本発明は、スロットアンテナに係り、特に、給電素子と、導体に所望受信電波の略半波長の長さを有するように開けられたスロットと、からなるスロットアンテナに関する。
例えば車両の金属ボデーと窓ガラス上に設けた導体との間に形成されるスロットアンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。このスロットアンテナにおいて、スロットは、所望受信電波の波長に応じた長さに開けられている。また、給電線は、スロットを形成するボデーと導体とに直接接続されている。
特開平7−235821号公報
しかし、このようにスロットを形成する部位に直接に給電が行われる構成では、アンテナのインピーダンス調整を行う手段がスロット形状の変更や給電位置の変更に限定され、しかもインピーダンスのレジスタンス(実部)とリアクタンス(虚部)とをそれぞれ独立して調整できないため、インピーダンス整合が極めて困難である。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、容易なインピーダンス調整を可能としたスロットアンテナを提供することを目的とする。
上記の目的は、給電素子と、導体に所望受信電波の略半波長の長さを有するように開けられたスロットと、からなるスロットアンテナであって、前記給電素子は、前記スロットの開口部内に配設された該スロットの長手方向に略平行に延びる第1の導体と、該第1の導体に略直角に接続する第2の導体と、前記スロットの長手方向に略平行にかつ前記第2の導体に略直角に延びる第3の導体と、から構成されると共に、給電が、前記第2の導体に設けられた間隙、前記第1の導体と前記第2の導体との接続部近傍に設けられた間隙、又は前記第3の導体と前記第2の導体との接続部近傍に設けられた間隙により行われるスロットアンテナにより達成される。
この態様において、スロットの開口部内に設けられる給電素子の、スロット長手方向の長さやスロットとの隙間が適当に調整されると、インピーダンスのレジスタンス特性及びリアクタンス特性がそれぞれ独立に変化する。従って、スロット自体の形状を変えることなく、インピーダンス特性を容易に調整することが可能となる。
この場合、給電線は、内部導体が前記第2の導体側に接続され、かつ、外部導体が前記第3の導体側に接続される構成となっていればよい。
また、前記第1の導体及び前記第3の導体は共に、所望受信電波の略半波長以下の長さを有することとすればよい。
また、前記第2の導体及び前記第3の導体は共に、前記スロットの開口部内に配設されていることとしてもよい。
また、前記第2の導体の、給電点から前記第1の導体との接続点までの長さと、前記第1の導体の、前記第2の導体との接続点から長手方向端部までの長さとの和が、所望受信電波の略1/4波長であることとすればよい。
尚、前記スロットは、合わせガラスに挟まれた導体に開けられていることとしてもよい。
また、この場合、前記第2の導体の一部が前記スロットの開口部外にまで延び、前記第3の導体が前記スロットの開口部外に設けられ、給電が、前記合わせガラスの端部において間隙を設けて行われる形にすることもできる。
更に、前記第3の導体は、給電点から長手方向端部までの長さが両端それぞれについて所望受信電波の略1/4波長となるように形成されていることとすればよい。
本発明によれば、スロット自体の形状を変えることなく、アンテナのインピーダンス特性を容易に調整することができる。
以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施例であるスロットアンテナ20が設けられた車両用ガラス22の概略外観図を示す。また、図2は、本実施例のスロットアンテナ20の具体的構成図を示す。尚、車両の有するガラスは一般的に湾曲や傾斜が施されており、そのガラスに設けられるアンテナパターン等は歪んでいるものであるが、図に示す車両用ガラス22やそのアンテナパターン等は便宜的に湾曲や傾斜,歪みのないものとしている。
本実施例の車両用ガラス22は、強化ガラスや合わせガラス等の電波を透過する絶縁体としての車両のウィンドウガラスであって、特に車両のボディ後部に開口するリアウィンドウに嵌装されたリアウィンドウガラスである。この車両用ガラス22には、そのガラス22の曇りを除去するためのデフォッガ24が配設されている。デフォッガ24は、車両用ガラス22において水平方向に延びる複数の熱線26が車体上下方向に略等間隔に並んで設けられている。熱線26には、ガラス22の車体左右方向端部に設けられたデフォッガ電極28が接続されており、このデフォッガ電極28から直流電流が供給される。デフォッガ24は、デフォッガ電極28からの直流電流が熱線26に流れることにより発熱して、車両用ガラス22の曇りを除去する。
