以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
[第一実施形態]
はじめに、図1乃至図5を参照しながら、本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10について説明する。
本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10は、例えば、乗用自動車等の車両に備えられた内燃機関において燃焼室44内の燃焼ガス46を点火させるのに好適に用いられるものである。
本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10は、図1に示されるように、レーザ光を発振可能なレーザ光発振手段としてのレーザ光発振部12と、燃焼室44内にレーザ光を出射するレーザ光出射手段としてのレーザ光出射部14と、レーザ光発振部12のレーザ発振を制御する制御手段としての制御部16と、運転状況検出手段としての運転状況検出部18と、を主要な構成として備えている。
レーザ光発振部12は、後に詳述するようにレーザ光出射部14に複数の異なる発振パターンのレーザ光を発振するものであり、レーザ光源群20と、光ファイバ群22と、レンズアレイ24と、Qスイッチ式固体レーザ26と、を有して構成されている。
レーザ光源群20は、複数のレーザ光源20a,20b(例えば中心に1個のレーザ光源20a、その周囲に5個のレーザ光源20b)を備えた構成となっている。各レーザ光源20a,20bは、制御部16のレーザ制御装置36によって独立して制御されることによりそれぞれレーザ光を発振可能な構成となっている。
各レーザ光源20a,20bのレーザ光発振側には、光ファイバ群22の入口が位置している。光ファイバ群22には、複数の光ファイバが備えられており、各光ファイバは、対応するレーザ光源20a,20bから発振されたレーザ光をレンズアレイ24に導いて出射するようになっている。
レンズアレイ24は、レーザ光源群20から光ファイバ群22を介して出射された各レーザ光が入射される複数のレンズ24a,24bを備えている。この各レンズ24a,24bは、レーザ光源群20から光ファイバ群22を介して出射された各レーザ光を集光してQスイッチ式固体レーザ26に出射するようになっている。
Qスイッチ式固体レーザ26は、光増幅媒体26aの両側に全反射鏡26b及び出射鏡26cを有する構成となっており、レンズアレイ24の各レンズ24a,24bから出射された各レーザ光が集光されると励起状態となってレーザ光を二焦点レンズ28に発振するようになっている。このとき、Qスイッチ式固体レーザ26は、各レーザ光の集光位置(つまり励起場所)に応じて発振特性が異なるようになっている。
つまり、図2(a)に動作原理図を示すように、レーザ光源20aから発振されたレーザ光が光ファイバ群22を介してレンズアレイ24の中心付近のレンズ24aに入射され、このレンズ24aから出射されたレーザ光がQスイッチ式固体レーザ26の中心付近に入射された場合、このレーザ光が入射された個所が励起され、Qスイッチ式固体レーザ26の中心付近から二焦点レンズ28の中心領域28aに向けてレーザ光が発振されるようになっている(発振パターン1)。
また、図2(b)に動作原理図を示すように、レーザ光源20bから発振されたレーザ光が光ファイバ群22を介してレンズアレイ24の周辺部のレンズ24bに入射され、このレンズ24bから出射されたレーザ光がQスイッチ式固体レーザ26の周辺部に入射された場合、このレーザ光が入射された個所が励起され、Qスイッチ式固体レーザ26の周辺部から二焦点レンズ28の周辺領域28bに向けてレーザ光が発振されるようになっている(発振パターン2)。
また、図2(c)に動作原理図を示すように、レーザ光源20a,20bから発振されたレーザ光が光ファイバ群22を介してレンズアレイ24の中心付近及び周辺部のレンズ24a,24bに入射され、このレンズ24a,24bから出射されたレーザ光がQスイッチ式固体レーザ26の中心付近及び周辺部に入射された場合、このレーザ光が入射された個所が励起され、Qスイッチ式固体レーザ26の中心付近及び周辺部から二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bに向けてレーザ光が発振されるようになっている(発振パターン3)。
このように、本実施形態のQスイッチ式固体レーザ26は、レンズアレイ24から出射されたレーザ光の入射位置に応じて複数の異なる発振パターンのレーザ光を二焦点レンズ28に発振するようになっている。
レーザ光出射部14は、図1に示されるように、複数焦点レンズとしての二焦点レンズ28と出射窓30を有して構成されている。二焦点レンズ28は、中心領域28aと中心領域28aよりも径方向外側の周辺領域28bとを有して構成されており、この中心領域28aと周辺領域28bとでは出射窓30を介して燃焼室44内に出射するレーザ光の焦点距離が異なる構成となっている。つまり、中心領域28aでは焦点距離が短く、周辺領域28bでは焦点距離が長く設定されている。
そして、本実施形態では、レンズアレイ24、Qスイッチ式固体レーザ26、二焦点レンズ28は、ハウジングケース32に収容されている。ハウジングケース32の一方には、光ファイバ群22が導入されており、ハウジングケース32の他方側は、シリンダヘッド40の壁部に一体に固定されている。また、ハウジングケース32の他方側は、出射窓30によって燃焼室44内と隔離されている。
制御部16は、エンジンコントローラ34とレーザ制御装置36を有して構成されている。エンジンコントローラ34には、運転状況検出部18から出力された運転状況検出信号が入力されるようになっている。エンジンコントローラ34は、運転状況検出部18から出力された運転状況検出信号を入力すると、後に詳述するように運転状況検出信号に応じたコントロール指令を生成し、これをレーザ制御装置36に出力するようになっている。
レーザ制御装置36には、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令が入力されるようになっている。レーザ制御装置36は、演算装置及び記憶装置を有して構成されており、記憶装置には、後に詳述する点火数マップ36a及び点火位置マップ36b(図3参照)が記憶されている。
また、レーザ制御装置36は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、二焦点レンズ28から出射窓30を介して燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20bのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択し、このレーザ光源からレーザ光を発振させるようになっている。
運転状況検出部18は、車両の運転状況として、例えば、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、これをエンジンコントローラ34に出力するようになっている。
次に、本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10の動作について説明する。
まず、運転状況検出部18は、車両の運転状況として、例えば、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及び回転数等を検出する。そして、運転状況検出部18は、これら車両の運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、これをエンジンコントローラ34に出力する。
エンジンコントローラ34は、運転状況検出部18から出力された運転状況検出信号を入力すると、運転状況検出信号に応じたコントロール指令を生成し、これを運転状況検出信号と共にレーザ制御装置36に出力する。
レーザ制御装置36は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、図4に示すプログラムの処理を開始する。このとき、運転状況検出部18によって車両の運転状況として例えば成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数を検出するようにした場合には、レーザ制御装置36は、運転状況検出信号に基づいて成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数を検出する。(ステップS1)。
続いて、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のEGR率及びエンジン回転数と、図3(a)に示される点火数マップ36aとに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定する(ステップS2)。
この場合、エンジン回転数が低く、EGR率も低い状態では、燃焼室44内の混合気の着火性が比較的に良いため、消費電力を抑制すべく、一点点火とする。一方、エンジン回転数が高く、EGR率も高い状態では、着火性に劣るため、多点点火(本実施形態では一例として二点点火)とする。
また、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のトルク及びエンジン回転数と、図3(b)に示される点火位置マップ36bとに基づいて、成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する(ステップS3)。
この場合、エンジン回転数が増加すると共にトルクが増加すると、燃料噴射時期が進角し、これに伴い最適混合気位置もピストン42側に移動するので、この状態では、ピストン42側に点火位置を設定する。一方、エンジン回転数が低下すると共にトルクが低下すると、最適混合気位置はシリンダヘッド40側に移動するので、この状態では、シリンダヘッド40側に点火位置を設定する
そして、上述のようにして決定した点火数及び点火位置に基づいてレーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20bのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択し、このレーザ光源からレーザ光を発振させる(ステップS4)。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、レーザ光源20aからレーザ光を発振させる。レーザ光源20aからレーザ光が発振されると、このレーザ光は、光ファイバ群22を介してレンズアレイ24の中心付近のレンズ24aに入射され、このレンズ24aから出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ26の中心付近に入射される。これにより、このレーザ光が入射された個所が励起され、Qスイッチ式固体レーザ26の中心付近から二焦点レンズ28の中心領域28aに向けてレーザ光が発振される(発振パターン1)。そして、二焦点レンズ28の中心領域28aから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
また、ピストン42側位置での一点点火とする場合には、レーザ光源20bからレーザ光を発振させる。レーザ光源20bからレーザ光が発振されると、このレーザ光は、光ファイバ群22を介してレンズアレイ24の周辺部のレンズ24bに入射され、このレンズ24bから出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ26の周辺部に入射される。これにより、このレーザ光が入射された個所が励起され、Qスイッチ式固体レーザ26の周辺部から二焦点レンズ28の周辺領域28bに向けてレーザ光が発振される(発振パターン2)。そして、二焦点レンズ28の周辺領域28bから出射窓30を介して燃焼室44のピストン42側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のピストン42側位置での一点点火となる。
また、多点点火(二点点火)とする場合には、レーザ光源20a,20bからレーザ光を発振させる。レーザ光源20a,20bからレーザ光が発振されると、このレーザ光は、光ファイバ群22を介してレンズアレイ24の中心付近及び周辺部のレンズ24a,24bに入射され、このレンズから出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ26の中心付近及び周辺部に入射される。これにより、このレーザ光が入射された個所が励起され、Qスイッチ式固体レーザ26の中心付近及び周辺部から二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bに向けてレーザ光が発振される(発振パターン3)。そして、二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置での二点点火となる。
このように、本実施形態では、レーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20bのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択することによりQスイッチ式固体レーザ26から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせて二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置を変更し、点火数及び点火位置を変更する。
次に、本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するためには、レーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20bからレーザ光を発振するレーザ光源を選択し該レーザ光源からレーザ光を発振させるだけで良い。
この構成によれば、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するために、燃焼室44内にレーザ光を出射する光学系(例えば本実施形態では二焦点レンズ28など)を移動させる必要がない。従って、光学系を移動させるための機械的な移動機構が不要となる。これにより、車両走行に伴う振動等の影響を受けずに点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更することが可能となる。
また、本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10では、点火数を変更するためには、レーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20bからレーザ光を発振するレーザ光源を選択し該レーザ光源からレーザ光を発振させるだけで良いので、二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数の緻密な設定ができる。これにより、燃焼室44内の光エネルギが急激に増大することなく、燃焼室44内に出射するレーザ光の集光数を変更することが可能となる。
