以下、本発明に係る電池パックの実施形態を図面に基づいて説明する。尚、本実施形態は、二次電池の電池セルを4セル直列に接続した組電池を直列に2個接続した8セル直列の電池パックであるが、複数の二次電池を直列接続した組電池を複数段直列に接続したものであれば良く、上記の構成に限定されるものではない。
本実施形態は、図1に示すように、電池セルBAT1〜BAT4を直列に接続した組電池1−1及び電池セルBAT5〜BAT8を直列に接続した組電池1−2を直列に接続した組電池群1と、組電池群1のプラス電極と接続される端子S1及び組電池群1のマイナス電極と接続される端子S2及び組電池群1のプラス電極と保護素子10を介して接続される端子S3から成り、電動工具等の負荷本体(図示せず)又は充電器(図示せず)に設けられた端子部(図示せず)に着脱自在に装着される電源端子部と、負荷本体又は充電器の端子部に着脱自在に装着されて負荷本体又は充電器との間で信号の入出力を行う信号端子部2とを備える。ここで、保護素子10は、ヒータ抵抗に電流を流すことによりヒューズを切断して電路を遮断する非復帰型の素子である。また、端子S2は電源用のグラウンドと接続されている。
電池セルBAT1〜BAT4各々のプラス電極と接続される端子V1〜V4は、それぞれ充放電制御電圧検出回路3−1、過充電電圧検出回路11−1に接続されている。充放電制御電圧検出回路3−1は、各電池セルBAT1〜BAT4の電圧を検出するための4セル対応の汎用ICであり、電池セルBAT1〜BAT4のセル電圧の少なくとも何れか1つが第1の所定値(本実施形態では、4.2V)より高くなると充電制御信号(オープンドレイン出力のアクティブハイ)を後述する充電制御信号変換回路4−1に出力し、電池セルBAT1〜BAT4のセル電圧の少なくとも何れか1つが第1の所定値より低い第2の所定値(本実施形態では、2V)より低くなると放電制御信号(C−MOS出力のアクティブハイ)を後述する放電制御信号変換回路5−1に出力する。充放電制御電圧検出制回路3−1は、電源側端子VDDが端子V4と接続されるとともに接地側端子VSSが端子S2と接続されることで、組電池1−1から電源が供給されるようになっている。また、充放電制御電圧検出回路3−1と端子S2との間には、それぞれ充電制御信号と放電制御信号の遅延時間を設定するためのコンデンサC1,C2が設けられている。
過充電電圧検出回路11−1は、過充電電圧を検出するための4セル対応の汎用ICであり、電池セルBAT1〜BAT4のセル電圧の少なくとも何れか1つが第1の所定値より高い第3の所定値(本実施形態では、4.5V)より高くなると過充電制御信号(C−MOS出力のアクティブハイ)を後述する電圧変換回路13に出力する。過充電電圧検出回路11−1は、電源側端子VDDが端子V4と接続されるとともに接地側端子VSSが端子S2と接続されることで、組電池1−1から電源が供給されるようになっている。また、過充電電圧検出回路11−1と端子S2との間には、過充電制御信号の遅延時間を設定するためのコンデンサC5が設けられている。
電池セルBAT5〜BAT8各々のプラス電極と接続される端子V5〜V7、及びVBは、それぞれ充放電制御電圧検出回路3−2、過充電電圧検出回路11−2に接続されている。充放電制御電圧検出回路3−2は、各電池セルBAT5〜BAT8の電圧を検出するための4セル対応の汎用ICであり、電池セルBAT5〜BAT8のセル電圧の少なくとも何れか1つが第1の所定値より高くなると充電制御信号を後述する充電制御信号変換回路4−2に出力し、電池セルBAT5〜BAT8のセル電圧の少なくとも何れか1つが第2の所定値より低くなると放電制御信号を後述する放電制御信号変換回路5−1に出力する。充放電制御電圧検出制回路3−2は、電源側端子VDDが端子VBと接続されるとともに接地側端子VSSが端子V4と接続されることで、組電池1−2から電源が供給されるようになっている。また、充放電制御電圧検出回路3−2と端子V4との間には、それぞれ充電制御信号と放電制御信号の遅延時間を設定するためのコンデンサC3,C4が設けられている。
