JP4427666B2 - 低圧ガス加圧法による液体中の溶存酸素除去方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液体中の溶存酸素を除去する方法に関し、特に低圧の窒素ガスで液体を直接加圧することにより果汁、水または水を成分とする飲食物等の溶存酸素を除去する加圧処理の方法に関する。
液体中の溶存酸素は、液体の用途により種々の障害をもたらす。特に果汁、水または水を成分とする飲食物等の液状食品類中の溶存酸素が、製品の品質変化や水を使用する配管あるいは工程での障害の原因となることは周知である。この様な溶存酸素を除去し品質の維持・改善あるいは工程での障害防止対策として窒素ガス単独又は他のガスとの混合気体を用いて窒素置換する方法若しくは装置が種々提案されている。
例えば、自然水や純水を窒素ガス中に散水し接触させて窒素置換する装置(特許文献1)、茶葉やコーヒー豆等の抽出溶媒中に窒素ガスを吹き込む方法(特許文献2)、加圧除菌濾過の加圧ガスとして窒素を用いる果汁の製法(特許文献3)、飲料および食用油を稀ガスと接触させるためのキャリアーガスとして窒素を混合する方法(特許文献4)、密閉タンク式溶存酸素除去装置(特許文献5)、乳性飲料・果汁飲料を加熱殺菌する前に液中に窒素ガスを吹き込み溶存酸素と置換する方法(特許文献6)、化学プラント、発電所、半導体工業等に用いる窒素ガス循環型脱酸素装置(特許文献7)、窒素ガスが注入された水を乱流混合するスタティックミキサーを備えた脱酸素装置(特許文献8)、原子力発電プラントにおいて窒素ガスによるパージ方式の溶存酸素濃度低減装置(特許文献9)、茶飲料の製法において窒素ガス等のバブリングにより酸素を除去したのち20〜200MPaの高圧乳化法等で処理する方法(特許文献10)、牛乳等の溶存酸素を窒素ガスと置換して殺菌する方法及び窒素ガス置換装置(特許文献11)等が開示されている。また、食品への高圧利用の研究においても100MPa以上の超高圧を利用する食品加工が研究されている。(非特許文献1)
前記各文献はいずれかの工程で窒素ガスを単独または他のガスと併用する点で共通するが、文献3ないし5以外は加圧を伴わないものであり、一方、文献3は濾過法を、文献4は稀ガスに対するキャリアーガスの一つとして窒素を、及び文献5は圧力調整機能等を備えた装置を、それぞれ開示する。しかし、これら従来の技術は個々の用途には対応出来ることはあっても、MPa以上15MPa以下という低圧の窒素ガス加圧法を用い、さらには加圧と減圧を繰り返すことにより、簡易な方法で短時間に処理でき、且つ香気・風味の品質維持効果のある溶存酸素の除去技術は開示されない。
特に徳島県の特産であるスダチを搾った果汁は、酸味のある良好な香りと鮮やかな色に特徴を有し、スダチ酢として焼き魚などの香り付けに使われる他、ポン酢や清涼飲料水の原料としても利用されている。露地栽培したスダチの収穫時期は8〜10月ごろで、それを搾ったスダチ果汁は長期間冷凍保存することができるが、香りや色の品質は、時間の経過により徐々に低下する。スダチ果汁の香りや色は酸素の影響を受けやすく、スダチを搾った後、果汁中に残存している溶存酸素を除去することは、長期間品質を保持するために重要である。スダチ果汁中の溶存酸素の除去方法として、従来の脱気法・加熱法では品質が困難なため、曝気法(ブローイングまたはバブリング)による窒素置換による方法が検討されたが、溶存酸素の除去に時間がかかり、またスダチ果汁の香気成分も同時に失うことから、充分な成果が得られていない。
