JP4436037B2 - 印刷原版、製版装置、印刷装置、及び印刷方法 - Google Patents

印刷原版、製版装置、印刷装置、及び印刷方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の画像パターンに従って作像用樹脂を表面に付着させることで作像される印刷板、この印刷板を製版する製版装置、並びに表面に作像用樹脂を付着させて作像することで印刷を行う印刷装置及び印刷方法に関するものである。
【0002】
従来、平板印刷では種々の構成の印刷版が用いられており、例えば、基材の表面に感光性樹脂からなる作像層を形成し、所望の画像パターンに従って構成された原版フィルムを重ねて画線部を露光することにより作像層を選択的に硬化させた上で未硬化部分を除去して像を形成するようにした構成のものや、基材の表面に感光性樹脂からなる作像層を形成し、所望の画像パターンに従って赤外線レーザビームで画線部を直接露光することにより作像層を選択的に硬化させた上で未硬化部分を除去して像を形成するようにした構成のものや、また、基材と作像層との間に熱発泡性微粒子及び光吸収発熱材を含む発泡層を形成し、赤外線レーザ加熱による熱発泡性粒子のアブレーションによって、所望の画像パターンに従って発泡層及びその上に重なる作像層の非画線部を除去して像を形成するようにした構成のものなどが知られている。
【0003】
これに対して、光重合材料を含み常温で固体のホットメルトインク組成物を熱溶融し、この熱溶融状態で液滴をノズルから射出して、陽極酸化処理したアルミニウムの板上に画像を形成し、光照射により硬化させて平版印刷版を作成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、親油性成分を含む作像用インクを使用してインクジェット方式により画像部を形成し、印刷版を作製する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、親水性処理された記録材料上に、光硬化可能な成分を含有する作像用の疎水性インクを用いるインクジェット記録により印刷画像を形成し、記録後、活性光線による全面露光を行い、インク成分を硬化させる印刷版の形成方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
これらの発明によると、感光性樹脂の未硬化部分を除去するための現像処理を必要としないことから、それに関連する問題(例えば、現像液の保守管理及び廃液処理に関連するコストや作業負荷の問題)は生じず、また、高出力の赤外線レーザを必要としないことから、それに関連する問題(例えば、低寿命のレーザの装置コストの問題)もなく、更に、印刷原版において、熱発泡性微粒子及び光吸収発熱材を含む発泡層などを特別に形成するコストもかからない等の利点を有している。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−256085号公報
【特許文献2】
特開2001−219527号
【特許文献3】
特開平4−69244号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような感光性樹脂層を有する従来の印刷版(PS版及びドライCTP用PS版)の製版では、アルミニウムからなる基材の表面を陽極酸化処理し、その表面上に感光性樹脂層を設けるのが一般的である。この場合、アルミニウムが陽極酸化処理された基材の表面は親水性であるため、本来、その性質をそのまま利用することが好ましい。しかし、感光性樹脂層を設ける際には、陽極酸化処理を施した後に親水性材料で封孔処理を行って陽極酸化層の微細孔に感光性樹脂が入り込むのを防止する必要があり、その結果、印刷版の製造工程が複雑になりコストアップの要因となっている。
【0007】
また、上記特許文献1に記載のようなホットメルトインク組成物を用いたインクジェット方式による製版では、常温で固体のホットメルトインク組成物を溶融して利用する必要があり、作像用のホットメルトインクおよびインクジェット記録ヘッドの加熱手段が必要となり装置が複雑になるという欠点がある。更に、飛翔するホットメルトインク組成物は微量であるため熱容量の大きな印刷原版に接触すると急速に固化し、版とホットメルトインク組成物の接着力が弱いという課題も残っている。加えて、ホットメルトインク組成物が付着する印刷原版は、親水性処理のための封孔処理がなされており、ホットメルトインク組成物は版の微細な凹凸に深く入り込むことができず、版とホットメルトインク組成物の接着力が弱いという課題も残っている。
【0008】
更に、上記特許文献2に記載のような親油性成分を含む作像用油性インキを用いて版を作像用油性インキの付着および未付着でパターン化して親油性部分に印刷用油性インキを付着させて印刷する方法では、付着させた作像用油性インキは、従来の感光性樹脂層を有するPS版に比べて画線部の厚みが小さく、多数部の印刷に耐えることができないという問題が有る。
【0009】
また、上記特許文献3に開示されているような印刷版の形成方法では、記録材料として従来のPS版で用いるような基材を適用することも容易であるが、そのような従来の記録材料は、表面に作像用樹脂を保持するのに適した層を有していないため、表面に付着させた作像用樹脂の広がりが非常に大きく、高解像度の画像を形成することは困難である。更に、作像用樹脂と記録材料との密着性が低いため、作像用樹脂は表面から剥がれ易く耐刷性にも劣るという欠点がある。
【0010】
従来のPS版は、粗面化したアルミニウム基板上に陽極酸化処理による酸化被膜を形成し、その表面を親水化した後に感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成している。ここで、粗面化及び親水化には、サンドブラストや電解研磨、陽極酸化、封孔処理を兼ねて珪酸ソーダなどへの浸漬による親水化処理など、様々な技術が使用されているが、このアルミニウム基板表面には、作像用樹脂を浸透させて適正に保持するような多孔質層は形成されることはない。そのような多孔質層が存在すると、後にアルミニウム基板表面に塗布される感光性樹脂がその多孔質層の中に深く浸透して感光性樹脂と表面との密着性が増すので、露光後のエッチングによって感光性樹脂の不要部分を取り除く際の障害となる。この問題に関連して、特開2002−67521号公報では、粗面化処理に起因する深い溝が非画線部に局部的な残膜(「ポツ状残膜」)を発生させる原因となることが開示されている。
【0011】
従って、上記のいずれの方法も印刷適性(画像部インキ着肉と非画像部汚れ耐性の両立)、耐刷力、保存安定性、解像力について十分な性能が得られていない。
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、印刷原版に親水性の多孔質層を設け、その上に常温で液体状の親油性の作像用樹脂(例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂)を、液滴状で噴射して直接付着させることで画線部を形成し、その後、加熱又は紫外線照射等により画線部の樹脂を硬化させるという方法を用いた。これにより、液体状の作像用樹脂を多孔質層の孔内に十分侵入させてから固化させることができるため、孔内に侵入した作像用樹脂によるアンカー効果によって、印刷版と作像用樹脂の接着性が増す。また、多孔質層の孔の形状等(径、深さ、配置、及び各孔の間の距離等)を変更することにより、多孔質層の孔内に入りきらずに表面に残留する樹脂の厚みを適正に保持しながら画線部を形成可能であるため、高い解像度を有し且つ印刷適性及び耐刷力の優れた印刷版が得られる。
【0013】