過充電電圧検出回路11−2は、過充電電圧を検出するための4セル対応の汎用ICであり、電池セルBAT5〜BAT8のセル電圧の少なくとも何れか1つが第3の所定値より高くなると過充電制御信号を後述する駆動回路12に出力する。過充電電圧検出回路11−2は、電源側端子VDDが端子VBと接続されるとともに接地側端子VSSが端子V4と接続されることで、組電池1−2から電源が供給されるようになっている。また、過充電電圧検出回路11−2と端子V4との間には、過充電制御信号の遅延時間を設定するためのコンデンサC6が設けられている。
尚、電池セルBAT1,BAT3,BAT5,BAT7には、それぞれ並列に抵抗Ra〜Rd(例えば、1MΩ以上)が接続されている。このため、電池セルBAT1〜BAT8における短絡や、電池セルBAT1〜8と充放電制御電圧検出回路3−1,3−2及び過充電電圧検出回路11−1,11−2との間の接続線の断線などの場合に、検出されるセル電圧が異常値を示すことで充電制御の停止又は保護素子10による電路遮断を行うことができ、過充電を防ぐことができる。
充電制御信号変換回路4−1,4−2は、それぞれ充放電制御電圧検出回路3−1,3−2と接続され、図2に示すように、ゲートに抵抗R1を介して充電制御信号が供給されるPチャンネルMOSトランジスタQ1と、NPN型トランジスタQ2,Q3と、オープンコレクタ出力のPNP型トランジスタQ4とを備えている。また、MOSトランジスタQ1のドレインとトランジスタQ2のベースとの間、トランジスタQ2のコレクタと後述する電源供給回路9−1,9−2の出力との間、トランジスタQ3のコレクタとトランジスタQ4のベースとの間には、それぞれ抵抗R2,R3,R4が設けられている。而して、入力の充電制御信号がハイレベルの場合、MOSトランジスタQ1、トランジスタQ2がオフになり、トランジスタQ3、トランジスタQ4がオンになることで、出力信号がハイレベル、即ち電源供給回路9−1,9−2の出力電圧になるような信号変換が行われる。
放電制御信号変換回路5−1,5−2は、それぞれ充放電制御電圧検出回路3−1,3−2と接続され、図3に示すように、ゲートに抵抗R5を介して放電制御信号が供給されるPチャンネルMOSトランジスタQ5と、NPN型トランジスタQ6,Q7と、オープンコレクタ出力のPNP型トランジスタQ8とを備えている。また、MOSトランジスタQ5のドレインとトランジスタQ6のベースとの間、トランジスタQ6のコレクタと後述する電源供給回路9−1,9−2の出力との間、トランジスタQ7のコレクタとトランジスタQ8のベースとの間には、それぞれ抵抗R6,R7,R8が設けられている。而して、入力の放電制御信号がハイレベルの場合、MOSトランジスタQ5、トランジスタQ6がオフになり、トランジスタQ7、トランジスタQ8がオンになることで、出力信号がハイレベル、即ち電源供給回路9−1,9−2の出力電圧になるような信号変換が行われる。
充電制御信号論理和回路6は、エミッタが端子S2に接続されたNPN型トランジスタQ9を備え、ベースに充電制御信号変換回路4−1,4−2の出力信号がそれぞれ抵抗R9−1,9−2を介して入力される。トランジスタQ9のコレクタには、後述する起動信号VTが抵抗R10を介して入力されるようになっており、該コレクタ出力が後述する充電制御信号遅延回路14に入力されるようになっている。充電制御信号遅延回路14は、充電制御信号論理和回路6からの入力信号を遅延させるもので、電源側端子に起動信号VTが供給されるようになっている。また、出力は後述する信号端子部2の端子2gに接続される。而して、充電制御信号変換回路4−1,4−2の出力信号が何れもローレベルであれば、トランジスタQ9がオフとなり起動信号VTが充電制御信号遅延回路14に入力され、充電制御信号変換回路4−1,4−2の出力信号の少なくとも何れか1つがハイレベルになると、トランジスタQ9がオンとなって充電制御信号遅延回路14にローレベルの信号が入力される。
