JP4448092B2 - 仮骨延長再生装置 - Google Patents
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Description
しかし、代替物の埋設は生体との適合性が充分ではないし、自家骨101の移植は正常部位への外科的侵襲の必要がある。そこで、仮骨延長によって、骨欠損部に骨を再生させる方法が提案されている。ここで、仮骨延長とは、骨欠損部を形成する骨片断端102に所定の大きさの移動用骨片をあてがい、この移動用骨片と骨片断端102との間に形成される仮骨を、仮骨の形成に応じて徐々に延長していくことである。
このような、仮骨延長再生装置としては、特開平9−215699号公報に記載のように、骨欠損部を架橋する架橋部材にネジ山を形成しておき、移動用骨片と一体となった移動部材を、ナットなどによって急激な移動を規制しつつ、架橋部材上を徐々に移動させる装置がある。あるいは、特開平11−262491号公報に記載のように、架橋部材の上端にラックを形成しておき、移動部材にこのラックと噛み合うギアを具備させ、このギヤを回転させることで、急激な移動を規制しつつ、架橋部材上を徐々に移動させる装置もある。
しかし、特開平9−215699号公報に記載の仮骨延長再生装置は、構造上、創内に配置することができない。よって、この装置を装着した状態では日常生活での支障が大きい。また、特開平11−262491号公報に記載の仮骨延長再生装置は、架橋部材および移動部材の両方を薄くすることができるので創内に配置することができる。しかし、ラックやギヤのように移動部材を移動させるための複雑な構造が創内に配置されてしまう。また、ラックやギヤのような構造では、創内では2次元的にしか仮骨を延長することができない。
本発明の目的は、創内に複雑な構造を配置することなく、創内に配置して3次元的に仮骨を延長することができる仮骨延長再生装置を提供することにある。
請求の範囲1に記載の発明によれば、仮骨延長再生装置は、骨欠損部を架橋する棒状部材であって、骨欠損前の骨形状に合わせて3次元的に変形可能なプレートと、このプレートを包囲しながら移動するスライド部を有すると共に、骨欠損部を形成する骨片断端の端面との間に、仮骨を形成しつつ移動される移動用骨片を、プレートの長軸方向に移動自在に保持するブラケットと、このブラケットと連結して、仮骨を延長するために、ブラケットをプレートの長軸方向に移動させるワイヤとを備える。
これにより、ワイヤの一端にブラケットを連結して、ワイヤの他端を操作すれば、プレート形状に応じて3次元的に仮骨の延長を行うことができる。
また、ブラケットはプレートを包囲しながら移動できればよいので、ブラケットおよびプレートの大きさは、創内に配置できる程度まで抑えることができる。よって、仮骨延長再生装置において、操作部材の一部のみを創外に配置して、他の部分を全て創内に配置することができる。このため、仮骨延長再生装置の大部分を創内に配置した状態で、3次元的に仮骨を延長することができる。また、仮骨延長再生装置を創外に配置することによる日常生活での支障を、抑えることができる。
また、下顎骨の骨欠損に用いた場合には、創外に配置される操作部材を耳の後下方に配置できるので、外観においても好ましい。
また、ワイヤを用いてブラケットを移動させるようにしたので、創内に配置される構造を、ブラケットおよびブラケットにより包囲されるプレートという簡単な構造にすることができる。
さらに、プレートとブラケットとは別体であるので、プレートの取付とブラケットの装着とを一期的に行うのと、プレートの取付による再建のみを行い二期的にブラケットの装着を行うのとを、選択することができる。例えば、病変の再発の可能性がある場合、ブラケット装着まで一期的に行ってしまうと、その後の治療に支障が生じるので、ブラケットの装着を二期的に行う方が好ましい。よって、病変の再発の可能性に応じて、ブラケット装着まで一期的に行うのと、ブラケットの装着を二期的に行うのとを選択することができる。
[請求の範囲2の発明]
請求の範囲2に記載の発明によれば、移動用骨片は骨片断端を切断して作られ、仮骨は、移動用骨片を作る際に新たに生じた骨片断端側の切断面と移動用骨片側の切断面との間に形成される。
これにより、他の正常部位へ外科的侵襲をすることなく、移動用骨片を作り、仮骨を延長することができる。
[請求の範囲3の発明]
請求の範囲3に記載の発明によれば、仮骨延長再生装置はワイヤを牽引する牽引機構を備え、牽引機構によりワイヤが牽引されてブラケットが移動する。
