図1ないし図12は、本発明の実施例1に係わる図である。
図1は本発明のアポダイゼイションフィルタを内蔵した光量調節装置100の要部分解斜視図である。同図において、111は全域に渡って遮光性を有する絞り羽根で、その下面と上面には被駆動用のピン112および113が植設される。絞り羽根111は同一形状のものが6枚用いられ、絞り開口が形成される。なお、絞り羽根111の数が多いほど、絞り込み時の開口形状が円形に近く、ボケ像の自然さと多角形開口の頂点部による回折現象が緩和されるが、製造コストも上昇する。したがって、本方式の絞り機構では、絞り羽根の枚数を5枚ないし9枚の間にするのが好適である。本実施例では図示のごとく6枚の絞り羽根を用い、大きさ、光学性能、及び製造コストの最適化を図っている。
121は絞り羽根111を保持する地板で、平面状をなす底面の中央には、絞り開放時の光束の最大径を規定する開口部121cが設けられる。そして該開口部121cの周囲には6個のカム溝121aが設けられ、前記絞り羽根111のピン112が嵌合し、摺接移動可能となっている。この6個のカム溝121aは、開口部121cを中心として60度間隔で配置された同一形状の溝となっている。
131は風車と呼ばれる駆動部材で、中央の開口部131cの周囲には羽根駆動用の6個の穴131aが等間隔で設けられ、該穴131aには前記絞り羽根111のピン113が回転可能に嵌合している。そこで風車131が反時計方向に回動すると、前記6枚の絞り羽根111は上面の被駆動ピン113によって駆動されるが、その際に下面側の被駆動ピン112が前記カム溝121aに規制されて摺動するため、絞り羽根111は開放状態から最小絞り値まで絞り込まれる。風車131が時計方向に反転すると、絞り羽根111は最小絞り値から開放状態に復帰する。また、風車131の上面には、風車の初期位置を検出するための指標132と、被駆動用のギヤ133が設けられる。
141は仕切り板で、前記地板121との間に所定の空間を形成し、該空間内に前記絞り羽根111と前記風車131を収容する。仕切り板141の中央には光束通過用の開口部141cが設けられ、その隣りには後述するアポダイゼイションフィルタの回転支持軸142が植設される。更に前記風車の指標132の有無を検出するための位相検出用窓141b、後述するピニオンギヤの逃げ穴141eが設けられる。
151はアポダイゼイションフィルタで、厚さ0.1mm程度の透明樹脂フィルム、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、インクジェット印刷によって後述するアポダイゼイションパターン部(フィルタ有効部)151aが形成されるとともに、端部には回動支持用の軸受穴151bと、被駆動用の長穴151cが設けられる。そして前記軸受穴が前記仕切り板上の回転支持軸142に嵌合し、フィルタ151は回動可能に軸支される。フィルタ有効部151aの透過率分布、すなわち光学濃度パターンは後述する。
161はカバー板で、前記仕切り板141との間に所定の空間を形成し、該空間内に前記アポダイゼイションフィルタ151が収容される。カバー板161の中央には光束通過用の開口部161cが設けられ、更に前記風車の指標132の有無を検出するための検出用窓161b、後述する駆動レバーの逃げ穴161fが設けられる。
171は前記風車131を駆動するステップモータで、ピニオンギヤ171aは前記穴161e,141eを貫通し、ギヤ171aの先端部(下部)は前記風車131に設けられたギヤ133にかみ合う。172は投光素子と受光素子を内蔵した光学的位置検出手段で、前記風車131の上面からの反射光を検出する。そして該位置検出手段172の直下に前記指標132が対向すると、所定の信号を出力し、風車131の位相角が初期状態に戻ったことを検知できるように構成されている。
以上の構成により、位置検出手段172の出力を観察しながらステップモータ171を駆動して風車131を初期状態に戻し、絞り開口を開放に復帰させる。そして、その位置からステップモータを所定のプログラムに従って駆動することで、絞り開口を任意の大きさに制御できる。
173は前記アポダイゼイションフィルタ151を駆動するための回動式アクチュエータで、無通電時には回動可能範囲の両端に安定的に停止する、双安定型のアクチュエータである。該アクチュエータ173の出力軸先端には駆動レバー173aが固着され、さらに該レバー173aの先端下面には駆動軸173bが植設される。そして該駆動軸173bは前記アポダイゼイションフィルタ151の被駆動用長穴151cに係合される。
以上の構成により、アクチュエータ173への通電電流を正逆制御することで、駆動レバー173aを回動制御し、アポダイゼイションフィルタ151のフィルタ有効部151aを前記開口穴141cに対して進退制御することができる。
一方、上記光量調節装置100の下方には、公知のシャッタ機構が配置される。そして図1においては、下方向が被写体側、上方向が結像面側となっている。すなわち、撮影用光束はシャッタ機構、絞り機構、アポダイゼイションフィルタの順に通過する。そして、本光量調節装置を搭載した光学装置においては、非撮影時にはシャッタ機構は光束遮断状態、すなわちシャッタ羽根は閉状態となり、絞り機構は最小絞り状態に保持される。そこで、アポダイゼイションフィルタ151は暗黒下に置かれるので、紫外線等の有害光によるフィルタの色素劣化が回避される。
また、絞り羽根とアポダイゼイションフィルタが光軸方向に積層配置され、全体が1つのユニットとして構成されている。そして、絞り羽根駆動用のモータ171とフィルタ駆動用アクチュエータ173が当ユニット内に並列配置されているため、従来の絞り機構とほぼ同等の空間にアポダイゼイションフィルタとその駆動機構を組み込むことができ、装置全体の小型化に寄与している。
なお、本実施例1においては、上記絞り機構を後述する結像光学系に組み込んだ際に、Fナンバが開放のF2から小絞り側のF8まで調節できるように構成されている。
図2は、アポダイゼイションフィルタ151の進退動作を説明するための平面図である。同図(a)はフィルタが光束通過開口から退避した状態を示している。同図(a)において、141は図1で説明した仕切り板で、中央には光束通過用の開口部141cが設けられ、周縁部にはアポダイゼイションフィルタの回転支持軸142が植設される。
151はアポダイゼイションフィルタ(以下、単にフィルタとも記す)で、該フィルタ151に設けられた回動支持用の軸受穴151bが前記支持軸142に回動可能に嵌合保持される。173aは不図示のアクチュエータ173の出力軸に固着された駆動レバーで、その先端下面の駆動軸173bがフィルタ151に設けられた被駆動用長穴151cに係合している。そして同図(a)では該レバー173aが反時計方向に回動しているため、フィルタ151は時計方法に回動し、フィルタ有効部151aは光束通過開口141cの外側に退避している。
次いでアクチュエータ173に所定方向の電流が通電されると、駆動レバー173aが時計方向に回動する。すると、フィルタ151は反時計方法に回動してフィルタ有効部151aは光束通過開口141cを覆うように進入し、図2(b)の状態になる。さらにアクチュエータ173への通電電流を反転させると、フィルタ151も反転駆動され、同図(a)の状態に戻る。また、アクチュエータ173に双安定型を用いることで、無通電時にもフィルタ151を同図(a)及び(b)の両方の状態に安定的に保持できる。
次に、アポダイゼイションフィルタ151の光学特性について説明する。アポダイゼイションフィルタは、その有効領域上の位置によって光吸収能率が異なるが、前記有効領域内の任意の位置における分光透過率は可視光帯域において略均一である。このようなフィルタの光学特性を表わす指標として、一般的に光学濃度あるいは透過率が用いられる。ここで、フィルタの光学濃度(Optical Density、OD値)と透過率(TransmissionRate)Tr(%)は以下の式で関係付けられる。
透過率Tr=100*10(−OD値) …………(式1)
OD値 =−Log10(Tr/100) …………(式2)
図3は、本実施例1におけるアポダイゼイションフィルタ151のフィルタ有効部151aのパターン特性を説明する図である。同図(a)は透過率分布を示し、横軸はフィルタにおける光線の入射高、すなわちフィルタの中心からの距離で、r0はフィルタの有効半径である。縦軸は透過率Tr(%)である。また、同図(b)は光学濃度(OD値)を示し、横軸は同じく入射高、縦軸は光学濃度である。
