JP4438403B2 - 摩擦撹拌接合方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被接合物を摩擦撹拌接合する摩擦撹拌接合方法に関する。
図23は、従来技術の摩擦撹拌接合方法を説明するための断面図である。被接合物23は、2つの被接合部材21,22が突合わされることによって継ぎ手部分5を形成する。摩擦撹拌接合方法は、継ぎ手部分5に接合ツール4を摺動させて摩擦熱を発生する。そして摩擦熱によって被接合物23を部分的に流動化し、2つの被接合部材21,22を接合する。従来技術では、被接合物23のうち接合ツール4と反対側の表面7に、裏当て部材8を当接させる。これによって被接合物23が、接合時に変形することを防ぐ。
図24は、突合わされる被接合部材21,22を示す平面図である。突合わされる2つの被接合部材21,22の間にギャップ10が存在する場合、接合された継ぎ手部分5の減厚および接合欠陥が発生するという問題がある。この問題を解決するために、ギャップ10に粉末や棒状の充填材を充填するいくつかの方法が提案されている。特許文献1に開示される方法では、充填材を摩擦撹拌接合または溶接によって仮接合することによって、接合時に充填材がギャップ10から飛び出すことを防いでいる。
特開2000−233285号公報
上述するように、従来の技術では、接合時における被接合物23の変形を防ぐために、被接合物23に裏当て部材8を当接させる。この場合、被接合物23の大型化にともなって、裏当て部材8もまた大型化してしまう。これによって摩擦撹拌接合装置が大型化および重量化し、製造コストが大きくなってしまうという問題がある。また裏当て部材8をローラ形状にした場合には、裏当て部材8の大型化については防がれるものの、摩擦撹拌接合装置の構造が複雑化するという問題がある。
また、被接合物23の厚み方向A全域にわたって、各被接合部材21,22を接合する場合、接合ツール4と裏当て部材8との接触を防止するとともに、各被接合部材21,22の接合不足を防ぐために、接合ツール4の先端部と裏当て部材8との間の距離11を、0.1〜0.2mmに管理する必要がある。しかしながら正確にその距離11を管理することは困難である。
したがって本発明の目的は、裏当て部材を用いる必要がない摩擦撹拌接合方法を提供することである。
また特許文献1に開示される摩擦撹拌接合方法では、摩擦撹拌接合前に、被接合部材21,22と充填材とを仮接合する必要がある。この場合、施工効率が低下するという問題がある。
したがって本発明の他の目的は、仮接合を行わずに充填材の飛び出しを防ぐ摩擦撹拌接合方法を提供することである。
本発明は、複数の被接合部材によって構成される被接合物に、回転する接合ツールを没入させて、接合ツールと被接合物との摩擦熱によって各被接合部材を接合する摩擦撹拌接合方法であって、
被接合物の厚み方向一方側から接合ツールを没入させ、被接合物の厚み方向他方側に流動化していない非流動化部分を被接合物に残した状態で、各被接合部材を接合する第1接合工程と、
被接合物の厚み方向他方側から接合ツールを没入させ、前記非流動化部分を流動化させた状態で、各被接合部材を接合する第2接合工程とを含み、
前記第1および第2接合工程では、裏当て部材を用いずに前記各被接合部材が接合され、
前記第1接合工程において、非流動化部分の厚み寸法は、非流動化部分を構成する材料の引張り強さおよび非流動化部分の厚み寸法に比例する非流動化部分の変形抵抗が、接合ツールから与えられる予め定めるツール押圧力以上となるように決定されることを特徴とする摩擦撹拌接合方法である。
本発明に従えば、第1接合工程で、非流動化部分を残した状態で各被接合部材を接合する。このとき、ツール押圧力以上の変形抵抗能を有するように非流動化部分を残した状態で、各被接合部材を部分的に接合する。これによって接合ツールからツール押圧力が与えられても、被接合物の厚み方向他方への塑性変形を抑制することができる。また第2接合工程で、各被接合部材の厚み方向他方側部分を接合することによって、各被接合部材の両面を接合することができる。また、非流動化部分のツール没入方向寸法を設定することによって、非流動化部分を形成する材料自体の強度が小さくても、接合時における非流動化部分の変形抵抗能、すなわち変形抵抗力をツール押圧力以上にすることができる。
また本発明は、前記第1接合工程は、少なくとも接合ツールによって前記ツール押圧力が被接合物に与えられている間に、非流動化部分を冷却する工程を含み、非流動化部分の冷却温度と非流動化部分の厚み寸法とは、非流動化部分を構成する材料の温度と前記引張り強さとの関係に基づいて、前記変形抵抗が前記ツール押圧力以上となるように決定されることを特徴とする。
本発明に従えば、非流動化部分を冷却することによって、接合時の摩擦熱に起因する非流動化部分の軟化を抑えて、接合変形(ひずみ)や接合欠陥の発生を抑制することができる。これによって非流動化部分のツール没入方向寸法が小さくても、接合時における非流動化部分の変形抵抗能をツール押圧力以上にすることができる。
また本発明は、第1接合工程および第2接合工程では、被接合物を流動化する流動化部分の厚み寸法を、被接合物の厚み寸法の半分以上にすることを特徴とする。
本発明に従えば、第1接合工程で残った非流動化部分を第2接合工程で確実に流動化させることができ、被接合物の厚み方全域にわたって、各被接合部材を確実に接合することができる。これによって接合後の被接合物の強度を向上することができる。
また本発明は、接合ツールを没入する前に、互いに突合わされる2つの被接合部材の間に形成される隙間に、被接合物の厚み方向両側から突出する突出部分を形成して充填材を挿入し、充填材の突出部分を残余の部分に対して屈曲させることを特徴とする。
本発明に従えば、充填材を隙間に挿入し、被接合物から突出する部分を屈曲させることによって、充填材が被接合物に係止される。これによって摩擦撹拌接合時に、隙間から充填材が飛び出ることを防ぐことができる。