これにより、仮骨の延長に伴い、ワイヤを創外へ引き抜くことができる。このため、創内にワイヤを押し込んでいくよりも、人体への負担と感染の危険性を低減することができる。
[請求の範囲4の発明]
請求の範囲4に記載の発明によれば、仮骨延長再生装置はブラケットおよびワイヤを2つ備えて、各々のブラケットに移動用骨片を保持させて、2つの骨片断端で仮骨を延長することができる。
これにより、骨欠損部の両端にある骨片断端の双方から仮骨を延長することができるので、一方の骨片断端のみから仮骨を延長する場合に比べて2倍の速さで、骨欠損部を埋めることができる。
[請求の範囲5の発明]
請求の範囲5に記載の発明によれば、骨欠損部の両端にある骨片断端の双方から仮骨を延長することができる仮骨延長再生装置では、一方のブラケットは他方のブラケットを移動させるワイヤが挿通されるワイヤ挿通穴を有し、他方のブラケットは一方のブラケットを移動させるワイヤが挿通されるワイヤ挿通穴を有する。
これにより、ワイヤをプレートの近傍から離れないように保持することができる。
[請求の範囲6の発明]
請求の範囲6に記載の発明によれば、プレートは、ワイヤをプレートの長軸方向に収容するワイヤ溝を有する。
これにより、ワイヤがプレートから脱落するのを防止することができる。
[請求の範囲7の発明]
請求の範囲7に記載の発明によれば、牽引機構は、ワイヤと連結されるロッド、プレートに対する位置が固定され、ロッドを軸方向に移動自在に保持する略円筒状の外套筒を有し、外套筒は、曲げ応力が加えられると、この曲げ応力が集中する応力集中部を具備する。
これにより、外套筒を応力集中部で容易に折り曲げることができる。このため、牽引機構が人体の部位と立体的に干渉する場合などに、外套筒を折り曲げて人体の部位との干渉を防止することができる。
[請求の範囲8の発明]
請求の範囲8に記載の発明によれば、牽引機構は、ワイヤと連結されるロッド、プレートに対する位置が固定され、ロッドを軸方向に移動自在に保持する略円筒状の外套筒を有し、ロッドは、軸方向の長さを示す目盛りを具備する。
これにより、ワイヤによるブラケットの牽引量、すなわち移動量を目視できる。このため、仮骨の延長量を容易に測定することができる。
[請求の範囲9の発明]
請求の範囲9に記載の発明によれば、牽引機構は、ワイヤと連結されるロッド、プレートに対する位置が固定され、ロッドを軸方向に移動自在に保持する略円筒状の外套筒、ブラケットを牽引するワイヤの張力を測定する張力測定手段を有する。
これにより、ブラケットを牽引するワイヤの張力に応じてブラケットの移動量を調節することができる。このため、仮骨を延長する際に、仮骨に過度の負担をかけないようにすることができる。
[請求の範囲10の発明]
請求の範囲10に記載の発明によれば、牽引機構は、ワイヤと連結されるとともに、外周にオネジ部を具備するロッド、プレートに対する位置が固定され、ロッドを軸方向に移動自在に保持する略円筒状の外套筒、オネジ部と螺合するメネジ穴を具備し、このメネジ穴がオネジ部に螺合しながらロッドに対して変位することにより、ワイヤによるブラケットの移動量を調節する移動量調節手段を有する。
これにより、ロッドを軸方向からずれることなく安定的に移動させることができる。このため、ブラケットの牽引を安定して行うことができる。
[請求の範囲11の発明]
請求の範囲11に記載の発明によれば、ワイヤは、外套筒の内周壁とロッドの外周壁とで形成される中空部に保持されるとともに、ロッドの端部にて着脱可能に係止される。
これにより、ワイヤは、外套筒の内部でロッドの軸方向に保持されるとともに、外套筒の外部に突き出たロッドの端部に着脱可能に連結される。このため、ワイヤとロッドとの連結および分離を容易に行うことができるとともに、ロッドや外套筒の長さを短縮することができる。
すなわち、ワイヤとロッドとが着脱不能であると、ロッドおよび外套筒は、仮骨の全延長量に応じた長さが必要になる。しかし、ワイヤとロッドとを着脱可能にすれば、仮骨の延長に伴いロッドが外套筒の外側に突出し過ぎたら、ワイヤとロッドとを分離することにより、ワイヤを動かすことなくロッドの突出量を調節することができる。この結果、ロッドおよび外套筒の長さを、仮骨の全延長量に関わりなく決めることができる。
図2は、仮骨延長再生装置のブラケットを示す断面図である(実施例1)。
図3は、(a)が、骨片断端に取り付けられた仮骨延長再生装置の断面図であり、(b)が、(a)のA−A断面図であり、(c)が仮骨延長再生装置の正面図である(実施例1)。
