JP4426870B2 - レンズの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、メガネレンズ、コンタクトレンズ、スポーツグラス、ルーペ等のレンズ、或いは顕微鏡、カメラ、望遠鏡、双眼鏡等の光学機器レンズ等、各種の用途に使用されるレンズの製造方法に関し、特に透明有機高分子材料からなるレンズ材料の機能と特性の改良のための複合化に関するものである。
一般に、メガネレンズ、コンタクトレンズ、スポーツグラス、光学機器レンズ等、各種の用途に使用されるレンズの材料として従前では無機のガラス製のものが用いられていたが、ガラスに比べて軽量で、成形性や加工性が良く、割れにくく安全性も高い等の理由から、プラスチック等の有機高分子材料からなるレンズ材料が普及してきている。
プラスチック製のものは、軟質で傷つき易いため、レンズ本体の表面に硬度の高いハードコート層を設けることによって耐擦傷性の向上が図られている。また、表面反射を防止する目的でハードコート層の表面に無機物質を蒸着した反射防止膜を設けている場合もある。さらに汚れ防止等の目的で、反射防止膜の表面に撥水膜を設けている場合もある。このような表面加工により、プラスチック製レンズの品質は高いものとなっている。
しかしながら、このような表面加工済プラスチックレンズの問題点として、たとえば下記特許文献1には、「ハードコート層や反射防止膜の表面処理を施した合成樹脂製レンズは、一切表面処理を施していない合成樹脂製レンズと比較して耐衝撃性(物理的な面での)が弱く、また熱衝撃によりクラックが生じる可能性もあり、コート層にひび割れが入り易いという欠点がある。またレンズの重量も重くなり、眼鏡の使用感は低下する」旨が記載されている(明細書の[0004])。
特開2004−13127号公報
一方、メガネレンズ、コンタクトレンズ等の眼鏡系レンズの場合、強い太陽光線に含まれる紫外線が角膜障害、水晶体障害、網膜光障害の原因となることが下記特許文献2や特許文献3で報告されており、紫外線から目を保護する手段として、レンズ材料の樹脂に紫外線吸収剤を添加、混練する手段等が開示されている。また、紫外線吸収剤を添加、混練することを開示する出願は数多く存在する。
特許第3063041号公報 特許第2523492号公報
しかし、一般に紫外線吸収剤は低分子量であり、皮膚や体に接触した場合、皮膚内や体内に拡散し易く、逆に紫外線吸収剤による障害が生じることが懸念されている。また紫外線吸収剤が溶出するおそれもある(特許文献2の明細書[0003])。さらに、紫外線吸収剤には多くの種類があり、たとえばベンゾフェノン系紫外線吸収剤でも種類によっては波長の吸収特性が異なり、同一使用量においても紫外線遮蔽効果が違う場合もあり、さらに多量に紫外線吸収剤を使用した場合、レンズ材料の重合を妨げるおそれもある(特許文献3の従来技術)。
さらに、レンズ表面に紫外線吸収能を有するコート層を付与することも行なわれているが、かかる方法では、コストが高くなるという問題がある(下記特許文献4)。
特許第3354066号公報
本発明者等は、レンズ本体を構成する有機高分子材料と、所定の無機微粒子の前駆体と高圧流体との混合流体とを接触させる技術により、上記のようなハードコート層の表面処理や、紫外線吸収剤等の添加、混練等の技術の問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、ハードコート層を表面処理したもののようにレンズの耐衝撃性を損なうことがなく、また紫外線吸収剤を添加、混練することによる上述のような弊害を生じさせないようにすることを課題とするものである。
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、請求項1記載の発明は、有機高分子材料からなるレンズ本体と、無機微粒子に変換される微粒子の前躯体を溶解した高圧流体とを接触させることによって、前記前駆体をレンズ本体内に注入し、次に前駆体が注入されたレンズ本体と高圧流体とを接触させて、レンズ本体の表面から10nmの深さまでの部分の前駆体を除去すべく洗浄し、その後、前駆体を前記無機微粒子に変換して、レンズ本体の表面から10nmより深い部位に微粒子が注入、分散されたレンズを製造することを特徴とする。
高圧流体としては、種々のものが利用できるが、有機高分子材料に対して浸透性の優れた、亜臨界流体や超臨界流体を用いるのが好ましい。流体の種類としては、例えば二酸化炭素(臨界温度:31.1℃、臨界圧力:7.38MPa)、亜酸化窒素(臨界温度:36.4℃、臨界圧力:7.24MPa)、トリフルオロメタン(臨界温度:25.9℃、臨界圧力:4.84MPa)、窒素(臨界温度:―147℃、臨界圧力:3.39MPa)、又はそれらの内の二種類以上の混合物を利用できる。
さらに請求項記載の発明は、有機高分子材料からなるレンズ本体と、無機微粒子に変換される微粒子の前駆体とを別々の高圧セルに収容し、前駆体が収容された高圧セルに高圧流体を供給して該前駆体を高圧流体中に溶解し、次に前駆体を溶解した高圧流体を、前記レンズ本体が収容された高圧セルに供給し、該レンズ本体に前記前駆体を溶解した高圧流体を接触させることによって前記前駆体をレンズ本体に注入し、次に高圧流体のみを前記レンズ本体が収容された高圧セルに供給し、前駆体が注入されたレンズ本体と高圧流体とを接触させて、前記レンズ本体の表面から10nmの深さまでの部分の前駆体を除去すべく洗浄し、その後、前駆体を前記無機微粒子に変換して、レンズ本体の表面から10nmより深い部位に前記無機微粒子が注入、分散されたレンズを製造することを特徴とする。
