JP4425769B2 - 作業機械 - Google Patents

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Description

本発明は、車体に支持されたブームの先端部にアームを設け、同アームの先端部にバケットなどのアタッチメントを備えたショベルなどの作業機械に関し、特にブームを油圧システムを用いずに回動させることができる作業機械に関する。
代表的な作業機械の一つに油圧ショベルがあり、土砂の掘削作業や運搬作業などの各種作業に用いられている。例えば図9に示したように、油圧ショベル41は、一般的に、上部車体43が下部走行体42上に旋回機構(不図示)を介して旋回可能に搭載されている。この上部車体43には、エンジンなどの動力部(不図示)や運転室47が配設され、またブーム44が回動可能に支持されている。ブーム44は、ブームシリンダ48の往復運動によりブーム回動軸を中心にして上下方向に起伏させることができる。また、ブーム44の先端部にはアーム45が取り付けられており、アーム45先端部にはバケット46等が取り付けられている。アーム45は、アームシリンダ49の往復運動により、ブーム先端部を支点として上下方向に回動させることができ、バケット46等はバケットシリンダ50等の往復運動によりアーム先端部を支点として回動させることができる。
上記のような油圧ショベル41にあって、ブームシリンダ48、アームシリンダ49、及びバケットシリンダ50の各往復運動を行うために、一般的に油圧システムが利用されている。例えば、上部車体43に配設されているエンジンの動力を利用して先ず油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプから吐出される作動油を制御弁などを介してブーム44、アーム45、及びバケット46の各シリンダ(油圧アクチュエータ)48,49,50に供給する。これら各シリンダ48,49,50では、供給された作業油の油圧の動力を機械的な動力に変換して往復運動を行い、この各シリンダ48,49,50の往復運動によってブーム44、アーム45、及びバケット46の各部位を回動させることができる。
また近年の省エネルギー化の要請を受けて、例えば実開平5−48501号公報(特許文献1)では、油圧ショベル用内燃機関が開示されており、所謂ハイブリッド式と呼ばれる油圧ショベルについての提案がなされている。ハイブリッド式の油圧ショベルは、動力システムとして、エンジンと発電機及びモータとして作動する誘導機とを備えている。このハイブリッド式油圧ショベルが軽負荷で運転する時には、誘導機を発電機として作動させて、エンジンの余剰トルクで発電した電力をバッテリーに充電する。一方、油圧ショベルの高負荷運転時には、バッテリーに蓄電した電力を取り出して誘導機に供給し、誘導機をモータとして作動させることによって、エンジン出力の不足分を補うことができる。これにより、掘削等の高負荷作業時にエンジンにかかる負担を軽減でき、燃費の向上を図ることができる。
しかしながら、上記のような従来の油圧ショベルやハイブリッド式のショベルで採用されている油圧システムでは、エンジンの動力を油圧システムで変換して各シリンダに伝達する際に、油圧ポンプと油圧アクチュエータ間での圧損や、制御弁でのエネルギーロスが生じる。そのため、油圧システムによる動力伝達では、エネルギー効率が低いという問題があった。
また、ショベルの省エネルギー化を図る上で、ショベルが掘削などの作業を行う際に、ブームが降下するときに生じるエネルギーを利用してモータを回転させ、このモータの回転により電力を発電させることによってエネルギーの再利用を図ることが望まれている。しかしながら、上記のような従来のショベルでは、ブームの回動が油圧を利用したブームシリンダで制御されているため、ブームが降下するときのエネルギーを回収することができず、エネルギーの再利用が図れないという欠点があった。
一方、特開2000−283107号公報(特許文献2)では、ハイブリッド式ショベルのエネルギー効率を向上させることを目的として、以下のような特徴を有するショベルが開示されている。すなわち、特許文献2に記載されているショベルは、動力源としてのエンジンと、このエンジンによって駆動される発電機と、この発電機から供給される電力によって回転する複数の電動機(モータ)とを具備している。この電動機を駆動源として下部走行体、上部車体、ブーム、アーム、及びバケットの各作動部を作動させるように構成されている。さらに、特許文献2では、その一実施形態として、ブーム、アーム、及びバケットの各作動部に電動機及び減速機を配設し、減速機の出力軸をブーム、アーム、及びバケットの回動中心部分に連結することにより、ブームなどを機械的に回動させるとしている。
