JP5341341B2 - レーザ点火装置、内燃機関、及びレーザ点火方法 - Google Patents

レーザ点火装置、内燃機関、及びレーザ点火方法 Download PDF

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Description

本発明は、レーザ光を用いて燃料に点火するレーザ点火装置、内燃機関、及びレーザ点火方法に関する。
レーザ光を用いて内燃機関の燃焼室内の燃料に点火する技術が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。特許文献1には、レーザ光を空間的に複数に分割してピストンに向けて照射する技術が記載されている。特許文献2には、エネルギが等値である複数パルスのレーザ光を、正常着火を可能とする時間間隔で発振する技術が記載されている。特許文献件3には、ウェッジ基板を用いてレーザ光をピストン上面の広い範囲に照射させる技術が記載されている。特許文献件4には、レーザパルス幅を着火に要する最小エネルギとなるように制御する3技術が記載されている。また、エネルギ及びパルス幅が等しい2パルスのレーザをピコ秒オーダーの間隔で照射することでブレークダウンを増強する技術が知られている(非特許文献1参照)。
特開平9−303244号公報 特開2005−42591号公報 特開平7−217521号公報 特開2006−144726号公報 HOSODA,AOSHIMA,ITOH,TSUCHIYA "Enhancement of the Laser Breakdown of simple Gaseous and Liquid Materials under Intense Picosecond Double-pulse Excitation" 1999 Publication Board, Japanese Journal of Applied Physics
しかしながら、ピストンにレーザ光を照射する所謂ターゲットブレークダウンでは、ピストンの温度上昇(顕熱)にレーザエネルギが消費されてしまう問題があった。また、燃焼室のガス中にレーザ光を直接照射する吸収式レーザ着火においては、プラズマが発生するまでにレーザ光が点火位置を透過してしまうことに起因してエネルギ損失が大きくなりやすい問題があった。
本発明は、上記事実を考慮して、低エネルギで燃焼室内の燃料に点火することができるレーザ点火装置、該点火装置が適用された内燃機関、及び低エネルギで燃料に点火することができるレーザ点火方法を得ることが目的である。
請求項1記載の発明に係るレーザ点火装置は、出力するレーザパルスのパワー及びパルス幅を調整可能とされ、内燃機関の燃焼室内の燃料に向けてレーザパルスを出力するためのレーザ装置と、点火タイミングにおいて、前記燃焼室内でプラズマを生じ得るピークパワーを有する第1レーザパルスが前記レーザ装置から出力された後、前記第1のレーザパルスよりもピークパワーの低い第2レーザパルスが前記レーザ装置から前記燃焼室内で生じたプラズマに向けて出力されるように、かつ前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルスのパルス間隔が8.3ns以下となるように、前記レーザ装置を制御する制御装置と、を備えている。
請求項1記載のレーザ点火装置では、点火タイミングに制御手段による制御を受けたレーザ装置から、内燃機関の燃焼室内の燃料に向けて第1レーザパルスが出力される。これにより、内燃機関の燃焼室内にはプラズマが生じる。次いで、このレーザ装置から上記のプラズマに向けて第2レーザパルスが出力される。これにより、燃料は着火される。
ここで、本レーザ点火装置では、ピークパワーの大きい第1レーザパルスによって、プラズマを生じさせた後、レーザエネルギが吸収されやすいプラズマに向けて第2レーザパルスが出力されるので、プラズマの発生前にレーザ光が燃料を透過してしまうことが抑制される。
このように、請求項1記載のレーザ点火装置では、低エネルギで燃焼室内の燃料に点火することができる。
また、本レーザ点火装置では、第1レーザパルスと第2レーザパルスとのパルス間隔が200ns以下であるため、プラズマが膨張してプラズマ密度が減少してしまう前に第2レーザパルスのエネルギを吸収させることができる。
請求項2記載の発明に係るレーザ点火装置は、請求項1記載のレーザ点火装置において、前記制御装置は、前記第1レーザパルスのパルス幅よりも前記第2レーザパルスのパルス幅が大きくなるように、前記レーザ装置を制御する。
請求項2記載のレーザ点火装置では、第2レーザパルスのパルス幅が第1レーザパルスのパルス幅よりも広いので、該第2レーザパルスのパルス幅が第1レーザパルスのパルス幅と同じである場合と比較して、第1レーザパルスの出力によって生じたプラズマに対し、大きなエネルギを吸収させることができ、安定した点火に寄与する。