また、車両用ガラス22には、車載無線機(受信機)の備えるスロットアンテナ20が設けられている。スロットアンテナ20は、車両において受信しようとする受信電波(所望受信電波)の周波数帯域(例えば、470MHz〜770MHzの帯域)に適したアンテナである。スロットアンテナ20は、導体であるデフォッガ24の熱線26やデフォッガ電極28により長方形型に形成されるその導体に開けられたスロット30を有している。スロット30は、例えば図1に示す如く車体上下方向を長手方向としており、所望受信電波の略半波長λg/2(但し、λgは、ガラスの影響を含めた波長である。)の長手方向長さ(スロット長)Lを有している。
スロットアンテナ20は、また、給電点32で給電線である同軸ケーブルに接続する給電素子34を有している。給電素子34は、ガラス表面上のスロット30の開口部内においてH字型に形成されており、その開口部内の長手方向略中央に配置されている。すなわち、給電素子34は、スロット30の開口部内に配設された、第1の導体34aと、第2の導体34bと、第3の導体34cと、により構成されている。第1の導体34aはスロット30の長手方向に略平行に延び、第2の導体34bは第1の導体34aにその上下方向中央近傍から略直角に接続して延び、第3の導体34cはスロット30の長手方向に略平行にかつ第2の導体34bに略直角に延びている。
給電素子34は、スロット開口部内の長手方向略中央において、第3の導体34cがスロット30周縁の導体(具体的には、デフォッガ電極28や熱線26)から水平方向に距離aだけ離れ、第1の導体34aがスロット30の周縁の導体から水平方向に距離cだけ離れ、かつ、第1の導体34aと第3の導体34cとの間の距離すなわち第2の導体34bの水平方向長さが距離bとなるように配置されている。また、第1の導体34a及び第3の導体34cは共に、長手方向において所望受信電波の略半波長以下の長さdを有している。第3の導体34cは、長手方向と直交する方向(短手方向)において幅eを有している。更に、第1の導体34aは、短手方向において幅fを有している。
図3は、本実施例のスロットアンテナ20の給電方法を説明するための図を示す。尚、図3(A)及び(B)にはそれぞれ、その給電方法の一例を示す。本実施例のスロットアンテナ20において、スロット30への給電は、第3の導体34cと第2の導体34bとの接続部近傍に間隙を設けて行われる。尚、この給電は、第2の導体34bに間隙を設けて又は第1の導体34aと第2の導体34bとの接続部近傍に間隙を設けて行うこととしてもよい。
上記した給電点32で給電素子34に接続される同軸ケーブル36は、その軸芯に存在する内部導体36aと、その内部導体36aと同軸心でありその内部導体36aを絶縁体を介して覆う外部導体36bと、を有している。この同軸ケーブル36は、図3(A)に示す如く、その内部導体36aが第2の導体34bの第3の導体34c側の端部に接続されかつその外部導体36bが第3の導体34cに接続された構成、又は、図3(B)に示す如く、その内部導体36aが第2の導体34bに連通する第3の導体34cのその連通部近傍に接続されかつその外部導体36bが第2の導体34bに連通しない第3の導体34cに接続された構成となっている。
給電素子34は、第2の導体34bの、同軸ケーブル36との接続点である給電点32から第1の導体34aとの接続点までの長さ(尚、これは、第2の導体34bの水平方向長さbに略一致する。)と、第1の導体34aの、第2の導体34bとの接続点から長手方向端部までの長さ(尚、これは、第1の導体34aの長手方向長さdの略半分である。)との和が所望受信電波の1/4波長(=λg/4)に略等しくなるように構成されている。
ところで、スロットアンテナ20を機能させるためのスロット30への給電を、そのスロット30を形成するデフォッガ24の熱線26やデフォッガ電極28に直接に行う構成では、車両用ガラス22の曇り除去のためデフォッガ24の電源回路から電極28を通じて熱線26へ直流電流(デフォッガ電流)が流通される際、スロットアンテナ20の給電線へもそのデフォッガ電流が流れ込む。ガラス曇り除去のための直流電流は比較的大きい電流であることが多いため、上記の構成では、ガラス曇り除去時に、スロットアンテナ20の給電線が接続する無線機側に大きなデフォッガ電流が流れることに起因してその無線機を破損させるおそれがある。そこで、スロット30を形成する導体とアンテナ給電線との間にデフォッガ電流の流通を阻止するためのコンデンサを挿入することが考えられる。
しかしながら、上記の如くデフォッガ電流阻止のためのコンデンサを設けると、その分だけスロットアンテナ20のコストアップが招来すると共に、そのコンデンサ挿入による電流経路の迂回や電流位相の進みなどに起因してアンテナ指向性パターンが変化して所望のアンテナ性能が得られなくなってしまう。