このような特許文献2に記載されているショベルは、油圧システムを用いなくても、発電機とブームなどの各作動部を回動させる電動機とが電気配線によって接続されているため、各作動部を機械的に回動させることができる。そのため、上記油圧システムで生じるようなエネルギーの伝達ロスを低減でき、エネルギー効率を向上させることができる。
実開平5−48501号公報 特開2000−283107号公報
しかしながら、上記特許文献2のように、減速機の出力軸をブームの回動中心部分に直接連結する場合、ブームを回動させるためには、高トルクが得られる大型の電動機を使用する必要があった。このような大型の電動機を使用する場合、ショベルの車体重量が増大して燃費の低下を招き、さらに電動機設置スペースの確保の点でも問題があった。
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、ブームを回動させる際に、油圧システムや高トルクが得られる大型の電動機を用いなくても、ブームを安定して回動させることができ、さらに、ブームを降下させるときに生じるエネルギーを回収して再利用することが可能となる作業機械を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の作業機械は、下部走行体と、同下部走行体に搭載した上部車体と、同上部車体に回動可能に支持されたブームとを備えた作業機械において、前記ブームを回動させるブーム駆動モータが前記ブームに設けられ、前記ブームの回動軸を中心とした円弧状のラックギアが前記上部車体に設けられ、前記ブーム駆動モータの出力軸に設けたピニオンが前記ラックギアに噛合してなることを最も主要な特徴とするものである。
上記本発明の作業機械は、安全性を向上させるために、前記ブームの回動範囲を制限するブームストッパーが、前記上部車体に設けられてなることが好ましく、また、前記ブーム駆動モータが、同ブーム駆動モータの駆動停止時にモータの出力軸を回転不動にするブレーキ手段を有してなることが好ましい。
また、本発明の作業機械において、ブームの回動をより高トルクで行うために、前記ブーム駆動モータと前記ピニオンとの間に減速機が設けられてなることが好ましい。
さらに、本発明では、前記上部車体に前記ラックギアを収納する収納部を設け、同収納部内に前記ラックギアが配設されてなり、前記収納部のブーム駆動モータと対面する側面に前記ブームの回動軸を中心としたスリット状の円弧溝が形成され、同円弧溝を介して前記ブーム駆動モータの出力軸が前記収納部内に挿入されて、同出力軸に設けたピニオンが前記ラックギアに噛合してなることが好ましい。
本発明の作業機械は、上記のように、ブーム駆動モータがブームに設けられ、またブームの回動軸を中心とした円弧状のラックギアが上部車体に設けられており、ブーム駆動モータの出力軸に設けたピニオンがラックギアに噛合している。これにより、ブームに固定したブーム駆動モータを回転させることによって、ブーム駆動モータの出力軸に設けたピニオンが円弧状のラックギアに沿って転がり、ブームを回動軸を中心に回動させることができる。このため、従来のような油圧システムを用いなくても、ブーム駆動モータの動力を直接作用させてブームの回動を安定して行うことができる。したがって、従来の油圧ショベルになどに比べて、エネルギー効率を大幅に向上させることができる。
また、上記のようにしてブームを回動させることにより、ピニオンがラックギアに噛合している噛合部とブーム回動軸との間で減速比を得ることができる。これにより、高トルクが得られる大型のモータを用いなくても、ブームの回動を安定して行うことができ、ショベルの小型化、低重量化を図ることができる。
さらに本発明の作業機械は、ブーム駆動モータの出力軸に設けたピニオンとラックギアとが噛合している。そのため、ブームを下降させる際にピニオンがラックギアに沿って転がることによってブーム駆動モータを発電機として回転させることができる。これにより、ブーム駆動モータで電力を発電させることが可能となり、その電力をバッテリーに蓄えることによって、エネルギーの再利用を図ることができる。
さらにまた、本発明は、ブームの回動範囲を制限するブームストッパーが上部車体に設けられている。これにより、例えばブームが外部から衝撃を受けたときに、その衝撃によってブームが強制的に回動させられる場合であっても、ブームストッパーでブームが所定範囲を超えて回動するのを確実に防止できる。これによって、事故の発生などを未然に防ぐことができる。
また、ブームに設けられるブーム駆動モータが、ブーム駆動モータの駆動停止時にモータの出力軸を回転不動にするブレーキ手段を有することができる。このようなブレーキ手段を設けることにより、例えばショベルのエンジンを止めて作業を停止したとき等において、ブームを所定の位置で固定して動かないようにしておくことができる。これにより、作業停止時の安全性を確保することができる。また、例えばブームを所定の位置に固定した状態で作業を行う場合では、ブレーキ手段でモータの出力軸をロックすることにより、ブームを確実に固定でき、作業を安定して行うことができる。
