JP4445110B2 - 土留壁貫通部の構造及びその形成方法 - Google Patents

土留壁貫通部の構造及びその形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土留壁貫通部の構造及びその形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
立坑や地下タンクを構築する地下工事においては、土留め壁背面に、排水、換気用配管、ケーブル等の利用目的で、縦管が設けられるのが普通である。その縦管bから立坑やタンク内面への枝管を施工する場合、従来は、図6に示すように、土留め壁1の鉄筋篭g、hにスリーブ管eを取付け埋設しておく。次に、スリーブ管eと縦管bを連結し枝管を挿入するために、まず立坑側のスリーブの鉄板f1を切断した後に、縦管側の鉄板f2を削孔する。続いて、スリーブ管e先端と縦管bの間のコンクリートをダイアモンド・コア・ボーリングマシンで切削して施工するのが一般的であった。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の施工方法では、ダイアモンド・コア・ボーリングマシンでスリーブ管e先端と縦管bの間を削孔する際に、縦管側の鉄板f2を削孔しなければならず、鉄板の口切りが難しく、多くの時間と労力がかかると共にダイアモンドビットの消耗が激しくコストが嵩むという問題があった。また、鉄板への口切りのため、ダイアモンドビットの先端が滑り易く、施工精度が低かったという問題が残った。
【0004】
【本発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、施工性の向上及び施工期間の短縮が可能な土留壁貫通部の構造及びその形成方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の土留壁貫通部の構造は、土留壁に埋設して貫通部を形成する中空筒体と、土留壁を構築する際に、この中空筒体の一端を閉塞した金属製の蓋体と、他端を閉塞したコンクリート製の蓋体と、前記中空筒体と蓋体に包囲される空間に充填した粒状体と、上記土留壁背面に設置した配管と、中空筒体の蓋体を切除して粒状体を除去した後に、上記配管と貫通させた貫通部と、上記貫通部に挿入した枝管、によって構成したことを特徴としたものである。
【0006】
さらに請求項2に係る土留壁貫通部の構造は、請求項1において、土留壁を構築する際に、金属製の蓋体およびコンクリート製の蓋体に代えて、中空筒体の両端をコンクリート製の蓋体により閉塞した。
【0007】
請求項3に係る土留壁貫通部の形成方法は、土留壁を構築する際に、貫通部の設置位置に中空筒体を取付け、一方、この中空筒体の一端は、金属製の蓋体で、他端はコンクリート製の蓋体で閉塞し、その内部には粒状体を充填するように形成し、次に上記土留壁を構築し、土留壁の内部を掘削して、中空筒体の金属製の蓋体を露出させた後に、金属製の蓋体を切除して粒状体を除去し、コンクリート製の蓋体を削孔して開口させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る土留壁貫通部の形成方法は、土留壁を構築する際に、貫通部の設置位置に中空筒体を取付け、一方、この中空筒体の一端は、金属製の蓋体で、他端はコンクリート製の蓋体で閉塞し、その内部には粒状体を充填するように形成し、次に上記土留壁を構築し、上記土留壁背面に配管を設置し、次に土留壁の内部を掘削して、中空筒体の金属製の蓋体を露出させた後に、金属製の蓋体を切除して粒状体を除去し、コンクリート製の蓋体を削孔して上記中空筒体と配管を貫通させることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項5に係る土留壁貫通部の形成方法は、土留壁を構築する際に、貫通部の設置位置に中空筒体を取付け、一方、この中空筒体の両端は、コンクリート製の蓋体で閉塞し、その内部には粒状体を充填するように形成し、次に上記土留壁を構築し、上記土留壁背面に配管を設置し、次に土留壁の内部を掘削して、中空筒体の蓋体を露出させて切除すると共に、粒状体を除去し、上記中空筒体と配管を貫通させることを特徴とする。
【0010】
【本発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、本発明の土留壁貫通部の構造及びその形成方法の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
<イ>土留壁貫通部の構造