さらに請求項記載の発明は、請求項1又は2記載のレンズの製造方法において、無機微粒子の前駆体をレンズ本体に注入する際に、高圧流体とともに、レンズ本体又は前駆体の少なくともいずれかを溶解又は可塑化させうる溶剤を補助溶媒として添加することを特徴とする。補助溶媒が前駆体の良溶媒であれば、高圧流体中の前駆体の濃度を高めることによって好適に有機高分子材料に前駆体を注入することができ、また補助溶媒が有機高分子材料の良溶媒であれば、有機高分子材料の可塑化がより好適に進行することとなり、その結果、前駆体が有機高分子材料に注入され易くなるのである。従って、補助溶媒は有機高分子材料又は前駆体の少なくともいずれかに対する良溶媒であればよいが、双方に対する良溶媒であってもよい。
さらに請求項記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のレンズの製造方法において、無機微粒子の前駆体をレンズ本体に注入した後、レンズ本体の表面から10nmの深さまでの部分の前駆体を洗浄して除去する前に、注入時の処理温度より低い温度までレンズ本体を冷却することを特徴とする。冷却することによって、レンズ本体を構成する有機高分子材料の可塑化がある程度抑制され、その後の洗浄時に、すでに注入された微粒子前駆体がレンズ本体から不用意に離脱するのが防止されることとなる。
さらに請求項記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のレンズの製造方法において、無機微粒子の前駆体を微粒子に変換させる手段が、レンズ本体を構成する有機高分子材料の温度を上昇させて前記前駆体を熱分解する手段であることを特徴とする。
さらに請求項記載の発明は、請求項記載のレンズの製造方法において、微粒子の前駆体が、アルコキシド、カルボニル錯体、若しくはアセチルアセトン錯体、又はアルコキシド、カルボニル錯体、若しくはアセチルアセトン錯体を主成分とする金属錯体、又はポリメチルシロキサン若しくはポリシロキサンの誘導体であることを特徴とする。
以上のように、本発明においては、有機高分子材料からなるレンズ本体内に、無機微粒子が注入、分散されているため、ハードコート層を表面処理した従来のレンズのように耐衝撃性を損なうことがなく、また一般の紫外線吸収剤を添加、混練することなく紫外線吸収効果を奏させることも可能となる。
また、レンズ本体の表面から10nmより深い位置に微粒子を注入、分散させてレンズを製造した場合には、そのレンズの表面が過酷な使用条件にさらされても、微粒子がレンズ本体から脱離することがなく、微粒子分散層にヒビが入ることもないという効果がある。
さらに、微粒子の粒子径が1nm以上100nm以下である場合には、紫外線吸収効果が一層良好になる他、吸収による電磁波遮断効果が得られるという効果がある。
さらに、本発明のレンズの製造方法においては、レンズ本体と、微粒子に変換される前駆体を溶解した高圧流体とを接触させて前記前駆体をレンズ本体に注入し、次に前駆体が注入されたレンズ本体と高圧流体とを接触させて、前記レンズ本体の表面から10nmの深さまでの部分の前駆体を除去すべく洗浄するので、その後に前駆体を微粒子に変換すると、上記のようにレンズ本体の表面から10nmより深い部位に微粒子が注入、分散されたレンズを好適に製造することが可能となる。しかも注入処理に用いた高圧流体を前駆体の洗浄処理に利用するので、余剰の前駆体の除去も効率的に行われることとなる。
さらに、微粒子に変換される前駆体とレンズ本体とを別々の高圧セルに収容し、前駆体が収容された高圧セルに高圧流体を供給して該前駆体を高圧流体中に溶解し、次に前駆体を溶解した高圧流体をレンズ本体が収容された高圧セルに供給して両者を接触させて前記前駆体をレンズ本体に注入し、その後、高圧流体のみを前記レンズ本体が収容された高圧セルに供給し、前駆体が注入されたレンズ本体と高圧流体とを接触させて洗浄を行なう場合には、高圧流体に溶解した前駆体を効率的にレンズ本体に接触させることができ、また余剰の前駆体がレンズ本体に不用意に接触して付着するのを防止することができ、さらに洗浄工程で、高圧セル内に残存する前駆体を予め高圧セル外へ除去せずに二酸化炭素を連続的に通すことによって、より短時間にレンズ本体の洗浄を行うことができる。しかも高圧セル内部のレンズ本体のみを取り替えることによって、最初に仕込んだ前駆体を次工程で有効に使用することができるという効果がある。
さらに、前駆体をレンズ本体に注入する際に、高圧流体とともに、レンズ本体又は前駆体の少なくともいずれかを溶解あるいは可塑化させうる良溶媒を補助溶媒として添加する場合には、レンズ本体の可塑化をより確実に進行させることができ、或いは前駆体をより好適に溶解させることができるので、レンズ本体への前駆体の注入をより確実に行うことができるという効果がある。
さらに、前駆体をレンズ本体に注入した後、レンズ本体の表面に付着する余剰の前駆体および表面から10nmの深さに注入された前駆体を洗浄して除去する前に、注入時の処理温度より低い温度までレンズ本体を冷却する場合には、レンズ本体を構成する有機高分子材料の可塑化がある程度抑制され、その後の洗浄時に、すでに注入された前駆体がレンズ本体から不用意に離脱するのが防止されるという効果がある。
さらに、二酸化炭素のような常温常圧で気体である流体をプロセス溶媒として用いて処理する場合には、レンズと溶媒としての二酸化炭素との分離が容易であり、プロセスの簡略化を図ることができるという効果がある。
以下、本発明の実施形態について、図面に従って説明する。
(実施形態1)
本実施形態は、レンズ本体が有機高分子原料であるアリルジグリコールカーボネート(以下、ADC樹脂、又はポリエチレングリコールビスアリルカーボネートともいう。)で構成され、微粒子が銀で構成されている。レンズ本体は、メガネレンズ用のレンズとして前記有機高分子原料を金型に流し込んだ後に硬化させる注型成形法によって予め所望形状に成形されている。