さらに、ブーム駆動モータとピニオンとの間に減速機が設けられていることにより、高トルクを得ることができ、ブームをより安定して回動させることができる。なお、本発明においては、減速機がブーム駆動モータに内蔵されていても良く、この場合も高トルクを容易に得ることができる。
この場合、本発明の作業機械では、上部車体にラックギアを収納する収納部を設け、この収納部内にラックギアが配設されている。また、収納部のブーム駆動モータと対面する側面には、ブームの回動軸を中心としたスリット状の円弧溝が形成されている。さらに、ブーム駆動モータの出力軸が収納部側面に設けた円弧溝を介して収納部内に挿入され、モータ出力軸に設けたピニオンがラックギアに噛合している。本発明では、このようにラックギア及びピニオンを上部車体の収納部内に配設することができるので、ラックギアとピニオンとが外部に露呈することがなく、ブームの回動を行う際に作業の安全性を確保することができる。また、ラックギアとピニオンとの噛合部に異物が侵入するのを防ぐ防塵効果も得られる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係る作業機械の一例であるショベルを模式的に表す模式図であり、図2は、上部車体のブーム設置箇所を拡大して模式的に示す部分斜視図である。また、図3は、図2のA方向から見たときの上部車体及びブームの位置関係を模式的に示す図である。さらに、図4は、ブーム駆動モータの出力軸に設けたピニオンが、上部車体の収納部内に配設されたラックギアに噛合している状態を模式的に示す部分断面図である。なお、上記図1では、本発明の特徴を分かり易く表すために、上部車体3の一部が断面で示されている。
先ず、本実施例1においては、例えば図1に示したような土砂の掘削作業などに用いられるショベル1が提供される。この図1に示したショベル1は、走行手段となる下部走行体2と、この下部走行体2に搭載した上部車体3と、上部車体3の前部に回動可能に支持されたブーム4と、ブーム4の先端部に回動可能に設けられたアーム5と、アーム5の先端部に設けられたバケット6とを備えている。
上記ショベル1において、上部車体3は下部走行体2上に旋回自在に搭載することができる。また、上部車体3には運転室7が設けられており、運転室後方には、不図示の動力源となるエンジン、エンジンによって駆動される発電機、及びバッテリーなどが搭載されている。この上部車体3に設けたバッテリーは、例えばショベル1の軽負荷作業時に、発電機で発電された電力のうち余剰の電力を蓄えることができる。また一方、重負荷作業において、発電機による電力に不足が生じた際に、その電力不足分をバッテリーに蓄えた電力によって補うことができるように構成されている。
実施例1にあっては、図2及び図3により詳しく示したように、ブーム4にブーム駆動モータ10が設けられている。また、上部車体3には収納部16が設けられており、この収納部16内にブーム4の回動軸12を中心とした円弧状のラックギア14が配設されている。さらに、上部車体3の収納部16には、ブーム駆動モータ10に対面する側面にブーム4の回動軸12を中心としたスリット状の円弧溝17が形成されており、この円弧溝17内にブーム駆動モータの出力軸11が挿入されている。
また図4に示したように、ブーム駆動モータ10の出力軸11の先端にはピニオン15が設けられており、このピニオン15は収納部16内に配設されラックギア14と噛合している。これらのラックギア14及びピニオン15は必ずしも収納部内に設けられる必要はないが、上記のように収納部16でピニオン15とラックギア14との噛合部をカバーすることにより、ピニオン15及びラックギア14が外部に露呈しないため、ショベル1の構成がコンパクトになるとともに、ブーム4の回動を行う際に作業の安全性を確保することができる。また、ラックギア14とピニオン15との噛合部に異物が噛合部に侵入するのを防ぐ防塵効果も得られる。
上記ブーム駆動モータ10としては、例えば一般的な電動モータを使用することができ、上部車体3に搭載されている発電機やバッテリーから電力が供給されて、電動モータの回転子が回転することにより駆動力を得ることができる。また、ブーム駆動モータ10には、減速比を得るために減速歯車を内蔵することも可能である。このようなブーム駆動モータ10において、例えばブーム駆動モータ10に供給する電力を調節してモータの駆動力を制御することにより、ブームを任意の速度で回動させたり、また所定の位置で停止させたりすることができる。