請求項3記載の発明に係るレーザ点火装置は、請求項2記載のレーザ点火装置において、前記制御装置は、前記第1レーザパルスのエネルギよりも前記第2レーザパルスのエネルギが大きくなるように、前記レーザ装置を制御する。
請求項3記載のレーザ点火装置では、第2レーザパルスのエネルギが第1レーザパルスのエネルギよりも大きいので、第1レーザパルスの出力によって生じたプラズマに、より大きなエネルギを吸収させることができ、より安定した点火に寄与する。
請求項4記載の発明に係るレーザ点火装置は、出力するレーザパルスのパワー及びパルス幅を調整可能とされ、内燃機関の燃焼室内の燃料に向けてレーザパルスを出力するためのレーザ装置と、点火タイミングにおいて、前記燃焼室内でプラズマを生じ得るピークパワーを有する第1レーザパルスが前記レーザ装置から出力された後、前記第1のレーザパルスよりもエネルギ及びパルス幅が大きい第2レーザパルスが前記レーザ装置から前記燃焼室内で生じたプラズマに向けて出力されるように、かつ前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルスのパルス間隔が8.3ns以下となるように、前記レーザ装置を制御する制御装置と、を備えている。
請求項4記載のレーザ点火装置では、点火タイミングに制御手段による制御を受けたレーザ装置から、内燃機関の燃焼室内の燃料に向けて第1レーザパルスが出力される。これにより、内燃機関の燃焼室内にはプラズマが生じる。次いで、このレーザ装置から上記のプラズマに向けて第2レーザパルスが出力される。これにより、燃料は着火される。
ここで、本レーザ点火装置では、比較的エネルギの小さい第1レーザパルスによって、プラズマを生じさせた後、レーザエネルギが吸収されやすいプラズマに向けて第2レーザパルスが出力されるので、プラズマの生成前にレーザ光が燃料を透過してしまうことが抑制される。そして、上記したプラズマの生成後に第2レーザパルスの大きなエネルギを吸収させることができる。
このように、請求項4記載のレーザ点火装置では、低エネルギで燃焼室内の燃料に点火することができる。また、第2レーザパルスのパルス幅が第1レーザパルスのパルス幅よりも大きいので、瞬間的に過大なピークパワーが生じることが抑制され、装置が保護される。
上記各レーザ点火装置では、第1レーザパルスと第2レーザパルスとのパルス間隔が21.1ns以下であるため、プラズマが膨張してプラズマ密度が減少してしまう前に第2レーザパルスのエネルギを吸収させることができる。なお、第1レーザパルスと第2レーザパルスとのパルス間隔は、20ns以下とすることが一層望ましい。
請求項記載の発明に係る内燃機関は、燃焼室内の燃料に点火する点火装置として、請求項1〜請求項の何れか1項記載のレーザ点火装置を備えている。
請求項記載の内燃機関では、請求項1〜請求項の何れか1項記載のレーザ点火装置によって、燃焼室内の混合気が安定的に着火される。
請求項記載の発明に係るレーザ点火方法は、燃料と空気との混合気に向けて、プラズマを生成し得るピークパワーの第1レーザパルスを照射する第1パルス照射ステップと、前記第1パルス照射ステップで前記第1レーザパルスが照射された位置に向けて、該第1レーザパルスよりもピークパワーが低い第2パルスを、前記第1レーザパルス照射ステップで前記第1レーザパルスが照射されてから、8.3ns以内に照射する第2パルス照射ステップと、を含む。
請求項記載のレーザ点火方法では、第1パルス照射ステップにて第1レーザパルスが照射されると、該第1レーザパルスが照射された空間ではプラズマが生じる。次いで、第2レーザパルス照射ステップにて、上記のプラズマに向けて第2レーザパルスが出力される。この点火方法により燃料は着火される。
ここで、本レーザ点火方法では、ピークパワーの大きい第1レーザパルスによって、プラズマを生じさせた後、レーザエネルギが吸収されやすいプラズマに向けて第2レーザパルスを出力させるので、プラズマの発生前にレーザ光が燃料を透過してしまうことが抑制される。
このように、請求項記載のレーザ点火方法では、低エネルギで燃料に点火することができる。
また、本レーザ点火方法では、第1レーザパルスと第2レーザパルスとのパルス間隔が200nsであるため、プラズマが膨張してプラズマ密度が減少してしまう前に第2レーザパルスのエネルギを吸収させることができる。
請求項記載の発明に係るレーザ点火方法は、請求項記載のレーザ点火方法において、前記第2パルス照射ステップで、前記第1レーザパルス照射ステップで照射される前記第1レーザパルスよりもパルス幅が大きい第2レーザパルスを照射する。
