JP4439680B2 - 動力伝達チェーンのガイド装置 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、複数のスプロケットに巻掛けられて動力を伝達する動力伝達チェーンと、チェーン伝動装置においてそのような動力伝達チェーンと共に用いられるチェーンテンショナーやチェーンガイド等のガイド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
チェーンの内周側と外周側の両方でスプロケットと噛合うことができる従来の動力伝達チェーンの一例として、特公昭55−26344号公報に示されたものがある。すなわち図8に概略を示すように、チェーン01が同一形状のプレート02,03を交互に無端状に連結して構成されている。そしてプレート02,03はいずれもチェーンの内周側と外周側のいずれか一方でスプロケット04に噛合う歯と他方の側でスプロケット05と噛合う歯の両方を備えている。すなわちプレート02,03は中央がくびれており、その両側にそれぞれ一対の山型の歯が形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の両面噛合型チェーンにおいては、プレート02,03に設けられた山型の歯の先端がチェーンテンショナやチェーンガイド等のシュー面に接触するので、シュー表面の摩耗が激しく、また騒音の原因にもなっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段および効果】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、上下に突出してスプロケットと噛合うように左右対称かつ上下対称に設けられる2対の噛合歯を有し中央部がくびれたチェーン構成単位板の列を複数層重ねて、枢軸により交互に無端状に連結するとともに、上記チェーン構成単位板の層の両側にさらに重ねて、高さが上記チェーン構成単位板よりも高い複数のチェーン側摺接板を上記枢軸により同軸に連結して成るチェーンと、上記チェーンの回送面に沿って配され上記チェーンをガイドするチェーン摺接部材と、上記チェーン摺接部材の上記回送面の反対側を補強支持する支持部材とを備え、上記支持部材には、上記チェーン側摺接板の間に位置するチェーン構成単位板と対向する中央部に中空部が形成され、該中空部の両側には、上記チェーン側摺接板に対向して該チェーン側摺接板からの荷重が加わる位置に支持壁が形成されていることを特徴とする動力伝達チェーンのガイド装置である。
【0005】
請求項1記載の発明は上記のとおり構成されていて、チェーンにあっては、チェーン構成単位板の層を、それよりも高さの高いチェーン側摺接板で挟んで無端状に連結しているので、チェーン構成単位板の層とチェーン摺接部材との間に隙間ができ、噛合歯がチェーン摺接部材に接触することはない。したがってチェーンの回送抵抗が減少するとともに、チェーン摺接部材表面の摩耗も著しく軽減され、また騒音も小さくなる。
【0006】
請求項1記載の発明ではまた、チェーン摺接部材の支持部材の中央部に中空部を設けたので、ガイド装置が軽量化され、コストも安くなる。また、支持部材の中央部はチェーンからの荷重が小さいので、中空であっても強度的に問題がなく、しかも、中空部の両側には、チェーン側摺接板に対向して該チェーン側摺接板からの荷重が加わる位置に支持壁が形成されるので、チェーン側摺接板からチェーン摺接部材を介して作用する荷重は、その荷重が加わる位置に設けられる支持壁により受けられ、チェーン摺接部材の剛性が確保される。
【0007】
次に請求項2記載の発明は、前記に加えて、上記チェーン摺接部材と上記回送面の上記チェーン側摺接板に接触する位置の間に開口する潤滑油供給路が上記チェーン摺接部材に形成されたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明は上記のとおり構成されており、チェーン摺接部材表面とチェーン構成単位板との間に隙間があるので、潤滑油供給路の開口部から潤滑油が流出しやすく、またこの隙間が油だまりとなって、チェーン側摺接板およびチェーン構成単位板の潤滑性が向上する。
【0009】