これに対して、本実施例においては、スロット30への給電が、そのスロット30を形成するデフォッガ24の熱線26やデフォッガ電極28に対して直接には行われておらず、そのスロット30の開口内に設けられた給電素子34に対して行われる。また、給電素子34が、上記の如くスロット30の開口部内においてH字型に形成されることにより、スロット30を形成するデフォッガ電極28や熱線26などの導体と電磁結合する。
かかる構造によれば、デフォッガ24上に非接触での給電が可能なスロットアンテナ20が設けられる構成においても、給電素子34(具体的には、その第1の導体34a及び第3の導体34c)とスロット30を形成するデフォッガ電極28などの導体との間に形成されるギャップがコンデンサと等価的に機能することで、デフォッガ電極28側から同軸ケーブル36側への直流電流の流通を阻止することができる。従って、本実施例のスロットアンテナ20によれば、デフォッガ電流阻止のためのコンデンサ自体を設けることなく、アンテナ給電線である同軸ケーブル36へのデフォッガ電流の流れ込みを防止することが可能となっており、これにより、無線機の破損等の発生を回避することが可能となる。
また、本実施例のアンテナ構造においては、スロット30の長さLを含む大きさ並びに第1及び第3の導体34a,34cの長手方向長さdが略一定に維持される状況で、給電素子34とスロット30を形成するデフォッガ電極28などの導体との間の水平方向に関するギャップ(寸法:上記した距離a及び距離c)並びに第1の導体34aと第3の導体34cとの間の水平方向に関するギャップ(寸法:上記した距離b)の大きさが変化すると、図4に示す如く、インピーダンス特性のリアクタンス(X)はあまり変化しない一方で、そのレジスタンス(R)が大きく変化する。具体的には、寸法(a+b+c)に対する寸法bの比率(=b/(a+b+c))が大きくなるほど、レジスタンス(R)は大きくなる。この場合には、上記したギャップの寸法a,b,cの比率に応じて、給電素子34に発生する電圧が変化することとなる。従って、本実施例のスロットアンテナ20によれば、上記したギャップの寸法a,b,cの比率を変化させることで、そのインピーダンス特性の特にレジスタンス分を調整することができる。
更に、本実施例のアンテナ構造においては、スロット30の大きさ並びに上記した寸法a,b,cが略一定に維持される状況で、第1及び第3の導体34a,34cの長手方向長さd(或いはその長さdのスロット長Lに対する比率)が変化すると、図5に示す如く、インピーダンス特性のレジスタンス(R)はほとんど変化しない一方で、そのリアクタンス(X)が大きく変化する。具体的には、寸法dが小さいほどリアクタンスが容量型(−X)となり、寸法dが大きいほどリアクタンスが誘導型(+X)となる。従って、本実施例のスロットアンテナ20によれば、上記した第1及び第3の導体34a,34cの長手方向長さdを変化させることで、そのインピーダンス特性の特にリアクタンス分を調整することができる。
このように本実施例のスロットアンテナ20によれば、スロット30の開口内部におけるH字型の給電素子34の水平方向についての位置や幅によりインピーダンス特性のレジスタンスを調整でき、また、スロット30の開口内部におけるH字型の給電素子34の上下方向長さdによりそのリアクタンスを調整できるので、インピーダンス特性のレジスタンスとリアクタンスとをそれぞれ独立して調整することができる。このため、本実施例においては、スロット自体の形状を変えることなく、スロットアンテナ20のインピーダンス特性を容易に調整してその整合をとることが可能となっている。
尚、上記の第1実施例においては、スロット30を形成するデフォッガ電極28及び熱線26並びにそれらを連結する導体が特許請求の範囲に記載した「導体」に、同軸ケーブル36が特許請求の範囲に記載した「給電線」に、それぞれ相当している。
ところで、上記の第1実施例においては、給電素子34をスロット開口部内の長手方向略中央に配置すると共に、第2の導体34bを第1及び第3の導体34a,34cにその長手方向中央近傍に接続させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、給電素子34の第1及び第3の導体34a,34cのみを図6(A)に示す如く上方へ又は下方へオフセットしたり、逆に第2の導体34bの、第1及び第3の導体34a,34cへの接続位置(すなわち同軸ケーブル36からの給電位置)を図6(B)に示す如く上方へ又は下方へオフセットしたり、また、給電素子34全体をスロット開口部内において図6(C)に示す如く上方へ又は下方へオフセットすることとしてもよい。この場合においても、上記した第1実施例のものと略同様の効果を得ることが可能となる。