特開昭63−16086号公報 特開平6−105654号公報 特開平6−292546号公報 特開平6−319497号公報 特開平9−38409号公報 特開平10−295341号公報 特開2000−176436号公報 特開2001−129304号公報 特開2001−147288号公報 特開2003−284494号公報 特許第3091752号 「食品への高圧利用」林力丸編(さんえい出版頁1〜30、1989)
従って本発明は、果汁、水または水を成分とする飲食物等の液体中の溶存酸素を除去する方法であって、超高圧、高温加熱、濾過、真空或いはバブリング等によらず、簡便で、且つ果汁等の飲食物の香気・風味の品質維持効果のある、溶存酸素除去技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、液体中の溶存酸素を窒素置換によって除去する方法であって、少なくとも、処理対象の液体を密封式の耐圧容器に収納し、窒素ガスを加圧により液体に注入し、5MPa以上15MPa以下の範囲の圧力で一定時間保持する加圧処理工程と、加えた圧力を大気圧まで減圧する脱気工程と、を備える液体中の溶存酸素除去方法において、目標とする溶存酸素濃度を得る場合に、繰り返すサイクル数をn、1サイクル内における加圧処理工程の時間をtとし、一方、複数回繰り返すことなく1回のサイクルで前記目標の濃度を得るのに要する加圧処理時間をSとするとき、nとtを乗じて得られる加圧処理工程の合計時間n×tを、n×t<Sとすることを特徴とする溶存酸素除去方法、である。
ここで耐圧容器とは、段落「0017」で後述する「加圧装置」における高圧容器であって、少なくとも15MPaの圧力下での使用に耐えうる適法な圧力容器である。また、加圧処理工程とは、液体を所望の圧力に加圧した状態を一定時間維持する作業工程を意味する。
すなわち、加圧から減圧までの工程を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、1回目のサイクルで残存した溶存酸素が再度の加圧と減圧の作用を受けて、溶存酸素の除去が進み、さらに繰り返すことによりなお一層の除去効果が得られる。とくに、目標とする溶存酸素濃度を得る場合に、前記n×t<Sとすることにより、1サイクルのみの場合と同じ溶存酸素濃度値を得るために要する複数回サイクルの合計の加圧処理時間を短縮できる。これは、加圧と減圧のサイクルを繰り返すことにより、溶存酸素をより低濃度まで除去することができるためであり、逆に同じ合計加圧処理時間とすると、得られる濃度をより低くできることにもなる。
加圧処理の技術は、特に食品加工分野における保存性を改善する技術として、食品の品質を維持しつつ殺菌ができるという特徴を活かし,多く研究されてきたが、用いる圧力が少なくとも数10MPa以上、通常100MPa以上の超高圧により対象物を間接的に加圧処理するものであり、本発明のように、液体中の溶存酸素を窒素置換によって除去する方法において、少なくとも、加圧ガスとしてMPa以上15MPa以下の範囲の窒素ガスを用いて液体を加圧する工程と、加えた圧力を一定時間保持する工程と、加えた圧力を大気圧まで減圧する工程と、を備えることを特徴とする液体中の溶存酸素除去方法が開示されることはなかった。従って本発明における「低圧ガス加圧法」とは、100MPa以上の超高圧を利用する従来の「超高圧処理技術」に対比して1/10以下の低圧であることから、本発明者らが命名した技術の名称である。
本発明の低圧ガス加圧法による溶存酸素の除去方法には、次のような効果がある。