さらに請求項3記載の発明は、前記請求項1記載の発明の特徴に加えて、前記支持部材に形成された中空部と前記チェーン摺接部材の前記回送面の前記チェーン側摺接板に接触する位置の間とを連通する油路が設けられたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は上記のとおり構成されており、支持部材の中空部と油路を経由して、チェーン摺接部材の表面に潤滑油を供給する。この場合、チェーン摺接部材表面とチェーン構成単位板の層との間に隙間があるので、油路開口部から油が流出しやすく、またこの隙間が油だまりとなり、チェーン側摺接板およびチェーン構成単位板の潤滑性が向上する。また中空部も油路として使えるので、油路の後加工が少なくてすむ。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態におけるチェーン構成単位であるリンクプレートの形状を示す図である。このリンクプレート2には上下に突出して図示しないスプロケットと噛合う2対の噛合歯2aが左右対称かつ上下対称に設けられ、中央部がくびれた形状をしている。また上下対称面上の上記2対の噛合歯2aの根元部に、連結用のピンを挿入するピン穴2b,2bが設けられている。
【0012】
次に図2はこの実施形態で用いられるチェーン側摺接板であるシューライナの形状を示す図である。このシューライナ4も、上下対称、左右対称の形状をしていて、その上下対称面に沿って前記連結用のピンを挿入する長穴4aが設けられている。この長穴4aの長さ(ピン軸線間隔)Lは、前記リンクプレート2に設けられたピン穴2b,2bの軸線間隔Dと同じか、またはDよりも僅かに長い。またこのシューライナ4の高さHは上記リンクプレート2の高さhよりも僅かに高い。
【0013】
次に図3の(A)は前記したリンクプレート,シューライナ等を連結して構成されたチェーンの一部を示す側面図、図3の(B)は同じく平面図である。
【0014】
図中2は前記リンクプレート、4は前記シューライナである。3は形状・寸法ともに前記リンクプレート2と全く同一なリンクプレートであって、上記リンクプレート2とは前記ピン穴2b,2bの間隔だけずらせて配される。このようにリンクプレート2,3の列を複数層(図示例では7層)交互に重ねて、枢軸であるピン5により無端状に連結するのであるが、本実施形態では、これらリンクプレート2,3の層の両側にさらに重ねて前記シューライナ4を配し、上記ピン5により同軸に連結してチェーン1を形成する。なお6はガイド板である。
【0015】
次に図4は本実施形態に使用されるチェーンテンショナーアーム11を示す側面図、図5は図4のV−V矢視横断面図である。
【0016】
図中12は、前記チェーンの回送面に沿って配され、同チェーンをガイドする断面コ字状のシューであって、チェーン摺接部材である。また13は、上記シュー12の上記回送面の反対側(背側)を補強支持する支持部材としてのボディ部である。上記シュー12はボディ部13よりも表面摩擦の小さい材料からなる樹脂や金属等で製造され、上記ボディ部13はシュー12よりも剛性の高い材料からなる樹脂や金属等で製造され、両者は接合されている。
【0017】
次に図6は前記チェーン1が上記チェーンテンショナーアーム11によってガイド・押圧される状態を示す横断面図である。本実施形態では上記ボディ部材13の、前記シューライナ4の間に位置するリンクプレート2,3の層と対向する、中央部に、例えばガスインジェクション成形により、中空部13aが設けられる。該中空部13aの両側には剛性の高い支持壁13b,13bが形成される。
【0018】
本実施形態は前記のとおり構成されていて、チェーン1にあっては、リンクプレート2,3の層を、それらよりも高さが高いシューライナ4で挟んで、無端状に連結しているので、図6に示されるようにリンクプレート2,3の層とシュー12との間に隙間Sができ、前記噛合歯2a等がシュー12に接触することはない。したがってチェーン1の回送抵抗が軽減するとともに、シュー12表面の摩耗も著しく軽減され、また騒音も小さくなる。さらに、両端のシューライナ4がシュー12と摺接するので、チェーン1の安定した摺動が可能になる。
【0019】
本実施形態ではまた、チェーンテンショナーアーム11のボディ部13中央部に中空部13aを設けたので、チェーンテンショナーアーム11が軽量化され、コストも安くなる。ボディ部13中央部は、その外側のシュー12表面にチェーン1(リンクプレート2,3)が接触せず、チェーン1からの荷重が小さいので、中空であっても強度的に問題はない。そしてシューライナ4が接触して荷重が加わる両側部は、強固な支持壁13b,13bによってシュー12が支えられ、剛性が確保される。