更に、製版の際の現像処理が不用のため、製版と印刷を同時に行うことができ、輪転機に印刷原版をセットして製版した後、その印刷版をそのセットされたままの状態で用いて多数部印刷を連続して行うことができる。また、多色印刷に応用すれば、印刷版を印刷機にセットしたまま各色毎の製版が可能なため、レジストレーション(版の位置合せ)が容易となり、作業工数の大幅な削減ができる。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような目的を果たすために、本発明における製版装置では、請求項1に示すとおり、親水性の多孔質層を有する印刷原版に対して、所望の画像パターンに従って常温で液体の作像用樹脂を付着させて作像する作像手段と、その作像手段によって付着させた前記作像用樹脂を硬化させる硬化手段とを具備し、前記作像用樹脂による樹脂滴が前記親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、前記親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、前記親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、前記親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、印刷原版に付着させた作像用樹脂の一部を親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、作像用樹脂の残りを印刷原版の表面に盛り上がった形状で留める構成をとる。
【0015】
これによると、作像用樹脂による樹脂滴が親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmである構成をとることができるので、付着させた作像用樹脂を微細な孔の中まで十分に侵入させることが可能となる一方で、印刷原版の表面には適切な量の樹脂を残留させることができる。この場合、作像用樹脂の非付着領域における孔が深すぎると、印刷工程における湿し水の塗布において、水が孔の中に侵入することで水面が印刷原版の表面に達せず、印刷版の表面が水で浸されない場合も生じ得るが、孔の平均深さを5μm〜10μmとすることで、孔の中に入り込んだ水の水面を印刷版の表面に到達させることができ、印刷版の表面を十分に浸し、親水性を確保できる。付着させた作像用樹脂を微細な孔の中まで十分に侵入させることが可能となる一方で、印刷原版の表面には適切な量の樹脂を残留させることができる。この場合、作像用樹脂の非付着領域における孔が深すぎると、印刷工程における湿し水の塗布において、水が孔の中に侵入することで水面が印刷原版の表面に達せず、印刷版の表面が水で浸されない場合も生じ得るが、孔の平均深さを5μm〜10μmとすることで、孔の中に入り込んだ水の水面を印刷版の表面に到達させることができ、印刷版の表面を十分に浸し、親水性を確保できる。
【0016】
上記製版装置においては、請求項2に示すとおり、作像用樹脂は、紫外線硬化樹脂であり、硬化手段は、紫外線照射により紫外線硬化樹脂を硬化させる構成をとることができる。これによると、紫外線照射により作像用樹脂を容易に硬化させることができる。
【0017】
上記製版装置においては、請求項3に示すとおり、作像用樹脂は、熱硬化樹脂であり、硬化手段は、加熱により熱硬化樹脂を硬化させる構成をとることができる。これによると、加熱により作像用樹脂を容易に硬化させることができる。
【0018】
上記製版装置においては、請求項4に示すとおり、作像用樹脂は、親油性である構成をとることができる。これによると、印刷に用いる油性インキを、硬化した親油性(即ち、インキ受容性)の作像用樹脂部分に優先的に付着させることができるので、作像用樹脂により形成される像に従って適切に印刷可能な印刷版の製造が可能となる。
【0019】
上記製版装置においては、請求項5に示すとおり、作像手段は、1又は複数のノズルを有し、そのノズルから作像用樹脂の微細な液滴を噴射して印刷原版に付着させる構成をとることができる。これによると、微細なドットで所望の画線パターンを印刷原版上に構成することができ、高解像度の印刷版を製作可能となる。この場合、作像手段として既存のインクジェット方式のプリンタ用のノズルを用いて作像用樹脂を噴射させることで、装置コストを低減することができる。
【0020】
上記製版装置においては、請求項6に示すとおり、作像用樹脂は、常温で5cP〜30cPの粘度を有する構成をとることができる。これによると、作像用樹脂の粘度を5cP以上とすることで、印刷原版の表面に付着させた作像用樹脂が適正な形状を維持できる(即ち、作像用樹脂が印刷原版上を流れてしまう等の問題が生じない)程度に作像用樹脂の流動性を低下させることができる。一方、作像用樹脂の粘度を30cP以下とすることで、ノズルから所望の液滴が適切に噴射される(即ち、ノズルの目詰まりや噴射された作像用樹脂が高速で適当な液滴を形成できない等の問題が生じない)程度に作像用樹脂の流動性を上昇させることができる。従って、そのような適切な範囲の粘度を有する作像用樹脂を用いることで、ノズルから作像用樹脂を良好に噴射することができ、また印刷原版に付着させた後は、その形状を適切に維持したまま硬化させることが可能となる。
【0021】
この場合、適切な物性調整剤(所定の溶剤)を添加して作像用樹脂の粘度を適切な範囲内に調節することができる。
【0022】
上記製版装置においては、請求項7に示すとおり、作像用樹脂は、含有する溶剤の割合が10重量%以下である構成をとることができる。これによると、作像用樹脂が硬化する際の溶剤の蒸発等による体積変化を小さくでき、結果として歪みの少ない高解像度の像を印刷原版に形成することができる。また、そのように体積変化が小さいことから、印刷原版上に付着させた作像用樹脂は十分盛り上がった形状を維持でき、硬化の際にその厚みが大幅に低下して印刷適性が損なわれる等の問題は生じない。
【0024】
上記製版装置においては、請求項8に示すとおり、印刷原版は、アルミニウムを主成分とする材料からなり、親水性の多孔質層は、アルミニウムの表面に電解研磨処理を施し凹凸を形成した後に電気化学エッチングにより多数の孔が形成される構成をとることができる。これによると、印刷原版の表面に多孔質で親水性の層を容易に形成することができる。この場合、親水性の層上に親油性の樹脂を付着させて所望の像を形成することで、印刷用インキを親油性の樹脂上に優先的に付着させることが可能な印刷適性に優れた印刷版を提供することができる。
【0025】
上記製版装置においては、請求項9に示すとおり、印刷原版は、表面にアルミニウムの層を設けた樹脂製フィルムからなり、親水性の多孔質層は、アルミニウムの層に形成される構成をとることができる。これによると、印刷原版のアルミニウムの使用量を低減でき、また簡易な構成で親水性の多孔質層を形成することができる。この場合、例えば、PET(polyethylene terephthalate)等のフィルム上にアルミニウムを蒸着したものを用い、フィルム上に形成されたアルミニウムの層に電解研磨処理を施した後に陽極酸化処理して親水性の多孔質層を形成することができる。
【0034】
上記製版装置においては、請求項10に示すとおり、親水性の多孔質層における各孔は、表面に対し略垂直の方向に延在している構成をとることができる。これによると各孔に入り込む作像用樹脂が横に広がることがなく、飛翔してきた作像用樹脂が横方向に広がり形成される画像パターンの解像度が低下することを防止できる。
【0036】
上記製版装置においては、請求項11に示すとおり、作像用樹脂は、着色性物質により着色されている構成をとることができる。これによると、付着させた作像用樹脂により形成された像が着色性物質(例えば、染料)によって着色されるので、目視で像の細部まで確認でき印刷前に画線パターンを容易に確認できる。
【0039】
また、本発明における印刷装置では、請求項12に示すとおり、親水性の多孔質層を有する印刷原版に対して所望の画像パターンに従って常温で液体の親油性の作像用樹脂を付着させて作像する作像手段と、その作像手段によって付着させた前記作像用樹脂を硬化させる硬化手段と、その硬化手段によって硬化させた前記作像用樹脂が存在しない前記親水性の多孔質層の表面に湿し水を塗布する湿し水塗布手段と、前記硬化させた作像用樹脂の表面に印刷用油性インキを塗布するインキ塗布手段と、そのインキ塗布手段によって塗布された前記印刷用油性インキによる像を被印刷物に転写する転写手段とを備える印刷装置であって、前記作像用樹脂による樹脂滴が前記親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、前記親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、前記親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、前記親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、前記印刷原版に付着させた前記作像用樹脂の一部を前記親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、前記作像用樹脂の残りを前記印刷原版の表面に盛り上がった形状で留める構成をとる。これによると、付着させた作像用樹脂を微細な孔の中まで十分に侵入させることが可能となる一方で、印刷原版の表面には適切な量の樹脂を残留させることができる。この場合、作像用樹脂の非付着領域における孔が深すぎると、印刷における湿し水の塗布において、水が孔の中に侵入することで水面が印刷原版の表面に達せず、印刷版の表面が水で浸されない場合も生じ得るが、孔の平均深さを5μm〜10μmとすることで、孔の中に入り込んだ水の水面を印刷版の表面に到達させることができ、印刷版の表面を十分に浸し、親水性を確保できる。
