JP4443282B2 - 金型の設計方法、金型、射出成形品の製造方法及びプログラム - Google Patents
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Description
ポリプロピレン系熱可塑性樹脂としては、ホモポリプロピレン、ポリプロピレンと他のオレフィンとのブロック共重合体またはランダム共重合体、または、これらの混合物等が挙げられる。
まず、ステップ2において、射出成形過程における樹脂の流れを解析するための解析用モデルを作成する。この実施の形態では、以下の長尺平板モデルを用いた。
寸法:幅1600mm、長さ300mm、厚さ3mm
要素数:2862、節点数:1558、サイド3点ゲート
ランナー径:6mmφ(ホットランナー)、ゲート:4mmφ×7.5mmL(バルブゲート)
ステップ3において、射出成形を行なうための条件設定を行なう。まず、材料として選択した樹脂の物性値等のデータを入力する必要がある。ここでは、樹脂として、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂である住友ノーブレンNP156(商品名、住友化学工業株式会社製、短繊維GFPP、GF30wt%)を用いている。必要な物性値としては、例えば、熱伝導率、比熱、流動停止温度、粘度等がある。
他の成形条件として、樹脂温度/ホットランナー温度/金型温度を、それぞれ230℃/230℃/50℃に設定し、射出速度は等速設定とし、射出時間が約8秒となるように設定した。
ステップ4から後の工程は、計算機支援による最適化工程である。すなわち、ステップ4において、設計変数である求めるべきパラメータ(ここではバルブゲートの開閉のタイミングとゲートの数及び位置)の初期値を設定し、ステップ5において、初期設定された設計変数の値に応じて解析用形状モデルの該当個所を修正する。そして、ステップ6において、樹脂の流入プロセスを計算し、ステップ7においてその結果ファイルを出力する。そして、ステップ8において、その結果ファイルに基づき、型締力及びウエルド発生に関する評価関数を算出し、ステップ9において、その算出値が最適解に収束しているかを評価する。そして、最適解に収束していない場合には、ステップ10において最適化手法のアルゴリズムに基づいて設計変数を修正し、ステップ5からステップ9までの工程を繰り返す。ステップ9において評価関数が最適解に収束していると判断された時には、最適化工程を終了する。評価関数が最適解に収束していると判断されない時には、ステップ10以降の工程を繰り返す。
この実施の形態ではバルブゲートは3つ有り、開閉タイミングはこれら全てを独立に操作することを前提としてもよい。しかしながら、これらのバルブゲートは実作業上の制約から完全に独立に操作できない場合がある。また、最適化作業をより絞った条件下で行なうことにより最適化作業を効率化することができる。
そこで、以下のような制約条件を設けた。
制約条件1a,1bのいずれかと制約条件2a,2bのいずれかを組み合わせることにより、バルブゲートの動作に関して種々の制約条件が導かれる。ここでは、一番簡略な組み合わせである、1b、2bの組み合わせを採用した。つまり、3つのゲートのうち、常時開とするものをまず調整用ゲートとして選択し、次に、他の2つのゲートを任意制御ゲートとして、これらを開とするタイミングを独立な設定変数として、最適化を行う。この実施の形態では、ゲートG1を常時開とする場合と、ゲートG2を常時開とする場合の双方について行った。
ここでは、ゲート位置のx座標を設計変数(実数)とする。ゲート部と製品部とを接合(節点を共有化)する必要があるため、移動後のゲート位置に最も近い製品部節点を算出し、その位置(修正後X座標)にゲートがくるようにゲート部全体を平行移動させた。ゲート部の移動後、ランナー部の節点を移動することにより、各ランナーを対応位置まで移動・伸縮させた。
評価関数としては、この実施の形態では、(ウエルド発生+成形に必要な型締力)を用いた。ウエルドの発生を制御することは、製品の外観上あるいは製品の強度上必要なことである。また、型締力を低減させることは、装置の小型化や、エネルギー節約、金型の保護等につながり、コストの低減を図ることができる。以下、それぞれについて説明する。
a)ウエルドの判定
解析モデルの各節点毎に、フローフロント合流角を計算し、これに基づいて判定した。
b)特定領域内のウエルド検出
成形品によっては特定領域内でのウエルド発生を回避(他の領域にウエルドを移動)できれば良いケースもあることから、特定領域内のウエルドのみを検出するプログラムを作成した(図4参照)。このプログラムでは、予め指定された領域(製品と中心及び長手方向を同じくする長方形状の領域で、幅400mm×長さ100mm及び幅800m×長さ100mmの部分)内に存在するウエルド発生点のみカウントし、その個数をファイルに出力する。特定領域の設定は、例えば、多角形領域であれば座標値を用いた不等式等で範囲を指定することができるが、領域内の全ての節点を記憶させる方法により任意の形状の領域を指定することができる。