放電制御信号論理和回路7は、エミッタが端子S2に接続されたNPN型トランジスタQ10を備え、ベースに放電制御信号変換回路5−1,5−2の出力信号がそれぞれ抵抗R11−1,11−2を介して入力される。トランジスタQ10のコレクタには、起動信号VTが抵抗R12を介して入力されるようになっており、該コレクタ出力が後述する放電制御信号遅延回路15に入力されるようになっている。放電制御信号遅延回路15は、放電制御信号論理和回路7からの入力信号を遅延させるもので、電源側端子に起動信号VTが供給されるようになっている。また、出力は後述する信号端子部2の端子2cに接続される。而して、放電制御信号変換回路5−1,5−2の出力信号が何れもローレベルであれば、トランジスタQ10がオフとなり起動信号VTが放電制御信号遅延回路15に入力され、放電制御信号変換回路5−1,5−2の出力信号の少なくとも何れか1つがハイレベルになると、トランジスタQ10がオンとなって放電制御信号遅延回路14にローレベルの信号が入力される。
電源供給回路9−1は、エミッタが端子V4と接続されるとともにコレクタが充電制御信号変換回路4−1及び放電制御信号変換回路5−1の電源側端子にそれぞれ接続されるPNP型トランジスタQ12−1を備え、該トランジスタQ12−1のベースは、抵抗R14−1及びダイオードD1−1を介して後述する電源起動回路8に接続される。電源供給回路9−2は、エミッタが端子VBと接続されるとともにコレクタが充電制御信号変換回路4−2及び放電制御信号変換回路5−2の電源側端子にそれぞれ接続されるPNP型トランジスタQ12−2を備え、該トランジスタQ12−2のベースは、抵抗R14−2及びダイオードD1−2を介して電源起動回路8に接続される。
電源起動回路8は、エミッタが後述する信号端子部2の端子2hに接続されたNPN型トランジスタQ11を備え、ベースが信号端子部2の端子2bに抵抗R13を介して接続されることで負荷本体及び充電器で生成された起動信号VTが供給されるようになっている。また、トランジスタQ11のコレクタは、前述のように電源供給回路9−1,9−2に接続される。而して、電源起動回路8のトランジスタQ11のベースに起動信号VTが供給されると、トランジスタQ11,Q12−1,Q12−2がそれぞれオンになり、電源供給回路9−1から充電制御信号変換回路4−1及び放電制御信号変換回路5−1に組電池1−1の電池電圧が供給されるとともに、電源供給回路9−2から充電制御信号変換回路4−2及び放電制御信号変換回路5−2に組電池1−2の電池電圧が供給される。
電圧変換回路13は、ソースが端子S2に接続されたNチャンネルMOSトランジスタQ14と、ソースが端子VBに接続されたPチャンネルMOSトランジスタQ15とを備え、MOSトランジスタQ14のドレインとMOSトランジスタQ15のゲートとが抵抗17を介して接続されている。MOSトランジスタQ14のゲートは、抵抗R16を介して過充電電圧検出回路11−1の出力と接続されており、MOSトランジスタQ15のドレインは、端子V4に接続されるとともに後述する駆動回路12の入力と接続されている。
駆動回路12は、ソースが端子V4に接続されたNチャンネルMOSトランジスタQ13−1,Q13−2を備え、各ドレインが保護素子10と接続されている。MOSトランジスタQ13−1のゲートは、抵抗R15−1を介して電圧変換回路13のMOSトランジスタQ15のドレインと接続されており、MOSトランジスタQ13−2のゲートは、抵抗R15−2を介して過充電電圧検出回路11−2の出力と接続されている。
而して、過充電電圧検出回路11−1の過充電制御信号がハイレベルになると、電圧変換回路13のMOSトランジスタQ14,Q15がオンとなり、駆動回路12のMOSトランジスタQ13−1をオンさせる。すると、保護素子10のヒータ抵抗に組電池1−2の電池電圧、若しくは充電器装着時であれば端子S3を介して充電電圧が印加され、その発熱で瞬時にヒューズを溶断し、端子S3と組電池群1のプラス電極との間の電路を遮断する。同様に、過充電電圧検出回路11−2の過充電制御信号がハイレベルになると、駆動回路12のMOSトランジスタQ13−2がオンとなり、保護素子10に組電池1−2の電池電圧若しくは充電電圧が印加されて端子S3と組電池群1のプラス電極との間の電路を遮断する。