(1)超高圧や真空を用いないので特別な装置が不要であり、(2)高温の加熱を用いないので省エネ効果があり且つ食品成分の熱変化の心配がなく、(3)真空、バブリング等を用いないので残したい香気成分の損失が少なく、食品等の泡立ちが少ない。しかも(4)短時間に且つ大量に処理できる等の効果により、コスト面、品質面でも有利な溶存酸素除去方法が提供できる。(5)また、本発明者らが先に提案した果汁の酸素ガス加圧殺菌(特願2004−246344号)の後処理として、酸素ガスを窒素ガスに切り替えるだけで果汁の脱酸素処理を行うことができるので、設備費の節約と殺菌・脱酸素処理工程の作業性改善効果がある。
処理対象の液体を密封式の耐圧容器に収納し、ヘッドスペースを利用して圧力がMPa以上15MPa以下の窒素ガスを導入し、液体を常温下、前記圧力範囲の窒素ガスで液体を直接加圧し、加圧した圧力で一定時間保持したのち大気圧(0.1MPa)まで減圧することにより、液体中の溶存酸素を除去する。得られる溶存酸素濃度(mg/l)は、加圧時間を長くするか若しくは圧力を高くすることにより、低くできる。果汁または水の実験例によると、大気圧下で示す6ないし8mg/l程度の溶存酸素濃度を、1mg/l(1ppm)程度までに減少させることができる。
溶存酸素濃度をさらに低く、或いは合計処理時間をさらに短縮するためには、前記した「加圧―減圧」の工程を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返し行う。その際、一定圧に加圧する加圧処理時間(t)及びサイクル数(n)は、得ようとする溶存酸素濃度の目標値によって変わる。果汁の実験例によると、圧力10MPa、加圧時間(t)20秒、サイクル数(n)を3として、合計加圧処理時間(n×t)60秒で、溶存酸素濃度を1mg/l(1ppm)以下にできる。また水の実験例によると、圧力10MPa、加圧時間20秒、サイクル数を8ないし9として合計加圧処理時間3分程度で、溶存酸素濃度を0.1mg/l(0.1ppm)程度にできる。ここで合計加圧処理時間とは、1サイクル中の加圧時間をt、サイクル数をnとすると、tとnを乗じて得られる時間数である。
溶存酸素を除去した液体は、配管を通して大気に接触しないように窒素雰囲気を保った状態で貯蔵容器に移送または製品詰めの工程へ回すことができる。
(実験例1)ガス加圧法による果汁の溶存酸素除去
1.実施方法
(1)スダチ果汁
実験対象として、香酸柑橘のひとつで徳島県特産のスダチの果実を搾汁した果汁(以下「スダチ果汁」という。)を選んだ。スダチ果汁はバッグインボックス(18l)入り冷凍果汁(野田ハニー食品工業株式会社提供)を使用した。品質保持のため、スダチ果汁は冷蔵庫内で解凍した後、500mlのプラスチック容器に小分けしたものを再度冷凍保管した。スダチ果汁を実験に使用する際は、小分けした冷凍果汁を冷蔵庫内で解凍して使用した。
加圧装置
加圧装置の概略を図1に示す。加圧装置は酸素の高圧ガスボンベ1、窒素の高圧ガスボンベ2、圧力調整弁3、圧力計4、圧力表示部5、分岐バルブ6、圧抜きバルブ7、遮断バルブ8および高圧容器9からなり、それぞれを接続する配管は、外径が1/16インチのステンレス製パイプを使用し、高圧に耐えられるようにした。高圧ガスボンベ1、2と高圧容器9を繋ぐ配管は、途中から分岐して圧力計4と圧抜きバルブ7にそれぞれ接続した。高圧容器9はステンレス製の容器部(容量約17ml)と蓋からなり、Oリングを蓋で締め付けて圧力の漏れを防いだ。また、異なる条件で同時に加圧実験ができるように、途中から配管を5本に分岐し、遮断バルブ8を通して高圧容器9に接続した。高圧ガスボンベ1、2はそれぞれ酸素、窒素の配管を通して分岐バルブ6に接続され、バルブの開閉により、使用するガスを選択できるようにした。
(3)スダチ果汁の加圧と減圧
