JP4428906B2 - クラッチ装置 - Google Patents
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- F16H45/00—Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches
- F16H45/02—Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches with mechanical clutches for bridging a fluid gearing of the hydrokinetic type
- F16H2045/0273—Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches with mechanical clutches for bridging a fluid gearing of the hydrokinetic type characterised by the type of the friction surface of the lock-up clutch
- F16H2045/0284—Multiple disk type lock-up clutch
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、クラッチをオイルで潤滑する構成のクラッチ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両のエンジンと変速機との間の動力伝達経路には、クラッチが設けられている。このクラッチとして、摩擦式のクラッチを用いた場合は、摩擦部材同士の接触部分の発熱および摩耗が生じるため、オイルによりクラッチを潤滑および冷却している。このように、エンジンと変速機との間の動力伝達経路に、クラッチを設けたトルクコンバータの一例が、特開2001−116110号公報に記載されている。
【0003】
この公報においては、エンジン出力軸にコンバータカバーが連結されており、コンバータカバーの開口端にはインペラシェルが接合されている。コンバータカバーおよびインペラシェルの内部にはタービンハブが配置されている。また、コンバータカバーの内面にはドラムが取り付けられており、タービンハブにはハブプレートが取り付けられている。さらに、ハブプレートの外周には環状のハブが取り付けられている。このハブとハブプレートとは相対回転可能である。そして、コンバータカバーの円筒部と、タービンハブとの間の空間には、ロックアップクラッチおよびトーションダンパが設けられている。
【0004】
このロックアップクラッチは、ドラムにスプライン嵌合された複数のプレートと、ハブにスプライン嵌合された複数のディスクとを有する。また、ハブの外周には、ハブの軸線方向に動作するピストンが設けられている。一方、トーションダンパは、タービンハブと一体回転する環状のハブクラッチと、タービンハブと一体回転し、かつ、開口部を有するドライブプレートと、ハブクラッチとドライブプレートとの間で動力伝達をおこなうトーションスプリングとを有する。なお、タービンハブにはタービンシェルが取り付けられている。
【0005】
上記構成において、エンジン出力軸のトルクが、コンバータカバーおよびインペラシェルまたはドラムに伝達される。ここで、ロックアップクラッチが解放されている場合は、インペラシェルとタービンシェルとの間で、オイルの運動エネルギにより動力伝達がおこなわれ、タービンシェルのトルクがタービンハブに伝達される。
【0006】
これに対して、ピストンが動作してロックアップクラッチが係合された場合は、コンバータカバーとハブとの間で、ロックアップクラッチの摩擦力により動力伝達がおこなわれる。ハブのトルクがハブクラッチに伝達されると、ハブクラッチのトルクがトーションスプリングを経由してドライブプレートおよびタービンハブに伝達される。コンバータカバーおよびインペラシェルの内部にはオイルが供給されており、そのオイルの一部がロックアップクラッチに供給されて、ロックアップクラッチの潤滑および冷却がおこなわれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報に記載されているロックアップクラッチ付きトルクコンバータにおいては、コンバータカバーに取り付けられているドラムの内側にハブが配置されている。このため車両の停止時などにおいては、ハブが停止するため、内側、つまり、ハブ付近に存在するオイルを、クラッチプレート同士の間、特に、ドラムに取り付けられているプレート側には供給することが困難であった。その結果、ドラムのプレートに対する潤滑性が低下する可能性があった。
【0008】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、クラッチの部品のうち、外側に配置される伝動部材を、車両の停止中にも潤滑することのできるクラッチ装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動力源の動力がクラッチを経由してダンパに伝達されるように構成され、前記クラッチが、前記駆動力源に連結される第1の伝動部材と、前記ダンパに連結され、かつ、第1の伝動部材との間における摩擦によるトルク伝達力を制御可能な第2の伝動部材とを有し、前記クラッチをオイルで潤滑するクラッチ装置において、前記第1の伝動部材は、外周面にディスクが取り付けられた円筒部を有し、前記第2の伝動部材は、前記ディスクに摩擦接触させられるクラッチプレートを含み、前記ディスクおよびクラッチプレートのいずれかを軸線方向に押圧するピストンと、少なくとも前記第1の伝動部材における前記円筒部の内周面と前記ピストンとにより囲まれた空間であって前記ピストンの前記ディスクおよび前記クラッチプレート側に設けられて前記ピストンを前記ディスクおよび前記クラッチプレートから離れる方向に押圧する油圧が供給されかつその油圧の一部が前記クラッチに供給される油圧室とが、前記駆動力源の回転に伴い前記第1の伝動部材と共に回転するように設けられ、かつ前記ピストンおよび前記第1の伝動部材の少なくとも一部が前記第2の伝動部材に対してその半径方向で内側に配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項1の発明によれば、駆動力源の回転にともない、第1の伝動部材とピストンとが共に回転するため、オイルの流速ロスが発生せず、オイルが第2の伝動部材に向けて供給される。したがって、第2の伝動部材に対するオイルの供給量が増加する。また、ピストンはクラッチのトルク伝達力を調整する機能を有するものであり、第2の伝動部材に対するオイルの供給量を増加するために、専用の部品を設ける必要はない。