図4は、仮骨を形成した状態の仮骨延長再生装置の断面図である(実施例1)。
図5は、仮骨延長を開始する状態の仮骨延長再生装置の斜視図である(実施例1)。
図6は、(a)が、仮骨延長が終了した状態の仮骨延長再生装置の斜視図であり、(b)が、腫瘍部切除端面同士の間に形成される仮骨の斜視図である(実施例1)。
図7は、(a)が、仮骨延長再生装置の操作部材を示す断面図であり、(b)が、(a)のB−B断面図である(実施例2)。
図8は、操作部材の短縮を説明する斜視図である(実施例2)。
図9は、仮骨延長再生装置を示す斜視図である(実施例3)。
図10は、応力集中部で折り曲げられた仮骨延長再生装置を示す斜視図である(実施例3)。
図11は、操作部材の分解図である(実施例3)。
図12は、仮骨延長再生装置を示す斜視図である(実施例4)。
図13は、骨欠損部を埋める装置を示す斜視図である(従来例)。
実施例1の構成を図面に基づいて説明する。実施例1の仮骨延長再生装置1は、図1ないし図4に示すごとく、骨欠損部2を架橋するプレート3、移動用骨片4をプレート3の長軸方向に移動自在に保持する2つのブラケット5、ブラケット5をプレート3の長軸方向に移動させる2本のワイヤ6、およびワイヤ6を牽引して操作する牽引機構としての2つの操作部材7を備える。
ここで、骨欠損部2とは、図3(a)に示すごとく、骨に生じた腫瘍、のう胞、外傷、顎変形症などの治療のために、骨を部分的に切除することにより生じる空間である。この骨欠損部2は、骨の部分的切除により生じた2つの骨片断端8によって形成されている。
また、移動用骨片4とは、図4に示すごとく仮骨9を形成しつつ移動される所定の大きさの骨片である。本実施例では、移動用骨片4は、骨片断端8を所定の長さで切断して作られる。そして、この移動用骨片4を作る際に生じた移動用骨片4側の切断面(以下、骨片側切断面10と呼ぶ)と骨片断端8側の切断面(以下、断端側切断面11と呼ぶ)との間に、仮骨9が形成され、その形成状況に応じて仮骨9が延長される。
プレート3は、所定の長さを有して、骨欠損部2を架橋する棒状部材である。また、プレート3は、骨欠損前の骨形状に合わせて、3次元的に変形ができるような材料により形成されている。このようなプレート3の材料としては、純チタン(具体的には、JISH4670)、チタン合金(具体的には、JISH4657のTi−6Al−4V、ASTM F−136 Ti−6Al−4V ELI)、ステンレス鋼(具体的には、JISG4304のSUS304、SUS316など)などを用いることができる。さらに、プレート3は創内に配置されるので生体適合性の点から、純チタンまたはチタン合金が好ましい。なお、プレート3は、当初は直線状であり、周知のベンダなどにより3次元的に変形されている。
また、プレート3は、図2および図3(c)に示すごとく、外周側の側面において、2本のワイヤ6をプレート3の長軸方向に収容するワイヤ溝15を有している。さらに、プレート3の両端部には、図1および図3(a)に示すごとく、このプレート3と操作部材7とを骨片断端8にビス止めするためのビス穴16が設けられている。なお、本実施例のプレート3では、各々の端部に4つのビス穴16が、長軸方向に並設されている。これにより、骨の大きさや形状などの差異に応じて、ビス止め位置を変えることができる。
ブラケット5は、図1ないし図4に示すごとく、プレート3を包囲して移動するスライド部17と、移動用骨片4を保持する保持部18とを備える。
スライド部17は、図2に示すごとくプレート3をコの字状に包囲するような断面を有する。そして、プレート3をコの字状に包囲しながら移動する。また、スライド部17は、2本のワイヤ6の内、一方のワイヤ6の一端が着脱自在に連結されている。スライド部17とワイヤ6とは、例えば、ワイヤ6の一端にオネジを形成し、スライド部17にメネジを形成しておき、ワイヤ6のオネジをスライド部17のメネジに螺合させることにより連結される。または、ワイヤ6の一端に凸部を形成し、スライド部17に凹部を形成しておき、ワイヤ6の凸部をスライド部17の凹部に嵌合させることにより連結してもよい。さらに、スライド部17は、他方のワイヤ6が挿通されるワイヤ挿通穴19を有する。