信号端子部2は、負荷本体又は充電器に設けられた端子部と接続される8つの端子2a〜2hから成り、端子2hは信号用のグラウンドに接続されている。端子2aと端子2hとの間には、組電池群1の情報(セル数、構成、電圧、容量など)に対応した抵抗値を有する識別用の抵抗16が接続されている。端子2bは、充電制御信号論理和回路6、放電制御信号論理和回路7、電源起動回路8、充電制御信号遅延回路14、放電制御信号遅延回路15に接続され、負荷本体又は充電器装着時に負荷本体又は充電器で生成される起動信号VTをそれぞれの回路に供給する。端子2c,2gには、それぞれ放電制御信号遅延回路15の出力信号と充電制御信号遅延回路14の出力信号が入力される。端子2dと端子2hとの間には、組電池群1の温度を検出する温度センサ(サーミスタ)18が接続されている。端子2eと端子2fとの間には、負荷本体又は充電器からの制御の履歴等を記録する不揮発性メモリから成る記憶部17が接続されており、端子2bから供給される起動信号VTによって起動する。
尚、組電池群1のマイナス電極に接続される端子S2と端子2hとは直接接続されず、互いに分離された構成となっている。このため、端子S2が導通不良になった場合に、端子2hを介して充放電の大電流が流れ、発火等の不具合が生じるのを防止することができる。
而して、充電器が装着された場合は、電源端子部の端子S3,S2及び信号端子部2を介して充電制御を行う。また、負荷本体が装着された場合は、負荷本体に設けられたトリガスイッチ(図示せず)を操作することで、電源端子部の端子S1,S2及び信号端子部2を介して負荷制御を行う。尚、負荷本体及び充電器が装着された状態では、端子S2と端子2hとが内部で接続されており、電源用グラウンドと信号用グラウンドが共通接地となっている。
以下、本実施形態が充電器に装着された場合の動作について説明する。充電器が装着されると、端子2a及び端子2dを介して温度センサ18及び識別用の抵抗16の情報を検出することで、本実施形態が装着されたことを自動検出し、充電動作に入る。先ず、端子2bに起動信号VTを印加するとともに、端子2dにより検出される組電池群1の温度が所定の温度範囲内(本実施形態では70℃以下)であり、端子2gに入力される信号がハイレベル、即ち各電池セルBAT1〜BAT8の電池電圧が何れも第1の所定値(4.2V)以下であれば、端子S3,S2を介して定電流充電を開始する。端子2gに入力される信号がローレベル、即ち各電池セルBAT1〜BAT8の少なくとも何れか1つの電池電圧が第1の所定値(4.2V)以上になると、順次、充電電流を下げていく定電圧充電に移行し、充電電流が一定以下になると充電を完了し、端子2bの起動信号VTの印加を停止することで消費電流を抑える。尚、充電器が外されたことは、端子2a及び端子2bの電圧を検出することで判断する。
ここで、温度センサ18により検出される組電池群1の温度が所定の温度(70℃)を超えた場合、及び端子S3,S2に印加される充電電圧が所定値(本実施形態では、35V)を超えた場合には充電を停止するようになっている。更に、過充電電圧検出回路11−1,11−2において、各電池セルBAT1〜BAT8の少なくとも何れか1つの電池電圧が第3の所定値(4.5V)を超えると、駆動回路12を起動させて保護素子10を溶断することで充電できないようにしている。このため、充電時における高度な安全性を確保することができる。
次に、本実施形態が負荷本体に装着された場合の動作について説明する。負荷本体が装着され、起動のためのトリガスイッチが操作されると、負荷本体の制御回路が起動し、端子2bに起動信号VTを印加するとともに、端子2d及び端子2cを介して組電池群1の温度及び過放電か否かの情報を得て、正常な場合は端子S1,S2を介して負荷本体を起動する。トリガスイッチが離された場合、或いは端子2d,2cで異常が検出された場合は、放電を停止し、信号端子VT への起動信号の印加を停止することで消費電流を抑える。
