JP2008230023A - 平版印刷版および平版印刷版の作製方法 - Google Patents

平版印刷版および平版印刷版の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 インクジェット記録方式により画像形成された支持体の変形を防止し、かつ優れた耐刷性も付与することのできる、平版印刷版および平版印刷版の作製方法を提供する。
【解決手段】実質的に水を含有しないインクジェット用インクを用いて、インクジェット記録方式により画像形成された平版印刷版であって、該インクジェット用インクが、Tg90℃未満のポリマーを含有する平版印刷版。親水性表面を有する支持体上に、実質的に水を含有しないインクジェット用インクを用いて、インクジェット記録方式により画像形成する工程を有する平版印刷版の作製方法であって、該インクジェット用インクが、Tg90℃未満のポリマーを含有する平版印刷版の作製方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、平版印刷版および平版印刷版の作製方法に関するものであり、詳しくは、インクジェット記録方式により画像形成された支持体の変形を防止し、かつ優れた耐刷性も付与することのできる、平版印刷版および平版印刷版の作製方法に関する。
近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が注目されてきている。
一方、レーザー光を用いたCTP技術の他に、インクジェット記録方式を用いたCTP技術が知られている。
例えば、特許文献1および2には、支持体上に、光硬化性インク組成物を用いてインクジェット記録方式により画像部を形成し、露光して該インク組成物を硬化させる製版方法が開示されている。インクジェット記録方式は、画像出力方式としては比較的高速であり、また複雑な光学系を必要としないので構造が簡単である。また、インクジェット用インクにより画像形成するので、画像形成前の支持体は感光層などの塗膜が不要である。したがって、平版印刷版の製造コストを下げることができる。
また、特許文献3には、アルミニウム板のような支持体に特定のポリマーを含むインクでもってインクジェット記録し、その後支持体を150℃より高い温度、好ましくは170℃〜220℃、最も好ましくは190℃〜210℃に加熱するリソグラフ印刷フォームの製造方法が開示されている。
しかし、特許文献3に記載のような高温で支持体を加熱すると、インク中のポリマーが支持体表面に融着し、耐刷性が向上するというメリットはあるものの、支持体、とくにアルミニウム板の変形を引き起こすという問題点があった。
なお特許文献4には、インクジェット記録用油性インク組成物が開示され、バインダー樹脂としてTgが40℃以上の(メタ)アクリル樹脂を使用できる旨の開示がある。しかし特許文献4に記載の発明はインク組成物そのものに関するものであり、印刷版に関する記載はない。したがって、下記で説明する本発明の目的である、インクジェット記録方式により画像形成された支持体の変形を防止し、かつ優れた耐刷性を平版印刷版に付与することについての開示または示唆は全く存在しない。
特開平5−204138号公報 特開平4−69244号公報 特表2006−503726号公報 国際公開WO2004/007626号パンフレット
したがって本発明の目的は、インクジェット記録方式により画像形成された支持体の変形を防止し、かつ優れた耐刷性も付与することのできる、平版印刷版および平版印刷版の作製方法を提供することである。
本発明は、以下の通りである。
1)実質的に水を含有しないインクジェット用インクを用いて、インクジェット記録方式により画像形成された平版印刷版であって、該インクジェット用インクが、Tg90℃未満のポリマーを含有することを特徴とする平版印刷版。
2)親水性表面を有する支持体上に、実質的に水を含有しないインクジェット用インクを用いて、インクジェット記録方式により画像形成する工程を有する平版印刷版の作製方法であって、該インクジェット用インクが、Tg90℃未満のポリマーを含有することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
3)前記親水性表面を有する支持体がアルミニウム板であることを特徴とする上記2)に記載の平版印刷版の作製方法。
4)前記インクジェット用インクを用いて画像形成した後、前記アルミニウム板の温度が120℃以下となる温度範囲で前記インクジェット用インクを定着させる工程をさらに有する上記3)に記載の平版印刷版の作製方法。
本発明によれば、実質的に水を含有しないインクジェット用インクにおいて、該インクがTg90℃未満のポリマーを含有しているので、該インクを高い温度で定着させる必要がない。したがって、支持体の変形が防止され、かつ、優れた耐刷性も付与することのできる、平版印刷版および平版印刷版の作製方法が提供される。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。本発明の平版印刷版は、実質的に水を含有しないインクジェット用インクを用いて、インクジェット記録方式により画像形成され、該インクジェット用インクは、Tg90℃未満のポリマーを含有する。
[インクジェット用インク]
本発明で使用されるインクジェット用インク(以下、単にインクということがある)は、実質的に水を含有しないインクである。ここで「実質的に水を含有しない」とは、インク中に意図的に水を加えないことを意味し、具体的には、インク中、水含量が1質量%以下であることを意味する。
本発明におけるインクは、Tg90℃未満のポリマーを含有し、これを有機溶剤に溶解または分散したインクである。
[ポリマー]
本発明におけるインクに含まれるポリマーは、前記のようにTgが90℃未満であり、好ましくは80℃未満であり、さらに好ましくは70℃未満である。Tgは低い方が定着温度を下げた際の耐刷性が高くなるとともに支持体の変形も防止され好ましいが、過度にTgが低い場合は定着したインクの強度が不足し、逆に耐刷性が低下するので、Tgは0℃以上が好ましい。
なお本発明でいうTgは、DSC(示差走査熱量測定)によって測定された値を意味する。
また、インク中に複数のポリマーが存在する場合は、本発明でいうTgは、ポリマーの総Tgを指す。従って、インクに含まれるポリマー種の全てがTg90℃未満でなければならないことはなく、Tg90℃以上のポリマーも包含し得る。総Tgは、ポリマーのTg(K換算)に当該ポリマーの質量分率を乗じ、加算することにより算出される。
本発明で用いられるポリマーは、例えば(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、シェラック樹脂、ビニル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。
本発明における好ましいポリマーは、以下の一般式(1)で示されるラジカル重合性モノマーを、30質量%以上用いて得られるポリマーである。
Figure 2008230023