また、このブーム駆動モータ10には、ブーム駆動モータ10の駆動停止時にモータの出力軸を機械的にロックして回転不動にするブレーキ手段13が設けられている。このブレーキ手段13としては、例えば図5に示したようなメカニカルブレーキ21を用いることができる。図5に示したメカニカルブレーキ21では、ブーム駆動モータ10の駆動軸22がベアリング23で支持されている。また、駆動モータ10の駆動軸11には摩擦板24がスプラインで結合されており、駆動モータ10に固定されたシリンダ25にはディスク板26が結合されている。これらの摩擦板24とディスク板26とは交互に隙間を介して重ねられた状態にて設置されている。そして、スプリング27がプレスプレート28を介して摩擦板24及びディスク板26を押圧して、摩擦板24とディスク板26とを当接させることによって、摩擦板24とディスク板26との間でブレーキトルクが発生する。これにより、ブーム駆動モータ10の出力軸をロックして回転不動にすることができる。
このようなメカニカルブレーキ21をブーム駆動モータ10に設けることにより、例えばショベル1のエンジンを止めて作業を停止したときに、ブーム4を所定の位置で固定して動かないようにしておくことができる。これにより、作業停止時の安全性を確保することができる。また、例えばブーム4を所定の位置に固定した状態で作業を行う場合では、メカニカルブレーキ21でモータの駆動軸をロックすることにより、ブーム4を確実に固定でき、作業を安定して行うことができる。
上記実施例1のショベルで1では、ブーム4に設けられているブーム駆動モータ10を駆動させることにより、ブーム駆動モータ10の出力軸11に設けたピニオン15が回転してラックギア14に沿って移動する。このようにブーム駆動モータ10を駆動させてピニオン15をラックギア14に沿って移動させることにより、上部車体3上でブーム4を支持している支持部を回動軸12として、ブーム4を回動させることができる。
このようにしてブーム4の回動を行えば、ラックギア14のピッチ径の大きさやラックギア14及び/又はピニオン15の歯数を変更することにより、ピニオン15がラックギア14に噛合している噛合部とブーム回動軸12との間で減速比を得ることができる。したがって、実施例1のショベル1は、例えば上記特許文献2のようにブーム回動軸に電動機からの出力軸を直接連結した場合に比べて、高いトルクを容易に得ることができ、大型のモータを用いなくてもブーム4を安定して回動させることができる。このとき、ピニオン15がラックギア14に噛合している噛合部とブーム回動軸12との距離を大きく設定する程、即ち、ラックギア14のピッチ径を大きくする程、より大きなトルクを得ることができる。
また一般的に、ショベルは、掘削などの作業上、ブームに対して外部から大きな衝撃を受けることがある。実施例1のショベル1では、例えばブーム4がブーム駆動モータ10から得られる駆動力よりも大きな衝撃(外力)を外部から受けた場合、作業の安全性を確保するために、ブーム4がブーム駆動モータ10の制御を超えて外力の作用する方向に回動して、ブーム駆動モータ10の回転によりその衝撃が吸収できるように構成されている。これにより、ブーム4が大きな衝撃を受けた場合であっても、ブーム4やブーム駆動モータ10が破損するのを防止することができる。
また本実施例1において、上部車体3における収納部16の円弧溝17が形成されている側面には、ブーム4の回動範囲を制限するためのピン状のブームストッパー18が安全装置として設けられている。このブームストッパー18が設けられていることにより、例えばブーム4が上記のように大きな衝撃を受けてブーム駆動モータ10の制御を超えて回動する場合であっても、ブームストッパー18で機械的にブーム4を停止させることができる。従って、ブーム4が所定範囲を超えて回動するのを確実に防止することができ、作業の安全性を確保できる。またこの場合、上記ブームストッパー18は弾性を有していることが好ましい。これにより、ブーム4がブームストッパー18と衝突してもその衝撃を和らげることができるため、ブーム4が変形するのを防止でき、作業の安全性もより確実に確保することができる。
以上のような構成を有するショベル1であれば、ブーム駆動モータ10を駆動してその出力軸11に設けたピニオン15を、ガイドとなる円弧状のラックギア14に沿って移動させることにより、ブーム駆動モータ10の動力を直接作用させてブーム4を回動させることができる。これにより、従来のような油圧システムを用いなくても、ブーム4の回動を安定して行うことができるため、従来の油圧ショベルになどに比べて、エネルギーの伝達ロスを低減して、エネルギー効率を大幅に向上させることができる。
また、上記のようにしてブーム4を回動させることにより、ラックギア14のピッチ径の大きさで減速比を得ることができ、さらに、ラックギア14及び/又はピニオン15の歯数を変更することによっても減速比を得ることができる。したがって、例えば前記特許文献2のようにモータの出力軸をブーム回動軸中心に連結する場合とは異なり、高トルクが得られる大型モータを用いなくても、ブーム4を安定して回動させることができ、ショベル1の小型化、低重量化を図ることができる。