銀の微粒子は、後述の高圧流体を利用した製造方法によって、レンズ本体の表面から10nmより深い部位に注入、分散する。この銀の微粒子は、銀の錯体である(6,6,7,7,8,8,8−ヘンプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタネジアネート)銀(以下、AgFODともいう)を高圧流体で溶解し、前記レンズ本体に接触させることによって前躯体であるAgFODをレンズ本体に注入し、前躯体の注入後のレンズ本体にさらに高圧流体のみを接触させることによって、レンズ本体の表面から10nmの深さまでの部分の前駆体を除去し、その後に続く熱分解等によって前駆体を金属の微粒子に変換することによってレンズ本体の表面から10nmより深い部位に微粒子が注入、分散されたレンズが得られることとなる。
(実施形態2)
本実施形態は、レンズ本体がポリカーボネート(以下、PCともいう)で構成されている。レンズ本体は、有機高分子原料としてのPCのモノマーを射出成形法で所望のレンズの形状に成形することによって構成されている。
その他、微粒子の種類、前躯体の種類等は実施形態1と同じである。本実施形態においても、銀の微粒子が高圧流体によってレンズ本体の表面から10nmより深い部位に注入、分散されている。
(実施形態3)
本実施形態は、レンズ本体がポリメチルメタクリレート(以下、PMMAともいう)で構成されている。レンズ本体は、有機高分子原料としてのMMAを射出成型法で所望のレンズの形状に成形することによって構成されている。
その他、微粒子の種類、前躯体の種類等は実施形態1および2と同じである。本実施形態においても、銀の微粒子が高圧流体によってレンズ本体の表面から10nmより深い部位に注入、分散されている。
(実施形態4)
本実施形態では、無機微粒子として上記実施形態の銀に代えてチタンの酸化物が用いられている。従って無機微粒子の前駆体として上記実施形態1乃至4の銀の有機金属錯体に代えて、金属アルコキシド、より具体的にはチタンイソプロポキシドが用いられている。
レンズ本体の材質としては、上記各実施形態のADC樹脂、PC、PMMAを使用することができる。また、チタンの酸化物粒子の注入、分散状態は実施形態1乃至3と同様である。
(実施形態5)
本実施形態では、無機微粒子として上記実施形態1乃至3の銀や実施形態4のチタンの酸化物に代えてシリカ(ケイ素の酸化物)が用いられている。従って無機微粒子の前駆体として上記実施形態の銀の有機金属錯体やチタンイソプロポキシドに代えて、ジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコナイズ(登録商標)が用いられている。
レンズ本体の材質としては、上記各実施形態のADC樹脂、PC、PMMAを使用することができる。また、シリカ粒子の注入、分散状態は実施形態1乃至4と同様である。
(実施形態6)
本実施形態は、レンズの製造方法の実施形態である。図1は、一実施形態としてのレンズの製造に用いる装置の概略ブロック図である。本実施形態の装置は、高圧ポンプ2、圧力計3、恒温槽4、背圧弁5、及び高圧セル6を具備している。
高圧ポンプ2は、高圧流体を高圧セル6へ供給するためのポンプである。本実施形態では、日本分光社製のプランジャー式の高圧ポンプを用いたが、これ以外にも例えば日本精密機器社製、日機装社製、富士ポンプ社製等の、プランジャー式或いはダイヤフラム式の高圧ポンプを一般的に使用することができる。また高圧ポンプ2には、高圧流体供給用のボンベ1が接続されている。本実施形態では高圧流体として二酸化炭素が用いられる。
圧力計3は、操作時の系内の圧力を検出し、表示するためのもので、計器内部の汚染を防止するために、高圧セル6の前段に設置するのが好ましい。例えば、長野計器社製、山崎計器社製などの圧力計が使用できる。なお、形式としては、ダイヤフラム式、ブルドン管式のものを使用できるが、汚染防止のためにはダイヤフラム式が好ましい。
恒温槽4は、高圧セル6の温度を精密に調整するためのもので、熱伝導用の媒体は、空気、水、オイル、エチレングリコール、砂、その他これらの混合物が使用可能である。オイル、砂は100℃以上の高温条件で有効であり、水、エチレングリコール、それらの混合物は100℃以下の低温条件に有効である。空気は、両方の範囲に有効に適用可能である。本実施形態では、精密な温度制御が可能なGL−サイエンス社製の空気循環式恒温槽を用いた。
背圧弁5は、高圧セル6内の圧力を一定に保つための弁であり、手動、あるいは自動の背圧弁が使用できる。例えば、AKICO社製、東洋高圧社製、日本分光社製などの背圧弁が使用できるが、減圧速度の微細な調整、圧力変動の低減などの観点から、自動制御式の背圧弁が好ましい。
高圧セル6は、レンズ本体8に無機微粒子の前駆体9を注入するための容器である。高圧セル内部には、レンズ本体8を固定するための架台と、セル内の流体を攪拌するための攪拌設備が具備されている。攪拌設備は、攪拌翼式、流体循環式の何れも使用できる。また、図示はされていないが、高圧セル6内部の状況を観察し易くするために、内部観察用の可視窓を取り付けても良い。
その他、本実施形態の装置では、各装置が耐圧性の配管で接続され、さらに、配管の経路の途中部分には、流体の流量調整や、流路の開閉のために耐圧バルブが適宜具備されている(耐圧バルブは、図面上、省略している)。例えば、スェッジロック社製や、オートクレーブ社製の耐圧バルブが使用できる。また耐圧性の構成機器の材質は特に限定されないが、SUS304、SUS316、SUS316L、ハステロイ、インコネル、モネル鋼等の耐圧、及び耐腐食性の材質であることが望ましい。
次に、この様な装置を用いて、レンズを製造する方法の実施形態について説明する。