本実施例1においては、同図(a)に示した入射高rに対する透過率Tr(r)は、rがゼロ以上r0/2以下の領域は透明、すなわち、
Tr(r)=100[%] …………(式3)
である。また、rがr0/2を超えてr0以下の領域は、
Tr(r)=100*exp(α*(r−r0/2)*(r−r0/2))…(式4)
に設定されている。ここで、αは所定の負の係数であるが、この式はガウス分布の式である。すなわち、フィルタの中心部は透明で透過率一定、その外側の領域は透過率が漸減するアポダイゼイションフィルタとなっている。また、中心に対して角度方向の透過率分布は一定の等方性パターンとなっている。(式3)及び(式4)を(式2)に代入して計算した光学濃度分布を、同図(b)に示す。
図4は、アポダイゼイションフィルタ151の構造を説明するための図で、図2(b)におけるA−A部の断面図である。151eは透明基材であるPETフィルムで、その上面にはインク受容層151fが塗工される。該インク受容層151fは微小液滴吐出装置、いわゆるインクジェット記録装置により、低散乱かつ可視光帯域において平坦な分光透過率を有した染料系の色材が吐出され、直径2r0のフィルタ有効部151aが形成される。該フィルタ有効部151aは前述したように、中央部の直径r0の範囲は光学濃度一定(本実施例では透明)、その外側は光学濃度が連続的に変化している。一方、前記フィルタ有効部151a以外の受容層領域は、前記色材よりも光学濃度の高い、例えば顔料系の色材にて遮光部151jが形成される。その後、平坦化層151gが塗工され、印刷工程で生じた受容層表面の凹凸が平坦化される。更に平坦化層151gの上面と透明基材151eの下面には反射防止層151h及び151iが蒸着法により形成される。以上の工程で、大面積の透明基材151e上に多数のアポダイゼイションフィルタが形成されるので、最後にプレス工程で個々のフィルタに打ち抜き分離する際、回転駆動用の軸受穴152が同時に穿設され、フィルタ151が完成する。なお、前記各層の材料や塗工、乾燥工程の詳細は、本出願人による特願2002−041634号に記載されている。
なお、本実施例のアポダイゼイションフィルタを製造する工程は、上記工程が好適ではあるが、これに限定されるものではない。例えば、フィルタの光束通過部のみを上記インクジェット印刷工程で製造したのちに打ち抜き分離し、これを金属薄板製の保持レバー上に貼付しても構わない。また、真空蒸着装置を用いて、酸化チタン等の光吸収性薄膜の膜厚を連続的に変化させても構わない。
図5は、図1ないし図4で説明した光量調節装置100を撮影装置に配置したものである。本実施例では、撮影装置は光学像を撮像手段で電気信号に光電変換し、静止画像及び動画像をデジタルデータとして記録する電子カメラを例として説明する。また、該撮影装置は、撮影被写界確認用のファインダ機構として、一眼レフカメラに用いられるTTL(Through The camera Lens)ファインダを備えるものとする。
400は複数のレンズ群からなる結像光学系で、フロントレンズ群401、バリエータレンズ群402、フォーカシングレンズ群403を有する。本実施例での結像光学系の光学仕様は、35mmフィルムを用いたカメラ換算で焦点距離が35−200mm、開放Fナンバは2であるものとする。100は図1で示した光量調節装置であり、後述するように結像光学系の所定位置、つまり光束開口141cが射出瞳近傍に位置するように結像レンズ400内に配置されている。
結像光学系400の後方には、半透過のメインミラー411、全反射のサブミラー412が配置される。そして、撮影光束の70%はメインミラー411で上方に反射し、ファインダスクリーン413上に観察用画像が形成される。そして、観察用画像はペンタダハプリズム414によって正立変換され、接眼レンズ415を介して撮影者の眼に導かれる。一方、撮影光束の30%はメインミラー411を透過した後、サブミラー412にて下方に反射し、後述する焦点検出モジュール450に導かれる。そしてメインミラー411及びサブミラー412は、公知のクイックリターン機構により、撮影光路中から退避可能に構成されている。
サブミラー412の後方には、公知のフォーカルプレンシャッタ416が配置され、更に光学ローパスフィルタ404が配置される。そしてその後方、結像光学系400の焦点位置(予定結像面)には、光学的ローパスフィルタ404が配置され、更にその後方には撮像手段440が配置される。これは照射された光エネルギを電荷に変換する複数の光電変換部、該電荷を蓄える電荷蓄積部、及び該電荷を転送し、外部に送出する電荷転送部からなる2次元CCD等の光電変換手段が用いられる。本実施例では、300万画素のCCDセンサが用いられるものとする。
撮像手段440上に結像した被写体の像は、その明るさの強弱に応じた画素毎の電荷量として電気信号に変換され、アンプ回路441で増幅された後、画像信号処理回路442で所定のγ補正等の処理を施される。なおこの処理は、A/D変換後のデジタル信号処理で行われてもよい。このようにして作られた映像信号はメモリ443に記録される。メモリ443は、フラッシュROM等の半導体メモリ、光磁気ディスク等の光メモリ、磁気テープ等の磁気メモリ等、種々のものが利用可能である。
421は液晶ディスプレイ等の表示器で、撮像手段440で取得した被写体像や、撮像装置の動作状況、撮影条件に関する情報等を表示する。422は、操作スイッチ群でズームスイッチ、撮影準備スイッチ、撮影開始スイッチ、静止画モードと動画モードを選択する撮影モード選択スイッチ、露出制御モードやAFモード等を設定する撮影条件スイッチで構成される。423はズームアクチュエータで、前記ズームレンズ群402を駆動し、結像光学系400の焦点距離を変える。424はフォーカスアクチュエータで、前記フォーカシングレンズ群403を駆動し、結像光学系400の焦点状態を調節する。
431はCPUで、撮影装置全体の動作を制御する。432はフィルタ駆動回路で、図1のアクチュエータ173への通電制御により、アポダイゼイションフィルタ151を光束開口内に進退駆動する。433は絞り駆動回路で、図1の光学的位置検出手段132の出力をモニタしながらステップモータ171を駆動する。そして風車131の回転角を調節し、Fナンバを所望の値に制御する。434はシャッタ駆動回路で、前記シャッタ機構416を駆動し、撮像手段440への露光時間を制御する。436は、焦点検出モジュール450が有するAFセンサの駆動回路で、焦点検出用の被写体像はAFセンサにて光電変換され、その信号が該駆動回路450を介してCPU431に送信される。
なお、図5においては、結像光学系400と、撮像素子をはじめとする撮像部が一体となった実施例を示しているが、光量調節装置を内蔵した結像光学系が、撮像部に対して着脱可能な形態としても構わない。すなわち、結像光学系を有する光学装置と、撮像部を有する撮像装置が分離可能な、レンズ交換式一眼レフカメラシステムのような形態でも構わない。
図6は、図5の撮影装置が内蔵する焦点検出モジュール450の構成と、焦点検出原理を説明する斜視図で、同図(a)はアポダイゼイションフィルタ151が撮影光路外に退避している場合、同図(b)はアポダイゼイションフィルタ151が撮影光路内に進入している場合を示す。
焦点検出モジュール450を構成する主要部材は、フィールドレンズ451、視野マスク452、二次結像レンズ453、AFセンサ454である。そして、フィールドレンズ451が結像光学系400の予定結像面(1次結像面)近傍に位置するように、焦点検出モジュール450はサブミラー412の下方の所定位置に配置される。また、EPは結像光学系の射出瞳で、本実施例においては、図1で説明した光束開口141cが射出瞳近傍に位置するように、光量調節装置100が結像レンズ400内に配置されている。
続いて焦点検出モジュール450の構造を説明する。視野マスク452には、焦点検出領域を規定する十字型の開口部452mが設けられる。AFセンサ454は、上下方向に並んだ一対のラインセンサ454a,454bと、同じく左右方向に並んだ一対のラインセンサ454c,454dの合計4本のラインセンサで構成される。各ラインセンサは微小サイズの受光部が1列に数十画素並んだラインCCDである。二次結像レンズ453は、上下に配置された一対のレンズ453a,453bと、左右に配置された一対のレンズ453c,453dの合計4個のレンズで構成される。そして、視野マスク452の開口部452mは、前記4つの二次結像レンズ453aないし453dを介して、AFセンサの受光面上に4つの開口像として結像される。すなわち、二次結像レンズ453に対して、視野マスク452とAFセンサ454は光学的に共役関係の位置にある。
