JP4442052B2 - 適応型高周波フィルタおよび適応型高周波アンテナ共用器およびそれらを用いた無線装置 - Google Patents

適応型高周波フィルタおよび適応型高周波アンテナ共用器およびそれらを用いた無線装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として携帯電話機などの無線装置の高周波部で使用する適応型高周波フィルタおよび適応型高周波共用器およびそれらを用いた無線装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高周波フィルタおよび高周波アンテナ共用器は携帯電話機などの無線装置で多数使用されている。中でも、送信周波数帯域および受信周波数帯域を2つに分割し、それぞれの周波数帯域を切り替えられる周波数シフト型高周波アンテナ共用器はさらに以前のアンテナ共用器よりも小形化が可能になるということで最近一部の携帯電話機において使用され始めている。ここでは、以下に図面を参照しながら、上記した従来の周波数シフト型高周波アンテナ共用器の一例について説明する。
【0003】
図9は従来の周波数シフト型高周波アンテナ共用器の回路構成を示すものである。図9において、91は誘電体共振器である。92はPINダイオードスイッチ、93は並列容量で、PINダイオードスイッチ92により、誘電体共振器91との並列接続がオンオフされる。94は送信端子、95は受信端子、96はアンテナ端子である。97はノッチ結合容量で、98は段間結合インダクタ、99はローディング容量で、これらにより電圧制御型バンドエリミネーションフィルタが構成される。また、910は段間結合容量、911は入出力結合インダクタ、912は飛び越し結合容量で、これらにより電圧制御型有極バンドパスフィルタが構成される。913は整合インダクタ、914は整合容量でこれらにより2つのフィルタのインピーダンスが調整されて結合され、アンテナ共用器を構成する。
【0004】
以上のように構成された周波数シフト型高周波アンテナ共用器について、以下その動作について説明する。
【0005】
まず、誘電体共振器に並列に、PINダイオードスイッチとキャパシタが直列接続された回路が接続されている。PINダイオードスイッチを電気的にオン、オフすることによって共振器の共振周波数は低い周波数f1と高い周波数f2に選択的に切り替えられる。図9の従来例では受信側にそのような周波数切り替え型共振器で構成された帯域通過型フィルタが用いられ、送信側には周波数切り替え型共振器で構成された帯域阻止型フィルタが用いられている(例えば、特開平11−243304号公報)。
【0006】
このような構成にすることにより、フィルタが全通過帯域を同時に低損失化する必要が無くなり、また減衰帯域も相手方の全通過帯域を同時に高減衰化する必要がなくなるため、それぞれ半分の帯域をカバーするフィルタで十分になり、フィルタの負担が軽くなる。すなわち、見かけ上、フィルタの送受間隔を全通過帯域の半分だけ広げたのと同じ効果を有する。
【0007】
あるいは、無線装置が基地局から送られる信号もしくはGPSなどの他の通信手段を用いて、位置情報を検出し、無線装置が使用される国ごとにフィルタの減衰量を変化させるという考え方は、特開2000−312161号公報等により公知である。このフィルタも全システムに対応する減衰特性を同時にフィルタに負わせるのは厳しいので、無線装置が使用される国ごとにフィルタ特性を切り替えるという発想である。
【0008】
また、実際の従来例のアンテナ共用器を用いた無線装置の構造は、図10に示されるようになっている。ここで、101は誘電体フィルタもしくはアンテナ共用器、102は内部アンテナ、103は半導体IC、104はプリント基板、106は外部アンテナであり、部品点数も多いため製造し難くて、無線部の占有面積も随分大きなものとなっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような構成では、単純に送信信号、受信信号の通過帯域に追随して周波数を二者択一で変化させることのみしかできず、本発明で示す、信号監視部を有し、そこで最適フィルタ特性を考慮して適応的にフィルタ特性を変化制御するという考え方は全く無かったので、周囲の電波環境や無線装置の内部周波数構成により生ずる妨害信号やスプリアス信号に起因する無線装置特性の劣化に十分に対処できないという問題点を有していた。
【0010】