保持部18は、図1および図3(c)に示すごとく格子状の薄板からなる。各格子には、移動用骨片4を保持するためのビスを通すビス穴20が設けられている。この保持部18は、移動用骨片4の形状や大きさに応じて切断され、その大きさが調節される。そして、図2に示すごとく所定の大きさに調節された保持部18に、移動用骨片4があてがわれてビス止めされることにより、移動用骨片4が保持される。また、スライド部17と保持部18とは、プレート3を包囲するようにビス止めされて一体となり、ブラケット5を構成している。
なお、ブラケット5を構成するスライド部17および保持部18は、共にプレート3と同様の材料により形成されている。また、プレート3と同様に創内に配置されるため、純チタンまたはチタン合金が形成材料として好ましい。
ワイヤ6は、図3(a)、(c)および図4に示すごとく、一端がブラケット5のスライド部17に連結されて、他端が操作部材7のロッド24の一端に連結されている。なお、ワイヤ6とロッド24とは、例えば、ワイヤ6の他端にオネジを形成し、ロッド24の一端にメネジを形成しておき、ワイヤ6のオネジをロッド24のメネジに螺合させることにより連結される。または、ワイヤ6の他端に凸部を形成し、ロッド24の一端に凹部を形成しておき、ワイヤ6の凸部をロッド24の凹部に嵌合させることにより連結される。
そして、ワイヤ6の一部は、ブラケット5のワイヤ挿通穴19を挿通するように、ブラケット5のスライド部17に内蔵され、他の部分は、プレート3のワイヤ溝15に収容されている。そして、ロッド24が操作されてワイヤ6が牽引されることにより、移動用骨片4を保持するブラケット5がプレート3上を移動する。なお、ワイヤ6は、純チタン(具体的には、JISH4670)、チタン合金(具体的には、JISH4657のTi−6Al−4V、ASTM F−136 Ti−6Al−4V ELI)、ステンレス鋼(具体的には、JISG4304のSUS304、SUS316など)などの金属材料の他に、ナイロン系樹脂やポリ乳酸系樹脂などの樹脂材料により形成することができる。また、プレート3およびブラケット5と同様に創内に配置されるため、純チタンまたはチタン合金が形成材料として好ましい。また、ワイヤ6は、単線であってもよく、撚り線であってもよい。
操作部材7は、図3(a)および図4に示すごとく、一端でワイヤ6と連結されるロッド24、ロッド24を内蔵する外套筒25、およびロッド24を外套筒25に対して変位させるダブルナット26を備える。
ロッド24の外周は、図3(b)に示すごとく、軸方向に互いに平行な2つの平坦面27、およびこれらの平坦面27を挟んで向かい合う2つのオネジ部28を有している。また、ロッド24の一端には、前記のとおりワイヤ6の他端が着脱自在に連結されている。
外套筒25は、図3(b)に示すごとく、ロッド24を軸方向に移動自在に保持する中空部29を有する略円筒状部材である。中空部29は、ロッド24の長軸を中心とした回転を防止するため、ロッド24の断面形状に応じた断面をなしている。また、外套筒25の一端面には、図1および図3(c)に示すごとく、ロッド24の一端に連結されたワイヤ6の出口穴30が設けられている。
さらに、外套筒25の一端側の側部には、図3(a)および図4に示すごとく、操作部材7をプレート3とともに骨片断端8へビス止めするためのビス穴31が設けられている。これにより、外套筒25は、プレート3に対する位置が固定される。なお、本実施例の外套筒25では、2つのビス穴31が、軸方向に並設されている。これにより一箇所でビス止めする場合に比べて、外套筒25およびプレート3を骨片断端8へ強固に固定することができる。
ダブルナット26は、メネジ穴を有する周知の2つの六角ナットを、ロッド24の他端側に螺合することにより構成されている。また、ダブルナット26は、メネジ穴がオネジ部28に螺合しながらロッド24に対して変位することにより、ワイヤ6によるブラケット5の移動量を調節する移動量調節手段である。
操作部材7を構成するロッド24、外套筒25、ダブルナット26は、プレート3、ブラケット5およびワイヤ6と同様の材料により形成することができる。なお、操作部材7は創外に配置される部分が多いため、プレート3、ブラケット5およびワイヤ6ほどに生体適合性を考慮する必要性はない。よって、コスト面からステンレス鋼を、形成材料として用いることが好ましい。
〔実施例1の取付方法〕
実施例1の仮骨延長再生装置1の骨欠損部2への取付方法を、図面に基づいて説明する。なお、実施例1では図5または図6に示すごとく、下顎骨に生じた腫瘍を切除することにより生じた骨欠損部2を、仮骨延長再生装置1により再生する例を取り上げて説明する。