先ず、無機微粒子を注入、分散させるための有機高分子材料からなるレンズ本体8を高圧セル6内の材料固定用架台に固定し、無機微粒子の前駆体9と、攪拌用の攪拌子7とともに高圧セル6に封入する。本実施形態では、レンズ本体8として、機能性プラスチックであるアリルジグリコールカーボネート(ADC樹脂)を用いた。無機微粒子としては、生体に対する影響が少なくかつ電磁波遮蔽性及び導電性の付与が期待できる銀を選んだ。その銀の前駆体9として、銀の錯体である(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタネジアネート)銀(AgFOD)を用いた。
次に、ボンベ1から二酸化炭素を高圧セル6に供給し、高圧セル6内の残存空気をパージした後、高圧ポンプ2を用いて二酸化炭素を高圧セル6に供給するとともに、温度と圧力を調整した。温度は恒温槽4で調整し、圧力は背圧弁5で調整した。温度と圧力は、使用する高圧流体が、亜臨界流体、もしくは超臨界流体になる条件であれば良い。本実施形態では高圧流体として二酸化炭素(臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38MPa)を利用するため、温度範囲は25℃から130℃が好ましい。要は、母材の内部に無機微粒子の前駆体である有機金属化合物を注入する際に、その有機金属化合物が分解して無機化することによって母材の内部に注入されなくなる不具合を防止する温度範囲を選べば良いのである。圧力は装置の安全上の観点から6MPaから50MPaが好ましい。
所定の温度と圧力の条件に到達した後、高圧ポンプ1を停止し、攪拌子7によって高圧セル6内の攪拌を開始し、二酸化炭素と前駆体9を混合した。なお、攪拌子7の回転には、図示しないが、マグネット式の撹拌装置を使用した。攪拌の開始後、所定時間のあいだ注入処理を行った。
二酸化炭素の超臨界流体がレンズ本体8に接触すると、レンズ本体8の内部に二酸化炭素が浸透する。そのため、レンズ本体8を構成する有機高分子材料は膨潤・可塑化し、ガラス転移温度の低下、粘度の低下が起こり、有機高分子材料の内部での物質の移動特性が著しく向上する。さらに、前駆体9は超臨界流体の二酸化炭素に溶解するため、二酸化炭素を媒体にして、前駆体9を、有機高分子材料の内部に浸透させることができる。このときの処理時間は、5分から4時間が好ましい。この処理時間は、超臨界状態の二酸化炭素がレンズ本体8に充分に浸透するために要する時間として定められたものである。
注入処理後、高圧ポンプ6を作動して二酸化炭素を連続的に流通させ、レンズ本体8の表面に余剰に付着している前駆体9を除去した。二酸化炭素を連続的に流通させると、先ず前駆体9が高圧セル6の外部に流出し、続いてレンズ本体8の表面に二酸化炭素が接触することによって、レンズ本体8に余剰に付着している前駆体9を洗い流すことができる。このとき、レンズ本体8の内部に浸透している前駆体9はレンズ本体8の内部に固定されているため、外部に流出することはない。また、二酸化炭素を流通させる前に、一旦、温度を25℃以下の低温に冷却することによってレンズ本体8の内部の前駆体の移動度を小さくした後、二酸化炭素を流通させても良い。
その後、背圧弁5を開いて高圧セル6内の圧力を大気圧まで減圧する。このとき、0.1MPa/minより速い速度で減圧すると、レンズ本体8の内部に残存する二酸化炭素によってレンズ本体8を構成する有機高分子材料が発泡する。有機高分子材料を発泡させずに減圧する場合は、0.1MPa/minより遅い速度で減圧することが好ましい。
さらに、高圧セル6の内部にレンズ本体8を保持したまま、恒温槽4によって加熱処理することによって、レンズ本体8の内部の前駆体9を金属微粒子に還元し、レンズを製造した。
恒温槽4の操作条件は、前駆体9であるAgFODの分解温度である160℃とし、処理時間は2時間で行った。前駆体9を熱分解することによって、有機物から無機物質へ変換することができるが、このとき、前駆体9の種類によって熱分解温度が異なるため、その種類に合わせて適宜、処理温度を選択することができる。例えば、銀のアセチルアセトン錯体は100℃、銅のアセチルアセトン錯体は286℃、ニッケルのアセチルアセトン錯体は240℃、白金のアセチルアセトン錯体は251℃、パラジウムのアセチルアセトン錯体は260℃等である。また、シリカの酸化物の前駆体であるジメチルポリシロキサンは、100〜150℃である。
(実施形態7)
本実施形態の設備では、図2に示すように、高圧ポンプ2、圧力計3、恒温槽4、背圧弁5、高圧セル6の他に溶剤ポンプ10が具備され、その溶剤ポンプ10に、溶剤貯留槽11が接続されている。すなわち、本実施形態では流体として二酸化炭素を使用し、補助溶媒として溶剤が使用される。
次に、操作手順について実施形態6との比較の上で、異なる部分のみ示す。
レンズ本体8と、前駆体9とを高圧セル6に封入し、残存空気をパージした後、二酸化炭素を流通させて所定の温度と圧力に設定し、続いて、溶剤としてのアセトンを溶剤ポンプ10を用いて、所定量を高圧セル6に投入する。アセトンの投入後、高圧ポンプ6及び溶剤ポンプ10を停止し、所定時間、注入処理する。アセトンの投入量は、所定の温度と圧力条件での二酸化炭素の投入量に対し、モル比で0.5%から10%までが好ましい。