また、検出した位置情報を基にフィルタの減衰量を変化させるということは、電波環境や無線装置の動作状況に応じてフィルタの特性を適応的に変化させるという技術思想とは異なり、フィルタには限られた自由度しか与えられておらず、不十分な特性しか得られなかった。すなわち、フィルタの性能を最大限引き出すという効果は期待できなかった。
【0011】
また、これを従来の周波数固定式のフィルタで行なおうとすれば、超高性能なフィルタ特性を必要とし、多段高Q構成が必須なため、フィルタの形状がとてつもなく大きくなるという問題点を有していた。すなわち、フィルタ小形化のために共振素子を小形化すれば高周波特性が劣化してしまい、実用的な特性を得ることは不可能であった。
【0012】
さらに、実際のフィルタの部品実装の形態を鑑みると、部品点数も多いため製造し難くて、無線部の占有面積が随分大きなものとなってしまっていた。
【0013】
本発明は上記問題点に鑑み、フィルタと信号監視部を有し、フィルタの周波数特性を周囲の電波環境や無線装置の動作状態に応じて適応的に変化制御できる小形で高性能な適応型高周波フィルタおよび適応型高周波アンテナ共用器およびそれらを用いた無線装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、それらの構成部品を積層技術を用いて集積化し、小形・高性能な適応型高周波フィルタおよび適応型高周波アンテナ共用器およびそれらを用いた無線装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために本発明の適応型高周波フィルタは、共振素子と、電圧制御型インピーダンス可変素子と、制御部と、信号監視部を具備し、前記共振素子と前記電圧制御型インピーダンス可変素子を電気的に接続し電圧制御型周波数可変共振素子を構成し、前記電圧制御型周波数可変共振素子と前記制御部を電気的に接続して、帯域通過型周波数可変共振素子と少なくともひとつは帯域阻止型周波数可変共振素子を形成し、前記帯域通過型周波数可変共振素子および帯域阻止型周波数可変共振素子を複数個組み合わせてフィルタを構成するとともに、前記フィルタの周波数特性を周囲の電波環境と前記フィルタを搭載する無線装置の内部発振器の発振周波数の情報を勘案して前記信号監視部において前記フィルタの最適周波数特性が得られるように適応的に制御する制御信号を発生させ、前記制御信号を前記制御部に伝達して制御電圧信号を発生させ、前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御し、前記帯域阻止型周波数可変共振素子の阻止帯域は所望受信信号対妨害波比を最大化するように、前記信号監視部にて前記無線装置の受信信号の不要妨害信号を監視しながら適応制御アルゴリズムによって制御信号を発生し、前記制御部にて前記制御信号に基づく制御電圧信号で前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御するという構成を備えたものである。
【0023】
あるいは本発明の適応型高周波フィルタは、共振素子と、電圧制御型インピーダンス可変素子と、制御部と、信号監視部を具備し、前記共振素子と前記電圧制御型インピーダンス可変素子を電気的に接続し電圧制御型周波数可変共振素子を構成し、前記電圧制御型周波数可変共振素子と前記制御部を電気的に接続して、帯域通過型周波数可変共振素子と少なくともひとつは帯域阻止型周波数可変共振素子を形成し、前記帯域通過型周波数可変共振素子および帯域阻止型周波数可変共振素子を複数個組み合わせてフィルタを構成するとともに、前記フィルタの周波数特性を周囲の電波環境と前記フィルタを搭載する無線装置の内部発振器の発振周波数の情報を勘案して前記信号監視部において前記フィルタの最適周波数特性が得られるように適応的に制御する制御信号を発生させ、前記制御信号を前記制御部に伝達して制御電圧信号を発生させ、前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御し、前記帯域阻止型周波数可変共振素子の阻止帯域は所望受信信号対妨害波比を最大化するように、前記信号監視部にて前記無線装置の受信信号の不要妨害信号を監視しながら適応制御アルゴリズムによって制御信号を発生し、前記制御部にて前記制御信号に基づく制御電圧信号で前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御するという構成を備えたものである。
【0025】