また、上記の第1実施例においては、給電素子34の第1及び第3導体34a,34cを直線状に形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その長手方向端部を面内で折り曲げたり或いは図7に示す如く逆方向に折り返したりすることとしてもよい。尚、この構造は、大きさの限られたスロット30の開口部内において第1及び第3の導体34a,34cの長手方向長さdすなわち給電素子34の同軸ケーブル36による給電位置からのアンテナ素子長を伸ばすうえで有効である。
また、上記の第1実施例においては、スロットアンテナ20をデフォッガ24が配設された車両用ガラス22上に設けることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図8に示す如く、特に上記の如きデフォッガ24が設けられないサイドウィンドウガラスやサンルーフガラス等の車両用ガラス100における合わせガラス間に透明の導電膜102を介在させると共に、そのガラス100上に透明導電膜102に開けられたスロット106を形成したスロットアンテナ104を設けることとしてもよい。尚、図8(A)には車両用ガラス100の正面図を、図8(B)には同図(A)の車両用ガラス100を直線III−IIIで切断した際の断面図を、それぞれ示す。この構成において、給電素子34は、車両用ガラス100の表面上にプリント線又は銅や銀の金属箔でパターン形成されることとすればよい。かかる構成においても、上記した第1実施例のものと同様に、スロットアンテナのインピーダンス特性を容易に調整してその整合をとることが可能となる。
図9は、本発明の第2実施例であるスロットアンテナ200が設けられた車両用ガラス202の概略外観図を示す。尚、図9(A)には車両用ガラス202の正面図を、図9(B)には同図(A)の車両用ガラス202を直線IV−IVで切断した際の断面図を、それぞれ示す。本実施例では、上記した第1実施例で用いた構成と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
本実施例の車両用ガラス202は、強化ガラスや合わせガラス等の電波を透過する絶縁体としての、車両のサイドウィンドウやリアウィンドウ,サンルーフ等に嵌装されたウィンドウガラスである。車両用ガラス202は合わせガラスであり、その合わせガラス間には導体としての透明の導電膜204が介在されている。
車両用ガラス202には、車載無線機(受信機)の備えるスロットアンテナ200が設けられている。スロットアンテナ200は、所望受信電波の周波数帯域に適したアンテナである。スロットアンテナ200は、上記した導電膜204に長方形型に開けられたスロット206を有している。スロット206は、図9に示す如く車体上下方向を長手方向としており、所望受信電波の略半波長λg/2のスロット長Lを有している。
スロットアンテナ200は、また、給電点32で給電線である同軸ケーブル36が接続する給電素子210を有している。給電素子210は、ガラス表面上においてプリント線又は銅や銀の金属箔でH字型にパターン形成されている。すなわち、給電素子210は、第1の導体210aと第2の導体210bと第3の導体210cとにより構成されている。第1の導体210aは、スロット206の長手方向に略平行に延び、スロット206の開口部内において長手方向略中央に配設されている。第2の導体210bは、第1の導体210aにその長手方向中央近傍から略直角に接続して延び、その一部がスロット206の開口部内に配設される一方で残りの部分がスロット206の開口部外にまで延びて配設される。また、第3の導体210cは、スロット206の長手方向に略平行にかつ第2の導体210bに略直角に延び、その全体がスロット206の開口部外における車両用ガラス202の端部に配設されている。
給電素子210の第1の導体210aは、スロット開口部内の長手方向略中央においてスロット206周縁の導電膜204内辺から水平方向に距離g及び距離hだけ離れるように配置されている。この場合、第2の導体210bは、そのスロット開口部内の長さがその水平方向距離gと等しくなる。第1の導体210aは、長手方向において所望受信電波の略半波長以下の長さiを有している。すなわち、給電素子210は、スロット206の開口部内にT字型に形成されることとなる。また、第3の導体210cは、長手方向において所望受信電波の略半波長と略等しい長さを有している。