一般式(1)中、R1はHまたはメチル基を表し、X1はエステル結合を表す。Y1は、R1がHの場合には、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。なお炭化水素基内に、エーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。またハロゲン基、アミノ基を有していてもよい。R1がメチル基の場合は、Y1は炭素数6〜30の炭化水素基を表す。なお炭化水素基内に、エーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。またハロゲン基、アミノ基を有していてもよい。
例えば以下のものが挙げられる。
エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、イソアミルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシルアクリレート、ボルニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、4−ブロモブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルアクリレート、4−ブチルフェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルアクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテルアクリレート、酢酸ビニル、2−エチルヘキシルメタクリレート、tert−オクチルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、デシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルメタクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテルメタクリレート、等が挙げられる。なお、本願明細書中、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを総称する意味である。なお、「(メタ)アクリル」なども同様である。
本発明において、ポリマーの含有量は、インク中、0.5〜50質量%、好ましくは1〜30質量%である。この範囲内において、耐刷性の向上効果、インクジェット時の吐出安定性の向上効果が発現する。
[溶剤]
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル等のアルコール系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、γ−ブチロラクトンなどのエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、アイソパーG(エクソン社製)などの炭化水素系溶剤などが挙げられる。
[その他]
また、画像の視認性のため、インクは着色されていてもよい。着色には、公知の染料や顔料を用いることができる。また、打滴性の改善のための界面活性剤などを添加することができる。
<インク受容層>
本発明の平版印刷版は、支持体上にインク受容層を設ける形態が好ましい。以下、インク受容層について説明する。
[有機フッ素系化合物]
本発明におけるインク受容層は、有機フッ素系化合物を含むものがさらに好ましい。有機フッ素系化合物とは、少なくともフッ素原子を含有する有機化合物を意味する。有機フッ素系化合物により、インクジェット記録した際に着弾したインクのドットを小さくすることができる。有機フッ素系化合物は、水に分散または溶解することが好ましく、下記で説明するペルフルオロアルキル基を有する化合物がさらに好ましい。
<ペルフルオロアルキル基を有する化合物>
本発明に用いうる好ましい有機フッ素系化合物は、一般式 R−Rpol で表される化合物である。
前記一般式中、Rは炭素原子3個以上の直鎖または分枝鎖のペルフルオロアルキル基を表し、Rpolはカルボン酸あるいはその塩、スルホン酸あるいはその塩、燐酸あるいはその塩、硫酸あるいはその塩、ホスホン酸あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、4級アンモニウム塩、ポリエチレンオキシ骨格、ポリプロピレンオキシ骨格、スルホンアミド基、エーテル基、ベタイン構造などの極性基を表す。
これらの中では、湿し水への溶解性が高く印刷時に非画像部が汚れにくいという理由から、カルボン酸あるいはその塩、スルホン酸あるいはその塩、燐酸あるいはその塩、硫酸あるいはその塩、ホスホン酸あるいはその塩が好ましい。
またRはC2n+12mCOO−骨格を有するものがインク滲みを抑制する観点より特に好ましく、1分子中に2つ以上のC2n+12mCOO−骨格を有するものがさらに好ましい。ここでnは2以上の整数、mは1以上の整数である。
以下に、本発明に好ましく用いられる有機フッ素系化合物の具体例〔(F−1)〜(F−19)〕を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2008230023
Figure 2008230023
また、本発明に係る有機フッ素系化合物として、高分子化合物を使用してもよい。特に界面活性剤作用を有するもので水溶性であるものが好ましい。
このような具体例としては、フルオロ脂肪族基を有するアクリレートまたはフルオロ脂肪族基を有するメタクリレートと、ポリ(オキシアルキレン)アクリレートまたはポリ(オキシアルキレン)メタクリレートとの共重合体が挙げられる。該共重合体において、フルオロ脂肪族基を有するアクリレートまたはメタクリレートのモノマー単位が共重合体の質量に基づいて7〜60質量%であることが好ましく、また、該共重合体の分子量は3000〜100000が適当である。
該フルオロ脂肪族基は、直鎖状でも分岐していてもよく、かつ40質量%以上のフッ素を含有することが好ましい。上記フルオロ脂肪族基を有するアクリレートまたはメタクリレートの具体例としては、N−ブチルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレート、N−プロピルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレート、メチルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレートなどがある。ポリ(オキシアルキレン)アクリレートまたはメタクリレートにおける該ポリオキシアルキレン基の分子量は200〜3000であることが好ましい。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン基が挙げられ、好ましくはオキシエチレン、オキシプロピレン基である。例えばオキシエチレン基が8〜15モル付加したアクリレートまたはメタクリレートが使用される。また、必要に応じて該ポリオキシアルキレン基の末端にジメチルシロキサン基などを付加することにより発泡性を抑制することができる。
上述のような高分子の有機フッ素系化合物は、市場で一般に入手することができ、本発明では市販品も使用することができる。高分子の有機フッ素系化合物を2種以上併用することもできる。