【0020】
なお、ガスインジェクション成形による中空化段階で、内圧をかけてシュー12面を型に押し付けるので、シュー12の表面すなわちチェーン摺接面の歪みがなくなる。
【0021】
次に図7は本発明の他の実施形態において、チェーン1がチェーンテンショナーアーム11によりガイド・押圧される状態を示す横断面図である。本実施形態では、前記チェーンテンショナーアーム11のボディ部13に形成された中空部13aと上記シュー12の表面の前記シューライナ4に接触する位置の間とを連通する潤滑油通路14が設けられている。
【0022】
本実施形態はこのように構成されていて、中空部13a,潤滑油通路14を経由してシュー12表面に潤滑油が供給される。この場合、シュー12表面とリンクプレート層2,3との間に隙間があるので、潤滑油通路14開口部から油が流出しやすく、またこの隙間が油だまりとなり、シューライナ4の潤滑性が向上する。また中空部13aも油路として使えるので、潤滑油通路14の後加工が少なくてすむ。なお潤滑油通路14を形成しても、前記のとおりチェーン1からの荷重が小さい位置であるから、剛性の低下は問題にならない。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態におけるチェーン構成単位であるリンクプレートの形状を示す図である。
【図2】図2は上記実施形態で用いられるチェーン側摺接板であるシューライナの形状を示す図である。
【図3】図3の(A)は上記リンクプレート,シューライナ等を連結して構成されたチェーンの一部を示す側面図、図3の(B)は同じく平面図である。
【図4】図4は上記実施形態で用いられるチェーンテンショナーアームを示す側面図である。
【図5】図5は図4のV−V矢視横断面図である。
【図6】図6は上記チェーンが上記チェーンテンショナーアームによってガイド・押圧される状態を示す横断面図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態においてチェーンがチェーンテンショナーアームによりガイド・押圧される状態を示す横断面図である。
【図8】図8は従来の両面噛合型チェーンの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1…チェーン、2,3…リンクプレート(チェーン構成単位板)、2a…噛合歯、2b,2b…ピン穴、4…シューライナ(チェーン側摺接板)、4a…長穴、5…ピン(枢軸)、6…ガイド板、11…チェーンテンショナーアーム、12…シュー(チェーン摺接部材)、13…ボディ部(支持部材)、13a…中空部、13b,13b…支持壁、14…潤滑油通路。
Claims (3)
- 上下に突出してスプロケットと噛合うように左右対称かつ上下対称に設けられる2対の噛合歯を有し中央部がくびれたチェーン構成単位板の列を複数層重ねて、枢軸により交互に無端状に連結するとともに、上記チェーン構成単位板の層の両側にさらに重ねて、高さが上記チェーン構成単位板よりも高い複数のチェーン側摺接板を上記枢軸により同軸に連結して成るチェーンと、上記チェーンの回送面に沿って配され上記チェーンをガイドするチェーン摺接部材と、上記チェーン摺接部材の上記回送面の反対側を補強支持する支持部材とを備え、上記支持部材には、上記チェーン側摺接板の間に位置するチェーン構成単位板と対向する中央部に中空部が形成され、該中空部の両側には、上記チェーン側摺接板に対向して該チェーン側摺接板からの荷重が加わる位置に支持壁が形成されていることを特徴とする動力伝達チェーンのガイド装置。
- 上記チェーン摺接部材と上記回送面の上記チェーン側摺接板に接触する位置の間に開口する潤滑油供給路が上記チェーン摺接部材に形成されたことを特徴とする請求項1記載の動力伝達チェーンのガイド装置。
- 上記支持部材に形成された中空部と上記チェーン摺接部材の上記回送面の上記チェーン側摺接板に接触する位置の間とを連通する油路が設けられたことを特徴とする請求項1記載の動力伝達チェーンのガイド装置。
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