図1は、本発明の土留壁貫通部2の構造の一実施形態を示すもので、該貫通部2を立坑aの土留壁1内に埋設した場合を例示する概念図である。図2は、貫通部2の配置部の拡大図を示す縦断面図である。
前記貫通部2は、中空筒体21と、この中空筒体21の両端部を閉塞する蓋体22、24と、その内部に充填する粒状体23によって構成される。以下、各部について詳述する。
【0012】
<ロ>中空筒体
土留壁1は、連続地中壁工法あるいはケーソン工法等の公知の方法により構築する。この際に、図1に示すように、土留壁1の躯体内に配筋する鉄筋籠や鉄骨に、中空円筒体21を取り付けて、貫通部2を形成する。
上記中空筒体21は、鋼板等の金属で作製し、形状は円形、矩形等特に限定はないが、図2及び3に示すように、その幅は土留壁1の厚さなどより変わるが、土留壁面の厚さと同一ないし若干短い寸法とする。また、中空筒体21の開放面積は、この中に挿通する配管を保護する枝管cの種類、直径等によって予め決めておく。
【0013】
<ハ>蓋体
上記中空筒体の一端(立坑a側)は、金属製の蓋体22で、他端(縦管b側)は、コンクリート製の蓋体24で閉塞してある。
蓋体22は鉄、鉄合金等の金属より板状に成形したものであって、その外径は例えば、中空筒体1の内径とほぼ同径に形成されている。そして、中空筒体1の開口端部の内面には、蓋体22を挿入して溶接等で固定する。
一方、蓋体24は、コンクリート板等のダイアモンドコアマシンにより切削可能な材料で作製し、中空筒体1の開口面積とほぼ同一寸法の板体を使用する(図3)。
なお、上記中空筒体2の両端部は、全てコンクリート製の蓋体24で閉塞しても良い。
【0014】
<ニ>粒状体
中空筒体2と、蓋体22、24に包囲される空間には、砂、砂利、砂礫またはこれらの混合材料等の粒状体23を充填する。
一般に、粒状体の強度は、圧縮、剪断共に密度や拘束力が高くなるほど増加する。そのため、砂や砂礫等の粒状体23を中空筒体2に密に詰める場合は、コンクリート同様に数百kg/cm2の圧縮強度を発現し、特に砂礫では200kg/cm2以上に達することが知られている。従って、上記立坑a内部の掘削の進行に伴う土留壁1背面の土圧、水圧に十分対抗することができ、立坑内部の掘削に支障を来すことがない。また、立坑aの掘削後に、上記粒状体23を簡単に除去することができる。
なお、必要に応じて、上記粒状体24には、補強材として繊維ファイバーを混入する場合もある。
【0015】
次に上記構成した土留壁貫通部を形成する方法について説明する。
【0016】
<イ>中空筒体の製作
まず、中空筒体21の一端に金属製(鉄板)の蓋体22を溶接し、中空筒体21を縦方向に立設して、その鉄板を底蓋にして砂等の粒状体23を上方より充填し、その砂の上をコンクリート製の蓋体24で閉塞する。
【0017】
<ロ>土留壁の構築
次に土留壁1を、例えば、連続地中壁工法により構築する。そして、土留壁1の鉄筋篭に上記中空筒体21を貫通部の設置位置に取付ける。この際、コンクリートの蓋24は、縦管側、鉄板の蓋22は、立坑側にしておく。
【0018】
上記中空筒体21を取付けた鉄筋篭を掘削溝に建て込む。上記中空筒体21、土留壁1の厚さより突出することがなく、掘削溝の壁面に接触することがないので、鉄筋篭の建て込みがスムーズに行える。
掘削溝内に、コンクリートを打設する。そして、コンクリートが硬化すると連続地中壁(土留壁1)が完成する。
一方、上記連続地中壁の掘削溝の外側には、掘削孔を設け、この掘削孔には配管を配置する。ここでは、縦管bを土留壁1背面に設置しておく。
【0019】
<ハ>土留壁の内部の掘削
土留壁1の構築後、図1のように、立坑a内を所定深度まで掘削する。この際に、貫通部2は、前述したように、中空筒体21と、蓋体22、24及び粒状体23によって構成し、土留壁体と同様ないしこれ以上の構造強度を有するので、土圧、水圧に対抗することができる。
【0020】
<ニ>貫通部の形成
立坑a内部の掘削を行った後、中空筒体21の埋設位置と対応する部分のコンクリートをハンマー等で破砕して中空筒体21の金属製の蓋体22(鉄板)を露出させる。
その後に、上記鉄板をカッター等で切除して、中の砂等の粒状体23を除去する。そこで、図4のように、コンクリート製の蓋体24をダイアモンド・コア・ボーリングマシンdなどの切削手段で削孔して貫通部2を形成する。 さらに、ここでは、図4のようなコンクリート1aと1bを削孔して中空筒体21と縦管bとを貫通させる。そして、図5のように、中空筒体21によって形成された貫通部2に枝管cを挿入して縦管bと連結する。
【0021】
