JP4432831B2 - 御影石面模様を有するアルミニウム素材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、御影石面模様を有するアルミニウム素材およびその製造方法を提供することである。
このような素材をエッチングして再結晶粒を目視できるようにすると、あたかも粗大再結晶粒の素地に微細再結晶粒が分散配置され、しかもそれらの再結晶粒面角度が微小に異なっているため強度の異なる光沢を有するようになり、それらの強度の異なる光沢を有する再結晶粒面が御影石の表面に見られる光沢のある結晶の如くに目視されて、御影石面模様調に認知される。
本発明の第1の実施態様に係る御影石面模様を有するアルミニウム素材の組成を、上記した第2の実施態様に係る組成とすることによって、より高い強度を有する御影石面模様を有するアルミニウム素材とすることができる。
上記した第2の実施態様に係る組成からなる鋳塊を、本発明の第3の実施態様に記載の処理を施すことによって、容易に御影石面模様を有するアルミニウム素材を得ることができる。
また、特定組成のアルミニウム素材であるから一層強度が高く、特定組成のアルミニウムとすることによって容易に御影石面模様を有するアルミニウム素材を得ることができる。従って、天然石の代替物として種々の構造物等に使用することができる効果を有する。
エッチング処理後の再結晶模様は100μmオーダーであるからそのサイズ測定には顕微鏡を用いる。顕微鏡の1視野では再結晶のサイズおよびその占める範囲のばらつきが大きく、その値を素材の代表値とはできない。従って数十視野測定し、その合計面積が150mm2、即ち顕微鏡の1視野を4.97mm2とし、視野数30測定して合計すれば、目視したときと同じ感覚で再結晶模様を判断できるので、測定にあたっては視野数30の合計値で判断するものである。
再結晶の形状は多角形ではあるが、それらを円相当形としても目視では同じ感覚で再結晶模様を判断できるとしたことから、再結晶模様の再結晶粒のサイズは円相当径とする。
再結晶模様の再結晶粒のサイズが円相当径で、4000μm〜400μmである再結晶粒の占める面積が90.0〜99.5%、250μm〜100μmである再結晶粒の占める面積が、10.0〜0.5%としたのは、かかる条件であると再結晶模様が御影石調の面模様に見えるためである。
円相当径で、4000μmを超える再結晶粒が存在すると、その部分は御影石の素地の感覚から外れ違和感を看者に与える。しかし4000μmを超える再結晶粒が存在する箇所が少なければ、本発明条件に合致する前記条件の印象が強く全体で御影石調の面模様の感覚を与える。そのような印象を与えるには4000μmを超える再結晶粒数は100cm2で3個以下であることが好ましい。
円相当径で、400μm未満の再結晶粒は本発明における微細再結晶粒、即ち250μm〜100μmの範囲の再結晶粒に近くなり、その数が多くなれば御影石の素地に見える微細結晶粒の特徴を薄めるが、しかし400μm未満の再結晶粒の合計面積が少なければ、本発明に合致する前記条件の微細再結晶粒の印象が強く全体で御影石調の面模様の感覚を与える。そのような印象を与えるには400μm未満〜250μmを超える再結晶粒の合計面積は1%以下、好ましくは0.5%以下の範囲であることが望ましい。
円相当径で、4000μm〜400μmである再結晶粒の占める面積が90.0%未満では御影石の素地の印象が乏しくなり好ましくない。またその占める面積が99.5%を超えると御影石の素地に見える前記微細結晶粒の占める面積が少なく本発明の特徴がなくなるので好ましくない。
円相当径で、250μm〜100μmである微細再結晶粒の占める面積が10.0%を超えると御影石の素地に見える微細再結晶粒の印象が強く御影石調面模様に看えないので好ましくない。またその占める面積が0.5%未満では御影石素地中の微細再結晶粒の印象が乏しくなり好ましくない。
エッチング処理は再結晶粒が発現すれば限定するものではないが、例えば10%硝酸に30秒間浸漬させ、表面の酸化皮膜を除去した後、温度50℃で濃度8%の水酸化ナトリウムを用い、2分間保持してエッチングし、その後水洗し、10%硝酸でデスマットし、水洗する方法、あるいはタッカー氏液(塩酸:硝酸:ふっ酸=3:1:1)を用い、室温で20秒間保持してエッチングし、水洗する方法等で御影石面模様の再結晶粒を鮮明に発現できる。このようなエッチング処理は、素材に処理して御影石面模様の再結晶粒を発現した後製品形状に加工してもいいし、また素材を製品形状に加工した後エッチング処理して御影石面模様の再結晶粒を発現してもよい。