スダチ果汁10mlを入れた各高圧容器9は、蓋を閉めた後、加圧装置の配管に接続した。加圧中、温度を一定に保つため高圧容器9を恒温槽内(図示なし)に置き、試験液を所定の温度に保つため、加圧5分前に恒温槽内に置いた。加圧の際は、圧力調整弁3を開いて所定の圧力まで20秒かけて昇圧した。減圧は圧抜きバルブ7を開いて10秒かけてガスを抜き、大気圧(0.1MPa)になった後、高圧容器9を取り外した。減圧後、スダチ果汁中に過剰に溶解している窒素ガスを除去するため、高圧容器9を超音波発生装置(図示なし)に浸し、1分間超音波を用いて過剰の窒素ガスを除去した。実験結果のデータは後記する実験結果の項に示した。
(4)溶存酸素の測定
溶存酸素計は株式会社堀場製作所製(OM-14)を使用した。溶存酸素の測定は、高圧容器またはビーカーに入れたスダチ果汁に電極を差し込み、揺り動かしながら、果汁中の溶存酸素濃度(mg/l)を均質にして行った。
溶存酸素除去後の香り測定
スダチ果汁の溶存酸素を窒素ガス加圧で置換するのに伴うスダチ果汁の香りの変化を観察するために、事前に嗅覚試験を行って基準を満たした試験員5名を使い、二点識別試験法によりスダチ果汁の香りを評価し、窒素置換前後の比較を行った。香りの評価点は、スダチ果汁原液の香りと全く同じ場合「評価5」、違いを感じるがスダチ果汁の香りを保持している場合「評価4」、スダチ果汁の香りはあるが品質を保持しているとはいえない場合「評価3」、スダチ果汁本来の香りとは異なる場合「評価2」、香りを感じない場合「評価1」とする5段階評価で採点し、試験員5名の平均を算出した。香りの評価点数の平均が4以上のとき、スダチ果汁本来の香りを保持していると判断する。
2.実験結果
(1)スダチ果汁中の溶存酸素量
実験に供するスダチ果汁について、加圧処理の前に30℃、0.1MPaすなわち大気圧下におけるスダチ果汁中の溶存酸素量を測定したところ、6.06〜7.12mg/lであり、平均値は6.75mg/lであった。
(2)スダチ果汁中溶存酸素の窒素ガス加圧除去
図2は、温度を20℃及び30℃、窒素ガス圧力を5MPa(図中、白丸及び白四角で示す。)及び10MPa(図中、白三角及び白菱形で示す。)の条件下で処理したスダチ果汁中の溶存酸素濃度(縦軸、単位「mg/l」)の変化を示している。加圧処理時間(横軸、単位「min」)が長くなるに従い、スダチ果汁中の溶存酸素濃度は低下し、30℃、10MPa、10分間の加圧により1mg/l以下まで低下した。窒素ガス加圧による溶存酸素濃度の変化は、圧力が同じならば、温度による違いは少なく、同じ温度ならば圧力が高い方が、濃度がより低くなることが分かる。
(3)窒素ガス加圧―減圧の繰り返し
次に、より短時間で溶存酸素を除去する加圧処理法として、窒素ガス加圧と減圧を繰り返す方法を考え、その効果を調べた実験結果を図3に示す。縦軸及び横軸は図2と同様である。この実験で、1回の「加圧―減圧」処理工程が1サイクルである。1サイクル内において、温度30℃の果汁に対し、窒素の圧力を10MPa、加圧時間を20秒、30秒、1分、2.5分、5分、10分および15分と設定し、各加圧処理のあと大気圧(0.1MPa)まで減圧する操作を行うこととする。図3中の横軸原点上のプロットは加圧処理前の原液であり、それ以外のプロットの数はサイクル数を示している。サイクルを繰り返すに従い、スダチ果汁中の溶存酸素濃度は低下し、加圧時間20秒(図中、黒丸で示す。)のサイクルを3回(合計加圧時間が1分に相当する。)繰り返した処理後の溶存酸素濃度は1.07mg/lであった。また加圧時間30秒(図中、黒三角で示す。)のサイクルを3回(合計加圧時間が1分30秒に相当する。)の処理後では0.84mg/lとなり、1mg/l以下まで減少させることができた。これに対し、図2に示す1回のみの窒素ガス加圧の場合では、1mg/l以下までスダチ果汁中の溶存酸素濃度を低下させるために、10分間程度の時間が必要であったことから、窒素ガスの加圧と減圧の繰り返しは、溶存酸素の除去に非常に効果的であることが分かる。