販売されている製品としては、旭硝子(株)製、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S―131、S−141、S−145、S−381、S−382、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−110、F120、F−142D、F−150、F−171、F177、F781、住友3M(株)製フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC135、FX−161、FC170C、FC−171、FC176、バイエルジャパン(株)製FT−248、FT−448、FT−548、FT−624、FT−718、FT−738等(以上、商品名)が挙げられる。
インク受容層中の高分子の有機フッ素系化合物の割合は、0.1〜50質量%、好ましくは、1〜30質量%である。
[親水性樹脂]
本発明のインク受容層においては、親水性樹脂を併用することもできる。親水性樹脂は、前記マイクロカプセルの分散安定化などに有効である。
親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基などの親水性基を有するものが好適に挙げられる。
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類それらの塩、ポリメタクリル酸類それらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマーコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60モル%以上、好ましくは80モル%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテルなどが挙げられる。
インク受容層中の親水性樹脂の割合は、1〜90質量%、好ましくは、5〜70質量%である。
[インク受容層の形成]
本発明におけるインク受容層は、必要な上記各成分を溶剤に分散、または溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明におけるインク受容層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散、または溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上のインク受容層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.01〜5g/m2が好ましく、0.1〜3.0g/m2がさらに好ましい。この範囲内で、良好な感度とインク受容層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
[支持体]
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、本発明は、支持体としてアルミニウム板を使用したときに、支持体の変形防止効果が顕著に奏される。
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、親水性皮膜形成等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上およびインク受容層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
<粗面化処理>
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
<親水性皮膜の形成>
親水性皮膜を設ける方法としては、特に限定されず、陽極酸化法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、拡散法等を適宜用いることができる。また、親水性樹脂またはゾルゲル液に中空粒子を混合した溶液を塗布する方法を用いることもできる。
中でも、陽極酸化法により酸化物を作製する処理、すなわち、陽極酸化処理を用いるのが最も好適である。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等の単独のまたは2種以上を組み合わせた水溶液または非水溶液の中で、アルミニウム板に直流または交流を流すと、アルミニウム板の表面に、親水性皮膜である陽極酸化皮膜を形成することができる。陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜200V、電解時間1〜1000秒であるのが適当である。これらの陽極酸化処理の中でも、英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸電解液中で高電流密度にて陽極酸化処理する方法、および、米国特許第3,511,661号明細書に記載されている、リン酸を電解浴として陽極酸化処理する方法が好ましい。また、硫酸中で陽極酸化処理し、更にリン酸中で陽極酸化処理するなどの多段陽極酸化処理を施すこともできる。
本発明においては、陽極酸化皮膜は、傷付きにくさおよび耐刷性の点で、0.1g/m2 以上であるのが好ましく、0.3g/m2 以上であるのがより好ましく、2g/m2 以上であるのが特に好ましく、3.2g/m2 以上であるのがさらに好ましい。また、厚い皮膜を設けるためには多大なエネルギーを必要とすることを鑑みると、100g/m2 以下であるのが好ましく、40g/m2 以下であるのがより好ましく、20g/m2 以下であるのが特に好ましい。
陽極酸化皮膜には、その表面にマイクロポアと呼ばれる微細な凹部が一様に分布して形成されている。陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの密度は、処理条件を適宜選択することによって調整することができる。マイクロポアの密度を高くすることにより、陽極酸化皮膜の膜厚方向の熱伝導率を下げることができる。また、マイクロポアの径は、処理条件を適宜選択することによって調整することができる。マイクロポアの径を大きくすることにより、陽極酸化皮膜の膜厚方向の熱伝導率を下げることができる。
本発明においては、熱伝導率を下げる目的で、陽極酸化処理の後、マイクロポアのポア径を拡げるポアワイド処理を行うことが好ましい。このポアワイド処理は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸漬することにより、陽極酸化皮膜を溶解し、マイクロポアのポア径を拡大するものである。ポアワイド処理は、陽極酸化皮膜の溶解量が、好ましくは0.01〜20g/m2 、より好ましくは0.1〜5g/m2 、特に好ましくは0.2〜4g/m2 となる範囲で行われる。
ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は10〜1000g/Lであるのが好ましく、20〜500g/Lであるのがより好ましい。酸水溶液の温度は、10〜90℃であるのが好ましく、30〜70℃であるのがより好ましい。酸水溶液への浸漬時間は、1〜300秒であるのが好ましく、2〜100秒であるのがより好ましい。一方、ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液のpHは、10〜13であるのが好ましく、11.5〜13.0であるのがより好ましい。アルカリ水溶液の温度は、10〜90℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。アルカリ水溶液への浸漬時間は、1〜500秒であるのが好ましく、2〜100秒であるのがより好ましい。しかしながら、最表面のマイクロポア径を拡大しすぎると、印刷時の汚れ性能が劣化することから、最表面のマイクロポア径は40nm以下にすることが好ましく、20nm以下にすることがより好ましく、10nm以下にすることが最も好ましい。したがって、断熱性と汚れ性能を両立する。より好ましい陽極酸化皮膜形状としては、表面のマイクロポア径が0〜40nmで、内部のマイクロポア径が20〜300nmである。例えば、電解液の種類が同じであれば、電解によって、生成するポアのポア径は電解時の電解電圧に比例することが知られている。その性質を利用して電解電圧を徐々に上昇させていくことで底部分の拡がったポアが生成する方法を用いることができる。また、電解液の種類を変えるとポア径が変化することが知られていて、硫酸、シュウ酸、リン酸の順にポア径が大きくなる。従って、1段階目に電解液に硫酸を用いて、2段階目にリン酸を用いて陽極酸化する方法を用いることができる。また、陽極酸化処理、およびあるいはポアワイド処理して得られた支持体に後述の封孔処理を行ってもよい。
また、親水性皮膜は、上述した陽極酸化皮膜のほかに、スパッタリング法、CVD法等により設けられる無機皮膜であってもよい。無機皮膜を構成する化合物としては、例えば、酸化物、チッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物が挙げられる。また、無機皮膜は、化合物の単体のみから構成されていてもよく、化合物の混合物により構成されていてもよい。無機皮膜を構成する化合物としては、具体的には、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化クロム;チッ化アルミニウム、チッ化ケイ素、チッ化チタン、チッ化ジルコニウム、チッ化ハフニウム、チッ化バナジウム、チッ化ニオブ、チッ化タンタル、チッ化モリブデン、チッ化タングステン、チッ化クロム、チッ化ケイ素、チッ化ホウ素;ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ハフニウム、ケイ化バナジウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン、ケイ化クロム;ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ化クロム;炭化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化モリブデン、炭化タングステン、炭化クロムが挙げられる。
<封孔処理>
本発明においては、上述したようにして親水性皮膜を設けて得られた支持体に封孔処理を行ってもよい。本発明に用いられる封孔処理としては、特開平4−176690号公報および特開平11−301135号公報に記載の加圧水蒸気や熱水による陽極酸化皮膜の封孔処理が挙げられる。また、ケイ酸塩処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理、電着封孔処理、トリエタノールアミン処理、炭酸バリウム塩処理、極微量のリン酸塩を含む熱水処理等の公知の方法を用いて行うこともできる。封孔処理皮膜は、例えば、電着封孔処理をした場合にはポアの底部から形成され、また、水蒸気封孔処理をした場合にはポアの上部から形成され、封孔処理の仕方によって封孔処理皮膜の形成され方は異なる。そのほかにも、溶液による浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理、蒸着処理、スバッタリング、イオンプレーティング、溶射、鍍金等が挙げられるが、特に限定されるものではない。中でも特に好ましいのは、特開2002−214764号公報記載の平均粒径8〜800nmの粒子を用いた封孔処理が挙げられる。
粒子を用いた封孔処理は、平均粒径8〜800nm、好ましくは平均粒径10〜500nm、より好ましくは平均粒径10〜150nmの粒子によって行われる。この範囲内で、親水性皮膜に存在するマイクロポアの内部に粒子が入り込んでしまうおそれが少なく、高感度化の効果が十分得られ、また、インク受容層との密着性が十分となり、耐刷性が優れたものとなる。粒子層の厚さは、8〜800nmであるのが好ましく、10〜500nmであるのがより好ましい。
粒子層を設ける方法としては、例えば、溶液による浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理、電解処理、蒸着処理、スパッタリング、イオンプレーティング、溶射、鍍金等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
電解処理は、直流または交流を用いることができる。上記電解処理に用いられる交流電流の波形としては、サイン波、矩形波、三角波、台形波等が挙げられる。また、交流電流の周波数は、電源装置を製作するコストの観点から、30〜200Hzであるのが好ましく、40〜120Hzであるのがより好ましい。交流電流の波形として台形波を用いる場合、電流が0からピークに達するまでの時間tpはそれぞれ0.1〜2msecであるのが好ましく、0.3〜1.5msecであるのがより好ましい。上記tpが0.1msec未満であると、電源回路のインピーダンスが影響し、電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる場合がある。
親水性粒子としては、Al2 3 、TiO2 、SiO2 およびZrO2 を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。電解液は、例えば、前記親水性粒子を含有量が全体の0.01〜20質量%となるように、水等に懸濁させて得られる。電解液は、電荷をプラスまたはマイナスに帯電させるために、例えば、硫酸を添加するなどして、pHを調整することもできる。電解処理は、例えば、直流を用い、アルミニウム板を陰極として、上記電解液を用い、電圧10〜200Vで1〜600秒間の条件で行う。この方法によれば、容易に、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの内部に空隙を残しつつ、その口をふさぐことができる。
また、封孔処理として特開昭60−149491号公報に記載されている、少なくとも1個のアミノ基と、カルボキシル基およびその塩の基ならびにスルホ基およびその塩の基からなる群から選ばれた少なくとも1個の基とを有する化合物からなる層、特開昭60−232998号公報に記載されている、少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個のヒドロキシ基を有する化合物およびその塩から選ばれた化合物からなる層、特開昭62−19494号公報に記載されているリン酸塩を含む層、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有するモノマー単位の少なくとも1種を繰り返し単位として分子中に有する高分子化合物からなる層等をコーティングによって設ける方法が挙げられる。