【0011】
また、クラッチがスリップされ、かつ、駆動力源の振動がクラッチに伝達され、前記振動がクラッチの第1の伝動部材から第2の伝動部材に伝達された場合でも、その振動がダンパにより吸収される。したがって、ダンパの下流に伝達される振動の周波数が低下される。
【0013】
また、請求項1の発明によれば、第2の伝動部材が停止している場合でも、駆動力源の動力により第1の伝動部材が回転されると、第2の伝動部材よりも内側にあるオイルが、第1の伝動部材の回転による遠心力で、第2の伝動部材に向けて供給され、第2の伝動部材に対するオイルの供給量が一層増加する。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記ダンパは、相互に動力伝達可能に連結された入力部材および出力部材を有しており、前記第2の伝動部材は、円筒形状のドラムと、このドラムの内周に形成された内歯と、このドラムの外周に形成され、かつ、前記入力部材が動力伝達可能に係合する外歯とを有し、その内歯に前記クラッチプレートが係合させられていることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる。
【0016】
請求項3の発明は請求項2の構成に加えて、前記ドラムは、環状体を、その半径方向に加圧してプレス成形し、前記外歯と内歯とを同一工程で加工したものであることを特徴とするものである。
【0017】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の作用が生じる他に、前記ドラムを製造する工程において、その製造工数が低減される。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの構成に加えて、前記ダンパは、相互に動力伝達可能に連結された入力部材および出力部材を有しており、前記ダンパは、前記入力部材からトルクを受ける第1の弾性部材と、この第1の弾性部材からトルクを受ける中間部材と、この中間部材からトルクを受ける第2の弾性部材とを有し、この第2の弾性部材のトルクが前記出力部材に伝達されるように構成されているとともに、前記入力部材と前記中間部材とが、回転軸線方向の異なる位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの発明と同様の作用が生じる他に、回転軸線を中心とする半径方向において、入力部材の配置領域と中間部材の配置とを重ならせることができる。
【0020】
この請求項4においては、入力部材の少なくとも一部と、中間部材の少なくとも一部が、回転軸線方向で異なる位置に配置されていればよい。言い換えれば、回転軸線に直交する平面内において、入力部材の少なくとも一部の配置領域と、中間部材の少なくとも一部の配置領域とが重なる。
【0021】
請求項5の発明は、請求項4の構成に加えて、前記第1の弾性部材および第2の弾性部材は、前記回転軸線を中心として円周方向に伸縮するコイルばねであり、前記中間部材と前記コイルばねとの接触部が、前記コイルばねの中心点を基準として実質的に点対称となる複数箇所に設定されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明と同様の作用が生じる他に、コイルばねの巻き方向の円周上で均等に圧縮荷重が加えられる。
【0023】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明が適用される車両のパワートレーンの一例を、図2に基づいて説明する。図2に示すパワートレーンは、駆動力源としてのエンジン1から出力されたトルクが、クラッチ2、ダンパ3、トランスミッション4、ドライブシャフト5を経由してタイヤ6に伝達されるように構成されている。エンジン1は燃料の燃焼により動力を出力する装置であり、エンジン1としては内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることができる。前記クラッチ2は、具体的には摩擦式クラッチであり、オイルにより潤滑および冷却される、いわゆる湿式クラッチである。
【0024】
また、トランスミッション4としては、無段変速機または有段変速機のいずれを用いてもよい。無段変速機とは、インプットシャフトとアウトプットシャフトとの間における変速比を、無段階に(連続的に)切り換えることのできる変速機である。有段変速機とは、インプットシャフトとアウトプットシャフトとの間における変速比を、段階的に(不連続的に)切り換えることのできる変速機である。なお、上記パワートレーンにおいては、クラッチ2およびダンパ3と並列に、流体継手100が設けられていてもよい。流体継手100は、トルクを増幅する機能を有するもの、または有しないもののいずれであってもよい。以下、エンジン1からトランスミッション4に至る動力伝達経路の実施例を順次説明する。
【0025】
(第1実施例)
この第1実施例は、図2に示すパワートレーンにおいて、流体継手100の無い構成に相当し、この第1実施例を図1に基づいて説明する。図1において、7はハウジングであり、ハウジング7の内部にはインプットシャフト8が設けられている。また、エンジン1のクランクシャフト9およびインプットシャフト8は、回転軸線A1を中心として回転可能である。クランクシャフト9におけるインプットシャフト8側の端部には凹部10が形成されている。凹部10にはセンターピース11が嵌合されている。このセンターピース11は、第1の円筒部18と、第1の円筒部18におけるインプットシャフト8側の端部に連続され、かつ、第1の円筒部18よりも外径の大きい第2の円筒部19とを有している。
【0026】
前記第1の円筒部18の外周には環状のフロントカバー12が接合されている。フロントカバー12の外周には環状のリヤカバー13が接合されており、リヤカバー13の内周にはスリーブ14が接合されている。これらフロントカバー12およびリヤカバー13により、断面形状がほぼU字形状のケーシング101が形成されている。前記スリーブ14は、回転軸線A1を含む平面内における断面形状が、ほぼL字形状に構成されている。また、クランクシャフト9の外周には、ネジ部材15によりフライホイール16が固定されている。そして、フロントカバー12とフライホイール16とがネジ部材17により固定されている。上記構成により、クランクシャフト9と、センターピース11と、フロントカバー12と、リヤカバー13と、スリーブ14とが一体に回転可能である。