(比較例)
窒素ガス通気(バブリング)による溶存酸素除去
本発明の窒素ガス加圧法による溶存酸素の除去能力と比較するため、従来法の一例として、大気圧下で窒素ガスの気泡をスダチ果汁中に通気(バブリング)して、溶存酸素の窒素置換を行った。窒素ガスの通気装置は、前記加圧装置の圧抜きバルブ7に内径が3mmのナイロンチューブ(約50cm)の片端を接続し、チューブの反対の端を塞いだ後、端から5cmの間に直径1mm程度の穴を10箇所開けたものを使用した。通気はビーカーにスダチ果汁50mlを入れ、ビーカー底部にチューブの穴を開けた部分を横たえた後、穴から窒素ガスの気泡を発生させた。窒素ガスは高圧ガスボンベから直接供給し、圧抜きバルブ7でガスの流量を500ml/minになるように調節して通気を行った。
(2)窒素ガス通気による溶存酸素濃度の低下度合
図4は、20℃(図中、白丸で示す。)、30℃(図中、白三角で示す。)および40℃(図中、白四角で示す。)のスダチ果汁に、通気させたときの、スダチ果汁中の溶存酸素濃度の変化を示している。スダチ果汁中の溶存酸素濃度は、窒素ガスの通気を始めた直後から約5分間で2.0mg/lまで低下し、通気後10分で1.6mg/lに到達し、それ以下には低下しなかった。また果汁温度による溶存酸素濃度の違いは見られなかった。
(ガス加圧法とバブリング法の比較)
(1)溶存酸素の除去方法の違いによる溶存酸素濃度と香りへの影響
スダチ果汁中に大気圧下で窒素ガスの気泡を通気(バブリング)した場合と窒素ガス加圧法を適用した場合の、スダチ果汁中の溶存酸素濃度と香りの評価度の変化を調べた。
表1は、処理方法とスダチ果汁中の溶存酸素濃度及び香りの評価度の関係を示す。すなわち、本発明のガス加圧法によって、スダチ果汁を30℃、10MPaの条件で加圧処理時間×サイクル数として、20秒×3サイクル、30秒×2サイクル、1分×1サイクル、10分×1サイクルおよび15分×1サイクルの処理を行ったときの溶存酸素濃度と香り評価結果、及び比較例としてスダチ果汁に窒素ガスの気泡を大気圧下(0.1MPa)、30℃で1、2、および10分間通気、すなわちバブリングしたときの溶存酸素濃度と香りの評価結果を示す。
その結果、本発明のガス加圧法によって、先ず「加圧―減圧」を繰り返す方法では、30℃、10MPaで20秒×3サイクル、及び30秒×2サイクルの加圧処理で溶存酸素濃度が1mg/lとなり、しかも香りの評価はそれぞれ4.2と4.0を示し、スダチ果汁特有の香りを保持することができた。次に、1回の「加圧―減圧」では、加圧処理時間1分で溶存酸素は2.26mg/lとなり、香り評価は4.2を示し、良好な香り保持結果が得られた。
これに対し、比較例のバブリング法すなわち大気圧下で窒素ガスの気泡を通気したスダチ果汁は、1分間の処理では香り評価は4.2を示し、香りを維持していたが、溶存酸素濃度は4.56mg/lであり酸素除去効果を示さなかった。また10分間の通気処理したスダチ果汁は、溶存酸素濃度は1.6mg/lとやや低下したが、香りの評価が2.6となり、スダチ果汁本来の香りを保持していなかった。すなわち窒素ガス通気処理では、10分間のバブリングによっても、溶存酸素濃度が1mg/l程度に低下せず、且つ香りの保持もできないことが分かった。すなわち、バブリング法では本発明のガス加圧法に比べて、溶存酸素の除去能力と香りの保持の両方を満たす条件は得られないことが分かった。