また本発明は、充填材は、被接合部材と同質の材料または各被接合部材を摩擦撹拌接合可能な化学的性質を有する材料によって実現されることを特徴とする。
本発明に従えば、充填材によって接合部分の減厚や接合欠陥を防止するとともに、被接合部材の接合強度を向上させることができる。
また本発明は、接合ツールを被接合物に没入した状態で、突合せ面に沿って接合ツールを移動させる連続接合方法であることを特徴とする。
本発明に従えば、第2工程において被接合物の厚み方向他方への塑性変形を抑制した状態で、接合ツールを接合面に沿って移動させることができる。
本発明によれば、非流動化部分を残した状態で、摩擦撹拌接合を行うことによって、被接合物の塑性変形を抑制することができる。これによって裏当て部材を用いることなく摩擦撹拌接合を行うことができる。裏当て部材を不要とすることによって、摩擦撹拌接合装置を小型化および簡略化することができ、摩擦撹拌接合装置の製造コストを低減することができる。
また裏当て部材を用いずとも、第2接合工程において、被接合物の厚み方向他方側の塑性変形がないまたは小さい状態で、接合ツールを被接合物に没入することができる。これによって接合ツールを目標位置にずれなく没入させることができる。また接合後の被接合物の変形を小さくすることができる。このように裏当て部材を不要としても、接合品質の低下を防ぐことができる。
また裏当て部材を用いる従来技術では、没入させた接合ツールと裏当て部材との間の距離を正確に管理する必要があったが、本発明のように裏当て部材を不要とすることによって、接合ツールの没入量を正確に管理する必要がなくなり、被接合物の寸法が少々変動しても、各被接合部材を容易に接合することができる。また、非流動化部分のツール没入方向寸法を設定することによって、非流動化部分を形成する材料自体の強度が小さくても、非流動化部分の変形を小さくすることができる。これによって裏当て部材を用いることなく接合することができる被接合部材の材料の選択肢を増やすことができる。
また本発明によれば、非流動化部分を冷却することによって、接合時の摩擦熱に起因する非流動化部分の軟化を抑えて、変形抵抗能の低下を抑制することができる。これによって裏当て部材を用いることなく、厚み寸法が小さい各被接合部材を接合することができる。
また本発明によれば、第1接合工程で残った非流動化部分を第2接合工程で流動化させることで、被接合物の厚み方全域にわたって、各被接合部材を接合することができる。これによって接合強度をさらに向上することができる。
また本発明によれば、充填材を屈曲させるだけで、接合時における充填材の飛び出しを防ぐことができ、充填材を仮止めする手間を省くことができる。これによって摩擦撹拌接合に費やす時間を短縮化することができる。なお、上述したように、裏当て部材を用いる必要がないので、被接合部材の間の隙間に挿入した充填材を容易に屈曲させることができる。また充填材を屈曲させた状態で容易に摩擦撹拌接合を行うことができる。
また本発明によれば、充填材によって接合部分の減厚や接合欠陥を防止するとともに、充填材を被接合部材の接合に寄与させることができる。これによって接合後の被接合物の品質および強度を向上することができる。
また本発明によれば、裏当て部材を用いることなく、被接合物の厚み方向他方への塑性変形を抑制した状態で、接合ツールを接合面に沿って移動させることができる。これによって接合ツールを走行経路に沿ってずれなく移動させることができ、接合品質の低下を防ぐことができる。また従来、連続接合の場合には、その裏当て部材は被接合物に応じて大型化するか、ローラ形状に形成されて複雑化してしまう。本発明では、裏当て部材を必要としないので、摩擦撹拌接合装置の小型化および簡略化の効果が大きい。
図1は、本発明の実施の一形態である摩擦撹拌接合方法の接合手順を示すフローチャートである。また図2は、本発明の実施の一形態である接合手順を示す断面図であり、図3および図4は、接合手順を示す斜視図である。
本実施の形態の摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding:略称FSW)は、突合わされる2つの被接合部材21,22を接合する。各被接合部材21,22は、それぞれ突合わされた状態で被接合物23を構成する。被接合物23は、2つの被接合部材21,22が突合わされる部分が、継ぎ手部分28となる。継ぎ手部分28は直線状に延びる。本実施の形態では、接合ツール24を継ぎ手部分28の伸延方向Cに沿って移動させて、各被接合部材21,22を接合、いわゆる連続接合する。各被接合部材21,22は、たとえばアルミ合金から成る。
摩擦撹拌接合は、接合ツール24を回転および移動させる摩擦撹拌接合装置(以下単に接合装置という)を用いて行う。図2に示すように、接合ツール24は、略円柱状に形成される本体部25と、本体部25から軸線方向一方に突出し、略円柱状に形成されるピン部26とを有する。本体部25は、軸線方向一方側端面となるショルダ面30を有する。ショルダ面30は、接合ツール24の軸線L1に対して略垂直(+5°〜−15°)に形成される。ピン部26は、ショルダ面30から垂直に突出する。本体部25とピン部26とは、同軸に形成され、ピン部26の外径は、本体部25の外径よりも小さく形成される。
摩擦撹拌接合において、作業者は、ステップa0で、仮付け溶接または拘束治具などによって、2つの被接合部材21,22を突合わせた状態で、ワーク保持手段に保持させる。また接合ツール24の回転速度、接合ツール24の没入量、接合ツール24の移動速度、接合ツール24の押圧力など、接合条件を設定する。このように摩擦撹拌接合に関する準備が完了すると、ステップa1に進み、作業者は、接合装置を用いて、摩擦撹拌接合動作を開始する。
ステップa1では、作業者は、接合ツール24のピン部26を被接合物23の厚み方向一方側表面31に対向させる。また接合ツール24の軸線L1を被接合部材21,22の境界線32の延長線上に配置し、ステップa2に進む。