さらに、二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を変更する場合にも、レーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20bからレーザ光を発振するレーザ光源を選択し該レーザ光源からレーザ光を発振させるだけで良いので、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置の変更が容易である。
また、本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10では、二焦点レンズ28の中心領域28aの焦点距離と周辺領域28bの焦点距離とを自在に設定することができる。これにより、多点点火する場合には燃焼室44内の点火位置を互いに十分に離すことが可能となる。
また、本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10では、上述のように、車両の運転状況に応じて燃焼室44内の点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更することができる。この構成によれば、成層燃焼方式において運転状況の変化に伴い最適混合気位置が変化しても、常に最適混合位置での点火が可能となる。従って、内燃機関の燃焼を車両の運転状況に合わせて最適な状態に保つことが可能となる。これにより、未燃燃料の低減、Soot生成の抑制等により燃焼効率が向上し、高効率で低エミッションのエンジンを得ることが可能となる。
また、本実施形態の上記構成によれば、均質燃焼方式においても、ノッキング条件下にて燃焼室44の最適位置での多点点火が可能であり、ノッキングを効果的に抑制することができる。これにより、圧縮比をアップすることが可能となり、エンジンの熱効率を高めることができる。また、均質燃焼方式ではトルクが低い場合やエンジン回転数が高い場合にはノッキングしにくいが、本実施形態では、このような場合には一点点火とすることができる。このように、運転状況に応じて点火数を減らすことができるので、これにより点火に要する過剰なエネルギ消費を抑制することが可能となる。
次に、本発明の第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10の変形例について説明する。
上記実施形態では、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、図3(a),(b)に示される点火数マップ36a及び点火位置マップ36bに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定するようにしていたが、次のようにしても良い。
つまり、運転状況検出部18によって車両の運転状況として例えば均質運転時のトルク及びエンジン回転数を検出するようにし、図5に示される点火数マップ36aに基づいて、均質運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火数を決定しても良い。
つまり、ノッキングにしにくい低トルク又は高回転時には、消費電力を抑制すべく、一点点火とする。一方、エンジン回転数が低下或いはトルクが増加すると、これらに伴ってノッキングが生じやすくなるため、このときには多点点火とする。このとき、燃焼室44内にて二点点火以上とする場合には、レーザ光源群20のレーザ光源数、レンズアレイ24のレンズ数、二焦点レンズ28の焦点距離の異なる領域数を点火数と同等にすれば良い。
そして、この決定した点火数に基づいてレーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20bのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択し、このレーザ光源を励起させてレーザ光を発振させても良い。
また、本実施形態では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20bのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択することでQスイッチ式固体レーザ26から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせたが、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方が変更されるようにレーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20bのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択することでQスイッチ式固体レーザ26から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせても良い。
また、車両の運転状況として検出する項目をエンジンの特性等に応じてその他の項目に変更すると共に点火数及び点火位置の設定もエンジンの特性等に応じて種々設定しても良い。
また、上記実施形態では、本発明に係る二焦点レンズ28が二焦点レンズ28で構成されていたが、異なる焦点距離を有するレンズ領域の数は、二つに限られず、二つ以上であっても良い。また、中心領域28aの焦点距離が周辺領域28bの焦点距離よりも短く構成されていたが長く構成されていても良い。
[第二実施形態]
次に、図6を参照しながら、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50について説明する。
本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50は、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10の二焦点レンズ28に代えてレンズ群52とマルチプリズム54を備える構成となっている。従って、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50において、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同一の構成については同一の符号を用いることとしてその説明を省略する。
本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50において、レンズ群52は、Qスイッチ式固体レーザ26から発振された各レーザ光が入射されると共に各レーザ光を集光させる複数のレンズ52a,52b,52cを備えている。マルチプリズム54は、レンズ群52から出射された各レーザ光が入射されると共に各レーザ光を燃焼室44内の互いに異なる方向へ屈折する複数の屈折面54a,54b,54cを備えている。
そして、本実施形態では、レンズアレイ24、Qスイッチ式固体レーザ26、二焦点レンズは、ハウジングケース32に収容されている。ハウジングケース32の一方には、光ファイバ群22が導入されており、ハウジングケース32の他方側は、シリンダボア48の壁部に一体に固定されている。また、ハウジングケース32の他方側は、出射窓30によって燃焼室44内と隔離されている。
なお、レーザ制御装置36は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、マルチプリズム54から出射窓30を介して燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20b,20cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択し、このレーザ光源からレーザ光を発振させるようになっている。
次に、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50の動作について説明する。
本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50では、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同様に、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数と、点火数マップ36a及び点火位置マップ36bとに基づいて、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する。
そして、上述のようにして決定した点火数及び点火位置に基づいてレーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20b,20cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択し、このレーザ光源からレーザ光を発振させる。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、レーザ光源20aからレーザ光を発振させる。レーザ光源20aからレーザ光が発振されると、このレーザ光は、光ファイバ群22を介してレンズアレイ24の周辺部のレンズ24aに入射され、このレンズ24aから出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ26の周辺部に入射される。これにより、このレーザ光が入射された個所が励起され、Qスイッチ式固体レーザ26の周辺部からレンズ52aを介してマルチプリズム54の屈折面54aに向けてレーザ光が発振される(発振パターン1)。そして、マルチプリズム54の屈折面54aから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
また、燃焼室44の中間位置での一点点火とする場合には、レーザ光源20bからレーザ光を発振させる。レーザ光源20bからレーザ光が発振されると、このレーザ光は、光ファイバ群22を介してレンズアレイ24の中心付近のレンズ24bに入射され、このレンズ24bから出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ26の中心付近に入射される。これにより、このレーザ光が入射された個所が励起され、Qスイッチ式固体レーザ26の中心付近からレンズ52bを介してマルチプリズム54の屈折面54bに向けてレーザ光が発振される(発振パターン2)。そして、マルチプリズム54の屈折面54bから出射窓30を介して燃焼室44の中間位置にレーザ光が出射され、燃焼室44の中間位置での一点点火となる。
さらに、燃焼室44のピストン42側位置での一点点火とする場合には、レーザ光源20cからレーザ光を発振させる。レーザ光源20cからレーザ光が発振されると、このレーザ光は、光ファイバ群22を介してレンズアレイ24の周辺部のレンズ24cに入射され、このレンズ24cから出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ26の周辺部に入射される。これにより、このレーザ光が入射された個所が励起され、Qスイッチ式固体レーザ26の周辺部からレンズ52cを介してマルチプリズム54の屈折面54cに向けてレーザ光が発振される(発振パターン3)。そして、マルチプリズム54の屈折面54cから出射窓30を介して燃焼室44のピストン42側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のピストン42側位置での一点点火となる。
また、多点点火(二点点火)とする場合には、レーザ光源20a,20b,20cのうちの二つからレーザ光を発振させ(発振パターン4〜6)、多点点火(三点点火)とする場合には、レーザ光源20a,20b,20cの全てからレーザ光を発振させる(発振パターン7)。
このように、本実施形態では、レーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20b,20cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択することによりQスイッチ式固体レーザ26から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせてマルチプリズム54から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置を変更し、点火数及び点火位置を変更する。
次に、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するためには、レーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20b,20cからレーザ光を発振するレーザ光源を選択し該レーザ光源からレーザ光を発振させるだけで良い。
この構成によれば、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するために、燃焼室44内にレーザ光を出射する光学系(例えば本実施形態ではレンズ群52やマルチプリズム54など)を移動させる必要がない。従って、光学系を移動させるための機械的な移動機構が不要となる。これにより、車両走行に伴う振動等の影響を受けずに点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更することが可能となる。
また、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50では、点火数を変更するためには、レーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20b,20cからレーザ光を発振するレーザ光源を選択し該レーザ光源からレーザ光を発振させるだけで良いので、マルチプリズム54から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数の緻密な設定ができる。これにより、燃焼室44内の光エネルギが急激に増大することなく、燃焼室44内に出射するレーザ光の集光数を変更することが可能となる。
さらに、マルチプリズム54から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を変更する場合にも、レーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20b,20cからレーザ光を発振するレーザ光源を選択し該レーザ光源からレーザ光を発振させるだけで良いので、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置の変更が容易である。