注入処理後、高圧ポンプ6を作動して二酸化炭素を連続的に流通させ、レンズ本体8の表面に余剰に付着している前駆体9を除去する際、洗浄効果を高めるため、アセトンを投入しながら、二酸化炭素を流すこともできる。前駆体9の注入処理、余剰の前駆体9の洗浄除去処理以外の操作手順は、前記実施形態6と同じであるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態では、補助溶媒として、レンズ本体8を構成する有機高分子材料と前駆体9の両方の良溶媒であるアセトンを用いるため、レンズ本体8をより可塑化させ易くなり、またレンズ本体8の内部に前駆体9をより浸透し易くなるという効果がある。また、二酸化炭素に対する前駆体9の溶解度を増加させることによって、レンズ本体8内部に浸透する前駆体9の量を増加させることができ、さらに洗浄工程において補助溶媒を用いるため、レンズ本体8の表面に付着した余剰の前駆体9の洗浄効果をより向上させることができるという効果がある。
このような効果を奏させる観点から、溶剤を選択する基準としては、レンズ本体8の良溶媒、無機微粒子の前駆体9の良溶媒であることが望ましい。本実施形態では、溶剤としてアセトンを使用したが、補助溶媒と、前駆体9やレンズ本体8との相互作用を事前に調べ、前駆体9に対する良溶媒か、レンズ本体8に対する良溶媒か、或いは前駆体9とレンズ本体8の両方の良溶媒かを確認しておくことによって、アセトン以外の溶剤も適宜選択することができる。たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールを使用することができる。
(実施形態8)
本実施形態では、図3に示すように、無機微粒子の前駆体9の溶解・抽出専用の高圧セル6aと、レンズ本体8の処理専用の高圧セル6bとの2つの高圧セルを設け、それぞれの高圧セルに恒温槽4a,4bをそれぞれ設置し、さらに、系内の攪拌のために、循環ポンプ12とその循環ライン22が設置されている。
上記実施形態6及び7では、1つの高圧セル内で前駆体9の溶解と、レンズ本体8の可塑化処理を行ったが、本実施形態では高圧セル6a内での前駆体9の溶解,抽出の処理と、高圧セル6b内でのレンズ本体8の可塑化処理を行うこととした。
より具体的に説明すると、先ず、高圧ポンプ2側のバルブ13と、高圧セル6aと高圧セル6bとの入口部と出口部のバルブ14,15,16,17を開の状態とし、他のバルブ18,19,20,21を閉の状態として、高圧セル6a,6b内の残存空気をパージした後、所定の温度、圧力になるまで高圧ポンプ2を用いてボンベ1から二酸化炭素を高圧セル6a,6bに供給する。
所定の圧力になった後、高圧ポンプ2を停止し、その高圧ポンプ2側のバルブ 13を閉の状態とし、循環ライン22中のバルブ20,21を開の状態にして、循環ポンプ12を作動させる。これによって、高圧流体は循環ライン22を循環するとともに高圧セル6a,6bに供給され、その高圧流体が前駆体9を効率的に溶解するとともに、効率的に材料8に接触し、余剰の前駆体9が材料8に不用意に接触し、付着するのを防止することができる。
このようにして、前駆体9がレンズ本体8に注入された後、高圧セル6aの入口部と出口部のバルブ14,15を閉の状態とし、その間のバルブ18を開の状態にすることにより、前駆体9は高圧セル6aに供給されることがなく、高圧流体のみが高圧セル6bに供給されることとなる。この結果、レンズ本体8が上記各実施形態と同様に洗浄されることとなる。この洗浄工程において、高圧セル6a内に残存する前駆体9は、高圧セル6aの外部へ排出する必要がなく、高圧セル6bのみに二酸化炭素を連続的に流通させることによって、より短時間にレンズ本体8の洗浄を行うことができる。
上記のような注入及び洗浄の処理が終了した後、背圧弁5を開いて高圧セル6b内の二酸化炭素を除去し、高圧セル6bを開き、新たなレンズ本体8を高圧セル6b内に入れて設置し、同様に処理を行う。この場合において、前駆体9は、レンズ本体8が収容された高圧セル6bと別の高圧セル6aに収容されているので、高圧セル6b内部のレンズ本体8のみを取り替えることによって、高圧セル6aの内部の前駆体9は、最初に仕込んだものを次の新たな材料の処理にも有効に使用することができる。
以上のように、本実施形態では、溶解・抽出専用の高圧セル6aと、レンズ本体8の処理専用の高圧セル6bとの2つの高圧セルを設け、系内の攪拌を循環ポンプ12により行うことによって、高圧セル6a内部で、高圧流体に溶解した前駆体9が効率的にレンズ本体8に接触し、余剰の前駆体9がレンズ本体8に不用意に接触して付着するのを防止することができ、次の洗浄工程では、高圧セル6a内に残存する前駆体9を予め高圧セル6a外へ除去せずに高圧セル6bのみに二酸化炭素を連続的に通すことによって、より短時間にレンズ本体8の洗浄を行うことができ、しかも高圧セル6b内部のレンズ本体8のみを取り替えることによって、最初に仕込んだ前駆体9を、次工程で有効に使用することができるのである。
(実施形態9)
本実施形態の装置では、図4に示すように実施形態8の構成要素の他に溶剤貯留槽11及び溶剤ポンプ10を具備させている。従って、本実施形態では、流体として二酸化炭素を、補助溶媒として溶剤を使用する。二酸化炭素の他に溶剤を用いたことによる作用効果は、上記実施形態7と同じである。
次に、操作手順について実施形態8との比較の上で、異なる部分のみ示す。すなわち、レンズ本体8と、無機微粒子の前駆体9とをそれぞれ高圧セル6aと6bに封入し、残存空気をパージした後、二酸化炭素を流通させて所定の温度と圧力に設定し、続いて、溶剤としてのアセトンを溶剤ポンプ11を用いて、所定量を高圧セル6a及び高圧セル6bに供給する。アセトンの供給後、高圧ポンプ2を停止し、所定時間、注入処理する。この際、循環ポンプ12を作動させ、系内の流体を均一に攪拌することができる。アセトンの供給量は、前記実施形態2と同じく、所定の温度と圧力条件での二酸化炭素の投入量に対し、モル比で0.5から10%までが好ましい。