本実施例のスロットアンテナ200において、スロット206への給電は、スロット206の開口部外におけるガラス端部において、第2の導体210b或いは第3の導体210c、又は、第2の導体210bと第3の導体210cとの接続部近傍に間隙を設けて行われる。同軸ケーブル36は、その内部導体36aが第2の導体210bの第3の導体210c側の端部に接続されかつその外部導体36bが第3の導体210cに接続された構成、又は、その内部導体36aが第2の導体210bに連通する第3の導体210cのその連通部近傍に接続されかつその外部導体36bが第2の導体210bに連通しない第3の導体210cに接続された構成となっている。
第3の導体210cは、同軸ケーブル36による給電点32からその長手方向端部までの長さが両端それぞれについて所望受信電波の1/4波長(=λg/4)と略等しくなるように形成されている。また、給電素子210は、第2の導体210bのスロット開口部内の長さgと、第1の導体210aの、第2の導体210bとの接続点から長手方向端部までの長さ(=i/2)との和が所望受信電波の1/4波長に略等しくなるように構成されている。
このような本実施例のアンテナ構造においては、スロット206の長さLを含む大きさ並びに第1の導体210aとスロット206周縁(開口部内と開口部外との境界)との水平方向に関するギャップ(寸法:上記した距離g及び距離h)が略一定に維持される状況で、その第1の導体210aの長手方向長さi(或いはその長さiのスロット長Lに対する比率)が変化すると、図10に示す如く、インピーダンス特性のレジスタンス(R)はほとんど変化しない一方で、そのリアクタンス(X)が大きく変化する。具体的には、寸法iが小さいほどリアクタンスが容量型となり、寸法iが大きいほどリアクタンスが誘導型となる。従って、本実施例のスロットアンテナ200によれば、上記した第1の導体210aの長手方向長さiを変化させることで、そのインピーダンス特性の特にリアクタンス分を調整することができる。
また、スロット206の長さLを含む大きさ並びに第1の導体210aの長手方向長さiが略一定に維持される状況で、第1の導体210aとスロット206周縁(開口部内と開口部外との境界)との水平方向に関するギャップ(寸法g又は寸法h)の大きさが変化すると、図11に示す如く、インピーダンス特性のレジスタンス(R)及びリアクタンス(X)の双方が大きく変化する。一方、スロット206の長さLを含む大きさが略一定に維持される状況で、第2の導体210bのスロット開口部内の長さgと、第1の導体210aの、第2の導体210bとの接続点から長手方向端部までの長さ(=i/2)との和(g+i/2)は一定に維持されながら、それらの長さg及び長さiの双方が変化すると、図12に示す如く、インピーダンス特性のリアクタンス(X)の変化は小さい一方で、そのレジスタンス(R)は大きく変化することとなる。具体的には、長さgが大きくなり長さiが小さくなるほど、レジスタンス(R)は大きくなる。この場合には、第2の導体210bのスロット開口部内の長さgと、第1の導体210aの、第2の導体210bとの接続点から長手方向端部までの長さ(=i/2)との和が同一であっても、その長さgと長さiとの関係に応じて、給電素子210に発生する電圧が変化することとなる。
従って、本実施例の如くスロット206の開口部内にT字型の給電素子210を有するスロットアンテナ200においては、まず、第2の導体210bのスロット開口部内の長さgによりインピーダンス特性のレジスタンスを所望の値に設定し、その後に、第1の導体210aの長手方向長さiによりそのリアクタンスを調整することとすれば、それらのレジスタンス及びリアクタンスを所望の値に調整することができる。この点、本実施例によれば、上記した第1実施例と同様に、スロット自体の形状を変えることなく、スロットアンテナ200のインピーダンス特性を容易に調整してその整合をとることが可能となっている。
ところで、仮にスロットへの給電が上記した第1実施例の如くスロット開口部内に設けられた給電素子を通じて行われるものとすると、そのスロット開口部の位置にまで同軸ケーブル36を配線する必要があり、その結果、外観上の見栄えを損い或いは運転者の視野を狭める不都合が生じ得る。これに対して、本実施例のスロットアンテナ200においては、スロット206への給電が、スロット206の開口部外に設けられた給電素子210を通じて行われ、かつ、車両用ガラス202の端部において行われる。この点、同軸ケーブル36をスロット開口部の位置にまで配線する必要はなく、上記した不都合が生ずるのを回避させることが可能となっている。
