JP4447255B2 - 環状脂肪族オキシムの製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状脂肪族第一級アミンを液相中で酸化させて、対応する環状脂肪族オキシム、特に、シクロヘキサノンオキシムを高選択率、高活性、かつ、高生産性で製造する方法に関するものである。
得られる環状脂肪族オキシムは、樹脂添加剤、酸化防止剤等として有用な化合物であり、その他にも、医薬、農薬などの中間原料として有用である。特に、環状脂肪族第一級アミンがシクロヘキシルアミンである場合には、対応する環状脂肪族オキシムとしてシクロヘキサノンオキシムが得られる。シクロヘキサノンオキシムは、ナイロン−6の原料であるε−カプロラクタムの中間体として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
環状脂肪族オキシムは、樹脂添加剤、酸化防止剤等として有用な化合物であり、その他にも、医薬、農薬などの中間原料として有用である。特に、環状脂肪族第一級アミンがシクロヘキシルアミンである場合には、対応する環状脂肪族オキシムとしてシクロヘキサノンオキシムが得られる。シクロヘキサノンオキシムは、ナイロン−6の原料であるε−カプロラクタムの中間体として有用な化合物である。
【0003】
シクロヘキサノンオキシムの従来公知の製造方法としては、例えば、酸化剤として過酸化水素を用いる方法は、(1)Mo、W及びUからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒の存在下にて行う方法([特許文献1]米国特許第2,706,204号)、(2)チタンシリカライト、或いはバナジウムシリカライトを触媒として用いる方法([非特許文献1]TETRAHEDRON,51(41),11305,ELSEVIERSCIENCE PRESS、オランダ国、1995、及び[非特許文献2]CATAL.LETT.,28(2−4),263,KLUWER PUBLISHERS、1994、オランダ国)、酸化剤に有機ヒドロペルオキシドを用いる方法としては、(3)Ti、V、Cr、Se、Zr、Nb、Mo、Te、Ta、W、Re、及びUからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒の存在下にて行う方法([特許文献2]米国特許第3,960,954号)等が挙げられる。
【0004】
また、酸化剤に分子状酸素を用いる方法としては、(4)SiO2ゲル、γ−Al2O3を含み、所望によりWO3と組み合わせた固体触媒の存在下にて気相中で行う方法([特許文献3]米国特許第4,337,358号、[特許文献4]同第4,504,681号)、(5)γ−Al2O3、SiO2又はハイドロタルサイトと共に酸化タングステンを含有する固体触媒の存在下にて気相中で行う方法([非特許文献3]JOURNAL OF MOLECULAR CATALYSIS A ;CHEMICAL 160,393−402,2000及び、[非特許文献4]PETROLEUM AND COAL 41,177―180,1999)、(6)第三級アルコールの存在下に、好ましくはアンモニアガスを存在させ、タングステン酸、リンタングステン酸、モリブデン酸、セレン酸、亜セレン酸等の触媒を用いて液相で反応させる方法([特許文献5]特公昭47−25324号公報に記載の方法)、(7)周期律表の第4族(Ti、Zr及びHf)に属する少なくとも1種の元素の化合物の存在下にて液相中で行う方法([特許文献6]日本国特開平2−295956号公報([特許文献7]EP395046に対応))等が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第2,706,204号明細書
【非特許文献1】
TETRAHEDRON,51(41),11305,ELSEVIERSCIENCE PRESS,オランダ国、1995
【非特許文献2】
CATAL.LETT.,28(2〜4),263,KLUWER PUBLISHERS,1994
【特許文献2】
米国特許3,960,954号明細書
【特許文献3】
米国特許4,337,358号明細書
【特許文献4】
米国特許第4,504,681号
【非特許文献3】
JOURNAL OF MOLECULAR CATALYSIS A;CHEMICAL 160,393〜402、2000
【非特許文献4】
PETROLEUM AND COAL 41,177〜180,1999
【特許文献5】
特公昭47−25324号公報
【特許文献6】
特開平02−295956号公報
【特許文献7】
欧州特許395046号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの公知の方法においては、例えば、上記(1)−(3)の方法では、酸化剤として高価な過酸化水素又は有機ヒドロペルオキシドを用いる問題点があり、さらに工業的に実施する際には、酸化剤の取り扱いに関わる既知の操作上の危険性を伴う。また、有機ヒドロペルオキシドを用いる場合には、ヒドロペルオキシドの還元に由来する生成物が反応液に含まれる為、分離及び精製操作が煩雑になる等の問題がある。
上記の問題を解決する為に、空気又は酸素等の分子状酸素を酸化剤として用いる上記(4)−(7)の方法が提案されている。
【0007】
