JP4442468B2 - 適応型音場支援装置 - Google Patents

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Description

既存の室内音響条件をベースに音響効果が増強されるように、音場を支援する音場支援装置に関し、特に設置条件や音場条件が悪い場合でもハウリングの発生を抑制して音響効果を増強できる音場支援装置に関する。
コンサートホール・多目的ホールなどの音響施設では、ロック・ポップス・クラシックなど様々な音楽が演奏される。このような音響施設は、残響感・音量感・拡がり感といった音響効果が良好になるように設計されている。しかし、音響効果は、音響施設の規模や構造といった音場の状態や、演奏する音楽の種類によって異なっている。そのため、すべての音楽を最適な音響条件で演奏することができるように、音響施設の音響条件を調整することは困難であった。
そこで、従来、建築音響に関わる室内の主要な音響効果を、電気音響の支援により自然に変化させることができる音場制御装置が開示されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
特許第2737595号公報 特許第2956642号公報
特許文献1,2に開示された音場制御装置は、ハウリングを抑制するために、マイクロフォン・スピーカの組み合わせを時間的に変える、またはフィルタを時間的に変化させる(FM変調)などの時変機能を音響帰還系に導入している。しかし、特許文献1,2に開示された音場制御装置では、具体的なハウリングの発生条件が装置の施工後に決まる。そのため、上記の時変機能を有効に動作させるためには、音場制御装置の施工後にハウリングが発生しないようにする調整が不可欠である。すなわち、音場制御装置の施工後に、装置から放音される音を実際に測定しながら、ループゲインの調整やイコライジング(音量、ゲイン、周波数特性などの調整)を行わなければならず、装置の調整に多くの手間と時間が必要になるという問題があった。
また、特許文献1,2に開示された音場制御装置は、スピーカから放音された残響音をマイクロフォンで収音して増幅する動作を繰り返すことにより、残響成分を増幅して、残響感・音量感・拡がり感などの音響効果を増加させる。そのため、上記の音場制御装置では、小空間のようにマイクロフォン・スピーカ間の距離を所定値以上確保できない音場条件であると、上記のようにハウリングの抑制機能を備えていても、ハウリングを制御することが難しくなる。また、上記のような小空間においてハウリングの発生を抑制するためには、音場制御装置のループゲインを低下させる必要がある。しかし、音場制御装置のループゲインを低下させると、十分な音響効果が得られないという問題があった。
さらに、特許文献1,2に開示された音場制御装置では、調整時と実際のホール使用時とで音場条件が異なるという問題があった。例えば、調整時はステージ上には何もない状態で行う。しかし、オペラ公演時にはステージ上に大道具を設置した状態となる。また、オーケストラの公演時にはステージ上に複数の演奏者が着席した状態になる。このように、ステージ上の状態が異なると、ホールの音響条件が変化する。さらに、ホール内の温度や湿度が変化しても、ホールの音響条件が変化する。そのため、音場制御装置の調整時にマージンをかなり取る必要がある。しかし、その結果としてシステムの効果を下げることになるという問題があった。
そこで、本発明は、上記の各問題を解決して、小空間や音響条件が変化する室内空間においても、ハウリングの発生を抑制することができ、初期反射音及び後部残響音による音響効果を良好にすることができる音場支援装置を提供することを目的とする。
(1)室に設置され、音源が発した音及び周囲から伝搬する音を収音するマイクロフォンと、
前記室の音響を支援する音を放音するスピーカと、
前記スピーカから前記マイクロフォンへ至る音響帰還路の伝達関数を推定して、前記マイクロフォンの収音信号から、前記スピーカからの帰還音信号を除去する適応フィルタを有するハウリングキャンセル手段と、