さらには本発明の構成は、前記帯域阻止型周波数可変共振素子の阻止帯域は送信信号の不要スプリアス信号波を最小化するように、前記信号監視部にて前記無線装置の送信信号の前記不要スプリアス信号波を監視しながら適応制御アルゴリズムによって制御信号を発生し、前記制御部にて前記制御信号に基づく制御電圧信号で前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御するという構成を備えたものである。
【0026】
さらには本発明の構成は、前記共振素子が分布定数型のTEMモード共振器であるという構成を備えたものである。
【0027】
さらには本発明の構成は、前記電圧制御型インピーダンス可変素子がバラクタダイオードを用いた可変容量回路であるという構成を備えたものである。
【0028】
さらには本発明の構成は、前記共振素子が積層誘電体内に形成された分布定数型のストリップ線路共振器であり、前記電圧制御型インピーダンス可変素子がバラクタダイオードを用いた可変容量回路であり、前記バラクタダイオードが前記積層誘電体表面に実装されたことを特徴とするという構成を備えたものである。
【0029】
さらには本発明の適応型高周波アンテナ共用器は、2つのフィルタが、第1の通過帯域と第1の阻止帯域を有する請求項1記載の第1の適応型高周波フィルタと、第2の通過帯域と第2の阻止帯域を有する請求項1記載の第2の適応型高周波フィルタからなり、前記第1の通過帯域と前記第1の阻止帯域は周波数間隔が一定で同期して変化し、前記第2の通過帯域と前記第2の阻止帯域も周波数間隔が一定で同期して変化し、前記第1の通過帯域と前記第2の阻止帯域が略一致し、前記第1の阻止帯域と前記第2の通過帯域が略一致するという構成を備えたものである。
【0030】
あるいは本発明の無線装置は、前記適応型高周波フィルタを用いたという構成を備えたものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施の形態の適応型高周波フィルタについて、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における適応型高周波フィルタの回路ブロック図を示すものである。図1において、1は共振素子、2は電圧制御型インピーダンス可変素子、3は制御部、4は信号監視部、5は電圧制御型周波数可変共振子、6は制御信号、7は制御電圧信号、8は無線装置、9は内部発振器、10はモニター信号である。
【0034】
以上のように構成された適応型高周波フィルタについて、以下図1、図2及び図6、図7を用いてその動作を説明する。
【0035】
まず図1あるいは図2において、全体は携帯電話機などの無線装置8または108を示している。11は無線部の受信回路部あるいは送信回路部を表す回路ブロックであるが、ここでは説明の簡単化のために受信部を念頭において以降の説明を行なっていく。その場合、端子15にはアンテナ部からの信号が入力されることになる。図1あるいは図2では1段の電圧制御型周波数可変共振子5または105を例として記載しているが、多段のバンドパスフィルタやバンドエリミネーションフィルタあるいはそれらの組合わせでも良いことは言うまでもない。図1は1段のバンドパスフィルタの場合を例示し、図2は1段のバンドエリミネーションフィルタの場合を例示している。さらに5または105はアンテナ共用器の一部を構成するアンテナトップのフィルタであっても良いし、段間フィルタであっても良い。端子15に入力された信号は5または105でフィルタリングされて信号16となり、無線部11に入力される。
【0036】
無線部11が送信回路の場合は信号16の伝達の向きは当然逆方向となり、端子15は出力端子となる。
【0037】
無線部11の中には内部発振器9が含まれる。この発振周波数により、無線装置8または108の受信周波数が決まってくるが、この周波数はベースバンド部12で生成される周波数制御信号13によりコントロールされる。この受信信号に関わる情報は周波数情報信号14として信号監視部4にも伝達される。無線部11から信号監視部4にはモニター信号10も伝達される。このモニター信号10は、受信信号の強度であったり、復調信号のS/N比であったり、ビットエラーレートであったりする。
【0038】
また、17は無線部11とベースバンド部12間で情報をやりとりする送受信ベースバンド信号である。
【0039】
本発明においては、これらを限定するものではなく信号監視部4を無線装置8または108内に設け、信号監視部4から出力された制御信号6に応じて、制御部3で制御電圧信号7を生成せしめ、電圧制御型周波数可変共振子5または105を適応的に制御するところがポイントである。
【0040】