(4)、(5)の方法は、反応温度120−250℃の比較的過酷な気相の操作条件を用いている。本発明者等の検討によれば、反応温度160℃以上の気相の操作条件においては、触媒の表面にタール状副生成物及び高沸点の有機炭素質が蓄積し、触媒が容易に失活する、という問題点を有していることが分かった。また、生成するシクロヘキサノンオキシムの選択率は60モル%程度と低く、反応空間当たりの反応量、すなわち生産性が低いという問題も有している。
環状脂肪族第一級アミンの酸化反応は発熱反応であると同時に、目的生成物であるオキシム類は熱的に不安定であることが知られている。本酸化反応を工業的に実施する上では、反応除熱が容易な液相反応は気相反応に対して有利であり、かつ、生成オキシムの逐次分解を抑制しうる温和な低温条件において液相下で反応させる製造方法が望まれていた。
【0008】
(6)、(7)の方法は、液相条件にて反応温度50−150℃の比較的温和な条件で反応を実施している。(6)の方法は、反応溶媒としてt−ブタノール、触媒としてリンタングステン酸を用いる反応例が示されている。しかしながら、シクロヘキサノンオキシムの収率は数モル%程度と低い。(7)の方法は、触媒としてチタン化合物を用い、反応溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、t−ブタノール、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トリエチルアミン、水を用いる反応例が示されている。しかしながら、生成するオキシムの選択率は約30−50モル%と低く、また生産性も低いという問題点を有している。
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決し、高選択率、高転化率、かつ、高生産性で環状脂肪族第一級アミンから環状脂肪族オキシムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、環状脂肪族第一級アミンを、液相中で分子状酸素により反応させて環状脂肪族オキシムを製造する際に、フェノール系連鎖移動剤、又はフェノール系連鎖移動剤及び種々の金属、金属酸化物、金属塩、或いは有機金属化合物からなる触媒の存在下で反応させることを特徴とする環状脂肪族オキシムの製造方法である。
本発明によれば、環状脂肪族オキシムを高選択率、高活性、かつ、高生産性で得ることができ、また、酸化剤として分子状酸素を用いることで過酸化物の取扱いに関わる操作上の危険性を回避でき、比較的簡単な操作で環状脂肪族オキシムを工業的に製造することが可能になる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、環状脂肪族第一級アミンを酸化させて環状脂肪族オキシムを製造する方法である。本発明で用いる環状脂肪族第一級アミンとしては、飽和の環状脂肪族第一級アミンが好ましい。例えば、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロドデカニルアミン等を用いることができる。シクロヘキシルアミンからはシクロヘキサノンオキシム、シクロオクチルアミンからはシクロオクタノンオキシム、シクロペンチルアミンからはシクロペンタノンオキシム、シクロドデカニルアミンからはシクロドデカノンオキシムを製造することができる。また、環状脂肪族残基が反応条件下で不活性な置換基、例えば、アルキル基で置換された構造の環状脂肪族第一級アミン、例えば、メチルシクロヘキシルアミン等を用いることもできる。
【0011】
本発明で用いる環状脂肪族第一級アミンとしては、シクロヘキシルアミンが最も好ましい。シクロヘキシルアミンの製造方法としては、例えば、シクロヘキセンとアンモニアによる直接アミノ化反応(特開昭57−4948号公報、特開昭64−75453号公報、特開平9−194438号公報、特開平10−72409号公報、特開平10−291968号公報等に記載の方法)にて製造されたもの、シクロヘキサノールとアンモニアによるアミノ化反応(例えば特公昭41−7575号公報、特公昭51−41627号公報、特公昭51−32601号公報、特開平6−1758号公報等に記載の方法)にて製造されたもの、又はアニリン、ニトロベンゼン、ニトロシクロヘキサン等の水素化反応による公知の方法で製造されたものを用いることができる。
【0012】
シクロヘキシルアミンの純度としては、例えば、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ジシクロヘキシルアミン、ニトロシクロヘキサン、N−シクロヘキシリデン−シクロヘキシルアミン等、シクロヘキシルアミンの各々の製造方法に由来する微量の有機化合物、又は微量の水を含んでいてもよい。環状脂肪族第一級アミンの純度は、通常、95重量%以上、好ましくは98重量%以上である。本発明においては、フェノール系連鎖移動剤またはフェノール系連鎖移動剤及び種々の金属、金属酸化物、金属塩、或いは有機金属化合物からなる触媒の存在下で液相酸化を行わせる。
本発明のようなフェノール系連鎖移動剤の存在下で液相酸化を行わせることにより、環状脂肪族第一級アミンの部分酸化反応の選択率及び活性に極めて有利な反応系とすることができる。
【0013】