請求項記載のレーザ点火方法では、第2レーザパルスのパルス幅が第1レーザパルスのパルス幅よりも広いので、該第2レーザパルスのパルス幅が第1レーザパルスのパルス幅と同じである場合と比較して、第1レーザパルスの出力によって生じたプラズマに、大きなエネルギを吸収させることができ、安定した点火に寄与する。
請求項記載の発明に係るレーザ点火方法は、請求項記載のレーザ点火方法において、前記第2パルス照射ステップで、前記第1レーザパルス照射ステップで照射される前記第1レーザパルスよりもエネルギが大きい第2レーザパルスを照射する。
請求項記載のレーザ点火方法では、第2レーザパルスのエネルギが第1レーザパルスのエネルギよりも大きいので、第1レーザパルスの出力によって生じたプラズマに、より大きなエネルギを吸収させることができ、より安定した点火に寄与する。
請求項記載の発明に係るレーザ点火方法は、燃料と空気との混合気に向けて、プラズマを生成し得るピークパワーの第1レーザパルスを照射する第1パルス照射ステップと、前記第1パルス照射ステップで前記第1レーザパルスが照射された位置に向けて、該第1レーザパルスよりもエネルギ及びパルス幅が大きい第2パルスを、前記第1レーザパルス照射ステップで前記第1レーザパルスが照射されてから、8.3ns以内に照射する第2パルス照射ステップと、を含む。
請求項記載のレーザ点火方法では、第1パルス照射ステップにて第1レーザパルスが照射されると、該第1レーザパルスが照射された空間ではプラズマが生じる。次いで、第2レーザパルス照射ステップにて、上記のプラズマに向けて第2レーザパルスが出力される。この点火方法により燃料は着火される。
ここで、本レーザ点火方法では、ピークパワーの大きい第1レーザパルスによって、プラズマを生じさせた後、レーザエネルギが吸収されやすいプラズマに向けて第2レーザパルスを出力させるので、プラズマの発生前にレーザ光が燃料を透過してしまうことが抑制される。そして、上記したプラズマの生成後に第2レーザパルスの大きなエネルギを吸収させることができる。
このように、請求項記載のレーザ点火方法では、低エネルギで燃料に点火することができる。また、第2レーザパルスのパルス幅が第1レーザパルスのパルス幅よりも大きいので、瞬間的に過大なピークパワーが生じることが抑制され、例えばレーザパルスの出力経路を構成する部品等が保護される。
上記各レーザ点火方法では、第1レーザパルスと第2レーザパルスとのパルス間隔が21.1ns以下であるため、プラズマが膨張してプラズマ密度が減少してしまう前に第2レーザパルスのエネルギを吸収させることができる。なお、第1レーザパルスと第2レーザパルスとのパルス間隔は、20ns以下とすることが一層望ましい。
以上説明したように本発明に係るレーザ点火装置、内燃機関は、低エネルギで燃焼室内の燃料に点火することができる。
また、本発明に係るレーザ点火方法は、低エネルギで燃料に点火することができるという優れた効果を有する。
本発明の第1の実施形態に係るレーザ点火装置10、内燃機関であるエンジン12について、図1〜図5に基づいて説明する。
図1には、レーザ点火装置10及び該レーザ点火装置10が適用されたエンジン12が模式図にて示されている。この図に示される如く、レーザ点火装置10は、エンジン12の燃焼室14内に噴射された燃料混合気Mに向けてレーザ光を出射させ、このレーザ光により燃料に着火させるための点火装置とされている。
具体的には、エンジン12は、シリンダ16と、該シリンダ16の内面に沿ってスライド可能に設けられたピストン18と、シリンダ16の開口端を封止するシリンダヘッド20とを有する。燃焼室14は、シリンダ16内におけるピストン18とシリンダヘッド20との間の空間とされている。また、エンジン12は、シリンダヘッド20に設けられた燃料噴射弁22を有する。
燃料噴射弁22は、エンジンコントローラ24に制御されて圧縮行程の終期に燃焼室14に燃料を噴霧(噴射)する構成とされている。これにより、燃焼室14では、圧縮行程の終期に燃料と空気との混合気Mが生成されるようになっている。そして、レーザ点火装置10は、この混合気Mをレーザ光により着火させる構成とされている。なお、エンジン12は、燃料直接噴射式のものに代えて、空気と予混合された混合気Mが吸入行程でエンジン12の燃焼室14に供給される予混合式のものであっても良い。
レーザ点火装置10は、レーザ光を出力するレーザ装置26と、レーザ装置26のレーザ光をエンジン12の燃焼室14に出射させるレーザ出射部28と、レーザ装置26を制御する制御装置(制御手段)としてのレーザ制御回路30とを主要構成要素として構成されている。レーザ装置26としては、例えばYAGレーザ等の固体レーザ装置が用いられる。
レーザ装置26とレーザ出射部28とは、光伝送手段としての光ファイバ32に接続されており、レーザ出射部28が出力したレーザ光が光ファイバ32を介してレーザ制御回路30に導かれるようになっている。この実施形態では、レーザ制御回路30は、シリンダヘッド20に固定された略筒状のハウジング34と、レーザ制御回路30の両端をレーザ光の透過可能に閉止する窓ガラス35、36と、ハウジング34内に設けられた凹レンズ38及び一対の凸レンズ40、42とを含んで構成されている。