また、本発明における印刷装置では、請求項13に示すとおり、作像用樹脂は、紫外線硬化樹脂であり、硬化手段は、紫外線照射により紫外線硬化樹脂を硬化させる構成をとる。これによると、紫外線照射により作像用樹脂を容易に硬化させることができる。
また、本発明における印刷装置では、請求項14に示すとおり、作像用樹脂は、熱硬化樹脂であり、硬化手段は、加熱により熱硬化樹脂を硬化させる構成をとる。
【0040】
これによると、外光による印刷原版のトラブルを引き起こすことなく自然光下での作業を行うことができるので、作業性が向上すると共に、未使用印刷原版の保存取り扱いが容易になる。
【0041】
上記印刷装置においては、請求項15に示すとおり、印刷用油性インキによる像の被印刷物への転写を仲介する中間転写手段を更に備える構成をとることができる。これによると、印刷版に形成された印刷用油性インキによる像がここから一旦、中間転写体に転写された上で被印刷物に転写されるため、印刷版が被印刷物に直接接触することにより招く損傷を避けることができる。つまり、印刷原版と被印刷物を背面から加圧する加圧ローラとは共に剛性であり、印刷版から被印刷物上に像を転写する場合には、双方の平面度が高くなければ、インキが完全に転写されないため色再現が補償されず、また印刷抜けが生じ得る。中間転写手段を用いることで、印刷用油性インキが完全に転写されて色再現を向上させることができ、また、印刷抜けを防止することができる。
【0042】
上記印刷装置においては、請求項16に示すとおり、硬化手段は、作像手段に近接して配置される構成をとることができる。これによると、作像手段によって作像用樹脂を印刷原版に付着させた直後に硬化させることができるので、作像用樹脂が付着位置からずれることもなく、作像用樹脂に外部要因が作用する前に硬化させることが可能となり、高解像度の印刷版を簡易に提供することができる。
【0044】
また、本発明における印刷方法では、請求項17示すとおり、親水性の多孔質層を有する印刷原版に対して所望の画像パターンに従って常温で液体の親油性の作像用樹脂を付着させて作像する作像工程と、その作像工程によって付着させた前記作像用樹脂を硬化させる硬化工程と、その硬化工程によって硬化させた前記作像用樹脂が存在しない前記親水性の多孔質層の表面に湿し水を塗布する湿し水塗布工程と、前記硬化させた作像用樹脂の表面に油性インキを塗布するインキ塗布工程と、そのインキ塗布工程によって塗布された前記油性インキによる像を被印刷物に転写する転写工程とを備える印刷方法であって、前記作像用樹脂による樹脂滴が前記親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、前記親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、前記親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、前記親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、前記印刷原版に付着させた前記作像用樹脂の一部を前記親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、前記作像用樹脂の残りを前記印刷原版の表面に盛り上がった形状で留める構成をとる。
【0045】
上記印刷方法においては、請求項18に示すとおり、転写工程の前に、印刷用油性インキによる像を、被印刷物への転写を仲介する表面が軟性の中間ローラに転写する中間転写工程を更に有する構成をとることができる。
【0046】
上記印刷方法においては、請求項19に示すとおり、硬化工程は、作像工程の直後に実施される構成をとることができる。
上記印刷方法においては、請求項20に示すとおり、硬化工程は、紫外線照射により紫外線硬化樹脂を硬化させる構成をとることができる。
上記印刷方法においては、請求項21に示すとおり、作像用樹脂は、熱硬化樹脂であり、硬化工程は、加熱により熱硬化樹脂を硬化させる構成をとることができる。
【0047】
また、本発明における印刷原版では、請求項22に示すとおり、アルミニウムからなり、該アルミニウムは、少なくともその表層に作像用樹脂を受容する親水性の多孔質層を形成し、作像用樹脂による樹脂滴が親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、印刷原版に付着する作像用樹脂の一部を親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、作像用樹脂の残りを印刷原版の表面に盛り上がった形状で留める構成をとり、予め紫外線硬化樹脂層や発泡層を含む樹脂層あるいは熱硬化性樹脂層を設ける必要がなく簡易な構造で安価な印刷原版を提供できる。
上記印刷原版においては、請求項23に示すとおり、前記多孔質層は、前記アルミニウムの表面に電解研磨処理を施し凹凸を形成した後に電気化学エッチングにより多数の孔が形成される構成をとる。
【0050】
また、本発明における印刷原版では、請求項24に示すとおり、表面にアルミニウムの層を設けた樹脂製フィルムを有し、前記アルミニウムの層は、少なくともその表層に作像用樹脂を受容する親水性の多孔質層を含む印刷原版であって、前記作像用樹脂による樹脂滴が前記親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、前記親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、前記親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、前記親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、前記印刷原版に付着する作像用樹脂の一部を前記親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、前記作像用樹脂の残りを前記印刷原版の表面に盛り上がった形状で留める構成をとる。
【0051】
これによると、親水性の多孔質層の上に親油性の作像用樹脂を付着させて所望の像を形成することで、印刷の際に印刷用油性インキを親油性の樹脂上に優先的に付着させることが可能となる。この場合、付着させた作像用樹脂の一部を多孔質層の孔内に侵入させて硬化させることができるので、印刷原版の表面に付着させた作像用樹脂の接着力が増大し、耐刷力及び保存安定性等を大幅に向上させることができる。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面を参照して本発明の構成を詳細に説明する。
【0053】
以下の説明において、樹脂とは本発明に用いる印刷板にインクジェット記録ヘッドで塗布するものいい、また、インク又は作像用油性インクとは従来のインクジェット記録ヘッドを用いたプリンタで使用する液体をいい、さらに、インキ又は印刷用油性インキとは印刷機で印刷するために用いられるものいい、用語を区別して用いることにする。
まず、本発明で使用される作像用樹脂について詳細な説明を行う。作像用樹脂として用いられる紫外線硬化樹脂は、一般の印刷用油性インキとしても使用されており、高粘度オリゴマー、低粘度オリゴマー若しくはモノマー(反応性希釈剤)、光重合開始剤、及び顔料などの組成よりなる。反応性希釈剤は、樹脂の粘度を調整するために用いられ、比較的粘度の高いオリゴマーと、高沸点のモノマー類や低粘度のポリエステルアクリレート類からなる。よく使用されるオリゴマーとして、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、及びウレタンアクリレートがある。光重合開始剤は、紫外線エネルギによりラジカルを発生し、これがモノマーやオリゴマーの反応基に反応することで重合が開始される。