一方、二次結像レンズ453の各レンズの入射開口部は、フィールドレンズ451を介して、結像光学系の射出瞳EP上に、4つの開口像(この領域を射出瞳領域EPaないしEPdと記す)として結像される。すなわち、フィールドレンズ451に対して、二次結像レンズ453と結像光学系の射出瞳EPは光学的に共役関係の位置にある。
以上の構成において、結像光学系の所定の射出瞳領域EPa及びEPbを通過した光束は、1次結像面近傍に配置されたフィールドレンズ451を通過して視野マスク452の開口部452m上に結像する。そして開口部452mを通過した光束は発散をはじめるが、二次結像レンズ453a及び453bを介して再収束し、AFセンサ454上のラインセンサ454a及び454bの上に焦点検出用の画像として再結像する。そして、2つのラインセンサ454a及び454b上に形成された画像の、上下方向の相対間隔を公知の方法で演算することで、1次結像面上での被写体像の焦点状態が検出できる。
同様に、結像光学系の他の射出瞳領域EPc及びEPdを通過した光束は、フィールドレンズ451及び開口部452mを通過し、二次結像レンズ453c及び453dを介してラインセンサ454c及び454dの上に再結像する。そして、2つのラインセンサ454c及び454d上に形成された画像の、左右方向の相対間隔を公知の方法で演算することで、1次結像面上での被写体像の焦点状態が検出できる。このような焦点検出方式を、位相差検知式焦点検出システムと称している。該検出方式では、焦点検出用光束が結像光学系の絞りや鏡筒でけられると検出エラーを生ずるので、焦点検出モジュール内の各部材の寸法や光学パラメータは、結像光学系における射出瞳の直径や光軸上の位置を充分に勘案した上で決定されている。
本実施例1における結像光学系の開放FナンバはF2.0となっているので、射出瞳EPは絞り値がF2.0の場合の撮影光束通過領域と見なすことができる。そして一対の射出瞳領域EPa及びEPbは、絞り値がF2.8の場合の光束通過領域内部に配置されている。また、他の一対の領域EPc及びEPdは、絞り値がF5.6の場合の光束通過領域内部に配置されている。そこで、結像光学系の絞り値が、F2.8あるいはそれよりも明るい場合は、AFセンサ454aないし454dのすべてを用いて焦点検出が可能である。また、結像光学系の絞り値が、F2.8とF5.6の間の場合は、AFセンサ454c及び454dのみを用いた焦点検出が可能である。すなわち、撮影光学系のFナンバが明るい時(Fナンバが小さい時)は、被写体像の焦点深度が浅いため、高精度の焦点検出が必要である。そこでこの場合は基線長の長い焦点検出光学系を優先的に用いて検出を行う。また、撮影光学系のFナンバが暗い時(Fナンバが大きい時)は、基線長の長い焦点検出光学系では焦点検出光束がけられてしまうためにこれの使用を禁止し、基線長の短い焦点検出光学系(なお、更に多くの結像光学系がある場合は、焦点検出光束が部分的に減衰されない範囲で基線長の最も長い結像光学系)を用いて検出を行う。
本実施例1においては、結像光学系の開放Fナンバは、焦点距離によらず一定でF2.0となっているため、絞り開放かつアポダイゼイションフィルタを使用せずに焦点検出を行う場合は、図6(a)に示したように、2対の焦点検出光学系を用いた検出が可能である。
一方、アポダイゼイションフィルタを用いる場合は同図(b)のごとく、結像光学系の射出瞳位置にアポダイゼイションフィルタ151が侵入する。ここで、アポダイゼイションフィルタ151の透過率分布は図3で説明したように、中心からr0/2の領域は透明だが、その外側は光学濃度が漸増する。すわなち、絞り値がF4.0より明るい領域は透過率が場所によって異なっている。従って、基線長の長い焦点検出光学系では光束の一部が該フィルタにより減衰され、焦点検出エラーを生ずる。そこで、アポダイゼイションフィルタによってけられることのない、基線長の短い検出光学系のみを用いることで、正確な焦点検出が可能となる。
図7ないし図12は、図5に示した撮影装置の撮影制御フローを説明する図である。まず図7を用いて、本撮影装置が備えた撮影モードについて説明する。
スチルカメラやビデオカメラにおいては、複数種類の撮影モードが用意され、撮影者が操作スイッチを用いて所望の撮影モードを選択可能としたものが一般的である。この際、所定の撮影モードを選択すると、該モードに適した露出制御方式、AF方式、ドライブ方式(連写/単写)、測光感度分布等が自動で設定される。そこで本実施例においては、選択された撮影モードに応じてアポダイゼイションフィルタ151の駆動を行うようにしている。
図7は、本発明の撮影装置が備える露出制御モードを説明する図で、左側には撮影モードの名称を示し、中央及右側には各撮影モードに対する露出制御、アポダイゼイションフィルタ制御、ファインダ、及びAFの各制御モードを示している。
撮影者は、図5の撮影装置が有する操作スイッチ群422の一つである静止画/動画選択スイッチを用いて、まず静止画モードか動画モードかを選択する。続いて、撮影モード選択スイッチを用いて(1)ないし(16)の中から所望の撮影モードを選択する。すると撮影装置は、各モードの作画意図に沿った映像効果を発揮させるため、図7に示した「露出制御モード」「フィルタモード」「ファインダモード」「AFモード」を選択し、実行する。本例においては、静止画撮影における(1)ないし(3)の撮影モードでは、背景ボケの映像効果は重視しないモードであるため、アポダイゼイションフィルタ151は強制退避、すなわち不使用とする。ファインダは、動体に対する応答遅れのない光学ファインダを使用するため、メインミラーとサブミラーは撮影光路中に侵入し、接眼レンズを介した光学ファインダの観察を可能とする。AFモードは、応答性に優れた位相差検出AFを使用する。その際、アポダイゼイションフィルタ151は退避しているので、結像光学系の射出瞳は全域に渡って透明であり、基線長の長いF2.8相当の位相差検出光学系を用いる。また、(3)のスポーツモードでは、動体撮影に適したサーボAF、すなわち合焦後も継続して焦点調節を行う制御モードを採用する。一方(1)及び(2)のモードでは、静止被写体に適したワンショットAF、すなわち合焦後は被写体のピント状態が変化しても再AFを行わない制御モードを採用する。
(4)及び(5)の撮影モードは、背景ボケの映像効果を重視するモードであるため、アポダイゼイションフィルタ151を自動で強制挿入する。よって、撮影者が手動でフィルタ挿入操作を行う手間が省け、フィルタの挿入忘れが回避されるとともに、フィルタ挿入に手間取ってシャッターチャンスを逃すことも無くなる。AFモードは、応答性に劣るが精度のよいコントラスト検出方式を使用する。これはいわゆる山登り式サーボAFと呼ばれる、画像信号の高周波成分が最大値となるフォーカス位置を探してレンズを停止させる焦点調節制御である。該モードでは、焦点検出モジュール450は使用せず、撮像素子440に結像した画像のコントラストを検出する。すなわち撮像素子とAFセンサが同一なため、焦点検出精度が高く、また絞りの制約を受けずにあらゆるFナンバで焦点検出が可能であり、アポダイゼイションフィルタ等の特殊フィルタが挿入されても焦点検出可能という特徴がある。その反面、ピントずれの方向と量がわからないため、応答性は位相差検出式に劣る。
ファインダは電子ファインダを使用する。すなわち、メインミラーとサブミラーを撮影光路外に退避させ、フォーカルプレンシャッタを開放にして、撮像素子440上に常時光学像を形成させる。従って光学ファインダへの光束は遮断され、撮像素子で取得した画像信号を表示器421に、プレビュー画像として表示する。
(6)ないし(9)の撮影モードは、撮影者による露出調節や映像効果の自由度を高めたモードであるため、アポダイゼイションフィルタの使用可否も撮影者が選択可能になっている。ファインダは、動体に対する応答遅れのない光学ファインダを使用する。AFは位相差検出式ワンショットAFを使用する。ただし、撮影者によってアポダイゼイションフィルタ使用が選択されている場合、該フィルタによる焦点検出エラーを防止するため、基線長の短いF5.6相当の位相差検出光学系を用いる。一方、撮影者によってアポダイゼイションフィルタが不使用と選択されている場合、基線長の長いF2.8相当の位相差検出光学系を用いる。