以上のように本実施の形態によれば、周波数情報信号14とモニター信号10が信号監視部4に与えられているところが非常に重要かつ新規な点であり、信号監視部4ではそれらの情報に基づき、適応制御アルゴリズムにて制御信号6を算出することになる。
【0041】
ここで、適応制御アルゴリズムの一例としては、例えば受信信号に対して最適フィルタリング特性を実現する例を提示する。携帯電話システムなどの伝達信号においては、信号の同期や識別をするためにあらかじめ伝送信号毎に決められた一定の信号系列をまず基地局から端末に向かって、あるいは端末から基地局に向かって送信してくることが通常行なわれている。
【0042】
これらの信号はそれぞれの無線機において既知であるので、これを例えばトレーニング信号として利用することが出来る。すなわち、この信号の複製を無線機内で生成し、これと受信信号の相互相関係数を求めれば、受信信号が所望信号に似てくる、すなわち、相互相関係数値を最大化しつつ受信信号電力を最小化すれば、妨害信号が抑圧されると共に、相互相関係数値は最大になる。
【0043】
したがって、無線機として最適受信信号が得られることになる。最大点の求め方はいろいろな方法が考えられるが、電圧制御型周波数可変共振子5または105に与える制御電圧信号を無作為に極微少量だけ変化させ、最大値の方向を探るという摂動法もひとつの方法であるし、相互相関係数値の最大値からのずれを評価関数として定義し、その導関数を計算により導出して最小点を探索するという方法もある。もちろん、真の伝送信号に相当する部分はあらかじめ知り得ないので、その部分に対する相互相関係数値は誤差となるが、既知の信号部分に特に着目して重み付けすることにより、所望信号と妨害信号では明らかに相互相関係数値に差が出てくるので、この方法は十分有効であると言える。
【0044】
また、送信信号に対して最適フィルタリング特性を実現する場合は、無線機は理想的な送信信号をあらかじめ知っているので、もっと簡単になり、送信信号と例えば出力端子15から得られるモニター信号の相互相関係数を最大化しつつ、トータルの送信信号を最小化すれば、不要なスプリアス送信信号は抑圧されることになる。
【0045】
なお、本実施の形態において、モニター信号10は図では無線部11から出力されるように描かれているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、端子15の外側に図示されていない信号分波器を持ってきて、そこから分波された信号を持ってきてモニター信号10としてもよい。そのような構成とすることにより、より正確に外部の電波環境を知ることができ、優れたフィルタの周波数特性を実現できることとなる。
【0046】
この適応型高周波フィルタの周波数特性について受信時の動作を、図6を用いて説明することができる。61は内部局発信号、62はイメージ周波数信号、63は受信周波数信号である。無線装置が必要とするのは受信周波数信号63だけである。よって、ここに使われるフィルタは、受信信号周波数63だけを通し、内部局発信号61、イメージ周波数信号62は減衰させるフィルタである。中間周波数が低い場合、すなわち、前記各周波数間隔が狭い場合は、非常に急峻なフィルタが要求され、挿入損失も大きくなる。言い換えれば、形状の非常に大きなフィルタが必要となってしまう。また、通常、受信周波数はある一定の帯域幅を持つため、その帯域幅が中間周波数に対して無視できなくなってくる場合は、フィルタの通過帯域と減衰帯域の最近接端の周波数間隔はさらに狭くなり、ますますフィルタへの負担が重くなってくることとなる。
【0047】
この適応型高周波フィルタの周波数特性について送信時の動作を、図7を用いて説明することができる。71は送信周波数信号、72は2倍高調波、73は3倍高調波、74はスプリアス信号である。無線装置が必要とするのは送信周波数信号71だけである。よって、ここに使われるフィルタは、送信信号周波数71だけを通し、2倍高調波72、3倍高調波73、スプリアス信号74は減衰させるフィルタである。スプリアス信号の周波数は、内部発振器9の発振周波数から予測することができるため、信号監視部4ではそれらの情報に基づき、制御信号6を算出することができる。
【0048】
本願発明の構成では、フィルタは逐次真に通過させたい周波数のみを通過周波数信号として保証し、減衰させたい信号が実際に存在する周波数においてのみ減衰量を保証するように、信号監視部がフィルタの周波数特性を適応的に制御するというものである。したがって、フィルタには必要最小限の共振器数と無負荷Q値が要求されるだけであるので、フィルタを小形化しつつ、挿入損失、優れた選択特性を得られるという格別の効果がある。
【0049】
