと思われるOが存在するが、表層内部においてOは検出されなかった。そして、この合金粉末の試料を用いて上記実施例1と同様に原料ガスを処理して分析を行った。その結果を図3に示す。評価実施初期状態においては実施例1と同様に、CH4,CO2共に検出されなかったが、開始後1min程度から徐々にCH4が検出され始め、試験開始後14min程度で35NmL/min一定となり、その後、水素の吸蔵反応が終了する18min程度までは同様であったが、それ以降は28NmL/min程度まで減少し、その後はほぼ一定であった。また、CO2は試験開始3min経過ぐらいから徐々に検出され始め、14min後に13NmL/min一定となり、その後、水素の吸蔵反応が終了する18min程度までは同様であったが、それ以降は23NmL/min程度まで上昇し、その後はほぼ一定であった。初期時にCO2が検出されなかったのは合金にCO2が吸着しているためと思われる。また、水素の吸蔵反応が終了したと考えられる18min以降、CO2の検出量が増え、CH4の生成が減少した理由として、単にフッ素と金属との化合物層を表面に有する比較例1aでは、実施例1とは異なり、表面に存在する化合物層のメタネーション活性が低く、水素を十分吸蔵した水素吸蔵合金の表面では、詳しくは合金とその表面の化合物層との界面では、存在するH2濃度が低くなり、その結果、CH4の生成量が減少したものと考えられる。
【0027】
水素放出時のガス成分濃度を図4に示す。放出初期時に5.1%程度のCH4と0.3%程度のCO2が検出されたが、5min程度で実施例1と同様に、検出限界以下まで減少し、それ以降、放出ガスはほぼ100%の水素ガスのみとなった。また、放出量から合金内には実施例1と同様に、ほぼ評価条件における理論水素量に相当する水素を吸蔵していたことがわたった。
【0028】
(比較例1b)
上記実施例1において、合金粒子の微粉化処理を行っただけのものを用いた。そして、この合金粉末の試料を用いて上記実施例1と同様に原料ガスを処理して分析を行った。その結果を図5に示す。評価開始直後、CO2はほとんど検出されなかったが、直ちに上昇し始め、2min後には原料ガスの50NmL/min程度まで上昇し、それ以降、常にCO2が50NmL/min程度検出され、CH4の生成は見られなかった。初期時のCO2の減少は合金への吸着が生じていたからと思われる。また、実施例1、比較例1aにおける試料を用いたときには見られた水素吸蔵による容器内圧力の低下はほとんど見られず、ほとんど水素を吸蔵していないことが予想された。
【0029】
水素放出時のガス成分濃度を図6に示す。初期時において6%程度のCO2が検出され、その後、徐々に減少した。この初期のCO2は合金に吸着されずに反応容器内に溜まっていたものが放出されたものと思われる。また、CO2濃度の減少に伴い、CH4が僅かに検出されたが、直ぐに検出下限界まで低下した。また、放出量から合金内にはこの評価条件における理論水素吸蔵量の8%程度を吸蔵していることがわかり、CH4の検出はこの吸蔵水素が放出されてきたときに生成されたことによるものと思われる。
【0030】
上記結果から炭素酸化物であるCO2をCH4に変換するメタネーション反応活性において、実施例1のようにOとFを含有する化合物層が表面に存在する水素吸蔵合金を用いることにより、単にFだけで化合物層を表面に形成している水素吸蔵合金を用いた比較例1aに比べて優れていることがわかった。また、上記の条件で未処理の合金を用いた比較例1bにおいては、特に、吸蔵時、ほとんどメタネーションを起こさず、放出時においても僅かなものであった。
【0031】
(実施例2)
メタネーション反応を利用してCOを選択的に除去できるかどうかを確認するために、実施例1で得られた試料100gをステンレス製反応容器(内径10φ×長さ320mm)に入れ、403Kに加熱した状態で原料ガスをフローした。原料ガスは都市ガスの改質ガスを想定し、CO(0.4%),CO2(18%),CH4(2%),H2(79.6%)に調整したボンベガスを用い、反応容器手前で40℃の純水を溜めた加圧容器内でバブリングし、加湿して供給した。また、反応容器内の圧力が0.3MPaとなるように反応容器下流側の圧力調節弁を調節し、また、ガスの供給流量はマスフローコントローラにより1NL/min一定となるように制御しながら供給した。また、この条件では、合金に水素はほとんど吸蔵されず、原料ガスは単に反応容器内をフローするのみとなる。COの除去特性を確認するために、反応容器を通過し、二次側にフローされてくるガスに含まれるCO,CO2,CH4をガスクロマトグラフにより分析した。但し、ガス内に含まれる水分の影響を考慮し、ガスクロマトグラフに分析ガスを導入する前に、ガスを−10℃の冷却トラップに通して水分を除去した。また、湿式積算流量計により二次側ガス流量の計測も行なった。