本発明でいう連鎖移動剤とは、生長ラジカルとの連鎖移動反応によって安定ラジカルが生成可能なものをいい、用いるフェノール系連鎖移動剤としては、公知のフェノール系化合物が使用できる。例えば、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ−t−ブチルハイドロキノン、カテコール、p−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、
【0014】
3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5・5)ウンデカン、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、
【0015】
2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス((オクチルチオ)メチル)−o−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
【0016】
フェノール系連鎖移動剤の市販品としては、イルガノックス1010、1035、1076、1135、1141、1330、245(チバスペシャリティケミカルズ社製)、スミライザーBHT、BP−76、MDP−S、S、BBM−S、WX−R、BP−101、GA−80(住友化学社製)、アデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−75、AO−80、AO−330(旭電化社製)等が入手できる。
【0017】
本発明で用いるフェノール系連鎖移動剤としては、特に、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、イルガノックス1010(ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])が好ましい。
フェノール系連鎖移動剤の使用量としては、環状脂肪族第一級アミン1モルに対し、通常、0.001〜1モル、好ましくは0.005〜0.5モルの範囲である。フェノール系連鎖移動剤は、通常、原料である環状脂肪族第一級アミンが含まれる反応系中に溶解させ、一括添加、分割または連続的に供給する。
【0018】
本発明における触媒としては、種々の金属、金属酸化物、金属塩、或いは有機金属化合物が使用できるが、1991年改定版周期律表第4、5、6及び7族に属する元素、アルミニウム、シリコン及びセレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む触媒を用いることが好ましい。本発明で用いられる周期律表第4、5、6及び7族に属する元素としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。触媒は、1種類の金属単独、他の金属を含むもの、或いは金属酸化物、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、錯体、およびヘテロポリ酸又はその塩等の各種化合物、さらにこれらが適当な触媒担体に担持されたものであってもよい。触媒担体としては、活性炭、SiO2、Al2O3、SiO2/Al2O3、TiO2、ZrO2、ZnO、硫酸バリウム、炭酸カリウム、ケイソウ土、ゼオライト等を用いることができる。
【0019】
本発明の触媒を調製する方法としては、公知の触媒調製法、例えば、吸着法、含浸法、共沈法、ゾル−ゲル法等を用いて調製することができる。
本発明における液相酸化反応は、無溶媒または溶媒中で行われる。溶媒を用いる場合、溶媒種としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等の炭素数1−10の第一級、第二級又は第三級アルコール;アセトニトリル、ベンゾニトリル等の二トリル化合物;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数6−10の脂肪族、脂環式炭化水素;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;トリエチルアミン;ジメトキシエタン;ジオキサン;ジグリム;水等を用いることができる。上記いずれの溶媒とも、単独もしくは2種以上からなる混合物としても使用することができる。溶媒の存在下にて操作する場合の環状脂肪族第一級アミンの濃度は、溶媒と環状脂肪族第一級アミンとの合計重量に対して、通常、1〜95重量%、好ましくは、5〜70重量%である。
【0020】
本発明における環状脂肪族第一級アミンの酸化反応は、液相中で固定床、又は懸濁床で連続式、又はバッチ式に行うことができる。
本発明の方法では、環状脂肪族アミンを触媒の存在下、分子状酸素と反応させる方法が用いられる。分子状酸素は、通常、空気、又は窒素及びヘリウムなどの不活性気体との混合物の形態で用いられ、酸素濃度としては、2〜23体積%の濃度範囲で用いることが好ましく、より好ましくは3〜11体積%の範囲で用いることができるが、酸素濃度は反応系内が爆発組成をとらない範囲が好ましい。
【0021】
本発明の方法は、環状脂肪族第一級アミンの酸化反応を液相中で行うことを特徴とする。したがって、気体として反応系内に導入される分子状酸素は反応条件下において、任意の濃度にて触媒が存在している液相中に溶解していることが必要である。例えば、減圧又は常圧下で反応基質、生成物又は溶媒の混合液が還流状態となる温度条件で酸素含有気体を導入した際は、液相中に溶解する酸素量は極めて少ないため、好ましくない。酸素を液相中に任意の濃度で溶解せしめる方法としては、常圧を越えた加圧条件下において、酸素含有気体を液相と接触させる方法が好ましい。