本実施の形態では、被接合部材21,22の境界線32は、被接合物23の厚み方向Aに沿って延びる。したがって接合ツール24の軸線方向と、被接合物23の厚み方向Aとは一致する。以後、被接合物23の厚み方向を単に厚み方向と称する。
ステップa2では、図2(1)に示すように、作業者は、接合ツール24を予め設定される設定回転速度で軸線L1まわりに回転させ、ステップa3に進む。ステップa3では、図2(2)に示すように、回転する接合ツール24を被接合物23の厚み方向一方A1側から厚み方向他方A2側に向かって被接合物23に没入させる。
接合ツール24が回転しながら被接合物23に没入することによって、摩擦熱が生じて被接合物23が部分的に流動化する。被接合物23を構成する各被接合部材21,22のうち流動化した第1流動化部分27aは、撹拌されて互いに混ぜ合わされる。このとき接合ツール24は、厚み方向一方A1側から厚み方向他方A2側に、予め設定されるツール押圧力F1で被接合物23を押圧する。
ステップa3では、接合ツール24を予め定める第1設定没入量Z1だけ被接合物23に没入させる。このとき、接合ツール24のショルダ面30は、被接合物23の厚み方向一方側表面31に摺動接触する。第1設定没入量Z1は、ピン部26の端面33が厚み方向Aに被接合物23に没入する量である。本実施の形態では、第1設定没入量Z1は、ショルダ面30からピン部26の端面33までの軸線方向寸法である。
被接合物23には、継ぎ手部分28のうち、厚み方向一方A1側に第1流動化部分27aが形成され、厚み方向他方A2側に流動化しない非流動化部分29が残る。非流動化部分29は、接合ツール24に厚み方向他方A2側から臨む。また非流動化部分29の厚み方向寸法は、予め定める残板量Z2に設定される。
たとえば第1設定没入量Z1は、被接合物23の厚み方向寸法Z3の半分以上に設定され、第1流動化部分27aの残板量Z2は、被接合物23の厚み方向寸法Z3の半分以下に設定される。このようにして、継ぎ手部分28のうち非流動化部分29を残した状態で、第1流動化部分27aを十分に流動化すると、ステップa4に進む。
ステップa4では、図3に示すように、接合ツール24を回転させた状態で、継ぎ手部分28の伸延方向Cに沿って接合ツール24を移動させる。これによって、伸延方向Cにわたって、継ぎ手部分28のうち厚み方向他方A2側に非流動化部分29を残した状態で、継ぎ手部分28のうち厚み方向一方A1側に第1流動化部分27aを形成する。
伸延方向C全域にわたって接合ツール24を移動させると、接合ツール24を被接合物23から退出させ、ステップa5に進む。被接合物23は、第1流動化部分27aが固まることによって、継ぎ手部分28のうち厚み方向一方A1側部分が接合される。
なお、ステップa1〜ステップa4を第1の接合工程と称する。第1の接合工程では、被接合物23のうち、ツール没入方向上流側は厚み方向一方A1側となり、ツール没入方向下流側は厚み方向他方A2側となる。
ステップa5では、作業者は、接合ツール24と被接合物23との相対位置を変更する。具体的には、接合ツール24のピン部26を被接合物23の厚み方向他方側表面34に対向させる。また接合ツール24の軸線L1を被接合部材21,22の境界線32の延長線上に配置し、ステップa6に進む。
ステップa6では、図2(3)に示すように、接合ツール24を設定回転速度で軸線L1まわりに回転させ、ステップa7に進む。ステップa7では、図2(4)に示すように、回転する接合ツール24を厚み方向他方A2側から厚み方向一方A1側に向かって被接合物23に没入させる。接合ツール24が回転しながら被接合物23に没入することによって、摩擦熱が生じて被接合物23が部分的に流動化する。
被接合物23を構成する各被接合部材21,22のうち流動化した第2流動化部分27bは、撹拌されて互いに混ぜ合わされる。このとき接合ツール24は、厚み方向他方A2側から厚み方向一方A1側に、予め設定されるツール押圧力F2で被接合物23を押圧する。
ステップa6では、接合ツール24を予め定める第2設定没入量Z4だけ被接合物23に没入させる。このとき、接合ツール24のショルダ面30は、被接合物23の厚み方向他方側表面34に摺動接触する。第2設定没入量Z4は、ピン部26の端面43が厚み方向Aに被接合物23に没入する量である。本実施の形態では、ショルダ面30からピン部26の端面33までの軸線方向寸法である。
被接合物23には、継ぎ手部分28のうち、厚み方向他方A2側に第2流動化部分27bが形成される。これによって継ぎ手部分28のうち、厚み方向他方A2側に残っていた非流動化部分29を流動化することができ、継ぎ手部分28のうち厚み方向両側に流動化部分27を形成することができる。
たとえば第2設定没入量Z4は、被接合物23の厚み方向寸法Z3の半分以上に設定され、第2流動化部分27bの残板量Z2は、被接合物23の厚み方向寸法Z3の半分以下に設定される。このようにして、厚み方向他方A2側に形成した第2流動化部分27bを十分に流動化すると、ステップa8に進む。
ステップa8では、図4に示すように、接合ツール24を回転させた状態で、継ぎ手部分28の伸延方向Cに沿って接合ツール24を移動させる。これによって、伸延方向Cにわたって、継ぎ手部分28のうち厚み方向他方A2側に形成される第2流動化部分27bを形成する。継ぎ手部分28の伸延方向C全域にわたって接合ツール24を移動させると、接合ツール24を被接合物23から退出させ、ステップa9に進む。被接合物23は、第2流動化部分27bが固まることによって、継ぎ手部分28のうち厚み方向他方A2側部分が接合される。ステップa9では、接合動作を終了する。
なお、ステップa5〜ステップa8を第2の接合工程と称する。第2の接合工程では、被接合物23のうち、ツール没入方向上流側は厚み方向他方A2側となり、ツール没入方向下流側は厚み方向一方A1側となる。