【0032】
合金に原料ガスを供給したときの二次側ガス成分のCO,CO2,CH4含有量の変化を図7に示す。原料ガスを供給し始めた初期の状態から評価終了までの間、COは検出限界以下であり、安定的にCOが除去されていた。また、CO2は開始時点ではほほ検出限界以下であったが、実験開始から1min後ぐらいまでに急激に濃度が上昇し、それ以降、ほとんど原料ガスの組成である18%程度を維持していた。CH4も実験開始から1min後ぐらいまではCO2同様に急激に濃度が上昇し、それ以降は原料ガスの組成である2%よりも多い2.5%程度を一定に維持していた。
【0033】
また、反応容器内の圧力が1.0MPaとなるように供給圧力を上げ、合金に水素を吸蔵することができる温度、圧力条件にて上記試験と同様の試験を行った。その結果、合金は速やかに水素を吸蔵し、吸蔵している最中も安定的にCOを除去することができ、また、一度吸蔵した水素を放出する際にもCOは検出限界以下であることも確認することができた。
【0034】
(比較例2a)
比較例1aの合金を用いて上記実施例2と同様の試験を行った結果を図8に示す。原料ガスを供給し始めた時点ではCOは検出されなかったが、開始後、28min程度から徐々にCOが検出され、その後、0.13%の一定濃度で安定した。また、CO2,CH4については実施例2と同様であったが、28min経過後のCH4の生成は実施例2よりも少ない2.1%程度の値であった。
【0035】
また、反応容器内の圧力が1.0MPaとなるように供給圧力を上げ、合金に水素を吸蔵することができる温度、圧力条件にて上記試験と同様の試験を行った。その結果、合金は徐々に水素を吸蔵し、吸蔵している最中のCO濃度は0.08%程度であった。また、一度吸蔵した水素を放出した際のCOは検出限界以下であった。
【0036】
(比較例2b)
比較例1bの合金を用いて上記実施例2と同様の試験を行った結果を図9に示す。原料ガスを供給し始めた時点ではCOは検出されなかったが、開始後、7min程度から急激にCOが検出され、その後、原料ガス濃度とほぼ同じ0.39%の一定濃度で安定した。また、CO2,CH4については開始後、3min程度で検出され始め、その後はCOと同様に原料ガスとほぼ同じ濃度で一定していた。
【0037】
また、反応容器内の圧力が1.0MPaとなるように供給圧力を上げ、合金に水素を吸蔵することができる温度、圧力条件にて上記試験と同様の試験を行った。その結果、合金に水素吸蔵を示唆する反応容器内の圧力低下は見られず、上記試験結果と同じような結果であった。これはCOなど、水素以外のガスの影響により合金が被毒されたことが原因であると考えられる。
【0038】
上記実施例からも明らかように、OとFを含有する化合物層を表面に形成した水素吸蔵合金を用いることにより、単にFとの化合物層が表面に形成された水素吸蔵合金を用いた場合に比べ、安定的にCOをメタン化して除去することができることがわかった。また、その機能は、合金が水素を吸蔵した状態、していない状態であっても変わらず、したがって、OとFを含有する化合物層を表面に形成した水素吸蔵合金を用いることにより、単にCOを含有する水素ガス中のCOのみを除去し、燃料電池などの電極・触媒に対して無毒化して供給することが可能となる。また、従来の水素吸蔵合金には不可能とされてきたCO,CO2,CH4,H20などを含有する低純度水素ガスから、選択的に水素を吸蔵して放出することができるので、利用形態的に負荷変動を余儀なくされる燃料電池などでは、その負荷変動を吸収するためのバッファー機能を合金に持たせることが可能となる。また、そのとき、放出されてくる水素は高純度であるので、水素ガスの精製としても大きな役割を果たすことが可能である。