【0054】
このような紫外線硬化樹脂を本発明の作像用樹脂として用いる場合には、インクジェット記録ヘッドで容易に吐出可能なように、一般の印刷用油性インキに比較して低粘度な液に仕上げる必要がある。インクジェット記録ヘッドから、所望の液滴として安定的に吐出させるためには、樹脂の粘度を60cps以下、より好適には30cps以下とする必要がある。また、一般の印刷用油性インキには顔料が混合されているが、本発明の作像用樹脂は、硬化後に親油性であれば良く、性能的には必ずしも着色を必要としない。但し、顔料等の着色性物質で樹脂を着色することにより、製版された印刷版の画像の検版が容易となるという利点がある。
【0055】
次に、印刷原版の構造について説明する。本発明に使用される印刷原版は、主として2つの特性を備えるものでなければならない。その一つは、印刷適性であり、湿し水が保持される親水部に安定して水が保持され、疎水部に印刷用油性インキが安定して付着するものであることを必要とする。またもう一つは、高解像度性であり、樹脂滴による高解像度のドット(即ち、作像用樹脂の付着領域)が安定して形成されるものであることを必要とする。
【0056】
印刷適性について更に詳述すると、本発明の印刷原版では、表面の親水部を適正に湿すことができる水の量に、ある程度の範囲をもたせることが必要である。即ち、わずかな水の量の増減によって、浸水部に乾く部分が生じたり、或いは親水部以外の疎水部にまで水が付着して画像抜けが生じるようでは、水の量の管理が非常に困難となる。そのため、一般のPS版の基材と同様に、アルミ表面にまず大波と称する凹凸(例えば、100μm程度のスケール)が付され、これにより余分な水が生じてもそれを貯留できる場所を確保する。更に、その大波に加えて中波と称する凹凸(例えば、10μm程度のスケール)が設けられ、この中波の凹部に水を浸透させることにより、水の量が少なくなっても簡単には乾燥しないようにしている。また更に、アルミ表面に硬質の層を形成して耐刷性を向上させるために、陽極酸化処理によって小波と称する凹凸が表面に形成される。このような構成により、印刷原版は、比較的安定に水の量を管理することができ、良好な印刷適性を備えることが可能となる。
【0057】
尚、陽極酸化によって形成された陽極酸化膜には、無数の小さな孔(例えば、0.03μm程度のスケール)が存在し、一般のPS版の基材では、上述のように、それらの孔が感光性樹脂のコーティングの不要部分の除去の際に悪影響を及ぼす(即ち、孔内に樹脂が侵入し、除去できなくなる)ので、孔を親水性の物質で埋める封孔処理がなされている。
【0058】
一方、高解像度性について更に詳述すると、本発明の印刷原版では、上記のように形成された多孔質の層は、高い解像度を達成するために、表面に付着させた作像用樹脂を適正に浸透させて保持することが必要となる。このような多孔質層の機能は、上記の大波、中波、及び小波で表現される親水性処理がなされた後に封孔処理を行ったPS版の基材が備えるものではない。つまり、本発明でいう多孔質層は、上記封孔処理後のPS版の基材表面の凹凸と比較すると、多数の微細孔が存在するという点では共通するが、一方で、層が適正な厚みを有し、微細孔がその直径の大きさに比べて十分大きな深さまで層内に延在していることを必要とする点において異なる。従って、PS版の基材表面に存在するような微細孔(例えば、直径と深さが同等の大きさを有する孔)は、本発明でいう多孔質層を構成する微細孔には該当しない。
【0059】
本発明において、微細孔の直径と深さをどのような値とすれば最適な樹脂滴のドットが形成されるかは、形成するドットの大きさ等にも左右されるが、少なくとも微細孔の直径は、樹脂滴のドット径よりも十分小さく、また、微細孔の深さは、その直径の2倍以上、より好ましくは直径の5倍以上とするのがよい。このような多孔質層によって、付着した樹脂滴の広がりを抑えて解像度の高いドット形成ができるとともに、多孔質内に豊富な水を蓄えることができるため、保水力に優れた印刷原版が可能となる。
【0060】
図1は、本発明の第1の実施例である印刷原版を製作するための印刷原版の構造を模式的に示す断面図である。図に示すように、この印刷原版1は、アルミニウム板のベース2と、そのベース表面に設けられた親水性の多孔質層3とを有する。この親水性の多孔質層3の形成においては、まずアルミニウム板のベース2の表面を脱脂、エッチング処理して油や酸化被膜を除去し、そこで表面を電解研磨(或いはサンドブラスト処理)して凹凸を設けた後、陽極酸化処理(アルマイト処理)して多孔質で耐磨耗性等に優れた酸化被膜を形成すると同時に親水性を付与する。尚、例えば、SiO2等の親水性材料を多孔質層3の表面に塗布してより確実に親水性を付与することもできる。
【0061】
図2は、図1の印刷原版における親水性の多孔質層の構造の詳細を示す図である。図に示すように、親水性の多孔質層3には多数の孔4が形成されている。後述するように、親水性の多孔質層3の表面には、画線部を形成するために親油性の作像用樹脂を付着させるが、製作した印刷版の印刷適性を向上させるためには、親水性の多孔質層3の表面と付着させた作像用樹脂との接着性が大きく、また、付着させた作像用樹脂が適切な厚み(好ましくは、多孔質層3の表面から2〜5μmの高さ)を有することが望まれる。従って、多孔質層3の表面と作像用樹脂との接着性を増大させるために、作像用樹脂の一部を孔4の内部へ十分侵入させてアンカー効果を生じさせる一方で、適切な厚みを確保するために、多孔質層3の表面に適当量の作像用樹脂を残留させなければならない。
【0062】
上記のような陽極酸化処理を用いて本発明の多孔質層を形成する方法では、当業者には周知のように、陽極酸化処理を行うと硬質の皮膜が形成されると同時に無数の孔(例えば、直径0.03μm〜0.1μm程度)が生じる。そこで形成される被膜の厚さを約0.1μm以上とすることによって、本発明の印刷原版の多孔質層とすることができる。これにより、インクジェット記録ヘッドから吐出された作像用樹脂は、陽極酸化処理で生じた微細孔内に侵入して、大きく広がることなく小さなドットでより解像度の高い画像パターンを形成できる。陽極酸化処理で形成された多孔質層は、後述する電気化学エッチングによって形成する場合に比べて孔の直径をより小さくすることが可能であり、より高解像度の画像パターンの形成に適している。
【0063】
また、本発明の多孔質層3を形成するための別法として、電気化学的エッチングを利用する方法を適用することができる。電気化学的エッチングは、酸性水溶液中やアルカリ水溶液中で実施され、種々の方法があるが、本発明の多孔質層3を形成するためには、電気化学的エッチングによって表面を溶解することなく無数のピットを十分な深さまで成長させる必要がある。このような無数の微小なピットを高密度で深く形成するために、特開平1−212426号公報や特開平6−272097号公報で開示された電解コンデンサ用電極箔の製造方法に関するエッチング方法や電解を生じさせる電圧波形を本発明に適用することができる。
【0064】
印刷原版に高解像度の画線パターンを形成するためには、印刷の際に高い解像度を達成するように、作像用樹脂が多孔質層に受容される必要がある。そのためには多孔質層3の表面に付着させる樹脂滴の体積を2〜3pL程度とし、ドットの大きさ(樹脂滴と多孔質層3の表面との接触領域の等価直径)を30μm程度とする必要がある。この場合、多孔質層の孔4の直径は、作像用樹脂により形成されるドットの大きさの1/10以下であることが必要である。従って、上述のような多孔質層3の表面と作像用樹脂との接着性並びに作像用樹脂の厚みを適正化するために、電解コンデンサ用電極箔の製造方法と同様の電気化学的エッチングによって、直径が0.1μm〜1μm、深さが5μm〜10μmまでの範囲のピット状の孔4を多孔質層3に無数に形成する。また、各孔4の間の平均距離は、付着させた作像用樹脂の侵入を可能とするために作像用樹脂の付着領域の代表寸法に比べて十分小さくし、2〜3μm程度とすることが好ましい。
【0065】