また、ステップa4およびa8の前に、必要に応じて、ツール回転数を変更してもよい。たとえば走行用回転速度よりも没入時の設定回転速度を高くする。これによって、接合ツールが被接合物に没入するまでに接合ツールから被接合物に与える入熱量を大きくすることができ、接合時間を短縮できる。
本実施の形態では、このように被接合物23の厚み方向一方A1側を接合する第1接合工程の後、被接合物23の厚み方向他方A2側を接合する第2接合工程を行うことによって、継ぎ手部分28を厚み方向両側にわたって、かつ継ぎ手部分28の伸延方向Cにわたって2つの被接合部材21,22を接合することができる。
第1接合工程において、非流動化部分2を残した状態で各被接合部材21,22を接合する。接合ツール24が被接合物23を押圧すると、接合ツール24のツール押圧力F1は、非流動化部分2に与えられる。非流動化部分2は、流動化部分に比べて変形抵抗能、言い換えると変形抵抗力が大きい。非流動化部分2によって、ツール押圧力F1を受け持たせることによって、被接合物23の塑性変形を抑制することができる。これによって裏当て部材を用いることなく摩擦撹拌接合を行うことができる。裏当て部材を不要とすることによって、摩擦撹拌接合装置を小型化および簡略化することができ、摩擦撹拌接合装置の製造コストを低減することができる。
また本実施の形態によれば、被接合部材21,22を連続接合する。従来、連続接合の場合には、その裏当て部材は被接合物に応じて大型化するか、ローラ形状に形成されて複雑化してしまう。本実施の形態では、裏当て部材が必要ないので、摩擦撹拌接合装置の小型化および簡略化をより効果的に実現可能となる。
また、第2接合工程は、第1接合工程の裏面側であって第1接合工程で接合ツールが没入する位置よりやや後ろ、すなわちやや接合方向下流側に接合ツールを配置して並列動作としてもよい。これによって接合時間を短縮することができる。
また第1接合工程で厚み方向他方A2に被接合物23が少々変形しても、第2接合工程で厚み方向他方側から接合ツール23を没入させることによって、第1接合工程における変形の影響をなくして被接合部材21,22を接合することができる。
また裏当て部材を用いる従来技術では、没入させた接合ツール24と裏当て部材との間の距離を正確に管理する必要があったが、本発明のように裏当て部材を不要とすることによって、接合ツール24の没入量を正確に管理する必要がなくなり、被接合物23の寸法が少々変動しても、被接合物23の厚み方向全域にわたって各被接合部材21,22を接合することができる。
また第1設定没入量Z1と第2設定没入量Z4とを、被接合物23の厚み寸法の半分に設定することによって、第1接合工程と第2接合工程とを同じ接合ツール24を用いることができる。また被接合物23の厚み方向全域にわたって、各被接合部材21,22を接合することができ、接合強度を向上することができる。また本実施の形態では、接合ツール24を伸延方向Cにわたって、厚み方向一方A1側と厚み方向他方A2側との両方向で移動させる必要がある。しかしながら接合ツール24の没入量を被接合物の厚さ寸法の半分とすることで、ツール没入量が被接合物の厚さ寸法程度である場合に比べて、伸延方向Cに移動する移動速度を速くすることができる。これによって従来技術に比べて接合時間が大幅に長くなることを防ぐことができる。またツール没入量を少なくすることができるので、接合ツール24に被接合物23から与えられる負荷を小さくすることができる。
図5は、第1接合工程を終えた被接合物23の接合状態を拡大して示す断面図である。非流動化部分29の厚み方向寸法である残板量Z2が大きくなるにつれて、厚み方向Aに与えられる力に対する、非流動化部分29の変形抵抗力が大きくなる。
非流動化部分29の変形抵抗力は、非流動化部分29の変形量δ1が許容変形量δ2だけ塑性変形するために必要な、非流動化部分29に与えられる力である。非流動化部分29の変形量δ1は、厚み方向他方側端部となる変形部分35の厚み方向の変形量である。また許容変形量δ2は、接合品質として許容される変形部分35の最大変形量δである。たとえば許容変形量δ2は、第2接合工程で、接合ツール24のピン部26が被接合物23の厚み方向他方側表面34に当接したときに、ピン部26の軸線L1が継ぎ手部分28からずれない量に設定される。
本実施の形態では、ツール押圧力F1よりも非流動化部分29の接合強度が大きく設定される。これによって接合ツール24から押圧力F1が与えられた場合に、非流動化部分29の変形部分35が厚み方向他方A2に変形する変形量δ1が許容変形量δ2よりも小さくなる。非流動化部分29の変形量δ1が小さいと、従来技術における裏当て部材と同じ効果を非流動化部分29によって得ることができる。すなわち裏当て部材を用いることなく、被接合部材21,22を確実に接合することができる。
図6は、比較例の接合状態を示す断面図である。非流動化部分29の変形抵抗力がツール押圧力F1よりも小さい場合には、非流動化部分29の変形部分35の変形量δ1が許容変形量δ2よりも大きくなる。また非流動化部分29が厚み方向他方A2に大きく変形することによって、継ぎ手部分28の厚み方向他方A2側表面34に開口Pが形成する場合がある。
非流動化部分29の厚み方向の変形抵抗力Vは、少なくとも、非流動化部分29を構成する材料の引張り強さσと、残板量Z2とに関連して変化する。したがって変形抵抗力Vがツール押圧力F1以上となるように、引張り強さσおよび残板量Z2を設定することによって、裏当て部材を用いることなく摩擦撹拌接合を行うことができる。
大略的には、変形抵抗力Vは、次式によって表わされる。
V∝α・σ(t)・Z2
ここで、∝は、その両側の数値が比例関係にあることを表わす。またVは変形抵抗力を表わし、αは、接合ツール24の形状および残板量Z2の温度勾配に依存する係数であり、σ(t)は、引張り強さを表わす。ただし、この引張り強さσ(t)は、温度によって変化する変数である。またZ2は、残板量を表わす。