また、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50では、マルチプリズム54に備えられた複数の屈折面54a,54b,54cによるレーザ光の屈折方向を自在に設定することができる。これにより、多点点火する場合には燃焼室44内の点火位置を互いに十分に離すことが可能となる。
また、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50によれば、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同様に、成層燃焼方式において内燃機関の燃焼を車両の運転状況に合わせて最適な状態に保つことが可能となる。これにより、未燃燃料の低減、Soot生成の抑制等により燃焼効率が向上し、高効率で低エミッションのエンジンを得ることが可能となる。
また、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50によれば、均質燃焼方式においても、ノッキングを効果的に抑制することができ、これにより、圧縮比をアップすることが可能となるので、エンジンの熱効率を高めることができる。また、運転状況に応じて点火数を減らすことができるので、これにより点火に要する過剰なエネルギ消費を抑制することが可能となる。
次に、本発明の第二実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置50の変形例について説明する。
上記実施形態では、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、図3(a),(b)に示される点火数マップ36a及び点火位置マップ36bに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定するようにしていたが、次のようにしても良い。
つまり、運転状況検出部18によって車両の運転状況として例えば均質運転時のトルク及びエンジン回転数を検出するようにし、図5に示される点火数マップ36aに基づいて、均質運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火数を決定しても良い。
また、本実施形態では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20a,20b,20cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択することでQスイッチ式固体レーザ26から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせたが、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方が変更されるようにレーザ光源群20に備えられた複数のレーザ光源20,20b,20cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択することでQスイッチ式固体レーザ26から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせても良い。
また、車両の運転状況として検出する項目をエンジンの特性等に応じてその他の項目に変更すると共に点火数及び点火位置の設定もエンジンの特性等に応じて種々設定しても良い。
[第三実施形態]
次に、図7を参照しながら、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60について説明する。
本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60は、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10のQスイッチ式固体レーザ26に代えてQスイッチ式固体レーザ62を備える構成となっている。従って、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60において、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同一の構成については同一の符号を用いることとしてその説明を省略する。
本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60において、Qスイッチ式固体レーザ62は、光増幅媒体62aの両側に全反射鏡62b及び出射鏡62cを有する構成となっており、レンズアレイ24の各レンズ24a,24bから出射された各レーザ光が集光されると励起状態となってレーザ光を二焦点レンズ28に発振するようになっている。このとき、Qスイッチ式固体レーザ62は、レンズアレイ24の各レンズ24a,24bから出射された各レーザ光の強度(つまり光エネルギ)分布に応じて発振特性が異なるようになっており、より具体的には、レンズアレイ24の各レンズ24a,24bから出射された各レーザ光の強度分布に応じてレーザ発振モードを変化させレーザ光の広がり角度を変更することができるように構成されている。
すなわち、レーザ光源群20から発振された各レーザ光の強度分布を、Qスイッチ式固体レーザ62が低次のモードで発振するように制御すれば、Qスイッチ式固体レーザ62から二焦点レンズ28の中心領域28aに向けて広がり角度の狭いレーザ光が発振される(発振パターン1)。
また、レーザ光源群20から発振された各レーザ光の強度分布を、Qスイッチ式固体レーザ62が高次のモードで発振するように制御すれば、二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bに向けて広がり角度の広いレーザ光が発振される(発振パターン2)。なお、発振パターンは、広がり角度の広い場合と狭い場合の二種類に限られるものではなく、レーザ光源群20から発振された各レーザ光の強度分布に応じて連続的に変化するものである。
このように、本実施形態のQスイッチ式固体レーザ62は、レンズアレイ24から出射された各レーザ光の強度分布に応じて複数の異なる発振パターンのレーザ光を二焦点レンズ28に発振するようになっている。
なお、レーザ制御装置36は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、マルチプリズムから出射窓30を介して燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群20から発振されるレーザ光の強度分布を制御するようになっている。
次に、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60の動作について説明する。
本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60では、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同様に、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数と、点火数マップ36a及び点火位置マップ36bとに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する。
そして、上述のようにして決定した点火数及び点火位置に基づいてレーザ光源群20から発振されるレーザ光の強度分布を制御する。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、レーザ光源群20から発振する各レーザ光の強度分布をQスイッチ式固体レーザ62が低次のモードで発振するように制御する。これにより、レーザ光源群20から光ファイバ群22及びレンズアレイ24を介して出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ62に入射され、Qスイッチ式固体レーザ62から二焦点レンズ28の中心領域28aに向けて広がり角度の狭いレーザ光が発振される(発振パターン1)。そして、二焦点レンズ28の中心領域28aから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
また、多点点火(二点点火)とする場合には、レーザ光源群20から発振する各レーザ光の強度分布をQスイッチ式固体レーザ62が高次のモードで発振するように制御する。これにより、レーザ光源群20から光ファイバ群22及びレンズアレイ24を介して出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ62に入射され、Qスイッチ式固体レーザ62から二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bに向けて広がり角度の広いレーザ光が発振される(発振パターン2)。そして、二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置での二点点火となる。
このように、本実施形態では、レーザ光源群20からのレーザ光の強度分布を制御することによりQスイッチ式固体レーザ62から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせて二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置を変更し、点火数及び点火位置を変更する。
次に、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するためには、レーザ光源群20からの各レーザ光の強度分布を制御するだけで良い。
この構成によれば、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するために、燃焼室44内にレーザ光を出射する光学系(例えば本実施形態では二焦点レンズ28など)を移動させる必要がない。従って、光学系を移動させるための機械的な移動機構が不要となる。これにより、車両走行に伴う振動等の影響を受けずに点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更することが可能となる。
また、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60では、点火数を変更するためには、レーザ光源群20からの各レーザ光の強度分布を制御するだけで良いので、二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数の緻密な設定ができる。これにより、燃焼室44内の光エネルギが急激に増大することなく、燃焼室44内に出射するレーザ光の集光数を変更することが可能となる。
このように、二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を変更する場合にも、レーザ光源群20からの各レーザ光の強度分布を制御するだけで良いので、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置の変更が容易である。
また、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60では、二焦点レンズ28の中心領域28aの焦点距離と周辺領域28bの焦点距離とは自在に設定することができるので、多点点火する場合には燃焼室44内の点火位置を互いに十分に離すことが可能となる。
また、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60によれば、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同様に、成層燃焼方式において内燃機関の燃焼を車両の運転状況に合わせて最適な状態に保つことが可能となる。これにより、未燃燃料の低減、Soot生成の抑制等により燃焼効率が向上し、高効率で低エミッションのエンジンを得ることが可能となる。
また、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60によれば、均質燃焼方式においても、ノッキングを効果的に抑制することができ、これにより、圧縮比をアップすることが可能となるので、エンジンの熱効率を高めることができる。また、運転状況に応じて点火数を減らすことができるので、これにより点火に要する過剰なエネルギ消費を抑制することが可能となる。
次に、本発明の第三実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置60の変形例について説明する。
上記実施形態では、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、図3(a),(b)に示される点火数マップ36a及び点火位置マップ36bに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定するようにしていたが、次のようにしても良い。
つまり、運転状況検出部18によって車両の運転状況として例えば均質運転時のトルク及びエンジン回転数を検出するようにし、図5に示される点火数マップ36aに基づいて、均質運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火数を決定しても良い。
また、本実施形態では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群20から発振される各レーザ光の強度分布を制御してQスイッチ式固体レーザ62から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせたが、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方が変更されるようにレーザ光源群20から発振される各レーザ光の強度分布を制御してQスイッチ式固体レーザ62から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせても良い。
また、車両の運転状況として検出する項目をエンジンの特性等に応じてその他の項目に変更すると共に点火数及び点火位置の設定もエンジンの特性等に応じて種々設定しても良い。
[第四実施形態]
次に、図8,図9を参照しながら、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70について説明する。