まず、切開を行って下顎骨を露出させた後、腫瘍部を切除する。これにより、骨欠損部2が形成される。続いて、骨欠損部2を形成する2つの骨片断端8において、プレート3のビス止め位置および、移動用骨片4を作るための骨切り位置を決める。
そして、ビス穴16、31にビスを通して、各々の骨片断端8にプレート3の両端部および外套筒25の一端部をビス止めし、骨欠損部2をプレート3によって架橋する。なお、プレート3は、骨欠損前、すなわち腫瘍部切除前の下顎骨の形状に合わせて、予め3次元的に変形されている。
続いてブラケット5を、所定の構造になるようにプレート3へ取り付ける。すなわち、プレート3の内周側に保持部18を配置するとともに、プレート3を外周側からコの字状に包囲するようにスライド部17を配置する。そして、所定のビス穴20で、スライド部17と保持部18とがビス止めされることにより、ブラケット5がプレート3に取り付けられる。なお、保持部18は、移動用骨片4の大きさに応じて、予めその大きさが調節されている。
次に、ワイヤ6を、所定の構造となるようにプレート3、スライド部17およびロッド24に取り付ける。すなわち、一方のスライド部17に一方のワイヤ6の一端を連結するとともに、他方のスライド部17のワイヤ挿通穴19にワイヤ6を挿通する。そして、ワイヤ6の他端を外套筒25の出口穴30から中空部29に挿入するとともに、外套筒25の他端から突出させロッド24の一端に連結する。
次に、操作部材7を、所定の構造になるように構成する。すなわち、ロッド24の一端を外套筒25の他端から中空部29に挿入するとともに、オネジ部28の他端側にダブルナット26のメネジ穴を螺合させる。
以上により、図3(a)に示すごとく下顎骨への仮骨延長再生装置1の取付が完了する。
〔実施例1の操作方法〕
実施例1の仮骨延長再生装置1の操作方法、すなわち仮骨延長方法を、図面に基づいて説明する。
まず、プレート3をビス止めする前に決めた骨切り位置にて、骨切りを行い移動用骨片4を作る。そして、保持部18のビス穴20にビスを通して、移動用骨片4を保持部18へビス止めする。そして、図5に示すごとく、移動用骨片4を作る際の骨切りにより、新たに生じた骨片側切断面10と、断端側切断面11とを突き合わせた状態で、移動用骨片4を保持する。
次に、骨片側切断面10と断端側切断面11との間に仮骨9が形成されたら、仮骨9を延長する方向に、ブラケット5をプレート3の長軸方向に移動させる。
ブラケット5は、ワイヤ6により牽引されることにより移動する。ワイヤ6の牽引は、ダブルナット26を回転させてロッド24に対し相対的に移動させ、ロッド24を外套筒25から引き出すことにより行われる。すなわち、ダブルナット26を、外套筒25の他端面に押し当てる方向に回転させると、ロッド24が外套筒25から引き出される。これにより、ワイヤ6がロッド24に牽引されるとともに、ワイヤ6がブラケット5を牽引する。この結果、仮骨9が、ブラケット5の移動方向に延長される。なお、仮骨9の延長速度は1mm/日程度であり、これに応じてロッド24を外套筒25から引き出す。
そして、図6(a)に示すごとく、移動用骨片4において腫瘍部の切除時に生じた端面(以下、腫瘍部切除端面35と呼ぶ)同士が突き合うまで、2つのブラケット5を移動させる。この間、仮骨9は徐々に延長される。そして、図6(b)に示すごとく、2つの腫瘍部切除端面35同士の間に、別途、仮骨36が形成されたら、再度、切開して仮骨延長再生装置1を取り外す。
〔実施例1の効果〕
以上のように、骨欠損前の骨形状に合わせて3次元的に変形されたプレート3で骨欠損部2を架橋した後、各々の骨片断端8を切断して2つの移動用骨片4を作り、この移動用骨片4をブラケット5に保持させ、ワイヤ6を牽引して、骨片側切断面10と断端側切断面11との間に形成される仮骨9を延長していく。
これにより、ワイヤ6の一端にブラケット5を連結して、他端にワイヤ6を牽引して操作するための操作部材7を連結すれば、操作部材7によりワイヤ6を操作することで、3次元的に変形されたプレート3の形状に応じて、3次元的に仮骨9の形成および延長を行うことができる。
また、2つの移動用骨片4は、各々の骨片断端8を切断して作られ、仮骨9は、移動用骨片4を作る際に新たに生じた骨片側切断面10と断端側切断面11との間に形成される。これにより、他の正常部位へ外科的侵襲をすることなく移動用骨片4を作り、仮骨9を形成して延長することができる。さらに、再生すべき部位に最も近い部分の骨を用いて仮骨9を形成できるので、生体適合性の面においても好ましい。