すなわち、大略的には、変形抵抗力Vは、係数αと、引張り強さσ(t)と、残板量Z2とを乗算した値に比例する。裏当て部材を不要とするためには、ツール押圧力F1<変形抵抗力Vである必要がある。言い換えれば変形抵抗力Vがツール押圧力F1よりも大きくなるように、引張強さσ(t)および残板量Z2の少なくともいずれかを設定する必要がある。
また非流動化部分29の変形量δ1が、予め定められる許容変形量δ2以下であれば、第2接合工程に影響を与えることがない。たとえば許容変形量δ2は、1.0mm程度である。摩擦撹拌接合においては、流動化部分29とショルダー部との間で、流動化する材料を十分に挟み込んで加圧した状態で撹拌しなければ、流動化部分29の変形量δ1が許容変形量δ2を超えて、接合欠陥が発生する。たとえば接合欠陥として、接合後の被接合物23のひずみの発生、接合ツールの没入跡の形成、流動化部分の空洞の発生および接合部の減厚などである。
図7〜図10は、第1接合工程を終えた状態の被接合物の実験結果を示す断面図である。図7および図8は、各被接合部材21,22として、日本工業規格によって規定される合金番号5083で示されるアルミ合金を焼きなましした材料、いわゆる5083−Oを用いた場合を示す。なお、図7〜図10には、第1流動化部分27aと非流動化部分29とを明確にするために、その境界を誇張して示す。図7および図8は、被接合物23の厚み寸法Z3が10mmの場合である。
図7は、残板量Z2が良好に設定される場合である。第1設定没入量Z1が4mmの場合、非流動化部分29の変形量δ1が0.8mmであり、許容変形量δ2よりも小さくなる。
図8は、残板量Z2が良好でない場合である。第1設定没入量Z1が6mmの場合、非流動化部分29の変形量δ1が4.6mmであり、許容変形量δ2よりも大きくなる。また被接合物23が接合方向下流側に大きく隆起するとともに、被接合部材21,22の間に開口Pが形成されて、接合品質が低下する。
図9および図10は、被接合物23の厚み寸法Z3が20mmの場合である。図9は、残板量Z2が良好に設定される場合である。第1設定没入量Z1が10mmの場合、非流動化部分29の変形量δ1が0.2mmであり、許容変形量δ2よりも小さくなる。
図10は、残板厚Z2が良好でない場合である。第1設定没入量Z1が15mmの場合、非流動化部分29の変形量δ1が1.8mmであり、許容変形量δ2よりも大きくなる。また第1流動化部分27aに空孔および凹所が形成されて接合品質が低下する。
図9〜図10に示すように、残板量Z2は、被接合部材21,22の材料などの接合条件によって決定される臨界残板量Z5を超えるように設定することによって、接合品質を維持したうえで、裏当て部材を不要にして摩擦撹拌接合を行うことができる。なお、許容変形量δ2および臨界残板量Z5は、試験によって求めてもよいし、数値解析によって求めてもよい。
第1接合工程と第2接合工程とについて、同じ形状の接合ツール24を用いる場合には、第1設定没入量Z1と第2設定没入量Z4とが同じ値となる。この場合、継ぎ手方向28のうち厚み方向全域にわたって接合するためには、第1設定没入量Z1および第2設定没入量Z4が、被接合物23の厚み方向寸法Z3の半分以上に設定される。ここで、第1設定没入量Z1が、被接合物23の厚み方向寸法Z3の半分以上に設定した場合に、残板量Z2が臨界残板量Z5以下となる場合には、非流動化部分29を冷却することによって、裏当て部材を不要とすることができる。
図11は、非流動化部分29の厚み方向他端部の温度変化を示すグラフである。被接合物23は、接合ツール24から与えられる摩擦熱によって時間とともにその温度が上昇する。非流動化部分29は、摩擦撹拌接合時には、最大で300℃に達する。被接合物23は、温度が上昇するにつれて、引張り強さが低下する。
表1は、合金記号5083−Oで表わされるアルミ合金における温度毎の引張り強さ、耐力および伸びを示す。表1に従うと、アルミ合金は、常温、たとえば25℃での引張強さは、290N/mmであるが315℃での引張強さは、75N/mmである。摩擦撹拌接合時に、非流動化部分29の裏面側を100℃に冷却することによって、引張り強さを275N/mmとすることができる。また非流動化部分を冷却しすぎると、接合部分の入熱量が不足する。この場合、入熱不足による接合欠陥やツール折損が発生する。
Figure 0004438403
このように非流動化部分29を冷却することによって、非流動化部分29の引張り強さを向上することができ、変形抵抗力Vを大きくすることができる。これによって残板量Z2が小さい場合であっても、非流動化部分29の変形抵抗力Vを、接合ツールの押圧力F1以上とすることができ、接合時における非流動化部分29の変形量δ1を、許容変形量δ2以下とすることができる。
図12は、冷却手段51を備える接合装置50を示す断面図である。摩擦撹拌接合時に非流動部分29を冷却する場合、冷却手段51を備える接合装置50を用いて摩擦撹拌接合を行う。接合装置50は、ツール保持手段41と、回転駆動手段42と、押圧駆動手段43と、連続移動手段44と、ワーク保持手段52と、冷却手段51と、制御手段45とを含んで構成される。
ツール保持手段41は、接合ツール24を着脱可能に保持する。ツール保持手段41に装着された接合ツール24は、その軸線が、ツール保持手段41と同軸に配置される。ツール保持手段41は、軸線L1まわりに回転可能に設けられる。またツール保持手段41は、その軸線L1に沿って変位可能に設けられる。またツール保持手段41は、ワーク保持手段52によって保持される被接合物23の継ぎ手部分28の伸延方向に沿って変位可能に設けられる。
回転駆動手段42は、ツール保持手段41をその軸線L1まわりに回転駆動する。回転駆動手段42は、たとえば誘導モータまたはサーボモータによって実現される。なお、電動モータは、制御手段45によって制御される。この場合、制御手段45は、モータに与える電流を調整する。