前記帰還音信号が除去された収音信号を畳み込み、前記音源が発した音に応じて前記室で発生する初期反射音を模した初期反射音支援信号を生成する初期反射音支援信号生成手段と、
前記帰還音信号が除去された収音信号を畳み込み、前記音源が発した音が、前記室に仮想的に連設された第2の室と前記室との間で反響して発生する後部残響音を模した後部残響音支援信号を生成する後部残響音支援信号生成手段と、
前記初期反射音支援信号及び前記後部残響音支援信号を増幅して前記スピーカへ出力するアンプと、
を備え
前記後部残響音支援信号生成手段は、前記第2の室の音響条件に基づくフィルタ係数が設定される第1のフィルタと、前記室の音響条件に基づくフィルタ係数が設定される第2のフィルタと、をループ状に接続してなり、
前記第1のフィルタの入力端に前記帰還音信号が除去された収音信号が入力され、前記第1のフィルタの出力端から後部残響音支援信号が取り出されることを特徴とする。
この構成においては、適応型音場支援装置は、適応フィルタによってスピーカからマイクロフォンへ至る音響帰還路の伝達関数を推定して、スピーカからマイクロフォンへ至る帰還音信号をマイクロフォンの収音信号から除去する。また、適応フィルタは、室の音響条件が変化すると、この変化に応じて帰還音を減衰させるように音響帰還路の伝達関数を更新する。さらに、適応型音場支援装置では、帰還音信号を除去したマイクロフォンの収音信号を畳み込み、室内空間の音響条件に基づいた初期反射音及び後部残響音の支援信号、つまり残響時間の延長やレベル増強を行った初期反射音及び後部残響音の信号を生成する。したがって、ハウリングキャンセル手段によって帰還音信号をキャンセルしてハウリングの発生を防止・抑制しながら、初期反射音及び後部残響音の音響効果、すなわち残響感・音量感・拡がり感を室内空間の音響条件をベースにして増強(支援)できる。また、もしハウリングが発生しても、速やかにハウリングを減衰させることができる。さらに、マイクロフォンとスピーカとの距離が所定の距離以下で、従来の装置であればハウリングが確実に発生する条件の狭い室内空間においても、ハウリングの発生を抑制できる。加えて、室内空間の音場の条件が変化しても、スピーカからマイクロフォンへ至る帰還音信号をマイクロフォンの収音信号から確実に除去して、ハウリングの発生を抑制できる。
この構成においては、第1のFIRフィルタと第2のFIRフィルタとをループ状に接続することで、音響ループを人工的に創り出す。そして、この音響ループにより、適応型音場支援装置を設置する室と、この室に仮想的に連設された第2の室と、の間で、音源から発した音が反響して発生する後部残響音を模した後部残響音支援信号が生成される。したがって、ループ状に接続した第1のFIRフィルタ及び第2のFIRフィルタにより、後部残響音の残響時間の延長及びレベルの増強を行うことができるとともに、室内空間の音響効果を増強できる。また、第1のFIRフィルタに設定する第2の室の音響条件を変更することで、後部残響音の音響特性をを変えることが可能となる。
)前記後部残響音支援信号生成手段は、前記第1のフィルタの入力側に、前記室の音響条件に基づくフィルタ係数が設定される第3のフィルタを備えたことを特徴とする。
この構成においては、第1のFIRフィルタの入力側に第3のFIRフィルタを備えているので、マイクロフォンと音源との距離が近いために後部残響音を十分に収音できない場合に、この第3のFIRフィルタによって直接音の収音信号を畳み込んで、その室で発生する後部残響音の疑似信号を生成させることができる。したがって、残響音生成フィルタによって生成された後部残響音の疑似信号を、第1のFIRフィルタと第2のFIRフィルタからなる音響ループで循環させながら出力するので、音響効果を増強した後部残響音をスピーカから放音させることができる。
)前記後部残響音支援信号生成手段は、前記第1のフィルタの出力側に、前記室の音響条件に基づくフィルタ係数が設定される第4のフィルタを備えたことを特徴とする。