さらに、実施例1におけるショベル1は、ブーム駆動モータ10の出力軸11に設けたピニオン15とラックギア14とが噛合している。そのため、例えばブーム4を下降させる際にピニオン15がラックギア14に沿って転がることによって、ブーム駆動モータ10を発電機として回転させることができる。これにより、ブーム駆動モータ10を発電機として起電した電力を、例えば上部車体3に配設したバッテリーに蓄えることができ、エネルギーの再利用を図ることができる。
なお、本実施例1において、アーム5及びバケット6を回動させる手段は特に限定されない。例えば、図1に示したように、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9を設けておき、不図示の油圧ポンプから送られた作動油の圧力を機械的な動力に変換することによりアーム5及びバケット6の回動を行うことができる。或いは、アーム5を回動させる手段として、上記ブームの場合と同様に、アームにアーム駆動モータを設け、アームの回動軸を中心とした円弧状のアームラックギアをブームに設ける。また、アーム駆動モータの出力軸に、アームラックギアと噛合させるピニオンを設ける。これにより、アーム5を、油圧システムを利用せずとも優れたエネルギー効率で回動させることが可能となる。また、バケット6についても同様の回動手段を設けておくことにより、優れたエネルギー効率でバケット6の回動を行うことも可能となる。
次に、本発明の実施例2に係るショベルについて説明する。
本実施例2に係るショベルは、例えば図6に示したように、ブーム4に設置したブーム駆動モータ10が、上記実施例1に係るショベルとは異なる構成で設けられている。すなわち、上記実施例1では、ブーム駆動モータ10の駆動軸(出力軸)の先端に直接ピニオン15を設けて、ピニオン15と円弧状のラックギア14とを噛合させている。それに対して、実施例2では、ブーム駆動モータ10とピニオン15との間にギアボックス31を設けておき、ブーム駆動モータ10の駆動軸の方向をギアボックス31で例えば約90°転換し、その方向を転換した出力軸11にピニオン15を設けている。また、この出力軸11に設けたピニオン15は、不図示のラックギアに噛合している。それ以外の構成については、上記実施例1に係るショベルと同様の構成を有する。このため、実施例1で用いた符合を用いることにより、その構成の説明を省略する。
この実施例2のように、ギアボックス31でブーム駆動モータ10の出力軸の方向を転換することにより、ブーム駆動モータ10を設置するスペースを十分に確保することができ、またショベル設計の自由度を高めることができる。
さらに、実施例2のショベルでは、ギアボックス31内に減速機を設置することができる。これにより、大きな減速比を確保して、ブーム4をより安定して回動させることができる。
続いて、本発明の実施例3に係るショベルについて説明する。
本実施例3に係るショベルは、例えば図7及び図8に示したように、ブーム4に設置したブーム駆動モータ10とピニオン15との間に、平歯車32及び遊星歯車減速装置33が設けられている。
具体的に説明すると、ブーム駆動モータ10の駆動軸34には小歯車35が設けられており、この小歯車35が平歯車32に噛合している。また、この平歯車32は別の小歯車36を介して遊星歯車減速装置33に連結されている。さらに、この遊星歯車減速装置33の出力軸11の先端にはピニオン15が設けられており、不図示のラックギアに噛合している。この場合、平歯車32及び小歯車35,36は、安全性を考慮してカバー37で覆われている。この実施例3において、上記以外の構成については、実施例1に係るショベルと同様の構成を有する。このため、実施例1で用いた符合を用いることにより、その構成の説明を省略する。
このような構成を有する実施例3に係るショベルは、ブーム駆動モータ10とピニオン15との間に設けた遊星歯車減速装置33によって大きな減速比を得ることができる。したがって、上記実施例1に係るショベルと同じ性能の駆動モータを用いても、ブームの回動をより高いトルクで安定して行うことができる。またこの場合、例えば上記平歯車32の代わりに減速ギアを用いることもでき、より大きな減速比を得ることが可能となる。
さらに、実施例3によれば、上記実施例1のようにブーム駆動モータ10にブレーキ手段13を設ける代わりに、例えば遊星歯車減速装置33とピニオン15との間や、平歯車32と遊星歯車減速装置33との間にメカニカルブレーキのようなブレーキ手段を設けることができる。これにより、ショベルのエンジンを止めて作業を停止した場合などで、ブームを所定の位置で確実に固定することができるため、ショベルの作業停止時の安全性を確保できる。