【0039】
【発明の効果】
以上要するに、本発明の炭素酸化物の水素化方法によれば、水素吸蔵合金の表面に設けた酸素とフッ素とが混在した金属との化合物層自体に炭素酸化物を緩和な条件で迅速に水素化する高い触媒活性が発現しており、この触媒効果と水素吸蔵合金に吸蔵された活性な水素および水素吸蔵合金表面で原子状に解離した活性な水素と炭素酸化物との反応の相乗効果により、単にフッ素と金属との化合物層を表面に有する水素吸蔵合金に比べて炭素酸化物を迅速に、かつ効率的に水素化することが可能となった。したがって、工業的な実用化に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例1による原料ガス供給時における二次側ガス成分のCH4,CO2含有量の変化を示すグラフである。
【図2】本発明実施例1による放出ガス中のCO2,CH4の含有濃度を示すグラフである。
【図3】比較例1aによる原料ガス供給時における二次側ガス成分のCH4,CO2含有量の変化を示すグラフである。
【図4】比較例1aによる放出ガス中のCO2,CH4の含有濃度を示すグラフである。
【図5】比較例1bによる原料ガス供給時における二次側ガス成分のCH4,CO2含有量の変化を示すグラフである。
【図6】比較例1bによる放出ガス中のCO2,CH4の含有濃度を示すグラフである。
【図7】本発明実施例2による原料ガス供給時における二次側ガス成分のCO,CO2,CH4含有量の変化を示すグラフである。
【図8】比較例2aによる原料ガス供給時における二次側ガス成分のCO,CO2,CH4含有量の変化を示すグラフである。
【図9】比較例2bによる原料ガス供給時における二次側ガス成分のCO,CO2,CH4含有量の変化を示すグラフである。
Claims (10)
- 酸素とフッ素とを含有する化合物層を表面に有する水素吸蔵合金に水素と炭素酸化物とを含有する混合ガスを接触させ、炭素酸化物を水素化することを特徴とする炭素酸化物の水素化方法。
- 炭素酸化物を水素化することにより、メタン、メタノール、またはホルムアルデヒドに変換することを特徴とする請求項1記載の炭素酸化物の水素化方法。
- 混合ガスが水素と一酸化炭素とを含有し、一酸化炭素を水素化することにより除去することを特徴とする請求項1記載の炭素酸化物の水素化方法。
- 混合ガスが水素と一酸化炭素とを含有し、一酸化炭素を水素化することにより除去して気体燃料を製造することを特徴とする請求項1記載の炭素酸化物の水素化方法。
- 気体燃料の製造に際し、混合ガス中の水素を水素吸蔵合金に吸蔵させることを特徴とする請求項4記載の炭素酸化物の水素化方法。
- 酸素とフッ素とを含有する化合物が水素吸蔵合金自体の成分を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の炭素酸化物の水素化方法。
- 水素吸蔵合金が希土類系水素吸蔵合金であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の炭素酸化物の水素化方法。
- 水素と一酸化炭素とを含有する混合ガスが、炭化水素系ガス、若しくはアルコールの水蒸気改質法、部分燃焼改質法、或いはそれら改質法の併用改質法によって得られたガスであることを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載の炭素酸化物の水素化方法。
- 水素吸蔵合金に酸素を含む雰囲気を接触させ、次いでフッ化処理を行い、前記酸素とフッ素とを含有する化合物層を表面に有する水素吸蔵合金とすることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の炭素酸化物の水素化方法。
- 水素吸蔵合金にフッ素及び酸素を含むガスを接触させてフッ化処理を行い、前記酸素とフッ素とを含有する化合物層を表面に有する水素吸蔵合金とすることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の炭素酸化物の水素化方法。
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