この構成においては、第1のFIRフィルタの出力側に第4のFIRフィルタを備えているので、スピーカと客席との距離が近いために残響音を十分に放音できない場合に、第1のFIRフィルタ及び第2のFIRフィルタによる音響ループで生成した後部残響音支援信号を、この第4のFIRフィルタにより畳み込んで、スピーカから後部残響音を模した音として放音させることができる。したがって、音響条件の悪い室内においても、客席の聴取者に音源から発した音の後部残響音を聞かせることができる。
この発明によれば、スピーカからマイクロフォンへ帰還する帰還音信号を取り除くことにより、小空間のようにマイクロフォンやスピーカの設置条件が制限されて、従来の音場支援装置ではハウリングが発生する場合でも、ハウリングの発生を抑制して、既存の室内音響条件をベースに音響効果を増強して音場を支援することができる。
また、適応フィルタは、スピーカからマイクロフォンへ至る帰還音が変化すると、この帰還音を減衰させるように、音響帰還路の伝達関数を更新するので、温度・気温により音場が変化する場合や、オペラ公演などのように舞台の条件が変わる場合でも、その変化に応じてハウリングの発生を抑制することができる。
さらに、ハウリングの要因となる初期の強い反射音を取り除くことで、音響帰還路のループゲインを最小限にすることができ、十分な制御範囲を確保することができる。
加えて、FIRフィルタを用いて人工的に音響フィードバックを創り出すことで、任意の音場を創り出すことができるととも、実測したインパルス応答(Impulse Response)を用いることも可能となり、より自然な音を創り出すことができる。
また、FIRフィルタにより音響ループを人工的に創り出すことにより、事前にループゲインを推定することが可能となり、また、上記のようにハウリングの発生を抑制できるので、従来の装置において必要であったループゲインの測定やイコライジングといった現場での調整作業を大幅に減らすことができる。
以下の説明では、本発明の適応型音場支援装置を小ホールに設けた場合を一例として説明する。
図1は、適応型音場支援装置の概略の配置図である。音響施設(室)の一例である小ホール61は、ステージ65と客席66を備えている。また、ステージ65の中央部に楽器とその奏者(以下、音源67と称する。)が位置し、客席66の中央部に聴取者68が着席している。なお、同図には、音源67を円形で表示している。
図1には、8組の適応型音場支援装置を小ホール61に設置した場合を示している。すなわち、小ホール61内を伝搬する音を収音できるように、小ホール61の天井面62にマイクロフォン11−1〜11−8を所定の間隔で配置する。また、小ホール61の音響を支援するために、つまり、残響時間の延長やレベル増強などを行った初期反射音及び後部残響音を客席66に対して放音するために、小ホール61の側壁面63にスピーカ53−1〜53−4を、側壁面64に複数のスピーカ53−5〜53−8を、それぞれ所定の間隔で配置している。また、適応型音場支援装置の本体は、図外の舞台裏や調整室などに設置している。なお、マイクロフォン及びスピーカの配置、並びに使用する適応型音場支援装置の数量は、音響施設の規模や形状によって異なる。例えば、スピーカを側壁面だけでなく天井面に設けたりスピーカの放音面を天井に向けたりしたスピーカから初期反射音や後部残響音を支援する音を放音するように配置する場合もある。
図2は、適応型音場支援装置の概略のブロック図である。図3は、適応型音場支援装置が生成する初期反射音及び後部残響音の状態を示す図である。
適応型音場支援装置1は、収音部2、ハウリングキャンセル部3、初期反射音生成部4、後部残響音生成部5、加算器6、及び放音部7を備えている。
収音部2は、マイクロフォン11、ヘッドアンプ12、及びA/Dコンバータ13を備えている。ハウリングキャンセル部3は、遅延回路21、フィルタ部23及び伝達系推定部24を備えた適応フィルタ22、並びに加算器25を備えている。初期反射音生成部4は、FIRフィルタ31及びイコライザ32を備えている。後部残響音生成部5は、残響音生成フィルタ41、加算器42、FIRフィルタ43、イコライザ44、FIRフィルタ45、イコライザ46、及び残響音再生フィルタ47を備えている。放音部7は、D/Aコンバータ51、パワーアンプ52、及びスピーカ53を備えている。