一般に、リチウムイオン電池は、過放電することにより信頼性が低下し、寿命が短くなる。具体的には、Feの析出電圧(1.0V)、Cuの析出電圧(0.5V)を下回ると容量低下の原因となる。そこで、負荷本体の制御回路で端子S1,S2間の電圧を監視し、所定電圧(本実施形態では、20V)以下となると負荷を止めて放電を停止するようになっている。また、端子2cに入力される信号がローレベル、即ち各電池セルBAT1〜BAT8の少なくとも何れか1つの電池電圧が第2の所定値(2.0V)以下になると負荷を停止するようになっている。更に、温度センサ18により検出される組電池群1の温度が所定値(70℃)を超えた場合、負荷を停止し放電を停止するようにしている。このため、放電による信頼性の低下を防止することができる。
次に、本実施形態が負荷本体及び充電器の何れにも装着されずに放置されている場合の動作について説明する。充放電制御電圧検出回路3−1,3−2及び過充電電圧検出回路11−1,11−2は、何れも放置時においても組電池1−1,1−2から電源が供給され駆動し続ける。従って、消費電流が極めて低い回路とする必要があり、充放電制御電圧検出回路3−1,3−2では、放置時においては検出動作が不要なため、端子2bから起動信号VTが入力されない時は待機モードになり、充電制御信号変換回路4−1,4−2及び放電制御信号変換回路5−1,5−2に対する出力信号がハイレベルとなるようにしている。また、電池セルBAT1〜BAT8の少なくとも何れか1つの電池電圧が第2の所定値(2.0V)以下になると、自動的に低消費電力モードに移行するようにしている。このモードでは、充電制御信号変換回路4−1,4−2及び放電制御信号変換回路5−1,5−2に対する出力信号がハイレベルとなり、回路停止状態(消費電流が0.1μA以下)となる。
ところで、充電制御信号変換回路4−1,4−2及び放電制御信号変換回路5−1,5−2以降の回路は、低消費電流設計をしてもかなりの電流(1mA程度)が消費される。そこで、端子2bからの起動信号VTによって起動する電源起動回路8及び電源供給回路9−1,9−2を設け、端子2bから起動信号VTが入力されない場合、及び放置時には電源供給回路9−1,9−2からの電圧供給を停止することにより、回路を停止して消費電流を押さえている。このとき、充放電制御電圧検出回路3−1,3−2は、待機モード又は低消費電力モードとなり、前記端子が何れもハイレベルとなるため、充電制御信号変換回路4−1,4−2及び放電制御信号変換回路5−1,5−2の入力段のトランジスタがオフすることで電流が流れないようになっている。而して、消費電流を極めて低い値(3μA程度)に抑えられるため、長期間放置されても過放電による劣化を防ぐことができる。
以下、本実施形態の回路の動作について詳細に述べる。先ず、負荷本体又は充電器が装着されていて、端子2bから起動信号VTが印加されている場合について述べる。ここで、組電池群1の全ての電池セルBAT1〜BAT8の電池電圧が第1の所定値(4.2V)以下の場合は、充放電制御電圧検出回路3−1,3−2からそれぞれ出力される充電制御信号は何れもローレベルである。このため、充電制御信号変換回路4−1,4−2においては、MOSトランジスタQ1、トランジスタQ2がオンし、トランジスタQ3,Q4がオフとなるので、充電制御信号変換回路4−1,4−2から出力される信号は何れもローレベルとなる。したがって、充電制御信号論理和回路6のトランジスタQ9はオフとなり、充電制御信号遅延回路14には起動信号VT(例えば、5V)が入力され、充電制御信号遅延回路14で遅延された起動信号VTが端子2gに入力される。
組電池群1の各電池セルBAT1〜BAT8の少なくとも何れか1つの電池電圧が第1の所定値(4.2V)を超えた場合、電池セルBAT1〜BAT4であれば充放電制御電圧検出回路3−1の充電制御信号が、電池セルBAT5〜BAT8であれば充放電制御電圧検出回路3−2の充電制御信号がハイレベルとなる。充電制御信号がハイレベルになると、充電制御信号変換回路4−1,4−2においては、MOSトランジスタQ1、トランジスタQ2がオフし、トランジスタQ3,Q4がオンとなるので、ハイレベルの充電制御信号が入力された充電制御信号変換回路4−1,4−2から出力される信号はハイレベルとなる。したがって、充電制御信号論理和回路6のトランジスタQ9はオンとなり、充電制御信号遅延回路14にはローレベルの信号が入力され、充電制御信号遅延回路14で遅延されたローレベルの信号が端子2gに入力される。