上記課題をさらに言い換えれば、従来のフィルタは所望信号が存在する可能性があるところは全て通過帯域とし、妨害信号やスプリアス信号が存在する可能性があるところは全て減衰帯域としていた。この点は従来例で挙げた周波数シフト型高周波アンテナ共用器も位置情報検出型高周波アンテナ共用器もどちらにも当てはまる点である。これに対して、本願発明の構成は、真に所望信号あるいは妨害信号やスプリアス信号が存在する周波数を割り出してそれぞれそこに通過帯域、あるいは必要なだけの減衰極を持っていくという点で大きく異なっているのである。
【0050】
なお、上記説明では信号監視部4にはモニター信号10も入力されると書いたが、より簡便な方法として、周波数情報信号14だけで適応制御する方法も考えられる。この場合は、前述の無線装置よりフィルタリング特性の最適化という点では多少劣るが、回路規模はそれほど複雑にならずに済み、かつ、従来の高周波フィルタや無線装置よりも性能を向上させることができるという特徴を持つ。
【0051】
以上のように本実施例によれば、共振素子と、電圧制御型インピーダンス可変素子と、制御部と、信号監視部を具備し、前記共振素子と前記電圧制御型インピーダンス可変素子を電気的に接続し電圧制御型周波数可変共振素子を構成し、前記電圧制御型周波数可変共振素子と前記制御部を電気的に接続し、一ないしは複数個の前記電圧制御型周波数可変共振素子を用いてフィルタを構成するとともに、前記信号監視部は少なくとも前記フィルタが搭載される無線装置の内部発振器の発振周波数の情報に基づいて適応的に制御信号を発生させ、前記制御信号に基づき前記制御部にて発生させる制御電圧信号にて、前記フィルタの周波数特性を適応的に可変制御することにより、フィルタの周波数特性を無線装置の動作状態に応じて適応的に変化制御できる小形で高性能な適応型高周波フィルタを提供することができる。
【0052】
または、共振素子と、電圧制御型インピーダンス可変素子と、制御部と、信号監視部を具備し、前記共振素子と前記電圧制御型インピーダンス可変素子を電気的に接続し電圧制御型周波数可変共振素子を構成し、前記電圧制御型周波数可変共振素子と前記制御部を電気的に接続して、帯域通過型周波数可変共振素子と少なくともひとつは帯域阻止型周波数可変共振素子を形成し、前記帯域通過型周波数可変共振素子および帯域阻止型周波数可変共振素子を複数個組み合わせてフィルタを構成するとともに、前記フィルタの周波数特性を周囲の電波環境と前記フィルタを搭載する無線装置の内部発振器の発振周波数の情報を勘案して前記信号監視部において前記フィルタの最適周波数特性が得られるように適応的に制御する制御信号を発生させ、前記制御信号を前記制御部に伝達して制御電圧信号を発生させ、前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御できる小形で高性能な適応型高周波フィルタを提供することができる。
【0053】
(実施の形態2)
以下本発明の実施の形態2について図面を参照しながら説明する。
【0054】
図3は本発明の第2の実施の形態を示す適応型高周波アンテナ共用器の回路ブロック図を示すものである。308はアンテナ共用器部全体を示し、10はモニター信号、14は周波数情報信号、4は信号監視部、6は制御信号、3は制御部、7は制御電圧信号である。36は例えば受信端子、37は送信端子、38はアンテナ端子であり、送信信号、受信信号の周波数の割り当てにより、36と37は入れ替わってよい。
【0055】
31は上側極を持つ電圧制御型有極バンドパスフィルタ、32は下側極を持つ電圧制御型有極バンドパスフィルタ、33および34は電圧制御型バンドエリミネーションフィルタである。また、35はフィルタを共用器化するためのインピーダンス・位相調整素子である。端子36とインピーダンス・位相調整素子35までの間には上側極を持つ電圧制御型有極バンドパスフィルタ31と電圧制御型バンドエリミネーションフィルタ33が挿入される。端子37とインピーダンス・位相調整素子35までの間には下側極を持つ電圧制御型有極バンドパスフィルタ32と電圧制御型バンドエリミネーションフィルタ34が挿入される。
【0056】
このアンテナ共用器の伝達度を模式的に表したのが図8である。例えばここで、低い周波数帯を受信、高い周波数帯を送信と仮定すると、グラフ81は受信フィルタの伝達度を示し、グラフ82は送信フィルタの伝達度を示す。さらに詳しく見ていくと、83は受信通過帯域、84は送信通過帯域、85は受信フィルタの送信帯域減衰極、86は送信フィルタの受信帯域減衰極、87および88はスプリアス信号除去のための周波数可変ノッチの減衰極を示している。