このレーザ出射部28は、光ファイバ32によって導かれたレーザ光を、エンジン12の燃焼室14内における所定位置である点火位置IPにレーザ光を照射させる構成とされている。この点火位置IPは、燃料噴射弁22によって燃料が噴霧される領域の一点とされている。すなわち、レーザ出射部28は、レンズ42によってレーザ光を点火位置IPに向け絞り込んで照射する構成とされている。
レーザ制御回路30は、レーザ装置26にパルス状のレーザ光(以下、レーザパルスという)を出力させるように、該レーザ装置26を制御するようになっている。この実施形態においては、レーザ制御回路30は、エンジンコントローラ24からの制御信号に基づいて、エンジン12の1点火行程(燃料噴霧)当たりに、複数のレーザパルスをレーザ装置26に出力させるように、該レーザ装置26を制御する構成とされている。
具体的には、レーザ制御回路30は、図2に示される如き2つのレーザパルスLP1、LP2をレーザ装置26から出力させる構成とされている。レーザ制御回路30は、時間的に先に出力される第1レーザパルスとしてのレーザパルスLP1のレーザパワーのピーク(以下、ピークパワーという)P1が、燃焼室14内でブレークダウンを生じるのに足る大きさとなるように、レーザ装置26を制御するようになっている。また、レーザ制御回路30は、レーザパルスLP1のエネルギ(レーザパワーの時間積分)が、単独のレーザパルスで混合気Mに点火するのに要するエネルギと比較して十分に小さくなるように、レーザ装置26を制御するようになっている。
具体的には、レーザ制御回路30は、レーザパルスLP1のパルス幅Wp1が半値幅(ピークP1の半分のレーザパワーでのパルス幅)で50ns以下になるようにレーザ装置26を制御する構成とされている。この実施形態では、レーザパルスLP1のパルス幅は、半値幅で略5ns以下に設定されるようになっている。
また、レーザ制御回路30は、時間的にレーザパルスLP1の後に出力される第2レーザパルスとしてのレーザパルスLP2のピークパワーP2が、燃焼室14内でブレークダウンを生じるのに足る大きさよりも小さくなるように、レーザ装置26を制御するようになっている。すなわち、レーザパルスLP2のピークパワーP2は、レーザパルスLP1のピークパワーP1と比較して小さく設定されるようになっている。
一方、レーザ制御回路30は、レーザパルスLP2のWp2がレーザパルスLP1のパルス幅Wp1よりも大でかつ半値幅で略200ns以下になるように、レーザ装置26を制御する構成とされている。この実施形態では、レーザ制御回路30は、レーザパルスLP2のエネルギがレーザパルスLP1のエネルギよりも大となるように、レーザ装置26を制御する構成とされている。
さらに、レーザ制御回路30は、レーザパルスLP1とレーザパルスLP2とのパルス間隔τが所定間隔以下になるように、レーザ装置26を制御する構成とされている。具体的には、レーザ制御回路30は、パルス間隔τが200ns以下になるように、レーザ装置26を制御する構成とされている。この実施形態では、パルス間隔τは、20ns以下として設定されるようになっている。なお、この実施形態では、パルス間隔τは、レーザ制御回路30からレーザ装置26へのレーザパルスLP1の出力指令の出力から、該レーザ制御回路30からレーザ装置26へのレーザパルスLP2の出力指令の出力までの間隔として定義される。
レーザ点火装置10では、以上説明したレーザパルスLP1、レーザパルスLP2を点火位置IPに照射させることで、燃焼室14内の混合気Mに点火する(着火させる)ようになっている。
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
上記構成のレーザ点火装置10が適用されたエンジン12では、シリンダ16内で吸入行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程がこの順で繰り返されることで、ピストン18の往復直線運動が図示しないクランクシャフトの回転運動に変換され、動力が発生する。補足すると、圧縮行程の終期には、燃料噴射弁22によって燃焼室14内に燃料が噴霧されて混合気Mが生成され、この混合気Mに向けてレーザ点火装置10がレーザパルスLP1、LP2を続けて照射することで、該混合気Mが着火される。この混合気M中の燃料の燃焼によって、膨張行程が行われる。