ここで、充電制御信号の遅延時間について図4を用いて説明する。充電器による充電電流は商用電源の周波数に応じた変動があり、電池セルBAT1〜BAT8の内部抵抗により、電池セルBAT1〜BAT8の電池電圧には電圧リプルが発生する(図4(a),(b)では端子V1における電圧信号を示す)。例えば、充電制御信号の解除遅延時間、即ち充電制御信号遅延回路14に入力されるハイレベルの信号の遅延時間を商用電源の周波数の半周期より長くすると、図4(b)に示すように、充電電流を下げても充電制御信号はハイレベルにならず、充電器においては連続して充電電流を下げていくことになり、電圧信号のリプル上端が充電制御電圧レベル(4.2V)を下回って初めてハイレベルとなり、ハイレベルとなった時点の充電電流によって充電が行われる。このため、充電電流の変化幅が荒くなることで充電効率が悪くなり、充電時間が長くなるという不具合が発生する。また、充電制御信号の検出遅延時間、即ち充電制御信号遅延回路に入力されるローレベルの信号の遅延時間を商用電源の周期よりも短くすると、商用電源のリプルに同期して充電制御信号がハイレベルとローレベルとで交互に切り替えられるので、単発ノイズが発生した場合に誤動作の原因となる。
そこで、遅延特性として充電制御信号の検出遅延時間を商用電源の周波数の周期よりも長くし、充電制御信号の解除遅延時間を商用電源の周波数の半周期より短くした場合を図4(a)に示す。このような遅延特性にした場合、電圧信号のリプル下端が充電制御レベルを商用電源の周波数の周期より長く超えると、端子2gにローレベルの信号が入力される。これを受けて、充電器が充電電流を下げることで電圧信号が低下し(図4(a)における電流制御)、充電制御電圧レベルを下回ると端子2gにハイレベルの信号が入力されて再び電圧信号が上昇する。このようにして、充電電流を徐々に下げながら定電圧充電を効率よく行うことができ、また、単発ノイズによる誤動作を防止することができる。尚、充電制御における遅延特性は、充放電電圧検出回路3−1,3−2のコンデンサC1,C3と充電制御信号遅延回路14の2箇所で設定できる。
次に、組電池群1の全ての電池セルBAT1〜BAT8の電池電圧が第2の所定値(2V)以上の場合は、充放電制御電圧検出回路3−1,3−2の放電制御信号はローレベルである。このため、放電制御信号変換回路5−1,5−2においては、MOSトランジスタQ5、トランジスタQ6がオンし、トランジスタQ7,Q8がオフとなるので、放電制御信号変換回路5−1,5−2から出力される信号は何れもローレベルとなる。したがって、放電制御信号論理和回路7のトランジスタQ10はオフとなり、放電制御信号遅延回路14には起動信号VTが入力され、放電制御信号遅延回路15で遅延された起動信号VTが端子2cに入力される。
その後、負荷本体の駆動が行われ、組電池群1の電池セルBAT1〜BAT8の少なくとも何れか1つの電池電圧が第2の所定値(2.0V)以下となった場合、電池セルBAT1〜BAT4であれば充放電制御電圧検出回路3−1の放電制御信号が、電池セルBAT5〜BAT8であれば充放電制御電圧検出回路3−2の放電制御信号がハイレベルとなる。放電制御信号がハイレベルになると、放電制御信号変換回路5−1,5−2においては、MOSトランジスタQ5、トランジスタQ6がオフし、トランジスタQ7,Q8がオンとなるので、ハイレベルの放電制御信号が入力された放電制御信号変換回路5−1,5−2から出力される信号はハイレベルとなる。したがって、放電制御信号論理和回路7のトランジスタQ10はオンとなり、放電制御信号遅延回路15にはローレベルの信号が入力され、放電制御信号遅延回路15で遅延されたローレベルの信号が端子2cに入力される。尚、負荷本体がパルス駆動時に発生するノイズによる誤動作防止が必要となるため、放電制御信号の遅延特性は、検出遅延時間(約1秒)を解除遅延時間よりも長くするのが効果的である。