【0057】
受信通過帯域83の周波数は送信フィルタの受信帯域減衰極86の周波数に合致し、送信通過帯域84の周波数は受信フィルタの送信帯域減衰極85の周波数に合致する。実施例の回路によれば、受信通過帯域83と受信フィルタの送信帯域減衰極85、および送信通過帯域84と送信フィルタの受信帯域減衰極は一定の周波数間隔を保ったまま同期して変化する。
【0058】
この有極フィルタ単体の振る舞いは、特開平08−172333号公報で明らかにされているが、これを2つ組合わせてアンテナ共用器としての特性を実現するという技術思想は今まで着想されていなかった。すなわちアンテナ共用器においては、前記合致する通過帯域と減衰極の周波数は、2つの通過帯域の間隔を維持して変化させれば、その合致の関係は崩れることが無いというところが新規な点であり、この特徴を生かすことにより、通常7個から10個程度の共振器を必要とする従来のアンテナ共用器とは比べ物にならないほど簡単に、例えばたった2個の共振器でアンテナ共用器を構成することができるという画期的な効果を生じせしめる。すなわち、アンテナ共用器の小形化、低ロス化、部品点数の削減による製造のし易さなどの格別の効果が挙げられる。
【0059】
さらに、不要な妨害信号やスプリアス信号に対しては、ノッチ型の周波数可変共振素子33もしくは34を用いて、図8の87、88で表されるような減衰極をまさに必要とする周波数に持っていくのである。
【0060】
以上のように、2つのフィルタが、第1の通過帯域と第1の阻止帯域を有する、帯域阻止型周波数可変共振素子の阻止帯域は所望受信信号対妨害波比を最大化するように、信号監視部にて無線装置の受信信号の不要妨害信号を監視しながら適応制御アルゴリズムによって制御信号を発生し、制御部にて制御信号に基づく制御電圧信号でフィルタの周波数特性を適応的に変化制御する第1の適応型高周波フィルタと、第2の通過帯域と第2の阻止帯域を有する、帯域阻止型周波数可変共振素子の阻止帯域は送信信号の不要スプリアス信号波を最小化するように、信号監視部にて無線装置の送信信号の不要スプリアス信号波を監視しながら適応制御アルゴリズムによって制御信号を発生し、制御部にて制御信号に基づく制御電圧信号でフィルタの周波数特性を適応的に変化制御する第2の適応型高周波フィルタからなり、前記第1の通過帯域と前記第1の阻止帯域は周波数間隔が一定で同期して変化し、前記第2の通過帯域と前記第2の阻止帯域も周波数間隔が一定で同期して変化し、前記第1の通過帯域と前記第2の阻止帯域が略一致し、前記第1の阻止帯域と前記第2の通過帯域が略一致することを特徴とする小形で高性能な適応型高周波アンテナ共用器を提供することができる。
【0061】
(実施の形態3)
以下本発明の実施の形態3について図面を参照しながら説明する。
【0062】
図4は本発明の実施の形態3を示す適応型高周波フィルタの外観斜視図を示すものである。41はセラミック積層体、42はバラクターダイオード、43は制御用ICである。セラミック積層体41の中にはフィルタを構成する共振器が少なくともひとつは含まれている。また、バラクターダイオード42はセラミック積層体41の上面に実装されており、これにより電圧制御型周波数可変共振素子が積層構造で実現されることとなる。このような構造をとることにより、フィルタの小形化が実現できるとともに、共振器とバラクターダイオードを一体化することによりこの形で高周波特性が保証できることとなる。すなわち、余計な寄生容量や寄生インダクタによる高周波特性の劣化を考えなくてもすむという大きな利点がある。
【0063】
もちろん、積層体上面にはバラクターダイオード42以外の、インダクタや抵抗が実装されていて構わない。また、積層体の内部にインダクタや容量が形成されていても構わないことは言うまでも無い。
【0064】
制御用IC43は、少なくとも実施の形態1、2で示した信号監視部を含み、好ましくは制御部も集積一体化されて含むような半導体ICである。そのような構成であれば、制御用IC43から積層体(電圧制御型周波数可変共振素子)に伝達される信号は直流の制御電圧信号なので、高周波的なインピーダンス整合などを気にしなくても良い。
【0065】
以下、本発明の実施の形態3の別の変形例について図面を参照しながら説明する。
【0066】
図5は本発明の実施の形態3の別の変形例を示す適応型高周波フィルタの外観斜視図を示すものである。図5において、51は低温焼成積層セラミック内蔵適応型高周波フィルタ、52は内蔵アダプティブアンテナアレイ、53は制御用ICで、それらはすべてセラミック積層体の表面あるいは内部に形成または実装されている。