動画撮影時においても、静止画撮影と同様の映像効果を達成するように各種モードが設定されており、アポダイゼイションフィルタの使用可否も図7に示したように設定される。また、動画モードでは撮影中も継続的にファインダ観察を可能とするため、ファインダは電子ファインダ、AFはコントラスト検出式に統一する。
図8ないし図12は、本実施例1における撮影装置の制御フローを示したものである。まず図8を用いて撮影時のメイン制御フローを説明する。
ステップS101を経由してステップS102では、撮影者によりメインスイッチがオン操作されたか否かを判別し、オン操作されていない時はステップS102に留まる。ステップS102でメインスイッチがオン操作されたと判定されたら、CPU431はスリープ状態から脱してステップS103以降を実行する。
ステップS103では、撮影装置の初期化を行う。具体的には、沈胴状態にある結像光学系を撮影可能状態に繰り出し駆動したのち、光量調節装置100内のアポダイゼイションフィルタ151を退避位置にリセットし、絞り羽根駆動用風車は絞り開放状態にリセットする。ステップS104では、静止画撮影か動画撮影かを決める撮影モードの選択を受け付ける。ステップS105では、図6の(1)ないし(16)に相当する撮影モードの選択を受け付ける。ステップS106では、単写/連写モード、ホワイトバランスモード、静止画撮影時の画像サイズ等の、各種撮影条件の詳細設定を受け付ける。また、アポダイゼイションフィルタの制御モードが手動選択モードの場合には、アポダイゼイションフィルタの使用可否の設定も受け付ける。
ステップS107では、上記ステップS104で設定された動画/静止画モードの判別を行い、動画撮影モードであればステップS111の動画撮影サブルーチンへ、静止画撮影モードであればステップS131の静止画撮影サブルーチンへ移行する。
図9は動画撮影のサブルーチンフローで、図8のメインフローにおいて、ステップS111に分岐した場合の制御フローを示している。ステップS111を経由してステップS112では、メインミラーとサブミラーを撮影光束外に退避駆動するとともに、フォーカルプレンシャッタ416を開放駆動し、撮像素子440上へ被写体像を形成させる。ステップS113では、撮像素子440で画像信号を取得し、画像信号処理回路442で所定の画像処理を施す。ステップS113では測光演算1を行う。これは動画撮影用の測光演算で、前記ステップS112で取得した画像信号の最大値、最小値、平均値等を用いて被写体の明るさを算出する。そして所定の露出制御に関する式を用いて、光量調節装置100の絞り制御値を演算する。この際、図4で説明したアポダイゼイションフィルタ151の減光段数に関する特性値がCPU431のROMに記憶されているので、アポダイゼイションフィルタ使用時はこの特性を参照して適正な絞り制御値が演算される。
ステップS115では、図8のメインルーチンで設定されたアポダイゼイションフィルタ151の制御モード(フィルタモード)を判別する。そして該フィルタモードが強制退避モードの時には、フィルタ駆動は行わずにステップS118にジャンプする。フィルタモードが強制挿入モードの時は、ステップS117にジャンプしてアポダイゼイションフィルタ151を光束開口内に進入駆動し、ステップS118に進む。フィルタモードが手動選択モードの時はステップS116に移行し、図8のステップS106で撮影者により選択されたフィルタ使用可否の結果に基づき、ステップS117あるいはステップS118に進む。すなわち、撮影者によりフィルタ使用が選択されていれば、ステップS117にてフィルタ挿入駆動を行い、ステップS117に進む。また、撮影者によりフィルタ不使用が選択されていれば、ステップS118にジャンプする。
ステップS118では絞り制御を行う。具体的には、図1のステップモータ171を所定量駆動し、所望のFナンバが得られるように風車回転角を制御する。ステップS119では上記ステップS113で取得した画像信号をプレビュー画像用に変換し、表示器421にプレビュー画像を表示する。ステップS120及びステップS121では、結像光学系400の焦点調節を行う。これはいわゆる山登り式サーボAFと呼ばれる、画像信号の高周波成分が最大値となるフォーカス位置を探してレンズを停止させる焦点調節制御である。
ステップS122では、撮影者によって動画撮影用の撮影スイッチがオン操作されたか否かを判別する。オン操作されていない時はステップS113に戻り、光量調節制御、焦点調節制御、及びプレビュー画像表示を繰り返し実行する。ステップS122で撮影スイッチがオン操作されたと判定されたら、ステップS122からステップS123に進む。ステップS123では、撮像装置440で取得した画像信号を、まず動画記録用画像の画素数30万画素に縮小処理したのち、動画用の画像処理を施す。ステップS124では、動画記録用の画像圧縮を行い、ステップS125にて圧縮された画像信号をメモリ443に記録する。
ステップS126では、撮影者によって撮影スイッチがオフ操作されたか否かを判別する。オフ操作されていない時はステップS113に戻り、光量調節制御、焦点調節制御、プレビュー画像表示、及び記録用動画像のメモリへの記録を繰り返し実行する。ステップS126で撮影スイッチがオフ操作されたと判定されたら、ステップS127で撮影を終了する。
図10は静止画撮影のサブルーチンフローで、図8のメインフローにおいて、ステップS131に分岐した場合の制御フローを示している。ステップS131を経由してステップS132では、ファインダモードの判別を行う。そして電子ファインダモード時は、ステップS133にてメインミラーとサブミラーを撮影光束外に退避駆動するとともに、フォーカルプレンシャッタ416を開放駆動し、撮像素子440上へ被写体像を形成させる。一方、光学ファインダモード時は、ステップS133を経由せずにステップS134へ移行する。
ステップS134では、図8のメインルーチンで設定されたアポダイゼイションフィルタ151の制御モード(フィルタモード)を判別する。そして該フィルタモードが強制退避モードの時には、フィルタ駆動は行わずにステップS137にジャンプする。フィルタモードが強制挿入モードの時は、ステップS136にジャンプしてアポダイゼイションフィルタ151を光束開口内に進入駆動し、ステップS137に進む。フィルタモードが手動選択モードの時は、ステップS135に移行し、図8のステップS106で撮影者により選択されたフィルタ使用可否の結果に基づき、ステップS136あるいはステップS137に進む。すなわち、撮影者によりフィルタ使用が選択されていれば、ステップS136にてフィルタ挿入駆動を行い、ステップS137に進む。また、撮影者によりフィルタ不使用が選択されていれば、ステップS137にジャンプする。
ステップS137では、撮影者によって静止画撮影用の撮影準備スイッチがオン操作されたか否かを判別する。オン操作されていない時は当ステップにとどまり、撮影準備スイッチがオン操作されるまで待機する。ステップS137で撮影準備スイッチがオン操作されたと判定されたら、ステップS137からステップS141に進む。
ステップS141では測光演算2を行う。これは静止画撮影用の測光演算で、当ステップの直前に取得した画像信号の最大値、最小値、平均値等を用いて被写体の明るさを算出する。そして所定の露出制御に関する式を用いて、光量調節装置100の絞り制御値を演算する。この際にも、アポダイゼイションフィルタ使用時は、CPU431のROMに記憶された減光段数に関する特性値を参照して、適正な絞り制御値が演算される。
ステップS151では、AFサブルーチンを実行し、焦点調節制御を行う。詳しくは図11で説明する。
ステップS143では、撮影者によって静止画撮影用の撮影スイッチ(露光開始スイッチ)がオン操作されたか否かを判別する。オン操作されていない時はステップS141に戻り、測光演算2とAF制御を繰り返し実行する。そしてステップS143で撮影スイッチがオン操作されたと判定されたら、ステップS143からステップS181に進む。ステップS181では、静止画記録用の静止画露光サブルーチンを実行する。詳しくは図12で説明する。そして露光終了後はステップS145にて制御を終了する。