本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70は、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10のレーザ光発振部12に代えてレーザ光発振部72を備える構成となっている。従って、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70において、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同一の構成については同一の符号を用いることとしてその説明を省略する。
本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70において、レーザ光発振部72は、後に詳述するようにレーザ光出射部14に複数の異なる発振パターンのレーザ光を発振するものであり、レーザ光源群73と、レンズアレイ74と、光ファイバ群75と、Qスイッチ式固体レーザ76と、外部鏡77と、を有して構成されている。
レーザ光源群73は、複数のレーザ光源73a,73b(例えば中心に1個のレーザ光源73a、その周囲に5個のレーザ光源73b)を備えた構成となっている。各レーザ光源73a,73bは、レーザ制御装置36によって独立して制御されることによりそれぞれレーザ光を発振可能な構成となっている。
レンズアレイ74は、レーザ光源群73から出射された各レーザ光が入射される複数のレンズ74a,74b(例えば中心に1個のレンズ74a、その周囲に5個のレンズ74b)を備えている。この各レンズ74a,74bは、レーザ光源群73から出射された各レーザ光を集光して光ファイバ群75の各光ファイバ75a,75bに出射するようになっている。
光ファイバ群75は、レンズアレイ74から出射された各レーザ光を導く複数の光ファイバ75a,75bを備えている。各光ファイバ75a,75bは、対応するレンズ74a,74bから発振されたレーザ光を図9に示されるようにQスイッチ式固体レーザ76の表面76dに導いて出射するようになっている。なお、光ファイバ75a,75bの先端には投光用の光学系が必要となるが図8、図9には示していない。
Qスイッチ式固体レーザ76は、光増幅媒体76a、全反射鏡76b、冷却機構76cを有する構成となっており、光ファイバ群75を介してレンズアレイ74の各レンズ74a,74bから出射された各レーザ光が集光されると励起状態となってレーザ光を二焦点レンズ28に発振するようになっている。このとき、Qスイッチ式固体レーザ76は、レーザ光源群73から発振された各レーザ光の強度(つまり光エネルギ)分布に応じて発振特性が異なるようになっており、より具体的には、レーザ光源群73から発振された各レーザ光の強度分布に応じてレーザ発振モードを変化させレーザ光の広がり角度を変更することができるように構成されている。
すなわち、レーザ光源群73から発振された各レーザ光の強度分布を、Qスイッチ式固体レーザ76が低次のモードで発振するように制御すれば、Qスイッチ式固体レーザ76から二焦点レンズ28の中心領域28aに向けて広がり角度の狭いレーザ光が発振される(発振パターン1)。
また、レーザ光源群73から発振された各レーザ光の強度分布を、Qスイッチ式固体レーザ76が高次のモードで発振するように制御すれば、Qスイッチ式固体レーザ76から二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bに向けて広がり角度の広いレーザ光が発振される(発振パターン2)。なお、発振パターンは、広がり角度の広い場合と狭い場合の二種類に限られるものではなく、レーザ光源群73から発振された各レーザ光の強度分布に応じて連続的に変化するものである。
このように、本実施形態のQスイッチ式固体レーザ76は、レーザ光源群73から発振された各レーザ光の強度分布に応じて複数の異なる発振パターンのレーザ光を二焦点レンズ28に発振するようになっている。
なお、レーザ制御装置36は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、二焦点レンズ28から出射窓30を介して燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群73から発振されるレーザ光の強度分布を制御するようになっている。
また、Qスイッチ式固体レーザ76において、光増幅媒体76aの冷却は誘電体多層膜(或いは金属膜)等により構成される全反射鏡76bを介して行われる。
次に、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70の動作について説明する。
本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70では、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同様に、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数と、点火数マップ36a及び点火位置マップ36bとに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する。
そして、上述のようにして決定した点火数及び点火位置に基づいてレーザ光源群73から発振されるレーザ光の強度分布を制御する。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、レーザ光源群73から発振する各レーザ光の強度分布をQスイッチ式固体レーザ76が低次のモードで発振するように制御する。これにより、レーザ光源群73から光ファイバ群75及びレンズアレイ74を介して出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ76に入射され、Qスイッチ式固体レーザ76から二焦点レンズ28の中心領域28aに向けて広がり角度の狭いレーザ光が発振される(発振パターン1)。そして、二焦点レンズ28の中心領域28aから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
また、多点点火(二点点火)とする場合には、レーザ光源群73から発振する各レーザ光の強度分布をQスイッチ式固体レーザ76が高次のモードで発振するように制御する。これにより、レーザ光源群73から光ファイバ群75及びレンズアレイ74を介して出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ76に入射され、Qスイッチ式固体レーザ76から二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bに向けて広がり角度の広いレーザ光が発振される(発振パターン2)。そして、二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置での二点点火となる。
このように、本実施形態では、レーザ光源群73からの各レーザ光の強度分布を制御することによりQスイッチ式固体レーザ76から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせて二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置を変更し、点火数及び点火位置を変更する。
次に、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するためには、レーザ光源群73からの各レーザ光の強度分布を制御するだけで良い。
この構成によれば、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するために、燃焼室44内にレーザ光を出射する光学系(例えば本実施形態では二焦点レンズ28など)を移動させる必要がない。従って、光学系を移動させるための機械的な移動機構が不要となる。これにより、車両走行に伴う振動等の影響を受けずに点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更することが可能となる。
また、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70では、点火数を変更するためには、レーザ光源群73からの各レーザ光の強度分布を制御するだけで良いので、二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数の緻密な設定ができる。これにより、燃焼室44内の光エネルギが急激に増大することなく、燃焼室44内に出射するレーザ光の集光数を変更することが可能となる。
このように、二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を変更する場合にも、レーザ光源群73からのレーザ光の強度分布を制御するだけで良いので、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置の変更が容易である。
また、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70では、二焦点レンズ28の中心領域28aの焦点距離と周辺領域28bの焦点距離とは自在に設定することができるので、多点点火する場合には燃焼室44内の点火位置を互いに十分に離すことが可能となる。
また、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70によれば、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同様に、成層燃焼方式において内燃機関の燃焼を車両の運転状況に合わせて最適な状態に保つことが可能となる。これにより、未燃燃料の低減、Soot生成の抑制等により燃焼効率が向上し、高効率で低エミッションのエンジンを得ることが可能となる。
また、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70によれば、均質燃焼方式においても、ノッキングを効果的に抑制することができ、これにより、圧縮比をアップすることが可能となるので、エンジンの熱効率を高めることができる。また、運転状況に応じて点火数を減らすことができるので、これにより点火に要する過剰なエネルギ消費を抑制することが可能となる。
次に、本発明の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70の変形例について説明する。
上記実施形態では、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、図3(a),(b)に示される点火数マップ36a及び点火位置マップ36bに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定するようにしていたが、次のようにしても良い。
つまり、運転状況検出部18によって車両の運転状況として例えば均質運転時のトルク及びエンジン回転数を検出するようにし、図5に示される点火数マップ36aに基づいて、均質運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火数を決定しても良い。
また、本実施形態では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群73から発振される各レーザ光の強度分布を制御してQスイッチ式固体レーザ76から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせたが、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方が変更されるようにレーザ光源群73から発振される各レーザ光の強度分布を制御してQスイッチ式固体レーザ76から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせても良い。
また、車両の運転状況として検出する項目をエンジンの特性等に応じてその他の項目に変更すると共に点火数及び点火位置の設定もエンジンの特性等に応じて種々設定しても良い。
[第五実施形態]
次に、図10,図11を参照しながら、本発明の第五実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置80について説明する。
本発明の第五実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置80は、上記第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70のレーザ光発振部72に代えてレーザ光発振部82を備える構成となっている。従って、本発明の第五実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置80において、上記第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70と同一の構成については同一の符号を用いることとしてその説明を省略する。
本発明の第五実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置80において、レーザ光発振部82は、後に詳述するように二焦点レンズ28に複数の異なる発振パターンのレーザ光を発振するものであり、レーザ光源群83と、レンズアレイ84と、光ファイバ群85と、Qスイッチ式固体レーザ86と、を有して構成されている。
レーザ光源群83は、複数のレーザ光源83a(例えば周方向に12個)を備えた構成となっている。各レーザ光源83aは、レーザ制御装置36によって独立して制御されることによりそれぞれレーザ光を発振可能な構成となっている。
レンズアレイ84は、レーザ光源群83から出射された各レーザ光が入射される複数のレンズ84a(例えば周方向に12個)を備えている。この各レンズ84aは、レーザ光源群83から出射された各レーザ光を集光して光ファイバ群85の各光ファイバ85aに出射するようになっている。
光ファイバ群85は、レンズアレイ84から出射された各レーザ光を導く複数の光ファイバ85a(12本)を備えている。各光ファイバ85aは、対応するレンズ84aから発振されたレーザ光を図11に示されるようにQスイッチ式固体レーザ86の側面86eに導いて出射するようになっている。なお、光ファイバ85aの先端には投光用の光学系が必要となるが図10、図11には示していない。
Qスイッチ式固体レーザ86は、光増幅媒体86a、全反射鏡86b、冷却機構86c、出射鏡86dを有する構成となっており、光ファイバ群85を介してレンズアレイ84の各レンズ84aから出射された各レーザ光が集光されると励起状態となってレーザ光を二焦点レンズ28に発振するようになっている。このとき、Qスイッチ式固体レーザ86は、レーザ光源群83から発振された各レーザ光の強度(つまり光エネルギ)分布に応じて発振特性が異なるようになっており、より具体的には、レーザ光源群83から発振された各レーザ光の強度分布に応じてレーザ発振モードを変化させレーザ光の広がり角度を変更することができるように構成されている。