作像用樹脂により形成されるドットの大きさを30μm程度(小さな場合では、例えば10μm程度)とすることで、多孔質層に浸透する際にも孔(直径0.1〜1μm)の形状の影響を受けることなく、きれいな真円を保ったまま多孔質層に保持される。この実施例の場合、陽極酸化の工程は必ずしも必要ではないが、耐刷性を向上させるために硬質の表面を得たい場合には、陽極酸化の工程を追加することも有用である。この場合、陽極酸化により、多孔質層の孔を封止することなしに、アルミ表面の電気化学的エッチングによって生じた孔(直径0.1〜1μm)の内壁に薄い膜(酸化被膜)を形成することができる。この陽極酸化の膜は、非常に活性が強く、空気中のガスや水分を吸着する性質があるので、陽極酸化の膜が変化しないうちに親水性物質を塗布することもあるが、その場合、孔が封止されないように非常に薄い親水性物質の層を形成する必要がある。
【0066】
次に、アクリル系の紫外線硬化樹脂を作像用樹脂として用いて、種々のアルミニウム基板に対して樹脂液滴の付着実験を行った結果について説明する。実験において、第1の基板はA社製のPS版、第2の基板はB社製のPS版であり、共に市販のPS版の基材(ここでは、PS版表面の感光層を除去したもの)を使用した。第3の基板は、上記陽極酸化処理によって多孔質層を形成したもの、第4の基板は、上記電気化学的エッチングによって多孔質層を形成したものである。これらのアルミニウム基板に向けてインクジェット記録ヘッドから樹脂液滴(8〜10pl)を吐出させて付着させた後、紫外線で硬化させて形成したドットの広がりを測定した。
【0067】
【表1】
Figure 0004436037
表1に示すように、市販の第1及び第2の基板では、付着させた紫外線硬化インクが基板表面に広がり、形成されるドット径が大きくなってしまうが、一方で、本発明の多孔質層を形成した第3、第4の基板では、より微細なドットが形成され、高解像度の印刷原版を作製することができることが分かる。また、これらの基板を布などで強く擦った場合、第1及び第2の基板では、基板上に付着した紫外線硬化樹脂が剥がれてしまうが、一方で、第3、第4の基板では付着した紫外線硬化樹脂が剥がれることは無く、本発明の多孔質層は、樹脂と基板との接着性が比較的高く、より耐刷性に優れていることが分かった。これは多孔質層の孔内に深く浸透した紫外線硬化樹脂のアンカー効果によるものである。
【0068】
印刷原版は、表面の汚れにより親水部が親油性に変化して所望の画像が得られなくなる場合がある。本発明の多孔質層を有する印刷原版では、作像用樹脂の付着していない部分が親水部(即ち、非画線部)となるので、湿し水が豊富で親水部を覆っている場合には、印刷用油性インキを良く弾く状態にあるが、湿し水が不十分で親水部が乾いている場合には、印刷用油性インキが親水部に侵入して汚れの原因になることがある。このような問題を回避するには、多孔質層を形成する孔の径を小さくするのが有効である。つまり、オフセット印刷に使用されている印刷用油性インキは、比較的大きな粒径(通常は、0.5〜2μm)を有するので、多孔質層の孔の径を比較的小さく(例えば、0.5μm以下)しておけば、印刷用油性インキが親水部の孔に侵入して印刷原版を汚す心配がない。従って、多孔質層の孔径を印刷用油性インキの粒子径よりも小さくすることで、印刷用油性インキによる汚れを防止できる印刷原版が実現できる。この場合、多孔質層の孔径の下限は、作像用樹脂の分子よりも大きく、少なくとも孔内に作像用樹脂を浸透させることが可能な大きさである必要がある。
【0069】
上述の陽極酸化や電気化学的エッチングには種々の方法があり、様々な構造の多孔質層を形成することができる。基板表面に垂直方向の孔(以後、縦孔と称す)や基板表面に平行な方向の孔(以後、横孔と称す)、あるいはランダムな方向に設けた孔など、処理方法を選択することによって、種々の多孔質層の構成が実現できる。一方、インクジェット記録ヘッドから吐出される作像用樹脂がどのように多孔質層の表面に付着して孔内に浸透するかは、多孔質層の構造に左右される。ランダムな方向に設けた孔からなる多孔質層の場合には、表面に付着した作像用樹脂が各方向に均等に浸透することから、作像用樹脂の浸透部分は概ね半球状をなす。また、縦孔よりなる多孔質層の場合には、作像用樹脂は横方向に大きく広がることなく縦方向に浸透するため、ランダムな方向に設けた孔の場合と比較すると、より直径の小さなドットが形成されることになる。従って、縦孔よりなる多孔質層は、高解像度の印刷原版を実現するのに有利な構造であると言える。
【0070】
前述のように、本発明の作像用樹脂として用いる紫外線硬化樹脂は、複数のオリゴマーや顔料などの混合物であることが多く、分子サイズの異なる複数の物質が混合されている。このような作像用樹脂が多孔質層に浸透する場合、分子サイズの小さな成分の方が分子サイズの大きな成分より浸透速度が速いという性質がある。従って、多孔質層が横孔を有する構造の場合には、分子サイズの小さな成分の横方向への浸透速度が大きいので、分子サイズの小さな成分は、形成されたドットの周辺部まで広がる一方で、分子サイズ或いは粒子サイズの大きな成分は中央部に留まる。例えば、顔料の粒子サイズは、反応性希釈剤やオリゴマーより大きいことが多いので、形成されるドットの中央部に顔料が留まり、ドットの周辺部が着色されない場合も起こり得る。このような問題を回避するためにも、縦孔を有する多孔質層の基板は有効である。この場合、作像用樹脂の浸透は、殆どが深さ方向に進行するので、ドットの表面においては作像用樹脂成分の分離がなされることがない。
【0071】
以上、多孔質層を形成する方法を説明したが、アルミニウム基板を陽極酸化処理して多孔質層を形成する方法には、リン酸、硫酸、及び蓚酸などを使用する方法があり、それらの処理によって形成される被膜は、リン酸アルマイト、硫酸アルマイト、及び蓚酸アルマイトとそれぞれ呼ばれている。これらの通常の皮膜の構造を調べてみると、孔径が0.01〜0.04μm程度であり、孔数は10×106〜100×106個/mm2程度である。一方で、電気化学的エッチングを用いた方法については、例えば、通常の電解コンデンサ用電極箔を製造する過程で得られるアルミニウム基板(箔)は、孔径が0.1〜1μm程度であり、孔数は約1×106個/mm2程度である。
【0072】
これらの多孔質層は、何れも本発明の印刷原版に適用可能であるが、それぞれの孔径や孔数に応じて、適切な孔の深さ(多孔質層の厚み)を選択する必要がある。多孔質層が作像用樹脂を受容する能力は、その孔径、孔数、及び孔の深さによって決まるため、インクジェット記録ヘッドから吐出させる作像用樹脂の量を決定したら、それに応じて孔径、孔数、孔の深さを調整して、作像用樹脂の吐出量にマッチした樹脂受容力を有する基板を用意する必要がある。
【0073】
上述のように、付着させた作像用樹脂の一部を親水性の多孔質層の孔内に侵入させて硬化させるので、例えば、封孔処理された印刷原版の表面に作像用樹脂を付着させて硬化させた場合と比べ、印刷原版の表面に対する作像用樹脂の接着力が大幅に増大し、結果として製作された印刷版の耐刷力及び保存安定性等が大幅に向上する。また、各孔の間の平均距離及び各孔の平均深さを適切に定めた親水性の多孔質層を形成することで、孔内に侵入させた作像用樹脂によって作像用樹脂の印刷原版に対する接着力を強化する一方で、適正量の作像用樹脂を印刷原版の表面に残留させることができるので、比較的簡単な構成により印刷適性に優れた印刷版を提供することができる。更に、形成される各孔の間の平均距離は、印刷原版の表面における作像用樹脂の付着領域の代表寸法の最小値に比べて十分小さく、付着した作像用樹脂は確実に孔への侵入が可能となるので、微細な画線パターンに対しても孔が確実にアンカー効果を発揮でき、作像用樹脂を印刷原版の表面に十分盛り上がった状態で維持できる印刷版を提供することができる。また更に、作像用樹脂の非付着領域における孔が深すぎると、印刷工程における湿し水の塗布において、水が孔の中に侵入することで水面が印刷原版の表面に達せず、印刷版の表面が水で浸されない場合も生じ得るが、孔の平均深さを5μm〜10μmとすることで、孔の中に入り込んだ水の水面を印刷版の表面に到達させることができ、印刷版の表面を十分に浸し、親水性を確保できる。
【0074】
図3は、本発明の第2の実施例である印刷版を製作するための印刷原版の構造を模式的に示す断面図である。この印刷原版5は、PET等の樹脂製のフィルム6をベースとし、そのベースの表面にアルミ蒸着膜7が設けられ、そのアルミ蒸着膜7の表面に電解研磨処理を施した後に上記実施例で示した陽極酸化処理又は電気化学エッチングにより親水性の多孔質層8を形成している。ベースとしては、樹脂製のフィルムの代りに、例えば、防水性の合成紙を用いることもできる。