また、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有機リン酸エステル;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれる化合物の層を設ける方法も挙げられる。
封孔処理には、不飽和基を有するシランカップリング剤を塗設処理してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、N−3−(アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メトキシジメチルビニルシラン、1−メトキシ−3−(トリメチルシロキシ)ブタジエン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ジアリルアミノプロピルメトキシシランが挙げられる。中でも、不飽和基の反応性が速いメタクリロイル基、アクリロイル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
そのほかにも、特開平5−50779号公報に記載されているゾルゲルコーティング処理、特開平5−246171号公報に記載されているホスホン酸類のコーティング処理、特開平6−234284号公報、特開平6−191173号公報および特開平6−230563号公報に記載されているバックコート用素材をコーティングにより処理する方法、特開平6−262872号公報に記載されているホスホン酸類の処理、特開平6−297875号公報に記載されているコーティング処理、特開平10−109480号公報に記載されている陽極酸化処理する方法、特開2000−81704号公報および特開2000−89466号公報に記載されている浸漬処理方法等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
親水性皮膜を形成した後、必要に応じて、アルミニウム板の表面に親水化処理を施す。親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモンおよび遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号公報に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックスを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
また、本発明の支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号公報に記載の、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、インク受容層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
(バックコート層)
支持体に表面処理を施した後または下塗層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 4 、Si(OC2 5 4 、Si(OC3 7 4 、Si(OC4 9 4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
(下塗層)
本発明の平版印刷版原版においては、特に機上現像型平版印刷版原版の場合、必要に応じて、インク受容層と支持体との間に下塗層を設けることができる。下塗層は、未露光部において、インク受容層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。
下塗層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
最も好ましい下塗層としては、吸着性基を有するモノマー/親水性基を有するモノマー/架橋性基を有するモノマーを共重合した高分子樹脂が挙げられる。
高分子下塗りの必須成分は、親水性支持体表面への吸着性基である。親水性支持体表面への吸着性の有無に関しては、例えば以下のような方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布夜を作製し、その塗布夜を乾燥後の塗布量が30mg/m2となるように支持体上に塗布・乾燥させる。次に試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量は、例えば蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定などで実施できる。支持体吸着性がある化合物は、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m2以上残存する化合物である。
親水性支持体表面への吸着性基は、親水性支持体表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)あるいは官能基(例えば、水酸基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基は、酸基またはカチオン性基が好ましい。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性水酸基、カルボキシル基、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−および−COCH2COCH3を含む。なかでも−OPO32および−PO32が特に好ましい。またこれら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基を含む。アンモニウム基、ホスホニウム基およびスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基およびホスホニウム基がさらに好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例としては、下記式(IV)または(V)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2008230023
式(IV)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。R2およびR3は、水素原子であることが特に好ましい。