レーザ点火装置10による点火について詳細に説明する。レーザ制御回路30がエンジンコントローラ24からの信号に基づいて点火タイミングであると判断した場合に、該該レーザ制御回路30によって制御されたレーザ装置26からレーザパルスLP1が出力されると、このレーザパルスLP1は、光ファイバ32を経由してレーザ出射部28に導かれ、窓ガラス35、凹レンズ38、一対の凸レンズ40、42、窓ガラス36を通じて燃焼室14内の点火位置IPに照射される(第1パルス照射ステップ)。
このようにレーザパルスLP1が混合気Mに向けて照射されると、レーザパルスLP1のピークパワーP1がブレークダウンを生じるのに足るパワーを上回るため、点火位置IPでブレークダウンが発生する。このため、燃焼室14内の点火位置IPにはプラズマが生成される。
また、該レーザ制御回路30によって制御されたレーザ装置26からレーザパルスLP2が出力されると、このレーザパルスLP2は、光ファイバ32を経由してレーザ出射部28に導かれ、窓ガラス35、凹レンズ38、一対の凸レンズ40、42、窓ガラス36を通じて燃焼室14内の点火位置IPに照射される(第2パルス照射ステップ)。すなわち、レーザパルスLP2は、レーザパルスLP1の照射によって生成されたプラズマに照射される。
これにより、レーザ点火装置10では、レーザパルスLP2のエネルギの一部がプラズマに吸収されて該プラズマをさらに発達させる。そして、このプラズマのエネルギが燃料の最小点火エネルギに至ると、燃料の着火(点火)が成される。
以上説明したように、レーザ点火装置10では、ピークパワーP1が大きいレーザパルスLP1の照射によって生成させたプラズマにレーザパルスLP2を照射させるため、レーザパルスLP2のエネルギが効率的にプラズマに吸収される。このため、レーザパルスLP1、レーザパルスLP2を合わせて小さいエネルギで燃料に点火することができる。
また、レーザ点火装置10では、レーザパルスLP1のパルス幅Wp1が小さいので、換言すれば、レーザパルスLP1のエネルギが小さいため、ピークパワーP1を大きくしてもレーザ出射部28の光学部品に損傷を生じることが防止される。一方、レーザ点火装置10では、レーザパルスLP2のパルス幅Wp2が大きいため、すなわちピークパワーP2を低く抑えつつエネルギが大きくされたレーザパルスLP2を照射するため、レーザパルスLP1の照射によって生成されたプラズマに大きなエネルギを吸収させることができる。
そして、レーザ点火装置10では、レーザパルスLP1よりもレーザパルスLP2のエネルギが大きいため、換言すれば、エネルギの小さいレーザパルスLP1で先ずプラズマを生成させ、このプラズマにレーザパルスLP2の大きなエネルギを吸収させるため、1つのレーザパルスで点火する構成と比較して、小さいエネルギで燃料への点火を行うことができる。
以上のレーザパルスLP1、LP2の照射による点火エネルギの低下効果について、図3、4、7に示す実験結果を参照しつつ補足する。先ず、図5に示す実験装置を説明する。実験装置100は、レーザ装置101から出射されたレーザ光を分割するハーフミラー102、ハーフミラー102で分割されたレーザ光のエネルギ検出するためのレーザエネルギメータ104、ハーフミラー102で分割された残余のレーザ光の一部を反射する石英板106、石英板106を透過したレーザ光を集光部Cに集光させるレンズ108、集光部Cを透過したレーザ光を平行光に戻すレンズ110、レンズ110で平行光に戻されたレーザ光の一部を反射する石英板112、石英板106で反射されたレーザ光を減光させる減光フィルタ114、減光フィルタ114で減光されたレーザ光を受光する受光素子(Pinフォトダイオード)116、石英板112で反射されたレーザ光を減光させる減光フィルタ118、減光フィルタ118で減光されたレーザ光を受光する受光素子(Pinフォトダイオード)120、集光部Cの光を集光するレンズ122、レンズ122で集光された光のうちレーザ光の波長をカットするフィルタ124、フィルタ124を通過した光を受光する受光素子(Pinフォトダイオード)126、受光素子116、120、126の出力信号の時間変化を記録する図示しないギガオシロスコープ(サンプリング周波数20GHz)を含んで構成されている。各受光素子116、120、126の立ち上がり時間(ステップ応答)は、175psとされている。
この実験装置100による実験は、レーザ装置101からレーザパルスを出力させ、石英板106で集光部Cに至る前のレーザパルスが反射されて受光素子116で入射光を検出される。また、集光部Cを透過したレーザパルスが石英板112で反射されて受光素子120で検出される。さらに、集光部Cでプラズマの生成に伴うプラズマ発光(自発光)が生じた場合には、その光が受光素子126にて検出される。