【0027】
前記ケーシング101の内部に、クラッチ2およびダンパ3が設けられている。まず、クラッチ2の構成を説明する。センターピース11の第2の円筒部19の外周には、環状のクラッチハブ20がスプライン嵌合されている。また、センターピース11とクラッチハブ20とを、回転軸線方向に位置決めするスナップリング21が設けられている。クラッチハブ20であって、フロントカバー12側の側面には円筒部22が接合されている。円筒部22は回転軸線を中心として配置されている。そして、円筒部22の外周には、環状のディスク23がスプライン嵌合されている。ディスク23は回転軸線方向に複数設けられている。
【0028】
一方、円筒部22の外側には円筒形状のクラッチドラム24が配置されている。クラッチドラム24は、後述するホルダにより保持されており、クラッチドラム24の内周には、環状のクラッチプレート25がスプライン嵌合されている。クラッチプレート25は回転軸線方向に複数設けられており、クラッチディスク23とクラッチプレート25とが交互に配置されている。すなわち、クラッチ2は多板クラッチである。
【0029】
前記円筒部22とセンタピース11との間には、環状の保持部品26が配置されており、保持部品26がフロントカバー12に固定されている。また、ケーシング101内にはピストン27が設けられている。このピストン27は、センタピース11の第2円筒部19の外周面と、保持部品26の外周面とに沿って、回転軸線方向に移動自在である。ピストン27は環状に構成され、断面形状がほぼコ字形状の内側部27Aと、内側部27Aの外周に連続された押圧部27Bとを有する。また、クラッチハブ20とピストン27との間には、リターンスプリング28が設けられている。リターンスプリング28は、ピストン27をフロントカバー12に向けて回転軸線方向に押圧する機能と、クラッチハブ20をリヤカバー13に向けて回転軸線方向に押圧する機能とを有している。
【0030】
さらに、クラッチハブ20と第2の円筒部19と円筒部22とピストン27とにより取り囲まれた環状の空間が、油圧室B1とされている。さらに、ピストン27とフロントカバー12の内周端と保持部品26とセンターピース11とにより取り囲まれた環状の空間が、油圧室C1とされている。上記のクラッチハブ20、円筒部22、クラッチディスク23、クラッチプレート25、クラッチドラム24などの部品が所定の位置に配置されて、組立体(アッセンブリ)としてのクラッチ2が構成されている。
【0031】
前記センターピース11には、小径凹部29および大径凹部30が形成されている。また、センターピース11には、小径凹部29と油圧室C1とを連通する油路51が形成されている。さらに、センターピース11には、大径凹部30と油圧室B1とを連通する油路52が形成されている。そして、小径凹部29内にインプットシャフト8の端部が配置されている。さらに、大径凹部30の内径は小径凹部29の内径よりも大きく設定されている。
【0032】
また、インプットシャフト8の外周には、円筒形状の出力ハブ31がスプライン嵌合されている。このインプットシャフト8および出力ハブ31と、センターピース11およびクラッチハブ20とは相対回転可能である。さらに、出力ハブ31の円筒部分は大径凹部30内に設けられており、出力ハブ31には外向きフランジ31Aが形成されている。出力ハブ31には大径凹部30に連通する油路53が形成されている。さらに出力ハブ31とセンタピース11の第2円筒部19との間が、密封装置58によりシールされている。一方、出力ハブ31の外向きフランジ31Aの外周端には、環状のホルダ32が固定されている。また、ホルダ32に対してリベット33により他のホルダ34が固定されている。そして、ホルダ32とホルダ34との間に前記ダンパ3が設けられている。
【0033】
以下、ホルダ32,34およびダンパ3の構成を具体的に説明する。ホルダ32は円筒部35を有し、ホルダ34は円筒部36を有している。円筒部35,36の内径は、クラッチドラム24の外径よりも大きく設定されている。そして、ホルダ32の円筒部35から外側部分の構成と、ホルダ34の円筒部36から外側部分の構成は、回転軸線A1に直交する平面を隔てて、面対称となっている。そこで、ホルダ32,34の構成を、便宜上、並行して説明する。
【0034】
ホルダ32,34には、図1および図3に示すように、円筒部35,36の外側に連続された半径方向部37が形成されており、半径方向部37には円周方向に複数の開口部38が形成されている。半径方向部37であって、各開口部38の外側および内側に連続する部位には、湾曲部37Aが形成されている。また、半径方向部37の外周端には、半径方向部37を回転軸線方向に貫通する孔39が形成されている。そして、ホルダ32の半径方向部37と、ホルダ34の半径方向部37との間に、図1に示すような円筒形状のカラー40が介在されているとともに、孔39およびカラー40内を貫通してリベット33が取り付けられている。
【0035】
このようにして、ホルダ32とホルダ34とが、半径方向および回転軸線方向において、相互に位置決め固定されている。また、ホルダ32,34と出力ハブ31とインプットシャフト8とは一体回転可能である。なお、円筒部35の内周には環状のブッシュ(滑り軸受)49が嵌合され、円筒部36の内周には環状のブッシュ(滑り軸受)50が嵌合されている。ブッシュ49,50は、共に断面形状がほぼL字形状に構成され、ブッシュ49,50とホルダ32,34との相対回転および軸線方向の相対移動が防止されている。このブッシュ49,50の内側に、前記クラッチドラム24が保持されている。ブッシュ49,50とクラッチドラム24とは相対回転可能である。
【0036】
一方、ダンパ3は、入力ディスク41と2つの中間プレート42とコイルばね43,44を有している。コイルばね43の巻き径は、コイルばね44の巻き径よりも大きく、コイルばね43の内側にコイルばね44が配置されている。コイルばね43の外径は、ホルダ32,34の開口部38の半径方向の幅よりも小さく設定されている。図4に示すように、入力ディスク41は、環状部45と、環状部45の内周に形成された内歯46と、環状部45の外周から半径方向に突出した突出部47とを有している。突出部47は、環状部45の円周方向に複数、この実施例では、4箇所形成されている。
【0037】