式(IV)において、Xは、酸素原子(−O−)またはイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることがさらに好ましい。式(IV)において、Lは、2価の連結基である。Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリーレン基、置換アリーレン基)または2価の複素環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(―S―)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)またはカルボニル(−CO−)との組み合わせであることが好ましい。
脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至15がさらに好ましく、1乃至10が最も好ましい。脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基および複素環基を含む。
芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15がさらに好ましく、6乃至10が最も好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基および複素環基を含む。
複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基および複素環基を含む。
Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む二価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることがさらに好ましい。言い換えると、Lは、−(OCH2CH2n−(nは2以上の整数)を含むことが好ましい。
式(IV)において、Zは、親水性支持体表面に吸着する官能基である。また、Yは、炭素原子または窒素原子である。Y=窒素原子でY上にLが連結し四級ピリジニウム基になった場合、それ自体が吸着性を示すことからZは必須ではない。
式(V)において、R1、LおよびZは、式(IV)におけるものと同義である。
以下に、式(IV)または(V)で表される代表的なモノマーの例を示す。
Figure 2008230023
本発明に用いることができる下塗り用高分子樹脂の親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等が好適に挙げられる。中でも高親水性を示すスルホン酸基を有するモノマーが好ましい。スルホン酸基を有するモノマーの具体例としては、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸のナトリウム塩、アミン塩が挙げられる。中でも親水性能および合成の取り扱いから2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
本発明の下塗層用の水溶性高分子樹脂は、架橋性基を有すことが好ましい。架橋性基によって画像部との密着の向上が得られる。下塗層用の高分子樹脂に架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の側鎖中に導入したり、高分子樹脂の極性置換基と対荷電を有する置換基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で塩構造を形成させたりして導入することができる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2nCR1=CR23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2n−O−CO−CR1=CR23、および−(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1とR2またはR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2NHCOO−CH2CH=CH2、および−CH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2OCO−CH=CH2が挙げられる。
下塗層用高分子樹脂の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドが好適である。
下塗層用高分子樹脂中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と汚れ性の両立、および良好な保存安定性が得られる。
下塗層用の高分子樹脂は、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
下塗層用の高分子樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
本発明の下塗り用高分子樹脂としては、親水性基を有する公知の樹脂を用いることもできる。そのような樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニルマレイン酸コポリマー類、スチレンーマレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60モル%以上、好ましくは80モル%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
下塗り用高分子樹脂は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
下塗層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
[インク物性]
上記インクの物性値としては、ユーザが取り扱う上で25℃の粘度としては1〜100mPa・sが好ましく、実機で吐出する際にはインク温度を25〜100℃の範囲でほぼ一定温度に保持し、そのときの粘度が2〜50mPa・sとなるようにすることが好ましい。
[インクジェット記録]
次に、本発明におけるインクジェット記録方式について説明する。
・インク保持手段
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382号公報に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切にたもつための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
・インク供給路
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
・ヘッド
インクを打滴する方法としては、特開平5−104725号公報に開示されるように、連続的にインク滴を吐出させ、画像に応じて滴を偏向してメディアに着弾させるか、させないかを選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、画像として必要な部分にのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349号公報に開示されるように、ピエゾ(圧電)素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255号公報に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出する方式であってもよい。また特開2001−277466号公報に開示されるように、電界によりメディアへの吐出を制御する方式であってもよい。