すなわち、レーザ光源群83から発振された各レーザ光の強度分布を、Qスイッチ式固体レーザ86が低次のモードで発振するように制御すれば、Qスイッチ式固体レーザ86から二焦点レンズ28の中心領域28aに向けて広がり角度の狭いレーザ光が発振される(発振パターン1)。
また、レーザ光源群83から発振された各レーザ光の強度分布を、Qスイッチ式固体レーザ86が高次のモードで発振するように制御すれば、Qスイッチ式固体レーザ86から二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bに向けて広がり角度の広いレーザ光が発振される(発振パターン2)。なお、発振パターンは、広がり角度の広い場合と狭い場合の二種類に限られるものではなく、レーザ光源群83から発振された各レーザ光の強度分布に応じて連続的に変化するものである。
このように、本実施形態のQスイッチ式固体レーザ86は、レーザ光源群83から発振された各レーザ光の強度分布に応じて複数の異なる発振パターンのレーザ光を二焦点レンズ28に発振するようになっている。
なお、レーザ制御装置36は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、二焦点レンズ28から出射窓30を介して燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群83から発振されるレーザ光の強度分布を制御するようになっている。
また、Qスイッチ式固体レーザ86において、光増幅媒体86aの冷却は誘電体多層膜(或いは金属膜)等により構成される全反射鏡86bを介して行われる。
次に、本発明の第五実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置80の動作について説明する。
本発明の第五実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置80では、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数と、点火数マップ36a及び点火位置マップ36bとに基づいて、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する。そして、この決定した点火数及び点火位置に基づいてレーザ光源群83から発振されるレーザ光の強度分布を制御する。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、レーザ光源群83から発振する各レーザ光の強度分布をQスイッチ式固体レーザ86が低次のモードで発振するように制御する。これにより、レーザ光源群83から光ファイバ群85及びレンズアレイ84を介して出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ86に入射され、Qスイッチ式固体レーザ86から二焦点レンズ28の中心領域28aに向けて広がり角度の狭いレーザ光が発振される(発振パターン1)。そして、二焦点レンズ28の中心領域28aから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
また、多点点火(二点点火)とする場合には、レーザ光源群83から発振する各レーザ光の強度分布をQスイッチ式固体レーザ86が高次のモードで発振するように制御する。これにより、レーザ光源群83から光ファイバ群85及びレンズアレイ84を介して出射されたレーザ光は、Qスイッチ式固体レーザ86に入射され、Qスイッチ式固体レーザ86から二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bに向けて広がり角度の広いレーザ光が発振される(発振パターン2)。そして、二焦点レンズ28の中心領域28a及び周辺領域28bから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置での二点点火となる。
このように、本実施形態では、レーザ光源群83からの各レーザ光の強度分布を制御することによりQスイッチ式固体レーザ86から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせて二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置を変更し、点火数及び点火位置を変更する。
なお、本発明の第五実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置80の作用及び効果、変形例は上述の第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70の作用及び効果、変形例と同様である。従って、本発明の第五実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置80の作用及び効果、変形例については、上記第四実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置70についての説明を参照することとしてその説明を省略する。
[第六実施形態]
次に、図12を参照しながら、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90について説明する。
本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90は、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10のレーザ光発振部12及びレーザ光出射部14に代えてレーザ光発振部92及びレーザ光出射部94を備える構成となっている。従って、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90において、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同一の構成については同一の符号を用いることとしてその説明を省略する。
本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90において、レーザ光発振部92は、レーザ光源群95とファイバレーザ群96を有して構成されている。レーザ光源群95は、レーザ光を発振可能な複数のレーザ光源95a,95b,95cを備えた構成となっており、ファイバレーザ群96はレーザ光源群95から発振された各レーザ光が入射される複数のQスイッチ式ファイバレーザ96a,96b,96cを備えた構成となっている。この複数のQスイッチ式ファイバレーザ96a,96b,96cは、各レーザ光によって励起されてレーザ光を発振するようになっている。
レーザ光出射部94は、複数の出射光学系97a,97b,97cと出射窓30を有して構成されている。各出射光学系97a,97b,97cは、レンズやプリズムを備えた構成となっており、各Qスイッチ式ファイバレーザ96a,96b,96cから発振された各レーザ光が入射されると共に各レーザ光を集光又は偏向しながら燃焼室44内に集光するようになっている。
そして、本実施形態では、レーザ光出射部94の各出射光学系97a,97b,97cは、ハウジングケース32に収容されている。ハウジングケース32内には、各Qスイッチ式ファイバレーザ96a,96b,96cが導入されており、ハウジングケース32の出射側は、シリンダヘッド40の壁部に一体に固定されている。また、ハウジングケース32の他方側は、出射窓30によって燃焼室44内と隔離されている。
なお、レーザ制御装置36は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、各出射光学系97a,97b,97cから出射窓30を介して燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群95に備えられた複数のレーザ光源95a,95b,95cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択し、このレーザ光源からレーザ光を発振させるようになっている。
次に、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90の動作について説明する。
本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90では、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同様に、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数と、点火数マップ36a及び点火位置マップ36bとに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する。
そして、上述のようにして決定した点火数及び点火位置に基づいてレーザ光源群95に備えられた複数のレーザ光源95a,95b,95cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択し、このレーザ光源からレーザ光を発振させる。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、レーザ光源95aからレーザ光を発振させる。レーザ光源95aからレーザ光が発振されると、このレーザ光は、Qスイッチ式ファイバレーザ96aに入射される。これにより、このレーザ光が入射されたQスイッチ式ファイバレーザ96aが励起され、Qスイッチ式ファイバレーザ96aから出射光学系97aに向けてレーザ光が発振される(発振パターン1)。そして、出射光学系97aから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
また、燃焼室44の中間位置での一点点火とする場合には、レーザ光源95bからレーザ光を発振させる。レーザ光源95bからレーザ光が発振されると、このレーザ光は、Qスイッチ式ファイバレーザ96bに入射される。これにより、このレーザ光が入射されたQスイッチ式ファイバレーザ96bが励起され、Qスイッチ式ファイバレーザ96bから出射光学系97bに向けてレーザ光が発振される(発振パターン2)。そして、出射光学系97bから出射窓30を介して燃焼室44の中間位置にレーザ光が出射され、燃焼室44の中間位置での一点点火となる。
さらに、燃焼室44のピストン42側位置での一点点火とする場合には、レーザ光源95cからレーザ光を発振させる。レーザ光源95cからレーザ光が発振されると、このレーザ光は、Qスイッチ式ファイバレーザ96cに入射される。これにより、このレーザ光が入射されたQスイッチ式ファイバレーザ96cが励起され、Qスイッチ式ファイバレーザ96cから出射光学系97cに向けてレーザ光が発振される(発振パターン3)。そして、出射光学系97cからから出射窓30を介して燃焼室44のピストン42側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のピストン42側位置での一点点火となる。
また、多点点火(二点点火)とする場合には、レーザ光源95a,95b,95cのうちの二つからレーザ光を発振させ(発振パターン4〜6)、多点点火(三点点火)とする場合には、レーザ光源95a,95b,95cの全てからレーザ光を発振させる(発振パターン7)。
このように、本実施形態では、レーザ光源群95に備えられた複数のレーザ光源95a,95b,95cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択することによりファイバレーザ群96から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせて各出射光学系97a,97b,97cから燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置を変更し、点火数及び点火位置を変更する。また、各Qスイッチ式ファイバレーザ96a,96b,96cは、レンズやプリズムを備えた出射光学系97a,97b,97cを有しており、レーザ光を燃焼室内の任意の場所に偏向させつつ集光させることができる。
次に、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するためには、レーザ光源群95に備えられた複数のレーザ光源95a,95b,95cからレーザ光を発振するレーザ光源を選択し該レーザ光源からレーザ光を発振させるだけで良い。
この構成によれば、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方、すなわち点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更するために、燃焼室44内にレーザ光を出射する光学系(例えば本実施形態では出射光学系97a,97b,97cなど)を移動させる必要がない。従って、光学系を移動させるための機械的な移動機構が不要となる。これにより、車両走行に伴う振動等の影響を受けずに点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更することが可能となる。
また、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90では、点火数を変更するためには、レーザ光源群95に備えられた複数のレーザ光源95a,95b,95cからレーザ光を発振するレーザ光源を選択し該レーザ光源からレーザ光を発振させるだけで良いので、各出射光学系97a,97b,97cから燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数の緻密な設定ができる。これにより、燃焼室44内の光エネルギが急激に増大することなく、燃焼室44内に出射するレーザ光の集光数を変更することが可能となる。
さらに、各出射光学系97a,97b,97cから燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を変更する場合にも、レーザ光源群95に備えられた複数のレーザ光源95a,95b,95cからレーザ光を発振するレーザ光源を選択し該レーザ光源からレーザ光を発振させるだけで良いので、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置の変更が容易である。
また、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90では、各出射光学系97a,97b,97cの集光位置又は偏向角度は自在に設定することができるので、多点点火する場合には燃焼室44内の点火位置を互いに十分に離すことが可能となる。