図7(B)は、ピークパワーがブレークダウンを生じるのに足るパワーを下回る単一のレーザパルスがレーザ装置101から発生された場合の実験結果を示している。この図から、受光素子116で検出される入射光と、受光素子120で検出される透過光とがほぼ一致していることが解る。すなわち、この場合、レーザエネルギは、集光部Cで吸収されることなく、ほぼ全て透過してしまっている。図7(A)は、ピークパワーがブレークダウンを生じるのに足るパワー以上である単一のレーザパルスがレーザ装置101から発生された場合の実験結果を示している。ブレークダウンの発生前においては、図7(B)の場合と同様に入射光と透過光とがほぼ一致することが解る。一方、ブレークダウンの発生後は、入射光に対し透過光が減少していることが解る。すなわち、ブレークダウンの発生によるプラズマの生成後は、集光部Cでレーザパルスのエネルギ(ハッチングを施した部分の面積の相当するエネルギ)がプラズマに吸収されることが解る。
また、図3には、レーザ装置101が2つのレーザパルスを出力する場合の実験結果が示されている。図3(B)は、各レーザパルスのピークパワーがブレークダウンを生じるのに足るパワーを下回る場合の実験結果を示している。この図から、受光素子116で検出される入射光と、受光素子120で検出される透過光とがほぼ一致していることが解る。すなわち、この場合、レーザエネルギは、集光部Cで吸収されることなく、ほぼ全て透過してしまっている。
一方、図3(A)は、先に照射されるレーザパルスLP1のピークパワーP1がブレークダウンを生じるのに足るパワー以上であり、かつレーザパルスLP2のピークパワーP2は図3(B)と同等のブレークダウンを生じるのに足るパワーを下回る場合の実験結果を示している。この図から、ブレークダウンの発生直後からレーザパルスLP2が照射されている期間にかけて、入射光に対し透過光が減じられていることが解る。すなわち、レーザパルスLP1によりブレークダウンが生じると、それ自体ではブレークダウンを生じることができない弱いエネルギ(パワー)のレーザパルスLP2でもレーザ照射直後よりレーザパルスLP1で生じたプラズマに効率的に吸収されていることが解る。また、この実験では、図3(B)の実験で観察されなかったプラズマ発光が観察された。プラズマ発光は、ブレークダウンの発生直後から生じていることが解る。また、レーザパルスLP2の入射のタイミングと同期してプラズマ発光が強化されていることが解る。すなわち、レーザパルスLP1の照射によるブレークダウンの発生後において、該レーザパルスLP1のエネルギ及びレーザパルスLP2のエネルギ(ハッチングを施した部分の面積の相当するエネルギ)が、上記ブレークダウンの発生より生じたプラズマに吸収されプラズマ発光が強化されていることが解る。なお、図3(B)は、パルス間隔τが略8.7nsである場合の結果を示している。また、図3(B)は、レーザパルスLP2のエネルギがレーザパルスLP1のエネルギと同等以下である場合の実験結果を示している。
また、図4は、レーザパルスLP1とレーザパルスLP2とのパルス間隔τを変化させた場合のプラズマ発光を示している。パルス間隔τが小さいほど、レーザパルスLP2の照射によるプラズマ発光の強化の程度が大きいことが解る。なお、パルス間隔τが大きいほど、レーザパルスLP2の照射によるプラズマ発光の強化の程度が小さくなるのは、レーザパルスLP1の照射により生成されたプラズマが時間と共に膨張し、プラズマ密度が低下するためであると考えられる。図示は省略するが、パルス間隔τを200ns以上にすると、レーザパルスLP2の照射によるプラズマ発光が観察されなくなることが確かめられている。より高エネルギのレーザパルスLP2を照射した場合も同様であった。そして、第1の実施形態に係るレーザ点火装置10では、パルス間隔τを20ns以下としているので、レーザパルスLP2の照射によるプラズマ発光の強化の程度が大きい。
以上により、ブレークダウンの発生前に照射されたエネルギはほぼ全て透過されて点火エネルギとして利用されることがない。そして、1つのレーザパルスで点火を行う構成では、該レーザパルスのエネルギが大きいので、ブレークダウンの発生前に透過されてしまうエネルギが大きくなってしまう。これに対してレーザ点火装置10では、レーザパルスLP1はブレークダウンを発生させるピークパワーを有すれば足りるので、エネルギを小さくしてブレークダウンの発生前に透過されるエネルギを小さく抑えることができる。そして、レーザパルスLP1の照射によって発生したブレークダウンに伴って生じたプラズマにレーザパルスLP2を照射することで、該プラズマに点火に要するエネルギを吸収させることができる。すなわち、点火位置IPに点火に要するエネルギを蓄えることができる。
したがって、レーザ点火装置10では、1つのレーザパルスで点火させる構成と比較して、レーザパルスLP1、レーザパルスLP2のトータルのエネルギを小さく抑えながら、点火を果たすことができる。また、レーザ装置26が発生するエネルギの絶対値が小さくなるので、レーザ点火装置10の消費電力を少なくすることができる。さらに、レーザ装置26を構成するレーザ励起用の光源(例えばフラッシュランプ、半導体レーザ等)を小さくすることができる。しかも、冷却系を簡素に構成することが可能になり、レーザ点火装置10を全体として小型化することができる。