注入処理後、高圧ポンプ2を作動して二酸化炭素を連続的に流通させ、レンズ本体8の表面に余剰に付着している前駆体9を除去する。この際、洗浄効果を高めるため、アセトンを投入しながら二酸化炭素を流すこともできる。さらに、洗浄工程の際、高圧セル6aの入口と出口のバルブ14,15を閉にし、その間のバルブ18を開にしておけば、二酸化炭素は高圧セル6b側のみに供給されるので、高圧セル6aに残存する前駆体9を予め除去する工程を行う必要がなく、より効果的に洗浄作業を行うことが可能である。本実施形態では高圧ポンプ2側のみならず、溶剤ポンプ10側にもバルブ23を設けている。その他の工程は、前記実施形態5乃至7と同じであるためここでは説明を省略する。
(実施形態10)
本実施形態は、無機微粒子の前駆体9として、上記実施形態6乃至9の銀の有機金属錯体に代えて金属アルコキシドを用いた。より具体的には、チタンイソプロポキシドを用いた。また、本実施形態では溶剤としてエタノールあるいはイソプロパノールを用いた。
そして、この前駆体9をレンズ本体8に注入した後、二酸化炭素とともに水を流通させる。これによって、チタンイソプロポキシドは加水分解されて酸化チタンとなり、結果的に酸化チタンの微粒子がレンズ本体8内に注入、分散されることとなった。使用した装置やレンズ本体8の材料は実施形態6乃至9と同様のものである。
(実施形態11)
本実施形態では、無機微粒子の前駆体9として、上記実施形態6乃至9の銀の有機金属錯体、実施形態10のチタンイソプロポキシドに代えてジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコナイズ(登録商標)を用いた。また、本実施形態では、溶剤は用いなかった。
上記実施形態6乃至9の銀錯体を金属に変換する方法、および実施形態10のチタンイソプロポキシドを無機化する方法に代えて、本実施形態ではレンズ本体8に前駆体9としてのシリコナイズを注入した後、100℃〜150℃の温度で30分から2時間熱処理することによって、シリコナイズを無機化した。
使用した装置やレンズ本体8の材料は実施形態6乃至10と同様のものである。
(実施形態12)
本実施形態では、レンズ本体8を構成する有機高分子材料として、上記実施形態6乃至11のアリルジグリコールカーボネート(ADC樹脂)に代えてポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた。無機微粒子の前駆体9は実施形態6乃至9と同様の銀の錯体を用い、製造装置と操作手順も同様にして行い、レンズ本体8内に銀の微粒子を分散させたレンズを得ることができた。
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態1乃至12では、レンズ本体8を構成する有機高分子材料としてアリルジグリコールカーボネート(ADC樹脂)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等を用いたが、レンズ本体8の材質はこれに限定されるものではなく、たとえばポリスチレンや透明性ポリイミド等の透明プラスチックを用いることが可能である。要は、レンズとして成形しうる透明の有機高分子材料であれば、その種類は問うものではない。
また、微粒子の種類も、上記実施形態1乃至12の銀、酸化チタン、シリカに限定されるものではなく、たとえば金、白金、パラジウム、銅、ガドリウム、鉛、鉄等の金属や、これらの金属酸化物を使用することも可能である。
さらに、微粒子の前駆体も上記実施形態に限らず、アセチルアセトン錯体、アルコキシド、カルボニル錯体、およびそれらの誘導体等、有機金属錯体、或いはポリメチルシロキサン若しくはポリシロキサンの誘導体等を用いることが可能である。要は、これらの前駆体が、後処理によって金属や金属酸化物などの無機物に変換できればよいのである。
尚、実施形態6乃至12の装置の配管途中に位置する高圧バルブの形式は、ニードル式、ダイヤフラム式、ボール弁式などの形式のものを使用することができる。圧力調整用にはニードル式のものを用い、流路の効率的な開閉にはボール弁式のものを用いることが好ましい。また、バルブ内部への不純物の流入を防止するためにはダイヤフラム式が好ましい。
さらに、高圧セルについては、内部のレンズ本体8あるいは流体の変化を観察するため、可視窓を具備していることが好ましい。また、高圧セル内部の反応物が可視窓の内面に付着することを防止するために、可視窓の内面に雲母などの保護カバーを取り付けることが好ましい。
さらに、本発明のレンズの用途は問うものではなく、メガネレンズ、コンタクトレンズ、スポーツグラス、ルーペのレンズ、光学機器レンズ、光学機器窓材等に使用することも可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では、レンズ本体を構成するアリルジグリコールカーボネート(ADC)に対する銀の注入量に及ぼす温度と圧力の影響を調べた。試験の装置として実施形態2の装置を用いた。操作手順は、次の通りである。
先ず、材料としてADCの試験片(直径60mm×厚み2mmのレンズ形状)を準備して試料架台に固定し、前駆体として試験片の重量に対してAgで10wt%又は15wt%分の、アセチルアセトン錯体〔Ag(acac)〕(Aldrich社製)を、攪拌子と共に高圧セル内に封入した。
続いて、二酸化炭素で高圧セル内の残存空気をパージした後、温度を35℃、圧力を20MPaに調整した。所定の条件に到達した後、高圧ポンプで補助溶媒とてのアセトンを投入した。アセトンの投入量は、二酸化炭素のモル数に対して10%とした。アセトンの投入後、高圧セル内の攪拌を開始し、2時間、注入処理を行った。 注入前と注入後の試料片の重量を測定し、その差から銀の注入量を求めた。