変位駆動手段43は、ツール保持手段41を基準軸線方向Aに変位駆動する。押圧駆動手段43は、ツール保持手段41を軸線方向に変位駆動する。押圧駆動手段43は、たとえば復動式エアシリンダによって実現される。なお、エアシリンダは、制御手段45によって制御される。この場合、制御手段45は、シリンダに供給する圧縮空気の供給径路および供給状態を調整する。
連続移動手段44は、ツール保持手段41を被接合物23の継ぎ手部分28の伸延方向Cに沿って変位駆動する。連続移動手段44は、ツール保持部41を支持する支持部と、支持部を伸延方向に案内するレール機構と、支持部を伸延方向に移動させる走行手段とを有する。支持部は、ツール保持部41を上方から片持ちまたは両持ち支持する。レール機構は、伸延方向に基準軸線方向Aに延びるレールと、レールに案内される案内体とを含む。案内体は、伸延方向に変位自在に設けられ、その他の方向の変位が阻止される。支持部は、案内体に連結される。走行手段によって、支持部を変位駆動することによって、支持部とともにツール保持部41を伸延方向に移動させることができる。
ワーク保持手段52は、被接合部材21,22のそれぞれの接合面を突合わせた状態で、被接合物23を保持する。ワーク保持手段52は、継ぎ手部分28に当接する裏当て部材が省かれる。これによってワーク保持手段52に保持された状態で、継ぎ手部分28は、その厚み方向両側に空間が形成される。ワーク保持手段52は、被接合物23に継ぎ手部分28をのぞく任意の部分的に当接して、被接合物を下方側から支持する。
冷却手段51は、接合ツール没入方向と反対側から被接合物23を冷却する。具体的には、冷却手段51は、空気供給源51aと、空気噴出ノズル51bとを含む。空気供給源51aは、常温の空気または常温よりも冷却した空気を圧縮して空気噴出ノズル51bに与える。空気噴出ノズル51bは、空気供給源51aから与えられる空気を噴出部から噴出する。噴出部は、継ぎ手部分28のうちツール没入方向下方側表面に対向して配置される。これによって非流動化部分29を効率よく冷却することができる。なお、噴出部は、継ぎ手部分28の伸延方向Cに並んで複数箇所に設けられる。冷却手段51が空気を噴出するタイミングは、制御手段45によって制御される。
制御手段45は、入力部と、出力部と、記憶部と、演算部とを含む。入力部は、操作者からの指令が入力され、入力された指令を演算部に与える。また入力部は、作業者から摩擦撹拌接合に関する設定値が入力されてもよい。
入力部は、ボタンなどによって実現される。出力部は、演算部によって演算される演算結果を出力する。具体的には、出力部は、回転駆動手段42、押圧駆動手段43および連続移動手段44に駆動指令および停止指令を与える。記憶部は、予め定める演算プログラムを記憶するとともに、演算部が演算した演算結果を記憶する。演算部は、記憶部に記憶される演算プログラムを読出して実行する。演算部は、演算プログラムを実行することによって、予め定める摩擦撹拌接合手順に従った指令を出力部に与える。たとえば記憶部は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)によって実現される。またたとえば演算部は、CPU(Central Processing Unit)によって実現される。このような接合装置50は、図1および図2に示す摩擦撹拌接合についても用いることができる。
作業者は、このような接合装置50によって、第1接合工程および第2接合工程を行う。なお、制御手段45は、少なくとも、接合ツール24がツール押圧力F1を被接合物23に与えている間、空気噴出ノズル51bから空気を噴出させる。これによって被接合物23の流動化部分29を冷却して、非流動化部分29の変形抵抗力を向上する。このように非流動化部分29を冷却することによって、非流動化部分29を冷却しない場合に比べて、接合ツール24の没入量を大きくすることができる。
これによって被接合物23の厚み方向寸法が薄い場合であって、第1接合工程における残板量Z2を大きくすることができない場合であっても、非流動化部分29の変形を抑制して、被接合部材21,22を接合することができる。これによって裏当て部材を用いることなく接合することができる被接合部材21,22の選択肢を広げることができる。
図13は、図7の接合条件における数値解析結果を示す断面図である。図13(1)は、温度分布を示す軸対称モデルであり、図13(2)は、変形状態を示す軸対称モデルである。図8の接合条件、すなわち残板量Z2が10mmの場合、非流動化部分29の変形部分35の温度は、300℃を超えて400℃以下となる。また非流動化部分29の変形量δ1は、0.44mmとして算出される。この場合、図7の実験結果に示すように、接合後の被接合物23に欠陥が生じない。
図14は、図8の接合条件における数値解析結果を示す断面図である。図14(1)は、温度分布を示す軸対称モデルであり、図14(2)は、変形状態を示す軸対称モデルである。図8の接合条件、すなわち残板量Z2が5mmの場合、非流動化部分29の変形部分35の温度は、300℃を超えて400℃以下となる。また非流動化部分29の変形量δ1は、0.93mmとして算出される。この場合、図8の実験結果に示すように、接合後の被接合物23に欠陥が生じる。
図15は、図8の接合条件に比べて、非流動部分の変形部分35を約100℃に冷却した場合における数値解析結果を示す断面図である。図15(1)は、温度分布を示す軸対称モデルであり、図15(2)は、変形状態を示す軸対称モデルである。図8の接合条件に比べて、非流動化部分29の変形部分35の温度を、100℃を超えて200℃以下に冷却した場合には、数値解析結果から、非流動化部分29の変形量δ1は、0.29mmとして算出される。
図16は、図8の接合条件に比べて、非流動部分の変形部分35を約200℃に冷却した場合における数値解析結果を示す断面図である。図16(1)は、温度分布を示す軸対称モデルであり、図16(2)は、変形状態を示す軸対称モデルである。図8の接合条件に比べて、非流動化部分29の変形部分35の温度を、200℃を超えて300℃以下に冷却した場合には、数値解析結果から、非流動化部分29の変形量δは、0.72mmとして算出される。