また、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90によれば、上記第一実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置10と同様に、成層燃焼方式において内燃機関の燃焼を車両の運転状況に合わせて最適な状態に保つことが可能となる。これにより、未燃燃料の低減、Soot生成の抑制等により燃焼効率が向上し、高効率で低エミッションのエンジンを得ることが可能となる。
また、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90によれば、均質燃焼方式においても、ノッキングを効果的に抑制することができ、これにより、圧縮比をアップすることが可能となるので、エンジンの熱効率を高めることができる。また、運転状況に応じて点火数を減らすことができるので、これにより点火に要する過剰なエネルギ消費を抑制することが可能となる。
次に、本発明の第六実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置90の変形例について説明する。
上記実施形態では、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、図3(a),(b)に示される点火数マップ36a及び点火位置マップ36bに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定するようにしていたが、次のようにしても良い。
つまり、運転状況検出部18によって車両の運転状況として例えば均質運転時のトルク及びエンジン回転数を検出するようにし、図5に示される点火数マップ36aに基づいて、均質運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火数を決定しても良い。
また、本実施形態では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるようにレーザ光源群95に備えられた複数のレーザ光源95a,95b,95cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択することでQスイッチ式ファイバレーザ群96から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせたが、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方が変更されるようにレーザ光源群95に備えられた複数のレーザ光源95a,95b,95cのうちレーザ光を発振するレーザ光源を選択することでファイバレーザ群96から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせても良い。
また、車両の運転状況として検出する項目をエンジンの特性等に応じてその他の項目に変更すると共に点火数及び点火位置の設定もエンジンの特性等に応じて種々設定しても良い。
[第七実施形態]
次に、図13乃至図15を参照しながら、本発明の参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置100について説明する。
本発明の参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置100は、例えば、乗用自動車等の車両に備えられた内燃機関において燃焼室44内の燃焼ガス46を点火させるのに好適に用いられるものである。
本発明の参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置100は、図13に示されるように、レーザ光源101と、光ファイバ102と、Qスイッチ式固体レーザ103と、出射ミラー104と、移動機構105と、凸レンズ106と、制御手段としての制御部107と、運転状況検出手段としての運転状況検出部18と、を主要な構成として備えている。
Qスイッチ式固体レーザ103は、レーザ光を発振可能なQスイッチ式の固体レーザで構成されており、出射ミラー104は、Qスイッチ式固体レーザ103とで光共振器を構成している。また、出射ミラー104は、Qスイッチ式固体レーザ103に対して光軸方向(X方向)に移動自在に配置されている。移動機構105は、不図示のモータ等により出射ミラー104を光軸方向に移動させるように構成されており、凸レンズ106には、出射ミラー104から出射されたレーザ光が入射されるようになっている。
このとき、本実施形態では、出射ミラー104とQスイッチ式固体レーザ103との光軸方向に離間した距離に応じて出射ミラー104から出射されるレーザ光の発振特性が異なるようになっており、より具体的には、出射ミラー104とQスイッチ式固体レーザ103との光軸方向に離間した距離に応じて出射ミラー104から出射されるレーザ光の広がり角度を変更することができるように構成されている。
つまり、図14(a)に動作原理図を示すように、出射ミラー104がQスイッチ式固体レーザ103側の位置に移動している状態では、出射ミラー104から出射されるレーザ光の広がり角度が広くなり(発振パターン1)、図14(b)に動作原理図を示すように、出射ミラー104がQスイッチ式固体レーザ103から離れた位置に移動している状態では、出射ミラー104から出射されるレーザ光の広がり角度が狭くなるようになっている(発振パターン2)。なお、発振パターンは、広がり角度の広い場合と狭い場合の二種類に限られるものではなく、出射ミラー104とQスイッチ式固体レーザ103との光軸方向に離間した距離に応じて連続的に変化するものである。
そして、本実施形態では、Qスイッチ式固体レーザ103、出射ミラー104、凸レンズ106、ハウジングケース32に収容されている。ハウジングケース32の一方には、光ファイバ102が導入されており、ハウジングケース32の他方側は、シリンダヘッド40の壁部に一体に固定されている。また、ハウジングケース32の他方側は、出射窓30によって燃焼室44内と隔離されている。
制御部107は、エンジンコントローラ34とレーザ制御装置109を有して構成されている。エンジンコントローラ34には、運転状況検出部18から出力された運転状況検出信号が入力されるようになっている。エンジンコントローラ34は、運転状況検出部18から出力された運転状況検出信号を入力すると、後に詳述するように運転状況検出信号に応じたコントロール指令を生成し、これをレーザ制御装置109に出力するようになっている。
レーザ制御装置109には、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令が入力されるようになっている。レーザ制御装置109は、演算装置及び記憶装置を有して構成されており、記憶装置には、点火位置マップ36b(図3(b)参照)が記憶されている。
また、レーザ制御装置109は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、凸レンズ106から出射窓30を介して燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置が変更されるように移動機構105を制御して出射ミラー104を光軸方向に移動させることにより出射ミラー104から出射されるレーザ光の広がり角度を変更するようになっている。
運転状況検出部18は、車両の運転状況として、例えば、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、これをエンジンコントローラ34に出力するようになっている。
次に、本発明の参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置100の動作について説明する。
まず、運転状況検出部18は、車両の運転状況として、例えば、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及び回転数等を検出する。そして、運転状況検出部18は、これら車両の運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、これをエンジンコントローラ34に出力する。
エンジンコントローラ34は、運転状況検出部18から出力された運転状況検出信号を入力すると、運転状況検出信号に応じたコントロール指令を生成し、これを運転状況検出信号と共にレーザ制御装置109に出力する。
レーザ制御装置109は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、図15に示すプログラムの処理を開始する。このとき、運転状況検出部18によって車両の運転状況として例えば成層運転時のトルク及びエンジン回転数を検出するようにした場合には、レーザ制御装置109は、運転状況検出信号に基づいて成層運転時のトルク及びエンジン回転数を検出する(ステップS11)。
続いて、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のトルク及びエンジン回転数と、点火位置マップ36b(図3(b)参照)とに基づいて、成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する(ステップS12)。
この場合、エンジン回転数が増加すると共にトルクが増加すると、燃料噴射時期が進角し、これに伴い最適混合気位置もピストン42側に移動するので、この状態では、ピストン42側に点火位置を設定する。一方、エンジン回転数が低下すると共にトルクが低下すると、最適混合気位置はシリンダヘッド40側に移動するので、この状態では、シリンダヘッド40側に点火位置を設定する
そして、上述のようにして決定した点火位置に基づいて移動機構105を制御して出射ミラー104を光軸方向に移動させることにより出射ミラー104から出射されるレーザ光の広がり角度を変更する(ステップS13)。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、移動機構105を制御して出射ミラー104をQスイッチ式固体レーザ103側の位置に移動させる。これにより、出射ミラー104から出射されるレーザ光の広がり角度が広くなる(発振パターン1)。そして、凸レンズ106から出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
また、ピストン42側位置での一点点火とする場合には、移動機構105を制御して出射ミラー104をQスイッチ式固体レーザ103から離れた位置に移動させる。これにより、出射ミラー104から出射されるレーザ光の広がり角度が狭くなる(発振パターン2)。そして、凸レンズ106から出射窓30を介して燃焼室44のピストン42側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のピストン42側位置での一点点火となる。
このように、本実施形態では、レーザ光発振部から発振されるレーザ光の発振パターンを異ならせて凸レンズ106から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を変更し、点火位置を変更する。
次に、本発明の参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置100の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本発明の参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置100によれば、レーザ制御装置109によって出射ミラー104からは出射されたレーザ光の広がり角度を制御することにより、凸レンズ106から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を自在に変更することができる。これにより、燃焼室44内の点火位置を所定位置に限定されること無く任意に設定することが可能となる。
また、本発明の参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置100によれば、シリンダヘッド40上などに一つの出射光学系を設けるだけで燃焼室44内に出射するレーザ光の集光位置を変更することができる。これにより、燃焼室44内の点火位置と同数の出射光学系を配置(従来は点火位置と同数の光ファイバをシリンダヘッド上などに設置していた)する必要が無いので、シリンダヘッド40上などの配置スペースの省略化を図ることが可能となる。
また、本発明の参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置100では、上述のように、車両の運転状況に応じて燃焼室44内の点火位置を変更することができる。この構成によれば、成層燃焼方式において運転状況の変化に伴い最適混合気位置が変化しても、常に最適混合位置での点火が可能となる。従って、内燃機関の燃焼を車両の運転状況に合わせて最適な状態に保つことが可能となる。これにより、未燃燃料の低減、Soot生成の抑制等により燃焼効率が向上し、高効率で低エミッションのエンジンを得ることが可能となる。
なお、上記実施形態では、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、点火位置マップ36b(図3(b)参照)に基づいて、成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定するようにしていたが、次のようにしても良い。
つまり、車両の運転状況として検出する項目をエンジンの特性等に応じてその他の項目に変更すると共に点火位置の設定もエンジンの特性等に応じて種々設定しても良い。
また、上記実施形態では、1焦点の凸レンズでの例を示したが、前記複数焦点レンズを使用することで点火数を変更することも可能である。
[第八実施形態]
次に、図16乃至図18を参照しながら、本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110について説明する。
本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110は、例えば、乗用自動車等の車両に備えられた内燃機関において燃焼室44内の燃焼ガス46を点火させるのに好適に用いられるものである。
本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110は、図16に示されるように、レーザ光源111と、光ファイバ112と、可動式凹レンズ113と、移動機構114と、二焦点レンズ28と、制御手段としての制御部16と、運転状況検出手段としての運転状況検出部18と、を主要な構成として備えている。