収音部2は、小ホール61のような室内空間において伝搬する音を収音して、ディジタル信号に変換して出力する。マイクロフォン11は、周囲から伝搬する音、すなわち音源67から放音された音(直接音)や、この音が小ホール61の壁面・ステージ65上の大道具などで反射して発生する初期反射音及び後部残響音、並びにスピーカ53から放音された音など、周囲から伝搬する音を収音する。そして、マイクロフォン11から出力された収音信号は、ヘッドアンプ12で増幅され、A/Dコンバータ13でディジタル化されて、ハウリングキャンセル部3の加算器25に出力される。
ハウリングキャンセル部3は、スピーカ53からマイクロフォン11へ至る音響帰還路の伝達関数を推定して、マイクロフォン11の収音信号から、マイクロフォン11が収音したスピーカ53からの帰還音信号を除去する。ここで、適応型音場支援装置1においてハウリングキャンセル部3を設けていない場合、マイクロフォン11とスピーカ53との間が所定の距離以下であると、スピーカ53から放音された音をマイクロフォン11が収音して、1以上のゲインで増幅する動作を繰り返すので、ハウリングが発生する。しかし、適応型音場支援装置1では、ハウリングキャンセル部3によって、マイクロフォン11の収音信号から、マイクロフォン11が収音したスピーカ53からの帰還音信号が除去されるので、ハウリングの発生を抑制できる。
遅延回路21は、スピーカ53からマイクロフォン11へ帰還する帰還音の時間遅延を推定して、加算器6の出力信号に時間遅延を付与する。そして、遅延回路21は、適応フィルタ22のフィルタ部23及び伝達系推定部24に信号を出力する。
適応フィルタ22は、スピーカ53からマイクロフォン11に帰還する音響帰還路における音の伝達関数を模擬するフィルタであり、遅延回路21が遅延した信号をフィルタリングする。そして、適応フィルタ22は、このフィルタリングした信号を模擬信号として加算器25へ出力する。
フィルタ部23は、伝達系推定部24が推定した音響帰還路の伝達関数に基づいて、遅延回路21が出力した信号をフィルタリングし、模擬信号として加算器25へ出力する。
伝達系推定部24は、遅延回路21で遅延された過去の音の信号と、加算器25の出力信号である現在の音の信号と、に基づいて帰還音信号の消去誤差を検出する。そして、伝達系推定部24は、模擬信号を帰還音信号に一致または近似させるべくフィルタ部23の伝達関数を推定して自動更新する。伝達系推定部24は、例えばLMS(Least Mean Square )アルゴリズムのような適応アルゴリズムを用いて、伝達関数の更新を行う。
加算器25は、収音部2が出力した収音信号から適応フィルタ22の出力信号を差し引いて出力する。つまり、加算器25は、マイクロフォン11の収音信号から、スピーカ53からマイクロフォン11へ帰還する帰還音信号を差し引いて出力する。加算器25は、伝達系推定部24、初期反射音生成部4のFIRフィルタ31、及び後部残響音生成部5の残響音生成フィルタ41へ信号を出力する。
初期反射音生成部4は、音源67から放音された音が小ホール61の壁面などで反射して発生する初期反射音を模した初期反射音支援信号を生成する。また、初期反射音生成部4は、既存の室内音響条件をベースに、残響時間の延長やレベル増強を行って、音響効果を増強(改善)する。
FIRフィルタ31は、小ホール61の音響条件に基づくフィルタ係数が設定されている。FIRフィルタ31は、スピーカ53からマイクロフォン11へ帰還する帰還音信号が除去されたマイクロフォン11の収音信号を畳み込んで、小ホール61内で発生する初期反射音を模した信号を生成する。また、FIRフィルタ31は、既存の室内音響条件、つまり小ホール61の音響条件に基づいて初期反射音のレベル増強や残響時間の延長を行う。これにより、図3(B)に示すように、スピーカ53(図3(B)には不図示。)から、小ホール61内の空間が拡張されたように聞こえる初期反射音を放音させることができる。
イコライザ32は、適応型音場支援装置1の設置時などに初期反射音の周波数特性やゲイン、各タップの時間間隔などを調整するためのものである。