次に組成について説明する。
Mg:2.0〜5.0wt%含有
Mgは素材に熱処理せずに塑性変形で機械的強度を付与できるので添加するが、その含有量が下限値未満では強度不足となって用途が制約され、上限値を超えると成形性が低下する。Mgを含有させるには、Mg地金やAl-Mg母合金を使用することができる。
Ti:0.005〜0.15wt%、またはTi:0.005〜0.15wt%およびB:0.0005〜0.05wt%含有
Ti、またはTiおよびBの含有は、鋳造時の溶湯中にAl-TiまたはAl-Ti-B化合物を発生させ、鋳造組織を微細化して鋳造割れを防止させる。この目的であればこれらの元素の含有量はTi単独の場合は0.005〜0.15wt%、TiおよびBの複合含有の場合はTi:0.005〜0.15wt%、B:0.0005〜0.05wt%で効果が得られる。Ti、またはTiおよびBの含有量は、返り材の選択、およびTi金属、Al-Ti母合金またはAl-Ti-B母合金の1種または2種以上を適宜選択添加して調整することができる。
不可避的不純物
不可避的不純物とは前記元素、即ちMg、TiおよびB以外の元素を指し、通常の溶製方法では地金、返り材、母合金および治工具等から混入してしまう避け難いものを言う。その含有量の上限は第2の実施態様の素材では御影石面模様に影響のない範囲で許容される量である。ここで特にMnおよびCrは通常の溶製方法では混入され易く、そのためにJIS5000系のMgが2wt%以上を規格とするAl-Mg系合金では、不純物上限値の低いものでもMn:0.10wt%以下、Cr:0.10wt%以下としている。これはMnおよびCrの適量の含有は、微細再結晶が得られ易い効果があるために含有していても不都合がないからである。しかし、MnおよびCrが適量を含め多量に含有されると、再結晶開始温度が高温側にずれ微細再結晶化し易く、本発明においてはこの微細再結晶が得られ易い効果が御影石面模様の複雑な再結晶粒分布を得難くする。従って、第2の実施態様におけるMnおよびCrはMn+Cr:0.02wt%以下に規制することが肝要である。好ましくはMn+Cr:0.01wt%以下、更に好ましくはMn+Cr:0.005wt%以下に規制する。その他の不純物元素としてSi、FeおよびCuは各0.1wt%以下、Znは0.25wt%以下、Ni、VおよびGaは各0.05wt%以下、およびその他の不純物は各0.05wt%以下で合計0.15wt%以下であれば第2の実施態様の素材に第1の実施態様に係る御影石面模様を呈する再結晶粒分布の発現に影響が認められないので許容できる。なお、高Mg含有合金の溶製時に、Mgの酸化防止として、Beを1〜50ppm程度添加することもできる。
次に製造方法について説明する。
地金、返り材、母合金等を用い、上記した第2の実施態様に係る組成からなるアルミニウム溶湯を脱ガス、脱滓、鎮静し溶製する。次いで該溶湯をDC法またはCC法で板用スラブに鋳造する。
次いで元素の偏析等を無くすために該スラブを均質化処理する。処理温度は公知の温度でよく、例えば低Mg含有量(2〜約3wt%)の場合は450〜500℃×0.5時間以上の保持をする。高Mg含有量(約3〜5wt%)の場合は410〜450℃×0.5時間以上の保持で一段目の熱処理を施し、次いで450〜500℃×0.5時間以上の保持で二段目の熱処理を施すとよい。これは高Mg含有量の場合に急に高温に加熱保持すると、Mgの高密度偏析個所で融解し品質を低下させる虞があるからで、低温で一旦Mgの高密度偏析を解消し、次いで高温過熱保持して均質化処理するものである。各処理の保持時間は0.5時間必要であるが1〜4時間程度でよく、上限は24時間程度でこの時間を超えても均質化の顕著な効果は飽和する。
均質化処理の終了した前記スラブは次いで熱延して所望の厚さまで圧延する。熱延は前記均質化処理の終了後に引き続いて圧延してもよく、一旦冷却し再加熱して熱延を開始してもよい。熱延開始温度は前記均質化処理の終了温度でもよく、400〜450℃の温度に調節してもよい。熱延終了温度は380℃以下とする。380℃を超える温度で終了すると熱延終了後の熱延板の再結晶粒サイズが大きく、後述する最終工程での結晶粒径が4000μmを超えるものが生じるため好ましくない。下限温度は圧延が容易にできればよく290℃程度である。熱延の終了板厚さは爾後の冷延時圧延率を考慮して決めればよく、10〜6mm程度である。