次に、温度を50℃及び70℃に代えて、同様にして20MPaにおける銀の注入量を求めた。また、圧力を25MPaに代え、温度を35℃、50℃、70℃に温度を代えて同様に銀の注入量を求めた。そして、注入量から、重量増加率を求めた。その結果を表1に示し、銀の注入量の増減と温度、圧力の相関関係を図5に示す。
Figure 0004426870
図5からも明らかなように、35℃及び50℃では、圧力20MPaに比べて25MPaの方が注入量が多く、従って重量増加率が高かったが、70℃では20MPa及び25MPaのいずれの場合も注入量はほぼ同じであった。
(実施例2)
本実施例では、レンズ本体を構成するADC又はPMMAに対する銀の注入量の温度依存性を調べた。具体的には温度変化による重量増加率を調べた。試験の装置、方法は、上記実施例1と同様とした。前躯体として実施例1と同様にアセチルアセトン錯体を用い、アセトンの投入量も実施例1と同様に10モル%とした。圧力は20MPaとした。ADCの重量増加率は上記表1に示し、PMMAの重量増加率は表2に示した。また重量増加率の変化は、図6に示した。
Figure 0004426870
図6からも明らかなように、PMMAの重量増加率は、35℃、50℃、70℃と温度を上げるに従って、著しく上昇した。これに対してADCの重量増加率は、温度を上昇させてもPMMAの場合ほどの変化はなかったが、35℃で1重量%近くの重量増加率が認められ、70℃では1.5重量%近くの重量増加率が認められた。
(実施例3)
本実施例では、レンズ本体を構成するADCに対して、Ag(acac)又はAgFOD(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタネジアネート)への銀の注入量に及ぼす前躯体である錯体の影響を調べた。具体的には圧力変化による重量増加率を調べた。試験の装置、方法は、上記実施例1、2と同様とした。アセトンの投入量も実施例1と同様に10モル%とした。温度は35℃とした。Ag(acac)の重量増加率は表1に示し、AgFODの重量増加率は表3に示した。また重量増加率の変化は、図7に示した。
Figure 0004426870
図7からも明らかなように、Ag(acac)を用いた場合の重量増加率は、圧力20MPaで約0.9重量%であり、25MPaで約1.1重量%に増加した。またAgFODを用いた場合、圧力20MPaでは重量は増加しなかったが、25MPaでは約0.4重量%であった。
(実施例4)
本実施例では、レンズ本体を構成するADCへの銀の注入量に及ぼす前躯体である錯体の影響を調べた。具体的には、Ag(acac)とAgFODのそれぞれについて、10モル%のアセトンを補助溶媒として用いた場合と、補助溶媒を用いない場合の重量増加率を調べた。試験の装置、方法は、上記実施例1乃至3と同様とした。温度は35度、圧力は25MPaで行なった。Ag(acac)の重量増加率は前記表1の他、表4、表5に示し、AgFODの重量増加率は表3、表6、表7に示した。また重量増加率の変化は、図8に示した。
Figure 0004426870
Figure 0004426870
Figure 0004426870
Figure 0004426870
図8からも明らかなように、前躯体としてAg(acac)を用いた場合の重量増加率は、補助溶媒を用いない場合は約0.5重量%であったが、10モル%のアセトンを用いた場合には、補助溶媒を用いない場合は約0.4〜0.5重量%であったが、10モル%のアセトンを用いた場合には、約0.3〜0.4重量%と逆に減少した。
(実施例5)
本実施例では、ADCからなる試験片に、銀粒子を注入したものについて、紫外線の吸収性を調べた。具体的には、島津製、UV−2400型UV−VIS分光光度計を用い、上記試験片の吸光度を測定した。リファレンスは未処理のADC試験片を用いた。また試験片としては、20mm×20mm×2mmの大きさのものを用いた。補助溶媒として10モル%のアセトンを用いたもの、5モル%のアセトンを用いたもの、及び補助溶媒を用いないものの3種類について試験した。試験の結果を図9及び図12に示す。図9及び12からも明らかなように、銀粒子を注入しない未処理のADC試験片については特に吸収が認められなかったが、銀粒子を注入したADCからなる試験片の場合は、400nm〜500nmの波長領域の光線を吸収することが分かった。
ただし、補助溶媒を用いない場合は、420nm〜440nm近辺における吸光度が約0.1で低く、補助溶媒として5モル%のアセトンを用いた場合は、その波長領域での吸光度が約0.3と高くなり、補助溶媒として10モル%のアセトンを用いた場合は、その波長領域での吸光度が約0.9とさらに高くなった。このことから、未処理の場合に比べて銀粒子を注入することで紫外線の吸収効果が生じることがわかり、補助溶媒を用いることで、その紫外線吸収効果がさらに高まることがわかった。
(実施例6)
本実施例では、PMMAに対してジメチルポリシロキサンを注入し、熱処理した後の試験片の、伸びと引張強さを測定した。具体的には、注入していない未処理のもの、50℃、20MPaで処理したもの、70℃、20MPaで処理したもの、及び70℃、15MPaで処理したものの3種類について試験した。注入の装置、方法は、上記実施例1乃至4と同様とした。なお、本実施例では補助溶媒としての溶剤は用いなかった。試料の引っ張り強さと破断伸びは、JTTOHSI製のDP−LSC型小型卓上試験機を用いて測定した。試験結果を表8及び図10に示す。
Figure 0004426870
図10からも明らかなように、70℃、20MPaで処理したものは、未処理のものと、伸び及び引張強さともにさほど変わらなかったが、50℃、20MPaで処理したもの、及び70℃、15MPaで処理したものは、未処理のものに比べて
伸び及び引張強さともに向上した。
(実施例7)