また、ブラケット5はプレート3を包囲して移動できればよいので、プレート3およびブラケット5の大きさを、創内に配置できる程度まで抑えることができる。これにより、仮骨延長再生装置1の大部分を創内に配置した状態で、3次元的に仮骨9を延長することができる。また、仮骨延長再生装置1を創外に配置することによる日常生活での支障を抑えることができる。
また、本実施例のように下顎骨の骨欠損部2に、仮骨延長再生装置1を用いた場合には、創外に配置される操作部材7を耳の後下方に配置できるので、外観においても好ましい。
また、ブラケット5がプレート3を包囲して移動できるようにしたので、創内に配置される構造を、ブラケット5のスライド部17とプレート3との摺動部という簡単な構造にすることができる。
また、プレート3とブラケット5とは別体であるので、プレート3の取付とブラケット5の装着とを一期的に行うのと、プレート3の取付による再建のみを行い二期的にブラケット5の装着を行うのとを、選択することができる。これにより、病変の再発の可能性に応じて、ブラケット5の装着まで一期的に行うのと、ブラケット5の装着を二期的に行うのとを選択することができる。
また、仮骨延長再生装置1は、操作部材7でワイヤ6を牽引することによりブラケット5を移動させる。これにより、仮骨9の延長に伴い、ロッド24を外套筒25から引き抜くとともに、ワイヤ6を創外へ引き抜くことができる。このため、創内にワイヤ6を押し込んでいくよりも、人体への負担と感染の危険性を低減することができる。
また、仮骨延長再生装置1は、ブラケット5、ワイヤ6および操作部材7を2つ備えて、各々のブラケット5に移動用骨片4を保持させている。これにより、双方の骨片断端8から仮骨9を延長することができるので、一方の骨片断端8のみから仮骨9を延長する場合に比べて2倍の速さで、骨欠損部2を埋めることができる。
また、仮骨延長再生装置1において、一方のブラケット5は他方のブラケット5を移動させるワイヤ6が挿通されるワイヤ挿通穴19を有し、他方のブラケット5も一方のブラケット5を移動させるワイヤ6が挿通されるワイヤ挿通穴19を有する。これにより、ワイヤ6をプレート3の近傍から離れないように保持することができる。
また、プレート3は、ワイヤ6をプレート3の長軸方向に収容するワイヤ溝15を有する。これにより、ワイヤ6がプレート3から脱落するのを防止することができる。
また、操作部材7は、ダブルナット26のメネジ穴がオネジ部28に螺合しながらロッド24に対して変位することにより、ワイヤ6によるブラケット5の移動量を調節する。これにより、ロッド24を軸方向からずれることなく安定的に移動させることができる。このため、ブラケット5の牽引を安定して行うことができるので、仮骨9の延長を、プレート3の長軸方向に対してずれることなく行うことができる。
〔実施例2の構成〕
実施例2の仮骨延長再生装置1では、図7に示すように、操作部材7が、図7に示すようにロッド24の他端に螺合する袋ナット39を備える。また、ロッド24の外周をなす平坦面27には、ワイヤ6を収容するワイヤ溝40が形成されている。ワイヤ溝40は、一方の平坦面27の軸方向全域に設けられ、さらにロッド24の他端および他方の平坦面27の軸方向の一部に設けられている。そして、ワイヤ6は、ワイヤ溝40に収容されることにより、中空部29においてロッド24の軸方向に保持されている。さらに、ワイヤ6は、ロッド24の端部にて折れ曲げられ、袋ナット39により着脱可能に係止される。
〔実施例2の効果〕
実施例2の仮骨延長再生装置1では、ワイヤ6が、外套筒25の中空部29でロッド24の軸方向に保持されるとともに、外套筒25の他端側の外部に突き出たロッド24の端部に、袋ナット39により着脱可能に連結される。
これにより、ワイヤ6とロッド24との連結および分離を容易に行うことができるとともに、ロッド24や外套筒25の長さを短縮することができる。
すなわち、ワイヤ6とロッド24とが着脱不能であると、ロッド24および外套筒25は、仮骨9の全延長量に応じた長さが必要になる。しかし、ワイヤ6とロッド24とを着脱可能にすれば、仮骨9の延長に伴いロッド24が外套筒25の他端側の外部に突出し過ぎても、ワイヤ6とロッド24とを分離することにより、ワイヤ6を動かすことなくロッド24の突出量を調節することができる。この結果、ロッド24および外套筒25の長さを、仮骨の延長量に関わりなく決めることができる。