ここで、クラッチドラム24と入力ディスク41およびクラッチプレート25との連結構造を説明する。まず、クラッチドラム24の外周には外歯59が形成され、クラッチドラム24の内周には内歯60が形成されている。そして、クラッチドラム24の外歯59と、入力ディスク41の内歯46とが係合されている。また、クラッチドラム24の内歯60と、クラッチプレート25の外歯61とが係合されている。
【0038】
2つの中間プレート42はいずれも、図5に示すように環状に構成されており、中間プレート42には円周方向に複数、この実施例では8箇所に保持孔48が開口されている。そして、図1に示すように、回転軸線方向において、中間プレート42同士の間に入力ディスク41が配置されている。また、2つの中間プレート42と入力ディスク41とは相互に平行である。さらに回転軸線A1に直交する平面(言い換えれば投影面)において、入力ディスク41の配置領域と、2つの中間プレート42の配置領域とが重なっている。さらに、2つの保持孔48と1つの開口部38とが、円周方向で対応するように、2つの中間プレート42と、ホルダ32,34とが円周方向において位置決めされている。
【0039】
さらに、図6に示すように、各保持孔48には、コイルばね43,44が1組ずつ配置されており、入力ディスク41の円周方向において、各突出部47同士の間に、コイルばね43,44を1組として、2組ずつ配置されている。また、各突出部47の外周端は、リベット33が配置されている円周上に到達している。
【0040】
上記の入力ディスク41、中間プレート42、コイルばね43,44によりダンパ3が構成されており、入力ディスク41、中間プレート42、コイルばね43,44を、ホルダ32とホルダ34との間に配置し、かつ、ホルダ32,34をリベット33で固定して、組立体(アッセンブリ)としてのダンパ3が形成されている。ダンパ3が組み立てられた状態において、コイルばね43,44は、ホルダ32,34の間において、湾曲部37Aにより回転軸線方向の移動が規制され、ホルダ32とホルダ34との間の空間に、コイルばね43,44が保持されている。ダンパ3が組み立てられた状態では、入力ディスク41とホルダ32,34と中間プレート42とが、円周方向に所定角度範囲内で相対回転可能である。
【0041】
前記インプットシャフト8は、ハウジング7の円筒部54を介して回転自在に保持されている。また、円筒部54の外周にはスリーブ55が取り付けられており、スリーブ55の外側に前記スリーブ14が配置されている。なお、ハウジング7の隔壁56とスリーブ14との間が、密封装置57によりシールされている。さらに、エンジン1の動力により駆動されるオイルポンプ(図示せず)が設けられており、オイルポンプから吐出されたオイルが、油路51,52,53を経由して油圧室B1,C1に供給される。
【0042】
つぎに、この実施例の動作を説明する。まず、エンジン1が運転されると、エンジン1のクランクシャフト9のトルクは、フライホイール16を経由して、フロントカバー12、センターピース11、クラッチハブ20に伝達されて、フロントカバー12とセンターピース11とクラッチハブ20が一体回転する。この時、車両を停止させておく要求に基づいて、クラッチ2が解放されていると、エンジントルクはインプットシャフト8には伝達されない。
【0043】
これに対して、停車中にエンジン1が運転され、かつ、車両を発進させる要求が発生した場合について説明する。この場合は、油圧室C1の油圧が高められて、油圧室C1の油圧と、油圧室B1の油圧およびリターンスプリング28の押圧力との対応関係に基づいて、ピストン27が図1において左方向に移動する。すると、各クラッチディスク23および各クラッチプレート25に対する軸線方向の挟持力が増加されて、クラッチ2が係合される。
【0044】
クラッチ2のトルク容量が増加されることにともない、クラッチハブ20のトルクがクラッチドラム24に伝達されて、入力ディスク41が回転する。入力ディスク41が回転すると、突出部47と中間プレート42とによりコイルばね43,44が圧縮されて、入力ディスク41のトルクがコイルばね43,44を経由して中間プレート42に伝達される。中間プレート42が回転すると、前記コイルばね43,44とは別の組のコイルばね43,44が圧縮されて、中間プレート42のトルクが、別の組のコイルばね43,44を経由してホルダ32,34に伝達される。なお、コイルばね43,44の剛性に基づき、入力ディスク41とホルダ32,34との相対回転角度、すなわち、ねじれ角度が増加するほど、入力ディスク41とホルダ32,34との間で伝達されるトルクが高まる。
【0045】
さらに、ホルダ32,34のトルクは、出力ハブ31を経由して、トランスミッション4のインプットシャフト8に伝達される。インプットシャフト8のトルクは、変速機構(図示せず)を経由してトランスミッション4のアウトプットシャフト(図示せず)に伝達される。アウトプットシャフトのトルクは、図2のようにドライブシャフト5を経由してタイヤ6に伝達され、駆動力が発生する。このようにクラッチ2は、車両を発進させる場合に係合して駆動力を発生させる、いわゆる発進装置としての機能を有している。
【0046】
ところで、油圧室B1のオイルの一部がクラッチ2に供給され、そのオイルによりクラッチ2が冷却および潤滑される。また、第1実施例においては、クラッチ2を構成する部品のうち、円筒部22は半径方向において、クラッチプレート25よりも内側に配置されている。このため、車両が停止し、かつ、インプットシャフト8が停止している場合でも、エンジン1が回転していれば、クラッチプレート25よりも内側にあるオイルを、円筒部22の回転による遠心力で、クラッチプレート25に向けて供給することができる。したがって、クラッチプレート25に対する冷却性能および潤滑性能の低下を抑制できる。
【0047】
特に、車両の発進時はエンジン回転数が低いため、オイルポンプの吐出量が少なく、かつ、吐出圧が低く、オイルの供給不足を招く可能性がある。これに対して、第1実施例においては、エンジン回転数を高めるなどの制御をおこなうことなく、オイル不足を回避することができる。したがって、エンジン1の動力損失が増加することを抑制でき、エンジン1の燃費が低下することを抑制できる。
【0048】
また、第1実施例においては、センターピース11と共にピストン27が回転するため、油圧室B1に蓄圧されているオイルが、トルク伝達力を調整する部材であるクラッチディスク23およびクラッチプレート25側に供給される。したがって、冷却性能および潤滑性能が一層向上する。また、クラッチ2の係合圧を制御するために、元々設けられているピストン27を利用して、オイルの供給性能を高めることができるため、オイルの供給性能を高めるために、専用の部品を設ける必要はない。したがって、部品点数の増加を抑制できる。なお、センターピース11と出力ハブ31との間に密封装置58が設けられているため、油圧室B1に供給されるオイルが、油路53から油路52に至る過程で漏れることを抑制でき、クラッチ2に供給するオイル量の低下を抑制できる。