図13に示すように、数値解析結果から変形量δが0.44mmとして算出される場合には、実験結果では接合後の被接合物23に欠陥が生じない。欠陥が生じる臨界変形量δを0.45mmと仮定する。
この場合、図15に示すように、残板量Z2が5mmの場合に、100℃を超えて200℃以下に非流動部分29を冷却した場合の変形量δが0.29mmとして算出されることによって、接合後の被接合物23に欠陥が生じないことが推定される。また図16に示すように、残板量Z2が5mmの場合に、200℃を超えて300℃以下に非流動化部分29を冷却した場合の変形量δが0.72mmとして算出されることによって、残板量Z2が5mmには、接合後の被接合物23に欠陥が生じる可能性がある。
このように非流動化部分29を冷却した場合における非流動化部分29の変形量δ1を数値解析によって算出し、許容変形量δ2以下となる場合の非流動化部分29の温度を算出する。そしてその温度に非流動化部分29を冷却することによって、残板量Z2が小さい場合であっても、接合後の被接合物23の欠陥をなくすことができる。
図17は、充填材60が充填される被接合物23を示す平面図である。各被接合部材21,22は、突合わされた状態で、被接合物23の間にギャップU1,U2が形成される場合がある。本実施の形態では、接合前に、このギャップU1,U2に充填材60を挿入する。充填材60は、摩擦撹拌接合によって流動化する材料からなる。充填材60は、被接合部材21,22と同じ材質の薄板圧延材であることが好ましい。たとえば本実施の形態の場合、被接合部材21,22がアルミ合金から成り、充填材60は、溶接用のアルミ線材によって実現される。たとえば充填材60は、日本工業規格で規定されるJIS−Z−3232の溶加棒または溶接ワイヤを焼きなまししたものが用いられる。また被接合部材と同質でなくとも各被接合部材を接合可能な化学的性質を有する材料によって充填材60が実現されてもよい。
図18は、図17をA−A切断面線から見た断面図である。摩擦撹拌接合手順のうち、作業者は、被接合部材21,22を突合わせた状態において、被接合部材21,22の間のギャップU1に充填材60を挿入する。充填材60は、ギャップU1を埋めるように充填される。このとき充填材60は、被接合物23の厚み方向両側A1,A2に突出する突出部分61,62がそれぞれ形成される。そして各突出部分61,62は、残余の部分63に対して、厚み方向Aと交差する方向Bに屈曲して形成される。本実施の形態では、充填材60の長手方向両端部61,62は、同方向に屈曲し、略U字状に形成される。
図19は、図17をB−B切断面線から見た断面図である。略U字状に形成される充填材60を挿入した状態で、充填材60と被接合部材21,22との間に隙間U3が形成される場合には、図19に示すように、略U字状に形成される第1の充填材60のほかに、その隙間U3を埋める第2の充填材66を挿入してもよい。第2の充填材64が接合時に隙間U3から飛び出すことを防ぐために、第2の充填材64を第1の充填材60の屈曲部分61,62で覆うことが好ましい。
図20は、他の第2の充填材65を示す断面図である。上述した第2の充填材64に代えて、粉末状の充填材65が第1の充填材63と被接合部材21,22の隙間U3に充填されてもよい。なお、前述した場合と同様に、粉末状の充填材60が接合時に隙間U3から飛び出すことを防ぐために、粉末状の充填材65を第1の充填材63の屈曲部分61,62で覆うことが好ましい。また充填材63は、屈曲が容易となるように焼鈍処理することが好ましい。
図21は、充填材60を充填する場合の摩擦撹拌接合手順を示す断面図である。図21(1)に示すように、被接合物23を接合した状態でギャップU1が形成される場合には、図21(2)に示すように、ギャップU1に充填材60を挿入する。充填材60は、被接合物23の厚み方向寸法Z3よりも長手方向寸法Z6が長いものを用いる。充填材60の長手方向一端部61を被接合物23に対して厚み方向一方A1から突出させ、長手方向他端部62を被接合物23に対して厚み方向他方A2から突出させる。
次に、図21(3)に示すように、充填材60の長手方向両端部61,62を残余の部分63に対して屈曲させ、充填材60を略U字状に形成する。この状態で、上述するステップa1〜a10と同様の動作を行う。第1の接合工程を行うことによって、図21(4)に示すように、被接合物23とともに充填材60に摩擦熱を与え、厚み方向一方A1側部分を流動化させる。次に第2の接合工程を行うことによって、図21(5)に示すように、被接合物23とともに充填材60に摩擦熱を与え、厚み方向他方A2側部分を流動化させる。
本実施の形態のように、充填材60を屈曲させることによって、充填材60の屈曲部分61,62が被接合物23に係止され、摩擦撹拌接合時に充填材60が飛び出ることを防ぐことができる。これによって充填材60を仮接合する必要がなく、接合された継ぎ手部分28の減厚および接合欠陥の発生を低減することができ、さらに接合品質を向上することができる。
なお、本実施の形態では、裏当て部材を不要とすることができる。これによって図12に示すように、ワーク保持手段52によって、被接合部材21,22を突合わせた状態で、継ぎ手部分28の厚み方向両側に空間を形成することができる。これによって、ギャップU1への充填材60の挿入動作および充填材60の両端部の屈曲動作を容易に行うことができる。また継ぎ手部分28の厚み方向両側に空間を形成した状態で、接合動作が行われるので、充填材60の屈曲部分61,62が第1接合工程を阻害することがない。