以上のように、ダイアモンド・コア・ボーリングマシンdによりコンクリート蓋体24を掘削し、通常の削孔作業を行うことができるため、作業時間が大幅に短縮できると共に、ダイアモンドビットの消耗が極めて少なく、消耗品費が抑えられ、コストを縮減することが可能となる。また、コンクリート面への口切りであるので、施工精度も向上することができる。
【0022】
なお、上記実施形態では、一端を金属製の蓋体で、他端をコンクリート製の蓋体で閉塞した中空筒体を用いた貫通部について説明したが、本発明は、両端部をコンクリート蓋体で閉塞した場合にも適用できる。また、上記実施形態において示した各構成部材の材質、諸形状や寸法等は一例であって、貫通部の止水性及び土留性と、削孔の容易性等の設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0023】
【本発明の効果】
本発明の土留壁貫通部の構造及びその形成方法は、以上説明したようになるから、次のような効果を得ることができる。
<イ>中空筒体の立坑側の一端は、金属製又はコンクリート製の蓋体で、配管側の他端は、コンクリート製の蓋体で閉塞し、前記中空筒体と蓋体に包囲される空間には粒状体を充填した後に、土留壁内にこの中空筒体を埋設するようにしたことにより、少なくとも蓋体を薄肉化することができるとともに、削孔対象がコンクリートになるので、従来に比べて施工を容易に行うことができるとともに、施工期間の短縮及びコストの削減を図ることができる。
<ロ>また、削孔する際に、コンクリート面への口切りが可能となるので、施工精度が著しく向上する。
<ハ>粒状体の種類や密度等を変えることにより、中空筒体の強度を容易に高めることができるため、大深度の立坑や地下タンク施工にも短期間、低費用で対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る土留壁貫通部の構造の好適な使用例を示す概念図
【図2】土留壁貫通部の要部拡大の側面図
【図3】土留壁貫通部の要部拡大の概略斜視図
【図4】本発明に係る土留壁貫通部の形成方法の施工順序の説明図
【図5】本発明に係る土留壁貫通部の形成方法の施工順序の説明図
【図6】従来技術の説明図

Claims (5)

  1. 土留壁に埋設して貫通部を形成する中空筒体と、
    土留壁を構築する際に、この中空筒体の一端を閉塞した金属製の蓋体と、
    他端を閉塞したコンクリート製の蓋体と、
    前記中空筒体と蓋体に包囲される空間に充填した粒状体と、
    上記土留壁背面に設置した配管と、
    中空筒体の蓋体を切除して粒状体を除去した後に、上記配管と貫通させた貫通部と、
    上記貫通部に挿入した枝管、
    によって構成した、
    土留壁貫通部の構造。
  2. 請求項1において、
    土留壁を構築する際に、
    金属製の蓋体およびコンクリート製の蓋体に代えて、
    中空筒体の両端をコンクリート製の蓋体により閉塞した、
    土留壁貫通部の構造。
  3. 土留壁を構築する際に、貫通部の設置位置に中空筒体を取付け、
    一方、この中空筒体の一端は、金属製の蓋体で、他端はコンクリート製の蓋体で閉塞し、
    その内部には粒状体を充填するように形成し、
    次に上記土留壁を構築し、
    土留壁の内部を掘削して、
    中空筒体の金属製の蓋体を露出させた後に、金属製の蓋体を切除して粒状体を除去し、
    コンクリート製の蓋体を削孔して開口させることを特徴とする、
    土留壁貫通部の形成方法。
  4. 土留壁を構築する際に、
    貫通部の設置位置に中空筒体を取付け、
    一方、この中空筒体の一端は、金属製の蓋体で、他端はコンクリート製の蓋体で閉塞し、
    その内部には粒状体を充填するように形成し、
    次に上記土留壁を構築し、
    上記土留壁背面に配管を設置し、
    次に土留壁の内部を掘削して、中空筒体の金属製の蓋体を露出させた後に、
    金属製の蓋体を切除して粒状体を除去し、
    コンクリート製の蓋体を削孔して
    上記中空筒体と配管を貫通させることを特徴とする、
    土留壁貫通部の形成方法。
  5. 土留壁を構築する際に、
    貫通部の設置位置に中空筒体を取付け、
    一方、この中空筒体の両端は、コンクリート製の蓋体で閉塞し、
    その内部には粒状体を充填するように形成し、
    次に上記土留壁を構築し、
    上記土留壁背面に配管を設置し、
    次に土留壁の内部を掘削して、中空筒体の蓋体を露出させて切除すると共に、粒状体を除去し、
    上記中空筒体と配管を貫通させることを特徴とする、
    土留壁貫通部の形成方法。
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