ノズルはたとえば特開平5−31908号公報に記載されるような形態が適用可能である。また、複数のノズル列を有するヘッドユニットを複数配置することにより高速化が可能である。
さらにノズルを特開昭63−160849号公報に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し、所謂ラインヘッドとなし、これらのノズルからの打滴と同時にメディアを移動させることにより、高速に画像を形成することが可能となる。
またノズルの表面は、特開平5−116327号公報に開示されるような表面処理を施すことにより、ノズル表面へのインク滴の飛沫の付着、およびインク滴の付着を防ぐことが可能となる。このような処理を施しても、なお汚れが付着する場合があり、このため、特開平6−71904号公報に開示されるように、ブレードにより清掃を行うことが好ましい。また、ノズルからインクが均等に吐出されるとは限らない。このようなときに、メニスカスを安定に保つために、特開平11−157102号公報に開示されるように、画像領域外で適宜インクを吐出させ、ヘッドに新しいインクを補給することにより、インク物性を適性値に維持することが好ましい。また、このような処置を施してもなお気泡がヘッド内に侵入もしくはヘッド内で発生することがある。このような場合は、特開平11−334092号公報に記載されるように、ヘッド外より強制的にインクを吸引することにより、物性の変化したインクを廃棄するとともに、気泡もヘッド外に排出することができる。更に長時間打滴しない場合は特開平11−138830号公報に開示されるように、キャップでノズル表面を覆うことによりノズル表面を保護することができる。これらの措置を講じてもなお吐出しない場合がありうる。ノズルの一部が吐出しない状態で画像形成すると、画像にムラが発生する等の問題が発生する。このようなことを避けるため、特開平2000−343686号公報に開示されるように、吐出しないことを検出して処置をとることが有効である。
・打滴
インクを吐出するにあたっては、粘度を一定に維持するためにインク温度を所定精度で一定に保持することが好ましい。このためにはインク温度検出手段と、インク加熱手段、および検出されたインク温度に応じて加熱を制御する制御手段を有することが好ましい。
さらにあるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御する手段を有することも好適である。
ヘッドユニットを特開平6−115099号公報に記載されるように機械的に移動させ、これと同期してメディアを直交方向に間欠的に移動させることにより重畳打滴を行うと、メディア(記録媒体)の間欠的な移動の精度不良にともなうムラを見えにくくする効果があり、高画質を実現することが可能となる。このとき、ヘッドの移動速度、メディアの移動量、ノズル数の関係を適宜設定することにより、画質と記録速度の関係を好ましい関係に設定することが可能となる。また、逆にヘッドを固定し、メディアを機械的に所定方向に往復移動するとともに、それと直交方向に間欠移動させることにより、同様の効果を得ることが可能である。
・システムパラメータ
画像を形成するうえで、インク受容層上でのインク着弾径は、5〜500μmの間にあることが好適であり、このためには吐出時のインク滴の直径は5〜200μmであることが好ましく、このときのノズル径は5〜200μmであることが好ましい。特に印刷版を作成する場合は、吐出液滴量が20pL以下であることが好ましく、10pL以下であることが特に好ましい。
画像を形成するためには1インチあたりの画素数が50〜4000dpiであることが好ましく、そのためには、ヘッドのノズル密度は10〜4000dpiであることが好ましい。ここで、ヘッドのノズル密度は低くとも、メディアの搬送方向に対して傾ける、あるいは複数のヘッドユニットを相対的にずらして配置することにより、ノズル間隔の大きいヘッドで高密度の着弾を実現することが可能である。また上記のようにヘッドもしくはメディアの往復移動により、低ノズルピッチでヘッドが移動するごとにメディアを所定量搬送させ、インク滴を異なる位置に着弾させることにより、高密度の画像記録を実現することができる。
ヘッドとメディアの間隔に関しては、広すぎるとヘッドもしくはメディアの移動に伴う空気の流れでインク滴の飛翔が乱れ、着弾位置精度が低下する。逆に間隔が狭いと、メディアの凹凸、搬送機構に起因する振動等によりヘッドとメディアが接触する危険性があり、0.5〜2mm程度に維持されることが好ましい。
[定着処理]
上記のようにしてインクを用いて画像形成した後、支持体、とくにアルミニウム板の温度が120℃以下となる温度範囲でインクを定着させる。120℃以下の温度を採用することによりアルミニウム板の熱変形を防止できる。上記温度は、110℃以下が好ましく、100℃以下がさらに好ましい。定着時間は10分以下が好ましく、6分以下がさらに好ましい。
[ガム処理]
以上、画像形成されたものは、さらに印刷の前にアラビアガムや澱粉誘導体、界面活性剤等を主成分とするガム処理することも可能である。ガム液としては、特公昭62−16834号、同62−25118号、同63−52600号、特開昭62−7595号、同62−11693号、同62−83194号の各公報に記載されているものが好ましい。なお、ガム処理の際に、インク受容層がガム液により溶解除去されることが好ましい。このようにして得られた版は平版印刷機により通常の印刷を行うことができる。尚、本発明では、ガム処理なしで、印刷することもできる。
[湿し水]
印刷する際の湿し水については、通常の平版印刷機および通常のインクにより印刷することができる。湿し水としては、一般に、イソプロピルアルコールを約20〜25%加えた水溶液を湿し水として用いるダールグレン方式が提案され、広く普及しているもの、また、イソプロピルアルコールは特有の不快臭があることと共に、毒性の面でも問題があり、有機溶剤中毒予防規則(有機則)第2種有機溶剤であって規制を受けるため、イソプロピルアルコールを代替する技術を導入したもの、さらにイソプロピルアルコール代替化合物として不揮発性もしくは高沸点化合物を使用する技術も開発されている。例えば、特定のアルキレンオキサイド系非イオン系界面活性剤を湿し水組成物に含めたもの、及び、アルキレンジアミンのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物を湿し水組成物に含めたものを使用することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.平版印刷版原版の作製
(1)支持体の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
次に、フッ化ジルコン酸ナトリウム0.1質量%、リン酸ニ水素ナトリウム1質量%を含むpH3.7の75℃に加熱した溶液に10秒間浸漬して、封孔処理した。次に、珪酸ナトリウム2.5質量%水溶液にて30℃で10秒処理した。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