【0049】
さらに、第1実施例においては、エンジン1とダンパ3との間の動力伝達経路に、クラッチ2が配置されている。このため、例えば、車両の発進時にクラッチ2を係合させる過程でクラッチ2がスリップし、かつ、エンジン1の回転変動がダンパ3の入力ディスク41に伝達された場合でも、コイルばね43,44の伸縮により、振動が吸収もしくは緩和される。したがって、中間プレート42を経由して、インプットシャフト8に伝達される振動の周波数を低下させることができ、トランスミッション4の共振を抑制することができる。言い換えれば、車両の発進時に常用されるエンジン回転数領域において、エンジン1に連結されている動力伝達系を起振源とする、トランスミッション4の共振を抑制できる。したがって、車両の乗員が不快な振動を体感することを回避でき、乗り心地が向上する。
【0050】
また、トランスミッション4を制御するシフトポジションとしてN(ニュートラル)ポジションが選択された場合に、クラッチ2を解放させる制御をおこなえば、クランクシャフト9とクラッチハブ20との間の動力伝達経路に、動力伝達可能に連結され、かつ相対回転可能な部材が存在しない、言い換えれば、振動系が構成されないため、Nポジション時にも、トランスミッション4の共振が発生しない。
【0051】
ここで、クラッチドラム24の製造工程の一部を説明する。このクラッチドラム24は、その製造工程において、金属材料からなる環状体を、その半径方向に金型(図示せず)などで加圧してプレス成形し、図7に示す内歯60と外歯59とを同一工程で加工している。したがって、クラッチドラム24の製造工数を低減でき、クラッチドラム24の製造コストの上昇を抑制できる。
【0052】
また、第1実施例においては、入力ディスク41と2つの中間プレート42とが、軸線方向に、かつ、相互に平行に配置されている。このため、組立体としてのダンパ3を半径方向に小型化できる。言い換えれば、他の部品との相対位置関係において、回転軸線A1に直交する方向において、ダンパ3の配置スペースが制約を受けにくくなる。したがって、ダンパ3の周囲の部品との相対位置関係の自由度が増し、コイルばね43,44の配置半径を可及的に大きく設定できる。つまり、コイルばね43,44のねじり剛性を弱めることができ、振動吸収時において、振動およびノイズの発生を抑制できる。
【0053】
さらに第1実施例では、センターピース11とクラッチハブ20とが別々に製造され、そのセンターピース11とクラッチハブ20とをスプライン嵌合して一体化し、スナップリング21により位置決めしている。したがって、クラッチ2の組み立て工程において、その組付け作業性が向上し、かつ、製造コストを削減することができる。
【0054】
さらに第1実施例では、リターンスプリング28が設けられており、リターンスプリング28の押圧力が、クラッチハブ20に対して、軸線方向に作用している。そして、リターンスプリング28に押圧されるクラッチハブ20は、スナップリング21に押し付けられて、クラッチハブ20とセンターピース11とが回転軸線方向に位置決めされている。このようにして、センターピース11とクラッチハブ20とを別々に構成したことにともなう回転軸線方向の組付けガタを、リターンスプリング28の押圧力により、吸収している。
【0055】
また、クラッチ2の係合時に、ピストン27の動作に基づく軸線方向荷重が、クラッチハブ20に伝達される場合でも、この軸線方向荷重の急激な増加を、リターンスプリング28により抑制することができる。したがって、スナップリング21に対して衝撃荷重が加えられることを抑制でき、スナップリング21の耐久性を向上できる。さらにまた、クラッチ2が係合されている状態から、油圧室C1の油圧が低下した場合は、図1において、リターンスプリング28の押圧力により、ピストン27を速やかに右方向に移動させることができ、クラッチ2の解放応答性を高めることができる。このように、リターンスプリング28は複数の機能を兼備している。
【0056】
さらに第1実施例では、ブッシュ49,50によりクラッチドラム24が保持されて、クラッチドラム24が半径方向および軸線方向に位置決めされている。このため、軸線方向における各クラッチプレート25の移動範囲に対応して、軸線方向におけるクラッチドラム24の長さを最低限に設定できる。したがって、クラッチドラム24の小型化(コンパクト化)、ひいては、アッセンブリとしてのクラッチ2を、全体として軸線方向に小型化することができる。また、クラッチドラム24とホルダ32,34とが接触することを防止でき、クラッチドラム24の耐久性を向上できる。
【0057】
(第2実施例)
つぎに、第2実施例を図8に基づいて説明する。この実施例はピストン27を保持する構造の変更例である。図8においては、フロントカバー12を屈曲成形することにより、ピストン27を保持する保持部62が形成されている。この保持部62は断面形状がほぼU字形状に屈曲され、かつ、回転軸線A1を中心として環状に構成されている。したがって、ピストン27は保持部62に沿って軸線方向に動作する。このフロントカバー12は、その製造過程において、金属材料を絞り成形することにより、保持部62を形成したものである。この第2実施例においては、保持部62をフロントカバー12と一体で成形できるため、部品点数の増加を抑制でき、製造コストを削減できる。
【0058】
(第3実施例)
さらに第3実施例を図9に基づいて説明する。この第3実施例は、図2に示す流体継手100を有するパワートレーンに相当する。図9においては、フロントカバー12およびリヤカバー13により取り囲まれた空間内に、流体継手の一種であるトルクコンバータ63が配置されている。トルクコンバータ63は、ポンプインペラ64とタービンランナ65とを有する。ポンプインペラ64はリヤカバー13に形成され、タービンランナ65は出力ハブ31の外周端に取り付けられている。また、円筒部54の外周には、一方向クラッチ66を介してステータ67が設けられている。
【0059】