型締力は、解析ソフトによってキャビティ内の樹脂圧を算出し、これに投影面積を掛けることによって求められる。
特定領域内でのウエルド発生数(節点数)をA [個]、成形に必要な型締力をB [ton]とした場合に、評価関数を、
評価関数 = A × δ+ B
によって与えた。δは重み付けの因子で、ウエルド発生を重視する場合はこれを大きくする。この実施の形態では、δ=1000とし、ウエルド発生を防止することを優先した。なお、ウエルドの評価は、前記のような発生節点数を用いるのが簡便であるが、解析モデルの節点の間隔が均一でない場合には、ウエルド長さに換算する方が好ましい。また、ウエルドの強度をも評価する場合、樹脂が合流する際の温度、圧力を加味することによってより精度の高い結果が得られる。
図1に示すような製品を射出成形する際のゲート位置と開閉タイミングを、以下の初期条件と制約条件を設定して最適化した。
(条件A)
ゲートG1を常開とし、ゲートG2,G3の開放タイミング変動の場合
制約条件:1100≦x1≦1500、600≦x2≦1000、100≦x3≦500、0≦t2≦8.0s、0≦t3≦8.0s
初期条件:x1=1300、x2=800、x3=300、t2=4.0s、t3=4.0s
(条件B)
ゲートG2を常開とし、ゲートG1,G3の開放タイミング変動の場合
制約条件:1100≦x1≦1500、600≦x2≦1000、100≦x3≦5000≦t1≦8.0s、0≦t3≦8.0s
初期条件:x1=1300、x2=800、x3=300、t1=4.0s、t3=4.0s
ここにおいて、x1、x2、x3(mm)はそれぞれゲートG1、ゲートG2、ゲートG3のx座標、t1, t2, t3(秒)はそれぞれ射出開始を0(秒)としたゲートG1、ゲートG2、ゲートG3の開放のタイミングである。
これらの表において、ア)〜ク)は従来の方法によるもので、いずれもゲートの位置は固定している。ゲート開放タイミングに関しては、ア)、カ)は一点ゲートの場合、イ)、キ)は最初に開となったゲートから流入した樹脂が他のゲートに到達した時に他のゲートを開とする、いわゆるカスケード制御の場合、ウ)は常開の二点ゲートの場合、エ)は常開の三点ゲートの場合である。最適化を行ったのは、オ)、ク)であるが、これらで、実施の形態である条件A,Bよりは狭い領域である中央部1でのウエルド回避を目的とし、ゲートの開放タイミングだけを最適化している。これらの結果では、製品の中央部2におけるウエルド発生数が0で、かつ型締力が低いような成形条件は得られなかった。
まず、ステップ2では、以下の平板モデルを解析用モデルとして作成した。
寸法:幅1000mm、長さ800mm、厚さ2.0〜3.5mm
開口部:幅400mm、長さ100mm
要素数:8136、節点数:4053
ゲート:センター及びサイドの2点ゲート
ランナー径:16mmφ(ホットランナー部)、8mmφ(コールドランナー部)
サイドゲートランド形状:断面長方形、長さ10mm
センターゲート形状:4.8mmφ(先端)→8.0mmφ(製品部)
ステップ3において、射出成形を行なうための条件設定を行なう。まず、材料として選択した樹脂の物性値等のデータを入力する必要がある。ここでは、樹脂として、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂である住友ノーブレンAZ564(商品名、住友化学工業株式会社製)を用いている。必要な物性値としては、例えば、熱伝導率、比熱、流動停止温度、粘度等がある。他の成形条件として、樹脂温度/ホットランナー温度/金型温度を、それぞれ210℃/210℃/40℃に設定し、射出速度は等速設定とし、射出時間が約2秒となるように設定した。
ステップ4から後の工程では、ステップ4において、設計変数(サイドゲートG5位置および両ゲートの寸法)の初期値を設定し、ステップ5において、設定された初期値に応じて解析用形状モデルを修正し、ステップ6において、樹脂の流入プロセスを計算し、ステップ7においてその結果ファイルを出力する。そして、ステップ8において、その結果ファイルに基づき、型締力及びウエルド発生に関する評価関数を算出し、ステップ9において、その算出値が最適解に収束しているかを評価する。そして、最適解に収束していない場合には、ステップ10において最適化手法のアルゴリズムに基づいて設計変数を修正し、ステップ5からステップ9までの工程を繰り返す。ステップ9において評価関数が最適解に収束していると判断された時には、最適化工程を終了する。評価関数が最適解に収束していると判断されない時には、ステップ10以降の工程を繰り返す。
ここでは、2つのゲートに関する以下のパラメータを設計変数とした。
a)サイドゲートG5のキャビティCVの下辺上での位置、図5中、左下端を原点としたx座標(sx)であり、これが変化すると、サイドゲートG5は、図9(a)に示すように移動する。
b)サイドゲートG5のランド幅(sw)
c)サイドゲートG5のランド厚み(st)
d)サイドゲートG5のコールドランナー径(sd)
e)センターゲートG4のゲート径(cd)