また、上記の通りレーザパルスLP2のパルス幅Wp2が大きいので、該レーザパルスLP2のエネルギを大きくしつつピークパワーP2を抑えることができ、レーザ出射部28を構成する光学部品を保護することができる。
さらに、エンジン12は、上記構成のレーザ点火装置10を備えるので、小さなエネルギで安定的に燃焼室14内の混合気Mへの点火が果たされる。
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的に同一の部品・部分には、上記第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略し、また図示を省略する場合がある。
図6には、本発明の第2の実施形態に係るレーザ点火装置50、及び該レーザ点火装置50が適用されたエンジン52が模式図にて示されている。この図に示される如く、レーザ点火装置50は、ハウジング34内にレーザ装置としてのQスイッチ式固体レーザ54が配置されている点で、レーザ装置26がエンジン12の外部に設けられているレーザ点火装置10とは異なる。
このレーザ点火装置50では、光源としてのLD(レーザダイオード)レーザ56がエンジン52の外部に設けられており、LDレーザ56からのレーザ光が光ファイバ32、レンズ58を介してQスイッチ式固体レーザ54に導かれるようになっている。レンズ58は、光ファイバ32内に配置されている。
また、レーザ点火装置50は、LDレーザ制御回路60を備えている。LDレーザ制御回路60は、エンジンコントローラ24からの制御信号に基づいて、エンジン52の圧縮行程で燃料噴射弁22から燃料が噴射された後、Qスイッチ式固体レーザ54から点火位置IPに向けてレーザパルスLP1、レーザパルスLP2が出射されるように、LDレーザ56を制御する構成とされている。
この実施形態では、Qスイッチ式固体レーザ54及びLDレーザ56が本発明におけるレーザ装置に相当し、LDレーザ制御回路60が本発明における制御装置に相当する。レーザ点火装置50の他の構成は、レーザ点火装置10の対応する構成と同じである。
したがって、第2の実施形態に係るレーザ点火装置50によっても、レーザ点火装置10の同様の作用によって同様の効果を得ることができる。すなわち、ピークパワーの大きいレーザパルスLP1の照射によってブレークダウンを発生させてプラズマを生成させ、このプラズマにレーザパルスLP2を照射することで、小さいトータルエネルギで燃焼室14内の混合気Mに点火することができる。
なお、上記した各実施形態では、2つのレーザパルスLP1、LP2を照射する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、エンジン12の1点火行程(燃料噴霧)当たりに3つ以上のレーザパルスを点火位置IPに向けて照射するようにしても良い。
また、上記した実施形態では、燃焼室14内に点火位置IPが1つである例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、複数の点火位置IPにそれぞれ複数のレーザパルス(レーザパルスLP1、LP2等)を照射するようにしても良い。
さらに、上記した実施形態では、光ファイバ32を用いて、レーザ装置26からレーザ出射部28にレーザパルスを導き又はLDレーザ56からQスイッチ式固体レーザ54にレーザ光を導く例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ミラー等を用いて、レーザ装置26からレーザ出射部28にレーザパルスを導いたり、又はLDレーザ56からQスイッチ式固体レーザ54にレーザ光を導くようにしても良い。
またさらに、本発明は、上記した各実施形態の構成、方法に限定されることはなく、レーザパルスLP1、LP2をこの順に所定の点火位置IPに照射することが可能である構成であれば足り、各種変形した構成を取り得ることはいうまでもない。
さらに、上記した実施形態では、レーザパルスLP2がレーザパルスLP1に対しパルス幅及びエネルギ共に大である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、レーザパルスLP2のエネルギがレーザパルスLP1のエネルギと同等である構成としても良い。また例えば、レーザパルスLP2のピークパワーP2は、単独でブレークダウンを発生させ得る大きさであっても良い。