さらに、クラッチハブ20は円筒部68を有し、その円筒部68がセンターピース11の外周に取り付けられている。さらに、フロントカバー12の内面には、ピストン27の軸線方向の動作をガイドする環状のガイド部69が取り付けられている。さらにまた、ピストン27は、半径方向に延ばされた円板部70と、円板部70の外周に連続され、かつ、円板部70に対して傾斜した傾斜部70Aと、傾斜部70Aの外周に連続された押圧部70Bとを有している。また、ケーシング101内には、トルクコンバータ63を作動させるオイルが供給される。なお、第3実施例のその他の構成は、第1実施例と同様である。
【0060】
この第3実施例においては、エンジントルクがフライホイール16に伝達された場合において、クラッチ2が解放されていると、ポンプインペラ64とタービンランナ65との間で、オイルの運動エネルギにより動力伝達がおこなわれる。なお、ポンプインペラ64とタービンランナ65との速度比が所定の範囲にある状態では、ステータ67の機能により、エンジントルクを増幅してインプットシャフト8に伝達することができる。
【0061】
これに対して、第1実施例と同様にしてクラッチ2のトルク容量が増加された場合は、クランクシャフト9とインプットシャフト8との間で、クラッチ2の摩擦力により動力伝達がおこなわれる。この第3実施例においては、少なくとも車両の停止時は、クラッチ2が解放され、車両の走行中にクラッチ2が係合される。この第3実施例では、クラッチ2が、いわゆるロックアップクラッチとしての機能を有する。
【0062】
また、第3実施例においては、ピストン27の内周に円板部70が形成されており、その軸線方向における長さが可及的に短く設定されている。また、フロントカバー12に設けられたガイド部69により、ピストン27の軸線方向の動作が確保されている。したがって、フロントカバー12とクラッチハブ20との間の軸線方向における空間が狭い場合でも、ピストン27の作動を円滑におこなうことができ、アッセンブリとしてのクラッチ2を、全体として軸線方向に小型化することができる。なお、第3実施例では、内側部70および傾斜部70Aの回転にともなう遠心力で、オイルがクラッチプレート25側に供給される。さらに、第3実施例において、第1実施例と同様の構成部分については、第1実施例と同様の作用効果を得られる。
【0063】
(第4実施例)
つぎに、第4実施例について説明する。この第4実施例は、第1実施例または第3実施例で用いるダンパ3およびホルダ32,34の他の構造例である。以下、第4実施例を、図10ないし図14に基づいて説明する。図10はダンパ3およびホルダ32,34の一部を破断した側面図、図11はホルダ32,34の側面図、図12は入力ディスク41の側面図、図14は図10のXIV −XIV 線における断面図である。
【0064】
ホルダ32の円筒部35よりも外周の構成と、ホルダ34の円筒部36よりも外周の構成とは、回転軸線A1に直交する平面を隔てて、面対称に構成されているいる。そこで、第4実施例においても、便宜上、ホルダ32,34を並行して説明する。この第4の実施例において、第1実施例と同様の構成については、第1実施例と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
前記ホルダ32,34の半径方向部37には、複数、この実施例では2つの開口部71が形成されている。2つの開口部71は、ホルダ32,34の円周方向において、180度の間隔で配置されている。つまり、ホルダ32,34の円周方向において、2つの開口部71同士の間に、2つの開口部38がそれぞれ配置されている。なお、ホルダ32,34の円周方向において、開口部71の開口長さは開口部38の開口長さよりも短く設定されている。さらに、開口部38,71は、ホルダ32,34の同一円周上に配置されている。
【0066】
また、ホルダ32,34を連結した状態において、半径方向部37であって、開口部71の外側および内側の部位と、開口部38の外側および内側の部位とでは、回転軸線方向の位置が異なる。具体的には、ホルダ32の開口部71の外側および内側の部位と、ホルダ34の開口部71の外側および内側の部位との間隔の方が、ホルダ32の開口部38の外側および内側の部位と、ホルダ34の開口部38の外側および内側の部位との間隔よりも狭く設定されている。この構成は、図14のように、ホルダ32,34であって、開口部71の内側の部位に絞り部72を形成して達成されている。
【0067】
一方、図12のように、入力ディスク41の外周には、複数、この実施例では2つの突出部47が円周方向に形成されている。また、入力ディスク41の外周であって、2つの突出部47同士の間には、他の突出部73がそれぞれ形成されている。2つの突出部73には保持孔74がそれぞれ形成されている。保持孔74は、入力ディスク41の円周方向に所定の長さを備えている。さらに、図13のように、2つの中間プレート42の外周には、2つの切欠部75が形成されている。2つの切欠部75は、中間プレート42の円周方向において、180度の間隔で配置されている。
【0068】
そして、中間プレート42の間に入力ディスク41を介在させ、かつ、開口部48にコイルばね43,44を配置し、かつ、開口部74にコイルばね76を配置してダンパ3を組み立てるとともに、ダンパ3の両側にホルダ32,34を配置し、さらには、ホルダ32,34がリベット33により固定されている。ここで、コイルばね76のばね定数は、コイルばね43,44のばね定数とは異なる。そして、ダンパ3の組み立て状態において、保持孔74と開口部71とが円周方向で同じ位置となるように、入力ディスク41と中間プレート42とが円周方向に位置決めされている。
【0069】
第4実施例においては、エンジントルクがクラッチ2を経由してクラッチドラム24に伝達されると、入力ディスク41が回転する。入力ディスク41のトルクがホルダ32,34に伝達される原理は、第1実施例と同様である。また、第4実施例においては、入力ディスク41とホルダ32,34とのねじれ角度が所定角度以上になった場合は、中間プレート42の半径方向の縁部と、ホルダ32,34の開口部71を形成する縁部、または、入力ディスク41の開口部74を形成する縁部とにより、コイルばね76が挟み付けられて、コイルばね76に対して圧縮荷重が加えられる。したがって、前記ねじれ角度が所定角度未満の場合と、所定角度以上の場合とでは、ねじれ角度に対する伝達トルクの変化特性が異なる。
【0070】
また、第4実施例においては、回転軸線方向における半径方向部37同士の間隔が、第1実施例よりも狭く設定され、かつ、湾曲部37Aにより、コイルばね76が回転軸線を含む平面方向に移動することを規制している。このため、前記平面方向におけるコイルばね76の位置決め精度および保持力が向上する。したがって、前記平面方向において、コイルばね76に作用する荷重の偏りを減らすことができ、コイルばね76の耐久性を向上させることができる。