レーザ光源111は、レーザ光を発振可能に構成されており、レーザ光源111から発振されたレーザ光は、光ファイバ112を介して可動式凹レンズ113に入射されるようになっている。可動式凹レンズ113は、光ファイバ112を介してレーザ光源111から発振されたレーザ光の光軸方向に移動自在に配置されている。
移動機構114は、可動式凹レンズ113を光軸方向(X方向)へ移動させるように構成されており、二焦点レンズ28には、可動式凹レンズ113から出射されたレーザ光が入射されるようになっている。二焦点レンズ28は、中心領域28aと中心領域28aよりも径方向外側の周辺領域28bとを有して構成されており、この中心領域28aと周辺領域28bとでは出射窓30を介して燃焼室44内に出射するレーザ光の焦点距離が異なる構成となっている。つまり、中心領域28aでは焦点距離が短く、周辺領域28bでは焦点距離が長く設定されている。
このとき、本実施形態では、可動式凹レンズ113と二焦点レンズ28との光軸方向に離間した距離に応じて可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径を変更することができるように構成されている。
つまり、図17(a)に動作原理図を示すように、可動式凹レンズ113が二焦点レンズ28から離れた位置に移動している状態では、可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径が小さくなり、図17(b)に動作原理図を示すように、可動式凹レンズ113が二焦点レンズ28側の位置に移動している状態では、可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径が大きくなるようになっている。この可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径は、可動式凹レンズ113と二焦点レンズ28との光軸方向に離間した距離に応じて連続的に変化するものである。
そして、本実施形態では、可動式凹レンズ113、二焦点レンズ28は、ハウジングケース32に収容されている。ハウジングケース32の一方には、光ファイバ112が導入されており、ハウジングケース32の他方側は、シリンダヘッド40の壁部に一体に固定されている。また、ハウジングケース32の他方側は、出射窓30によって燃焼室44内と隔離されている。
制御部16は、エンジンコントローラ34とレーザ制御装置36を有して構成されている。エンジンコントローラ34には、運転状況検出部18から出力された運転状況検出信号が入力されるようになっている。エンジンコントローラ34は、運転状況検出部18から出力された運転状況検出信号を入力すると、後に詳述するように運転状況検出信号に応じたコントロール指令を生成し、これをレーザ制御装置36に出力するようになっている。
レーザ制御装置36には、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令が入力されるようになっている。レーザ制御装置36は、演算装置及び記憶装置を有して構成されており、記憶装置には、後に詳述する点火数マップ36a及び点火位置マップ36b(図3参照)が記憶されている。
また、レーザ制御装置36は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、二焦点レンズ28から出射窓30を介して燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるように移動機構114を制御して可動式凹レンズ113を光軸方向へ移動させることにより可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径を変更するようになっている。
運転状況検出部18は、車両の運転状況として、例えば、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、これをエンジンコントローラ34に出力するようになっている。
次に、本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110の動作について説明する。
まず、運転状況検出部18は、車両の運転状況として、例えば、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及び回転数等を検出する。そして、運転状況検出部18は、これら車両の運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、これをエンジンコントローラ34に出力する。
エンジンコントローラ34は、運転状況検出部18から出力された運転状況検出信号を入力すると、運転状況検出信号に応じたコントロール指令を生成し、これを運転状況検出信号と共にレーザ制御装置36に出力する。
レーザ制御装置36は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、図18に示すプログラムの処理を開始する。このとき、運転状況検出部18によって車両の運転状況として例えば成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数を検出するようにした場合には、レーザ制御装置36は、運転状況検出信号に基づいて成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数を検出する(ステップS21)。
続いて、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のEGR率及びエンジン回転数と、点火数マップ36a(図3(a)参照)とに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定する(ステップS22)。
この場合、エンジン回転数が低く、EGR率も低い状態では、燃焼室44内の混合気の着火性が比較的に良いため、消費電力を抑制すべく、一点点火とする。一方、エンジン回転数が高く、EGR率も高い状態では、着火性に劣るため、多点点火(本実施形態では一例として二点点火)とする。
また、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のトルク及びエンジン回転数と、点火位置マップ36b(図3(b)参照)とに基づいて、成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する(ステップS23)。
この場合、エンジン回転数が増加すると共にトルクが増加すると、燃料噴射時期が進角し、これに伴い最適混合気位置もピストン42側に移動するので、この状態では、ピストン42側に点火位置を設定する。一方、エンジン回転数が低下すると共にトルクが低下すると、最適混合気位置はシリンダヘッド40側に移動するので、この状態では、シリンダヘッド40側に点火位置を設定する
そして、上述のようにして決定した点火数及び点火位置に基づいて移動機構114を制御することにより可動式凹レンズ113を光軸方向に移動させる(ステップS24)。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、移動機構114を制御することにより可動式凹レンズ113を二焦点レンズ28側の位置に移動させる。これにより、可動式凹レンズ113から二焦点レンズ28の中心領域28aにのみ直径の小さいレーザ光が出射される。そして、二焦点レンズ28の中心領域28aから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
このとき、可動式凹レンズ113から出射されたレーザ光が二焦点レンズ28の中心領域28aに入射される範囲内で可動式凹レンズ113の位置を調節すれば、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数を一つに維持した状態でその集光位置が変更される。
また、多点点火(二点点火)とする場合には、移動機構114を制御することにより可動式凹レンズ113を二焦点レンズ28から離れた位置に移動させる。これにより、可動式凹レンズ113から二焦点レンズ28の中心領域28a及びその周辺領域28bに直径の大きいレーザ光が出射される。そして、二焦点レンズ28の中心領域28a及びその周辺領域28bから出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置及びピストン42側位置での二点点火となる。
このとき、可動式凹レンズ113から出射されたレーザ光が二焦点レンズ28の中心領域28a及びその周辺領域28bに入射される範囲内で可動式凹レンズ113の位置を調節すれば、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数を複数に維持した状態でその集光位置がそれぞれ変更される。
このように、本実施形態では、移動機構114を制御することにより可動式凹レンズ113を光軸方向に移動させることにより可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径を異ならせて二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置を変更し、点火数及び点火位置を変更する。
次に、本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110によれば、可動式凹レンズ113を光軸方向に移動させて可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径を調節することにより、二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数を自在に変更することができる。
さらに、可動式凹レンズ113から出射されたレーザ光が二焦点レンズ28の中心領域28aに入射される範囲内で可動式凹レンズ113を光軸方向に移動させて可動式凹レンズ113から出射されるレーザ光の仮想焦点位置を調節することにより、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数を一つに維持した状態でその集光位置を変更することができる。
同様に、可動式凹レンズ113から出射されたレーザ光が二焦点レンズ28の中心領域28a及びその周辺領域28bに入射される範囲内で可動式凹レンズ113を光軸方向に移動させて可動式凹レンズ113から出射されるレーザ光の仮想焦点位置を調節することにより、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数を複数に維持した状態でその集光位置をそれぞれ変更することができる。
このように、本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110によれば、可動式凹レンズ113を光軸方向に移動させて可動式凹レンズ113から出射されるレーザ光の仮想焦点位置を調節することにより、二焦点レンズ28から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を自在に変更することができる。これにより、燃焼室44内の点火位置を所定位置に限定されること無く任意に設定することが可能となる。
また、本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110によれば、シリンダヘッド40上などに一つの出射光学系を設けるだけで燃焼室44内に出射するレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方を変更することができる。これにより、燃焼室44内の点火数又は点火位置と同数の出射光学系を配置(従来は点火数又は点火位置と同数の光ファイバ112をシリンダヘッド40上などに設置していた)する必要が無いので、シリンダヘッド40上などの配置スペースの省略化を図ることが可能となる。
また、本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110では、二焦点レンズ28の中心領域28aの焦点距離と周辺領域28bの焦点距離とを自在に設定することができる。これにより、多点点火する場合には燃焼室44内の点火位置を互いに十分に離すことが可能となる。
また、本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110では、上述のように、車両の運転状況に応じて燃焼室44内の点火数及び点火位置の少なくとも一方を変更することができる。この構成によれば、成層燃焼方式において運転状況の変化に伴い最適混合気位置が変化しても、常に最適混合位置での点火が可能となる。従って、内燃機関の燃焼を車両の運転状況に合わせて最適な状態に保つことが可能となる。これにより、未燃燃料の低減、Soot生成の抑制等により燃焼効率が向上し、高効率で低エミッションのエンジンを得ることが可能となる。
また、本実施形態の上記構成によれば、均質燃焼方式においても、ノッキング条件下にて燃焼室44の最適位置での多点点火が可能であり、ノッキングを効果的に抑制することができる。これにより、圧縮比をアップすることが可能となり、エンジンの熱効率を高めることができる。また、均質燃焼方式ではトルクが低い場合やエンジン回転数が高い場合にはノッキングしにくいが、本実施形態では、このような場合には一点点火とすることができる。このように、運転状況に応じて点火数を減らすことができるので、これにより点火に要する過剰なエネルギ消費を抑制することが可能となる。
次に、本発明の第八実施形態に係る内燃機関用レーザ点火装置110の変形例について説明する。
上記実施形態では、成層運転時のEGR率及びエンジン回転数、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、図3(a),(b)に示される点火数マップ36a及び点火位置マップ36bに基づいて、成層運転時のEGR率とエンジン回転数との関係から点火数を決定すると共に成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定するようにしていたが、次のようにしても良い。
つまり、運転状況検出部18によって車両の運転状況として例えば均質運転時のトルク及びエンジン回転数を検出するようにし、図5に示される点火数マップ36aに基づいて、均質運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火数を決定しても良い。
つまり、ノッキングにしにくい低トルク又は高回転時には、消費電力を抑制すべく、一点点火とする。一方、エンジン回転数が低下或いはトルクが増加すると、これらに伴ってノッキングが生じやすくなるため、このときには多点点火とする。このとき、燃焼室44内にて二点点火以上とする場合には、二焦点レンズ28の焦点距離の異なる領域数を点火数と同等にすれば良い。