後部残響音生成部5は、音源67から放音される音の後部残響音を模した後部残響音支援信号を生成する。また、後部残響音生成部5は、既存の室内音響条件をベースに残響時間の延長やレベル増強を行って、音響効果を増強(改善)する。
ここで、以下の説明におけるクリティカルディスタンスとは、音源67から放音される直接音と、その後部残響音と、のエネルギーバランスが等しくなる距離のことである。ステージ65とマイクロフォン11との距離がクリティカルディスタンス以下であると、音源67から放音される直接音の方がその後部残響音よりもエネルギーが大きくなる。このときには、マイクロフォン11で音源67の後部残響音を十分に収音することができない。また、スピーカ53と客席66との距離がクリティカルディスタンス以下であると、スピーカ53から放音される直接音の方がその後部残響音よりもエネルギーが大きくなる。このときには、客席66が設置された空間に対してスピーカ53から残響音を十分に放音することができない。
残響音生成フィルタ41は、小ホール61の音響条件に基づくフィルタ係数が設定されている。すなわち、適応型音場支援装置1を設置する小ホール61の音場をシミュレートしたインパルス応答、または小ホール61において実測したインパルス応答を用いる。
残響音生成フィルタ41は、小ホール61の音響条件に基づくフィルタ係数が設定されている。残響音生成フィルタ41は、スピーカ53からマイクロフォン11へ帰還する帰還音信号が除去されたマイクロフォン11の収音信号を畳み込んで、小ホール61内で発生する後部残響音を模した疑似信号を生成する。例えば、残響音生成フィルタ41は、マイクロフォン11とステージ65上の音源67との距離がクリティカルディスタンス以下となり、マイクロフォン11が収音した収音信号に後部残響音がほとんど含まれていない場合に、後部残響音の疑似信号を生成して付加する。一方、マイクロフォン11とステージ65との距離がクリティカルディスタンスを超えている場合には、音源67から放音される音の後部残響音の方が直接音よりもエネルギーが大きくなる。この場合には、マイクロフォン11は、音源67から放音される音の後部残響音を収音できるので、残響音生成フィルタ41の機能をオフにしておき、加算器25が出力した信号が残響音生成フィルタ41を通過するように設定する。
加算器42は、残響音生成フィルタ41から出力された信号と、FIRフィルタ45からイコライザ46を介して出力された信号と、を加算して、FIRフィルタ43へ信号を出力する。
FIRフィルタ43は、図3(A)に示すように、小ホール61に仮想的に連設した所定の大きさのカップルドルーム(Coupled Room)71の音響条件に基づくフィルタ係数が設定されている。FIRフィルタ43は、イコライザ44を介してFIRフィルタ45及び残響音再生フィルタ47へ信号を出力する。
イコライザ44は、適応型音場支援装置1の設置時などに後部残響音の周波数特性やゲイン、各タップの時間間隔などを調整するためのものである。
FIRフィルタ45は、図3に示すように、適応型音場支援装置1を設置する小ホール61(以下、オリジナル空間とも称する。)の音響条件に基づくフィルタ係数が設定されている。すなわち、FIRフィルタ45には、オリジナル空間の音場をシミュレートしたインパルス応答、またはオリジナル空間で実測したインパルス応答を用いる。FIRフィルタ45は、イコライザ46を介して加算器42へ信号を出力する。
イコライザ46は、適応型音場支援装置1の設置時などに後部残響音の周波数特性やゲイン、各タップの時間間隔などを調整するためのものである。