さらに下記下塗り液(1)を乾燥塗布量が10mg/m2になるよう塗布して、以下の実験に用いる支持体を作製した。
下塗り液(1)
・下記の下塗り化合物(1) 0.017g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
Figure 2008230023

(2)インク受容層の形成
上記支持体上に、下記組成のインク受容層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.5g/m2のインク受容層を形成して平版印刷版原版を得た。
インク受容層塗布液(1)は下記溶液(1)およびマイクロカプセル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
溶液(1)
・親水性樹脂(ポリアクリルアミド) 0.3g
・有機フッ素系化合物
下記化合物 0.3g
Figure 2008230023
CF−(CF−CHCH−S−CHCH−COOLi
0.2g
界面活性剤 0.05g
(メガファックF−176、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 1.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
<インクの作成>
下記に示す組成で、溶剤系インク(インクジェット用インク)を作成した。
・ポリマー
ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸の共重合体、質量比 70:20:10 Tg=0℃ 9g
・染料 エチルバイオレット 1g
・溶剤 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 50g
・溶剤 乳酸エチル 40g
<インクジェット記録とインクの定着処理>
上記の平版印刷版原版に、上記のインクをピエゾヘッドを使用しインクジェット記録方式により打滴し、ベタ画像を形成し、さらに赤外線ランプを用い、アルミニウム板温度100℃で3分間加熱することにより、実施例1の平版印刷版を作製した。
<印刷評価>
得られた平版印刷版を、ガム処理することなく、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、IF102(富士フイルム(株)製)湿し水を用い、大日本インキ化学工業社(株)製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷した。ベタ部の隙間を、ルーペを用い目視にて評価した。隙間は無かった。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。その結果、耐刷性は2.5万枚であった。
[実施例2]
実施例1において、インクの定着処理の際、赤外線ランプを用いる加熱を行わなかったこと以外は、実施例1を繰り返し、平版印刷版を作製した。実施例1と同様に評価したところ、耐刷性は、1.8万枚であった。
[実施例3]
実施例1において、インク中のポリマーを下記に変更したこと以外は、実施例1を繰り返し、平版印刷版を作製した。実施例1と同様に評価したところ、耐刷性は、2.5万枚であった。
実施例3のポリマー:
ドデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メタクリル酸の共重合体、質量比 50:40:10 Tg=10℃
[実施例4]
実施例3において、インクの定着処理の際、赤外線ランプを用いる加熱を行わなかったこと以外は、実施例3を繰り返し、平版印刷版を作製した。実施例1と同様に評価したところ、耐刷性は、1.7万枚であった。
[実施例5]
実施例1において、インク中のポリマーを下記に変更したこと以外は、実施例1を繰り返し、平版印刷版を作製した。実施例1と同様に評価したところ、耐刷性は、2.0万枚であった。
実施例5のポリマー:
酢酸ビニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸の共重合体、質量比 80:10:10 Tg=30℃
[比較例1]
実施例1において、インク中のポリマーを下記に変更したこと以外は、実施例1を繰り返し、平版印刷版を作製した。実施例1と同様に評価したところ、耐刷性は、0.5万枚であった。
比較例1のポリマー:
スチレン、アクリル酸、アクリルアミドの共重合体、質量比 50:25:25 Tg=110℃
[比較例2]
実施例1において、インク中のポリマーをTg105℃のポリメチルメタクリレートに変更したこと以外は、実施例1を繰り返し、平版印刷版を作製した。実施例1と同様に評価したところ、耐刷性は、0.5万枚であった。
[比較例3]
実施例1において、インク中のポリマーをTg95℃のポリスチレンに変更したこと以外は、実施例1を繰り返し、平版印刷版を作製した。実施例1と同様に評価したところ、耐刷性は、0.7万枚であった。
[実施例6]
実施例1において、インク中のポリマーを下記のように変更したこと以外は、実施例1を繰り返し、平版印刷版を作製した。実施例1と同様に評価したところ、耐刷性は、2.2万枚であった。
実施例6のポリマー:
実施例1で用いたポリマー7gと比較例3で用いたポリマー2gの混合物。総Tg=29℃

Claims (4)

  1. 実質的に水を含有しないインクジェット用インクを用いて、インクジェット記録方式により画像形成された平版印刷版であって、該インクジェット用インクが、Tg90℃未満のポリマーを含有することを特徴とする平版印刷版。
  2. 親水性表面を有する支持体上に、実質的に水を含有しないインクジェット用インクを用いて、インクジェット記録方式により画像形成する工程を有する平版印刷版の作製方法であって、該インクジェット用インクが、Tg90℃未満のポリマーを含有することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
  3. 前記親水性表面を有する支持体がアルミニウム板であることを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版の作製方法。
  4. 前記インクジェット用インクを用いて画像形成した後、前記アルミニウム板の温度が120℃以下となる温度範囲で前記インクジェット用インクを定着させる工程をさらに有する請求項3に記載の平版印刷版の作製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012229301A (ja) * 2011-04-25 2012-11-22 Hitachi Chemical Co Ltd 樹脂組成物及びそれを用いた被覆層の製造方法、電子部品
JP2013525513A (ja) * 2010-03-22 2013-06-20 中国科学院化学研究所 インクジェットダイレクト製版用インクおよびその調製方法

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