【0071】
(第5実施例)
つぎに、第1実施例ないし第3実施例で述べたダンパ3の他の構成例を、図15に基づいて説明する。この第5実施例では、中間プレート42を1枚としている。そして、中間プレート42であって、トルク伝達時にコイルばね43,44が接触する部位を、中間プレート42の厚さ方向に屈曲させた屈曲部77が形成されている。屈曲部77はほぼV字形状に屈曲されている。中間プレート42の半径方向における屈曲部77の位置は、半径方向におけるコイルばね43の配置領域内に設定されている。前記屈曲部77とコイルばね43,44とが接触している。この第5実施例のダンパ3を、第1実施例ないし第3実施例のダンパ3に代えて場合も、第1実施例と同様の原理により、トルク伝達および振動減衰がおこなわれる。また、第5実施例のダンパ3においては、中間プレート41の枚数を削減でき、組み立て工数の低減および製造コストの削減に寄与できる。
【0072】
(第6実施例)
つぎに、第1実施例ないし第3実施例で述べたダンパ3の他の構成例を、図16ないし図19に基づいて説明する。図16は、ホルダ34の一部を切り欠いたダンパ3の側面図であり、図17は中間プレート42の側面図であり、図18は図16のXVIII −XVIII 線における断面図、図19は図16のXIX −XIX 線における断面図である。
【0073】
この第6実施例では、第1実施例とは入力ディスク41および中間プレート42の形状が異なり、かつ、中間プレート42が1枚である点が、第1実施例とは異なる。すなわち、図18に示すように、環状部45および突出部47を有する。また、環状部45と突出部47とを接続する首部78は、突出部47および環状部45に対して傾斜している。つまり、首部78は、コイルばね43,44のコイル中心点D1を通過するように屈曲している。
【0074】
一方、図17に示すように、中間プレート42は、環状部79と、環状部79の外周に連続された突出部80とを有する。図19に示すように突出部80は、コイルばね43,44のコイル中心点D1を通過するように屈曲し、その傾斜方向は入力ディスク41に対し回転軸線A1に直交する平面で略対称となっている。その他の構成は第1実施例と同様であるため、第1実施例と同じ符号を付して、その構成の説明を省略する。
【0075】
この第6実施例において、エンジントルクがクラッチ2を経由して入力ディスク41に伝達されると、入力ディスク41が回転する。すると、首部78からコイルばね43,44に対して圧縮荷重が作用し、そのコイルばね43,44の押圧力が、中間ディスク42の突出部80に伝達される。中間ディスク42が回転されると、前記コイルばね43,44とは別のコイルばね43,44が圧縮されて、入力ディスク41のトルクがホルダ32,34に伝達される。
【0076】
また、この第6実施例においては、入力ディスク41の首部78および中間プレート42の突出部80が、コイル中心点D1を通過している。つまり、入力ディスク41および中間プレート42と、コイルばね43,44とが、コイルばね43,44の巻き方向において、180度間隔をおいた2箇所の接触部E1で接触する。言い換えれば、2つの接触部E1は、コイル中心点D1を基準として、実質的に点対称となる位置に形成されている。図18および図19において、“実質的に点対称”には、コイル中心点D1を通過する直線(図示せず)上に、2箇所の接触部E1が共に配置されている場合(いわゆる、完全に点対称のもの)と、コイル中心点D1を通過し、かつ、前記直線に対して所定角度の範囲内に、2箇所の接触部E1のうちの少なくとも一方が配置されている場合とが含まれる。
【0077】
このため、コイルばね43,44の圧縮荷重が全周にほぼ均等に分散される。したがって、コイルばね43,44が、それを保持する部材との干渉を低減することができ、ヒステリシスの増加を抑制できる。さらに、中間プレート42を1枚だけ設けているため、部品点数およびダンパ3の組み立て工数を削減でき、製造コストを削減できる。なお、第6実施例においては、回転軸線方向において、中間プレート42と入力ディスク41との配置位置関係は問われない。
【0078】
ここで、この発明の構成と各実施例の構成との対応関係を説明すれば、エンジン1がこの発明の駆動力源に相当し、円筒部22が、この発明の第1の伝動部材に相当し、クラッチプレート25が、この発明の第2の伝動部材に相当し、クラッチディスク23とクラッチプレート25との摩擦力(係合圧)、またはクラッチディスク23とクラッチプレート25との間におけるトルク容量などが、この発明のトルク伝達力に相当し、ピストン27がこの発明の動作部材に相当し、入力ディスク41がこの発明の入力部材に相当し、中間プレート42がこの発明の中間部材に相当し、クラッチドラム24がこの発明のドラムに相当し、コイルばね43,44がこの発明の第1の弾性部材および第2の弾性部材に相当し、ホルダ32,34がこの発明の出力部材に相当する。
【0079】
上記の具体例に基づいて開示されたこの発明の特徴的な構成を記載すれば以下のとおりである。すなわち、駆動力源に連結される第1の伝動部材と、第1の伝動部材との間におけるトルク伝達力を制御可能な第2の伝動部材とを有し、前記ダンパは、相互に動力伝達可能に連結された入力部材および出力部材を有しており、前記第2の伝動部材は、円筒形状のドラムと、このドラムの内周に形成された内歯に係合する環状のプレート(クラッチプレートまたは入力ディスク)とを有しているとともに、その外周に、前記入力部材が動力伝達可能に係合する外歯が形成されている。さらに、前記ドラムを製造する工程で、環状体を、その半径方向に加圧してプレス成形し、前記外歯と内歯とを同一工程で加工することを特徴とするクラッチの製造方法である。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、駆動力源の回転にともない第1の伝動部材およびピストンが一体回転して、オイルが第2の伝動部材側に供給される。したがって、第2の伝達部材に対するオイルの供給性能が一層向上する。また、ピストンはクラッチのトルク伝達力を調整するための部品であり、オイルの供給性能を高めるために、専用の部品を設ける必要はない。したがって、部品点数の増加を抑制でき、クラッチ装置の組み立て工数の低減、および製造コストの低減を図ることができる。また、クラッチがスリップさせられて、駆動力源の振動がクラッチの第2伝達部材に伝達された場合でも、その振動をダンパにより吸収することができる。