ここで、本発明では、FIRフィルタ43とFIRフィルタ45をループ状に並列に接続して、FIRフィルタ43の入力側から加算器25が出力した信号が入力され、FIRフィルタ43の出力側から信号が取り出されるように構成することで、FIRフィルタ43とFIRフィルタ45との間で後部残響音を模した信号を循環させながら出力させることができる。これにより、図3に示すように、オリジナル空間とカップルドルーム71内の空間との間で後部残響音が反響しながら、後部残響音が客席の聴取者に届いている状態をシミュレートしたものとなる。したがって、音源67が発した音が、小ホール61に連設されたカップルドルーム71と小ホール61との間で反響して発生する後部残響音を模した音をスピーカ53から放音させることができる。また、FIRフィルタ45において、後部残響音のレベル増強や残響時間の延長を行うようにフィルタ係数を設定することで、小ホール61内の空間が拡張されたように聞こえる後部残響音をスピーカ53から放音させることができる。また、FIRフィルタ43には任意のフィルタ係数を設定可能なので、フィルタ係数に応じてカップルドルーム71の音場を自由に設定することができ、小ホール61のカップルドルームとして任意の音場を設定できる。
残響音再生フィルタ47は、小ホール61の音響条件に基づくフィルタ係数が設定されている。すなわち、適応型音場支援装置1を設置する小ホール61の音場をシミュレートしたインパルス応答、または小ホール61において実測したインパルス応答を用いる。残響音再生フィルタ47は、スピーカ53と客席66との距離がクリティカルディスタンス以下となり、残響音を客席66に対して十分に放音することができない場合などに、FIRフィルタ43から出力された信号を畳み込んで、小ホール61で発生する後部残響音を模した信号を生成して出力する。一方、スピーカ53と客席66との距離がクリティカルディスタンスを超えている場合には、音源67から放音される音の後部残響音の方が直接音よりもエネルギーが大きくなる。この場合には、音源67から放音される音の後部残響音を模した音をスピーカ53から放音できるので、残響音再生フィルタ47の機能をオフにしておき、後部残響音を模した信号が残響音再生フィルタ47を通過するように設定する。
加算器6は、初期反射音生成部4の出力信号である初期反射音支援信号及び後部残響音生成部5の出力信号である後部残響音支援信号を加算する。そして、加算器6は、放音部7及びハウリングキャンセル部3へ両信号を出力する。
加算器6から放音部7へ出力されたディジタル信号は、D/Aコンバータ51でアナログ信号に変換される。そして、パワーアンプ52は、初期反射音を模した初期反射音支援信号及び後部残響音を模した後部残響音支援信号を増幅して、スピーカ53へ両信号を出力する。スピーカ53は、音源67から放音された音の初期反射音及び後部残響音を模した音を放音する。
次に、本発明の適応型音場支援装置1を設置時の調整動作について説明する。小ホール61に適応型音場支援装置1を設置した際に、マイクロフォン11とステージ65との距離がクリティカルディスタンス以下となる場合には、前記のように、マイクロフォン11で音源67の後部残響音を十分に収音することができない。この場合には、残響音生成フィルタ41の機能をオンにしておき、マイクロフォン11の収音信号を畳み込んで、音源67から放音された音の後部残響音を模した後部残響音支援信号を生成するように設定する。これにより、小ホール61とカップルドルーム71との間で反響して残響時間が延長され、レベルが増強された後部残響音を生成することができる。
一方、マイクロフォン11とステージ65との距離がクリティカルディスタンスを超えている場合には、音源67から放音される音の後部残響音の方が直接音よりもエネルギーが大きくなる。この場合には、音源67から放音される音の後部残響音をマイクロフォン11で収音できるので、残響音生成フィルタ41をオフにしておき、信号が残響音生成フィルタ41を通過するように設定する。これにより、マイクロフォン11で収音した後部残響音が、さらにカップルドルーム71で反響した状態、及びカップルドルーム71と小ホール61との間で反響した状態を模した後部残響音をスピーカ53から放音させることができる。