図11はAF制御サブルーチンフロー図で、図10の静止画撮影サブルーチンフロー図におけるステップS151の制御内容を示している。
ステップS151を経由して、ステップS152ではAFモードを判別する。そしてAFモードとしてコントラスト検出式が選択されている場合は、ステップS161以降を実施する。ステップS161及びステップS162は、図9の動画撮影サブルーチンにおけるステップS120及びステップS121と同様の制御を行うため、詳しい説明は省略する。ステップS163では、合焦したか否かを判定し、非合焦の場合はステップS161及びステップS162を繰り返し実行する。そして合焦したらステップS164にて、表示器421にプレビュー画像を表示し、ステップS171に移行する。
ステップS152においてAFモードが位相差検出式であると判別されたらステップS153以降を実施する。ステップS153では、図10のステップS134ないしステップS136で実行されたフィルタ制御状態を判別する。そしてアポダイゼイションフィルタ151が挿入されていない場合(退避の場合)は、ステップS154にて、基線長の長いF2.8対応の焦点検出光学系を用いた位相差検出を行う。一方、アポダイゼイションフィルタ151が挿入されている場合は、ステップS155にて、基線長の短いF5.6対応の焦点検出光学系を用いた位相差検出を行う。つまり、位相差検出AFの場合はアポダイゼイションフィルタ151の中央部に設けられた光学濃度一定部を通過する光束を用いて焦点検出する必要があるので、位相差検出用光束が前記光学濃度一定部の範囲内に収まるか否かを判定する判定し、この判定結果に基づいていずれの基線長をもつ焦点検出光学系を用いた位相差検出を行うかを決定している。
ステップS156では、上記ステップS154あるいはステップS155で検出した結果に基づき、デフォーカス量と、合焦のために必要なフォーカスレンズ駆動量を演算する。ステップS157では上記演算結果に基づいて、フォーカスレンズ駆動を行う。ステップS158では、合焦したか否かを判定し、非合焦の場合はステップS153ないしステップS157を繰り返し実行する。そして合焦したらステップS158よりステップS171に移行する。
ステップS171では、動体に対するAFの追従モードを判別する。すなわち、現在選択されているAFモードが位相差検出式ワンショットAFあるいはコントラスト検出式ワンショットAFモードである場合、合焦後は動体に対するAFの追従を禁止するため、ステップS172でAFを禁止し、ステップS173にて図10の静止画撮影サブルーチンにリターンする。一方AFモードが位相差検出式サーボAFあるいはコントラスト検出式サーボAFモードである場合、合焦後も動体に対するAF追従を行うため、AF禁止はせずにステップS173にて図10の静止画撮影サブルーチンにリターンする。以上でAFサブルーチンを完了し、図10のステップS143以降を実行する。
図12は静止画露光サブルーチンフローで、図10の静止画撮影サブルーチンフローにおけるステップS181の制御内容を示している。
ステップS181を経由してステップS182では、図10のステップS141で実行した測光演算2において計算された絞り制御値に基づき、光量調節装置100の絞り羽根111を絞り込み駆動する。ステップS183では、現在選択されているファインダモードの判別を行う。そして電子ファインダモードであると判別された場合は、ステップS184にてフォーカルプレンシャッタ416の閉鎖駆動を行い、撮像素子440への撮影光束を遮断する。これは、図10のステップS132及びステップS133において、電子ファインダモード時はシャッタを開放にして撮像素子が被写体像を取得していたが、静止画撮影時は露光開始と終了の制御をメカニカルシャッタで行い、撮影画面上でのシャッタ秒時の均一性確保や、画像信号読み出し時のスミア防止を図るためである。ステップS183で光学ファインダモードと判別された場合は、フォーカルプレンシャッタは閉じているため、ステップS185にジャンプする。
ステップS185では、画像を取得するために、撮像素子440の電荷蓄積を開始する。ステップS186ではフォーカルプレンシャッタ416の先幕を走行してシャッタを開放させる。ステップS187では、図10におけるステップS141の測光演算2で算出したシャッタ秒時に基づいて、シャッタ416の後幕を走行してシャッタを閉鎖させ、撮像素子440への光束を遮断する。ステップS188では撮像素子440より電荷を転送し、ステップS189では取得した300万画素相当の画像信号に静止画用の画像処理を施す。ステップS190では、静止画記録用の画像圧縮を行い、ステップS191にて圧縮された画像信号をメモリ443に記録する。ステップS192では、絞り羽根を開放に復帰駆動し、ステップS193にて図10の静止画撮影サブルーチンにリターンする。
以上の制御により、アポダイゼイションフィルタと位相差検出式AFを併用する際、該フィルタの濃度パターンに適した検出光学系が選択されるため、位相差検出式AF特有の高速AFが可能となる。従ってシャッターチャンスを逃すことなく、主被写体には正確に焦点が合い、かつボケ像の輪郭が柔らかくなった高品位画像を簡単に得ることができる。
上記の実施例1にて用いたアポダイゼイションフィルタは、中心からの半径rに対する透過率分布が、全方向に渡って等しい軸対称パターンを有していたが、以下に示す第2の実施例は、方向によって透過率分布が異なるフィルタを備える本発明の実施例2を示す。以下に図13ないし図23を用いて実施例2の構成及び動作を説明する。
図13は、実施例2の光量調節装置200の構造を説明するための要部分解斜視図で、実施例1の図1に対応する。
同図において、211は全域に渡って遮光性を有する絞り羽根で、その下面と上面には被駆動用のピン212および213が植設される。絞り羽根211は同一形状のものが6枚用いられ、絞り開口が形成される。221は絞り羽根211を保持する地板で、平面状をなす底面の中央には、絞り開放時の光束の最大径を規定する開口部221cが設けられる。そして該開口部221cの周囲には6個のカム溝221aが設けられ、前記絞り羽根211のピン212が嵌合し、摺接移動可能となっている。
231は風車と呼ばれる駆動部材で、中央の開口部231cの周囲には羽根駆動用の6個の穴231aが等間隔で設けられ、該穴231aには前記絞り羽根211のピン213が回転可能に嵌合している。そこで風車231が反時計方向に回動すると、実施例1と同様に絞り開口径が連続的に減少し、絞り込み動作が行われる。また、風車231の上面には、風車の初期位置を検出するための指標232と、被駆動用のギヤ233が設けられる。
241は仕切り板で、前記地板221との間に所定の空間を形成し、該空間内に前記羽根211と前記風車231を収容する。仕切り板241の中央には光束通過用の開口部241cが設けられ、その隣りには後述するアポダイゼイションフィルタの回転支持軸242が植設される。更に前記風車の指標232の有無を検出するための位相検知用窓241b、後述するピニオンギヤの逃げ穴241eが設けられる。
251は円盤状のアポダイゼイションフィルタで、実施例1と同様、厚さ0.1mm程度の透明樹脂フィルム、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、インクジェット印刷によって後述するアポダイゼイションパターンが形成されるとともに、中心には軸受け252が設けられ、前記仕切り板上の回転支持軸242に回転可能に軸支される。アポダイゼイションフィルタ251の外周部には、金属板製のギヤ253が接着される。なお、アポダイゼイションフィルタの基材である透明フィルムの外周部をギヤ状の形状としても構わない。さらにアポダイゼイションフィルタ251の上面には、該フィルタの回転方向の初期位置を検出するための指標254が設けられる。
アポダイゼイションフィルタ251の光減衰用パターンは、本実施例2では以下の4つの領域より構成される。251aは有効範囲全域にわたって透過率がほぼ100%の透明部であるフィルタ部、251bは実施例1のフィルタ有効部151aと同様の透過率分布を有したフィルタ部である。251cは中心からの方向によって透過率分布が異なるフィルタ部、251dは中心近傍にも所定の光学濃度が付与されたフィルタ部である。詳しくは後述する。