本実施例では、PMMAの試験片に注入したAgの微粒子の分散状況を、試料片の断面の透過電子顕微鏡(TEM)観察を行うことによって観察した。装置は、日立製H−7100型透過電子顕微鏡を用い、加速電圧125kVで観察した。試料は、ウルトラミクロトーム(ダイヤモンドナイフ使用)で超薄切片を作成した後、切片を銅メッシュに積載し、補強処理としてカーボン蒸着処理を施してTEM検鏡用試料とした。得られたTEM像を図11に示す。
図11らも明らかなように、PMMAの表面から10nmより深い部位に金属Agの粒子が分散していることが分かった。また、得られたTEM像から500個以上の粒子の粒径を計測し、その平均粒子径を求めた。平均粒子径は20nmであり、粒径の幅は、4nmから40nmであった。さらにAg微粒子の母材に対する体積含有率は8%であった。
次に、Ag微粒子を分散させたPMMAの機能性の一つとしての紫外線の吸収性を調べた。具体的には、島津製、UV−2400型UV−VIS分光光度計を用い、上記試験片の吸光度を測定した。リファレンスは未処理のPMMA試験片を用いた。測定の結果、本実施例で得られた試験片は、350nmから450nmの波長領域の光線を吸収することが分かった。
ちなみに、PMMAは本来350nmから450nmの波長領域の光線を吸収しないが、上記のようなAg微粒子を複合化させることにより、この波長領域の光線を吸収し、その結果、たとえばコンタクトレンズに好適に適用することができる。さらに、薬品による機能層の剥離の有無を確認するため、上記試験片の表面をアセトンでさらに拭き取り、同様に光の吸収性を調べた結果、拭き取りの前後で、吸収性の差は見られなかった。この結果から、薬剤によっても分散層からの微粒子の脱離は見られないことが確認できた。
本発明のレンズは、メガネレンズ、コンタクトレンズ、スポーツグラス、ルーペ顕微鏡、カメラ、望遠鏡、双眼鏡等の光学機器レンズ、その他、透明プラスチック材料で構成される各種の用途のレンズに広く適用することができる。
一実施形態としての無機微粒子複合化有機高分子材料の製造装置の概略ブロック図 一実施形態としての無機微粒子複合化有機高分子材料の製造装置の概略ブロック図 一実施形態としての無機微粒子複合化有機高分子材料の製造装置の概略ブロック図 一実施形態としての無機微粒子複合化有機高分子材料の製造装置の概略ブロック図 ADC試料に対する銀注入による重量増加率と、温度及び圧力との相関関係を示すグラフ。 ADC試料及びPMMA試料に対する銀注入による重量増加率と、温度の相関関係を示すグラフ。 ADC試料に対して、Ag(acac)及びAgFODをそれぞれ前躯体として用いた場合の、銀の注入による重量増加率と、圧力との相関関係を示すグラフ。 ADC試料に対して、Ag(acac)及びAgFODをそれぞれ前躯体として用いた場合の、銀の注入による重量増加率と、補助溶媒の使用の有無との相関関係を示すグラフ。 銀を注入したADC試料の紫外線吸収スペクトルを示すチャート図。 PMMA試料に対して、ジメチルポリシロキサンを注入した場合の、試料の伸び及び引っ張り強さと、温度及び圧力との相関関係を示すグラフ。 試料に対して銀を分散させた状態を示す透過電子顕微鏡写真。 銀を注入していないADC試料の紫外線吸収剤スペクトルを示すチャート図。

Claims (6)

  1. 有機高分子材料からなるレンズ本体と、無機微粒子に変換される微粒子の前躯体を溶解した高圧流体とを接触させることによって、前記前駆体をレンズ本体内に注入し、次に前駆体が注入されたレンズ本体と高圧流体とを接触させて、レンズ本体の表面から10nmの深さまでの部分の前駆体を除去すべく洗浄し、その後、前駆体を無機微粒子に変換して、レンズ本体の表面から10nmより深い部位に微粒子が注入、分散されたレンズを製造することを特徴とするレンズの製造方法
  2. 有機高分子材料からなるレンズ本体と、無機微粒子に変換される微粒子の前駆体とを別々の高圧セルに収容し、前駆体が収容された高圧セルに高圧流体を供給して該前駆体を高圧流体中に溶解し、次に前駆体を溶解した高圧流体を、前記レンズ本体が収容された高圧セルに供給し、該レンズ本体に前記前駆体を溶解した高圧流体を接触させることによって前記前駆体をレンズ本体に注入し、次に高圧流体のみを前記レンズ本体が収容された高圧セルに供給し、前駆体が注入されたレンズ本体と高圧流体とを接触させて、前記レンズ本体の表面から10nmの深さまでの部分の前駆体を除去すべく洗浄し、その後、前駆体を無機微粒子に変換して、レンズ本体の表面から10nmより深い部位に無機微粒子が注入、分散されたレンズを製造することを特徴とするレンズの製造方法
  3. 無機微粒子の前駆体をレンズ本体に注入する際に、高圧流体とともに、レンズ本体又は前駆体の少なくともいずれかを溶解又は可塑化させうる溶剤を補助溶媒として添加する請求項1又は2記載のレンズの製造方法。
  4. 無機微粒子の前駆体をレンズ本体に注入した後、レンズ本体の表面から10nmの深さまでの部分の前駆体を洗浄して除去する前に、注入時の処理温度より低い温度までレンズ本体を冷却する請求項1乃至3のいずれかに記載のレンズの製造方法。
  5. 無機微粒子の前駆体を無機微粒子に変換させる手段が、レンズ本体を構成する有機高分子材料の温度を上昇させて前記前駆体を熱分解する手段である請求項1乃至4のいずれかに記載のレンズの製造方法。
  6. 無機微粒子の前駆体が、アルコキシド、カルボニル錯体、若しくはアセチルアセトン錯体、又はアルコキシド、カルボニル錯体、若しくはアセチルアセトン錯体を主成分とする金属錯体、又はポリメチルシロキサン若しくはポリシロキサンの誘導体である請求項記載のレンズの製造方法。
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