次に、組電池群1の全ての電池セルBAT1〜BAT8が第3の所定値(4.5V)以下の場合は、過充電電圧検出回路11−1,11−2の過充電制御信号はローレベルである。このため、過充電電圧検出回路11−1からの過充電制御信号を受けて電圧変換回路13のMOSトランジスタQ14,Q15はオフとなり、組電池1−1の電池電圧を駆動回路12に出力する。一方、過充電電圧検出回路11−2については、組電池1−1の電池電圧を駆動回路12に出力する。この場合、駆動回路12のMOSトランジスタQ13−1,Q13−2は何れもオフのままであり、保護素子10は溶断することがないので、端子S3,S2を介して充電電流が組電池群1に供給される。
その後、充電等により電池セルBAT1〜BAT8の電池電圧が上昇し、電池セルBAT1〜4の少なくとも何れか1つの電池電圧が第3の所定値(4.5V)を超えると、過充電電圧検出回路11−1の過充電制御信号はハイレベルとなる。このため、電圧変換回路13のMOSトランジスタQ14,Q15はオンとなり、組電池群1の電池電圧を駆動回路12に出力する。この電圧変換回路13の出力を受けて駆動回路12のMOSトランジスタQ13−1がオンし、保護素子10のヒータ抵抗に組電池1−2の電池電圧が印加され、この発熱により保護素子10が溶断されることで端子S3からの電源供給が遮断され、過充電を防止する。同様に、電池セルBAT5〜BAT8の少なくとも何れか1つの電池電圧が第3の所定値(4.5V)を超えると、過充電電圧検出回路11−2の過充電制御信号出力はハイレベルとなって駆動回路12に組電池群1の電池電圧を出力する。この過充電電圧検出回路11−2の出力を受けて駆動回路12のMOSトランジスタQ13−2がオンし、保護素子10のヒータ抵抗に組電池1−2の印加電圧が供給され、この発熱により保護素子10が溶断されることで端子S3からの電源供給が遮断され、過充電を防止する。
ここで、過充電電圧検出回路11−1,11−2の何れが作動した場合においても組電池1−2の電池電圧が保護素子10に印加されるようにしているので、4セル用の汎用の保護素子10を使用することができるとともに、どの電池セルBAT1〜BAT8が過充電電圧を超えた場合でも、安定な動作を実現することができる。
尚、過充電制御信号の遅延特性は、過充電電圧検出回路11−1,11−2のコンデンサC5,C6で設定できるが、速い動作を必要としないため、ノイズや電圧変動による誤動作を防止するため、長めの遅延時間(約1秒以上)が設定されることが望ましい。また、室温の低下或いは電池セルの劣化により電池セルの内部抵抗が上昇して最初の充電電流で第3の所定値(4.5V)を超えた場合でも、遅延時間を前述の充電制御信号の検出遅延時間よりも長く設定することにより、保護素子10が溶断することなく、充電制御が先に働いて充電電流を下げるため、保護素子10を無意味に溶断する誤動作を防ぐことができる。
次に、負荷本体及び充電器が接続されていて起動信号VTが供給されていない場合、或いは本実施形態が負荷本体及び充電器の何れにも装着されずに放置されている場合について述べる。先ず、通常状態(2.0〜4.2V)では、充放電電圧検出回路3−1,3−2の充電制御信号及び放電制御信号は何れもハイレベルとなる。この場合、充電制御信号変換回路4−1,4−2の入力はオープンとなり、電源供給回路9−1,9−2から電源が供給されないため、回路で電流が消費されることもない。充電制御信号論理和回路6も入力がオープンとなり、端子2bからの起動信号VTも供給されないために回路で電流が消費されることはない。充電制御信号遅延回路14等の端子2bからの起動信号VTで駆動される回路においても電流が消費されることはない。また、放電制御信号変換回路5−1,5−2の入力はそれぞれ端子V4,VBの電位となり、MOSトランジスタQ5はオフするとともに、電源供給回路9−1,9−2から電源が供給されないため、回路で電流が消費されることもない。また、過充電電圧検出回路11−1,11−2の過充電制御信号はローレベルとなるため、電圧変換回路13及び駆動回路12のトランジスタはすべてオフであり、回路で電流が消費されることはない。したがって、消費電流としては充放電電圧検出回路3−1,3−2の消費電流(約10μA)、過充電電電圧検出回路11−1,11−2(約1μA)の消費電流のみとなる。また、過放電状態(2.0V以下)では、充放電制御電圧検出回路3−1,3−2が低消費電力モード(0.1μA以下)となり、消費電流はさらに小さくなる。