261はカバー板で、前記仕切り板241との間に所定の空間を形成し、該空間内に前記フィルタ251が収容される。カバー板261の中央には光束通過用の開口部261cが設けられ、更に前記風車の指標232と前記フィルタの指標254の有無を検出するための検知用窓261b及び261d、そして後述するピニオンギヤの逃げ穴261e及び261fが設けられる。
271は前記風車231を駆動するステップモータで、ピニオンギヤ271aは前記穴261e,241eを貫通して前記風車231に設けられたギヤ233にかみ合う。272は投光素子と受光素子を内蔵した光学的位置検出手段で、前記風車231の上面からの反射光を検出する。そして該位置検出手段272の直下に前記指標232が対向すると、所定の信号を出力し、風車231の位相角が初期状態に戻ったことを検知できるように構成されている。
以上の構成により、位置検出手段272の出力を観察しながらステップモータ271を駆動して風車231を初期状態に戻し、絞り開口を開放に復帰させる。そしてその位置からステップモータを所定のプログラムに従って駆動することで、絞り開口を任意の大きさに制御できる。なお本実施例2においても、上記絞り機構を後述する結像光学系に組み込んだ際に、Fナンバが開放のF2から小絞り側のF8まで調節できるように構成されている。
273は前記アポダイゼイションフィルタ251を駆動するステップモータで、ピニオンギヤ273aは前記穴261fを貫通して前記フィルタ251に設けられたギヤ253にかみ合う。274は投光素子と受光素子を内蔵した光学的位置検出手段で、前記フィルタ251の上面からの反射光を検出する。そして該検出手段274の直下に前記指標254が対向すると、所定の信号を出力し、前記フィルタ251の位相角が初期状態に戻ったことを検知できるように構成されている。
以上の構成により、位置検出手段274の出力を観察しながらステップモータ273を駆動してアポダイゼイションフィルタ251を初期状態、すなわち透明部251aが開口部241cを覆う状態に戻す。そしてその位置からステップモータを所定のプログラムに従って駆動することで、所望のパターン部を光束通過開口に進入させ、ボケ像改善効果を可変できる。
また、開口部221c、あるいは241cを取り囲む円環状の空間に複数の駆動制御手段、すなわち2個のステップモー271及び273を並列配置したため、実施例1の光量調節装置とほぼ同等の大きさに押さえることができる。
図14は、アポダイゼイションフィルタ251の詳細構造を説明するための平面図で、実施例1の図2に相当する。251は円盤状のアポダイゼイションフィルタ本体で、フィルタ構造は実施例1と同様であり、フィルタパターン配列と動作形態が異なる。すなわちフィルタ251は厚さ0.1mm程度の透明樹脂フィルム、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、インクジェット印刷によってアポダイゼイションパターンが形成されるとともに、中心には軸受け252が設けられ、前記仕切り板上の回転支持軸242に回転可能に軸支される。フィルタ251の外周部には、金属板製のギヤ253が接着される。さらにフィルタ251の上面には、フィルタの初期位置を検出するための指標254が設けられる。
251aは有効範囲全域にわたって透過率がほぼ100%の透明のフィルタ部である。251bは実施例1のフィルタ151aと同一のパターンで、有効最大半径すなわち入射高最大値r0に対して、r0/2以下の領域は透明、r0/2以上の領域は透過率が漸減するアポダイゼイションフィルタである。また、中心に対して角度方向(周方向)の透過率分布は一定の等方性パターンとなっている。251cは、上下方向については中心から(3/4)r0以下の領域は透明、(3/4)r0以上の領域は透過率が漸減し、左右方向については251bと同様の透過率分布を有する。すなわち、方向により透過率分布が異なる異方性のアポダイゼイションフィルタとなっている。251dは、透過率分布が以下の式、
Tr(r)=100*exp(α*(r−r0)*(r−r0))…(式5)
で定義された等方性のアポダイゼイションフィルタである。各フィルタ部の透過率分布と光学濃度分布詳細は図15にて説明する。
273aはフィルタ駆動用ステップモータ273のピニオンギヤで、フィルタ外周のギヤ253にかみ合う。従って、ピニオンギヤ273aが時計方向に駆動されると、フィルタ251は反時計方向に回転し、光束通過開口141c内に前記フィルタ部251aないし251dが順番に挿入される。
図15は、本実施例2におけるアポダイゼイションフィルタ251のフィルタ部251c及び251dのパターン特性を説明する図である。同図(a)は透過率分布を示し、実施例1の図3(a)に対応する。また、同図(b)は光学濃度(OD値)を示し、同じく実施例1の図3(b)に対応する。そして図中のフィルタ部251c−Aは、図14のフィルタ部251cのA−A断面に沿った透過率分布を示し、フィルタ部251c−Bは、同じくフィルタ部251cのB−B断面に沿った透過率分布を示している。このように、フィルタ部251cは方向によって透過率分布が異なる異方性パターンを有している。また図15中のフィルタ部251は、図14のフィルタ部251dの透過率分布で、このフィルタは中心から光減衰領域が始まる等方性のアポダイゼイションフィルタである。
以上のごとく、実施例2では、異なる透過率分布を有した複数のフィルタを備えるため、AFモードとフィルタパターンの組み合わせを適切に選ぶことで、AF精度とボケ像輪郭の緩和効果の両立を図ることができる。
図16は、アポダイゼイションフィルタ251の構造を説明するための図で、図14におけるA−A部の断面図である。251eは透明基材であるPETフィルムで、その上面にはインク受容層251fが塗工される。該インク受容層251fは微小液滴吐出装置、いわゆるインクジェット記録装置により、低散乱かつ可視光帯域において平坦な分光透過率を有した染料系の色材が吐出され、直径2r0のフィルタ有効部251aないし251dが形成される。一方、前記4箇所の有効部以外の受容層領域は、前記色材よりも光学濃度の高い、例えば顔料系の色材にて遮光部251jが形成される。その後、平坦化層251gが塗工され、印刷工程で生じた受容層表面の凹凸が平坦化される。更に平坦化層251gの上面と透明基材251eの下面には反射防止層251h及び251iが蒸着法により形成される。以上の工程で、大面積の透明基材251e上に多数のアポダイゼイションフィルタが形成されるので、最後にプレス工程で個々のフィルタに打ち抜き分離する際、回転駆動用の軸受穴252が同時に穿設され、フィルタ251が完成する。
図17は、図13ないし図16で説明した光量調節装置200を撮影装置に配置したもので、光量調節装置200の構造以外は図5に示した実施例1と同様のため、説明は省略する。
図18は、図17の撮影装置が内蔵する焦点検出モジュール450の構成と、焦点検出原理を説明する斜視図で、実施例1の図6(b)に対応する。当図においては前述したフィルタ部251cを用いた場合を示している。
焦点検出モジュール450を構成する主要部材は、実施例1と同様、フィールドレンズ451、視野マスク452、二次結像レンズ453、AFセンサ454である。そして、フィールドレンズ451が結像光学系400の予定結像面(1次結像面)近傍に位置するように、焦点検出モジュール450はサブミラー412の下方の所定位置に配置される。また、EPは結像光学系の射出瞳で、本実施例2においては、図13で説明した光束開口241cが射出瞳近傍に位置するように、光量調節装置200が結像レンズ400内に配置されている。
焦点検出モジュール450の構造は、実施例1と同一なので説明は省略するが、二次結像レンズ453の各レンズの入射開口部は、フィールドレンズ451を介して、結像光学系の射出瞳EP上に、4つの開口像(射出瞳領域EPaないしEPd)として結像される。すなわち、フィールドレンズ451に対して、二次結像レンズ453と結像光学系の射出瞳領域EPは光学的に共役関係の位置にある。