そして、この決定した点火数に基づいて可動式凹レンズ113を光軸方向に移動させて可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径を調節するようにしても良い。
また、本実施形態では、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置が変更されるように可動式凹レンズ113を光軸方向に移動させて可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径を調節していたが、燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光数及び集光位置の少なくとも一方が変更されるように可動式凹レンズ113を光軸方向に移動させて可動式凹レンズ113から出射され二焦点レンズ28に入射するレーザ光の直径を調節するようにしても良い。
また、車両の運転状況として検出する項目をエンジンの特性等に応じてその他の項目に変更すると共に点火数及び点火位置の設定もエンジンの特性等に応じて種々設定しても良い。
また、上記実施形態では、本発明に係る二焦点レンズ28が二焦点レンズ28で構成されていたが、異なる焦点距離を有するレンズ領域の数は、二つに限られず、二つ以上であっても良い。また、中心領域28aの焦点距離が周辺領域28bの焦点距離よりも短く構成されていたが長く構成されていても良い。また、レーザ光を可動式凹レンズ113に入射させる方法は光ファイバ112に限られるものではない。
[本発明の第一参考例]
次に、図19,図20を参照しながら、本発明の第一参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置130について説明する。
本発明の第一参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置130では、レーザ光源121から発振されたレーザ光は、光ファイバ122を介して集光レンズ133に入射されるようになっている。また、集光レンズ133から出射されたレーザ光は、マルチウェッジ基盤132の各屈折面136a、134b、134c、134d(図20参照)に入射されるようになっている。
マルチウェッジ基盤132は、集光レンズ133から出射されたレーザ光の光軸方向と直交する方向を回転軸として回転自在に配置されると共に集光レンズ133から出射されたレーザ光を互いに異なる方向へ屈折して燃焼室44内に出射する屈折面136a、134b、134c、134d(図20参照)を回転方向に複数有して構成されている。回転機構134は、マルチウェッジ基盤132を集光レンズ133から出射されたレーザ光の光軸方向と直交する方向を回転軸として回転させるように構成されている。また、本実施形態では、集光レンズ133及びマルチウェッジ基盤132はハウジングケース32に収容されている。
なお、レーザ制御装置129は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、マルチウェッジ基盤132から出射窓30を介して燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置が変更されるように回転機構134を制御してマルチウェッジ基盤132を回転させることにより該マルチウェッジ基盤132から前記燃焼室44内に出射されるレーザ光の方向を変更するようになっている。
次に、本発明の第一参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置130の動作について説明する。
本発明の第一参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置130では、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のトルク及びエンジン回転数と点火位置マップ36bとに基づいて、成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する。
そして、上述のようにして決定した点火位置に基づいて回転機構134を制御してマルチウェッジ基盤132を回転させることにより該マルチウェッジ基盤132から前記燃焼室44内に出射されるレーザ光の方向を変更する。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、回転機構134を制御してマルチウェッジ基盤132を回転させ、複数の屈折面136a、134b、134c、134d(図20参照)のうち所定の屈折方向を有する屈折面に集光レンズ133から出射されるレーザ光が入射するようにする。これにより、マルチウェッジ基盤132から出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
また、ピストン42側位置での一点点火とする場合には、回転機構134を制御してマルチウェッジ基盤132を回転させ、複数の屈折面136a、134b、134c、134d(図20参照)のうち所定の屈折方向を有する屈折面に集光レンズ133から出射されるレーザ光が入射するようにする。これにより、マルチウェッジ基盤132から出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
このように、本参考例では、マルチウェッジ基盤132を回転させて複数の屈折面136a、134b、134c、134d(図20参照)のうち所定の屈折方向を有する屈折面に集光レンズ133から出射されるレーザ光が入射するようにすることによりマルチウェッジ基盤132から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を変更し、点火位置を変更する。
次に、本発明の第一参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置130の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本発明の第一参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置130によれば、一つのマルチウェッジ基盤132によって燃焼室44内の異なる位置にレーザ光を集光させることができると共に、一つの回転機構134によりマルチウェッジ基盤132を回転させることができる。これにより、ウェッジ基盤を用いた内燃機関用レーザ点火装置130においてその構造を小型化することが可能となる。
また、本発明の第一参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置130によれば、シリンダボア48(シリンダヘッド40に設けても良い)などに一つの出射光学系を設けるだけで燃焼室44内に出射するレーザ光の集光位置を変更することができる。これにより、燃焼室44内の点火位置と同数の出射光学系を配置(従来は点火位置と同数の光ファイバをシリンダヘッド上などに設置していた)する必要が無いので、シリンダボア48やシリンダヘッド40上などの配置スペースの省略化を図ることが可能となる。
また、本発明の第一参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置130では、上述のように、車両の運転状況に応じて燃焼室44内の点火位置を変更することができる。この構成によれば、成層燃焼方式において運転状況の変化に伴い最適混合気位置が変化しても、常に最適混合位置での点火が可能となる。従って、内燃機関の燃焼を車両の運転状況に合わせて最適な状態に保つことが可能となる。これにより、未燃燃料の低減、Soot生成の抑制等により燃焼効率が向上し、高効率で低エミッションのエンジンを得ることが可能となる。
なお、上記参考例では、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、点火位置マップ36b(図3(b)参照)に基づいて、成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定するようにしていたが、次のようにしても良い。
つまり、車両の運転状況として検出する項目をエンジンの特性等に応じてその他の項目に変更すると共に点火位置の設定もエンジンの特性等に応じて種々設定しても良い。
[本発明の第二参考例]
次に、図21を参照しながら、本発明の第二参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置140について説明する。
本発明の第二参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置140では、レーザ光源121から発振されたレーザ光は、ガルバノミラー138を介してfθレンズ135に入射されるようになっている。また、fθレンズ135から出射されたレーザ光は、マルチプリズム136の各屈折面136a,136b,136cに入射されるようになっている。
ガルバノミラー138は、レーザ光源121から発振されたレーザ光の光軸方向と直交する方向を回転軸として回転自在に配置されると共にレーザ光源121から発振されたレーザ光を反射する反射面を複数有して構成されている。回転機構134は、ガルバノミラー138をレーザ光源121から発振されたレーザ光の光軸方向と直交する方向を回転軸として回転させるように構成されている。
fθレンズ135は、ガルバノミラー138によって反射されたレーザ光を集光させるように構成されており、マルチプリズム136は、fθレンズ135から出射されたレーザ光を燃焼室44内の互いに異なる方向へ屈折する屈折面136a,136b,136cを複数備えた構成となっている。また、本実施形態では、fθレンズ135及びマルチプリズム136はハウジングケース32に収容されている。
なお、レーザ制御装置129は、エンジンコントローラ34から出力されたコントロール指令を入力すると、マルチプリズム136から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置が変更されるように回転機構134を制御してガルバノミラー138を回転させることによりマルチプリズム136から前記燃焼室44内に出射されるレーザ光の方向を変更するようになっている。
次に、本発明の第二参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置140の動作について説明する。
本発明の第二参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置140では、運転状況検出信号に基づいて検出した成層運転時のトルク及びエンジン回転数と点火位置マップ36bとに基づいて、成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定する。
そして、上述のようにして決定した点火位置に基づいて回転機構134を制御してガルバノミラー138を回転させることによりマルチプリズム136から前記燃焼室44内に出射されるレーザ光の方向を変更する。
すなわち、シリンダヘッド40側位置での一点点火とする場合には、回転機構134を制御してガルバノミラー138を回転させることによりマルチプリズム136の複数の屈折面のうち屈折面136aにfθレンズ135から出射されるレーザ光が入射するようにする。これにより、マルチプリズム136から出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
また、燃焼室44の中間位置での一点点火とする場合には、回転機構134を制御してガルバノミラー138を回転させることによりマルチプリズム136の複数の屈折面のうち屈折面136bにfθレンズ135から出射されるレーザ光が入射するようにする。これにより、マルチプリズム136から出射窓30を介して燃焼室44の中間位置にレーザ光が出射され、燃焼室44の中間位置での一点点火となる。
また、ピストン42側位置での一点点火とする場合には、回転機構134を制御してガルバノミラー138を回転させることによりマルチプリズム136の複数の屈折面のうち屈折面136cにfθレンズ135から出射されるレーザ光が入射するようにする。これにより、マルチプリズム136から出射窓30を介して燃焼室44のシリンダヘッド40側位置にレーザ光が出射され、燃焼室44のシリンダヘッド40側位置での一点点火となる。
このように、本参考例では、ガルバノミラー138を回転させることによりマルチプリズム136の複数の屈折面136a,136b,136cのうち所定の屈折方向を有する屈折面にfθレンズ135から出射されるレーザ光が入射するようにすることによりマルチプリズム136から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を変更し、点火位置を変更する。
次に、本発明の第二参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置140の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本発明の第二参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置140によれば、シリンダボア(シリンダヘッド40に設けても良い)などに一つの出射光学系を設けるだけで燃焼室44内に出射するレーザ光の集光位置を変更することができる。これにより、燃焼室44内の点火位置と同数の出射光学系を配置(従来は点火位置と同数の光ファイバをシリンダヘッド上などに設置していた)する必要が無いので、シリンダボア48やシリンダヘッド40上などの配置スペースの省略化を図ることが可能となる。
また、本発明の第二参考例に係る内燃機関用レーザ点火装置140では、上述のように、車両の運転状況に応じて燃焼室44内の点火位置を変更することができる。この構成によれば、成層燃焼方式において運転状況の変化に伴い最適混合気位置が変化しても、常に最適混合位置での点火が可能となる。従って、内燃機関の燃焼を車両の運転状況に合わせて最適な状態に保つことが可能となる。これにより、未燃燃料の低減、Soot生成の抑制等により燃焼効率が向上し、高効率で低エミッションのエンジンを得ることが可能となる。
なお、上記参考例では、成層運転時のトルク及びエンジン回転数等を検出して運転状況に応じた運転状況検出信号を生成し、点火位置マップ36b(図3(b)参照)に基づいて、成層運転時のトルクとエンジン回転数との関係から点火位置を決定するようにしていたが、次のようにしても良い。
つまり、車両の運転状況として検出する項目をエンジンの特性等に応じてその他の項目に変更すると共に点火位置の設定もエンジンの特性等に応じて種々設定しても良い。
また、図22に示されるように、ガルバノミラー138の代わりにポリゴンミラー139を用い、このポリゴンミラー139を回転させることによりマルチプリズム136から燃焼室44内に出射されるレーザ光の集光位置を変更し、点火位置を変更するようにしても良い。