前記熱延板の冷間圧延率はその後の最終焼鈍で御影石面模様を発現するために肝要である。即ち、冷間圧延率は30%〜90%とし、更に340〜450℃の温度で1時間以上保持して中間焼鈍する。その後の最終焼鈍条件とも関連するが、冷間圧延率が下限値未満では、再結晶時の結晶粒を微細にする歪エネルギーが不足し、その後の最終焼鈍で再結晶粒サイズが大きくなって御影石面模様を発現できない。中間焼鈍の加熱温度が下限値未満でかつ1時間未満の保持時間では十分な再結晶化ができず、その後の歪導入量の管理がし難く、御影石面模様の発現管理ができない。中間焼鈍の加熱温度が上限値を超えると微細に生成した再結晶が焼鈍中に成長し粗大な結晶となって御影石面模様の発現管理ができない。中間焼鈍の保持時間の上限は24時間程度である。
中間焼鈍の終了した板は2〜5%の歪を導入する。歪の導入手段は圧延、引張り、プレス等の公知の加工手段でよい。2〜5%の歪を導入された板は次いで390〜500℃の温度で1〜5時間保持して最終焼鈍する。歪が下限値未満であると歪導入手段にばらつきがあって板全体に板全体に均一に再結晶駆動力を付与できず、不均一な一次再結晶粒、不均一な二次再結晶外観となる。一方歪みが上限値を超えると再結晶駆動力が大きくなり、一次再結晶粒が小さくなり過ぎ、その後の二次再結晶粒にも影響を与えてしまい好ましくない。また保持時間が1時間未満であると再結晶するものの成長が不足し粗大化せず、一方保持時間が5時間を超えると成長大となって粗大化しすぎて好ましくない。この最終焼鈍処理は前工程の中間焼鈍処理で発現した100μm程度の微細再結晶粒を二次再結晶させて粗大化させ、一部は4000μm〜400μmに成長させてその占める面積を第1の実施態様の如くにし、一部は成長が遅れることを利用して250μm〜100μm径の微細な再結晶粒の占める面積を第1の実施態様の如くにし、全体として意匠的に御影石調の面模様とする処理である。
表1中、再結晶粒の発現した前記アルミニウム素材を観察し、御影石面模様調に認知できたものを意匠性あり、認知できないものを意匠性なしと表記した。
熱延の終了板厚さは8mmとした。処理条件を表3に示す。該試料を、タッカー氏液を用いてエッチングし、再結晶粒を発現させた。光顕微鏡(1視野4.97mm2)を用いて再結晶粒サイズとその占める割合を測定し、視野の合計から計算される各種面積の平均値を表4に示す。
表4中、再結晶粒の発現した前記アルミニウム素材を観察し、御影石面模様調に認知できたものを意匠性あり、認知できないものを意匠性なしと表記した。
ここで前記表4の試料番号4-2で得られた試料のマクロ写真を図1に、また顕微鏡写真を図2に示す。符号1は粒径4000〜400μmに相当する結晶粒で光の入射角度の相違で白色〜黒色に観察でき、符号2は粒径250〜100μmに相当する微細結晶粒であって、これらの存在が相俟って御影石面模様調に認知できるものである。
2 粒径250〜100μmに相当する微細結晶粒
Claims (2)
- Mgを2.0〜5.0 wt%含有し、Tiを0.005〜0.15 wt%含有するか、或いはTiを0.005〜0.15 wt%及びBを0.0005〜0.05 wt%含有し、且つ残部を不可避的不純物を含有するAlとし、更に前記不可避的不純物中のMn及びCrを0.02 wt%以下に制限し、且つ、
円相当径で4000μm〜400μmである再結晶粒の占める面積が90.0〜99.5%であり、円相当径で250μm〜100μmである再結晶粒の占める面積が10.0〜0.5%であることを特徴とする御影石面模様を有するアルミニウム素材。 - Mgを2.0〜5.0 wt%含有し、Tiを0.005〜0.15 wt%含有するか、或いはTiを0.005〜0.15 wt%及びBを0.0005〜0.05 wt%含有し、且つ残部を不可避的不純物を含有するAlとし、更に前記不可避的不純物中のMn及びCrを0.02 wt%以下に制限した組成からなる鋳塊を均質化処理し、熱延終了温度を380℃以下とし、次いで圧下率30%以上で冷延し、更に340〜450℃の温度で1時間以上保持して中間焼鈍した後2〜5%の歪を導入し、しかる後390〜500℃の温度で1〜5時間保持して最終焼鈍することを特徴とする請求項1記載の御影石面模様を有するアルミニウム素材の製造方法。
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