本実施例2における結像光学系の開放FナンバはF2.0となっているので、射出瞳EPは絞り値がF2.0の場合の撮影光束通過領域と見なすことができる。そして一対の射出瞳領域EPa及びEPbは、絞り値がF2.8の場合の光束通過領域内部に配置されている。また、他の一対の領域EPc及びEPdは、絞り値がF5.6の場合の光束通過領域内部に配置されている。そして、アポダイゼイションフィルタ251cを用いる場合は同図のごとく、結像光学系の射出瞳位置にアポダイゼイションフィルタが侵入する。ここで、アポダイゼイションフィルタの透過率分布は図14及び図15で説明したように、上下方向は透明領域が広く、左右方向は透明領域が狭い異方性透過率分布を有している。そして、基線長の長い焦点検出光束は上下方向の透明領域限度内に収まり、基線長の短い焦点検出光束は左右方向の透明領域限度内に収まるように、焦点検出モジュール内の各部材の寸法や光学パラメータが決定されている。
従って、本実施例2におけるアポダイゼイションフィルタ251cを用いれば、F2.8相当の焦点検出光束とF5.6相当の焦点検出光束の両方を用いた位相差検知AFが可能となり、アポダイゼイションフィルタの効果を得ながら、一段と高精度なAFが可能となる。
図19は本実施例2の撮影装置が備えた撮影モードで、実施例1の図7に対応する。前記実施例1に対して実施例2が異なる点は以下のとおりである。
(a)複数のアポダイゼイションフィルタを備えているため、フィルタモードが単なる進退選択では無く、複数フィルタからの種別選択になっている。そして各撮影モードにおいて選択されるフィルタは、撮影モード(6)ないし(9)と(15)ないし(16)は撮影者による手動選択を可能とし、その他のモードは各モードに最適なフィルタを自動選択する。
(b)(4)のポートレイトモードにおいて、ファインダモードは光学ファインダ、AFモードはF2.8の光束を用いた位相差検出式ワンショットAFになっている。その理由は、ポートレイトモードでは速写性が要求され、かつ被写界深度が浅いために、高速・高精度の位相差検出式AFがより好ましいためである。
(c)(5)の接写モードでは背景のボケが非常に大きいため、ボケ像の輪郭緩和効果が最も大きいフィルタ251dを使用する。
(d)(6)ないし(9)の撮影モードでフィルタが手動選択された場合、フィルタの種類に応じて位相差検出式AFの検出用光束を切り換えている。具体的には、アポダイゼイションフィルタ251aあるいは251cを使用する際は、F2.8相当の検出光束が利用できるため、F2.8相当の検出光学系を用いた位相差検出AFを行う。また、アポダイゼイションフィルタ251bを使用する際は、F5.6相当の光束のみが使用可能なため、F5.6相当の検出光学系を用いた位相差検出AFを行う。一方アポダイゼイションフィルタ251dを使用する際は、F5.6相当の検出光束も使用不可能なため、AFを禁止する。
(e)(14)のポートレイトモードでは、背景のボケが大きく、かつ位相差検出式の代わりにコントラスト検出式サーボAFを行うため、ボケ像の輪郭緩和効果が最も大きいフィルタ251dを使用する。
上記5点以外は、図7の実施例1とほぼ同様の制御を行う。
図20ないし図23は、本実施例2における撮影装置の制御フローを示したものである。まず図20を用いて撮影時のメイン制御フローを説明するが、メイン制御フローは図8の実施例1と同様のフローである。すなわち、ステップS201ないしステップS202を経由して、ステップS203では撮影装置の初期化を行い、ステップS204ないしステップS206では撮影のための各種モードや撮影条件の設定を受け付ける。そして、動画撮影モードであればステップS211の動画撮影サブルーチンへ、静止画撮影モードであればステップS231の静止画撮影サブルーチンへ移行する。
図21は動画撮影サブルーチン図で、図9の実施例1に対して、フィルタ制御フローのみが異なる。すなわち実施例1では、ステップS115ないしステップS117で、アポダイゼイションフィルタのオンオフ設定状態に応じてフィルタを進退制御していたが、この実施例2では、ステップS215及びステップS217において、選択されたアポダイゼイションフィルタの種別を判定し、選択されたフィルタを光束開口内に進入駆動する。その他のフローは実施例1と同一なため、説明は省略する。
図22は静止画撮影のサブルーチンフローで、図10の実施例1に対して、フィルタ制御フローのみが異なる。すなわち実施例1では、ステップS134ないしステップS136で、アポダイゼイションフィルタのオンオフ設定状態に応じてフィルタを進退制御していたが、この実施例2では、ステップS234及びステップS236において、選択されたアポダイゼイションフィルタの種別を判定し、選択されたフィルタを光束開口内に進入駆動する。その他のフローは実施例1と同一なため、説明は省略する。
図23はAF制御サブルーチンフローで、図11の実施例1に対して、位相差検出式AFの選択動作フローのみが異なる。すなわち実施例1では、ステップS153ないしステップS155で、アポダイゼイションフィルタが退避している場合(不使用の場合)は、基線長の長いF2.8対応の焦点検出光学系を用い、アポダイゼイションフィルタが進入(使用)している場合は基線長の短いF5.6対応の焦点検出光学系を用いた位相差検出を行っていた。
一方、実施例2では、ステップS252においてAFモードが位相差検出式と判断された場合は、ステップS253にてアポダイゼイションフィルタの種別判定を行う。そして選択されたフィルタが251a及び251cの場合は、ステップS254にて基線長の長いF2.8対応の焦点検出光学系を用いた位相差検出を行い、次いでステップS256にてデフォーカス演算を行う。
また、ステップS253にてフィルタの種別が251bと判定された場合は、ステップS255にて基線長の短いF5.6対応の焦点検出光学系を用いた位相差検出を行い、次いでステップS256にてデフォーカス演算を行う。また、ステップS253にてフィルタの種別が251dと判定された場合は、位相差検出AFが不可能なために該位相差検出AFを禁止し、ステップS275にジャンプして図22の静止画撮影サブルーチンにリターンする(この場合は、図19に示すようにコントラスト検出AFが行われる)。その他のフローは実施例1と同一なため、説明は省略する。
また、図22におけるステップS281の静止画露光サブルーチンは、図12に示した実施例1の静止画露光サブルーチンと同一なため、説明は省略する。
以上の実施例2と制御フローにより、アポダイゼイションフィルタの種別に適したAF制御が実行される。具体的には、撮影モードとアポダイゼイションフィルタの種類に応じて、基線長の長い位相差検出AF、基線長の短い位相差検出AF、AF禁止、コントラスト検出AFの4種類のAF制御モードの中から最適なものが選択される。従って、撮影シーンに応じてAFの応答性と合焦精度の重要性を勘案してAF方式を選択するため、主被写体には正確に焦点が合い、かつボケ像の輪郭が柔らかくなった高品位画像を簡単に得ることができる。
上記の実施例1および2では、アポダイゼイションフィルタの使用状況に応じてAF方式を選択していたが、以下に示す本発明の実施例3は、アポダイゼイションフィルタ使用時はAF中のフィルタ進入を禁止し、AF終了後にフィルタの進入駆動を行う実施例を示す。以下に図24ないし図29を用いて実施例3の構成及び動作を説明する。
図24は、実施例3の光量調節装置300の構造を説明するための要部分解斜視図で、図1に示した実施例1のフィルタ151が、この実施例3では351になった箇所のみが異なる。すなわち、実施例1においては、光束通過開口内にアポダイゼイションフィルタが進入した場合も位相差検出AFを可能とするため、アポダイゼイションフィルタの透過率分布パターンが、有効最大半径すなわち入射高最大値r0に対して、r0/2以下の領域は透明とし、該透明部を通過する光束で位相差検出AFを行っていた。一方、本発明の実施例3においては、アポダイゼイションフィルタの透過率分布パターンは、第2実施例の図14に示したフィルタ251dと同様の透過率分布を有している。すなわち、中央部の透明領域は実質上ゼロで、中心から最外周全域に渡って透過率漸減領域が設けられている。そのため、ボケ像の輪郭緩和効果に優れるが、フィルタを介してのAFに誤差を生ずる場合があるため、後述するフィルタ駆動制御を行う。
フィルタ351の透過率分布以外の構成は、図1ないし図6に示した実施例1と同一なため、詳細説明は省略する。
図25は、実施例3の撮影装置が備えた撮影モードで、実施例1の図7に対応する。前記実施例1に対して実施例3が異なる点は以下のとおりである。
(a)(4)のポートレイトモードにおいて、ファインダモードは光学ファインダ、AFモードはF2.8の光束を用いた位相差検出式ワンショットAFになっている。その理由は、ポートレイトモードでは速写性が要求され、かつ被写界深度が浅いために、高速・高精度の位相差検出式AFが必要とされるためである。