【0075】
これにより、印刷原版のアルミニウムの使用量を低減でき、また簡易な構成で親水性の多孔質層を形成することができる。
【0076】
図4は、図1に示す印刷原版1を用いて印刷版を製作する製版工程を示す図である。図4(a)に示すように、まず所望の画像パターンに応じて、ノズル9を用いて紫外線硬化樹脂10を微細な液滴状で印刷原版1に吹き付ける。この場合、高解像度の画線パターンを形成するために、上述のようにノズル9から噴射する紫外線硬化樹脂10の液滴の体積を2〜3pL程度とすることが望ましい。また、使用する紫外線硬化樹脂10は、高速(5kHz以上)で液滴を形成するのに十分な低い粘度を有することが必要であり、通常は常温で30cP以下であることが望ましい。つまり、作像用樹脂の粘度を30cP以下とすることで、ノズルから所望の液滴が適切に噴射される(即ち、ノズルの目詰まりや噴射された作像用樹脂が高速で適当な液滴を形成できない等の問題が生じない)程度に作像用樹脂の流動性を上昇させることができる。尚、図3に示した印刷原版5についても同様の製版工程を適用することができる。
次に、図4(b)に示すように、印刷原版1に付着した紫外線硬化樹脂10は、その一部が親水性の多孔質層3の孔内に侵入する一方で、その残りが印刷原版1の表面に盛り上がった形状で留まる。この場合、紫外線硬化樹脂10が、印刷原版1の表面を流動することなく適正な厚みを有した形状で留まるためには、樹脂の粘度は5cp以上であることが望ましい。つまり、作像用樹脂の粘度を5cP以上とすることで、印刷原版の表面に付着させた作像用樹脂が適正な形状を維持できる(即ち、作像用樹脂が印刷原版上を流れてしまう等の問題が生じない)程度に作像用樹脂の流動性を低下させることができる。
【0077】
最後に、図4(c)に示すように、印刷原版1に付着した紫外線硬化樹脂10に紫外光11を照射し、印刷原版1の表面に残留した或いは孔内に侵入した紫外線硬化樹脂10を硬化させる。その結果、硬化した紫外線硬化樹脂10が存在する領域が親油性で、紫外線硬化樹脂10が存在しない多孔質層3の露出領域が親水性にパターン化された印刷版が製造される。本実施例では、作像用樹脂として常温で液体の紫外線硬化樹脂を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、常温で液体の熱硬化型樹脂を用い、紫外線ランプの替わりにハロゲンランプ等の熱源を硬化の手段に用いてもよい。
【0078】
このように、印刷版の製作工程を主として作像用樹脂の付着及びその硬化の2工程とすることがきるので、製作工程が非常に簡単な構成となる。更に、常温で液体の作像用樹脂を用いるので、加熱装置等を特別に設置する必要はない。
【0079】
尚、ここでの紫外線硬化樹脂10の溶剤の含有率は10重量%以下とすることが好ましい。これにより、樹脂が硬化する際の溶剤の蒸発等による体積変化を小さくでき、結果として歪みの少ない高解像度の像を印刷原版に形成することができる。また、そのように体積変化が小さいことから、印刷原版上に付着させた作像用樹脂は十分盛り上がった形状を維持でき、硬化の際にその厚みが大幅に低下して印刷適性が損なわれる等の問題は生じない。
【0080】
図5は、図4に示した方法で製版された印刷版12(印刷原版に紫外線硬化樹脂で画線パターンを形成したもの)を用いて印刷する工程を示す図である。図5(a)に示すように、まず湿し水14を含んだ水着けローラ13を回転させながら印刷版12に押し付け、紫外線硬化樹脂10が付着せずに露出した親水性の多孔質層3の領域(非画線部)に湿し水14を付着させる。このとき、親油性の紫外線硬化樹脂10が付着した領域(画線部)では、湿し水は弾かれるので、非画線部に優先的に湿し水14を付着させることができる。次に、図5(b)に示すように、印刷用油性インキ16を膜状に表面に付着させたインキローラ15を回転させながら印刷版12に押し付け、親油性の紫外線硬化樹脂10が付着した領域に印刷用油性インキ16を付着させる。このとき、湿し水14を付着させた非画線部では、印刷用油性インキは弾かれるので、親油性の紫外線硬化樹脂10が付着した領域に印刷用油性インキ16を優先的に付着させることができる。次に、図5(c)に示すように、画線部に印刷用油性インキ16を付着させた印刷版12に弾力性を有する中間転写ローラ(中間転写手段)17を回転させながら押し付け、紫外線硬化樹脂10に付着している印刷用油性インキ16を中間転写ローラ17に一旦転写する。最後に、図5(d)に示すように、中間転写ローラ17を回転させながら被印刷物(記録紙)18に押し当て、加圧ローラ19と共にその被印刷物18を挟み込むようにして押圧し、印刷用油性インキ16を被印刷物18に転写して印刷工程が完了する。
【0081】
このように、印刷版に形成されたインキによる像がここから一旦、中間転写体に転写された上で被印刷物に転写されるため、印刷版が被印刷物に直接接触することにより招く損傷を避けることができる。つまり、印刷原版と被印刷物を背面から加圧する加圧ローラとは共に剛性であり、印刷版から被印刷物上に像を転写する場合には、双方の平面度が高くなければ、印刷用油性インキが完全に転写されないため色再現が補償されず、また印刷抜けが生じ得る。中間転写手段を用いることで、印刷用油性インキが完全に転写されて色再現を向上させることができ、また、印刷抜けを防止することができる。
【0082】
図6は、図4に示した製版工程を実施するための製版装置の概略構成を示す図である。この製版装置は、紫外線硬化樹脂(作像用樹脂)を微細な液滴状で印刷原版に吹付けて付着させるための1又は複数のノズルを有する記録ヘッド(作像手段)21と、そのヘッド21を案内するロッド22と、そのロッド22に沿って記録ヘッドを並進させるスクリュウネジ23と、そのスクリューネジを回転させる並進モータ24と、紫外線硬化樹脂を貯蔵するための樹脂槽25と、その樹脂槽25から記録ヘッド21へ樹脂を供給するためのパイプ26と、紫外線硬化樹脂を印刷原版20に付着させた後に硬化させるための紫外線ランプ(硬化手段)27と、印刷原版20を搬送するための搬送ローラ28と、搬送ローラ28を駆動する駆動モータ29と、搬送ローラ28に動力を伝える駆動ベルト30とを備える。尚、ここでは作像手段として、作像用樹脂を微細な液滴として噴射可能な専用の装置を用いることもできるが、既存のインクジェット方式のプリンタ用のノズルを用いれば、装置コストを低減することができる。
【0083】
以上のように構成された製版装置において、アルミニウムのベースからなる印刷原版20が、製版装置にセットされると、記録ヘッド21は、印刷すべきページ単位でラスター化されたデジタル信号により制御され、印刷原版20の搬送方向(矢印の向き)に対して垂直にロッド22に沿って一方の端部から他方の端部まで紫外線硬化樹脂を静止した印刷原版20に向けて微細な液滴状で噴射しながら移動する。そこで、印刷原版20が、搬送ローラ28によって間歇送りされる。これらの動作が繰り返し実施され、後の印刷工程において印刷用油性インキを付着させる画線部に親油性(即ち、インキ受容性)の紫外線硬化樹脂を付着させる。
【0084】
次に、紫外線硬化樹脂を付着させた部位が紫外線ランプ27まで到達すると、紫外線ランプが点灯し、搬送される印刷原版20に紫外光が照射され、画線部に付着させた紫外線硬化樹脂を硬化させる。印刷原版20の全面に渡って紫外光照射による硬化が終了すると印刷版の製作が完了し、その印刷版は通常の輪転機にセットされ必要部数の印刷が行われる。
【0085】
図7は、オンプレス(印刷装置上)で製版及び印刷を行う本発明の印刷装置の概略構成を示す図である。この印刷装置は、製版機能を付加するために、図1若しくは図3に示したような製版前の印刷原版33をセットするためのシリンダ31と、そのシリンダ31に印刷原版33を固定するためのクランプ32と、紫外線硬化樹脂を微細な液滴状で印刷原版20に向けて噴射するために、シリンダ31の軸方向に延在するように構成された複数のノズルを有する記録ヘッド34と、紫外線硬化樹脂を貯蔵するための樹脂槽36と、その樹脂槽36から記録ヘッド34へ樹脂を供給するためのパイプ35と、紫外線硬化樹脂を印刷原版20に付着させた後に硬化させるための紫外線ランプ37とを備え、更に、通常の印刷装置と同様に、製版後の印刷版33の非画線部に優先的に湿し水を付着させる水着けローラ(湿し水塗布手段)38と、印刷版33の画線部に優先的に印刷用油性インキを付着させるインキ着けローラ(インキ塗布手段)39と、その付着させた印刷用油性インキによって形成される印刷版33の像を一旦転写するブランケット(中間転写手段)40と、ブランケット40に転写された印刷用油性インキによる像を被印刷物41に転写する際に、ブランケット40と対をなして被印刷物41を挟み込むようにして押圧する加圧ローラ42とを備える。