図22は、充填材60の他の屈曲状態を示す断面図である。ギャップU1が大きい場合には、図22に示すように、複数の充填材60をギャップU1に挿入した状態で、各充填材60の長手方向一端部61を厚み方向に交差する第1方向一方および第1方向他方にそれぞれ屈曲させる。同様に各充填材60の長手方向他端部62を厚み方向に交差する第1方向の両側にそれぞれ屈曲させる。これによって複数の充填材によって、X状に屈曲される。このように屈曲させた場合であっても、被接合物23を接合することができる。
上述した本発明の実施の形態である摩擦撹拌方法は、発明の一例示であって、発明の範囲内で構成を変更することができる。たとえば被接合部材21,22は、突合わされる以外に重ね合わされて被接合物23を構成してもよい。また本実施の形態では、被接合物23の厚み方向Aに被接合部材21,22を突合わせて接合させたが、被接合物23の厚み方向以外、たとえば幅方向または長手方向に突合わせて被接合部材を接合させてもよい。また連続接合以外にスポット接合であってもよい。また被接合部材21,22は、アルミ合金であるとしたが、他の材料であってもよい。
また本実施の形態では、被接合物23の厚み方向A全域にわたって、被接合部材21,22を接合したが、仮接合などの場合には、厚み方向一方A1のみ接合するだけでもよい。すなわち第1の接合工程だけを行う場合も本発明に属する。この場合であっても、裏当て部材を用いることなく、被接合部材21,22を部分的に接合することができる。また第1接合工程と第2接合工程とで接合ツール24の形状などの接合条件を変更してもよい。
本発明の実施の一形態である摩擦撹拌接合方法の接合手順を示すフローチャートである。 本発明の実施の一形態である接合手順を示す断面図である。 接合手順を示す斜視図である。 接合手順を示す斜視図である。 第1接合工程を終えた被接合物23の接合状態を拡大して示す断面図である。 比較例の接合状態を示す断面図である。 第1接合工程を終えた状態の被接合物の実験結果を示す断面図である。 第1接合工程を終えた状態の被接合物の実験結果を示す断面図である。 第1接合工程を終えた状態の被接合物の実験結果を示す断面図である。 第1接合工程を終えた状態の被接合物の実験結果を示す断面図である。 非流動化部分29の厚み方向他端部の温度変化を示すグラフである。 冷却手段51を備える接合装置50を示す断面図である。 図7の接合条件における数値解析結果を示す断面図である。 図8の接合条件における数値解析結果を示す断面図である。 図8の接合条件に比べて、非流動部分の変形部分35を約100℃に冷却した場合における数値解析結果を示す断面図である。 図8の接合条件に比べて、非流動部分の変形部分35を約200℃に冷却した場合における数値解析結果を示す断面図である。 充填材60が充填される被接合物23を示す平面図である。 図17をA−A切断面線から見た断面図である。 図17をB−B切断面線から見た断面図である。 他の第2の充填材65を示す断面図である。
充填材60を充填する場合の摩擦撹拌接合手順を示す断面図である。 充填材60の他の屈曲状態を示す断面図である。 従来技術の摩擦撹拌接合方法を説明するための断面図である。 突合わされる被接合部材21,22を示す平面図である。
符号の説明
21,22 被接合部材
23 被接合物
24 接合ツール
27 流動化部分
28 継ぎ手部分
29 非流動化部分
60 充填材
A 厚み方向
A1 厚み方向一方
A2 厚み方向他方

Claims (6)

  1. 複数の被接合部材によって構成される被接合物に、回転する接合ツールを没入させて、接合ツールと被接合物との摩擦熱によって各被接合部材を接合する摩擦撹拌接合方法であって、
    被接合物の厚み方向一方側から接合ツールを没入させ、被接合物の厚み方向他方側に流動化していない非流動化部分を被接合物に残した状態で、各被接合部材を接合する第1接合工程と、
    被接合物の厚み方向他方側から接合ツールを没入させ、前記非流動化部分を流動化させた状態で、各被接合部材を接合する第2接合工程とを含み、
    前記第1および第2接合工程では、裏当て部材を用いずに前記各被接合部材が接合され、
    前記第1接合工程において、非流動化部分の厚み寸法は、非流動化部分を構成する材料の引張り強さおよび非流動化部分の厚み寸法に比例する非流動化部分の変形抵抗が、接合ツールから与えられる予め定めるツール押圧力以上となるように決定されることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
  2. 前記第1接合工程は、少なくとも接合ツールによって前記ツール押圧力が被接合物に与えられている間に、非流動化部分を冷却する工程を含み、非流動化部分の冷却温度と非流動化部分の厚み寸法とは、非流動化部分を構成する材料の温度と前記引張り強さとの関係に基づいて、前記変形抵抗が前記ツール押圧力以上となるように決定されることを特徴とする請求項1記載の摩擦撹拌接合方法。
  3. 第1接合工程および第2接合工程では、被接合物を流動化する流動化部分の厚み寸法を、被接合物の厚み寸法の半分以上にすることを特徴とする請求項1または2に記載の摩擦撹拌接合方法。
  4. 接合ツールを没入する前に、互いに突合わされる2つの被接合部材の間に形成される隙間に、被接合物の厚み方向両側から突出する突出部分を形成して充填材を挿入し、充填材の突出部分を残余の部分に対して屈曲させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の摩擦撹拌接合方法。
  5. 充填材は、被接合部材と同質の材料または各被接合部材を摩擦撹拌接合可能な化学的性質を有する材料によって実現されることを特徴とする請求項4記載の摩擦撹拌接合方法。
  6. 接合ツールを被接合物に没入した状態で、突合せ面に沿って接合ツールを移動させる連続接合方法であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の摩擦撹拌接合方法。
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