したがって、例えば図8に示すように、外套筒25の長さL1を、長さL1よりも短い長さL2に短縮することができる。
〔実施例3の構成〕
実施例3の仮骨延長再生装置1では、図9に示すように、外套筒25は、曲げ応力が加えられると、曲げ応力が集中する応力集中部42を具備する。応力集中部42は、出口穴30が存在する外套筒25の軸方向一端側で、プレート3の反対側外周を切り欠くことにより形成されている。そして、外套筒25は、図10に示すように、必要に応じて、ビス止めされている部分よりも軸方向他端側が、プレート3の反対側に折り曲げられる。この折り曲げ作業は、周知のベンダを用いて行うことができる。
〔実施例3の効果〕
このように実施例3の仮骨延長再生装置1によれば、外套筒25を応力集中部42で容易に折り曲げることができる。このため、操作部材7が人体の部位と立体的に干渉する場合などに、外套筒25を折り曲げて人体の部位との干渉を防止することができる。
〔実施例5の構成〕
実施例5の仮骨延長再生装置1では、操作部材7が、ブラケット5を牽引するワイヤ6の張力を測定する張力測定手段46を有する。張力測定手段46は、例えば図12に示すように周知のバネ秤である。張力測定手段46は、袋ナット39に形成された係止穴47に取り付けられる。そそして、張力測定手段46を用いて袋ナット39を牽引することにより、ワイヤ6の張力を測定する。
〔実施例5の効果〕
これにより、張力測定手段46を移動させてワイヤ6を牽引することにより、ワイヤ6の張力を測定しながら仮骨9を延長することができる。このため、ワイヤ6の張力に応じてブラケット5の移動量を調節することができるため、仮骨9を延長する際に、仮骨9に過度の負担をかけないようにすることができる。
〔変形例〕
本実施例の仮骨延長再生装置1は、ブラケット5、ワイヤ6および操作部材7を、各々2つ備えていたが1つでもよい。この場合には、一方の骨片断端8のみから仮骨9を延長することになるが、創内に配置する部材が少なくなり、人体への負担が軽減される。
本実施例では3次元的に変形可能なプレート3を用いて、骨欠損部2の架橋を行ったが、2次元的に架橋してもよい部位であれば2次元的にのみ変形可能なプレート3を用いてもよい。
本実施例では、ワイヤ6を牽引して創内から引き抜くようにして、仮骨9の延長を行ったが、ワイヤ6を押し込むようにして仮骨9を延長するようにしてもよい。
本実施例では、ブラケット5のワイヤ挿通穴19にワイヤ6を挿通させたが、ワイヤ挿通穴19を設けずに、ブラケット5とプレート3でワイヤ6を挟み込むようにして保持してもよい。この場合には、創内に配置される構造が、さらに簡単になる。
本実施例では、ワイヤ6をプレート3のワイヤ溝15に収容したが、ワイヤ溝15を設けずに、プレート3の一側面上に接触して配置させるようにしてもよい。この場合にも、創内に配置される構造が、さらに簡単になる。
本実施例では、仮骨延長再生装置1を下顎骨における骨欠損部2を仮骨9、36で埋める場合に適用したが、上顎骨など他の部位における骨欠損部を埋める場合に適用することもできる。
本実施例では、仮骨延長再生装置1を腫瘍の切除後の仮骨延長に適用する場合について説明したが、のう胞、外傷、顎変形症などの切除後の仮骨延長に適用することもできる。
本実施例では、プレート3の両端に操作部材7を配置したが、仮骨延長再生装置1を適用する部位に応じて、操作部材7を配置する位置を変更してもよい。例えば、プレート3の中央に操作部材7を配置してもよい。
本実施例では、移動用骨片4は骨片断端8を切断することにより作られたが、別の部位を切断して移動用骨片4として用いてもよい。この場合には、骨欠損部2を形成する骨片断端8の端面、すなわち、腫瘍部切除端面35と、移動用骨片4との間に仮骨9が形成される。
また、骨片断端8と移動用骨片4とを突き合わせた部分に、仮骨9の形成を促進させる骨誘導因子や骨芽細胞を、注入しながら仮骨9を延長させてもよい。この場合には、より早期に骨欠損部2を仮骨9により埋めることができる。
本実施例では、オネジ部28は、ロッド24の軸方向全体に、すなわちロッド24の一端から他端まで全てに設けられていたが、他端側にのみ設けられていてもよい。
本実施例の応力集中部42は、外套筒25の軸方向一端側に形成された切欠き部であったが、このような切欠き部に限定されない。例えば、他の部分の材料よりも強度が小さい材料により形成された材料不連続部であってもよいし、他の部分よりも肉厚が薄い薄肉部であってもよい。