本発明の第1の実施形態に係るレーザ点火装置の概略全体構成を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係るレーザ点火装置が照射するレーザパルスの形状を模式的に示す線図である。 (A)は、本発明の第1の実施形態に係るレーザ点火装置でのレーザパルスの照射パターンを模したレーザパルスの照射実験結果を示す線図であり、(B)は、図3(A9との比較例レーザパルスの照射実験結果を示す線図である。 本発明の第1の実施形態に係るレーザ点火装置でのレーザパルスの照射間隔を変化させた場合のプラズマ発光の相違を示す線図である。 図3、図4の実験を行うための実験装置を示す模式図である。 本発明の第2の実施形態に係るレーザ点火装置の概略全体構成を示す模式図である。 本発明の実施形態との比較例に係るレーザパルスの照射実験結果を示す線図であり、(A)はプラズマが生成された場合の実験結果を示す線図、(B)はプラズマが生成されない場合の実験結果を示す線図である。
符号の説明
10 レーザ点火装置
12 エンジン(内燃機関)
14 燃焼室
26 レーザ装置
30 レーザ制御回路(制御装置)
50 レーザ点火装置
52 エンジン(内燃機関)
54 Qスイッチ式固体レーザ(レーザ装置)
56 LDレーザ(レーザ装置)
60 LDレーザ制御回路(制御装置)
LP1 レーザパルス(第1レーザパルス)
LP2 レーザパルス(第2レーザパルス)

Claims (9)

  1. 出力するレーザパルスのパワー及びパルス幅を調整可能とされ、内燃機関の燃焼室内の燃料に向けてレーザパルスを出力するためのレーザ装置と、
    点火タイミングにおいて、前記燃焼室内でプラズマを生じ得るピークパワーを有する第1レーザパルスが前記レーザ装置から出力された後、前記第1のレーザパルスよりもピークパワーの低い第2レーザパルスが前記レーザ装置から前記燃焼室内で生じたプラズマに向けて出力されるように、かつ前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルスのパルス間隔が8.3ns以下となるように、前記レーザ装置を制御する制御装置と、
    を備えたレーザ点火装置。
  2. 前記制御装置は、前記第1レーザパルスのパルス幅よりも前記第2レーザパルスのパルス幅が大きくなるように、前記レーザ装置を制御する請求項1記載のレーザ点火装置。
  3. 前記制御装置は、前記第1レーザパルスのエネルギよりも前記第2レーザパルスのエネルギが大きくなるように、前記レーザ装置を制御する請求項2記載のレーザ点火装置。
  4. 出力するレーザパルスのパワー及びパルス幅を調整可能とされ、内燃機関の燃焼室内の燃料に向けてレーザパルスを出力するためのレーザ装置と、
    点火タイミングにおいて、前記燃焼室内でプラズマを生じ得るピークパワーを有する第1レーザパルスが前記レーザ装置から出力された後、前記第1のレーザパルスよりもエネルギ及びパルス幅が大きい第2レーザパルスが前記レーザ装置から前記燃焼室内で生じたプラズマに向けて出力されるように、かつ前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルスのパルス間隔が8.3ns以下となるように、前記レーザ装置を制御する制御装置と、
    を備えたレーザ点火装置。
  5. 燃焼室内の燃料に点火する点火装置として、請求項1〜請求項4の何れか1項記載のレーザ点火装置を備えた内燃機関。
  6. 燃料に向けて、プラズマを生成し得るピークパワーの第1レーザパルスを照射する第1パルス照射ステップと、
    前記第1パルス照射ステップで前記第1レーザパルスが照射された位置に向けて、該第1レーザパルスよりもピークパワーが低い第2パルスを、前記第1レーザパルス照射ステップで前記第1レーザパルスが照射されてから、8.3ns以内に照射する第2パルス照射ステップと、
    を含むレーザ点火方法。
  7. 前記第2パルス照射ステップで、前記第1レーザパルス照射ステップで照射される前記第1レーザパルスよりもパルス幅が大きい第2レーザパルスを照射する請求項6記載のレーザ点火方法。
  8. 前記第2パルス照射ステップで、前記第1レーザパルス照射ステップで照射される前記第1レーザパルスよりもエネルギが大きい第2レーザパルスを照射する請求項7記載のレーザ点火方法。
  9. 燃料に向けて、プラズマを生成し得るピークパワーの第1レーザパルスを照射する第1パルス照射ステップと、
    前記第1パルス照射ステップで前記第1レーザパルスが照射された位置に向けて、該第1レーザパルスよりもエネルギ及びパルス幅が大きい第2パルスを、前記第1レーザパルス照射ステップで前記第1レーザパルスが照射されてから、8.3ns以内に照射する第2パルス照射ステップと、
    を含むレーザ点火方法。
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