【0081】
また、請求項1の発明によれば、第1の伝動部材の方が第2の伝動部材よりも内側に配置されているため、駆動力源の動力により第1の伝動部材を回転させることができる。したがって、第2の伝動部材が停止している場合でも、第1の伝動部材側に存在しているオイルを、第1の伝動部材の回転による遠心力で第2の伝動部材側に供給することができる。その結果、第2の伝動部材の潤滑性能の低下を抑制できる。
【0082】
請求項2の発明においても、請求項1の発明と同様の効果を得られる。請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、第2の伝動部材を製造する工程において、その製造工数および製造コストを低減できる。
【0083】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、ダンパを半径方向に可及的に小型化することができるとともに、半径方向の寸法制約を少なくできる。このため、第1の弾性部材および第2の弾性部材を可及的に外側に配置して、円周方向における第1の弾性部材および第2の弾性部材の長さを可及的に長くすることができる。したがって、第1の弾性部材および第2の弾性部材の剛性を低下させることができ、振動およびノイズを抑制できる。
【0084】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明と同様の効果を得られる他に、コイルばねの巻き方向の円周上に対して、円周方向で均等の押圧力が与えられる。したがって、コイルばねの伸縮が円滑におこなわれて、ヒステリシスの増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例であり、エンジンとトランスミッションとの間の動力伝達経路の構成を示す断面図である。
【図2】 この発明を適用した車両のパワートレーンを示す概念図である。
【図3】 図2に示すダンパの部品を示す側面断面図である。
【図4】 図2に示すダンパの部品を示す側面図である。
【図5】 図2に示すダンパの部品を示す側面図である。
【図6】 図2に示すダンパの一部を切り欠いた側面図である。
【図7】 図2に示すダンパおよびクラッチの部品を示す側面断面図である。
【図8】 この発明の他の実施例を示す部分的な正面図である。
【図9】 この発明の他の実施例であり、エンジンとトランスミッションとの間の動力伝達経路の構成を示す断面図である。
【図10】 この発明の他の実施例であり、ダンパの一部を切り欠いた側面図である。
【図11】 図10に示されたホルダの一部を破断した側面図である。
【図12】 図10に示された入力ディスクの側面図である。
【図13】 図10に示された中間ディスクの側面図である。
【図14】 図10に示されたダンパのXIV −XIV 線における断面図である。
【図15】 この発明の実施例における中間ディスクの他の構成例を示す断面図である。
【図16】 この発明の他の実施例であり、ダンパの一部を切り欠いた側面図である。
【図17】 図16に示す中間プレートの側面図である。
【図18】 図16のXVIII −XVIII 線における断面図である。
【図19】 図16のXIX −XIX 線における断面図である。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…クラッチ、 3…ダンパ、 22…円筒部、 24…クラッチドラム、 25…クラッチプレート、27…ピストン、 32,34…ホルダ、 41…入力ディスク、 42…中間プレート、 43,44…コイルばね、 59…外歯、 60…内歯、 A1…回転軸線、 D1…コイル中心点。
Claims (5)
- 駆動力源の動力がクラッチを経由してダンパに伝達されるように構成され、前記クラッチが、前記駆動力源に連結される第1の伝動部材と、前記ダンパに連結され、かつ、第1の伝動部材との間における摩擦によるトルク伝達力を制御可能な第2の伝動部材とを有し、前記クラッチをオイルで潤滑するクラッチ装置において、
前記第1の伝動部材は、外周面にディスクが取り付けられた円筒部を有し、
前記第2の伝動部材は、前記ディスクに摩擦接触させられるクラッチプレートを含み、
前記ディスクおよびクラッチプレートのいずれかを軸線方向に押圧するピストンと、少なくとも前記第1の伝動部材における前記円筒部の内周面と前記ピストンとにより囲まれた空間であって前記ピストンの前記ディスクおよび前記クラッチプレート側に設けられて前記ピストンを前記ディスクおよび前記クラッチプレートから離れる方向に押圧する油圧が供給されかつその油圧の一部が前記クラッチに供給される油圧室とが、前記駆動力源の回転に伴い前記第1の伝動部材と共に回転するように設けられ、かつ
前記ピストンおよび前記第1の伝動部材の少なくとも一部が前記第2の伝動部材に対してその半径方向で内側に配置されている
ことを特徴とするクラッチ装置。 - 前記ダンパは、相互に動力伝達可能に連結された入力部材および出力部材を有しており、
前記第2の伝動部材は、円筒形状のドラムと、このドラムの内周に形成された内歯と、このドラムの外周に形成され、かつ、前記入力部材が動力伝達可能に係合する外歯とを有し、その内歯に前記クラッチプレートが係合させられていることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ装置。 - 前記ドラムは、環状体を、その半径方向に加圧してプレス成形し、前記外歯と内歯とを同一工程で加工したものであることを特徴とする請求項2に記載のクラッチ装置。
- 前記ダンパは、相互に動力伝達可能に連結された入力部材および出力部材を有しており、前記ダンパは、前記入力部材からトルクを受ける第1の弾性部材と、この第1の弾性部材からトルクを受ける中間部材と、この中間部材からトルクを受ける第2の弾性部材とを有し、この第2の弾性部材のトルクが前記出力部材に伝達されるように構成されているとともに、前記入力部材と前記中間部材とが、回転軸線方向の異なる位置に配置されていることを特徴とする1ないし3のいずれかに記載のクラッチ装置。
- 前記第1の弾性部材および第2の弾性部材は、前記回転軸線を中心として円周方向に伸縮するコイルばねであり、前記中間部材と前記コイルばねとの接触部が、前記コイルばねの中心点を基準として実質的に点対称となる複数箇所に設定されていることを特徴とする請求項4に記載のクラッチ装置。
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