ところで、本実施形態では、充電制御信号論理和回路6及び放電制御信号論理和回路7、電源供給回路9−1,9−2で電圧変換を行なっているため、これらの回路において組電池1−1,1−2の間で消費電流のバラツキが発生する。そのため、本実施形態では以下の工夫をして、組電池1−1,1−2の間の消費電流のバラツキを解消した。
一例として、充電制御信号について述べると、充電制御信号論理和回路6の抵抗R9−1,R9−2の抵抗値は、トランジスタQ9の駆動を安定させるために同一電流が流れるように設定されている。具体的には、抵抗R9−1には組電池1−1から電圧が供給され、抵抗R9−2には組電池1−1,1−2から電圧が供給されるので、抵抗R9−2の抵抗値は抵抗R9−1の抵抗値の2倍に設定されている。この時、充電制御信号論理和回路6において、組電池1−1は組電池1−2に比べて倍の電流を消費することになる(即ち、組電池1−1はV4/R9−1だけ多く流れる)。
そこで、この差分を組電池1−2で駆動される回路で多めに流すようにする必要がある。例えば、充電制御信号変換回路4−1の抵抗R2(以下、「抵抗R2−1」と呼ぶ)の抵抗値を充電制御信号変換回路4−2の抵抗R2(以下、「抵抗R2−2」と呼ぶ)の抵抗値よりも小さくし、充電制御信号変換回路4−2において消費電流を多く流すようにする。具体的には、充電制御信号変換回路4−1の抵抗R2−1を抵抗R9−1と同じ抵抗値にし、充電制御信号変換回路4−2の抵抗R2−2を充電制御信号変換回路4−1の抵抗R2の抵抗値の半分にすれば、充電制御信号変換回路4−2の消費電流は充電制御信号変換回路4−1に比べて、充電制御信号論理和回路6の抵抗R9−1での消費電流分だけ多く流れ、全体として組電池1−1,1−2の間での消費電流を略等しくすることができる。
具体的には、各抵抗値をR9−1=(R9−2)/2=r、R2−1=2・(R2−2)=rとし、各電池セルBAT1〜BAT8の電池電圧をvとすると、組電池1−1での消費電流は、4v/r+8v/2r+4v/r=12v/rとなり、組電池1−2での消費電流は、8v/2r+4v/(r/2)=12v/rとなるので、組電池1−1,1−2それぞれの消費電流は同じとなる。他の回路についても上記と同様に抵抗値を調整することで組電池1−1,1−2の間の消費電流を略等しくすることができる。
このように、抵抗値のみで電流調整をしたことにより、組電池1−1,1−2の間で他の要因(初期電池容量、電池の容量劣化等)によって電池容量、電圧がばらついた場合でも、容量、電圧の高い組電池では他よりも多くの電流が流れることになり、消費電流のバラツキを少なくするように働かせることができる。尚、ここでは通常状態(2.0〜4.2V)について述べたが、充電制御状態(4.2V以上)についても同様の考え方で消費電流のバラツキを解消することができる(この場合、抵抗R3,R4を調整する。)また、過放電状態(2.0V以下)についても同じ考え方で消費電流のバラツキを解消することができる。
更に、通常状態(2.0〜4.2V)での消費電流に比べて、充電制御状態(4.2V以上)での消費電流(主に充電制御信号変換回路4−1,4−2での消費電流)を大きく、過放電状態(2.0V以下)での消費電流(主に放電制御信号変換回路5−1,5−2での消費電流)を小さくすることにより、組電池の間での電池容量、電圧のバラツキを平準化できる。即ち、充電制御状態に早く到達した組電池は電池の容量電圧が他に比べて大きいため、電流を多く消費するように設定されていると他の組電池と同じように自動的に調整されることになる。また、放電制御状態に早く到達した組電池は、電池の容量電圧が他に比べて小さいため、電流を少なく消費するように設定されていると他の組電池と同じように自動的に調整されることになる。