【0086】
以上のように構成された印刷装置において、製版前の印刷原版33が、クランプ32によってシリンダ31に固定されると、印刷装置は「製版」モードにセットされ、記録ヘッド34と紫外線ランプ37が作動状態になる。この「製版」モードでは、記録ヘッド34は、印刷すべきページ単位でラスター化されたデジタル信号により制御され、シリンダ31の回転と同期させて記録ヘッド34から紫外線硬化樹脂を吐出させ、印刷原版33に付着させる。その結果、印刷原版33には、硬化させた親油性の紫外線硬化樹脂が存在する領域(画線部)と、紫外線硬化樹脂が存在せずに親水性の多孔質層が露出した領域(非画線部)とに分けられた画線パターンが形成される。その後、紫外線ランプ37によって印刷原版33に紫外光が照射され、画線部における紫外線硬化樹脂を硬化させる。
【0087】
この印刷装置は、印刷原版33をシリンダ31に取付けた状態で製版することが可能であり、その製版が終了すると、印刷装置は、「製版」モードから「刷り動作オン」モード(印刷動作を行う作動態様)に切り換えられる。「刷り動作オン」モードでは、水着けローラ38、インキ着けローラ39、ブランケット40、及び加圧ローラ42が作動状態にセットされる一方で、インクジェット記録ヘッド34、紫外線ランプ37、及びクリーニングローラ43は非作動状態にセットされ、印刷工程が開始される。この印刷工程については、図5について説明した工程と概ね同様である。
【0088】
必要部数の印刷が終了すると、印刷装置から印刷版33が取り外され印刷装置は、「刷り動作オフ」モード(印刷動作を行わない作動態様)にセットされる。この「刷り動作オフ」モードでは、シリンダ31及びブランケット40のクリーニング工程が実施される。そのクリーニング工程が終了すると、再び新しい印刷原版33が印刷装置にセットされ、印刷機は「製版」モードに切り換えられる。
【0089】
このように、印刷版の製作とその印刷版を用いた印刷とが同一の装置によって実現できるので、印刷版の製作から印刷までの一連のコストを大幅に削減することができ、一連の装置を小規模化できる。また、印刷版の製作後に、その印刷版を別途印刷機にセットし直す必要がないので、セット時の印刷版の位置合わせ等の作業は不要となる。また、紫外線硬化樹脂の代りに熱硬化樹脂を用いれば、外光による印刷版のトラブルを引き起こすことなく自然光下での作業を行うことができるので、作業性が向上すると共に、未使用印刷原版の保存取り扱いが容易になる。
【0090】
図8は、図7に示した印刷装置の水着け装置、インキング装置、及び転写装置の詳細な構成を示す模式図である。水着けローラ38を介して印刷版33に湿し水を供給する湿し水装置71は、湿し水が蓄えられた水舟44と、この水舟44内の湿し水に一部浸漬された水元ローラ45と、この水元ローラ45から受け取った湿し水を螺旋状に巻いたブラシで飛散させるブラシローラ46と、このブラシローラ46で飛散された湿し水を受け取って表面に均一な薄い水膜を形成するクロムローラ47とを有し、このクロムローラ47から適切な量の湿し水が均一に水着けローラ38に供給される。
【0091】
インキ着けローラ39を介して印刷用油性インキを印刷版33に供給するインキング装置77は、印刷用油性インキを蓄えるインキつぼ48と、このインキつぼ48内のインキに一部浸漬されたファンテンローラ49と、このファンテンローラ49でくみ上げられたインキを受け取るピックアップローラ50と、このピックアップローラ50との間でインキを混練するインキシリンダ51とを有し、このインキシリンダ51から適切な量の印刷用油性インキが均一にインキ着けローラ39に送られる。
【0092】
印刷版33上に形成された印刷用油性インキによる像を被印刷物41に転写する転写装置81は、シリンダ31に取付けられた印刷版33上に形成された印刷用油性インキによる像が一旦転写される弾力性を有するブランケット(中間転写手段)40と、このブランケット40上の印刷用油性インキによる像を被印刷物41に転写する際に被印刷物41の裏面から圧力を加える加圧ローラ42とを有している。
【0093】
ブランケット40を清掃するクリーニングローラ52は、ブランケット40の表面に接触してここに付着した印刷用油性インキ、紙粉、水などの異物を除去し、このブランケットクリーニングローラ52で回収された異物は、再度ブランケット40を汚さないようにブレード53で除去される。同様に、シリンダ31を清掃するクリーニングローラ54は、シリンダ31の表面に接触してシリンダ31の表面をクリーニング(洗浄、拭い取り)する。クリーニングローラ54に回収されたインキ等の異物は、再度シリンダ31を汚さないようにブレード55で除去される。
【0094】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、印刷原版の表層として設けた親水性の多孔質層に常温で液体の状態の作像用樹脂を付着させ、作像用樹脂の一部を多孔質層の孔内に侵入させた状態で硬化させるので、孔内に侵入させた樹脂のアンカー硬化によって印刷原版の表面に対する作像用樹脂の接着力が大幅に増大し、結果として製作された印刷版の耐刷力及び保存安定性等を大幅に向上させることができる。
印刷原版は、主として電解研磨処理及び陽極酸化処理を行うことで製作できるので、製造工程も簡単で材料費、加工費も少なくてすみ、低コストの印刷原版を提供できる。更に、印刷原版に直接インクジェットで液状樹脂を付着硬化させるだけで、現像工程が不要のため、低コストで環境問題のない印刷システムを提供できる。
【0095】
また、印刷原版に設ける親水性の多孔質層の孔の形状等を適宜変更して多孔質層の表面に残留させる作像用樹脂の厚みを適正に保持できるので、印刷適性及び耐刷力の優れた印刷版が得られる。
【0096】
また、製版の際の現像処理が不用のため、製版と印刷を同時に行うことができ、製版後の印刷版をセットしたままの状態で用いて多数部印刷を連続して行うことができる。多色印刷に応用すれば、印刷版を印刷機にセットしたまま各色毎の製版が可能なため、レジストレーション(版の位置合せ)が容易となり、作業工数の大幅な削減ができる。
【0097】
また、画像パターンを形成する樹脂の溶剤成分を可能な限り少なくすることで硬化後の体積変化による歪をなくし、また着色することで画像パターンを目視で確認する場合の認視性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例による印刷原版の構造を模式的に示す断面図
【図2】 図1の印刷原版における親水性の多孔質層の構造の詳細を示す模式図
【図3】 本発明の第2の実施例による印刷原版の構造を模式的に示す断面図
【図4】 図1の印刷原版を用いた製版工程の模式図
【図5】 図4の製版工程で製版された印刷版を用いた印刷工程の模式図
【図6】 図4の製版工程を実施するための製版装置の概略構成図
【図7】 オンプレスで製版及び印刷を行う本発明の印刷装置の概略構成図
【図8】 図7の印刷装置の水着け装置、インキング装置、及び転写装置の詳細な構成を示す模式図
【符号の説明】
1 印刷原版
2 ベース
3 親水性の多孔質層
4 孔
6 フィルム
7 アルミ蒸着膜
8 親水性の多孔質層
9 ノズル
10 紫外線硬化樹脂
11 紫外光
12 印刷版
13、38 水着けローラ
14 湿し水
15、39 インキローラ
16 印刷用油性インキ
17、40 中間転写ローラ
18 被印刷物(記録紙)
19、42 加圧ローラ
21 記録ヘッド
25、36 樹脂槽
27、37 紫外線ランプ
28 搬送ローラ
32 クランプ

Claims (24)

  1. 親水性の多孔質層を有する印刷原版に対して、所望の画像パターンに従って常温で液体の作像用樹脂を付着させて作像する作像手段と、その作像手段によって付着させた前記作像用樹脂を硬化させる硬化手段とを具備する製版装置であって、
    前記作像用樹脂による樹脂滴が前記親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、