(b)(6)ないし(9)の撮影モードにおいて、フィルタの使用可否にかかわらず、F2.8相当の検出光学系を用いた位相差検出AFを行う。
上記2点以外は、図7の実施例1とほぼ同様の制御を行う。
図26ないし図29は、本実施例3における撮影装置の制御フローを示したものである。まず図26を用いて撮影時のメイン制御フローを説明するが、メイン制御フローは図8の第1実施例と同様のフローである。すなわち、ステップS301ないしステップS302を経由して、ステップS303では撮影装置の初期化を行い、ステップS304ないしステップS306では撮影のための各種モードや撮影条件の設定を受け付ける。そして、動画撮影モードであればステップS311の動画撮影サブルーチンへ、静止画撮影モードであればステップS331の静止画撮影サブルーチンへ移行する。
なお、実施例3のステップS311の動画撮影サブルーチンは、図9に示した実施例1のフローと同一であるため、説明は省略する。
図27は静止画撮影のサブルーチンフローで、図10の実施例1に対して、フィルタ制御フローのみが異なる。すなわち実施例1では、ステップS134ないしステップS136で、アポダイゼイションフィルタのオンオフ設定状態に応じてフィルタを進退制御していたが、この実施例3では、ステップS336においてアポダイゼイションフィルタの退避を必ず実行する。すなわち静止画撮影の際は、フィルタの選択状態に拘らず、フィルタ退避動作を行う。そしてステップS337にて撮影者によって静止画撮影用の撮影準備スイッチがオン操作されたか否かを判別する。オン操作されていない時は当ステップにとどまり、撮影準備スイッチがオン操作されるまで待機する。ステップS337で撮影準備スイッチがオン操作されたと判定されたら、ステップS337からステップS341に進む。
ステップS141では測光演算2を行う。これは静止画撮影用の測光演算で、当ステップの直前に取得した画像信号の最大値、最小値、平均値等を用いて被写体の明るさを算出する。そして所定の露出制御に関する式を用いて、光量調節装置300の絞り制御値を演算する。この際にも、アポダイゼイションフィルタ使用時は、CPU431のROMに記憶された減光段数に関する特性値を参照して、適正な絞り制御値が演算される。
ステップS351では、AFサブルーチンを実行し、焦点調節制御を行う。詳しくは図28で説明する。
ステップS343では、撮影者によって静止画撮影用の撮影スイッチがオン操作されたか否かを判別する。オン操作されていない時はステップS141に戻り、測光演算2とAF制御を繰り返し実行する。そしてステップS343で撮影スイッチがオン操作されたと判定されたら、ステップS343からステップS381に進む。
ステップS381では、静止画記録用の静止画露光サブルーチンを実行する。詳しくは図29で説明する。そして露光終了後はステップS345にて制御を終了する。
図28はAF制御サブルーチンフロー図で、図11の実施例1に対して、位相差検出式AFの選択動作フローのみが異なる。すなわち実施例1では、ステップS153ないしステップS155で、アポダイゼイションフィルタが退避している場合(不使用の場合)は、基線長の長いF2.8対応の焦点検出光学系を用い、アポダイゼイションフィルタが挿入(使用)している場合は基線長の短いF5.6対応の焦点検出光学系を用いた位相差検出を行っていた。
一方、実施例3では、図27のステップS336においてAF制御前にアポダイゼイションフィルタの退避動作を行っているため、フィルタによる位相差検出AFへの悪影響が排除されている。従って、ステップS354にて一律的に基線長の長いF2.8対応の焦点検出光学系を用いた位相差検出を行う。次いでステップS356にてデフォーカス演算を行い、ステップS357にてフォーカスレンズの駆動を行う。
上記ステップ以外は実施例1と同様のフローであるため、説明は省略する。
図29は静止画露光サブルーチンフローで、図27の静止画撮影サブルーチンフローにおけるステップS381の制御内容を示している。
ステップS381を経由してステップS182では、図27のステップS341で実行した測光演算2において計算された絞り制御値に基づき、光量調節装置300の絞り羽根111を絞り込み駆動する。
ステップS383では、図26のメインルーチンで設定されたアポダイゼイションフィルタの制御モードを判別する。そして該制御モードが強制退避モードの時には、フィルタ駆動は行わずにステップS387にジャンプする。フィルタ制御モードが強制挿入モードの時は、ステップS385にジャンプしてアポダイゼイションフィルタを光束開口内に進入駆動し、ステップS386に進む。フィルタ制御モードが手動選択モードの時は、ステップS384に移行し、図26のステップS306で撮影者により選択されたフィルタ使用可否の結果に基づき、ステップS385あるいはステップS387に進む。すなわち、撮影者によりフィルタ使用が選択されていれば、ステップS385にてフィルタ挿入駆動を行い、ステップS386に進む。また、撮影者によりフィルタ不使用が選択されていれば、ステップS387にジャンプする。
ステップS385でフィルタ挿入動作を実行したのち、ステップS386では焦点ずれ補正制御を行う。実施例3のように、フィルタ退避状態でAF制御を行って合焦させ、その後フィルタを進入させて撮影を行うと、フィルタの厚さ分だけ結像光学系の光路長が変化し、撮影画像の焦点ずれを生ずる。したがって、CPUのメモリ内にフィルタ有無による焦点ずれ量を記憶しておき、ステップS386では該記憶値に基づいてフォーカスレンズを微小量駆動する。該焦点ずれ補正量がズームレンズとフォーカスレンズの位置に応じて異なる場合は、両レンズ群の位置に応じた複数の補正値を記憶すればよい。
ステップS387では、現在選択されているファインダモードの判別を行う。そして電子ファインダモードであると判別された場合は、ステップS388にてフォーカルプレンシャッタ416の閉鎖駆動を行い、撮像素子440への撮影光束を遮断する。これは、図27のステップS332及びステップS333において、電子ファインダモード時はシャッタを開放にして撮像素子が被写体像を取得していたが、静止画露光時は露光開始と終了の制御をメカニカルシャッタで行い、撮影画面上でのシャッタ秒時の均一性確保や、画像信号読み出し時のスミア防止を図るためである。ステップS387で光学ファインダモードと判別された場合は、フォーカルプレンシャッタは閉じているため、ステップS389にジャンプする。
ステップS389では、画像を取得するために、撮像素子440の電荷蓄積を開始する。ステップS390ではフォーカルプレンシャッタ416の先幕を走行してシャッタを開放させる。ステップS391では、図27におけるステップS341の測光演算2で算出したシャッタ秒時に基づいて、シャッタ416の後幕を走行してシャッタを閉鎖させ、撮像素子440への光束を遮断する。ステップS392では撮像素子440より電荷を転送し、ステップS393では取得した300万画素相当の画像信号に静止画用の画像処理を施す。ステップS394では、静止画記録用の画像圧縮を行い、ステップS395にて圧縮された画像信号をメモリ443に記録する。ステップS396では光束開口内に進入しているフィルタを開口外に退避させ、ステップS397では絞り羽根を開放に復帰駆動し、ステップS398にて図27の静止画撮影サブルーチンにリターンする。
以上の実施例と制御フローにより、アポダイゼイションフィルタ使用の際は、フィルタを退避させてAFを行うためにAF精度の低下が防止される。すなわち、アポダイゼイションフィルタ使用時は位相差検出用光束の外側部分が減衰されて焦点検出誤差が大きくなるため、フィルタ退避状態で位相差検出を行うことで、常に基線長の長い検出光学系を用いた高精度AFが可能となる。
また、アポダイゼイションフィルタ使用時は透過光量が減衰し、かつボケ像の直径も低下するため、コントラスト検出AFにも若干の悪影響を及ぼす。この場合にもフィルタ退避状態でコントラスト検出を行うことで、検出精度の低下を防止できる。以上の実施例により、位相差検出AFが選択された時は高速AFが、コントラスト検出AFが選択された時は高精度AFが実行され、主被写体には正確に焦点が合い、かつボケ像の輪郭が柔らかくなった高品位画像を簡単に得ることができる。