【0067】
以上のように構成されたセラミック積層RFデバイスについて、さらに、図5を用いてその動作を説明する。まず図5はセラミック積層RFデバイスを示すものであって、適応型高周波フィルタと、アダプティブアンテナアレイと、一ないしは複数個の半導体ICがひとつのセラミック積層体に集積化されていることを示したものである。
【0068】
内蔵アダプティブアンテナアレイ52は、2素子以上のアンテナ素子(図5は2素子の場合を例示)の励振の振幅と位相を制御し、アンテナパターンのビーム方向とヌル(零点)方向を、例えば信号対妨害波比を最大にするような指導原理に基づいて制御するものである。その制御の演算は制御用IC53の中で行なわれ、制御信号は同制御用IC53から出力されるものである。制御用IC53は、少なくとも実施の形態1、2で示した信号監視部を含み、好ましくは制御部も集積一体化されて含むような半導体ICである。前記した励振の振幅と位相を制御する回路はセラミック積層体の内部もしくは表面に作られる。アダプティブアンテナアレイは周辺の電波環境や人体近接効果を考慮して制御されるので、無線部の特性は飛躍的に向上する。低温焼成積層内蔵適応型高周波フィルタ51は、アダプティブアンテナアレイと同じく、電波環境に応じて例えば信号対妨害波比を最大にするような指導原理に基づいて、フィルタの通過特性を制御するものである。
【0069】
構成としては、例えば、ストリップライン共振素子にバラクタダイオードを装荷し、周波数可変型共振器を構成し、電圧により周波数を制御できるフィルタを構成する。フィルタとしては、帯域通過型、帯域阻止型などが考えられる。このようにすれば、所望信号を通過帯域とし、妨害信号には阻止帯域をあてがうので、無線部の特性は飛躍的に向上する。これらの制御信号は、制御用IC53より出力され、共振器可変素子はセラミック積層体の内部もしくは表面に作られるので、大幅な小形化が可能となる。さらに、ここで考えている制御用IC53は、大規模集積化されたICを想定しており、無線部の送受信回路として働くだけでなく、低温焼成積層内蔵適応型高周波フィルタや内蔵アダプティブアンテナアレイの制御信号も発生するものとすれば全体を大幅に小形化し、部品点数の削減によるコストダウンも可能となる。もちろん上記記載は半導体ICを1チップ化することを必須条件とするものではなく、べつに複数構成のICとすることを拒むものではない。
【0070】
以上のように本実施の形態によれば、セラミック積層体と、適応型高周波フィルタと、アダプティブアンテナアレイと、一ないしは複数個の制御用ICを具備し、前記セラミック積層体の内部または表面に前記適応型高周波フィルタと前記アダプティブアンテナアレイと前記制御用ICを形成もしくは実装し、前記適応型高周波フィルタと前記アダプティブアンテナアレイを前記制御用ICにより制御することにより、小形で高性能なセラミック積層RFデバイスおよびそれを用いた携帯電話機を実現することができる。なお、本実施の形態においては、アンテナとしてアダプティブアンテナアレイを用いたが、本願発明はこれに限ることなく、例えば通常のセラミックアンテナを用いても前述の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0071】
【発明の効果】
以上のように本発明は、共振素子と、電圧制御型インピーダンス可変素子と、制御部と、信号監視部を具備し、前記共振素子と前記電圧制御型インピーダンス可変素子を電気的に接続し電圧制御型周波数可変共振素子を構成し、前記電圧制御型周波数可変共振素子と前記制御部を電気的に接続して、帯域通過型周波数可変共振素子と少なくともひとつは帯域阻止型周波数可変共振素子を形成し、前記帯域通過型周波数可変共振素子および帯域阻止型周波数可変共振素子を複数個組み合わせてフィルタを構成するとともに、前記フィルタの周波数特性を周囲の電波環境と前記フィルタを搭載する無線装置の内部発振器の発振周波数の情報を勘案して前記信号監視部において前記フィルタの最適周波数特性が得られるように適応的に制御する制御信号を発生させ、前記制御信号を前記制御部に伝達して制御電圧信号を発生させ、前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御することにより、フィルタの周波数特性を周囲の電波環境や無線装置の動作状態に応じて適応的に変化制御できる小形で高性能な適応型高周波フィルタおよび適応型高周波アンテナ共用器およびそれらを用いた無線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における適応型高周波フィルタの回路ブロック図