Figure 0004427666
(実験例2)水の溶存酸素除去
この実験では前記した加圧装置を用い、実験手順は水道水を対象とする以外は、果汁の実験条件と同様に行った。実験に用いた水の加圧処理前の溶存酸素濃度は、30℃、0.1MPa(大気圧下)で7.91mg/lであった。次に、水温を30℃に保ち、窒素ガス加圧の圧力を5.0、10.0、及び13.0MPaの条件とし、20秒の加圧処理と減圧の繰り返し(「加圧―減圧」のサイクル)の実験を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0004427666
表2に示す実験結果から明らかなように、本発明の低圧ガス加圧法により水中の溶存酸素濃度を処理前の7.91mg/lから、160秒ないし180秒の加圧処理時間で0.08mg/lに低下することができた。すなわち約2分半ないし3分の加圧処理時間で溶存酸素濃度を約1/100に低減することができた。
以下に、本発明を実施する装置の概念を実施例として図によって説明するが、本発明の主旨はこれに限定されるものではない。
図6は、搾汁後の果汁中の溶存酸素除去を、バッチ式の加圧処理により行うための装置の一例を示す。窒素ガス源に接続した果汁貯蔵タンク兼高圧容器9と脱酸素後の果汁貯蔵タンク10を設ける。高圧容器9には、安全弁11その他高圧容器として必要な装備を備えている。窒素ガスは、果汁に対して直接接して加圧処理に使用し、市販の窒素ガスボンベ或いはタンクローリーにより供給される窒素が用いられる。また高圧タンク9には果汁の溶存窒素濃度を高めるための攪拌装置12と加圧中の果汁温度を必要に応じて一定に保つための加熱保温用のジャケット14とを備える。
果汁貯蔵タンク兼高圧容器9に搾汁後の果汁を入れ、窒素ガスによって果汁を直接加圧する。窒素ガス圧力は10MPa、果汁温度は常温とする。高圧容器内の圧が10MPaに達したら、10分間圧力を保持する。加圧中、攪拌を加えることにより、果汁中の溶存窒素濃度を高め、窒素置換効果を高めることができる。加圧後の減圧はガス抜きを開いてゆっくり減圧し、大気圧に戻す。こうして溶存酸素を除去した果汁は、脱酸素後の果汁貯蔵タンク10へ払い出し保管する。果汁貯蔵タンク10内の空気は予め窒素置換しておき、溶存酸素除去後の果汁に再び酸素が溶け込むのを防止する。
図7は、搾汁後の果汁中の溶存酸素除去を、加圧―減圧のサイクルを複数回、連続的に行うための装置の一例を示す。搾汁後の果汁貯蔵タンク15と脱酸素後の果汁貯蔵タンク27を設け、両タンクの間には、少なくとも送液ポンプ16、窒素ガス供給装置(ガスインジェクション装置)17、攪拌混合装置(スタティックミキサー)18、圧抜きバルブ19及び23、減圧装置20、窒素ガス源及びガス圧縮装置21、加温装置22、果汁貯蔵脱気装置(フラッシュチャンバー)24、及び熱交換機(プレートクーラー)26を備える。また各配管装置、容器等には安全装置及び逆流防止装置(図示なし)を備える。
貯蔵タンク15に保管した果汁を、送液ポンプ16で、ガスインジェクション装置17とスタティックミキサー18とからなる溶存酸素除去装置に送り、ガスインジェクション装置17で加圧窒素ガスと混合し、10MPaの加圧下、スタティックミキサー18中で30秒間保持する。ここで、果汁は送液ポンプ16とガス圧縮装置21により加圧されており、10MPaを超えると圧抜きバルブ19が作動し、超過分が圧抜きバルブ19から減圧装置20へ送られる。減圧装置20は、果汁を大気圧まで減圧し、窒素ガスが放出されると共に溶存酸素が除去される。以上の工程を加圧―減圧の第一サイクルとする。