【0022】
この際、反応系内の全圧としては、例えば、酸素と不活性気体の混合気体を用いて回分反応を実施する際には、用いる触媒及び反応条件により、所望とする基質アミンの反応量、つまり、反応に要する酸素量を考慮した上で、任意の酸素濃度を有する不活性気体との混合気体を所望の全圧にて供給し反応させればよい。反応系内の全圧は、通常、0.1〜20MPa、好ましくは1〜10MPaの範囲である。
【0023】
分子状酸素含有気体の供給方法としては、例えば、回分式の混合撹拌槽型反応器を用いる場合には、分子状酸素含有気体を反応系内に形成される液相部に直接吹き込んでもよいし、液相部と接触して存在する気相部に導入してもよい。
反応によって消費される分子状酸素の補給は、任意の気相酸素分圧を保持させるように連続的又は断続的に、純酸素、空気又は希釈酸素ガスを反応系に供給することができる。この他にも、例えば、回分式反応を実施する際には、目的とする基質アミンの反応量に対して、予め、十分な酸素量を保持する酸素含有気体を導入した後、消費酸素の補給を行うことなく目的の反応率に達するまで任意の時間、反応を継続させることもできる。
【0024】
本発明における反応温度は、通常50−150℃が好ましく、より好ましくは60−145℃、最も好ましくは80−140℃の範囲で行われる。150℃を越えて高温になると生成するオキシムの逐次分解又は逐次酸化反応が進行し、高沸点状の副生物が増加することでオキシムへの反応選択性が低下する傾向があり、50℃未満の低温では、反応速度が低下する傾向がある。
反応時間としては、目的とする環状脂肪族オキシムの選択率や収率の目標値を定め、適宜選択すればよく、通常、数秒ないし数時間である。
【0025】
触媒の量に関しては、用いる触媒種によっても異なり、所望の触媒効果が得られる量であればよく、通常、環状脂肪族第一級アミンに対して重量比で0.0001/1〜100/1、好ましくは0.001/1〜50/1の範囲である。
本発明における酸化反応においては、触媒種や反応条件により異なるが、環状脂肪族第一級アミンとしてシクロヘキシルアミンを用いた場合、通常、目的生成物であるシクロヘキサノンオキシムの他に副生物として、少量のシクロヘキサノン、N−シクロヘキシリデンシクロヘキシルアミン、ニトロシクロヘキサン等が生成する。生成したシクロヘキサノンオキシムは、触媒を分離した反応器中の反応混合物から慣用の手段、例えば、蒸留又は抽出などによって回収され、必要によりさらなる分離手段により所望の純度にすることができる。通常、未反応シクロヘキシルアミンは、反応容器に再循環するのが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、実施例及び比較例によって本発明を説明する。
【0027】
【実施例1】
(触媒の調製)
市販のγ−アルミナ(比表面積:282m2/g)を120℃にて一夜乾燥し、担体として用いた。パラタングステン酸アンモニウム5水和物1.4gを60gの水に溶解した後、乾燥したγ−アルミナ10gを添加して懸濁溶液とした。この懸濁溶液をガラスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに設置し、常圧下に温度90℃のオイルバスに浸して1.5時間ゆっくり攪拌混合してスラリーを得た。次いで、スラリーを濃縮乾固処理し、得られた粉体をガラス製の管状炉に入れ、常圧下、空気を供給しながら500℃にて4時間焼成し、酸化タングステンがアルミナに担持されている固体粉末を得た。得られた固体粉末のタングステン含有量は約9重量%であった。
【0028】
(シクロヘキシルアミンの酸化反応)
次に、上記で得た触媒0.1g、シクロヘキシルアミン3.0g、フェノール系連鎖移動剤としてハイドロキノン0.03gをマグネチックスターラーを備えたSUS316製の高圧オートクレーブ式反応器(総容量100ml)に仕込み、オートクレーブを閉じて、系内を窒素ガスで置換した後、7%の酸素を含有する窒素の混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を5MPaまで昇圧した。次いで、オイルバスに反応器を固定し、撹拌下に反応温度を120℃として2時間反応させた。
【0029】
冷却後、残留圧を除いて、オートクレーブを開放し、内容物をエタノールで希釈した後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーによって分析した。
シクロヘキシルアミンの転化率は32.0モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は80.4モル%であった。
これは、従来の技術のところに記載した(4)−(7)に比べて、シクロヘキサノンオキシムの選択率及び活性において大きく優れていることは明白である。また、本実施例における反応空間当たりのシクロヘキサノンオキシムの生成量(生産性)は、0.13kg/L−反応空間体積・時間となり、従来技術と比較して、生産性が大幅に向上していることが明白である。
【0030】
【実施例2】