そして、これらの実施例2及び実施例3におけるショベルにおいても、前記実施例1のショベルと同様の効果を得ることができる。すなわち、従来の油圧ショベルのような油圧システムを用いずに、ブーム駆動モータの動力を直接的に作用させることによりブームの回動を優れたエネルギー効率で安定して行うことができる。また、前記実施例1と同様に、ブーム4を下降させる際にブーム駆動モータ10を発電機として作用させることができ、ブーム駆動モータ10で電力を発電させることが可能となる。また、その電力を例えば上部車体3に配設したバッテリーに蓄えることによって、エネルギーの再利用を図ることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、アーム5の先端部にバケット6を設けた場合を例に挙げて説明を行っている。しかしながら、本発明は、アーム先端部にバケット以外のアタッチメントを設けることが可能であり、例えば、アームの先端部に鉛直方向への掘削が可能なクラムシェルや、岩石を破壊するブレーカなどを取り付けることも可能である。
さらに、本発明は、ブームの先端部に必ずアームが備えられる必要はなく、例えば、ドラグラインのようなブームの先端部からワイヤーロープでバケット吊り下げた掘削作業機械等にも適用することができる。
本発明は、土砂の掘削作業や運搬作業などの各種作業を行う作業機械に、特にショベルに有効に適用することができる。
本発明の実施例1に係る作業機械の一例であるショベルを模式的に表す模式図である。 上部車体のブーム設置箇所を模式的に示す部分斜視図である。 図2のA方向から見たときの上部車体及びブームの位置関係を模式的に示す図である。 ブーム駆動モータの出力軸に設けたピニオンが、上部車体の収納部内に配設されたラックギアに噛合している状態を模式的に示す部分断面図である。 ブーム駆動モータに設けられるメカニカルブレーキの断面を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例2に係るショベルのブームに設けられたブーム駆動モータを模式的に示す部分斜視図である。 本発明の実施例3に係るショベルのブームに設けられたブーム駆動モータを模式的に示す部分斜視図である。 本発明の実施例3に係るショベルのブームに設けられたブーム駆動モータの断面を模式的に示す部分断面図である。 従来の油圧ショベルを模式的に示す模式図である。
符号の説明
1 ショベル
2 下部走行体
3 上部車体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 運転室
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 ブーム駆動モータ
11 出力軸
12 ブームの回動軸
13 ブレーキ手段
14 ラックギア
15 ピニオン
16 収納部
17 円弧溝
18 ブームストッパー
21 メカニカルブレーキ
22 駆動軸
23 ベアリング
24 摩擦板
25 シリンダ
26 ディスク板
27 スプリング
28 プレスプレート
31 ギアボックス
32 平歯車
33 遊星歯車減速装置
34 駆動軸
35 小歯車
36 小歯車
37 カバー
41 油圧ショベル
42 下部走行体
43 上部車体
44 ブーム
45 アーム
46 バケット
47 運転室
48 ブームシリンダ
49 アームシリンダ
50 バケットシリンダ

Claims (5)

  1. 下部走行体と、同下部走行体に搭載した上部車体と、同上部車体に回動可能に支持されたブームとを備えた作業機械において、前記ブームを回動させるブーム駆動モータが前記ブームに設けられ、前記ブームの回動軸を中心とした円弧状のラックギアが前記上部車体に設けられ、前記ブーム駆動モータの出力軸に設けたピニオンが前記ラックギアに噛合してなることを特徴とする作業機械。
  2. 前記ブームの回動範囲を制限するブームストッパーが、前記上部車体に設けられてなることを特徴とする請求項1記載の作業機械。
  3. 前記ブーム駆動モータが、同ブーム駆動モータの駆動停止時にモータの出力軸を回転不動にするブレーキ手段を有してなることを特徴とする請求項1又は2記載の作業機械。
  4. 前記ブーム駆動モータと前記ピニオンとの間に減速機が設けられてなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の作業機械。
  5. 前記上部車体に前記ラックギアを収納する収納部を設け、同収納部内に前記ラックギアが配設されてなり、前記収納部のブーム駆動モータと対面する側面に前記ブームの回動軸を中心としたスリット状の円弧溝が形成され、同円弧溝を介して前記ブーム駆動モータの出力軸が前記収納部内に挿入されて、同出力軸に設けたピニオンが前記ラックギアに噛合してなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の作業機械。
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