    前記親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、
    前記印刷原版に付着させた前記作像用樹脂の一部を前記親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、前記作像用樹脂の残りを前記印刷原版の表面に盛り上がった形状で留めることを特徴とする製版装置。
  2. 前記作像用樹脂は、紫外線硬化樹脂であり、前記硬化手段は、紫外線照射により前記紫外線硬化樹脂を硬化させることを特徴とする請求項1に記載の製版装置。
  3. 前記作像用樹脂は、熱硬化樹脂であり、前記硬化手段は、加熱により前記熱硬化樹脂を硬化させることを特徴とする請求項1に記載の製版装置。
  4. 前記作像用樹脂は、親油性であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の製版装置。
  5. 前記作像手段は、1又は複数のノズルを有し、そのノズルから前記作像用樹脂の微細な液滴を噴射して前記印刷原版に付着させることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の製版装置。
  6. 前記作像用樹脂は、常温で5cP〜30cPの粘度を有することを特徴とする請求項5に記載の製版装置。
  7. 前記作像用樹脂は、含有する溶剤の割合が10重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の製版装置。
  8. 前記印刷原版は、アルミニウムを主成分とする材料からなり、前記親水性の多孔質層は、前記アルミニウムの表面に電解研磨処理を施し凹凸を形成した後に電気化学エッチングにより多数の孔が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の製版装置。
  9. 前記印刷原版は、表面にアルミニウムの層を設けた樹脂製フィルムからなり、前記親水性の多孔質層は、前記アルミニウムの層に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の製版装置。
  10. 前記親水性の多孔質層における各孔は、表面に対し略垂直の方向に延在していることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れかに記載の製版装置。
  11. 前記作像用樹脂は、着色性物質により着色されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れかに記載の製版装置。
  12. 親水性の多孔質層を有する印刷原版に対して所望の画像パターンに従って常温で液体の親油性の作像用樹脂を付着させて作像する作像手段と、その作像手段によって付着させた前記作像用樹脂を硬化させる硬化手段と、その硬化手段によって硬化させた前記作像用樹脂が存在しない前記親水性の多孔質層の表面に湿し水を塗布する湿し水塗布手段と、前記硬化させた作像用樹脂の表面に印刷用油性インキを塗布するインキ塗布手段と、そのインキ塗布手段によって塗布された前記印刷用油性インキによる像を被印刷物に転写する転写手段とを備える印刷装置であって、
    前記作像用樹脂による樹脂滴が前記親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、
    前記親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、
    前記印刷原版に付着させた前記作像用樹脂の一部を前記親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、前記作像用樹脂の残りを前記印刷原版の表面に盛り上がった形状で留めることを特徴とする印刷装置。
  13. 前記作像用樹脂は、紫外線硬化樹脂であり、前記硬化手段は、紫外線照射により前記紫外線硬化樹脂を硬化させることを特徴とする請求項12に記載の印刷装置。
  14. 前記作像用樹脂は、熱硬化樹脂であり、前記硬化手段は、加熱により前記熱硬化樹脂を硬化させることを特徴とする請求項12に記載の印刷装置。
  15. 前記印刷用油性インキによる像の被印刷物への転写を仲介する中間転写手段を更に備えることを特徴とする請求項12乃至請求項14の何れかに記載の印刷装置。
  16. 前記硬化手段は、前記作像手段に近接して配置されることを特徴とする請求項12乃至請求項15の何れかに記載の印刷装置。
  17. 親水性の多孔質層を有する印刷原版に対して所望の画像パターンに従って常温で液体の親油性の作像用樹脂を付着させて作像する作像工程と、その作像工程によって付着させた前記作像用樹脂を硬化させる硬化工程と、その硬化工程によって硬化させた前記作像用樹脂が存在しない前記親水性の多孔質層の表面に湿し水を塗布する湿し水塗布工程と、前記硬化させた作像用樹脂の表面に油性インキを塗布するインキ塗布工程と、そのインキ塗布工程によって塗布された前記油性インキによる像を被印刷物に転写する転写工程とを備える印刷方法であって、
    前記作像用樹脂による樹脂滴が前記親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、
    前記親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、
    前記印刷原版に付着させた前記作像用樹脂の一部を前記親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、前記作像用樹脂の残りを前記印刷原版の表面に盛り上がった形状で留めることを特徴とする印刷方法。
  18. 前記転写工程の前に、前記印刷用油性インキによる像を、被印刷物への転写を仲介する表面が軟性の中間ローラに転写する中間転写工程を更に有することを特徴とする請求項17に記載の印刷方法。
  19. 前記硬化工程は、前記作像工程の直後に実施されることを特徴とする請求項17に記載の印刷方法。
  20. 前記作像用樹脂は、紫外線硬化樹脂であり、前記硬化工程は、紫外線照射により前記紫外線硬化樹脂を硬化させることを特徴とする請求項17乃至請求項19の何れかに記載の印刷方法。
  21. 前記作像用樹脂は、熱硬化樹脂であり、前記硬化工程は、加熱により前記熱硬化樹脂を硬化させることを特徴とする請求項17乃至請求項19の何れかに記載の印刷方法。
  22. アルミニウムからなり、該アルミニウムは、少なくともその表層に作像用樹脂を受容する親水性の多孔質層を形成した印刷原版であって、
    前記作像用樹脂による樹脂滴が前記親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、
    前記親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、
    前記印刷原版に付着する作像用樹脂の一部を前記親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、前記作像用樹脂の残りを前記印刷原版の表面に盛り上がった形状で留めることを特徴とする印刷原版。
  23. 前記多孔質層は、前記アルミニウムの表面に電解研磨処理を施し凹凸を形成した後に電気化学エッチングにより多数の孔が形成されることを特徴とする請求項22に記載の印刷原版。
  24. 表面にアルミニウムの層を設けた樹脂製フィルムを有し、前記アルミニウムの層は、少なくともその表層に作像用樹脂を受容する親水性の多孔質層を含む印刷原版であって、
    前記作像用樹脂による樹脂滴が前記親水性の多孔質層の表面に付着する領域の代表寸法が10μm〜30μmであり、
    前記親水性の多孔質層における各孔の間の平均距離を2〜3μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均直径を0.1〜1μm、
    前記親水性の多孔質層における各孔の平均深さを5μm〜10μmとし、
    前記印刷原版に付着する作像用樹脂の一部を前記親水性の多孔質層の孔内に侵入させる一方、前記作像用樹脂の残りを前記印刷原版の表面に盛り上がった形状で留めることを特徴とする印刷原版。
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