また、本実施例のスロットアンテナ200においては、スロット開口部外に、給電素子210への同軸ケーブル36による給電点32から所望受信電波の略1/4波長の長さを有する第3の導体210cによるパターンが形成されている。すなわち、第3の導体210cの開放端から所望受信電波の略1/4波長離れた位置に給電点32が設けられている。かかる構造においては、所望受信電波に対して、図13に示す如く、第3の導体210cの開放端に電流がほとんど流れずにインピーダンスが大きくなる一方、給電点32近傍には大きな電流が流れてインピーダンスがゼロに近くなる。従って、本実施例によれば、給電点32位置で実際には給電素子210と導電膜204とが接続されていなくても、両者が短絡しているすなわち両者間の接続が確保されているのと同等の効果を得ることが可能となっている。
更に、本実施例のスロットアンテナ200においては、給電素子210への同軸ケーブル36による給電点32とスロット開口部内におけるT字型の給電素子210との間のスロット開口部外に、導電膜204と第2の導体210bとの間でマイクロストリップ線路が構成される。このマイクロストリップ線路の特性インピーダンスは、図14に示す如く、車両用ガラス202の誘電率εr及び厚さh並びにその線路幅(すなわち第2の導体210bの幅)W(厳密には更に、線路厚さtも含む。)に応じて決定される。従って、車両用ガラス202の誘電率εr及び厚さhが略一定に維持されるものとすると、マイクロストリップ線路の線路幅Wによってその特性インピーダンスを決定することが可能である。一般に、線路の特性インピーダンスは、線路幅Wが大きくなるほど低くなり、線路幅が小さくなると高くなる。従って、この点を考慮して線路幅Wを設定することとすれば、マイクロストリップ線路の特性インピーダンスを所望のものに合致させることが可能となっている。
尚、上記の第2実施例においては、車両用ガラス202としての合わせガラス間に挟まれた導電膜204が特許請求の範囲に記載した「合わせガラスに挟まれた導体」に相当している。
ところで、上記の第2実施例においては、給電素子210の第1の導体210aをスロット開口部内の長手方向略中央に配置すると共に、第2の導体210bを第1の導体210aにその長手方向中央近傍から接続させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の導体210aのみを上方や下方へオフセットしたり、逆に第2の導体210bの、第1の導体210aへの接続位置を上方や下方へオフセットしたり、また、給電素子210全体をスロット開口部内において上方や下方へオフセットすることとしてもよい。この場合においても、上記した第2実施例のものと略同様の効果を得ることが可能となる。
また、上記の第2実施例においても、給電素子210の第1の導体210aの長手方向端部を直線状に形成するのではなく、面内で折り曲げたり或いは折り返したりすることとしてもよい。
本発明の第1実施例であるスロットアンテナが設けられた車両用ガラスの概略外観図である。
本実施例のスロットアンテナの具体的構成図である。
本実施例のスロットアンテナの給電方法を説明するための図である。
本実施例のスロットアンテナにおいてスロット開口部内における給電素子の水平方向についての位置や長さを変化させた場合のインピーダンス特性の一例を表した図である。
本実施例のスロットアンテナにおいてスロット開口部内における給電素子の長手方向寸法を変化させた場合のインピーダンス特性の一例を表した図である。
本発明の変形例であるスロットアンテナの具体的構成図である。
本発明の変形例であるスロットアンテナの具体的構成図である。
本発明の変形例であるスロットアンテナが設けられた車両用ガラスの概略外観図である。
本発明の第2実施例であるスロットアンテナが設けられた車両用ガラスの概略外観図である。
本実施例のスロットアンテナにおいてスロット開口部内における給電素子の長手方向寸法を変化させた場合のインピーダンス特性を表した図である。
本実施例のスロットアンテナにおいてスロット開口部内における給電素子の水平方向についての位置や長さを変化させた場合のインピーダンス特性を表した図である。
本実施例のスロットアンテナにおいてスロット開口部内における給電素子の全長を一定に維持しながらその長手方向成分及びその長手方向に垂直な成分についての長さを共に変化させた場合のインピーダンス特性を表した図である。
本実施例のスロットアンテナの機能を説明するための図である。
本実施例のスロットアンテナにおいて形成されるマイクロストリップ線路の特性インピーダンスを調整する手法を説明するための図である。
符号の説明
20,200 スロットアンテナ
22,202 車両用ガラス
30,206 スロット
32 給電点
34,210 給電素子
34a,210a 第1の導体
34b,210b 第2の導体
34c,210c 第3の導体
36 同軸ケーブル
36a 内部導体
36b 外部導体
204 導電膜