本実施例では、張力測定手段46が袋ナット39に形成された係止穴47に取り付けられていたが、袋ナット39をロッド24の端部から取り外してワイヤ6とロッド24とを分離した後、ワイヤ6の他端側に張力測定手段46を取り付け、ワイヤ6の張力を直接的に測定してもよい。また、ダブルナット26と袋ナット39との間に別部材を介挿し、この別部材に張力測定手段46を取り付け、張力測定手段46を用いてこの別部材を牽引することにより、ワイヤ6の張力を測定してもよい。
Claims (11)
- 骨欠損部を架橋する棒状部材であって、骨欠損前の骨形状に合わせて3次元的に変形可能なプレートと、
このプレートを包囲しながら移動するスライド部を有すると共に、前記骨欠損部を形成する骨片断端の端面との間に、仮骨を形成しつつ移動される移動用骨片を、前記プレートの長軸方向に移動自在に保持するブラケットと、
このブラケットと連結して、前記仮骨を延長するために、前記ブラケットを前記プレートの長軸方向に移動させるワイヤと
を備えた仮骨延長再生装置。 - 骨欠損部を架橋する棒状部材であって、骨欠損前の骨形状に合わせて3次元的に変形可能なプレートと、
このプレートを包囲しながら移動するスライド部を有すると共に、前記骨欠損部を形成する骨片断端を切断して作られた移動用骨片を、前記プレートの長軸方向に移動自在に保持するブラケットと、
このブラケットと連結して、前記移動用骨片を作る際に新たに生じた骨片断端側の切断面と移動用骨片側の切断面との間に形成される仮骨を延長するために、前記ブラケットを前記プレートの長軸方向に移動させるワイヤと
を備えた仮骨延長再生装置。 - 請求の範囲1または請求の範囲2に記載の仮骨延長再生装置において、
前記ワイヤを牽引する牽引機構を備えることを特徴とする仮骨延長再生装置。 - 請求の範囲1または請求の範囲2に記載の仮骨延長再生装置において、
前記ブラケットおよび前記ワイヤを2つ備えて、
各々の前記ブラケットに前記移動用骨片を保持させて、2つの前記骨片断端で仮骨を延長することができることを特徴とする仮骨延長再生装置。 - 請求の範囲4に記載の仮骨延長再生装置において、
一方のブラケットは、他方のブラケットを移動させる前記ワイヤが挿通されるワイヤ挿通穴を有し、
前記他方のブラケットは、前記一方のブラケットを移動させる前記ワイヤが挿通されるワイヤ挿通穴を有することを特徴とする仮骨延長再生装置。 - 請求の範囲1または請求の範囲2に記載の仮骨延長再生装置において、
前記プレートは、前記ワイヤを前記プレートの長軸方向に収容するワイヤ溝を有することを特徴とする仮骨延長再生装置。 - 請求の範囲3に記載の仮骨延長再生装置において、
前記牽引機構は、
前記ワイヤと連結されるロッド、
前記プレートに対する位置が固定され、前記ロッドを軸方向に移動自在に保持する略円筒状の外套筒を有し、
前記外套筒は、曲げ応力が加えられると、この曲げ応力が集中する応力集中部を具備することを特徴とする仮骨延長再生装置。 - 請求の範囲3に記載の仮骨延長再生装置において、
前記牽引機構は、
前記ワイヤと連結されるロッド、
前記プレートに対する位置が固定され、前記ロッドを軸方向に移動自在に保持する略円筒状の外套筒を有し、
前記ロッドは、軸方向の長さを示す目盛りを具備することを特徴とする仮骨延長再生装置。 - 請求の範囲3に記載の仮骨延長再生装置において、
前記牽引機構は、
前記ワイヤと連結されるロッド、
前記プレートに対する位置が固定され、前記ロッドを軸方向に移動自在に保持する略円筒状の外套筒、
前記ブラケットを牽引する前記ワイヤの張力を測定する張力測定手段を有することを特徴とする仮骨延長再生装置。 - 請求の範囲3に記載の仮骨延長再生装置において、
前記牽引機構は、
前記ワイヤと連結されるとともに、外周にオネジ部が形成されたロッド、
前記プレートに対する位置が固定され、前記ロッドを軸方向に移動自在に保持する略円筒状の外套筒、
前記オネジ部と螺合するメネジ穴を具備し、このメネジ穴が前記オネジ部に螺合しながらロッドに対して変位することにより、前記ワイヤによる前記ブラケットの移動量を調節する移動量調節手段
を有することを特徴とする仮骨延長再生装置。 - 請求の範囲10に記載の仮骨延長再生装置において、
前記ワイヤは、前記外套筒の内周壁と前記ロッドの外周壁とで形成される中空部に保持されるとともに、前記ロッドの端部にて着脱可能に係止されることを特徴とする仮骨延長再生装置。
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