【図2】本発明の実施の形態1の別の変形例における適応型高周波フィルタの回路ブロック図
【図3】本発明の実施の形態2における適応型高周波アンテナ共用器の回路ブロック図
【図4】本発明の実施の形態3における適応型高周波フィルタの外観斜視図
【図5】本発明の実施の形態3の別の変形例における適応型高周波フィルタの外観斜視図
【図6】本発明の実施の形態1における適応型高周波フィルタの動作を説明するための周波数−受信信号強度の関係図
【図7】本発明の実施の形態1における適応型高周波フィルタの動作を説明するための周波数−送信信号強度の関係図
【図8】本発明の実施の形態2における適応型高周波アンテナ共用器の動作を説明するためのフィルタ特性図
【図9】従来の周波数シフト型高周波アンテナ共用器の回路図
【図10】従来の無線装置における各高周波部品の配置を説明するための無線装置の内部構造図
【符号の説明】
1 共振素子
2 電圧制御型インピーダンス可変素子
3 制御部
4 信号監視部
5 電圧制御型周波数可変共振子
6 制御信号
7 制御電圧信号
8 無線装置
9 内部発振器

Claims (8)

  1. 共振素子と、電圧制御型インピーダンス可変素子と、制御部と、信号監視部を具備し、前記共振素子と前記電圧制御型インピーダンス可変素子を電気的に接続し電圧制御型周波数可変共振素子を構成し、前記電圧制御型周波数可変共振素子と前記制御部を電気的に接続して、帯域通過型周波数可変共振素子と少なくともひとつは帯域阻止型周波数可変共振素子を形成し、前記帯域通過型周波数可変共振素子および帯域阻止型周波数可変共振素子を複数個組み合わせてフィルタを構成するとともに、前記フィルタの周波数特性を周囲の電波環境と前記フィルタを搭載する無線装置の内部発振器の発振周波数の情報を勘案して前記信号監視部において前記フィルタの最適周波数特性が得られるように適応的に制御する制御信号を発生させ、前記制御信号を前記制御部に伝達して制御電圧信号を発生させ、前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御し、前記帯域阻止型周波数可変共振素子の阻止帯域は所望受信信号対妨害波比を最大化するように、前記信号監視部にて前記無線装置の受信信号の不要妨害信号を監視しながら適応制御アルゴリズムによって制御信号を発生し、前記制御部にて前記制御信号に基づく制御電圧信号で前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御することを特徴とする適応型高周波フィルタ。
  2. 前記帯域阻止型周波数可変共振素子の阻止帯域は送信信号の不要スプリアス信号波を最小化するように、前記信号監視部にて前記無線装置の送信信号の前記不要スプリアス信号波を監視しながら適応制御アルゴリズムによって制御信号を発生し、前記制御部にて前記制御信号に基づく制御電圧信号で前記フィルタの周波数特性を適応的に変化制御することを特徴とする請求項記載の適応型高周波フィルタ。
  3. 前記共振素子が分布定数型のTEMモード共振器であることを特徴とする請求項記載の適応型高周波フィルタ。
  4. 前記電圧制御型インピーダンス可変素子がバラクタダイオードを用いた可変容量回路であることを特徴とする請求項記載の適応型高周波フィルタ。
  5. 前記共振素子が積層誘電体内に形成された分布定数型のストリップ線路共振器であり、前記電圧制御型インピーダンス可変素子がバラクタダイオードを用いた可変容量回路であり、前記バラクタダイオードが前記積層誘電体表面に実装されたことを特徴とする請求項記載の適応型高周波フィルタ。
  6. 2つのフィルタが、第1の通過帯域と第1の阻止帯域を有する請求項記載の第1の適応型高周波フィルタと、第2の通過帯域と第2の阻止帯域を有する請求項記載の第2の適応型高周波フィルタからなり、前記第1の通過帯域と前記第1の阻止帯域は周波数間隔が一定で同期して変化し、前記第2の通過帯域と前記第2の阻止帯域も周波数間隔が一定で同期して変化し、前記第1の通過帯域と前記第2の阻止帯域が略一致し、前記第1の阻止帯域と前記第2の通過帯域が略一致することを特徴とする適応型高周波アンテナ共用器。
  7. 請求項記載の前記適応型高周波フィルタを用いたことを特徴とする無線装置。
  8. 請求項記載の前記適応型高周波アンテナ共用器を用いたことを特徴とする無線装置。
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