また、小ホール61に適応型音場支援装置1を設置した際に、スピーカ53と客席66の聴取者68との距離がクリティカルディスタンス以下となる場合には、前記のように、スピーカ53から後部残響音を十分に放音することができない。この場合には、残響音再生フィルタ47の機能をオンにしておき、FIRフィルタ43及びFIRフィルタ45による音響ループで生成された信号を畳み込んで、ステージ65上の音源67から放音された音の後部残響音を模した信号を生成して出力するように設定する。これにより、小ホール61及びカップルドルーム71で反響し、最終的に小ホール61で反響して客席66に伝搬する後部残響音を生成してスピーカ53から放音させることができる。
一方、スピーカ53と客席66の聴取者68との距離がクリティカルディスタンスを超えている場合には、音源67から放音される音の後部残響音の方が直接音よりもエネルギーが大きくなる。この場合には、スピーカ53から放音した音は小ホール61で反響するので、残響音再生フィルタ47をオフにしておき、後部残響音を模した信号が残響音再生フィルタ47を通過するように設定する。これにより、小ホール61及びカップルドルーム71で反響した後部残響音をスピーカ53から放音させて、この音を最終的に小ホール61で反響させて客席66に伝搬させることができる。
次に、FIRフィルタ31、FIRフィルタ43、及びFIRフィルタ45の周波数特性などの調整は、イコライザ32、イコライザ44、及びイコライザ46のイコライジングにより行う。このとき、音源67から放音された音、及び周囲から伝搬した残響音をマイクロフォン11で収音させて、スピーカ53から放音された初期反射音及び後部残響音を確認しながら、所望の音響効果が得られるように調整を行う。
図4は、FIRフィルタによる音響効果の改善の状態を示すグラフである。適応型音場支援装置1では、FIRフィルタ31、FIRフィルタ43、及びFIRフィルタ45に設定するインパルス応答特性を変更・調整して、図4(A)に示すようにインパルス応答の各タップにおける残響減衰カーブの傾きを変更することで、室内空間における平均吸音率を変更したような音響効果が得られる。また、図4(B)に示すようにインパルス応答の各タップの間隔を変更することで、ルームサイズを変更したような音響効果が得られる。
例えば、FIRフィルタ43に設定するインパルス応答特性を変えることで、カップルドルーム71の広さを変更したように音場を変化させることができ、後部残響音の音響特性を変化させることができる。また、FIRフィルタに小ホール61において実測したインパルス応答を用いることで、より自然な音を創り出すことができる。さらに、FIRフィルタ43及びFIRフィルタ45によって音響ループを人工的に創り出しているので、事前にループゲインを推定することが可能となる。したがって、従来の音場支援装置では調整に時間が必要であったループゲインの測定やイコライジングといった現場での調整作業を大幅に減らすことができる。
次に、適応型音場支援装置1の動作について説明する。適応型音場支援装置1は、ステージ65上の音源67から放音された音、周囲から伝搬した音、及びスピーカ53から放音された音(音源67から放音された音の初期反射音及び後部残響音を模した音)をマイクロフォン11で収音する。ハウリングキャンセル部3は、スピーカ53からマイクロフォン11へ至る音響帰還路の伝達関数を推定して、マイクロフォン11が収音したスピーカ53からの帰還音信号を模擬する模擬信号を生成する。加算器25は、マイクロフォン11の収音信号から模擬信号を減算することで、マイクロフォン11が収音した帰還音信号を取り除いて、初期反射音生成部4及び後部残響音生成部5へ信号を出力する。
初期反射音生成部4は、音源67の初期反射音を模した初期反射音支援信号を生成して、加算器6へ出力する。また、後部残響音生成部5は、音源67が発した音がカップルドルーム71及び小ホール61で反響した後部残響音を模した信号を生成して加算器6へ出力する。加算器6は、音源67の初期反射音及び後部残響音を模した支援信号をスピーカ53へ出力する。スピーカ53は、音源67の初期反射音及び後部残響音を模した音を出力する。