続いて、減圧後の果汁を第二サイクルへ送る。すなわち、果汁を、再度送液ポンプ16でガスインジェクション装置17とスタティックミキサー18とからなる溶存酸素除去装置に送り、ガスインジェクション装置17で加圧窒素ガスと混合し、10MPaの加圧下、スタティックミキサー18中で30秒間保持する。果汁は送液ポンプ16とガス圧縮装置21により加圧されており、10MPaを超えると圧抜きバルブ23が作動し、超過分が圧抜きバルブ23からフラッシュチャンバー24へ送られる。フラッシュチャンバー24においては、果汁は再び大気圧まで減圧され、窒素ガスが放出されると共に溶存酸素が除去される。ここで減圧により放出される窒素は、大気に放出することなく、配管と減圧ポンプ25を経由して回収し、さらにガス圧縮装置21により再度加圧ガスとして再利用ができる。減圧後の果汁は、送液ポンプ16、熱交換機26を経て脱酸素処理後の果汁貯蔵タンク27に保管する。果汁貯蔵タンク27内の空気は予め窒素置換しておき、溶存酸素除去後の果汁に再び酸素が溶け込むのを防止する。
本発明を実施する実験装置の組立を示す概念図である。 連続加圧の処理時間とスダチ果汁中の溶存酸素濃度の関係を示すグラフである。 加圧と減圧のサイクルを繰り返した場合の加圧処理時間とスダチ果汁中の溶存酸素濃度の関係を示すグラフである。 窒素ガスバブリング実験の通気時間とスダチ果汁中の溶存酸素濃度の関係を示すグラフである。 加圧と減圧のサイクルを繰り返した場合の加圧処理時間と水道水中の溶存酸素濃度の関係を示すグラフである。 バッチ式で加圧処理する装置の一例を示す概念図である。 連続式で加圧処理する装置の一例を示す概念図である。
1・・・・・・・・・酸素の高圧ボンベ
2・・・・・・・・・窒素の高圧ボンベ
3・・・・・・・・・圧力調整弁
4・・・・・・・・・圧力計
5・・・・・・・・・圧力表示部
6・・・・・・・・・分岐バルブ
7、19、23・・・圧抜きバルブ
8・・・・・・・・・遮断バルブ
9・・・・・・・・・高圧容器
10・・・・・・・・果汁貯蔵タンク
11・・・・・・・・安全弁
12・・・・・・・・攪拌装置
13、16・・・・・送液ポンプ
14・・・・・・・・ジャケット
15・・・・・・・・果汁貯蔵タンク
17・・・・・・・・ガスインジェクション装置
18・・・・・・・・スタティックミキサー
20・・・・・・・・減圧装置
21・・・・・・・・ガス圧縮装置
22・・・・・・・・加温装置
24・・・・・・・・フラッシュチャンバー
25・・・・・・・・真空ポンプ
26・・・・・・・・熱交換機(プレートクーラー)
27・・・・・・・・脱酸素後の果汁貯蔵タンク

Claims (1)

  1. 液体中の溶存酸素を窒素置換によって除去する方法であって、少なくとも、処理対象の液体を密封式の耐圧容器に収納し、窒素ガスを加圧により液体に注入し、5MPa以上15MPa以下の範囲の圧力で一定時間保持する加圧処理工程と、加えた圧力を大気圧まで減圧する脱気工程と、を備える液体中の溶存酸素除去方法において、目標とする溶存酸素濃度を得る場合に、繰り返すサイクル数をn、1サイクル内における加圧処理工程の時間をtとし、一方、複数回繰り返すことなく1回のサイクルで前記目標の濃度を得るのに要する加圧処理時間をSとするとき、nとtを乗じて得られる加圧処理工程の合計時間n×tを、n×t<Sとすることを特徴とする溶存酸素除去方法
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