フェノール系連鎖移動剤として、カテコール0.03gを用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は29.7モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は80.5モル%であった。
【0031】
【実施例3】
フェノール系連鎖移動剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.03gを用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は28.3モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は79.8モル%であった。
【0032】
【実施例4】
フェノール系連鎖移動剤として、チバスペシャルティケミカルズ社製のイルガノックス1010(ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])0.03gを用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は32.7モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は82.0モル%であった。
【0033】
【実施例5】
反応温度を100℃とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は13.0モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は82.6モル%であった。
【0034】
【実施例6】
触媒を用いなかった以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は11.5モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は25.4モル%であった。
【0035】
【実施例7】
溶媒として、t−ブタノール12gを用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は8.3モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は75.1モル%であった。
【0036】
【実施例8】
市販のシリカ(比表面積:300m2/g)を120℃にて一夜真空乾燥し、担体として用いた。メタタングステン酸アンモニウム1.3gを50gの水に溶解した後、乾燥したシリカ10gを添加して懸濁溶液とした。この懸濁溶液を用いて、実施例1と同様に固体粉末を調製し、酸化タングステンがシリカに担持されている固体粉末を得た。こうして得られた固体粉末0.1gを触媒として用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は27.4モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は79.4モル%であった
【0037】
【実施例9】
市販のジルコニウムテトラノルマルプロポキシドとチタニウムテトライソプロポキシドを、これらアルコキシドの合計量に対して約2.5倍モル量のヘキシレングリコールに溶解し、ガラス反応器中で攪拌混合しながら、120℃のオイルバス中で3時間処理した。次いでオイルバス温度を90℃とし、攪拌下に、エタノール水溶液を、エタノール水溶液中の水の量がアルコキシドの合計量に対して4倍モルとなる量を滴下して加水分解を行い、ゲル状の生成物を得た。
【0038】
生成したゲルを一夜熟成させた後、130℃で真空乾燥させ、乾燥したゲルをガラス製管状炉に入れ、常圧下で空気を供給しながら550℃にて5時間焼成処理を実施し、白色のジルコニア−チタニア複合酸化物を得た。得られた複合酸化物のZr/Ti原子比は約1.0であった。こうして得られたジルコニア−チタニア複合酸化物を担体として用いた以外は、実施例1と同様にして触媒を調製し、酸化タングステンとジルコニア−チタニア複合酸化物を含有する固体粉末を得た。得られた固体粉末のW/(Ti+Zr)原子比は約0.08であった。こうして得られた固体粉末0.1gを触媒として用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は27.5モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は78.7モル%であった
【0039】
【実施例10】
市販のγ−アルミナ(比表面積:282m2/g)を120℃にて一夜真空乾燥した。蓚酸水素ニオブ10.7gを45g蓚酸水溶液に溶解した後、乾燥したγ−アルミナ10gを滴下して懸濁溶液とした。この懸濁溶液をガラスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに設置し、常圧下に温度90℃のオイルバスに浸して1.5時間ゆっくり攪拌混合させてスラリーを得た。次いで得られたスラリーを濃縮乾固処理し、得られた凝集乾燥物を更に120℃にて一夜乾燥させた。次いで、得られた粉体をガラス製の管状炉に入れ、常圧下、空気を供給しながら500℃にて4時間焼成処理を実施し、酸化ニオブがアルミナに担持されてなる固体粉末を得た。得られた固体粉末のニオブ含有量は約9重量%であった。こうして得られた固体粉末0.1gを触媒として用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は29.1モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は78.5モル%であった