以上のように、本発明の適応型音場支援装置1では、適応フィルタ22を用いたハウリングキャンセル部3を備えているので、気温の変化や音場の変化が発生したり、ステージ65上に設置する大道具などの条件が変わったりしても、ハウリングの発生を防止できる。また、本発明の適応型音場支援装置1では、ハウリングキャンセル部3により、スピーカ53からマイクロフォン11への帰還信号を取り除くことができるので、マイクロフォンとスピーカとの距離がクリティカルディスタンス以下となる小空間であっても、ハウリングが発生することなく、既存の室内音響条件をベースに残響音の響きを豊かにすることができる。
なお、以上の説明では、本発明の適応型音場支援装置を小ホールに設けた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、音響施設やリスニングルームなど音が反響して初期反射音や後部残響音が発生する室であればどのような室でも適用可能である。例えば、本発明の適応型音場支援装置を大ホールや中ホールに設けた場合でも、わずかな調整で、初期反射音及び後部残響音の響きを豊かにすることができる。
また、以上の説明では、初期反射音生成部4及び後部残響音生成部5にFIRフィルタを用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく他のフィルタを用いても良い。例えば、IIRフィルタなどを用いることが可能である。
適応型音場支援装置の概略の配置図である。 適応型音場支援装置の概略構成を示すブロック図である。 適応型音場支援装置が生成する初期反射音及び後部残響音の状態を示す図である。 FIRフィルタによる音響効果の改善の状態を示すグラフである。
符号の説明
1−適応型音場支援装置 2−収音部 3−ハウリングキャンセル部
4−初期反射音生成部 5−後部残響音生成部 6−加算器 7−放音部
11−マイクロフォン 12−ヘッドアンプ 13−A/Dコンバータ
21−遅延回路 22−適応フィルタ 23−フィルタ部
24−伝達系推定部 25−加算器
31,43,45−FIRフィルタ 32,44,46−イコライザ
41−残響音生成フィルタ 42−加算器 47−残響音再生フィルタ
51−D/Aコンバータ 52−パワーアンプ 53−スピーカ
61−小ホール 65−ステージ 66−客席 67−音源
68−聴取者 71−カップルドルーム

Claims (3)

  1. 室に設置され、音源が発した音及び周囲から伝搬する音を収音するマイクロフォンと、
    前記室の音響を支援する音を放音するスピーカと、
    前記スピーカから前記マイクロフォンへ至る音響帰還路の伝達関数を推定して、前記マイクロフォンの収音信号から、前記スピーカからの帰還音信号を除去する適応フィルタを有するハウリングキャンセル手段と、
    前記帰還音信号が除去された収音信号を畳み込み、前記音源が発した音に応じて前記室で発生する初期反射音を模した初期反射音支援信号を生成する初期反射音支援信号生成手段と、
    前記帰還音信号が除去された収音信号を畳み込み、前記音源が発した音が、前記室に仮想的に連設された第2の室と前記室との間で反響して発生する後部残響音を模した後部残響音支援信号を生成する後部残響音支援信号生成手段と、
    前記初期反射音支援信号及び前記後部残響音支援信号を増幅して前記スピーカへ出力するアンプと、
    を備え
    前記後部残響音支援信号生成手段は、前記第2の室の音響条件に基づくフィルタ係数が設定される第1のフィルタと、前記室の音響条件に基づくフィルタ係数が設定される第2のフィルタと、をループ状に接続してなり、
    前記第1のフィルタの入力端に前記帰還音信号が除去された収音信号が入力され、前記第1のフィルタの出力端から後部残響音支援信号が取り出される適応型音場支援装置。
  2. 前記後部残響音支援信号生成手段は、前記第1のフィルタの入力側に、前記室の音響条件に基づくフィルタ係数が設定される第3のフィルタを備えた請求項に記載の適応型音場支援装置。
  3. 前記後部残響音支援信号生成手段は、前記第1のフィルタの出力側に、前記室の音響条件に基づくフィルタ係数が設定される第4のフィルタを備えた請求項またはに記載の適応型音場支援装置。
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