評価関数としては、先の実施の形態と同様に、射出成形解析より得られる型締力とウエルド評価値の合成和であるが、この実施の形態では、開口部周囲に発生するウエルドを特定の領域に誘導することを目的としている。すなわち、図9(b)に示すように、成形体の開口部の周辺の区域を、それぞれが同じ長さの開口縁を持つように20の領域に区画した。これらは、開口部の辺に位置する領域(1、3〜9、11、13〜19)と、四隅に位置する領域(2、10、12、20)に分類される。それぞれの領域毎に重み付け係数を設定し、各領域で検出されたウェルド発生数と重み付け係数の積の総和としてウエルド評価値を定義した。重み付け係数は、ウェルドを発生させたい領域の係数を1、その領域から最も離れた領域の係数を2500とし、各領域に1〜2500の係数をステップ状に与えた。
ウェルド評価値=ΣAs*Ws
s:開口部周辺の領域ナンバー(S=1〜20)、As:各領域の重み付け係数
Ws:各領域で発生したウェルド数(節点数)
全体の評価関数は、上記ウエルド評価値と、成形に必要な型締力[ton]との和として与えた。
評価関数=ウェルド評価値+型締力
上記の設定のもとで、以下の初期条件と制約条件および重み付けを設定して最適化した。
初期条件[mm]・・sx=400、sw=5、st=1、sd=8、cd=8
制約条件[mm]・・300≦sx≦700、3≦sw≦15、1≦st≦3、4≦sd≦12、4≦cd≦12
重み付けについては、ウェルドを領域10、20へ誘導するために、それぞれの領域の重み付け係数Asを、表3のように与えた。
G1, G2, G3 ゲート
R ランナー
N ノズル
G4, G5 ゲート
HR ホットランナー
SR スプルー
CR コールドランナー
LD ランド部
Claims (10)
- キャビティへの複数の樹脂流入路を有する金型を用いて射出成形を行なう場合に、
射出成形過程を計算する数値解析手法と計算機支援による最適化手法を組み合わせ、
ウエルドの発生を抑制又は制御する対象区域を複数の領域に区分し、これらの領域におけるウエルド発生量に重み付けをして合算したものをウエルド評価値として用いることにより、ウエルド発生を特定の領域に誘導し又は特定領域から回避して、
前記樹脂流入路の配置、形状、及び/又は寸法に関する金型設計パラメータを事前に求めることを特徴とする金型の設計方法。 - 最適化のための評価関数として、成形に必要な型締力と、ウエルドの発生を評価するウエルド評価値とを、重み付けして合算したものを用いることを特徴とする請求項1に記載の金型の設計方法。
- 前記金型設計パラメータは、前記金型のキャビティへの流入口であるゲートの点数及び/又はゲートの位置を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の金型の設計方法。
- 前記金型設計パラメータは、前記金型のキャビティへの流入口であるゲートの寸法及び/又は形状を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の金型の設計方法。
- 前記金型設計パラメータを求める際に、成形過程における樹脂流入量を設定するプロセスパラメータを同時に求めることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の金型の設計方法。
- 前記プロセスパラメータは、前記複数の樹脂流入路に配置された流入量調整弁の動作を制御するパラメータであることを特徴とする請求項5に記載の金型の設計方法。
- 充填工程中の同時刻に全ての流入調整弁が全閉とならない条件の中で前記プロセスパラメータを最適化することを特徴とする請求項6に記載の金型の設計方法。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載の金型の設計方法に基づいて設計された金型。
- キャビティへの複数の樹脂流入路を有する金型を用いて射出成形を行なう場合に、
射出成形過程を計算する数値解析手法と計算機支援による最適化手法を組み合わせ、
ウエルドの発生を抑制又は制御する対象区域を複数の領域に区分し、これらの領域におけるウエルド発生量に重み付けをして合算したものをウエルド評価値として用いることにより、ウエルド発生を特定の領域に誘導し又は特定領域から回避して、
前記樹脂流入路の配置、形状、及び/又は寸法に関する金型設計パラメータを事前に求め、
この求められた金型設計パラメータに基づいて作製した金型を用いて射出成形を行なうことを特徴とする射出成形品の製造方法。 - キャビティへの複数の樹脂流入路を有する金型を用いて射出成形を行なう場合に、
射出成形過程を計算する数値解析手法と計算機支援による最適化手法を組み合わせ、
ウエルドの発生を抑制又は制御する対象区域を複数の領域に区分し、これらの領域におけるウエルド発生量に重み付けをして合算したものをウエルド評価値として用いることにより、ウエルド発生を特定の領域に誘導し又は特定領域から回避して、
前記樹脂流入路の配置、形状、及び/又は寸法に関する金型設計パラメータを事前に求める工程をコンピュータに実行させるプログラム。
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