【0040】
【実施例11】
市販のタンタルペンタエトキシド0.52gと市販のチタニウムテトライソプロポキシド10.5gをガラスビーカーに入れて混合し、均一な混合アルコキシド溶液を調製した。次いで、脱イオン水13.8gをガラス棒で攪拌しながら少量ずつ滴下してゲル状の生成物を得た。ゲル状生成物を室温で約4時間風乾した後、さらに120℃にて一夜真空乾燥させた。次いで、乾燥したゲルをガラス製管状炉に入れ、常圧下、空気気流下で400℃にて4時間焼成処理を実施し、酸化ニオブとチタニアを含有する固体粉末を得た。得られた固体粉末のNb/Ti原子比は約0.035であった。こうして得られた固体粉末0.1gを触媒として用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は24.3モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は75.1モル%であった。
【0041】
【実施例12】
市販のチタニウムテトライソプロポキシド10.5gをガラスビーカーに入れ、ガラス棒で攪拌しながら、脱イオン水13.8gを少量づつ滴下してゲル状の生成物を得た。生成したゲルを一夜熟成させた後、130℃で真空乾燥させ、乾燥したゲルをガラス製管状炉に入れ、減圧下で空気を供給しながら550℃にて5時間焼成処理を実施し、白色のチタニア粉末を得た。こうして得られたチタニア粉末0.1gを触媒として用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は31.2モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は80.1モル%であった。
【0042】
【比較例1】
フェノール系連鎖移動剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は21.8モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は78.1モル%であった。反応空間当たりのシクロヘキサノンオキシムの生産量(生産性)は、0.08kg/L−反応空間体積・時間であった。
【0043】
【比較例2】
反応温度を100℃とした以外は、比較例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は3.4モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は70.8モル%であった。
【0044】
【比較例3】
フェノール系連鎖移動剤を用いず、溶媒としてt−ブタノール12gを用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は3.1モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は52.7モル%であった。
【0045】
【比較例3】
触媒及びラジカル開始剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、シクロヘキシルアミンの転化率は0.7モル%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は14.4モル%であった。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、環状脂肪族第一級アミンを、フェノール系連鎖移動剤又はフェノール系連鎖移動剤及び触媒の存在下、分子状酸素により液相中で反応させて環状脂肪族オキシムを製造するに際し、温和な温度条件にてオキシムを高選択率、高活性、かつ、高生産性で得ることができる。加えて、酸化剤として、分子状酸素を用いることで、過酸化物の取り扱いに関わる操作上の複雑さを回避でき、比較的簡単な操作で環状脂環族オキシムを工業的に製造することが可能である。
Claims (6)
- 環状脂肪族第一級アミンを、フェノール系連鎖移動剤の存在下、液相中で分子状酸素により酸化することを特徴とする環状脂肪族オキシムの製法。
- フェノール系連鎖移動剤が、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の方法。
- 酸化反応を触媒の存在下に行わせることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 触媒が、周期律表第4、5、6及び7族に属する元素、アルミニウム、シリコン及びセレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項3記載の方法。
- 周期律表第4、5、6及び7族に属する元素が、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項4記載の方法。
- 環状脂肪族第一級アミンが、シクロヘキシルアミンである請求項1記載の方法。
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